(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】RNAの安定化
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20221024BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20221024BHJP
B01J 41/09 20170101ALI20221024BHJP
B01J 41/04 20170101ALI20221024BHJP
B01J 47/018 20170101ALI20221024BHJP
B01J 47/02 20170101ALI20221024BHJP
B01J 47/12 20170101ALI20221024BHJP
B01J 49/07 20170101ALI20221024BHJP
B01J 49/57 20170101ALI20221024BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALN20221024BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12N15/10 110Z
C12N15/11 Z
C12N15/10 114Z
B01J41/09
B01J41/04
B01J47/018
B01J47/02
B01J47/12
B01J49/07
B01J49/57
C12Q1/6806 Z
(21)【出願番号】P 2018548769
(86)(22)【出願日】2017-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2017056273
(87)【国際公開番号】W WO2017162518
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-01-14
(32)【優先日】2016-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507214038
【氏名又は名称】キアゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ホルリッツ, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】アールミューラー, ウーヴェ
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533288(JP,A)
【文献】特表2004-516853(JP,A)
【文献】特表2009-518020(JP,A)
【文献】特表2013-505719(JP,A)
【文献】特開昭63-154696(JP,A)
【文献】特表2002-521071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12Q 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAをプロセシングする方法であって、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも
75℃の温度および少なくとも8のpHを含む条件で前記RNAを処理することを含む、方法。
【請求項2】
10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも
75℃の温度および少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理することを含む、請求項1に記載のRNAをプロセシングする方法。
【請求項3】
前記硫酸アンモニウムが、RNA分解を阻害または防止することによって、処理中に使用される前記温度およびpHで前記RNAを安定化する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記RNAと前記硫酸アンモニウムとを接触させて、10mMまたはそれ未満の濃度を確立することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
以下の特徴:
i.前記硫酸アンモニウムが、0.25mM~10mM、0.5mM~9mM、0.7mM~8mM、1mM~7mM、1.5mM~6mM、1.75mM~5mMまたは2mM~4mM;または約2.5mMの濃度で存在する;
ii.前記硫酸アンモニウムが、硫酸ジアンモニウム((NH
4)
2SO
4))である;iii.前記pHが、9~14、9.2~13.5、9.4~13、9.6~12.5、9.8~12.25、10~12または10~11.5の範囲内である;
iv.前記温度が、
75℃~100℃
、75℃~90℃または約75℃~85℃の範囲内である;
v.キレート化剤の存在下で、処理を行う
の1つまたはそれよりも多くを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記RNAの処理が、規定条件で前記RNAをインキュベートすることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
以下の特徴:
i.前記RNAを1分間~20分間、2分間~15分間、5分間~12分間または7分間~10分間インキュベートする;
ii.1つまたはそれを超えるタンパク質分解酵素または他の酵素化合物の存在下でインキュベーションを行い、インキュベーション中に前記1つまたはそれを超えるタンパク質分解酵素または他の酵素化合物を不活性化する、
の1つまたはそれよりも多くを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記硫酸アンモニウムが、前記RNAと接触される溶液に含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が、以下の特徴:
i.前記溶液が、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含む;
ii.前記溶液が、0.25mM~10mM、0.5mM~9mM、0.7mM~8mM、1mM~7mM、1.5mM~6mM、1.75mM~5mMまたは2mM~4mM;または約2.5mMの濃度の硫酸アンモニウムを含む;
iii.前記溶液が、少なくとも9のpHを有する;
iv.前記溶液が、9~14、9.2~13.5、9.4~13、9.6~12.5、9.8~12.25、10~12または10.5~11.5の範囲内のpHを有する;
v.前記溶液が水性である;
vi.前記溶液が、1つまたはそれを超えるアルカリ性水酸化物塩を含む,
vii.前記溶液が、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを含む;
viii.前記溶液が低塩溶液である;
ix.前記溶液が、<100mMのイオン強度を有する;
x.前記溶液が緩衝化されている;
xi.前記溶液がキレート化剤を含む;
xii.前記溶液が非錯化二価カチオンを含まないか、または二価カチオンを全く含まない;
xiii.前記溶液が
、少なくとも75℃、少なくとも80℃または少なくとも85℃の温度を有する;
xiv.前記溶液が少なくとも9のpHを有し、前記RNAと前記溶液との接触後に、それを少なくとも
75℃の温度に加熱する
の1つまたはそれよりも多くを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記RNAをアニオン交換マトリックスに結合させ、前記処理中にそれから前記RNAを放出させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記RNAをプロセシングする方法が、前記RNAが結合したアニオン交換マトリックスからRNAを放出させる方法であって、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも
75℃の温度および少なくとも8のpHを含む条件で前記RNAを処理して、前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出させることを含む方法である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記RNAをプロセシングする方法が、サンプルからRNAを単離する方法であって、-前記RNAをアニオン交換マトリックスに結合させること;
-前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出するために、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも
75℃の温度および少なくとも8のpHを含む条件で前記RNAを処理すること
を含む方法である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出させるための前記処理条件が、請求項3~7のいずれか一項で定義されるとおりである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記RNAと、請求項8または9で定義される特徴の1つまたはそれよりも多くを有する溶液とを接触させて、前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出させる、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アニオン交換マトリックスが、以下の特徴:
i.それが、アニオン交換基を提供するアニオン交換部分を含み、前記アニオン交換部分が、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、窒素含有芳香族または脂肪族複素環基、環状アミン、芳香族アミンおよび複素環アミンから選択される;
ii.それが、少なくとも1つの第1級、第2級および/または第3級アミノ基を含むアニオン交換部分を含む;
iii.それが、アニオン交換面を提供する固体支持体によって提供される;
iv.それが、磁性粒子によって提供される
の1つまたはそれよりも多くを有する、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも
75℃の温度および少なくとも8のpHを含む条件でRNAを安定化するための、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの使用。
【請求項17】
アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるための溶液の使用であって、前記溶液が、少なくとも
75℃の温度および少なくとも8のpHを有し、前記溶液が、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含む、使用。
【請求項18】
RNA含有組成物であって、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含み、少なくとも
75℃の温度および少なくとも8のpHを有する、RNA含有組成物。
【請求項19】
以下の特徴:
i.溶液である;
ii.アニオン交換マトリックスをさらに含む;
iii.RNA溶出液である;
iv.前記硫酸アンモニウムが硫酸ジアンモニウム((NH
4)
2SO
4)である
の1つまたはそれよりも多くを有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記キレート化剤がEDTAである、請求項5に記載の方法。
【請求項21】
前記pHが少なくとも9である、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記pHが少なくとも9である、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記pHが少なくとも9である、請求項16に記載の使用。
【請求項24】
前記pHが少なくとも9である、請求項17に記載の使用。
【請求項25】
前記pHが少なくとも9である、請求項18に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAをプロセシングするための方法、使用および組成物に関する。特に、それは、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAを安定化するための方法、使用および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの分子生物学および診断用途では、高収率で良好な品質のリボ核酸(RNA)を単離または精製することが望ましい。しかしながら、RNAは極めて不安定であり、RNA単離または精製の前およびその間に分解する傾向がある。RNAの分解に寄与する因子としては、RNAseなどの分解酵素だけではなく、高温および高pH値を含むプロセシング条件も挙げられる。この不安定性は、RNAのプロセシングを伴う他の方法についても問題となる。
【0003】
RNA単離の前に組織サンプル中のRNAを保存および保護するための方法および試薬は公知であり、例えば、米国特許第6,204,375B1号に記載されている。また、RNA含有サンプルまたは混合物中に存在するRNAに結合しまたはそれを切断する分子の阻害効果または破壊効果を緩和する方法は公知であり、例えば、米国特許第6,872,818B2号に記載されている。
【0004】
RNAは、アルカリ性条件下で自然加水分解を受けることが公知である。アルカリ性条件下におけるRNA加水分解は、最終的に、モノヌクレオチドへのRNA分子の完全な配列非依存的分解をもたらす。この加水分解反応は、水溶液中、高濃度のOH(-)イオン下で、リボース部分の2’-OH基の脱プロトン化によって駆動される。この現象は、以前に報告されている(例えば、Bock,R.M.:Alkaline hydrolysis of RNA,Methods in Enzymology,Volume 12,Part A,1967,pages 224-228;Elliot,D.,Ladomery,M.:Molecular Biology of RNA(1st ed.2011).New York:Oxford University Press,pages 34-64を参照のこと)。
【0005】
しかしながら、多くの用途では、強アルカリ性条件下でRNAをプロセシングすることが望ましい。一例は、アニオン交換マトリックスを使用してサンプルからRNAを単離することである。少なくとも8のアルカリ性pHは、アニオン交換マトリックスから結合RNAを放出(特に、溶出)させるために使用され得る。少なくとも9のアルカリ性pHは、通常、アニオン交換マトリックスから結合RNAを効率的に放出(特に、溶出)させるために必要である。これは、溶出工程中にRNAの分解をもたらし得る。アルカリ性溶液を使用してアニオン交換マトリックスからRNAを溶出させるRNA単離方法は、国際公開第2007/065950号および国際公開第2014/066376号に記載されている。
【0006】
また、本実施例で実証されているように、RNAのアルカリ分解は、高温で大幅に促進される。したがって、アルカリ性水溶液中のRNA加水分解の問題は、高温(例えば、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃またはそれを超える温度など)で特に顕著である。これらの条件下では、RNAは迅速に分解される。リボース部分上の2’-ヒドロキシ基が脱プロトン化され、続いて、生じた-O(-)と3’結合リン酸基のリンとが反応し、次いで、ホスホジエステル結合が切断されることによって、RNAは単一ヌクレオチドに加水分解される。高温および特に9またはそれを超えるアルカリ性pHを伴う条件では、RNAのこの分解感受性により、RNA完全性を保証することが困難である。
【0007】
したがって、高温および強アルカリ性pHを伴う条件におけるプロセシング中に分解からRNAを保護する改善された方法および組成物が必要である。理想的には、このような方法および組成物は、下流用途、例えばRNAの分析または検出のための下流用途などを妨げるべきではない。
【0008】
本発明の目的は、高温およびアルカリ性条件下におけるプロセシング中に分解からRNAを保護する手段を提供することである。特に、本発明の目的は、特にアニオン交換マトリックスからの放出中に、高温および強アルカリ性条件下でRNAを安定化するための方法を提供することである。さらに、目的は、アニオン交換マトリックスを使用してRNAを単離するための、特に、アニオン交換マトリックスからのアルカリ溶出中に分解からRNAを保護するための改善された方法および組成物を提供することである。さらに、目的は、高温および強アルカリ性条件下におけるRNAのプロセシングまたは安定化のための溶液、使用および組成物を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第6,204,375号明細書
【文献】米国特許第6,872,818号明細書
【文献】国際公開第2007/065950号
【文献】国際公開第2014/066376号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Bock,R.M.:Alkaline hydrolysis of RNA,Methods in Enzymology,Volume 12,Part A,1967,pages 224-228
【文献】Elliot,D.,Ladomery,M.:Molecular Biology of RNA(1st ed.2011).New York:Oxford University Press,pages 34-64
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
本発明者らは、予想外のことに、硫酸アンモニウムの存在下、高温(≧70℃)および高pH(≧8、好ましくは≧9)の処理条件の間に、RNAが有効に安定化されることを見出した。有利なことに、硫酸アンモニウムの存在下では、RNA分解が有意に阻害される。驚くべきことに、≦10mM、≦5mMおよびさらに≦3.5mMの非常に低濃度の硫酸アンモニウムは、顕著な安定化効果を達成するために十分かつ非常に有効である。実施例によって実証されているように、RNAを高温および高pHで長期間インキュベートする場合であっても、これらの低濃度の硫酸アンモニウムの存在は、有利なことに、分解からRNAを保護する。硫酸アンモニウムのこれらの有利な効果は、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを伴う条件下におけるアニオン交換マトリックスからの放出(特に、溶出)中にRNAを保護するために使用され得る。したがって、本発明は、RNAをプロセシングする場合にこのような過酷な条件を使用することを可能にする。得られたRNAは、その品質により、高感度かつ定量的な分析および検出方法、例えばPCRベースの分析および検出に適切である。さらに、本発明にしたがって使用され得る低濃度の硫酸アンモニウムは、このような下流用途を妨げず、得られたRNAは、さらに精製して過剰な塩を除去せずに使用され得る。したがって、本発明は、RNAをプロセシングする方法であって、RNAの検知下流用途(例えば、ウイルスRNAの検出のための診断アッセイにおけるRNAの使用など)に適合する高温および強アルカリ性条件下で、RNAを処理することを含む方法を提供する。したがって、本発明は重要な利点を提供し、先行技術に対して著しい進歩を提供する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「硫酸アンモニウム」という用語は、硫酸ジアンモニウム((NH4)2SO4)および重硫酸アンモニウム(NH4HSO4;硫酸水素アンモニウムとも称される)を指す。したがって、一般に「硫酸アンモニウム」について本明細書に提示される任意の開示は、硫酸ジアンモニウムの実施形態および重硫酸アンモニウムの実施形態を具体的に適用し、それらを指す。硫酸アンモニウムとして硫酸ジアンモニウム((NH4)2SO4)の使用が特に好ましい。したがって、明確な指定がない場合であっても、一般に硫酸アンモニウムについて本出願に記載されるすべての開示は、好ましい実施形態である硫酸ジアンモニウム((NH4)2SO4)を具体的に適用し、それを特に指す。
【0013】
第1の態様によれば、本発明は、RNAをプロセシングする方法であって、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpHを含む条件で前記RNAを処理することを含む方法を提供する。特に、本発明は、RNAをプロセシングする方法であって、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理することを含む方法を提供する。
【0014】
RNAが結合したアニオン交換マトリックスからRNAを放出させる方法であって、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpHを含む条件で前記RNAを処理して、前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出させることを含む方法も提供される。特に、本発明は、RNAが結合したアニオン交換マトリックスからRNAを放出させる方法であって、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理して、前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出させることを含む方法を提供する。
【0015】
サンプルからRNAを単離する方法であって、
-前記RNAをアニオン交換マトリックスに結合させること;
-前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出するために、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpHを含む条件で前記RNAを処理すること
を含む方法も提供される。
【0016】
特に、本発明は、サンプルからRNAを単離する方法であって、
-前記RNAをアニオン交換マトリックスに結合させること;
-前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出するために、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理すること
を含む方法を提供する。
【0017】
さらなる態様によれば、本発明は、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpHを含む条件でRNAを安定化するための、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの使用を提供する。特に、本発明は、少なくとも70℃の温度および少なくとも9のpHを含む条件でRNAを安定化するための、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの使用を提供する。
【0018】
さらなる態様によれば、本発明は、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるための溶液の使用であって、前記溶液が、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpHを有し、前記溶液が、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含む使用を提供する。特に、本発明は、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるための溶液の使用であって、前記溶液が、少なくとも70℃の温度および少なくとも9のpHを有し、前記溶液が、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含む使用を提供する。
【0019】
さらなる態様によれば、本発明は、RNA含有組成物であって、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含み、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpHを有するRNA含有組成物を提供する。特に、本発明は、RNA含有組成物であって、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含み、少なくとも70℃の温度および少なくとも9のpHを有するRNA含有組成物を提供する。
【0020】
本出願の他の態様、目的、特徴および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から当業者には明らかになる。しかしながら、以下の説明、添付の特許請求の範囲および特定の実施例は、本出願の好ましい実施形態を示すが、単なる例示として示されていると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1Aおよび1Bは、20mM NaOH(約pH12)を含む溶液1と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【
図1B】
図1Aおよび1Bは、20mM NaOH(約pH12)を含む溶液1と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【0022】
【
図2A】
図2Aおよび
図2Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【
図2B】
図2Aおよび
図2Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【0023】
【
図3A】
図3Aおよび3Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH10に緩衝化)を含む溶液3と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【
図3B】
図3Aおよび3Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH10に緩衝化)を含む溶液3と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【0024】
【
図4A】
図4Aおよび4Bは、20mM NaOH(約pH12)を含む溶液1と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【
図4B】
図4Aおよび4Bは、20mM NaOH(約pH12)を含む溶液1と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【0025】
【
図5A】
図5Aおよび5Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【
図5B】
図5Aおよび5Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【0026】
【
図6A】
図6Aおよび
図6Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH10に緩衝化)を含む溶液3と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【
図6B】
図6Aおよび
図6Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH10に緩衝化)を含む溶液3と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【0027】
【
図7A】
図7A~7Dは、実施例1および2の結果を要約したものである。
図7Aは、75℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。75℃で10分間インキュベートし、続いて室温でインキュベートしたサンプルの値も示されている。
図7Bは、75℃、pH10、11または12における最初の10分間のRNAインキュベーションについて、RNA完全性対時間を示す。
図7Cは、85℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。85℃で10分間インキュベートし、続いて室温でインキュベートしたサンプルの値も示されている。
図7Dは、85℃、pH10、11または12における最初の10分間のRNAインキュベーションについて、RNA完全性対時間を示す。
【
図7B】
図7A~7Dは、実施例1および2の結果を要約したものである。
図7Aは、75℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。75℃で10分間インキュベートし、続いて室温でインキュベートしたサンプルの値も示されている。
図7Bは、75℃、pH10、11または12における最初の10分間のRNAインキュベーションについて、RNA完全性対時間を示す。
図7Cは、85℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。85℃で10分間インキュベートし、続いて室温でインキュベートしたサンプルの値も示されている。
図7Dは、85℃、pH10、11または12における最初の10分間のRNAインキュベーションについて、RNA完全性対時間を示す。
【
図7C】
図7A~7Dは、実施例1および2の結果を要約したものである。
図7Aは、75℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。75℃で10分間インキュベートし、続いて室温でインキュベートしたサンプルの値も示されている。
図7Bは、75℃、pH10、11または12における最初の10分間のRNAインキュベーションについて、RNA完全性対時間を示す。
図7Cは、85℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。85℃で10分間インキュベートし、続いて室温でインキュベートしたサンプルの値も示されている。
図7Dは、85℃、pH10、11または12における最初の10分間のRNAインキュベーションについて、RNA完全性対時間を示す。
【
図7D】
図7A~7Dは、実施例1および2の結果を要約したものである。
図7Aは、75℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。75℃で10分間インキュベートし、続いて室温でインキュベートしたサンプルの値も示されている。
図7Bは、75℃、pH10、11または12における最初の10分間のRNAインキュベーションについて、RNA完全性対時間を示す。
図7Cは、85℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。85℃で10分間インキュベートし、続いて室温でインキュベートしたサンプルの値も示されている。
図7Dは、85℃、pH10、11または12における最初の10分間のRNAインキュベーションについて、RNA完全性対時間を示す。
【0028】
【
図8A】
図8Aおよび8Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【
図8B】
図8Aおよび8Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【0029】
【
図9A】
図9Aおよび9Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)+2.5mM(NH
4)
2SO
4を含む溶液4と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。硫酸アンモニウムの追加によって、RNAの分解が阻害され、かなり遅延する。
【
図9B】
図9Aおよび9Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)+2.5mM(NH
4)
2SO
4を含む溶液4と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。硫酸アンモニウムの追加によって、RNAの分解が阻害され、かなり遅延する。
【0030】
【
図10A】
図10Aおよび
図10Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【
図10B】
図10Aおよび
図10Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。
【0031】
【
図11A】
図11Aおよび
図11Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)+2.5mM(NH
4)
2SO
4を含む溶液4と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。硫酸アンモニウムの追加によって、RNAの分解が阻害され、かなり遅延する。
【
図11B】
図11Aおよび
図11Bは、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)+2.5mM(NH
4)
2SO
4を含む溶液4と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像および電気泳動図)を示す。硫酸アンモニウムの追加によって、RNAの分解が阻害され、かなり遅延する。
【0032】
【
図12A】
図12Aおよび12Bは、実施例1~3の結果を要約したものである。
図12Aは、75℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、および2.5mM硫酸アンモニウムの存在下、75℃、pH11で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。
図12Bは、85℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、および2.5mM硫酸アンモニウムの存在下、85℃、pH11で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。
【
図12B】
図12Aおよび12Bは、実施例1~3の結果を要約したものである。
図12Aは、75℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、および2.5mM硫酸アンモニウムの存在下、75℃、pH11で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。
図12Bは、85℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、および2.5mM硫酸アンモニウムの存在下、85℃、pH11で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。
【0033】
【
図13A】
図13A~13Dは、実施例4にさらに記載されている異なる溶液と共に85℃、pH11でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像)を示す。
図13Aは、pH11に緩衝化した20mM NaOH(実施例4のバッファー1)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Bは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA(実施例4のバッファー2)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Cは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+1mM(NH
4)
2SO
4(実施例4のバッファー3)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Dは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+2.5mM(NH
4)
2SO
4(実施例4のバッファー4)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である。
【
図13B】
図13A~13Dは、実施例4にさらに記載されている異なる溶液と共に85℃、pH11でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像)を示す。
図13Aは、pH11に緩衝化した20mM NaOH(実施例4のバッファー1)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Bは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA(実施例4のバッファー2)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Cは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+1mM(NH
4)
2SO
4(実施例4のバッファー3)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Dは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+2.5mM(NH
4)
2SO
4(実施例4のバッファー4)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である。
【
図13C】
図13A~13Dは、実施例4にさらに記載されている異なる溶液と共に85℃、pH11でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像)を示す。
図13Aは、pH11に緩衝化した20mM NaOH(実施例4のバッファー1)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Bは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA(実施例4のバッファー2)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Cは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+1mM(NH
4)
2SO
4(実施例4のバッファー3)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Dは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+2.5mM(NH
4)
2SO
4(実施例4のバッファー4)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である。
【
図13D】
図13A~13Dは、実施例4にさらに記載されている異なる溶液と共に85℃、pH11でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像)を示す。
図13Aは、pH11に緩衝化した20mM NaOH(実施例4のバッファー1)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Bは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA(実施例4のバッファー2)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Cは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+1mM(NH
4)
2SO
4(実施例4のバッファー3)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Dは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+2.5mM(NH
4)
2SO
4(実施例4のバッファー4)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である。
【0034】
【
図14AB】
図14A~14Dは、それぞれ実施例4で試験したバッファー1~4について、18S rRNAの相対量対インキュベーション時間を示す。y軸は、全長18S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【
図14CD】
図14A~14Dは、それぞれ実施例4で試験したバッファー1~4について、18S rRNAの相対量対インキュベーション時間を示す。y軸は、全長18S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【0035】
【
図15AB】
図15A~
図15Dは、それぞれ実施例4で試験したバッファー1~4について、28S rRNAの相対量対インキュベーション時間を示す。y軸は、全長28S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【
図15CD】
図15A~
図15Dは、それぞれ実施例4で試験したバッファー1~4について、28S rRNAの相対量対インキュベーション時間を示す。y軸は、全長28S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【0036】
【
図16AB】
図16A~
図16Dは、それぞれ実施例4で試験したバッファー1~4について、RIN対時間を示す。RIN値はy軸に示されており、インキュベーション時間はx軸に示されている。
【
図16CD】
図16A~
図16Dは、それぞれ実施例4で試験したバッファー1~4について、RIN対時間を示す。RIN値はy軸に示されており、インキュベーション時間はx軸に示されている。
【0037】
【
図17A】
図17A~17Dは、それぞれバッファー1~4を用いて得られた66bpアンプリコン(上パネル)および500bpアンプリコン(下パネル)の平均Ct値を示す。平均CT値はy軸に示されており、インキュベーション時間はX軸に示されている。
【
図17B】
図17A~17Dは、それぞれバッファー1~4を用いて得られた66bpアンプリコン(上パネル)および500bpアンプリコン(下パネル)の平均Ct値を示す。平均CT値はy軸に示されており、インキュベーション時間はX軸に示されている。
【
図17C】
図17A~17Dは、それぞれバッファー1~4を用いて得られた66bpアンプリコン(上パネル)および500bpアンプリコン(下パネル)の平均Ct値を示す。平均CT値はy軸に示されており、インキュベーション時間はX軸に示されている。
【
図17D】
図17A~17Dは、それぞれバッファー1~4を用いて得られた66bpアンプリコン(上パネル)および500bpアンプリコン(下パネル)の平均Ct値を示す。平均CT値はy軸に示されており、インキュベーション時間はX軸に示されている。
【0038】
【
図18A】
図18A~
図18Cは、実施例5にさらに記載されている異なる溶液と共に75℃、pH10でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像)を示す。
図18Aは、pH10に緩衝化した20mM NaOH(実施例5のバッファー1)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図18Bは、pH10に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2SO
4(実施例5のバッファー2)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図18Cは、pH10に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2SO
4+1mM EDTA(実施例5のバッファー3)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である。
【
図18B】
図18A~
図18Cは、実施例5にさらに記載されている異なる溶液と共に75℃、pH10でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像)を示す。
図18Aは、pH10に緩衝化した20mM NaOH(実施例5のバッファー1)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図18Bは、pH10に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2SO
4(実施例5のバッファー2)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図18Cは、pH10に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2SO
4+1mM EDTA(実施例5のバッファー3)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である。
【
図18C】
図18A~
図18Cは、実施例5にさらに記載されている異なる溶液と共に75℃、pH10でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像)を示す。
図18Aは、pH10に緩衝化した20mM NaOH(実施例5のバッファー1)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図18Bは、pH10に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2SO
4(実施例5のバッファー2)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図18Cは、pH10に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2SO
4+1mM EDTA(実施例5のバッファー3)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である。
【0039】
【
図19AB】
図19A~19Cは、それぞれ実施例5で試験したバッファー1~3について、18S rRNAの相対量対インキュベーション時間を示す。y軸は、全長18S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【
図19C】
図19A~19Cは、それぞれ実施例5で試験したバッファー1~3について、18S rRNAの相対量対インキュベーション時間を示す。y軸は、全長18S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【0040】
【
図20AB】
図20A~20Cは、それぞれ実施例5で試験したバッファー1~3について、28S rRNAの相対量対インキュベーション時間を示す。y軸は、全長28S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【
図20C】
図20A~20Cは、それぞれ実施例5で試験したバッファー1~3について、28S rRNAの相対量対インキュベーション時間を示す。y軸は、全長28S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
とりわけ、本発明は、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件におけるRNAのプロセシングを可能にする方法、使用および組成物に関する。特に、それは、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAを安定化するための方法、使用および組成物に関する。それは、硫酸アンモニウムが、非常に低濃度であっても、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを伴う処理条件で分解からRNAを保護するという知見に基づく。異なる態様および非限定的な実施形態が以下に記載されている。
【0042】
上記で説明されているように、本明細書で使用される場合、「硫酸アンモニウム」という用語は、硫酸ジアンモニウム((NH4)2SO4)および重硫酸アンモニウム(NH4HSO4)を指す。同様に上記で説明されているように、明確な指定がない場合であっても、一般に硫酸アンモニウムについて本出願に記載されるすべての開示は、好ましい実施形態である硫酸ジアンモニウム((NH4)2SO4)を具体的に適用し、それを特に指す。
【0043】
高温および高PHでRNAをプロセシングする方法
第1の態様によれば、本発明は、RNAをプロセシングする方法であって、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理する工程を含む方法を提供する。驚くべきことに、および有利なことに、硫酸アンモニウムの存在は、RNAが効率的に安定化され、過酷な温度およびpH条件下で分解から保護されることを保証する。より驚くべきことに、実施例によって実証されているように、硫酸アンモニウムは、例えば10mMまたはそれ未満の非常に低濃度で各RNA安定化効果を発揮する。硫酸アンモニウムは、RNA分解を阻害または防止することによって、使用される温度およびpHでRNAを安定化し得る。それにより、RNA完全性が維持され得、例えばRT-PCRなどの標準的な方法を使用したその後のRNA分析が可能になる。実施例によって実証されているように、硫酸アンモニウムの存在下、高温および高pH条件下でRNAを処理した場合、RNA完全性はかなり改善される。
【0044】
前記方法は、RNAと硫酸アンモニウムとを接触させて、所望の硫酸アンモニウム濃度、例えば10mMまたはそれ未満を確立することを含み得る。RNAをプロセシングする方法は、RNAと、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムとを接触させることによって、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む処理条件でRNAを安定化することを含み得る。前記方法は、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを伴う条件でRNAを安定化することを含み得、前記方法は、RNAと、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムとを接触させることを含む。
【0045】
硫酸アンモニウムは、処理中に使用される温度およびpHでRNAを安定化し得る。本明細書で使用される場合、「RNAの安定化」は、RNA分解を阻害または防止することを含み得る。特に、「RNAの安定化」は、モノヌクレオチドへのRNA分子の分解を阻害または防止することを含み得る。RNAは、特に、温度誘導性分解から、または温度およびpH誘導性分解から保護され得る。「RNAの安定化」は、特に、加水分解から、より具体的には自然加水分解からRNAを保護することを含み得る。「RNAの安定化」は、ホスホジエステル結合の切断からRNAを保護することを含み得る。実施例によって実証されているように、RNA完全性は、硫酸アンモニウムの存在下で実質的に改善される。硫酸アンモニウムがこれらの驚くべき保護効果を発揮する正確な機構は理解されていない。硫酸アンモニウムによる安定化は、直接的または間接的な相互作用を介して、例えば、RNAと直接的に相互作用することによって、またはこのような相互作用がなければRNAを分解しもしくはRNAの分解を促進し得る異なる成分と相互作用することによって行われ得る。
【0046】
一実施形態によれば、「RNAの安定化」は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%のRNA分解の減少、好ましくは加水分解によるRNA分解の減少をもたらす。減少は、硫酸アンモニウムの非存在下である以外は同一の条件下で処理されたRNAについて観察された分解と比較した減少であり得る。
【0047】
一実施形態によれば、「RNAの安定化」は、RNA完全性の少なくとも100%、少なくとも150%または少なくとも200%の改善をもたらす。実施例によって実証されているように、RNA完全性は、200~300%改善され得る。改善は、硫酸アンモニウムの非存在下である以外は同一の条件下で処理されたRNAについて観察された完全性と比較した改善であり得る。
【0048】
RNA分解およびRNA完全性を決定する方法は周知であり、変性条件下におけるゲル電気泳動の使用、およびマイクロ流体機器(例えば、Agilent 2100 Bioanalyzer;Agilent Technologies)の使用に基づく方法が挙げられる。一実施形態によれば、RNA分解およびRNA完全性は、RNA完全性数(RIN)を決定することによって決定され得る。RINは、完全性の値をRNA測定結果に割り当てるためのアルゴリズムである。RIN値は、10(インタクト)~1(完全に分解)の範囲である。RINは、例えば、Schroederら、“The RIN:an RNA integrity number for assigning integrity values to RNA measurements”(BMC Molecular Biology 2006;7:3)で議論されている。典型的には、少なくとも5のRIN値を有するRNAは、例えば、qPCR用途を含むRT-PCR用途などの標準的な方法に適切であると考えられる(例えば、S.Fleige,M.W.Pfaffl/Molecular Aspects of Medicine 27(2006)126-139を参照のこと)。
【0049】
本明細書で定義される硫酸アンモニウムの存在下、高温および高pHにおけるRNAの処理後に、少なくとも5、少なくとも6または少なくとも7のRINを有するRNAが得られ得る。実施例によって実証されているように、これは、例えば、使用される温度およびpHならびにインキュベーション時間によって影響を受け得る。実施例から分かるように、少なくとも8または少なくとも9などのさらにより高いRIN値が達成され得る。一実施形態によれば、「RNAの安定化」は、硫酸アンモニウムの非存在下である以外は同一の条件下でプロセシングされたRNAについて得られたRINよりも少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%または200~400%高いRINをもたらす。
【0050】
硫酸アンモニウム
処理中の硫酸アンモニウム濃度は、50mMまたはそれ未満、40mMまたはそれ未満、30mMまたはそれ未満、25mMまたはそれ未満、20mMまたはそれ未満、15mMまたはそれ未満、好ましくは10mMまたはそれ未満であり得る。上記で言及されているように、本発明の硫酸アンモニウムは、硫酸ジアンモニウム((NH4)2SO4)および/または重硫酸アンモニウム(NH4HSO4)であり得、硫酸ジアンモニウムが好ましい。驚くべきことに、非常に低濃度の硫酸アンモニウムが、安定化効果を達成するために十分かつ効率的である。一実施形態によれば、高温および高pHにおける処理中の硫酸アンモニウムの濃度は、9mMもしくはそれ未満、8mMもしくはそれ未満、7mMもしくはそれ未満、6mMもしくはそれ未満、5mMもしくはそれ未満、4mmもしくはそれ未満、3.5mMもしくはそれ未満または3mMもしくはそれ未満である。実施例によって実証されているように、2.5mMまたはそれ未満の濃度であっても、顕著な安定化効果を達成するために十分である。RNAの処理は、硫酸アンモニウムの存在下で行われるので、濃度は0mMを超える。一実施形態によれば、硫酸アンモニウムの濃度は、少なくとも0.25mM、好ましくは少なくとも0.5mM、少なくとも0.75mMまたは少なくとも1mMである。議論されているように、硫酸ジアンモニウムが好ましい。
【0051】
本明細書に記載される硫酸アンモニウムの濃度は、通常、処理の間のRNAを含む液体組成物中の濃度である。前記液体組成物は、少なくとも処理中に、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHおよび少なくとも70℃の温度を有する。このような液体組成物を提供するための様々な選択肢は、本明細書に記載されている。一実施形態では、例えば、アニオン交換マトリックスからRNAを溶出させるために、RNAを処理する場合に実施形態において存在し得る固相、例えばアニオン交換マトリックスの体積および/または重量を考慮せずに、濃度を計算する。
【0052】
一実施形態によれば、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAを処理する場合、硫酸アンモニウムは、0.1mM~10mM、0.25mM~10mM、0.5mM~9mM、0.7mM~8mM、1mM~7mM、1.5mM~6mM、1.75mM~5mMまたは2mM~4mMの濃度で存在する。実施例で実証されているように、このような高温および強アルカリ性条件における長期インキュベーション後であっても、RNAの強力な安定化が観察された。硫酸アンモニウムの例示的な濃度は、2mM~3.5mMの範囲内であり得る。
【0053】
したがって、前記方法は、硫酸アンモニウムの存在下、したがって硫酸ジアンモニウムおよび/または重硫酸アンモニウム、好ましくは上記濃度値または濃度範囲の硫酸ジアンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAを処理することを含み得る。
【0054】
実施例から分かるように、このような非常に低濃度の硫酸アンモニウムは、例えば、75℃、さらには85℃の温度および強アルカリ性条件下でRNA安定化を保証した。この効果は、長期インキュベーション中であっても観察された。特にこのような低濃度の硫酸アンモニウムは、本発明の方法において使用され得るように、有利なことに、PCRまたはqPCR用途などのプロセシングRNAの典型的かつ重要な下流用途を妨げない。
【0055】
PH
硫酸アンモニウムは強力なRNA保護効果を付与するので、RNAは、少なくとも70℃の温度および強アルカリ性条件下で処理され得る。前記方法は、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAを処理することを含む。実施形態では、処理中のpHは、少なくとも8.2、少なくとも8.5または少なくとも8.7であり得る。実施形態では、処理中のpHは、少なくとも9、少なくとも9.2、少なくとも9.5、少なくとも9.8、少なくとも10、少なくとも10.2または少なくとも10.5であり得る。実施形態によれば、pHは、14もしくはそれ未満、13.5もしくはそれ未満、好ましくは13もしくはそれ未満、12.8もしくはそれ未満、12.5もしくはそれ未満、12.2もしくはそれ未満、12もしくはそれ未満または11.75もしくはそれ未満である。
【0056】
pHは、8~14、8.2~13.5、8.5~13または8.7~12.5の範囲内であり得る。pHは、9~14、9.2~13.5、9.4~13、9.6~12.5、9.8~12.25または約10~約12の範囲内であり得る。約10~約12のpH値は、特に、約10.5、約11および約11.5のpH値を含む。例えば、実施例では11のpHを試験し、硫酸アンモニウムは、この高pH値で強力な安定化効果を発揮する。特に好ましいpH範囲は、10~11.5である。
【0057】
したがって、前記方法は、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および上記pH値または範囲を含む条件でRNAを処理することを含み得る。好ましい硫酸ジアンモニウムを含む硫酸アンモニウムの好ましい濃度範囲および値は上記に記載されており、好ましいpH範囲および値のいずれかと組み合わされ得る。
【0058】
本明細書に記載されるpHは、通常、処理中にRNAを含む液体組成物中のpHである。前記液体組成物は、少なくとも処理中に、記載されているpHおよび少なくとも70℃の温度を有する。このような液体組成物を提供するための様々な選択肢は、本明細書に記載されている。
【0059】
温度
記載されているように、前記方法は、少なくとも70℃の温度を含む条件でRNAを処理することを含む。温度は、少なくとも70℃、少なくとも72℃、少なくとも74℃、少なくとも75℃、少なくとも77℃、少なくとも78℃、少なくとも80℃、少なくとも82℃または少なくとも85℃であり得る。一実施形態によれば、温度は、95℃もしくはそれ未満または90℃もしくはそれ未満である。
【0060】
温度は、70℃~100℃、70℃~95℃、73℃~93℃、75℃~90℃または約75℃~85℃の範囲内であり得る(76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃および84℃の値が含まれる)。さらに適切な範囲は、72℃~88℃である。実施例から分かるように、硫酸アンモニウムは、非常に低濃度であっても、例えば75℃または85℃の高温でRNAの優れた安定化を提供する。
【0061】
したがって、前記方法は、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、上記温度または温度範囲および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAを処理することを含み得る。好ましい硫酸ジアンモニウムを含む硫酸アンモニウムの好ましい濃度範囲および値ならびにpHは上記に記載されており、好ましい温度範囲および値のいずれかと組み合わされ得る。
【0062】
本明細書に記載される温度は、通常、処理中にRNAを含む液体組成物中の温度である。前記液体組成物は、少なくとも処理中に、記載されている温度を有する。このような液体組成物およびこのような温度を提供するための様々な選択肢は、本明細書に記載されている。
【0063】
キレート化剤
一実施形態では、加えて、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件における処理は、キレート化剤、好ましくはEDTAの存在下で行われる。高温およびpH処理条件の確立前に、その確立中にまたはその確立後に、キレート化剤とRNAとを接触させ得る。キレート化剤は、二価カチオンを錯化するための薬剤であり得る。驚くべきことに、高温および高pHにおける処理中に、キレート化剤は、RNA安定化を支援およびさらに改善し得ることが見出された。さらに、本発明者らによって実施例で実証されているように、キレート化剤は、安定化効果を維持しながら、例えば2mMまたはそれ未満などの特に低濃度の硫酸アンモニウムを使用することを可能にする。一実施形態によれば、キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、1,2-ビス-(o-アミノフェノキシ)-エタン-N’,N’,-N’,N’-四酢酸テトラアセトキシ-メチルエステル(BAPTA-AM)、ジエチルジチオカルバメート(DEDTC)、ジカルボキシメチルグルタミン酸、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。キレート剤のさらなる例は、アセチルアセトン、エチレンジアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ジエチレントリアミン、イミノジアセテート、トリエチレンテトラミン、トリアミノトリエチルアミン、ニトリロトリアセテート、ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、エチレンジアミノトリアセテート、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタアセテート、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラアセテート、カルボン酸塩、例えばシュウ酸塩、酒石酸塩およびクエン酸塩、ジメチルグリオキシム、8-ヒドロキシキノリン、2,2’-ビピリジン、1,10-フェナントロリン、ジメルカプトコハク酸ならびに1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンである。有利な実施形態では、キレート化剤は、EDTAである。好ましくは、EDTAまたは他のキレート化剤は、例えばPCRなどのRNAの下流用途における特定の酵素反応を潜在的に妨げることを回避するために、比較的低濃度で使用される。一実施形態によれば、処理中の1つまたはそれを超えるキレート化剤の濃度は、5mMもしくはそれ未満、3mMもしくはそれ未満、2mMもしくはそれ未満、1mMもしくはそれ未満、0.8mMもしくはそれ未満、0.5mMもしくはそれ未満、0.25mMもしくはそれ未満または0.1mMもしくはそれ未満である。EDTAの濃度は、好ましくは、1mMまたはそれ未満である。キレート化剤は、それが硫酸アンモニウム、例えば特に硫酸ジアンモニウムの保護効果を支援する濃度で使用される。個々のキレート化剤の適切な濃度は、当業者によって決定され得る。濃度は、0.001mM~1mM、0.005mM~0.8mM、0.0075mM~0.7mMまたは0.01mM~0.5mMの範囲内であり得る。本発明者らが実験で見出したように、これらの濃度は、EDTAに特に適切である。一実施形態によれば、EDTAなどのキレート化剤の濃度は、0.005mM~0.015mMである。一実施形態によれば、濃度は、処理中に存在するさらなるキレート化剤の総濃度である。
【0064】
処理用組成物およびさらなる実施形態の調製
上記で説明されているように、第1態様のRNAをプロセシングする方法は、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAを処理することを含む。RNAプロセシング中のいくつかの時点において、硫酸アンモニウムが、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む処理条件において所望の濃度で組成物中に存在する限り、硫酸アンモニウム濃度、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを提供/達成する順序は限定されないと理解されよう。
【0065】
最初に、例えば10mMまたはそれ未満の硫酸アンモニウム濃度を提供し得るかまたはそれが存在し得、続いて、少なくとも70℃の温度および/または少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを確立し得る(同時にまたはその後に温度およびpHを提供し、温度の前または後にpHを提供する)。また、最初に(同時にまたは次々に)、硫酸アンモニウム濃度およびpHを提供し得るかまたはそれが存在し得、続いて、温度を確立し得る。当然のことながら、最初に(同時にまたは次々に)、硫酸アンモニウム濃度および温度を提供するかまたはそれが存在し、続いて、pHを提供することも可能である。想定される用途に応じて、最初にpHを提供し得るかもしくはそれが存在するか、または最初に温度を提供し得るかもしくはそれが存在し、続いて、(同時にまたは次々に)他の2つの条件を提供することも望ましい場合がある。
【0066】
前記方法は、硫酸アンモニウム濃度の確立前に、その確立と同時にまたはその確立後に、温度を少なくとも70℃または上記適切な温度値または範囲のいずれか1つに調整することを含み得る。これは、本方法における能動的な工程であり得る。本明細書に記載される温度を達成または調整するための手段および方法は当業者に公知であり、本明細書では詳細な説明を必要としない。それらは、加熱デバイス、例えば限定されないが、加熱プレート(撹拌手段の有無にかかわらず)、加熱マントル、水浴、加熱ブロック、サーモサイクラーなどを使用することを含む。
【0067】
前記方法は、硫酸アンモニウム濃度の確立前に、その確立と同時にまたはその確立後に、pHを少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHまたは上記適切なpH値または範囲のいずれか1つに調整することを含み得る。これは、本方法における能動的な工程であり得る。pHを調整するための手段および方法は当業者に公知であり、本明細書では詳細な説明を必要としない。それらは、特に、強塩基、例えば限定されないが、水酸化アルカリ塩基、緩衝系またはアルカリ性有機化合物を使用して、所望のpHを提供することを含む。また、アルカリ性緩衝剤が使用され得る;例としては、限定されないが、TAPS、AMPD、TABS、AMPSO、CHES、CAPSO、AMP、CAPSおよびCABSが挙げられる。
【0068】
前記方法は、例えば≦10mMの所望の濃度を確立するように硫酸アンモニウムの濃度を調整すること、および/または上記適切なpH値または範囲のいずれか1つを調整することを含み得る。前記方法は、RNAと硫酸アンモニウムとを接触させて、10mMまたはそれ未満の濃度を確立することを含み得る。
【0069】
一実施形態によれば、適用処理条件でRNAを安定化するために有効な濃度で、RNAと硫酸アンモニウムとを接触させる。例えば、RNAと、高温およびpH処理条件中にRNAを安定化するために有効な濃度の硫酸アンモニウムを含む溶液(これは、好ましくは水溶液である)とを接触させ得る。
【0070】
一実施形態によれば、RNAと、タンパク質を沈殿させない濃度の硫酸アンモニウム(例えば、硫酸アンモニウムを含む溶液)とを接触させる。
【0071】
好ましくは、前記方法は、硫酸アンモニウムを追加して、例えば10mMまたはそれ未満の所望の濃度を確立することを含む。これは、固体硫酸アンモニウムを、RNAを含む液体組成物に追加することによって行われ得る。
【0072】
しかしながら、好ましくは、硫酸アンモニウムを含む溶液とRNAとを接触させて、所望の硫酸アンモニウム濃度を確立する。例示的な好ましい溶液は、以下にさらに詳細に記載されており、このような溶液を参照のこと。それらは、有利なことに、例えば10mMまたはそれ未満の所望の硫酸アンモニウム濃度を確立するために使用され得る。
【0073】
一実施形態によれば、硫酸アンモニウムを追加して硫酸アンモニウム濃度を確立し、硫酸アンモニウムの追加前に、硫酸アンモニウムは存在しないか、またはごく微量の硫酸アンモニウムが存在する。一実施形態によれば、硫酸アンモニウムを追加し、硫酸アンモニウムの追加前に、RNAは硫酸アンモニウムと接触していないか、または微量の硫酸アンモニウムとのみ接触している。好ましくは、硫酸アンモニウム含有溶液を使用して、硫酸アンモニウムを追加する。
【0074】
本明細書で使用される場合、硫酸アンモニウムは、好ましい硫酸ジアンモニウムおよび重硫酸アンモニウムを指すので、一実施形態によれば、硫酸ジアンモニウムの追加前に、硫酸ジアンモニウムは存在しないか、またはごく微量の硫酸ジアンモニウムが存在することを理解されたい。一実施形態によれば、硫酸ジアンモニウムの追加前に、硫酸ジアンモニウムおよび重硫酸アンモニウムは存在しないか、または微量でのみ存在する。
【0075】
10mMまたはそれ未満の濃度を確立するためのRNAと硫酸アンモニウムとの接触は、RNAと、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含む溶液とを接触させることを含み得、一実施形態では、RNAと溶液との接触前にまたはその接触後に、pHを少なくとも8、好ましくは少なくとも9に調整し、RNAと溶液との接触前にまたはその接触後に、温度を少なくとも70℃に調整する。RNAの分解をもたらし得る条件が生じる場合、硫酸アンモニウムはその安定化効果を直ぐに発揮し得るので、RNAを少なくとも70℃の高温およびpH条件に曝露する場合、硫酸アンモニウムは既に存在することが好ましい。他の硫酸アンモニウム濃度を使用する場合も同様である。
【0076】
10mMまたはそれ未満の濃度を確立するためのRNAと硫酸アンモニウムとの接触は、RNAと、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含む溶液であって、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有する溶液とを接触させることを含み得、RNAと溶液との接触前にまたはその接触後に、温度を少なくとも70℃に調整する。これは、本方法の好ましい実施形態であり、例えば、RNAをアニオン交換マトリックスに結合させ、前記処理条件を使用して、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させる場合に非常に有用である。特に、RNAと、好ましくは少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有する硫酸アンモニウム含有溶液との接触後に、温度を少なくとも70℃に上昇させ得る。しかしながら、10mMまたはそれ未満の濃度を確立するためのRNAと硫酸アンモニウムとの接触は、RNAと、少なくとも70℃の温度、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有する溶液であって、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含む溶液とを接触させること、およびRNAと加熱溶液とを接触させることを含み得る。これも本方法の好ましい実施形態であり、例えば、カラムベースのアニオン交換マトリックスを使用して、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるためにも特に適切である。他の硫酸アンモニウム濃度を使用する場合も同様である。
【0077】
10mMまたはそれ未満の濃度を確立するためのRNAと硫酸アンモニウムとの接触は、RNAと、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含む溶液であって、少なくとも70℃の温度を有する溶液とを接触させることを含み得、RNAと溶液との接触前にまたはその接触後に、pHを少なくとも8、好ましくは少なくとも9に調整する。RNAと溶液との接触後に、pHを少なくとも8、好ましくは少なくとも9に調整し得る。また、10mMまたはそれ未満の濃度を確立するためのRNAと硫酸アンモニウムとの接触は、RNAと、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含む溶液とを接触させることを含み得、RNAと溶液との接触後に、pHを少なくとも8、好ましくは少なくとも9に調整し、RNAと溶液との接触後に、温度を少なくとも70℃に調整する。他の硫酸アンモニウム濃度を使用する場合も同様である。例えば、アニオン交換マトリックスに結合したDNAおよびRNAの両方を放出させることを目的とする場合、RNAと溶液との接触後に、pHを少なくとも8、好ましくは少なくとも9に調整することが望ましい場合がある。
【0078】
例えば10mMまたはそれ未満の濃度を確立するためのRNAと硫酸アンモニウムとの接触はまた、RNAと、少なくとも70℃の温度、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHまたは両方を有する溶液とを接触させ、続いて、RNAと硫酸アンモニウムとを接触させて、例えば10mMまたはそれ未満の所望の濃度を提供することを含み得ると理解されよう。この実施形態では、硫酸アンモニウムが存在したら、RNA安定化が達成される。最初に、硫酸アンモニウムの非存在下で、RNAを高温および/または高pH条件に曝露するが、硫酸アンモニウムを追加したら、それは効率的に安定化される。実施例から分かるように、1分間または2分間の初期インキュベーション期間後に、RNA分解が特に顕著であるので、温度および/またはpH条件が既に確立された後に、RNAと硫酸アンモニウムとを接触させる場合であっても、RNAは硫酸アンモニウムから利益を得る。この接触は、好ましくは、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを伴う条件下でRNAを処理して2分もしくはそれ未満、1分もしくはそれ未満、45秒もしくはそれ未満または30秒もしくはそれ未満以内に行われる。このような実施形態は、例えば、前記処理条件を使用してアニオン交換マトリックスからRNAを溶出させる場合に使用され得る。溶出は、少なくとも2つの工程を含み得、最初に、結合RNAとアルカリ溶出溶液とを接触させ、続いて、(好ましくは、溶液に含まれる)硫酸アンモニウムとを接触させて、RNAを保護する。
【0079】
一実施形態によれば、少なくとも70℃の温度を含む条件で処理されるRNA含有組成物は、9.5~12.5、好ましくは10~12のpHを有し、0.5mM~7mM、好ましくは0.75mM~5mMの濃度の硫酸アンモニウムを含む。実施形態では、少なくとも70℃の温度を含む条件で処理されるRNA含有組成物は、10~12のpHを有し、0.5mM~5mM、好ましくは0.75mM~3mMの濃度の硫酸アンモニウムを含む。上記のように、RNA含有組成物はまた、キレート化剤、好ましくはEDTAを含み得る。したがって、実施形態では、少なくとも70℃の温度を含む条件で処理されるRNA含有組成物は、9.5~12.5、好ましくは10~12のpHを有し、0.5mM~7mM、好ましくは0.75mM~5mMの濃度の硫酸アンモニウムを含み、EDTAをさらに含む。実施形態では、EDTAは、0.005mM~1mM、好ましくは0.01mM~0.5mMの濃度で含まれる。EDTAは、0.005mM~0.015mMの濃度で含まれ得る。実施形態では、処理温度は、70℃~90℃、72℃~88℃または75℃~85℃の範囲内である。本明細書に記載されるように、アニオン交換マトリックスからRNAを放出/溶出させるために、本発明の技術を使用する場合、前記組成物は、例えば磁性粒子の形態のアニオン交換マトリックスを含み得る。
【0080】
インキュベーション
一実施形態によれば、RNAの処理は、RNAをインキュベートする工程を含む。特に、RNAの処理は、上記に詳細に記載されている温度およびpH条件でRNAをインキュベートすることを含み得る。
【0081】
RNAを少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも5分間、少なくとも7分間または少なくとも10分間インキュベートし得る。それを最大60分間、最大30分間、最大20分間、最大18分間、最大15分間、最大12分間、最大10分間、最大7分間、最大5分間、最大3分間または最大2分間インキュベートし得る。好ましい実施形態によれば、RNAを1分間~20分間、2分間~15分間、5分間~12分間または7分間~10分間インキュベートする。
【0082】
RNAインキュベーション中に、上記に詳細に記載されている濃度の硫酸アンモニウムが存在する場合、それは分解からRNAを保護する。これは、既に10mMまたはそれ未満の濃度のRNA硫酸アンモニウムが、上記で定義される温度およびpH条件でRNAの安定化を付与するためである。しかしながら、記載されているように、最初に、硫酸アンモニウムの非存在下でRNAを短時間インキュベートし、続いて、硫酸アンモニウムを追加して分解を防止することも企図される。
【0083】
上記で定義される温度およびpH条件におけるインキュベーションの後に、70℃未満の温度、例えば特に室温におけるインキュベーション期間が続き得る。本明細書で使用される場合、「室温」は、特に、15℃~28℃の温度を意味し得る。さらに、70℃またはそれを超える処理条件の適用後に、例えば0℃~20℃または2℃~10℃の温度でRNA含有組成物を冷却し得る。例えば、上記で定義される温度およびpH条件におけるインキュベーションの後に、70℃未満の温度、例えば特に室温またはそれ未満における最大60分間、最大50分間、最大40分間、最大30分間、最大20分間または少なくとも10分間のインキュベーション期間が続き得る。この場合、好ましくは、上記で定義される濃度の硫酸アンモニウムが存在する。
【0084】
上記で示されているように、好ましくは、RNAインキュベーションの全期間中に、上記で定義される濃度の硫酸アンモニウムが存在するが、RNAの処理は、最初に、硫酸アンモニウムの非存在下でRNAを短時間インキュベートし、続いて、インキュベーション中にまたはその後に、硫酸アンモニウムを追加することを含むことも企図される。したがって、最初に、上記で定義される温度およびpH条件でRNAをインキュベートし、続いて、10mMまたはそれ未満の硫酸アンモニウム濃度を確立することが企図される。例えば、2分間、1分間または45秒間もしくはそれ未満の短いインキュベーション後に、硫酸アンモニウム濃度を確立し得る。実施例から分かるように、この期間後に、高温およびpHのRNA分解効果は特に顕著である。したがって、また、高温およびpHにおける短いインキュベーション後に、硫酸アンモニウム濃度を確立する場合、RNAは、硫酸アンモニウムの安定化効果から利益を得ることができる。しかしながら、RNAを少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHに曝露する場合、全期間中に硫酸アンモニウムが存在することが好ましい。
【0085】
一実施形態によれば、1つまたはそれを超えるタンパク質分解酵素または他の酵素化合物の存在下でインキュベーションを行い、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを伴う処理条件におけるインキュベーション中に、1つまたはそれを超えるタンパク質分解酵素または他の酵素化合物を不活性化する。熱、アルカリ性pHまたはその両方によって、1つまたはそれを超えるタンパク質分解酵素または他の酵素化合物を不活性化し得る。サンプル、特に生物学的サンプルからRNAを単離する場合、このような酵素および酵素化合物の1つまたはそれよりも多くを使用することが多い。単離プロセス中に、それらは、精製RNA中に持ち越され得る。本明細書に記載されるように、本発明の方法において使用される温度およびpH処理条件は、有利なことに、アニオン交換マトリックスからRNAを放出(特に、溶出)させるために利用され得る。前記放出プロセス中に、硫酸アンモニウムの存在は、RNAを保護および安定化する。したがって、これらの条件は、RNA単離方法において有利に使用され得る。前記単離プロセス中に、タンパク質分解酵素または他の酵素化合物を使用する場合、上記で定義される高い温度およびpH条件におけるインキュベーションは、有利なことに、例えばアニオン交換マトリックスからRNAを溶出させるためにRNAを処理またはインキュベートする際に依然として存在し得る持ち越された任意のプロテアーゼまたは他の酵素化合物を不活性化し得る。硫酸アンモニウムの存在はRNAを保護するので、プロテイナーゼKなどの特にロバストな酵素の不活性化に必要とされるような過酷な条件(これは、約75℃またはそれを超える温度を含み得る)を適用することを可能にする。
【0086】
タンパク質分解酵素は、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドにおけるペプチド結合の切断を触媒する酵素である。例示的なタンパク質分解酵素としては、限定されないが、プロテイナーゼおよびプロテアーゼ、特にズブチリシン、サブチラーゼ、アルカリセリンプロテアーゼなどが挙げられる。例示的なズブチリシンとしては、限定されないが、プロテイナーゼK、プロテイナーゼR、プロテイナーゼT、ズブチリシン、ズブチリシンA、QIAGENプロテアーゼなどが挙げられる。サブチラーゼ、サブチリシン、プロテイナーゼKおよび他のプロテアーゼについての議論は、他の場所ではGenovら、Int.J.Peptide Protein Res.45:391-400,1995に見られ得る。好ましくは、タンパク質分解酵素は、プロテイナーゼKである。
【0087】
タンパク質分解酵素、例えば特にプロテイナーゼKは、RNAプロセシング方法において、例えばRNA含有サンプルの溶解または消化に頻繁に使用される。下流用途を妨げ得るので、いくつかの時点において、このような方法における精製中に(例えば、アニオン交換マトリックスからのRNAの放出中に)除去されなかったタンパク質分解酵素、例えばプロテイナーゼKを不活性化することが望ましい。例えば、プロテイナーゼKは50℃で活性であるので、RNAの逆転写または酵素の使用を伴う他の下流用途を妨げ得る。
【0088】
存在し得る他の酵素化合物であって、不活性化され得る他の酵素化合物は、ヌクレアーゼを含む。ヌクレアーゼの例は、DNAseおよびRNAse、特にRNAsesである。
【0089】
硫酸アンモニウム含有溶液
上記のように、硫酸アンモニウムは、好ましくは、RNAと接触される溶液に含まれる。したがって、前記溶液は、処理条件に供されるRNA含有組成物中の硫酸アンモニウム濃度を確立するために使用され得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、硫酸アンモニウムは、硫酸ジアンモニウムおよび重硫酸アンモニウムを指すという上記開示と一致して、硫酸アンモニウム含有溶液は、硫酸ジアンモニウム、重硫酸アンモニウムまたはその両方を含む溶液であり得、硫酸ジアンモニウムが好ましい。
【0091】
したがって、一実施形態によれば、RNAをプロセシングする方法であって、前記RNAと、硫酸アンモニウムを含む溶液とを接触させること、ならびに硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理することを含む方法が提供される。適切な硫酸アンモニウム濃度は、上記に記載されている。好ましくは、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下で、RNAを処理する。
【0092】
溶液は、50mMもしくはそれ未満、40mMもしくはそれ未満、30mMもしくはそれ未満、25mMもしくはそれ未満、20mMもしくはそれ未満、15mMもしくはそれ未満または好ましくは10mMもしくはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムを含み得る。少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHでRNAを処理する場合に存在し得る硫酸アンモニウム濃度を議論する際、それは、上記濃度値または範囲の硫酸アンモニウムを含み得る。ここでも適用される上記開示を参照のこと。一実施形態によれば、溶液は、0.1mM~10mM、0.25mM~10mM、0.5mM~9mM、0.7mM~8mM、1mM~7mM、1.5mM~6mM、1.75mM~5mMまたは2mM~4mM、2mM~3.5mMまたは約2.5mMの濃度の硫酸アンモニウムを含む。好ましくは、それは、前記濃度の1つの硫酸ジアンモニウムを含む。
【0093】
一実施形態によれば、溶液は、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有する。溶液は、有利なことに、処理条件に望ましいアルカリ性pH値を確立するために使用され得る。少なくとも70℃の温度でRNAを処理する場合に存在し得るpH条件を議論する際、それは、上記pH値またはpH範囲を有し得る。ここでも適用される上記開示を参照のこと。溶液は、8~14、8.2~13.5、8.5~13または8.7~12.5の範囲内のpHを有し得る。一実施形態によれば、溶液は、9~14、9.2~13.5、9.4~13、9.6~12.5、9.8~12.25または10~12の範囲内のpHを有する。特に好ましいpH範囲は、10~11.5である。
【0094】
溶液のアルカリ性pHは、少なくとも1つの塩基を含めることによって達成され得る。一実施形態によれば、溶液は、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを提供するために、1つまたはそれを超える塩および/または他の化合物を含む。アルカリ性pHを提供するために溶液に含められ得る典型的な塩は、1つまたはそれを超えるアルカリ性水酸化物塩、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)および/または水酸化カリウム(KOH)である。したがって、一実施形態によれば、溶液は、1つまたはそれを超えるアルカリ性水酸化物塩を含み得る。溶液は、NaOH、KOHまたはその両方を含み得る。
【0095】
例えば、溶液は、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHまたは上記pH値および範囲のいずれか、特に9~14、9.2~13.5、9.4~13、9.6~12.5、9.8~12.25または10~12の範囲内のpHを提供するために十分な濃度のNaOHおよび/またはKOHを含み得る。
【0096】
一実施形態によれば、溶液は、10mM~50mM、12mM~40mM、15mM~35mMまたは約20mM~30mMのNaOH、KOHまたはその両方を含む。一実施形態によれば、示されている濃度は、溶液に含まれるアルカリ性水酸化物塩の総濃度である。
【0097】
好ましくは、溶液は水性である。一実施形態によれば、溶液は、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるための溶液である。したがって、溶液は、溶出溶液、特に溶出バッファーであり得る。
【0098】
溶液は、さらなる成分、例えば1つまたはそれを超える塩を含み得る。塩は、例えば、それぞれ100mMもしくはそれ未満(例えば、90mMもしくはそれ未満、80、70、60もしくは50mMもしくはそれ未満または10~100mM、20~80mMまたは30~70mM)の濃度で含まれ得る。溶液は、1つまたはそれを超えるアルカリ金属ハロゲン化物、例えばNaClおよび/またはKClを含み得る。それは、それぞれ100mMもしくはそれ未満(例えば、90mMもしくはそれ未満、80、70、60もしくは50mMもしくはそれ未満または10~100mM、20~80mMまたは30~70mM)の濃度の1つまたはそれを超えるアルカリ金属ハロゲン化物、特にKClを含み得る。一実施形態によれば、アルカリ金属ハロゲン化物の総濃度またはイオン強度は、100mMもしくはそれ未満(例えば、90mMもしくはそれ未満、80、70、60もしくは50mMもしくはそれ未満または10~100mM、20~80mMまたは30~70mM)である。一実施形態によれば、塩は、100mMもしくはそれ未満(例えば、90mMもしくはそれ未満、80、70、60もしくは50mMもしくはそれ未満または10~100mM、20~80mMまたは30~70mM)の総濃度またはイオン強度で含まれる。
【0099】
溶液は、低塩溶液であり得る。高塩濃度または高イオン強度は、RNAの下流用途を妨げ得るので、溶液は低塩溶液であることが好ましい。低塩溶液は、特に、<100mMのイオン強度を有する溶液であり得る。
【0100】
したがって、一実施形態によれば、溶液は、≦100mM、≦80mMまたは≦50mMのイオン強度を有する溶液である。
【0101】
一実施形態によれば、溶液は緩衝化されている。溶液は、1つまたはそれを超える緩衝剤、例えば、Tris-HCl、MOPS、HEPES PIPESおよびMESから選択される緩衝剤を含み得る。したがって、硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件におけるRNAの処理は、緩衝剤の存在下で行われ得る。適切なアルカリ性緩衝剤も上記に記載されており、上記開示を参照のこと。記載されているように、緩衝剤は、RNAと接触される溶液に含まれ得る。しかしながら、緩衝剤はまた、緩衝化または部分緩衝化RNA含有組成物をもたらす前工程、例えば洗浄工程から持ち越され得、次いで、本発明の条件を使用してこれを処理する。
【0102】
一実施形態によれば、溶液は、キレート化剤を含む。詳細および利点は上記に記載されており、上記開示を参照のこと。一実施形態によれば、キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、1,2-ビス-(o-アミノフェノキシ)-エタン-N’,N’,-N’,N’-四酢酸テトラアセトキシ-メチルエステル(BAPTA-AM)、ジエチルジチオカルバメート(DEDTC)、ジカルボキシメチルグルタミン酸、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。さらなる適切なキレート化剤も上記に記載されている。有利な実施形態では、溶液は、キレート化剤としてEDTAを含む。一実施形態によれば、溶液は、5mMもしくはそれ未満、3mMもしくはそれ未満、2mMもしくはそれ未満、1mMもしくはそれ未満、0.8mMもしくはそれ未満、0.5mMもしくはそれ未満、0.25mMもしくはそれ未満または0.1mMもしくはそれ未満の濃度の1つまたはそれを超えるキレート化剤を含む。EDTAの濃度は、好ましくは1mMまたはそれ未満である。溶液は、例えば、0.001mM~1mM、0.005mM~0.8mM、0.0075mM~0.7mMまたは0.01mM~0.5mMの濃度のEDTAまたは他のキレート化剤を含み得る。これらの濃度は、EDTAに特に適切である。一実施形態によれば、EDTAなどのキレート化剤の濃度は、0.005mM~0.015mMである。一実施形態によれば、濃度は、溶液中に存在するキレート化剤の総濃度である。
【0103】
溶液は、PCR用途などのRNAの下流用途を支援する成分、例えばポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。
【0104】
溶液は、PCRにおいて、例えばバッファーとしての適用に適切な溶液であり得る。溶液は、直接的にPCRにおいて、またはPCR中に使用される酵素が活性なpHに溶液のpHを低下させた後に、例えばバッファーとしての適用に適切な溶液であり得る。
【0105】
一実施形態によれば、溶液は非錯化Mg2+を含まず、および/または非錯化Ca2+を含まない。一実施形態によれば、溶液は、非錯化二価カチオンを含まない。一実施形態によれば、溶液はMg2+を含まず、および/またはCa2+を含まない。一実施形態によれば、溶液は、二価カチオンを全く含まない。
【0106】
一実施形態によれば、溶液は、有機溶媒を含まない。
【0107】
硫酸アンモニウム含有溶液とRNAとの接触後に、得られた組成物を少なくとも70℃の温度に加熱し得る。上記のように、pH値を少なくとも8に、好ましくはpHを少なくとも9に調整するためのさらなる工程を回避するので、溶液は、好ましくは、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有する(他の適切な好ましいpH値および範囲は上記に記載されている)。したがって、硫酸アンモニウム含有溶液は、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有し得、RNAと溶液との接触後に、温度を少なくとも70℃の温度に調整する。
【0108】
しかしながら、加熱硫酸アンモニウム含有溶液とRNAとを接触させる実施形態も企図される。溶液は、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃または少なくとも85℃の温度を有し得る。RNAを処理する場合に存在し得る温度条件を議論する際、それは、上記温度値または範囲を有し得る。溶液は、70℃~100℃、70℃~95℃、75℃~90℃または約75℃~85℃の範囲内の温度を有し得る。
【0109】
一実施形態によれば、溶液は、9.5~12.5、好ましくは10~12のpHを有し、0.5mM~7mM、好ましくは0.75mM~5mMの濃度の硫酸アンモニウムを含む。実施形態では、溶液は、10~12のpHを有し、0.5mM~5mM、好ましくは0.75mM~3mMの濃度の硫酸アンモニウムを含む。上記のように、溶液は、キレート化剤、好ましくはEDTAをさらに含み得る。したがって、実施形態では、溶液は、9.5~12.5、好ましくは10~12のpHを有し、0.5mM~7mM、好ましくは0.75mM~5mMの濃度の硫酸アンモニウムを含み、EDTAをさらに含む。実施形態では、EDTAは、0.005mM~1mM、好ましくは0.01mM~0.5mMの濃度で溶液に含まれる。一実施形態によれば、EDTAは、0.005mM~0.015mMの濃度で溶液に含まれる。議論されているように、溶液は、好ましくは水溶液である。それは、高pH値を達成するために、1つまたはそれを超えるアルカリ性水酸化物塩、例えばNaOHを含み得る。記載されているように、このような溶液は、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるために使用され得る。
【0110】
アニオン交換マトリックスに結合したRNAの放出
一実施形態によれば、RNAは、アニオン交換マトリックスに結合して存在し、RNAは、処理中に前記アニオン交換マトリックスから放出される。したがって、本発明の方法において使用される処理条件は、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるために特に有用である。したがって、これらの条件は、有利なことに、アニオン交換マトリックスからRNAを溶出させるために使用され得る。好ましくは、アニオン交換マトリックスからRNAを放出/溶出させるために、上記に詳細に記載されている硫酸アンモニウム含有溶液と、RNAが結合したアニオン交換マトリックスとを接触させ、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHおよび少なくとも70℃の温度で放出/溶出を行う。上記のように、好ましくは、少なくとも8、好ましくは少なくとも9の所望のpH値を有する溶液を使用する。溶出のために、溶液とアニオン交換マトリックスとの接触前に、溶液を少なくとも70℃に加熱し得、および/または溶液と、RNAが結合したアニオン交換マトリックスとの接触後に、少なくとも70℃への加熱を行い得る。
【0111】
本明細書で使用される場合、アニオン交換マトリックスからのRNAの「放出」は、特に、アニオン交換マトリックスからRNAを遊離させるプロセスを指す。アニオン交換マトリックスから溶液中にRNAを遊離させ得る。RNAの「放出」は、特に、好ましくは上記に詳細に記載されているように硫酸アンモニウム含有溶液を使用して、アニオン交換マトリックスからRNAを溶出させることを指す。RNA含有溶液からアニオン交換マトリックス(例えば、アニオン交換面を含む粒子)を分離して、アニオン交換マトリックスを含有しない溶出液を提供し得る。
【0112】
少なくとも8のpHでアニオン交換マトリックスからRNAを放出させ得る。典型的には、少なくとも9またはそれを超えるpHでアニオン交換マトリックスからRNAを非常に速やかに放出させ、少なくとも70℃の温度を適用することによって、放出をさらに促進する。高い温度およびpH条件は、アニオン交換マトリックスからのRNAの放出に寄与し、それを促進する。また、上記のように、それらはまた、存在し得る任意の望ましくない酵素、例えば特にRNAseおよびプロテイナーゼ、例えばプロテイナーゼKを不活性化(例えば、変性)する。上記のように、硫酸アンモニウムは、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを伴う過酷な溶出条件中にRNAを安定化して保護し、それにより、RNA分解を阻害する。したがって、硫酸アンモニウムの存在は、高い温度およびpH条件を適用し得、それと同時にRNA品質を保存し得ることを保証する。
【0113】
したがって、RNAが結合したアニオン交換マトリックスからRNAを放出させる方法であって、(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理して、前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出させることを含む方法も提供される。
【0114】
アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるための処理条件は、上記に詳細に記載されているとおりであり得る。したがって、特に、温度およびpH条件ならびに硫酸アンモニウムの濃度は上記のとおりであり得、簡潔性のために、前記説明を参照のこと。好ましくは、RNAの放出を達成するために、RNAが結合したアニオン交換マトリックスと(上記に詳細に記載されている)硫酸アンモニウム含有溶液とを接触させる。上記のように、前記溶液は、好ましくは、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有し、さらなる適切な好ましいpH値および範囲も上記に記載されている。溶液を少なくとも70℃の温度に予熱し得るか、または好ましくは少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有する硫酸アンモニウム含有溶液と、RNAが結合したアニオン交換マトリックスとの接触後に、少なくとも70℃への加熱を行い得る。
【0115】
硫酸アンモニウムは、特に、RNAの放出中に、50mMまたはそれ未満、40mMまたはそれ未満、30mMまたはそれ未満、25mMまたはそれ未満、20mMまたはそれ未満、15mMまたはそれ未満、好ましくは10mMまたはそれ未満、の濃度で存在し得る。それは、RNAの放出中に、0.25mM~10mM、0.5mM~9mM、0.7mM~8mM、1mM~7mM、1.5mM~6mM、1.75mM~5mM、2mM~4mM、2mM~3.5mMまたは約2.5mMの濃度で存在し得る。
【0116】
一実施形態によれば、アニオン交換マトリックスからのRNAの放出(これは、好ましくは、上記に詳細に記載されている硫酸アンモニウム含有溶液を使用して行われる)前に、RNAは、硫酸アンモニウム含有試薬に曝露または接触されていない。
【0117】
RNAを放出/溶出させるために使用されるpHは、8~14、8.2~13.5、8.5~13または8.7~12.5の範囲内であり得る。RNAを放出/溶出させるために使用されるpHは、特に、9~14、9.2~13.5、9.4~13、9.6~12.5、9.8~12.25または10~12の範囲内であり得る。特に好ましいpH範囲は、10~11.5である。
【0118】
RNAを放出/溶出させるために使用される温度は、特に、70℃~100℃、70℃~95℃、75℃~90℃または約75℃~85℃の範囲内であり得る。
【0119】
RNAが結合したアニオン交換マトリックスと溶液とを接触させて、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させ得る。溶液は、好ましくは、上記のように硫酸アンモニウム溶液であり、簡潔性のために、前記説明を再度参照のこと。したがって、RNAが結合したアニオン交換マトリックスからRNAを放出させるための方法であって、前記RNAが結合したアニオン交換マトリックスと、(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムを含む溶液とを接触させること、ならびに(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理して、前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出させることを含む方法も提供される。好ましくは、硫酸アンモニウム含有溶液は、上記溶液である。RNAと溶液との接触前にまたはその接触後に、pHを少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHに調整し得る。しかしながら、好ましくは、調整工程を回避するために、放出/溶出中に使用されるpHは、硫酸アンモニウム含有溶液によって確立される。したがって、一実施形態では、RNAが結合したアニオン交換マトリックスと、(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムを含む溶液であって、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有する溶液とを接触させる。RNAと溶液との接触前にもしくはその接触後に、または加熱溶液をアニオン交換マトリックスに追加することによって、温度を少なくとも70℃に調整し得る。
【0120】
アニオン交換面を含む粒子(例えば、磁性粒子)をアニオン交換マトリックスとして使用する場合、RNAと硫酸アンモニウム含有溶液との接触後に、温度を少なくとも70℃に調整することが特に好ましい。このような粒子を使用して、溶液の追加後に、粒子の存在下で、温度を非常に好都合に調整し得る。所望により、温度を調整しながら、粒子をかき混ぜるかまたは撹拌し得る。あるいは、RNAと接触される溶液は、少なくとも70℃の温度を有し得る。したがって、予熱溶液を使用し得る。RNAが樹脂もしくは膜に、またはカラムに含まれるアニオン交換マトリックスに結合している場合、予熱溶液の使用が特に実行可能である。
【0121】
例えば、アニオン交換マトリックスに結合したDNAおよびRNAの両方を放出させることを目的とする場合、RNAと、(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムを含む溶液であって、場合により少なくとも70℃の温度を有する溶液との接触後に、pHを少なくとも8、好ましくは少なくとも9に調整することが望ましい場合がある。この場合、最初に、8未満の第1のpH、好ましくは9未満のpHでアニオン交換マトリックスからDNAを放出させ得、次いで、pHを少なくとも8の第2のpHに、好ましくは少なくとも9の第2のpHに上昇させて、その後、第2のpHでアニオン交換マトリックスからRNAを放出させ得る。
【0122】
一実施形態によれば、前記方法は、好ましくは硫酸アンモニウムとの接触時に、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHでRNAを処理して、アニオン交換マトリックスに結合したRNAを放出させることを含む。記載されているように、このような過酷な条件を使用して、マトリックスからRNAを放出または分離させる場合、硫酸アンモニウムが存在することが有利である。しかしながら、本明細書に記載される高温条件およびpH条件を使用すると、RNAは、典型的には、非常に速やかに放出される。したがって、また、最初に、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させ得、次いでその後、得られたRNA含有溶液または溶出液を硫酸アンモニウムで安定化し得る。硫酸アンモニウムの非存在下で、最初の短い処理後に、硫酸アンモニウムを追加することも上記に記載されており、この説明を参照のこと。上記のように、硫酸アンモニウムを速やかに追加して、RNA分解を回避すべきである。
【0123】
アニオン交換マトリックス
使用されるアニオン交換マトリックスは、適切な条件下でRNAに結合することができる。RNAが結合するアニオン交換マトリックスの種類は、特に限定されない。適切なアニオン交換マトリックスおよびRNA結合条件は、当業者に公知である。それは、樹脂、膜または粒子であり得る。アニオン交換マトリックスは、アニオン交換面を含む固体支持体であり得る。本明細書で使用される場合、「面」という用語は、特に、固体支持体が液体と接触する際に、それと接触する固体支持体の一部を指す。固体支持体は、アニオン交換部分を提供(例えば、担持)する面を提供する。
【0124】
固体支持体の適切な形式としては、限定されないが、粒子、例えばビーズ、膜、フィルタ、プレート、カラム、容器およびディップスティックが挙げられる。一実施形態によれば、アニオン交換部分を含む面は、容器、例えば容器の内面によって提供される。面またはその一部の内面は、アニオン交換部分で官能化(例えば、コーティング)され得る。アニオン交換部分で官能化され得る各容器の例としては、限定されないが、マイクロチューブおよびマイクロプレートのウェルが挙げられる。アニオン交換面は、アニオン交換基を提供するコーティングの形態、例えば、容器または他のデバイス上のコーティング、例えば、マイクロ流体チャネル上のコーティング、または粒子もしくは他の固体支持体上のコーティングとして提供され得る。アニオン交換マトリックスはまた、カラムに含まれ得る。粒子が使用される場合、一実施形態によれば、粒子は、溶液中における粒子の移動を防止するカラムまたは他のデバイスに含まれない。好ましくは、粒子は、例えばかき混ぜられると移動し得る。
【0125】
アニオン交換マトリックスは、特に、アニオン交換面を提供する磁性粒子によって提供され得る。多くの用途では、アニオン交換面を含む粒子(特に、磁性粒子)が好都合であるので、本明細書で好ましい。磁性粒子はプロセシングされ得、特に、自動化に有利な磁石の助けによって分離され得るので、磁性粒子の使用は、粒子のプロセシングを簡略化する。粒子は、フェリ磁性特性、強磁性特性、常磁性特性または超常磁性特性を有し得、好ましくは超常磁性である。このような特性は、適切な磁性材料を粒子に組み込むことによって達成され得る。適切な方法は、当業者に公知である。好ましくは、磁性材料は、例えば、粒子の基材として使用されるシリカ、ポリケイ酸、ガラスまたはポリマー材料によって完全に封入される。
【0126】
特に、例えば反応容器、ビーカーまたは類似のデバイス中で、粒子、特に磁性粒子を非常に容易かつ好都合に70℃を超える高温に曝露し得、70℃を超える高温でインキュベートし得る。特に、粒子が、粒子の移動を防止するカラムまたは他のデバイスに含まれない場合、有利なことに、粒子をかき混ぜることも可能であり、これは、熱に対する均一な曝露を支援し得る。
【0127】
アニオン交換マトリックスは、RNAと相互作用し得るアニオン交換基を提供するアニオン交換部分を含む。アニオン交換部分は、アニオン交換をすることができる1つまたはそれを超える基、例えばアミン基などを含む。適切な条件下、特に適切なpH条件下で、アニオン交換部分は、アニオンに結合することができる。しかしながら、それらは、アニオンとの会合を必要としない。アニオン交換基は、同じ種類のものであり得るが、しかしながら、異なる種類のアニオン交換基も使用され得る。アニオン交換部分は、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、窒素含有芳香族または脂肪族複素環基、環状アミン、芳香族アミンおよび複素環アミンから選択され得る。一実施形態によれば、アニオン交換部分は、少なくとも1つの第1級、第2級および/または第3級アミノ基を含む。第4級アミンは、アニオン交換部分としても公知である。
【0128】
好ましい実施形態では、アニオン交換基は、第1級、第2級および第3級アミンからなる群より選択されるアミノ基を含む。一実施形態では、前記アミンは、式
R3N、R2NH、RNH2および/またはX-(CH2)n-Y
(式中、
Xは、R2N、RNHまたはNH2であり、
Yは、R2N、RNHまたはNH2であり、
Rは互いに独立して、好ましくはO、N、SおよびPから選択される1個またはそれを超えるヘテロ原子を含み得る直鎖状、分岐状または環状アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール置換基であり、ならびに
nは、0~20、好ましくは0~18の範囲内の整数である)を有する。
【0129】
したがって、アニオン交換基はプロトン化可能な基を有し得、場合により、1個を超えるプロトン化可能な基(これは同じものでもよいし、または異なるものでもよい)を有し得る。プロトン化可能な基は、好ましくは、高pH値では中性または非荷電性の化学基であって、低pH値ではプロトン化され、それにより正電荷を有する化学基である。特に、プロトン化可能な基は、RNAの結合が起こる結合pHで正に帯電する。好ましくは、(プロトン化された)プロトン化可能な基のpKa値は、約8~約13、より好ましくは約8.5~約12または約9~約11.5の範囲内である。
【0130】
適切なアニオン交換基の例は、特にアミノ基、例えば第1級、第2級および第3級アミノ基ならびに環状アミン、芳香族アミンおよび複素環アミン、好ましくは第3級アミノ基である。アミノ基は、好ましくは、環状置換基、および窒素原子と一緒に複素環または複素芳香環を形成する置換基を含むアルキル、アルケニル、アルキニルおよび/または芳香族置換基を有する。置換基は、好ましくは、1~20個の炭素原子、より好ましくは1~12個、1~8個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個または1個もしくは2個の炭素原子を含む。それらは、直鎖状または分岐状であり得、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、ケイ素およびハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素)原子を含み得る。好ましくは、置換基は、4個以下のヘテロ原子、より好ましくは3個以下のヘテロ原子、2個以下のヘテロ原子または1個以下のヘテロ原子を含む。一実施形態では、アニオン交換基は、好ましくは、1~10個のアミノ基を有する。より好ましくは、アニオン交換基は2~8個のアミノ基を有し、特に、アニオン交換基は2~6個のアミノ基を有する。
【0131】
適切なアミン官能基の例は、第1級アミン、例えばアミノメチル(AM)、アミノエチル(AE)、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、例えばジエチルアミノエチル(DEAE)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、トリメチルアミノ(TMA)、トリエチルアミノエチル(TEAE)、直鎖状または分岐状ポリエチレンイミン(PEI)、カルボキシル化またはヒドロキシアルキル化ポリエチレンイミン、ジェファーミン、スペルミン、スペルミジン、3-(プロピルアミノ)プロピルアミン、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、N-モルホリノエチル、ポリリシンおよびテトラアザシクロアルカンである。一実施形態によれば、第1級アミンは、ポリアリルアミンである。さらに、ポリプロピレンイミンテトラミンデンドリマー(DABAM)が使用され得る。
【0132】
適切なアニオン交換マトリックスおよびアニオン交換基、特にアニオン交換粒子はまた、欧州特許出願公開第EP15171466.4号に開示されており、これを参照のこと。適切な粒子およびアニオン交換基の例はまた、国際公開第2010/072834A1号、独国特許出願公開第102008063001A1号、国際公開第2010072821A1号、独国特許出願公開第102008063003号および国際公開第99/29703号に記載されており、これらを参照のこと。RNAの結合に使用され得る適切なアニオン交換マトリックスは、電荷スイッチ材料としても公知である。
【0133】
適切なアニオン交換マトリックスおよびアニオン交換基、特にポリ(アリルアミン)はまた、国際公開第2014/066376A1号に開示されており、これを参照のこと。
【0134】
サンプルからRNAを単離するための方法
本発明のRNAをプロセシングする方法は、有利なことに、サンプルからRNAを単離するために使用され得る。したがって、サンプルからRNAを単離する方法であって、
-場合により、前記サンプルから前記RNAを放出させること;
-前記RNAをアニオン交換マトリックスに結合させること;
-場合により、前記結合RNAを洗浄すること;
-前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出するために、(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理すること
を含む方法が提供される。
【0135】
したがって、前記方法は、硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させる工程を含む。上記で言及されているように、本明細書で使用される場合、硫酸アンモニウムは、硫酸ジアンモニウムおよび重硫酸アンモニウムを指す。一般に硫酸アンモニウムについて本出願に記載されるすべての開示は、好ましい実施形態である硫酸ジアンモニウムを具体的におよび特に適用するので、特に、本発明のRNAを単離する方法では、硫酸ジアンモニウムでもRNAを処理し得る。
【0136】
適切な好ましい硫酸アンモニウム濃度は、上記に記載されている。硫酸アンモニウム濃度は、好ましくは、10mMまたはそれ未満である。10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAを処理して、アニオン交換マトリックスからRNAを溶出させ得る。したがって、本明細書に記載される処理条件は、有利なことに、RNA単離方法において、アニオン交換マトリックスに結合したRNAを溶出させるために使用され得る。放出条件、アニオン交換マトリックスおよび関連する利点に関する詳細は上記に記載されており、各開示を参照のこと。
【0137】
一実施形態によれば、前記方法は、
-サンプル、好ましくは生物学的サンプルから、
i)RNA;
ii)アニオン交換面を提供するアニオン交換マトリックス、好ましくは粒子(例えば、磁性粒子);
iii)場合により、少なくとも1つの塩
を含む結合混合物であって、RNAが前記アニオン交換マトリックスに結合するようなpHを有する結合混合物を調製すること、
-残りの結合混合物から、RNAが結合したアニオン交換マトリックスを分離すること;
-場合により、前記結合RNAを洗浄すること;ならびに
-好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度で存在する硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で、前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出させること
を含む。
【0138】
一実施形態によれば、タンパク質を沈殿させるために硫酸アンモニウムと接触されていないサンプルから、RNAを単離する。一実施形態によれば、硫酸アンモニウムを含む溶液と接触されていないか、または硫酸アンモニウムを含む溶液中に保存されていないサンプルから、RNAを単離する。一実施形態によれば、硫酸アンモニウムと接触されていないサンプルから、RNAを単離する。
【0139】
次に、個々の工程をより詳細に説明する。
【0140】
RNAを放出させるかまたは不純物を除去するために、RNAを含有するサンプルを処理し得る。このような方法は当技術分野で公知であり、本明細書ではさらに詳細な説明を必要としない。サンプルからのRNAの放出は、サンプルを溶解すること、サンプルをホモジナイズすること、サンプルを消化すること、またはそれらの組み合わせを含み得る。適切なサンプル種類は、以下に記載されている。特に、サンプルは、生物学的サンプルであり得る。一実施形態によれば、前記処理工程は、1つまたはそれを超える酵素、特にタンパク質分解酵素、例えばヒドロラーゼまたはプロテアーゼの使用を伴う。タンパク質分解酵素の使用は、得られた溶出液の純度を改善することが見出された。特に、タンパク質混入の量が有意に減少する。例示的なタンパク質分解酵素は上記に記載されており、限定されないが、プロテイナーゼおよびプロテアーゼ、例えば特にズブチリシン、サブチラーゼおよびアルカリセリンプロテアーゼが挙げられる。RNA単離方法において一般に使用されるタンパク質分解酵素は、プロテイナーゼKである。例えば、DNAseなどの1つまたはそれを超えるヌクレアーゼでサンプル由来のDNAを消化することが望ましい場合もある。
【0141】
上記のように、このような酵素は、RNAの調製中に利点を有するとしても、純粋なRNAを提供するための単離プロセスの過程で、それらを除去することが望ましい。特に、活性酵素が精製RNAに含まれないことを保証することが有利である。本方法は、有利なことに、依然として存在する場合にはこのような酵素を効率的に不活性化することを可能にする。特に、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む処理条件で、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させる場合、本方法は、有利なことに、このような酵素を不活性化(例えば、変性)することを可能にする。硫酸アンモニウムの存在により、RNAは、これらの過酷な条件で保存される。本発明の方法では、かなりの高温で活性な酵素であって、かなりの高温に耐性の酵素、例えばプロテイナーゼKも効率的に不活性化し得るが、それと同時にRNAを安定化して分解から保護する。
【0142】
アニオン交換マトリックスの存在下または非存在下で、サンプルからRNAを放出させ得る。RNAの放出およびアニオン交換マトリックスに対するRNAの結合は、同時に起こり得る。
【0143】
前記方法は、RNAをアニオン交換マトリックスに結合させることを含む。前記方法が、サンプルからRNAを放出させることを含む場合、RNAの放出に続いてまたはそれと同時に、RNAをアニオン交換マトリックスに結合させ得る。一実施形態によれば、サンプルからのRNAの放出後に、RNAをアニオン交換マトリックスに結合させる。
【0144】
RNAを結合させるための例示的な好ましいアニオン交換マトリックスは上記に記載されており、この説明を参照のこと。特に、アニオン交換マトリックスは、アニオン交換面を含むかまたはアニオン交換面でコーティングされた粒子(例えば、磁性粒子)によって提供され得る。例示的なアニオン交換面およびアニオン交換基も上記に記載されており、それを参照のこと。
【0145】
一実施形態によれば、アニオン交換マトリックスに対するRNAの結合は、放出されたRNAを含有するサンプルから結合混合物を調製することを含む。結合混合物は、RNAを結合させるためのアニオン交換マトリックス、例えばアニオン交換粒子を含む。本明細書で使用される場合、「結合混合物」という用語は、RNA結合工程のために調製された組成物であって、サンプルに含まれるRNAをアニオン交換マトリックスに結合させる組成物を指す。結合混合物を調製することによって、結合混合物に含まれるRNAがアニオン交換マトリックスに結合するように、条件を確立する。アニオン交換面に対するRNA結合を達成するための適切な条件は、当業者に周知である。
【0146】
結合混合物は、粒子のアニオン交換面に対するRNAの結合を可能にするpHを有する。結合に適切なpHは、特に、アニオン交換基の性質に依存する。結合pHのための適切なpH値は、当業者によって決定され得る。結合混合物は、≦8、≦7.5、≦7、≦6.5、≦6.25および≦6から選択されるpHを有し得る。一実施形態によれば、結合pHは3~≦8の範囲内であり、より好ましくは、3.5~7.5;3.75~7;4~6.5および4.25~6および4.5~5.75から選択される範囲内である。
【0147】
結合混合物は、塩を含み得る。結合混合物への塩の組み込みは、単離結果を改善する。一実施形態によれば、塩は、アルカリ金属塩である。一実施形態によれば、アルカリ金属塩は、アルカリ金属ハロゲン化物である。適切な例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化リチウムが挙げられ、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムが好ましい。一実施形態によれば、結合混合物は、500mMもしくはそれを超える、200mMもしくはそれを超えるまたは100mMもしくはそれを超える濃度のカオトロピック塩、例えばグアニジニウム塩、ヨウ化物、チオシアン酸塩、過塩素酸塩または同等もしくはより強力な性質の他のカオトロピック塩を含まない。好ましくは、結合混合物は、このようなカオトロピック塩を欠く。
【0148】
一実施形態によれば、アニオン交換マトリックスに対するRNAの結合前にまたはその結合中に、RNAは、硫酸アンモニウムに曝露または接触されていない。一実施形態によれば、結合混合物は、硫酸アンモニウムを含まない。
【0149】
RNAをアニオン交換マトリックスに結合させたら、残りの結合混合物から、RNAが結合したアニオン交換マトリックスを分離し得る。分離のための適切な手段は、当業者に公知である。
【0150】
場合により、RNAの結合後に、1回またはそれを超える洗浄工程を実施することによって、結合RNAを洗浄し得る。一実施形態によれば、少なくとも1つの洗浄溶液、好ましくは洗浄バッファーと、RNAが結合したアニオン交換マトリックス(例えば、粒子)とを接触させる。結合RNAの最大回収を保証するために、洗浄条件は、アニオン交換マトリックスに結合した相当量のRNAが洗浄中にそこから除去されないように選択されるべきである。
【0151】
単離されたRNAをさらに精製せずに、例えば診断アッセイにおいて直接的に分析および/または検出することになる場合、洗浄が特に推奨される。例えば、潜在的不純物に感受性の方法(例えば、PCR法など)を使用して、単離されたRNAを直接的に分析することになる場合、少なくとも2回の洗浄工程を実施することが推奨される。一実施形態によれば、好ましくは、2つの異なる体積の洗浄溶液が使用される。本明細書では、第1の洗浄溶液の体積は、好ましくは、第2の洗浄溶液の体積よりも大きい。しかしながら、続いて、不純物に対して比較的非感受性の検出および/または分析方法が使用される場合、洗浄は必ずしも必要ではない。
【0152】
洗浄溶液は、界面活性剤を含有し得る。適切な界面活性剤としては、限定されないが、非イオン界面活性剤、例えばポリオキシエチレン系非イオン界面活性剤が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーからなる群より選択される。好ましい例は、例えば約0.01%~1%の濃度のTritonX-100またはBrij58である。
【0153】
適切な洗浄溶液およびバッファーも先行技術で公知であるので(例えば、国際公開第2013/045432号を参照のこと)、本明細書ではさらに詳細な説明を必要としない。
【0154】
一実施形態によれば、洗浄溶液またはバッファーは、硫酸アンモニウムを含まない。一実施形態によれば、洗浄溶液またはバッファーは、硫酸ジアンモニウムを含まない。
【0155】
(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で、アニオン交換マトリックスから結合RNAを放出させる工程は上記に詳細に記載されており、簡潔性のために、前記説明を参照のこと。特に、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるために適切な処理条件は、上記のとおりであり得る。そこに、適切な好ましい硫酸アンモニウム濃度、pH値および温度は詳細に記載されている。議論されているように、キレート化剤、好ましくはEDTAの存在下で、RNAを放出させるための処理を行い得る。詳細は上記に記載されており、各開示を参照のこと。一実施形態によれば、0.5mM~7mM、好ましくは0.75mM~5mMの濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および9.5~12.5、好ましくは10~12のpHを含む条件で、アニオン交換マトリックスから結合RNAを放出させる工程を行う。一実施形態によれば、0.5mM~5mM、好ましくは0.75mM~3mMの濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および10~12のpHを含む条件で、アニオン交換マトリックスから結合RNAを放出させる工程を行う。上記のように、キレート化剤、好ましくはEDTAの存在下で、放出を行い得る。したがって、0.5mM~7mM、好ましくは0.75mM~5mMの濃度の硫酸アンモニウムの存在下およびさらにEDTAの存在下、少なくとも70℃の温度および9.5~12.5、好ましくは10~12のpHを含む条件で、アニオン交換マトリックスから結合RNAを放出させる工程を行い得る。実施形態では、EDTAは、0.005mM~1mM、好ましくは0.01mM~0.5mMの濃度で存在する。一実施形態によれば、EDTAは、0.005mM~0.015mMの濃度で存在する。実施形態では、処理温度は、70℃~90℃、72℃~88℃または75℃~85℃の範囲内である。
【0156】
上記のように、好ましくは、RNAが結合したアニオン交換マトリックスと、上記に詳細に記載されている特徴の1つまたはそれよりも多くを有する硫酸アンモニウム含有溶液とを接触させる。上記開示を参照し、アニオン交換マトリックスからRNAを放出/溶出させるために、上記溶液を使用し得る。
【0157】
一実施形態によれば、アニオン交換マトリックスからのRNAの放出前に、RNAは、硫酸アンモニウムに曝露または接触されていない。一実施形態によれば、アニオン交換マトリックスからのRNAの放出前に、RNAは、硫酸ジアンモニウムに曝露または接触されていない。
【0158】
放出されたRNAは、さらに分析および/または検出され得る。RNAは、本発明の方法を用いて硫酸アンモニウムによって効率的に安定化され、それにより、さもなければ少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHで処理条件を使用した場合に生じる分解効果が低減される。実施例から分かるように、10mMまたはそれ未満、例えば約2.5mMの非常に低い硫酸アンモニウム濃度であっても、この効果が観察された。有利なことに、使用される硫酸アンモニウム濃度は非常に低いものであり得、このような低濃度は、検知用途をも妨げない。また、このような低濃度であっても、硫酸アンモニウムは、RNAに対する強力な安定化効果を発揮するので、そうでなければ下流用途を妨げ得る酵素を効率的に不活性化することも可能である。したがって、本方法は、優れた品質を有するRNAであって、高感度かつ定量的な検出、例えば診断アッセイにおけるウイルスRNA(例えば、HCV、HIV)のqPCRベースの検出にも適切なRNAを生じさせる。
【0159】
適切なアッセイおよび/または分析方法を使用して、単離されたRNAを分析および/または検出し得る。したがって、一実施形態によれば、放出または単離されたRNAを分析およびまたは検出する。この分析は、疾患、感染症および/または少なくとも1つの胎児特徴を同定し、検出し、スクリーニングし、モニタリングし、または排除するために実施され得る。
【0160】
例えば、各中性pH値が目的の下流用途に有益である場合、放出または単離されたRNAを含む溶出液を場合により中和し得る。
【0161】
単離されたRNAおよび/または単離されたRNAに含まれるもしくは含まれると疑われる特定の標的RNAを同定し、定量し、改変し、少なくとも1つの酵素と接触させ、増幅し、逆転写し、クローニングし、配列決定し、プローブと接触させ、および/または検出し得る。各方法は先行技術で周知であり、全RNAまたは細胞外RNAなどのRNAを分析するために、医学的、診断的および/または予後的分野で一般に適用される。
【0162】
RNAの分析/さらなるプロセシングは、限定されないが、増幅技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、等温増幅、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)、デジタルPCR、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、質量分析、蛍光検出、紫外線分光法、ハイブリダイゼーションアッセイ、DNAもしくはRNA配列決定、制限分析、逆転写、NASBA、ライゲーション媒介性ポリメラーゼ連鎖反応、メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(MSP)、マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応、ネステッドポリメラーゼ連鎖反応、固相ポリメラーゼ連鎖反応、またはそれらの任意の組み合わせを含む任意の核酸分析/プロセシング方法を使用して実施され得る。各技術は当業者に周知であるので、本明細書ではさらなる説明を必要としない。
【0163】
例示的な好ましい方法は、以下にさらに記載されている。
【0164】
サンプルからRNAを単離する方法であって、
-場合により、前記サンプルから前記RNAを放出させること;
-前記RNAをアニオン交換マトリックスに結合させること;
-場合により、前記結合RNAを洗浄すること;
-前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出するために、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および9.5~12.5、好ましくは10~12のpHを含む条件で前記RNAを処理すること
を含む方法が提供される。
【0165】
サンプルからRNAを単離する方法であって、
-場合により、前記サンプルから前記RNAを放出させること;
-前記RNAをアニオン交換マトリックスに結合させること;
-場合により、前記結合RNAを洗浄すること;
-前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出するために、0.5mM~7mM、好ましくは0.75mM~5mMの濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および9.5~12.5、好ましくは10~12のpHを含む条件で前記RNAを処理すること
を含む方法が提供される。
【0166】
サンプルからRNAを単離する方法であって、
-場合により、前記サンプルから前記RNAを放出させること;
-前記RNAをアニオン交換マトリックスに結合させること;
-場合により、前記結合RNAを洗浄すること;
-前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出するために、0.5mM~5mM、好ましくは0.75mM~3mMの濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および10~12のpHを含む条件で前記RNAを処理すること、
を含む方法が提供される。
【0167】
上記のように、キレート化剤、好ましくはEDTAの存在下で、処理を行い得る。実施形態では、EDTAは、0.005mM~1mM、好ましくは0.01mM~0.5mMの濃度で存在する。EDTAは、0.005mM~0.015mMの濃度で存在し得る。実施形態では、処理温度は、70℃~90℃、72℃~88℃または75℃~85℃の範囲内である。
【0168】
サンプルからRNAを単離する方法であって、
-場合により、前記サンプルから前記RNAを放出させること;
-前記RNAをアニオン交換マトリックスに結合させること;
-場合により、前記結合RNAを洗浄すること;
-少なくとも70℃の温度の処理で、前記RNAと、硫酸アンモニウムを含む溶液であって、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有する溶液とを接触させることによって、前記アニオン交換マトリックスから前記結合RNAを放出することであって、前記RNAと前記溶液との接触前にまたはその接触後に、温度を少なくとも70℃に調整すること
を含む方法が提供される。
【0169】
上記のように、溶液中で、RNAをインキュベートし得る;詳細は上記に記載されている。結合RNAを放出させるために使用され得る適切な好ましい硫酸アンモニウム含有溶液も上記に詳細に記載されており、上記開示を参照のこと。一実施形態では、アニオン交換マトリックスは、粒子、好ましくは磁性粒子によって提供される。磁気粒子などの粒子の使用は、RNAと溶液との接触後に、70℃の温度を好都合に提供することを可能にする。しかしながら、RNAと溶液との接触後にのみ温度を70℃に調整することに代えて、少なくとも70℃に予熱された溶液を使用し、結合RNAとこのような予熱溶液とを接触させることも可能である。例えば、樹脂またはカラムの形態で提供されるアニオン交換マトリックスにRNAが結合している場合、RNAと溶液との接触前に、溶液の温度を少なくとも70℃に調整することが好ましい。この方法では、樹脂またはカラムの加熱(これは、使用されるカラムの形式および/または材料により不都合または困難な場合がある)が必要とされないので、この場合、予熱溶液を提供することが好都合である。
【0170】
好ましくは、アニオン交換マトリックスから、溶出されたRNAを分離する。
【0171】
さらに、サンプルからRNAを単離する本発明の方法はまた、サンプルからRNAを単離して、その後の精製プロトコールのために濃縮するための前処理プロトコールとして使用され得る。これは、大きなサンプル体積から小さなサンプル体積にRNAを濃縮し得るという利点を有する。それは、例えば、既存の自動システム(これは、それらが取り扱い得るサンプル体積に関して限界を有する)によって行われ得るそれぞれその後の標準的な核酸単離精製プロトコールの使用を可能にする。より大きな初期サンプル体積をプロセシングし得るので、時間およびコストを節約し得、RNAの収量を増加させ得る。
【0172】
したがって、サンプルからRNAを単離する方法であって、
-場合により、前記サンプルから前記RNAを放出させること;
-前記RNAをアニオン交換マトリックスに結合させること;
-場合により、前記結合RNAを洗浄すること;
-前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを溶出するために、硫酸アンモニウムの存在下、特に10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理すること;
-前記溶出液から前記RNAを単離すること
を含む方法が提供される。
【0173】
RNAを放出/溶出させるためのRNAの任意選択の放出、結合、任意選択の洗浄および処理に関する詳細は上記に開示されており、上記開示を参照のこと。したがって、アニオン交換マトリックスは、特に、アニオン交換面を提供する粒子(例えば、磁性粒子)によって提供され得るか、またはカラムに含まれ得る。好ましい実施形態によれば、RNAを処理する場合、EDTAなどのキレート化剤がさらに存在する。EDTAなどのキレート化剤の特に好ましい濃度は上記に提供されており、適用される。(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAを処理して、アニオン交換マトリックスからRNAを溶出させる場合、酵素、例えばプロテアーゼ、特にプロテイナーゼKおよび/またはヌクレアーゼ、特にRNAseは、有利なことに、存在する場合には変性されて不活性化され得る。RNAを処理する場合に存在し得るヌクレアーゼ、例えばRNAseの不活性化は、有利なことに、RNA完全性の維持に寄与する。同様に、存在し得るプロテアーゼおよび他の酵素の不活性化は、不活性化酵素が、例えばPCRなどの下流用途において望ましくない酵素活性を示さないという有利な効果を有する。
【0174】
続いて、サンプルからRNAを単離する本発明の方法を前処理プロトコールとして使用して濃縮された溶出液からRNAをさらに単離または精製するために、基本的には任意の標準的な核酸単離または精製プロトコールが使用され得る。溶出液からRNAを単離するために使用され得る各単離または精製方法の例としては、限定されないが、抽出、固相抽出、ポリケイ酸ベースの精製、磁性粒子ベースの精製、フェノール-クロロホルム抽出、(アニオン交換面を使用する)アニオン交換クロマトグラフィー、電気泳動、沈殿およびそれらの組み合わせが挙げられる。また、当業者に公知の任意の他の核酸単離技術が使用され得る。一実施形態によれば、少なくとも1つのカオトロピック剤および/または少なくとも1つのアルコールを使用して、溶出液からRNA、例えば特に細胞外RNAを単離してさらに精製する。好ましくは、固相、好ましくは、ケイ素、好ましくはポリケイ酸を含む固相に結合させることによって、RNAを単離する。
【0175】
前処理プロトコールは、手動でまたは自動化方法で実施され得る。同様に、溶出液からの単離は、手動でまたは自動化方法で、特にロボットシステムで実施され得る。一実施形態によれば、前処理プロトコールは手動で実施され、溶出液からの単離は自動化方法で実施される。
【0176】
RNAを濃縮するために前処理プロトコールとして本方法を使用する場合、サンプルは、本明細書に記載されるサンプル、特に液体および/または生物学的サンプルであり得る。サンプルは、体液および体液由来サンプル、特に、体液から細胞を除去することによって体液から得られたサンプルであり得る。サンプルは、特に、血液、血漿または血清および尿から選択され得る。サンプルは、液体生検サンプルおよび/または液体生検試験のサンプルもしくは液体生検試験から得られたサンプルであり得る。サンプルが低濃度のRNAを含む場合、本前処理プロトコールを用いて、大きなサンプル体積から小さなサンプル体積にRNAを濃縮することが特に望ましい。
【0177】
特に、RNAは、特に液体および/または生物学的サンプル由来の細胞外RNAであり得る。したがって、一実施形態では、好ましくは血液、血漿、血清および尿から選択される体液のまたはそれに由来するサンプルから細胞外RNAを単離する方法であって、
-場合により、前記サンプルから前記細胞外RNAを放出させること;
-前記細胞外RNAをアニオン交換マトリックスに結合させること;
-場合により、前記結合細胞外RNAを洗浄すること;
-前記アニオン交換マトリックスから前記細胞外RNAを溶出するために、硫酸アンモニウム(好ましくは、10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウム)の存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で前記細胞外RNAを処理すること;
-前記溶出液から前記細胞外RNAを単離すること
を含む方法が提供される。
【0178】
例えば、配列特異的結合を可能にする適切なプローブであって、固体支持体にカップリングされた適切なプローブを使用することによって、得られた濃縮細胞外RNAから特定の標的細胞外RNAを特異的に単離することも本発明の範囲内である。
【0179】
また上記で説明されているように、実施形態では、アニオン交換マトリックスから、RNAに加えてDNAを放出/溶出させる。したがって、本方法はまた、大きなサンプル体積からより小さなサンプル体積にRNA、特に細胞外RNAを濃縮し、さらにDNA、特に細胞外DNAを濃縮するために、前処理プロトコールとしても使用され得る。次いで、基本的には任意の標準的な核酸単離または精製プロトコール、例えば上記で言及されているプロトコールによって、溶出液からDNAを単離することも可能である。
【0180】
次いで、上記のように、溶出液から単離された核酸、特にRNAをさらに分析、検出および/またはプロセシングし得る。
【0181】
RNAおよびサンプル
本発明にしたがってプロセシングまたは安定化され得るRNAの種類は、特に限定されない。RNAは、原核生物または真核生物RNA、好ましくは哺乳動物RNA、より好ましくはヒトRNAであり得るか、またはそれらを含み得る。それは、真菌RNAであり得るか、またはそれを含み得る。それは、病原体および/またはウイルスRNA(例えば、HCVまたはHIV RNA)であり得るか、またはそれらを含み得る。
【0182】
RNAは、全RNAであり得る。有利なことに、本発明は、分解から全RNA(大きなサイズのRNAを含む)を保護することを可能にする。硫酸アンモニウムの安定化特性は、上記で詳細に議論されている。RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)または他の種類のRNAであり得るか、またはそれらを含み得る。RNAは、小型RNA、例えば300ヌクレオチドよりも短い、特に100ヌクレオチドよりも短い小型RNAを含み得る。小型RNAの例としては、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、核内低分子RNA(snRNA)および核小体低分子RNA(snoRNA)が挙げられる。RNAは、細胞外RNAであり得るか、またはそれを含み得る。本明細書で使用される場合、「細胞外RNA」という用語は、特に、細胞に含まれないRNAを指す。各細胞外RNAは、多くの場合、無細胞RNAとも称される。したがって、細胞外RNAは、通常、サンプル、好ましくは生物学的サンプル内の細胞の外部にまたは複数の細胞の外部に存在する。細胞外RNAは、例えば、エキソソームに存在し得る。好ましくは、RNAが細胞外RNAである場合、サンプルは、合成的に生産されたRNAを有する人工サンプルではなく、生物学的供給源から得られたものである。細胞外RNAの例は、細胞外腫瘍関連または腫瘍由来RNA、他の細胞外疾患関連RNA、胎児RNA、低分子干渉RNA、例えばmiRNAおよびsiRNAなどならびに非哺乳動物RNA、例えば非哺乳動物細胞外RNA、例えば原核生物(例えば、細菌)、ウイルスまたは真菌から放出されるウイルスRNA、病原性RNAなどを含む。
【0183】
プロセシングRNAは、人工サンプルまたは特に生物学的サンプルなどのサンプルに由来し得るか、またはそれらから単離され得、生物学的サンプルは、生物学的供給源から得られたサンプルである。生物学的サンプルは、通常、複雑な組成を有し、多くの異なる成分を含む。生物学的サンプルは、原核生物および真核生物に由来し得る。生物学的サンプルは、組織サンプルなどのサンプルを含有する細胞であり得る。それはまた、体液、全血、血漿、血清、喀痰、涙液、リンパ液、滑液、胸水、尿、汗、髄液、脳脊髄液、腹水、ミルク、糞便、気管支洗浄液、唾液、羊水、鼻分泌物、膣分泌物、擦過生検、精子、精液/精漿、創傷分泌物および排泄物、ならびに細胞培養上清および他のスワブサンプルから得られた上清からなる群より選択され得る。一実施形態によれば、サンプルは、液体生検サンプルおよび/または液体生検試験のサンプルもしくは液体生検試験に由来するサンプルである。一実施形態によれば、サンプルは、体液、身体分泌物または身体排泄物である。一実施形態によれば、サンプルは、全血、血漿または血清である。RNA含有サンプルの他の例としては、限定されないが、生物学的サンプル、例えば細胞懸濁液、細胞培養物、細胞培養物の上清などが挙げられる。特に、生物学的サンプルは、例えばヒトもしくは動物から得られた、または細胞培養物に由来する天然サンプルである。細胞は、元のサンプルから除去されている場合がある。それぞれ細胞枯渇サンプルまたは無細胞サンプルもまた、生物学的サンプルという用語によって、および天然サンプルという用語によっても包含される。各天然サンプルの典型的な例は、体液、例えば血液および体液由来サンプル、特に、体液から細胞を除去することによって体液に由来するサンプルである。
【0184】
一実施形態によれば、サンプルは、液体サンプルである。
【0185】
一実施形態によれば、サンプルは、タンパク質を沈殿させるために硫酸アンモニウムと接触されていないサンプルである。一実施形態によれば、サンプルは、硫酸アンモニウムを含む溶液と接触されていないか、または硫酸アンモニウムを含む溶液中に保存されていないサンプルである。一実施形態によれば、サンプルは、本発明の方法の実施前に、硫酸アンモニウムと接触されていないサンプルである。一実施形態によれば、硫酸アンモニウムは、RNA含有サンプルの一部ではない。一実施形態によれば、本発明を実施する場合にのみ、好ましくは硫酸アンモニウム含有溶液を追加することによって、アンモニウム塩を追加する。したがって、上記で説明されているように、例えば、「硫酸アンモニウムと接触されていない」サンプルは、硫酸ジアンモニウムと接触されていないサンプル、重硫酸アンモニウムと接触されていないサンプル、または両方と接触されていないサンプルであり得る。
【0186】
さらなる方法
上記方法および知見に基づく本明細書に開示されるさらなる方法についても、本発明の第1の態様のRNAをプロセシングする方法を議論した際に上記で提供されている詳細な開示が参照され、完全に適用される。これは、特に、温度、pH、硫酸アンモニウム濃度、インキュベーション条件、工程、溶液および材料に関する開示を含み、これらはすべて、以下で議論されているさらなる方法においても適用および使用され得る。上記に詳細に記載されている硫酸アンモニウムを含む溶液は、前記方法における処理条件を確立するために使用され得る。
【0187】
第1の態様のRNAをプロセシングする方法を議論した際に上記で説明されているように、RNAの安定化は、RNA分解を阻害または防止することを含み得る。RNAの安定化は、RNA完全性の保持または実質的な保持をもたらし得る。詳細は、上記で説明されている。
【0188】
したがって、本発明はまた、RNAと硫酸アンモニウムとを接触させることによって、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNA分解を阻害または防止する方法を提供する。硫酸アンモニウムの適切な濃度および濃度範囲は、上記に記載されている。硫酸アンモニウムは、好ましくは、反応混合物中で10mMまたはそれ未満の濃度で存在する。
【0189】
RNAと硫酸アンモニウムとを接触させることによって、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNA完全性を保持する方法も提供される。硫酸アンモニウムの適切な濃度および濃度範囲は、上記に記載されている。硫酸アンモニウムは、好ましくは、反応混合物中で10mMまたはそれ未満の濃度で存在する。
【0190】
アニオン交換マトリックスに結合したRNAを前記マトリックスから放出させる方法であって、硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理することを含む方法も本明細書で提供される。これは、結合RNAの溶出をもたらす。硫酸アンモニウムの適切な濃度および濃度範囲は、上記に記載されている。濃度は、好ましくは、10mMまたはそれ未満である。
【0191】
RNAを分析および/または検出する方法であって、RNAをアニオン交換マトリックスに結合させ、(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理して、前記アニオン交換マトリックスから前記RNAを放出させることによって、サンプルからRNAを単離すること、ならびに放出されたRNAを分析および/または検出することを含む方法が本明細書でさらに提供される。前記方法は、疾患または感染症、例えばウイルス疾患または感染症を検出または診断するために使用され得る。
【0192】
RNAの存在下で酵素を不活性化する方法であって、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で、RNAの存在下で前記酵素を処理することを含む方法も本明細書で提供される。酵素は、上記酵素であり得る。それは、ヌクレアーゼ、例えばDNAseもしくはRNAseまたはプロテアーゼ、特にプロテイナーゼKであり得る。処理は、上記のようにインキュベートすることを含み得る。それは、少なくとも1分間、少なくとも2分間または少なくとも5分間、15分間もしくはそれ未満、12分間もしくはそれ未満または10分間もしくはそれ未満インキュベートすることを含み得る。熱、アルカリ性pHまたはその両方によって、酵素を不活性化し得る。変性によって、酵素を不活性化し得る。RNAの存在下で酵素を不活性化する方法は、硫酸アンモニウムの存在下、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で、RNAの存在下で前記酵素を処理することを含み得、RNAが結合したアニオン交換マトリックスからRNAを放出させる。硫酸アンモニウムの適切な濃度および濃度範囲は、上記に記載されている。
【0193】
使用
本明細書に開示される使用についても、本発明の第1の態様のRNAをプロセシングする方法を議論した際に上記で提供されている詳細な開示が参照され、完全に適用される。やはり、これは、特に、温度、pH、硫酸アンモニウム濃度、インキュベーション条件、工程、硫酸アンモニウム含有溶液および材料に関する開示を含み、これらはすべて、以下で議論されている使用においても適用および使用され得る。
【0194】
さらなる態様によれば、本発明は、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件でRNAを安定化するための、(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムの使用を提供する。詳細は、上記に記載されている。
【0195】
さらなる態様によれば、本発明は、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるための溶液の使用であって、前記溶液が、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有し、前記溶液が、(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムを含む使用を提供する。詳細は、上記に記載されている。
【0196】
さらなる態様によれば、RNAをプロセシングするための(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムの使用であって、プロセシングが、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で前記RNAを処理することを含む使用が本明細書で提供される。詳細は、上記に記載されている。
【0197】
さらなる態様によれば、RNAの存在下で酵素を不活性化する場合における(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムの使用であって、不活性化が、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを含む条件で、RNAの存在下で前記酵素を処理することを含む使用が本明細書で提供される。詳細は、上記に記載されている。
【0198】
組成物およびキット
本明細書に開示される組成物についても、本発明の第1の態様のRNAをプロセシングする方法を議論した際に上記で提供されている詳細な開示が参照され、完全に適用される。これは、特に、上記硫酸アンモニウム濃度、pH値および範囲ならびに温度値および範囲に適用される。上記で説明されているように、好ましい実施形態における硫酸アンモニウムは硫酸ジアンモニウムであり、本明細書に開示される組成物およびキットとの関連では、これも適用される。
【0199】
さらなる態様によれば、本発明は、RNA含有組成物であって、(好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の)硫酸アンモニウムを含み、少なくとも70℃の温度および少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有するRNA含有組成物を提供する。第1の態様の方法では、高温および高pH処理条件中に、このようなRNA含有組成物が提供され得る。詳細は、硫酸アンモニウムの存在下におけるRNAの処理と併せて上記に記載されており、上記開示を参照のこと。また、好ましい実施形態によれば、硫酸アンモニウムは、硫酸ジアンモニウムである。一実施形態によれば、RNAおよび硫酸アンモニウム含有組成物は、キレート化剤、好ましくはEDTAをさらに含む。詳細は、上記に記載されている。しかしながら、組成物は、特に、RNAを含む上記溶液であり得るか、またはそれを含み得る。適切な好ましい溶液は上記に記載されており、それを参照のこと。組成物は、アニオン交換面を含むアニオン交換マトリックス(例えば、固体支持体)をさらに含み得る。アニオン交換マトリックスは、アニオン交換面でコーティングされたかまたはアニオン交換面を含む磁性粒子によって提供され得る。組成物は、RNA溶出液であり得る。詳細は上記に記載されており、上記開示を参照のこと。
【0200】
さらなる態様によれば、キットであって、アニオン交換面を提供するアニオン交換マトリックス(好ましくは、磁性粒子)と、アニオン交換マトリックスからRNAを放出させるための溶液であって、少なくとも8のpH、好ましくは少なくとも9のpHを有する溶液とを含み、前記溶液が、好ましくは10mMまたはそれ未満の濃度の硫酸アンモニウム(硫酸ジアンモニウムが好ましい)を含むことを特徴とするキットも本明細書で提供される。キットは、RNAをプロセシングまたは単離するためのさらなる成分を含み得る。それは、特に、タンパク質分解酵素、例えばプロテイナーゼKを含み得る。特に、溶液およびアニオン交換マトリックスに関する詳細は、本発明の第1の態様のRNAをプロセシングする方法およびそこで使用される溶液について説明した際に上記に記載されている。ここでも完全に適用される上記開示を参照のこと。
【0201】
本発明は、本明細書に開示される例示的な方法、使用、組成物、キットおよび材料によって限定されず、本明細書に記載されるものと類似または等価な任意の方法、使用、組成物、キットおよび材料は、本発明の実施形態の実施または試験において使用され得る。数値範囲は、範囲を規定する数字を含む。本明細書で提供される見出しは、本発明の様々な態様または実施形態の限定ではなく、全体として本明細書を参照することによって読まれ得る。
【0202】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」および「the」という単数形は、文脈上特に明確な指示がない限り、複数の態様を含む。したがって、例えば、「プロテアーゼ」についての言及は、単一の種類のプロテアーゼ、および2つまたはそれを超えるプロテアーゼを含む。同様に、「a」「塩」、「添加物」、「バッファー」などについての言及は、単一の実体およびこのような実体の2つまたはそれよりも多くの組み合わせを含む。「開示」および「本発明」などについての言及は、本明細書で教示される単一または複数の態様を含む;など。本明細書で教示される態様は、「本発明」という用語によって包含される。
【0203】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は指示値±10%を意味し得、特に、「約」という用語は指示値±5%を意味し得る。
【0204】
本明細書で使用される場合、「溶液」という用語は、液体組成物、好ましくは水性組成物、特にアルカリ性pHを有する水性組成物を指す。溶液は、混合物であり得る。それは、一相のみの均一な混合物であり得るが、溶液が固体添加物、例えばアニオン交換マトリックスおよび/または沈殿物などを含むことも本発明の範囲内である。したがって、溶液はまた、不均一な混合物であり得る。
【0205】
一実施形態によれば、方法の場合には特定の工程を含むとして、または組成物、溶液および/もしくはバッファーの場合には特定の成分を含むとして本明細書に記載される主題は、各工程または成分からなる主題を指す。一実施形態によれば、特定の工程を含むとして本明細書に記載される主題は、各工程からなる主題を指し、工程は、示されている順序で実施される。本明細書に記載される好ましい実施形態を選択および組み合わせることが好ましく、好ましい実施形態の各組み合わせから生じる特定の主題もまた本開示に属する。
【0206】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0207】
本発明者らは、予想外のことに、低濃度の硫酸アンモニウムの存在が、高温、水溶液中および強アルカリ性条件下でRNAを強く安定化することを見出した。RNA分解が阻害される。理論に縛られるものではないが、以下の実施例から分かるように、これは、加水分解プロセスの阻害および遅延に起因し得る。
【0208】
実施例1-高温(75℃)のアルカリ性溶液中におけるRNA分解:
キットハンドブックにしたがってRNeasy Mini Kitを使用した精製によって、組織サンプル由来のヒト全RNAを得た。抽出したヒト全RNAの濃度を800ng/μlに調整した。次いで、下記のように、1μlのこのRNA溶液と、19μlのアルカリ性溶液またはバッファーとを混合した。
【0209】
使用した溶液またはバッファーは、溶液1(20mM NaOHを含む。約pH12);溶液2(20mM NaOHを含み、Tris-HClでpH11に緩衝化されている);および溶液3(20mM NaOHを含み、Tris-HClでpH10に緩衝化されている)であった。
【0210】
2μlのアリコートを直ぐに取り出し、3μlの100mM酢酸ナトリウム(pH5)と混合して任意のRNA分解を停止させ、参照として使用した。次いで、混合物の残りを75℃でインキュベートした。特定の時点において、さらなる任意の分解を停止させるために、2μlを取り出し、3μlの100mM酢酸ナトリウム(pH5)と混合した。
【0211】
混合物からアリコートを取り出し、75℃における1分間、2分間、3分間、5分間、7分間および10分間のインキュベーション後に、酢酸ナトリウムと混合した。加えて、75℃における10分間のインキュベーション後にアリコートを取り出し、次いで、ラボベンチ上に20~25℃でさらに20分間置いた(総インキュベーション時間30分間)。また、75℃における10分間のインキュベーション後にアリコートを取り出し、次いで、ラボベンチ上に20~25℃でさらに50分間置いた(総インキュベーション時間60分間)。
【0212】
したがって、インキュベーション時間経過は:
+1分|+2分|+3分|+5分|+7分|+10分|+30分|+60分であり、+30分および+60分の時点で、RNAを75℃で10分間インキュベートし、続いて、室温でさらに20分間(総インキュベーション時間30分間)またはさらに50分間(総インキュベーション時間60分間)インキュベートした。
【0213】
時間経過の完了後に、RNA Nano ChipおよびRNA Nano Kitを使用してAgilent BioAnalyzerシステムによって、RNA分解時点サンプル(各1μl)を分離した。異なるインキュベーション時間についてRNA完全性を分析し、RNA完全性数(RIN)を決定した。RINは、完全性の値をRNA測定結果に割り当てるためのアルゴリズムである。RIN値は、10(インタクト)~1(完全に分解)の範囲である。典型的には、5のRIN値を有するRNAは、RT-PCR用途に適切であると考えられるが、より高感度の用途のためには、より高いRIN値が望ましい場合がある。
【0214】
結果:
溶液1~3について得られた結果は、以下の
図1~3および表1~3に示されており、ゲル様画像(
図1A、2A、3A)として、電気泳動図(
図1B、2Bおよび3B)として、および表形式(表1~3)で、Agilent BioAnalyzerシステムを用いて得られた結果の表示を含む。
【0215】
(a)溶液1の結果
図1は、20mM NaOH(約pH12)を含む溶液1と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像を示す。
図1Aは、ゲル様画像を示す。y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。より大きな数字は、より大きな分子サイズを示す。図は、ラダー(L)およびサンプル1~9を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:20mM NaOH 1分
サンプル2:20mM NaOH 2分
サンプル3:20mM NaOH 3分
サンプル4:20mM NaOH 5分
サンプル5:20mM NaOH 7分
サンプル6:20mM NaOH 10分
サンプル7:20mM NaOH 30分
サンプル8:20mM NaOH 60分
サンプル9:参照RNA
【0216】
参照サンプル9では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なバンドとして示されており、矢印によって示されている。ゲル様画像から分かるように、サンプル1~8については、28Sおよび18SリボソームRNAは容易に検出可能ではなく、これは、強いRNA分解が起こったことを示している。
図1Bは、電気泳動図の形態で結果を示す。y軸は、任意の所定サイズのRNA濃度に比例する蛍光シグナルの相対強度を示す。x軸は、ゲルチップを通過する移動時間として、相対的なRNAサイズを示す(より大きな数字=より大きな分子サイズ)。やはり、参照サンプル9では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なピークとして視認可能であるが、サンプル1~8では容易に検出可能ではなく、これは、これらのサンプルでは強いRNA分解が起こったことを示している。
【0217】
以下の表1もまた、サンプル1~8におけるRNAの分解を示す。分解は、低いRIN値によって示される:
【表1-1】
【表1-2】
【0218】
(b)溶液2の結果
図2は、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像を示す。
図2Aは、ゲル様画像を示す。y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。図は、ラダー(L)およびサンプル1~9を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:pH11 1分
サンプル2:pH11 2分
サンプル3:pH11 3分
サンプル4:pH11 5分
サンプル5:pH11 7分
サンプル6:pH11 10分
サンプル7:pH11 30分
サンプル8:pH11 60分
サンプル9:参照RNA
【0219】
参照サンプル9では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なバンドとして示されている。サンプル1~3についても、28Sおよび18SリボソームRNAのバンドは両方とも視認可能であるが、インキュベーション時間の増加と共に視認性が低下する傾向がある(RNA分解の増加に対応する)。
図2Bは、電気泳動図の形態で結果を示す。y軸は、任意の所定サイズのRNA濃度に比例する蛍光シグナルの相対強度を示す。x軸は、ゲルチップを通過する移動時間として、相対的なRNAサイズを示す(より大きな数字=より大きな分子サイズ)。やはり、参照サンプル9では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なピークとして視認可能である。サンプル1~3についても、対応するピークは視認可能であるが、サンプル1~8については、インキュベーション時間の増加と共に視認性が低下する傾向がある。サンプル4~8は、28Sピークを示さない。
【0220】
以下の表2は、RIN値の減少傾向によってRNAの分解を示す。特に、5分間またはそれを超えるインキュベーション時間では、RIN値は5未満である。
【表2】
【0221】
(c)溶液3の結果
図3は、20mM NaOH(Tris-HClでpH10に緩衝化)を含む溶液3と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像を示す。
図3Aは、ゲル様画像を示す。y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。図は、ラダー(L)およびサンプル1~9を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:pH10 1分
サンプル2:pH10 2分
サンプル3:pH10 3分
サンプル4:pH10 5分
サンプル5:pH10 7分
サンプル6:pH10 10分
サンプル7:pH10 30分
サンプル8:pH10 60分
サンプル9:参照RNA
【0222】
ゲル様画像から分かるように、すべてのサンプルについて、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なバンドとして示されている。28SリボソームRNAについては、バンドは、インキュベーション時間の増加と共に薄くなる傾向がある。
【0223】
図3Bは、電気泳動図の形態で結果を示す。y軸は、任意の所定サイズのRNA濃度に比例する蛍光シグナルの相対強度を示す。x軸は、ゲルチップを通過する移動時間として、相対的なRNAサイズを示す(より大きな数字=より大きな分子サイズ)。やはり、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なピークとして示されている。28S RNAの分解は、インキュベーション時間の増加に対するピーク高さの減少によって視認可能である。
【0224】
以下の表3は、RIN値の減少傾向によってRNAの分解を示す。
【表3】
【0225】
実施例2-高温(85℃)のアルカリ性溶液中におけるRNA分解:
実験設定:
キットハンドブックにしたがってRNeasy Mini Kitを使用した精製によって、組織サンプル由来のヒト全RNAを得た。抽出したヒト全RNAの濃度を800ng/μlに調整した。次いで、下記のように、1μlのこのRNA溶液と、19μlのアルカリ性溶液またはバッファーとを混合した。
【0226】
使用した溶液またはバッファーは、溶液1(20mM NaOHを含む。約pH12);溶液2(20mM NaOHを含み、Tris-HClでpH11に緩衝化されている);および溶液3(20mM NaOHを含み、Tris-HClでpH10に緩衝化されている)であった。
【0227】
2μlのアリコートを直ぐに取り出し、3μlの100mM酢酸ナトリウム(pH5)と混合してRNA分解を停止させた。次いで、混合物の残りを85℃でインキュベートした。特定の時点において、2μlを取り出し、3μlの100mM酢酸ナトリウム(pH5)と混合した。
【0228】
混合物からアリコートを取り出し、85℃における1分間、2分間、3分間、5分間、7分間および10分間のインキュベーション後に、酢酸ナトリウムと混合した。加えて、85℃における10分間のインキュベーション後にアリコートを取り出し、次いで、ラボベンチ上に20~25℃でさらに20分間置いた(総インキュベーション時間30分間)。また、85℃における10分間のインキュベーション後にアリコートを取り出し、次いで、ラボベンチ上に20~25℃でさらに50分間置いた(総インキュベーション時間60分間)。
【0229】
したがって、インキュベーション時間経過は:
+1分|+2分|+3分|+5分|+7分|+10分|+30分|+60分であり、+30分および+60分の時点で、RNAを85℃で10分間インキュベートし、続いて、室温でさらに20分間(総インキュベーション時間30分間)またはさらに50分間(総インキュベーション時間60分間)インキュベートした。
【0230】
時間経過の完了後に、RNA Nano ChipおよびRNA Nano Kitを使用してAgilent BioAnalyzerシステムによって、RNA分解時点サンプル(各1μl)を分離した。インキュベーション時間と対比して、RNA完全性(RIN値)を分析した。
【0231】
結果:
溶液1~3について得られた結果は、以下の
図4~6および表4~6に示されており、ゲル様画像(
図4A、5A、6A)として、電気泳動図(
図4B、5Bおよび6B)として、および表形式(表4~6)で、Agilent BioAnalyzerシステムを用いて得られた結果の表示を含む。
【0232】
(a)溶液1の結果
図4は、20mM NaOH(約pH12)を含む溶液1と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像を示す。
図4Aは、ゲル様画像を示す。y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。図は、ラダー(L)およびサンプル1~9を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:20mM NaOH 1分
サンプル2:20mM NaOH 2分
サンプル3:20mM NaOH 3分
サンプル4:20mM NaOH 5分
サンプル5:20mM NaOH 7分
サンプル6:20mM NaOH 10分
サンプル7:20mM NaOH 30分
サンプル8:20mM NaOH 60分
サンプル9:参照RNA
【0233】
参照サンプル9では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なバンドとして示されている。アルカリ性溶液中におけるインキュベーションの開始直後に、RNAの分解が起こり、サンプル1~8については、28Sおよび18SリボソームRNAのバンドは容易に検出可能ではない。
【0234】
図4Bは、電気泳動図の形態で結果を示す。y軸は、任意の所定サイズのRNA濃度に比例する蛍光シグナルの相対強度を示す。x軸は、ゲルチップを通過する移動時間として、相対的なRNAサイズを示す(より大きな数字=より大きな分子サイズ)。やはり、参照サンプル9では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なピークとして視認可能であるが、サンプル1~8では容易に検出可能ではなく、これは、これらのサンプルでは強いRNA分解が起こったことを示している。
【0235】
以下の表4もまた、サンプル1~8におけるRNAの分解を示す。分解は、非常に低いRIN値によって示される:いくつかのサンプルについては、RIN値の決定は不可能であった(「N/A」によって示されている)。おそらくは、これは総RNA濃度が低いためであり、これらの条件下における急速なRNA分解が原因であった可能性がある。
【表4】
【0236】
(b)溶液2の結果
図5は、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像を示す。
図5Aは、ゲル様画像を示す。y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。図は、ラダー(L)およびサンプル1~9を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:pH11 1分
サンプル2:pH11 2分
サンプル3:pH11 3分
サンプル4:pH11 5分
サンプル5:pH11 7分
サンプル6:pH11 10分
サンプル7:pH11 30分
サンプル8:pH11 60分
サンプル9:参照RNA
【0237】
参照サンプル9では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なバンドとして示されており、サンプル1~3についても視認可能である。アルカリ性溶液中におけるインキュベーションの開始後に、RNAの分解が迅速に起こり、より長いインキュベーション期間については、28Sおよび18SリボソームRNAのバンドはほとんど視認不可能であるかまたは全く視認不可能である。
【0238】
図5Bは、電気泳動図の形態で結果を示す。y軸は、任意の所定サイズのRNA濃度に比例する蛍光シグナルの相対強度を示す。x軸は、ゲルチップを通過する移動時間として、相対的なRNAサイズを示す(より大きな数字=より大きな分子サイズ)。やはり、参照サンプル9では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なピークとして視認可能であるが、サンプル4~8については、ピークは検出不可能である。
【0239】
以下の表5から分かるより低いRIN値によっても示されているように、アルカリ性溶液中におけるインキュベーションの開始後に、RNAの分解が迅速に起こる。特に、すべてのRIN値が参照サンプルの値よりも低く、サンプル3~8については、RIN値は5未満である。
【表5】
【0240】
(c)溶液3の結果
図6は、20mM NaOH(Tris-HClでpH10に緩衝化)を含む溶液3と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像を示す。
図6Aは、ゲル様画像を示す。y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。図は、ラダー(L)およびサンプル1~9を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:pH10 1分
サンプル2:pH10 2分
サンプル3:pH10 3分
サンプル4:pH10 5分
サンプル5:pH10 7分
サンプル6:pH10 10分
サンプル7:pH10 30分
サンプル8:pH10 60分
サンプル9:参照RNA
【0241】
ゲル様画像から分かるように、参照サンプルでは、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なバンドとして示されており、サンプル1~2においても視認可能である。サンプル3では、28S RNAのバンドがほとんど視認不可能である。インキュベーション時間の増加と共にRNA分解が増加する。
【0242】
図6Bは、電気泳動図の形態で結果を示す。y軸は、任意の所定サイズのRNA濃度に比例する蛍光シグナルの相対強度を示す。x軸は、ゲルチップを通過する移動時間として、相対的なRNAサイズを示す(より大きな数字=より大きな分子サイズ)。参照サンプルでは、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なピークとして示されている。
【0243】
インキュベーション時間の増加と共に減少するRIN値によって示されているように、アルカリ性溶液中におけるインキュベーションの開始後に、RNAの分解が迅速に起こる。これは、以下の表6からも分かる。
【表6】
【0244】
実施例1および2の結果の要約:
図7は、実施例1および2の結果を要約したものである。
図7Aは、75℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。75℃で10分間インキュベートし、続いて室温でインキュベートしたサンプルの値も示されている。
図7Bは、75℃、pH10、11または12における最初の10分間のRNAインキュベーションについて、RNA完全性対時間を示す。
図7Cは、85℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。85℃で10分間インキュベートし、続いて室温でインキュベートしたサンプルの値も示されている。
図7Dは、85℃、pH10、11または12における最初の10分間のRNAインキュベーションについて、RNA完全性対時間を示す。
【0245】
分かるように:
-75℃または85℃におけるインキュベーション中に、すべての溶液またはバッファー(pH)条件で、RNA分解が観察された。
-より高温およびより高pHは両方とも、より急速なRNA分解に寄与する。
-重要な観察結果:
-75℃におけるpH10のみが、5分間のインキュベーション時間で5超のRIN値をもたらす。
-85℃では、3分間のインキュベーション後に、pH10~11でRINは4~5である。
-75℃では、3分間のインキュベーション後に、pH11の場合にはRIN>6であり、pH10の場合にはRIN≒8である。
-室温における最大1時間のさらなるインキュベーションは、測定可能なほど高いRNA分解をもたらさない。
【0246】
実施例3-硫酸アンモニウムを使用した、高温のアルカリ性溶液中におけるRNA安定化
-ヒト全RNA(RNeasy抽出)を異なるバッファー(これらは、溶出バッファーとしても適切である)中にスパイクした。
-バッファー条件:
-TrisでpH11に緩衝化した20mM NaOH(溶液2)、
-pH11に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)(溶液4)
-800ngのRNA(1μl)を19μlのバッファーと混合=インキュベーションの開始
-異なる時点で、2μlのRNAを取り出し、3μlの100mM NaOAc(pH5)に直ぐに追加して、分解プロセスを停止させる。
-時間経過:+1分|+2分|+3分|+5分|+7分|+10分
-75℃または85℃の温度でインキュベートする(室温におけるさらなるインキュベーションなし)
-Agilent BioAnalyzer(RNA Nano Kit)においてRNAサンプル(各1μl)をランする
-インキュベーション時間と対比して、RNA完全性(RIN)を分析する。
【0247】
結果:
溶液2および4について得られた結果は、以下の
図8~11および表8~11に示されており、ゲル様画像(
図8A~11A)として、電気泳動図(
図8B~11B)として、および表形式(表8~11)で、Agilent BioAnalyzerシステムを用いて得られた結果の表示を含む。
【0248】
(a)溶液2、75℃におけるインキュベーションの結果
図8は、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像を示す。
図8Aは、ゲル様画像を示す。y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。図は、ラダー(L)およびサンプル1~7を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:参照RNA(t=0)
サンプル2:20mM NaOH pH11 1分
サンプル3:20mM NaOH pH11 2分
サンプル4:20mM NaOH pH11 3分
サンプル5:20mM NaOH pH11 5分
サンプル6:20mM NaOH pH11 7分
サンプル7:20mM NaOH pH11 10分
【0249】
参照サンプルでは、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なバンドとして示されており、矢印によって示されている。インキュベーション時間の増加と共にRNA分解が増加する。
【0250】
図8Bは、電気泳動図の形態で結果を示す。y軸は、任意の所定サイズのRNA濃度に比例する蛍光シグナルの相対強度を示す。x軸は、ゲルチップを通過する移動時間として、相対的なRNAサイズを示す(より大きな数字=より大きな分子サイズ)。参照サンプル1では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なピークとして視認可能である。
【0251】
以下の表8に示されているインキュベーション時間の増加に対するRIN値の減少からも分かるように、インキュベーション時間の増加と共にRNA分解の増加が起こる。特に、10分間のインキュベーション時間では、RIN値は5未満であった。
【表8】
【0252】
(b)溶液4、75℃におけるインキュベーションの結果
図9は、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)+2.5mM(NH
4)
2SO
4を含む溶液4と共に75℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像を示す。
図9Aは、ゲル様画像を示す。y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。図は、ラダー(L)およびサンプル1~7を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:参照RNA(t=0)
サンプル2:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 1分
サンプル3:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 2分
サンプル4:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 3分
サンプル5:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 5分
サンプル6:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 7分
サンプル7:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 10分
【0253】
長期インキュベーション後であっても、すべてのサンプルにおいて、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なバンドとして示されている。硫酸アンモニウムの追加によって、RNAの分解がかなり遅延する。
【0254】
図9Bは、電気泳動図の形態で結果を示す。y軸は、任意の所定サイズのRNA濃度に比例する蛍光シグナルの相対強度を示す。x軸は、ゲルチップを通過する移動時間として、相対的なRNAサイズを示す(より大きな数字=より大きな分子サイズ)。参照サンプル1では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なピークとして視認可能である。やはり、硫酸アンモニウムの追加によって、RNAの分解がかなり遅延し、すべてのサンプルにおいて、18Sおよび28S RNAの明確なピークが容易に視認可能であることが分かる。
【0255】
硫酸アンモニウムの追加によって、RNAの分解がかなり遅延することは、以下の表9に示されている10分間のインキュベーション中のRIN値からも分かる。得られた値はより高く、硫酸アンモニウムの非存在下におけるインキュベーションと比較して、RNA完全性が改善される。すべてのサンプルについて、5を大きく超えるRIN値および約7のRIN値が達成された。
【表9】
【0256】
(c)溶液2、85℃におけるインキュベーションの結果
図10は、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)を含む溶液2と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像を示す。
図10Aは、ゲル様画像を示す。y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。図は、ラダー(L)およびサンプル1~7を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:参照RNA(t=0)
サンプル2:20mM NaOH pH11 1分
サンプル3:20mM NaOH pH11 2分
サンプル4:20mM NaOH pH11 3分
サンプル5:20mM NaOH pH11 5分
サンプル6:20mM NaOH pH11 7分
サンプル7:20mM NaOH pH11 10分
【0257】
28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なバンドとして示されている。アルカリ性溶液中におけるインキュベーションの開始後に、RNAの分解が迅速に起こる。
【0258】
図10Bは、電気泳動図の形態で結果を示す。y軸は、任意の所定サイズのRNA濃度に比例する蛍光シグナルの相対強度を示す。x軸は、ゲルチップを通過する移動時間として、相対的なRNAサイズを示す(より大きな数字=より大きな分子サイズ)。やはり、アルカリ性溶液中におけるインキュベーションの開始後に、RNAの分解が迅速に起こることが分かる。
【0259】
これは、以下の表10に示されているより低いRIN値からも分かる。
【表10】
【0260】
(d)溶液4、85℃におけるインキュベーションの結果
図11は、20mM NaOH(Tris-HClでpH11に緩衝化)+2.5mM(NH
4)
2SO
4を含む溶液4と共に85℃でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像を示す。
図11Aは、ゲル様画像を示す。y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。図は、ラダー(L)およびサンプル1~7を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:参照RNA(t=0)
サンプル2:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 1分
サンプル3:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 2分
サンプル4:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 3分
サンプル5:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 5分
サンプル6:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 7分
サンプル7:20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2S0
4 10分
【0261】
28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なバンドとして示されている。85℃のインキュベーション温度においても、硫酸アンモニウムの追加によって、RNAの分解がかなり遅延する。
【0262】
図11Bは、電気泳動図の形態で結果を示す。y軸は、任意の所定サイズのRNA濃度に比例する蛍光シグナルの相対強度を示す。x軸は、ゲルチップを通過する移動時間として、相対的なRNAサイズを示す(より大きな数字=より大きな分子サイズ)。参照サンプル1では、28Sおよび18SリボソームRNAは、明確なピークとして視認可能である。やはり、硫酸アンモニウムの追加によって、RNAの分解がかなり遅延することが分かる。
【0263】
硫酸アンモニウムの追加によって、RNAの分解がかなり遅延することは、85℃における10分間のインキュベーション中のRIN値からも分かる。得られた値はより高く、硫酸アンモニウムの非存在下におけるインキュベーションと比較して、RNA完全性が改善される。以下の表11も参照のこと。硫酸アンモニウムの存在下では、すべてのサンプルについて、5超のRINが達成され、サンプルの大部分について、RINは7超であった。
【表11】
【0264】
実施例3の結果の要約:
-75℃または85℃におけるインキュベーション中に、すべての溶液またはバッファー(pH)条件で、RNA分解が観察された。
-より高温およびより高pHの両方が、より急速なRNA分解に寄与する。
-75℃および85℃の両方で、硫酸アンモニウム(2.5mm)の追加は、RNA分解の阻害および遅延をもたらすので、pH11でRNA安定化をもたらす。
【0265】
実施例1~3で観察されたRNA安定性の要約
実施例1~3の結果は、
図12Aおよび12Bに要約されている。
図12Aは、75℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、および2.5mM硫酸アンモニウムの存在下、75℃、pH11で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。
図12Bは、85℃、pH10、11または12で最大10分間インキュベートしたRNAについて、および2.5mM硫酸アンモニウムの存在下、85℃、pH11で最大10分間インキュベートしたRNAについて、RNA完全性対時間を示す。
【0266】
高温条件(例えば、70℃~90℃、72℃~88℃、特に75℃~85℃の温度範囲)および高pH条件(例えば、9またはそれを超えるpH、例えば10~12のpH、特に11のpH)下で、低濃度(例えば、約2.5mM)の硫酸アンモニウムの存在は、RNAに対する強力な安定化効果をもたらすことが結論付けられる。特に、75℃~85℃における10分間のインキュベーション中に、RNAは効率的に安定化された;この状況は、アニオン交換樹脂からRNAを溶出させるために必要な条件を模倣するので、(低濃度の硫酸アンモニウムで安定化した際に)溶出したRNAは、高感度かつ定量的な検出、例えば診断アッセイにおけるウイルスRNA(例えば、HCV、HIV)のqPCRベースの検出に適切である。
【0267】
実施例4-pH11および85℃の溶液中における(NH4)2SO4およびEDTAによるRNA安定化:
研究デザイン:
・ヒト全RNA(RNeasy抽出)を異なるバッファー(これらは、溶出バッファーとして適切である)にスパイクした。
・バッファー条件:
○バッファー1:pH11に緩衝化した20mM NaOH;
○バッファー2:pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA;
○バッファー3:pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+1mM硫酸アンモニウム((NH4)2SO4);
○バッファー4:pH11に緩衝された20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+2.5mM硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)。
・800ngのRNA(1μl)を19μlのバッファーと混合=インキュベーションの開始(総体積20μl)。
・異なる時点で、2μlのRNAを取り出し、3μlの100mM NaOAc(pH5)に直ぐに追加して、分解プロセスを停止させる。
・インキュベーションの時間経過:
+1分|+2分|+3分|+5分|+7分|+10分|+15分|+20分|+30分
・インキュベーション温度:85℃。
・Agilent BioAnalyzer(RNA Pico Kit)においてRNAサンプル(各1μl)をランした。
・インキュベーション時間と対比して、RNA完全性(RIN)を分析した。
・相対的な全長バンド強度に基づいて、インキュベーション時間と対比して、残りの全長18S rRNA、28S rRNAの量を分析した。
【0268】
残りの全長18S rRNA、28S rRNAに関するこの分析の詳細:
Agilent Bioanalyzerゲルチップ上の各rRNAバンドの強度の濃度測定によって、全長rRNAの量を決定した。この目的のために、ゲルキャピラリー(より高分子量の(=より長い)RNA分子は、より短いRNAよりも遅く移動する)を通過するために必要な時間に対して、相対的なRNA強度をプロットした。強度対時間トレースにおける各RNAピーク下の面積を測定することによって、各全長RNAの量を決定した。マーカーRNAに対してRNAサンプルの強度を較正することができるように、すべてのキャピラリーゲルチップでサンプルと並行して、所定のマーカーRNA分子セットをランした。次いで、インキュベーション時間に対して、測定した全長rRNAの相対量をプロットした(時点「0」におけるrRNA量は、100%に正規化されている);一次分解速度をデータにフィッティングすることによって、rRNA半減期を決定した。
【0269】
・インキュベーション時間と対比して、66ntおよび500ntアンプリコンを使用して、増幅可能な18S rRNAを分析した。インキュベーション時間と対比して、Ct値に基づいて半減期を計算した。
【0270】
増幅可能な18S rRNAに関するこの分析の詳細:
製造業者の説明書にしたがってABI 7900機器でQuantitect Multiplex RT-PCR Kit(QIAGEN)を使用して二重鎖リアルタイムRT-PCRによって、18S rRNAを定量した。ABI 7900分析ソフトウェアを使用して、すべてのRNAサンプルのCt値を決定した。以下のプライマーおよびプローブ配列を使用した:
【表A】
*BHQ=“ブラックホールクエンチャー”-インタクトなプローブオリゴヌクレオチド中のFRETドナー色素の蛍光をクエンチする暗色FRETアクセプター色素
【0271】
結果1:Agilent BioAnalyzerゲル画像
図13A~13Dは、異なるバッファー溶液と共に85℃、pH11でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像)を示す。
図13Aは、pH11に緩衝化した20mM NaOH(バッファー1)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Bは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA(バッファー2)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Cは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+1mM(NH
4)
2SO
4(バッファー3)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図13Dは、pH11に緩衝化した20mM NaOH+0.01mM(10μM)EDTA+2.5mM(NH
4)
2SO
4(バッファー4)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である。
図13A~13Dのそれぞれについて、y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。各図は、ラダー(L)およびサンプル1~10を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:(t=0);参照RNA
サンプル2:1分
サンプル3:2分
サンプル4:3分
サンプル5:5分
サンプル6:7分
サンプル7:10分
サンプル8:15分
サンプル9:20分
サンプル10:30分
【0272】
図13A~13Dから分かるように、EDTAも(NH
4)
2SO
4も含まないバッファー1では、迅速なRNA分解が起こる(
図13A)。試験した濃度のキレート化剤EDTAのみ(バッファー2、
図13B)では、安定化効果がわずかである。(NH
4)
2SO
4およびEDTAの両方を含むバッファー3および4では、有意なRNA安定化が達成される。
図13Cおよび13Dの比較から分かるように、(NH
4)
2SO
4があれば、試験したすべてのインキュベーション時間について、18S rRNAバンドが視認可能である。1mM(バッファー3)から2.5mM(バッファー4)に(NH
4)
2SO
4濃度を増加させることによって、長期インキュベーション後のインタクトな28S rRNAの量をさらに増加させることができる。分かるように、EDTAなどのキレート化剤と組み合わせて(NH
4)
2SO
4を使用した場合、(上記実施例3で議論されている)(NH
4)
2SO
4のみの安定化効果は、驚くべきことにさらに顕著である。
【0273】
結果2:全長rRNAの定量:
Agilent BioAnalyzerソフトウェアを使用して、BioAnalyzer Chipにおける各バンドの強度に基づいて、全長18Sおよび28S rRNAの相対量を定量した。時点「0」における量を100%に設定した。
【0274】
異なるバッファーにおけるバンド強度(時点0における18S rRNAの%)に基づいて検出した18S rRNAは、表12に示されている:
【表12】
【0275】
表12に示されているように、EDTAのみ(バッファー2)では、検出可能な18S rRNAの%に対する効果がわずかである。検出可能なRNAの%は、対照バッファー1と比較してわずかに増加する傾向がある。バッファー3および4は優れた結果をもたらし、対照バッファー1と比較してRNAの良好な安定化をもたらす。特に、5分間、7分間およびさらには30分間の長期インキュベーション後においても、バッファー4は、高度の安定化を達成する。
【0276】
一次減衰曲線(rRNAの量対インキュベーション時間)をフィッティングし、全長rRNAの半減期を決定することによって、表12に示されている得られたデータを分析した。バッファー1~4について得られた曲線は、それぞれ
図14A~
図14Dに示されている。各図について、y軸は、全長18S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【0277】
異なるバッファーにおけるバンド強度(時点0における28S rRNAの%)に基づいて検出した28S rRNAは、表13に示されている:
【表13】
【0278】
表13から分かるように、より長い28S rRNAの安定化を分析した場合も、バッファー3および4は、対照バッファー1よりも明らかに優れており、28S rRNAのより高い%を保持する。この効果は、5分またはそれを超えるインキュベーション時間で特に顕著であり、バッファー4では、バッファー3よりもさらに強力である。
【0279】
一次減衰曲線(rRNAの量対インキュベーション時間)をフィッティングし、全長rRNAの半減期を決定することによって、表13に示されている得られたデータを分析した。バッファー1~4について得られた曲線は、それぞれ
図15A~
図15Dに示されている。各図について、y軸は、全長28S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【0280】
以下のようにRNA半減期を計算した:
全長RNAは、一次反応速度にしたがって分解すると仮定すると、時間に対する測定された相対RNA量は、
y=x0・e-k・t
(式中、
y=時点xにおけるRNAの量
x0=時点0におけるRNAの量(ここでは100%に設定-上記を参照のこと)
k=速度定数
t=時間[分])
のように表され得る。
【0281】
半減期t(1/2)は、速度定数kから計算され得る:t(1/2)=ln(2)/k
【0282】
【0283】
表14から分かるように、キレート化剤EDTAのみ(バッファー2)の使用は、対照バッファー1と比較して、18Sおよび28S rRNA半減期のわずかな増加をもたらす。バッファー3および4(これらは両方とも、(NH4)2SO4を含む)は、18Sおよび28S rRNA半減期の顕著な増加をもたらす。驚くべきことに、バッファー3中のわずか1mMの(NH4)2SO4でさえ、RNA半減期のかなりの増加をもたらすために十分であったが、(ごくわずかに多い2.5mMの(NH4)2SO4を含む)バッファー4では、18S rRNAの増加は、バッファー3と比較して約13倍高かった。
【0284】
全体として、85℃およびpH11でインキュベートした場合、18S rRNAおよび28S rRNAは迅速に分解することが分かる(バッファー1)。
【0285】
10μM EDTAの追加(バッファー2)は、全長rRNAに対する安定化効果を有するが、半減期の増加はごくわずかである。対照的に、1mM硫酸アンモニウムのさらなる存在は、18S RNAの半減期のほぼ10倍の増加および28S rRNAの半減期の2倍超の増加という強力な安定化効果をもたらす。10μM EDTAの存在下における2.5mM硫酸アンモニウムの追加は、対照と比較して、18S rRNAの半減期の100倍超の増加および28S rRNAの8倍の増加というさらに強力な安定化をもたらす。長いrRNA分子におけるホスホジエステル結合に影響を与える単一加水分解事象のみが全長RNAを破壊するので、これは顕著かつ予想外である。
【0286】
結果3:Agilent BioAnalyzer RIN値分析
さらに、インキュベーション時間と対比して、Agilent BioAnalyzerから得られたRIN値を分析して、RIN「半減期」を決定した。「RIN半減期」は、RINが10(完全にインタクトな高品質RNA)から5(RNAサンプルがqPCRベースの分析に依然として適切であるために必要な最低RIN)に低下するために必要な時間である。RINの変化は、一次速度に従うインキュベーション時間の関数であると仮定して、RIN半減期を計算した。
【0287】
図16A~16Dは、それぞれバッファー1~4について、RIN対時間を示す。RIN値はy軸に示されており、インキュベーション時間はx軸に示されている。結果は、以下の表15に示されている。バッファー2~4では、RIN半減期は、対照バッファー1と比較して増加する。やはり、最良の結果は、バッファー4で得られる。
【表15】
【0288】
異なるアルカリ性バッファー中における30分間のインキュベーション中にRINを分析した場合、上記と同様の結果(結果2を参照のこと)が得られる:ここでは、10μM EDTAおよび1mM硫酸アンモニウムの存在は、「RIN半減期」の3倍超の増加をもたらし(バッファー3)、10μM EDTAおよび2.5mM硫酸アンモニウムの存在は、8倍の増加をもたらす(バッファー4)。これは、本発明の教示に従った場合、pH11および85℃のアルカリ性バッファー中で、10またはそれに近いRINを有する高品質RNA調製物を約30分間インキュベートすることができ、その後、このRNAが、qPCR分析のために十分にインタクトであると依然として考えられることを示している。
【0289】
結果4:18S rRNA標的の定量的リアルタイムRT-PCR分析
66ntおよび500ntの2つの異なるアンプリコンを使用して、リボソーム18S RNAのqRT-PCR分析を実施した。
【0290】
図17A~17Dは、それぞれバッファー1~4を用いて得られた66bpアンプリコン(上パネル)および500bpアンプリコン(下パネル)の平均Ct値(バッファー1の結果は
図17Aに示されており、バッファー2の結果は
図17Bに示されており、バッファー3の結果は
図17Cに示されており、バッファー4の結果は
図17Dに示されている)を示す。平均CT値はy軸に示されており、インキュベーション時間はX軸に示されている。
【0291】
RNA半減期の計算:
RNA半減期の計算では、(効率が100%の理想的なPCRに基づいて)Ct値が1だけ増加することは、テンプレートの量が50%減少することに等しいと仮定した。
y=x0+k・t
(式中、
y=時点xにおけるRNAの量(Ct値として表される)
x0=時点0におけるRNAの量(Ct値として表される)
k=適合Ct対時間曲線の傾き
t=時間[分]
【0292】
半減期t(1/2)は、速度定数kから計算され得る:t(1/2)=1/k
【0293】
66bpおよび500bpアンプリコンのrRNA半減期は、表16に示されている。
【表16】
【0294】
qPCRによって18S rRNAを分析した場合、(特に2.5mM硫酸アンモニウムおよび10μM EDTAの存在下における)アルカリ性バッファー中および高温におけるRNAの安定化は、増幅可能なRNAの非常に強力な安定化をもたらすことが直接的に実証される。より短いアンプリコン(RNA配列)と比較して、アルカリ性加水分解に対してより感受性であると考えられる長い500nt RNA標的では、この効果はさらに顕著である。
【0295】
実施例5-pH10および75℃の溶液中における(NH4)2SO4およびEDTAによるRNA安定化:
研究デザイン:
・ヒト全RNA(RNeasy抽出)を異なるバッファー(これらは、溶出バッファーとして適切である)にスパイクした。
・バッファー条件:
○バッファー1:pH10に緩衝化した20mM NaOH;
○バッファー2:pH10に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM硫酸アンモニウム(NH4)2SO4;
○バッファー3:pH10に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)+1mM EDTA。
・800ngのRNA(1μl)を19μlのバッファーと混合=インキュベーションの開始(総体積20μl)。
・異なる時点で、2μlのRNAを取り出し、3μlの100mM NaOAc(pH5)に直ぐに追加して、分解プロセスを停止させる。
・インキュベーションの時間経過:
+1分|+2分|+3分|+5分|+7分|+10分|+15分|+20分|+30分。
・インキュベーション温度:75℃。
・Agilent BioAnalyzer(RNA Pico Kit)においてRNAサンプル(各1μl)をランした。
・インキュベーション時間と対比して、RNA完全性(RIN)を分析した。
・相対的な全長バンド強度に基づいて、インキュベーション時間と対比して、残りの全長18S rRNA、28S rRNAの量を分析した。時点0におけるRNAの量を100%に設定した。全長rRNA半減期を計算した。
【0296】
残りの全長18S rRNA、28S rRNAに関するこの分析の詳細:
Agilent Bioanalyzerゲルチップ上の各rRNAバンドの強度の濃度測定によって、全長rRNAの量を決定した。この目的のために、ゲルキャピラリー(より高分子量の(=より長い)RNA分子は、より短いRNAよりも遅く移動する)を通過するために必要な時間に対して、相対的なRNA強度をプロットした。強度対時間トレースにおける各RNAピーク下の面積を測定することによって、各全長RNAの量を決定した。マーカーRNAに対してRNAサンプルの強度を較正することができるように、すべてのキャピラリーゲルチップでサンプルと並行して、所定のマーカーRNA分子セットをランした。次いで、インキュベーション時間に対して、測定した全長rRNAの相対量をプロットした(時点「0」におけるrRNA量は、100%に正規化されている);一次分解速度をデータにフィッティングすることによって、rRNA半減期を決定した。
【0297】
結果1:Agilent BioAnalyzerゲル画像
図18A~
図18Cは、実施例5にさらに記載されている異なる溶液と共に75℃、pH10でインキュベートしたヒト全RNAのAgilent BioAnalyzer画像(ゲル様画像)を示す。
図18Aは、pH10に緩衝化した20mM NaOH(バッファー1)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図18Bは、pH10に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2SO
4(バッファー2)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である;
図18Cは、pH10に緩衝化した20mM NaOH+2.5mM(NH
4)
2SO
4+1mM EDTA(バッファー3)と共にインキュベートしたRNAのゲル様画像である。
【0298】
図18A~18Cのそれぞれについて、y軸はRNAのサイズを示し、ここでは、ゲルチップを通過するために必要な時間として表されている。各図は、ラダー(L)およびサンプル1~10を示し、サンプルは以下に示されている:
サンプル1:(t=0);参照RNA
サンプル2:1分
サンプル3:2分
サンプル4:3分
サンプル5:5分
サンプル6:7分
サンプル7:10分
サンプル8:15分
サンプル9:20分
サンプル10:30分
【0299】
結果2:全長rRNAの定量:
Agilent BioAnalyzerソフトウェアを使用して、BioAnalyzer Chipにおける各バンドの強度に基づいて、全長18Sおよび28S rRNAの相対量を定量した。時点「0」における量を100%に設定した。
【0300】
異なるバッファーにおけるバンド強度(時点0における18S rRNAの%)に基づいて検出した18S rRNAは、表17に示されている:
【表17】
【0301】
図から分かるように、特に20分間および30分間の長期インキュベーション時間(バッファー2)において、(NH4)2SO4のみの安定化効果を観察することができる。特に5分間およびそれを超えるインキュベーション時間において、バッファー3は、優れた安定化をもたらす。
【0302】
一次減衰曲線(rRNAの量対インキュベーション時間)をフィッティングし、全長rRNAの半減期を決定することによって、表17に示されている得られたデータを分析した。バッファー1~3について得られた曲線は、それぞれ
図19A~
図19Cに示されている。各図について、y軸は、全長18S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【0303】
異なるバッファーにおけるバンド強度(時点0における28S rRNAの%)に基づいて検出した28S rRNAは、表18に示されている:
【表18】
【0304】
一次減衰曲線(rRNAの量対インキュベーション時間)をフィッティングし、全長rRNAの半減期を決定することによって、表18に示されている得られたデータを分析した。バッファー1~3について得られた曲線は、それぞれ
図20A~
図20Cに示されている。各図について、y軸は、全長28S rRNAの相対量(%)を示す;x軸は、インキュベーション時間を示す。
【0305】
以下のようにRNA半減期を計算した:
仮定:全長RNAは、一次反応速度にしたがって分解すると仮定するので、時間に対する測定された相対RNA量は、
y=x0・e-k・t
(式中、
y=時点xにおけるRNAの量
x0=時点0におけるRNAの量(ここでは100%に設定-上記を参照のこと)
k=速度定数
t=時間[分])
のように表され得る。
【0306】
半減期t(
1/
2)は、速度定数kから計算され得る:t(
1/
2)=ln(2)/k。結果は、表19に示されている。
【表19】
【0307】
実施例5の結論:
75℃およびpH10でインキュベートした場合、pH11および85℃の温度の場合(実施例4)ほど迅速ではないが、18S rRNAおよび28S rRNAは迅速に分解する。
【0308】
pH10および75℃の存在下における2.5mM硫酸アンモニウムの追加は、全長rRNAに対する安定化効果を有する;18S rRNAおよび28S rRNAの両方について、半減期の増加はわずかである。20分間またはそれを超えるインキュベーション後に、効果はより顕著になる。
【0309】
pH10および75℃の存在下における2.5mM硫酸アンモニウムおよび1mM EDTAの追加は、18Sおよび28S rRNAの両方について、強力な安定化効果をもたらす:18S rRNAについては、30分間のインキュベーション期間で、測定可能な分解は検出されない;28S rRNAについては、全長RNAの半減期は、非安定化RNAと比較して7倍超増加する。
【配列表】