(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】分岐サドル継手
(51)【国際特許分類】
F16L 41/08 20060101AFI20221024BHJP
F16L 41/02 20060101ALI20221024BHJP
F16L 47/03 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
F16L41/08
F16L41/02
F16L47/03
(21)【出願番号】P 2018230698
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】檜物 友和
(72)【発明者】
【氏名】青木 清史
(72)【発明者】
【氏名】大室 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】橋津 健二
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-287185(JP,A)
【文献】特開平11-170372(JP,A)
【文献】実開昭49-110821(JP,U)
【文献】特開2007-260937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/08
F16L 41/02
F16L 47/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために前記本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手であって、
分岐孔を有し、断面が円弧形状のサドル部と、
前記分岐孔の周縁部から立ち上がる分岐管部とを含み、
前記サドル部は、その内周面側に前記分岐孔を中心にして電熱線が埋設された融着部と前記融着部よりも端部側の非融着部とを含み、
前記サドル部の先端は、前記本管の半円周を超過せず、
前記サドル部の前記円弧形状における端部には、
前記融着部よりも剛性が小さい易変形部が設けられ
、
前記易変形部は、前記非融着部のみに設けられ、
前記易変形部は、前記分岐管部および前記融着部と同一の合成樹脂で一体成形されていることを特徴とする、分岐サドル継手。
【請求項2】
前記易変形部は、前記サドル部の前記円弧形状における中心角が70度を超える範囲のみに設けられていることを特徴とする、請求項
1に記載の分岐サドル継手。
【請求項3】
前記易変形部は、端部側の厚みを
前記融着部と前記非融着部との境界の厚みよりも小さくされていることを特徴とする、請求項1
または請求項
2に記載の分岐サドル継手。
【請求項4】
前記易変形部における厚みは、
前記融着部と前記非融着部との境界から端部側へ向けて徐々に小さくなることを特徴とする、請求項
3に記載の分岐サドル継手。
【請求項5】
前記易変形部は、内周面または外周面に、前記本管の軸方向または周方向に沿った溝部が設けられていることを特徴とする、請求項1~請求項
3のいずれかに記載の分岐サドル継手。
【請求項6】
前記溝部は、前記サドル部の剛性が
前記融着部と前記非融着部との境界から端部側へ向けて徐々に小さくなるように設けられることを特徴とする、請求項
5に記載の分岐サドル継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は分岐サドル継手に関し、特に、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外周面に電気融着接合される、分岐サドル継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製の水道配水管の本管から分岐を取り出すための管の分岐方法として、EF(ElectroFusion)サドル継手およびEFサドル付分水栓などの電気融着接合タイプの分岐サドル継手を使用した方法が公知である。
このような電気融着接合タイプの分岐サドル継手における融着不良を防止するためには、通電作業中において本管の外周面とサドル部の内周面とを適切に密着させた状態で固定しておくことが重要である。このため、本管の外周面に対してサドル部の内周面をより安定的に密着させて固定できる分岐サドル継手が望まれる。たとえば、特開2018-105371号公報(特許文献1)は、このような分岐サドル継手を開示する。
【0003】
この特許文献1に開示された分岐サドル継手は、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために前記本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手であって、分岐孔を有する湾曲板状のサドル部および前記分岐孔の周縁部から立ち上がる分岐管部を備え、前記分岐サドル継手を前記本管に載置した状態において前記サドル部の内周面と前記本管の外周面との間に隙間が形成されるように、前記サドル部は、前記本管の外径よりも小さい内径を有する。
【0004】
この分岐サドル継手によると、サドル部の内周面の曲率半径は、本管の外周面の曲率半径よりも小さく、分岐サドル継手を本管に載置した状態では、サドル部の内周面と本管の外周面との間に隙間が形成される。この分岐サドル継手のサドル部と本管とを融着接合するときには、サドルクランプ等の固定具を用いて、サドル部を押し広げるようにして本管に密着させて固定する。このとき、拡径方向に変形されたサドル部には、縮径方向(つまり本管を押圧する方向)に復元力が作用して、サドル部が本管を抱き込む状態となる。サドル部を押し広げるようにして本管に密着させたときに、サドル部が本管を抱き込む状態となるので、本管に対してサドル部を安定的に密着させて固定することができ、本管とサドル部とを適切に融着接合できる。
【0005】
なお、この特許文献1に開示された分岐サドル継手は、限定されるものではないが、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の熱融着可能な合成樹脂によって形成される本管から分岐管を取り出す際に、本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手であって、外径250mm(呼び径200)程度までの水道配水管の本管からの分岐に好ましく使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような分岐サドル継手が使用される本管としては、特許文献1が対象としている水道配水管だけに限らない。たとえば、工場・プラントの各種配管(工業用水、井戸水、河川水、海水・塩水、冷却水、各種薬液、圧縮空気、各種排水、雨水・中水、汚水・汚泥)、小水力発電設備配管、農業用水配管、圧送下水配管、融雪・消雪設備配管、消火設備配管等の多岐の用途に亘っている。このような配管の中には、呼び径200を越えるものも多くある。特許文献1に開示された分岐サドル継手を、このような大きな外径の本管に採用すること自体は可能である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された分岐サドル継手におけるサドル部の剛性はその位置によらず同じであって、そのサドル部を押し広げるようにして本管に密着させて固定するために、比較的大きな押付力が必要となり作業性が好ましくない可能性がある。特に、特許文献1に開示された分岐サドル継手を上述した用途における外径が大きい本管に使用すると、大きな押付力が必要となり作業性がさらに好ましくない可能性がある。
【0009】
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手であって、作業性の良好な分岐サドル継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る分岐サドル継手は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係る分岐サドル継手は、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために前記本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手であって、分岐孔を有し、断面が円弧形状のサドル部と、前記分岐孔の周縁部から立ち上がる分岐管部とを含み、前記サドル部の前記円弧形状における端部には、中央部よりも剛性が小さい易変形部が設けられたことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記サドル部は、その内周面側に前記分岐孔を中心にして電熱線が埋設された融着部と前記融着部よりも前記端部側の非融着部とを含み、前記易変形部は、前記非融着部のみに設けられているように構成することができる。
さらに好ましくは、前記易変形部は、前記サドル部の前記円弧形状における中心角が70度を超える範囲のみに設けられているように構成することができる。ここで、本管と分岐サドル継手との充分な融着性能を得るためには中心角70度を超える範囲のみに易変形部が設けられることが好ましく、分岐サドル継手が小口径の場合などで融着性能が充分であれば70度より小さくても構わず中心角70度以下の範囲にも易変形部が設けられることになる。
【0012】
さらに好ましくは、前記易変形部は、端部側の厚みを中央部側よりも小さくされているように構成することができる。
さらに好ましくは、前記易変形部における厚みは、中央部側から端部側へ向けて徐々に小さくなるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記易変形部は、内周面または外周面に、前記本管の軸方向または周方向に沿った溝部が設けられているように構成することができる。
さらに好ましくは、前記溝部は、前記サドル部の剛性が中央部側から端部側へ向けて徐々に小さくなるように設けられるように構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手であって、作業性の良好な分岐サドル継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る分岐サドル継手100を使用して本管200から分岐を取り出す配管構造を示す正面図(半断面図)である。
【
図2】(A)
図1に示した分岐サドル継手100の平面図(上面図)であって、(B)その正面図(半断面図)であって、(C)その側面図(半断面図)である。
【
図3】
図1に示した分岐サドル継手100の易変形部112を説明するための正面断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る分岐サドル継手101の平面図(上面図)である。
【
図5】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る分岐サドル継手102の平面図(上面図)である。
【
図6】本発明の実施の形態の第3の変形例に係る分岐サドル継手103の正面断面拡大図(
図2(B)の領域6部分)である。
【
図7】本発明の実施の形態の第4の変形例に係る分岐サドル継手104の正面断面拡大図(
図2(B)の領域7部分)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る分岐サドル継手100について、図面に基づき詳しく説明する。
図1を参照して、この分岐サドル継手100は、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の熱融着可能な合成樹脂によって形成される本管200から分岐管(図示せず)を取り出す際に、本管200の外周面に電気融着接合されるEFサドル継手である。この分岐サドル継手100は、本管はたとえば水道配管に限定されるものではなく上述した多岐の用途に用いられる本管に使用されるとともに、既設配管からの分岐、新規配管からの分岐、配管使用状態における分岐、配管未使用状態における分岐に用いることも可能である。
【0016】
以下、
図1~
図3を参照して、分岐サドル継手100の全体構成について説明する。これらの図に示すように、分岐サドル継手100は、本管200と同種の熱融着可能な合成樹脂によって一体的に形成されるサドル部110および分岐管部150を備える。本実施の形態においては、サドル部110および分岐管部150のそれぞれは、ポリエチレンによって形成される。
【0017】
この分岐サドル継手100におけるサドル部110は、所定の内径(曲率半径)を有する断面が円弧形状の湾曲板状体であり、その中央部には、平面視略真円形の分岐孔110Hが形成される。分岐サドル継手100は、その分岐孔110Hの周縁部からサドル部110の径方向外側に向かって立ち上がる分岐管部150を備える。特徴的であるのは、サドル部110の円弧形状における端部には、中央部よりも剛性が小さい易変形部112が設けられていることである。
【0018】
このサドル部110は、その内周面側に分岐孔110Hを中心にして電熱線114が埋設された融着部110Xと融着部110Xよりも端部側の非融着部110Yとを含み、易変形部112は、非融着部110Yのみに設けられている。別の観点では、この易変形部112は、サドル部110の円弧形状における中心角θが70度を超える範囲のみに設けられている。ここで、本管と分岐サドル継手との充分な融着性能を得るためには中心角θが70度を超える範囲のみに易変形部112が設けられることが好ましく、分岐サドル継手が小口径の場合などで融着性能が充分であれば70度より小さくても構わず中心角θが70度以下の範囲にも易変形部112が設けられることになる。
【0019】
さらに、この易変形部112は、端部側の厚みt(2)を中央部側の厚みt(1)よりも小さくされている。また、この易変形部112における厚みは、中央部側から端部側へ向けて徐々に小さくなるように形成することも好ましい。なお、徐々に小さくなる場合における変化率は一定であっても、変化率が変化しても、構わない。
このような特徴を備えた分岐サドル継手100についてさらに詳しく説明する。
【0020】
電気融着接合のための電熱線114は、サドル部110の内周面側、すなわち本管200との接合面側に、分岐孔110Hを中心にして渦巻き状または葛折り状などの任意の形状に配置されている。この電熱線114は、サドル部110の円弧形状における中心角θが70度の範囲において設けられており、十分な融着性能を発現している。なお、上述したように、分岐サドル継手が小口径の場合などで融着性能が充分であれば、中心角θが70度以下の範囲までしか電熱線114が設けられていなくても構わない。
【0021】
電熱線114の両端部は、サドル部110の外周面から突出または内面に埋め込まれるように形成される電源接続端子120に接続される。電源接続端子120は、サドル部110の軸方向両端部に配置されており、また、端子カバー122で覆われている。この電源接続端子120を電源に接続して、電熱線114に電流を流すことによって、サドル部110および本管200の接合面の樹脂が加熱溶融される。また、サドル部110の外周面には、電源接続端子120の内側に、サドル部110および本管200の融着面どうしが融着したことを示すインジケータ124が形成される。サドル部110には、電熱線114の内側および外側(電熱線114を挟んでサドル部110の円弧形状における中央部側および端部側)に、融着時における溶融樹脂のはみ出しを防止するためコールドゾーンが形成されている。
【0022】
易変形部112は、サドル部110の円弧形状における中心角θが70度を超える範囲のみ、すなわち、電熱線114が存在しない範囲であって上述した端部側のコールドゾーンでもある非融着部110Yのみに設けられている。なお、上述したように、分岐サドル継手が小口径の場合などで融着性能が充分であれば中心角θが70°以下の範囲に易変形部112が設けられていても構わない。より具体的には、易変形部112は、端部側の厚みt(2)を中央部側の厚みt(1)よりも小さく形成したり、易変形部112における厚みを中央部側から端部側へ向けて徐々に小さくなるように形成したりしている。ここで、易変形部112は、このような形状によるものに限定されず、サドル部110の円弧形状における端部の剛性が中央部の剛性よりも小さい作用が発現すれば(後述する変形例を含めて)どのような形状であっても構わない。
【0023】
次に、このような分岐サドル継手100を用いて、本管200から分岐を取り出す管の分岐方法について説明する。
まず、本管200に対して分岐サドル継手100を電気融着接合する。具体的には、本管200の所望の位置に分岐サドル継手100を載置し、たとえば、特許文献1に示すサドル押え部およびチェーンクランプ部を備えるサドルクランプ等の固定具を使用して、サドル部110の外周面を上から押さえ付け、本管200の外周面とサドル部110の内周面とを密着させて固定する。そして、サドル部110内に埋設した電熱線114に通電して発熱させ、本管200の外周面とサドル部110の内周面とを融着接合する。なお、サドル部110の分岐孔110Hの位置および大きさに対応する本管200には、適宜なタイミングで穿孔されているものとする。これによって、本管200から分岐サドル継手100を介して管が分岐される。
【0024】
ここで、上述したように、本管200と分岐サドル継手100との融着不良を防止するためには、通電作業中において、本管200の外周面とサドル部110の内周面とを適切に密着させた状態で固定しておくことが重要である。
そこで、この分岐サドル継手100においては、サドル部110の円弧形状における端部には、中央部よりも剛性が小さい易変形部112が設けられている。すなわち、サドル部110は中央部よりも端部の剛性が小さく変形しやすく形成されている。このため、サドル部110を本管200に密着させる場合においてサドル部110の端部側がより容易に変形して本管200の外周面に密着しやすくすることができる。その結果、本管200から分岐サドル継手100を介して分岐を取り出す作業において、本管200の外周面とサドル部110の内周面とを密着させるときに大きな押付力を必要とせず作業性が好ましい。
【0025】
以上のように、この分岐サドル継手100によると、サドル部110の円弧形状における端部には、中央部よりも剛性が小さい易変形部112が設けられているので、サドル部110を本管200に密着させるときに、大きな押付力を必要としないので作業性が好ましい。したがって、本管200に対してサドル部110を安定的に密着させて固定することができ、本管200とサドル部110とを適切に融着接合できる。
【0026】
<変形例>
以下において、
図4~
図7を参照して、本発明の実施の形態の第1~第4の変形例に係る分岐サドル継手について説明する。なお、以下において説明する分岐サドル継手101~104は、上述した実施の形態における分岐サドル継手100が備えた易変形部112(サドル部110の円弧形状における端部の剛性が中央部の剛性よりも小さい)を実現しているサドル部110A~110Dの形状が異なる点のみの差異であって、それ以外は上述した実施の形態に係る分岐サドル継手100と同じである。上述した実施の形態と同じ構造については、以下の変形例において同じ符号を付している。それらについての説明は、上述した説明と重複するために、ここでは繰り返して説明しない。なお、以下に示す変形例と上述した実施の形態(中央部側の厚みt(1)>端部側の厚みt(2))とを組み合わせて易変形部112を実現しても構わない。たとえば、以下に示す、第1~第2の変形例については上述した実施の形態の厚み変化(中央部側の厚みt(1)>端部側の厚みt(2))を組み合わせずに易変形部112を実現したものであるが上述した実施の形態の厚み変化を組み合わせても構わず、第3~第4の変形例については上述した実施の形態の厚み変化を組み合わせて易変形部112を実現したものであるが上述した実施の形態の厚み変化を組み合わせなくても構わない。
【0027】
以下において説明する第1~第4の変形例に係る分岐サドル継手のおける易変形部112は、サドル部の内周面または外周面に、本管200の軸方向または周方向に沿った溝部が設けられている。さらに、この溝部は、サドル部の剛性が中央部側から端部側へ向けて徐々に小さくなるように設けられることも好ましい。
【0028】
・第1の変形例
図4を参照して、第1の変形例に係る分岐サドル継手101について説明する。この分岐サドル継手101は、サドル部110Aの外周面に、本管200の周方向に沿った溝部112Aを備える。なお、この溝部112Aは、非融着部110Yのみであって、サドル部110Aの円弧形状における中心角θが70度を超える範囲のみに設けられている点および分岐サドル継手が小口径の場合などで融着性能が充分であれば中心角θが70°以下の範囲に易変形部112(ここでは溝部112A)が設けられていても構わない点については、上述した実施の形態に係る分岐サドル継手100と同じである。
【0029】
このように溝部112Aを設けることにより、サドル部110Aの円弧形状における端部の剛性が中央部の剛性よりも小さい易変形部112を実現している。なお、この溝部112Aの深さおよび/または幅をサドル部110Aの中央部側から端部側へ向けて、徐々に深くしたり徐々に広くしたりすることにより、サドル部110Aの剛性が中央部側から端部側へ向けて徐々に小さくなるように易変形部112を設けることができる。
【0030】
・第2の変形例
図5を参照して、第2の変形例に係る分岐サドル継手102について説明する。この分岐サドル継手102は、サドル部110Bの内周面に、本管200の周方向に沿った溝部112Bを備える。なお、この溝部112Bが設けられる位置については、サドル部110Bの表裏(外周面/内周面)を除いて、第1の変形例に係る分岐サドル継手101のサドル部110Aの溝部112Aと同じである。
このように溝部112Bを設けることにより、サドル部110Bの円弧形状における端部の剛性が中央部の剛性よりも小さい易変形部112を実現している。なお、この溝部112Bの深さおよび/または幅を変化させる点については、第1の変形例に係る分岐サドル継手101のサドル部110Aの溝部112Aと同じである。
【0031】
・第3の変形例
図6を参照して、第3の変形例に係る分岐サドル継手103について説明する。この分岐サドル継手103は、サドル部110Cの外周面に、本管200の軸方向に沿った溝部112Cを備える。なお、この溝部112Cは、非融着部110Yのみであって、サドル部110Cの円弧形状における中心角θが70度を超える範囲のみに設けられている点および分岐サドル継手が小口径の場合などで融着性能が充分であれば中心角θが70°以下の範囲に易変形部112(ここでは溝部112C)が設けられていても構わない点については、上述した実施の形態に係る分岐サドル継手100と同じである。
【0032】
このように溝部112Cを設けることにより、サドル部110Cの円弧形状における端部の剛性が中央部の剛性よりも小さい易変形部112を実現している。なお、この溝部112Cの深さおよび/または幅をサドル部110Cの中央部側から端部側へ向けて、徐々に深くしたり徐々に広くしたりすることにより、サドル部110Cの剛性が中央部側から端部側へ向けて徐々に小さくなるように易変形部112を設けることができる。さらに、この溝部112Cを設ける間隔をサドル部110Cの中央部側から端部側へ向けて徐々に狭くする(溝をより多く設ける)ことにより、サドル部110Cの剛性が中央部側から端部側へ向けて徐々に小さくなるように易変形部112を設けることができる。
【0033】
・第4の変形例
図7を参照して、第4の変形例に係る分岐サドル継手104について説明する。この分岐サドル継手104は、サドル部110Dの
内周面に、本管200の軸方向に沿った溝部112Dを備える。なお、この溝部112Dが設けられる位置については、サドル部110Bの表裏(外周面/内周面)を除いて、第3の変形例に係る分岐サドル継手103のサドル部110Cの溝部112Cと同じである。
【0034】
このように溝部112Dを設けることにより、サドル部110Dの円弧形状における端部の剛性が中央部の剛性よりも小さい易変形部112を実現している。なお、この溝部112Dの深さ、幅および間隔を変化させる点については、第3の変形例に係る分岐サドル継手103のサドル部110Cの溝部112Cと同じである。
以上のようにして、第1~第4の変形例に係る分岐サドル継手101~104によっても、サドル部110A~110Dの円弧形状における端部には、中央部よりも剛性が小さい易変形部112が溝部112A~112Dにより実現されているので、サドル部を本管200に密着させるときに、大きな押付力を必要としないので作業性が好ましい。したがって、本管200に対してサドル部を安定的に密着させて固定することができ、本管200とサドル部とを適切に融着接合できる。
【0035】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
このような変更の一例として、易変形部112を溝部ではなく穴部で実現することが挙げられる。さらに、この穴部の径および/または穴部を設ける間隔をサドル部の中央部側から端部側へ向けて徐々に大きくしたり、狭くしたりする(穴をより多く設ける)ことにより、サドル部の剛性が中央部側から端部側へ向けて徐々に小さくなるように易変形部を設けることができる。
【0036】
ここで、上述した実施の形態および変形例に係る分岐サドル継手によると、サドル部の円弧形状における端部の剛性が中央部の剛性よりも小さい易変形部を備えるために、サドル部を本管に密着させるときに大きな押付力を必要としない。このため、1つのサイズのサドル部で、外径の異なる本管に対して融着可能となる。したがって、分岐サドル継手を複数サイズの本管に兼用することが可能となるので、分岐サドル継手の製造コストを低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手に好ましく、呼び径の大きな本管であっても本管の外周面にサドル部の内周面を大きな押付力を必要としないで密着させることができるために作業性が良好である点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0038】
100、101、102、103、104 分岐サドル継手
110、110A、110B、110C、110D サドル部
110H 分岐管部
110X 融着部
110Y 非融着部
112 易変形部
112A、112B、112C、112D 溝部
114 電熱線
150 分岐管部
200 本管