(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】空気供給装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/42 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
F04D29/42 M
F04D29/42 J
(21)【出願番号】P 2018222315
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】503116899
【氏名又は名称】株式会社IHI原動機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】猪又 諒祐
(72)【発明者】
【氏名】王 宝潼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 龍介
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-102994(JP,A)
【文献】実開昭55-095064(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 3/08
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
F23R 3/04
F23R 3/44
F23R 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を遠心方向に送るインペラと、
前記インペラの前記遠心方向の外方に設けられたディフューザ流路と、
前記ディフューザ流路の外方に設けられると共に、前記ディフューザ流路に連通されたガイド流路と、
内管と外管との間に形成され、且つ前記ガイド流路に連通された排出流路と、を備え、
前記排出流路は、前記外管の中心線に直交する断面視において、前記インペラの回転方向の正転側である後側領域と、前記回転方向の逆転側である前側領域と、を備え、
前記排出流路の少なくとも一部には、前記後側領域の流路面積よりも前記前側領域の流路面積の方が狭くなる流路規制領域が設けられている、空気供給装置。
【請求項2】
前記流路規制領域において、前記内管の図心は、前記外管の図心に対して、前記逆転側にずれて偏心している、請求項1記載の空気供給装置。
【請求項3】
前記外管の断面形状は楕円形である、請求項1または2記載の空気供給装置。
【請求項4】
前記流路規制領域には、連通孔を有し、前記排出流路の少なくとも一部を閉塞する流量規制板が設けられており、
前記前側領域は、前記流量規制板によって前記後側領域よりも多く閉塞されている、請求項1~3のいずれか一項記載の空気供給装置。
【請求項5】
前記流路規制領域において、一または複数の連通孔を有し、前記前側領域の少なくとも一部を閉塞する第1の流量規制板が設けられており、前記第1の流量規制板とは反対側に、一または複数の連通孔を有し、前記後側領域の少なくとも一部を閉塞する第2の流量規制板が設けられており、
前記第1の流量規制板が閉塞する領域は、前記後側領域よりも前記前側領域を多く含み、
前記第2の流量規制板が閉塞する領域は、前記前側領域よりも前記後側領域を多く含み、
前記第1の流量規制板の全ての連通孔の面積の合計は、前記第2の流量規制板の全ての連通孔の面積の合計よりも小さい、請求項1~3のいずれか一項記載の空気供給装置。
【請求項6】
前記第1の流量規制板の連通孔の数は、前記第2の流量規制板の連通孔の数よりも少ない、請求項5記載の空気供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インペラの回転によって燃焼器等に空気を供給する空気供給装置が知られている(特許文献1参照)。この種の空気供給装置では、例えば、インペラによって圧縮された空気がディフューザを介してスクロール等のガイド流路に供給される。ガイド流路には、円環状の排出流路が接続されている。ガイド流路に流入した空気は、インペラの回転方向に沿うように螺旋状に進行して排出流路に流入し、更に排出流路を通過して燃焼器に供給される。排出流路は、外管と、外管内に配置されて燃焼器の外壁を形成する内管との間に形成され、外管及び内管は、通常、同心円状に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空気供給装置において、ガイド流路を通過する空気は、排出流路の前側(すなわちインペラの回転方向の逆転側)及び周方向の側部から排出流路に流入する。更に、一部の空気は排出流路の後側に回り込み、排出流路の後側から排出流路内に流入する。この空気が排出流路の後側に回り込む際、排出流路の後側において空気の剥離が生じ易い。この剥離に起因して、排出流路の後側では空気の流量が低下する傾向がある。このような流量の低下が生じると、排出流路の周方向における流量分布が不均一となるおそれがある。この場合、燃焼器の性能が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、排出流路の周方向における流量分布の均一化を図ることにより、燃焼器の性能の低下を抑制できる空気供給装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る空気供給装置は、空気を遠心方向に送るインペラと、インペラの遠心方向の外方に設けられたディフューザ流路と、ディフューザ流路の外方に設けられると共に、ディフューザ流路に連通されたガイド流路と、内管と外管との間に形成され、且つガイド流路に連通された排出流路と、を備え、排出流路は、外管の中心線に直交する断面視において、インペラの回転方向の正転側である後側領域と、回転方向の逆転側である前側領域と、を備え、排出流路の少なくとも一部には、後側領域の流路面積よりも前側領域の流路面積の方が狭くなる流路規制領域が設けられている。
【0007】
この空気供給装置では、インペラによって遠心方向に送られた空気は、ディフューザ流路を介してガイド流路に流入する。ガイド流路に流入した空気は、インペラの回転方向に沿って螺旋状に進行し、排出流路に到達する。排出流路は、相対的に流量が増加し易い前側領域と流量が低下し易い後側領域とを備えており、排出流路の少なくとも一部には、前側領域の流路面積が後側領域の流路面積よりも狭い流路規制領域が設けられている。この流路規制領域が設けられていることによって、前側領域を流れる空気の流量と後側領域を流れる空気の流量との差を緩和でき、排出流路の周方向における流量分布の均一化を図ることができる。その結果、燃焼器の性能の低下を抑制することが可能となる。
【0008】
また、流路規制領域において、内管の図心は、外管の図心に対して、逆転側にずれて偏心していてもよい。この構成によれば、別途部材を追加することなく、簡易な構成によって流路規制領域を実現できる。
【0009】
また、外管の断面形状は楕円形であってもよい。この場合、後側領域の流路面積よりも前側領域の流路面積の方が一層狭くなるので、後側領域を流れる空気の流量と前側領域を流れる空気の流量との差を一層効果的に緩和することが可能となる。
【0010】
また、流路規制領域において、連通孔を有し、排出流路の少なくとも一部を閉塞する流量規制板が設けられており、前側領域は、流量規制板によって後側領域よりも多く閉塞されていてもよい。この場合、排出流路の流路規制領域に到達した空気が、相対的に前側領域を多く閉塞する流量規制板の連通孔を通過することで、前側領域の流路面積(すなわち空気が通過する当該連通孔の面積)が後側領域の流路面積よりも狭くなる。このように、流量規制板を設けるだけで、前述した流路規制領域を容易に実現することが可能となる。また、上記の構成によれば、既存の装置に流量規制板を組み込むことができ、汎用性が高い。
【0011】
また、流路規制領域において、一または複数の連通孔を有し、前側領域の少なくとも一部を閉塞する第1の流量規制板が設けられており、第1の流量規制板とは反対側に、一または複数の連通孔を有し、後側領域の少なくとも一部を閉塞する第2の流量規制板が設けられており、第1の流量規制板が閉塞する領域は、後側領域よりも前側領域を多く含み、第2の流量規制板が閉塞する領域は、前側領域よりも後側領域を多く含み、第1の流量規制板の全ての連通孔の面積の合計は、第2の流量規制板の全ての連通孔の面積の合計よりも小さくてもよい。この場合、排出流路の流路規制領域に到達した空気は、相対的に前側領域を多く閉塞する第1の流量規制板の連通孔と、相対的に後側領域を多く閉塞する第2の流量規制板の連通孔とをそれぞれ通過する。ここで、第1の流量規制板の全ての連通孔の面積の合計が、第2の流量規制板の全ての連通孔の面積の合計よりも小さいので、前側領域の流路面積は後側領域の流路面積よりも狭くなる。このように、第1及び第2の流量規制板を設けるだけで、前述した流路規制領域を容易に実現できる。また、上記の構成によれば、既存の装置に第1及び第2の流量規制板を組み込むことができ、汎用性が高い。
【0012】
また、第1の流量規制板の連通孔の数は、第2の流量規制板の連通孔の数よりも少なくてもよい。この場合、第1の流量規制板の全ての連通孔の面積の合計が、第2の流量規制板の全ての連通孔の面積の合計よりも小さくなる構成を簡易に実現できる。
【0013】
本開示の一形態に係る空気供給装置は、インペラと、インペラの遠心方向の外方に設けられたディフューザ流路と、ディフューザ流路の外方に設けられると共に、ディフューザ流路に連通されたガイド流路と、内管と外管との間に形成され、且つガイド流路に連通された排出流路と、を備え、外管の中心線に直交する断面と、インペラの回転軸及び外管の断面の図心を含む仮想面との交線を基準線として規定した場合に、断面上において、排出流路は、基準線で区分される二つの領域を備え、二つの領域のうち、一方の領域の流路面積よりも他方の領域の流路面積の方が狭くなる流路規制領域が設けられている。
【0014】
この空気供給装置では、例えば、ガイド流路に流入した空気の一部は、一方の領域から排出流路に流入し、残部は、一方の領域から他方の領域に回り込んで排出流路に流入する。排出流路の各領域から流入した空気は、排出流路の一部に設けられた流路規制領域に到達する。この流路規制領域では、相対的に流量が多くなり易い排出流路の一方の領域の流路面積の方が他方の領域の流路面積よりも狭くなっている。このため、一方の領域を流れる空気の流量と他方の領域を流れる空気の流量との差を緩和することができ、排出流路の周方向における流量分布の均一化を図ることができる。その結果、燃焼器の性能の低下を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本開示のいくつかの態様によれば、排出流路の周方向における流量分布の均一化を図ることにより、燃焼器の性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る空気供給装置の概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す空気供給装置の一部を拡大した部分側断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、第1変形例に係る排出管の断面図である。
【
図6】
図6は、第2変形例に係る排出管の断面図である。
【
図7】
図7は、第3変形例に係る排出管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。以下の説明において、「遠心方向D1」とは、回転軸線Lに直交する方向を示しており、特に「外方」とは回転軸線Lから離れる方向を意味している。
【0018】
図1に示される空気供給装置1は、例えば車両又は船舶等の内燃機関に適用されるものである。空気供給装置1は、遠心圧縮機2を備えており、遠心圧縮機2によって圧縮された空気Aを燃焼器3に供給する。遠心圧縮機2は、例えば多段構造であり、本実施形態では、例えば回転軸50に設けられた二段のインペラ5A,5Bと、インペラ5A,5Bを収納すると共に、燃焼器3が設けられたハウジング4とを備えている。
【0019】
ハウジング4は、主にインペラ5A,5Bを収納するアウターケーシング4aと、アウターケーシング4a内に配置され、燃焼器3が設置されると共に、回転軸50を支持するインナーケーシング4bとを備えている。
【0020】
アウターケーシング4aには、吸入口P1から引き込んだ空気Aをインペラ5Aに導入する吸入流路11と、インペラ5Aの周囲に配置された前段のディフューザ流路12と、ディフューザ流路12に接続されたリターン流路13とが設けられている。また、アウターケーシング4aには、インペラ5Bの周囲に配置された後段のディフューザ流路15と、ディフューザ流路15に接続されたガイド流路16とが設けられている。前段のディフューザ流路12には前段のガイドベーン20が設置されており、リターン流路13には、リターンガイドベーン(RGV)21が設置されている。後段のディフューザ流路15には後段のガイドベーン22が配置されており、ガイド流路16にはアウトレットガイドベーン(OGV)23が配置されている。なお、ガイドベーン22及びOGV23は、インナーケーシング4bに設けられている。
【0021】
インナーケーシング4bには、燃焼器3の外壁となる筒状の内胴部(内管の一例)7bと、燃焼器3から排出される燃焼ガスが通過する燃焼ガス流路18とが設けられている。一方で、アウターケーシング4aには、内胴部7bを囲み、ガイド流路16に連通された筒状の外胴部(外管の一例)7aが設けられている。内胴部7bと外胴部7aとの間には、ガイド流路16に接続され、燃焼器3に空気Aを供給する排出流路17が形成されている。また、排出流路17の終端部分には、螺旋流を形成するスワーラ24が設けられている。
【0022】
回転軸50の回転によってインペラ5A,5Bが回転する。回転するインペラ5Aは、吸入流路11を通じて外部の空気Aを吸入して圧縮し、遠心方向D1の外方である前段のディフューザ流路12に排出(圧送)する。次に、回転するインペラ5Bは、ディフューザ流路12及びリターン流路13を通過した空気Aを吸入して更に圧縮し、遠心方向D1の外方である後段のディフューザ流路15に排出(圧送)する。ディフューザ流路15を通過した空気Aは、ガイド流路16に進入する。ガイド流路16に進入した空気Aは、OGV23に案内されて流れ方向が整えられる。具体的に説明すると、空気Aは、回転軸線Lに平行な直進方向に対して、インペラ5A,5Bの回転方向R(
図3参照)側にずれた傾斜方向に向けて螺旋状に進行する。ガイド流路16内を螺旋状に進行する空気Aは、いずれ排出流路17に到達し、排出流路17内を通過する。排出流路17を通過する空気は、内胴部7bの上端に設けられた排出口P2を通過し、燃焼器3に供給される。
【0023】
燃焼器3は、排出口P2から受け入れた空気Aに燃料を混ぜ合わせて燃焼する。燃焼器3は、燃焼して得られた高温高圧の燃焼ガスBを燃焼ガス流路18を介してタービン(不図示)に供給する。タービンは、燃焼器3から供給された高温高圧の燃焼ガスBによって回転軸50を回転させ、その結果、インペラ5A,5Bが回転し、遠心圧縮機2での空気Aの圧縮が行われる。
【0024】
次に、
図2~
図4を参照して、排出流路17について具体的に説明する。なお、
図4は、排出流路17を形成する内胴部7bと外胴部7aとを模式的に示す断面図であるが、理解の容易のため、上面から排出流路17を見た(具体的には中心線L1の延在方向から見た)と仮定した場合のガイド流路16及びOGV23を二点鎖線で示している。排出流路17は、外胴部7aと内胴部7bとの間に形成された円管状を呈しており、排出流路17は、内胴部7bの上端に設けられた排出口P2(
図1参照)を介して燃焼器3である内胴部7b内に連通している。
【0025】
外胴部7aは、回転軸50に直交する位置(
図3において真上の位置)からずれて配置されており、更に、回転軸50から離れる外方に向けて直線状に延在する。その結果、外胴部7aの中心線L1の延長線は、回転軸線Lとは交差しない位置を通る。内胴部7bは、外胴部7a内で外胴部7aに対して間隔を空けて配置されており、更に外胴部7aに沿うように同一方向に延在している。外胴部7aの中心線L1に直交する断面S1において、外胴部7a及び内胴部7bのそれぞれの断面形状は、円形状を呈している(
図4参照)。
【0026】
排出流路17は、インペラ5A,5Bの回転方向Rを基準にした前側領域17aと後側領域17bとを備えている。具体的に説明すると、上記の回転軸線Lを含み、且つ上記の断面S1上の外胴部7aの図心C1を通る仮想平面S2と断面S1との交線は、前側領域17aと後側領域17bとの境界である基準線L2である。つまり、基準線L2を挟んでインペラ5A,5Bの回転方向Rの逆転側に位置する領域は、前側領域17aであり、インペラ5A,5Bの回転方向Rの正転側に位置する領域は、後側領域17bである。
【0027】
排出流路17には、空気Aが流れる排出流路17を規制する流路規制領域Raが設けられている。流路規制領域Raは、中心線L1の延在方向において排出流路17の少なくとも一部に設けられている。本実施形態では、流路規制領域Raは、中心線L1の延在方向における排出流路17の全体にわたって設けられている。流路規制領域Raは、
図4に示されるように、内胴部7bの図心C2は、図心C1を通る基準線L2に対して回転方向Rの逆転側にずれている。その結果、内胴部7bは、前側領域17aにおいて後側領域17bよりも外胴部7aに近接し、後側領域17bの流路面積よりも前側領域17aの流路面積の方が狭くなっている。
【0028】
更に、本実施形態では、内胴部7bの図心C2は、外胴部7aの図心C1に対して、OGV23側、つまりガイド流路16の入口側である偏心方向D2側にずれている。その結果、外胴部7aと内胴部7bとの距離(隙間)のうち、偏心方向D2において前側領域17a側に位置する距離d1が最小値となり、偏心方向D2に対して反対方向において後側領域17b側に位置する距離d2が最大値となる。距離d1に対する距離d2の割合は、例えば、1より大きく且つ5以下である。
【0029】
次に、本実施形態に係る空気供給装置1によって得られる作用、効果を説明する。空気供給装置1のように、ガイド流路16に対して交差するように円管状の排出流路17が延在している場合、ガイド流路16に流入した空気Aは、インペラ5A,5Bの回転方向Rに沿って螺旋状に進行する。そして、一部の空気Aは、排出流路17の前側領域17aから後側領域17bに回り込み、後側領域17bから排出流路17内に流入する。ここで、排出流路17が円管状を呈しているので、空気Aが後側領域17bに回り込む際に、後側領域17bにおいて空気Aの剥離が生じ易い。この剥離に起因して後側領域17bの流量が減少する傾向がある。従って、後側領域17bの流量に比べて前側領域17aの流量の方が相対的に多くなり易い。
【0030】
しかし、本実施形態に係る空気供給装置1では、相対的に流量が多くなり易い前側領域17aの流路面積の方が後側領域17bの流路面積よりも狭くなっている。具体的には、内胴部7bの図心C2が、外胴部7aの図心C1に対して偏心方向D2にずれることによって、前側領域17aの流路面積が狭くなると共に、後側領域17bの流路面積が広くなっている。これにより、前側領域17aの流量を減少させることができると共に、後側領域17bの流量を増加させることができる。その結果、前側領域17aを流れる空気Aの流量と後側領域17bを流れる空気Aの流量との差を緩和でき、排出流路17の周方向における流量分布の均一化を図ることができる。このような流量分布の均一化を図ることによって、燃焼器3の性能の低下を抑制することが可能となる。
【0031】
また、流路規制領域Raにおいて、内胴部7bの図心は、外胴部7aの図心に対して、回転方向Rの逆転側にずれて偏心している。この構成によれば、別途部材を追加することなく、簡易な構成によって、後側領域17bの流路面積よりも前側領域17aの流路面積の方が狭くなる流路規制領域Raを形成することができる。
【0032】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、
図5~
図7に示される各種の変形態様を採ってもよい。
【0033】
図5は、第1変形例に係る排出流路17Aを示している。第1変形例は、上記実施形態と比較し、排出流路17Aを形成する外胴部7cの形状が異なる。すなわち、第1変形例に係る排出流路17Aでは、外胴部7cの中心線に垂直な断面S1(
図3参照)における外胴部7cの断面形状は、楕円形状を呈している。外胴部7cの断面形状は、基準線L2と交差する方向を長軸方向としている。より具体的には、外胴部7cの断面形状の長軸方向は、図心C1に対する図心C2の偏心方向D2に沿っている。
【0034】
本実施形態では、内胴部7bの図心C2は、外胴部7cの図心C1に対して、OGV23側、つまりガイド流路16の入口側である偏心方向D2側にずれている。その結果、外胴部7aと内胴部7bとの距離(隙間)のうち、偏心方向D2において前側領域17a側に位置する距離d3が最小値となり、偏心方向D2に対して反対方向において後側領域17b側に位置する距離d4が最大値となる。距離d3に対する距離d4の割合は、例えば、1より大きく且つ5以下である。更に、本実施形態に係る外胴部7cの断面形状は、長軸方向が偏心方向D2に沿った楕円形状である。その結果、上記の実施形態に比べ、内胴部7bの図心C2を偏心方向D2にずらすことで、前側領域17aの流路面積と後側領域17bの流路面積との差はより大きくなる。
【0035】
図6は、第2変形例に係る排出流路17Bを示している。第2変形例と上記実施形態との相違点は、流量規制板30の有無である。すなわち、第2変形例に係る排出流路17Bでは、外胴部7a及び内胴部7bが同心円状に配置されると共に、流量規制板30が設けられている。流量規制板30は、半円環状を呈する板状の部材である。流量規制板30は、流路規制領域Raにおいて、排出流路17Bの少なくとも一部を閉塞している。より具体的に説明すると、半円環状の流量規制板30は、断面視において排出流路17Bの約半分の領域を覆っている。そして、流路規制領域Raにおいて、流量規制板30によって閉塞される領域は、後側領域17bよりも前側領域17aの方が大きくなっている。
【0036】
流量規制板30は、中心線L1に沿った方向に貫通する複数(本実施形態では31個)の連通孔30aを有する。各連通孔30aは、円形状を呈しているが、楕円形状や多角形状、その他の不規則な形状であっても良い。各連通孔30aの面積(大きさ)は、互いに同じである。前側領域17aの流路面積の合計は、後側領域17bの流路面積の合計よりも小さい。前側領域17aの流路面積とは、前側領域17aにおいて空気Aが実際に通過する流路面積(空気Aが連通孔30aを通過する場合は、連通孔30aの面積)を示している。また、後側領域17bの流路面積とは、後側領域17bにおいて空気Aが実際に通過する流路面積(空気Aが連通孔30aを通過する場合は、連通孔30aの面積)を示している。
【0037】
従って、前側領域17aの流路面積は、後側領域17bの流路面積よりも狭くなる。このように、流量規制板30を設けるだけで、流路規制領域Raを容易に形成することが可能となる。また、本変形例の構成によれば、既存の装置に流量規制板30を組み込むことができ、汎用性が高い。なお、流量規制板30は、半円環状に限らず、他の形状を有してもよい。また、流量規制板30は、複数の部材に分割されていてもよい。また、流量規制板30において、各連通孔30aの面積、形状、数、及び配置は、適宜変更である。例えば、各連通孔30aの面積は、互いに異なっていてもよく、各連通孔30aの形状は、互いに異なっていてもよい。
【0038】
図7は、第3変形例に係る排出流路17Cを示している。第3変形例と上記実施形態との相違点は、流量規制板31,32の有無である。すなわち、第3変形例に係る排出流路17Cでは、外胴部7a及び内胴部7bが同心円状に配置されると共に、第1の流量規制板31及び第2の流量規制板32が設けられている。第1の流量規制板31及び第2の流量規制板32のそれぞれは、半円環状を呈する板状の部材である。第1の流量規制板31は、流路規制領域Raにおいて前側領域17aの少なくとも一部を閉塞しており、第2の流量規制板32は、流路規制領域Raにおいて後側領域17bの少なくとも一部を閉塞している。
【0039】
より具体的に説明すると、第1の流量規制板31は、主に前側領域17aを閉鎖しており、従って、第1の流量規制板31によって閉鎖される領域は、後側領域17bよりも前側領域17aの方が大きくなっている。また、第2の流量規制板32は、主に後側領域17bを閉鎖しており、従って、第2の流量規制板32によって閉鎖される領域は、前側領域17aよりも後側領域17bの方が大きくなっている。
【0040】
第1の流量規制板31は、中心線L1に沿った方向に貫通する複数(本実施形態では16個)の連通孔31aを有する。各連通孔31aは、円形状を呈しているが、楕円形状や多角形状、その他の不規則な形状であっても良い。各連通孔31aの面積(大きさ)は、互いに同じである。また、第2の流量規制板32は、中心線L1に沿った方向に貫通する複数(本実施形態では31個)の連通孔32aを有する。各連通孔32aは、円形状を呈しているが、楕円形状や多角形状、その他の不規則な形状であっても良い。各連通孔32aの面積(大きさ)は、互いに同一である。各連通孔32aの面積は、各連通孔31aの面積と同一である。第1の流量規制板31の全ての連通孔31aの面積の合計は、第2の流量規制板32の全ての連通孔32aの面積の合計よりも小さい。全ての連通孔31aの面積の合計に対する、全ての連通孔32aの面積の合計の割合は、例えば1よりも大きく且つ5以下である。また、連通孔32aの数は、連通孔31aの数よりも多い。
【0041】
排出流路17に流入して第1の流量規制板31に到達した空気Aは、相対的に前側領域17aを多く閉塞する第1の流量規制板31の連通孔31aを通過すると共に、相対的に後側領域17bを多く閉塞する第2の流量規制板32の連通孔32aを通過する。ここで、第1の流量規制板31の全ての連通孔31aの面積の合計が、第2の流量規制板32の全ての連通孔32aの面積の合計よりも小さいので、前側領域17aの流路面積が後側領域17bの流路面積よりも狭くなる。
【0042】
前側領域17aの流路面積とは、前側領域17aにおいて空気Aが実際に通過する流路面積(空気Aが通過する連通孔31a,32aの面積)を示している。後側領域17bの流路面積とは、後側領域17bにおいて空気Aが実際に通過する流路面積(空気Aが通過する連通孔31a,32aの面積)を示している。このように、第1の流量規制板31及び第2の流量規制板32を設けるだけで、流路規制領域Raを容易に形成することができる。また、本変形例の構成によれば、既存の装置に第1の流量規制板31及び第2の流量規制板32を組み込むことができ、汎用性が高い。
【0043】
なお、第1の流量規制板31及び第2の流量規制板32のそれぞれは、半円環状に限らず、他の形状を有してもよい。また、第1の流量規制板31及び第2の流量規制板32のそれぞれは、複数の部材に分割されていてもよい。また、各連通孔31aの面積、形状、数、及び配置は、適宜変更であり、各連通孔32aの面積、形状、数、及び配置は、適宜変更である。例えば、各連通孔31aの面積は、互いに異なっていてもよく、各連通孔31aの形状は、互いに異なっていてもよい。同様に、各連通孔32aの面積は、互いに異なっていてもよく、各連通孔32aの形状は、互いに異なっていてもよい。
【0044】
また、各連通孔31aの面積と各連通孔32aの面積とは、互いに異なっていてもよい。例えば、各連通孔31aの面積が各連通孔32aの面積よりも小さくてもよく、大きくてもよい。各連通孔31aの面積が各連通孔32aの面積よりも大きい場合、例えば、連通孔32aの数を連通孔31aの数よりも更に多くすることによって、前側領域17aの流路面積を後側領域17bの流路面積よりも狭くすることができる。また、第1の流量規制板31の連通孔31aの数は、第2の流量規制板32の連通孔32aの数と同一であってもよい。この場合、各連通孔31aの面積を各連通孔32aの面積よりも小さくすることによって、前側領域17aの流路面積を後側領域17bの流路面積よりも狭くすることが可能となる。
【0045】
本開示は、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態及び各変形例を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。外胴部の断面は、円形状又は楕円形状を呈していたが、これらの形状に限られず、例えば三角形状、四角形状、又は五角形状等の多角形状を呈していてもよく、その他の不規則な形状を呈しても良い。また、外管の中心線は、回転軸に直交する位置からずれて配置されていたが、回転軸に直交する位置を通るように配置されていてもよい。また、遠心圧縮機は多段構造を有していたが、これに限られず、他の構造を有していてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 空気供給装置
2 遠心圧縮機
3 燃焼器
4 ハウジング
5A,5B インペラ
7a,7c 外胴部
7b 内胴部
11 吸入流路
12 ディフューザ流路
13 リターン流路
15 ディフューザ流路
16 ガイド流路
17,17A,17B,17C 排出流路
17a 前側領域
17b 後側領域
30 流量規制板
30a,31a,32a 連通孔
31 第1の流量規制板
32 第2の流量規制板
50 回転軸
A 空気
B 燃焼ガス
C1,C2 図心
D1 遠心方向
D2 偏心方向
L 回転軸線
L1 中心線
L2 基準線
R 回転方向
Ra 流路規制領域
S1 断面
S2 仮想平面