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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】圧延方法および圧延装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 31/18 20060101AFI20221024BHJP
   B21B 13/02 20060101ALI20221024BHJP
   B21B 39/06 20060101ALI20221024BHJP
   B21B 39/14 20060101ALI20221024BHJP
   B21B 1/16 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B21B31/18 B
B21B13/02 B
B21B39/06
B21B39/14 H
B21B39/14 F
B21B1/16 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019048258
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020146741
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000149505
【氏名又は名称】大同マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 智
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-206513(JP,A)
【文献】実開昭56-001701(JP,U)
【文献】実公昭32-008323(JP,Y1)
【文献】特開平09-141307(JP,A)
【文献】特開2003-200209(JP,A)
【文献】特開2014-195816(JP,A)
【文献】特開平07-323324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パスライン(PL)に沿って往復移動する被圧延材料(10)を圧延する圧延方法であって、
前記被圧延材料(10)を圧延する孔型(24,42)を軸方向に複数形成した一対の圧延ロール(22,22,40,40)を有し、該一対の圧延ロール(22,22,40,40)を一定方向に回転して被圧延材料(10)を第1方向に送る種類の第1種の圧延機(12)および該第1方向とは逆の第2方向に被圧延材料(10)を送る種類の第2種の圧延機(14)の一方の種類の圧延機(12)の圧延ロール(22,22)を、何れか一つの孔型(24)が前記パスライン(PL)に一致する圧延位置に位置させると共に、他方の種類の圧延機(14)の圧延ロール(40)を前記パスライン(PL)から退避する退避位置に位置させたもとで、前記被圧延材料(10)を圧延位置に位置する一方の種類の圧延機(12)における圧延ロール(22,22)の孔型(24)に通過させて圧延する第1工程と、
前記他方の種類の圧延機(14)の圧延ロール(40,40)を、何れか一つの孔型(42)が前記パスライン(PL)に一致する圧延位置に位置させると共に、一方の種類の圧延機(12)の圧延ロール(22,22)を前記パスライン(PL)から退避する退避位置に位置させたもとで、前記被圧延材料(10)を圧延位置に位置する他方の種類の圧延機(14)における圧延ロール(40,40)の孔型(42)に通過させて圧延する第2工程とを、
前記パスライン(PL)に一致させる孔型(24,42)が前記被圧延材料(10)のパススケジュールに基づく順となるように行う際に、圧延位置に位置する全ての孔型(24,42)に被圧延材料(10)を通過させる毎に該被圧延材料(10)の孔型(24,42)に対する送込み方向を反転することで、一方の種類の圧延機(12)における圧延ロール(22,22)の孔型(24)に対して常に同じ方向から被圧延材料(10)を送り込むと共に、他方の種類の圧延機(14)における圧延ロール(40,40)の孔型(42)に対して常に同じ方向から被圧延材料(10)を送り込んで圧延するようにした
ことを特徴とする圧延方法。
【請求項2】
パスライン(PL)に沿って往復移動する被圧延材料(10)を圧延する圧延装置であって、
前記被圧延材料(10)を圧延する孔型(24)を軸方向に複数形成した一対の圧延ロール(22,22)を有し、該圧延ロール(22,22)を一定方向に回転して被圧延材料(10)を第1方向に送ると共に前記圧延ロール(22,22)の軸方向に移動可能な種類の第1種の圧延機(12)と、
前記第1種の圧延機(12)の圧延ロール(22,22)を、何れか一つの前記孔型(24)が前記パスライン(PL)に一致する圧延位置と、前記パスライン(PL)から退避する退避位置とに移動する第1シフト手段(26)と、
前記第1種の圧延機(12)に対してパスライン方向に離間して配置され、前記被圧延材料(10)を圧延する孔型(42)を軸方向に複数形成した一対の圧延ロール(40,40)を有し、前記第1方向とは逆の第2方向に被圧延材料(10)を送るように該圧延ロール(40,40)を一定方向に回転すると共に前記圧延ロール(40,40)の軸方向に移動可能な種類の第2種の圧延機(14)と、
前記第2種の圧延機(14)の圧延ロール(40,40)を、何れか一つの前記孔型(42)が前記パスライン(PL)に一致する圧延位置と、前記パスライン(PL)から退避する退避位置とに移動する第2シフト手段(44)とを備え、
前記第1種の圧延機(12)の圧延ロール(22,22)および第2種の圧延機(14)の圧延ロール(40,40)の何れか一方の圧延ロール(22,22/40,40)を圧延位置に移動した場合には他方を退避位置に移動し、該圧延位置に移動した全ての圧延ロール(22,22/40,40)の孔型(24,42)に被圧延材料(10)を通過させる毎に、該被圧延材料(10)の孔型(24,42)に対する送込み方向を反転することで、第1種の圧延機(12)における圧延ロール(22,22)の孔型(24)に対する被圧延材料(10)の送込み方向が常に同じになると共に、第2種の圧延機(14)における圧延ロール(40,40)の孔型(42)に対する被圧延材料(10)の送込み方向が常に同じとなるよう構成した
ことを特徴とする圧延装置。
【請求項3】
前記第1種および第2種の圧延機(12,14)は、前記圧延ロール(22,22,40,40)を退避位置に移動した際に、前記パスライン(PL)に沿って移動する被圧延材料(10)を案内する案内手段(28,46)を備えている請求項2記載の圧延装置。
【請求項4】
前記第1種の圧延機(12)の圧延位置と前記第2種の圧延機(14)の圧延位置の間に、圧延位置に移動した圧延ロール(22,22,40,40)の孔型(24,42)に被圧延材料(10)を送り込む送込み手段(64)が設けられている請求項2または3記載の圧延装置。
【請求項5】
被圧延材料(10)を往復移動して圧延する圧延方法であって、
前記被圧延材料(10)を圧延する孔型(24,42)を軸方向に複数形成した一対の圧延ロール(22,22,40,40)を有し、該一対の圧延ロール(22,22,40,40)を一定方向に回転して被圧延材料(10)を第1方向に送る種類の第1種の圧延機(12)および該第1方向とは逆の第2方向に被圧延材料(10)を送る種類の第2種の圧延機(14)を、一方の種類の圧延機(12,14)の孔型(24,42)を通過する被圧延材料(10)が他方の種類の圧延機(12,14)の圧延ロール(22,40)に干渉しない関係で配置し、
前記被圧延材料(10)を第1方向に送って、前記第1種の圧延機(12)における圧延ロール(22,22)の孔型(24)に通過させて圧延する第1工程と、
前記被圧延材料(10)を第2方向に送って、前記第2種の圧延機(14)における圧延ロール(40,40)の孔型(42)に通過させて圧延する第2工程とを、
前記被圧延材料(10)を通過させる孔型(24,42)がパススケジュールに基づく順となるように行う際に、一方の種類の孔型(24,42)に被圧延材料(10)を通過させる毎に、被圧延材料(10)を他方の種類の次に送り込む孔型(24,42)のパスライン(PL1,PL2,PL3,PL4・・・)に一致する位置まで前記軸方向にシフトすると共に該被圧延材料(10)の孔型(24,42)に対する送込み方向を反転することで、一方の種類の圧延機(12)における圧延ロール(22,22)の孔型(24)に対して常に同じ方向から被圧延材料(10)を送り込むと共に、他方の種類の圧延機(14)における圧延ロール(40,40)の孔型(42)に対して常に同じ方向から被圧延材料(10)を送り込んで圧延するようにした
ことを特徴とする圧延方法。
【請求項6】
被圧延材料(10)を往復移動して圧延する圧延装置であって、
前記被圧延材料(10)を圧延する孔型(24)を軸方向に複数形成した一対の圧延ロール(22,22)を有し、該圧延ロール(22,22)を一定方向に回転して被圧延材料(10)を第1方向に送る種類の第1種の圧延機(12)と、
前記被圧延材料(10)を圧延する孔型(42)を軸方向に複数形成した一対の圧延ロール(40,40)を有し、該圧延ロール(40,40)を一定方向に回転して第1方向とは逆の第2方向に被圧延材料(10)を送る種類の第2種の圧延機(14)とを備え、
前記第1種の圧延機(12)および第2種の圧延機(14)は、一方の種類の圧延機(12)の孔型(24)を通過する被圧延材料(10)が、他方の種類の圧延機(14)の圧延ロール(40,40)に干渉しない関係で配置され、
前記被圧延材料(10)を第1種の圧延機(12)の孔型(24)または第2種の圧延機(14)の孔型(42)に送り込み得るよう材料送込み方向を、前記第1方向と第2方向とで反転可能に構成されると共に、前記軸方向に移動可能な送込み手段(32,34,50,52,64)と、
前記送込み手段(32,34,50,52,64)を、前記第1種の圧延機(12)の孔型(24)または第2種の圧延機(14)の孔型(42)のパスライン(PL1,PL2,PL3,PL4・・・)に一致する位置に前記軸方向にシフトするシフト手段とを備え、
前記第1種の圧延機(12)の圧延ロール(22,22)および第2種の圧延機(14)の圧延ロール(40,40)の何れか一方の圧延ロール(22,22/40,40)の孔型(24,42)に前記送込み手段(32,34,50,52,64)により送り込まれる被圧延材料(10)を通過させる毎に、前記シフト手段により前記送込み手段(32,34,50,52,64)を他方の圧延ロール(22,40)の次に送り込む孔型(24,42)のパスライン(PL1,PL2,PL3,PL4・・・)に一致する位置まで軸方向にシフトすると共に該送込み手段(32,34,50,52,64)による材料送込み方向を反転することで、第1種の圧延機(12)における圧延ロール(22,22)の孔型(24)に対する被圧延材料(10)の送込み方向が常に同じになると共に、第2種の圧延機(14)における圧延ロール(40,40)の孔型(42)に対する被圧延材料(10)の送込み方向が常に同じとなるよう構成した
ことを特徴とする圧延装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被圧延材料をパスラインに沿って往復移動することで、該材料を所要の断面形状に圧延する圧延方法および圧延装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棒鋼や線材等の長尺な被圧延材料を所要の断面形状に圧延する手段として、可逆式の圧延装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この可逆式の圧延装置は、一対の圧延ロールを回転可能に支持する圧延機を備え、圧延ロールには、所要のパススケジュールに対応した複数の孔型(カリバ)が軸方向に所定間隔で形成されており、該圧延ロールを軸方向に移動することで、各孔型をパスラインに一致させ得るよう構成される。
【0003】
前記可逆式の圧延装置では、圧延機における圧延ロールの孔型に被圧延材料を通過させて圧延する毎に、該材料を次に通過させるべき孔型がパスラインと一致する位置まで圧延ロールを移動すると共に、被圧延材料の圧延機に対する送込み方向を反転して孔型に通過させて圧延することを繰り返すことで、被圧延材料を所要の断面形状に圧延している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-200209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記可逆式の圧延装置では、孔型に被圧延材料を通過させる毎に、孔型に対する被圧延材料の送込み方向を反転するために圧延ロールの回転方向も併せて反転させており、この圧延ロールの回転方向の切替えに時間が掛かってしまい、生産性が低い難点が指摘される。また、回転方向の切替えに際しては、圧延ロールを減速→停止→加速するため、エネルギーロスが大きいと共に、圧延ロールの支持部分等に対する負荷が大きくなり、機械寿命が短かくなる問題もある。
【0006】
更に、1基の圧延機に対して被圧延材料を往復して圧延する可逆式の圧延装置では、圧延ロールに形成される孔型の数によって、当該圧延ロールで圧延可能な被圧延材料のサイズ範囲が決まるため、広いサイズ範囲で被圧延材料を圧延するには孔型の数を多くする必要がある。しかしながら、圧延ロールに形成する孔型の数を多くすると、圧延ロールが長尺化するばかりでなく、該圧延ロールの直径を大きくして剛性を高めなければならないことから重量が嵩み、そのために圧延ロールを支持する圧延機の機械剛性を高める必要があることから機械が大型化する問題を招く。
【0007】
本発明は、従来の技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、生産性を向上し得ると共に、広いサイズ範囲で被圧延材料を圧延し得る圧延方法および圧延装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る圧延方法は、
パスラインに沿って往復移動する被圧延材料を圧延する圧延方法であって、
前記被圧延材料を圧延する孔型を軸方向に複数形成した一対の圧延ロールを有し、該一対の圧延ロールを一定方向に回転して被圧延材料を第1方向に送る種類の第1種の圧延機および該第1方向とは逆の第2方向に被圧延材料を送る種類の第2種の圧延機の一方の種類の圧延機の圧延ロールを、何れか一つの孔型が前記パスラインに一致する圧延位置に位置させると共に、他方の種類の圧延機の圧延ロールを前記パスラインから退避する退避位置に位置させたもとで、前記被圧延材料を圧延位置に位置する一方の種類の圧延機における圧延ロールの孔型に通過させて圧延する第1工程と、
前記他方の種類の圧延機の圧延ロールを、何れか一つの孔型が前記パスラインに一致する圧延位置に位置させると共に、一方の種類の圧延機の圧延ロールを前記パスラインから退避する退避位置に位置させたもとで、前記被圧延材料を圧延位置に位置する他方の種類の圧延機における圧延ロールの孔型に通過させて圧延する第2工程とを、
前記パスラインに一致させる孔型が前記被圧延材料のパススケジュールに基づく順となるように行う際に、圧延位置に位置する全ての孔型に被圧延材料を通過させる毎に該被圧延材料の孔型に対する送込み方向を反転することで、一方の種類の圧延機における圧延ロールの孔型に対して常に同じ方向から被圧延材料を送り込むと共に、他方の種類の圧延機における圧延ロールの孔型に対して常に同じ方向から被圧延材料を送り込んで圧延するようにしたことを要旨とする。
これによれば、圧延位置に移動した圧延ロールの孔型に被圧延材料を通過させる毎に、被圧延材料の送込み方向を反転するようにしたので、第1種の圧延機および第2種の圧延機の各圧延ロールの孔型には常に同一方向から被圧延材料が送り込まれるから、被圧延材料の1パス毎に圧延ロールを反転させる必要はなく、圧延ロールの回転方向の切替えのための時間を削減でき、生産性を高めることができる。また、圧延ロールの回転方向を反転するための減速→停止→加速の切替動作が不要となるので、エネルギーロスを削減して省エネを図り得ると共に、圧延ロールの支持部分等に対する負荷を小さく抑えることができ、機械寿命を延ばすことができる。
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項2の発明に係る圧延装置は、
パスラインに沿って往復移動する被圧延材料を圧延する圧延装置であって、
前記被圧延材料を圧延する孔型を軸方向に複数形成した一対の圧延ロールを有し、該圧延ロールを一定方向に回転して被圧延材料を第1方向に送ると共に前記圧延ロールの軸方向に移動可能な種類の第1種の圧延機と、
前記第1種の圧延機の圧延ロールを、何れか一つの前記孔型が前記パスラインに一致する圧延位置と、前記パスラインから退避する退避位置とに移動する第1シフト手段と、
前記第1種の圧延機に対してパスライン方向に離間して配置され、前記被圧延材料を圧延する孔型を軸方向に複数形成した一対の圧延ロールを有し、前記第1方向とは逆の第2方向に被圧延材料を送るように該圧延ロールを一定方向に回転すると共に前記圧延ロールの軸方向に移動可能な種類の第2種の圧延機と、
前記第2種の圧延機の圧延ロールを、何れか一つの前記孔型が前記パスラインに一致する圧延位置と、前記パスラインから退避する退避位置とに移動する第2シフト手段とを備え、
前記第1種の圧延機の圧延ロールおよび第2種の圧延機の圧延ロールの何れか一方の圧延ロールを圧延位置に移動した場合には他方を退避位置に移動し、該圧延位置に移動した全ての圧延ロールの孔型に被圧延材料を通過させる毎に、該被圧延材料の孔型に対する送込み方向を反転することで、第1種の圧延機における圧延ロールの孔型に対する被圧延材料の送込み方向が常に同じになると共に、第2種の圧延機における圧延ロールの孔型に対する被圧延材料の送込み方向が常に同じとなるよう構成したことを要旨とする。
これによれば、圧延位置に移動した圧延ロールの孔型に被圧延材料を通過させる毎に、被圧延材料の送込み方向を反転するよう構成したので、第1種の圧延機および第2種の圧延機の各圧延ロールの孔型には常に同一方向から被圧延材料が送り込まれるから、被圧延材料の1パス毎に圧延ロールを反転させる必要はなく、圧延ロールの回転方向の切替えのための時間を削減でき、生産性を高めることができる。また、圧延ロールの回転方向を反転するための減速→停止→加速の切替動作が不要となるので、エネルギーロスを削減して省エネを図り得ると共に、圧延ロールの支持部分等に対する負荷を小さく抑えることができ、機械寿命を延ばすことができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記第1種および第2種の圧延機は、前記圧延ロールを退避位置に移動した際に、前記パスラインに沿って移動する被圧延材料を案内する案内手段を備えていることを要旨とする。
これによれば、圧延ロールを退避位置に移動しても、案内手段によって被圧延材料を圧延位置の圧延ロールの孔型に好適に案内することができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、
前記第1種の圧延機の圧延位置と前記第2種の圧延機の圧延位置の間に、圧延位置に移動した圧延ロールの孔型に被圧延材料を送り込む送込み手段が設けられていることを要旨とする。
これによれば、同じ送込み手段によって各圧延ロールの孔型に被圧延材料を送り込むことができ、機械構成を簡単化できる。
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項5の発明に係る圧延方法は、
被圧延材料を往復移動して圧延する圧延方法であって、
前記被圧延材料を圧延する孔型を軸方向に複数形成した一対の圧延ロールを有し、該一対の圧延ロールを一定方向に回転して被圧延材料を第1方向に送る種類の第1種の圧延機および該第1方向とは逆の第2方向に被圧延材料を送る種類の第2種の圧延機を、一方の種類の圧延機の孔型を通過する被圧延材料が他方の種類の圧延機の圧延ロールに干渉しない関係で配置し、
前記被圧延材料を第1方向に送って、前記第1種の圧延機における圧延ロールの孔型に通過させて圧延する第1工程と、
前記被圧延材料を第2方向に送って、前記第2種の圧延機における圧延ロールの孔型に通過させて圧延する第2工程とを、
前記被圧延材料を通過させる孔型がパススケジュールに基づく順となるように行う際に、一方の種類の孔型に被圧延材料を通過させる毎に、被圧延材料を他方の種類の次に送り込む孔型のパスラインに一致する位置まで前記軸方向にシフトすると共に該被圧延材料の孔型に対する送込み方向を反転することで、一方の種類の圧延機における圧延ロールの孔型に対して常に同じ方向から被圧延材料を送り込むと共に、他方の種類の圧延機における圧延ロールの孔型に対して常に同じ方向から被圧延材料を送り込んで圧延するようにしたことを要旨とする。
これによれば、圧延ロールの孔型に被圧延材料を通過させる毎に、被圧延材料を軸方向にシフトすると共に被圧延材料の送込み方向を反転するようにしたので、第1種の圧延機および第2種の圧延機の各圧延ロールの孔型には常に同一方向から被圧延材料が送り込まれるから、被圧延材料の1パス毎に圧延ロールを反転させる必要はなく、圧延ロールの回転方向の切替えのための時間を削減でき、生産性を高めることができる。また、圧延ロールの回転方向を反転するための減速→停止→加速の切替動作が不要となるので、エネルギーロスを削減して省エネを図り得ると共に、圧延ロールの支持部分等に対する負荷を小さく抑えることができ、機械寿命を延ばすことができる。
【0013】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項6の発明に係る圧延装置は、
被圧延材料を往復移動して圧延する圧延装置であって、
前記被圧延材料を圧延する孔型を軸方向に複数形成した一対の圧延ロールを有し、該圧延ロールを一定方向に回転して被圧延材料を第1方向に送る種類の第1種の圧延機と、
前記被圧延材料を圧延する孔型を軸方向に複数形成した一対の圧延ロールを有し、該圧延ロールを一定方向に回転して第1方向とは逆の第2方向に被圧延材料を送る種類の第2種の圧延機とを備え、
前記第1種の圧延機および第2種の圧延機は、一方の種類の圧延機の孔型を通過する被圧延材料が、他方の種類の圧延機の圧延ロールに干渉しない関係で配置され、
前記被圧延材料を第1種の圧延機の孔型または第2種の圧延機の孔型に送り込み得るよう材料送込み方向を、前記第1方向と第2方向とで反転可能に構成されると共に、前記軸方向に移動可能な送込み手段と、
前記送込み手段を、前記第1種の圧延機の孔型または第2種の圧延機の孔型のパスラインに一致する位置に前記軸方向にシフトするシフト手段とを備え、
前記第1種の圧延機の圧延ロールおよび第2種の圧延機の圧延ロールの何れか一方の圧延ロールの孔型に前記送込み手段により送り込まれる被圧延材料を通過させる毎に、前記シフト手段により前記送込み手段を他方の圧延ロールの次に送り込む孔型のパスラインに一致する位置まで軸方向にシフトすると共に該送込み手段による材料送込み方向を反転することで、第1種の圧延機における圧延ロールの孔型に対する被圧延材料の送込み方向が常に同じになると共に、第2種の圧延機における圧延ロールの孔型に対する被圧延材料の送込み方向が常に同じとなるよう構成したことを要旨とする。
これによれば、圧延ロールの孔型に被圧延材料を通過させる毎に、被圧延材料を軸方向にシフトすると共に被圧延材料の送込み方向を反転するよう構成したので、第1種の圧延機および第2種の圧延機の各圧延ロールの孔型には常に同一方向から被圧延材料が送り込まれるから、被圧延材料の1パス毎に圧延ロールを反転させる必要はなく、圧延ロールの回転方向の切替えのための時間を削減でき、生産性を高めることができる。また、圧延ロールの回転方向を反転するための減速→停止→加速の切替動作が不要となるので、エネルギーロスを削減して省エネを図り得ると共に、圧延ロールの支持部分等に対する負荷を小さく抑えることができ、機械寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る圧延方法および圧延装置によれば、圧延ロールの回転方向の切替えを行う必要はないので、生産性を向上し得ると共に機械寿命を延ばすことができる。また、圧延可能な被圧延材料のサイズ範囲を、圧延機を大型化することなく広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例に係る圧延装置の全体を示す概略平面図である。
図2】実施例に係る圧延装置の第1圧延機を示す概略側面図である。
図3】実施例に係る圧延装置の概略正面図である。
図4】(a)は、第1圧延ロールの第1孔型を示す説明図であり、(b)は、第2圧延ロールの第2孔型を示す説明図である。
図5】実施例に係る圧延装置により被圧延材料を圧延する工程図であって、第1圧延機の第1の第1孔型で圧延する工程を示している。
図6】実施例に係る圧延装置により被圧延材料を圧延する工程図であって、第2圧延機の第2の第2孔型で圧延する工程を示している。
図7】実施例に係る圧延装置により被圧延材料を圧延する工程図であって、第1圧延機の第3の第1孔型で圧延する工程を示している。
図8】別実施例に係る圧延装置により被圧延材料を圧延する工程図であって、第1の第1孔型および第2の第2孔型で圧延する工程を示している。
図9】別実施例に係る圧延装置により被圧延材料を圧延する工程図であって、第3の第1孔型および第4の第2孔型で圧延する工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る圧延方法および圧延装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例
【0017】
実施例に係る圧延装置(可逆式の圧延装置)は、図1に示す如く、パスラインPLに沿って往復移動する被圧延材料10を圧延可能な2基の圧延機12,14を、パスライン方向に離間して備える。圧延装置を挟む材料移動方向の両側には、多数のローラを所定間隔で回転自在に配設したテーブル16が夫々配設され、被圧延材料10は、該テーブル16に載置された状態で圧延装置に対して往復移動するよう構成される。実施例では、図1において左側に位置する一方の圧延機12を第1圧延機(第1種の圧延機)と指称すると共に、右側に位置する他方の圧延機14を第2圧延機(第2種の圧延機)と指称する。また、後述するように、第1圧延機12に対して被圧延材料10は右側から左側に向けて送り込まれるよう設定されると共に、第2圧延機14に対して被圧延材料10は左側から右側に向けて送り込まれるよう設定されている(図5図7参照)。そこで、第1圧延機12に対して被圧延材料10が送り込まれる方向を第1方向と指称すると共に、第2圧延機14に対して被圧延材料10が送り込まれる方向を第2方向と指称する。
【0018】
前記第1圧延機12は、図1図3に示す如く、被圧延材料10のパスラインPLと交差(直交)する方向(後述する第1圧延ロール22,22の軸方向)に延在する第1レール18,18に移動自在に支持された第1スタンド20を備え、該第1スタンド20に、上下に対向する一対の第1圧延ロール22,22が、パスラインPLと直交する軸回りに回転可能に支持される。一対の第1圧延ロール22,22には、図4(a)に示す如く、第1孔型(孔型)24が軸方向に離間して複数形成されている。第1圧延機12は、油圧シリンダ26aを駆動源とする第1シフト手段26を備え、該第1シフト手段26によって第1スタンド20を、第1圧延ロール22,22によって被圧延材料10を圧延可能な圧延位置と、第1圧延ロール22,22(全ての第1孔型24)がパスラインPLから退避する退避位置との間を移動し得るよう構成される。また、圧延位置において一対の第1圧延ロール22,22はパスラインPLを挟んで上下に対向し、第1シフト手段26によって各第1孔型24の中心をパスラインPLと一致する位置に第1スタンド20(第1圧延ロール22,22)を移動して位置決めし得るよう構成される。
【0019】
図1図3に示す如く、前記第1スタンド20には、該第1スタンド20を退避位置に位置決めした状態で、パスラインPLに沿って移動する被圧延材料10を案内する第1トラフ(案内手段)28が配設されている。また、第1スタンド20には、対向し合う前記第1圧延ロール22,22の間隙調整を行う第1圧下装置30が設けられている。第1圧下装置30は、基準となる一方の第1圧延ロール22に対して他方の第1圧延ロール22を近接離間移動することで、ロール間隔を調整するものであって、その調整機構は公知の各種機構を採用し得る。また、圧延装置は、第1スタンド20を挟んで第1孔型24に対する被圧延材料10の入側(図1の右側)に第1入側ガイド32が配置されると共に、第1孔型24に対する被圧延材料10の出側(図1の左側)に第1出側ガイド34が配置されている。第1入側ガイド32は、被圧延材料10を挟持するピンチローラと、被圧延材料10を送る駆動ローラとを備え、該駆動ローラを正転または逆転することでピンチローラで案内される被圧延材料10を第1方向または第2方向に送り得るよう構成される。これに対し、第1出側ガイド34は、被圧延材料10を挟持するピンチローラと、被圧延材料10を支持可能なフリーローラとを備え、該ピンチローラおよびフリーローラで被圧延材料10を案内し得るよう構成される。なお、ピンチローラは、例えばエアシリンダ等の駆動手段により開閉動される。また、第1入側ガイド32および第1出側ガイド34は、第1スタンド20に対して該第1スタンド20の移動方向に移動可能に構成されて、図示しない移動手段によってパスラインPLに沿って移動する被圧延材料10を案内する案内位置と、パスラインPLから離間する退避位置とに移動可能に構成される。なお、実施例では、第1入側ガイド32および第1出側ガイド34は、被圧延材料10の圧延作業中は常に案内位置に位置決めされて、メンテナンス等に際して退避位置に移動し得るよう構成される。
【0020】
図1図3に示す如く、前記第2圧延機14の構成は、前記第1圧延機12と同じであって、被圧延材料10のパスラインPLと交差(直交)する方向(後述する第2圧延ロール40,40の軸方向)に延在する第2レール36,36に移動自在に支持された第2スタンド38を備え、該第2スタンド38に、上下に対向する一対の第2圧延ロール40,40が、パスラインPLと直交する軸回りに回転可能に支持される。一対の第2圧延ロール40,40には、図4(b)に示す如く、第2孔型(孔型)42が軸方向に離間して複数形成されている。第2圧延機14は、油圧シリンダ44aを駆動源とする第2シフト手段44を備え、該第2シフト手段44によって第2スタンド38を、第2圧延ロール40,40によって被圧延材料10を圧延可能な圧延位置と、第2圧延ロール40,40(全ての第2孔型42)がパスラインPLから退避する退避位置との間を移動し得るよう構成される。また、圧延位置において一対の第2圧延ロール40,40はパスラインPLを挟んで上下に対向し、第2シフト手段44によって各第2孔型42の中心をパスラインPLと一致する位置に第2スタンド38(第2圧延ロール40,40)を移動して位置決めし得るよう構成される。第2圧延機14における第2圧延ロール40,40の軸方向と、前記第1圧延機12における第1圧延ロール22,22の軸方向とは平行に設定される。
【0021】
前記第2スタンド38には、該第2スタンド38を退避位置に位置決めした状態で、パスラインPLに沿って移動する被圧延材料10を案内する第2トラフ(案内手段)46が配設されている。また、第2スタンド38には、対向し合う前記第2圧延ロール40,40の間隙調整を行う第2圧下装置48が設けられている。第2圧下装置48は、前記第1圧下装置30と同一機構である。また、圧延装置は、第2スタンド38を挟んで第2孔型42に対する被圧延材料10の入側(図1の左側)に第2入側ガイド50が配置されると共に、第2孔型42に対する被圧延材料10の出側(右側)に第2出側ガイド52が配置されている。第2入側ガイド50は、被圧延材料10を挟持するピンチローラと、被圧延材料10を送る駆動ローラとを備え、該駆動ローラを正転または逆転することでピンチローラで案内される被圧延材料10を第1方向または第2方向に送り得るよう構成される。これに対し、第2出側ガイド52は、被圧延材料10を挟持するピンチローラと、被圧延材料10を支持可能なフリーローラとを備え、該ピンチローラおよびフリーローラで被圧延材料10を案内し得るよう構成される。なお、ピンチローラは、例えばエアシリンダ等の駆動手段により開閉動される。また、第2入側ガイド50および第2出側ガイド52は、第2スタンド38に対して該第2スタンド38の移動方向に移動可能に構成されて、図示しない移動手段によってパスラインPLに沿って移動する被圧延材料10を案内する案内位置と、パスラインPLから離間する退避位置とに移動可能に構成される。なお、第2入側ガイド50および第2出側ガイド52は、被圧延材料10の圧延作業中は常に案内位置に位置決めされて、メンテナンス等に際して退避位置に移動し得るよう構成される。
【0022】
次に、前記圧延装置を構成する第1圧延機12および第2圧延機14の駆動系につき説明する。実施例では、第1圧延機12の第1圧延ロール22,22および第2圧延機14の第2圧延ロール40,40は、1基の駆動モータ54によって夫々が一定方向に回転するよう構成される。すなわち、図1に示す如く、駆動モータ54に連繋する第1減速機56と、第1圧延ロール22,22とが第1連繋機構58によって連繋されると共に、駆動モータ54に連繋する第2減速機60と、第2圧延ロール40,40とが第2連繋機構62によって連繋されている。そして、駆動モータ54を一方向に回転駆動することで、一対の第1圧延ロール22,22は、第1減速機56および第1連繋機構58によって第1孔型24を通過する被圧延材料10を第1方向に送るように相互に反対方向に回転する。これに対し、駆動モータ54を一方向に回転駆動することで、一対の第2圧延ロール40,40は、第2減速機60および第2連繋機構62によって第2孔型42を通過する被圧延材料10を、前記第1方向とは逆の第2方向に送るように相互に反対方向に回転する。すなわち、第1圧延ロール22,22は、常に一定方向(被圧延材料10を第1方向に送る方向)に回転すると共に、第2圧延ロール40,40は、常に一定方向(被圧延材料10を第2方向に送る方向)に回転するよう構成される。言い替えると、実施例の圧延装置は、被圧延材料10を第1方向に送る種類の圧延機と、被圧延材料10を第2方向に送る種類の圧延機との2種類の圧延機を備える。なお、第1連繋機構58および第2連繋機構62は、スプライン構造等によって前記第1スタンド20および第2スタンド38が退避位置および圧延位置の間を移動するのを許容すると共に、常に対応する圧延ロール22,40に対して動力伝達し得るよう構成される。また、第1連繋機構58および第2連繋機構62における圧延ロール22,22,40,40に連結する側の部位は、前記対応するスタンド20,38と一体的に移動するよう適宜のレールによって移動可能に支持されている。
【0023】
図4に示す如く、実施例では、前記第1圧延ロール22,22に4つのオーバル形状の第1孔型24が形成されると共に、前記第2圧延ロール40,40に4つの丸形状の第2孔型42が形成されている。そして、第1孔型24は、軸方向の一方から他方に向かうにつれて、その内径寸法が暫時小さくなるよう設定されると共に、第2孔型42は、軸方向の一方から他方に向かうにつれて、その内径寸法が暫時小さくなるよう設定される。なお、4つの第1孔型24について、内径寸法の大きい方から小さい方に順に、第1の第1孔型24a、第3の第1孔型24b、第5の第1孔型24c、第7の第1孔型24dと指称して区別する場合がある。同様に、4つの第2孔型42について、内径寸法の大きい方から小さい方に順に、第2の第2孔型42a、第4の第2孔型42b、第6の第2孔型42c、第8の第2孔型42dと指称して区別する場合がある。そして、実施例では、第1の第1孔型24a、第2の第2孔型42a、第3の第1孔型24b、第4の第2孔型42b、第5の第1孔型24c、第6の第2孔型42c、第7の第1孔型24d、第8の第2孔型42dの順で、圧延された被圧延材料10の断面寸法が暫時小さくなるよう設定される。すなわち、被圧延材料10を、第1圧延ロール22,22の第1孔型24と、第2圧延ロール40,40の第2孔型42とに交互に通過させることで、該被圧延材料10を所要の断面形状まで圧延し得るよう構成される。実施例では、第1圧延ロール22,22の第1孔型24に被圧延材料10を通過して圧延する工程を第1工程と指称すると共に、第2圧延ロール40,40の第2孔型42に被圧延材料10を通過して圧延する工程を第2工程と指称し、実施例の圧延装置は、パスラインPLに一致させる孔型24,42が被圧延材料10のパススケジュールに基づく順となるように第1工程と第2工程とが交互に所定回数繰り返されることで、被圧延材料10が所要の断面形状まで圧延される。
【0024】
図1図3に示す如く、前記第1圧延機12の圧延位置と、第2圧延機14の圧延位置との間に、圧延位置に位置する圧延ロール22,40の孔型24,42に向けて被圧延材料10を送り込む送込み手段64が設けられている。この送込み手段64は、パスラインPLを挟んで上下に対向する一対のピンチローラ68,68が、ハウジング70にパスラインPLと直交する軸回りに回転可能に支持され、両ピンチローラ68,68で挟持した被圧延材料10を圧延位置の第1圧延機12または第2圧延機14に向けて送り込み得るよう構成される。すなわち、送込み手段64は、第1および第2圧延機12,14の一方を被圧延材料10が通過する毎に、ピンチローラ68,68による材料送込み方向を反転するよう構成される。また、前記ハウジング70は、軸受体72,72によってパスラインPLに沿う軸回りに回転可能に支持されており、転回装置74によってハウジング70を転回することで、該送込み手段64で孔型24,42に送り込む被圧延材料10を、必要に応じて周方向に所要角度(例えば90度)で転回し得るよう構成される。なお、実施例では、送込み手段64は、圧延ロール22,40の軸方向に移動可能に支持されて、該送込み手段64のメンテナンスに際して油圧シリンダ66によってパスラインPLから離間するメンテナンス位置に移動し得るよう構成される。また、前記第1入側ガイド32、第1出側ガイド34、第2入側ガイド50および第2出側ガイド52は、送込み手段64と同様に、第1および第2圧延機12,14の一方を被圧延材料10が通過する毎に材料送込み方向を反転するよう構成される。
【0025】
(実施例の作用)
次に、前述のように構成された実施例の圧延装置の作用につき、圧延方法との関係で説明する。なお、被圧延材料10を所要形状まで圧延する際のパススケジュールとして、前記第1の第1孔型24a~第7の第1孔型24dおよび第2の第2孔型42a~第8の第2孔型42dを用いて圧延するよう設定されている場合で説明する。
【0026】
前記第1圧延機12および第2圧延機14において、対応する各圧下装置30,48により第1圧延ロール22,22の間隙および第2圧延ロール40,40の間隙を、圧延対象となる被圧延材料10の断面形状に応じて調整する。また、図5(a)に示す如く、第1圧延機12における第1圧延ロール22,22の第1の第1孔型24aをパスラインPLに一致させると共に、第2圧延機14における第2圧延ロール40,40をパスラインPLから退避して第2トラフ46が該パスラインPLに一致するように、前記第1スタンド20および第2スタンド38を対応するシフト手段26,44により移動して圧延位置または退避位置に位置決めする。なお、第1入側ガイド32、第1出側ガイド34、第2入側ガイド50および第2出側ガイド52、送込み手段64は、何れも案内位置に位置決めされる。
【0027】
前記駆動モータ54を駆動して各圧延ロール22,40を回転したもとで、右側のテーブル16に載置した被圧延材料10を、前記第2入側ガイド50、第2出側ガイド52、送込み手段64および第1入側ガイド32によって第1方向に送ることで、該被圧延材料10は第1圧延ロール22,22の第1の第1孔型24aを通過して圧延される第1工程が実行される(図5(b)参照)。第1の第1孔型24aを通過した被圧延材料10が左側のテーブル16に排出されると、図6(a)に示す如く、第1圧延機12における第1圧延ロール22,22をパスラインPLから退避して第1トラフ28が該パスラインPLに一致すると共に、第2圧延機14における第2圧延ロール40,40の第2の第2孔型42aをパスラインPLに一致させるように、前記第1スタンド20および第2スタンド38を対応するシフト手段26,44により移動して圧延位置または退避位置に位置決めする。また、第1入側ガイド32、第1出側ガイド34、送込み手段64、第2入側ガイド50、第2出側ガイド52による材料送込み方向を反転する。このように各スタンド20,38を移動した後、前記被圧延材料10を第1出側ガイド34、第1入側ガイド32、送込み手段64および第2出側ガイド52によって第2方向に送ることで、該被圧延材料10は第2圧延ロール40,40の第2の第2孔型42aを通過して圧延される第2工程が実行される(図6(b)参照)。
【0028】
次に、第2の第2孔型42aを通過した被圧延材料10が右側のテーブル16に排出されると、図7(a)に示す如く、第2圧延機14における第2圧延ロール40,40をパスラインPLから退避して第2トラフ46が該パスラインPLに一致すると共に、第1圧延機12における第1圧延ロール22,22の第3の第1孔型24bをパスラインPLに一致させるように、前記第1スタンド20および第2スタンド38を対応するシフト手段26,44により移動して圧延位置または退避位置に位置決めする。また、第1入側ガイド32、第1出側ガイド34、送込み手段64、第2入側ガイド50、第2出側ガイド52による材料送込み方向を反転する。このように各スタンド20,38を移動した後、前記被圧延材料10を、第2入側ガイド50、第2出側ガイド52、送込み手段64および第1入側ガイド32によって第1方向に送ることで、該被圧延材料10は第1圧延ロール22,22の第3の第1孔型24bを通過して圧延される第1工程が実行される(図7(b)参照)。以後は、第4の第2孔型42b、第5の第1孔型24c、第6の第2孔型42c、第7の第1孔型24d、第8の第2孔型42dの順でパスラインPLに一致するように各スタンド20,38を交互に圧延位置に移動し、被圧延材料10を往復して圧延するよう第2工程および第1工程を交互に繰り返すことにより、該被圧延材料10は所要の断面形状に圧延される。
【0029】
実施例の圧延装置は、圧延機12,14の圧延位置に交互に移動した圧延ロール22,40に被圧延材料10を通過させる毎に、被圧延材料10の送込み方向を反転するよう構成したので、第1圧延機12の第1孔型24には第1方向のみから被圧延材料10が送り込まれると共に、第2圧延機14の第2孔型42には第2方向のみから被圧延材料10が送り込まれる。従って、第1圧延ロール22,22および第2圧延ロール40,40の回転方向を、被圧延材料10を通過させる毎に反転する必要はなく、圧延ロール22,40の回転方向の切替えのための時間を削減でき、生産性を高めることができる。また、圧延ロール22,40の回転方向を反転するための減速→停止→加速の切替動作が不要となるため、エネルギーロスを削減して省エネを図り得ると共に、圧延ロール22,40の支持部分等に対する負荷を小さく抑えることができ、機械寿命を延ばすことができる。
【0030】
また、実施例の圧延装置は、2基の圧延機12,14によって被圧延材料10を交互に圧延するよう構成したので、1基の圧延機12,14の圧延ロール22,40に形成する孔型24,42の数を少なくしても、圧延可能な被圧延材料10のサイズ範囲を広くすることができ、多品種少量生産に迅速に対応し得る。また、各圧延ロール22,40の長さ寸法や径寸法を小さくでき、圧延機自体の剛性も抑えることができるので、圧延機12,14の小型化を図ることができる。
【0031】
更に、第1または第2スタンド20,38を退避位置に移動した際に、パスラインPLに沿って移動する被圧延材料10を案内するトラフ28,46を該スタンド20,38に配設してあるので、圧延位置の圧延ロール22,40に対して被圧延材料10を適切に案内することができる。また、第1および第2圧延機12,14の圧延位置の間に、被圧延材料10を第1方向または第2方向に送り得る送込み手段64を設けたので、1基の送込み手段64によって各圧延ロール22,40の孔型24,42に被圧延材料10を送り込むことができる。すなわち、第1および第2圧延機12,14の夫々に対する専用の送込み手段を設ける必要はなく、装置全体の長さ寸法を小さくし得ると共に、機械構成を簡単化できる。
【0032】
なお、被圧延材料10は、各圧延機12,14における全ての孔型24,42を通過させる必要はなく、所望する断面形状とするために必要な孔型24,42に所定のパターン(パススケジュール)で通過させればよい。例えば、第1の第1孔型24a、第2の第2孔型42a、第3の第1孔型24b、第4の第2孔型42b、第5の第1孔型24c、第6の第2孔型42cの順で被圧延材料10を通過して圧延を完了したり、第3の第1孔型24b、第4の第2孔型42b、第5の第1孔型24c、第6の第2孔型42cの順で被圧延材料10を通過して圧延を完了することができる。
【0033】
ここで、実施例では、第1圧延ロール22,22にオーバル形状の第1孔型24を形成すると共に、第2圧延ロール40,40に丸形状の第2孔型42を形成して、被圧延材料10を、第1孔型24に通過させた後に第2孔型42に通過させるようにすることで、被圧延材料10を孔型に通過させる1パス毎に周方向に転回する必要のない場合で説明したが、孔型24,42を、被圧延材料10の1パス毎に周方向に所要角度で転回する必要のある形状とした場合でも対応できる。すなわち、被圧延材料10の1パス毎に送込み手段64を転回装置74によって転回することで、次の孔型24,42に対して適正な姿勢で被圧延材料10を送り込むことができる。
【0034】
(別実施例について)
次に、別実施例に係る圧延装置について、前記実施例の構成と異なる部分についてのみ説明する。実施例では、被圧延材料10を孔型24,42に通過させる毎に、圧延機12,14を交互に圧延位置に移動するよう構成したが、別実施例の圧延装置では、2種類の圧延機12,14を定位置に位置決めした状態で、被圧延材料10を孔型24,42に通過させる毎に、該被圧延材料10を圧延ロール22,40の軸方向にシフトして次の孔型24,42に通過させるよう構成される。なお、実施例で既出の同じまたは同一機能の部材等には同じ符号を付して詳細説明は省略する。
【0035】
図8図9に示す別実施例の圧延装置は、パスライン方向に離間する第1圧延機(第1種の圧延機)12と第2圧延機(第2種の圧延機)14とが、該第1圧延機12の全ての第1孔型24と、該第2圧延機14の全ての第2孔型42とがパスライン方向で相互に重ならないように、圧延ロール22,40の軸方向に変位して配置される。具体的に、第1方向に送られて第1孔型24を通過する被圧延材料10が、第2圧延ロール40に干渉しないと共に、第2方向に送られて第2孔型42を通過する被圧延材料10が、第1圧延ロール22に干渉しない関係で、第1圧延機12と第2圧延機とが配置される。また、別実施例では、前記第1入側ガイド32、第1出側ガイド34、第2入側ガイド50、第2出側ガイド52および送込み手段64が、被圧延材料10を第1孔型24または第2孔型42に送り込む送込み手段として機能し、これら送込み手段32,34,50,52,64は、図示しないシフト手段によって圧延ロールの軸方向(パスラインと直交する方向)にシフト可能に構成される。なお、前記テーブル16には被圧延材料10の経路を変更可能な経路変更手段(図示せず)が設けられ、該経路変更手段を送込み手段32,34,50,52,64と同期して作動することで、テーブル16上の被圧延材料10を送込み手段32,34,50,52,64に送り込み得るよう構成される。
【0036】
(別実施例の作用)
次に、前述のように構成された別実施例の圧延装置の作用につき、圧延方法との関係で説明する。なお、被圧延材料10を所要形状まで圧延する際のパススケジュールとして、前記第1の第1孔型24a~第7の第1孔型24dおよび第2の第2孔型42a~第8の第2孔型42dを用いて圧延するよう設定されている場合で説明する。また、パススケジュールの順で通過させる孔型24,42に対するパスラインについて、第1パスラインPL1、第2パスラインPL2、第3パスラインPL3、第4パスラインPL4・・・と指称するものとする。
【0037】
図8に示す如く、第1圧延機12における第1圧延ロール22,22の第1の第1孔型24aに対する第1パスラインPL1に、送込み手段32,34,50,52,64による被圧延材料10の送りラインを一致させる。前記駆動モータ54を駆動して各圧延ロール22,40を回転したもとで、右側のテーブル16に載置した被圧延材料10を、送込み手段32,34,50,52,64によって第1方向に送ることで、該被圧延材料10は第1パスラインPL1に沿って第1圧延ロール22,22の第1の第1孔型24aを通過して圧延される第1工程が実行される。第1の第1孔型24aを通過した被圧延材料10が左側のテーブル16に排出されると、シフト手段により送込み手段32,34,50,52,64を圧延ロール22,40の軸方向にシフトして、該送込み手段32,34,50,52,64による被圧延材料10の送りラインを、第2圧延機14における第2圧延ロール40,40の第2の第2孔型42aに対する第2パスラインPL2に一致させる。このように送込み手段32,34,50,52,64をシフトした後、該送込み手段32,34,50,52,64の材料送込み方向を反転して被圧延材料10を第2方向に送ることで、該被圧延材料10は第2パスラインPL2に沿って第2圧延ロール40,40の第2の第2孔型42aを通過して圧延される第2工程が実行される。
【0038】
次に、第2の第2孔型42aを通過した被圧延材料10が右側のテーブル16に排出されると、図9に示す如く、シフト手段により送込み手段32,34,50,52,64を圧延ロール22,40の軸方向にシフトして、該送込み手段32,34,50,52,64による被圧延材料10の送りラインを、第1圧延機12における第1圧延ロール22,22の第3の第1孔型24bに対する第3パスラインPL3に一致させる。このように送込み手段32,34,50,52,64をシフトした後、該送込み手段32,34,50,52,64の材料送込み方向を反転して被圧延材料10を第1方向に送ることで、該被圧延材料10は第3パスラインPL3に沿って第1圧延ロール22,22の第3の第1孔型24bを通過して圧延される第1工程が実行される。以後は、第4の第2孔型42b、第5の第1孔型24c、第6の第2孔型42c、第7の第1孔型24d、第8の第2孔型42dの順で対応するパスラインPL4,PL5,PL6,PL7,PL8に一致するように送込み手段32,34,50,52,64をシフトし、被圧延材料10を往復して圧延するよう第2工程および第1工程を交互に繰り返すことにより、該被圧延材料10は所要の断面形状に圧延される。
【0039】
別実施例の圧延装置は、前記実施例の圧延装置が奏する同様の効果を奏する他、重量のある圧延機12,14を移動しないので、該圧延機12,14を移動する出力の大きい駆動源を省略でき、装置コストを低減することができる。
【0040】
(変更例)
本発明は、前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
1.孔型の形状は、被圧延材料を圧延して最終的に目的の形状・寸法とし得るものであればよい。例えば、第1圧延ロールに菱型の孔型を形成すると共に、第2圧延ロールに角型の孔型を形成する構成を採用することができる。また、H鋼製品等の形鋼製品を製造し得る孔型形状であってもよい。
2.各圧延ロールに形成する孔型の数は、実施例の数に限定されるものでない。
3.圧延ロールのシフト手段は、油圧シリンダを駆動源とするものに限らず、モータとスクリュー・ナットの組合わせ等、その他公知の各種手段を用いることができる。
4.実施例では1基の駆動モータで第1および第2圧延ロールを回転駆動するよう構成したが、各圧延機毎に独立して駆動モータを備えるものであってもよい。
5.別実施例では、第1圧延機と第2圧延機とをパスライン方向に離間して配置したが、圧延ロールの軸方向に第1圧延機と第2圧延機とを並べて配置したり、第1孔型と第2孔型とが上下に離間するように第1圧延機と第2圧延機とを所定の高さだけずらして配置する等、一方の圧延機の孔型を通過する被圧延材料が他方の圧延機の圧延ロールに干渉することのない関係で配置されていればよい。
6.実施例や別実施例では、被圧延材料を第1方向に送る第1種の圧延機と、被圧延材料を第2方向に送る第2種の圧延機とを夫々1基ずつ配置した場合で説明したが、第1種の圧延機および第2種の圧延機を複数基ずつ配置する構成を採用することができる。例えば、実施例のように圧延機を圧延位置と退避位置とに移動する構成では、被圧延材料を第1方向に送る複数の第1種の圧延機を第1方向(パスライン)に沿って並ぶように圧延位置に位置させると共に、被圧延材料を第2方向に送る複数の第2種の圧延機の夫々を退避位置に位置させたもとで、第1方向に並ぶ圧延位置の全ての第1種の圧延機における第1圧延ロールの第1孔型に被圧延材料を通過した後、被圧延材料を第2方向に送る複数の第2種の圧延機を第2方向(パスライン)に沿って並ぶように圧延位置に位置させると共に、被圧延材料を第1方向に送る複数の第1種の圧延機の夫々を退避位置に位置させたもとで、第2方向に並ぶ圧延位置の全ての第2種の圧延機における第2圧延ロールの第2孔型に被圧延材料を通過する工程を繰り返すようにすればよい。この場合に、第1方向や第2方向に並ぶ複数の第1孔型や第2孔型が、パススケジュールに基づく順となっていればよい。
また別実施例のように圧延機を移動させない構成においても、複数の第1種の圧延機を、第1孔型がパススケジュールに基づく順で上流側から下流側に第1方向に沿って並ぶように配置すると共に、複数の第2種の圧延機を、第2孔型がパススケジュールに基づく順で上流側から下流側に第2方向に沿って並ぶように配置すればよい。
【符号の説明】
【0041】
10 被圧延材料
12 第1圧延機
14 第2圧延機
22 第1圧延ロール
24 第1孔型(孔型)
26 第1シフト手段
28 第1トラフ(案内手段)
32 第1入側ガイド(送込み手段)
34 第1出側ガイド(送込み手段)
40 第2圧延ロール
42 第2孔型(孔型)
44 第2シフト手段
46 第2トラフ(案内手段)
50 第2入側ガイド(送込み手段)
52 第2出側ガイド(送込み手段)
64 送込み手段
PL パスライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9