(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】CO2プラズマ活性化表面にカップリングする水性生体分子
(51)【国際特許分類】
C07K 17/08 20060101AFI20221024BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20221024BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221024BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20221024BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20221024BHJP
C07K 14/42 20060101ALI20221024BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20221024BHJP
【FI】
C07K17/08 ZNA
C07K16/00
C07K19/00
C07K14/47
C07K14/00
C07K14/42
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2018560131
(86)(22)【出願日】2017-05-16
(86)【国際出願番号】 US2017032928
(87)【国際公開番号】W WO2017201064
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-03-31
(32)【優先日】2016-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507244910
【氏名又は名称】プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】レスリー ダニエル クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ドイル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウォーターハウス アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ロダス メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】ウォッターズ アレクサンダー エル.
(72)【発明者】
【氏名】スーパー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】イングバー ドナルド イー.
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/014788(WO,A2)
【文献】ACS Appl. Mater. Interfaces (2015) Vol.7, pp.14670-14681
【文献】Journal of Bioactive and Compatible Polymers (2015) pp.1-18
【文献】Biomaterials (2008) Vol.29, pp.2388-2399
【文献】Colloids and Surfaces B: Biointerfaces (2014) Vol.115, pp.139-149
【文献】ACS Appl. Mater. Interfaces (2010) Vol.2, No.10, pp.2884-2891
【文献】Journal of Biomaterials Science, Polymer Edition (2013) Vol.24, No.15, pp.1707-1720
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実体が付着している基体を作製する方法であって、
(i)ポリスルホン(PS)、ポリアリルエーテルスルホン(PAES)もしくはポリエーテルスルホン(PES)を含む基体と、CO
2プラズマとを接触させて、カルボキシレート残基を含むプラズマ発生部分(PGM)を含む改変基体を形成する工程、および
(ii)改変基体への実体の付着に十分な条件下で、実体と改変基体とを接触させる工程
を含み、
これらの工程によって、実体が付着している基体を作製し、
ただし、
(a)基体が、流体透過性、イオン透過性、多孔質、柔軟、もしくは加圧滅菌可能であること;
(b)基体が、ポリスチレン以外であること;
(c)基体が、90%未満のポリスチレンを含むこと;
または
(d)基体が、コンパートメントを有する構造を含むこと;
のうちの1つまたは複数を条件とし;
ただし、
(e)実体が特異的結合ペアの第一のメンバーを含むこと;
(f)実体が抗体ドメインを含むこと;
(g)実体が融合タンパク質を含むこと;
(h)実体がオプソニンを含むこと;
(i)実体がレクチンを含むこと;
(j)実体が多量体タンパク質のサブユニットを含むこと;または
(k)付着した実体が第二の実体に架橋されること
のうちの1つまたは複数を条件とし;かつ
ただし、
(l)改変基体が、実体の付着前に、架橋部分と接触せず、かつ架橋部分で誘導体化されないこと;
および
(m)改変基体が、実体の付着前に、有機溶媒と接触しないこと
を条件とする、方法。
【請求項2】
(a)実体がPGMに直接付着する;
(b)実体が、水性条件下でPGMと接触する;
(c)実体が、水性条件下で改変基体と接触する;または
(d)実体が、6~8のpHで改変基体と接触する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
基体とCO
2プラズマとを接触させた後に、実体がPGMに直接付着する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PGMが、炭素組成で少なくとも1%の存在量で形成される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
実体が、1cm
2あたり少なくとも1×10
12個の分子の密度で付着するか、または
実体が、少なくとも500個の実体/μm
2の密度で付着する、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
基体が内腔を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
基体が、セルロース、置換セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルエーテルスルホン、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ナイロン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリスチレン、またはフッ素化ポリマーを含む、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
基体が接着剤または密閉剤を含み、かつ該接着剤または密閉剤が、有機溶媒と接触しない、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
基体が、透析、限外濾過、血液濾過、血液透析濾過、または血液灌流カートリッジを含む、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)において、改変基体が、架橋部分を含んでいない、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)において、改変基体が有機溶媒を含んでいない、または
前記方法が、改変基体と有機溶媒とを接触させる工程を含まない、
請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
改変基体、実体、またはその両方と、活性化部分とを接触させて、改変基体上の官能基を活性化させる工程を含み、該官能基が任意でカルボン酸基である、
請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
接触させる工程が、水性バッファー中で実施される、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
接触させる工程が、2-モルホリノ-エタンスルホン酸(MES)バッファーを含む溶液中で実施される、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
工程(ii)の接触させる工程が、4~5のpHで実施されるか、または
工程(ii)の接触させる工程が、4~6時間実施される、
請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
PGMがカルボン酸を含み、かつ実体がアミンを含み、かつ
任意で、PGMのカルボン酸が、実体のアミン基と共有結合で結合する、
請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
PGMの少なくとも1%がカルボン酸基を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
工程(i)の接触させる工程が、複数の基体とプラズマとをプラズマ発生器チャンバー内で接触させることを含む、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
実体が、オプソニン、炭水化物結合タンパク質、カルシウム結合タンパク質、二価カチオン結合タンパク質、および/または抗体の一部分を含む、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
実体が、
SEQ ID NO:4~5のうちの1つのポリペプチド、またはSEQ ID NO:4~5のうちの1つと少なくとも95%同一でかつ微生物表面上の炭水化物に結合し得るポリペプチド配列、あるいは
SEQ ID NO:6~8のうちの1つのポリペプチド、またはSEQ ID NO:6~8のうちの1つと少なくとも95%同一でかつ微生物表面上の炭水化物に結合し得るポリペプチド配列
を含む、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年5月16日に出願された米国特許出願第62/336,940号に対する優先権を主張し、その内容は参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されており、参照によりその全体として本明細書によって組み入れられる配列表を含有する。2017年5月11日に作成された該ASCIIコピーは、002806-085421-PCT_SL.txtと名前を付けられ、サイズが119,029バイトである。
【0003】
連邦支援の研究における政府の権利に関する声明
本発明は、米国国防総省・宇宙海軍戦闘システムセンター(Space and Naval Warfare Systems Center U.S. Department of Defense)によって授与されたN66001-11-1-4180、および米国国防総省・国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency U.S. Department of Defense)によって授与されたHR0011-13-C-0025の下で政府支援によりなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景
表面への所望の部分の標的結合のための現在の方法は、該表面に損傷を与え得る化学的架橋剤および/または有機洗浄を要し得る。表面に所望の部分をカップリングする改善された方法の必要性が、当技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0005】
一部の局面において、本開示は、実体が付着している基体を作製する方法を提供し、本方法は、
(i)基体とプラズマとを接触させて、プラズマ発生部分(PGM)を含む改変基体を形成する工程;
(ii)改変基体への生物学的ポリマーの付着に十分な条件下で、実体と改変基体とを接触させる工程
を含み、それによって、実体が付着している基体を作製し、
ただし、
基体が、流体透過性、イオン透過性、多孔質、柔軟、加圧滅菌可能、もしくはポリスチレン以外であること;
生物学的ポリマーが融合タンパク質を含むこと;
生物学的ポリマーがレクチンを含むこと
のうちの1つまたは複数を条件とし;かつ
ただし、
プラズマが酸素プラズマ以外であること、例えばプラズマはCO2プラズマであること;
改変基体が、実体の付着前に、架橋部分、例えばシラン、例えば(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)と接触しないもしくはそれで誘導体化されないこと;または
改変基体が、実体の付着前に、有機溶媒、例えば有機アルコール、例えばエタノールと接触しないこと
のうちの1つまたは複数を条件とする。
【0006】
一部の局面において、本開示は、本明細書において記載される方法によって産生されたまたは産生可能な実体が付着している基体を含む装置も提供する。態様において、装置は、血液透析または血液濾過装置である。
【0007】
一部の局面において、本開示は、サンプル中の分子が実体に結合するのを可能にする条件下で、装置とサンプルとを接触させる工程を含む、本明細書において記載される方法によって産生されたまたは産生可能な実体が付着している基体を含む装置を使用する方法も提供する。一部の態様において、サンプルは、対象の身体に戻される、血液透析または血液濾過の間の血液サンプルである。
【0008】
一部の局面において、本開示は、実体(例えばポリペプチド、例えば糖ポリペプチド、例えば糖タンパク質、核酸、炭水化物、例えば多糖、生物学的ポリマー、小分子、ペプチド模倣物、薬物、または病原性もしくは疾患性分子と相互作用し得る、例えば特異的に結合し得る、例えば糖ポリペプチド、例えば糖タンパク質に結合し得る部分)が付着している基体を作製する方法を提供し、本方法は、
I:
(i)基体とプラズマとを接触させて、プラズマ発生部分(PGM)を含む改変基体を形成する工程;
(ii)改変基体への生物学的ポリマーの付着に十分な条件下で、実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と改変基体とを接触させる工程;
II:
(i)PGMを含む改変基体を得る工程;および
(ii)改変基体への実体の付着に十分な条件下で、実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と改変基体とを接触させる工程;あるいは
III:
(i)基体とプラズマとを接触させて、PGMを含む改変基体を形成する工程;および
(ii.a)PGMを含む改変基体を、該改変基体への実体の付着に十分な条件下で実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と該改変基体とを接触させるのに適したものとして分類する工程;または
(ii.b)PGMを含む改変基体を、該改変基体への実体の付着に十分な条件下で実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と該改変基体とを接触させる関係者(party)に、運ぶ、売却する、輸送する、その管理を移す、もしくはその所有を移す工程
を含み、それによって、実体が付着している基体を作製し、
ただし、
(a)基体が、流体透過性、イオン透過性、多孔質、柔軟、加圧滅菌可能(例えば、100Cよりも上で構造を保持する)、もしくはポリスチレン以外であること;
(b)基体が、90、80、70、60、もしくは50%未満のポリスチレンを含むこと;
(c)基体が、ポリスルホン(PS)、ポリアリルエーテルスルホン(PAES)、もしくはポリエーテルスルホン(PES)を含むこと;
(d)基体が、コンパートメント、例えば内腔を有する構造を含み、例えば該構造が中空繊維を含むこと;
(e)実体が特異的結合ペアの第一のメンバーを含むこと;
(f)実体が抗体ドメイン、例えばFcドメインを含むこと;
(g)実体が融合タンパク質を含むこと;
(h)実体がオプソニンを含むこと;
(i)実体がレクチンを含むこと;
(j)実体が多量体タンパク質のサブユニットを含むこと;または
(k)付着した実体が第二の実体に架橋される、例えば第二の実体が基体に付着している、もしくは第二の実体が基体に付着していないこと
のうちの1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはすべて)を条件とし;かつ
ただし、
(l)プラズマが酸素プラズマ以外であること、例えばプラズマがCO2プラズマであること;
(m)改変基体が、実体の付着前に、架橋部分(例えばシラン、例えば(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS))と接触しないもしくはそれで誘導体化されないこと;または
(n)改変基体が、実体の付着前に、有機溶媒(例えば有機アルコール、例えばエタノール)と接触しないこと
のうちの1つまたは複数(例えば、2つまたはすべて)を条件とする。
【0009】
上記(a)~(k)に関して、一部の態様において、(a)~(k)のうちの2つまたはそれを上回る数が存在する、例えば(a)および(b)、(a)および(c)、(a)および(d)、(a)および(e)、(a)および(f)、(a)および(g)、(a)および(h)、(a)および(i)、(a)および(j)、(a)および(k)、(b)および(c)、(b)および(d)、(b)および(e)、(b)および(f)、(b)および(g)、(b)および(h)、(b)および(i)、(b)および(j)、(b)および(k)、(c)および(d)、(c)および(e)、(c)および(f)、(c)および(g)、(c)および(h)、(c)および(i)、(c)および(j)、(c)および(k)、(d)および(e)、(d)および(f)、(d)および(g)、(d)および(h)、(d)および(i)、(d)および(j)、(d)および(k)、(e)および(f)、(e)および(g)、(e)および(h)、(e)および(i)、(e)および(j)、(e)および(k)、(f)および(g)、(f)および(h)、(f)および(i)、(f)および(j)、(f)および(k)、(g)および(h)、(g)および(i)、(g)および(j)、(g)および(k)、(h)および(i)、(h)および(j)、(h)および(k)、(i)および(j)、(i)および(k)、ならびに(j)および(k)。上記(l)~(n)に関して、一部の態様において、(l)~(n)のうちの2つまたはそれを上回る数が存在する、例えば(l)および(m)、(l)および(n)、または(m)および(n)。一部の態様において、(a)~(k)のうちの1つ、および(l)~(n)のうちの1つが存在する、例えば(a)および(l)、(b)および(l)、(c)および(l)、(d)および(l)、(e)および(l)、(f)および(l)、(g)および(l)、(h)および(l)、(i)および(l)、(j)および(l)、(k)および(l)、(a)および(m)、(b)および(m)、(c)および(m)、(d)および(m)、(e)および(m)、(f)および(m)、(g)および(m)、(h)および(m)、(i)および(m)、(j)および(m)、(k)および(m)、(a)および(n)、(b)および(n)、(c)および(n)、(d)および(n)、(e)および(n)、(f)および(n)、(g)および(n)、(h)および(n)、(i)および(n)、(j)および(n)、または(k)および(n)。
【0010】
一部の態様において、本方法は、I:(i)基体とプラズマとを接触させて、プラズマ発生部分を含む改変基体を形成する工程;および(ii)改変基体への生物学的ポリマーの付着に十分な条件下で、実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と改変基体とを接触させる工程を含む。一部の態様において、本方法は、II:(i)PGMを含む改変基体を得る工程;および(ii)改変基体への生物学的ポリマーの付着に十分な条件下で、実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と改変基体とを接触させる工程を含む。一部の態様において、本方法は、III:(i)基体とプラズマとを接触させて、PGMを含む改変基体を形成する工程;およびii. (a)改変基体への生物学的ポリマーの付着に十分な条件下で、実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と改変基体とを接触させるのに適したものとして、PGMを含む改変基体を分類する工程;またはii. (b)PGMを含む改変基体を、該改変基体への生物学的ポリマーの付着に十分な条件下で実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と該改変基体とを接触させる関係者に、運ぶ、売却する、輸送する、その管理を移す、もしくはその所有を移す工程を含む。
【0011】
一部の態様において、実体は、例えばPGMと実体との間に配置される活性化部分、架橋部分、リンカー、またはスペーサー由来の原子なしで、PGMに直接付着する。一部の態様において、(a)実体は、例えばPGMと生物学的ポリマーとの間に配置される活性化部分由来の原子なしで、PGMに直接付着する;(b)基体とプラズマとを接触させた後、実体はPGMに直接付着する;(c)PGMと実体とを付着させるための1つまたは複数の反応は水性である;(d)実体は、水性条件下で改変基体と接触する;(e)PGM、例えばカルボン酸は、例えばXPSによって測定される、炭素組成で少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、もしくは20%の存在量で形成されるか、またはPGM、例えばアルコール、アルデヒド、およびカルボン酸は、炭素1sスペクトルによって測定される、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、もしくは20%の存在量で形成される;(f)実体は、例えば結合法またはイメージング法によって測定される、1cm2あたり少なくとも約1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、または1×1017個の分子の密度で付着する;あるいはg)実体は、6~8のpH(例えば、pH7または生理学的条件)で改変基体と接触する。一部の態様において、実体は、少なくとも約500個の実体/μm2、例えば約500~2000、500~1800、500~1600、または500~1200個の実体/μm2の密度で基体に付着する。一部の態様において、実体は、少なくとも約600個の実体/μm2、例えば約600~2000、600~1800、600~1600、または600~1200個の実体/μm2の密度で基体に付着する。一部の態様において、実体は、少なくとも約800個の実体/μm2、例えば約800~2000、800~1800、800~1600、または800~1200個の実体/μm2の密度で基体に付着する。一部の態様において、実体は、少なくとも約1000個の実体/μm2、例えば約1000~2000、1000~1800、1000~1600、または1000~1200個の実体/μm2の密度で基体に付着する。一部の態様において、実体は、少なくとも約500、600、700、800、900、1000、または1100個の実体/μm2の密度で付着する。一部の態様において、実体は多量体である。
【0012】
一部の態様において、実体は、安定した様式で、例えば加水分解耐性の様式で、例えば水性条件下で、既定の期間、例えば1、2、4、6、12、24、48、または72時間にわたって、実体の1%、2%、5%、または10%未満が基体から離脱するように、基体に付着している。
【0013】
一部の態様において、基体は内腔を含む、例えば基体は中空繊維を含む。一部の態様において、基体は、セルロース、置換セルロース、例えば酢酸セルロース、二酢酸セルロース、もしくは三酢酸セルロース;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルエーテルスルホン、ポリビニルピロリドン、ナイロン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート、ポリアミド、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む。一部の態様において、基体は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはポリスチレンを含む。一部の態様において、基体は接着剤または密閉剤を含み、かつ該接着剤または密閉剤は、有機溶媒、例えば有機アルコール、例えばエタノールと接触しない。一部の態様において、基体は、透析、限外濾過、血液濾過、血液透析濾過、または血液灌流カートリッジを含む、それに付着する、またはそれの中に配置される。一部の態様において、基体は、ポリマー、ガラス、金属、もしくはセラミック、またはその任意の組み合わせを含む。一部の態様において、基体は透析膜、例えば血液透析膜を含む。一部の態様において、基体は中空繊維または非中空繊維膜を含む。
【0014】
一部の態様において、工程(ii)、例えばI(ii)において、改変基体は、架橋部分、例えばシラン、例えば(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)を実質的に含んでいない。一部の態様において、工程(ii)、例えばI(ii)において、改変基体は有機溶媒を実質的に含んでいない、または本方法は、例えば工程(i)の後もしくは工程(ii)の前に、改変基体と有機溶媒とを接触させる工程を含まない。一部の態様において、本方法は、改変基体、実体、またはその両方と、活性化部分、例えば水溶性活性化部分、例えば1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)とを接触させて、改変基体上の官能基を活性化する工程を含み、該官能基は任意でカルボン酸基である。一部の態様において、工程(ii)、例えばI(ii)の接触させる工程は、水性バッファー中で実施される。一部の態様において、工程(ii)、例えばI(ii)の接触させる工程は、2-モルホリノ-エタンスルホン酸(MES)バッファーを含む溶液中で実施される。一部の態様において、工程(ii)、例えばI(ii)の接触させる工程は、約4~5、4.5~5.5、5~6、6~7、7~8、または約5のpHで実施される。一部の態様において、工程(ii)、例えばI(ii)の接触させる工程は、約4~6、6~8、8~10、10~12、12~14、または14~16時間実施される。
【0015】
一部の態様において、活性化部分は、実体が付着している基体に含まれていない原子を含む、例えば活性化部分の原子のいずれも、実体が付着している基体に含まれていない。
【0016】
態様において、本方法は、活性化部分、例えば水溶性活性化部分、例えばEDCの使用を含まない。態様において、本方法は、5、2、1、0.5、0.2、0.1、0.05、0.02、0.01、0.005、0.002、または0.001mg/ml未満の活性化部分、例えば水溶性活性化部分、例えばEDCの使用を含む。
【0017】
一部の態様において、PGMはカルボン酸を含み、かつ実体はアミンを含む。一部の態様において、PGMのカルボン酸は、実体のアミン基と共有結合で結合する。
【0018】
一部の態様において、本方法は、基体上に既定のレベルまたは密度のPGMを形成するのに適切な条件下で、基体とプラズマとを接触させる工程を含む。一部の態様において、PGMは、ヒドロキシル基、アルデヒド基、エポキシド基、ペルオキシド基、スルフヒドリル基、カルボニル基、またはカルボン酸基を含む。一部の態様において、PGMはカルボン酸基を含む。一部の態様において、PGMの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、または50%は、カルボン酸基を含む。一部の態様において、PGMはアルデヒド基を含む。一部の態様において、PGMの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、または50%は、アルデヒド基を含む。一部の態様において、PGMは、実体上の部分または活性化された実体と反応性である部分を含む。
【0019】
一部の態様において、プラズマは、以下の条件のうちの1つまたは複数(例えば、2、3、4つ、またはすべて)の下でプラズマ発生器によって発生される:(a)約12~15もしくは13~14mHz、例えば13.5mHz、または少なくとも約10、11、12、14、15mHz、または高くとも約15、14、13、12、11、もしくは10Hzの無線周波数;(b)プラズマ処理が、実体の活性、例えば結合活性を維持しながら改変基体に実体を連結させるのに十分な時間続き、例えばプラズマ処理が、約0.1~5分間、例えば約1分間、または少なくとも約0.1、0.5、1、2、3、4、もしくは5分間、または長くて約5、4、3、2、もしくは1分間続くこと;(c)プラズマガス圧が、約150~350mTorr、例えば約200mTorr、または少なくとも約150、200、250、300、もしくは350mTorr、または多くて約350、300、250、200、もしくは150mTorrであること;(d)約10~150W、例えば約100W、または少なくとも約10、20、30、40、50、75、100、135、もしくは150W、または多くて約150、125、100、75、50、40、30、20、もしくは10Wの出力;あるいは(e)プラズマ発生器が、プラズマ発生器チャンバーの外側に電極を含み、例えばプラズマ発生器チャンバーの内側には電極を含まないこと。
【0020】
一部の態様において、工程(i)の接触させる工程は、複数の基体(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、20、50、または100個の基体)とプラズマとをプラズマ発生器チャンバー内で接触させる工程を含む。
【0021】
一部の態様において、実体は、オプソニン、炭水化物結合タンパク質、カルシウム結合タンパク質、二価カチオン結合タンパク質、および/または抗体の一部分、例えばFcもしくはその一部分を含む。一部の態様において、実体は、SEQ ID NO:4のポリペプチドまたはSEQ ID NO:4と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一のポリペプチド、あるいはSEQ ID NO:6のポリペプチドまたはSEQ ID NO:6と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一のポリペプチドを含む。一部の態様において、実体は、多量体、例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、12量体、または18量体を形成する。一部の態様において、実体は、互いに架橋した少なくとも2つの(例えば、3、4、5、6、12、または18個の)サブユニットを有する多量体を形成する。一部の態様において、生物学的ポリマーは、互いに共有結合で接続した少なくとも2つの(例えば、3、4、5、6、12、または18個の)サブユニットを有する多量体を形成する。共有結合性の連結は、例えば自然発生的に、酵素的に、または化学的架橋を通じて形成され得る。共有結合性の連結は、例えばジスルフィド架橋を含み得る。一部の態様において、実体は、互いに非共有結合で結合した少なくとも2つの(例えば、3、4、5、6、12、または18個の)サブユニットを有する多量体を形成する。
【0022】
一部の態様において、本方法は、PGMのタイプ、PGMの数、PGMの密度、汚染物質の存在、付着した実体の数、接触角測定値(例えば、水接触角測定値)、または表面エネルギー測定値に関連したパラメーターの値を取得する工程、および取得した値と標準値とを比較する工程をさらに含む。一部の態様において、本方法は、比較に対応して、分類する工程、合格とする工程、不合格とする工程、認可する工程、製品に組み入れる工程、包装する工程、新たな場所に移す工程、または商業に流通させる工程をさらに含み、基体は付着した実体を含む。一部の態様において、本方法は、PGMの存在について、例えばX線光子分光法(XPS)により、改変基体を評価する工程をさらに含む。一部の態様において、本方法は、汚染物質または製造試薬、例えば抽出され得る分子、浸出し得る分子、基体に連結されていないFcMBL、活性化試薬、架橋試薬、EDC、溶媒(例えば、MESバッファー)、内毒素、発熱物質、ヌクレアーゼ、または生物、例えば細菌もしくは真菌について、改変基体を評価する工程をさらに含む。
【0023】
一部の態様において、本方法は、プラズマ発生器チャンバーを浄化する工程をさらに含む。浄化工程は、工程(i)、例えばI(i)の前に行われ得る。本方法は、以下のうちの1つまたは複数(例えば、そのうちの2つまたはすべて)を実施する工程を含み得る:(a)チャンバーを溶媒(例えば有機溶媒、例えばエタノール)で洗浄すること;(b)チャンバー内で浄化プラズマを産生すること(例えば、工程(i)のプラズマとは異なるガスから作られた浄化プラズマ、例えば工程(i)のプラズマがCO2プラズマである場合、O2プラズマを用いた浄化);および/または(c)化学清浄、例えば化学エッチングによってチャンバーを清浄すること。
【0024】
一部の態様において、浄化プラズマは約30分間産生される。一部の態様において、浄化プラズマは、100~800C、200~700C、300~500C、350~450C、または約400Cの温度(例えば、ピーク温度)におけるものである。一部の態様において、浄化プラズマは、少なくとも約100C、200C、300C、または400Cの温度(例えば、ピーク温度)におけるものである。一部の態様において、浄化プラズマは、高くて約800C、700C、600C、500C、または400Cの温度(例えば、ピーク温度)におけるものである。
【0025】
態様において、本方法は、プラズマ発生器チャンバーの清浄度を判定する工程を含む。例えば、本方法は、(a)浄化工程の間、プラズマの色をモニターする工程であって、例えばO2プラズマは、有機物が存在する場合に青色であり、有機物が存在しない場合に白色である、またはCO2プラズマは、有機物が存在する場合に暗青色であり、有機物が存在しない場合に水色である、工程;あるいは(b)工程(i)の接触させる工程の間、プラズマの温度をモニターする工程であって、プラズマの温度は、プラズマが産生される最初のわずかな時間に80Cよりも上に上昇しない、または最初のわずかな時間に80Cを超えて上昇する温度は汚染物質の存在を示す、工程;あるいはc)浄化工程の間、プラズマの温度をモニターする工程であって、プラズマの温度は、ピーク温度(典型的に、400~500C)から10Cを下回って下降し、または上昇し続けるかもしくはピーク温度を維持する温度は汚染物質の存在を示す、工程;あるいは、その任意の組み合わせを含む。態様において、本方法が汚染物質が存在することを示す場合、例えば本方法が汚染物質の非存在を示すまで、浄化反応は引き延ばされる。態様において、本方法が、汚染物質が存在することを示す場合、化学浄化などの別の浄化方法が実施される。態様において、基体がプラズマ発生器チャンバー内に配置される場合、例えば工程(i)の接触させる工程の前に、以下の一方または両方を実施する:(a)プラズマ発生器チャンバー内に真空(例えば、1Torr未満の圧力)を創出する工程、および(b)プラズマ発生器チャンバーをガス、例えば工程(i)のプラズマを作るために用いられた同じガス、例えばCO2で充填する工程。態様において、プラズマ発生器チャンバーを、例えば少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10分間、例えば約5分間、ガス、例えばCO2で充填する。態様において、本方法は、以下のうちの1つまたは複数を実施することによって、基体の改変を測定することを含む:例えば(a)基体と1滴の液体、例えば水とを接触させ、該1滴の液体の接触角を測定する工程;(b)基体と、実体に結合する部分とを接触させる工程であって、例えば該部分は抗体分子またはマンノースなどの糖質を含み、該部分は、任意で、検出可能な標識に結合されるもしくは共有結合で連結される、工程;または(c)基体と、PGMに結合する部分、例えばアミン基を含む検出可能な標識とを接触させる工程。
【0026】
態様において、本方法は、基体に実体が付着する間にマスキング実体を提供する工程を含み、該マスキング実体は、実体の一部分と、例えば活性化部分、基体、または別の実体、例えばポリペプチドなどの生物学的ポリマーとの反応を阻害する。態様において、マスキング実体は、実体が結合する部分を含む。態様において、実体は、イオン結合タンパク質、二価イオン結合タンパク質、カルシウム結合タンパク質、オプソニン、例えばレクチン、例えばカルシウム結合レクチン、例えばMBLを含む。マスキング実体は、オプソニンが結合する部分、例えば二価カチオン、例えばCa2+を含み得る。一部の態様において、マスキング実体は糖類、例えばグルコースを含む。
【0027】
一態様において、実体は糖類(例えば、マンノースまたはグルコース)に結合し、マスキング実体は糖類(例えば、マンノースまたはグルコース)を含む。態様において、実体は、オプソニン、オプソニンフラグメント(例えば、マンノース結合フラグメント)、MBL、MBLフラグメント(例えばマンノース結合フラグメント、例えばCRDドメイン、またはCRDドメインおよびネックドメイン)を含み;マスキング実体はオプソニン、例えばオプソニンのCRDに結合する。一態様において、マスキング実体はマンノースと結合を競合し、別の態様において、マスキング実体はマンノースと結合を競合しない。一態様において、オプソニンに結合するマスキング実体は、二価カチオン、例えばCa2+、または糖類、例えばグルコースもしくはマンノースである。態様において、マスキング実体は、実体と複合した場合、実体の1つまたは複数のアミノ酸残基、例えばCRDドメインにおける残基、例えば糖類結合部位におけるアミノ酸を保護する。
【0028】
一態様において、実体はタンパク質(例えば、細菌またはウイルスタンパク質)に結合し、マスキング実体はタンパク質(例えば、細菌またはウイルスタンパク質)を含む。態様において、実体は脂質に結合し、マスキング実体は脂質を含む。
【0029】
態様において、例えば結合アッセイまたはイメージング法によって測定される、第一の選択エリア、例えば1cm2エリアにおける付着した実体の密度は、1、2、3、4、5、または10個の他の選択エリア、例えば基体上のそれぞれ1cm2のエリアの密度の50%以内である。
【0030】
態様において、基体上、または基体の一部分、例えば中空繊維の内腔の、1cm2エリアの10、20、30、40、50、60、または70%の密度は、互いの、または1ウェルの底部、複数のウェルの底部、もしくは中空繊維の50、40、または30%以内である。
【0031】
一部の局面において、本開示は、実体、例えばポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチドが付着している基体、例えば透過膜を含む装置も提供し、該装置は、例えば結合アッセイによって測定されるように、1cm2あたり1×1016、1×1015、1×1014、1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、または1分子未満の架橋剤、例えばシランを含む。
【0032】
一部の局面において、本開示は、それに付着した複数種の実体、例えば複数種のポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチドを有する基体、例えば透過膜を含む装置も提供し、例えば結合アッセイまたはイメージング法によって測定される、第一の選択エリア、例えば1cm2エリアにおける付着した実体の密度は、1、2、3、4、5、または10個の他の選択エリア、例えば基体上の1cm2のエリアの密度の50%以内である、あるいは基体上、または基体の一部分、例えば中空繊維の内腔の、1cm2エリアの10、20、30、40、50、60、または70%の密度は、互いの、または1ウェルの底部、複数のウェルの底部、もしくは中空繊維の50、40、または30%以内である。
【0033】
一部の局面において、本開示は、実体、例えばポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチドが付着している基体、例えば透過膜を含む装置も提供し、実体のアミノ基(例えば、リジン側鎖またはN末端のアミノ基)は、基体上のPGM(例えば、カルボン酸)に共有結合で直接結合される。
【0034】
一部の局面において、本開示は、実体、例えばポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチドが付着している基体、例えば透過膜を含む装置も提供し、該装置は、1cm2あたり1×1016、1×1015、1×1014、1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、もしくは1分子未満、または1つの装置あたり1×1016、1×1015、1×1014、1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、もしくは1分子未満の汚染物質、例えば抽出され得る分子、浸出し得る分子、基体に連結されていないFcMBL、EDC、溶媒(例えば、MESバッファー)、内毒素、発熱物質、ヌクレアーゼ、または生物、例えば細菌もしくは真菌を含む。
【0035】
一部の局面において、本開示は、
1cm2あたり1×1016、1×1015、1×1014、1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、または1分子未満の架橋剤、例えばシランを含む基体、例えば透過膜;
実体、例えばポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチド;および
活性化部分、例えば水溶性活性化部分、例えばEDC、を含む水溶液
を含む反応混合物も提供する。
【0036】
一部の局面において、本開示は、
1cm2あたり1×1016、1×1015、1×1014、1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、または1分子未満の架橋剤、例えばシランを含む基体、例えば透過膜;および
実体、例えばポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチド
を含む反応混合物も提供する。態様において、反応混合物は、活性化部分、例えば水溶性活性化部分、例えばEDCを含まない、または5、2、1、0.5、0.2、0.1、0.05、0.02、0.01、0.005、0.002、もしくは0.001mg/ml未満のそれを含む。
【0037】
一部の局面において、本開示は、
基体、例えば透過膜;
実体、例えばポリペプチド、例えばオプソニンの一部分、例えばMBLの一部分を含むポリペプチド;および
マスキング実体、例えばオプソニンが結合する部分、または二価カチオン、例えばCa2+
を含む反応混合物も提供する。
【0038】
一部の態様において、マスキング実体は糖類、例えばグルコースを含む。
【0039】
一部の態様において、本明細書において記載される反応混合物は、プラズマを産生するまたは含有するように構成されたチャンバー内に配置される。
【0040】
態様において、関係者(例えば、実体と改変基体とを接触させる関係者)は、人間または企業体である。態様において、関係者は、例えば接触させる工程を実施する自動化機器を用いるまたは構成することによって、実体と改変基体とを自動的に接触させる。
【0041】
本開示は、前述の局面および/または態様のいずれか1つまたは複数のすべての組み合わせ、ならびに詳細な説明および実施例において明記される態様のいずれか1つまたは複数との組み合わせを含む。
【0042】
見出し、小見出し、または番号付けされたもしくは文字を付された要素、例えば(a)、(b)、(i)等は、単に読みやすさのために提示される。本文書における見出しまたは番号付けされたもしくは文字を付された要素の使用は、工程もしくは要素がアルファベット順に実施されること、または工程もしくは要素が必然的に互いと個別であることを要しない。
【0043】
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりそれらの全体として組み入れられる。
【0044】
本発明の他の特質、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、非処理PES標本のXPSスペクトルにより、表面上の主たる還元された炭素原子が明らかになっていることを示している。
【
図2】
図2は、100Wで5分間CO2プラズマに曝露されたPESのXPSスペクトルにより、相当なパーセンテージの酸化された炭素、とりわけカルボキシレート基が明らかになっていることを示している。
【
図3】
図3は、PES上の表面カルボキシレート組成が、100W出力でのCO
2プラズマ曝露時間とともに増加することを示している。
【
図4】
図4は、プラズマ/EDC処理によりFcMBLがカップリングされたPESチップ上で実施されたマンナン結合アッセイを示している。
【
図5】
図5は、プレートに吸着した(上のパネル)またはプレートに共有結合でカップリングした(下のパネル)FcMBLを用いて実施されたELISAアッセイの感度を示した一組のグラフである。
【
図6】
図6は、FcMBLがカップリングされたフィルターに沿った断面におけるFcMBLの存在を示したグラフである。
【
図7】
図7は、HRPがカップリングされたフィルターに沿った断面におけるHRPの存在を示したグラフである。
【
図8】
図8は、4度(上のパネル)または25度(下のパネル)での、基体へのFcMBLの付着を示したグラフである。
【
図9】カルシウムの添加の有無でもたらされた、FcMBLカップリングスペクトルフィルターで達成されたマンナン枯渇を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
定義
本明細書において使用するとき、「活性化部分」とは、官能基をより反応性にする分子を指す。例えば、活性化部分は、官能基と(例えば、共有結合的に)反応して、第二の官能基に対するより高い反応性、例えばそれとの共有結合性結合を形成する増加した傾向、を有する改変官能基を形成し得る。一部の態様において、第一の官能基は実体の一部であり、第二の官能基はプラズマ発生部分である。一部の態様において、活性化部分は、実体が付着している基体に含まれていない原子を含む、例えば活性化部分の原子のいずれも、実体が付着している基体に含まれない。
【0047】
本明細書において用いられる「抗体分子」という用語は、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および一本鎖抗体(例えば、scFv)を含めた、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部(抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子)を指す。
【0048】
本明細書において用いられる「生物学的ポリマー」という用語は、生物学的部分の反復単位を含むポリマーを意味することを意図される。代表的な生体ポリマーには、核酸、オリゴヌクレオチド、アミノ酸に基づくポリマー、タンパク質、ペプチド、ペプチドホルモン、オリゴ糖、脂質、糖脂質、リポ多糖、リン脂質、逆位ヌクレオチドを含むポリマー、ペプチド核酸を含むがそれらに限定されない前述のものの合成類似体、および上記の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0049】
本明細書において用いられる「炭水化物認識ドメイン」またはCRDという用語は、微生物もしくは病原体、または微生物もしくは病原体のフラグメントの表面上の炭水化物に結合し得る領域、その少なくとも一部分を指す。例えば、炭水化物認識ドメインは、一部の態様において、マンノース結合レクチン(MBL)CRDを包含し得る。しかしながら、一部の態様において、炭水化物認識ドメインは、MBL CRDに加えてネック領域を包含するとも解釈され得る。一部の態様において、炭水化物認識ドメインは、微生物表面上の炭水化物に結合し得る、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれよりも高い割合を含めた、そのドメインの少なくとも約50%を含み得る。一部の態様において、炭水化物認識ドメインの100%を用いて、微生物または病原体に結合し得る。他の態様において、炭水化物認識ドメインは、炭水化物結合の能力はないが、他の特徴を有し得るまたは他の機能を果たし得る、例えば微生物または病原体と相互作用した場合に炭水化物認識ドメインに柔軟性を提供する、付加的な領域を含み得る。
【0050】
本明細書において使用するとき、「カートリッジ」とは、基体およびそれに付着した実体を含む装置を指す。一態様において、カートリッジは、筐体の中に配置された基体およびそれに付着した実体を含む。一態様において、カートリッジは、システムの別の要素への接続を可能にするように構成される。カートリッジは、例えば再利用可能または使い捨てであり得る。血液透析カートリッジとは、血液透析機械への接続を可能にするように構成されたカートリッジを指す。本明細書において使用するとき、「検出可能な標識」という用語は、標的の存在を示す検出可能なシグナルを産生する組成物を指す。
【0051】
本明細書において使用するとき、「架橋部分」とは、第一の官能基(例えば、実体上の)と共有結合的に反応して、第二の官能基(例えば、プラズマ発生部分)に対するより高い反応性(例えば、それとの共有結合性結合を形成する増加した傾向)を有する改変官能基を形成し得る分子を指し、架橋部分は、架橋反応が完了した後に、第一および/または第二の官能基と共有結合で結合される原子(例えば、複数の原子)を含む。一部の態様において、架橋部分は、プラズマ発生部分への実体の架橋部分媒介性カップリングの後に、そのまま留まりかつ第一の実体をプラズマ発生部分に連結させる原子(例えば、複数の原子)を含む。一部の態様において、架橋部分は、実体が付着している基体に含まれる原子(例えば、複数の原子)を含む。
【0052】
本明細書において使用するとき、「実体」とは、部分、分子、または分子の複合体を指す。実体には、例えば小分子、ポリペプチド、例えば糖ポリペプチド、例えば糖タンパク質、核酸、炭水化物、例えば多糖、生物学的ポリマー、ペプチド模倣物、もしくは薬物、またはその任意の組み合わせが含まれ得る。
【0053】
本明細書において用いられる「抽出され得る分子」とは、基体から出る、例えば基体から脱離する、基体から溶解する、または基体と化学的に連結されなくなる分子を指す。抽出され得る分子は、例えば材料が溶媒、例えば水性溶媒または有機溶媒と接触した場合に、材料を出す可能性がある。
【0054】
本明細書において用いられる「糖ポリペプチド」とは、グリコシル基、例えば複数のグリコシル基、例えばオリゴ糖鎖または多糖鎖を含むポリペプチドを指す。態様において、糖ポリペプチドは、N-連結型またはO-連結型グリコシル化を含む。
【0055】
本明細書において用いられる「浸出し得る分子」とは、例えば材料が溶媒、例えば水性溶媒または有機溶媒と接触した場合に、材料から溶解する分子を指す。
【0056】
本明細書において用いられる「レクチン」という用語は、糖質(例えば、炭水化物)と特異的に相互作用する、天然のまたは遺伝子改変された(例えば、組換えの)タンパク質を含めた、任意の分子を指す。本明細書において用いられる「レクチン」という用語は、所望の炭水化物結合特異性を有する、植物、動物、昆虫、および微小生物を含むがそれらに限定されない任意の種に由来するレクチンも指し得る。植物レクチンの例には、ConA、大豆凝集素、ピーナッツレクチン、レンズ豆レクチンなどのマメ科(Leguminosae)レクチンファミリー、およびガランサス(Galanthus)(スノードロップ)植物由来のガランサス・ニバリス(nivalis)凝集素(GNA)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。植物レクチンの他の例は、イネ科(Gramineae)およびナス科(Solanaceae)ファミリーのレクチンである。動物レクチンの例には、S型レクチン、C型レクチン、P型レクチン、およびI型レクチンという主な群の任意の公知のレクチン、ならびにガレクチンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。一部の態様において、炭水化物認識ドメインは、C型レクチンまたはそのフラグメントに由来し得る。C型レクチンには、結合にカルシウムを必要とする任意の炭水化物結合タンパク質が含まれ得る。一部の態様において、C型レクチンには、コレクチン、DC-SIGN、およびそのフラグメントが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。理論によって拘束されることを望むことなく、DC-SIGNは、一般的に、様々な微生物に、それらのエンベロープ上の高マンノース含有糖タンパク質を認識することによって結合し得、ならびに/またはHIVおよびC型肝炎などのいくつかのウイルスに対する受容体として機能し得る。
【0057】
本明細書において使用するとき、「微生物(microbes)」または「微生物(microbe)」という用語は、一般的に、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、古細菌、原生生物、例えば藻類、およびその組み合わせを含めた、微小生物を指す。「微生物」という用語は、生きたおよび死んだ微生物の両方を包含する。「微生物」という用語には、病原性微生物または病原体、例えばペスト、結核、および炭疽病などの疾患を引き起こす細菌;マラリア、睡眠病、およびトキソプラズマ症などの疾患を引き起こす原生動物;白癬、カンジダ症、またはヒストプラスマ症などの疾患を引き起こす真菌;ならびに敗血症などの疾患を引き起こす細菌または他の微生物も含まれる。
【0058】
本明細書において用いられる「マスキング実体」という用語は、実体の一部分と反応物との反応を阻害する分子または部分を指す。反応物は、例えば、架橋剤などの活性化部分;基体;または別の実体、例えばフリーラジカル、もしくはポリペプチドなどの生物学的ポリマーであり得る。態様において、マスキング実体はオプソニン(例えば、MBL)に結合し、例えばマスキング実体は、Ca2+などの二価カチオン、またはグルコースなどの糖類を含む。
【0059】
本明細書において用いられる「微生物物質」という用語は、微生物に由来する、それに起源がある、またはそれから分泌される任意の物質または成分を指す。例えば微生物に由来するまたはそれから分泌される微生物物質または成分には、細胞壁成分、外膜、原形質膜、リボソーム、微生物莢膜、線毛または鞭毛、前述の微生物成分の任意のフラグメント、微生物に由来する任意の核酸(例えば、16SリボソームDNAを含めたDNA、およびRNA)、および微生物内毒素(例えば、リポ多糖)が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。加えて、微生物物質は、宿主または環境に悪影響(例えば、毒性)を引き起こし得る、生存不能な微生物物質を包含し得る。
【0060】
本明細書において用いられる「改変基体」とは、基体とプラズマとを接触させることによって形成された、プラズマ発生部分(PGM)、例えば官能基を含む基体を指す。態様において、該部分は、ヒドロキシル基、エポキシド基、カルボニル基、またはカルボン酸基を含む。態様において、該部分は、例えばEDCなどの活性化部分の存在下で、実体、例えば生物学的ポリマーと反応性である基を含む。
【0061】
本明細書において用いられる「オプソニン」という用語は、微生物もしくは病原体の表面に結合し得るもしくは付着し得る、または食作用の過程のための結合エンハンサーとして作用し得る、天然に存在するおよび合成の分子を指す。
【0062】
本明細書において使用するとき、「病原性または疾患性分子」とは、疾患、例えば病原体によって引き起こされた疾患と関連している、例えばそれの一因となるまたはそれを示す、分子または分子のフラグメントを指す。一部の態様において、病原性分子は、病原体に、例えば病原体の表面に存在している分子である。病原性または疾患性分子には、例えば微生物物質、細胞壁成分、外膜、原形質膜、リボソーム、微生物莢膜、線毛または鞭毛、前述の微生物成分の任意のフラグメント、微生物に由来する任意の核酸(例えば、16SリボソームDNAを含めたDNA、およびRNA)、および微生物内毒素(例えば、リポ多糖)または外毒素(例えば、溶血素および毒素性ショック症候群毒素-1)が含まれる。態様において、病原性または疾患性分子は、病原体または病原体のフラグメントと物理的に結び付いている。
【0063】
「ペプチド」または「ポリペプチド」という用語は、そのサイズまたは機能にかかわらず、アミノ酸のポリマーまたはアミノ酸類似体を指すために互換可能に用いられる。一部の態様において、「ペプチド」という用語は、小さなポリペプチド、例えば約15~25アミノ酸のポリマーを指す。
【0064】
本明細書において使用するとき、「透過性」材料とは、それに流体を通過させる材料を指す。「透過性」という用語には、半透過性または選択的透過性の材料が含まれる。一部の態様において、透過性材料は、それに溶媒(例えば、水)を通過させるが、1種または複数種の溶質を通過させない。
【0065】
本明細書において用いられる「プラズマ」とは、主として陽イオンおよび自由電子を含む、物質の状態を指す。プラズマは、典型的に、全体的電荷を有しないまたはごくわずか有する。「CO2プラズマ」とは、CO2ガスから産生されるプラズマを指し、例えば自由電子ならびに炭素および酸素原子核を含む。
【0066】
本明細書において用いられる「特異的結合ペア」とは、参照分子に対してよりも互いに対してより大きな親和性を有する部分または分子のペアを指す。一部の態様において、特異的結合ペアのメンバーは、107、108、109、1010、または1011KD以下の互いに対する親和性を有する。
【0067】
本明細書において使用するとき、「対象」および「患者」は、ヒトまたは動物、例えば哺乳類を意味するために互換可能に用いられる。通常、動物は、霊長類、齧歯類、家畜、または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えばアカゲザル(Rhesus)が含まれる。齧歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが含まれる。家畜および狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、猫科の種、例えば飼い慣らされたネコ、犬科の種、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、鳥類の種、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚類、例えばマス、ナマズ、およびサケが含まれる。本明細書において記載される局面のある特定の態様において、対象は哺乳類、例えば霊長類、例えばヒトである。対象は、本明細書において記載される任意の微生物または病原体によって引き起こされた疾患または障害を罹患しているまたは有すると以前に診断されているまたは同定されているものであり得る。単なる例として、対象は、敗血症、炎症性疾患、または感染症を有すると診断され得る。
【0068】
例えば本明細書における方法を用いて基体に付着させるための実体
実体には、例えば小分子、ポリペプチド、例えば糖ポリペプチド、例えば糖タンパク質、核酸、炭水化物、例えば多糖、生物学的ポリマー、小分子、ペプチド模倣物、薬物、ポリマー(例えば、PEGまたはPNA)、分泌タンパク質、シグナル伝達分子、膜に埋め込まれたタンパク質、核酸、染色体、核、ミトコンドリア、葉緑体、鞭毛、生体鉱物、ミニ細胞、抗体分子、抗原、受容体、またはその任意の組み合わせが含まれ得る。実体には、タンパク質/タンパク質複合体または核酸/タンパク質複合体など、互いに非共有結合で結合した分子の複合体、例えば複数の分子も含まれ得る。実体の例は、本明細書において記載される。
【0069】
一部の態様において、実体は、本明細書において記載される密度で、例えば1cm2あたり少なくとも約1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、もしくは1×1017分子、または約500~2000、500~1800、500~1600、500~1200、600~2000、600~1800、600~1600、600~1200、800~2000、800~1800、800~1600、800~1200、1000~2000、1000~1800、1000~1600、もしくは1000~1200個の実体/μm2で付着する。一部の態様において、実体は多量体である。
【0070】
態様において、密度は、結合アッセイまたはイメージングアッセイを用いて決定される。態様において、イメージングアッセイは、実施例7に記載されるように行われる。非蛍光性実体を検出する場合、標識分子が添加され得る、例えば実体がタンパク質である場合、該タンパク質に対する抗体が添加され得る。抗体は直接標識され得る、または標識を有する二次抗体が添加され得る。
【0071】
一部の適切な実体には、タンパク質、ペプチド、核酸、多糖、糖質、プロテオグリカン、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリウレタン、金属および金属酸化物(例えば、酸化鉄、酸化第一鉄、酸化銅、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等)、アルギネート、シルク、グリコサミノグリカン、ケラチン、シリケート、リン脂質、ポリエチレングリコールジオール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペルフルオログルタミン酸(perfluoroglutamic acid)、ペルフルオロポリエーテル(Krytox)、ヒドロキシル末端の、アミン末端の、メチル末端の、および/または炭化水素末端のポリジメチルシロキサン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリアクリルイミド、ポリブタジエン、水、ホルムアミド、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)、酢酸、セルロース、ケラチン、キトサン、キチン、ポリ乳酸、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、フェニル基、ならびにアプタマーが含まれる。
【0072】
実体は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、またはそれを上回る数の微生物表面結合ドメインを含めた、少なくとも1つの微生物表面結合ドメインを含み得る。本明細書において用いられる「微生物表面結合ドメイン」という用語は、微生物もしくは病原体の表面、例えば微生物もしくは病原体の表面に存在している任意の成分、および/または任意の微生物物質、例えば微生物に由来する、それに起源がある、もしくはそれから分泌される任意の物質もしくは成分/フラグメント、に特異的に結合し得る任意の分子もしくはそのフラグメントを指す。微生物表面結合ドメインにおいて用いられ得る分子には、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、抗体分子、抗体フラグメント(例えば、抗体の抗原結合フラグメント)、炭水化物結合タンパク質、例えばレクチン、糖タンパク質、糖タンパク質結合分子、アミノ酸、炭水化物(単糖、二糖、三糖、および多糖を含む)、脂質、ステロイド、ホルモン、脂質結合分子、補因子、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸(例えば、DNAもしくはRNA、核酸の類似体および誘導体、またはアプタマー)、ペプチドグリカン、リポ多糖、小分子、およびその任意の組み合わせが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。一部の態様において、微生物表面結合ドメインは、炭水化物認識ドメインまたはそのフラグメントを含み得る。一部の態様において、微生物表面結合ドメインは、微生物もしくは病原体の表面、および/または任意の微生物物質に特異的に結合し得る任意の分子またはそのフラグメントを模倣するペプチド模倣物を含み得る。例えば、微生物表面結合ドメインは、任意の炭水化物認識ドメインもしくはそのフラグメント、例えばMBLの炭水化物認識ドメインもしくはそのフラグメント;または当技術分野において公知である任意の炭水化物認識ドメインもしくはそのフラグメントを模倣するペプチド模倣物を含み得る。一部の態様において、微生物表面結合ドメインは、炭水化物結合タンパク質の全アミノ酸配列を含む。一部の態様において、微生物表面結合ドメインは、約10~約300アミノ酸残基、または約50~約150アミノ酸残基のアミノ酸配列を有し得る。一部の態様において、微生物表面結合ドメインは、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100アミノ酸残基、またはそれを上回る数のアミノ酸残基のアミノ酸配列を有し得る。微生物表面結合分子の任意の公知の配列に関して、当業者であれば、微生物表面結合ドメインに対するアミノ酸配列の最適な長さを決定し得る。
【0073】
実体は、一部の態様において、基体の表面上の官能基と非共有結合でまたは共有結合でカップリングし得る少なくとも1つのアミノ基を含む。例えば、ポリペプチド実体のN末端におけるまたはN末端のすぐ近くにおけるアミノ酸残基(例えば、リジンまたはシステイン残基)の第一級アミンを用いて、基体表面上の官能基とカップリングし得る。一部の態様において、ポリペプチドにおける(例えば、ポリペプチドのN末端付近の、C末端付近の、または中心領域における)アミノ酸残基(例えば、リジン)の第一級アミンを用いて、基体表面上の官能基とカップリングし得る。
【0074】
抗体分子および他の結合タンパク質
一部の態様において、実体は、免疫グロブリン、例えばそれらのサブクラス(例えば、IgG1)を含めたIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの少なくとも一部分、またはその改変分子もしくは組換えを含む。1つの態様において、該一部分は、全長分子の1つまたは複数の生物学的機能(例えば、結合特性)を保持する。免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEが含まれる。免疫グロブリンの一部分(例えば、フラグメント)および免疫グロブリン誘導体には、一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、Fv、および(Fab')2、トリアボディ、Fc、Fab、CDR1、CDR2、CDR3、CDRの組み合わせ、軽または重Ig鎖の可変領域、テトラボディ、二重特異性ハイブリッド抗体、フレームワーク領域、定常領域等が含まれるが、それらに限定されるわけではない(Maynard et al, (2000) Ann. Rev. Biomed. Eng. 2:339-76;Hudson (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:395-402を参照されたい)。1つの態様において、免疫グロブリン分子は、ヒト由来タンパク質と生物学的に同等の機能を有するタンパク質(例えば、ホモログ(スプライス変種を含む)、変異体、および誘導体)をコードする、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、およびラットなどの種々の生物学的種の間で保存された遺伝子である免疫グロブリンオルソログ遺伝子を包含し得る。免疫グロブリンオルソログには、ヒトおよび他の霊長類、実験哺乳類(マウス、ラット、ハムスター、およびモルモットなど)、商業的に重要な哺乳類(ウマ、ウシ、ラクダ、ブタ、およびヒツジなど)、ならびにまた伴侶動物(飼い慣らされた動物、例えばウサギ、フェレット、イヌ、およびネコなど)、またはラクダ、ラマ、またはサメにおけるオルソログを含めて、IgG、IgA、IgM、IgD、またはIgEの任意の哺乳類オルソログが含まれる。
【0075】
例えば、FcMBL分子のFc部、または本明細書において記載される任意の実体のFc部は、本明細書において記載される免疫グロブリンフラグメントのいずれかで置き換えられ得る。
【0076】
一部の態様において、実体は、接着分子の少なくとも一部分、またはその改変分子もしくは組換えを含む。1つの態様において、該一部分は、全長分子の1つまたは複数の生物学的機能(例えば、結合特性)を保持する。接着分子の非限定的な例には、細胞接着分子(例えば、カドヘリン、セレクチン(selecting)、インテグリン、アドレッシン、リンパ球ホーミング受容体(例えば、CD-34、GLYCAM-1));シナプス細胞接着分子(SynCAM);神経細胞接着分子(NCAM);細胞間細胞接着分子(ICAM-i);血管細胞接着分子(VCAM-i);血小板内皮細胞接着分子(PECAM-1)が含まれる。1つの態様において、接着分子は、本明細書において記述されるオルソログ遺伝子を包含し得る。
【0077】
実体の他の非限定的な例には、L1、CHL1、MAG、ネクチンおよびネクチン様分子、CD2、CD48、SIGLECファミリーメンバー(例えば、CD22、CD83)、ならびにCTXファミリーメンバー(例えば、CTX、JAM、BT-IgSF、CAR、VSIG、ESAM)の一部分が含まれる。1つの態様において、該一部分は、全長分子の1つまたは複数の生物学的機能(例えば、結合特性)を保持する。
【0078】
一部の態様において、実体は、ヘパリンの少なくとも一部分を含む。ヘパリンは、成長因子(例えば、FGF1、FGF2、FGF7)、セリンプロテアーゼ(例えば、トロンビン、Xa因子)、およびセリンプロテアーゼ阻害剤(アンチトロンビンなど)を含めた、様々なタンパク質に結合する。一部の態様において、実体は、グリコサミノグリカン(GAG)の少なくとも一部分を含む。一部の態様において、実体は、少なくとも1種のグリコサミノグリカン(GAG)を含む。GAGには、ヘパリン/ヘパラン硫酸GAG(HSGAG)、コンドロイチン/デルマタン硫酸GAG(CSGAG)、ケラタン硫酸GAG、およびヒアルロン酸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一部の態様において、実体は、ヘモペキシンまたはその一部分、例えばそのヘム結合部を含む。
【0079】
一部の態様において、実体は、参照によりその全体として本明細書に組み入れられる国際出願WO2014/190040に記載されるヘム結合分子を含む。例えば、実体は、ヘモペキシンドメインを含む操作されたヘム結合分子を含み得る。該分子は、リンカー;微生物結合分子;および/または基体結合ドメインからなる群より選択される第二のドメインも含み得、該第二のドメインはヘモペキシンドメインにコンジュゲートされる。
【0080】
一部の態様において、実体は、参照によりその全体として本明細書に組み入れられる国際出願WO2015/095604に記載されるC反応性タンパク質(CRP)分子を含む。例えば、実体は、c反応性タンパク質(CRP)の少なくとも一部分を含む少なくとも1つの第一のドメインを含む、微生物標的分子を含み得る。一部の態様において、該分子は、i.免疫グロブリンのFc領域;ii.微生物結合タンパク質の微生物結合ドメインであって、該微生物結合タンパク質はCRPではない、ドメイン;iii.レクチンのネック領域;iv.検出可能な標識;v.キャリア足場の表面へのコンジュゲートのためのドメイン;vi.CRPのパターン認識受容体ドメイン;およびvii.(i)~(vi)の任意の組み合わせ;ならびに任意で、c.第一および第二のドメインをコンジュゲートするリンカー、からなる群より選択されるドメインの少なくとも一部分を任意で含む、少なくとも1つの第二のドメインも含む。
【0081】
一部の態様において、実体は、受容体分子の少なくとも一部分、またはその改変分子もしくは組換えを含み得る。1つの態様において、該一部分は、全長分子の1つまたは複数の生物学的機能(例えば、結合特性)を保持する。受容体分子の非限定的な例には、細胞外受容体分子(例えば、ニコチン性アセチルコリン受容体、グリシン受容体、GABA受容体、グルタミン酸受容体、NMDA受容体、AMPA受容体、カイニン酸受容体、5-HT3受容体、P2X受容体);細胞内受容体分子(例えば、環状ヌクレオチド感受性(gated)イオンチャネル、IPS受容体、細胞内ATP受容体、リアノジン受容体);免疫受容体分子(例えば、パターン認識受容体、トール様受容体、キラー活性化およびキラー阻害受容体、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体、ならびにT細胞受容体);Gタンパク質共役受容体分子、ウイルス受容体分子(例えば、CAR-コクサッキーアデノウイルス受容体);鉄スカベンジング受容体分子(例えば、LRP/CD91、CD163)が含まれる。1つの態様において、受容体分子は、本明細書において記述されるオルソログ遺伝子およびタンパク質を包含し得る。一部の態様において、実体はホルモン受容体を含む。一部の態様において、ホルモン受容体は、ペプチドホルモン受容体またはステロイドホルモン受容体である。ペプチドホルモン受容体は、その同族ホルモンリガンドに結合する細胞表面受容体または膜貫通受容体であり得る。ステロイドホルモン受容体は、その同族ホルモンリガンドに結合する可溶性受容体である。1つの態様において、ペプチドホルモン受容体には、甲状腺刺激ホルモン受容体、卵胞刺激ホルモン受容体、黄体形成(leutinizing)ホルモン受容体、グルカゴン受容体、またはインスリン受容体が含まれる。別の態様において、受容体は、グルココルチコイド、エストロゲン、アンドロゲン、甲状腺ホルモン(T3)、カルシトリオール(ビタミンD)、またはレチノイド(ビタミンA)に対するものである。一部の態様において、膜貫通受容体は、GsまたはGiタンパク質に結合するGタンパク質共役受容体である。
【0082】
さらなる態様において、実体は、循環腫瘍細胞を富化するリガンド、例えば腫瘍細胞マーカーに対する抗体分子の少なくとも一部分を含む。循環腫瘍細胞を富化するリガンドには、EpCAMに対する抗体分子、CD46に対する抗体分子、CD24に対する抗体分子、およびCD133に対する抗体分子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。さらなる態様において、実体は、母体循環中の胎児細胞を富化するリガンドの少なくとも一部分を含む。胎児細胞を富化するリガンドには、CD71に対する抗体分子、およびグリコホリン-Aに対する抗体分子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。さらなる態様において、実体は、CD45に対する抗体分子およびCD15に対する抗体分子など、循環白血球を富化するリガンドの少なくとも一部分を含む。さらに他の態様において、実体は、特異的結合特性のために操作された非免疫グロブリン結合タンパク質の少なくとも一部分を含む。例えば、実体はアンキリンリピートを含有し得る、または実体はアンチカリンであり得る。1つの態様において、アンチカリンを用いて、標的分子への結合についてライブラリーをスクリーニングし得る(例えば、Gebauer, M., & Skerra, A. (2009). Engineered protein scaffolds as next-generation antibody therapeutics. Current opinion in chemical biology, 13(3), 245-255;およびLofblom, J., Frejd, F. Y., & Stahl, S. (2011). Non-immunoglobulin based protein scaffolds. Current Opinion in Biotechnology, 22(6), 843-848を参照されたく、そのそれぞれは参照によりそれらの全体として組み入れられる)。
【0083】
一部の態様において、Fc部または本明細書において記載される任意の免疫グロブリンフラグメントは、特異的なリガンド、細胞、またはその組み合わせを標的にする、本明細書において記載される任意の実体にコンジュゲートされる。
【0084】
1つの態様において、Fc領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:56を含む。
【0085】
SEQ ID NO:56は、Fcドメインのアミノ酸配列を示す。
【0086】
一部の態様において、Fc領域のN-連結型グリコシル化を除去し得る。例えば、Fc MBL.81において、抗体におけるアミノ酸を番号付けするKabatシステムで、残基297におけるアミノ酸をアスパラギンからアスパラギン酸(N297D)に変えることによって、グリコシル化を除去し得、これはこの特定のFc構築物におけるアミノ酸82に相当する。ゆえに、一部の態様において箇所82はDであり、一部の態様において箇所82はNである。
【0087】
オプソニン、例えばレクチン
一部の態様において、実体は、レクチンなどのオプソニンを含む。一部の態様において、実体は、微生物表面結合ドメインまたは微生物結合分子を含む。
【0088】
一部の態様において、実体は、オプソニンまたはそのフラグメントを含む。本明細書において記載される方法において用いられ得るオプソニンの例には、ビトロネクチン、フィブロネクチン、C1qなどの補体成分(その成分ポリペプチド鎖A、B、およびCのいずれかを含む)、C3d、C3b、およびC4bなどの補体フラグメント、マンノース結合タンパク質、コングルチニン、サーファクタントタンパク質AおよびD、C反応性タンパク質(CRP)、α2-マクログロブリン、ならびに免疫グロブリン、例えば免疫グロブリンのFc部が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0089】
一部の態様において、実体は炭水化物認識ドメインを含み得る。一部の態様において、実体は、炭水化物結合タンパク質の少なくとも一部分またはその一部分をさらに含み得る。一部の態様において、炭水化物結合タンパク質の一部分は、補体系を活性化し得る。代替的な態様において、炭水化物結合タンパク質の一部分は、補体系を活性化し得ない。一部の態様において、炭水化物結合タンパク質の一部分は、それが、例えば改変により、補体系を活性化し得ないように選択され得るまたは構成され得る。炭水化物結合タンパク質の例には、レクチン、コレクチン、フィコリン、マンノース結合レクチン(MBL)、マルトース結合タンパク質、アラビノース結合タンパク質、およびグルコース結合タンパク質が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本明細書において記載される微生物表面結合ドメインに含まれ得る付加的な炭水化物結合タンパク質には、植物に由来するレクチンまたは凝集素、例えばガランサス(スノードロップ)植物由来のガランサス・ニバリス凝集素(GNA)、およびピーナッツレクチンが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。一部の態様において、ペントラキシンファミリーメンバー、例えばC反応性タンパク質も、炭水化物結合タンパク質として用いられ得る。ペントラキシンファミリーメンバーは、一般的に、莢膜で覆われた微生物に結合し得る。炭水化物結合タンパク質は、野生型、組換え、または融合タンパク質であり得る。そのような炭水化物結合タンパク質に対するそれぞれの炭水化物認識ドメインは、当技術分野において公知であり、本明細書において記載される操作された微生物標的分子の様々な態様のために改変され得る。一部の態様において、微生物表面結合ドメイン(例えば、炭水化物認識ドメインまたはそのフラグメント)を模倣しかつ微生物表面に結合し得るペプチド模倣物または任意の構造模倣体も、本明細書において記載される微生物表面結合ドメインとして用いられ得る。
【0090】
コレクチンは、C型レクチンを含有するコラーゲンのスーパーファミリーに属する可溶性パターン認識受容体(PRR)である。例示的なコレクチンには、限定されることなく、マンノース結合レクチン(MBL)(マンナン結合レクチン、マンナン結合タンパク質、またはマンノース結合タンパク質としても知られる)、サーファクタントタンパク質A(SP-A)、サーファクタントタンパク質D(SP-D)、肝臓コレクチン1(CL-L1)、胎盤コレクチン1(CL-P1)、コングルチニン、43kDaのコレクチン(CL-43)、46kDaのコレクチン(CL-46)、およびそのフラグメントが含まれる。
【0091】
マンノース結合タンパク質(MBP)またはマンナン結合レクチンもしくはマンナン結合タンパク質としても知られるマンノース結合レクチン(MBL)は、広範な微生物または病原体(ウイルス、細菌、真菌、原生動物)の表面上の炭水化物に結合することによって、自然免疫応答において役割を果たし得るカルシウム依存性血清タンパク質であり、そこでそれは補体系を活性化し得る。MBLは、直接的なオプソニンとしても働き得、病原体の表面にタグ付けして食細胞による認識および摂取を促すことによって、病原体の結合および/または取り込みを媒介し得る。
【0092】
MBLは、コレクチンファミリーのタンパク質のメンバーである。天然MBLは、そのそれぞれが3本の同一ポリペプチド鎖を含有するサブユニットから構成される多量体構造(例えば、約650kDa)である。各MBLポリペプチド鎖(シグナル配列を有して長さが248アミノ酸残基を含有する:SEQ ID NO:1)は、N末システインリッチ領域、コラーゲン様領域、ネック領域、および炭水化物認識ドメイン(CRD)を含む。各領域の配列は同定されており、当技術分野において周知である。SEQ ID NO:2は、シグナル配列なしのMBLの全長アミノ酸配列を示している。
【0093】
天然MBLの表面または炭水化物認識機能は、a-ヘリックスのコイルドコイルによって一つにまとめられた3つのC型炭水化物認識ドメイン(CRD)のクラスターによって媒介される。N末部のコラーゲン様ドメインは、Gly-X-Yトリプレットから構成される。短いN末ドメインは、鎖間ジスルフィド結合を形成するいくつかのシステイン残基を含有する。血清MBLは、齧歯類では2~4個の三量体サブユニット、ヒトでは6個ものサブユニットを含有するより大きな形態に会合する。MBPAと指定されるラット血清MBPの3つすべてのオリゴマー形態は補体を固定し得る、とはいえより大きなオリゴマーほどより高い特異的活性を有する。多くの種は、MBPの第二の形態を発現する。ラットにおいて、第二の形態のMBP-Cは肝臓に見い出される。MBP-Cは、3つのポリペプチドを含有する単一サブユニットを超えるより高次のオリゴマーを形成しない。
【0094】
天然MBLが微生物または病原体の表面上の炭水化物と相互作用する場合、例えば炭水化物のマンノース、N-アセチルグルコサミン、および/またはフコースへのカルシウム依存的結合の場合、それは、補体活性化のレクチン経路の病原体認識成分を形成し得る。MBLは、反復マンノースまたはN-アセチルグルコサミン残基を含有する表面アレイに結合する。それは1種または複数種のMBP関連セリンプロテアーゼ(MASP)との複合体として循環し、それは、該複合体が適当な表面に結合した場合に自己活性化する。MBLおよび関連MASPタンパク質は、C2/C4転換酵素を活性化し得、病原体表面へのC4の堆積および食作用のためのオプソニン化につながる。天然MBLは、MASPタンパク質を通じて凝固機能も活性化し得る。
【0095】
天然MBLは微生物または病原体を検出し得、食作用のために微生物をタグ付けするためのオプソニンとして作用し得るが、天然MBLは補体系を活性化し得かつ炎症応答を誘導し得るため、天然MBLは、微生物により誘導された炎症性疾患または感染症、例えば敗血症の治療における使用に望ましくない可能性がある。1つの態様において、実体は、例えばMBLに由来する、少なくとも1つの炭水化物認識ドメインまたはそのフラグメントを含む、微生物または病原体に結合する操作されたMBL分子である。一部の態様において、操作されたMBL分子は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの炭水化物認識ドメインまたはそのフラグメントを含み得る。一部の態様において、操作されたMBL分子は、補体系、または天然MBLに存在する凝固副作用を活性化しない。そのような態様は、インビボにおいて下流応答のドミナントネガティブ阻害剤として、またはインビトロにおいて凝固もしくは補体固定を誘導しない微生物結合タンパク質として用いられ得る。例えば、補体固定および/または凝固ドメインを有しない操作されたMBL分子は、サイトカインおよび/または炎症カスケードを活性化するという観点においてドミナントネガティブタンパク質として作用し得、ゆえに全身性炎症症候群および/または敗血症症状を低下させ得る。
【0096】
一部の態様において、実体は、二量体の操作されたMBL分子を含む。二量体分子は、リンカー、例えばFc領域に直接的または間接的に接続された、少なくとも2つの炭水化物認識ドメイン(例えば、MBL CRD)を含み得る。Fc領域のN末は、例えばアミノ酸配列AKTを含むオリゴペプチドをさらに含み得る。一部の態様において、炭水化物認識ドメインは、微生物と相互作用するCRDの柔軟性を提供する、MBLネックなどのネック領域をさらに含み得る。
【0097】
MBLの炭水化物認識ドメイン(CRD)の全長アミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に示されている。本明細書において記載される操作されたMBLの炭水化物認識ドメインは、約10~約300アミノ酸残基または約50~約160アミノ酸残基のアミノ酸配列を有し得る。一部の態様において、微生物表面結合ドメインは、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約150アミノ酸残基、またはそれを上回る数のアミノ酸残基のアミノ酸配列を有し得る。したがって、一部の態様において、操作されたMBL分子の炭水化物認識ドメインは、SEQ ID NO:4を含み得る。一部の態様において、操作されたMBL分子の炭水化物認識ドメインは、SEQ ID NO:4のフラグメントを含み得る。そのようなフラグメントの例示的なアミノ酸配列には、ND(SEQ ID NO:10)、EZN(SEQ ID NO:11:式中、Zは任意のアミノ酸、例えばPである)、NEGEPNNAGS(SEQ ID NO:12)、またはEPNを含むそのフラグメント、GSDEDCVLL(SEQ ID NO:13)、またはEを含むそのフラグメント、および
、またはNDを含むそのフラグメントが含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば保存的置換による、そのようなCRDフラグメントの改変も、本明細書において記載される範囲内にある。一部の態様において、本明細書において記載される操作された微生物標的分子の微生物表面結合ドメインにおいて用いられるMBLまたはそのフラグメントは、野生型分子または組換え分子であり得る。
【0098】
操作された微生物標的分子の炭水化物認識ドメインに対する本明細書において提供される例示的な配列は、限定的であると解釈されない。例えば、本明細書において提供される例示的な配列はヒト種に由来するものの、マウス、ラット、豚、牛、猫、および犬などの他の種における同じ炭水化物認識ドメインのアミノ酸配列は当技術分野において公知であり、本明細書において記載される範囲内にある。
【0099】
一部の態様において、核酸は、任意の公知の炭水化物結合分子(例えば、マンノース結合レクチン)の少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150個の連続したアミノ酸、またはそれを上回る数の連続したアミノ酸のフラグメントと、60%を上回る、70%を上回る、80%を上回る、90%を上回る相同性、またはそれよりも高い相同性を含めた、50%を上回る相同性を有する炭水化物認識ドメインをコードする。
【0100】
一部の態様において、実体は、SEQ ID NO:4のCRD領域と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するポリペプチドを含む。一部の態様において、実体は、SEQ ID NO:5のCRDおよびネック領域と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するポリペプチドを含む。一部の態様において、実体は、SEQ ID NO:6のFcMBLと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するポリペプチドを含む。一部の態様において、実体は、SEQ ID NO:7または8のFcMBL領域と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するポリペプチドを含む。
【0101】
一部の態様において、炭水化物認識ドメインは、アミノ酸配列pdgdsslaaserkalqtemarikkwltfslgkq(SEQ ID NO:15)またはそのフラグメントを有する、MBLのネック領域をさらに含み得る。理論によって拘束されることを望むことなく、ネック領域は、微生物表面に結合するための、CRDの柔軟性および適正な方向性を提供し得る。一部の態様において、炭水化物認識ドメインは、MBLの全長CRD(SEQ ID NO:4;「CRDヘッド」と称される)およびそのネック領域を含み得る。MBLの全長CRDおよびそのネック領域をコードするアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5に示されている。天然MBL「ネックおよびCRDヘッド」の結晶構造は、Chang et al. (1994) J Mol Biol. 241:125-7に以前に示されている。当業者であれば、例えば理論モデリングおよび/またはインビトロ炭水化物結合実験によって、同定されたCRDおよびそのフラグメントを容易に改変して、微生物表面上の炭水化物へのその方向性および結合能を変調し得る。加えて、天然MBL「ネックおよびCRDヘッド」の結晶構造に基づき、CRDヘッドおよび任意でネック領域の少なくともフラグメントを効果的に模倣し得るペプチド模倣物も、本明細書において記載される操作された微生物標的分子またはMBL分子の炭水化物認識ドメインとして用いられ得る。当業者であれば、当技術分野において公知の任意の方法および公知の結晶構造を用いて、過度の実験なしで、そのようなペプチド模倣物構造を容易に決定し得る。
【0102】
一部の態様において、微生物標的分子の炭水化物認識ドメインは、炭水化物結合タンパク質の一部分をさらに含み得る。
【0103】
しかしながら、一部の状況において、炭水化物結合タンパク質またはそのフラグメントによって誘導される補体または凝固活性化は、様々な適用、例えば敗血症のためのインビボ投与または体外治療に応じて、望ましくない可能性がある。そのような態様において、炭水化物結合タンパク質の一部分は、補体および凝固活性化領域の少なくとも1つを除外し得る。例として、炭水化物結合タンパク質がマンノース結合レクチンまたはそのフラグメントである場合、該マンノース結合レクチンまたはそのフラグメントは、コラーゲン様領域に位置した補体および凝固活性化領域の少なくとも1つを除外し得る。そのような態様において、マンノース結合レクチンまたはそのフラグメントは、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基K55またはL56周辺の、少なくとも約2アミノ酸残基、少なくとも約3アミノ酸残基、少なくとも約4アミノ酸残基、少なくとも約5アミノ酸残基、少なくとも約6アミノ酸残基、少なくとも約7アミノ酸残基、少なくとも約8アミノ酸残基、少なくとも約9アミノ酸残基、少なくとも約10アミノ酸残基、またはそれを上回る数のアミノ酸残基を含めた、少なくとも約1アミノ酸残基を除外し得る。操作されたMBL分子から除外され得る、SEQ ID NO:2のK55またはL56を含む例示的なアミノ酸配列には、
、またはその任意のフラグメントが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0104】
付加的なCRD、例えばMBL CRD、およびそれらを調製する方法は、例えばWO2013/012924の段落68~100に記載されており、その出願は参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。ある特定の態様において、実体は、国際出願WO2011/090954またはWO2013/012924に記載される操作された微生物標的分子に由来し得;その内容は参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる。
【0105】
一部の態様において、実体は、多量体微生物表面結合ドメインまたは炭水化物認識ドメインを形成するために一つに連結された、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、またはそれを上回る数の微生物表面結合ドメインを含めた、少なくとも2つの微生物表面結合ドメイン(例えば、炭水化物認識ドメイン)を含む。そのような態様において、微生物表面結合ドメイン(例えば、炭水化物認識ドメイン)間の距離は、標的微生物表面上の結合部位間の距離と合致するように操作され得る。
【0106】
多量体微生物表面結合ドメインは、同じである個々の微生物表面結合ドメインのそれぞれを有し得る。あるいは、多量体微生物表面結合ドメインは、残りとは異なる少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つの微生物表面結合ドメインを有し得る。そのような態様において、微生物表面上の炭水化物に対する共通の結合特異性を共有する微生物表面結合ドメインが用いられ得る。単なる例として、いくつかのレクチンのフィブリノーゲン様ドメインは、MBLを含めたC型レクチンのCRDに対する同様の機能、および病原体と自己とを区別するパターン認識受容体としての機能を有する。フィブリノーゲン様ドメインを含むそのようなレクチンの1つは血清フィコリンである。
【0107】
血清フィコリンは、GlcNAc(N-アセチル-グルコサミン)、エラスチン、またはGalNAc(N-アセチル-ガラクトサミン)に対する共通の結合特異性を有する。フィブリノーゲン様ドメインは、炭水化物結合に関与する。ヒト血清において、L-フィコリン(P35、フィコリンL、フィコリン2、またはフコリン(hucolin)とも呼ばれる)およびH-フィコリン(博多抗原、フィコリン3、または熱不安定性b2-マクロ糖タンパク質とも呼ばれる)として知られる2つのタイプのフィコリンが同定されており、それらの両方ともレクチン活性を有する。L-フィコリンはGlcNAcを認識し、H-フィコリンはGalNAcを認識する。M-フィコリン(P35関連タンパク質、フィコリン1、またはフィコリンAとも呼ばれる)として知られる別のフィコリンは、血清タンパク質ではないと見なされ、白血球および肺に見い出される。L-フィコリンおよびH-フィコリンは、MASPと関連してレクチン補体経路を活性化する。M-フィコリン、L-フィコリン、およびH-フィコリンは、カルシウム非依存的レクチン活性を有する。したがって、一部の態様において、操作された微生物標的、例えば操作されたMBL分子は、MBLおよびL-フィコリン炭水化物認識ドメイン、MBLおよびH-フィコリン炭水化物認識ドメイン、またはその組み合わせを含み得る。
【0108】
当技術分野において認められた任意の組換え炭水化物結合タンパク質または炭水化物認識ドメインも、操作された微生物標的分子において用いられ得る。例えば、組換えマンノース結合レクチン、例えばその内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,270,199号;第6,846,649号;および米国特許出願第US 2004/0229212号に開示されるものであるがそれらに限定されないものが、本明細書において記載される組成物を構築することにおいておよび方法において用いられ得る。
【0109】
1つの態様において、微生物結合分子は、MBL、MBLの炭水化物認識ドメイン、またはその内容が参照により本明細書に組み入れられる2011年1月19日に出願された国際出願第WO 2011/090954号に記載されるMBLの遺伝子操作された型(FcMBL)を含む。MBLおよび操作されたMBLに対するアミノ酸配列には、以下が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
(i)MBL全長(SEQ ID NO:1):
(ii)シグナル配列なしのMBL(SEQ ID NO:2):
(iii)切断されたMBL(SEQ ID NO:3):
(iv)MBLの炭水化物認識ドメイン(CRD)(SEQ ID NO:4):
(v)MBLのネック+炭水化物認識ドメイン(SEQ ID NO:5):
(vi)FcMBL.81(SEQ ID NO:6):
(vii)AKT-FcMBL(SEQ ID NO:7):
(viii)FcMBL.111(SEQ ID NO:8):
【0110】
一部の態様において、微生物結合分子は、SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:8より選択されるアミノ酸配列もしくはその微生物結合フラグメント、またはそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の配列を含む。
【0111】
理論によって拘束されることを望むことなく、レクチンを含む微生物結合分子またはその改変型は、広域スペクトルの病原体結合分子として作用し得る。したがって、サンプル中に存在する微生物および/または微生物物質は、該微生物を同定することなく、レクチンに基づく微生物結合分子を用いて結合され得る。
【0112】
CD209
一部の態様において、微生物結合ドメインは、CD209(分化のクラスター209)の炭水化物認識ドメインまたはその機能的フラグメントを含む。CD209は、ヒトにおいてCD209遺伝子によってコードされるタンパク質である。CD209は、DC-SIGN(樹状細胞特異的細胞間接着分子-3捕獲非インテグリン(Dendritic Cell-Specific Intercellular adhesion molecule-3-Grabbing Non-integrin))としても知られる。DC-SIGNは、マクロファージおよび樹状細胞の両方に存在するC型レクチン受容体である。マクロファージ上のCD209は、ウイルス、細菌、および真菌によく見い出される病原体関連分子パターン(PAMP)の分類であるマンノース型炭水化物を認識しかつ結合する。この結合相互作用は、食作用を活性化する。骨髄系樹状細胞および前形質細胞様(pre-plasmacytoid)樹状細胞上で、CD209は、血液内皮との樹状細胞ローリング相互作用およびCD4+ T細胞の活性化、ならびに病原体ハプテンの認識を媒介する。CD209はC型レクチンであり、ICAM3分子に対する高い親和性を有する。それは、様々な微小生物に、それらのエンベロープ上の高マンノース含有糖タンパク質を認識することによって結合し、とりわけ、HIVおよびC型肝炎などのいくつかのウイルスに対する受容体として機能する。DC-SIGNへの結合は、HIVおよびC型肝炎ウイルスが樹状細胞からT細胞に感染するのを促進し得る。ゆえに、DC-SIGNへの結合は、HIC感染にとって重要な過程である。接着分子として機能する以外に、最近の研究は、CD209が、トール様受容体を変調することによって自然免疫を開始し得ることも示している。DC-SIGNは、他のC型レクチンとともに、樹状細胞による腫瘍の認識に関与する。CD209は、樹状細胞に基づく癌ワクチンの潜在的な操作標的でもある。CD209の例示的な結合標的には、マンノースおよび他の糖類が含まれる。
【0113】
一部の態様において、実体は、CD209の炭水化物認識ドメインまたはその微生物結合フラグメントを含み、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の配列を含む。
【0114】
CD209L
一部の態様において、実体は、CD209Lの炭水化物認識ドメインまたはその機能的フラグメントを含む。CD209Lは、L-SIGN(肝臓/リンパ節特異的細胞内接着分子-3捕獲非インテグリン)とも呼ばれ、HIV gl20結合タンパク質のCD209抗原と77%同一であるII型内在性膜タンパク質である。このタンパク質は、CD209と同様に、細胞間接着分子3(ICAM3)およびHlV-1 gl20の両方に効率的に結合し、T細胞のHIV-1感染を増強する。L-SIGNに対する遺伝子は、CD209およびCD23/FCER2遺伝子を有するクラスターにおいて19p13.3にマッピングされる。複数の選択的スプライスによる転写産物変種がこの遺伝子に対して見い出されているが、一部の変種の生物学的妥当性は決定されていない。CD209Lの例示的な結合標的には、マンノースおよび他の糖類が含まれる。
【0115】
一部の態様において、実体は、L-SIGNの炭水化物認識ドメインまたはその微生物結合フラグメントを含み、SEQ ID NO:25のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の配列を含む。
【0116】
パターン認識受容体(PRR)
一部の態様において、実体は、パターン認識受容体またはその機能的フラグメントを含む。パターン認識受容体(PRR)は、免疫系の原始的部分である。それらは、微生物病原体または細胞ストレスと関連付けされる病原体関連分子パターン(PAMP)、ならびに細胞損傷の間に放出される細胞成分と関連付けされる損傷関連分子パターン(DAMP)を同定する、自然免疫系の細胞によって発現されるタンパク質である。それらは、免疫系の他の部分の前に、特に適応免疫の前に進化したため、病原体認識受容体または原始的パターン認識受容体とも呼ばれる。所定のPRRによって認識される微生物特異的分子は、病原体関連分子パターン(PAMP)と呼ばれ、細菌炭水化物(リポ多糖またはLPS、マンノースなど)、核酸(細菌またはウイルスDNAまたはRNAなど)、細菌ペプチド(フラジェリン、ax21)、ペプチドグリカンおよびリポタイコ酸(グラム陽性細菌由来)、N-ホルミルメチオニン、リポタンパク質、ならびに真菌グルカンを含む。内因性ストレスシグナルは、危険関連分子パターン(DAMP)と呼ばれ、尿酸を含む。PGRPに対する例示的な結合標的には、ペプチドグリカン(PGN)が含まれる。
【0117】
PRRは、それらのリガンド特異性、機能、位置、および/または進化的関係性に従って分類される。機能に基づいて、PRRは、エンドサイトーシスPRRまたはシグナル伝達PRRに分けられ得る。シグナル伝達PRRには、膜結合型トール様受容体および細胞質NOD様受容体の大ファミリーが含まれる。エンドサイトーシスPRRは、細胞内シグナルを中継することなく、食細胞による微小生物の付着、貪食、および破壊を促進する。これらのPRRは炭水化物を認識し、マクロファージのマンノース受容体、すべての食細胞上に存在するグルカン受容体、ならびに荷電リガンドを認識し、すべての食細胞上に見い出され、およびアポトーシス細胞の除去を媒介するスカベンジャー受容体を含む。
【0118】
一部の態様において、PRRはCD14である。CD14は、細菌リポ多糖(LPS)の検出のための共受容体(トール様受容体TLR4およびMD-2とともに)として作用する。CD14は、リポ多糖結合タンパク質(LBP)の存在下でLPSにのみ結合し得る。LPSはその主要リガンドと見なされるが、CD14は他の病原体関連分子パターンも認識する。CD14に対する例示的な結合標的には、リポ多糖(LPS)、ペプチドグリカン(PGN)、およびリポタイコ酸(LTA)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0119】
一部の態様において、実体は、PRRまたはその微生物結合フラグメントを含み、SEQ ID NO:26のアミノ酸、またはそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の配列を有する。
【0120】
ペプチドグリカン認識タンパク質
ペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP)は、昆虫から哺乳類まで保存されているパターン認識分子であり、細菌およびそれらの固有の細胞壁成分のペプチドグリカン(PGN)を認識する。PGRPは、少なくとも1つのカルボキシ末端PGRPドメイン(およそ165アミノ酸長)を有し、それはバクテリオファージおよび細菌2型アミダーゼと相同である。昆虫は、短い(S)および長い(L)形態に分類される最高19種のPGRPを有する。短い形態は、血リンパ、クチクラ、および脂肪体細胞に、ときには胃腸および血球における表皮細胞に存在し、一方で長い形態は主に血球に発現される。
【0121】
ショウジョウバエ、蚊、および哺乳類は、それぞれ13種、7種、および4種のPGRP遺伝子のファミリーを有し、これらの遺伝子の一部は選択的にスプライスされる。PGRPは、様々な細胞および組織で差異的に発現し、それらの発現はしばしば細菌によって上方調節され、ならびにそれらは細菌感染に対する宿主応答を媒介する。昆虫PGRPは、昆虫に固有である4つの公知のエフェクター機能を有する:プロフェノールオキシダーゼカスケードの活性化、トール受容体の活性化、Imd経路の活性化、および食作用の誘導。1つの機能のアミダーセ活性は、一部の昆虫および哺乳類PGRPによって共有され、一方で一部の哺乳類PGRPの抗細菌活性は、哺乳類に固有である。昆虫PGRPの発現は、細菌への曝露によってしばしば上方調節される。
【0122】
哺乳類は、昆虫PGRPに対する類似性によって、PGRP-S、PGRP-L、ならびにPGRP-lαおよびPGRP-Iβ(それぞれ、「短い」、「長い」、または「中間の」転写産物に対して)と頭文字で名前を付けられた、4種のPGRPのファミリーを有する。その後、ヒトゲノム体系化遺伝子命名委員会(Human Genome Organization Gene Nomenclature Committee)が、それらの記号をそれぞれPGLYRP-1、PGLYRP-2、PGLYRP-3、およびPGLYRP-4に変えた。この術語はマウスPGRPにも用いられ、全脊椎動物PGRPに採用され始めている。1種の哺乳類PGRPのPGLYRP-2は、細菌ペプチドグリカンを加水分解しかつその炎症誘発活性を低下させるN-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼであり;PGLYRP-2は肝臓から血液に分泌され、上皮細胞では細菌によっても誘導される。残り3種の哺乳類PGRPは、ジスルフィド連結したホモおよびヘテロ二量体として分泌される殺菌性タンパク質である。PGLYRP-1は、主として多形核白血球顆粒で発現され、PGLYRP-3およびPGLYRP-4は、皮膚、目、唾液腺、喉、舌、食道、胃、および腸で発現される。これら3種のタンパク質は、他の抗細菌性ペプチドがするように細菌膜を透過化するのではなく、細胞壁ペプチドグリカンと相互作用することによって細菌を死滅させる。これらPGRPの直接的な殺菌活性は、脊椎動物(または哺乳類)系統で進化した、または昆虫でまだ発見されていない。哺乳類PGLYRP-1、PGLYRP-2、PGLYRP-3、およびPGLYRP-4は、本明細書においてそれぞれPGRP-L、PGRP-2、PGRP-3、およびPGRP-4とも称される。
【0123】
一部の態様において、微生物結合ドメインは、PGRPまたはそのフラグメントを含む。一部の態様において、微生物結合ドメインは、ヒト、マウス、牛、または甲虫由来のPGRPまたはそのフラグメントを含む。一部の態様において、微生物結合ドメインは、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34、およびSEQ ID NO:35からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むPGRPまたはその(therefore)フラグメントを含む。
【0124】
他の種由来
一部の態様において、実体は、エビ由来の炭水化物認識ドメインまたはそのフラグメント(例えば、機能的な)を含む。例えば、実体は、エビのMjレクチンCまたはMjレクチンBの炭水化物認識ドメインまたはそのフラグメントを含み得る。MjレクチンCに対する例示的な結合標的には、微生物細胞壁が含まれる。一部の態様において、実体(例えば、微生物結合ドメインを含む実体)は、アミノ酸配列SEQ ID NO:23またはSEQ ID NO:36を含む。
【0125】
一部の態様において、実体(例えば、微生物結合ドメインを含む実体)は、小麦胚芽凝集素またはWGA由来の炭水化物認識ドメインまたはそのフラグメント(例えば、機能的な)を含む。WGAは、小麦(トリティカム・ブルガリス(Triticum vulgaris))を昆虫、酵母、および細菌から保護するレクチンである。凝集素タンパク質であるそれは、N-アセチル-D-グルコサミンおよびシアル酸に結合する。小麦の天然環境におけるN-アセチル-D-グルコサミンは、昆虫のキチン、ならびに酵母および細菌の細胞膜に見い出される。WGAは、小麦穀粒において豊富にではあるが独占的にではなく見い出される。哺乳類において、WGAが結合するN-アセチル-D-グルコサミンは、数ある場所の中でも、軟骨および角膜に見い出される。そうした動物において、シアル酸は、粘膜、例えば内鼻(inner nose)の内壁、および消化管に見い出される。溶液中で、WGAは、大部分が38,000ダルトンのヘテロ二量体として存在する。それは、生理学的pHでカチオン性である。一部の態様において、微生物結合ドメインは、WGA由来の炭水化物認識ドメインまたそのフラグメントを含み、SEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含む。
【0126】
タバコ鉤虫のタバコスズメガ(Manduca sexta)において、ペプチドグリカン認識タンパク質は、免疫応答を増強する刺激性PRRとして機能することが示されている。したがって、一部の態様において、微生物結合ドメインは、タバコスズメガ由来のPRRドメインを含む。一部の態様において、微生物結合ドメインは、SEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含む。
【0127】
理論によって拘束されることを望むことなく、本明細書において記載される微生物結合分子またはその改変型は、広域スペクトルの病原体結合分子として作用し得る。
【0128】
したがって、試験サンプル中に存在する微生物および/または微生物物質は、該微生物を同定することなく、本明細書において記載される微生物結合分子を用いて捕捉され得る。
【0129】
一部の態様において、微生物表面結合ドメインは、表1に示される配列およびその組み合わせより選択されるアミノ酸配列を含む。
【0130】
(表1)一部の例示的な微生物表面結合ドメインアミノ酸配列
【0131】
一部の態様において、微生物結合分子は、表2に示される配列およびその任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0132】
(表2)一部の例示的な操作された微生物結合分子アミノ酸配列
【0133】
抗微生物ペプチド
一部の態様において、実体は、抗微生物ペプチドまたはその機能的フラグメントを含む。一部の態様において、実体は、例えば抗微生物ペプチドのN末端またはC末端に、炭水化物認識ドメインをさらに含む。さらに、抗微生物ペプチドは、炭水化物認識ドメインに、直接的にまたはリンカー(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを上回る数のアミノ酸のペプチド)を介して連結され得る。1つの態様において、抗微生物ペプチドは、炭水化物認識ドメインのC末に連結される。
【0134】
抗微生物ペプチド(宿主防御ペプチドとも呼ばれる)は、自然免疫応答の進化的に保存された成分であり、すべての分類の生き物の中に見い出される。抗微生物ペプチドに対する標的であり得る原核および真核細胞の間には、根本的な相違が存在する。これらのペプチドは、新規な治療剤としての潜在性を実証する、強力な広域スペクトルの抗生物質である。抗微生物ペプチドは、グラム陰性およびグラム陽性細菌(従来の抗生物質に耐性がある株を含む)、マイコバクテリウム(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)を含む)、エンベロープを有するウイルス、真菌、ならびにさらには形質転換されたまたは癌性の細胞を死滅させることが実証されている。従来の抗生物質の大多数とは異なり、それは、まるで抗微生物ペプチドが、免疫変調因子として機能することによって免疫を増強する能力も有し得るかのように見える。
【0135】
抗微生物ペプチドは、固有でかつ多様な群の分子であり、それは、それらのアミノ酸組成および構造に基づいて亜群に分けられる。
【0136】
抗微生物ペプチドは、一般的に12~50アミノ酸である。これらのペプチドは、アルギニン、リジン、または酸性環境においてヒスチジン、および疎水性残基の大部分(一般的に>50%)によって提供される、2つまたはそれを上回る数の荷電残基を含む。これらの分子の二次構造は、i)a-ヘリックス型、it)2つまたはそれを上回る数のジスルフィド結合の存在に起因するβ-ストランド型、iii)単一ジスルフィド結合の存在および/またはペプチド鎖の環化に起因するβ-ヘアピンまたはループ型、ならびにiv)伸長型、を含めた4つの主題に従う。これらのペプチドの多くは、自由溶液中で構造化されておらず、生物学的膜に分配されるとそれらの最終的な立体配置に折り畳まれる。それは、ヘリックス状分子の一方の側に沿って並んだ親水性アミノ酸残基、および反対側に沿って並んだ疎水性アミノ酸残基を含有する。抗微生物ペプチドのこの両親媒性が、膜脂質二重層への分配を可能にする。膜透過化は必要ではないものの、膜と結び付く能力は抗微生物ペプチドの決定的な特質である。これらのペプチドは、膜透過化から幅広い細胞質標的に対する作用に及ぶ、様々な抗微生物活性を有する。
【0137】
抗微生物ペプチドが細菌を死滅させる作用の仕方は変動し、膜を分断すること、代謝に干渉すること、および細胞質成分を標的にすることを含む。抗微生物ペプチドのピシジン(Piscidin)においてなど、ほとんどの細菌表面はアニオン性または疎水性であるため、ペプチドと標的生物との間の初回の接触は静電的である。それらのアミノ酸組成、両親媒性、カチオン性電荷、およびサイズにより、それらは膜二重層に付着しかつ挿入して、「たる板(barrel-stave)」、「カーペット」、または「トロイダル細孔」メカニズムによって細孔を形成することが可能となる。あるいは、それらは細胞内に透過して、細胞生存に重要である細胞内分子に結合し得、細胞内結合モデルには、細胞壁合成の阻害、細胞質膜の変更、オートリシンの活性化、DNA、RNA、およびタンパク質合成の阻害、ならびにある特定の酵素の阻害が含まれる。しかしながら、多くの場合、死滅の正確なメカニズムは分かっていない。多くの従来の抗生物質とは対照的に、これらのペプチドは、静菌性(細菌成長阻害剤)ではなく、殺菌性(細菌殺傷剤)であるように見える。一般的に、これらのペプチドの抗微生物活性は、細菌成長を阻害する薬物(drag)の最低濃度である最小阻止濃度(MIC)を測定することによって判定される。
【0138】
細菌を直接死滅させることに加えて、抗微生物ペプチドは、宿主遺伝子発現を変更する、ケモカインとして作用する、および/またはケモカイン産生を誘導する能力を含めた、感染のクリアランスに関与し得るいくつかの免疫変調因子機能を有することが実証されており、リポ多糖により誘導された炎症誘発性サイトカイン産生を阻害し、創傷治癒を促進し、ならびに樹状細胞および適応免疫応答の細胞の応答を変調する。動物モデルは、宿主防御ペプチドが、感染の防止およびクリアランスの両方に重要であることを示す。
【0139】
抗微生物ペプチドは、細菌由来、真菌、ヒドラ、昆虫(マストパラン、ポネラトキシン、セクロピン、モリシン(moricin)、メリチン等)、カエル(マガイニン、ダーマセプチン、および他)、および哺乳類(例えば、カテリシジン、ディフェンシン、およびプロテグリン)由来のペプチドを含めて、すべての種によって産生される。
【0140】
抗微生物ペプチドを用いた細菌細胞および宿主細胞の競合において、抗微生物ペプチドは、哺乳類細胞よりも細菌細胞と優先的に相互作用し、それによりそれらは、哺乳類細胞に重大に有害であることなく、微小生物を死滅させることが可能となる。一部の態様において、抗微生物ペプチドは、細菌細胞膜の外葉との静電相互作用および疎水性相互作用を有する。
【0141】
抗微生物ペプチドの例示的なタイプには、一般的にグルタミン酸およびアスパラギン酸に富む、アニオン性ペプチド(例えば、両生類由来のマクシミンH5およびヒト由来のダームシジン);一般的にシステインを欠く、直鎖カチオン性α-ヘリックスペプチド(例えば、昆虫由来のセクロピン、アンドロピン、モリシン、セラトトキシン(ceratotoxin)、およびメリチン、両生類由来のマガイニン、ダーマセプチン、ボンビニン、ブレブミン(brevmin)-1、エスクレチン、およびブフォリンII、ウサギ由来のCAP18、ヒト由来のLL37);一般的にプロリン、アルギニン、フェニルアラニン、グリシン、またはトリプトファンに富む、特異的アミノ酸について富化されたカチオン性ペプチド(例えば、ミツバチ由来のアバエシン、アピデシン、ブタ由来のプロフェニン、うし由来のインドリシジン(indoilcidin));ならびに一般的に1~3個のジスルフィド結合を含有するアニオン性およびカチオン性ペプチド(例えば、ブタ由来のブレビニン(1個の結合)、プロテグリン、およびカブトガニ由来のタキプレシン(2個の結合)、ヒト由来のディフェンシン(3個の結合)、ミバエにおけるドロソマイシン(3個を上回る数の結合))が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一部の態様において、抗微生物ペプチドはペキシガナンである。
【0142】
一部の態様において、抗微生物ペプチドは、アミノ酸配列
を含む。
【0143】
小分子
一部の態様において、実体は小分子である。一部の態様において、実体は、抗生物質、抗新生物剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、または抗真菌剤である。
【0144】
薬物
一部の態様において、実体は薬物、例えば小分子またはタンパク質薬物である。一部の態様において、実体は、アンピシリン、ノルフロキサシン、リファンピン、チゲサイクリン、セフォペラゾン、フラゾリドン、スルファジアジン銀、ダプソン、ゲミフロキサシン、スルファジミジン、エノキサシン、スルフイソキサゾール、セフトロザン、プロントジル、スルファメラジン、スルファピリジン、グレパフロキサシン、スルファレン、スルファメトキシピリダジン、酢酸/ヒドロコルチゾン、スルファベンズアミド、スルファメトロール、スルファメトキシジアジン、ビリジカタムトキシン(ciridicatumtoxin)B、スルファフェナゾール、スルファモキソール、スルファメトミジン、スルファチオ尿素、またはスルファペリンなどの抗生物質である。
【0145】
一部の態様において、薬物は、ポリミキシンBまたはその成分など、カチオン性の塩基性ペプチドを含む。薬物は、例えばポリミキシンB1、B1-I、B2、B3、もしくはB6、またはその任意の組み合わせを含み得る。
【0146】
一部の態様において、実体は、抗血小板剤(例えば、アスピリン、クロプリジゴール(clopridigol)、チエノピリジン、またはP2Y12阻害剤)、および/または抗凝固剤(例えば、クマジン、アセノクマロール、フェンプロクモンダビガトラン(phenprocoumondabigatran)、アピキサバン、およびリバロキサバン)である。
【0147】
一部の態様において、実体は、抗コレステロール剤(例えば、スタチン)または抗リポタンパク質剤である。
【0148】
核酸
一部の態様において、実体は、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドを含み得る。オリゴヌクレオチドの配列および長さは、基体のタイプ、結合密度、および/または所望の結合強度に従って構成され得る。例えば、基体が核酸足場、例えばDNA足場である場合、基体結合ドメインのオリゴヌクレオチド配列は、それが、基体結合ドメインがハイブリダイズし得る核酸足場の部分配列に相補的であるように設計され得る。
【0149】
一部の態様において、オリゴヌクレオチドにはアプタマーが含まれ得る。態様において、アプタマーは、ワトソン-クリック塩基対合または三重鎖形成以外のメカニズムによって選択非オリゴヌクレオチド分子または分子の群を特異的に認識し得る、一本鎖、部分的に一本鎖、部分的に二本鎖、または二本鎖のヌクレオチド配列である。アプタマーは、限定されることなく、規定された配列セグメント、ならびにヌクレオチド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、改変ヌクレオチド、および骨格改変、分岐点と非ヌクレオチドの残基、基、または架橋を含むヌクレオチドを含む配列を含み得る。分子への結合のためのアプタマーを選択するための方法は、当技術分野において広く公知であり、当業者に容易に利用可能である。アプタマーを含めたオリゴヌクレオチドは、任意の長さのもの、例えば約1ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、約5ヌクレオチド~約50ヌクレオチド、または約10ヌクレオチド~約25ヌクレオチドであり得る。一般的に、核酸足場へのハイブリダイゼーションのためのより長いオリゴヌクレオチドほど、操作された微生物表面結合ドメインと基体との間により強力な結合強度をもたらし得る。
【0150】
リンカー
一部の態様において、実体は、リンカー、例えば実体の2つのドメインを接続するリンカーを含む。一部の態様において、2つのドメインは、本明細書において記載されるドメインである。一部の態様において、リンカーは、1つまたは複数の微生物表面結合ドメインに直接的または間接的に接続し得る。限定されることなく、一部の態様において、リンカーは、1種もしくは複数種の微生物、微生物物質、および/または他の標的分子に対する結合部位も提供し得る。そのような態様において、微生物は微生物表面結合ドメインに結合するため、リンカー上の微生物結合部位は、同じタイプおよび/または種の微生物に結合し得る。あるいはまたは加えて、リンカー上の微生物結合部位は、本明細書において記載される微生物表面結合ドメインに結合するものとは異なるタイプおよび/または種の微生物を捕捉し得る。
【0151】
リンカーは、実体(例えば、微生物表面結合ドメインを含む実体)のNまたはC末に付着し得る。さらに、リンカーは、実体(例えば、微生物表面結合ドメインを含む実体)に、直接的にまたは別のリンカー(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを上回る数のアミノ酸のペプチド)を介して連結され得る。1つの態様において、リンカーは、実体(例えば、微生物表面結合ドメインを含む実体)のN末に付着する。
【0152】
一部の態様において、リンカーは核酸、例えばDNAまたはRNAを含む。
【0153】
一部の態様において、リンカーは、任意の長さの化学的リンカーであり得る。一部の態様において、化学的リンカーは、直接結合、または酸素もしくは硫黄などの原子、NH、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NHなどの単位、または置換もしくは非置換C1-C6アルキル、置換もしくは非置換C2-C6アルケニル、置換もしくは非置換C2-C6アルキニル、置換もしくは非置換C6-C12アリール、置換もしくは非置換C5-C12ヘテロアリール、置換もしくは非置換C5-C12ヘテロシクリル、置換もしくは非置換C3-C12シクロアルキルなどの原子の鎖であって、1つもしくは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO2、NH、もしくはC(O)によって割り込まれ得るもしくは終結され得る原子の鎖、を含み得る。一部の態様において、化学的リンカーはポリマー鎖(分岐または直鎖)であり得る。
【0154】
例えば本明細書における方法を用いた実体の付着のための基体
多くのタイプの固体基体が、本開示に従って用いられ得る。ある特定の態様において、化学的反応性表面(つまり、活性化されて化学的反応性表面を提供し得る表面)を有する固体基体が用いられる。1つの態様において、表面は平滑である。他の態様において、表面は、いかなる程度の表面粗度にも限定されない。態様において、表面は多孔質である。
【0155】
一部の態様において、多孔質固体基体は、低流量血液透析に適切なより小さな細孔サイズ、または高流量血液透析に適切なより大きな細孔サイズを有する。一部の態様において、多孔質固体基体は、約1~2、2~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~500、もしくは500~1000nm、または約1~2、2~5、5~10、10~20、20~50、もしくは50~100μmの平均孔径を有する。一部の態様において、基体における孔径の標準偏差は、平均孔径の約50%、20%、10%、5%、2%、または1%未満である。
【0156】
一部の態様において、固体基体は透過性、例えば半透過性である。一部の態様において、基体は、水、クレアチン、尿素、カリウム、ホスフェート、ナトリウム、塩化物、グルコース、またはその任意の組み合わせに透過性である。一部の態様において、透過性固体基体は、サイズが最高で1、2、5、10、20、50、100、200、500、1,000、2,000、5,000、10,000、または20,000ダルトンの分子に透過性である。一部の態様において、基体は、β-2-ミクログロブリン(およそ11,600ダルトン)に透過性である。一部の態様において、多孔質固体基体は、サイズが1,000、2,000、5,000、10,000、20,000、50,000、または100,000ダルトンよりも大きな分子に透過性でない。一部の態様において、多孔質固体基体は、アルブミン(およそ66,400ダルトン)に透過性でない。一部の態様において、多孔質固体基体は、細胞に透過性でない。一部の態様において、多孔質固体基体は、直径がおよそ0.1、0.2、0.5、1、2、または5ミクロンよりも大きな細孔を含まない。一部の態様において、多孔質固体基体は、直径がおよそ0.5ミクロンよりも大きな細孔を含まない。
【0157】
ある特定の態様において、固体基体は、その内容が参照によりその全体として本明細書に組み入れられる2013年1月10日に出願されたPCT出願第PCT/US2013/021056号に記載されるものなど、平滑表面であり得る。
【0158】
固体基体の形状は、様々な原料の立体配置に合う任意の形、形態、または立体配置であり得る。液体を寄せ付けない表面が取り得る形、形態、および立体配置の非限定的な例には、おおむね球状(例えば、ビーズ)、チューブ状(例えば、カニューレ、コネクター、カテーテル、針、毛細管、またはシリンジに関して)、平面的(例えば、顕微鏡スライド、プレート、ウエハー、フィルム、または実験室作業表面に関して)、または任意の形をした(例えば、ウェル、ウェルプレート、ペトリディッシュ、タイル、ジャー、フラスコ、ビーカー、バイアル、試験チューブ、カラム、容器、キュベット、ボトル、ドラム缶、バット、またはタンク)が含まれる。固体基体は、柔軟または硬質であり得る。
【0159】
固体基体原料は、本明細書において記載される改変の能力がある任意の原料であり得る。多くの固体基体原料が市販されている、または当技術分野において公知の様々な製造技法によって作製され得る。本明細書において記載されるように官能化され得る基体表面の非限定的な例には、例えばセルロース、変性セルロース(例えば、酢酸セルロース)、ガラス、ポリマー(例えば、ポリスルホン、ポリアリルエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸(glycolitic acid)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル)等)、可塑剤を有するポリマー(例えば、ビス(2-エチルヘキシル)フタレートを有するポリ塩化ビニル等)、金属、金属合金、半金属、紙、プラスチック、様々な形態の炭素(例えば、ダイアモンド、グラファイト、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブ、黒色炭素等)、金属酸化物、半金属酸化物(metalloid oxide)、非金属、非金属酸化物、および他のセラミック原料等が含まれる。
【0160】
さらには、基体は、ビーズ(ポリマーマイクロビーズ、磁気マイクロビーズ、超常磁性マイクロビーズ、超常磁性ナノ粒子等を含む)、フィルター、繊維、ふるい、メッシュ、繊維、中空繊維、足場、プレート、チャネル、アッセイ形式に一般に利用される他の基体、およびその任意の組み合わせの形態を取り得る。基体の例には、微粒子またはマイクロビーズ、ナノチューブ、医療器具(例えば、針またはカテーテル)または埋没物、マイクロチップ、濾過装置または膜、中空繊維リアクター、マイクロ流体装置、体外装置、および混合要素(例えば、インペラーまたはミキサー)が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。
【0161】
基体は、任意の原料、例えば処理が行われる対象となる流体に適合する任意の原料から作製され得る。例えば、基体は、例えばテフロン(登録商標)、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリスチレン、金属、金属合金、ポリマー、プラスチック、ガラス、織物、ヒドロゲル、およびその任意の組み合わせであるがそれらに限定されない、当技術分野において公知の任意の生体適合性原料から作製され得る。
【0162】
ある特定の態様において、固体基体は、装置の意図される使用と適合するように選択される。例えば、医療装置などの医療的適用では、態様において、基体原料は、安全性および生体適合性に関するFDA基準に準拠する。
【0163】
適切な基体原料は、その天然形態で反応性表面部分を含有し得る、または連結のための適切な反応性部分に表面処理化合物を提供するように処理され得る。例示的な反応性表面部分には、酸化物、水酸化物、カルボキシル基、カルボニル基、フェノール基、エポキシ基、キノン基、およびラクトン基などの酸素含有表面基;アミノ、C=N基、アジド、アミド、ニトリル基、ピロール様構造などの窒素含有表面基;チオールなどの硫黄含有部分;ならびにアルキンおよびアルケンなどの反応性炭素含有表面基が含まれる。
【0164】
基体を活性化する、および1つまたは複数の活性化技法を用いてそれを改変に適した状態にするように、基体を処理し得る。例示的な基体処理には、酸または塩基(例えば、水酸化ナトリウム)処理、酸化、アモナイゼーション(ammonization)、プラズマ(例えば、本明細書において記載される)、加熱、イオン、電子、電磁気、光子、例えばUV誘導性接合(例えば、ベンゾフェノンなどの開始剤の導入、それに続く、接合部位で開始された官能基またはポリマーの重合)、マイクロ波処理、およびその任意の組み合わせが含まれる。一部の態様において、基体は、プラズマ処理および第二の活性化工程に供される。
【0165】
一部の態様において、固体基体は粗面であり得る。ある特定の態様において、固体基体は多孔質基体であり得る。一部の適切な粗いまたは多孔質の基体は、その内容が参照によりその全体として本明細書に組み入れられる2012年1月19日に出願されたPCT出願第PCT/US2012/21928号に記載されている。
【0166】
一部の態様において、固体基体は、例えば医療的適用において用いられる柔軟なチューブなど、柔軟である。ある特定の態様において、固体基体は架橋ポリマーであり得る。例えば、基体は、柔軟なPDMS、または柔軟なPVC、例えば柔軟なPVC管類であり得る。
【0167】
一部の態様において、基体または基体を含む装置は、有機溶媒によって損傷を受けるまたは分解される原料を含む。例えば、基体または基体を含む装置は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルピロリドン、埋込用化合物、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ゴム、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルエーテルスルホン、酢酸セルロース、熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂を含み得る。一部の態様において、本明細書における方法は、有機溶媒の使用を回避し、ゆえにこれらの原料に損傷を与えないまたは分解しない。
【0168】
一部の態様において、基体は、90、80、70、60、または50%未満のポリスチレンを含む、例えばポリスチレンを含まない。一部の態様において、基体は、90、80、70、60、または50%未満のPLGAを含む、例えばPLGAを含まない。一部の態様において、基体は、90、80、70、60、または50%未満のシリコーン(例えば、PDMS)を含む、例えばシリコーン(例えば、PDMS)を含まない。一部の態様において、基体は、90、80、70、60、または50%未満のポリウレタンまたはポリウレタン共重合体を含む、例えばポリウレタンまたはポリウレタン共重合体を含まない。
【0169】
一部の態様において、基体は滅菌可能および加圧滅菌可能であり、例えば100C、110C、120C、130C、140C、または150Cを上回るガラス転移温度を有する。滅菌可能および加圧滅菌可能な基体の例には、ポリスルホン(150Cを上回るガラス転移温度を有する)および関連ポリマーが含まれる。対照的に、ポリスチレンは100Cのガラス転移温度を有する。
【0170】
一部の態様において、基体は、混合要素を含む、それに付着する、またはそれを含む装置内に置かれる。混合要素は、流体を混合するのを促す(例えば、基体上にコンジュゲートされた実体との接触を増加させる)構造成分であり得る。混合要素は、低剪断混合または高剪断混合に適切であり得る。一部の態様において、混合要素にはインペラーが含まれ得る。一部の態様において、混合要素には、ミキサー、例えばスパイラルミキサーまたは静的ミキサーが含まれ得る。
【0171】
一部の態様において、基体は、流体の流れを妨げる、流導管内に配置された複数のくいまたは柱を含む、それに付着する、またはそれを含む装置内に置かれる。
【0172】
プラズマおよびプラズマ発生器
一部の態様において、用いられるプラズマ発生器は、容量結合(coupled)プラズマ発生器、例えばDiener製のModel Nanoである。プラズマ発生器は、13.56MHzの無線周波数を利用し得る。態様において、プラズマ発生器は、その中でプラズマが産生されるチャンバーを含む。プラズマ発生器チャンバーは、プラズマに1つまたは複数の基体を曝露するのに適切なサイズのものであり得る。
【0173】
一部の態様において、プラズマ発生器またはその一部分、例えばプラズマ発生器チャンバーは、基体を処理する前に浄化される。一部の態様において、清浄は、空チャンバー、例えば約0.3、0.2、0.15、0.14、0.1、0.05、または0.01mbarを下回る真空とのサイクルを含む。態様において、清浄は、例えば約0.2、0.25、0.26、0.3、0.35、または0.4mbarの圧力での、ガス、例えばO2ガスのインプットの工程を含む。次いで、プラズマが、ガス、例えばO2ガスから発生され得る。プラズマは、例えば少なくとも5、10、15、20、25、30、45、または60分間発生され得る。プラズマは、例えば30%、40%、50%、60%、70%の出力で発生され得る。
【0174】
一部の態様において、プラズマ発生器チャンバーの浄化は、例えばCras et al.,「Comparison of chemical cleaning methods of glass in preparation for silanization」Biosensors & Bioelectronics 14 (1999) 683-688に記載される、化学清浄を含む。態様において、浄化工程は、酸および/または過酸化物の両方を用いる/有する。態様において、浄化工程は、穏やかなエッチング(例えば、塩基または希フッ化水素酸を用いた)を用いる。
【0175】
一部の態様において、例えば基体はチャンバーの内側にありながら、プラズマ処理の直前に、基体はCO2などのガスに曝露される。例えば、基体は、プラズマを発生させるために用いられる同じガスに曝露され得る。態様において、基体は、少なくとも約1、2、3、4、5、または10分間ガスに曝露される。本明細書における非限定的な理論によると、この処理は、PGMの分布を基体上でより均一にし得る。
【0176】
一部の態様において、PGMを発生させるために用いられるプラズマは、CO2、O2、N2、またはNH4プラズマである。理論によって拘束されることを望まないものの、一部の態様において、CO2プラズマは、O2プラズマよりも速くPGM(例えば、カルボキシル部分)を創出し、プラズマ処理工程をより短くすることを可能にする。一部の態様において、プラズマ処理工程は、約10、5、4、3、2、または1分間未満である。一部の態様において、プラズマ処理工程は、約50、40、30、20、または10秒間未満である。一部の態様において、プラズマ処理工程は、約1、2、3、4、5、または10分間である。
【0177】
カップリング反応条件
本節は、プラズマ発生部分に、例えば固体基体上に、実体をカップリングする様々な適切なやり方を記載する。一部の態様において、活性化部分が用いられる。
【0178】
活性化部分を用いて、一緒にコンジュゲートされる(例えば、固体基体に実体をコンジュゲートする)対象となる成分を活性化し得る。当技術分野において公知のものを含めた、コンジュゲート活性化のための任意の適切な過程および/または試薬が用いられ得る。例示的な活性化部分には、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDCまたはEDAC)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、2-(1H-7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)--1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートメタンアミニウム(HATU)、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミドエステル、スルホニルクロリド、NHSエステル、フルオロフェニルエステル、フルオロベンゼン、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ハラセチル(halacetyl)、ピリジルジスルフィド、アルコキシアミン、ジアジリン(diazerine)、ペリオデート、シラン化、プラズマ処理による表面活性化等が含まれるが、それらに限定されるわけではない。1つの態様において、EDCを用いて、固体基体表面に微生物結合分子(例えば、FcMBL)をコンジュゲートする。
【0179】
一部の態様において、反応混合物は、下記の表3に従った架橋剤を含む。
【0180】
当技術分野において公知のものを含めた、任意の反応基がカップリングに用いられ得る。例えば、ハロゲン化アルキル、アルデヒド、アジド、アミノ、ブロモまたはヨードアセチル、カルボキシル、アルキン、アルケン、ヒドロキシル、エポキシ、エステル、シラン、チオール等を含むがそれらに限定されない、様々な表面反応基が表面カップリングに用いられ得る。
【0181】
一部の態様において、カップリング反応はバッファー中で行われる。例示的なバッファーには、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸(ADA)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン(propan)-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸(TES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPS)、ボレート、アセテート、カーボネート、およびホスフェートが含まれる。
【0182】
一部の態様において、本明細書における方法は、イソシアネート、グルタルアルデヒド(glutaraldahyde)、ホルムアルデヒド、過酸化物、ホスホニウム、または表3の分類の1つのうちの架橋剤など、架橋剤の使用を回避するのを可能にする。
【0183】
【0184】
したがって、一部の態様において、本明細書における方法は、基体または実体と、イソシアネート、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、過酸化物、ホスホニウム、または表3の架橋剤などの架橋剤とを接触させる工程を含まない。同様に、一部の態様において、本明細書における組成物は、1cm2あたり1×1016、1×1015、1×1014、1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、または1分子未満の、イソシアネート、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、過酸化物、ホスホニウム、または表3の架橋剤などの架橋剤を含有する。
【0185】
マスキング実体
態様において、本明細書における組成物および方法はマスキング実体を伴う。理論によって限定されることなく、マスキング実体は、実体、例えばオプソニン、例えばMBL、例えばFcMBLに結合し得、実体の少なくとも一部分を反応物、例えば活性化部分、架橋剤、またはフリーラジカルからマスクすることによって、実体が活性を保持するのを助け得る。一部の態様において、マスキング実体は、実体(例えば、ポリペプチド)の活性部位または結合表面に結合する。マスキング実体は、例えばカルシウムなどの二価イオンを含み得る。マスキング実体は、例えばグルコースなどの糖類も含み得る。マスキング実体は、ポリペプチド、核酸(例えば、DNAまたはRNA)、脂質、炭水化物、または小分子を含み得る。
【0186】
一部の態様において、マスキング実体には、参照によりその全体として本明細書に組み入れられる国際出願WO2014144325に記載されるブロッキング剤が含まれる。
【0187】
糖質に基づくマスキング実体の例には、限定されることなく、ヘキソース(例えば、グルコース)、マルトース、マンノース、N-アセチル-ムラミン酸、アミノ糖(例えば、ガラクトサミン、グルコサミン、シアル酸、N-アセチルグルコサミン)、スルホ糖(sulfosugar)(例えば、スルホキノボース)、トレハロース、セロビオース、ラクトース、ラクツロース、スクロース、フラクトオリゴ糖、セルロース、キチン、またはその任意の組み合わせが含まれる。一部の態様において、糖質に基づくブロッキング剤は、グルコース、マルトース、N-アセチル-ムラミン酸、またはその任意の組み合わせであり得る。1つの態様において、糖質に基づくブロッキング剤はグルコースを含み得る。1つの態様において、糖質に基づくブロッキング剤はマンノースを含み得る。
【0188】
例えば血液透析または血液濾過のための使用
本明細書において記載される方法によって作製された基体は、液体中の可溶性または懸濁された標的部分など、標的部分を捕捉するための装置において/として用いられ得る。標的部分の非限定的な例には、任意で体液、例えば血液中に存在し得る、微生物および/または微生物物質が含まれる。一態様において、装置は、無傷の微生物、および/または微生物物質など、少なくとも1種の標的部分に結合し得るまたは捕捉し得る。
【0189】
1つの局面において、装置は、微生物、微生物物質、および/または標的分子を捕捉するためのものであり、(i)入口および出口を有するチャンバー、(ii)入口と出口との間にチャンバー内に配置された少なくとも1つの捕捉要素であって、該捕捉要素は、その表面に少なくとも1種の実体、例えば本明細書において記載される微生物結合分子を有する捕捉要素、を含む。チャンバーは、例えば円形、長方形、正方形、楕円形、三角形、多角形、または任意の不規則な形をした横断面を有し得る。
【0190】
一部の態様において、本明細書において記載される装置は、シャントシステムと一体化され得るまたはシャントシステムに接続するように適応され得る。シャントシステムは、例えば血液などの流体を回収するための第一の末端、および例えば血液などの濾過された流体を患者に戻すための第二の末端を含み得る。そのような態様において、装置内を流れる流体は、存在する場合には任意の微生物を、実体、例えば微生物結合分子に結合させ得、患者に戻す前に濾過され得る。この装置は、例えば軍事分野適用などの緊急適用のために、携帯可能であるように設計され得る。標準的なシャントは、シャントに取り付けられた装置で、頸静脈または大腿静脈に挿入され得る。彼/彼女が治療のために病院に運ばれるまで、患者が定期的に装置を変えて微生物捕捉効率を維持し得るように、装置は携帯可能であり得る。
【0191】
一部の態様において、装置は、膜面積(A)および問題となる溶質に対する膜透過係数K0を有する、血液透析装置である。透析器効率は、通常、透過係数と面積との積であるK0Aとして表現される。一部の態様において、本明細書において記載される透析器は、0.3~2.2平方メートル、例えば0.8~2.2平方メートルの膜表面積、および約500~1500mL/分に及ぶK0Aの値を有する。mL/分で表現されるK0Aは、非常に高い血液および透析液の流速における透析器の最大クリアランスであると考えられ得る。
【0192】
本開示に従って改変された基体によって選択的に結合され得る細菌の非限定的な例には、アクチノバチルス(Actinobacillus)(例えば、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(actinomycetemcomitans))、アシネトバクター(Acinetobacter)(例えば、アシネトバクター・バウマニ(baumannii))、エロモナス(Aeromonas)、ボルデテラ(Bordetella)(例えば、ボルデテラ・パーツシス(pertussis)、ボルデテラ・ブロンキセプティカ(bronchiseptica)、およびボルデテラ・パラパーツシス(parapertussis))、ブレビバチルス(Brevibacillus)、ブルセラ(Brucella)、バクテロイデス(Bacteroides)(例えば、バクテロイデス・フラジリス(fragilis)、バークホルデリア(Burkholderia)(例えば、バークホルデリア・セパシア(cepacia)およびバークホルデリア・シュードマレイ(pseudomallei))、ボレリア(Borelia)(例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ(burgdorferi))、バチルス(Bacillus)(例えば、バチルス・アントラシス(anthracis)およびバチルス・サブティリス(subtilis))、カンピロバクター(Campylobacter)(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(jejuni))、カプノサイトファーガ(Capnocytophaga)、カルディオバクテリウム(Cardiobacterium)(例えば、カルディオバクテリウム(Cardiohacterium)・ホミニス(hominis))、シトロバクター(Citrobacter)、クロストリジウム(Clostridium)(例えば、クロストリジウム・テタニ(tetani)またはクロストリジウム・ディフィシル(difficile))、クラミジア(Chlamydia)(例えば、クラミジア・トラコマチス(trachomatis)、クラミジア・ニューモニエ(pneumoniae)、およびクラミジア・シッタシ(psiffaci))、エイケネラ(Eikenella)(例えば、エイケネラ・コローデンス(corrodens))、エンテロバクター(Enterobacter)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エスケリキア(Escherichia)(例えば、エスケリキア・コリ(coli))、フランシセラ(Francisella)(例えば、フランシセラ・ツラレンシス(tularensis))、フソバクテリウム(Fusobacterium)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、ヘモフィルス(Haemophilus)(例えば、ヘモフィルス・デュクレイ(ducreyi)またはヘモフィルス・インフルエンザ(influenzae))、ヘリコバクター(Helicobacter)(例えば、ヘリコバクター・ピロリ(pylori))、キンゲラ(Kingella)(例えば、キンゲラ・キンゲ(kingae))、クレブシエラ(Klebsiella)(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、レジオネラ(Legionella)(例えば、レジオネラ・ニューモフィラ(pneumophila))、リステリア(Listeria)(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(monocytogenes))、レプトスピラ(Leptospirae)、モラクセラ(Moraxella)(例えば、モラクセラ・カタラーリス(catarrhalis))、モルガネラ(Morganella)、マイコプラズマ(Mycoplasma)(例えば、マイコプラズマ・ホミニスおよびマイコプラズマ・ニューモニエ)、マイコバクテリウム(例えば、マイコバクテリウム・ツベルクローシスまたはマイコバクテリウム・レプラエ(leprae))、ナイセリア(Neisseria)(例えば、ナイセリア・ゴノレア(gonorrhoeae)またはナイセリア・メニンギティディス(meningitidis))、ノカルディア(Nocardia)、パスツレラ(Pasteurella)(例えば、パスツレラ・ムルトシダ(multocida))、プロテウス(Proteus)(例えば、プロテウス・ブルガリスおよびプロテウス・ミラビリス(mirablis))、プレボテラ(Prevotella)、プレジオモナス(Plesiomonas)(例えば、プレジオモナス・シゲロイデス(shigelloides))、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナス・エルギノーサ(aeruginosa))、プロビデンシア(Providencia)、リケッチア(Rickettsia)(例えば、リケッチア・リケッチイ(rickettsii)およびリケッチア・チフィ(typhi))、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)(例えば、ステノトロホモナス・マルトフィリア(maltophila))、スタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(aureus)およびスタフィロコッカス・エピデルミディス(epidermidis))、ストレプトコッカス(Streptococcus)(例えば、ストレプトコッカス・ビリダンス(viridans)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(pyogenes)(A群)、ストレプトコッカス・アガラクチア(agalactiae)(B群)、ストレプトコッカス・ボビス(bovis)、およびストレプトコッカス・ニューモニエ)、ストレプトマイセス(Streptomyces)(例えば、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(hygroscopicus))、サルモネラ(Salmonella)(例えば、サルモネラ・エンテリディティス(enteriditis)、サルモネラ・チフィ、およびサルモネラ・ティフィムリウム(typhimurium))、セラチア(Serratia)(例えば、セラチア・マルセッセンス(marcescens))、シゲラ(Shigella)、スピリルム(Spirillum)(例えば、スピリルム・ミヌス(minus))、トレポネーマ(Treponema)(例えば、トレポネーマ・パリズム(pallidum))、ベイロネラ(Veillonella)、ビブリオ(Vibrio)(例えば、ビブリオ・コレラ(cholerae)、ビブリオ・パラヘモリティカス(parahemolyticus)、およびビブリオ・バルニフィカス(vulnificus))、エルシニア(Yersinia)(例えば、エルシニア・エンテロコリチカ(enterocolitica)、エルシニア・ペスティス(pestis)、およびエルシニア・シュードツベルクローシス(pseudotuberculosis))、キサントモナス(Xanthomonas)(例えば、キサントモナス・マルトフィリア(maltophilia))、ならびにその組み合わせからなる群より選択される属のメンバーが含まれる。
【0193】
本開示に従って改変された基体は、様々なタイプの真菌に選択的に結合し得る。改変基体によって選択的に結合される真菌の非限定的な例には、アスペルギルス(Aspergillus)(例えば、アスペルギルス・フラバス(flavus)、アスペルギルス・フミガーツス(fumigatus)、アスペルギルス・グラウクス(glaucus)、アスペルギルス・ニデュランス(nidulans)、アスペルギルス・ニガー(niger)、およびアスペルギルス・テレウス(terreus))、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ(Candida)(例えば、カンジダ・アルビカンス(albicans)、カンジダ・グラブラータ(glabrata)、カンジダ・トロピカリス(tropicalis)、カンジダ・パラプシローシス(parapsilosis)、カンジダ・クルセイ(krusei)、およびカンジダ・グイリエルモンジィ(gillermondii))、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス(Cryptococcus)(例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(neoformans)、クリプトコッカス・アルビダス(albidus)、およびクリプトコッカス・ローレンティ(laurentii))、フザリウム(Fusarium)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)・カプスラーツム型、ヒストプラズマ・カプスラーツム・ズボアジ(duboisii)型、ムコール(Mucor)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、ニューモシスチス(Pneumocystis)、サッカロミケス(Saccharomyces)、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、アブシジア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、リゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizous)、およびその組み合わせの属のメンバーが含まれる。
【0194】
本開示に従って改変された基体は、様々なタイプのウイルスおよびウイルス様粒子にも選択的に結合し得る。1つまたは複数の態様において、これらの表面によって選択的に結合されるウイルスは、dsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス、(+)ssRNAウイルス、(-)ssRNAウイルス、ssRNA-RTウイルス、dsDNA-RTウイルス、およびその組み合わせからなる群より選択される。本開示に従って改変された表面によって反発されるおよび/または選択的に結合されるウイルスの非限定的な例には、サイトメガロウイルス(CMV)、デング、エプスタイン・バール、ハンタウイルス、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV I/II)、パルボウイルス、肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、およびC型肝炎)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、後天性免疫不全症候群(AIDS)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹、西ナイル、エボラ、ジカ、ヘルペス、ポリオ、天然痘、黄熱、ライノウイルス、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(Orthomyxoviridae)(インフルエンザウイルス)(例えば、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、イサウイルス、およびトゴトウイルス(Thogotovirus))、およびその組み合わせが含まれる。
【0195】
さらに別の態様において、本開示に従って改変された基体は、表面接着、表面媒介性血栓形成、凝固、ファウリング、または凝集を引き起こすことなく、懸濁液または溶液中の粒子に選択的に結合し得る。懸濁液または溶液中の粒子の非限定的な例には、細胞(例えば、正常細胞、罹患細胞、寄生細胞、癌細胞、外来細胞、幹細胞、および感染細胞)、微小生物(例えば、ウイルス、ウイルス様粒子、細菌、バクテリオファージ)、タンパク質および細胞成分(例えば、細胞小器官、細胞フラグメント、細胞膜、エクソソーム、細胞膜フラグメント、ウイルス、ウイルス様粒子、バクテリオファージ、細胞質タンパク質、分泌タンパク質、シグナル伝達分子、埋め込まれたタンパク質、核酸/タンパク質複合体、核酸沈殿薬、染色体、核、ミトコンドリア、葉緑体、鞭毛、生体鉱物、タンパク質複合体、およびミニ細胞)が含まれる。
【0196】
例えばアッセイおよび診断のための使用
一部の態様において、本明細書において記載される装置(例えば、本明細書における方法に従って作製された装置)は、例えば敗血症または感染性疾患の診断のために用いられる。態様において、装置は、実体が付着した固体基体を含み、該実体は微生物または微生物物質に結合する。一部の態様において、診断用装置は、固体基体をプラズマ処理し、該固体基体と実体とを接触させ、該固体基体と生物学的サンプルを接触させ、および該生物学的サンプル中の微生物が該実体に結合するかどうかを判定することによってもたらされる。診断方法またはシステムは、検出可能な標識も含み得る。
【0197】
一部の局面において、本開示は、微生物標的分子、例えば非標識微生物標的分子、例えばレクチンまたはその炭水化物結合部を含むもの、例えばMBL、例えばFcMBLを含むものなどの実体に(例えば、共有結合で)付着した固体基体と、微生物に特異的な標的化剤にコンジュゲートされた検出可能な標識とを含むキットを提供する。
【0198】
一部の局面において、本開示は、微生物または微生物物質と、微生物標的分子、例えば非標識微生物標的分子、例えばレクチンまたはその炭水化物結合部を含むもの、例えばMBL、例えばFcMBLを含むものに付着した固体基体;および該微生物または微生物物質に特異的な標的化剤にコンジュゲートされた検出可能な標識とを接触させる工程を含む、微生物または微生物物質を検出する方法を提供する。
【0199】
一部の局面において、本開示は、微生物標的分子、例えば非標識微生物標的分子、例えばレクチンまたはその炭水化物結合部を含むもの、例えばMBL、例えばFcMBLを含むものに付着した固体基体と、微生物に特異的な標的化剤にコンジュゲートされた検出可能な標識とを含む組成物を提供する。
【0200】
本明細書におけるキット、本方法、および組成物の一部の態様において、検出可能な標識は酵素を含む。一部の態様において、酵素はホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)である。一部の態様において、微生物に特異的な標的化剤には、操作された微生物標的分子、抗体分子、レクチン、またはMBL(例えば、ヒトMBL)が含まれる。態様において、固体基体は、本明細書において記載される方法、例えば基体のプラズマ処理を含む方法によって、微生物標的分子に付着する。態様において、微生物標的分子に付着した固体基体は、本明細書において記載される組成であり、例えばシランなどの架橋剤をほとんどまたは全く含まない。一部の態様において、キットもしくは組成物は、または方法は、酵素と該酵素に対する基質、例えばTMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)とを接触させる工程をさらに含む。
【0201】
本明細書において記載されるキットの任意の局面の一部の態様は、付加的な作用物質をさらに含み得る。例えば、基体に付着した実体、例えば微生物標的分子が標識されていない一部の態様において、キットは、微生物に特異的な標的化剤、例えば、限定されることなく、操作された微生物標的分子またはそのフラグメントの1つまたは複数の態様、少なくとも1種の微生物に特異的な抗体分子(例えば、抗LTA抗体分子など、グラム陽性微生物に特異的な抗体分子、抗LPS抗体分子など、グラム陰性微生物に特異的な抗体分子、または真菌に特異的な抗体分子、およびその任意の組み合わせ)にコンジュゲートされた1種または複数種の検出可能な標識をさらに含み得る。検出可能な標識にコンジュゲートされた、微生物に特異的な付加的な標的化剤の使用は、微生物または病原体の検出を促し得るだけでなく、微生物または病原体に対する検出の特異性も増させ得る。
【0202】
本明細書において提供されるキットの任意の局面において、検出可能な標識が酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および比色検出に適切な他の任意のもの)を含む場合、キットは、該酵素の存在下で変色をもたらす酵素基質を含有する1つまたは複数の容器をさらに含み得る。当業者であれば、比色検出に用いられる当技術分野において認められた任意の酵素に対する適当な酵素基質を容易に認識し得る。単なる例として、アルカリホスファターゼに対する例示的な基質には、BCIP/NBT(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム)またはPNPP(p-ニトロフェニルホスフェート)が含まれ得;ホースラディッシュペルオキシダーゼに対する例示的な基質には、TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)が含まれ得る。
【0203】
一部の態様において、本明細書において記載される診断用装置は、3、5、10、100、1000、10,000、100,000、または1,000,000を超えるシグナル対ノイズ比を提供する。
【0204】
検出可能な標識には、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的な手段によって検出可能な任意の組成が含まれる。適切な標識には、蛍光分子、放射性同位体、ヌクレオチドクロモフォア、酵素、基質、化学発光部分、生物発光部分等が含まれる。標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的な手段によって検出可能な組成であり得る。
【0205】
多種多様の蛍光レポーター色素が用いられ得る。典型的に、フルオロフォアは芳香族またはヘテロ芳香族化合物であり、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンゾインドール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、シアニン、カルボシアニン、サリチレート、アントラニレート、クマリン、フルオレセイン、ローダミン、または他の同様の化合物であり得る。
【0206】
例示的なフルオロフォアには、1,5 IAEDANS;1,8-ANS;4-メチルウンベリフェロン;5-カルボキシ-2,7-ジクロロフルオレセイン;5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM);5-カルボキシナフトフルオレセイン(pH10);5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA);5-FAM(5-カルボキシフルオレセイン);5-ヒドロキシトリプタミン(HAT);5-ROX(カルボキシ-X-ローダミン);5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン);6-カルボキシローダミン6G;6-CR 6G;6-JOE;7-アミノ-4-メチルクマリン;7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD);7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン;9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン;ABQ;酸性フクシン;ACMA(9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン);アクリジンオレンジ;アクリジンレッド;アクリジンイエロー;アクリフラビン;アクリフラビンフォイルゲンSITSA;エクオリン(発光タンパク質);Alexa Fluor 350;Alexa Fluor 430;Alexa Fluor 488;Alexa Fluor 532;Alexa Fluor 546;Alexa Fluor 568;Alexa Fluor 594;Alexa Fluor 633;Alexa Fluor 647;Alexa Fluor 660;Alexa Fluor 680;アリザリンコンプレクソン;アリザリンレッド;アロフィコシアニン(APC);AMC、AMCA-S;AMCA(アミノメチルクマリン);AMCA-X;アミノアクチノマイシンD;アミノクマリン;アニリンブルー;アントロシルステアレート(Anthrocyl stearate);APC-Cy7;APTS;アストラゾンブリリアンレッド4G;アストラオレンジR;アストラゾンレッド6B;アストラゾンイエロー7 GLL;アタブリン;ATTO-TAG CBQCA;ATTO-TAG FQ;オーラミン;オーロホスフィン(Aurophosphine)G;オーロホスフィン;BAO 9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール);BCECF(高pH);BCECF(低pH);ベルベリンサルフェート;ベータラクタマーゼ;BFPブルーシフトGFP(Y66H);BG-647;ビマン;ビスベンズアミド;Blancophor FFG;Blancophor SV;BOBO-1;BOBO-3;Bodipy 492/515;Bodipy 493/503;Bodipy 500/510;Bodipy 505/515;Bodipy 530/550;Bodipy 542/563;Bodipy 558/568;Bodipy 564/570;Bodipy 576/589;Bodipy 581/591;Bodipy 630/650-X;Bodipy 6501665-X;Bodipy 665/676;Bodipy Fl;Bodipy FL ATP;Bodipy Fl-セラミド;Bodipy R6G SE;Bodipy TMR;Bodipy TMR-Xコンジュゲート;Bodipy TMR-X, SE;Bodipy TR;Bodipy TR ATP;Bodipy TR-X SE;BO-PRO-1;BO-PRO-3;ブリリアントスルホフラビンFF;カルセイン;カルセインブルー;カルシウムクリムゾン;カルシウムグリーン;カルシウムグリーン-1 Ca2+色素;カルシウムグリーン-2 Ca2+;カルシウムグリーン-5N Ca2+;カルシウムグリーン-C18 Ca2+;カルシウムオレンジ;カルコフロールホワイト;カルボキシ-X-ローダミン(5-ROX);カスケードブルー;カスケードイエロー;カテコールアミン;CFDA;CFP(シアン蛍光タンパク質);クロロフィル;クロモマイシンA;クロモマイシンA;CMFDA;セレンテラジン;セレンテラジンcp;セレンテラジンf;セレンテラジンfcp;セレンテラジンh;セレンテラジンhcp;セレンテラジンip;セレンテラジンO;クマリンファロイジン;CPMメチルクマリン;CTC;Cy2;Cy3.1 8;Cy3.5;Cy3;Cy5.1 8;Cy5.5;Cy5;Cy7;シアンGFP;環状AMPフルオロセンサー(FiCRhR);d2;ダブシル;ダンシル;ダンシルアミン;ダンシルカダベリン;ダンシルクロリド;ダンシルDHPE;ダンシルフルオリド;DAPI;ダポキシル(Dapoxyl);ダポキシル2;ダポキシル3;DCFDA;DCFH(ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート);DDAO;DHR(ジヒドロローダミン123);Di-4-ANEPPS;Di-8-ANEPPS(ノンレシオ);DiA(4-Di-16-ASP);DIDS;ジヒドロローダミン123(DHR);DiO(DiOC 18(3));DiR;DiR(DiIC18(7));ドーパミン;DsRed;DTAF;DY-630-NHS;DY-635-NHS;EBFP;ECFP;EGFP;ELF 97;エオシン;エリスロシン;エリスロシンITC;エチジウムホモダイマー-1(EthD-1);オイクリシン(Euchrysin);ユウロピウム(111)クロリド;ユウロピウム;EYFP;ファストブルー;FDA;フォイルゲン(パラローズアニリン);FITC;FL-645;フラゾオレンジ(Flazo Orange);Fluo-3;Fluo-4;フルオレセインジアセテート;フルオロ-エメラルド;フルオロ-ゴールド(ヒドロキシスチルバミジン);フルオロ-ルビー;FluorX;FM 1-43.TM.;FM 4-46;Fura Red(高pH);Fura-2、高カルシウム;Fura-2、低カルシウム;ゲナクリル(Genacryl)ブリリアントレッドB;ゲナクリルブリリアントイエロー10GF;ゲナクリルピンク3G;ゲナクリルイエロー5GF;GFP(S65T);GFPレッドシフト(rsGFP);GFP野生型、非UV励起(wtGFP);GFP野生型、UV励起(wtGFP);GFPuv;グロサリック酸(Gloxalic Acid);グラニュラーブルー(Granular Blue);ヘマトポルフィリン;Hoechst 33258;Hoechst 33342;Hoechst 34580;HPTS;ヒドロキシクマリン;ヒドロキシスチルバミジン(フルオロゴールド);ヒドロキシトリプタミン;インドジカルボシアニン(DiD);インドトリカルボシアニン(DiR);イントラホワイト(intrawhite)Cf;JC-1;JO-JO-1;JO-PRO-1;LaserPro;ラウロダン(Laurodan);LDS 751;Leucophor PAF;Leucophor SF;Leucophor WS;リサミンローダミン;リサミンローダミンB;LOLO-1;LO-PRO-1;ルシファーイエロー;マググリーン(Mag Green);マグダラレッド(フロキシンB);マグネシウムグリーン;マグネシウムオレンジ;マラカイトグリーン;マリーナブルー;マキシロン(Maxilon)ブリリアントフラビン10 GFF;マキシロンブリリアントフラビン8 GFF;メロシアニン;メトキシクマリン;MitotrackerグリーンFM;Mitotrackerオレンジ;Mitotrackerレッド;ミトラマイシン;モノブロモビマン;モノブロモビマン(mBBr-GSH);モノクロロビマン;MPS(メチルグリーンピロニンスチルベン);NBD;NBDアミン;ナイルレッド;ニトロベンゾオキサジアゾール;ノルアドレナリン;ヌクレアファストレッド;ヌクレアイエロー;ナイロサン(Nylosan)ブリリアントラビン(lavin)E8G;オレゴングリーン.TM.;オレゴングリーン488-X;オレゴングリーン488;オレゴングリーン500;オレゴングリーン514;パシフィックブルー;パラローズアニリン(フォイルゲン);PE-Cy5;PE-Cy7;PerCP;PerCP-Cy5.5;PE-テキサスレッド(Red 613);フロキシンB(マグダラレッド);Phorwite AR;Phorwite BKL;Phorwite Rev;Phorwite RPA;ホスフィン3R;フォトレジスト;フィコエリスリンB[PE];フィコエリスリンR[PE];PKH26;PKH67;PMIA;ポントクロム(Pontochrome)ブルーブラック;POPO-1;POPO-3;PO-PRO-1;PO-PRO-3;プリムリン;プロシオンイエロー;ヨウ化プロピジウム(PI);PyMPO;ピレン;ピロニン;ピロニンB;ピロザール(Pyrozal)ブリリアントフラビン7GF;QSY 7;キナクリンマスタード;レソルフィン;RH 414;Rhod-2;ローダミン;ローダミン110;ローダミン123;ローダミン5 GLD;ローダミン6G;ローダミンB 540;ローダミンB 200;ローダミンBエキストラ;ローダミンBB;ローダミンBG;ローダミングリーン;ローダミンファリシジン;ローダミンファロイジン;ローダミンレッド;ローダミンWT;ローズベンガル;R-フィコエリスリン(PE);レッドシフトGFP(rsGFP、S65T);S65A;S65C;S65L;S65T;サファイアGFP;セロトニン;セブロン(Sevron)ブリリアントレッド2B;セブロンブリリアントレッド4G;セブロンブリリアントレッドB;セブロンオレンジ;セブロンイエローL;sgBFP.TM.;sgBFP(スーパーグロー(super glow)BFP);sgGFP;sgGFP(スーパーグローGFP);SITS;SITS(プリムリン);SITS(スチルベンイソチオスルホン酸);SPQ(6-メトキシ-N-(3-スルホプロピル)-キノリニウム);スチルベン;スルホローダミンB can C;スルホローダミンGエキストラ;テトラサイクリン;テトラメチルローダミン;テキサスレッド;テキサスレッド-Xコンジュゲート;チアジカルボシアニン(Thiadicarbocyanine)(DiSC3);チアジンレッドR;チアゾールオレンジ;チオフラビン5;チオフラビンS;チオフラビンTCN;チオライト(Thiolyte);チオゾール(Thiozole)オレンジ;チノポール(Tinopol)CBS(カルコフロールホワイト);TMR;TO-PRO-1;TO-PRO-3;TO-PRO-5;TOTO-1;TOTO-3;トリコロール(TriColor)(PE-Cy5);TRITC(テトラメチルローダミンイソチオシアネート);トゥルーブルー(True Blue);TruRed;ウルトラライト(Ultralite);ウラニンB;ウビテックス(Uvitex)SFC;wt GFP;WW 781;XL665;X-ローダミン;XRITC;キシレンオレンジ;Y66F;Y66H;Y66W;イエローGFP;YFP;YO-PRO-1;YO-PRO-3;YOYO-1;およびYOYO-3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これら蛍光化合物の多くの適切な形態が入手可能であり、用いられ得る。
【0207】
他の例示的な検出可能な標識には、発光性、化学発光性、電気化学発光性、および生物発光性マーカー(例えば、ビオチン、ルシフェラーゼ(例えば、細菌、ホタル、コメツキムシ等)、ルシフェリン、およびエクオリン)、放射性標識(例えば、3H、1251、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ(glucorinidase)、ホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ)、ペルオキシダーゼ(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、およびコリンエステラーゼ)、ならびにコロイド金または着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびラテックス)ビーズなどの比色(calorimetric)標識が含まれる。そのような標識の使用を教示する特許には、米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号、および第4,366,241号が含まれ、そのそれぞれは参照により本明細書に組み入れられる。一部の態様において、検出可能な標識は、フルオロフォアまたは量子ドットである。
【0208】
そのような標識を検出する手段は、当業者に周知である。例示的な検出方法には、分光分析法、蛍光分析法、顕微鏡イメージング、ボルタンメトリー、免疫アッセイ等が含まれるが、それらに限定されるわけではない。ゆえに、例えば、放射性標識は、写真用フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出され得、蛍光マーカーは、放出された光を検出する光検出器を用いて検出され得る。酵素標識は、例えば酵素に酵素基質を提供し、かつ該酵素基質に対する該酵素の作用によって産生される反応産物を検出することによって検出され得、比色標識は、着色標識を可視化することによって検出され得る。一部の態様において、微生物または微生物物質は、1種または複数種の酵素アッセイ、例えば酵素結合アッセイ(ELISA)の使用により検出される。数々の酵素アッセイを用いて、検出を提供し得る。そのような酵素アッセイの例には、β-ガラクトシダーゼアッセイ、ペルオキシダーゼアッセイ、カタラーゼアッセイ、アルカリホスファターゼアッセイ等が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一部の態様において、酵素アッセイは、蛍光産物を産生する、酵素基質を伴う反応を酵素が触媒するように構成され得る。加えて、イメージング解析は、自動画像取得および解析によって実施され得る。
【0209】
一部の態様において、検出可能な標識は、実体(例えば、微生物結合分子を含む実体)にコンジュゲートされた場合には検出不能であるが、微生物酵素の存在下で、操作された分子から放出された場合に変色をもたらす、「スマート標識」であり得る。ゆえに、微生物が、操作された微生物結合分子に結合した場合、微生物は、該操作された分子から検出可能な標識を放出する酵素を放出する。変色の観察は、サンプル中の微生物の存在を示す。
【0210】
一部の態様において、基体またはそれに付着した実体は、検出可能な標識などの標識とコンジュゲートされ得る。
【0211】
一部の態様において、検出可能な標識は、野生型の微生物結合分子(例えばMBL、例えばヒトMBL)、または本明細書において記載される微生物結合分子にコンジュゲートされる。一部の態様において、標識分子はFcMBLを含む。理論によって拘束されることを望むことなく、本明細書において記載される微生物結合分子に基づく標識分子、およびMBL(例えば、FcMBL)は、広範な微生物に選択的に付着し、そのためそれらにより、本明細書において記載される方法は、血液伝播性微生物の大多数を高い感度および特異性で検出することが可能となる。
【0212】
一部の態様において、酵素結合アッセイ(ELISA)を用いて、標識分子由来のシグナルを検出し得る。ELISAにおいて、標識分子は、検出可能な標識として酵素を含み得る。各標識分子は、1種または複数種の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種、またはそれを上回る種類の)酵素を含み得る。加えて、各標識分子は、微生物との結合のための1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを上回る数の)部位を含み得る。
【0213】
ELISAに関して、酵素にコンジュゲートされた任意の標識分子が用いられ得る。例示的な標識分子には、本明細書において記載される微生物結合分子を含むものが含まれる。他の例示的な標識分子には、MBL(例えば、ヒトMBL)、FcMBL、AKT-FcMBL、小麦胚芽凝集素、レクチン、抗体分子(例えば、グラム陰性抗体分子またはグラム陽性抗体分子)、抗体の抗原結合フラグメント、アプタマー、細胞表面受容体のリガンド(アゴニストまたはアンタゴニスト)等を含むものが含まれる。一部の態様において、標識分子は、検出可能な標識、例えば酵素、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼで標識されたMBLまたはFcMBLを含む。
【0214】
同様に、比色基質または蛍光発生基質のいずれかとともに、様々な酵素が用いられ得る。一部の態様において、レポーター酵素は、特定の波長における光吸収として測定され得る比色変化をもたらす。例示的な酵素には、β-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、アルカリホスファターゼ等が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一部の態様において、酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリペルオキシダーゼ(AP)である。
【0215】
微生物結合分子および酵素は、リンカーによって互いに連結され得る。一部の態様において、微生物結合分子と酵素との間のリンカーはアミド結合である。一部の態様において、微生物結合分子と酵素との間のリンカーはジスルフィド(S-S)結合である。一部の態様において、微生物結合分子が、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である場合、酵素は、該微生物結合分子のN末端、C末端、または内部箇所で連結され得る。同様に、酵素は、そのN末端、C末端、または内部箇所によって連結され得る。
【0216】
1つの態様において、ELISAプローブ分子は、HRPに連結されたMBLもしくはその一部分またはFcMBL分子を含み得る。任意のタンパク質および抗体分子へのHRPのコンジュゲートは、当技術分野において公知である。1つの態様において、FcMBL-HRP構築物は、任意の市販のHRPコンジュゲートキットを用いて、FcMBLにHRPを直接カップリングすることによって作出される。一部の態様において、実体を含む基体から分離されたまたは基体上に結合されたままである微生物は、HRP標識微生物結合分子、例えばHRPに連結されたMBLもしくはその一部分またはFcMBL分子とともに、ある期間、例えば少なくとも約5分間、少なくとも約10分間、少なくとも約15分間、少なくとも約20分間、少なくとも約25分間、少なくとも約30分間インキュベートされ得る。ELISAアッセイにおいて用いられるHRP標識分子の典型的な濃度は、約1:500~約1:20,000希釈に及び得、1つの態様において、HRP標識微生物結合分子、例えばHRP分子に連結されたMBLもしくはその一部分またはFcMBL分子の濃度は、約1:1000~約1:10000希釈であり得る。
【0217】
ELISAシグナルのさらなる増幅は、認識分子(例えば、微生物結合分子)を多量体化することによって、または検出酵素(HRP等)を多量体化することによって得ることができる。例えば、ファージ発現を用いて、多量体化MBLを産出しかつ足場を提供して、HRPの濃度を増加させ得る(ファージ粒子へのHRPの直接カップリングにより、またはHRP-抗MI3コンジュゲート抗体分子を用いて)。
【0218】
一部の態様において、本明細書において記載される過程またはアッセイは、微生物もしくは微生物物質の存在もしくは非存在を検出することができ、かつ/または試験サンプル中の微生物もしくは微生物物質を、24時間未満、12時間未満、10時間未満、8時間未満、6時間未満、4時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、もしくはそれを下回る時間以内に同定することができる。一部の態様において、本明細書において記載される過程またはアッセイは、微生物もしくは微生物物質の存在もしくは非存在を検出することができ、かつ/または試験サンプル中の微生物もしくは微生物物質を、6時間未満、4時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、もしくはそれを下回る時間以内に同定することができる。
【0219】
本明細書において記載される様々な態様によると、微生物および/または微生物物質を含む疑いがある、任意の流体または標本(加工されたまたは加工されていない)を含めた、試験サンプルまたはサンプルが、本明細書において記載されるアッセイまたは方法、キット、およびシステムに供され得る。試験サンプルまたは流体は、液体、超臨界流体、溶液、懸濁液、ガス、ゲル、スラリー、およびその組み合わせであり得る。試験サンプルまたは流体は、水性または非水性であり得る。
【0220】
一部の態様において、試験サンプルには、対象から得られた生物学的流体が含まれ得る。本明細書における装置および組成物と接触し得る生物学的流体の非限定的な例には、水、血液(全血、血漿、臍帯血、および血清を含む)、泌乳産物(例えば、母乳)、汗、糞便、尿、唾液、涙液、膣液、前立腺液、歯肉滲出液、羊水、眼内液、脳脊髄液、精液、痰、腹水液、膿、鼻咽頭(nasopharengal)液、創傷滲出液、房水、硝子体液、胆汁、耳垢、内リンパ、外リンパ、胃液、粘液、腹膜液、胸膜液、皮脂、嘔吐物、気管支吸引物、滑液、気管吸引物、合成流体(例えば、合成血液、ホルモン、栄養素)、その画分、およびその組み合わせが含まれる。一部の態様において、生物学的流体には、対象由来の組織標本(例えば、生検)のホモジネートが含まれ得る。
【0221】
一部の態様において、対象、例えばヒト対象などの哺乳類対象、またはネコもしくはイヌなどの飼い慣らされたペットから得られた生物学的流体サンプルは、該対象由来の細胞を含有し得る。他の態様において、生物学的流体サンプルは、血液、唾液、または尿の非細胞性画分など、非細胞性生物学的原料を含有し得る。
【0222】
生物学的流体サンプルは、対象から新しく回収され得るまたは以前に回収されたサンプルであり得る。一部の態様において、本明細書において記載されるアッセイおよび/または方法において用いられる生物学的流体サンプルは、長くて24時間、長くて12時間、長くて6時間、長くて3時間、長くて2時間、長くて1時間、長くて30分間、またはそれよりも短い期間以内に、対象から回収され得る。
【0223】
一部の態様において、生物学的流体サンプルまたは本明細書において記載される任意の流体サンプルは、本明細書において記載されるアッセイおよび/または方法との使用の前に、化学的および/または生物学的試薬で処理され得る。一部の態様において、化学的および/または生物学的試薬の少なくとも1種は、流体サンプルがサンプル容器に添加される前にサンプル容器内に存在し得る。例えば、血液は、ヘパリンを含む、VACUTAINER(登録商標)などの血液回収チューブに回収され得る。化学的および/または生物学的試薬の例には、限定されることなく、界面活性剤および洗剤、塩、キレート剤、細胞溶解試薬、抗凝固薬、分解酵素(例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、コラゲナーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ)、ならびにバッファー溶液などの溶媒が含まれ得る。試薬には、生理食塩溶液、PBS溶液、ホスフェートバッファーなどの緩衝液、EDTA、Tris溶液、およびその任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0224】
一部の態様において、試験サンプルには、例えば水供給元(supply)(廃水を含む)、池、川、貯水池、スイミングプール、土、食品加工および/または包装工場、農業の場、ハイドロカルチャー(水耕食品農場を含む)、医薬品製造工場、動物コロニー施設、ならびにその任意の組み合わせであるがそれらに限定されない、環境供給源から得られた流体または標本が含まれ得る。
【0225】
一部の態様において、試験サンプルには、生物学的培養物由来の流体(例えば、培養培地)が含まれ得る。生物学的培養物から得られた流体(例えば、培養培地)の例には、例えば原核生物(例えば、細菌)および真核生物(例えば、動物細胞、植物細胞、酵母、真菌)を含めたならびにその画分を含めた単細胞または多細胞生物の、培養または発酵により得られたものが含まれる。一部の態様において、試験サンプルには、血液培養物由来の流体が含まれ得る。一部の態様において、培養培地は、任意の供給源、例えば、限定されることなく、研究用実験室、医薬品製造工場、ハイドロカルチャー(例えば、水耕食品農場)、診断検査施設、臨床現場、およびその任意の組み合わせから得てもよい。
【0226】
一部の態様において、試験サンプルには、生物医学的および分子生物学的適用のためのものなど、実験室または臨床現場において用いられる培地または試薬溶液が含まれ得る。培地は、組織、生物、もしくは細胞集団の生存能力を維持しかつ増殖および成長を支持する栄養素を含有する、組織、生物、もしくは細胞集団を維持するための培地、または組織、生物、もしくは細胞集団を培養するための培地であり得る。
【0227】
一部の態様において、試験サンプルは非生物学的流体であり得る。例示的な非生物学的流体には、水、塩水、ブライン、イオン液体、緩衝液、生理食塩溶液、砂糖溶液(sugar solution)、糖液(carbohydrate solution)、脂質溶液、懸濁液、コロイド、核酸溶液、炭化水素(例えば、液体炭化水素)、酸、ガソリン、石油、液化サンプル(例えば、液化サンプル)、およびその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0228】
一部の態様において、実体が付着している基体は、溶液中の細菌、真菌、ウイルス、ウイルス様粒子、粒子、または本明細書において記載される、例えば前の節に記載される懸濁液中の粒子のうちの1種または複数種に結合する。
【0229】
一部の態様において、本明細書において記載されるアッセイ、例えばELISAは、ブロッキング剤を含む。ブロッキング剤は、例えば参照によりその全体として本明細書に組み入れられる国際出願WO2014144325に記載されるブロッキング剤であり得る。糖質に基づくブロッキング剤の例には、限定されることなく、ヘキソース(例えば、グルコース)、マルトース、マンノース、N-アセチル-ムラミン酸、アミノ糖(例えば、ガラクトサミン、グルコサミン、シアル酸、N-アセチルグルコサミン)、スルホ糖(例えば、スルホキノボース)、トレハロース、セロビオース、ラクトース、ラクツロース、スクロース、フラクトオリゴ糖、セルロース、キチン、またはその任意の組み合わせが含まれる。
【0230】
付加的な使用
一部の態様において、本明細書における産物およびキットを用いて、バイオフィルムに存在する微生物および/もしくは関連する微生物物質を検出し得る、または機器表面を処理してバイオフィルムの形成を防止し得るもしくは阻害し得る。例えば、リステリア・モノサイトゲネスは、食品加工機器ならびに他の食品および非食品接触表面において用いられる様々な原料の上にバイオフィルムを形成し得る(Blackmail, J Food Prot 1996; 59:827-31;Frank, J Food Prot 1990; 53:550-4;Krysinski, J Food Prot 1992; 55:246-51;Ronner, J Food Prot 1993; 56:750-8)。典型的に、バイオフィルムにおいて、微生物細胞は表面に付着し、微小生物によって産生される細胞外ポリマー材料のマトリックス中に埋め込まれる。バイオフィルムは多くの環境において生じ、多種多様の望ましくない効果に高頻度でつながる。例えば、バイオフィルムは、熱交換器、パイプライン、および船体などの産業機器のファウリングを引き起こし、熱伝達の低下、エネルギー損失、流体摩擦抵抗の増加、および腐食の加速をもたらす。歯および歯肉、尿路および腸管、ならびにカテーテルおよびプロテーゼなどの埋没された医療装置の上へのバイオフィルム蓄積は、感染症に高頻度でつながる(Characklis W G. Biofilm processes. In: Characklis W G and Marshall K C eds. New York: John Wiley & Sons, 1990:195- 231;Costerton et at, Annu Rev Microbiol 1995; 49:711-45)。
【0231】
なおさらなる態様において、本明細書において記載される産物およびキットを用いて、植物微生物および/または関連する微生物物質を標的にすることができる。植物真菌は、大きな社会的インパクトを有する大規模な伝染病を引き起こしてきた。植物真菌の例には、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、クリニペリス・ペルニキオサ(Crinipellis perniciosa)、霜白鞘(frosty pod)(モニリオフトラ・ロレリ(Moniliophthora roreri))、卵菌フィトフトラ・カプシシ(capsici)、ミコスフェレラ・フィジエンシス(Mycosphaerella fijiensis)、フザリウム・ガノデルマ(Ganoderma)種真菌、およびフィトフトラが含まれるが、それらに限定されるわけではない。例示的な植物細菌には、バークホルデリア・セパシアが含まれる。例示的な植物ウイルスには、ダイズモザイクウイルス、ビーンポッドモトルウイルス、ダバコリングスポットウイルス、オオムギ黄萎ウイルス、コムギスピンドルストリークウイルス、土壌伝播性(soil born)モザイクウイルス、トウモロコシにおけるコムギストリークウイルス、トウモロコシ萎縮モザイクウイルス、トウモロコシ白化萎縮ウイルス、キュウリモザイクウイルス、ダバコモザイクウイルス、アルファルファモザイクウイルス、ジャガイモXウイルス、ジャガイモYウイルス、ジャガイモリーフロールウイルス、およびトマトゴールデンモザイクウイルスが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0232】
さらに他の態様において、本明細書において記載される産物およびキットを用いて、生物テロ剤(例えば、B.アントラシスおよび天然痘)を検出し得るまたはそれに対抗し得る。
【0233】
品質管理
一部の態様において、本明細書における方法によって産生された装置は、発売されるまたは販売される前に試験される。例えば、ISO 10993-1などの細胞毒性アッセイが実施され得る。一部の態様において、生体適合性試験が実施される。一部の態様において、試験は、汚染物質が約1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、または10nM未満で存在することを示す。
【0234】
1つの局面において、本発明は、本発明に必須のものとしての、しかし必須であろうとなかろうと、指定されていない要素の内包に開かれた(「含む」)、本明細書において記載される組成物、方法、およびそのそれぞれの成分に関する。一部の態様において、組成物、方法、またはそのそれぞれの成分の説明に含まれる対象となる他の要素は、本発明の基本的なおよび新規な特徴に大きく影響を及ぼさないものに限定される(「本質的にそれからなる」)。これは、記載される方法の中の工程ならびに組成物およびその中の成分に等しく適用される。他の態様において、本明細書において記載される本発明、組成物、方法、およびそのそれぞれの成分は、該成分、組成物、または方法に必須の要素であると見なされないいかなる要素をも除外することを意図される(「からなる」)。
【0235】
本発明は、以下の番号付けされたパラグラフのいずれか1つに規定されるものであり得る。
1.
実体(例えば、ポリペプチド、例えば糖ポリペプチド、例えば糖タンパク質;核酸;炭水化物、例えば多糖;生物学的ポリマー;小分子;ペプチド模倣物;薬物;または病原性もしくは疾患性分子と相互作用し得る、例えば特異的に結合し得る、例えば糖ポリペプチド、例えば糖タンパク質に結合し得る部分)が付着している基体を作製する方法であって、
I:
(i)基体とプラズマとを接触させて、プラズマ発生部分(PGM)を含む改変基体を形成する工程、および
(ii)改変基体への実体の付着に十分な条件下で、実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と改変基体とを接触させる工程;
II:
(i)PGMを含む改変基体を得る工程、および
(ii)改変基体への実体の付着に十分な条件下で、実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と改変基体とを接触させる工程;あるいは
III:
(i)基体とプラズマとを接触させて、PGMを含む改変基体を形成する工程、および
(ii.a)PGMを含む改変基体を、該改変基体への実体の付着に十分な条件下で実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と該改変基体とを接触させるのに適したものとして分類する工程、または
(ii.b)PGMを含む改変基体を、該改変基体への実体の付着に十分な条件下で実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と該改変基体とを接触させる関係者に、運ぶ、売却する、輸送する、その管理を移す、もしくはその所有を移す工程
を含み、それによって、実体が付着している基体を作製し、
ただし、
(a)基体が、流体透過性、イオン透過性、多孔質、柔軟、加圧滅菌可能(例えば、100Cを超えても構造を保持する)、もしくはポリスチレン以外であること;
(b)基体が、90、80、70、60、もしくは50%未満のポリスチレンを含むこと;
(c)基体が、ポリスルホン(PS)、ポリアリルエーテルスルホン(PAES)、もしくはポリエーテルスルホン(PES)を含むこと;
(d)基体が、コンパートメント、例えば内腔を有する構造を含み、例えば該構造が中空繊維を含むこと;
(e)実体が特異的結合ペアの第一のメンバーを含むこと;
(f)実体が抗体ドメイン、例えばFcドメインを含むこと;
(g)実体が融合タンパク質を含むこと;
(h)実体がオプソニンを含むこと;
(i)実体がレクチンを含むこと;
(j)実体が多量体タンパク質のサブユニットを含むこと;または
(k)付着した実体が第二の実体に架橋される(例えば、第二の実体が基体に付着している、または第二の実体が基体に付着していない)こと
のうちの1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはすべて)を条件とし;かつ
ただし、
(l)プラズマが酸素プラズマ以外である(例えば、プラズマがCO2プラズマである)こと;
(m)改変基体が、実体の付着前に、架橋部分(例えばシラン、例えば(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS))と接触せず、かつそれで誘導体化されないこと;または
(n)改変基体が、実体の付着前に、有機溶媒(例えば有機アルコール、例えばエタノール)と接触しないこと
のうちの1つまたは複数(例えば、2つまたはすべて)を条件とする、方法。
2.
I:
(i)基体とプラズマとを接触させて、プラズマ発生部分を含む改変基体を形成する工程;および
(ii)該改変基体への実体の付着に十分な条件下で、実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と該改変基体とを接触させる工程
を含む、パラグラフ1の方法。
3.
II:
(i)PGMを含む改変基体を得る工程;および
(ii)該改変基体への実体の付着に十分な条件下で、実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と該改変基体とを接触させる工程
を含む、パラグラフ1の方法。
4.
III:
(i)基体とプラズマとを接触させて、PGMを含む改変基体を形成する工程;および
(ii.a)PGMを含む改変基体を、該改変基体への実体の付着に十分な条件下で実体、例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチドと該改変基体とを接触させるのに適したものとして分類する工程;または
(ii.b)PGMを含む改変基体を、該改変基体への実体の付着に十分な条件下で実体(例えば生物学的ポリマー、例えばポリペプチド)と該改変基体とを接触させる関係者に、運ぶ、売却する、輸送する、その管理を移す、もしくはその所有を移す工程
を含む、パラグラフ1の方法。
5.
(a)例えばPGMと実体との間に配置される活性化部分由来の原子なしで、実体がPGMに直接付着する;
(b)基体とプラズマとを接触させた後、実体がPGMに直接付着する;
(c)PGMと実体とを付着させるための1つもしくは複数の反応が水性である;
(d)実体が、水性条件下で改変基体と接触する;
(e)PGM、例えばカルボン酸が、例えばXPSによって測定されるように、炭素組成で少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、もしくは20%の存在量で形成される;
(f)実体が、例えば結合法によって測定されるように、1cm2あたり少なくとも約1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、もしくは1×1017個の分子の密度で付着する;または
(g)実体が、6~8のpH(例えば、pH7または生理学的条件)で改変基体と接触する;または
(h)実体が、少なくとも約500、600、700、800、900、1000、もしくは1100個の実体/μm2の密度で付着する、
パラグラフ1の方法。
6.
基体が内腔を含み、例えば基体は中空繊維を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
7.
基体が、セルロース、置換セルロース、例えば酢酸セルロース、二酢酸セルロース、もしくは三酢酸セルロース;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルエーテルスルホン、ポリビニルピロリドン、ナイロン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート、ポリアミド、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
8.
基体がポリジメチルシロキサン(PDMS)またはポリスチレンを含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
9.
基体が接着剤または密閉剤を含み、かつ該接着剤または密閉剤が、有機溶媒、例えば有機アルコール、例えばエタノールと接触しない、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
10.
基体が、透析、限外濾過、血液濾過、血液透析濾過、または血液灌流カートリッジを含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
11.
基体が、ポリマー、ガラス、金属、もしくはセラミック、またはその任意の組み合わせを含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
12.
基体が中空繊維または非中空繊維膜を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
13.
工程(ii)において、改変基体が、架橋部分、例えばシラン、例えば(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)を実質的に含んでいない、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
14.
工程(ii)において、改変基体が有機溶媒を実質的に含んでいない、または
前記方法が、例えば工程(i)の後もしくは工程(ii)の前に、改変基体と有機溶媒とを接触させる工程を含まない、
前記パラグラフのいずれか一つの方法。
15.
改変基体、実体、またはその両方と、活性化部分、例えば水溶性活性化部分、例えば1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)とを接触させて、改変基体上の官能基を活性化する工程を含み、
該官能基が任意でカルボン酸基である、
前記パラグラフのいずれか一つの方法。
16.
工程(ii)の接触させる工程が、水性バッファー中で実施される、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
17.
工程(ii)の接触させる工程が、2-モルホリノ-エタンスルホン酸(MES)バッファーを含む溶液中で実施される、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
18.
工程(ii)の接触させる工程が、約4~5、4.5~5.5、5~6、6~7、7~8、または約5のpHで実施される、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
19.
工程(ii)の接触させる工程が、約4~6、6~8、8~10、10~12、12~14、または14~16時間実施される、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
20.
活性化部分が、実体が付着している基体に含まれていない原子を含む、例えば活性化部分の原子のいずれも、実体が付着している基体に含まれていない、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
21.
PGMがカルボン酸を含み、かつ実体がアミンを含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
22.
PGMのカルボン酸が、実体のアミン基と共有結合で結合する、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
23.
プラズマがCO2プラズマである、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
24.
プラズマが、O2、N2、またはNH4プラズマである、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
25.
基体とプラズマとを接触させる工程が、基体上に既定のレベルまたは密度のPGMを形成するのに適切な条件下にある、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
26.
PGMが、ヒドロキシル基、アルデヒド基、エポキシド基、ペルオキシド基、スルフヒドリル基、カルボニル基、またはカルボン酸基を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
27.
PGMがカルボン酸基を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
28.
PGMの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、または50%がカルボン酸基を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
29.
PGMがアルデヒド基を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
30.
PGMの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、または50%がアルデヒド基を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
31.
PGMが、実体、例えば活性化部分と接触している実体上の部分と反応性である部分を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
32.
プラズマが、以下の条件:
(a)約13~14mHz、例えば13.5mHzの無線周波数;
(b)プラズマ処理が、実体の活性、例えば結合活性を維持しながら改変基体に実体を連結させるのに十分な時間続き、例えばプラズマ処理が、約0.1~5分間、例えば約1分間続くこと;
(c)プラズマガス圧が、約150~350mTorr、例えば約200mTorrであること;
(d)約10~150W、例えば約100Wの出力;または
(e)プラズマ発生器が、プラズマ発生器チャンバーの外側に電極を含み、例えばプラズマ発生器チャンバーの内側には電極を含まないこと
のうちの1つまたは複数(例えば、2、3、4つ、またはすべて)の下でプラズマ発生器によって発生される、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
33.
工程(i)の接触させる工程が、複数の基体(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、20、50、または100個の基体)とプラズマとをプラズマ発生器チャンバー内で接触させることを含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
34.
実体が、オプソニン、炭水化物結合タンパク質、カルシウム結合タンパク質、二価カチオン結合タンパク質、および/または抗体の一部分、例えばFcもしくはその一部分を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
35.
実体が、SEQ ID NO:4のポリペプチドまたはSEQ ID NO:4と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一のポリペプチド、あるいはSEQ ID NO:6のポリペプチドまたはSEQ ID NO:6と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一のポリペプチドを含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
36.
実体が、多量体、例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、12量体、または18量体を形成する、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
37.
実体が、互いに架橋した少なくとも2つのサブユニットを有する多量体を形成する、パラグラフ36の方法。
38.
PGMのタイプ、PGMの数、PGMの密度、汚染物質の存在、付着した実体の数、接触角測定値(例えば、水接触角測定値)、または表面エネルギー測定値に関連したパラメーターの値を取得する工程、および
取得した値と標準値とを比較する工程
をさらに含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
39.
比較に対応して、分類する工程、合格とする工程、不合格とする工程、認可する工程、製品に組み入れる工程、包装する工程、新たな場所に移す工程、または商業に流通させる工程をさらに含み、
基体が、付着した実体を含む、
パラグラフ38の方法。
40.
例えばX線光子分光法(XPS)により、PGMの存在について改変基体を評価する工程をさらに含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
41.
汚染物質または製造試薬、例えば抽出され得る分子、浸出し得る分子、基体に連結されていないFcMBL、EDC、溶媒(例えば、MESバッファー)、内毒素、発熱物質、ヌクレアーゼ、または生物、例えば細菌もしくは真菌について、改変基体を評価する工程
をさらに含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
42.
例えば、
(a)プラズマ発生器チャンバーを溶媒(例えば有機溶媒、例えばエタノール)で洗浄すること;
(b)該チャンバー内で浄化プラズマを産生すること(例えば、工程(i)のプラズマとは異なるガスから作られた浄化プラズマ、例えば工程(i)のプラズマがCO2プラズマである場合、O2プラズマを用いた浄化);および/または
(c)化学清浄によって該チャンバーを清浄すること
のうちの1つまたは複数(例えば、そのうちの2つまたはすべて)を実施することによって、工程(i)の前に該プラズマ発生器チャンバーを浄化する工程
をさらに含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
43.
浄化プラズマが、約30分間、約400Cの温度で、またはその両方で産生される、パラグラフ42の方法。
44.
(a)浄化工程の間、プラズマの色をモニターする工程であって、例えばO2プラズマは、有機物が存在する場合に青色であり、有機物が存在しない場合に白色である、もしくはCO2プラズマは、有機物が存在する場合に暗青色であり、有機物が存在しない場合に水色である、工程;または
(b)工程(i)の接触させる工程の間、プラズマの温度をモニターする工程であって、プラズマの温度は、プラズマが産生される最初のわずかな時間に80Cを超えて上昇せず、最初のわずかな時間に80Cを超えて上昇する温度は汚染物質の存在を示す、工程;または
(c)浄化工程の間、プラズマの温度をモニターする工程であって、プラズマの温度は、ピーク温度(典型的に、400~500C)から10Cを下回って下降し、上昇し続けるかもしくはピーク温度を維持する温度は汚染物質の存在を示す、工程
のうちの1つまたは複数(例えば、2つまたはすべて)を実施することによって、プラズマ発生器チャンバーの清浄度を判定する工程
を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
45.
基体がプラズマ発生器チャンバー内に配置される場合、例えば工程(i)の接触させる工程の前に、
(a)プラズマ発生器チャンバー内に真空(例えば、1Torr未満の圧力)を創出すること、および
(b)ガス、例えば工程(i)のプラズマを作るために用いられた同じガス、例えばCO2で、プラズマ発生器チャンバーを充填すること
の一方または両方を実施する工程を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
46.
プラズマ発生器チャンバーを、例えば少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10分間、例えば約5分間、ガス、例えばCO2で充填する、パラグラフ45の方法。
47.
例えば、
(a)基体と1滴の液体、例えば水とを接触させ、該1滴の液体の接触角を測定すること;
(b)基体と、実体に結合する部分とを接触させることであって、例えば該部分が抗体分子またはマンノースなどの糖質を含み、該部分が、任意で、検出可能な標識に結合されるもしくは共有結合で連結される、こと;または
(c)基体と、PGMに結合する部分、例えばアミン基を含む検出可能な標識とを接触させること
のうちの1つまたは複数を実施することによって、基体の改変を測定する工程
を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
48.
基体に実体が付着する際にマスキング実体を提供する工程であって、マスキング実体が、実体の一部分と、例えば活性化部分、基体、または別の実体、例えばポリペプチドなどの生物学的ポリマーとの反応を阻害する、工程
を含む、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
49.
マスキング実体が、実体が結合する部分を含む、パラグラフ48の方法。
50.
実体がオプソニン、例えばMBLを含み、かつマスキング実体が、オプソニンが結合する部分、例えば二価カチオン、例えばCa2+、または糖類、例えばグルコースを含む、パラグラフ48の方法。
51.
例えば結合アッセイによって測定される、第一の選択エリア、例えば1cm2エリアにおける付着した実体の密度が、1、2、3、4、5、または10個の他の選択エリア、例えば基体上のそれぞれ1cm2のエリアの密度の50%以内である、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
52.
基体上または基体の一部分上、例えば中空繊維の内腔上の、1cm2エリアの10、20、30、40、50、60、または70%の密度が、互いの、または1つのウェルの底部、複数のウェルの底部、もしくは中空繊維の50、40、または30%以内である、前記パラグラフのいずれか一つの方法。
53.
パラグラフ1~52のいずれか一つの方法によって産生された、実体が付着している基体
を含む、装置。
54.
パラグラフ1~52のいずれか一つの方法によって産生可能な、実体が付着している基体
を含む、装置。
55.
実体、例えばポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチドが付着している基体、例えば透過膜を含む装置であって、
例えば結合アッセイによって測定されるように、1cm2あたり1×1016、1×1015、1×1014、1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、または1分子未満の架橋剤、例えばシランを含む、装置。
56.
付着した複数種の実体、例えば複数種のポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチドを有する基体、例えば透過膜を含む装置であって、
例えば結合アッセイによって測定される、第一の選択エリア、例えば1cm2エリアにおける付着した実体の密度が、1、2、3、4、5、または10個の他の選択エリア、例えば基体上の1cm2のエリアの密度の50%以内である、あるいは基体上または基体の一部分上、例えば中空繊維の内腔上の、1cm2エリアの10、20、30、40、50、60、または70%の密度が、互いの、または1つのウェルの底部、複数のウェルの底部、もしくは中空繊維の50、40、または30%以内である、装置。
57.
実体、例えばポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチドが付着している基体、例えば透過膜を含む装置であって、該実体のアミノ基(例えば、リジン側鎖またはN末端のアミノ基)が、該基体上のPGM(例えば、カルボン酸)に共有結合で直接結合される、装置。
58.
実体、例えばポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチドが付着している基体、例えば透過膜を含む装置であって、
1cm2あたり1×1016、1×1015、1×1014、1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、もしくは1分子未満、または1つの装置あたり1×1016、1×1015、1×1014、1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、もしくは1分子未満の汚染物質、例えば抽出され得る分子、浸出し得る分子、基体に連結されていないFcMBL、EDC、溶媒(例えば、MESバッファー)、内毒素、発熱物質、ヌクレアーゼ、または生物、例えば細菌もしくは真菌を含む、装置。
59.
1cm2あたり1×1016、1×1015、1×1014、1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、または1分子未満の架橋剤、例えばシランを含む基体、例えば透過膜;
実体、例えばポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチド;および
活性化部分、例えば水溶性活性化部分、例えばEDCを含む、水溶液
を含む反応混合物。
60.
基体、例えば透過膜;
実体、例えばポリペプチド、例えばオプソニンの一部分、例えばMBLの一部分を含むポリペプチド;および
マスキング実体、例えばオプソニンが結合する部分、または二価カチオン、例えばCa2+
を含む、反応混合物。
61.
マスキング実体が糖類、例えばグルコースを含む、パラグラフ60の反応混合物。
62.
実体、例えばポリペプチド、例えばMBLの一部分を含むポリペプチドが付着している基体、例えば透過膜を含む装置であって、該実体が、約500~2000、500~1800、500~1600、500~1200、600~2000、600~1800、600~1600、600~1200、800~2000、800~1800、800~1600、800~1200、1000~2000、1000~1800、1000~1600、または1000~1200個の実体/μm2の密度で該基体に付着している、装置。
【実施例】
【0236】
本発明をここで概略的に記載しているが、本発明のある特定の局面および態様の単なる例証の目的のために含まれかつ本発明を限定することを意図されない、以下の実施例への言及によってそれはより容易に理解されるであろう。そのようなものとして、開示される具体的な構築物および実験プランのいずれかは、本開示の範囲内で置換され得ることは容易に明らかであろう。
【0237】
実施例1:CO2処理されたポリエーテルスルホンについてのX線光子分光法(XPS)研究
ほとんどのプラスチックは、生体分子で表面を充分に官能化するのに十分な反応基をそれらの表面に有しない。XPSを用いて、プラズマで改変されたプラスチックの表面上の酸化の程度を特徴付けし、カップリングの前に、必要とされる反応性部分が存在することを検証した。
【0238】
PESサンプルの調製
ポリエーテルスルホン(PES)シートを、Goodfellow Cambridge Limitedから得た。原料を8mm×11mmの長方形に切り取ることによって、シートのサンプルを調製した。サンプルを70%エタノール/水溶液中でボルテックスによって3回洗浄し、その後70%エタノール/水で3回リンスした。プラズマ処理の前に、サンプルを室内の空気中で乾燥させた。
【0239】
PESのCO2プラズマ処理
PESサンプルを、様々な時間または様々な出力でCO2プラズマに曝露した。18.56MHzの無線周波数の容量結合プラズマ発生器は、Diener製のModel Nanoであった。まず、空チャンバーとのサイクルにより、チャンバーから汚染物質を清浄した。まず、チャンバーを0.14mbarで真空に引っ張り、次いで、1分間の純粋なO2ガスインプットで0.26mbarの圧力に上昇させた。次いで、プラズマを150W(50%出力)で30分間発生させた。ユニットが冷却した時点で、サンプルをチャンバー内に導入した(最高4時間)。次いで、チャンバーを0.14mbarで真空に引っ張り、次いで、5分間の純粋なCO2ガスインプットで0.26mbarの圧力に上昇させた。プラズマ処理時間は、100ワットで0分間、0.5分間、1分間、3分間、および5分間に変動した。サンプルを同日中にXPSによって分析して、PES表面上の付加されたカルボキシレート官能基の存在を同定した。
【0240】
PESのXPS
PESサンプルのX線光電子分光法(XPS)分析を、Thermo Scientific K-Alpha分光計で実施した。分光計は、アルミニウムKα供給源から12Vの電子ビームを発生する。PESサンプルを0.85eVの線幅で1.4866keVのx線エネルギーにおいてプローブした。x線スポットサイズ400μmを採用して、平均面積にわたる誘導された官能基変化を得た。化学組成を、各PESサンプルに対して1つのスポットにおいて分析した。
式1:ポリエーテルスルホンの構造
【0241】
各スペクトルの成分分析を、プログラムCasaXPSで行った。
【0242】
C1sスペクトルに関して、以下のピークを定量化した。
【0243】
【0244】
図1は、天然(非処理)PESサンプルのXPS分析を示している。
図2は、プラズマ処理されたPESサンプルのXPS分析を示している。
【0245】
XPSスペクトルの成分分析は、CO
2プラズマの処理時間の増加が、酸化された炭素部分、特にカルボキシレート部分のパーセンテージの増加をもたらすことを例証している(
図3を参照されたい)。これらのカルボキシレート基は、ここで、架橋化学(例えば、EDC)による関心対象の分子上のアミン基へのカップリングに利用可能である。
【0246】
実施例2:CO2処理されたPESのアミノ量子ドットによる官能化
方法
PESサンプルを、Life Technologies製のQDOT 655 ITK Amino(PEG) quantum dots(Cat# Q21521MP)で官能化した。まず、サンプルをペトリディッシュの中で上向きにして、PESを100WにおけるCO2プラズマで1分間処理した。プラズマ処理の後、プラズマ処理された側を上にして、サンプルをマルチウェル24ウェルプレートに移した。
【0247】
2つの新しいバイアル(250ul)の製造元の溶液をエッペンドルフチューブに組み合わせることによって、量子ドットを調製した。溶液を穏やかにボルテックスして、暗赤色の溶液を混合した。7.0のpHで14mLの1mM PIPES溶液に307uLのドットを溶解することによって、QDot溶液の希釈を調製した。
【0248】
4つのグループ分けにおけるPESサンプルに化学を適用した。
1.)(-) EDCコンジュゲート;(-) CO2プラズマ
2.)(+) EDCコンジュゲート;(-) CO2プラズマ
3.)(-) EDCコンジュゲート;(+) CO2プラズマ
4.)(+) EDCコンジュゲート;(+) CO2プラズマ
【0249】
EDC溶液を、PIPESバッファー中20mg/mLの濃度に調製した。ウェル中の各PESサンプルに、12.8uLの希釈Qdotストックを添加した。587.2uLのPIPESバッファーを添加した。200uLのEDC溶液または200uLのPIPESバッファーのいずれかをウェルに添加した。各ウェル中の反応混合物の総容積は0.8uLであった。ウェルプレートを、室温にて1時間オービタルシェーカー上で振とうした。その後、ウェルプレートを、4Cで一晩オービタルシェーカー上に置いた。
【0250】
コンジュゲート後、Qdot溶液を各ウェルから除去した。各ウェルを1mLの脱イオン(DI)水(Millipore-18.2Mohm水)でリンスした。各PESシートサンプルをエッペンドルフチューブに移し、DI水中0.5%Tween-20の溶液中で5分間超音波処理した。Tween溶液をエッペンドルフチューブから吸引し、該溶液をDI水で置き換えた。サンプルチューブを10秒間ボルテックスした。DI水をTween溶液で置き換え、サンプルを再度5分間超音波処理した。最後に、各サンプルをDI水でリンスし、3回ボルテックスした。サンプルを、顕微鏡査定の前に、DI水中4Cで保管した。
【0251】
共焦点イメージング
サンプルをLeica SP5 X MP倒立共焦点顕微鏡で撮像した。イメージングの目的は、面積の関数として蛍光を定量化することによって、表面官能化の程度を査定することであった。励起はCohert Chameleon多光子レーザーで達成され、ピークは810nmに中心があった。レーザーの電力アウトプットは3.2Wであった。検出器のゲインを500に固定した。共焦点ピンホールを55.10umに固定した。
【0252】
別個のチャネルでPESの自家蛍光およびQdotの赤色蛍光を収集するように、検出器を構成した。
【0253】
化学条件のそれぞれに関して、3枚のPESシートを3点で撮像した。スキャン面積は、512×512ピクセルまたは620×620ミクロンであった。各サンプルに対して収集された平面の数を、Qdot処理された表面の観察に基づいて視覚的に判定した。サンプル全体をスキャンしてバルクサンプルにおける自家蛍光のエリアを位置付け、かつ焦点をずらして原料表面と、その後自由空間の領域とを位置付けることによって、区分化を実施した。
【0254】
解析
ImageJソフトウェアを用いて、表面に付着した量子ドットの量の測定値である、表面層の蛍光強度を定量化した。マスクを用いて、ドットの凝集体を除外した。解析は、CO2プラズマ処理されかつEDCカップリングされた表面上の量子ドットの最大被覆率を示しており、最大表面コーティングには両工程が必要となることを示した。
【0255】
走査型電子顕微鏡
PESフィルムをSEMでさらに特徴付けして、サブ波長(<200nm)分解能における量子ドットの分布を判定した。イメージングにより、CO2プラズマおよびEDC架橋化学の両方で処理された場合、ドットは表面上で密に詰め込まれることが明らかになった。
【0256】
CO
2プラズマ、それに続くアミンへのカップリングは、表面全体への生体分子の均一で高密度のコーティングを提供する。この過程を用いて、PESにFcMBLをカップリングした。FcMBLは、マンナンに結合するその能力によって測定されるように機能的であった(
図4)。以下の方法を用いた。
共有結合性カップリング:PESチップ
1.PESチップを12ウェルプレートに置く。プラズマ処理する(100W、1分間)。
2.FcMBLを1×PBS中125ug/mlに希釈する。
3.EDCを1×PBS中1mg/mlで溶解する。
4.FcMBLとEDCとを1:1で混合し、軽く反転させる。
5.FcMBL-EDCをPESチップ上に等分する、500ul/ウェル。4Cで一晩インキュベートする。
6.1×PBSを用いて3×1ml/ウェルでPESチップを洗浄する。
マンナン結合:PESチップ
7.PESチップをブロッキングする:10mMグルコース、TBS-T Ca++中0.1%BSA、500ul/ウェル。RTで1時間、振とうしながらインキュベートする。
8.PESチップを洗浄する:3×1ml/ウェル、TBS-T Ca++。
9.マンナンをTBS-T Ca++中31.25ug/mlに希釈する。
10.マンナンをPESチップ上に等分する、500ul/ウェル。RTで1時間、振とうしながらインキュベートする。
11.PESチップを洗浄する:3×1ml/ウェル、TBS-T Ca++。
12.rhMBL-HRP 1.5ulを10mlの3%BSA/TBS-T Ca++中に希釈する。
13.rhMBL-HRPをPESチップ上に等分する、500ul/ウェル。RTで1時間、振とうしながらインキュベートする。
14.PESチップを洗浄する:3×1ml/ウェル、TBS-T Ca++。
15.PESチップを新たな12ウェルプレートに移す。
16.発色:500ul/ウェルのTMB。RTで1分間インキュベートする。
17.消光反応:250ul/ウェルの硫酸。
18.サンプルを96ウェルプレートに移す、三つ組で100ul/ウェル。
19.450nmで読み取る。
【0257】
実施例3:プラズマ処理および透析カートリッジへのFcMBL付着
FcMBLを、以下の方法を用いて透析カートリッジに付着させた。
【0258】
チャンバー清浄サイクル(例えば、実施例1に記載される)の後、中空繊維透析カートリッジ(「透析器」)を、ガラス棚の上のチャンバーに、チャンバーの後部とチャンバーの入り口とのおおよそ中間に置いた。チャンバーを0.14mbarの圧力まで空にし、次いで0.26mbarの純粋なCO2に5分間曝露して、フィルターがCO2ガスで充填されることを確実にした。チャンバーは、0.26mbarの圧力を維持しながら、100Wで1分間プラズマを発生した。
【0259】
フィルターを、0.5mg/mL EDCおよび250ug/mL FcMBLを含有する冷却(4C)MES pH5溶液で充填した。フィルターを冷やし、4Cで一晩(約16時間)保管した。フィルターを、2LのPBS溶液、次いで10mM EDTAを有する1LのPBSで洗い流した。フィルターを使用まで4Cで保管した。
【0260】
実施例4:ELISAにおける使用のためのプラズマ処理されたプレート
本実施例は、共有結合で結合したELISAの感度が、全血におけるマンナンの検出に関して、受動吸着ELISAよりも有意に大きかったことを例証する(
図5)。
【0261】
96ウェルプレートへのFcMBLの共有結合性カップリングを以下のように実施した。
1.96ウェルELISAプレートをプラズマ処理する(CO2、100W、1分間)。
2.FcMBLを1×PBS中31.25マイクログラム(ug)/mlに希釈する。
3.EDCを1×PBS中1mg/mlに溶解する。
4.FcMBL溶液とEDC溶液とを混合し、軽く反転させる。
5.プラズマ処理された96ウェルプレート上にFcMBL-EDCを100ul/ウェルで等分する。
6.4Cで一晩インキュベートする。
7.1×PBSを用いて4×200ul/ウェルでプレートを洗浄する。
8.プレートをブロッキングする:10mMグルコース、TBS-T Ca++中0.1%BSA、200ul/ウェル。350RPMで振とうしながら、RTで1時間インキュベートする。
9.TBS-T Ca++を用いて4×200ul/ウェルでプレートを洗浄する。
10.マンナンをTBS-T Ca++または全血中62.5ng/mlに希釈し、7回の2倍希釈を完了する。
11.マンナン希釈物を三つ組で等分する、100ul/ウェル。350RPMで振とうしながら、RTで30分間インキュベートする。
12.TBS-T Ca++を用いて4×200ul/ウェルでプレートを洗浄する。
13.rhMBL-HRP 1.5ulを10mlの3%BSA/TBS-T Ca++中に希釈する。
14.rhMBL-HRPを100ul/ウェルで等分する。350RPMで振とうしながら、RTで30分間インキュベートする。
15.TBS-T Ca++を用いて4×200ul/ウェルでプレートを洗浄する。
16.TMBを100ul/ウェルで等分する。RTで約1分間インキュベートする。
17.消光反応:硫酸を50ul/ウェルで等分する。
18.450nmでプレートを読み取る。
【0262】
実施例5:基体へのFcMBLの付着をアッセイする
本実施例は、中空繊維の内側で実施されたFcアッセイを記載する。
1.中空繊維にFcMBLを共有結合でカップリングした後、1×PBSを用いて3×10mlで繊維を洗い流す。
2.中空繊維ケーシングを切り開いて、内部繊維を晒す。
3.ピンセットを用いて、1本の繊維を取り出し、1インチ長切片に切り分け、各切片を12ウェルプレートの1ウェルの中に置く。
4.ブロッキング:3%BSA/TBS-T Ca++を等分する、500ul/ウェル。振とうしながら、室温で1時間インキュベートする。
5.TBS-T Ca++を用いて3回洗浄する、500ul/ウェル。
6.HRPコンジュゲート抗Fc抗体(Jackson)を1%BSA/TBS-T Ca++中1:10,000に希釈する。
7.抗Fc抗体溶液を500ul/ウェルで等分する。振とうしながら、室温で1時間インキュベートする。
8.TBS-T Ca++を用いて3回洗浄する、500ul/ウェル。
9.発色:TMBを500ul/ウェルで等分する。約1分間インキュベートする。
10.消光反応:硫酸を250ul/ウェルで等分する。
11.96ウェルプレートに100ul/ウェルを三つ組でピペットで移す。
12.450nmで読み取る。
【0263】
中空繊維上のFcに対するELISAは、FcMBLが繊維の長さに沿ってカップリングされたことを実証した(
図6)。すべてのFcMBLレベルは、バックグラウンド(対照)レベル(データ示さず)を上回った。
【0264】
同様の実験において、HRPが1kd MWCOスペクトルフィルターに共有結合でカップリングされ、長さに沿って均一にカップリングされることが見い出された(
図7)。EDCを欠く陰性対照反応は、0.1をはるかに下回るOD450値をもたらした(データ示さず)。
【0265】
実施例6:カップリングバッファー条件
カップリングバッファーへの10mMカルシウムの添加は、カルシウム依存的様式で結合リガンドに対するFcMBLの機能性を保持するのを助ける。これは、FcMBLの結合ポケットにおけるキレートカルボキシレート基の保護による可能性が高い。加えて、バッファーを4Cに冷やすことは、マンナンに結合する能力によって測定されるように、カップリングしたFcMBLの機能性を保持するのを助ける(
図8)。
【0266】
これは、コンジュゲートバッファー中にカルシウムを有して、フィルター上へのより多くのマンナン結合(より大きな枯渇)に転換される(
図9および表5)。
【0267】
(表5)添加されるカルシウムの有無でのマンナン枯渇
【0268】
実施例7:表面に付着した実体の密度を定量化する
本実施例において、表面ポリエーテルスルホン(PES)を、CO2プラズマの曝露下でカルボン酸基で官能化した。より具体的には、関心対象の生体分子を、(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩のEDCを用いて改変PES表面に連結させた。
【0269】
アミン官能化量子ドットの結合とCO2プラズマにより改変されたポリエーテルスルホン表面の表面とを比較することによって、EDCコンジュゲート化学の有効性を検討した。アミン官能化量子ドットは、タンパク質上のアミン残基に対する適切な類似体として働く。PES表面に量子ドットを連結させる効力を、以下の実験コホートを用いて研究した。
1.-EDC、-CO2
2.+EDC、-CO2
3.-EDC、+CO2
4.+EDC、+CO2
【0270】
各コホートに関して、目視点検、および電子顕微鏡による粒子計数のために、3つのサンプルを調製した。
【0271】
サンプルを以下のように調製した。4.7mLの100mM MESバッファー溶液、pH=5とともに、76.8uLのメーカーストック(QDot 655 ITK(商標)amino(PEG) quantum dots、Invitrogen(Cat# Q21521MP))を添加することによって、QDotのストックを調製した。溶液を中間設定で30秒間穏やかにボルテックスして、混合を確実にした。
【0272】
3.8mgのEDC(ThermoScientific、Cat# 22980)を計量し、3.8mLのMESバッファー中に溶解して、1mg/mL濃度を生み出した。
【0273】
プラズマ改変コホートからのPESチップを、100Wで1分間CO2プラズマに曝露した。プラズマ改変の後、PESチップを24ウェルプレートのウェルの中に個々に置いた。
【0274】
チップをそれぞれ、400uLの100mM MES、pH=5または400uLのMES-EDC溶液のいずれかの中に浸した。400uLのQDOT溶液を24ウェルプレートの各ウェルに直ちに添加した。チップをチェックして、適正な浸漬を確実にした。サンプルを、4℃でシェーカー(LabNet Orbit P4、速度=25)上に一晩置いた。
【0275】
次いで、反応溶液をPESサンプルから吸引除去した。サンプルをDI水で直ちにリンスして、過剰なQDotを除去した。PESチップを1.5mLエッペンドルフチューブに移し、DI水中に浸した。PESチップを有するチューブを1時間超音波処理した。超音波処理の後、DI水を吸引し、チップを30%EtOH中に浸した。エタノール中での超音波処理をもう1時間実施した。超音波処理の後、各チップを30%エタノールの5つのアリコートでリンスした。リンスの後、サンプルを乾燥させ、真空下で保管した。
【0276】
QDotサンプルのイメージングおよび画像解析を以下のように実施した。
【0277】
サンプルをカーボンテープを用いてスタブにのせた。カーボングルー/インクを用いて、PESチップの表面とスタブとの間のいかなる隙間をも密閉した。SEMイメージングの前に、サンプルを、EMS 300T D Dual Head Sputter Coaterにて1nmのPt:Pd(80:20)でスパッタした。
【0278】
PES上のQDotの電子顕微鏡検査を、3keVでZeiss FESEM Supra 55VPにて実施した。画像をInLens検出器でキャプチャーした。粒子分析のための全画像を、400,000×倍率で撮った。顕微鏡画像の視野、753nm×565nm=425,000nm2。
【0279】
MES処理コホートに関しては、3つのサンプルのそれぞれに対して7~8スポットを撮像した。
【0280】
ポリエーテルスルホン(PES)チップの表面上のQDotを、ImageJにおける粒子計数アルゴリズムで集計した。加工を以下の様式で実施した。画像スケールバーでピクセル長を見積もることによって、画像スケールを較正した。画像における表面粗度を、バンドパス機能で最小限に抑えた。大きな構造を10ピクセルまで縮小した。小さな構造を最高3ピクセルまで上げた。次に、画像を閾値処理した。閾値を、アクティブにしたIntermodesで操縦した。「下回る(Below)」値を0.00%に放置した。「上回る(Above)」値を視覚的に最適化して、粒子計数の一因となる外部特質を最小限に抑えた。値の大きさは、表面上の粒子の頻度に依存した。閾値処理の後、画像を二値画像に変換した。粒子計数に関しては、サイズ限度を15nmに対して無限に設定した。円形度パラメーターは0.5~1であった。上記の設定で、小さなクラスターは1つの粒子であるように見え得るため、粒子はわずかに低く見積もられ得た。
【0281】
各コホートに対する見積もられた粒子計数は、下記の表6に表示されている。一元配置ANOVAは0.002のp値を与えた。CO2の非存在下で、ほんの低いレベルの結合が観察された。EDCの添加なしで、PESの表面への粒子の結合が観察された(表6、サンプル3を参照されたい)。EDCおよびCO2の添加ありで、QDOT粒子の頻度は、-CO2対照と比べて2~3倍近く増加する。グループ4におけるQDot粒子の頻度の増加は、EDCカルボジイミド化学の有効性を支持する。理論によって拘束されることを望まないものの、グループ3における粒子の頻度の増加は、イミン形成またはシッフ塩基など、代替的化学によって説明され得る。
【0282】
【0283】
理論によって拘束されることを望まないものの、1つの説明は、CO2プラズマ誘導体化の下で、表面に付与された化学的官能性は、カルボキシレート基によって大半を占められたであろうということである。CO2-イオンプラズマ処理の付加的な結果は、アルデヒド官能性の存在であろう。アルデヒド表面官能性の存在は、ペグ化された量子ドット上の第一級アミンによる表面アルデヒド基の求核攻撃を可能にすると考えられる。この反応において、プロトンは、第一級アミンの窒素、およびカルボニルから置き換えられたヒドロキシルで形成された水によって失われ、イミンまたはシッフ塩基を残す。
【配列表】