(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】電気集塵機
(51)【国際特許分類】
B03C 3/70 20060101AFI20221024BHJP
B03C 3/49 20060101ALI20221024BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B03C3/70 Z
B03C3/49
F16J15/10 C
(21)【出願番号】P 2018205304
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】596032177
【氏名又は名称】住友金属鉱山エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】阿部 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】山内 邦高
(72)【発明者】
【氏名】平原 良一
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-019450(JP,U)
【文献】特開平04-244249(JP,A)
【文献】特開昭63-270521(JP,A)
【文献】特公昭47-046532(JP,B1)
【文献】西独国特許出願公開第02556546(DE,A)
【文献】西独国特許第01020005(DE,B)
【文献】西独国特許出願公開第00363563(DE,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0074156(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0047847(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-3/88
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵極が内包されている集塵極室と、
前記集塵極室の上方に、離間して配置されているか、或いは、両室間の気流を遮断可能な構造を介して隣接配置されている碍子室と、
前記碍子室に固設されていて、その下端部側の一部が前記碍子室の外部に露出している略円塔状の貫通碍子と、
一方の端部は前記貫通碍子を貫通する態様で該貫通碍子によって支持されていて、他方の端部は前記集塵極室内に挿入されている円柱状の吊りロッドと、
を備えてなる電気集塵機であって、
第1のリング状弾性シール部材と、第2のリング状弾性シール部材とを備え、
前記第1のリング状弾性シール部材は、
前記吊りロッドの外径と略同径の内径を有する環状体形状のOリングであって、前記貫通碍子の上面部を構成する上面プレートの中央に開口を有する吊りロッド挿入用貫通孔の内周面内に形成されているシール部材収納溝部の内部に嵌め込まれた状態で前記吊りロッドに巻装されていて、前記貫通碍子に形成されている吊りロッド挿入用貫通孔の孔内の
前記シール部材収納溝部の内部の面と前記吊りロッドの外周面との間において、前記吊りロッドの軸方向を長軸として楕円形に圧縮変形された状態で設置されていて、
前記第2のリング状弾性シール部材は、前記吊りロッド挿入用貫通孔の孔外において前記吊りロッドに巻装されていて、前記吊りロッド挿入用貫通孔の開口部の内周部分と該内周部分に対向する前記吊りロッドの外周部分との間の隙間に圧接された状態で設置されている、電気集塵機。
【請求項2】
前記貫通碍子は、前記碍子室の外部に露出している下端部側の一部が前記集塵極室内に挿入されている、
請求項1に記載の電気集塵機。
【請求項3】
前記シール部材収納溝部の上部側は、ボルトによって前記上面プレートに固定されている抑え板により封止されている、
請求項1又は2に記載の電気集塵機。
【請求項4】
前記第1のリング状弾性シール部材を形成する弾性材料がフッ素ゴムである、請求項1
から3のいずれかに記載の電気集塵機。
【請求項5】
前記第2のリング状弾性シール部材が、金属性の環状部材からなる座金部と、前記座金部よりも厚みの大きい環状弾性部材からなる密封用リップ部と、からなるシールワッシャーである、請求項1から
4のいずれかに記載の電気集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵機に関する。詳しくは、集塵極室と碍子室間のガスシール性能を向上させた電気集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気集塵機において、高電圧を印加する放電極を支持する碍子は、集塵極室とは、排ガスの通過を防ぐために設けられたガスシール構造(両室間の気密性を維持する構造)によって隔てられた碍子室内に置かれ、電気集塵機内部での被処理排ガスとの接触を避けている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、集塵極室から上昇して碍子室に入り込む排ガスを完全に遮断することは尚難しく、又、僅かな排ガスの流入であっても、それが一定期間継続されると碍子へのダストの付着に起因する絶縁不良が発生し、安定した荷電ができなくなる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、集塵極室と碍子室間のガスシール性能を向上させた電気集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、集塵極室と碍子室を結んで設置されている吊りロッドを支持する貫通碍子、それ自体の気密性の確保が不十分であることが、排ガス流入の原因となる場合があることに気付き、それまで看過されていた碍子自体の気密性能を十分に高い水準にまで向上させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
(1) 集塵極が内包されている集塵極室と、前記集塵極室の上方に、離間して配置されているか、或いは、両室間の気流を遮断可能な構造を介して隣接配置されている碍子室と、前記碍子室に固設されていて、その下端部側の一部が前記碍子室の外部に露出している略円塔状の貫通碍子と、一方の端部は前記貫通碍子を貫通する態様で該貫通碍子によって支持されていて、他方の端部は前記集塵極室内に挿入されている円柱状の吊りロッドと、を備えてなる電気集塵機であって、第1のリング状弾性シール部材と、第2のリング状弾性シール部材とを備え、前記第1のリング状弾性シール部材は、前記吊りロッドに巻装されていて、前記貫通碍子に形成されている吊りロッド挿入用貫通孔の孔内の内周面と前記吊りロッドの外周面との間に圧縮変形された状態で設置されていて、前記第2のリング状弾性シール部材は、前記吊りロッド挿入用貫通孔の孔外において前記吊りロッドに巻装されていて、前記吊りロッド挿入用貫通孔の開口部の内周部分と該内周部分に対向する前記吊りロッドの外周部分との間の隙間に圧接されている状態で設置されている、電気集塵機。
【0008】
(1)の電気集塵機は、碍子室への排ガスの流入経路となることが想定される円柱状の吊りロッド周囲の隙間空間内の複数箇所において、それぞれ異なる態様で、弾性シール部材が設置されている。これにより、集塵極室と碍子室間のガスシール性能を極めて高い水準にまで向上させることができる。又、弾性シール部材の上記配置態様により、各弾性シール部材の破損や劣化の時期が重なるリスクも低減させることができる。更に、弾性シール部材は、吊りロッドに巻き付けて設置する簡単な設置構造であるため、交換作業も容易であるため保守性にも優れる。以上により、(1)の電気集塵機によれば、集塵極室から上昇して碍子室に入り込む排ガスを、高い精度で、且つ、長期に亘って安定的に遮断することができる。
【0009】
(2) 前記第1のリング状弾性シール部材が、Oリングである、(1)に記載の電気集塵機。
【0010】
(2)の電気集塵機においては、第1のリング状弾性シール部材として、汎用的なシール材でもある「Oリング」を用いることとした。これにより、(1)に記載の電気集塵機におけるガスシール性能を極めて高い精度にまで向上させることができる。又、これを適切な期間毎に交換することにより、このように高度なガスシール性能を長期に亘って安定的に維持することもできる。
【0011】
(3) 前記第1のリング状弾性シール部材を形成する弾性材料がフッ素ゴムである、(1)又は(2)に記載の電気集塵機。
【0012】
(3)の電気集塵機においては、第1のリング状弾性シール部材を形成する弾性材料を、合成ゴムの中でも特断に優れた耐熱性、耐油性を有し、水素等を含有する各種の可燃性ガスに対しても十分な耐性を有するフッ素ゴムに特定した。これにより、(1)又は(2)の電気集塵機の奏しうる上記各効果を、様々な高温のガス、油性ダストを含む排ガス、及び、可燃性のガスを処理対象とする、より広範な分野の工業設備に適用した場合においても安定的に享受することができる。
【0013】
(4) 前記第2のリング状弾性シール部材が、金属性の環状部材からなる座金部と、前記座金部よりも厚みの大きい環状弾性部材からなる密封用リップ部と、からなるシールワッシャーである、(1)から(3)のいずれかに記載の電気集塵機。
【0014】
(4)の電気集塵機においては、第2のリング状弾性シール部材として、金属性の環状基材と環状弾性部材とからなる「シールワッシャー」を用いることとした。これにより、(1)から(3)のいずれかに記載の電気集塵機におけるガスシール性能を極めて高い精度にまで向上させることができる。又、これを適切な期間毎に交換することにより、このように高度なガスシール性能を長期に亘って安定的に維持することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、集塵極室と碍子室間のガスシール性能を向上させた電気集塵機を提供することができる。又、このガスシール性能を長期に亘って安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の電気集塵機の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の電気集塵機の集塵極室の内部の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1の電気集塵機における集塵極室と碍子室間のガスシール構造の説明に供する部分拡大断面図である。
【
図4】
図3のガスシール構造を構成する本発明にかかる貫通碍子の斜視図である。
【
図5】
図3のガスシール構造の更なる詳細の説明に供する部分拡大断面図である。
【
図6】
図5においてaで示す部分の部分拡大断面図である。
【
図7】本発明にかかるガスシール構造を構成する第1のリング状弾性シール部材の平面図及び断面図である。
【
図8】本発明にかかるガスシール構造を構成する第2のリング状弾性シール部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<電気集塵機の基本構造>
図1は、本発明の電気集塵機の概略構成を示す断面図である。又、
図1(A)及び
図1(B)は、電気集塵機10を相互に略直角の別々の方向からみた場合における断面図である。これらの図に示す通り、電気集塵機10は、上部ケーシング111、側部ケーシングとしても機能する集塵極32、下部ケーシング112、及び、架構114により、その外部構造の主たる部分が構成されている。
【0018】
又、上部ケーシング111、集塵極32、及び下部ケーシング112が、上方からこの順で組合されることにより電気集塵機10の筺体が構成されている。この筐体を、本明細書においては、「集塵極室(集塵極室200)」と称する。尚、電気集塵機10において、この集塵極室200は、その上方に配置される碍子室100とは、離間して配置されているか、或いは、両室間の気流を遮断可能な構造を介して隣接配置されている。又、集塵極室200は、架構114により、地上からも所定距離だけ上方に離間して固定されている。このような集塵極室200の材質としては、導電性のFRP(Fiber Reinforced Plastics)、ステンレス、又は、炭素鋼等を用いることができる。
【0019】
図2は、集塵極室200の内部の概略構成を示す斜視図である。この図に示すように、集塵極室200の内部は、上部グリッド31、集塵極32、下部グリッド33、吊りロッド2、放電線34、ウェイト35、上向きスプレーノズル36、及び、洗浄用配管37、下向きスプレーノズル38が設けられている。上部グリッド31、集塵極32、及び、下部グリッド33は、上方から、この順で相互に所定距離だけ離間して、水平方向に相互に略平行となるように配設されている。
【0020】
吊りロッド2は、
図3にも示す通り、円塔状の貫通碍子1の中心軸に沿って、これを貫通する態様で当該貫通碍子1によって支持されている。そして、吊りロッド2には、電源装置(図示せず)から供給される負極の直流高電圧(荷電電圧)が直接印加される。一方、放電線34には、当該負極の直流高電圧が、上部グリッド31を介して印加される。本実施形態においては、吊りロッド2は、上部グリッド31に接合されて、これを吊り下げるロッドとして配置されているが、集塵極室200内を貫通して電極ロッドとしての機能も果たしつつ、下部グリッド33に接合されて、更にこれを吊り下げる構造であってもよい。
【0021】
上記基本構造からなる電気集塵機10において、略円筒状の貫通碍子1は、碍子室100の内部に固設されていて、尚且つ、その下端部側の一部が碍子室100の外部(下部)に露出している。よって、従来のように貫通碍子及びこの貫通碍子を貫通している吊りロッドを含む構造部分の気密性が不十分であると、基本的に中空構造である貫通碍子の内部空間が、集塵極室200から碍子室100へのガス流路となる怖れがある。これに対して、本発明の電気集塵機10においては、本発明特有の構成からなる「ガスシール構造」を貫通碍子1に設置することにより、上記のガス流路を、高い精度で、且つ、長期に亘って安定的に遮断するものである。以下、この「ガスシール構造」の詳細について説明する。
【0022】
<電気集塵機のガスシール構造>
電気集塵機10のガスシール構造は、
図5及び
図6に示す通り、第1のリング状弾性シール部材13及び第2のリング状弾性シール部材16により、貫通碍子1の円塔状の本体11の上面部側の中央部近傍に形成されている。そして、このガスシール構造は、形状と機能が異なる2種のリング状弾性部材が、それぞれ吊りロッド2の異なる垂直位置に巻装されて構成されている。そして、これらの各リング状弾性部材が、それぞれ異なる態様で、吊りロッド挿入用貫通孔121の内部及びその開口部近傍部分においてそれぞれの部分でガス流路となりうる隙間を埋めるように構成されている。そして、以下に詳細を説明するこのガスシール構造は、保守性にも優れる簡易な構造でありながら、上述のガスの流れを、高水準の気密性で、尚且つ、長期に亘って高い安定性の下で遮断することができる。
【0023】
[第1のリング状弾性シール部材]
図5及び
図6に示す通り、上記の2種のリング状弾性部材のうちの一つである第1のリング状弾性シール部材13は、吊りロッド挿入用貫通孔121の孔内の内周面と吊りロッド2の外周面との間で、これらの両面から圧迫されながら挟持されていることにより、圧縮変形された状態で設置されている。これにより、第1のリング状弾性シール部材13は、上記両面の間の隙間を塞いで、この部分におけるガスの流れを遮断する。
【0024】
第1のリング状弾性シール部材13を構成する弾性シール部材として、各種の合成ゴム等の弾性材料からなる「Oリング」を好ましく用いることができる。「Oリング」とは、
図7に示すように、弾性を有する材量からなり、断面が略円形の環状体形状の無端リングであるシーリング部材である。電気集塵機10のガスシール構造を構成するための第1のリング状弾性シール部材として、吊りロッド2の外径と略同径の内径を有する「Oリング」を好ましく用いることができる。
【0025】
又、各種の「Oリング」の中でも、フッ素ゴムからなる「Oリング」を特に好ましく用いることができる。耐熱性や各種の可燃性ガスに対する耐性について優れるフッ素ゴムを第1のリング状弾性シール部材13の材料として選択することにより、可燃性ガスを処理対象とする電気集塵機10において、より長期に亘って安定的にガスシール性能を発現させることができる。
【0026】
「Oリング」に代表される第1のリング状弾性シール部材13は、より詳しくは、
図6に示すように、貫通碍子本体の上面部を構成する上面プレート12の中央に開口を有し、その内部に貫通孔として形成されている吊りロッド挿入用貫通孔121の内周面内に形成されているシール部材収納溝部132の内部に嵌め込まれた状態で吊りロッド2に巻装されている。シール部材収納溝部132の上部側については、
図6に示す通り、ボルト15によって上面プレート12に固定されている抑え板14により封止されている構造とすることが好ましい。この場合、第1のリング状弾性シール部材13の劣化が進んだ時に、抑え板14を取りはずすことにより、容易にこれを交換する作業を行うことができる。
【0027】
又、シール部材収納溝部132の内部に嵌め込まれている第1のリング状弾性シール部材13の上下のスペースには、シール部材収納溝部132の内部における第1のリング状弾性シール部材13の安定性を高めるために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐候性を有する樹脂からなるバックアップ材131が、シール部材収納溝部132の上記のスペースを充填する態様で埋め込まれていることが好ましい。
【0028】
そして、同じく
図6に示す通り、第1のリング状弾性シール部材13は、Oリングのように、その本来の断面形状が円形であるときに、吊りロッド2の軸方向を長軸として楕円形に変形した状態で、シール部材収納溝部132の内部に嵌め込まれていることが好ましい。この状態において、第1のリング状弾性シール部材13は、その弾性応力により、接触面の全周に亘って、均等且つ十分な大きさの圧力で、吊りロッド挿入用貫通孔121の孔内の内周面と吊りロッド2の外周面に押しつけられる。よって、この状態において、第1のリング状弾性シール部材13は、上記両面の間の気密性を高い精度で維持することができる。
【0029】
[第2のリング状弾性シール部材]
一方、
図5に示す通り、上記の2種のリング状弾性部材のうちの他の一つである第2のリング状弾性シール部材16は、吊りロッド挿入用貫通孔121の孔外において、吊りロッド挿入用貫通孔121の開口部の内周部分と、この部分に対向する吊りロッド2の外周部分との間の隙間に圧接されている状態で設置されている。これにより、第2のリング状弾性シール部材16は、この両部分の間の隙間を密閉してガスの流れを遮断する。
【0030】
第2のリング状弾性シール部材16としては、金属性の環状基材である座金部161と、座金部161の厚さ(W
1)よりも大きな厚さ(W
2)を有する環状の弾性部材からなる密封用リップ部162とが開口部を共有して一体化されている「シーリングワッシャー」を用いることが好ましい。「シーリングワッシャー」とは、
図8に示すように、座金部161に対して、軸方向に圧迫されて弾性変形することにより密閉性の向上に寄与する密封用リップ部162が軸方向に突出して形成されていることを特徴とするシーリング部材である。電気集塵機10のガスシール構造を構成するための第2のリング状弾性シール部材として、吊りロッド2の外径と略同径の内径を有する「シーリングワッシャー」を好ましく用いることができる。
【0031】
第2のリング状弾性シール部材16は、より詳しくは、
図5に示すように、貫通碍子本体の上面部を構成する一定の厚みを有する上面プレート12の中央に開口を有し、上記の厚み方向に沿った貫通孔として形成されている吊りロッド挿入用貫通孔121の開口部の周辺を被覆して載置される状態となるように吊りロッド2に巻装されている。そして、第2のリング状弾性シール部材16は、更に、座金17A、スプリング18、座金17B、及びナット19からなる締め付け機構により、上面プレート12に対して十分に強い圧力で押しつけられている。特に第2のリング状弾性シール部材16が上記構造からなるシーリングワッシャーである場合には、上記の締め付けによって弾性変形した密封用リップ部162が、その弾性応力により、圧接されている部分の全体に対して、均等且つ十分な大きさの圧力で押しつけられる。よって、この状態において、第2のリング状弾性シール部材16は、上記両部分の間の気密性を高い精度で維持することができる。
【0032】
尚、貫通碍子1は、
図4に示す通り、円塔状の本体11の下面側においても、吊りロッド2が挿入されている貫通孔の周縁におけるガスの流れを遮断するためのガスシール構造が形成されていることがより好ましい。この下面側のガスシール構造としては、例えば、当該周縁部分を被覆して、ドーナツ状の座金が、樹脂製のパッキンを介して、貫通碍子1の底面にボルト締め等の手段により固設されているガスシール構造を好ましい例として挙げることができる。
【0033】
そして、貫通碍子1は、
図3に示すように本体11の外縁から鍔状に外向きに突出するフランジ部113を、碍子室100の底面における貫通碍子本体を貫通させる固定孔の周囲で固定することにより、フランジ部113よりも下端部側の本体11の一部が前記集塵極室200内に挿入される態様で、碍子室100内に固設される。尚、この貫通碍子1の本体11を挿入する孔の周囲にも、コーキング処理等のガスシーリング処理を行なうことが好ましい。
【0034】
[電気集塵機におけるガスシール構造の作用効果]
電気集塵機10においては、以上説明した通り、2つのリング状弾性シール部材を備えてなる特有のガスシール構造を備えることにより、貫通碍子1とこれを貫通して設置されている吊りロッド2とが当接する部分における気密性が顕著に改善されている。これにより、従来の電気集塵機において看過されていた、碍子の内部空間を経由したガスの流れを、高度且つ安定した気密性により遮断することができる。
【0035】
又、このガスシール構造は、ガス流路となることが想定される複数の異なる箇所において、それぞれ異なる態様で弾性シール部材が設置されているので、各弾性シール部材の破損や劣化の時期が重なるリスクは極めて低く、各弾性シール部材の交換作業を適切な時期に計画的に行う等することにより、長期に亘って安全に電気集塵機を作動させることができる。
【0036】
そして、本発明は、集塵極を碍子で支持して垂下する構造を有する電気集塵機に広く適用可能なガスシール手段である。これらの電気集塵機において、碍子以外の部分に形成さされている従来の様々なガスシール手段と、本発明のガスシール手段と、を適宜必要に応じて組合せて実施することにより、従来のガスシール手段の欠点を補完して、これらの電気集塵機における碍子室100への排ガスの流入を防ぐためのガスシール性能を、著しく向上させることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 貫通碍子
11 本体(貫通碍子の本体)
111 上部ケーシング
112 下部ケーシング
113 フランジ部
114 架構
12 上面プレート
121 吊りロッド挿入用貫通孔
13 第1のリング状弾性シール部材
131 バックアップ材
132 シーリング材収納溝
14 抑え板
15 ボルト
16 第2のリング状弾性シール部材
161 座金部
162 密封用リップ部
17(17A、17B) 座金
18 スプリング
19 ナット
2 吊りロッド
31 上部グリッド
32 集塵極
33 下部グリッド
34 放電線
35 ウェイト
36 上向きスプレーノズル
37 洗浄用配管
38 下向きスプレーノズル
10 電気集塵機
100 碍子室
200 集塵極室