(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
F02B 31/04 20060101AFI20221024BHJP
F02B 31/06 20060101ALI20221024BHJP
F02F 1/42 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
F02B31/04 500A
F02B31/06 500A
F02F1/42 F
(21)【出願番号】P 2018182445
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】金子 隆
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 充
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 憲
(72)【発明者】
【氏名】金 大敬
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-011540(JP,A)
【文献】登録実用新案第3155396(JP,U)
【文献】特開2006-328983(JP,A)
【文献】特開平08-014053(JP,A)
【文献】特開2004-218646(JP,A)
【文献】特開2007-016657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 31/04
F02B 31/06
F02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートに連通する吸気通路内に吸気の流れ方向に沿って設けられ、第1の通路と第2の通路とに仕切る隔壁プレートと、
前記吸気通路内において前記隔壁プレートの上流側に配設されて、前記第1又は第2の通路の一方の通路を開閉する弁体と、を備えた内燃機関の吸気装置において、
前記弁体が前記一方の通路を閉塞した際に、他方の通路を通る吸気が燃焼室のルーフの頂部側の内壁面に沿って流れるように、前記隔壁プレートの下流側端部を前記第1の通路側又は前記第2の通路側に傾斜させる駆動手段を備え
、
前記弁体が前記一方の通路を閉塞している状態で、前記隔壁プレートは、前記第1の通路と前記第2の通路との区画状態を維持しており、且つ、前記隔壁プレートの前記下流側端部は、前記一方の通路を閉鎖させることなく、該一方の通路側に傾斜することを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記隔壁プレートの下流側端部領域は、基端部が隔壁シャフトに軸着されて下流側の先端部が揺動可能とされた端部プレートにて形成され、
前記駆動手段は、前記先端部を揺動させることで、前記隔壁プレートの下流側端部を前記第1の通路側又は前記第2の通路側に傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記隔壁プレートは、吸気の流れ方向の中央部が隔壁シャフトに軸着されて上流側及び下流側の両端部が揺動可能であり、
前記駆動手段は、前記隔壁プレートを揺動させることで、前記隔壁プレートの下流側端部を前記第1の通路側又は前記第2の通路側に傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記弁体は、前記燃焼室のルーフの頂部側に形成される第1の通路を開閉し、
前記駆動手段は、前記弁体が前記第1の通路を閉塞した際に、前記隔壁プレートの下流端部を前記第1の通路側に傾斜させることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気通路を仕切る隔壁プレートを設けられ内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の内燃機関において、燃焼室内に流入する吸気にタンブル流(縦渦)を発生させるために、燃焼室近傍において吸気通路を2つの流路(第1の通路と第2の通路)に仕切る技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、内燃機関の吸気装置において、吸気通路内を隔壁プレートを設けることによって第1の通路と第2の通路とに仕切り、第1の通路の上流側又は下流側に、第1通路を開閉可能なタンブル制御弁を設けたものが記載されている。
【0004】
この吸気装置では、第1の通路をタンブル制御弁で閉塞して、第2の通路から燃焼室内に流れる吸気の流速を高めることで、燃焼室内にタンブル流を発生させることができる。タンブル流が発生すると、燃焼速度が向上することから、例えば、車両の内燃機関の冷間始動時等において燃焼効率を高めることができる。
【0005】
また、このような吸気装置において、隔壁プレートは、第1及び第2の通路の両方に吸気が流れる際に、吸気流に乱れが生じないように、吸気通路の延在方向に沿って延在するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃焼効率は、タンブル流の強さを示すタンブル比を大きくすることにより高めることができることが知られている。燃焼室内のタンブル流の回転速度をエンジンの回転速度で除した値であるタンブル比を高めることは、一つの課題である。
【0008】
それ故、従来の隔壁プレートの設けられた吸気装置において、第1の通路を閉塞してタンブル流を発生させる際に、タンブル比をより高めるための改良が求められていた。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、燃焼室における吸気のタンブル比を高めることができる内燃機関の吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態の内燃機関の吸気装置は、吸気ポートに連通する吸気通路内に吸気の流れ方向に沿って設けられ、第1の通路と第2の通路とに仕切る隔壁プレートと、前記吸気通路内において前記隔壁プレートの上流側に配設されて、前記第1又は第2の通路の一方の通路を開閉する弁体と、を備えた内燃機関の吸気装置において、前記弁体が前記一方の通路を閉塞した際に、他方の通路を通る吸気が燃焼室のルーフの頂部側の内壁面に沿って流れるように、前記隔壁プレートの下流側端部を前記第1の通路側又は前記第2の通路側に傾斜させる駆動手段を備え、前記弁体が前記一方の通路を閉塞している状態で、前記隔壁プレートは、前記第1の通路と前記第2の通路との区画状態を維持しており、且つ、前記隔壁プレートの前記下流側端部は、前記一方の通路を閉鎖させることなく、該一方の通路側に傾斜することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、弁体によって第1の通路又は第2の通路の一方の通路を閉塞してタンブル流を発生させる場合に、隔壁プレートの下流側端部を第1の通路側又は第2の通路側に傾斜させて、他方の通路を通る吸気が燃焼室のルーフの頂部側の内壁面に沿って流れるようにすることで、吸気が燃焼室内に流入する際に、吸気ポートを開閉する吸気バルブに当たって流れが乱れたり、拡散したりすることを抑制することができる。これにより、タンブル流を発生させる吸気流の流速を高めて、タンブル比を高めることができる。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、前記内燃機関の吸気装置において、前記隔壁プレートの下流側端部領域は、基端部が隔壁シャフトに軸着されて下流側の先端部が揺動可能とされた端部プレートにて形成され、前記駆動手段は、前記先端部を揺動させることで、前記隔壁プレートの下流側端部を前記第1の通路側又は前記第2の通路側に傾斜させることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、弁体によって一方の通路が閉塞された際に、隔壁プレートの下流側端部領域を形成する端部プレートの先端部を揺動させることにより、第1の通路側又は第2の通路側に傾斜させて、他方の通路を通過する吸気流の向きを変えることができるので、吸気が燃焼室内に流入する際の吸気流の流速を高く保持することができ、タンブル比を高めることができる。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、前記内燃機関の吸気装置において、前記隔壁プレートは、吸気の流れ方向の中央部が隔壁シャフトに軸着されて上流側及び下流側の両端部が揺動可能であり、前記駆動手段は、前記隔壁プレートの両端部を揺動させることで、前記隔壁プレートの下流側端部を前記第1の通路側又は前記第2の通路側に傾斜させることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、弁体によって一方の通路が閉塞された際に、隔壁プレートの両端部を揺動させることにより、隔壁プレートの下流側端部を第1の通路側又は第2の通路側に傾斜させて、他方の通路を通過する吸気流の向きを変えることができるので、吸気が燃焼室内に流入する際の吸気流の流速を高く保持することができ、タンブル比を高めることができる。
【0016】
また、本発明の一実施形態は、前記内燃機関の吸気装置において、前記弁体は、前記燃焼室のルーフの頂部側に形成される第1の通路を開閉し、前記駆動手段は、前記弁体が前記第1の通路を閉塞した際に、前記隔壁プレートの下流端部を前記第1の通路側に傾斜させることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、燃焼室のルーフの頂部に近い第1の通路を閉塞して、第2の通路を通る吸気によってタンブル流を発生させる際に、吸気流を第1の通路側に向けて燃焼室のルーフの頂部側の内壁面に沿って流れるようにすることができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態は、前記内燃機関の吸気装置において、前記弁体は、前記吸気通路に配設された弁シャフトと、該弁シャフトとともに軸周りに回転する弁本体とを備え、前記駆動手段は、前記吸気通路の外部において、前記隔壁シャフトと前記弁シャフトとの間に設けられ、複数のギヤを介して弁シャフトの回転力を前記隔壁シャフトに伝達する動力伝達機構を備えたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、複数のギヤを有する動力伝達機構により、弁シャフトの回転力を隔壁シャフトに伝達して隔壁プレートの下流端部を揺動させることができるので、弁体の開閉移動と隔壁プレートの下流端部の揺動とを連動させることができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態は、前記内燃機関の吸気装置において、前記動力伝達機構は、前記弁シャフトとともに軸周りに回転する第1のギヤと、前記隔壁シャフトとともに軸周りに回転する第2のギヤと、前記隔壁シャフトと前記弁シャフトとの間に配設された中間シャフトに設けられ、前記第1のギヤ及び前記第2のギヤのうちのいずれか一方のギヤに取付けられた無端状のベルトを介して該一方のギヤと連動して前記中間シャフトとともに回転する第3のギヤと、該第3のギヤと並列して前記中間シャフトに設けられ、前記第1のギヤ及び前記第2のギヤのうちのいずれか他方のギヤと噛合して前記中間シャフトとともに回転する第4のギヤと、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、弁シャフトの回転力を第1のギヤ、第3のギヤ及び第4のギヤを介して第2のギヤに伝達し、第2のギヤとともに隔壁シャフトを回転させることができ、その結果、弁体の開閉移動と隔壁プレートの下流端部の揺動を連動させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る内燃機関の吸気装置によれば、隔壁プレートを備えて燃焼室にタンブル流を発生させる吸気装置において、タンブル比を高めて燃焼効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態である内燃機関の吸気装置の説明図。
【
図3】弁体及び隔壁プレートの移動状態を説明する
図2と同様の断面図。
【
図4】弁体及び隔壁プレートの移動状態を説明する断面図であり、(a)は弁体が閉位置であって端部プレートが初期位置にある状態、(b)は弁体が開位置であって端部プレートが傾斜位置にある状態を示す。
【
図6】本発明の第2の実施の形態である内燃機関の吸気装置の説明図。
【
図8】弁体及び隔壁プレートの移動状態を説明する
図7と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態である内燃機関の吸気装置の説明図であり、吸気装置を上面から見た図である。
図2は、
図1のII-II線断面図である。本発明に係る内燃機関の吸気装置10は、例えば、自動車等の車両の内燃機関に適用され、エンジン本体に形成されている燃焼室内部55にタンブル流を発生させる。
【0025】
内燃機関の吸気装置10は、吸気通路11と、吸気通路11の内部を2つの通路、すなわち、第1の通路11aと第2の通路11bとに仕切る隔壁プレート12と、第1の通路11aを開閉する弁体14と、吸気通路11の外部に設けられた動力伝達機構16とを備える。動力伝達機構16は、弁体14を駆動するモータとともに、モータによる駆動力を隔壁プレート12に伝達して隔壁プレート12の下流側端部を第1の通路11a側及び第2の通路11b側に揺動させる駆動手段を構成している。
【0026】
吸気通路11は、エンジン本体の上部に設けられたシリンダヘッドの吸気ポート50に連通する流路である。シリンダヘッドは、燃焼室の天井となるルーフ56を構成しており、このルーフ56に吸気ポート50と、排気ポート59とが形成されている。本実施の形態において、燃焼室内部55は、ルーフ56の中央部に頂部57を有するペントルーフ型に形成されている。
【0027】
吸気ポート50は、吸気バルブ52によって開閉され、吸気バルブ52が開弁したときに、吸気通路11内の吸気が燃焼室内部55に導入される。なお、排気ポート59は、排気バルブ58によって開閉され、吸気バルブ52の開弁したときに排気バルブ58が閉弁する。本実施の形態では、隔壁プレート12及び弁体14が配置される部位において、吸気通路11の断面が略四角形状となっており、
図1のII-II線に対してほぼ左右対称となるように形成されている。なお、
図1では理解しやすいように、吸気通路11内の隔壁プレート12及び弁体14を実線で示している。
【0028】
本実施の形態において、隔壁プレート12は、吸気通路11を上下に区画しており、上側(すなわち、燃焼室のルーフ56の頂部側)に位置する第1の通路11aの上流側に弁体14が配設されている。本実施の形態では、第2の通路11bに対して、第1の通路11aの流路が広くなっている。なお、流路の広さはこれに限られず、第2の通路11bに対して、第1の通路11aを狭くしてもよく、同じ広さにしてもよい。
【0029】
隔壁プレート12は、本体部22と、本体部22の下流側(すなわち、吸気ポート50側)に位置する端部プレート24とを有する。
【0030】
本体部22及び端部プレート24は、それぞれ平板状であって、
図2に示すように、本体部22は、吸気通路11の延在方向の長さが端部プレート24よりも長く形成されている。本体部22は、吸気通路11に固定されている。
【0031】
端部プレート24は、平面視略四角形状に形成されており、本体部22側の基端部が軸着され、下流側の先端部が揺動可能に構成されている。本実施の形態では、端部プレート24の基端部が隔壁シャフト20によって回動可能に支持されている。隔壁シャフト20は、吸気通路11を貫通して吸気通路11の幅方向Wに延在している。
【0032】
弁体14は、平板状の弁本体32と、弁本体32を回動可能に支持する弁シャフト30とを有する。
図2に示すように、弁体14は第1の通路11aの上流側に配置されており、本実施の形態では、開状態で、本体部22の上流側に、弁本体32が本体部22と僅かな隙間を空けて配置されている。
【0033】
弁シャフト30は、吸気通路11を貫通して吸気通路11の幅方向Wに延在している。弁シャフト30は、図示していないモータ等の動力源に接続され、これによって回転し、弁本体32は、弁シャフト30とともに弁シャフト30の軸周りに回転して、第1の通路11aを開閉する。具体的には、モータの駆動力により、
図2に示す弁本体32が第1の通路11aを開放した開位置と、
図3に示す弁本体32が第1の通路11aを閉塞した閉位置との間で回動可能に構成されている。
【0034】
端部プレート24は、動力伝達機構16により、弁体14の開閉移動と連動して、下流側の先端部が第1の通路11a側及び第2の通路11b側に揺動可能に構成されている。具体的には、端部プレート24は、弁体14が開位置にある場合に、
図2に示すように、吸気通路11の延在方向に沿って本体部22と滑らかに連続する初期位置となり、弁体14が閉位置となった場合に、
図3に示すように、先端が初期位置から第1の通路11a側に所定角度回動して端部プレート24が傾斜した状態となる傾斜位置に移動する。なお、
図2及び
図3に示す吸気バルブ52の開弁状態において、排気ポート59は排気バルブ58で閉塞される。
【0035】
動力伝達機構16は、
図1及び
図5に示すように、弁シャフト30と隔壁シャフト20との間に設けられ、複数のギヤを介して弁シャフト30の回転力を隔壁シャフト20に伝達して隔壁シャフト20を回転させる機構であり、既述のとおり、吸気通路11の外部に設けられている。動力伝達機構16は、弁シャフト30に設けられた第1のギヤ41と、隔壁シャフト20に設けられた第2のギヤ42と、弁シャフト30と隔壁シャフト20との間に配置された中間シャフト40に設けられた第3のギヤ43及び第4のギヤ44とを備える。なお、
図5において、第3のギヤ43は第4のギヤ44の奥に隠れた位置に配置されている。
【0036】
第1のギヤ41及び第2のギヤ42は、それぞれ、弁シャフト30及び隔壁シャフト20のそれぞれの一方の端部に取付けられており、第1のギヤ41は、弁シャフト30とともに弁シャフト30の軸周りに回転し、第2のギヤ42は、隔壁シャフト20とともに隔壁シャフト20の軸周りに回転する。
【0037】
第3のギヤ43及び第4のギヤ44の回転軸となる中間シャフト40は、吸気通路11の外部に配設されて図示していない支持部材により回転可能に軸支されている。弁シャフト30、隔壁シャフト20及び中間シャフト40は、それぞれ幅方向Wに平行に延びている。第3のギヤ43及び第4のギヤ44は、中間シャフト40に固定され、中間シャフト40を軸心として中間シャフト40とともに回転する。
【0038】
第3のギヤ43は、第1のギヤ41と吸気通路11の延在方向に並んで、且つ第1のギヤ41と離間して配置されている。第1のギヤ41と第3のギヤ43との外周には、無端状のベルト46が張架されている。ベルト46は、第1のギヤ41及び第3のギヤ43のギヤ歯と噛合って、第1のギヤ41及び第3のギヤ43を連動させるものであり、例えば、ギヤ歯と噛合う凹凸が内周面に形成されたタイミングベルトや、チェーンとすることができる。第4のギヤ44は、第3のギヤと並列に配置され、第2のギヤ42と噛合っている。
【0039】
第1のギヤ41、第2のギヤ42、第3のギヤ43及び第4のギヤ44の歯数は、弁体14の回転角度と、端部プレート24の回転角度との比によって、適宜設定することができる。本実施の形態では、弁体14の弁本体32の開位置と閉位置との間の回転角度αに対して、端部プレート24の初期位置と傾斜位置との間の回転角度βが小さく設定されており、第1のギヤ41、第2のギヤ42及び第3のギヤ43に対して、第4のギヤ44が大径に形成されている。一例として、弁本体32の開位置と閉位置との間の回転角度が60度であって、端部プレート24の初期位置と傾斜位置との間の回転角度が12度の場合、第1のギヤ41、第2のギヤ42、第3のギヤ43及び第4のギヤ44のギヤ比を1:1:1:5に設定することができる。
【0040】
次に、上述した吸気装置10の動作を説明する。
【0041】
車両のエンジンの運転領域が高速回転や高負荷領域の場合には、弁体14が
図2に示す開位置で保持される。この弁体14の全開状態では、吸気通路11内の吸気は、
図2において矢印で示すように、第1の通路11a及び第2の通路11bの双方を通過可能な状態となり、吸気通路11の内壁及び隔壁プレート12に沿って流れて吸気ポート50から燃焼室内部55へ流入する。ここで、弁体14の全開状態では、第1の通路11aを流れる吸気を主流、第2の通路11bを流れる吸気を副流という。
図2において端部プレート24の初期位置は主流を阻害しない位置に設定されている。
【0042】
一方、車両の冷間始動時や、エンジンの運転領域が低速回転又は低負荷領域の場合には、モータにより、弁体14を
図2に示す開位置から
図3に示す閉位置に移動し、全閉状態となる。
【0043】
弁体14の閉移動により、弁シャフト30が回転すると、これとともに第1のギヤ41が回転し、さらに、ベルト46を介して第3のギヤ43が第1のギヤ41と同じ方向(
図5の時計回り方向)に回転する。また、第3のギヤ43の回転に伴って中間シャフト40及び第4のギヤ44が回転し、さらに、第4のギヤ44に噛合う第2のギヤ42が回転する。
【0044】
第2のギヤ42の回転に伴って隔壁シャフト20が弁シャフト30と逆方向(
図2の半時計回り方向)に回転すると、隔壁シャフト20に取付けられた端部プレート24が第1の通路11a側に回動して初期位置から傾斜位置(
図3参照)になる。端部プレート24は傾斜位置にある場合、端部プレート24の延長線がルーフ56の内壁面56aに沿うように設定されている。より具体的には、端部プレート24の傾斜位置は端部プレート24の延長線が吸気バルブ52の開弁状態において吸気バルブ52とルーフ56の内壁面56aの間となるように設定される。
【0045】
弁体14の全閉状態では、
図3において矢印で示すように、第2の通路11bを通過する吸気が、隔壁プレート12の本体部22及び端部プレート24に沿って流れ、吸気ポート50から燃焼室内部55へ流入する。ここで、弁体14の全閉状態では、第2の通路11bを流れる吸気を主流という。
【0046】
この際、第2の通路11bを通過した吸気は、端部プレート24の傾斜によって、弁体14の全開状態に比べて、上方側(すなわち、第1の通路11a側)に向かって流出し、燃焼室の頂部57側のルーフ56の内壁面56a(すなわち、燃焼室の上面)に沿って高い流速で燃焼室内部55へ流入することから、燃焼室内部55でタンブル比の高いタンブル流を発生させることができる。
【0047】
図9に示すように、従来の吸気装置100では、隔壁プレート112全体が吸気通路11に固定されており、隔壁プレート112の下流側端部112aを揺動させることができない。それ故、弁体114を全閉状態では、第2の通路11bを通過した吸気が、燃焼室のルーフ56の内壁面56aに沿わずに吸気バルブ52に当たってしまい流速が低下することから、タンブル比に影響を及ぼしていた。また、吸気バルブ52に当たる量を抑制するために隔壁プレート112の下流側端部の長さを短くすると、吸気流が拡散して流速が低下するという問題があった。
【0048】
本実施の形態の吸気装置10では、回動可能な端部プレート24により、第2の通路11bを通過する吸気流の向きを弁体14の全開状態と全閉状態とで変えることができ、特に、
図3に示すように、弁体14が全閉状態の場合に端部プレート24を傾斜位置へ移動させることにより、タンブル流発生時に、第2の通路11bから流出した吸気をルーフ56の内壁面56aに沿って流すことで、流速を高めてタンブル比を高めることができる。なお、
図4(a)に示すように、端部プレート24の延長線上には吸気バルブ52が存在すると(端部プレート24が初期位置の場合)、従来の吸気装置100と同様に、弁体14が全閉状態の場合の主流が吸気バルブ52に当たったり、分岐したりすることでタンブル比に影響を及ぼす可能性がある。また、
図4(b)に示すように、弁体14が全開状態の場合に、端部プレート24が傾斜位置にあると、主流の流れが阻害され、吸入量が減少する。
【0049】
なお、弁体14を全閉状態から全開状態へ移動させる場合には、モータによって弁シャフト30を開方向(
図5の反時計回り方向)へ回転移動させる。弁シャフト32が回転すると、これとともに第1のギヤ41が回転し、ベルト46を介して第3のギヤ43が第1のギヤ41と同じ方向に回転するとともに、中間シャフト40及び第4のギヤ44が回転する。また、第4のギヤ44に噛合う第2のギヤ42が、第1のギヤ41と逆方向に回転して、第2のギヤ42とともに隔壁シャフト20が回転する。これにより、隔壁シャフト20に取付けられた端部プレート24は、第2の通路11a側に回動して傾斜位置から初期位置となる。
【0050】
このように、吸気装置10は、動力伝達機構16によって弁シャフト30の回転力を隔壁シャフト20に伝達して、弁体14の開閉移動と隔壁プレート24の揺動とを連動させることができる。また、各ギヤ41,42,43,44のギヤ比を調整することにより、弁体14と端部プレート24の回転角度を適宜調整することができる。
【0051】
なお、図示していないが、動力伝達機構16は、第3のギヤ43と第1のギヤ41とを噛合させ、第4のギヤ44と第2のギヤ42とを噛合せずに無端状のベルトによって連動させる構成としてもよい。これにより、連動する弁シャフト30と隔壁シャフト20との回転方向を逆方向にすることができる。また、第1のギヤ41と第2のギヤ42の歯数を同じくして、第3のギヤ43又は第4のギヤ44の歯数を第1のギヤ41よりも多くすることにより、弁本体32の回転角度αに対して、端部プレート24の回転角度βが小さくなるように回転角度を調整してもよい。
【0052】
(第2の実施の形態)
次に、
図6-
図8を用いて本発明の第2の実施の形態の内燃機関の吸気装置10を説明する。なお、各図において、第1の実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
本実施の形態では、隔壁プレート12全体が、隔壁シャフト20によって回動可能に支持されている。
【0054】
図6及び
図7に示すように、隔壁プレート12は、平板状であって吸気通路11を上下に区画する。隔壁プレート12の長さ方向(吸気通路11の流れ方向)の中央部は、幅方向Wに延在する隔壁シャフト20に軸着されている。隔壁プレート12は、隔壁シャフト20とともに隔壁シャフト20の軸周りに回転して、上流側及び下流側の両端部が下第1の通路11a側及び第2の通路11b側に揺動可能である。
【0055】
隔壁シャフト20は、動力伝達機構16によって弁シャフト30と連動し、弁シャフト30と逆方向に回転する。なお、動力伝達機構16は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0056】
隔壁プレート12は、
図7に示すように、弁体14の全開状態において、吸気通路11の延在方向に沿って延在した初期位置となる。一方、弁体14の全閉状態では、
図8に示すように、隔壁プレート12の上流側端部12bが第2の通路11b側に所定角度回動し、下流側端部12aが第1の通路11a側に所定角度回動することによって、下流側端部が傾斜した傾斜位置となる。
【0057】
なお、弁体14の弁本体32の開位置と閉位置との間の回転角度αに対して、隔壁プレート12の初期位置と傾斜位置との間の回転角度βは小さく設定されている。一例として、回転角度αを60度、回転角度βを12度に設定することができる。
【0058】
本実施の形態の吸気装置10では、弁体14の全開状態において、吸気通路11を通る吸気は、
図7に示すように、第1の通路11a及び第2の通路11bの双方を通過可能であり、吸気通路11の内壁及び隔壁プレート12に沿って流れて吸気ポート50から燃焼室内部55へ流入する。
【0059】
また、弁体14の全閉状態では、
図8に示すように、第2の通路11bを通過する吸気が、傾斜する隔壁プレート12に沿って流れて、弁体14の全開状態に比べて、上方側(すなわち、第1の通路11a側)に向かって流出する。これにより、吸気は、吸気ポート50から燃焼室の頂部57側のルーフ56の内壁面56aに沿って高い流速で燃焼室内部55へ流入し、燃焼室内部55でタンブル比の高いタンブル流を発生させることができる。
【0060】
なお、各実施の形態において、隔壁プレート12の回転角度βは、適宜設定できるが、約3~20度の範囲であることが好ましく、約5~10度の範囲であることがより好ましい。
【0061】
なお、本発明は上述した実施の形態や変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、吸気通路11において、弁体14は、隔壁プレート12の下側に位置する第2の通路を開閉し、弁体14の全閉時に、上側の第1の通路を通過する吸気によってタンブル流を発生させてもよい。また、かかる場合に、弁体14の全閉状態において、第1の通路11aを通過した吸気が内燃室の上面に沿うように、隔壁プレート12の下流側端部を第1の通路11a側又は第2の通路11b側に傾斜させることができる。例えば、第1の通路11aが第2の通路11bよりも十分に狭かったり、吸気ポート50の開口面が燃焼室の下面側を向くようにルーフ56に対する吸気通路11の連結部の傾斜角度が大きくなったりしている場合には、弁体14の全閉時に、隔壁プレート12の下流側端部を第2の通路11b側に傾斜させることが好ましい。一方、第1の通路11aが広かったり、吸気ポート50の開口面が燃焼室の排気ポート59側を向くようにルーフ56に対する吸気通路11の連結部の傾斜角度が小さくなったりしている場合には、弁体14の全閉時に、隔壁プレート12の下流側端部を第1の通路11a側に傾斜させることが好ましい。
【0063】
また、動力伝達機構16の構造は、上述のものに限られず、複数のギヤを介して弁シャフト30の回転力を隔壁シャフト20に伝達可能なものであればよい。また、動力伝達機構16を設けずに、弁シャフト30と隔壁シャフト20とをそれぞれモータやアクチュエータ等の駆動手段により回転駆動させてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 吸気装置
11 吸気通路
11a 第1の通路
11b 第2の通路
12 隔壁プレート
14 弁体
16 動力伝達機構
20 隔壁シャフト
22 隔壁プレートの本体部
24 端部プレート
30 弁シャフト
32 弁本体
40 中間シャフト
41 第1のギヤ
42 第2のギヤ
43 第3のギヤ
44 第4のギヤ
50 吸気ポート
52 吸気バルブ
55 燃焼室内部
56 ルーフ
57 頂部
58 排気バルブ
59 排気ポート