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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】炉体の解体方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/16 20060101AFI20221024BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20221024BHJP
   C21B 9/10 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
F27D1/16 T
E04G23/08 D
C21B9/10 302
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018237038
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020098077
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000200334
【氏名又は名称】JFEプラントエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 幸介
(72)【発明者】
【氏名】馬場 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】宮宗 誠
(72)【発明者】
【氏名】河合 直人
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-053441(JP,A)
【文献】特開2005-139482(JP,A)
【文献】国際公開第2011/027610(WO,A1)
【文献】特開2009-041062(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0072489(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/16
C21B 7/00
C21B 9/10
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄皮の内周壁に煉瓦を積層した炉体の解体方法であって、
前記炉体を高さ方向で複数に切断する位置を決定し、切断される上側のブロックの下端周方向に所定の間隔で貫通孔を設けて該貫通孔に煉瓦を支持するための支持ピンを挿入して設置する支持ピン設置工程と、
該支持ピン設置工程の後に、切断後の上下となるブロック同士を連結する連結具を、切断前に取り付ける連結具取付工程と、
前記決定された切断位置において、鉄皮と煉瓦をワイヤーソー切断機によって一体的に切断する切断工程と、
前記連結具を外して搬出対象となるブロックを個別に所定の位置まで搬出するブロック搬出工程とを備え
前記支持ピンは、該支持ピンの周辺2~3個の煉瓦が直接支持される支持煉瓦となるように径が設定されていることを特徴とする炉体の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱風炉のブラストミキサーのように鉄皮の内周壁に煉瓦を積層した炉体の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に示すように、熱風炉31とは、高炉へ熱風を送るための設備であり、燃焼室33と蓄熱室35を備えて構成され、「燃焼」と「送風」を繰り返し操業している。また、熱風炉31には、ブラストミキサー1と呼ばれる高炉への送風温度を調整するための設備炉が付随しているものがある。
【0003】
このような熱風炉31は、数年ごとに改修工事が行われ、この改修工事に当たっては、熱風炉31に使われている煉瓦のうちの一部または全部が解体される。
煉瓦の解体に際して、燃焼室33と蓄熱室35は内径が大きいことから、室内に搬入した重機を用いた解体が行わる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ブラストミキサー1は外径が約3mであり、径が小さいことから、室内に重機を搬入することができない。
そのため、従来は、煉瓦解体のための設備を設置し、作業者が室内に入って煉瓦の手作業による解体を行い、その後鉄皮の解体を行うという手順で行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-260011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブラストミキサー1における煉瓦の解体を手作業で行うと、長期間を要することから、熱風炉31の改修工事における工程のネックになっている。
ブラストミキサー1が設置されている場所には通常重機の設置等のスペースがないことから、煉瓦の解体を重機等の機械で行うためには、ブラストミキサー1を設置現場から別の場所に搬送する必要があるが、ブラストミキサー1の設置現場は周囲に他の機器等があり、クレーン車で吊り下げ、取り回しするのは難しい。このため、ブラストミキサー1を解体することなく他の場所に搬送することは難しいという問題がある。
【0007】
発明者は、上記の問題を解決するために、ブラストミキサーを高さ方向の所定の位置で切断して搬出可能なブロック体に分割することを考え、その場合に生ずる問題点として以下のものを検討した。
・問題点1
分割のブロックサイズをどのようにするかという問題。
・問題点2
鉄皮と煉瓦を一体的に切断するにはいかにするべきかという問題。
・問題点3
ブラストミキサーを複数のブロック体に切断すると、各ブロック体が転倒してしまうという問題。
・問題点4
切断して分割したブロック体を吊り上げると、下端が開放されていることから、鉄皮内面の煉瓦が脱落してしまうという問題。
【0008】
問題点1については、現場ごとの状況に応じて、使用可能なクレーンの吊り上げ能力に応じたサイズにする、問題点2については、例えばワイヤーソー切断機を使用する、問題点3については、切断前に切断位置の上下と連結する連結具を取り付ける、ことで解決できる。
【0009】
しかしながら、切断して分割したブロック体を吊り上げると、下端が開放されていることから、鉄皮内面の煉瓦が脱落してしまうという問題点4については、例えば、切断後にブロックの下端の開放部に脱落防止板を取付ける方法も考えられるが、この方法は、切断前には施工することができず、また切断後も隙間が小さいため設置は容易でない。
【0010】
このような問題点4は、ブラストミキサーの解体に特有の課題ではなく、鉄皮の内周壁に煉瓦を積層した炉体、例えば熱風炉の燃焼室、蓄熱室、その他の炉体を解体する場合に共通する課題である。
【0011】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、鉄皮の内周壁に煉瓦を積層した炉体を解体する場合において、炉体を切断して分割して搬送する際に、内部の煉瓦の脱落を防止できる炉体の解体方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る炉体の解体方法は、鉄皮の内周壁に煉瓦を積層した炉体の解体方法であって、
前記炉体を高さ方向で複数に切断する位置を決定し、切断される上側のブロックの下端周方向に所定の間隔で貫通孔を設けて該貫通孔に煉瓦を支持するための支持ピンを挿入して設置する支持ピン設置工程と、
切断後の上下となるブロック同士を連結する連結具を取り付ける連結具取付工程と、
前記決定された切断位置において、鉄皮と煉瓦を一体的に切断する切断工程と、
前記連結具を外して搬出対象となるブロックを個別に所定の位置まで搬出するブロック搬出工程とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る炉体の解体方法によれば、炉体をその設置場所から、内部の煉瓦を脱落させることなく、重機で解体可能な場所まで搬出することができ、それによって重機での解体が可能となり、工期の短縮ができ、かつ重機での安全な解体作業を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係る熱風炉におけるブラストミキサーの解体方法の工程の説明図である。
図2】本実施の形態におけるブラストミキサーの切断箇所の説明図である。
図3】本実施の形態における支持ピンの設置方法の説明図である(その1)。
図4】本実施の形態における支持ピンの設置方法の説明図である(その2)。
図5】本実施の形態における支持ピンによって煉瓦を保持できる理由を説明する説明図である(その1)。
図6】本実施の形態における支持ピンによって煉瓦を保持できる理由を説明する説明図である(その2)。
図7】本実施の形態における連結具であるストロングバックの設置方法の説明図である。
図8】本実施の形態におけるワイヤーソー切断機での切断工程の説明図である。
図9】本実施の形態におけるブロック搬出工程で使用する機器の説明図である。
図10】本実施の形態におけるブロック搬出工程の説明図である。
図11】熱風炉の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る炉体の解体方法を、炉体の例として熱風炉におけるブラストミキサーを対象として以下説明する。
本実施の形態の炉体の解体方法は、図1に示すように、支持ピン設置工程、連結具取付工程、切断工程、ブロック搬出工程及び煉瓦解体工程を備えたものである。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0016】
<支持ピン設置工程>
支持ピン設置工程は、ブラストミキサー1を高さ方向で切断する複数の切断位置Cを決定し(図2参照)、図3に示すように、切断される上側のブロックの下端周方向に所定の間隔で、鉄皮3と煉瓦5を貫通する貫通孔7を設けて貫通孔7に煉瓦5を支持するための支持ピン9を挿入して設置する工程である。
【0017】
切断位置Cの決定は、使用するクレーンの吊り出し可能重量や、ブロックを解体場所に搬出する際の運搬時の制限高さ、さらにはフロアレベルとの取合から決める。
本例では、解体対象となっているブラストミキサー1の重量が180ton、使用するクレーンの吊り出し可能重量が53ton、運搬時の制限高さが5.1mであったので、5分割することとした。分割位置と、各ブロックの重量は、図2に示すように、ブロックIが37ton、ブックIIが39ton、ブロックIIIが42ton、ブロックIVが21ton、ブロックVが37tonである。
【0018】
支持ピン9は、切断したブロックを吊り上げた際に下端からブロック内の煉瓦5が自重で脱落するのを防止するためのものである。
本例においては、鉄皮3外面よりφ90mmの貫通孔7を周方向に等間隔(478mm)で18個開口し、開口した各貫通孔7に対しφ85mmの支持ピン9を差し込み、鉄皮3外面に溶接固定している(図4参照)。
【0019】
支持ピン9を上記のように配置している理由を、図5図6に基づいて説明する。
支持ピン9は、支持ピン9よりも上方にある煉瓦5aを支持するためのものであるため、この目的を満たす必要がある。
煉瓦5の幅が72mmであるため、支持ピン9の挿入により支持ピン9の周辺2~3個の煉瓦5が支持ピン9によって直接支持される支持煉瓦5bとなるよう支持ピン9の径を煉瓦幅より2割ほど大きいφ85mmとした。支持煉瓦5bよりも上方の煉瓦5a(図中最も色の薄いグレーの煉瓦)は順次その上方にある煉瓦5aを支持するため、図5図6に示す境界線Lよりも上方の煉瓦5aが支持ピン9によって支持されることになる。
なお、境界線Lよりも下方にある煉瓦5cは、支持ピン9によって支持されているわけではないが、摩擦等によって保持されている。もっとも、ブロックの吊り上げ時等に際して、多少の煉瓦5cが脱落する可能性があるが、そのための養生をするようにすればよい。
【0020】
本例では、上述したように、支持ピン9のピッチを、外周長を18等分した478mmに設定しているが、支持ピン9のピッチを短くすることで、支持ピン9によって支持される支持煉瓦5bの数を多くし、摩擦等によって保持される煉瓦5cを少なくできるので、適宜設定すればよい。
【0021】
なお、前述したように、分割したブロックにおける煉瓦5の脱落防止をするための手段として、切断後にブロックの下端の開放部に脱落防止板を取付ける方法も考えられるが、この方法は、切断前には施工することができず、また切断後も隙間が小さいため設置は容易でない。
これに対して、上述した本実施の形態で示した方法は、切断前に施工できることから、施工が容易で、かつ確実に施工できるので、好適な方法である。
【0022】
<連結具取付工程>
連結具取付工程は、切断後の上下となるブロック同士を連結する連結具を取り付ける工程である。
連結具は、切断後に各ブロックが転倒するのを防止するためのものである。
また、切断後に搬出作業を行う際に連結が必要なブロック同士の連結を維持する機能も有することから、当該作業時にも耐えて連結を維持できるものである必要がある。
このような要請を満たすものとして、本例では、連結具としてコ字形状で各辺部が上下のブロックに跨るストロングバック11を採用した(図7参照)。ストロングバック11の上片の先端を上側のブロックに、下片の先端を下側のブロックにそれぞれ溶接によって固定する。
ストロングバック11は、ブラストミキサー1の周方向で、例えば5、6個取り付けるようにする。もっとも、取付個数はブラストミキサー1の大きさ、各ストロングバック11に必要とされる耐力によって適宜設定すればよい。
【0023】
<切断工程>
切断工程は、決定された切断位置Cにおいて鉄皮3と煉瓦5を一体的に切断する工程である。切断工具としては、ワイヤーソー切断機13を採用した。ワイヤーソー切断機13は、図8に示すように、切断ワイヤー15をブラストミキサー1の胴体における切断位置Cに巻き付けて切断する。
【0024】
切断することで、上側のブロックと下側のブロックは切り離されるが、上下のブロックはストロングバック11によって連結されているので、分離されることはない。また、上ブロックと下ブロックがストロングバック11によって保持されることから、切断途中で上側のブロックが自重によって下側のブロックに近づくことはなく、切断ワイヤー15が上下のブロックに挟まれることなく、切断を円滑に行うことができる。
【0025】
<ブロック搬出工程>
ブロック搬出工程は、連結具を外して搬出対象となるブロックを個別に所定の位置まで搬出する工程であり、搬送台車によって横引きする台車搬送工程と該台車搬送工程によって横引きされた各ブロックを吊り出す吊出し工程を備えている。
このブロック搬出工程としては、特開2009-41062号公報(特願2007-206376)に開示された方法を適用することができる。以下、この方法をブラストミキサーに適用した場合の具体的な方法を説明する。
【0026】
ブロック搬出工程で使用する主な機器は、図9に示すように、4FLに設置した走行レール17と、走行レール17上を走行する搬送台車19と、4FLに設置したジャッキ架構21と、ジャッキ架構21に設置されブロックを吊り上げるワイヤージャッキ23と、搬送台車19によって横引きされた各ブロックを吊り出すクレーンなどの吊具25である。
上記の機器を用いて、ブロックを搬出する方法を図10に基づいて説明する。
【0027】
図10(a)に示すように、ブラストミキサー1は上下方向で5分割されて、上から順にブロックI、ブロックII、ブロックIII、ブロックIV、ブロックVとなっている。
図10(a)では、ワイヤージャッキ23のワイヤー27をブロックIに連結し、ブロックIIIとブロックIVを連結していたストロングバック11を切断している。
この状態で、ワイヤージャッキ23を稼働して、ブロックI、II、IIIを一体として吊り上げ(図10(b)参照)、吊り上げられたブロックIIIの下方に搬送台車19を配置する(図10(c)参照)。
【0028】
次に、ブロックI、II、IIIを搬送台車19上に吊り下ろし(図10(d)参照)、ブロックIIとブロックIIIを連結しているストロングバック11を切断する。その後、搬送台車19を図中右方向に移動して、ブロックIIIを吊り出す(図10(e)参照)。
同様の操作によって、ブロックIIの吊り出し(図10(f))と、ブロックIのつり出しをこの順で行う。ブロックIの吊り出しが完了すると、ワイヤージャッキ23のワイヤー27をブロックIVに連結し(図10(g)参照)、ブロックIV、Vを4FLよりも上方に吊り上げる(図10(h)参照)。その後、搬送台車19をブロックVの下方に配置し、ブロックVとブロックIVを連結しているストロングバック11を切断して、搬送台車19を図中右方向に移動して、ブロックVを吊り出し(図10(i)参照)、最後にブロックIVを吊り出して、搬出を完了する。
【0029】
以上のように、本実施の形態のブロック搬出工程においては、ブラストミキサー1の高さ方向の所定の位置(4FL)にある架台上に走行レール17を敷設して、走行レール17を走行する搬送台車19に各ブロックを載置して行うようにしたことで、狭い空間で効率的に各ブロックの搬送が可能となっている。
【0030】
<煉瓦解体工程>
煉瓦解体工程は、ブロック搬出工程によって吊り出された各ブロックの煉瓦5を重機で解体する工程である。
各ブロックを吊り出す搬出場所については、特に言及していないが、重機による解体が可能なスペースのある場所であれば特に限定されるものではない。
【0031】
以上のように、本実施の形態によれば、従来は設置現場で作業者が手作業で行っていたブラストミキサー1の煉瓦5の解体作業を、重機による作業が可能となり、工期を大きく短縮化することが可能となる。
【0032】
なお、上記の説明では、支持ピン設置工程の後に連結具取付工程を行うようにしているが、本発明においては、連結具取付工程の後に支持ピン設置工程を行うようにしてもよい。
もっとも、支持ピン設置工程を先に行う方が、貫通孔7を設ける際にストロングバック11が邪魔にならず、作業性に優れる。
【0033】
また、上記の説明は、炉体の例としてブラストミキサーを例に挙げて説明したが、本発明が対象としている炉体はブラストミキサーに限られるものではなく、鉄皮の内周壁に煉瓦を積層した炉体であれば適用可能であり、例えば熱風炉の燃焼室、蓄熱室、熱風炉以外の炉体にも適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 ブラストミキサー
3 鉄皮
5 煉瓦
5a 煉瓦(上方)
5b 支持煉瓦
5c 煉瓦(下方)
7 貫通孔
9 支持ピン
11 ストロングバック
13 ワイヤーソー切断機
15 切断ワイヤー
17 走行レール
19 搬送台車
21 ジャッキ架構
23 ワイヤージャッキ
25 吊具
27 ワイヤー
C 切断位置
L 境界線
<熱風炉>
31 熱風炉
33 燃焼室
35 蓄熱室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11