(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】熱潜在性に触媒された二成分系
(51)【国際特許分類】
C08G 18/24 20060101AFI20221024BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C08G18/24
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2018554777
(86)(22)【出願日】2017-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2017059111
(87)【国際公開番号】W WO2017182429
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-04-15
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】グラール,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】クリッパート,ウーベ
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ジークムント,スウェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイカート,ヤン
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-509473(JP,A)
【文献】特表2011-519988(JP,A)
【文献】特開2006-206781(JP,A)
【文献】特表2005-501147(JP,A)
【文献】特表平08-502551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0252138(US,A1)
【文献】特表2009-506146(JP,A)
【文献】特表2009-528855(JP,A)
【文献】特表2015-531791(JP,A)
【文献】特開2010-180348(JP,A)
【文献】特開2008-007778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのNCO反応性化合物を含む成分A)及び少なくとも1つのポリイソシアネートを含む成分B)を含有する二成分系であって、前記成分A)が、前記成分A)の全重量に基づいて、≧400~≦9500ppmwの水を含有し、前記成分A)及び/又は前記成分B)が、少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有し、ここで、前記熱潜在性無機スズ含有触媒
が、式I、II、若しくはIIIの環式スズ化合物又はそれらの混合物を含み:
【化1】
【化2】
(ここで、n>1であり、式IIは環状オリゴマーを表す)、
【化3】
(ここで、n>1であり、式IIIは直鎖オリゴマーを表す)、
式中:
Dは、-O-、-S-、又は-N(R1)-を表し、
ここで、R1は、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式基、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族基を表すか、
又は水素若しくは基
【化4】
であるか、
又はR1及びL3が一緒になって-Z-L5-を表し;
D*は、-O-又は-S-を表し;
X、Y、及びZは、式-C(R2)(R3)-、-C(R2)(R3)-C(R4)(R5)-、若しくは-C(R2)(R3)-C(R4)(R5)-C(R6)(R7)-を有するアルキレン基、又は式
【化5】
若しくは
【化6】
を有するオルト-アリーレン基から選択される同一若しくは異なる基を表し、
ここで、R2~R11は、独立して、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式基、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族基を表すか、又は水素であり;
L1、L2、及びL5は、独立して、-O-、-S-、-OC(=O)-、-OC(=S)、-SC(=O)-、-SC(=S)-、-OS(=O)
2
O-、-OS(=O)
2
-、又は-N(R12)-を表し、
ここで、R12は、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式基、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族基を表すか、又は水素であり;
L3及びL4は、独立して、-OH、-SH、-OR13、-Cl、-OC(=O)R14、-SR15、-OC(=S)R16、-OS(=O)
2
OR17、-OS(=O)
2
R18、又は-NR19R20を表すか、又はL3及びL4は一緒になって-L1-X-D-Y-L2-を表し、
ここで、R13~R20は、独立して、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式基、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族基を表すか、又は水素であることを特徴とする、二成分系。
【請求項2】
前記成分A)が、前記成分A)の全重量に基づいて、≧501~≦6500ppmwの水を含有することを特徴とする、請求項1に記載の二成分系。
【請求項3】
前記NCO反応性化合物が、ポリヒドロキシル化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二成分系。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の二成分系。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー及び/又はペンタメチレンジイソシアネートトリマーであることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の二成分系。
【請求項6】
a1)基材を提供する工程と;
b1)請求項1~
5のいずれかに記載の少なくとも1つの二成分系を適用する工程と;
c1)加熱によりコーティングを硬化させる工程と
を含む、基材上にコーティングを製造するための方法。
【請求項7】
前記基材が、プラスチック及び/又は金属で完全に又は部分的に作製された表面を有することを特徴とする、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分系と、基材上、特に自動車ボディ又は自動車部品上にコーティングを製造するための方法と、この方法により得られるコーティングとに関する。本発明はさらに、二成分系における成分A)又はB)の使用と、コーティングで被覆された基材、特に被覆された自動車ボディ又は自動車部品とに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンコーティングは、長年にわたり既知であり、多くの分野で使用されている。それらは一般に、適用直前に混合することによってヒドロキシル成分(成分A)及びポリイソシアネート成分(成分B)から製造される(二成分技術)。
【0003】
二成分系におけるヒドロキシル成分は、含水量に関して一般的な仕様に従うので、500ppm以下の含水量を有する溶剤は、ポリウレタン化学に好適であると特定される。
【0004】
しかしながら、ヒドロキシル成分の含水量がラッカーの硬化反応の化学量論の変化に影響を及ぼすので、通常、500ppmよりも著しく少ない含水量が求められている。例えば、プラスチックラッカー塗装用の二成分ポリウレタンクリアコートでは、これは次のように現れる:100部のポリオール成分対35部の硬化剤の架橋比。供給された硬化剤の当量(NCO):306g。硬化剤1当量あたり875gのポリオール成分が使用される。1000ppmの含水量では、0.05モルに相当する0.875gの水が存在する。これは、水との反応によりアミンを得るイソシアネート基(NCO基)の理論的損失が5%に相当する。再び同じ量のNCO基が、その後の尿素形成によって理論的に消費され得、したがってNCO基の全損失は、最大10%である。
【0005】
水との反応によるより高いNCO損失では、架橋の化学量論は既に許容できない程度に影響され、その結果、実際にポリオール成分中の含水量は、500ppm未満又は最大でも1000ppm未満に保持される。
【0006】
国際公開第2013/076208号には、ポリアクリレート成分と、組成物の全量に基づいて、1重量%以下の非常に低い含水量を有する架橋剤成分とからなる溶剤含有クリアコートコーティング組成物が開示されている。しかしながら、国際公開第2013/076208号は、含水量をその中で使用される「溶剤含有」という用語の定義として規定しているのみであり、架橋反応について詳述していない。
【0007】
耐光性コーティングは、一般に、芳香族に結合したイソシアネート基を有する生成物と比較して、はるかにゆっくりとヒドロキシル成分と反応する脂肪族ポリイソシアネートをベースとするポリイソシアネート成分を用いる。したがって、反応は、ほとんどの場合触媒されなければならない。さらに、混合物は、反応をさらに促進させるために可能な場合に加熱される。本明細書で有利であると判明した触媒は、有機スズ化合物、特にジブチルスズジラウレート(DBTL)である。これらは、有害な生態学的プロファイルの一般的な欠点を有しており、例えば、既に有機スズ化合物の物質クラスが、殺生物剤として添加されている海洋コーティングから完全に禁止されている。
【0008】
イソシアネート基とNCO反応性基との間の架橋反応はゆっくりと進行し、触媒作用によって著しく迅速に進行するので、室温でさえ、狭い使用窓(ポットライフ)のみが二成分系の即時配合された混合物の使用のために残存し、これは触媒の存在によりさらに短縮される。
【0009】
スプレー塗装、特に溶剤含有クリアコートにおけるさらに重要な側面は、硬化後のラッカーの外観である。前記外観は、まだ湿っているラッカーが基材上に膜を形成する流動段階において、及びオーブン中での加熱の結果としてラッカー材料が溶剤を放出する最初の乾燥期間において、実質的に決定され、初期の架橋反応は、連続膜を形成する。
【0010】
2つの成分の混合後に架橋反応をほとんど促進しないが、適用後に前記反応を著しく促進する触媒を開発する試みは不十分ではない。したがって、国際公開第2011/051247号には、とりわけ、ポリイソシアネートを熱潜在性無機スズ含有触媒の存在下でNCO反応性化合物と反応させるコーティング分野において使用するためのポリイソシアネート重付加生成物が記載されている。しかしながら、これでさえ、コーティング組成物に必要とされるように、習慣的に使用される触媒、特にDBTLと比較して、再現可能に延長されたポットライフをすべての二成分系について確実にすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2013/076208号
【文献】国際公開第2011/051247号
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、成分A)と成分B)との混合時に、温度を上昇させることによって適用された二成分系を硬化させるための熱潜在性触媒の触媒活性に悪影響を及ぼすことなく、基材のコーティングのための再現可能に延長されたポットライフを示す二成分系を提供することである。また、二成分系から得られるコーティングの物理的特性、特に硬度の発現が、非熱潜在性触媒で製造され、従来技術から既知であるコーティングと少なくとも等しいことが保証されるべきである。
【0013】
この目的は、本発明に従い、少なくとも1つのNCO-反応性化合物を含む成分A)及び少なくとも1つのポリイソシアネートを含む成分B)を含有する二成分系であって、成分A)が、成分A)の全重量に基づいて、≧400~≦9500ppmwの水を含有し、成分A)及び/又は成分B)が、少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有することを特徴とする二成分系によって解決された。
【0014】
驚くべきことに、成分A)中のある特定の量の水、好ましくはポリウレタン化学のために特定された限度を超える量の水が、硬化に対する後の触媒作用を損うことなく、熱潜在性無機スズ含有触媒を含有する二成分系において著しく延長されたポットライフをもたらすことが分かった。同時に、得られたコーティングの物理的特性、特に硬度の発現は、少なくとも同じレベルで維持される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の好ましい実施形態では、成分A)は、成分A)の全重量に基づいて、≧501~≦6500ppmw、好ましくは≧700~≦5000ppmw、特に好ましくは≧1001~≦4000ppmw、非常に特に好ましくは≧1400~≦2400ppmwの水を含有する。これは、ポットライフがさらに延長され、熱潜在性触媒の熱潜在性作用がさらに増幅されるという利点を有する。さらに、製造されたコーティングのラッカーの外観がさらに改善され、二成分系の適用がさらに容易になる。
【0016】
本発明の文脈において、含水量は、DIN53715(DIN53715は、DIN51777パート1(1973年版)に基づく)に従った容積法としてのカールフィッシャー滴定によって決定される。含水量の測定範囲は、0.01~<99重量%である。
【0017】
本発明の文脈において、ポットライフは、塗料の粘度が2倍になる時間として定義される(DINカップ、4mmでの流出時間が2倍になることによって間接的に決定される)。
【0018】
本発明によれば、二成分系の少なくとも成分A)、好ましくは成分A)のみが上記の量の範囲の水を含有することが提供される。この水は、任意の所望の経路によって成分A)に導入され得、これらの経路は、成分A)中に必要な水の全量を達成するために互いに補完し得る。例えば、成分A)中に存在する化合物、特にNCO反応性化合物を介した生成の結果として、適切な量の水が導入され得る。同様に、成分A)自体に水を添加することも可能である。
【0019】
さらに好ましい実施形態では、成分A)中の水は、別個に添加され、及び/又は生成の結果としてNCO反応性化合物中に存在する。
【0020】
本発明によれば、「含む(comprising)」又は「含有する(containing)」という表現は、好ましくは、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」及び特に好ましくは「からなる(consisting of)」を意味する。
【0021】
本発明によれば、成分A)は、少なくとも1つのNCO反応性(イソシアネート反応性)化合物を含む。NCO反応性化合物は、ポリイソシアネートと反応して重付加化合物、特にポリウレタンを生成することができる化合物を意味すると理解される。本発明の文脈において、ポリイソシアネートは、1分子あたり少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物である。
【0022】
使用されるNCO反応性化合物は、少なくとも1.5の平均OH又はNH官能価を有する当業者に既知の任意の化合物であり得る。これらは、例えば、低分子量ジオール(例えば、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-又は-1,2-ジオール、ブタン-1,4-ジオール)、トリオール(例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン)及びテトラオール(例えば、ペンタエリスリトール)、短鎖ポリアミンであり得るが、ポリヒドロキシル化合物、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリアミン、ポリブタジエンポリオール、ポリアクリレートポリオール及び/又はポリメタクリレートポリオール、並びにそれらのコポリマーもあり得、以下ポリアクリレートポリオールと呼ばれる。
【0023】
さらに好ましい実施形態では、NCO反応性化合物は、ポリヒドロキシル化合物である。
【0024】
ポリヒドロキシル化合物は、好ましくは、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、>500ダルトン、より好ましくは800~100000ダルトン、特に1000~50000ダルトンの質量平均分子量Mwを有する。
【0025】
ポリヒドロキシル化合物は、好ましくは30~400mgKOH/g、特に100~300KOH/gのOH価を有する。ヒドロキシル価(OH価)は、アセチル化において1gの物質が結合した酢酸の量に等しいmg数の水酸化カリウムを指す。決定では、試料を無水酢酸/ピリジンで煮沸し、形成された酸を水酸化カリウム溶液で滴定する(DIN53240-2)。
【0026】
ポリヒドロキシル化合物のDIN EN ISO11357-2によるDSC測定を用いて測定したガラス転移温度は、好ましくは-150~100℃、より好ましくは-120℃~80℃である。
【0027】
ポリエーテルポリオールは、それ自体既知の方法で、塩基触媒下での好適な出発分子のアルコキシル化によって、又は二重金属シアン化物化合物(DMC化合物)を使用して得ることができる。ポリエーテルポリオールの製造に好適な出発分子は、例えば、単純な低分子量ポリオール、水、少なくとも2つのN-H結合を有する有機ポリアミン、又はそのような出発分子の任意の所望の混合物である。
【0028】
アルコキシル化、特にDMC法によるポリエーテルポリオールの製造のための好ましい出発分子は、特に単純なポリオール、例えばエチレングリコール、プロピレン1,3-グリコール及びブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、並びにそのようなポリオールと、例えば以下の実施例で特定されるタイプのジカルボン酸との低分子量ヒドロキシル含有エステル、又はそのような単純ポリオールの低分子量エトキシル化若しくはプロポキシル化生成物、又はそのような修飾若しくは非修飾アルコールの任意の所望の混合物である。アルコキシル化に好適なアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドであり、アルコキシル化に任意の順序で、又は混合物中で使用することができる。
【0029】
好適なポリエステルポリオールは、例えば欧州特許第A-0994117号及び同第A-1273640号に記載されている。ポリエステルポリオールは、低分子量ポリカルボン酸誘導体、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、二量体脂肪酸、三量体脂肪酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、クエン酸、若しくはトリメリット酸と、低分子量ポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,4-ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2,4-トリオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、及びポリブチレングリコールとの重縮合による、又はε-カプロラクトンのような環式カルボン酸エステルの開環重合による既知の方法で製造することができる。さらに、ヒドロキシカルボン酸誘導体、例えば乳酸、桂皮酸、又はω-ヒドロキシカプロン酸を重縮合してポリエステルポリオールを得ることも可能である。しかしながら、オレオケミカル由来のポリエステルポリオールを使用することも可能である。そのようなポリエステルポリオールは、例えば、少なくとも部分的にオレフィン性不飽和の脂肪酸含有脂肪混合物のエポキシ化トリグリセリドを1~12個の炭素原子を有する1つ以上のアルコールと完全に開環させ、続いてアルキルラジカル中に1~12個の炭素原子を有するアルキルエステルポリオールへのトリグリセリド誘導体の部分エステル交換によって製造することができる。
【0030】
ポリウレタンポリオールは、好ましくはポリエステルポリオールプレポリマーと好適なジ又はポリイソシアネートとの反応により製造され、例えば欧州特許第A-1273640号に記載されている。好適なポリシロキサンポリオールは、例えば国際公開第A-01/09260号に記載されており、そこに引用されているポリシロキサンポリオールは、好ましくはさらなるポリヒドロキシル化合物、特により高いガラス転移温度を有するものと組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明に従う非常に特に好ましいポリアクリレートポリオールは、一般にコポリマーであり、それぞれポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定して、好ましくは1000~20000ダルトン、特に5000~10000ダルトンの質量平均分子量Mwを有する。コポリマーのガラス転移温度は、一般に-100℃~100℃、特に-50℃~80℃(DIN EN ISO11357-2に従ったDSC測定により測定)である。
【0032】
ポリアクリレートポリオールは、好ましくは60~250mgKOH/g、特に70~200KOH/gのOH価、及び0~30mgKOH/gの酸価を有する。本明細書での酸価は、それぞれの化合物1gの中和に使用される水酸化カリウムのmg数を指す(DIN EN ISO2114)。
【0033】
好適なポリアクリレートポリオールの製造は、それ自体当業者に既知である。それらは、ヒドロキシル基を有するオレフィン性不飽和モノマーのフリーラジカル重合によって、又はヒドロキシル基を有するオレフィン性不飽和モノマーと他のオレフィン性不飽和モノマー、例えば、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート若しくはラウリルメタクリレート、シクロアルキルアクリレート、及び/又はシクロアルキルメタクリレート、例えば、シクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、又は特にシクロヘキシルアクリレート及び/若しくはシクロヘキシルメタクリレートとのフリーラジカル共重合によって得られてもよい。ヒドロキシル基を有する好適なオレフィン性不飽和モノマーは、特に2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルメタクリレート、特に4-ヒドロキシブチルアクリレート及び/又は4-ヒドロキシブチルメタクリレートである。
【0034】
ポリアクリレートポリオールに使用されるさらなるモノマー単位は、ビニル芳香族炭化水素、例えばビニルトルエン、α-メチルスチレン、又は特にアクリル酸若しくはメタクリル酸のスチレン、アミド、若しくはニトリル、ビニルエステル又はビニルエーテル、特に少量のアクリル酸及び/又はメタクリル酸であり得る。
【0035】
本発明によれば、成分B)は少なくとも1つのポリイソシアネートを含む。
【0036】
本明細書で使用されるポリイソシアネートは、原則として、ポリイソシアネート重付加生成物、特にポリウレタンの製造に好適であることが当業者に既知の任意のポリイソシアネート、特に、1分子あたり少なくとも2つのイソシアネート基を有する、有機脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族ポリイソシアネート、並びにそれらの混合物の群であり得る。この種のポリイソシアネートの例は、ジ又はトリイソシアネート、例えばブタン1,4-ジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート、PDI)、ヘキサン1,6-ジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、4-イソシアナトメチルオクタン1,8-ジイソシアネート(トリイソシアナトノナン、TIN)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、3,5,5-トリメチル-1-イソシアナト-3-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,3-及び1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ナフタレン1,5-ジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン(2,2’-、2,4’-、及び4,4’-MDI又はそれらの混合物)、ジイソシアナトメチルベンゼン(トルイレン2,4-及び2,6-ジイソシアネート、TDI)、並びに2つの異性体の工業グレードの混合物、さらに1,3-及び/又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート(TODI)、パラフェニレン1,4-ジイソシアネート(PPDI)及びシクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、並びに個々に又は上記からの混合物として得られ、ビウレット、ウレトジオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、アロファネート、ウレタン、及びカルボジイミド/ウレトンイミン構造単位を有するより高分子量のオリゴマーである。脂肪族及び脂環式ジイソシアネートをベースとするポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、成分B)中に存在するポリイソシアネートは、脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネートである。
【0038】
本発明の別の好ましい実施形態では、成分B)中に存在するポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はペンタメチレンジイソシアネートの誘導体、特にヘキサメチレンジイソシアネートトリマー及び/又はペンタメチレンジイソシアネートトリマーである。
【0039】
NCO反応性基に対するイソシアネート基のモル量に基づいて、二成分系におけるポリイソシアネート対NCO反応性化合物の比が0.8:1.0~2.0:1.0であるときが好ましい。1.0:1.0~1.5:1.0の比が特に好ましい1.05:1.0~1.25:1.0の比が非常に特に好ましい。
【0040】
本発明による二成分系の成分A)及び/又は成分B)は、少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有する。この文脈において、「無機」という用語は、熱潜在性無機スズ含有触媒として使用される化合物が直接スズ-炭素結合を有さないことを意味すると理解されるべきである。本発明の文脈において、「熱潜在性無機スズ含有触媒」は、特に、直接スズ-炭素結合を有さず、ウレタン結合を形成するための少なくとも1つのポリイソシアネートと少なくとも1つのNCO反応性化合物との架橋反応を25℃未満、特に30℃未満、好ましくは40℃未満で促進せず、又は顕著に促進せず、しかし、それを60℃超、特に70℃超で顕著に促進する任意の触媒を意味すると理解される。本明細書で「顕著に促進しない」とは、25℃未満、特に30℃未満、好ましくは40℃未満で、コーティング中の熱潜在性触媒の存在が、いずれの場合にも進行する反応の反応速度に顕著に影響を及ぼさないことを意味する。顕著な促進は、60℃超、特に70℃超で、コーティング中の熱潜在性触媒の存在が、いずれの場合にも進行する反応の反応速度に明確な影響を及ぼすことを意味すると理解される。
【0041】
二成分系で使用される熱潜在性無機スズ含有触媒が、式I、II、若しくはIIIの環式スズ化合物又はそれらの混合物を含む場合、本発明に関して特に有利であることが分かっている:
【化1】
【化2】
【0042】
【0043】
(式中、n>1)、
式中:
Dは、-O-、-S-、又は-N(R1)-を表し、
ここで、R1は、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式ラジカル、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカルを表すか、又は水素若しくはラジカル
【化4】
【0044】
であるか、
又はR1及びL3が一緒になって-Z-L5-を表し;
D*は、-O-又は-S-を表し;
X、Y、及びZは、式-C(R2)(R3)-、-C(R2)(R3)-C(R4)(R5)-、若しくは-C(R2)(R3)-C(R4)(R5)C(R6)(R7)-を有するアルキレンラジカル、又は式
【化5】
【0045】
【0046】
を有するオルト-アリーレンラジカルから選択される同一若しくは異なるラジカルを表し、
ここで、R2~R11は、独立して、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカルを表すか、又は水素であり;
L1、L2、及びL5は、独立して、-O-、-S-、-OC(=O)-、-OC(=S)、-SC(=O)-、-SC(=S)-、OS(=O)2O-、-OS(=O)2-、又は-N(R12)-を表し、
ここで、R12は、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式ラジカル、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカルを表すか、又は水素であり;
L3及びL4は、独立して、-OH、-SH、-OR13、-Hal、-OC(=O)R14、-SR15、-OC(=S)R16、-OS(=O)2OR17、-OS(=O)2R18、又は-NR19R20を表すか、又はL3及びL4は一緒になって-L1-X-D-Y-L2-を表し、
ここで、R13~R20は、独立して、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカルを表すか、又は水素である。
【0047】
Dは、好ましくは-N(R1)-である。
【0048】
R1は、好ましくは水素、又は最大20個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール、又はアリールラジカル若しくはラジカル
【化7】
【0049】
であり、
特に、好ましくは水素、又は最大12個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール、又はアリールラジカル若しくはラジカル
【化8】
【0050】
であり、
非常に特に好ましくは水素、又はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル若しくはオクチルラジカルであり、プロピル、ブチル、ヘキシル、及びオクチルは、すべての異性体プロピル、ブチル、ヘキシル、及びオクチルラジカル、又はPh-、CH
3Ph-若しくはラジカル
【化9】
【0051】
である。
【0052】
D*は、好ましくは-O-である。
【0053】
X、Y、及びZは、好ましくは、-C(R2)(R3)、-C(R2)(R3)C(R4)(R5)-又はオルト-アリーレンラジカル
【化10】
【0054】
であり、
R2~R7は、好ましくは、水素、又は最大20個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、特に好ましくは水素、又は最大8個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、非常に特に好ましくは水素、又は最大8個の炭素原子を有するアルキルラジカル、さらにより好ましくは水素又はメチルである。
【0055】
R8~R11は、好ましくは、水素又は最大8個の炭素原子を有するアリールラジカル、特に好ましくは水素又はメチルである。
【0056】
L1、L2、及びL5は、好ましくは、-NR12-、-S-、-SC(=S)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-O-、又は-OC(=O)-、特に好ましくは-O-又は-OC(=O)-である。
【0057】
R12は、好ましくは水素、又は最大20個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、特に好ましくは水素又は最大12個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、非常に特に好ましくは水素、又はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル若しくはオクチルラジカルであり、プロピル、ブチル、ヘキシル及びオクチルは、すべての異性体プロピル、ブチル、ヘキシル、及びオクチルラジカルを表す。
【0058】
L3及びL4は、好ましくは-Hal、-OH、-SH、-OR13、-OC(=O)R14であり、R13及びR14ラジカルは、最大20個の炭素原子、好ましくは最大12個の炭素原子を有する。
【0059】
L3及びL4は、特に好ましくはCl-、MeO-、EtO-、PrO-、BuO-、HexO-、OctO-、PhO-、ホルマート、アセテート、プロパノエート、ブタノエート、ペンタノエート、ヘキサノエート、オクタノエート、ラウレート、ラクテート、又はベンゾエートであり、Pr、Bu、Hex、及びOctは、すべての異性体プロピル、ブチル、ヘキシル、及びオクチルラジカルであり、さらにより好ましくはCl-、MeO-、EtO-、PrO-、BuO-、HexO-、OctO-、PhO-、ヘキサノエート、ラウレート、又はベンゾエートであり、Pr、Bu、Hex、及びOctは、すべての異性体プロピル、ブチル、ヘキシル、及びオクチルラジカルを表す。
【0060】
R15~R20は、好ましくは水素、又は最大20個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、特に好ましくは水素、又は最大12個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、非常に特に好ましくは水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、又はオクチルラジカルであり、プロピル、ブチル、ヘキシル及びオクチルは、すべての異性体プロピル、ブチル、ヘキシル、及びオクチルラジカルを表す。
【0061】
単位L1-X、L2-Y、及びL5-Zは、好ましくは-CH
2CH
2O-、-CH
2CH(Me)O-、-CH(Me)CH
2O-、-CH
2C(Me)
2O-、-C(Me)
2CH
2O-、又は-CH
2C(=O)O-を表す
単位L1-X-D-Y-L2は、好ましくは、HN[CH
2CH
2O-]
2、HN[CH
2CH(Me)O-]
2、HN[CH
2CH(Me)O-][CH(Me)CH
2O-]、HN[CH
2C(Me)
2O-]
2、HN[CH
2C(Me)
2O-][C(Me)
2CH
2O-]、HN[CH
2C(=O)O-]
2、MeN[CH
2CH
2O-]
2、MeN[CH
2CH(Me)O-]
2、MeN[CH
2CH(Me)O][CH(Me)CH
2O-]、MeN[CH
2C(Me)
2O-]
2、MeN[CH
2C(Me)
2O-][C(Me)
2CH
2O-]、MeN[CH
2C(=O)O-]
2、EtN[CH
2CH
2O-]
2、EtN[CH
2CH(Me)O-]
2、EtN[CH
2CH(Me)O-][CH(Me)CH
2O-]、EtN[CH
2C(Me)
2O-]
2、EtN[CH
2C(Me)
2O-][C(Me)
2CH
2O-]、EtN[CH
2C(=O)O-]
2、PrN[CH
2CH
2O-]
2、PrN[CH
2CH(Me)O-]
2、PrN[CH
2CH(Me)O-][CH(Me)CH
2O-]、PrN[CH
2C(Me)
2O-]
2、PrN[CH
2C(Me)
2O-][C(Me)
2CH
2O-]、PrN[CH
2C(=O)O-]
2、BuN[CH
2CH
2O-]
2、BuN[CH
2CH(Me)O-]
2、BuN[CH
2CH(Me)O-][CH(Me)CH
2O-]、BuN[CH
2C(Me)
2O-]
2、BuN[CH
2C(Me)
2O-][C(Me)
2CH
2O-]、BuN[CH
2C(=O)O-]
2、HexN[CH
2CH
2O-]
2、HexN[CH
2CH(Me)O-]
2、HexN[CH
2CH(Me)O-][CH(Me)CH
2O-]、HexN[CH
2C(Me)
2O-]
2、HexN[CH
2C(Me)
2O-][C(Me)
2CH
2O-]、HexN[CH
2C(=O)O-]
2、OctN[CH
2CH
2O-]
2、OctN[CH
2CH(Me)O-]
2、OctN[CH
2CH(Me)O-][CH(Me)CH
2O-]、OctN[CH
2C(Me)
2O-]
2、OctN[CH
2C(Me)
2O-][C(Me)
2CH
2O-]、OctN[CH
2C(=O)O-]
2、
(式中、Pr、Bu、Hex、及びOctは、任意の異性体プロピル、ブチル、及びオクチルラジアルを表し得る)PhN[CH
2CH
2O-]
2、PhN[CH
2CH(Me)O-]
2、PhN[CH
2CH(Me)O-][CH(Me)CH
2O-]、PhN[CH
2C(Me)
2O-]
2、PhN[CH
2C(Me)
2O-][C(Me)
2CH
2O-]、PhN[CH
2C(=O)O-]
2、
【化11】
【化12】
【0062】
【0063】
を表す。
【0064】
本発明による好適な熱潜在性触媒を製造するための方法は、例えば、欧州特許第2900716号、同第2900717号、同第2772496号、同第14182806号、J.Organomet.Chem.2009 694 3184-3189、Chem.Heterocycl.Comp.2007 43 813-834、Indian J.Chem.1967 5 643-645、及びその中で参照されている文献に記載されており、その開示内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
当業者には既知のように、スズ化合物は、オリゴマー化する傾向があるので、多くの場合多核スズ化合物、又は単核スズ化合物と多核スズ化合物との混合物が存在する。多核スズ化合物において、スズ原子は、好ましくは、酸素原子を介して互いに接続される(「酸素ブリッジ」)。典型的なオリゴマー錯体(多核スズ化合物)は、例えば、酸素又は硫黄、例えば
【化14】
【0066】
(式中、n>1(式II参照))
を介したスズ原子の縮合を介して形成される。オリゴマー化の程度が低い場合には、環状オリゴマーがしばしば生じ、オリゴマー化の程度が高い場合には、OH又はSH末端基を有する直鎖オリゴマーである(式III参照)。
【0067】
本発明の一実施形態では、熱潜在性触媒は、以下のタイプの単核又は多核スズ化合物の群から選択される:
1,1-ジ-「R」-5-「オルガニル」-5-アザ-2,8-ジオキサ-1-スタンナ-シクロオクタン、
1,1-ジ-「R」-5-(N-「オルガニル」)アザ-3,7-ジ-「オルガニル」-2,8-ジオキサ-1-スタンナ-シクロオクタン、
1,1-ジ-「R」-5-(N-「オルガニル」)アザ-3,3,7,7-テトラ-「オルガニル」-2,8-ジオキサ-1-スタンナ-シクロオクタン、
4,12-ジ-「オルガニル」-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジ-「オルガニル」-2,6,10,14-テトラ-「オルガニル」-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジ-「オルガニル」-2,2,6,6,10,10,14,14-オクタ-「オルガニル」-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタナスピロ[7,7]ペンタデカン、
ここで、「R」は、上記で定義したD*、L3、又はL4であり、「オルガニル」は上記で定義したR1である。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、熱潜在性触媒は、以下から選択される:
4,12-ジ-n-ブチル-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジ-n-ブチル-2,6,10,14-テトラメチル-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
2,4,6,10,12,14-ヘキサメチル-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジ-n-オクチル-2,6,10,14-テトラメチル-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジ-n-オクチル-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジメチル-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
1,1-ジクロロ-5-メチル-5-アザ-2,8-ジオキサ-1-スタンナシクロオクタン
又はそれらの混合物。
【0069】
熱潜在性無機スズ含有触媒は、従来技術から既知のさらなる触媒/活性化剤と組み合わせてもよい;例えば、国際公開第2005/058996号に記載されているように、例えば、チタン、ジルコニウム、ビスマス、スズ(II)、及び/又は鉄触媒である。アミン又はアミジンを添加することも可能である。さらに、ポリイソシアネート重付加反応において、酸性化合物、例えば2-エチルヘキサン酸、又はアルコールを添加して反応を制御することも可能である。
【0070】
本発明により使用される熱潜在性無機スズ含有触媒の量は、広い範囲内で変えてもよく、成分B)中のポリイソシアネートの全量に基づいて、好ましくは≧50~≦5000ppmw、好ましくは≧100~≦3000ppmw、特に好ましくは≧300~≦2500ppmw、非常に特に好ましくは≧500~≦1500ppmwのスズである。
【0071】
成分A)及び成分B)の両方は、有効量の慣用の助剤及び添加物をさらに含み得る。溶剤の有効量は、いずれの場合も、発明による二成分系の不揮発性構成成分に基づいて、好ましくは最大150重量%、特に好ましくは最大100重量%、特に最大70重量%である。他の添加剤の有効量は、いずれの場合も、本発明による二成分系の不揮発性構成成分に基づいて、好ましくは最大25重量%、特に好ましくは最大10重量%、特に最大5重量%である。
【0072】
好適な助剤及び添加剤の例は、特に、UV吸収剤及び立体障害アミン(HALS)のような光安定剤、さらに安定剤、充填剤及び沈降防止剤、消泡剤、抗クレータ化剤及び/又は湿潤剤、レベリング剤、膜形成助剤、反応性希釈剤、溶剤、レオロジー制御のための物質、スリップ剤、並びに/又は汚れを防止する及び/若しくは硬化したコーティングの清浄性を改善する成分、並びに艶消し剤である。
【0073】
光安定剤、特にUV吸収剤、例えば置換ベンゾトリアゾール、S-フェニルトリアジン、又はオキサルアニリド、及び立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジル構造を有するもの(HALSと称される)の使用は、例えば、A.Valet,Lichtschutzmittel fur Lacke,Vincentz Verlag,Hanover,1996に記載されている。
【0074】
例えば、フリーラジカルスカベンジャー及び立体障害フェノールのような他の重合禁止剤のような安定剤は、貯蔵中に塗料成分を安定化させ、硬化中の変色を防止することが意図される。また、アルキル置換リン酸部分エステルのような酸性安定剤が成分B)について考慮される。
【0075】
本発明による二成分系は、顔料、染料、及び/又は充填剤をさらに含有してもよい。そのために使用される金属若しくは他の効果顔料を含む顔料、染料、及び/又は充填剤は、当業者に既知である。
【0076】
好ましい充填剤は、コーティングの外観に悪影響を及ぼさないそれらの化合物である。例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又は酸化ジルコニウムをベースとするナノ粒子である;Rompp Lexicon「Lacke und Druckfarben」[Coatings and Printing Inks]Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1998,pages 250 to 252もさらに参照されたい。
【0077】
充填剤、艶消し剤、又は顔料が本発明による二成分系中に存在する場合、保存中の構成成分の分離を防止するために沈降防止剤の添加が推奨され得る。
【0078】
湿潤剤及びレベリング剤は、表面の濡れ及び/又はコーティングのレベリングを改善する。例は、フルオロ界面活性剤、シリコーン界面活性剤、及び特定のポリアクリレートである。レオロジー制御添加剤は、適用時及び基材上のレベリング相における二成分系の特性を制御するために重要であり、例えば、特許明細書の国際公開第94/22968号、欧州特許第A-0276501号、欧州特許第A-0249201号、又は国際公開第97/12945号からのものが既知であり;架橋されたポリマー微粒子は、例えば欧州特許第A-0008127号に開示されており;無機シートシリケート、例えばアルミニウム-マグネシウムシリケート、モンモリロナイトタイプのナトリウム-マグネシウム及びナトリウム-マグネシウム-フッ素-リチウムシートシリケート;AeRosil(登録商標)などのシリカ;又はイオン及び/若しくは会合基を有する合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン-無水マレイン酸若しくはエチレン-無水マレイン酸コポリマー、並びにそれらの誘導体、又は疎水性に改質されたエトキシル化ウレタン若しくはポリアクリレートである。
【0079】
本発明による二成分系は、無溶剤状態で使用され得るが、好ましくは成分A)及び/又は成分B)中に少なくとも1つの溶剤を含有する。成分A)中で使用される溶剤が製造の結果として水を含有する場合、成分A)の含水量を適切に調整するために、上記カールフィッシャー滴定によって含水量を決定してもよい。
【0080】
好適な溶剤は、当業者に既知の方法で、用いられる二成分系及び適用プロセスに適合させるために使用されるべきである。溶剤は、使用される成分を溶解し、それらの混合を促進し、非相溶性を避けることを意図している。加えて、適用及び硬化の間に、それらは、可能な限り最良の外観を有し、かつポッピング又はピンホールのような欠陥のない無溶剤コーティングをもたらすように、進行する架橋反応に適合する方法でコーティングを残すべきである。企図される溶剤は、特に二成分技術において使用されるものを含む。例は、アセトン、メチルエチルケトン、又はヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、置換グリコール及び他のエーテルなどのエステル、例えばExxon-Chemieのキシレン又はソルベントナフサなどの芳香族化合物、並びに言及された溶剤の混合物である。
【0081】
本発明による二成分系は、基材のコーティングに非常に容易に使用され得る。
【0082】
したがって、本発明は、
a1)基材を提供する工程;
b1)本発明による少なくとも1つの二成分系を適用する工程;
c1)加熱によりコーティングを硬化させる工程
を含む、基材上にコーティングを製造するための方法をさらに提供する。
【0083】
さらに、二成分系はまた、二成分系の基材への適用中に、適用雰囲気の大気湿度によって水を吸収し得る。適用雰囲気の相対大気湿度が≧30%~≦80%、好ましくは≧35%~≦75%、特に好ましくは≧45%~≦65%であるときが好ましい。
【0084】
したがって、本発明は同様に、
a2)基材を提供する工程;
b2)少なくとも1つのNCO反応性化合物を含む成分A)及び少なくとも1つのポリイソシアネートを含む成分B)を含有する少なくとも1つの二成分系を適用する工程であって、成分A)及び/又は成分B)が少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有する、工程;
c2)加熱によりコーティングを硬化させる工程、
を含む、基材上にコーティングを製造するための方法であって、
工程b2)で適用中の二成分系が、成分A)の全重量に基づいて、≧400~≦9500ppmwの水を適用雰囲気から吸収する、方法を提供する。
【0085】
本明細書では、工程b2)で適用中の二成分系が、成分A)の全重量に基づいて、≧501~≦6500ppmw、好ましくは≧700~≦5000ppmw、特に好ましくは≧1001~≦4000ppmw、非常に特に好ましくは≧1400~≦2400ppmwの水を吸収するときが好ましい。
【0086】
このようにして、例えば、製造の結果として十分な水分を含有せず、及び/又は成分A)中に水を添加することなく、本発明による方法で使用される二成分系は、基材上への適用中に成分A)の全重量に基づいて、≧400~≦9500ppmw、好ましくは≧501~≦6500ppmw、特に好ましくは≧700~≦5000ppmw、非常に特に好ましくは≧1001~≦4000ppmw、特に非常に好ましくは≧1400~2400ppmwの水の含水量を吸収することができる。
【0087】
以下、工程a)は、工程a1)及び/又は工程a2)を表し、工程b)は、工程b1)及び/又は工程b2)を表し、工程c)は、工程c1)及び/又は工程c2)を表す。
【0088】
上に列挙した本発明による方法の工程a)における使用のために、基材は、コーティングされていなくてもコーティングされていてもよい。コーティングとして、プライマー、充填剤、及び/又はベースコートは、例えば、本発明による方法でそれが使用される前に基材に既に適用されていてもよい。プライマーの例は、特にOEM自動車の仕上げに使用されるような陰極ディップコート、プラスチック用、特にPP又はPP-EPDMのような低い表面張力を有するプラスチック用の溶剤型又は水性プライマーである。好適なベースコートは、例えばA.Goldschmidt,H.Streitberger,「BASF Handbuch Lackiertechnik」,Vincentz-Verlag,Hannover,D,2002から当業者に既知である。そのような製品は、例えば、「COATiQ(登録商標)WORWAGPREMIUM BASECOATS」の商品名で、Karl Worwag Lack-und Farbenfabrik GmbH & Co.KG,Stuttgart,DE、「xColor」の商品名でBASF Coatings GmbH,Munster,DE、及び「Primum Base」の商品名でHemmelrath Lackfabrik GmbH,Klingenberg,DEから得ることができる。
【0089】
好適な基材は、例えば、特にいわゆる複合材料を含む、1つ以上の材料を含む基材である。少なくとも2つの材料から形成された基材は、本発明によれば、複合材料と称される。好適な材料は、例えば、木材、金属、プラスチック、紙、皮革、織物、フェルト、ガラス、木質材料、コルク、木材及び繊維セメント板などの無機結合基材、電子アセンブリ又は鉱物基材である。好適なタイプの複合材料は、例えば、分散材料とも称される粒子複合材料、繊維複合材料、ラミネートとも称される層状複合材料、浸透複合材料、及び構造複合材料である。
【0090】
好適な金属は、例えば、いわゆるワイヤコーティング、コイルコーティング、缶コーティング、又はコンテナコーティングなどの用途に使用される鋼、アルミニウム、マグネシウム、及び金属の合金である。
【0091】
本発明の文脈において、プラスチックという用語は、繊維強化プラスチック、例えばガラス繊維又は炭素繊維強化プラスチック、及び2つ以上のプラスチックからなるプラスチックブレンドも包含する。
【0092】
本発明による好適なプラスチックの例は、ABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR-RIM、SMC、BMC、PP-EPDM、及びUPである(DIN7728T1による略語)。これらは、膜の形態であっても、ガラス繊維又は炭素繊維強化プラスチックの形態であってもよい。
【0093】
本発明による方法の好ましい実施形態では、基材は、完全に又は部分的にプラスチック及び/又は金属で作製された表面を有する。特に好ましくは、基材は、複合材料、特にプラスチック及び/又は金属を含む複合材料から少なくとも部分的になる。
【0094】
本発明の方法のさらなる実施形態では、基材は、金属を含み;より詳細には、基材は、80重量%、70重量%、60重量%、50重量%、25重量%、10重量%、5重量%、1重量%の程度の金属からなり得る。
【0095】
本発明の一実施形態では、工程a)で提供される基材は、上述の材料のうちの1つ以上を含むシャーシ又はその一部である。好ましくは、シャーシ又はその一部は、金属、プラスチック、又はそれらの混合物から選択される材料のうちの1つ以上を含む。
【0096】
さらなる実施形態では、工程a)で提供される基材は、「家庭用電化製品」分野からのプラスチック部分である。
【0097】
本発明による方法の工程b)における二成分系の適用は、溶液から行ってもよい。好適な適用方法は、例えば印刷、塗装、ローリング、キャスティング、浸漬、流動床法、及び/又は噴霧、例えば、圧縮空気噴霧、エアレス噴霧、高回転、静電噴霧塗布(ESTA)であり、ホットスプレー塗布、例えば熱風噴霧と組み合わされていてもよい。本明細書では、例えば、熱風噴霧のような熱噴霧適用と併用されていてもよい、例えば、圧縮空気噴霧、エアレス噴霧、高速回転、静電噴霧塗布(ESTA)のような噴霧による適用が特に好ましい。
【0098】
工程b)において適用される二成分系は、成分A)とB)との混合後に適用されてもよく、又は適用時にのみ直接適用されてもよい。第1の場合には、混合後の架橋反応は既にゆっくりと進行しているので、混合された二成分系は、限られた貯蔵寿命、いわゆるポットライフを有する。第2の場合には、延長されたポットライフの有利な効果は、例えば、本発明による二成分系が基材上に均一な膜を形成することができるので、改善されたラッカー外観において明らかであるが、同時に、熱潜在性無機スズ含有触媒の触媒活性が損われないので、驚くべきことに硬度の発現が高レベルのままである。
【0099】
工程c)における硬化が、120℃未満、好ましくは110℃未満、特に好ましくは100℃未満、特に90℃未満の基材温度で行われる場合、実用上本発明による方法に特に適切であることが分かった。
【0100】
本発明による方法の工程c)における硬化は、有利には本質的に45分未満以内に完了する。好ましくは、工程e)における硬化は、40分未満、特に好ましくは35分未満、非常に特に好ましくは30分未満以内に本質的に完了する。
【0101】
本明細書で使用される「本質的に完了する」とは、工程c)における硬化後の残留イソシアネート含有量が、工程b)におけるポリイソシアネートのイソシアネート含有量に基づいて、20%未満、好ましくは15%未満、特に好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満、非常に特に好ましくは3%未満であることを意味する。なお存在するイソシアネート基の百分率は、工程b)における重量%でのイソシアネート基の含有量と、工程c)における硬化後の重量%でのイソシアネート基の含有量とを比較することによって、例えば、IR分光法により約2270cm-1のイソシアネートバンドの強度を比較することによって決定することができる。
【0102】
本発明の方法の特定の実施形態では、工程c)の後に、コーティングを再び基材から取り外して膜を製造するさらなる工程d1)及び/又はさらなる工程d2)を行ってもよい。
【0103】
したがって、本発明の方法は、純金属基材及び熱可塑性材料又は複合材料の一般的な塗装を可能にする。本発明の方法のさらなる利点は、塗装プロセスが、標準プロセスと比較して使用される温度がはるかに低いことにより、エネルギー効率が良く、安価であることである。
【0104】
本発明は、本発明による二成分系で使用するための成分A)をさらに提供する。
【0105】
本発明は、本発明による二成分系で使用するための成分B)をさらに提供する。
【0106】
本発明は、本発明による方法によって製造される又は製造可能なコーティングをさらに提供する。
【0107】
本発明は、本発明によるコーティングで被覆された基材をさらに提供する。
【0108】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のコーティングで被覆された基材は、シャーシ、特に乗り物のシャーシ、又はその一部であってもよい。乗り物は、1つ以上の材料から形成されてもよい。好適な材料は、例えば、金属、プラスチック、又はそれらの混合物である。乗り物は、当業者に既知である任意の乗り物であり得る。例えば、乗り物は、自動車、大型商品乗り物、オートバイ、モペット、自転車などであってもよい。好ましくは、乗り物は、自動車及び/又は重量物の乗り物、特に好ましくは自動車である。
【0109】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明によるコーティングで被覆された基材は、金属、プラスチック、又はそれらの混合物から選択される材料のうちの1つ以上を含むシャーシ又はその一部である。
【0110】
さらに好ましい実施形態では、工程a)で提供される基材は、「家庭用電化製品」分野からのプラスチック部分である。
【0111】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明される。
【0112】
[実施例]
4mm DINカップ流出時間:
BYK Gardnerからの4mm DINカップを使用して、流出時間をDIN53211(DIN53211は、1996年10月に撤回された)に従って決定したが、本明細書では絶対値ではなく比較値のみが関係するので、正確な温度制御をすることなく室温で決定した。
【0113】
ケーニッヒ振り子減衰:
振り子減衰は、標準ISO1522に従って、BYK Gardnerからの振り子減衰試験機を使用して23℃及び50%の相対湿度で気候調節室において決定した。
【0114】
カールフィッシャー水分決定:
含水量は、DIN53715(DIN53715は、DIN51777パート1(1973年版)に基づいた)に従った容積法としてのカールフィッシャー滴定によって決定した。含水量は、Methrom Titrando 841自動滴定装置を用いて測定した。含水量の測定範囲は、0.01~<99重量%であった。
【0115】
使用される物質:
別段の記載がない限り、原材料は、さらに精製又は前処理することなく使用した。すべての%及び比率の数字は、重量に基づく。
【0116】
Setalux D A 665 BA/X:OH含有アクリレートポリオール(Nuplex、NL)、Byk 355:流れ改善のためのポリアクリレートをベースとした表面添加剤(Byk Chemie GmbH、DE)、DBTL:ジブチルスズジラウレート、触媒、CAS77-58-7(Aldrich、DE)、MPA:1-メトキシ-2-プロピルアセテート、CAS108-65-6、溶剤(BASF SE、DE)、キシレン:異性体混合物、CAS1330-20-7、溶剤(Aldrich、DE)、Desmodur N 3390 BA、架橋剤、HDIトリマー(Covestro、DE)、酢酸ブチル:酢酸n-ブチルエステル、CAS123-86-4、溶剤(BASF SE、DE)。
【0117】
4mm DINカップを使用したポットライフ実験
クリアコート配合物
記載された二成分系のポットライフに対する効果を実証するために、OH含有アクリレートポリオールをベースとした溶剤含有クリアコートを製造した。この目的のために、成分A及びBを連続して計量し、混合した。本発明の文脈において、ポットライフは、塗料
の粘度
が2倍に
なる時間として定義される(DINカップ
、4mmでの流出時間
が2倍に
なることによって間接的に決定され
る)。
【表1】
【表2】
【0118】
ポットライフ決定
二成分系の架橋を達成するために、その後、混合物A及びBを、実験室用撹拌機(1000rpmで60秒)で撹拌することによって、互いに均質に混合した。 次いで、室温で4mm DINカップを使用して初期流出時間を決定するために、混合システムを60秒間休止させたままにした。
【0119】
流出時間は、流出時間の増加による粘度上昇を追跡するために、30分ごとに再決定された。
【表3】
【表4】
【0120】
この結果は、触媒がDBTLの場合、含水量(例9及び10)がポットライフに何ら影響を及ぼさないことが分かったことを示している。対照的に、熱潜在性触媒は、混合系における水の含有量に応じてポットライフの差異を示す。系内の350ppmの水(比較例1)では、ポットライフは、本発明の例2~8よりも著しく短い(比較例9及び10と同様に)。
【0121】
ケーニヒ振り子減衰による硬度決定
硬度決定のために、ポットライフ決定のために製造されたクリアコート配合物を、いずれの場合も、架橋及びその後の休止時間後に120μmの膜キャスティングフレームを使用して3枚のガラスシートに適用した。室温で15分間のフラッシュオフ時間の後、いずれの場合も、1枚のガラス板を60℃の再循環空気乾燥キャビネット中で30分間乾燥し、さらに1枚を80℃で30分間乾燥させた後、第3のガラス板
と一緒に23℃及び50%の相対大気湿度の気候調節室に置いた。再循環空気乾燥キャビネット内で乾燥したガラス板の場合、ケーニヒ振り子減衰は、気候調節室で3時間後にISO1522に従って決定した。3枚すべてのガラス板のケーニヒ振り子減衰を気候調節室で24時間後に再決定した。
【表5】
【表6】
【0122】
二成分系への水分の添加により、硬度の発現及びこれに伴う物理的特性が不利に変化しないことが実証された。熱潜在性触媒の触媒活性も保持される。
【0123】
本発明によれば、熱潜在性触媒と組み合わせて水分を添加することにより、温度を上げることによって適用された二成分系を硬化させるための熱潜在性触媒の触媒活性に悪影響を及ぼすことなく、二成分系の再現可能に延長されたポットライフを実証することができる。