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<図1>
  • 特許-無人移動装置及びターレット切替え装置 図1
  • 特許-無人移動装置及びターレット切替え装置 図2
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  • 特許-無人移動装置及びターレット切替え装置 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】無人移動装置及びターレット切替え装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/00 20210101AFI20221024BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221024BHJP
   G03B 17/12 20210101ALI20221024BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221024BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G03B11/00
G03B15/00 U
G03B17/12
H04N5/225 400
H04N5/232
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018169838
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020042183
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】515078497
【氏名又は名称】株式会社五鈴精工硝子
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山黒 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】羽尻 好孝
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/116417(WO,A1)
【文献】特開昭64-049027(JP,A)
【文献】特開2002-281380(JP,A)
【文献】実開昭54-138525(JP,U)
【文献】特開2012-220710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 11/00
G03B 15/00
H04N 5/222- 5/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を乗せずに遠隔操作または自動制御によって移動する無人移動装置であって、
移動のための駆動源を有する移動体と、
前記移動体に搭載されるカメラと、
記カメラのレンズの前面に同軸に配置され、透過率の異なる複数のフィルタが周方向に配置されている、円板状の第1、第2の各ターレットと、
前記第1、第2の各ターレットを動かして、前記レンズの前面に位置させる前記フィルタを切替えるフィルタ切替え機構と、
外部から受信した指示信号または内部に記憶されたプログラムに基づいて、前記フィルタを切替えるための切替信号を生成して前記フィルタ切替え機構に送信する制御装置とを備え、
前記第1、第2の各ターレットは同形状の目印を有し、前記第1、第2の各ターレットを回転させたときに、前記第1、第2の各ターレットの軸方向から見て目印を重ねることができ、
前記第1、第2の各ターレットは、孔が中央部に形成された円板状の透明ガラスと、前記透明ガラスの上に貼り付けられ平面形状が略扇形の複数のフィルタ部材とを備え、前記各フィルタ部材は、前記透明ガラスの上に貼り付けられた状態で、前記透明ガラスの外周縁に沿い前記フィルタ部材の数に応じた中心角の円弧状の外周縁と、前記孔の外形に沿い前記フィルタ部材の数に応じた中心角の円弧状の内周縁と、前記外周縁の各端部と前記内周縁の各端部とをつなぐ直線状の両側縁とを有し、前記第1、第2の各ターレットの前記各フィルタ部材が貼り付けられた領域が前記フィルタを構成し、
前記第1、第2の各ターレットは、互いに異なる数の複数のフィルタを備え、
前記フィルタ切替え機構は、前記制御装置と接続される1つのモータと、前記モータの回転力を前記第1、第2の各ターレットに伝達するギア機構とを備え、前記モータは、前記切替信号に応じた回転角度で前記第1、第2の各ターレットを回転させ、
前記ギア機構は、前記モータの回転力が伝達され、同軸に連結された第1、第2の駆動歯車と、前記第1の駆動歯車と噛み合い、第1のターレットと一体に設けられる第1の従動歯車と、第2のターレットと一体に設けられ、前記第1の駆動歯車と前記第1の従動歯車とのギア比と異なるギア比で前記第2の駆動歯車と噛み合う第2の従動歯車とを備える、無人移動装置。
【請求項2】
前記第1、第2の各ターレットの少なくとも一つの前記フィルタは、透明ガラスまたは開口部からなる請求項1に記載の無人移動装置。
【請求項3】
前記第1、第2の各ターレットに設けられる前記フィルタは、それぞれ光の透過率の異なるNDフィルタを含む請求項1または2のいずれかに記載の無人移動装置。
【請求項4】
カメラのレンズの前面に同軸に配置され、透過率の異なる複数の前記フィルタが周方向に配置されている、円板状の第1、第2の各ターレットと、
前記第1、第2の各ターレットを動かして、前記レンズの前面に位置させるフィルタを切替えるフィルタ切替え機構と、 外部から受信した指示信号または内部に記憶されたプログラムに基づいて、前記フィルタを切替えるための切替信号を生成して前記フィルタ切替え機構に送信する制御装置とを備え、
前記第1、第2の各ターレットは同形状の目印を有し、前記第1、第2の各ターレットを回転させたときに、前記第1、第2の各ターレットの軸方向から見て目印を重ねることができ、
前記第1、第2の各ターレットは、孔が中央部に形成された円板状の透明ガラスと、前記透明ガラスの上に貼り付けられ平面形状が略扇形の複数のフィルタ部材とを備え、前記各フィルタ部材は、前記透明ガラスの上に貼り付けられた状態で、前記透明ガラスの外周縁に沿い前記フィルタ部材の数に応じた中心角の円弧状の外周縁と、前記孔の外形に沿い前記フィルタ部材の数に応じた中心角の円弧状の内周縁と、前記外周縁の各端部と前記内周縁の各端部とをつなぐ直線状の両側縁とを有し、前記第1、第2の各ターレットの前記各フィルタ部材が貼り付けられた領域が前記フィルタを構成し、
前記第1、第2の各ターレットは、互いに異なる数の複数のフィルタを備え、
前記フィルタ切替え機構は、前記制御装置と接続される1つのモータと、前記モータの回転力を前記第1、第2の各ターレットに伝達するギア機構とを備え、前記モータは、前記切替信号に応じた回転角度で前記第1、第2の各ターレットを回転させ、
前記ギア機構は、前記モータの回転力が伝達され、同軸に連結された第1、第2の駆動歯車と、前記第1の駆動歯車と噛み合い、第1のターレットと一体に設けられる第1の従動歯車と、第2のターレットと一体に設けられ、前記第1の駆動歯車と前記第1の従動歯車とのギア比と異なるギア比で前記第2の駆動歯車と噛み合う第2の従動歯車とを備える、ターレット切替え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人移動装置に関し、詳しくは、乗員を乗せずに遠隔操作または自動制御によって移動しカメラが搭載された無人移動装置及び無人移動装置のカメラに取り付けられるターレット切替え装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カメラ等の撮像装置には、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等から成る撮像素子が用いられており、撮像素子に入射する光量を調節するために、絞り装置がカメラ内に設けられている。
【0003】
絞り装置は複数の絞り羽根を周方向に並べて構成されており、中央部に開口が形成されている。被写体の明るさに応じて開口の面積を調整し、被写体の明るさの度合いが大きい場合には、開口の面積を小さくして撮像素子に入射する光量を減少させる。しかし、開口の面積が小さくなり過ぎると、ハンチング現象や光の回折が生じ、撮像する画質が低下する。
【0004】
そこで、カメラのレンズの前面にND(Neutral Density)フィルタを配置し、開口の面積を所定の大きさに維持した状態で光量を抑制することが行われている。このように、撮像素子に侵入する光量を調整することで、撮像する画像の画質を良好に保つことができる。撮像時には、通常、透過率の異なる複数のNDフィルタを用意し、被写体の明るさや抑制すべき光量に応じてNDフィルタを取り替える。
【0005】
一方、乗員を乗せずに遠隔操作または自動制御によって移動する無人移動装置としてドローンが知られており、ドローンにカメラを搭載して上空から画像を撮像することが行われている。近年では、このようなドローンによる撮影においても、撮像する画像の画質を良好に保つことが求められており、例えば特許文献1においては、ドローンに搭載したカメラにおいて、最適な露出時間を決定する方法が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-85551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、ドローンによる撮影の際に、カメラにNDフィルタを取り付けることも行われている。しかし、ドローンは空中で飛行するため、被写体の明るさが変ってNDフィルタを取り替える必要が生じると、ドローンを一旦着陸させ、作業者が手動でNDフィルタの取り替えを行わなくてはならず、作業に手間がかかるという問題がある。また、無人移動装置がドローンではなく例えばロボットの場合であっても、フィルタを取り替えるために作業者の待機する場所まで戻ってこなくてはならず、作業に手間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、カメラに配置されたフィルタの切替えを簡単に行うことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による無人移動装置は、乗員を乗せずに遠隔操作または自動制御によって移動するものであって、移動のための駆動源を有する移動体と、前記移動体に搭載されるカメラと、複数のフィルタを含み、前記カメラのレンズの前面に配置されるターレットと、前記ターレットを動かして、前記レンズの前面に位置させるフィルタを切替えるフィルタ切替え機構と、外部から受信した指示信号または内部に記憶されたプログラムに基づいて、前記フィルタを切替えるための切替信号を生成して前記フィルタ切替え機構に送信する制御装置とを備えるものである。
【0010】
上記の構成によれば、乗員を乗せずに遠隔操作または自動制御によって移動する無人移動装置において、ターレットに複数のフィルタを含み、外部から受信した指示信号または内部に記憶されたプログラムに基づいてフィルタをフィルタ切替え機構により切替えるため、カメラに配置されたフィルタの切替えを作業員の手によらず簡単に行うことができる。
【0011】
好ましい実施形態においては、互いに異なる数の複数のフィルタが周方向に配置された円板状の第1、第2の各ターレットを備え、前記フィルタ切替え機構は、前記制御装置と接続される1つのモータと、前記モータの回転力を前記第1、第2の各ターレットに伝達するギア機構とを備え、前記モータは、前記切替信号に応じた回転角度で前記第1、第2の各ターレットを回転させる。
【0012】
上記の実施形態においては、前記ギア機構は、前記モータの回転力が伝達され、同軸に連結された第1、第2の駆動歯車と、前記第1の駆動歯車と噛み合い、第1のターレットと一体に設けられる第1の従動歯車と、第2のターレットと一体に設けられ、前記第1の駆動歯車と前記第1の従動歯車とのギア比と異なるギア比で前記第2の駆動歯車と噛み合う第2の従動歯車とを備えてもよい。
【0013】
好ましい実施形態においては、前記第1、第2の各ターレットの少なくとも一つのフィルタは、透明ガラスまたは開口部からなる。
【0014】
好ましい実施形態においては、各ターレットに設けられる前記フィルタは、それぞれ光の透過率の異なるNDフィルタを含む。
【0015】
本発明によるターレット切替え装置は、複数のフィルタを含み、カメラのレンズの前面に配置されるターレットと、前記ターレットを動かして、前記レンズの前面に位置させるフィルタを切替えるフィルタ切替え機構と、外部から受信した指示信号または内部に記憶されたプログラムに基づいて、前記フィルタを切替えるための切替信号を生成して前記フィルタ切替え機構に送信する制御装置とを備える。
【0016】
上記の構成によれば、ターレットに複数のフィルタを含み、外部から受信した指示信号または内部に記憶されたプログラムに基づいてフィルタをフィルタ切替え機構により切替えるため、カメラに配置されたフィルタの切替えを作業員の手によらず簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カメラのレンズに用いられるフィルタの切替えを簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る無人移動装置の要部を示す断面図であり、図2のA-A線に沿う断面図である。
図2】カメラに取り付けられたターレット切替え装置の斜視図である。
図3】(A)は第1のターレットの平面図、(B)はフィルタ板の分解斜視図である。
図4】(A)は第2のターレットの平面図、(B)はフィルタ板の分解斜視図である。
図5】第1、第2の各ターレットのハウジングへの取り付け構造を示す拡大断面図である。
図6】ND濃度と透過率との関係を示す図である。
図7】第1、第2の各ターレットのフィルタの組み合わせと合成ND濃度を示す図である。
図8】ターレット切替え装置の電気的構成を示すブロック図である。
図9】合成ND濃度を切替える時の回転角度を示すテーブルである。
図10】コントローラの表示部の画面を示し、(A)は初期化処理の画面、(B)は合成ND濃度切り替えの画面である。
図11】無人移動装置の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(全体構成)
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。本発明の無人移動装置は、乗員を乗せずに遠隔操作または自動制御によって移動するものであり、図11に示すように、本実施形態ではドローン1である。ドローン1は移動体2を備えており、移動体2は、機体部分を構成する平面視X型のドローン本体3と、ドローン本体3の上部の四隅に配置された複数(図示例では4つ)の回転翼機4とを備えている。ドローン本体3には、図示しないが、ドローン本体3の飛行を制御するためのドローンコントローラとの間で信号を送受信する送受信機、飛行を行うために回転翼機4を制御するための制御装置、回転翼機4や送受信機を駆動するための駆動源であるバッテリ等が搭載されている。ドローン本体3の下部には一対の脚部5が設けられ、一対の脚部5間の空間にカメラ6がカメラ連結部16により連結されている。
【0020】
(ターレット切替え装置10)
図1図2に示すように、カメラ6のレンズ8にはターレット切替え装置10が取り付けられている。ターレット切替え装置10は、ハウジング11内に、複数のフィルタ23A~23Gを含みカメラ6のレンズ8の前面に配置される第1、第2の各ターレット20A、20Bと、第1、第2の各ターレット20A、20Bを動かして、レンズ8の前面に位置させるフィルタ23A~23Gを切替えるフィルタ切替え機構30と、外部から受信した指示信号に基づいて、フィルタ23A~23Gを切替えるための切替信号を生成し、フィルタ切替え機構30に送信する制御装置14と、制御装置14およびフィルタ切替え機構30のモータ31を駆動させるバッテリ15とを備えている。フィルタ23A~23Gの切替えは、作業者が所有するコントローラ16(図8)からの信号に基づき行われる。
【0021】
(ハウジング11)
ハウジング11は、第1ハウジング12と第2ハウジング13とからなる。なお、図2において、第1ハウジング12と第2ハウジング13は一点鎖線で表されており、後述する第1ハウジング12の外壁12A、仕切り壁12C、モータ支持台12dの記載を省略している。第1ハウジング12の内部には第1、第2の各ターレット20A、20Bが収容されている。第2ハウジング13の内部には、モータ31と、制御装置14と、モータ31と制御装置14とを駆動するためのバッテリ15が収容されている。制御装置14とバッテリ15は、図2に示すように、モータ31を挟んで両側に配置されている。第1ハウジング12の外壁12Aには、第1、第2の各ターレット20A、20Bに対応する位置に開口12aが形成され、開口12aの周囲にカメラ6のレンズ8と連結されるカメラ連結部16が設けられている。第1、第2の各ターレット20A、20Bを挟んで第1ハウジング12の外壁12Aと対向する外壁12Bには、カメラ6のレンズ8と略同じ大きさの開口12bが形成されて、開口12bに透明ガラスからなるカバー用ガラス17が嵌め込まれている。光はカバー用ガラス17、第1、第2の各ターレット20A、20Bのフィルタ23A~23Gを介してカメラ6のレンズ8に入射される。
【0022】
カバー用ガラス17は、ハウジング11の内部に埃などの異物が侵入するのを防いでいる。なお、カバー用ガラス17は、紫外線吸収フィルタから構成されていてもよい。紫外線吸収フィルタは、例えば、株式会社五鈴精工硝子製のITY-seriesを用いてもよい。これにより、ドローン1による屋外撮影を行う場合に、紫外線によって画像に青みがかることを防止する機能を付加することができる。さらに、撮影時にゴーストが写るのを防止するために、カバー用ガラス17の表面には、光の反射を抑制するための反射防止膜を形成してもよい。また、第1ハウジング12の外壁12Aの開口12aに、開口12aを塞ぐカバー用ガラスが設けられていてもよい。これにより、ターレット切替え装置10のカメラ6のレンズ8への装着時に、ハウジング11の内部に埃などの異物が侵入するのを防ぐことができる。
【0023】
カメラ連結部16は、外壁12Aの開口12aの縁から突出する周壁12cの外周に嵌められる環状のレンズ連結部材16aと、レンズ連結部材16aが周壁12cから抜け落ちるのを防止する環状の抜け止めリング16bを有する。レンズ連結部材16aは、周壁12cの外径と略同じ内径を有する小径部16cと、小径部16cより内径が大きくカメラ6のレンズ8の外周と略同じ内径を有する大径部16dとを備え、小径部16c側の端面が外壁12Aと当接するように周壁12cに嵌められる。周壁12cとレンズ連結部材16aの大径部16dとの間の隙間に抜け止めリング16bが配置される。抜け止めリング16bは内周面にネジ部が形成されており、周壁12cの外周面に形成されたネジ部と螺合してレンズ連結部材16aの端面を外壁12Aに押し付けて固定する。レンズ連結部材16aの大径部16dの内周面にはネジ部が形成され、レンズ8の外周に形成されたネジ部と螺合させることで、レンズ8にターレット切替え装置10を取り付ける。なお、本実施形態では、図11において、ターレット切替え装置10はカメラ6の下側に取り付けられているが、カメラ6の側方に取り付けられていてもよい。
【0024】
第1ハウジング12の外壁12Aのカメラ連結部16の横には、図1においてキャップ状の第2ハウジング13が取り付けられている。第2ハウジング13は、第1ハウジング12に取り付けられたカメラ6に干渉しない形状となっている。第1ハウジング12の外壁12Aは、第1ハウジング12内部と第2ハウジング13内部とを区画する仕切り壁12Cとなっている。
【0025】
(フィルタ切替え機構30)
図1図5に示すように、フィルタ切替え機構30は、モータ31と、ギア機構32と、モータ31とギア機構32との間に設けられモータ31の回転力をモータ31の回転軸方向と直交する方向に伝達するかさ歯車33とを備える。
【0026】
モータ31は、仕切り壁12Cに形成されたモータ支持台12dに固定されている。モータ31は例えばサーボモータである。モータ31の回転軸には第1ギア33aが取り付けられている。第1ギア33aは、駆動軸34の先端に取り付けられた第2ギア33bと噛み合っている。駆動軸34は、軸方向がモータ31の回転軸の軸方向と直交しており、仕切り壁12Cに形成された貫通孔12eに、ベアリング(図示せず)等により支持されている。第1ギア33aと第2ギア33bはかさ歯車33を構成している。なお、かさ歯車33を設けずに、モータ31の回転軸に駆動軸34を同軸に連結してもよい。
【0027】
駆動軸34の他端は第1ハウジング12の内部に突出しており、ギア機構32が連結されている。ギア機構32は、駆動軸34に同軸に連結された第1、第2の各駆動歯車35A、35Bと、第1の駆動歯車35Aと噛み合い、第1のターレット20Aと一体に設けられる第1の従動歯車36Aと、第2のターレット20Bと一体に設けられ、第1の駆動歯車35Aと第1の従動歯車36Aとのギア比と異なるギア比で第2の駆動歯車35Bと噛み合う第2の従動歯車36Bとを備えている。ギア比については後述する。
【0028】
図5に示すように、第1のハウジング11の外壁12Aの内壁と外壁12Bの内壁とにはそれぞれ対向する位置に凹部12f、12fが形成されており、この凹部12f、12fに支持軸37の端部が回転自由に支持されている。支持軸37には第2の従動歯車36Bが連結されるとともに、支持軸37は後述する第2のターレット20Bの固定部材22の貫通孔に固定されている。モータ31による第2の駆動歯車35Bの回転により第2の従動歯車36Bが回転し、これにより支持軸37を介して第2のターレット20Bが回転する。
【0029】
上記の支持軸37は、支持軸37の外径と略同じ内径を有する円筒部材38の中空部に回転自由に挿入されており、円筒部材38を支持している。円筒部材38は、第2の従動歯車36Bと第2のターレット20Bとの間に設けられており、第1の従動歯車36Aは円筒部材38に取り付けられるとともに、円筒部材38は第1のターレット20Aの固定部材22の貫通孔に貫通固定されている。従って、第1、第2の各ターレット20A、20Bは同軸に配置されている。モータ31による第1の駆動歯車35Aの回転により第1の従動歯車36Aが回転し、これにより円筒部材38を介して第1のターレット20Aが回転する。前述したように支持軸37は円筒部材38内に回転自由に貫通しているため、第1、第2の各ターレット20A、20Bはそれぞれ異なるギア比で回転することが可能である。
【0030】
(第1、第2の各ターレット20A、20B)
第1のターレット20Aは、図3(A)に示すように、円板状のフィルタ板21Aの中心部に固定部材22が取り付けられたものであり、フィルタ板21Aには周方向に複数(本実施形態では4つ)のフィルタ23A~23Dが設けられている。第1のターレット20Aの4つの各フィルタ23A~23Dは、ぞれぞれ透過率が異なっており、本実施形態では、第1のフィルタ23Aを透明ガラスから構成し、第2~第4の各フィルタ23B~23DをNDフィルタから構成している。ND(Neutral Density)フィルタは、光量を減少させるために用いられるフィルタであり、本実施形態では、第2~第4の各フィルタ23B~23Dとして、ND8フィルタ、ND4フィルタ、ND2フィルタを用いている。
【0031】
NDの後に続く数字は、フィルタ23A~23Gが入射する光量を何分の1に減少させて出すことができるかを示しており、ND濃度ともいう。例えば、ND2フィルタの場合、光量を2分の1に、ND4フィルタの場合、光量を4分の1に、それぞれ減少させることができる。透過率は、100/ND濃度(%)となる。図6にND濃度と透過率の関係を示している。本明細書においては、ND濃度を例えば「ND4」のように「ND+数字」で示すこともある。また、第1のフィルタ23Aを構成する透明ガラスは透過率が100%であるため、第1のフィルタ23Aを、ND濃度を「1」とした「ND1フィルタ」とも言う。
【0032】
フィルタ板21Aは、孔21aが中央部に形成された円板状の透明ガラス24Aの一方の面に、4つのフィルタ部材25A~25DがUV接着剤等の接着剤により貼り付けられている。各フィルタ部材25A~25Dは、平面形状が略扇形であり、中心角が90度の円弧状の外周縁と、孔21aの外形に沿う中心角が90度の円弧状の内周縁と、外周縁の各端部と内周縁の各端部とをつなぐ直線状の両側縁を有する。フィルタ板21Aには中央部に孔21aを含む孔21bが形成される。第1のフィルタ部材25Aは透明ガラスからなり、第2~第4の各フィルタ部材25B~25Dは、透明ガラスの一方の面にそれぞれND8、ND4、ND2の各ND濃度のNDコーティングが施されている。第1~第4の各フィルタ部材25A~25Dが貼り付けられた領域が、第1のターレット20Aにおいてそれぞれ第1~第4の各フィルタ23A~23Dを構成する。透明ガラス24Aに第1~第4の各フィルタ部材25A~25Dが貼り付けられた後、第1~第4の各フィルタ23A~23Dの光路長が等しくなるように研磨を行う。これにより、カメラ6が有する画像センサ(図示せず)に結ぶ像にずれが生じてピントが合わなくなるのを防止する。さらに、透明ガラス24Aの表面及び第1~第4の各フィルタ部材25A~25Dの表面、すなわち第1のターレット20Aの両面に、光の反射を抑制するための反射防止膜を形成し、撮影時にゴーストが写るのを防止する。
【0033】
図5に示すように、固定部材22は、円筒部材38が貫通固定される貫通孔26aが中央に形成された円筒状部26を備え、円筒状部26の外周面の厚み方向の中央に鍔部27が設けられている。鍔部27の先端には周方向に段差27aが形成されており、この段差27aにフィルタ板21Aの孔21bが嵌め込まれて接着されている。段差27aの厚みはフィルタ板21Aの厚みと等しく設定されている。さらにフィルタ板21Aを押さえるための環状の押さえ板28が鍔部27の一方の面およびフィルタ板21Aに貼り付けられている。
【0034】
第1のフィルタ23Aには、第1のフィルタ23Aがカメラ6のレンズ8前に配置されたときにカメラ6のレンズ8に対応する領域の近傍に、第2のターレット20Bとの位置合わせのための目印29Aが付されている。目印29Aは、本実施形態では三角形状のシールとしているが、作業者が視認できればシールに限定されず、刻印等であってもよく、また、三角形状に限らずいずれの形状であってもよい。
【0035】
第2のターレット20Bには、図4に示すように、円板状のフィルタ板21Bの中心部に固定部材22が取り付けられたものであり、複数(本実施形態では3つ)のフィルタ23E~23Gが設けられている。第2のターレット20Bの3つのフィルタ23E~23Gは、ぞれぞれ透過率が異なっており、本実施形態では、第1のフィルタ23Eを透明ガラスから構成し、第2、第3の各フィルタ23F、23GをNDフィルタから構成している。本実施形態では、第2、第3の各フィルタ23F、23Gとして、ND256フィルタ、ND16フィルタを用いている。
【0036】
フィルタ板21Bは、中央部に孔21aが形成された円板状のガラス24Bと、ガラス24Bの一方の面にUV接着剤等の接着剤により貼り付けられる3つのフィルタ部材25E~25Gとからなる。各フィルタ部材25E~25Gは、平面形状が略扇形であり、中心角が120度の円弧状の外周縁と、孔21aの外形に沿う中心角が120度の円弧状の内周縁と、外周縁の各端部と内周縁の各端部とをつなぐ直線状の両側縁を有する。円板状のガラス24Bの一方の面の中心角240度に亘る領域24aにはND16のNDコーティングが施されている。
【0037】
第1のフィルタ部材25Eは透明ガラスからなり、NDコーティングが施されていないガラスの一面の領域24bに貼り付けられている。この領域は第2のターレット20Bにおいて第1のフィルタ23E(ND1フィルタ)を構成している。第2のフィルタ部材25Fは一方の面にND16のNDコーティングが施されたガラスからなり、NDコーティングが施された円板状のガラスの一面の領域24aに貼り付けられ、この領域は第2のターレット20Bにおいて第2のフィルタ23F(ND256フィルタ)を構成している。第3のフィルタ部材25Gは透明ガラスからなり、NDコーティングが施された円板状のガラスの一面の領域24aに貼り付けられ、この領域は第2のターレット20Bにおいて第2のフィルタ23G(ND16フィルタ)を構成している。
【0038】
第1のフィルタ23Eであって第1のターレット20Aの目印29Aと対応する位置に、第1のターレット20Aの目印29Aと同形状の目印29Bが付されている。第2のターレット20Bにおいて、第1のターレット20Aと同一の構成及び作用については、対応する構成に同一の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0039】
なお、本明細書においては、第1のターレット20Aの第1~第4の各フィルタ23A~23D、第2のターレット20Bの第1~第3の各フィルタ23E~23Gは、必ずしも厳密に図6に示す数値の透過率を有するものではなく、透過率に数%の誤差を含んでいてもよい。反射防止膜を有する各フィルタ23A~23D、23E~23Gにおいては、反射防止膜を有しない各フィルタ23A~23D、23E~23Gと比べて透過率が2%程度減少するが、本明細書では、このような場合も透過率を図6に示す数値で示す。例えば、反射防止膜を有さない透明ガラスの透過率は100%であるとすると、反射防止膜を有する透明ガラスの透過率は一般的に98%から99.5%であるが、本明細書では「透過率が100%」と言う。また、例えば、ND濃度が8のNDコーティングが施され、さらに反射防止膜が施された第2のフィルタ23Bの透過率は12.25%から12.44%程度からであるが、本明細書では「透過率が12.5%」と言う。
【0040】
(合成ND濃度)
図1に示すように、第1のターレット20Aのいずれかのフィルタ23A~23Dおよび第2のターレット20Bのいずれかのフィルタ23E~23Gは、カメラ6のレンズ8の光軸上に重なって位置する。レンズ8に入射する光量は、第1のターレット20Aおよび第2のターレット20Bのフィルタ23A~23D、23E~23Gの合成ND濃度により減少する。合成ND濃度は、フィルタ23A~23GのND濃度の積で求められる。例えば、図7に示すように、第1のターレット20AのND8フィルタと、第2のターレット20BのND256フィルタとが重なるように配置した場合には、合成ND濃度は2048となり、このときの透過率は、図6に示すように、0.049%である。
【0041】
第1のターレット20Aのフィルタ23A~23Dと、第2のターレット20Bのフィルタ23E~23Gとを組み合わせることで、フィルタ23A~23Gの数以上の合成ND濃度を実現できる。本実施形態においては、第1のターレット20Aに4つのフィルタ23A~23Dを備え、第2のターレット20Bに3つのフィルタ23E~23Gを備えているため、図7に示すように、計12種類の合成ND濃度を実現できる。
【0042】
(第1、第2の各ターレット20A、20Bの回転)
第2のターレット20Bを回転させるための第2の駆動歯車35Bと第2の従動歯車36Bとのギア比(第2のギア比)は、第1のターレット20Aを回転させるための第1の駆動歯車35Aと第1の従動歯車36Aとのギア比(第1のギア比)と異なるように設定されている。本実施形態では、第1のターレット20Aが90度回転する間に、第2のターレット20Bが同方向に120度回転するように、第1のギア比、第2のギア比を設定している。第1のギア比に対する第2のギア比は、第1、第2の各ターレット20A、20Bが有するフィルタ23A~23Gの数に応じて定められ、第2のターレット20Bの回転角=第1のターレット20Aの回転角×(第1のターレット20Aのフィルタ23A~23Dの数/第2のターレット20Bのフィルタ23E~23Gの数)となるように設定される。
【0043】
図7に示すように、例えば、第1、第2の各ターレット20A、20Bの第1のフィルタ23A、23E(ND1フィルタ)がレンズ8の前面に位置したときの第1、第2の各ターレット20A、20Bの位置を、回転数(回転角度)が0、すなわち回転の原点とする。第1のターレット20Aが90度回転すると、レンズ8の前面にはND8フィルタである第2のフィルタ23Bが位置する。このとき、第2のターレット20Bは120度回転し、レンズ8の前面にはND256フィルタである第2のフィルタ23Fが位置し、合成ND濃度が2048となる。さらに第1のターレット20Aが90度回転する、すなわち0度の位置から180度回転すると、レンズ8の前面にはND4フィルタである第3のフィルタ23Cが位置する。このとき、第2のターレット20Bは合計240度回転し、レンズ8の前面には位置するND16フィルタである第3のフィルタ23Gとなり、合成ND濃度が64となる。このように、モータ31により第1のターレット20Aを90度ずつ回転させ、第2のターレット20Bを120度ずつ回転させることで、レンズ8の前面に位置するフィルタ23A~23Gの組み合わせが変化する。第1のターレット20Aを0度の位置から90度ずつ計(2+3/4)回転、すなわち990度回転させ、第2のターレット20Bを0度の位置から120度ずつ計(3+2/3)回転、すなわち1320度回転させれば、計12種類の合成ND濃度を実現できる。
【0044】
(回路構成)
図8に制御装置14を含むターレット切替え装置10の電気的な回路構成を示す。制御装置14は、制御部14a、記憶部14b、通信部14cを備えたマイクロコンピュータであり、制御部14aはCPUから構成され、記憶部14bはROM、RAM等から構成される。制御部14aは各種の演算を実行するとともに、入出力各部を一連に制御する。記憶部14bのROMはプログラムや固定データなどを格納し、RAMは演算結果などのデータの読み書きに用いられる。
【0045】
制御部14aは、指令信号をサーボアンプ31aに出力し、サーボアンプ31aは制御部14aからの出力値を増幅してサーボモータ31へ出力する。このサーボモータ31には位置検出器としてのロータリエンコーダ31bが接続されており、サーボモータ31の回転原点と、サーボモータ31の回転原点からの回転角度を記憶部14bに記憶する。記憶部14bは、サーボモータ31の回転角度と第1のターレット20Aの回転角度との換算テーブル(図示せず)を記憶している。サーボモータ31の回転原点は、第1のターレット20Aの第1のフィルタ23A(ND1フィルタ)がレンズ8の前面に位置する第1のターレット20Aの回転の原点を示し、サーボモータ31の回転角度は、ターレット20Aの回転原点からの回転角度に相当する。
【0046】
記憶部14bのROMは図9に示すようなテーブルTを記憶している。テーブルTは、現在の合成ND濃度から次に使用する合成ND濃度に切替える際に第1のターレット20Aを回転させる角度を示している。例えば、現在の合成ND濃度がND2であり、次にND4に切替える場合を考える。図7に示すように、現在の合成ND濃度がND2の場合においては、レンズ8の前面には第1のターレット20AのND2フィルタ、第2のターレット20BのND1フィルタが位置している。制御部14aは、図9のテーブルTを参照して、現在の合成ND濃度がND2、次に切替える合成ND濃度がND4のときに、第1のターレット20Aを270度回転させることを読み取り、第1のターレット20Aの270度の回転に相当するサーボモータ31の回転角度を図示しない換算テーブルから読み取る。そしてこの回転角度でサーボモータ31を回転させるための切替信号を生成し、サーボモータ31に出力する。第2のターレット20Bは上述したようにギア機構32により第1のターレット20Aの4/3倍の角度で回転する。すると、レンズ8の前面には第1のターレット20AのND4フィルタ、第2のターレット20BのND1フィルタが位置し、ND4の合成ND濃度が実現できる。
【0047】
通信部14cは、所定の通信規格で通信ネットワークを介した通信を行うための通信装置などから構成され、作業者が所有するコントローラ16と接続されてコントローラ16から次の合成ND濃度を示す信号を受信する。
【0048】
コントローラ16は、図示しない制御装置、入力部等を含んでいる。制御装置は、制御部、記憶部、通信部を備えたマイクロコンピュータであり、制御部はCPUから構成され、記憶部はROM、RAM等から構成される。制御部は各種の演算を実行するとともに、入出力各部を一連に制御する。記憶部のROMはプログラムや固定データなどを格納し、RAMは演算結果などのデータの読み書きに用いられる。
【0049】
入力部は、コントローラ16の本体の前面に設けられ、例えばタッチパネルから構成されている。図10(A)、図10(B)は入力部に表示される画面S1、S2を示す。また、入力部のタッチパネルは現在の合成ND濃度を表示する表示部を兼ねていてもよい。
【0050】
図10(A)は、第1、第2の各ターレット20A、20Bの回転の原点を定める処理である初期化処理を行うための画面S1を示しており、初期化処理開始のための初期化ボタンB1と、第1、第2の各ターレット20A、20Bの回転を停止させる停止ボタンB2を有する。図10(B)は、所望の合成ND濃度を選択するための画面S2を示しており、本実施形態では12種類の合成ND濃度を切替えることが可能であるため、合成ND濃度を示す12個のボタンB3が並べられている。
【0051】
コントローラ16の通信部は、所定の通信規格で通信ネットワークを介した通信を行うための通信装置などから構成され、ターレット切替え装置10の制御装置14の通信部14cと通信して、次の合成ND濃度を示す信号や初期化に関する信号の送受信を行う。
【0052】
コントローラ16は、ドローン本体3の飛行を制御するためのドローンコントローラと一体に設けられていてもよく、ドローンコントローラとは別体として設けられていてもよい。また、専用のアプリケーションをインストールしたスマートフォンをコントローラ16としてもよい。
【0053】
(ターレット切替え装置10の使用方法)
まず、ドローン本体3に連結されたカメラ6のレンズ8に、ターレット切替え装置10を取り付ける。レンズ8の外周のネジ部に、ターレット切替え装置10のカメラ連結部16のレンズ連結部材16aのネジ部を螺合させることで、レンズ8にターレット切替え装置10を取り付ける。
【0054】
次に、第1、第2の各ターレット20A、20Bの回転の原点を定めるための初期化処理を行う。作業者はコントローラ16の表示部に初期化のための画面S1を表示させ、初期化ボタンB1を押す。コントローラ16からターレット切替え装置10の制御装置14に初期化信号が送信される。制御部14aは、通信部14cを介して初期化信号を受信し、サーボアンプ31aを介してモータ31に指令信号を出力してモータ31を回転させ、これにより第1、第2の各ターレット20A、20Bが回転する。作業者は第1のハウジング11に設けられているカバー用ガラス17から中を覗き、第1、第2の各ターレット20A、20Bに設けられた目印29A、29Bが重なったときにコントローラ16の停止ボタンB2を押す。目印29A、29Bは第1、第2の各ターレット20A、20Bの透明ガラスからなる第1のフィルタ23A、23E(ND1フィルタ)に設けられているため、目視により目印29A、29Bの重なりを視認することが可能である。
【0055】
コントローラ16は停止ボタンB2が押されたことによる停止信号をターレット切替え装置10の制御装置14に送信する。停止信号を受信した制御部14aは、モータ31に指令信号を出力してモータ31を停止させる。このときのモータ31の回転位置を原点として記憶部14bに記憶する。すなわち、第1、第2の各ターレット20A、20Bの第1のフィルタ23A、23Eがレンズ8の前面に位置したときの第1、第2の各ターレット20A、20Bの位置が回転原点となる。このとき、記憶部14bには、現在の合成ND濃度がND1として記憶される。
【0056】
次に、作業者は、コントローラ16の表示部に所望の合成ND濃度を選択するための画面S2を表示させ、所望の合成ND濃度に相当するボタンB3を押す。すると、コントローラ16は所望の合成ND濃度を示す信号をターレット切替え装置10の制御装置14に送信する。制御部14aは、通信部14cを介してこの信号を受信し、記憶部14bに記憶された図9に示すテーブルTを参照して、現在の合成ND濃度と、次に切替える合成ND濃度とから、第1のターレット20Aを回転させる回転角度を得る。制御部14aは、第1のターレット20Aを所望の回転角度で回転させるよう、切替信号を生成してサーボモータ31に出力する。これにより、第1のターレット20Aを所望の回転角度量まで回転させる。第2のターレット20Bもギア機構32により、第1のターレット20Aの回転角度の4/3倍の角度で回転する。これにより、所望の合成ND濃度を得ることのできる第1、第2の各ターレット20A、20Bのフィルタ23A~23Gがレンズ8の前面に位置する。
【0057】
次に、作業者はドローン本体3のコントローラ16を操作してドローン1を飛行させカメラ6による撮影を開始する。
【0058】
作業者がドローン1の飛行中にフィルタ23A~23Gの切替えを行う際には、上述のように、コントローラ16の表示部に所望の合成ND濃度を選択するための画面S2を表示させ、所望の合成ND濃度に相当するボタンB3を押すことで、フィルタ23A~23Gの切替えが行われる。
【0059】
上記の構成によれば、作業者がドローン1を地上まで降ろしてカメラ6に配置されたフィルタ23A~23Gを切替える手間がなく、フィルタ23A~23Gの切替えを手間無く簡単に行うことができる。
【0060】
また、第1、第2の各ターレット20A、20Bにおいては、透明ガラスであるND1フィルタと、ND2、ND4、ND8、ND16の4種類のNDフィルタから12種類の透過率の異なるフィルタ23A~23Gを実現しているので、用意するNDフィルタの数が少なくてすむ。また、1つのモータ31で第1、第2の各ターレット20A、20Bを同方向に回転させているので、第1、第2の各ターレット20A、20Bにそれぞれモータを設けて回転させる場合に比べて無人移動装置が軽量化できる。さらに、シールである目印29A、29Bにより第1、第2の各ターレット20A、20Bの回転原点を検出しているため、センサを設ける場合に比べて軽量化できる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0062】
本実施形態ではフィルタ23A~23GとしてNDフィルタを用いているが、NDフィルタに限定されず、例えば、CC(Color Compensation:色補正)フィルタなどであってもよい。
【0063】
また、第1、第2の各ターレット20A、20Bに設けられるフィルタ23A~23Gの数は本実施形態に限定されず、任意の数であってもよい。各フィルタ23A~23Gは、カメラ6のレンズ8を覆うことのできる大きさであればよい。また、本実施形態ではフィルタ23A、23Eは2枚の透明ガラスで構成されているが、第1、第2の各ターレット20A、20Bにそれぞれ開口部を設けてフィルタ23A、23Eとしてもよい。この場合、光は開口部を通ってレンズ8に入射する。
【0064】
また、第1のターレット20Aの回転原点は、目視で目印29A,29Bを合わせることで得ているが、これに限定されず、第1、第2の各ターレット20A、20Bの回転角度や回転位置を検出するセンサを備え、センサにより第1のターレット20Aの回転原点を得てもよい。
【0065】
また、無人移動装置は、本実施形態ではドローンとしたが、乗員を乗せずに自動制御によって移動するロボットであってもよい。例えば、人間が近寄ることのできない災害現場に投入されるロボットであってもよい。この場合、制御装置14の記憶部14bに記憶されたプログラムにより、所定のタイミングで制御部14aが切替信号を生成してモータ31に出力し、フィルタ23A~23Gを自動で切替える設定であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 無人移動装置(ドローン)
2 移動体
6 カメラ
8 レンズ
10 ターレット切替え装置
14 制御装置
23(23A~23D、23E~23G) フィルタ
20A、20B 第1、第2の各ターレット
30 フィルタ切替え機構
31 モータ
32 ギア機構
35A、35B 第1、第2の各駆動歯車
36A、36B 第1、第2の各従動歯車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11