(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】血液からの免疫グロブリンの濃縮のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/38 20060101AFI20221024BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20221024BHJP
C07K 16/06 20060101ALN20221024BHJP
C07K 14/765 20060101ALN20221024BHJP
【FI】
A61M1/38
C07K1/22
C07K16/06
C07K14/765
(21)【出願番号】P 2018552228
(86)(22)【出願日】2017-04-04
(86)【国際出願番号】 US2017025918
(87)【国際公開番号】W WO2017176735
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-03-30
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594202615
【氏名又は名称】ヘモネティクス・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Haemonetics Corporation
【住所又は居所原語表記】125 Summer Street Boston MA 02110 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ソウェミモ-コーカー,サミュエル,オー
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-501721(JP,A)
【文献】特表2014-514936(JP,A)
【文献】特開2001-017540(JP,A)
【文献】国際公開第2015/136217(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/024514(WO,A1)
【文献】Mol. Cell. Proteom.,2003年,Vol. 2,pp. 262-270
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61M
A61D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と出口を有し、免疫グロブリンと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む分離容器;
遠心分離ボウルであって、入口と出口を有し、遠心分離ボウルの入口が患者からの全血を受け入れるように患者の静脈へと結合されるよう構成され、そして遠心分離ボウルの出口が分離容器の入口に結合され、
全血から血漿製剤を分離し、血漿製剤を
遠心分離ボウルの出口を通って分離容器の入口へと送るよう構成された遠心分離ボウル;および
分離容器の出口に結合され、精製された免疫グロブリン製剤を収集するよう適合された収集容器を
含む、
患者の全血中に存在する免疫グロブリンを抽出するよう構成されたアフェレーシスシステムであって:
アフェレーシスシステムはさらに、
血漿製剤を、リガンドに対する免疫グロブリンの非共有結合に十分な条件下で、免疫グロブリンと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体と分離容器内で接触させ;
固体支持体を分離容器内において、非共有結合された免疫グロブリンがリガンドから溶出液中へと放出される条件下で溶出液と接触させて、免疫グロブリンを含有する溶出液を得;そして
溶出された免疫グロブリンを収集容器に収集すること含む方法を実行するよう構成されている、アフェレーシスシステム。
【請求項2】
入口と出口を有し、
全血中の非免疫グロブリン成分と特異的に結合するリガンドに共有結合した固体支持体を含む分離容器;
遠心分離ボウルであって、入口と出口を有し、遠心分離ボウルの入口が患者からの全血を受け入れるように患者の静脈へと結合されるよう構成され、そして遠心分離ボウルの出口が分離容器の入口に結合され、
全血から血漿製剤を分離し、血漿製剤を
遠心分離ボウルの出口を通って分離容器の入口へと送るよう構成された遠心分離ボウル;および
分離容器の出口に結合され、免疫グロブリンが富化された血漿製剤を収集するよう適合された収集容器を
含む、
患者の全血中に存在する免疫グロブリンを富化するよう構成されたアフェレーシスシステムであって:
アフェレーシスシステムはさらに、
血漿製剤を、リガンドに対する非免疫グロブリン成分の非共有結合に十分な条件下で、分離容器内において固体支持体と接触させ;そして
非免疫グロブリンが欠乏され免疫グロブリンが富化された血漿製剤を収集する方法を実行するよう構成されている、アフェレーシスシステム。
【請求項3】
方法は部分的または全体的に自動化された方法である、請求項1または2のシステム。
【請求項4】
固体支持体はビーズである、請求項1または2のシステム。
【請求項5】
リガンドはブドウ球菌またはレンサ球菌からなる群より選択されるバクテリアの科に由来するタンパク質、またはその誘導体である、請求項1のシステム。
【請求項6】
リガンドはシバクロンブルーまたはその誘導体である、請求項2のシステム。
【請求項7】
血漿製剤は、多血小板血漿または血漿である、請求項1または2のシステム。
【請求項8】
全血は抗凝固剤が添加され
ている、請求項
1または2のシステム。
【請求項9】
分離容器はカラムまたはバッグである、請求項1または2のシステム。
【請求項10】
分離容器は約20ml/分から約120ml/分の間の流量で容器を通って流れる
全血を支持するよう構成されている、請求項1または2のシステム。
【請求項11】
分離容器は約10mmHgから約100mmHgの間の背圧で容器を通って流れる
全血を支持するよう構成されている、請求項1または2のシステム。
【請求項12】
方法がさらに、免疫グロブリンを含有する溶出液に中和バッファを添加することを含み、免疫グロブリンを含み約7.0から約8.0の間のpHを有する最終溶液が得られる、請求項1のシステム。
【請求項13】
方法はシステムから分離容器を取り外さずに行われる、請求項1または2のシステム。
【請求項14】
システムは閉鎖系である、請求項1または2のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
この出願は、2016年4月5日に出願された米国仮出願シリアル第62/318,677号、そしてまた2016年4月5日に出願された米国仮出願シリアル第62/318,662号、そしてまた2016年4月5日に出願された米国仮出願シリアル第62/318,679号、そしてまた2016年4月5日に出願された米国仮出願シリアル第62/318,686号からの優先権の利益を主張するものであり、これらの各々の全開示は、ここでの参照によって本願に取り込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
本発明は、生物学および医学の分野に関する。特に、この発明はヒトの血液製剤およびその調製に関している。
【0003】
血液はヒトおよび他の動物の体液であり、身体内の種々の細胞間を行き来する分子(酸素、二酸化炭素、養分、および代謝老廃物を含む)の運搬に関与している。脊椎動物において、血液は血球(赤血球および白血球を含む)と、血球および血液分子を懸濁して保持する血液の液体成分である血漿から構成されている。血漿は、身体の合計血液量の約55%までを占めている。
【0004】
血液は、1つの個体から別の個体へと移植することができる。かくしてヒトは、必要とする他のヒトが利用するように、献血を行ってきた。非ヒト動物からの血液(例えばネコやイヌのような脊椎動物)は、健康なドナー(供与者)から、必要とするレシピエント(授与者)へと移植することができる。供与された血液は、血液バンクに貯蔵されてよい。
【0005】
供与された血液は、成分へと分離することができる。この場合、ドナーから直接に取り出された血液流体のすべてを含有している血液は、全血と呼ばれている。全血には物質(例えば凝固を防止するためのヘパリンまたはEDTA)を添加してもよいが、成分(例えば液体または細胞)を除いたものは全血ではないことに留意されたい。
【0006】
全血はまた、個々の成分を分離するために処理することができる。例えば、赤血球を分離し濃縮(富化)することができる。ヒトの白血球(赤血球ではない)は主要組織適合遺伝子複合体抗原を発現させるから、赤血球は、赤血球の白血球低減を行うことによってさらに処理して、濃厚赤血球集団中の白血球の数を低減させることができる。
【0007】
アフェレーシス技術を使用して、ドナー(例えば健康なボランティア)の血液を収集し、全血の所望とする成分を分離する装置を通過させることができる。幾つかのアフェレーシスシステムでは、所望とする成分を取りだした後の全血の残部は、ドナーに返却される。例えば、血小板フェレーシス(トロンボシタフェレーシスまたはトロンバフェレーシスとも呼ばれる)においては、血小板が所望の成分である。かくして血小板フェレーシスにおいては、ドナーの全血は血小板を収集する装置を通過され、血小板低減血液(残部とも呼ばれてよい)がドナーに返却される。赤血球および血漿などの血液の他の所望の成分は、アフェレーシスを使用して選択的に収集することができる。
【0008】
商業的に入手可能な種々の装置が、アフェレーシスを行うために使用されている。例えば、PCS(登録商標(R))2血漿収集システムおよびMCS(R)+9000モービル血小板収集システムが、ヘモネティクス社(米国マサチューセッツ州ブレイントリー)から商業的に入手可能である。テルモBCT社もまた、Trima Accelアフェレーシスシステム、COBE SpectraアフェレーシスシステムおよびSpectraOptiaアフェレーシスシステムなどのアフェレーシスシステムを販売している。フェンオール社(米国イリノイ州レイクズーリック)もまた、Amicusトロンバフェレーシスアフェレーシス装置を販売している。
【0009】
全血から分離し濃縮することができる別の成分は、幹細胞である。
図1は、アフェレーシス装置を使用して幹細胞を供与している患者(例えば健康なボランティアドナー)を概略的に示している。
【0010】
全血から分離し濃縮することができる別の成分は、一種の白血球(ルーコサイトとも呼ばれる)である血小板である。殆どのルーコサイトとは異なり、血小板細胞には核が存在しない。
図2は、ヘモネティクス社(米国マサチューセッツ州ブレイントリー)によって販売されているMCS(R)+9000モービル血小板収集システムを使用して、血小板を供与している患者を示している。
【0011】
全血の血漿部分もまた収集可能である。
図3は、血漿を収集するための非限定的な装置、すなわちヘモネティクス社(米国マサチューセッツ州ブレイントリー)によって市販されているPCS(R)2装置を示している。
【0012】
一般に、アフェレーシスシステム(アフェレーシスユニットとも呼ばれる)は、患者から血液を引き出して遠心分離機および/またはフィルターを通して移動させて血液製剤を分離するために、可撓性のチューブ(例えばポリビニルのチューブ)を組み込んでいる。血液は次いでチューブを介して患者に戻されるか、または供与または処分のために、多くはポールから吊り下げられているバッグに収集される。アフェレーシスシステムは多くの場合、ディスプレイおよび制御パネルを含んでおり、オペレータ(例えば医師または看護師)がシステムをプログラムし、また進行および/または警告を視認できるようになっている。アフェレーシスシステムの安全に関する特徴には、圧力センサ、超音波気泡検出器、光学的流体レベル検出器、および乾熱流体加温器が含まれる。加温器は、低温の流体を輸注することによって生ずる低体温症を防止するのに役立つ。幾つかのアフェレーシスシステムは車輪付きであってよく、またはカート上に配置されてよい。
【0013】
使用する場合、アフェレーシスシステムは典型的には、遠心分離機、ポンプ、および他の設定を自動的に制御する。例えば、回転式の蠕動ポンプが患者またはドナー(例えば健康なボランティア)から血液を引き出し、血液をフィルターまたは遠心分離機を通して給送する。一般に、フィルターは血液成分を寸法に基づいて分離し、遠心分離機は血液成分を密度によって分離する。幾つかのアフェレーシス装置は、血漿と細胞の界面を検出する光学的なセンサーを含んでおり、他の成分による汚染を最小限にする。遠心分離機は入口および出口を有し、また成分を分離状態に保つ区画を有する。ポンプは血液製剤を収集バッグへと移動させ、抗凝固剤を添加し、そして流体を再輸注する。置換用流体(例えば生理食塩水、血清アルブミン、血漿タンパク分画、新鮮凍結血漿)を患者またはドナーに輸注して、適切な循環血液量および圧力を維持することができる。
【0014】
既存のアフェレーシスシステムは血液および血液製剤を処理するのに有用なものではあるが、ドナーまたは患者から血液製剤を得るための、改善されたアフェレーシスシステム、またはそうしたシステムを修正するための方法に対する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0015】
この発明は、血液および血液製剤からの免疫グロブリンを濃縮(富化)および/または抽出するための、改善された方法および装置を提供する。
【0016】
従って1つの側面において、この発明は、生物学的流体中に存在するIgGのような免疫グロブリンの少なくとも55%を生物学的流体から抽出するための方法を提供し:(a)免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体を、生物学的流体中の免疫グロブリンがリガンドと非共有結合するのに十分な条件下で、免疫グロブリンと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体と接触させ;そして(b)非共有結合された免疫グロブリンがリガンドから溶出液中に放出される条件下で、固体支持体を溶出液と接触させることを含み、生物学的流体中に存在する免疫グロブリンの少なくとも55%が溶出液中に抽出される。
【0017】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリンはIgGである。
【0018】
幾つかの実施形態において、この方法は工程(b)に先立って、工程(a)を少なくとも1回繰り返すことを含む。幾つかの実施形態において、溶出液中の免疫グロブリンは精製される。幾つかの実施形態において、溶出液中の免疫グロブリンは、生物学的流体中で天然に存在する他の分子を少なくとも90%含まない。
【0019】
幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも60%が、生物学的流体から抽出される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも70%が、生物学的流体から抽出される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも90%が、生物学的流体から抽出される。
【0020】
幾つかの実施形態において、工程(a)は、固体支持体を含む容器を介して生物学的流体を通過させることを含む。幾つかの実施形態において、固体支持体はビーズである。幾つかの実施形態において、固体支持体は容器の内側表面である。幾つかの実施形態において、容器はカラムである。幾つかの実施形態において、カラムはラジアルカラムである。幾つかの実施形態において、カラムはアキシアルカラムである。幾つかの実施形態において、容器はバッグである。幾つかの実施形態において、バッグはバッグの内側表面をライニングしているメッシュを含み、バッグの内側表面とメッシュライニングの間にビーズが収容されている。
【0021】
幾つかの実施形態において、固体支持体はビーズである。幾つかの実施形態において、ビーズは約30μmから約80μmの間の個別直径を有している。
【0022】
幾つかの実施形態において、リガンドはブドウ球菌またはレンサ球菌からなる群より選択されるバクテリアの科に由来するタンパク質、またはその誘導体である。幾つかの実施形態において、リガンドは黄色ブドウ球菌由来のプロテインAまたはその誘導体である。
【0023】
幾つかの実施形態において、この方法はさらに、抽出された免疫グロブリンを含む溶出液に中和バッファを添加することを含み、抽出された免疫グロブリンを含み約7.0から約8.0の間のpHを有する最終溶液が得られる。幾つかの実施形態において、溶出液は約2.0から約3.0の間のpHを有する。
【0024】
幾つかの実施形態において、容器を介して通過される生物学的流体は、約50ml/分から約120ml/分の間の流量を有する。
【0025】
幾つかの実施形態において、容器を介して通過される生物学的流体は、約10mmHgから約100mmHgの間の背圧を有する。
【0026】
幾つかの実施形態において、容器は、工程(a)より前に生物学的流体中に存在する免疫グロブリンの少なくとも90%に結合する能力を有する。幾つかの実施形態において、工程(a)より前に生物学的流体中に存在する免疫グロブリンの50%未満に結合する能力を有する。幾つかの実施形態において、生物学的流体は、全血、多血小板血漿、血漿、および血清からなる群より選択される。幾つかの実施形態において、生物学的流体はヒト由来である。
【0027】
別の側面において、この発明は、最初の生物学的流体からの免疫グロブリンを濃縮するための方法を提供し、免疫グロブリンを含有すると見られる最初の生物学的流体を獲得し、最初の生物学的流体中で天然に存在する非免疫グロブリン成分を除去して、免疫グロブリンが濃縮された(最初の生物学的流体と比較して)非免疫グロブリン成分低減生物学的流体を得ることを含んでいる。幾つかの実施形態において、この方法は、免疫グロブリンを含有すると見られる最初の生物学的流体を獲得し、この最初の生物学的流体を、最初の生物学的流体中の非免疫グロブリン成分がリガンドと非共有結合するのに十分な条件下で、最初の生物学的流体中の非免疫グロブリン成分と特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体と接触させ、そして結合した非免疫グロブリン成分を除去して、免疫グロブリンが濃縮された非免疫グロブリン成分低減生物学的流体を得ることを含んでいる。幾つかの実施形態において、この非免疫グロブリン成分低減生物学的流体は、最初の生物学的流体中に存在する免疫グロブリンの少なくとも55%を含んでいる。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも60%が最初の生物学的流体から濃縮される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも70%が最初の生物学的流体から濃縮される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも80%が最初の生物学的流体から濃縮される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも90%が最初の生物学的流体から濃縮される。
【0028】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリンはIgGである。幾つかの実施形態において、生物学的流体は、全血、多血小板血漿、血漿、および血清からなる群より選択される。幾つかの実施形態において、生物学的流体はヒト由来である。
【0029】
幾つかの実施形態において、非免疫グロブリン成分は、凝固カスケードタンパク質、脂質、炭水化物、アルブミン、および補体タンパク質を含む。
【0030】
別の側面において、この発明は血漿フェレーシス装置において使用するための容器を提供し、この容器はIgG分子、非IgG分子、免疫グロブリン、および非免疫グロブリン分子からなる群より選択される標的分子に特異的に結合するリガンドと共有結合された固体支持体を含み、ここで容器は、約20ml/分から約120ml/分の間の流量で容器を介して通過する生物学的流体を支持するように構成されている。幾つかの実施形態では、容器は、約10mmHgから約100mmHgの間の背圧でカラムを介して通過する生物学的流体を支持するように構成されている。
【0031】
幾つかの実施形態において、リガンドはブドウ球菌またはレンサ球菌からなる群より選択されるバクテリアの科に由来するタンパク質、または免疫グロブリンに特異的に結合可能なその誘導体である。幾つかの実施形態において、リガンドは黄色ブドウ球菌由来のプロテインAまたは免疫グロブリンに特異的に結合可能なその誘導体である。
【0032】
幾つかの実施形態において、リガンドはシバクロンブルー、またはアルブミン分子に特異的に結合可能なその誘導体である。
【0033】
幾つかの実施形態において、固体支持体はビーズである。幾つかの実施形態において、ビーズの各々は約30μmから約80μmの間の個別直径を有している。幾つかの実施形態において、容器はカラムである。幾つかの実施形態において、容器はバッグである。
【0034】
別の側面において、この発明は血漿フェレーシス装置または血小板フェレーシス装置のようなアフェレーシスシステムにおいて使用するよう構成されたバッグを提供し、このバッグは内側表面と、内側表面上のメッシュライニングを含み、それによって内側表面上にポケットを生成し、ポケット内には、IgG分子、非IgG分子、免疫グロブリン、および非免疫グロブリン分子からなる群より選択された標的分子と特異的に結合するリガンドに共有結合したビーズが配置されている。
【0035】
さらに別の側面において、この発明は、(a)免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体を、リガンドに対する免疫グロブリンの非共有結合に十分な条件下で、免疫グロブリンと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体と容器内で接触させ;そして(b)固体支持体を容器内において、非共有結合された免疫グロブリンがリガンドから溶出液中へと放出される条件下で溶出液と接触させて、免疫グロブリンを含有する溶出液を得ることを含む方法(例えば部分的または全体的に自動化された方法)において、IgGと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器を使用して、生物学的流体中に存在するIgGのような免疫グロブリンの少なくとも55%を抽出するよう構成されたアフェレーシスシステムを提供する。幾つかの実施形態において、このアフェレーシスシステムは閉鎖系である。幾つかの実施形態において、このアフェレーシスシステムは血小板フェレーシスシステムまたは血漿フェレーシスシステムである。幾つかの実施形態において、固体支持体はビーズである。リガンドはブドウ球菌またはレンサ球菌からなる群より選択されるバクテリアの科に由来するタンパク質、またはその誘導体である。幾つかの実施形態において、リガンドは黄色ブドウ球菌由来のプロテインAまたはその誘導体である。幾つかの実施形態において、溶出液中の免疫グロブリンは精製される。
【0036】
幾つかの実施形態において、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも60%が生物学的流体から抽出される。幾つかの実施形態において、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも70%が生物学的流体から抽出される。幾つかの実施形態において、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも90%が生物学的流体から抽出される。
【0037】
幾つかの実施形態において、このシステムの方法はさらに、(c)中和バッファを免疫グロブリンを含有する溶出液に添加することを含み、約7.0から約8.0の間のpHを有する系を含む最終溶液が得られる。
【0038】
別の側面において、この発明は、(a)容器内において、リガンドに対する非免疫グロブリン成分の非共有結合に十分な条件下で、免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体を固体支持体と接触させ;そして(b)非免疫グロブリン欠乏生物学的流体を容器から収集し、この非免疫グロブリン欠乏生物学的流体が免疫グロブリンについて濃縮されている方法(例えば部分的または全体的に自動化された方法)において、生物学的流体中の非免疫グロブリン成分と特異的に結合するリガンドに共有結合した固体支持体を含む容器を使用して、生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(例えばIgG)の少なくとも55%が濃縮されるよう構成された、アフェレーシスシステムを提供する。幾つかの実施形態において、このアフェレーシスシステムは閉鎖系である。幾つかの実施形態において、このアフェレーシスシステムは血小板フェレーシスシステムまたは血漿フェレーシスシステムである。幾つかの実施形態において、固体支持体はビーズである。幾つかの実施形態において、リガンドはシバクロンブルー、またはその誘導体(例えばアルブミンに特異的に結合する誘導体)である。
【0039】
幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくともが60%が濃縮される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも70%が濃縮される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも80%が濃縮される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中の免疫グロブリンの少なくとも90%が濃縮される。
【0040】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリン(IgGのような)を含有すると見られる生物学的流体は、アフェレーシスシステムの成分によって製造される血液製剤である。幾つかの実施形態において、血液製剤は多血小板血漿である。幾つかの実施形態において、血液製剤は血漿である。幾つかの実施形態において、血液製剤は抗凝固剤が添加された全血である。
【0041】
幾つかの実施形態において、容器はカラムである。幾つかの実施形態において、容器はバッグである。
【0042】
幾つかの実施形態において、容器は、約20ml/分から約120ml/分の間の流量で容器を介して通過する生物学的流体を支持するように構成されている。幾つかの実施形態では、容器は、約10mmHgから約100mmHgの間の背圧で容器を介して通過する生物学的流体を支持するように構成されている。
【0043】
幾つかの実施形態において、本願に記載のシステムは閉鎖系である。幾つかの実施形態において、この方法(例えば自動化された方法)は、容器をシステムから取り外すことなく行われる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
上記した実施形態の特徴は、以下の詳細な説明を添付図面を参酌して参照することにより、より容易に理解される。添付図面において:
【0045】
図1は、アフェレーシスの非限定的な実施形態を示す概略である。
図1においては、幹細胞がドナーから取り出されており、全血の非幹細胞成分はドナーに戻される。
【0046】
図2は使用中の非限定的な代表的なアフェレーシス装置、すなわちヘモネティクス社(マサチューセッツ州ブレイントリー)によって販売されているMCS(R)+9000モービル血小板収集システムの写真である。この
図2において、示されているアフェレーシス装置は血小板を収集するように使用されている。
【0047】
図3は、非限定的な代表的なアフェレーシス装置、すなわちヘモネティクス社(マサチューセッツ州ブレイントリー)によって販売されているPCS(R)2装置の写真である。この
図3において、示されているアフェレーシス装置は血漿を収集するように使用可能である。
【0048】
図4は、固体支持体に共有結合した非限定的な種類のリガンドであるMabCapture Aビーズを使用して、1リットル(すなわち1000mL)の血漿から回収可能なIgGの量の表示を示す線グラフである。
【0049】
図5は、通常のヒト血漿におけるIgA、IgMおよびIgGの相対的な量(左側の列)、血漿フェレーシスにおいて収集されたヒト血漿中のIgA、IgMおよびIgGの相対的な量(左から2番目の列)、実施例4で後述する本発明の非限定的な実施形態に従って収集されたヒト血漿から回収されたIgA(「通常」列では中央の棒)、IgM(「通常」列では一番下の棒)、およびIgG(「通常」列では一番上の棒)の相対量(左から3番目の列「回収されたIgG」)、およびIgAまたはIgMがなく全部がIgGである目標ゴール(一番右の「目標」列)を示す棒/列グラフである。この目標列はIgGのみを有することに留意されたい。
【0050】
図6A~
図6Cは、患者(例えば健康なボランティアドナー)から取得された生物学的流体からIgGを取り出すための工程(例えばデバイス)を取り入れるために、アフェレーシスシステムをどのように修正可能であるかを示す概略図である。
図6Aにおいては、まず血小板が全血から取り出され(そして次いで処理されて血小板製剤が製造され)、次に残余の細胞から血漿が取り出される。IgGは血漿から取り出され(そして次いで処理されてIgG製剤が製造され)、そしてIgG欠乏血漿は残りの細胞(すなわち赤血球および非血小板白血球)と合わせて患者に戻すよう投与される。
図6Bでは、多血小板血漿が全血から取り出され、次いでIgGが多血小板血漿から取り出され、これらは処理の後に、精製IgG製剤およびIgG欠乏多血小板血漿製剤をもたらす。残った赤血球および非血小板白血球は等張食塩水と混合されて、
図6Bの患者に戻される。
図6Cにおいては、血漿が全血から取り出され、そしてこの血漿からIgGが抽出される。さらに処理を行った後、精製IgG製剤とIgG欠乏血漿製剤が製造される。残りの赤血球と白血球(血小板を含む)は等張食塩水と混合され、
図6Cのドナーに戻される。
【0051】
図7はアフェレーシスシステムの概略図であり、そこでは精製IgGは、アフェレーシスの間に全血から取り出された多くの製剤の1つである。
図7に示されているように、描かれている方法においてドナーに返却される唯一の成分は、リンゲル液(等張液の1つ)に懸濁された非血小板白血球(例えばリンパ球および単球)である。
【0052】
図8Aは、この発明で使用可能なバッグの非限定的な表現の写真である。示されているバッグでは、入口ポートと出口ポートがバッグの上部に配置されている。
【0053】
図8Bは、この発明で使用可能なバッグの非限定的な表現の写真である。示されているバッグでは、入口ポートはバッグの上部に配置され、出口ポートはバッグの下部に配置されている。
【0054】
図9A~
図9Cは、この発明で使用可能な非限定的なラジアルフローカラムの写真である。
図9Bはカラムの外観を示している。
図9Aは
図9Bのカラムを長手方向の部分を切除して示し、カラム内に充填されたビーズを見せている。
図9Cは
図9Bのカラムの断片(スライス)を示し、充填されたビーズの個々の層が断片の右側の切除部分において視認できる。
【0055】
図10Aおよび
図10Bは、免疫グロブリンを特異的に結合するリガンドに共有結合した固体支持体を含む容器の非限定的な例であるラジアルカラムを組み込むための、PCS(R)2システムのような血漿フェレーシスシステム(
図10A)、およびMCS(R)+9000システムのような血小板フェレーシスシステム(
図10B)に対する修正の概略的な表示である。
図10Aおよび
図10Bは、IgGに特異的に結合するリガンドに共有結合した固体支持体を含む非限定的な容器であるラジアルカラムを、PCS(R)2システムのような血漿フェレーシスシステム(
図10A)、およびMCS(R)+9000システムのような血小板フェレーシスシステム(
図10B)へとどのように取り入れることができるかを示す概略図である。血液適合性のあるチューブ(例えばポリプロピレンから作成される)が、各種のバッグ、ボウル、およびカラムを相互に接続している。
図10Aおよび
図10Bは、ラジアルカラムを容器として示している;しかしながら、アキシアルカラムまたはバッグのような別の種類の容器もまた使用することができる。
【0056】
図10Cおよび
図10Dは、免疫グロブリンを特異的に結合するリガンドに共有結合した固体支持体を含む容器の非限定的な例であるバッグを組み込むための、PCS(R)2システムのような血漿フェレーシスシステム(
図10C)、およびMCS(R)+9000システムのような血小板フェレーシスシステム(
図10D)に対する修正の概略的な表示である。
図10Cおよび
図10Dは、IgGに特異的に結合するリガンドに共有結合した固体支持体を含む非限定的な容器であるバッグを、PCS(R)2システムのような血漿フェレーシスシステム(
図10C)、およびMCS(R)+9000システムのような血小板フェレーシスシステム(
図10D)へとどのように取り入れることができるかを示す概略図である。血液適合性のあるチューブ(例えばポリプロピレンから作成される)が、各種のバッグおよびボウルを相互に接続している。
図10Cおよび
図10Dは、
図8A~
図8Bに示されたようなバッグを容器として使用している;しかしながら、アキシアルカラムまたはバッグのような別の種類の容器もまた使用することができる。
【0057】
図10Eおよび
図10Fは、非IgG血液成分を特異的に結合するリガンドに共有結合した固体支持体を含む容器の非限定的な例であるカラムを組み込むための、PCS(R)2システムのような血漿フェレーシスシステム(
図10E)、およびMCS(R)+9000システムのような血小板フェレーシスシステム(
図10F)に対する修正の概略的な表示である。
図10Eおよび
図10Fは、非IgG血液成分に特異的に結合するリガンドに共有結合した固体支持体を含む非限定的な容器であるラジアルカラムを、PCS(R)2システムのような血漿フェレーシスシステム(
図10E)、およびMCS(R)+9000システムのような血小板フェレーシスシステム(
図10F)へとどのように取り入れることができるかを示す概略図である。血液適合性のあるチューブ(例えばポリプロピレンから作成される)が、各種のバッグおよびボウルを相互に接続している。
図10Eおよび
図10Fは、ラジアルカラムを容器として示している;しかしながら、アキシアルカラムまたはバッグのような別の種類の容器もまた使用することができることに留意されたい。
【0058】
図11は、ネガティブセレクション(負の選択)によってIgGを精製する非限定的な実施形態を示すフローチャートである。取り出し工程の順序は変化させてよいことに留意すべきである。例えば、補体カスケードタンパク質はアルブミンの取り出し前に取り出すことができる。
【0059】
図12は、水についてのアキシアルカラム中の背圧(左側の最初の棒)を、ベッド高が3cmのラジアルカラムに対して、水(2番目の棒)について、またはそこに示した粘度を有する水/グリセリン混合物(3番目、4番目、および5番目の棒)について比較して示す棒グラフである。
【0060】
図13は、水についてのアキシアルカラム中の背圧(左側の最初の棒)を、ベッド高が3cmのラジアルカラムに対し水(2番目の棒)について、またはそこに示した粘度を有する水/グリセリン混合物(3番目、4番目、および5番目の棒)について、およびベッド高が1cmのラジアルカラムに対し示された粘度を有する水/グリセリン混合物(6番目、7番目、および8番目の棒)について比較して示す棒グラフである。
【0061】
図14は、ラジアルカラム中(固体支持体を含む非限定的な種類の容器)において、MabCapture A(IgGに特異的に結合するリガンドと共有結合した非限定的な固体支持体)に結合することによって血漿から捕捉されたIgGの量(暗赤色の線)、およびカラムから回収(すなわち溶出)液中へと回収されたIgGの量(薄緑色の線)を示す線グラフである。示されているのは、5人の異なるドナーについて、ベッド高が3cmのラジアルカラム中で、サイクル当たり1000mlを5サイクル行うテスト5回の平均量であり、カラムは5サイクルのすべてについて再使用した。血漿中のIgGの初期量は表1に示されている。
【0062】
図15は、この発明の非限定的な実施形態において、プロテインAで被覆されたビーズを充填した使い捨て式のカラムと共に使用可能な一連のバッグを示す概略図である。
【0063】
図16は、本発明に従いリガンドに共有結合した非限定的な固体支持体であるプロテインA被覆ビーズを使用して、血漿から回収液へと回収された(暗赤色の線)、200mlのヒト血漿中に存在するIgGの量(薄緑色の線)を示す線グラフである。
【0064】
図17は、非限定的な生物学的流体、すなわちアフェレーシス手順を介してドナーから収集された多血小板血漿からの、IgGの取り出しを示す概略図である。示されているように、多血小板血漿からのIgGの抽出後、さらに処理を行った後に、IgG欠乏多血小板血漿および精製IgG製剤の2つの製剤が得られる。
【0065】
図18は、非限定的な生物学的流体、すなわちアフェレーシス手順(例えばPCS(R)2装置を使用した血漿フェレーシス)を介してドナーから収集された血漿からの、IgGの取り出しを示す概略図である。示されているように、血漿からのIgGの抽出後、さらに処理を行った後に、IgG欠乏血漿および精製IgG製剤の2つの製剤が得られる。
【0066】
図19は、非限定的な生物学的流体、すなわち全血(クエン酸のような抗凝固剤を含んでいてよい)からの、IgGの取り出しを示す概略図である。示されているように、IgGは全血から、本願に記載の方法および装置を用いて取り出される。血漿からのIgGの抽出後、さらに処理を行った後に、精製IgG製剤が得られる。残りの血液(すなわち、IgG欠乏全血)はさらに処理を行って、赤血球(例えば濃厚赤血球)、IgG欠乏血漿(または血漿製剤)、および血小板製剤などの血液製剤を最終的に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
この発明は部分的には、血液のような生物学的流体から免疫グロブリン(例えばIgG)の少なくとも60%を抽出することを可能にする方法および装置を開発することに根ざしている。
【0068】
本願で参照する発行済み特許、特許出願、ウェブサイト、会社名、および科学文献は、当業者に入手可能な知識を確立しており、各々が具体的および個別的に参照によって指定されたと同様にして、それらの全体が参照によって本願に取り入れられる。本願で引用する文献と本明細書の具体的な教示に対立がある場合には、後者に有利に解決される。
【0069】
詳細な説明および請求項で定義または使用された用語は、文脈上他の意味に解釈すべき場合を除き、指定された意味を有する。本願で使用する技術用語および科学用語は、別様に定義しない限り、本発明の属する技術分野における当業者に通常理解される意味を有する。技術的に理解されている用語または言い回しの定義と、本明細書において具体的に教示されている用語または言い回しの定義の間に齟齬がある場合は、後者に有利に解決される。本願で使用するところでは、以下の用語は指定した意味を有している。本明細書において使用するところでは、単数形「ある」「あの」および「その」は、文脈上他の意味に解釈すべき場合を除き、参照されている用語の複数形をも含む。用語「約」は本願では、大体、おおよそ、大まかに、または辺りを意味するために使用される。用語「約」が数値範囲に関連して使用された場合、それは記載された数値の境界を上下に拡大することによって、その範囲を修正する。一般に、用語「約」は本願では、示された数値を上下に20%の変動で修正するために使用される。
【0070】
本願で使用するところでは、「血液」によって意味するのは全血および血液成分製剤である。全血は単純に、ヒトのような生物の全身を循環している流体である。全血は、細胞(例えば赤血球、白血球)、タンパク質(例えばインシュリン、免疫グロブリン、アルブミン)、脂肪酸および炭水化物(例えばコレステロールおよびグルコース)などの成分を含み、これらが血漿と呼ばれる液体に懸濁されている。血液は、抗凝固剤で処理することができる。従って用語「血液」は、限定するものではないが、クエン酸ナトリウム(抗凝固剤)で処理された全血、クエン酸で処理された多血小板血漿、およびヘパリンで処理された濃厚赤血球を含むものである。
【0071】
全血は処理することにより、血液から個々の成分を分離および収集することができる。例えば、赤血球および白血球を取り出して、血漿中に懸濁された非細胞成分を後に残すことができる。上述したように、血小板フェレーシスシステムまたは血漿フェレーシスシステムのようなアフェレーシスシステムが一般的に利用可能であり、ドナーの全血から所望の成分(例えば血小板または血漿)を抽出するために使用されている。幾つかの実施形態において、成分が低減された血液は、アフェレーシスシステムによってドナーへと返却される。
【0072】
細胞内に含有されておらず、および/または細胞の表面に付着されていない、すべての血液担持分子(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、その他)は血漿中に懸濁されているから、血液の血漿部分はこれらの分子を含有することになる。血液血漿タンパク質または単に血漿タンパク質と呼ばれる、血漿中のタンパク質は多様であり、多くの役割を有している。例えば、凝固カスケードのすべての因子(例えばフィブリノーゲン、プラスミノーゲン、トロンビン、ファクタXIII、ファクタIX、ファクタVIII、およびファクタV)は血漿タンパク質である。他の血漿タンパク質には、限定するものではないが、補体タンパク質(例えば補体成分3および補体成分4)、アルブミン、グロブリン(例えばα1グロブリンおよびガンマグロブリン)、C反応性タンパク質(CRP)、リポタンパク質(例えばHDL、LDL)、および各種のホルモンおよび酵素が含まれる。アルブミンは血漿タンパク質の55%を占め、そしてフィブリノーゲンは別の7%を占める。
【0073】
かくして、血液(例えば全血または血漿のような血液製剤)はさらに処理して、その血液から所望の成分を抽出することができる。例えば、血液血漿を処理してアルブミンを濃縮するための初期の方法が、EdwinCohnによって開発された(Cohnら、J. Am. Chem. Soc. 68:459-475、1946年参照)。Cohn法と呼ばれるこの方法では、濃度の異なる5つのエタノールを使用して(タンパク質の沈殿剤として使用される)血液血漿が5つの画分に分離され、種々の緩衝液でpHが7.2から4.6の間に変化されてアルブミンが抽出される。
【0074】
グロブリンタンパク質は血液血漿タンパク質の38%を占め、典型的にはdL(デシリットル)当たり約2.6から約4.6グラムを構成する。グロブリンの1つの種類はガンマグロブリンであり、これには免疫グロブリン(抗体とも呼ばれる)が含まれる。ヒトには免疫グロブリンの5つのアイソタイプがあるが(すなわちA、G、D、EおよびM)、血液中で最も一般的な形態はGタイプ(すなわちIgG)であり、これは血液血漿中に見られる免疫グロブリンの約75%を占めている。IgAおよびIgMもまた、血液血漿中で容易に見出すことができる。年齢が約19歳から約55歳の間の健康なヒトについて、1デシリットルの全血中には、以下の量の免疫グロブリンが循環していることを見出すことができる:0.560グラムから1.8グラムのIgG、70mgから400mgのIgA、および40mgから250mgのIgM。
【0075】
最近、免疫グロブリンは患者に対する治療の一環として投与可能であることが見出されている。この種の治療は、免疫グロブリン療法と呼ばれている。免疫グロブリンを治療剤として投与すると、レシピエントである患者に、感染に対する受動的耐性を与えることができる。免疫グロブリン療法は、静脈内、皮下、および筋肉内などの種々の経路によって投与可能である。免疫グロブリン療法は、健康状態を維持するために身体が自己の免疫グロブリンを十分に産生することのできない患者に投与するのに有用である。免疫グロブリン療法は、特定の疾病を治療し、または患者の免疫グロブリン量を一時的に増大させるために、一時的に行われるものであってよい。幾つかの実施形態においては、患者は生涯にわたって免疫グロブリン療法を必要としうる。原発性免疫不全症(例えばX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)および分類不能型免疫不全症(CVID))、重症筋無力症、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、自己免疫疾患(例えばギランバレー症候群および川崎病)、急性感染症などの疾病を有する患者、および臓器移植を受けた患者は、免疫グロブリン療法から利益を得られる非限定的な患者のリストに含まれる。
【0076】
幾つかの実施形態において、血液から精製された免疫グロブリンはさらに処理されて(例えば凍結、貯蔵、または複数のドナーからプールされて)、その後レシピエントである患者に治療として投与される。例えば、本開示の非限定的な実施形態に従って精製される免疫グロブリンは、数人のドナーの全血から得ることができる。非限定的な例においては、まず血漿を全血の幾つかの源から収集することができ、そして血漿はプールされる(すなわち組み合わせられる)。次いで免疫グロブリンをプールされた血漿から精製することができる。別の非限定的な例では、免疫グロブリンは個々のドナーから精製することができ、そして次に、最初のドナーからの精製された免疫グロブリンは、2番目のドナーからの免疫グロブリンと(そして3番目のドナーから、4番目のドナーから等々)組み合わせる(すなわちプールする)ことができる。幾つかの実施形態において、治療として使用する前に、精製された免疫グロブリンはさらに貯蔵(例えば室温で、4℃で、または-20℃で)によって処理可能である。
【0077】
免疫グロブリン、特にIgGは主たる血液血漿タンパク質であるから、幾つかの実施形態において、この発明は、ドナーから収集された血液(例えば全血または血漿のような血液製剤)からの免疫グロブリンを分離し精製することに向けられている。治療に関しては、IgGはIgGとIgAおよび/またはIgMの混合物よりも好ましいことに留意すべきである。この好ましさに関する1つの非限定的な理由は、IgGはモノマーであるが(4つの鎖-2つの同じ重鎖と2つの同じ軽鎖を含む)、IgAおよびIgMはそうでないことにある。正しくはIgAはダイマーであって、4つの同じ重鎖と4つの同じ軽鎖を含み、そしてIgMはペンタマーであって、10の同じ重鎖と10の同じ軽鎖を含んでいる。その結果として、IgAおよびIgMは塊になりやすく、治療用組成物中では余り望ましくないものとなる。
【0078】
「精製された」が意味するのは、特定したタンパク質(例えばIgG)が、そのタンパク質が天然に存在する生物学的流体中に見出される他の分子を少なくとも90%、または少なくとも92%、または少なくとも95%含まないこと、あるいは少なくとも98%含まないことである。例えば、タンパク質が免疫グロブリンである場合、精製された免疫グロブリンは、限定するものではないが、コレステロール、アルブミン、補体タンパク質、および凝固カスケードタンパク質などの他の血液タンパク質を少なくとも90%、または少なくとも92%、または少なくとも95%含まず、あるいは少なくとも98%含まない。タンパク質がIgGである場合、精製されたIgGは、限定するものではないが、IgA、IgM、コレステロール、アルブミン、補体タンパク質、および凝固カスケードタンパク質などの他の血液タンパク質を少なくとも90%、または少なくとも92%、または少なくとも95%含まず、あるいは少なくとも98%含まない。精製されたタンパク質(例えば精製IgG)は、所望とするタンパク質が天然に存在する生物学的流体からその所望とするタンパク質を引き出しまたは抽出することにより、または所望とするタンパク質が天然に存在する生物学的流体から他のすべての望ましくないタンパク質および分子を除去することによって所望とするタンパク質のみを残し、かくして生物学的流体中で濃縮精製することによって、精製することができる。
【0079】
すべての血清タンパク質はまた、血漿タンパク質であることに留意されたい。血清は、全血が凝固した場合に残る液体である。よって、血漿タンパク質のすべてが血清タンパク質である訳ではないが、それは血漿タンパク質は凝固過程を通じて固化するからである。しかしながら免疫グロブリンは凝固により固化せず、かくして血清中に残存する。免疫グロブリンは血液の凝固に際して固化して血餅の一部を形成する訳ではないが、少なくとも免疫グロブリンの幾らかは血餅が形成されるに際して捕捉されることに留意すべきである。従って、血清中の免疫グロブリンは血漿中の免疫グロブリンよりも少ない;とはいえ、血清中の免疫グロブリンは依然として生物学的に機能する(すなわち依然として、それらの特異的抗原に対して結合可能である)。通常の健康なヒトの大人から取り出された血清では(例えば約18歳から約50歳の間の大人)、約1158+/-305mgのIgGが1デシリットルの血清中に存在している。
【0080】
かくして、例えば治療剤のような最終的な用途のためにさらに処理を行うべく、生物学的流体(例えば全血、または血漿や血清のような血液製剤)からIgGを抽出し、または生物学的流体(例えば血漿)中のIgGを濃縮することが望ましい。血液血漿からアルブミンを分離するのに非常に良好であるCohn法は、血液からの免疫グロブリンを精製するように修正されている。Tanakaら、Braz. J. Med. Biol. Res.(2000年1月)33(1):27-30;Bruckschwaiger, L.米国特許第8,993,734号;Bruckschwaiger, L.米国特許公開第2015-0133644号を参照のこと。免疫グロブリン(例えばIgG)を血液(例えば全血または血液血漿)から分離させるための他の方法も開発されている。しかしながら、従来技術の方法で、血液製剤用の血液から、全血中に存在する50%を越えるIgGを抽出することに成功したものはない。
【0081】
本発明は部分的には、生物学的流体中に存在する50%を超える免疫グロブリン(例えばIgG)をその生物学的流体から抽出するための、または生物学的流体中に存在する50%を超える免疫グロブリン(例えばIgG)をその生物学的流体中で濃縮するための、方法および装置の発見に由来している。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中に存在する55%を超える免疫グロブリン(例えばIgG)が、本願に記載の方法に従って、その生物学的流体から抽出される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中に存在する55%を超える免疫グロブリン(例えばIgG)が、本願に記載の方法に従って濃縮される。抽出または濃縮された免疫グロブリン(例えばIgG)は次いで、さらに精製および/または処理することができる。
【0082】
幾つかの実施形態において、血液(例えば全血または血漿や血清のような血液製剤)のような生物学的流体中に存在する55%を超えるIgGを抽出または濃縮するための方法および装置を提供する。換言すれば、本願に記載する方法を使用して、通常のヒトの大人からの1デシリットルの全血を処理した場合、この全血から少なくとも約0.35グラムから0.8グラムのIgGが抽出または濃縮される。幾つかの実施形態において、この方法および装置は、生物学的流体中に存在する60%を超えるIgGを抽出または濃縮する。幾つかの実施形態において、この方法および装置は、生物学的流体中に存在する70%を超えるIgGを抽出または濃縮する。幾つかの実施形態において、この方法および装置は、生物学的流体中に存在する80%を超えるIgGを抽出または濃縮する。幾つかの実施形態において、この方法および装置は、生物学的流体中に存在する90%を超えるIgGを抽出または濃縮する。幾つかの実施形態において、この方法および装置は、生物学的流体中に存在する95%を超えるIgGを抽出または濃縮する。幾つかの実施形態において、この方法および装置は、生物学的流体中に存在する98%を超えるIgGを抽出または濃縮する。幾つかの実施形態において、この方法および装置は、生物学的流体中に存在する99%を超えるIgGを抽出または濃縮する。
【0083】
従って1つの側面において、この発明は、IgGのような免疫グロブリンを含有すると見られる最初の生物学的流体を入手し、そして最初の生物学的流体中で天然に存在する非免疫グロブリン(例えば非IgG)成分を取り除いて、非免疫グロブリン成分が低減された生物学的流体を得ることを含む、IgGのような免疫グロブリンを最初の生物学的流体から濃縮するための方法を提供する。幾つかの実施形態において、この方法は、生物学的流体中の非免疫グロブリン成分がリガンドと非共有結合するのに十分な条件下において、最初の生物学的流体を、非免疫グロブリン成分(または非IgG成分)と特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体と接触させ、そして結合した非免疫グロブリン成分を取り除いて、非免疫グロブリン成分が低減された生物学的流体を得る。幾つかの実施形態において、非免疫グロブリン成分が低減された生物学的流体は、最初の生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(例えばIgG)の少なくとも55%を含んでいる。
【0084】
幾つかの実施形態において、非IgG成分は凝固カスケードタンパク質、脂質、炭水化物、アルブミン、および補体タンパク質を含んでいる。幾つかの実施形態において、免疫グロブリン(例えばIgG)は、非免疫グロブリン成分が低減された生物学的流体中で精製される。
【0085】
幾つかの実施形態においては、最初の生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(IgGのような)の少なくとも60%が、最初の生物学的流体から濃縮される。幾つかの実施形態においては、最初の生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(IgGのような)の少なくとも70%が濃縮される。幾つかの実施形態においては、最初の生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(IgGのような)の少なくとも80%が濃縮される。幾つかの実施形態においては、最初の生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(IgGのような)の少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が、最初の生物学的流体から濃縮される。幾つかの実施形態においては、最初の生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(IgGのような)の少なくとも98%が、最初の生物学的流体から濃縮される。
【0086】
幾つかの実施形態において、最初の生物学的流体からの濃縮は、全血、多血小板血漿、血漿、および血清からなる群より選択される。幾つかの実施形態において、最初の生物学的流体からの濃縮はヒトから行われる。
【0087】
幾つかの実施形態において、生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(例えばIgG)の量(または濃度)は、生物学的流体中の非IgG血液成分をリガンドに非共有結合させるのに十分な条件下において、生物学的流体を非IgG血液成分(または非免疫グロブリン血液成分)と特異的に結合するリガンドに共有結合した固体支持体と接触させる前に測定される。幾つかの実施形態において、生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(例えばIgG)の量(または濃度)は、非IgG血液成分の抽出後に測定される。
【0088】
流体中(例えば生物学的流体または溶出液)に存在する免疫グロブリン(例えばIgG)の量または濃度は、ELISA、液体またはガスクロマトグラフィー、質量分光分析、ネフェロメトリー(比濁法)その他を含む、任意の標準的な方法によって求めることができる。例えば、免疫グロブリンの量は、例えばBN-II装置(ドイツ国マールブルグのデイドベーリング社)を使用して、製造業者の指示に従い、ネフェロメトリー分析により求めることができる。この製造業者は、健康なヒトの大人について、以下の標準範囲を示している:IgAは70~400mg/dl血清、IgGは700~1600mg/dl血清、そしてIgMは40~230mg/dl血清。標準的なELISAもまた使用可能である。例えばHarounおよびEl-Sayed、J. Clin. Biochem. Nutr. 40:56-61、2007年参照。電気泳動試験もまた、生物学的流体中の免疫グロブリンの量を求めるために使用することができる。
【0089】
幾つかの実施形態においては、非免疫グロブリン成分が抽出された後に残る生物学的流体(免疫グロブリン富化生物学的流体と称してよい)が収集される。免疫グロブリン富化生物学的流体は、さらに処理してよい(例えば凍結乾燥、冷凍、冷蔵、その他)。
【0090】
別の側面においてこの発明は、生物学的流体から、生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(IgGのような)の少なくとも55%を抽出するための方法を提供し、これは免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体(IgGのような)を、免疫グロブリン(IgGのような)と特異的に結合するリガンドに共有結合した固体支持体と、生物学的流体中のIgGをリガンドに対して非共有結合するのに十分な条件下で接触させ、そしてこの固体支持体を溶出液と、非共有結合された免疫グロブリン(IgGのような)がリガンドから溶出液中へと放出される条件下で接触させることを含み、ここで生物学的流体中に存在する少なくとも55%の免疫グロブリン(IgGのような)が溶出液中へと抽出される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中に存在する少なくとも60%の免疫グロブリン(IgGのような)がリガンドに非共有結合され、かくして生物学的流体から抽出される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中に存在する少なくとも70%の免疫グロブリン(IgGのような)がリガンドに非共有結合され、かくして生物学的流体から抽出される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中に存在する少なくとも80%の免疫グロブリン(IgGのような)がリガンドに非共有結合され、かくして生物学的流体から抽出される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中に存在する少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%の免疫グロブリン(IgGのような)がリガンドに非共有結合され、かくして生物学的流体から抽出される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体中に存在する少なくとも98%の免疫グロブリン(IgGのような)がリガンドに非共有結合され、かくして生物学的流体から抽出される。
【0091】
幾つかの実施形態において、生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(例えばIgG)の量(または濃度)は、生物学的流体中でIgGをそのリガンドに非共有結合するのに十分な条件下でIgGと特異的に結合するリガンド、または非免疫グロブリン成分をそのリガンドに非共有結合するのに十分な条件下で非免疫グロブリン成分(例えばアルブミン)に特異的に結合するリガンドのいずれかに共有結合した固体支持体に対して、生物学的流体を接触させる前に測定される。幾つかの実施形態において、溶出液中に存在する免疫グロブリン(例えばIgG)の量(または濃度)は、リガンドに結合したIgGがリガンドから溶出液へと溶出した後に測定される。幾つかの実施形態において、生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(例えばIgG)の量(または濃度)は、生物学的流体から非免疫グロブリン成分を除去した後に測定される。
【0092】
流体中(例えば生物学的流体または溶出液)に存在する免疫グロブリン(例えばIgG)の量または濃度は、ELISA、液体またはガスクロマトグラフィー、質量分光分析、ネフェロメトリー(比濁法)その他を含む、任意の標準的な方法によって求めることができる。例えば、免疫グロブリンの量は、例えばBN-II装置(ドイツ国マールブルグのデイドベーリング社)を使用して、製造業者の指示に従い、ネフェロメトリー分析により求めることができる。この製造業者は、健康なヒトの大人について、以下の標準範囲を示している:IgAは70~400mg/dl血清、IgGは700~1600mg/dl血清、そしてIgMは40~230mg/dl血清。標準的なELISAもまた使用可能である。例えばHarounおよびEl-Sayed、J. Clin. Biochem. Nutr. 40:56-61、2007年参照。電気泳動試験もまた、生物学的流体中の免疫グロブリンの量を求めるために使用することができる。
【0093】
幾つかの実施形態においては、免疫グロブリン(例えば免疫グロブリンのIgGアイソタイプ)が抽出された後に残る生物学的流体(IgG低減またはIgG欠乏生物学的流体と称されてよい)が収集される。幾つかの実施形態においては、IgG欠乏生物学的流体は廃棄される。幾つかの実施形態において、IgG欠乏生物学的流体は廃棄されず、さらに処理を行って非免疫グロブリン成分(例えばアルブミン)を除去することができる。
【0094】
幾つかの実施形態においては、免疫グロブリンを富化させるために、免疫グロブリン(例えば免疫グロブリンのIgGアイソタイプ)を含有する生物学的流体から取り出された非免疫グロブリン成分は廃棄される。幾つかの実施形態においては、生物学的流体から取り出された非免疫グロブリン成分は廃棄されない。例えば、アルブミン(血液の非免疫グロブリン成分)はそれ自体価値があり、将来さらに処理して使用するために貯蔵しておいてよい。
【0095】
本願で使用するところでは、「抽出する」は単純に、抽出された成分(例えばIgGまたは非免疫グロブリン成分)がその成分を含有している組成物(例えば生物学的流体)から取り出されることを意味している。本願で記載する方法を使用すると、抽出は、リガンドに対して標的成分を非共有結合するのに十分な条件下で、生物学的流体を標的成分(例えばIgGまたはアルブミン)に特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体と接触させることによって行うことができる。
【0096】
「非共有結合するのに十分な条件下」は単純に、処理中の生物学的流体中にある標的成分(例えばIgG分子またはアルブミンのような非免疫グロブリン成分)が、その成分と特異的に結合するリガンドに対して非共有結合可能な条件を意味していることに留意すべきである。例えば、幾つかの実施形態において、リガンドがIgG分子に対して特異的に結合する場合、そのリガンドとIgG分子は液体(例えば生物学的流体)中にあってよく、そして非共有結合するのに十分な条件下では、その液体はリガンドおよびIgG分子のkon/koff値よりも速くは移動(例えば流動)せず、従ってIgG分子はリガンドに対して非共有結合することができる。別の例では、リガンドは全く流動せずともよく、そして非共有結合するのに十分な条件は単純に、リガンドおよび標的成分(例えばIgG分子またはアルブミン)が相互に非共有結合を結合することができる条件を意味する。かくして、非共有結合するのに十分な条件には、限定するものではないが、液体の適切な流速、リガンドが共有結合した固体支持体が容器内にある場合にはその容器を通過する液体の流れによって生成される適切な背圧、適切な温度(例えば約4℃から37℃の間、または約20℃から約25℃の間)、適切なpH(例えば約6.5と8.5の間、または約7.0と8.0の間)、および適切な浸透圧濃度(例えば等張または僅かに低張または高張)などが含まれる。
【0097】
同様に、「非共有結合されたIgGがリガンドから放出される条件下」によっては単純に、リガンドに非共有結合された標的成分(例えばIgG分子)がリガンドから離脱して、例えば溶出液中へと放出(すなわち溶出)可能であることが意味される。例えば、非共有結合されたIgGがリガンドから放出される条件の幾つかの実施形態において、溶出液はリガンドおよびIgG分子のkon/koff値よりも速くは移動(例えば流動)せず、IgG分子はリガンドから溶出液中へと離脱可能である。別の例では、非共有結合されたIgGがリガンドから放出される条件は単純に、溶出液の適切な容積、溶出液の適切なpH、および溶出液中のオスモライトの適切な濃度である。例えば、IgGとリガンドの間の非共有結合がイオン結合である場合、溶出液は、イオン結合中のイオンと競合し結合を破るのに十分に高い濃度の適切なイオン(例えばナトリウムイオンおよびクエン酸イオン)を有してよい。かくして非共有結合されたIgGがリガンドから放出される条件には、限定するものではないが、溶出液の適切な流速、リガンドが共有結合した固体支持体が容器内にある場合にはその容器を通過する溶出液の流れによって生成される適切な背圧、溶出液の適切な温度(例えば約4℃から37℃の間、または約20℃から約25℃の間)、溶出液の適切な容積、溶出液の適切なpH(例えば約6.5と8.5の間、または約7.0と8.0の間)、および溶出液の適切な浸透圧濃度などが含まれる。
【0098】
本願で使用するところでは、用語「免疫グロブリン」はBリンパ球によって産生されるタンパク質を意味しており、その抗原結合部位を介して標的(抗原と呼ばれる)と特異的に結合可能である。用語「免疫グロブリン」は用語「抗体」と互換性がある。免疫グロブリンは、抗原結合部位および免疫グロブリンと免疫細胞および免疫系中の他のタンパク質との相互作用を媒介するFc部位を含む、個別の部位を有している。例えば、IgEのFc部位は、マスト細胞上に発現されるFcイプシロン受容体に対して高い親和性をもって結合する。ヒトの免疫グロブリンには5つのアイソタイプ、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがある。血液血漿中で最も一般的な種類の免疫グロブリンはIgGであり、これは4つのサブクラスを有する(すなわちIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)。IgGは(その4つのサブクラスにおいて)、浸入してくる病原菌に対する抗原に基づく免疫の大部分を提供し、また母体の胎盤を通して胎児へと移って受動免疫を与えることができる。
【0099】
用語「非免疫グロブリン」成分または分子は単純に、免疫グロブリンではない、生物学的流体中における任意の物質である。この発明の幾つかの実施形態において、これらの非免疫グロブリンは生物学的流体から取り出されて、免疫グロブリンの富化が行われる。非限定的な非免疫グロブリン成分には、アルブミン、凝固カスケードタンパク質(例えばファクタX、ファクタVII)、フィブリノーゲン、ホルモン、インシュリン、脂質、ビタミン、補体カスケードタンパク質(例えば補体成分3)、およびC反応性タンパク質が含まれる。
【0100】
本願で使用するところでは、「生物学的流体」は、ヒトまたは家畜(例えばウシ、ヤギ、ヒツジ、その他)のような脊椎動物から導出される任意の流体を意味している。生物学的流体には、限定するものではないが、全血、全血の成分(例えば血漿および血清)、唾液、乳、精液、涙、尿、および肝臓によって産生される胆汁およびリンパ液(例えば間質液から形成され毛細リンパ管に集められる)のような、種々の臓器からの流体が含まれる。これらの生物学的流体はすべてIgGを含有しうるから、これらの流体もまた、IgGを含有すると見られる生物学的流体と称されてよい。
【0101】
「全血」は単純に、患者またはドナーから取り出された状態の血液を意味する。全血には成分を添加することができるが、全血に存在している成分はそこから除いてはならない。全血に添加することのできる成分には、限定するものではないが、ヘパリンまたはクエン酸ナトリウムのような抗凝固剤、および例えば米国特許第8,709,707号に記載の血液貯蔵液および添加溶液が含まれ、またCPD(クエン酸リン酸デキストロース)、ACD(クエン酸デキストロース;アフェレーシス手順に際して一般的に添加される)、SOLX(R)が含まれる。全血から成分(例えば血小板または血漿)が取り出される場合、その成分は血液成分と称されてよく、残りの血液成分は「成分低減」または「成分欠乏」(例えば血小板低減血液血液またはIgG低減血液)と称されてよい。
【0102】
上記した任意の生物学的流体であって成分が欠乏されたものは、本願で用いられる用語では生物学的流体と見なされることに留意すべきである。従って、生物学的流体の1つの非限定的な例は、血小板が取り出された後の全血中に残る流体である。この流体(赤血球、非血小板ルーコサイト、および血漿を含む)は生物学的流体と見なされ、「血小板低減血液」または「血小板欠乏血液」と称されてよい。全血から特定の成分が取り出された場合、残る成分は富化される。かくして「多血小板血漿」は、本願でこの用語が用いられるところでは、別の生物学的流体である。別の非限定的な生物学的流体は、主として血漿を含む赤血球欠乏およびルーコサイト欠乏流体であるが、僅かな赤血球およびルーコサイトも含有している。別の非限定的な生物学的流体は血清(すなわち全血が凝固した後に残る液体)である。別の非限定的な生物学的流体は精子低減精液(例えば低減された数の精子細胞を有する精液)である。別の非限定的な生物学的流体は脂質低減乳(例えばスキムミルクに類似のもの)である。
【0103】
幾つかの実施形態において、生物学的流体は全血、または血漿、多血小板血漿または血清のような全血成分である。幾つかの実施形態においては、全血の成分(例えば血漿)はアフェレーシスの間にドナーから収集される。
【0104】
例えば、ヘモネティクス社のMCS(R)+9000モービル血小板収集システム(
図1参照)またはヘモネティクス社のPCS(R)2システム(
図2参照)のような商業的に入手可能なアフェレーシスシステムは現在、血小板および血漿をそれぞれ分離するために使用されている。血漿のような血液成分は、アフェレーシスの間に収集可能であり、そして免疫グロブリンは血液成分から精製可能である。
【0105】
「リガンド」によって意味するものは、タンパク質(例えば抗体またはバクテリアタンパク質)、炭水化物、糖のような分子、または固体支持体に共有結合した任意の有機分子または無機分子である。幾つかの実施形態において、固体支持体に対する共有結合は、リガンド上のカルボキシル基を介して行われる。幾つかの実施形態において、共有結合されたリガンドは、免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体と接触される固体支持体の表面を被覆する(すなわちリガンドが表面を被覆する)。幾つかの実施形態においては、共有結合したリガンドは、免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体と接触するようにされる固体支持体の表面の一部分だけを被覆する。
【0106】
本願で使用するところでは、「固体支持体」によって意味するものは、平坦、円形、球形、凹状、凸状その他を含む任意の形状の、プラスチック、繊維状高分子材料、多糖類、ガラス、または金属のような、任意の種類の固体である。幾つかの実施形態において、固体支持体は剛性であることができ、または可撓性であることができる。幾つかの実施形態において、固体支持体は平坦または比較的平坦である。例えば、スライド支持体は、スライドガラスまたはスライドプラスチックであってよい。もちろん、固体支持体が2つの表面を有し(例えばガラス板)、これらの表面の1つだけがIgGを含有すると見られる生物学的流体と接触される場合には、生物学的流体と接触するその表面(またはその表面の一部)だけがリガンドと共有結合する。
【0107】
幾つかの実施形態において、固体支持体は繊維状高分子材料であり、限定するものではないが、ポリエステル繊維、ポリウレタン、ポリプロピレンオキシド(PPO)およびポリエチレンオキシド(PEO)の混合物、RCS媒体(ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのポリマーブレンド)、ポリエステル、その他が含まれる。
【0108】
リガンドと固体支持体の間の共有結合の種類は、使用されている固体支持体、特にリガンドが共有結合する固体支持体の表面の材料に依存することに留意すべきである。例えば、固体支持体(またはその表面)は、非常に高濃度のHEMA(ヒドロキシメチルメタクリレート)および非常に少ない量のMAA(メタクリル酸)がグラフトした(ラジカル重合技術により)材料であるLRFXL Layer #1であってよい。LRFXL Layer #1により作成された(または被覆された表面を有する)固体支持体における主たる官能基はカルボキシル基であり、また幾らかの少量のヒドロキシル基を有している。
【0109】
別の例では、固体支持体(またはその表面)はLRFXL Layer #9であってよく、これは高濃度のHEMAおよび少しの量のMAAがグラフトされた材料である。LRFXLLayer #9により作成された(または被覆された表面を有する)固体支持体における主たる官能基はカルボキシル基であり、また幾らかの少量のヒドロキシル基を有している。
【0110】
別の例では、固体支持体(またはその表面)はWBFであってよく、これはアルゴンおよびアンモニアでガスプラズマ処理された材料である。WBFにより作成された(または被覆された表面を有する)固体支持体における主たる官能基はアミンである。
【0111】
さらに別の例では、固体支持体(またはその表面)はBPF4であってよく、これは高濃度のメチルメタクリレート(MMA)と低濃度のHEMAがグラフトされた材料である。BPF4により作成された(または被覆された表面を有する)固体支持体における主たる官能基は殆どがヒドロキシル基であり、また幾らかの少量のカルボキシル基を有している。
【0112】
米国特許第5,344,561(参照によってその全体を本願に取り入れる)は、LRXL Layer #1、LRFXL Layer #9、WBF、およびBPF4に包含される化学作用を記載している。しかしながら当業者は、免疫グロブリンに対して特異的に非共有結合可能なリガンドに共有結合するために、任意の固体支持体または表面を使用可能であることを容易に理解するであろう。上記に羅列した材料の例(例えばLRXL Layer #1、LRFXL Layer #9、WBF、およびBPF4)は非限定的なものであり、任意の材料(例えばプラスチック、ポリマー、ガラス、金属、その他)を本開示による固体支持体として使用可能である。例えば、参照によってそれらの全体を本願に取り入れるPCT国際公開第WO2005/073711、PCT国際公開第WO2004/024318;米国特許第6,498,236号、および米国特許第7,144,743を参照のこと。
【0113】
幾つかの実施形態において、固体支持体はカラムの側部の内側のように、凹状であることができる。幾つかの実施形態において、固体支持体は球形のビーズ(またはほぼ球形のビーズ)の表面のように、凸状であってよい。固体支持体は多孔質であってよいことに留意されたい。例えば、固体支持体は多孔性ビーズであってよく、固体支持体の幾らか(例えばビーズの表面)は凸状であってよく、固体支持体の幾らか(例えばビーズの細孔中)は凹状であることができる。
【0114】
幾つかの実施形態において、固体支持体はビーズである。非限定的なビーズの例は、金属ビーズ(例えば磁性ビーズ)、ポリマービーズ(例えばポリスチレンビーズまたはポリプロピレンビーズ)、多糖類ビーズ(例えばセルロースビーズまたはアガロースビーズ)、および他の有機材料のビーズ(澱粉ビーズ、寒天ビーズ、デキストランビーズを含む)、および置換または未置換のポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコールのようなポリビニル親水性ポリマー、ポリスチレン、ポリスルホン、およびスチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、およびこれらの混合物などの親水性合成ポリマーである。これらのビーズはそれら自体が多孔質であってよい。ビーズのような固体支持体用の他の材料は、PCT国際公開第WO2012/118735に記載されており、これは参照によってその全体を本願に取り入れる。
【0115】
ビーズ(またはビーズでない固体支持体)の材料は、生物学的流体から免疫グロブリン(IgGのような)を抽出するため、または非免疫グロブリン成分(例えばアルブミン)を抽出するために、生物学的流体をどのように処理するかに依存していることが理解されよう。例えば、ポリスチレンビーズ(直径約40ミクロン)は高い流量に耐えることが知られており、これは例えば、ビーズを収容している容器(バッグまたはカラムのような)を通して生物学的流体を高い流量で押し流す場合に有用でありう。幾つかの実施形態において、ビーズの直径は約500マイクロメートル(μmまたは「ミクロン」)未満である。幾つかの実施形態において、ビーズの直径は約30ミクロンから約300ミクロンの範囲にある。幾つかの実施形態において、ビーズの直径は約30ミクロンから約150ミクロンの範囲にある。幾つかの実施形態において、ビーズの直径は約35ミクロンから約100ミクロンの範囲にある。幾つかの実施形態において、ビーズの直径は約35ミクロンから約75ミクロンの範囲にある。幾つかの実施形態において、ビーズの直径は約40ミクロンから約60ミクロンの範囲にある。もちろん、固体支持体がビーズである場合、ビーズの直径は35ミクロンより小さくてよく、および/または100ミクロンより大きくてよい。ビーズは固体または多孔質であってよい。ビーズが固体であるか多孔質であるかに関わらず、リガンドはビーズの表面の一部、またはビーズの表面の全部に共有結合してよい。同様に、任意の固体支持体について(例えばガラス板)、リガンドは、免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体(例えばIgG)と接触することになる、固体支持体の表面の一部または固体支持体の表面全部と共有結合してよい。
【0116】
これらの実施形態において、ビーズ、例えば多孔質のビーズは、例えば少なくとも約40m2/gから約700m2/gの表面積を有しうるが、幾つかの実施形態においては、表面積は約40m2/g未満または約700m2/gを超えることができる。幾つかの実施形態において、ビーズは少なくとも約50m2/gの表面積を有する。
【0117】
幾つかの実施形態においては、例えば固体支持体をバッファ(例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、抗酸化剤(例えば生物学的流体の所望の成分、例えば赤血球に対する酸化損傷を低減させるための、N-アセチル-システイン(NAC)酸化防止剤の如きであり、例えば約1から約50nmの範囲にある)、赤血球添加剤溶液(例えば米国特許第8,709,707号に記載された溶液の1つ)、および/または血小板添加剤溶液(例えば米国特許第4,695,460号;米国特許第4,447,415号;Osselearら、Transfusion48:1061-1071、2008年;Osselearら、Vox Sang 94:315-203、2008年)で濡らすことにより、生物学的流体を固体支持体と接触状態に置く前に、固体支持体を濡らすことができる。
【0118】
免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体(例えばIgG)と接触することになる固体支持体の表面の全部または殆ど(例えば少なくとも約75%またはそれ以上)がリガンドと共有結合されている場合には、その固体支持体はリガンドで被覆されていると称されてよいことに留意すべきである。リガンドで被覆されている固体支持体(例えばビーズ)とは、IgGのような免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体と接触することになる固体支持体の表面に対して、リガンドが共有結合されている(すなわち共有的に取着している)ことを意味していることが理解されよう。
【0119】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリン(例えばIgG)に特異的に結合するリガンド、または非免疫グロブリン成分(例えばアルブミン)と特異的に結合するリガンドと共有結合している固体支持体は、容器内にあってよい。適切な容器には、バッグ、カラム、ボックス、チューブ、その他が含まれる。容器は、免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体を受け入れるための入口開口と、生物学的流体が容器内で固体支持体と接触した後に免疫グロブリン欠乏(または低減)生物学的流体を放出するための出口開口とを有してよい。幾つかの実施形態において、固体支持体は、免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体と接触する、容器の内部表面である。幾つかの実施形態において、固体支持体は、IgGのような免疫グロブリンと特異的に結合するリガンドに共有結合されたビーズ(例えば磁性ビーズまたはポリマービーズ)である。
【0120】
かくして別の側面において、この発明はIgGと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器を提供し、ここでその容器は、アフェレーシスシステム(またはアフェレーシス装置)において使用するように構成される。幾つかの実施形態において、容器はカラムである。幾つかの実施形態において、容器はバッグである。
【0121】
幾つかの実施形態において、非IgG成分(例えばアルブミンまたはファクタIX)と特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体は、容器内にあってよい。適切な容器には、バッグ、カラム、ボックス、チューブ、その他が含まれる。容器は、免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体を受け入れるための入口開口と、生物学的流体が容器内で固体支持体と接触した後に非IgG欠乏(または低減)生物学的流体を放出するための出口開口とを有してよい。幾つかの実施形態において、固体支持体は、免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体と接触する、容器の内部表面である。幾つかの実施形態において、固体支持体は、非IgG成分と特異的に結合するリガンド(例えばリガンドはアルブミン特異抗体である)に共有結合されたビーズ(例えば磁性ビーズまたはポリマービーズ)である。
【0122】
かくして、さらに別の側面において、この発明は、非IgG成分に特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器を提供する。幾つかの実施形態において、その容器は、アフェレーシスシステム(またはアフェレーシス装置)において使用するように構成される。幾つかの実施形態において、容器はカラムである。幾つかの実施形態において、容器はバッグである。
【0123】
「アフェレーシス装置またはシステムで使用するように構成される」によって単純に意味されるのは、その容器がシステムのチューブやアダプターと適合性のある開口を有しており、システムと「インライン」で使用可能であるということである。換言すれば、「構成される」は単純に、示された物体(例えばカラムまたはバッグ)が、目的に沿うように何らかの仕方で適合または修正されることを意味している。例えば、ある容器がPCS(R)2血漿フェレーシス装置で使えるように構成される場合、それは単純に、例えばPCS(R)2血漿フェレーシス装置のアダプターに接続可能なアダプター(例えばルアーロックアダプター)でカラムの入口ポートおよび出口ポートを修正することにより、その容器がPCS(R)2血漿フェレーシス装置に接続されるように適合されることを意味している。しかしながら、この容器は任意のアフェレーシス装置またはシステムについて使用可能であることが理解されねばならない。
【0124】
例えば、容器の入口開口および出口開口は、ルアーロックアダプターで適合されて、アフェレーシスシステムにおいて使用されるチューブを受け入れるようにしてよい。1つの非限定的な例として、ヘモネティクス社(米国マサチューセッツ州ブレイントリー)によって販売されているPCS(R)2血漿フェレーシスシステムでは、血液適合性のあるチューブが遠心分離ボウルを血漿収集バッグに接続している。免疫グロブリン(IgGのような)に特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体、または非免疫グロブリン成分(アルブミンの如き)と特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器は、遠心ボウルからのチューブが容器の入口開口に取り付けられ、血漿収集バッグからのチューブが容器の出口開口に取り付けられるようにして、チューブに接続されてよい。そうした接続を示す1つの概略的な表示が、
図10Aに描かれている。容器は従って、システムの他の部品と「インライン」または「オンライン」状態にあり、システムの1つの部品(例えば遠心ボウル)から出てくる流体は、閉鎖系内に存在しない状態に曝露されることなしに、容器に流入することができる。このことは、システムにおける生物学的流体および他の流体(例えば抗凝固剤流体、溶出液、その他)の無菌性の喪失を防止する。
【0125】
系(システム)に関して用語「閉鎖」は、系の無菌完全性を損なう必要なしに、生物学的流体(例えばドナーの血液、血液サンプル、および/または血液成分)の収集および処理(そして所望ならば操作、例えば一部の分離、成分への分離、濾過、貯蔵、および保存)を可能にする系を意味することに留意すべきである。閉鎖系は、当初から作成されたもの、または無菌ドッキング装置(例えば米国特許第4,507,119号、米国特許第4,737,214号、および米国特許第4,913,756参照、これらの全体は参照によって本願に取り入れられる)を使用して系の接続の結果であることができる。
【0126】
かくして、さらに別の側面において、この発明は、(a)免疫グロブリン(例えばIgG)をリガンドに非共有結合するのに十分な条件下において、免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体(例えばIgG)を固体支持体と接触させ;そして(b)非共有結合された免疫グロブリン(例えばIgG)がリガンドから溶出液へと放出する条件下において容器内の固体支持体を溶出液と接触させて免疫グロブリン(例えばIgG)を含有する溶出液を得ることを含む方法(例えば部分的に自動化された方法または全体的に自動化された方法)において、生物学的流体中に存在する少なくとも55%の免疫グロブリン(例えばIgG)を抽出するように構成されたアフェレーシスシステムを提供し、このシステムは免疫グロブリン(例えばIgG)と特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器を包含する。
【0127】
別の側面において、この発明は、(a)リガンドに対する非免疫グロブリン成分の非共有結合に十分な条件下において、免疫グロブリンを含有すると見られる生物学的流体(例えばIgG)を容器内の固体支持体と接触させ;そして(b)非免疫グロブリン欠乏生物学的流体を容器から収集し、この非免疫グロブリン欠乏生物学的流体が免疫グロブリン(例えばIgG)について富化されている方法(例えば部分的に自動化された方法または全体的に自動化された方法)において、生物学的流体中に存在する免疫グロブリン(例えばIgG)の少なくとも55%を富化させるよう構成されたアフェレーシスシステムを提供し、このシステムは非免疫グロブリン成分(アルブミンの如き)と特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器を包含する。
【0128】
幾つかの実施形態において、容器はカラムである。幾つかの実施形態において、容器はバッグである。
【0129】
種々の実施形態において、容器の一方または双方、およびアフェレーシスシステムは、容器(例えばカラムまたはバッグ)を通って流れる流体を、約50ml/分から約150ml/分の間の流量で支えるように構成される。例えば、容器を通って流れる流体の流量は、約60ml/分から約130ml/分の間であってよい。幾つかの実施形態において、容器の一方または双方、およびアフェレーシスシステムは、容器(例えばカラムまたはバッグ)を通って流れる生物学的流体を、約5mmHgから約300mmHgの間の背圧で支えるように構成される。例えば、背圧は約10mmHgから約150mmHgの間、または約10mmHgから約120mmHgの間、または約10mmHgから約100mmHgの間、または約30mmHgから約120mmHgの間、または約50mmHgから約100mmHgの間であってよい。
【0130】
幾つかの実施形態において、アフェレーシスシステムは、生物学的流体中に存在するIgGのような免疫グロブリンの少なくとも55%を抽出または富化するように構成される。幾つかの実施形態において、アフェレーシスシステムは、生物学的流体中に存在するIgGのような免疫グロブリンの少なくとも60%を抽出または富化するように構成される。幾つかの実施形態において、アフェレーシスシステムは、生物学的流体中に存在するIgGのような免疫グロブリンの少なくとも70%を抽出または富化するように構成される。幾つかの実施形態において、アフェレーシスシステムは、生物学的流体中に存在するIgGのような免疫グロブリンの少なくとも80%を抽出または富化するように構成される。幾つかの実施形態において、アフェレーシスシステムは、生物学的流体中に存在するIgGのような免疫グロブリンの少なくとも90%を抽出または富化するように構成される。幾つかの実施形態において、アフェレーシスシステムは、生物学的流体中に存在するIgGのような免疫グロブリンの少なくとも95%を抽出または富化するように構成される。幾つかの実施形態において、アフェレーシスシステムは、生物学的流体中に存在するIgGのような免疫グロブリンの少なくとも98%を抽出または富化するように構成される。
【0131】
幾つかの実施形態において、容器の入口開口は、容器内への有核血液細胞(例えば未成熟赤血球または単球)の侵入を阻止するのに十分に小さな孔径のフィルターを含むように適合(例えば構成)されている。幾つかの実施形態において、容器の出口開口は、容器外への有核血液細胞(例えば未成熟赤血球または単球)の放出を阻止するのに十分に小さな孔径のフィルターを含むように適合(例えば構成)されている。幾つかの実施形態において、固体支持体が、免疫グロブリンと特異的に結合するリガンドに共有結合したビーズである場合、容器の入口開口または出口開口の一方または双方は、ビーズの流出を阻止するのに十分に小さな孔径のフィルターを含むように構成される。
【0132】
細胞(例えば有核白血球)を阻止するために、フィルターの孔径は、細胞の平均径よりも小さくてよいことに留意されたい。全血を循環している最大の白血球である単球の平均径は、15μmから約30μmである。従って、容器中への単球の通過を阻止するために、フィルターは直径が15μmより小さい孔径(例えば約10~12μmの間の孔径)を有してよい。もちろん、単球よりも小さな細胞(例えば2~3μmの平均径を有する血小板)が容器から出入りすることを阻止することが望ましい場合には、容器の入口または出口のそれぞれは、直径1μmまたはそれ未満の孔径(例えば0.1μmから1.0μmの間の孔径)を有するフィルターを含むように適合されてよい。
【0133】
「特異的に結合」は、リガンドが特定の標的(例えばIgG分子のような免疫グロブリンまたはアルブミン分子のような非免疫グロブリン)に対し、約5×10-8(すなわち50nM)未満、約1×10-8(すなわち10nM)未満、または約5×10-9(すなわち5nM)未満、または約1×10-9(すなわち1nM)未満の平衡解離定数(kD)でもって非共有結合することを意味している。リガンドの標的(例えば免疫グロブリン)に対する特異的な結合は、標的分子の任意の部分(例えば免疫グロブリンのFc部位または免疫グロブリンの抗原結合部位)で行われることができる。幾つかの実施形態において、リガンドは免疫グロブリンの重鎖の定常部に対して特異的に共有結合する。幾つかの実施形態において、リガンドは免疫グロブリンのFc部位に対して特異的に非共有結合する。
【0134】
幾つかの実施形態において、リガンドは、免疫グロブリンに特異的に結合する抗体、免疫グロブリンの特定のアイソタイプに特異的に結合する(例えばヒトのIgGまたはヒトのIgMに特異的に結合する)抗体、またはアルブミンのような特定の非IgGまたは非免疫グロブリン血液成分に特異的に結合する抗体である。非IgGまたは非免疫グロブリン成分である他の血液成分には、限定するものではないが、C反応性タンパク質、トランスフェリン、補体タンパク質(例えば補体成分3)、プロトロンビン、血液凝固因子(例えばファクタVIII、フィブロネクチン、フォンウィレブランド因子)および脂質やコレステロールなどの非タンパク質が含まれる。
【0135】
幾つかの実施形態において、リガンドはシバクロンブルーであり、またはアルブミンに特異的に結合可能なその誘導体である。
【0136】
シバクロンブルーに共有結合したビーズは商業的に入手可能である。
【0137】
IgGは血液中で、IgAおよびIgMなどの他の免疫グロブリンアイソタイプよりも一般的である。これの富化を
図5で概略的に示す。
図5の左端の列(すなわち「通常」)は、技術文献に記載されているような、1リットルの血漿中における典型的なIgG(緑)、IgA(赤)およびIgM(青)の百分率を示している。血漿フェレーシス(例えばヘモネティクス社により販売されているPCS(R)2装置を使用して)の後、全免疫グロブリン集団中のIgAおよびIgMの量はは僅かに減少するが、これは恐らく、IgAおよびIgMが凝集して血漿から分離されてしまい、患者に戻される血漿低減血液中に残存することになるためである(
図5の「予備濾過血漿」参照)。
【0138】
幾つかの実施形態において、リガンドはバクテリア由来のタンパク質であり、またはそうしたタンパク質から誘導される。幾つかの実施形態において、標的分子が免疫グロブリンである場合、リガンドはブドウ球菌またはレンサ球菌からなる群より選択されるバクテリア由来のタンパク質であり、またはそれらから誘導される。幾つかの実施形態において、標的分子が非免疫グロブリン分子(例えばアルブミン)である場合、リガンドはシバクロンブルーであってよい。
【0139】
幾つかの実施形態において、リガンドはプロテインA、またはIgGと特異的に結合可能なその誘導体である。プロテインAは5つのドメインを有する黄色ブドウ球菌のタンパク質であり、このバクテリアの細胞壁に存在し、これらの5つのドメインのそれぞれが免疫グロブリンに対して特異的に結合することができる。プロテインAは例えば、IgG免疫グロブリンのFc部位に対して特異的に強く結合する。プロテインAは5つのドメインを有することから、それぞれがIgG分子に対して特異的に結合可能であり、単独のドメイン(またはその誘導体または組換体)は、免疫グロブリンに特異的に結合する限りにおいて、非限定的なリガンドとして機能することができる。かくして用語「プロテインAの誘導体」は、プロテインA誘導体がIgGに特異的に結合可能である限りにおいて、プロテインAの全長の誘導体、プロテインAの5つのドメインの1つの誘導体、およびプロテインAの全長またはプロテインAのドメインの組換体の誘導体を含む。
【0140】
幾つかの実施形態において、リガンドはプロテインG、またはIgGに特異的に結合可能なその誘導体である。プロテインGはC群およびG群のレンサ球菌に存在する。幾つかの実施形態において、プロテインGをリガンドとして使用する場合には、天然のプロテインGは変性して、アルブミン結合ドメインをプロテインGから取り除くようにされる。かくして用語「プロテインGの誘導体」は、プロテインGの誘導体がIgGに特異的に結合可能である限りにおいて、プロテインG全長の誘導体および組換体の誘導体、またはアルブミン結合ドメインを欠くプロテインGの変性種を含むものである。
【0141】
プロテインAおよび/またはプロテインGに共有結合したビーズは商業的に入手可能である。例えば、メルクミリポア社(マサチューセッツ州ビレリカ)はEshmuno A媒体という製品を販売しているが、これは黄色ブドウ球菌の組換ドメインCの5量体と共有結合した(すなわち共有連結した)ポリビニルエーテル系樹脂のビーズ(直径約50μm)である。同様に、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(マサチューセッツ州ウォルサム)はPOROS MabCapture A媒体という製品を販売しているが、これは組換プロテインAに共有結合した直径約45μmのビーズを含んでいる。
【0142】
例えば、MabCapture Aリガンドは血漿からIgGを捕捉するのに非常に効率的であり、そうした捕捉されたIgGは簡単に回収される。
図4に示されており以下で実施例1により詳細に記載されるように、1000mlの血漿(9.89mg/mlのIgGを含有)は、230mLのMabCapture A媒体(すなわち直径が約45μmでプロテインAで被覆されたビーズを含んでいる)を収容しているカラムを通過された。
図4中の赤線から理解されるように、MabCapture Aビーズに結合したIgGはビーズの結合容量まで達せず、実際のところビーズの容量の95%まで達しない(95%での破過についての矢印参照)。pHが3.0のクエン酸ナトリウム溶液(本発明の非限定的な溶出液)100mMを使用してビーズからIgGを溶出させると、MabCapture Aビーズに捕捉されたIgGの92%が回収された(
図4の緑線参照)。
【0143】
プロテインA被覆ビーズの使用は、IgGをIgAおよびIgMよりも著しく富化することが見出されている。この富化を
図5に概略的に示す。
図5の一番左の列(すなわち「通常」)は、科学文献に記載された1リットルの血漿中におけるIgG(緑)、IgA(赤)およびIgM(青)の典型的な割合を示している。血漿フェレーシス(例えばヘモネティクス社により販売されているPCS(R)2装置を使用した)の後、免疫グロブリンの全集団中におけるIgAおよびIgMの量は僅かに減少するが、これは恐らく、IgAおよびIgMが凝集して血漿から分離されてしまい、患者に戻される血漿低減血液中に残存することになるためである(
図5の「予備濾過血漿」列参照)。実施例4において後述するように、プロテインA被覆ビーズ(例えばMabCapture Aビーズ)と接触され次いで100mMのクエン酸ナトリウムで溶出される血漿は、溶出された(すなわち回収された)Ig集団中のIgAおよびIgMの量が大きく低減されている(
図5の「回収されたIgG」列参照)。最終的に、標的(
図5の一番右の列に示されている)はIgAまたはIgMを有しない。
【0144】
「精製(された)IgG」におけるような「精製された」は、IgGがIgG免疫グロブリンの少なくとも90%(重量で)を含まないことを意味する(例えばIgAおよびIgMの90%を含まない)。幾つかの実施形態において、精製されたIgGは、IgGが非IgG免疫グロブリンの少なくとも92%(重量で)を含まないことを意味する。幾つかの実施形態において、精製されたIgGは、IgGが非IgG免疫グロブリンの少なくとも95%(重量で)を含まないことを意味する。幾つかの実施形態において、精製されたIgGは、IgGが非IgG免疫グロブリンの少なくとも97%(重量で)を含まないことを意味する。幾つかの実施形態において、精製されたIgGは、IgGが非IgG免疫グロブリンの少なくとも99%(重量で)を含まないことを意味する。非IgG免疫グロブリンは単純に、IgG以外の血清型の免疫グロブリンであることに留意されたい。非限定的な非IgG免疫グロブリンは、IgA、IgM、IgD、およびIgEである。
【0145】
本願の幾つかの実施形態においてはプロテインAが例示されているが、プロテインAは単純に、リガンドの非限定的な例であることが理解されるべきである。本願の実施形態において使用するためのリガンドの別の非限定的な例は、シバクロンブルーである。MelonGel(例えば米国マサチューセッツ州ウォルサムのサーモフィッシャー社によって販売されている特許化学品)のような他のリガンド、プロテインG、ラクダ(重鎖)抗体、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体(例えばマウス抗ヒト抗体)、およびメルカプトエチルピリジンのような混合モードリガンド(MEP)もまた考慮される。
【0146】
図4および
図5の結果は、1000mlの血漿から得られたものであることに留意すべきである。血漿は、標準的なアフェレーシスシステムから得ることができる。
【0147】
例えば
図6Aにおいて、精製免疫グロブリンは、血小板フェレーシス(例えばMCS(R)+9000装置を使用して)を受けている患者(またはドナー)から獲得可能である。
図6Aにおいて、血小板が取り出されたならば、残りの血液成分(例えば赤血球、非血小板白血球、および血漿)をさらに処理して(例えば遠心分離または濾過によって)、血漿を取り除くことができる。血漿からはIgGを分離してさらに処理することができ(例えば冷凍または凍結乾燥により)、その結果として精製IgG製剤が得られる。残ったIg欠乏血漿(これはもちろん、幾らかのIgを依然として有していてよく、従って「Ig低減血漿」と呼ぶこともできる)は貯蔵し、廃棄し、または
図6Aに示されているように、赤血球および非血小板白血球と混合して、患者(またはドナー)に戻すことができる。
【0148】
リガンドと共有結合した固体支持体を、アフェレーシスプロセス自体に取り入れてよいことに留意すべきである。例えば
図6Aに概略的に示された方法においては、IgGの取り出しを行う工程(すなわち抽出工程)は、血漿をIgGと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器と接触させて血漿からIgGを取り除くことによって行うことができ、そこにおいて容器は、それ自体がアフェレーシスシステムの一部とされる。リガンドからのIgGの溶出は、容器が依然としてアフェレーシスシステムに取着されていて(例えば血液適合性のチューブを介して)依然として「オンライン」である間に行わせることができ、または容器は取り外して「オフライン」とし、リガンドからIgGを溶出させる前にシステムから脱着させることができる。溶出されたIgGは次いでさらに処理して、精製されたIgG製剤が得られる。
【0149】
別の例では、免疫グロブリンは、多血小板血漿から精製し、および/または富化することができる。
図6Bは、多血小板血漿(PRP)を精製するアフェレーシスを受けている患者(またはドナー)から精製IgGを得ることを示しているが、患者は単純に全血を供与することができ、そこからPRPを製造できることに留意すべきである。換言すれば、PRPの抽出の後、患者の全血のどの部分または成分も患者に戻す必要はない。各種の機器がPRPを製造可能であり、それにはBiometGPS IIおよびIII(米国インディアナ州ワルシャウのジンマーバイオメット社)およびハーベスト社(米国コロラド州レイクウッド)のSmartPrep(R)多細胞処理システム等が含まれる。もちろん、標準的な実験室的方法もまた、PRPの製造に利用可能である。例えば、DhuratおよびSukeshら、J. Cutan. Aesthet. Surg. 7(4):189-197、2014年を参照。MCS(R)+9000装置のようなアフェレーシスシステムもまた、多血小板血漿を製造し、非血小板細胞(赤血球の如き)を患者やドナーに戻すことができる。
図6Bに示された非限定的なチェアサイド法は、IgGのような免疫グロブリンを多血小板血漿から抽出することができる。さらに処理を行った後(例えば凍結)、精製IgG製品が得られる。この免疫グロブリン欠乏多血小板血漿は次いでさらに処理して(例えば濾過、バクテリア検出テスト、冷蔵、その他)Ig欠乏多血小板血漿製剤が製造され、等張食塩水が非血小板細胞と混合されて、これらの細胞が患者に戻される(
図6B参照)。この筋書きにおいて、免疫グロブリンが細胞を含む生物学的流体から抽出される場合(すなわち免疫グロブリンがPRPから抽出される)、IgGの抽出に使用される、IgGと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器は、PRP中の血小板細胞が容器を閉塞しないように構成されてよい。例えばバッグであって、リガンドと共有結合した固体支持体がバッグの側面の内側表面であるバッグを用いることができる。そうした容器の別のものは、少なくとも20μmの直径を有するビーズが充填されたカラムであってよく、そこにおいてビーズは、リガンドが共有結合した固体支持体である。血小板は直径が僅かに約2~3μmであるから、血小板はカラムを閉塞することなく、ビーズの間を流動することができる。
【0150】
さらに別の例では、血漿フェレーシス(例えばPCS(R)2装置を用いて)を受けている患者(またはドナー)から、精製免疫グロブリンを得ることができる。
図6Cの非限定的な例に示されているように、IgGが抽出される場合、血漿が全血から取り出されたならば、IgGを血漿から分離することができ、そしてこのIg低減血漿は廃棄してもよく、赤血球および白血球(血小板を含む)と混合して患者(またはドナー)に戻すこともでき、または
図6Cに示されているように、さらに処理を行って(例えば濾過またはバクテリアの存在に関するテストを行って)、IgG欠乏血漿製剤を製造することができる。血漿から抽出されたIgGはさらに処理(例えば凍結)して、精製IgG製剤が得られる。
【0151】
もちろん、任意の血液供与システムまたはアフェレーシスシステムを修正して、精製免疫グロブリンを製造するようにできることに留意すべきである。
図7に示すところでは、チェアサイドのアフェレーシスシステムが描かれており、そこでは全血が患者によって供与され、まずIgGが取り出される。取り出された(抽出された)IgGは、アフェレーシスシステム内で(
図7に示すようにして)、またはシステム外で(例えば血液銀行の設備で)さらに処理して、精製IgG製剤を製造することができる。多血小板血漿が次いで、残部から取り出される(すなわち、IgG欠乏血漿中の赤血球および白血球の組み合わせから取り出される)。次いで血小板が多血小板血漿から取り出され、これら2つの製剤はさらに処理されて、血小板製剤およびIgG欠乏血漿製剤が製造される。もちろん、アルブミンまたはファクタVIIIのような血漿製剤を、IgG欠乏血漿から精製することができる。
図7のシステムでは、残った赤血球および非血小板白血球の混合物から赤血球が取り出されて、赤血球製剤(例えば濃厚赤血球製剤)が製造される。非血小板白血球のみが残されることになる。これらの白血球はTリンパ球およびBリンパ球を含み、これらは抗原特異免疫における中心的存在であるから、ドナーに戻されることが望ましい。
図7では、この非血小板白血球はリンゲル液(等張液)と混合されて、アフェレーシスシステムを使用して患者ドナーへと戻るよう投与される。
【0152】
患者が自分の非血小板白血球の返血を選択しない場合には、
図7の工程の全てはアフェレーシスシステムではなく、血液銀行の設備で行うことができることに留意すべきである。同様に、IgGを生物学的流体から精製するための本願記載の全ての方法は、アフェレーシスシステムまたは血液銀行の設備のいずれかで実行可能であることに留意すべきである。例えば
図7において、患者は単純に、1パイント(0.473リットル)の献血を行って立ち去ることができる。この血液は次いで、血液銀行の設備へと移送され、所望の成分(例えばIgG、血小板、血漿、その他)を抽出することができる。ドナー患者からの血液はまた、他のドナー患者から供与された全血と共にプールすることができ、このプールされた全血から抽出が行われる。
【0153】
図6Aから
図6Cまたは
図7で得られた血漿(例えばIgG欠乏血漿)が貯蔵され、患者に戻されない場合には、血漿は血漿分画装置またはシステムにおいて分画によってさらに処理し、アルブミン、ファクタVIIIおよびファクタIXのような血液凝固因子、フィブロネクチン、その他を含む、血漿中の種々の成分を分離することができることに留意されたい。もちろん、血漿(例えば免疫グロブリン欠乏血漿)の処理には、バクテリアに関する検査、および/または何らかの残存細胞、分子の塊(例えばタンパク質または脂質)を除去するための濾過を含むことができる。この処理はまた、-20℃での冷凍または4℃での貯蔵を含むことができる。
【0154】
本願に記載のように、固体支持体に共有結合した(「共有的に取着した」ともいう)リガンド(例えばプロテインAまたはプロテインG、またはシバクロンブルー)を使用する任意の方法を使用して、免疫グロブリン(例えばIgG)を生物学的流体から精製または抽出可能であり、または生物学的流体から免疫グロブリンを富化することができる。
図4および
図5に示す結果は(後述する実施例1でより詳細に説明するように)、カラム中のプロテインA被覆ビーズを使用して得られているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、生物学的流体がカラムを通過されるとすれば、リガンドはカラムの内側表面(すなわち、生物学的流体と接触する表面)に共有結合することができる。別の例では、生物学的流体がチューブを通過されるとすれば、リガンドはチューブの内側表面(すなわち、生物学的流体と接触する表面)に共有結合することができる。別の例では、生物学的流体がバッグを通過されまたはバッグに貯蔵されるとすれば、リガンドはバッグの内側表面(すなわち、生物学的流体と接触する表面)に共有結合することができる。
【0155】
非限定的な実施形態では、リガンドが共有結合した固体支持体がビーズである場合には、ビーズも同様に、本発明に従って種々に用いることが可能である。例えば、生物学的流体がカラムを通過されるとすれば、ビーズはカラム内に収容することが可能であり、そこにおいてカラムは例えば、ビーズの直径よりも小さな孔径を有するフィルターを入口ポートおよび出口ポートに備える。別の例では、生物学的流体がバッグを通過されまたはバッグに貯蔵される場合には、ビーズは例えばバッグの内側ライニングとしてバッグ内に収容可能であり、ビーズの直径よりも小さな孔径を有するメッシュによってライニング内部に保持される。
【0156】
固体支持体がバッグの内側表面またはバッグ内に収容されたビーズのいずれかである場合、等張食塩水のような無菌液または生物学的流体(例えば全血またはその成分)を保持するよう構成された任意のバッグをそのように修正可能である。幾つかの実施形態において、バッグはアフェレーシスシステムにおいて使用するように構成されてよい(例えばバッグはルアーロックを用いるシステムにおいてルアーロックアダプターで改造されてよい)。免疫グロブリンはリアルタイムまたは「チェアサイド」で収集可能であり、その間ドナーは血液(または血小板や血漿のような血液製剤)を供与する処置下にある。標準的な生物学的流体バッグ(多くの場合、血液バッグと呼ばれる)は商業的に入手可能である(例えば米国イリノイ州レイクズーリックのフェンオール社から)。こうしたバッグは、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンブチルアセテートコポリマー(EBAC)樹脂、エチレンメチルアクリレートコポリマー(EMAC)樹脂、可塑化された超高分子PVC樹脂、およびエチレンビニルアセテート(EVA)のような種々のプラスチックおよび/またはポリマー材料から作成可能であり、および/または、例えばポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、およびポリカーボネートから形成可能である。こうしたバッグの非限定的な例が、
図8Aおよび
図8Bに示されている。
図8Aにおいては、入口ポートおよび出口ポートは各々がバッグの上部に配置されている。
図8Bにおいては、入口ポートはバッグの上部に配置され、そして出口ポートはバッグの下部に配置されている。
【0157】
幾つかの実施形態において、特にリガンドがバッグ内に配置されたビーズに共有結合している場合、バッグの一方または双方の内側表面は、ビーズをバッグ表面に(従ってバッグの空洞部から離して)保持する、多孔質のライニング(またはメッシュ)を有するように構成してよい。幾つかの実施形態において、メッシュライニングの孔径は、リガンド被覆ビーズの直径よりも小さい。同様に、幾つかの実施形態において、バッグの入口ポートおよび/または出口ポートは、ビーズの直径よりも小さな孔径を有するフィルター(フリスとも呼ばれる)で覆われるように適合される。幾つかの実施形態において、メッシュライニングの孔径および/またはフリスの孔径は、有核白血球(例えば単球)の直径よりも小さく、フィルターの孔径は細胞の平均径よりも小さくてよい。全血中を循環している最大の白血球である単球の平均径は、15μmから約30μmである。従って、フリスおよび/またはメッシュは、直径が15μmよりも小さい孔径(例えば約10~12μmの間の孔径)を有することができる。
【0158】
固体支持体が容器(バッグの如き)の内側表面またはバッグのような容器の内部に収容されたビーズのいずれかである場合、等張食塩水のような無菌液または生物学的流体(例えば全血またはその成分)を保持するように構成された任意の容器を改造することができる。幾つかの実施形態において、容器はアフェレーシスシステム(例えば
図3に示したPCS(R)2システム)において使用することができる。幾つかの実施形態において、特に容器がリガンド被覆ビーズを収容している場合には、入口ポートおよび出口ポートは、ビーズの直径よりも小さな孔径を有するフィルター(フリスとも呼ばれる)で覆われるように適合される。免疫グロブリンはリアルタイムまたは「チェアサイド」で収集可能であり、その間ドナーは血液(または血小板や血漿のような血液製剤)を供与する処置下にある。
【0159】
容器(例えばバッグ)は任意の材料から構成可能であり、それには限定するものではないが、プラスチック、ポリカーボネート、ガラス(または強化ガラス)、ステンレス鋼、およびその他が含まれる。
【0160】
固体支持体がカラムの内側表面またはカラム内に収容されたビーズのいずれかである場合、等張食塩水のような無菌液または生物学的流体(例えば全血またはその成分)を保持するように構成された任意のカラムをそのように改造することができる。幾つかの実施形態において、カラムはアフェレーシスシステム(例えば
図3に示したPCS(R)2システム)において使用することができる。幾つかの実施形態において、特にカラムがリガンド被覆ビーズを収容している場合には、入口ポートおよび出口ポートは、ビーズの直径よりも小さな孔径を有するフィルター(フリスとも呼ばれる)で覆われるように適合される。免疫グロブリンはリアルタイムまたは「チェアサイド」で収集可能であり、その間ドナーは血液(または血小板や血漿のような血液製剤)を供与する処置下にある。
【0161】
カラムは任意の材料から構成可能であり、それには限定するものではないが、プラスチック、ポリカーボネート、ガラス(または強化ガラス)、ステンレス鋼、およびその他が含まれる。
【0162】
幾つかの実施形態において、カラムはアキシアルカラム(例えばそこでは生物学的流体がカラムの長さに沿って流れる)であり、またはラジアルフローカラムであって、そこでは生物学的流体はカラムを円形のパターンで流れる。特に、カラムがアフェレーシスシステムにおいて使用するように構成されている場合、カラムを通って流れる生物学的流体によって生成される背圧は、IgGのリガンドに対する結合効率(非共有結合を介して)に影響しうる。例えば、固体支持体がリガンド被覆ビーズであり、そしてビーズがアキシアルカラム内に配置される場合には、背圧を高い可能性がある。例えば、直径がほぼ40~80ミクロンのリガンド被覆ビーズを収容しているアキシアルカラムを通って、流量が50ml/分から120ml/分の場合、背圧は大体1,000mm水銀でありうる。
【0163】
アキシアルフローにおける決定因子の1つはカラム内の樹脂の大きさであるから、アキシアルフローカラムの高さおよび/または直径は重要でないことに留意すべきである。例えば250mLの樹脂(例えばリガンド被覆ビーズを含む)がGE50/20カラム(米国ペンシルバニア州ピッツバーグのGEヘルスケアライフサイエンス社から商業的に入手可能)内に充填される場合、1000mLの血漿を用いたプロセスの開始時点における背圧は1000mmHgを超える。従ってアキシアルフローについては、カラムは約10から300mmの直径と、10mmから300mmの高さ(または長さ)を有することができる。アキシアルカラムにおける背圧は、50mmから200mmよりも大きな内径を有するカラムを使用することにより、潜在的に低減されうる。しかしながら、このような大きさのカラムは、PCS(R)2装置(ヘモネティクス社、米国マサチューセッツ州ブレイントリー)のような血漿フェレーシス装置について使用するには実用的でない。幾つかの実施形態において、カラムがアキシアルカラムである場合、カラムは50mmの内径と、200mmの長さ(または高さ)を有する。幾つかの実施形態において、カラムがアキシアルカラムである場合、カラムは10mmの内径と、20mmの長さを有する。
【0164】
幾つかの実施形態においては、カラムはラジアルフローカラムである。ラジアルカラムでは、背圧は著しく低減され、従ってリガンドに対するIgGの非常に良好な結合効率(非共有結合を介しての)を得ることができる。例えば、直径がほぼ40~80ミクロンのリガンド被覆ビーズを収容したラジアルカラムを介した流量が50ml/分から120ml/分である場合、背圧はおおよそ50mm水銀、または50~150mm水銀の間にあってよい。
図9A~
図9Cは、本発明の種々の実施形態において使用することのできる、リガンド被覆ビーズで充填された非限定的なカラムの概略を示している。
図9A~
図9Cに示されたカラムは、血漿アフェレーシス装置または血小板フェレーシス装置のようなアフェレーシス装置と関連して作動するように設計されている。幾つかの実施形態において、カラムはPCS(R)2血漿フェレーシス装置(ヘモネティクス社より)と関連して作動するように構成されている。PCS(R)2血漿フェレーシス装置における最大の背圧は100mm水銀程度であるから、幾つかの実施形態において、PCS(R)2装置について使用されるカラムはラジアルフローカラムである。幾つかの実施形態において、カラムはMCS(R)+9000血小板フェレーシス装置(ヘモネティクス社より)と関連して作動するように構成されている。「構成されている」は単純に、意図した対象物(例えばカラムまたはバッグ)が、目的に合うように何らかの仕方で適合または修正されていることを意味する。例えば、容器がPCS(R)2血漿フェレーシス装置について動作するように構成されている場合、それは単純に、例えば、容器の入口ポートおよび出口ポートをPCS(R)2血漿フェレーシス装置のアダプターに接続可能なアダプター(例えばルアーロックアダプター)で修正することにより、その容器がPCS(R)2血漿フェレーシス装置に接続されるよう適合されていることを意味する。しかしながら、この容器は任意のアフェレーシス装置またはシステムについて作動可能であることが理解されねばならない。
【0165】
図9A~
図9Cについて見ると、非限定的なラジアルフローカラムが、それぞれ血漿を流入させ免疫グロブリン欠乏血漿を流出させるための入口ポートおよび出口ポートという2つのポートを備えて示されている(
図9Aおよび
図9B参照)。
図9Aおよび
図9Bに示されたカラムは大体、高さが12cmであり、直径が5cmである。入口ポートおよび出口ポートは両方とも、大体20~30ミクロンの平均孔径を有するフィルター(またはフリス)で改造されている。
図9Aおよび
図9Bの概略図にはルアーロックアダプターが示されているが、そのカラムが共に使用されるアフェレーシス装置(またはシステム)のチューブシステムのアダプターと適合性のあるアダプターである限り、ポートは任意のアダプターを有することができる。免疫グロブリン欠乏血漿が患者に戻される実施形態においては(例えばアフェレーシスが血小板フェレーシスまたは血漿フェレーシスである場合)、免疫グロブリン欠乏血漿はドナーへと細胞を戻す前に、赤血球および他のドナー細胞(例えば非血小板白血球)と混合されてよい。こうした実施形態は
図6および
図7のフローチャートに示されている。
【0166】
図9Aは、
図9Bのカラムから一部を長手方向に除去して示しており、充填されたビーズを
図9Aに見ることかできる。ビーズのベッド高は、
図9Aに示された概略図において大体1cmであり、この概略図は容積240mlのMabCaptureAビーズ(ビーズの平均粒径は約45ミクロン)を表している。リガンド被覆されたアガロースビーズ(90ミクロンの平均ビーズ径を有する)も使用可能であることに留意されたい。幾つかの実施形態において、おおよそ50ミクロンまたはそれ未満のビーズ径が使用される。幾つかの実施形態において、約50ミクロンまたはそれ未満のビーズ径は、約60ミクロンよりも大きなビーズ径の場合よりも、より高い効率でのIgGの抽出および回復を可能にする。
【0167】
図9Aおよび
図9Bのカラムのラジアル的な性質は、
図9Cに示された
図9Aのスライスにおいて見ることができる。看取可能であるように、カラム内の1cmの高さのベッドはカラムのチューブ状構造内にあり、このチューブ状構造はカラムの高さ全体にわたり、カラムの中心軸の周囲で螺旋をなす。このようにして、240mlのMabCaptureAビーズを、5cmの直径を有する12cmの高さのカラム内に充填することができる。
【0168】
本発明のすべての実施形態において、リガンドに共有結合した固体支持体の量は、任意であってよいことに留意すべきである。幾つかの実施形態においては、処理される生物学的流体(例えば血漿)中のIgG(または他の免疫グロブリン血清型)の大部分が、生物学的流体から抽出され、またはその中で富化される。かくして種々の実施形態において、本願に記載の方法および装置は生物学的流体中の少なくとも50%のIgGを抽出または富化し、または生物学的流体中の少なくとも66%のIgGを抽出または富化し、または生物学的流体中の少なくとも75%のIgGを抽出または富化し、または生物学的流体中の少なくとも90%のIgGを抽出または富化し、または生物学的流体中の少なくとも95%のIgGを抽出または富化する。いったん抽出されたならば、大部分のIgGは本発明に従って回収される。かくして種々の実施形態において、本願に記載の方法および装置は、抽出または富化されたIgGの少なくとも50%を回収し、または抽出または富化されたIgGの少なくとも66%を回収し、または抽出または富化されたIgGの少なくとも75%を回収し、または抽出または富化されたIgGの少なくとも90%を回収し、または抽出または富化されたIgGの少なくとも95%を回収する。
【0169】
例えば、リガンドに共有結合された固体支持体がプロテインA被覆ビーズである場合、そしてビーズがバッグまたはカラム内に収容されている場合、使用されるビーズの量は、最小限の量のリガンドを使用しながらも、最大の免疫グロブリン(例えばIgG)を抽出するように修正可能である。リガンドの量を低減させれば、固体支持体から離脱して生物学的流体中へと放出されるリガンドの潜在量を低減させることができるから、このことは有用である。
【0170】
免疫グロブリン(例えばIgG)が生物学的流体から抽出される、本願に記載の実施形態においては、固体支持体に共有結合したリガンドから放出させて免疫グロブリンを溶出させるために(例えばリガンド被覆ビーズから免疫グロブリンを溶出させるために)、2.0と3.0の間のpHを有する溶液が溶出液として使用される。例えば溶出液は、3.0のpHを有する100mMクエン酸ナトリウムであってよい。IgGが固体支持体に共有結合されたリガンドから溶出液中へと溶出されたなら、溶出液のpHは、中和バッファを添加することによって正規化される。「中和バッファ」は、中和バッファが添加される溶液において中性のpH(すなわち6.0と7.0の間のpH)を得るだけの十分に高いpHを有する溶液を意味している。幾つかの実施形態において、中和バッファの容積は、溶出された免疫グロブリンを含有している溶出液の容積よりも少ない。例えば、溶出されたIgGが100mlの100mMクエン酸ナトリウム中にありpH3.0である場合、pH8.8の10mlの1Mトリスのような10%の容積の中和バッファを添加することができ、その結果pHが6から7の間にあり最終容積が110mlの回収IgGの溶液が得られる。非共有結合されたIgGのリガンドから溶出液中への溶出は、免疫グロブリンのリガンドからの静電反発を通じて生じ、それによって免疫グロブリンとリガンドの間の非共有結合が破れて、免疫グロブリンは溶出液中へと放出され、固体支持体に依然として共有結合したリガンドが残される。
【0171】
幾つかの実施形態において、容器(例えばバッグまたはカラム)がアフェレーシスシステムの一部である場合、非共有結合された免疫グロブリンのリガンドから溶出液中への溶出は「オンライン」で生ずる(すなわち、溶出液が容器を通過して流れる場合に容器はシステムにまだ取着されている)。幾つかの実施形態において、免疫グロブリンが生物学的流体から抽出される場合、容器は取り外して「オフライン」とされ、従って溶出液が容器を通過して流され、非共有結合された免疫グロブリンをリガンドから溶出させる時点では、もはやアフェレーシスシステムに取着されていない。
【0172】
幾つかの実施形態において、溶出液はポンプ(例えば蠕動ポンプ)を使用して容器を通過して流される。幾つかの実施形態において、溶出液を容器を通過させて給送するポンプはアフェレーシスシステムの一部であり、容器を通して給送する前の溶出液を保持するリザーバは、アフェレーシスシステムに取着されておりその一部をなしている。幾つかの実施形態において、溶出液を容器を通過させて給送するポンプはアフェレーシスシステムの一部ではなく、容器を通して給送する前の溶出液を保持するリザーバは、アフェレーシスシステムの一部ではない。
【0173】
幾つかの実施形態において、溶出液は重力を使用して、容器を通過して流される。重力を使用して溶出液を容器を通過するよう押しやるためには(例えばクリーンベンチの下におけるような無菌条件で)、容器内の背圧は50mmHg未満である(例えば0.1mmHg程度に低い)ことに留意すべきである。
【0174】
幾つかの実施形態において、溶出は、処理される生物学的流体の全容積が、リガンドに共有結合した固体支持体と接触した後に生ずる。非限定的な例において、
図9Aから
図9Cに示されリガンド被覆ビーズを収容しているカラムが使用された場合、このカラムの容積は、1リットルの血漿(血漿フェレーシスで典型的に得られる容積)中の全てのIgGに結合する(非共有結合を介して)のに十分なものである。従って、1リットルの血漿の全容積をカラムを通じて流すことができ、次いで溶出液(例えばpH3.0の100mMクエン酸ナトリウム)を使用して、結合したIgGをカラムから溶出させることができる。
【0175】
幾つかの実施形態において、溶出工程(すなわち、リガンドと共有結合した固体支持体に非共有結合した免疫グロブリンを溶出液と接触させる)は、免疫グロブリン(例えばIgG)を含有すると見られる生物学的流体の全容積の一部との接触に続いて行われる。溶出工程に続いて、リガンドに共有結合した固体表面は、例えばその表面をpH7.0の100mMトリス、またはpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような、中性pHを有する溶液(例えば7.0および8.0の間のpHを有する溶液)と接触させることにより中和される。中和工程の後、免疫グロブリンを含有する別の一部が、液体中の免疫グロブリンがリガンドと非共有結合可能な条件下において、固体表面と接触するようにされる。この第2の接触工程(第2の付着工程と呼んでよい)の後、第2の溶出工程が行われる。これには、第2の中和工程が続く。付着工程、溶出工程、および中和工程は繰り返して行うことができ、それによって、リガンドに共有結合した固体支持体は再使用またはリサイクルされる。もちろん、これらの工程を繰り返すことのできる回数は、リガンドに共有結合した固体支持体の安定性に依存している。例えば、プロテインA被覆ポリスチレンビーズは高い流量に耐え得ることが知られているから、リガンドと共有結合した固体支持体がプロテインA被覆ポリスチレンビーズである場合は、このビーズは少なくとも工程のサイクル(すなわち付着、溶出、および中和)3回分、または少なくとも工程の5サイクル分、または少なくとも工程の10サイクル分、または少なくとも工程の15サイクル分、または少なくとも工程15サイクル分、または少なくとも工程25サイクル分、または少なくとも工程の50サイクル分、繰り返して使用してよい。固体支持体が血漿フェレーシスと関連して使用される場合には、幾つかの実施形態において、1つの固体支持体が1人のドナーについて使用される。
【0176】
例えば、幾つかの実施形態において、発明がリガンド被覆ビーズ(プロテインA被覆ビーズの如き)で充填されたカラムの使用を意図している場合、カラムはより小さくてよく、より少ないビーズが充填されていてよい、というのはビーズで充填されたカラムは再使用されるからである。1つの非限定的な例においては、血漿フェレーシス(例えばPCS(R)2装置を使用して)に際して得られる血漿の平均的な量は800mLから1000mLであるから、高さ12センチメートル、直径5センチメートルで230mlのMabCapture Aビーズ(平均径45ミクロン)を備えたカラムは、その容積の血漿中にある全ての循環免疫グロブリンに結合する能力を有する。カラムが再使用される場合には、カラムはより小さくてよく、使用するビーズの量も低減することができる。例えば、カラムは高さ3センチメートル、直径5センチメートルであってよい。
【0177】
リガンドに共有結合した固体支持体を再使用することにより、材料の顕著な低減を達成することが可能であり、その結果コストは低くなり、生物学的廃棄物も少なくなる。
【0178】
任意の既存のアフェレーシスシステムを改造して、本願記載の方法および/または装置を取り入れるようにすることができる。そうしたアフェレーシスシステムの2つの非限定的な例は、ヘモネティクス社(マサチューセッツ州ブレイントリー)によって販売されているPCS(R)2システム、およびヘモネティクス社(マサチューセッツ州ブレイントリー)によって販売されているMCS(R)+9000モービル血小板収集システムである。
【0179】
例えば、免疫グロブリンまたは特定のアイソタイプの免疫グロブリン(例えばIgG)を分離するためには、PCS(R)2システムを改造することができる。米国特許第4,086,924号、第4,983,158号、および第6,629,919号(参照によって本願に取り入れる)は、PCS(R)2システムのような血漿フェレーシスシステムの幾つかの側面を記載している。基本的に、PCS(R)2システムは、静脈針(例えば16~17のゲージを有する)を介して患者ドナーから全血を採取し、それを抗凝固剤(例えばクエン酸ナトリウム)と混合し、そしてそれを血液適合性のあるチューブを通して遠心ボウル内へと給送する(蠕動ポンプを使用して)ことによって動作する。全血は各成分(例えば細胞および血漿)へと分離し、そしてより多くの全血が患者からボウルへと追加されるにつれて、血漿はボウルから押し出されて血漿収集バッグに入る。PCS(R)2システム、または類似の血漿フェレーシスシステムを改造するについては、遠心ボウルを出てくる血漿は、血漿収集バッグへと移送されるのではなく、免疫グロブリン(IgGのような)に特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含むカラムまたはバッグのような容器を通る経路をまず搬送され、血漿からIgGを抽出することができる。容器から出てくる血漿(すなわちIgG欠乏血漿)は次いで、収集のために血漿収集バッグへと移送されることができる。容器から溶出されるIgGもまた、IgG収集バッグに移送することができる。このように改造されたPCS(R)2システムをカラムと共に
図10Aに概略的に示し、またバッグと共に
図10Cに概略的に示す。リガンドに非共有結合された免疫グロブリン(例えばIgG)は、全ての血漿の通過に続いて、または継続的に(例えば複数回の溶出工程)、溶出させ収集することができる。
【0180】
別の側面において、この発明はネガティブセレクションを使用して、全血(例えばヒト由来の)からIgGのような免疫グロブリンを富化させることを考慮している。例えば、全血は健康なボランティアドナーから採取可能であり、次いで細胞を取り出すことができる。細胞は、遠心分離または濾過(例えば血小板が直径約2ミクロンであることから、孔径2ミクロンのフィルターを使用して)などの任意の標準的な方法によって取り出し、血漿を生成することができる。別の方法は単純に、全血を凝固させて血清を収集することでありうる。血漿または血清は次いでさらに処理して、非免疫グロブリン成分を取り出すことができる。このネガティブセレクションを
図11に概略的に示している。
図11に示した工程は全てが必要なものではなく(すなわち、工程は省略可能である)、また工程の順序も重要でないことに留意すべきである。
図11の工程は合体可能であり、また追加工程を付加することができる。しかしながら、
図11は単純に、ネガティブセレクションプロセスの代表例である。
【0181】
例えば、アルブミンは一般的な血液タンパク質であるから、アルブミンは例えば、血漿または血清(または全血)を、アルブミンと特異的に結合する抗体に共有結合した固体支持体上を通過させることによって取り出し可能である。アルブミンはまた、全血(または血清または血漿)をシバクロンブルーと接触させることによっても取り出し可能である。例えば、バイオラッド社(米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)は、シバクロンブルーに共有結合したアガロースビーズを含むクロマトグラフィー用ゲルを販売している。こうしたビーズはカラムに充填することができ、血液(または血清または血漿)がカラムを通過されてアルブミンが取り出される。凝固カスケードタンパク質(例えばフィブリノーゲン、ファクタVIII、ファクタVI、プロトロンビン、その他)および補体タンパク質(例えばC3転換酵素、マンナン結合レクチン、C1q、その他)もまた取り出し可能である。非IgG免疫グロブリンもまた取り出し可能であり、炭水化物および脂質もまた可能である。得られる(または残存する)生物学的流体は、全血(または血漿または血清)から非IgG成分が取り出された後に残存するものである。従って、生物学的流体中に残存するIgGは、IgGに特異的に結合するリガンドとは接触していない。さらにまた、IgGはそれを非共有結合しているリガンドから溶出される必要がないため、低いpH(例えば2.0から3.0のpH)におけるIgGに対する何らかの潜在的な損傷は回避することができる。
【0182】
別の例では、PCS(R)2システムを改造して免疫グロブリンを富化させることができる。米国特許第4,086,924号、第4,983,158号、および第6,629,919号(参照によって本願に取り入れる)は、PCS(R)2システムのような血漿フェレーシスシステムの幾つかの側面について記載している。基本的に、PCS(R)2システムは、静脈針(例えば16~17のゲージを有する)を介して患者ドナーから全血を採取し、それを抗凝固剤(例えばクエン酸ナトリウム)と混合し、そしてそれを血液適合性のあるチューブを通して遠心ボウル内へと給送する(蠕動ポンプを使用して)ことによって動作する。全血は各成分(例えば細胞および血漿)へと分離し、そしてより多くの全血が患者からボウルへと追加されるにつれて、血漿はボウルから押し出されて血漿収集バッグに入る。PCS(R)2システム、または類似の血漿フェレーシスシステムを改造するについては、遠心ボウルを出てくる血漿は、血漿収集バッグへと移送されるのではなく、非免疫グロブリン血液成分(アルブミンの如き)に特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含むカラムのような容器を通る経路をまず搬送され、血漿からアルブミンを抽出することができる。容器から出てくる、免疫グロブリンについて富化された血漿(例えばアルブミン欠乏血漿)は次いで、収集のために血漿収集バッグへと移送されることができる。このように改造されたPCS(R)2システムを
図10Eに概略的に示す。
【0183】
別の例では、MCS(R)9000システムを改造して、免疫グロブリンまたは特定のアイソタイプの免疫グロブリン(例えばIgG)を分離することができる。米国特許第4,983,158号および第5,387,187号(参照によって本願に取り入れる)は、MCS(R)9000システムのようなアフェレーシスシステムの幾つかの側面について記載している。MCS(R)9000は多くの場合に血小板フェレーシスのために使用されるが、MCS(R)9000は血小板、赤血球、血漿、およびこれらの成分の組み合わせを含む、種々の全血細胞成分を分離することができる。基本的に、MCS(R)9000システムは、幾つかの蠕動ポンプをバルブと一緒に用いることで動作し、患者ドナー(例えば健康なボランティア)から静脈針(例えば16~17のゲージを有する)を通じての血液(または血液成分)の方向および流れを制御する。抗凝固剤(例えばクエン酸ナトリウム)で処理した後、ドナーの血液は、血液適合性のあるチューブを介してボウル(例えば遠心ボウル)、バッグ、およびカラムのような種々の容器へと給送され、そしてドナーの血液成分の幾らか(例えば赤血球)は、同じ静脈針または異なる静脈針を介してドナーへと戻される。
【0184】
MCS(R)9000システム、または類似のアフェレーシスシステムを改造するについては、血漿を遠心ボウルから血漿収集バッグへと給送する前に、血漿はIgGのような免疫グロブリンと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含むカラムまたはバッグのような容器を通して給送されて、免疫グロブリンを血漿から取り出すことができる。このような改造の概略をカラムと共に
図10Bに概略的に示し、またバッグと共に
図10Dに概略的に示す。容器を出てくる血漿(すなわち免疫グロブリン欠乏血漿)は次いで、血漿収集バッグに収集することができ(
図10Bおよび
図10D参照)またはドナーに戻される。リガンドに非共有結合された免疫グロブリンはまた、溶出して
図10Bおよび
図10Dに示すようなIgG収集バッグに収集することができる。
【0185】
MCS(R)9000システム、または類似のアフェレーシスシステムの別の改造においては、血漿を遠心ボウルから血漿収集バッグへと給送する前に、血漿はアルブミンのような非免疫グロブリンと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含むカラムまたはバッグのような容器を通して給送されて、アルブミンが血漿から取り出され、それによって残余のアルブミン欠乏血漿中の免疫グロブリンが富化される。このような改造の概略を
図10Fに示す。容器を出てくる血漿(すなわちアルブミン欠乏免疫グロブリン富化血漿)は次いで、血漿収集バッグに収集可能である(
図10F参照)。
【0186】
生物学的流体(例えば全血、血漿、または血清)からの、免疫グロブリン(例えばIgG)の精製および富化に続いて、免疫グロブリンはさらに処理し、即座に使用し、または貯蔵することができる。例えば、免疫グロブリンは-20℃または-70℃で冷凍することができる。治療的に使用する前に冷凍された免疫グロブリンを解凍する場合、冷凍された免疫グロブリンは急速解凍(例えば25℃または37℃または45℃、または60℃の湯浴中)可能であり、またはゆっくりと解凍(例えば氷上で、間欠的に振盪させながら)することができる。IgGはまた凍結乾燥可能であり、凍結乾燥状態で貯蔵することができる。
【実施例】
【0187】
以下の実施例は、いかなる意味でも本発明を限定するものではない。
【0188】
実施例1
【0189】
230~250mlのMabCapture A樹脂ビーズ(すなわちライフテクノロジー社(米国カリフォルニア州カールスバッド)から入手したプロテインA親和性リガンドMabCapture A)をpH7.4の無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁し、洗浄した。PBSに懸濁したビーズは次いで、無菌条件下において、
図9Aから
図9Cに示すようなカラムに装填した。過剰のPBSはカラムから流出させ、残った樹脂はビーズおよびカラムの表面張力に基づいて残存している残余のPBSを通じて湿潤させた。カラムは高さ12センチメートルで直径が5cmであり、カラム内の樹脂の容積は11.7cm、カラムの半径方向の湾曲部分の各々にあるベッドは1cmであった。カラムの入口ポートおよび出口ポートには、孔径20~30ミクロンのフリス(またはフィルター)が装着されていた。
【0190】
このカラムはPCS(R)2装置に装着し、ボランティアドナーを装置につないで、血漿の供血を開始する。ドナーから得た血漿は約50ml/分の流量のような約20ml/分から約120ml/分の間の流量において、PCS(R)2装置の機構を通じ、MabCaptureAビーズが装填されたカラム内へと給送される。約800~900mlの血漿がMabCapture A ビーズ装填カラムを通して流される。幾つかの実施形態においては、IgGが欠乏された(または低減された量のIgGを有する)血漿は、ドナーの細胞を含有するボウルへと戻るよう経路付けられる。これらの細胞およびIgG低減(場合によりIgG欠乏と呼ばれる)血漿は混合され、PCS(R)2装置によってボランティアドナーへと戻される。
【0191】
血漿フェレーシス手順に続いて、IgGが付着されたMabCapture Aビーズ装填カラムは、無菌条件下おいてPCS(R)2装置から取り外される。
【0192】
pH3.0の100mMクエン酸ナトリウムの溶出液が使用される。250~500mlの溶出液が、IgGが付着されたMabCapture Aビーズ装填カラムを通過される。幾つかの実施形態において、カラムを通る溶出液の流れは、重力によって設定される流量で流れる。幾つかの実施形態において、カラムを通る溶出液の流れは、この目的のために改造されたPCS(R)2装置のような装置によって設定される流量で流れる。かくして幾つかの実施形態において、付着(すなわちカラムに対する血漿の付加)および溶出(すなわちカラムに対する溶出液の付加)は完全に自動化される。幾つかの実施形態において、カラムを通る溶出液の流量は50ml/分から150ml/分である。
【0193】
溶出の完了の後、10%の中和バッファが、IgGを含有する溶出液へと添加される。例えば、IgGを含有している500mlの溶出液がカラムから得られる場合、50mlの中和バッファ(例えばpH8.8の1Mトリス)が溶出液に添加され、その結果、pHが6.0から7.0である550mlの容積のIgG含有溶液が得られる。
【0194】
幾つかの実施形態においては、中和工程もまた完全に自動化される(例えばPCS(R)2装置のようなアフェレーシス装置の改造によって)。
【0195】
IgG含有溶液は次いで、即時に使用可能であり(例えば、それを必要としている患者に治療的に投与される)またはさらに処理および/または貯蔵(例えば冷凍)を行うことができる。
【0196】
この実施例1の結果が示すところによれば、ドナー患者によってチェアサイドで使用されるPCS(R)2血漿フェレーシス装置からの1000mLの血漿中のIgGの90~95%を、230~250mLのプロテインA被覆ビーズ(すなわち50ミクロンのポリスチレンビーズ上のMabCapture A樹脂)を含有するカラム中に捕捉可能である。捕捉された免疫グロブリンの90~90%は、溶出液(次いで中和される)中へと回収することができる。回収された(すなわち溶出された)免疫グロブリンは、少なくとも90%がIgGである。
【0197】
実施例2
【0198】
費用を低減し、効率と安全性を向上させるために、
図9Aから
図9Cに示されたカラムの小型版にMabCapture A樹脂を装填した。このカラムは高さが3cmで直径が5cmであり、使用した樹脂の量は50mlである。樹脂中のビーズは、実施例1で説明したようにして、pH7.4のPBSで洗浄して再懸濁し、次いでカラムに装填した。
【0199】
幾つかの実施形態においては、カラムはPCS(R)2装置に装着し、ボランティアドナーをPCS(R)2装置につないで血漿フェレーシスを開始する。100mlの血漿が(例えば、標準的な蠕動ポンプまたはPCS(R)2装置に取り付けられているポンプを用いて給送され)カラムを通して流される。100mlの血漿がカラムを通って流されたなら、ドナー血漿からカラムの入口ポートおよび出口ポートへのチューブが閉じられ、ドナーからの血漿はPCS(R)2装置の血漿収集ボウル内に収集される。「取り外した」カラムは実際にはPCS(R)2装置から物理的に取り出される訳ではない;むしろ、カラムは(例えばクランプ切り換え装置を介して)流体の第2のリザーバに接続され(例えば溶出液のリザーバ)、25mlの溶出液がカラムを通して給送される。2.5mlの中和バッファが、カラムから出る溶出液に添加される。溶出液含有リザーバおよび中和バッファ含有リザーバへのチューブは閉じられ、ドナーから血漿ボウルへのチューブは開かれる。別の100mlの血漿がカラムを通して給送される。
【0200】
このサイクルは8~10回繰り返されて、ドナーから得られた800~1000mlの血漿が収容される。
【0201】
実施例3
【0202】
初期の検討では、ヒトの免疫グロブリンG(IgG)の約90~95%を1000mLの血漿から効率的に捕捉することができ、90%を超える純度でもって、捕捉したIgGを90~95%の効率で放出できることが見出された。こうした初期の、チェアサイドでのIgG取り出しについての検討は、アキシアルカラム中約230~250mLのプロテインA親和性リガンド(樹脂50ミクロンのポリスチレンビーズ上のMabCapture A)で行われた。しかしながら、アキシアルカラムの使用は、1000mmHgを遙かに超える、著しい背圧の増大という結果を招いた。アキシアルカラムでのこの高い背圧は、PCS(R)2血漿フェレーシスシステム(米国マサチューセッツ州ブレイントリーのヘモネティクス社販売)における最大許容限度である100mmHgより高い。従って、血漿からIgGを取り出す血漿フェレーシス中に背圧を100mmHgより十分に低く保つことを許容する、代替的なカラムが評価された。この実施例3では、ラジアルフローカラムの性能が評価された。
【0203】
ここでの検討のために、水および高粘度のグリセリン溶液での評価が最初に行われた。簡単に言うと、水および粘度の異なるグリセリン溶液(2センチポアズ、3センチポアズ、および4センチポアズ(cP))が、アキシアルカラムまたはラジアルフローカラムのいずれかを通して、150mL/分の流量で流された。各々のカラムには、50ミクロンのプロテインA親和性樹脂(MabCapture A、米国カリフォルニア州カールスバッドのライフテクノロジー社)が200mL収容されていた。アキシアルカラムのベッド高は10.5cmであり、これはラジアルカラムの3.0cmと対照される。
【0204】
アキシアルカラムおよびラジアルカラムの両者について、ベッド高は樹脂のベッド高を指しており、カラムの全高ではないことに留意されたい。例えば、アキシアルカラムの物理的な全高は、各種のアダプター(チューブ接続用のルアーロック、入口ポートおよび出口ポート、その他)にもよるが12cmまたは20cmであり、これに対して樹脂が占有する空間は5cm(幅)×10.5cm(樹脂のベッド高)である。関連する唯一の寸法は、ベッド高およびカラムの幅または直径であり、これらは次いで、樹脂が占める容積を計算するために使用される。従って、樹脂の占有容積=πr2hであり、ここでrは半径、hは高さである。同様にラジアルカラムについて、12.2cmの幅のカラムにおける樹脂の高さは3cmである。ラジアルカラムの物理的な全高は、カラムに装着された各種のアダプターにもよるが、12cm程度でありうる。
【0205】
両方のカラムにおける入口圧力を、水銀圧力計で測定した。
【0206】
別の実験においては、ラジアルフローカラムの設計を変更して、ベッド高を3cmに代えて1cmとし、ラジアルカラムに200mLではなく245mLの樹脂を充填した。
【0207】
その結果、ラジアルカラムとアキシアルフローカラムの間では背圧の相違が示された。
図12は、アキシアルフローカラムと、3cmのベッドのラジアルフローカラムの間での背圧の比較を示している。
図12に表されたデータは、アキシアルカラムとラジアルフローカラムの間における背圧の著しい相違を示している。水および3cmのベッド高のラジアルフローカラムを用いると、背圧(
図12では「圧力降下」について「pd」と示されている)は水について、アキシアルフローについての1000mmHgからラジアルフローカラムにおける約67mmHghへと減少した。示された粘度の水/グリセリン混合物についてのラジアルカラム中での圧力もまた示されており、圧力は粘度が増大するにつれて増大している(
図12参照)。4cPの粘度であってさえも、ラジアルカラム中の圧力は依然として僅かに325mmgHgであったことに留意されたい。
【0208】
図13は、アキシアルフローカラム(左の列)、ベッドの直径が3cmのラジアルフローカラム(次の4つの列)、およびベッドの直径が1cmのラジアルフローカラム(右端の3つの列)で生成された背圧の比較を示している。
図13が示しているように、ラジアルフローカラムのベッド高を1cmに低減させると、2cPの水/グリセリン溶液について背圧はさらに40mmH未満へとかなり低下した。
【0209】
図13の結果は、ベッド高が3cmで樹脂が200mLのラジアルフローカラムが、95%を上回る効率でIgGの捕捉および回復を可能にするのに非常に有効であり、それがサイクル当たりの血漿が1000mlの場合に5サイクルを通じて維持されることを示している。5つのサイクルの全てについて同じカラムが使用され(サイクルの間にクリーニングを行って);かくして同じカラムを使用して5つのドナーサンプルが処理された。各々のサイクルにおいて1000mLの血漿が処理され、結果的に合計で5000mLの血漿が処理された。
【0210】
ヒトの血漿についてラジアルフローカラムの評価を行うために、クエン酸リン酸デキストロース(CPD)またはクエン酸リン酸2デキストロース(CP2D)抗凝固剤中へと、血漿サンプルを健康な血液ドナーボランティアから得た。各々の試験について、合計で1000mLを収集した。試験の日に、血漿を1000mLの血液移送バッグ中へと移した。血漿バッグ上にある入口チューブを、PCS2血漿フェレーシス装置の動作を模した試験ベッド上のポンプに接続した。試験ベッド上の輸注ポンプを介して、ベッド高が3cmで200mLのMabCaptureプロテインA親和性樹脂を含有するラジアルカラムを、血漿バッグの入口ポートへと接続した。血漿はラジアルカラムを通して、120mL/分の流量で流した。1000mLの血漿全部をカラムを通過させて流すまでに、25の(25mL)画分を収集した。この初期濾過工程の後に、カラムはpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)200mLで洗い流し、流出物は廃棄した。捕捉したIgGを回収するために、ラジアルカラムをpHが2.9~3.0の溶液である100mMのクエン酸ナトリウム1000mLを用いて120mL/分の流量で潅流した。同様にして、1000mLの溶出液全部をカラムを通過させて流すまでに、25mLの画分を収集した。この実験は、同じラジアルフローカラムを使用して5回繰り返した。
【0211】
図14に示すように、200mLの樹脂をベッド高3cmで備えたラジアルフローカラムはIgGの捕捉および回収を可能にするのに非常に有効であり、95%を上回る効率が5サイクル全体にわたって維持された。カラムに付着させる前に各々の試験サンプル中に存在するIgGの量を表1に示す。
【0212】
【0213】
図14の赤色の丸によって示されているように、カラムに注入された血漿中に存在するIgGは全て、カラム中のMabCapture Aリガンドに特異的に結合(非共有結合)した。
図14の緑色の丸が示すように、カラムに結合した全てのIgGは次いで、100mMのクエン酸ナトリウム溶出液1000mLでIgGをカラムから溶出させることによって回収された。
図14および表1における試験サイクルの各々において1000mLの血漿が処理され、結果的に合計で5000mLの血漿が処理されたことに留意すべきである。
【0214】
この実施例3は、アキシアルカラムにおいて処理中に生成された背圧が1000mmHgを超えることを示している。この背圧はラジアルフローカラムでは、100mmHg未満へと著しく低減された(
図12~
図13参照)。ラジアルフローカラムは、IgGの捕捉および捕捉されたIgGの放出において、95%を超える効率を有していた(
図14および表1参照)。
【0215】
この実施例3では、IgG精製のための全ての工程(すなわち、IgGと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体に対する生物学的流体の接触、リガンドからの結合したIgGの溶出、および回収されたIgGを含有する溶出液の中和による精製IgGを含有する溶液の獲得)は、自動化された仕方で実行可能である(すなわち機械によって実行される)ことに留意すべきである。回収されたIgGは次いで、即時に使用可能であり(例えばそれを必要とする患者に対して治療的に投与される)またはさらに処理および/または貯蔵(例えば冷凍)可能である。
【0216】
実施例4
【0217】
この実施例4は、より小型のカラムの効率を判定するために行われた検討について記載する。この実施例4において使用されたカラムはラジアルフローカラムであることに留意されたい。
【0218】
詳細には、プロテインA親和性リガンドであるMabCapture Aをライフテクノロジー社(米国カリフォルニア州カールスバッド)から入手した。50mLのMabCapture A樹脂をGE50/20カラム(米国ペンシルベニア州ピッツバーグのGEヘルスケアライフサイエンス社から市販品を購入)に2.5cmのベッド高および5cmの内径で移すことによってカラムを調製した。血漿サンプルを健康な血液ドナーボランティアから、標準量のクエン酸リン酸デキストロース(CPD)抗凝固剤中へと得た。合計で1000mLの血漿を1000mLの血液移送バッグ中に移送し、
図15に概略的に描かれているような構成に示された血液適合性のあるチューブを介してポンプに接続した。図示のように、
図15は概略的に、6つのバッグまたはボウルと、カラム(「疑似使い捨てカラム」と表示)と、サイクル当たり200mlの容積とを示している。
図15において、工程は次のように行われる。
【0219】
簡単に言えば、工程1において、クランプ切り換え装置が開かれて血漿が「疑似使い捨てカラム」を通して120mL/分の流量で約1分40秒間流されて、200mLの血漿がカラムを通って無IgG血漿収集バッグ(バッグ4)に入るようにされ、その後クランプ切り換え装置は閉じられた。この流量は、50ml/分から約200ml/分の間であることができることに留意すべきである。工程1の間、PBSおよびクエン酸ナトリウム用のバルブは閉じたままである。工程2では、クランプ切り換え装置は開位置に切り換えられて、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)100mLがカラムを通って120mL/分の流量で、バッグ3からバッグ6(「PBS流出」バッグ)へと流された(合計時間は50秒)。50秒後、工程3において、クランプ切り換え装置は開位置に設定されて、100mLの100mMクエン酸ナトリウム(pH2.8)がカラムを通して120mL/分の流量で流され、捕捉されたIgGがバッグ5(「1Mトリス緩衝液中の回収IgG」バッグ)へと放出された。幾つかの実施形態において、バッグ5は既にpH8.8の1Mトリスを含んでおり、その中へと溶出液中の捕捉されたIgGが添加されることに留意されたい。50秒後、切り換えクランプは開位置に戻るよう設定されて血漿が流れるようにされ、そして工程1~3は4回繰り返されてサイクル合計で5回とされ、合計で1000mLの血漿が処理されるようにされた。
【0220】
回収されたIgGを
図15でバッグ5内へと最初に放出させると、8.0よりも高いpHを有する溶液となることに留意すべきである。しかしながら5回目のサイクルの後には、最終溶液のpHは約7.0と8.0の間になる。しかしながら、各々のサイクルは僅か数分を要するだけであるから、最初のサイクルにおける高いpHは、回収されたIgGに悪影響を及ぼすことはない。幾つかの実施形態においては、5回のサイクル全てが完了してバッグ5内にすべての捕捉IgGが収集された後に、pH8.8の1Mトリス50mLが添加される。
【0221】
図15に示された構成を使用して得られた結果が
図16に要約されている。
図16に示すように、血漿はIgGを初期濃度7.7mg/mLで有しており、従って200mL中のIgGの合計量は1.54g(200×7.7/1000)であった。無IgG血漿中の残留量は分析の検出限界未満であり、従って最初のサイクル中に捕捉されたIgGの量は実際上、分析の検出限界にもよるが、96~100%であった。従って、100%の取り出しについては、血漿中のIgGの残留量が0.171mg/mL未満という分析の検出限界未満であったことから、IgGの実際の濃度は分析の検出限界未満であり、最初のサイクル後の血漿中におけるIgGの残留量は0であったと推定した。
【0222】
かくして、血漿中のIgGの95~100%がカラムによって捕捉されたのであるが、73.7%のみが回収された。その計算を以下に示す。
200mLの血漿中のIgGの初期量 = 1.54g
100mLの回収溶液中のIgGの濃度 = 1.1
回収されたIgGの百分率 = (1.135/1.54)×100)
回収されたIgGの百分率 = 73.7%
【0223】
同様のIgG捕捉効率が、続いて処理された200mLの血漿アリコートにおいても得られた(データは示されていない)。カラムをpH2.8の100mMクエン酸ナトリウム流出液100mLで処理すると、捕捉されたIgGの約76.6%の回収という結果になった。免疫グロブリンアイソタイプは、回収された溶液中における著しいIgGの増加を示し、ヒトの血漿中における約73.7%という開始値と比較して、IgGは91%を超えていた(
図5参照)。
【0224】
この工程を5回繰り返した後、「疑似使い捨て」カラムは廃棄された。こうして、ドナー1人当たり1つの「疑似使い捨て」カラムが使用された。
【0225】
上述したように、各々のサイクルに要する時間は僅か数分である。従って、
図15に概略的に示された構成が血漿フェレーシス装置に取り込まれる場合、血漿フェレーシス手順の時間が相当に長くなることはない。さらに留意すべきことに、この実施例4においては、IgGを生成するための全ての工程(すなわち、IgGと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体に対する生物学的流体の接触、リガンドからの結合したIgGの溶出、および回収されたIgGを含有する溶出液の中和による精製IgGを含有する溶液の獲得)は、自動化された仕方で実行可能である(すなわち機械によって実行される)。回収されたIgGは次いで、即時に使用可能であり(例えばそれを必要とする患者に対して治療的に投与される)またはさらに処理および/または貯蔵(例えば冷凍)可能である。
【0226】
実施例5
【0227】
体重150ポンドの25歳の健康な男性ボランティア(患者と称する場合がある)が、血液の幾らかを供与することに合意した。供与される血液の典型的な量は1パイント(0.473リットル)である。この健康なドナーは、本願に記載の改造を行った血漿アフェレーシス装置を使用して、彼の全血を供与することに同意した。この処置には典型的に1時間から2時間を要する。
【0228】
ボランティア患者の左腕の静脈に、16ゲージの針を穿刺する。ボランティアの血液はまず、針に取着されたチューブ内の適切な量な抗凝固剤溶液と混合される。この段階の血液は抗凝固剤と混合されているが、血液からはまだ成分が取り出されていないことから、まだ全血であることに留意すべきである。抗凝固処理した全血は次いで収集ボウル内に引き入れられ、遠心力によって各種の成分へと分離される。収集ボウルがその収集容積に達した時点で、血漿成分が収集ボウルを出て、血漿収集容器内に入れられる。血漿収集容器内のこの血漿から、免疫グロブリンが抽出される。
【0229】
この実施例では、ドナーボランティアの血液から採取されない成分(例えば赤血球、および血小板を含む白血球)は、等張食塩水(例えば0.9%w/vのNaCl溶液)と混合され、ドナーボランティアに戻される。
【0230】
この実施例5では、血漿収集容器はバッグである。バッグを準備するため(バッグを血漿フェレーシス装置に取り付ける前に)、バッグには入口ポートに20~30ミクロンの孔径を有するフリス(またはフィルター)を装着する。バッグの内側表面は、20~30ミクロンの孔径を有するメッシュ膜で被覆する。230~250mlのMabCapture Aビーズをバッグに入れる。バッグは次いで少なくとも1度、pH7.4の無菌PBSで洗い流す。
【0231】
ビーズを収容しているバッグを血漿フェレーシス装置に取り付け、そしてドナーからの血漿をバッグに追加する。
【0232】
幾つかの実施形態においては、血漿が充填されたバッグは血漿フェレーシス装置から取り外され、室温でミキサー上に置かれて、バッグの内容物が混合される(例えばバッグを回転または振盪することにより)。バッグ内のIgGがMabCaptureビーズに非共有結合することができる十分な長さの時間の後に(例えば15分間)、IgG欠乏(または低減)血漿はバッグから注ぎ出され、さらなる処理のために貯蔵されるか、または廃棄される。IgG欠乏血漿はまた、ドナーに戻すことができる。250mlの溶出液(例えば100mMのクエン酸ナトリウム、pH3.0)がバッグに添加され、そしてバッグは再度ミキサー上に置かれる。約15分の後、pH8.8の1Mトリス25mlがバッグに添加され、バッグの内容物全部が将来の使用(例えばさらなる処理、貯蔵、または必要とする患者に対する治療的な即時の使用)のために収集される。
【0233】
幾つかの実施形態においては、血漿が充填されたバッグは、バッグがまだ血漿フェレーシス装置に取り付けられている間に回転または振盪される。幾つかの実施形態においては、バッグは血漿で容積一杯まで充填された後に混合される。例えば混合は、バッグ内へのチューブを閉塞した後に開始できる(例えばクランプ切り替え装置を使用して閉鎖位置として)。幾つかの実施形態においては、バッグは血漿がバッグに添加されている間に回転または振盪される。幾つかの実施形態においては、バッグは連続的に充填されそして空にされ、血漿の一部はバッグが回転または振盪ている間に処理される。
【0234】
最終的に、血漿の全て(例えば1000ml)がバッグを通って流されて、バッグ内でリガンドに共有結合した固体支持体に接触された後、まだアフェレーシス装置に取り付けられている間に(すなわち「オンライン」)またはバッグが装置から取り外された後に(すなわちオフライン)、バッグからはIgG低減血漿が放出される。もちろん、固体支持体(例えばビーズ)は表面張力によって、依然として濡れたままである。溶出液が次いでバッグに添加される。溶出液(脱離したIgGを含有している)はオンラインまたはオフラインで収集することができ、そして中和バッファが添加される。バッグがオンラインである場合は、接触工程、溶出工程、および/または中和工程は全て、自動的に(例えばアフェレーシス装置によって)実行可能である。
【0235】
実施例6
【0236】
血液の引き出しによって全血(直接的な採血による)の供与が得られた後に、血液の種々の成分である多血小板血漿(血小板フェレーシス手順による)および血漿(血漿フェレーシス手順による)が4℃において、処理設備へと移送される。これらの製剤は全て、容器内にあってよいことに留意されたい(例えばバッグ)。これらの製剤は全て、クエン酸ナトリウムのような抗凝固剤を含有していてよいことに留意されたい。
【0237】
血液処理設備では、血液製剤が処理される。全血1マイクロリットル当たりには、およそ150,000から450,000の血小板がある。多血小板血漿は、全血の3倍から5倍の間の血小板を含有していてよい。本願に記載の方法および装置を使用して、IgGのような免疫グロブリンを多血小板血漿から取り出すことができる。幾つかの実施形態において、IgGは1人のドナーの多血小板血漿から抽出される。複数のドナーからの多血小板血漿はプールすることができ、プールした多血小板血漿からIgGを取り出すことが可能であることに留意されたい。
図17に示すように、IgGの取り出しに続き、そしてさらなる処理に続いて、2つの製剤、すなわち精製IgG製剤およびIgG欠乏多血小板血漿製剤が得られる。IgG欠乏多血小板血漿製剤は、例えば変形性関節症の治療、慢性足裏筋膜炎の治療、腱炎の治療、および形成外科などを含めて、通常の(すなわちIgG含有)多血小板血漿製剤と同様にして使用してよい。
【0238】
また血液処理設備において、血漿フェレーシスから得られた、または血液から血漿を分離するように全血を処理することにより得られた血漿をさらに処理して、IgGのような免疫グロブリンを抽出することができる。IgGは1人のドナーの血漿から、または複数のドナーからプールされた血漿から抽出することができる。
図18に示すように、IgGの取り出しに続いて、そしてさらなる処理に続いて、2つの製剤、すなわち精製IgG製剤およびIgG欠乏血漿製剤が得られる。IgG欠乏血漿製剤は、限定するものではないが、アルブミンのような血漿タンパク質源および凝固因子(例えばファクタIX)などを含めて、通常の(すなわちIgG含有)血漿製剤と同様に使用してよい。
【0239】
またやはり血液処理設備において、全血(例えば加クエン酸全血)を処理することができる。1人のドナーからの全血を処理することができ、または複数のドナーからの全血(例えばABO抗原およびRh因子が一致する)をプールして処理することができる。この処理を
図19に示している。
図19に示すように、全血は4つの最終製剤へと分離される-赤血球、IgG欠乏血漿(またはアルブミンまたはフィブリノーゲンにような血漿製剤)、血小板、およびIgGである。
図19に概略的に示したプロセスにおいては、有核白血球は単純に廃棄される。
図19において、多血小板IgG欠乏血漿が所望の製剤であるとすると、血小板取り出し工程を省略し、そして多血小板IgG欠乏血漿をさらに処理して(例えば濾過またはバクテリア存在検出)、多血小板IgG欠乏血漿製剤を製造可能であることに留意すべきである。
【0240】
図17から
図19の全部について、生物学的流体から免疫グロブリン(IgGのような)を取り出すための方法および装置(例えば容器)は、その生物学的流体が細胞を含有するか否かに応じて変更されてよいことが理解されよう。これと同じ考え方は、限定するものではないが、
図6A、
図6B、
図6C、
図7、および
図11に示された概略的なプロセスを含めて、本願に記載の全てのプロセスについて適用される。
【0241】
例えば、
図17(および
図6B)に描かれた概略図において、IgGが抽出される生物学的流体は血小板を含有している。血小板は直径が僅か約2μmから約3μmであるから、生物学的流体からIgGを取り出すために使用される、IgGと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器は、幾つかの実施形態において、IgGが抽出される(例えばリガンドに特異的に非共有結合によって結合することにより)間に、血小板が容器を通って容易に流れるように構成される。例えば、容器がバッグまたはカラムである場合、容器の入口および出口には、3μmよりも大きな孔径(例えば5μmの孔径または10μmの孔径のような、少なくとも3.5μmの孔径)を有するフィルターを装着してよい。同様に、固体支持体がバッグまたはカラム内のビーズである場合には、ビーズ同士の間隙が十分に大きく直径3μmの血小板が間隙を通って自由に流れることができるように、ビーズは十分に大きな直径(例えば5μmまたは10μm、または25μm、または50μm、または100μmのような)を有してよい。
【0242】
IgGが抽出される生物学的流体が赤血球および有核白血球(リンパ球または単球のような)を含有している場合は、免疫グロブリン(例えばIgG)を生物学的流体から抽出するための方法および装置は、流通するこれらの細胞を収容するよう同様に構成される。単球は最大の血液細胞であり、直径は約15μmから約30μmの範囲にありうる。従って、免疫グロブリンを全血から直接に取り出すための本願記載の方法において(例えば
図7および
図19)、生物学的流体からIgGを取り出すために使用される、IgGと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器は、幾つかの実施形態において、IgGが抽出される(例えばリガンドに特異的に非共有結合によって結合することにより)間に、単球(従って全ての血球)が容器を通って容易に流れるように構成される。例えば、容器がバッグまたはカラムである場合、容器の入口および出口には、30μmよりも大きな孔径(例えば50μmの孔径または100μmの孔径のような、少なくとも35μmの孔径)を有するフィルターを装着してよい。同様に、固体支持体がバッグまたはカラム内のビーズである場合には、ビーズ同士の間隙が十分に大きく直径30μmの単球が間隙を通って自由に流れることができるように、ビーズは十分に大きな直径(例えば50μmまたは100μm、または250μmのような)を有してよい。
【0243】
容器および方法は、IgGが抽出される生物学的流体中にある細胞の種類に応じて修正可能であることに留意すべきである。リンパ球の直径は、約7μmから約20μmにわたり変動しうる。好酸球および好塩基球はそれぞれ、約10μmから約12μmの範囲の直径および約12μmから約15μmの範囲の直径である。赤血球の直径は、赤血球の成熟度に応じて変動する。成熟赤血球は核を持たず、典型的には約6μmから約8μmの直径であるが、これに対して成熟していない有核赤血球は約10μmから約15μmの間の直径を有しうる。かくして、容器およびリガンドに共有結合した固体支持体は、適宜修正可能である。
【0244】
例えば、本件開示は全ての有核血球(例えば非血小板白血球および成熟していない赤血球)が生物学的流体から取り出されるプロセスを考慮している。有核細胞は非有核細胞よりも高い質量を有しているから、これは遠心分離、または単純に重力によって実行することができる。かくして、非有核血小板および成熟血球のみが生物学的流体中にあり、成熟血球が最大である。本願に記載の方法および装置は、免疫グロブリン(この免疫グロブリンは後にリガンドから溶出可能である)を生物学的流体から抽出することにより、そして成熟赤血球を生物学的流体から抽出することにより、2つの役割を果たしてよい。例えば、成熟赤血球は約6~8μmの間の直径であるのに対して血小板は約2~3μmの間の直径であるから、IgGを生物学的流体から取り出すための、IgGと特異的に結合するリガンドと共有結合した固体支持体を含む容器は、幾つかの実施形態において、IgGが抽出されている間(例えばリガンドに特異的に非共有結合することにより)に、血小板は容器を通って容易に流れることができるが、成熟赤血球(または任意の他の有核赤血球または白血球)は流通できないように構成される。例えば、容器がバッグまたはカラムである場合、容器の入口および出口には、3μmよりも大きく6μmよりも小さな孔径(例えば約3.5μmから約5.5μmの孔径)を有するフィルターを装着してよい。同様に、固体支持体がバッグまたはカラム内のビーズである場合には、ビーズ同士の間隙が十分に大きく直径3μmの血小板は間隙を通って自由に流れることが3μmよりも大きな直径の細胞は捕捉されるように、ビーズは十分に大きな直径(例えば5μmのような)を有してよい。もちろん、捕捉された細胞はカラムを閉塞させるから、幾つかの実施形態において、ビーズはより大きな直径を有するものであり(例えば50μm)、3.0μmよりも大きな直径の細胞の捕捉は容器の入口において行うことができる(例えば約3μmから約6μmの間の孔径のフィルターを通じて)。
【0245】
本願に記載した異なるプロセスの種々の実施形態において、選択した免疫グロブリン(例えばIgGアイソタイプ)の初期濃度は、Igが直接的に抽出される生物学的流体中で決定することができる(例えば
図18に示された実施形態では血漿、また
図19に示された実施形態では全血)。幾つかの実施形態において、選択した免疫グロブリン(例えばIgGアイソタイプ)の初期濃度は、Igが間接的に抽出される生物学的流体中で決定することができる(例えば
図6Aから
図6Cに示された実施形態では全血)。
【0246】
以上に記載した発明の実施形態は、単に例示的であることを意図したものである;当業者には、数多くの変形および修正が自明である。そうした変形および修正は全て、添付の請求項のいずれかに規定された本発明の範囲内に属することが意図されている。