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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】液体吐出装置のアクチュエータ駆動回路
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20221024BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20221024BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/14 305
B41J2/01 403
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019057722
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020157537
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
(72)【発明者】
【氏名】小野 俊一
(72)【発明者】
【氏名】原田 蒼太
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000519(JP,A)
【文献】特開2016-022623(JP,A)
【文献】特開2007-261177(JP,A)
【文献】特開2016-083604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧をアクチュエータに与える第1のトランジスタと、前記第1の電圧よりも大きい第2の電圧を前記アクチュエータに与える第2のトランジスタと、を備え、駆動電圧波形に従ってON/OFF動作する出力スイッチと、
前記第1のトランジスタのみONするか、前記第2のトランジスタのみONするか、或いは前記第1のトランジスタと第2のトランジスタの両方ともOFFするかのステートの設定と、これらステートを実行するタイミングの設定によって設定される前記駆動電圧波形を記憶する波形メモリと、を備え、
前記駆動電圧波形の終了後に保持する前記トランジスタのON/OFFの状態は前記駆動電圧波形の最後のタイミングにあたるステートの設定によって決められ、吐出周期内で最後にONするトランジスタが互いに異なる複数種類の前記駆動電圧波形を前記波形メモリに記憶していることを特徴とする液体吐出装置のアクチュエータ駆動回路。
【請求項2】
前記第1の電圧よりも大きく前記第2の電圧よりも小さい第3の電圧を前記アクチュエータに与える第3のトランジスタをさらに備えており、
前記波形メモリは、前記第1のトランジスタのみONするか、前記第2のトランジスタのみONするか、前記第3のトランジスタのみONするか、或いは前記第1~第3のトランジスタの全てをOFFするかのステートの設定と、これらステートを実行するタイミングの設定によって前記駆動電圧波形を設定すると共に前記最後にONするトランジスタが互いに異なる複数種類の前記駆動電圧波形を記憶することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置のアクチュエータ駆動回路。
【請求項3】
前記第2のトランジスタをONして前記アクチュエータへの充電を開始した後、この充電動作の完了に要する時間より短い第1の所定時間経過後に前記第2のトランジスタをOFFしさらに第2の所定時間経過後に前記第2のトランジスタを再びONする駆動電圧波形を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置のアクチュエータ駆動回路。
【請求項4】
前記第1のトランジスタをONして前記アクチュエータからの放電を開始した後、この放電動作の完了に要する時間より短い第3の所定時間経過後に前記第1のトランジスタをOFFしさらに第4の所定時間経過後に前記第1のトランジスタを再びONする駆動電圧波形を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置のアクチュエータ駆動回路。
【請求項5】
前記第3のトランジスタをONして前記アクチュエータへの充電または前記アクチュエータからの放電を開始した後、この充電または放電の動作の完了に要する時間より短い第5の所定時間経過後に前記第2のトランジスタをOFFしさらに第6の所定時間経過後に前記第3のトランジスタを再びONする駆動電圧波形を含むことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置のアクチュエータ駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出装置のアクチュエータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
所定量の液体を所定の位置に供給する液体吐出装置が知られている。液体吐出装置は、例えばインクジェットプリンタ、3Dプリンタ、分注装置などに搭載する。インクジェットプリンタは、インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の表面に画像等を印刷する。3Dプリンタは、造形材の液滴を造形材吐出ヘッドから吐出し、硬化させて、三次元造形物を形成する。分注装置は、試料の液滴を吐出して複数の容器等へ所定量供給する。
【0003】
インクジェットプリンタの液体吐出装置であるインクジェットヘッドは、ノズルからインクを吐出する駆動装置として、圧電駆動式のアクチュエータを備えている。一組のノズルとアクチュエータは、一つのチャネルを構成する。ヘッド駆動回路は、印刷データに基づいて選択したアクチュエータに駆動電圧波形を与えて駆動させる。例えばアクチュエータの劣化を抑えるため、印刷をしないときにはバイアス電圧を与えるのを休止することが提案されている。例えば3段のバッファで印刷データをラッチし、次のドットが空白の場合にバイアス電圧を与えるのを休止する方式である。バイアス電圧を印加する駆動電圧波形、バイアス電圧を休止する駆動電圧波形は、COM波形から切り出して生成する。そのため、この方式では、COM波形が多くのチャネルに共通に供給されるため、そのタイミングで各チャネルがどの部分を切り出すのかによってCOM波形が変動してしまい、安定な駆動を行うことができない。また、COM波形を生成する回路は電力消費と発熱が大きく、サイズが大きく高価になることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-145760号公報
【文献】特開2013-63581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、アクチュエータを安定に駆動させることのできる液体吐出装置のアクチュエータ駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の液体吐出装置のアクチュエータ駆動回路は、出力スイッチ及び波形メモリを備えている。出力スイッチは、駆動電圧波形に基づいてON/OFF動作する、第1の電圧をアクチュエータに与える第1のトランジスタと、第1の電圧よりも大きい第2の電圧を前記アクチュエータに与える第2のトランジスタと、を備える。波形メモリは、第1のトランジスタのみONするか、第2のトランジスタのみONするか、或いは第1のトランジスタと第2のトランジスタの両方ともOFFするかのステートの設定と、これらステートを実行するタイミングの設定によって設定される前記駆動電圧波形を記憶する。前記駆動電圧波形の終了後に保持する前記トランジスタのON/OFFの状態は前記駆動電圧波形の最後のタイミングにあたるステートの設定によって決められ、吐出周期内で最後にONするトランジスタが互いに異なる複数種類の前記駆動電圧波形を前記波形メモリに記憶している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に従うインクジェットプリンタの全体構成図である。
図2】上記インクジェットプリンタのインクジェットヘッドの斜視図である。
図3】上記インクジェットヘッドのノズルプレートの平面図である。
図4】上記インクジェットヘッドの縦断面図である。
図5】上記インクジェットヘッドのノズルプレートの縦断面図である。
図6】上記インクジェットプリンタの制御系のブロック構成図である。
図7】上記制御系のコマンド解析部のブロック構成図である。
図8】上記制御系の波形生成部のブロック構成図である。
図9】一フレーム分の駆動電圧波形の情報を示すWGレジスタの説明図である。
図10】各階調値毎のWGレジスタの割り当てと、コード化駆動電圧波形WK0~WK7の説明図である。
図11】上記制御系の波形選択部のブロック構成図である。
図12】上記制御系の出力バッファの回路図である。
図13】上記インクジェットヘッドに与える一連の駆動電圧波形の一例である。
図14】バイアス電圧印加休止後の1ドット目の印刷が濃くなる現象を示す説明図である。
図15】上記1ドット目の印刷が濃くなる現象を確認するために行った試験の駆動電圧波形と、アクチュエータの静電容量の測定結果を示す説明図である。
図16】上記インクジェットヘッドに与える一連の駆動電圧波形の他の例である。
図17】WGレジスタGW,GSの変形例を示す説明図である。
図18】WGレジスタGW,GSの変形例を示す説明図である。
図19】各階調値毎のWGレジスタの割り当てと、コード化駆動電圧波形WK0~WK7の説明図である。
図20】上記インクジェットヘッドに与える一連の駆動電圧波形の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に従う液体吐出装置について、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
【0009】
実施形態の液体吐出装置1を搭載した画像形成装置の一例として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10は、例えば外装体である箱型の筐体11を備えている。筐体11の内部には、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出するインクジェットヘッド1A~1D、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置している。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置している。
【0010】
シートSに印刷する画像データは、例えば外部接続機器であるコンピュータ2で生成する。コンピュータ2で生成した画像データは、ケーブル21、コネクタ22B,22Aを通してインクジェットプリンタ10の制御基板17に送られる。
【0011】
ピックアップローラ23は、カセット12からシートSを一枚ずつ上流搬送路13へ供給する。上流搬送路13は、送りローラ対13a、13bと、シート案内板13c、13dで構成する。シートSは、上流搬送路13を経由して、搬送ベルト14の上面へ送られる。図中の矢印A1は、カセット12から搬送ベルト14へのシートSの搬送経路を示す。
【0012】
搬送ベルト14は、表面に多数の貫通孔が形成された網状の無端ベルトである。駆動ローラ14a、従動ローラ14b,14cの3本のローラは、搬送ベルト14を回転自在に支持している。モータ24は、駆動ローラ14aを回転させることによって搬送ベルト14を回転させる。モータ24は、駆動装置の一例である。図中A2は、搬送ベルト14の回転方向を示す。搬送ベルト14の裏面側には、負圧容器25を配置している。負圧容器25は、減圧用のファン26と連結しており、ファン26が形成する気流によって容器内が負圧になる。シートSは、負圧容器25内が負圧になることによって搬送ベルト14の上面に吸着保持される。図中A3は、気流の流れを示している。
【0013】
インクジェットヘッド1A~1Dは、搬送ベルト14上に吸着保持したシートSに対して、例えば1mmの僅かな隙間を介して対向するように配置している。インクジェットヘッド1A~1Dは、シートSに向けてインクの液滴を夫々吐出する。シートSは、インクジェットヘッド1A~1Dの下方を通過する際に画像が印刷される。各インクジェットヘッド1A~1Dは、吐出するインクの色が異なることを除けば、同じ構造になっている。インクの色は、例えば、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックである。
【0014】
各インクジェットヘッド1A~1Dは、インク流路31A~31Dを介してインクタンク3A~3D及びインク供給圧力調整装置32A~32Dと夫々連結している。インク流路31A~31Dは、例えば樹脂製チューブである。インクタンク3A~3Dは、インクを貯留した容器である。各インクタンク3A~3Dは、各インクジェットヘッド1A~1Dの上方に配置している。待機時に、インクジェットヘッド1A~1Dのノズル51(図2参照)からインクが漏れ出ないように、各インク供給圧力調整装置32A~32Dは、各インクジェットヘッド1A~1D内を大気圧に対して負圧、例えば-1kPaに調整している。画像印刷時、各インクタンク3A~3Dのインクは、インク供給圧力調整装置32A~32Dによって各インクジェットヘッド1A~1Dに供給される。
【0015】
印刷後、シートSは、搬送ベルト14から下流搬送路15へ送られる。下流搬送路15は、送りローラ対15a,15b,15c,15dと、シートSの搬送経路を規定するシート案内板15e,15fで構成している。シートSは、下流搬送路15を経由し、排出口27から排出トレイ16へ送られる。図中矢印A4は、シートSの搬送経路を示す。
【0016】
続いて、図2図6を参照しながら、液体吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッド1Aの構成について説明する。なお、インクジェットヘッド1B~1Dは、インクジェットヘッド1Aと同じ構造であるので詳しい説明は省略する。
【0017】
図2は、インクジェットヘッド1Aの外観斜視図である。インクジェットヘッド1Aは、液体供給部の一例であるインク供給部4、ノズルプレート5、フレキシブル基板6、ヘッド駆動回路7を備えている。インクを吐出する複数のノズル51は、ノズルプレート5に配列している。各ノズル51から吐出するインクは、ノズル51に連通するインク供給部4から供給する。インク供給圧力調整装置32Aからのインク流路31Aは、インク供給部4の上部側に接続している。矢印A2は、既述の搬送ベルト14の回転方向を示している(図1参照)。
【0018】
図3は、ノズルプレート5の部分拡大平面図である。ノズル51は、列方向(X方向)及び行方向(Y方向)に2次元配列している。但し、行方向(Y方向)に並ぶノズル51は、Y軸の軸線上にノズル51が重ならないように斜めに配列している。各ノズル51は、X軸方向に距離X1、Y軸方向に距離Y1の間隔で配置している。一例として、距離X1は、略42.25μm、距離Y1は、略253.5μmとする。すなわち、X軸方向に600DPIの記録密度となるように距離X1を決めている。さらに、Y軸方向にも600DPIで印字するように、距離Y1を決めている。ノズル51は、Y方向に配列した8個のノズル51を1組としてX方向に複数配列していく。図示は省略するが、X方向に例えば150組配列し、総数1200個のノズル51を配列している。
【0019】
インクを吐出する動作の駆動源となる圧電駆動式の静電容量性アクチュエータ8(以下、単に「アクチュエータ8」と称す)は、ノズル51毎に設けている。一組のノズル51とアクチュエータ8は、一つのチャネルを構成する。各アクチュエータ8は、円環状に形成し、その中央にノズル51が位置するように配列している。アクチュエータ8のサイズは、例えば、内径30μm、外径140μmである。各アクチュエータ8は、個別電極81と夫々電気的に接続している。さらに、各アクチュエータ8は、Y方向に並ぶ8個のアクチュエータ8を共通電極82で電気的に接続している。各個別電極81及び各共通電極82は、さらに実装パッド9と夫々電気的に接続している。実装パッド9は、駆動電圧波形をアクチュエータ8に与える入力ポートになっている。各個別電極81は、各アクチュエータ8に駆動電圧波形を夫々与え、各アクチュエータ8は、与えられた駆動電圧波形に応じて駆動する。なお、図3は、説明の便宜上、アクチュエータ8、個別電極81、共通電極82及び実装パッド9を実線で記載しているが、これらはノズルプレート5の内部に配置している(図4の縦断面図参照)。勿論、アクチュエータ8の位置は、ノズルプレート5の内部に限定されない。
【0020】
実装パッド9は、フレキシブル基板6に形成した配線パターンと例えば異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Contact Film)を介して電気的に接続している。さらに、フレキシブル基板6の配線パターンは、ヘッド駆動回路7と電気的に接続している。ヘッド駆動回路7は、例えばIC(Integrated Circuit)である。ヘッド駆動回路7は、印刷する画像データに応じて選択されるアクチュエータ8に駆動電圧波形を与える。
【0021】
図4は、インクジェットヘッド1Aの縦断面図である。図4に示すように、ノズル51は、ノズルプレート5をZ軸方向に貫通している。ノズル51のサイズは、例えば、直径20μm、長さ8μmである。インク供給部4の内部には、各ノズル51に夫々連通する圧力室(個別圧力室)41を複数設けている。圧力室41は、例えば上部を開放した円柱形の空間である。各圧力室41の上部は開口しており、共通インク室42と連通している。インク流路31Aは、インク供給口43を介して共通インク室42と連通している。各圧力室41及び共通インク室42内は、インクで満たされている。共通インク室42は、例えばインクを循環させる流路状に形成する場合もある。圧力室41は、例えば厚さ500μmの単結晶シリコンウエハに、例えば直径200μmの円柱形の穴を形成した構成である。インク供給部4は、例えばアルミナ(Al)に共通インク室42に対応する空間を形成した構成である。
【0022】
図5は、ノズルプレート5の部分拡大図である。ノズルプレート5は、底面側から保護層52、アクチュエータ8及び振動板53を順に積層した構造である。アクチュエータ8は、下部電極84、圧電素子の一例である薄膜の圧電体85及び上部電極86を積層した構造である。上部電極86は、個別電極81と電気的に接続し、下部電極84は、共通電極82と電気的に接続している。保護層52と振動板53の境界には、個別電極81と共通電極82の短絡を防ぐ絶縁層54を介在させている。絶縁層54は、例えば厚さ0.5μmの二酸化シリコン膜(SiO)で形成する。下部電極84と共通電極82は、絶縁層54に形成したコンタクトホール55によって電気的に接続している。圧電体85は、圧電特性と絶縁破壊電圧を考慮して、例えば厚さ5μm以下のPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)で形成している。上部電極86及び下部電極84は、例えば厚さ0.15μmの白金で形成している。個別電極81と共通電極82は、例えば厚さ0.3μmの金(Au)で形成している。
【0023】
振動板53は、絶縁性無機材料で形成している。絶縁性無機材料は、例えば二酸化シリコン(SiO)である。振動板53の厚みは、例えば2~10μm、好ましくは4~6μmである。振動板53及び保護層52は、電圧を印加した圧電体85がd31モード変形することに伴って内側に湾曲する。そして圧電体85への電圧の印加を止めると元に戻る。この可逆的な変形によって、圧力室(個別圧力室)41の容積は、拡張及び収縮する。圧力室41の容積を変えると、圧力室41内のインク圧が変わる。この圧力室41の容積の拡張と収縮、インク圧の変化を利用してノズル51からインクを吐出する。すなわち、ノズル51とアクチュエータ8は、液体吐出部を構成する一例である。
【0024】
保護層52は、例えば厚さ4μmのポリイミドで形成している。保護層52は、ノズルプレート5の底面側の一面を覆い、さらにノズル51の孔の内周面を覆っている。
【0025】
図6は、インクジェットプリンタ10の制御系のブロック構成図である。インクジェットプリンタ10の制御系は、プリンタの制御部である印刷制御装置100と、ヘッド駆動回路7によって構成されている。ヘッド駆動回路7は、アクチュエータ駆動回路の一例である。印刷制御装置100は、CPU101、記憶部102、画像メモリ103、ヘッドインターフェース104、及び搬送インターフェース105を備えている。印刷制御装置100は、例えば制御基板17に搭載している。記憶部102は例えばROMであり、画像メモリ103は例えばRAMである。外部接続機器であるコンピュータ2からの画像データは、印刷制御装置100に送られ、画像メモリ103に保存される。CPU101は、画像メモリ103から画像データを読み取り、インクジェットヘッド1A~1Dのデータフォーマットに合うように変換してヘッドインターフェース104に、印字データとして送る。印字データは、液体吐出データの一例である。ヘッドインターフェース104は、印字データとその他の制御コマンドをヘッド駆動回路7に送る。なお、図示は省略しているが、他のインクジェットヘッド1B~1Dのヘッド駆動回路7も同様の回路構成である。
【0026】
搬送インターフェース105は、CPU101の指示で、搬送装置106(搬送ベルト14,駆動モータ24など)を制御してシートSを搬送すると共に、シートSとインクジェットヘッド1A~1Dとの相対位置を光学式エンコーダなどの位置センサー(不図示)で検知し、各ノズル51のインクを吐出すべきタイミングをヘッドインターフェース104に送る。ヘッドインターフェース104は、この吐出タイミングを印字トリガとしてヘッド駆動回路7へ送る。印字トリガは、ヘッド駆動回路7へ送る制御コマンドの一種である。
【0027】
ヘッド駆動回路7には、第1の電圧として電圧V0、第2の電圧として電圧V1、第3の電圧として電圧V2が、アクチュエータ電源として与えられる。一例として、電圧V1は30V、電圧V2は10V、電圧V0は0Vの直流電圧である(V1>V2>V3)。電圧V1と電圧V2の電圧の大きさは、図示しない電源回路によって、例えばインクの粘度や温度に応じて逐次調節される。
【0028】
ヘッド駆動回路7は、受信部71、コマンド解析部72、波形生成部73、印字データバッファ74、波形選択部75、及び出力バッファ76を備えている。出力バッファ76は、出力スイッチの一例である。受信部71は、印刷制御装置100からのデータを受信し、コマンド解析部72に送る。コマンド解析部72は、受信したデータを解析する。コマンド解析部72は、詳しくは図7に示すように、波形設定情報抽出部200、印字トリガ抽出部201、Sleepコマンド抽出部202、Wakeコマンド抽出部203、印字データ抽出部204、及び印字データ走出部205を備えている。コマンド解析部72は、受信したデータが、波形設定情報であるか、印字トリガであるか、Wakeコマンドであるか、Sleepコマンドであるか、印字データであるかを解析して抽出する。勿論、これら以外のコマンドがあってもよい。なお、印刷制御装置100からのデータは、これらの情報やコマンドがパケット単位で送られて来る。一つのパケットに複数のコマンドを含む場合もある。
【0029】
解析の結果、波形設定情報は、波形生成部73へ送られる。印字トリガは、波形生成部73と印字データバッファ74の両方へ送られる。波形生成部73へ送られた印字トリガは、波形生成を実行する起動信号となる。印字データバッファ74へ送られた印字トリガは、印字データバッファ74内においてデータを入力側から出力側へ転送するバッファ更新信号となる。印字データ、Wakeコマンド、Sleepコマンドは、印字データ送出部205へ送られる。
【0030】
印字データ送出部205は、印字データ抽出部204から印字データを受け取った場合、そのデータを、印字データバッファ74へ送る。印字データは、例えば複数ビットのグレースケールデータである。グレースケールデータは、例えば階調値0~7で、吐出の有無、吐出する場合の吐出量、その他の動作を表している。一例として、階調値0は、バイアス電圧印加の維持であり、階調値1は、インクを1回ドロップであり、階調値2は、インクを2回ドロップであり、階調値3は、インクを3回ドロップであり、階調値4は、インクを4回ドロップであり、階調値5はWakeであり、階調値6はSleepであり、階調値7は、Sleepの維持(Sleep hold)である。なお、印刷制御装置100は、ノズル51とアクチュエータ8の組み合わせからなるチャネルを複数備えるマルチノズルヘッドの場合、階調値0~7を各チャネル毎に個別に割り当てる。
【0031】
一方、印字データ送出部205は、Wakeコマンド抽出部203からWakeコマンドを受け取った場合には、Wakeデータとして定義している階調値5を全アクチュエータ8に対して送る(一括Wake)。また、印字データ送出部205は、Sleepコマンド抽出部202からSleepコマンドを受け取った場合には、Sleepデータとして定義している階調値6を全アクチュエータ8に対して送る(一括Sleep)。すなわち、グレースケールデータの階調値0~7の中の一つである階調値5に、Wakeコマンドが割り当てられ、階調値6に、Sleepコマンドが割り当てられている。同様に、階調値7にSleepの維持(Sleep hold)が割り当てられている。
【0032】
すなわち、印字データバッファ74へWakeデータを送る方法として、コード化した印字データとして送る方法と、Wakeコマンドとして送る方法の2種類が用意されている。前者は指定したアクチュエータ8のみをWakeさせることができ、後者は全アクチュエータ8を一括してWakeさせることができる。同様に、印字データバッファ74へSleepデータを送る方法として、コード化した印字データとして送る方法と、Sleepコマンドとして送る方法の2種類が用意されている。前者は指定したアクチュエータ8のみをSleepさせることができ、後者は全アクチュエータ8を一括してSleepさせることができる。
【0033】
続いて、波形生成部73は、詳しくは図8に示すように、波形生成回路300~306とWGレジスタ記憶部307を備えている。波形生成回路300~306とWGレジスタ記憶部307は、1フレーム分の駆動電圧波形の情報を示すWGレジスタを用いて、各階調値0~7に対応するコード化駆動電圧波形WK0~WK7を生成する。1フレーム分の駆動電圧波形の情報は、例えばステート値とタイマ値によって表している。
【0034】
階調値0~7のうち階調値0~4に対応する波形生成回路300~304は、互いに異なる駆動電圧波形の情報を示した複数種類のWGレジスタを、時系列に配置した4つのフレームF0~F3に割り当てることによって、階調値0~4に対応するコード化駆動電圧波形WK0~WK4を生成する。波形生成回路300~304は、インクを吐出する駆動電圧波形をアクチュエータ8に与える吐出波形生成部を構成する一例である。階調値0に対応する波形生成回路300は、WGGレジスタ400、フレームカウンタ401、セレクタ402、セレクタ403、ステート404、タイマ405を備えている。なお、波形生成回路300の回路構成のみ図示しているが、波形生成回路301~304も同様の回路構成である。WGGレジスタ400は、4つのフレームF0~F3に、複数種類のWGレジスタの中のどれを割り当てるかを設定している。すなわち、WGGレジスタ400は、各階調値毎に使用する駆動電圧波形を設定する波形設定部である。WGGレジスタ400の4つのフレームF0~F3にどのWGレジスタを割り当てるかは各階調値で異なる。つまり、波形設定部であるWGGレジスタ400とWGレジスタ307は、駆動電圧波形と後述する保持電圧の複数のセットを記憶している波形メモリを構成する一例である。
【0035】
フレームカウンタ401は、F0,F1,F2,F3の順にフレームを選択する。セレクタ402は、WGGレジスタ400の設定に基づき、フレームカウンタ401が選択したフレームに割り当てられているWGレジスタを選択する。セレクタ403は、選択されたWGレジスタのステート値とタイマ値に基づき、ステート404とタイマ405の値を設定する。各WGレジスタのステート値とタイマ値は、WGレジスタ記憶部307から受け取る。タイマ405は、設定されたタイムをカウントし、ステート406は、タイマ405がタイムアップするとステートを更新する。
【0036】
Wakeデータにあたる階調値5及びSleepデータにあたる階調値6の波形生成回路305,306は、ステート406,408とタイマ407,409を備える。階調値0~4とは異なり、波形生成回路305,306は、フレームを用いずにWakeとSleepに対応するコード化駆動電圧波形WK5とWK6を夫々生成する。Sleepホールドデータにあたる階調値7も同様にフレームを用いないでコード化駆動電圧波形WK7を生成する。波形生成回路305は、インクを吐出することなくアクチュエータ8の電圧を電圧V1に遷移させるWake波形生成部の一例であり、波形生成回路306は、インクを吐出することなくアクチュエータ8の電圧を電圧V0に遷移させるSleep波形生成部の一例である。
【0037】
WGレジスタ記憶部307は、複数種類のWGレジスタを格納している。図9は、WGレジスタ及びその設定値の一例を示している。この例では、GW,GS,G0,G1,G2の5種類のWGレジスタを用いる。各GWレジスタは、S0~S8の9個のステート値と、ステートを実行するタイミングの設定であるt0~t7の8個のタイマ値によって、1フレーム分の駆動電圧波形の情報を示している。ステート値は、例えば0,1,2,3の値を取る。ステート値0は、第1の電圧である電圧V0をアクチュエータ8に与える第1の出力スイッチをONすることを意味し、ステート値1は、第2の電圧である電圧V1をアクチュエータ8に与える第2の出力スイッチをONすることを意味し、ステート値2は、第3の電圧である電圧V2をアクチュエータ8に与える第3の出力スイッチをONすることを意味する。ステート値3は、第1~第3の出力スイッチを全てOFFし、駆動回路出力をハイインピーダンスにすることを意味する。各出力スイッチは、例えばトランジスタである(図12参照)。
【0038】
ステートS0の状態は、時間t0の間保持され、次にステートS1となる。ステートS1の状態は、時間t1の間保持され、次にステートS2となる。ステートS2の状態は、時間t2の間保持され、次にステートS3となる。ステートS3の状態は、時間t3の間保持され、次にステートS4となる。ステートS4の状態は、時間t4の間保持され、次にステートS5となる。ステートS5の状態は、時間t5の間保持され、次にステートS6となる。ステートS6の状態は、時間t6の間保持され、次にステートS7となる。ステートS7の状態は、時間t7の間保持され、次にステートS8となる。ステートS8に保持時間はない。ステートS8の状態は、次のフレームに更新されるか、或いは、次に印字トリガが発生するまで保持する。すなわち、最後のステートS8に設定されている電圧は、保持電圧である。さらに、出力バッファ76に後述する第1~第3のトランジスタQ0,Q2,Q3を用いた場合、保持するON/OFFの状態を決める。すなわち、波形メモリの一例であるWGレジスタ記憶部307には、最後にONするトランジスタが互いに異なる複数種類の駆動電圧波形の情報が記憶されている。勿論、コード化駆動電圧波形WK0~WK6自体を波形メモリに記憶するようにしてもよい。
【0039】
各WGレジスタGW,GS,G0,G1,G2のステート値とタイマ値は、WGレジスタ記憶部307からコード化駆動電圧波形WK0~WK6を生成する波形生成回路300~306へ送られる。波形生成回路300~306は、WGレジスタのステート値とタイマ値に従って、コード化駆動電圧波形WK0~WK6を生成する。WK7は、GSの最終ステートS8である。コード化駆動電圧波形WK0~WK7の生成開始のトリガとなるのは、印字トリガである。例えば階調値0~4に対応する波形生成回路300~304は、印字トリガの信号が入力されると、WGGレジスタ400の設定に基づき、該当するWGレジスタのステート値とタイマ値を読み出し、タイマ値の時間だけ該当するステート値をコード化駆動電圧波形WK0~WK4に出力し、これを全てのフレームF0~F4で繰り返す。
【0040】
図10は、各階調値0~7毎のWGレジスタGW,GS,G0,G1,G2の割り当てと、生成されるコード化駆動電圧波形WK0~WK7を示している。図10に示すように、階調値0に対応するコード化駆動電圧波形WK0には、WGレジスタG0の値がF0~F3の間出力され、最終値が保持される。G0のステート値は全て“1”なのでこの期間は電圧V1が出力される。インクを1回ドロップする階調値1に対応するコード化駆動電圧波形WK1には、WGレジスタG1の値がF0の期間出力され、G0の値がF1~F3の間出力され、最終値が保持される。インクを2回ドロップする階調値2に対応するコード化駆動電圧波形WK2には。WGレジスタG1の値がF0~F1の期間繰り返し出力され、G0の値がF2~F3の間出力され、最終値が保持される。インクを3回ドロップする階調値3に対応するコード化駆動電圧波形WK3には、WGレジスタG1の値がF0~F2の期間繰り返し出力され、G0の値がF3の間出力され、最終値が保持される。インクを4回ドロップする階調値4に対応するコード化駆動電圧波形WK4には、WGレジスタG1の値がF0~F3の期間繰り返し出力され、G2の値がF3の最後(ステートS8)に出力され、最終値が保持される。ステートS8の状態は、例えば次に印字トリガが発生するまで保持する。すなわち、最後のステートS8に設定されている電圧は、駆動電圧波形を印加した後の保持電圧である。保持電圧は、例えば印刷制御装置100から設定及び変更可能である。
【0041】
階調値5,6,7は、フレームを用いず、WGGレジスタ400の設定は無く、階調値0~4とは波形生成の動作が異なる。階調値5に対応するコード化駆動電圧波形WK5には、WGレジスタGWの値が出力され、最終値が保持される。階調値6に対応するコード化駆動電圧波形WK6には、WGレジスタGSの値が出力され、最終値が保持される。階調値7に対応するコード化駆動電圧波形WK7には、WGレジスタGSのステートS8の値が出力され、これが保持される。ステートS8の状態は、例えば次に印字トリガが発生するまで保持する。こうして生成されたコード化駆動電圧波形WK0~WK7は、各波形選択部75の被選択入力に夫々与えられる。なお、この例では印刷制御装置100から波形設定情報コマンドによって送られてくる設定値がWGレジスタとWGGレジスタ400に設定される。勿論、WGレジスタとWGGレジスタ400の設定値は固定値とすることも可能だが、印刷制御装置100から設定可能とすることによって、次のような利点がある。
【0042】
すなわち、インクジェットヘッド1A~1Dは、インクに関する詳細情報を持っていない。インクが変わったときやインクの温度が変わったとき駆動電圧波形をどのように変えればよいのかは一概に決められるものではなく、インクジェットヘッド1A~1D単体にインクに関する詳細情報を固定してしまうと例えば新しいインクや新しく要求された駆動条件に対応できなくなってしまうからである。インクジェットヘッド1A~1D単体は通常ディスプレイや入力パネルを持つことができず、ホストコンピュータとの接続も直接にはできない。これに対してプリンタの制御部である印刷制御装置100には例えば操作部18などにディスプレイや入力パネルを設けることができ、また多くの場合ホストコンピュータとのインターフェースを有している。よって、例えばディスプレイと入力パネルを使って、あるいはホストコンピュータから、インクの特性を入力し、それに応じて駆動電圧波形を設定することが可能である。このためインクに関する詳細情報はインクジェットヘッド1A~1Dには持たせず、印刷制御装置100がこの情報を持ち、この情報に応じてWGレジスタ、WGGレジスタ400などの値を設定する方が、より幅広い条件で使用可能で融通の利くプリンタとなり得る。
【0043】
説明を図6に戻し、印字データバッファ74は、印字データ送出部205から送られてくるデータを蓄える入力側バッファと、それを波形選択部75へ送出する出力側バッファによって構成されている。各バッファは、各チャネル毎の階調値のデータをチャネル数分だけ蓄える容量を有する。印字データバッファ74に印字トリガが与えられると、入力側バッファの印字データは出力側バッファに転送される。
【0044】
波形選択部75は、図11に示すように、セレクタ500、デコーダ501、グリッチ除去・デッドタイム生成回路502を備える。さらに、出力バッファ76は、図12(a)の回路図に示すように、電圧V0をアクチュエータに与える第1のトランジスタQ0、電圧V1をアクチュエータに与える第2のトランジスタQ1、電圧V2をアクチュエータに与える第3のトランジスタQ2(Q2pとQ2n)、を備えている。
【0045】
図11に示すように、波形選択部75の被選択入力には、印字データが与えられる。波形選択部75に与えられる印字データは、0~7の値を取る3bitの信号である。この0~7の値は、階調値0~7に対応している。波形選択部75のセレクタ500は、印字データの0~7の値に従って、コード化駆動電圧波形WK0~WK7の中から一つのコード化駆動電圧波形を選択する。コード化駆動電圧波形は0~3の値を取る2bitの信号のストリームである。この2bitの信号は、電圧V0をアクチュエータに与える第1のトランジスタQ0、電圧V1をアクチュエータに与える第2のトランジスタQ1、電圧V2をアクチュエータに与える第3のトランジスタQ2(Q2pとQ2n)のうち一つをONするか、すべてをOFFするかという、図12(b)に示すステート値0~3の意味を持っている。このステート値は、WGレジスタのステート値に対応している。これをデコーダ501でデコードした信号が、a0in,a1in,a2inである。
【0046】
デコードの際に発生するグリッジは、グリッジ除去・デッドタイム生成回路502によって除去する。同時に、グリッジ除去・デッドタイム生成回路502は、ONするトランジスタQ1,Q2(Q2p,Q2n),Q0が切り替わるタイミングで一旦全てのトランジスタをOFFするデッドタイムを挿入した信号a0,a1,a2を生成する。信号a0,a1,a2は出力バッファ76に送られる。信号a0が“H”のとき第1のトランジスタQ0がONし、アクチュエータ8には電圧V0(=0V)が印加される。信号a1が“H”のとき第2のトランジスタQ1がONし、アクチュエータ8には電圧V1が印加される。信号a2が“H”のとき第3のトランジスタQ2(Q2p,Q2n)がONし、アクチュエータ8には電圧V2が印加される。信号a0,a1,a2が全て“L”のとき、第1~第3のトランジスタQ0,Q1,Q2(Q2p,Q2n)は全てOFFし、アクチュエータ8の端子はハイインピーダンスとなる。信号a0,a1,a2のうち2つ以上が同時に“H”になることはない。
【0047】
図13は、一連の印字動作を行うためにアクチュエータ8に与える一連の駆動電圧波形を示している。印字周期は20μsである。初期状態ではアクチュエータ8に電圧0Vが印加されている。印字に先立ち、印刷制御装置100は、全アクチュエータ8を一括でWakeさせるWakeコマンド(階調値5)と印字トリガを発行する。波形選択部75は、コード化駆動電圧波形WK0~WK7の中からコード化駆動電圧波形WK5を選択し、出力バッファ76は、第1~第3のトランジスタQ0,Q1,Q2(Q2p,Q2n)のON/OFFを制御してコード化駆動電圧波形WK5に従うWake電圧波形をアクチュエータ8に与える。これにより、アクチュエータ8に与える電圧は、電圧V0から電圧V1に立ち上がる。すなわち、第1の電圧から第2の電圧に遷移される(第1の電圧<第2の電圧)。Wakeのために電圧V1に立ち上げるこのときはインクを吐出してはならない。そのため、電圧立ち上がり時の圧力振幅を抑えると共に圧力振動をキャンセルすることを図って、Wake電圧波形には、最初の2μsの間、電圧V2にするステップを設けている。2μsは圧力振動の半周期である。圧力振動の半周期は、AL(Acoustic Length)とも称される。
【0048】
その後、印刷制御装置100は、印字データ(階調値1~4)と印字トリガを順次発行し、インクを吐出すべきノズル51のアクチュエータ8に駆動電圧波形をn回(n≧1)与えることとなる。但し、図13に示すように、Wakeから最初の印字までの時間は、印字周期(この例では20μs)の2周期以上確保する。2周期以上の時間は、次の印字トリガを発行する時間調節で確保してもよく、或いは、続いて印字データ(階調値0)と印字トリガを発行して電圧V1を印加し続けることで確保してもよい。Wakeから最初の印字までに駆動電圧波形の2周期以上の時間を確保して印字前のバイアス電圧の印加を行う理由を、図14図15を参照しながら説明する。
【0049】
アクチュエータ8にバイアス電圧を印加すると、アクチュエータ8の分極が変化する。このとき、印字前のバイアス電圧の印加時間が短いと、分極の変化が飽和する前に印字を始めることになるため、最初のドットを印刷するときだけ圧電定数が高く見え、図14に一例を示すように打ち始めの印字が濃くなってしまうことがある。すなわち、印字品質が劣化するという問題が起きる。
【0050】
この現象を調べるために、図15(a)に示す電圧波形でアクチュエータ8を駆動し、アクチュエータ8の静電容量の変化を調べた。インクを吐出する駆動電圧波形は、インクを4回ドロップして1ドットとするコード化駆動電圧波形WK4である。2μsは圧力振動の半周期である。その結果を図15(b)に示す。図15(b)の結果から、インクを吐出させる駆動電圧波形を与える前に、20μsの間(すなわち印字周期の1周期分)、バイアス電圧を印加しても、静電容量変化は飽和しないことが分かった。吐出前後で合計100μs(印字周期の5周期分)の間バイアス電圧を与えると、静電容量は低下し、このため2ドット目以降の静電容量は安定する。しかしその後にバイアス電圧を止めて暫く放置すると静電容量は戻ってしまう。この現象が、図14に示した最初のドットが濃く印字される現象の原因である。よって、Wakeから最初の印字までに少なくとも駆動電圧波形の2周期以上の時間を確保し、最初の1ドット目が濃くなってしまうのを抑える。より望ましくは吐出の前後に合計で或いは吐出前に100μsにあたる5周期分以上を確保する。Wakeコマンドと印字データ(階調値5)はいずれも印刷制御装置100からヘッド駆動回路7に送るので、Wakeから最初の印字までの時間は自由に調節可能である。
【0051】
図13の例では、アクチュエータ8にWake電圧波形を与えてさらに電圧V1をバイアス電圧として印加した後(合計で印字周期の2周期分=40μs以上)、印刷制御装置100から印字データ(階調値1,2,3,4)と印字トリガ2~5を順次発行して、階調値1,2,3,4の順に4ドットの印字を行う。その後、印刷制御装置100から印字データ(階調値0)と印字トリガ6~7を順に発行してアクチュエータ8に電圧V1を印加し、このままで暫く印字を休止する。その間電圧V1が維持される。この例では印字周期の4周期分(=80μs)、電圧V1を維持している。次に再び印刷制御装置100から印字データ(階調値1,2,3,4)と印字トリガ9~12を順次発行して、階調値1,2,3,4の順に4ドットの印字を行う。その後、印刷制御装置100から印字データ(階調値0)と印字トリガ13を発行してアクチュエータ8に電圧V1を印加する。
【0052】
一連の印字動作を完了に際して、印刷制御装置100は、Sleepコマンド(階調値6)と印字トリガ14を発行する。Sleepコマンドが実行されると、波形選択部75は、コード化駆動電圧波形WK0~WK7の中からコード化駆動電圧波形WK6を選択し、出力バッファ76は、第1~第3のトランジスタQ0,Q1,Q2(Q2p,Q2n)のON/OFFを制御してコード化駆動電圧波形WK6に従うSleep電圧波形をアクチュエータ8に与える。アクチュエータ8の印加電圧は、電圧V1から電圧0Vへ立ち下がる。すなわち、第2の電圧から第1の電圧に遷移する(第1の電圧<第2の電圧)。Sleepのため電圧V0に立ち下げるこのときはインクを吐出してはならない。電圧立ち下がり時の圧力振幅を抑えると共に圧力振動をキャンセルすることを図って、Sleep波形には、最初の2μsの間、電圧V2にするステップを設けている。2μsは圧力振動の半周期である。その後、次の印字トリガが入力されるまで電圧V0が維持される。
【0053】
図16に示す別の例では、最初の4ドットの印字と次の4ドットの印字の間にSleepを設けてバイアス電圧の印加を休止させている。印刷制御装置100はインクジェットヘッド1A~1Dと違って多ライン分のバッファを持っているためこの先に吐出があるか無いかの情報を多くのラインに亘り持っている。このため印刷制御装置100は今後数ライン後にすぐ次の印字があるのか、それとも数十ライン、あるいは数百ラインに亘って暫く吐出が無いのかを判断することができる。この先数百ライン以上に亘って吐出が無いと判断した場合、印刷制御装置100はSleepコマンド(階調値6)と印字トリガ7を発行する。Sleepを実行することによって、アクチュエータ8に与える電圧は、一旦電圧V0(=0V)になる。なお、Sleepから電圧V0(=0V)を維持する時間は、印字周期(この例では20μs)の2周期以上確保することが望ましい。
【0054】
その後、次の吐出よりも印字周期の2周期分(=40μs)以上の時間先立って、印刷制御装置100はWakeコマンド(階調値5)と印字トリガ8を発行する。Wake電圧波形によってアクチュエータ8に与える電圧は電圧V1に立ち上がりバイアス電圧として電圧V1の印加を維持する。吐出前バイアス電圧の印加時間を印字周期の2周期分以上確保することによって、次の吐出の第1ドット目が濃くなることを防ぐことができ、良好な印字品質を得ることができる。
【0055】
なお、上記の例はコマンドにより一括Wakeと一括Sleepを行っているが、印字データにWakeデータ(階調値5)とSleepデータ(階調値6)を含めて個別のアクチュエータ8に対してWakeとSleepを実行しても、同様に、第1ドット目が濃くなることを防ぐことができ、良好な印字品質を得ることができる。
【0056】
以上の説明のとおり、上述の実施形態によれば、静電容量性アクチュエータに与えるバイアス電圧の印加を休止することができ、しかも次に液体を吐出するときのアクチュエータの特性を安定化させることができる。
【0057】
続いて、WakeのWGレジスタGWと、SleepのWGレジスタGSの設定値の変形例について、図17を参照しながら説明する。図17に示すように、WGレジスタGWは、電圧V0から電圧V2への電圧波形の立ち上がりと電圧V2から電圧V1への電圧波形の立ち上がりの2か所に、第1~第3のトランジスタQ1,Q2,Q3を全てOFFするステート値3を設定している。図中、「Hi-Z」で示した箇所である。具体的には、第3のトランジスタQ2をONしてアクチュエータ8の充電を開始した後、電圧V2への電圧波形の立ち上がり開始から、充電動作の完了に要する時間より短い所定時間(例えば0.1μs)が経過した時点にステート3を所定時間(例えば0.1μs)だけ挿入して第3のトランジスタQ2をOFFする。そしてこの所定時間が経過すると再び第3のトランジスタQ2をONする。その後、第2のトランジスタQ1をONし、電圧V1への電圧波形の立ち上がり開始から、充電動作の完了に要する時間より短い所定時間(例えば0.1μs)が経過した時点にステート3を所定時間(例えば0.1μs)だけ挿入して第2のトランジスタQ1をOFFする。そしてこの所定時間が経過すると再び第2のトランジスタQ1をONする。このようにステート3を挿入して電圧の立ち上がり時間を延ばしている。電圧波形の立ち上がりの充電、立ち下がりの放電には数百ナノ秒を要するので、この時間内にステート値3に変化させることによって立ち上がり時間を調節しているのである。このようにWake電圧波形の立ち上がり時間を調整することによって、Wake電圧波形で駆動する際の不要なインクの吐出を起き難くすることができる。
【0058】
同様に、WGレジスタGSも、電圧V1から電圧V2への電圧波形の立ち下がりと電圧V2から電圧V0への電圧波形の立ち下がりの2か所に、第1~第3のトランジスタQ1,Q2,Q3を全てOFFするステート値3を設定している。図中、「Hi-Z」で示した箇所である。具体的には、第3のトランジスタQ2をONしてアクチュエータ8の放電を開始した後、電圧V2への電圧波形の立ち下がり開始から、放電動作の完了に要する時間より短い所定時間(例えば0.1μs)が経過した時点にステート3を所定時間(例えば0.1μs)だけ挿入して第3のトランジスタQ2をOFFする。そしてこの所定時間が経過すると再び第3のトランジスタQ2をONする。その後、第1のトランジスタQ0をONし、電圧V0への電圧波形の立ち下がり開始から、放電動作の完了に要する時間より短い所定時間(例えば0.1μs)が経過した時点にステート3を所定時間(例えば0.1μs)だけ挿入して第1のトランジスタQ0をOFFする。そしてこの所定時間が経過すると再び第1のトランジスタQ0をONする。このようにステート3を挿入して電圧の立ち下がり時間を延ばしている。このようにSleep電圧波形の立ち下がり時間を調整することによって、Sleep電圧波形で駆動する際の不要なインクの吐出を起き難くすることができる。
【0059】
WakeのWGレジスタGWと、SleepのWGレジスタGSの設定値の他の変形例について、図18を参照しながら説明する。図16に例示したような印刷中にインクを吐出しない区間が続くときアクチュエータ8に与える電圧を電圧V0(=0V)まで下げて完全にSleepさせることに代えて、この変形例では、アクチュエータ8に与える電圧を電圧V2(>0V)まで下げて待機させる。すなわち、低電圧Wake状態(dark wake)にする。そのため、WGレジスタGWの全てのステートS0~S8にステート値2を設定する。すなわち電圧V2に固定する。一方で、WGレジスタGSの全てのステートS0~S8にはステート値0を設定する。すなわち電圧V0に固定する。電圧が固定なので各タイマt0~t7の設定値はいずれの値でもよい。
【0060】
図19は、図18に示したWGレジスタGW,GSを用いたときの、各階調値0~7のWGレジスタGW,GS,G0,G1,G2の割り当てと、生成されるコード化駆動電圧波形WK0~WK7の一例を示している。図19に示すように、階調値5に対応するコード化駆動電圧波形WK5はアクチュエータ8に全時間領域で電圧V2を与えた低電圧Wake状態(dark wake)、階調値6に対応するコード化駆動電圧波形WK6はアクチュエータ8に全時間領域で電圧0(=0V)を与えたSleep状態になる。よって、階調値5に対応するコード化駆動電圧波形WK5には、WGレジスタGWの値(電圧V2)が出力され、最終値が保持される。階調値6に対応するコード化駆動電圧波形WK6には、WGレジスタGS(電圧V0)の値が出力され、最終値が保持される。階調値7は使用せず、Sleepを維持するときは階調値6のコード化駆動電圧波形WK6を用いるようにする。階調値0~4は、図10に示した例と同様である。
【0061】
図20は、一連の印字動作を行うためにアクチュエータ8に与える一連の駆動電圧波形を示している。印字周期は20μsである。初期状態ではアクチュエータ8に電圧0Vが印加されている。印字に先立ち、印刷制御装置100からWakeコマンド(階調値5)と印刷トリガ1が発行されると、波形選択部75はコード化駆動電圧波形WK5を選択し、全アクチュエータ8に印加する電圧は電圧0Vから電圧V2に立ち上がる。すなわち、低電圧Wake状態(dark wake)となる。その後、例えば吐出をするアクチュエータ8に対して印刷制御装置100から印字データ(階調値0)と印刷トリガ2が発行されると、波形選択部75はコード化駆動電圧波形WK0を選択し、アクチュエータ8に印加する電圧は電圧V2から電圧V1に立ち上がる。すなわち、Wake電圧波形が与えられバイアス電圧を印加した状態になる。この後もう一度、印刷制御装置100から印字データ(階調値0)と印刷トリガ3が発行される。その結果、吐出前バイアス電圧の印加時間を印字周期の2周期分以上保つこととなり、アクチュエータ8の特性が安定化される。
【0062】
その後、印刷制御装置100から印字データ(階調値4)と印刷トリガ4が発行され、階調値4で1ドットの印字を行う。次の吐出が無ければ印刷制御装置100から印字データ(階調値0)と印刷トリガ5が発行されるが、その後暫く吐出が無いと判断した時点で印刷制御装置100は、例えばWakeコマンド(階調値5)と印刷トリガ7を発行する。印字データとして階調値5を与えても良い。波形選択部75はコード化駆動電圧波形WK5を選択し、アクチュエータ8に印加する電圧は電圧V1から電圧V2に下がり低電圧Wake状態(dark wake)となる。吐出を再開するよりも印字周期2周期分前の時点で印刷制御装置100は印字データ(階調値0)と印刷トリガ10を発行する。波形選択部75はコード化駆動電圧波形WK0を選択し、アクチュエータ8に印加する電圧は電圧V2から電圧V1に立ち上がる。すなわち、バイアス電圧を印加した状態になる。この後もう一度、印刷制御装置100から印字データ(階調値0)と印刷トリガ11が発行される。その結果、吐出前バイアス電圧の印加時間を印字周期の2周期分以上保つこととなり、アクチュエータ8の特性が安定化される。
【0063】
その後、印刷制御装置100から印字データ(階調値1)と印刷トリガ12が発行され、階調値1で1ドットの印字を行う。次の印刷周期で、印刷制御装置100から印字データ(階調値4)と印刷トリガ13が発行され、階調値4で1ドットの印字を行う。その後、印刷制御装置100から印字データ(階調値0)と印刷トリガ14が発行され、アクチュエータ8に電圧V1を与える。この時点でその後暫く吐出が無いと判断したら、印刷制御装置100はwakeコマンド(階調値5)と印字トリガ15を発行し、アクチュエータ8に与える電圧を電圧V2まで下げる。さらに次の印字周期でSleepコマンド(階調値6)と印字トリガ16を発行し、全てのアクチュエータ8に与える電圧を電圧V0(=0V)まで下げる。すなわち完全Sleep状態にする。
【0064】
上述の実施形態では、液体吐出装置の一例として、インクジェットプリンタ1のインクジェットヘッド1A、101Aを説明したが、液体吐出装置は、3Dプリンタの造形材吐出ヘッド、分注装置の試料吐出ヘッドであってもよい。勿論、アクチュエータ8も容量性負荷であれば上述の実施形態の構成及び配置に限定されない。
【0065】
すなわち、実施形態の液体吐出装置のアクチュエータ駆動回路は、
(1)第1の電圧をアクチュエータに与える第1のトランジスタと、前記第1の電圧よりも大きい第2の電圧を前記アクチュエータに与える第2のトランジスタと、を備え、駆動電圧波形に従ってON/OFF動作する出力スイッチと、
前記第1のトランジスタのみONするか、前記第2のトランジスタのみONするか、或いは前記第1のトランジスタと第2のトランジスタの両方ともOFFするかのステートの設定と、これらステートを実行するタイミングの設定によって前記駆動電圧波形を設定すると共に少なくとも最後にONするトランジスタが互いに異なる複数種類の前記駆動電圧波形を記憶する波形メモリと、を備える。
(2)前記第1の電圧よりも大きく前記第2の電圧よりも小さい第3の電圧を前記アクチュエータに与える第3のトランジスタをさらに備えており、
前記波形メモリは、前記第1のトランジスタのみONするか、前記第2のトランジスタのみONするか、前記第3のトランジスタのみONするか、或いは前記第1~第3のトランジスタの全てをOFFするかのステートの設定と、これらステートを実行するタイミングの設定によって前記駆動電圧波形を設定すると共に少なくとも最後にONするトランジスタが互いに異なる複数種類の前記駆動電圧波形を記憶する。
(3)前記第2のトランジスタをONして前記アクチュエータへの充電を開始した後、この充電動作の完了に要する時間より短い第1の所定時間経過後に前記第2のトランジスタをOFFしさらに第2の所定時間経過後に前記第2のトランジスタを再びONする駆動電圧波形を含む。
(4)前記第1のトランジスタをONして前記アクチュエータからの放電を開始した後、この放電動作の完了に要する時間より短い第3の所定時間経過後に前記第1のトランジスタをOFFしさらに第4の所定時間経過後に前記第1のトランジスタを再びONする駆動電圧波形を含む。
(5)前記第3のトランジスタをONして前記アクチュエータへの充電または前記アクチュエータからの放電を開始した後、この充電または放電の動作の完了に要する時間より短い第5の所定時間経過後に前記第2のトランジスタをOFFしさらに第6の所定時間経過後に前記第3のトランジスタを再びONする駆動電圧波形を含む。
(6)前記所定時間は、前記タイミングの設定として前記波形メモリに記憶している。
(7)前記第1の電圧は0Vである。
(8)前記駆動電圧波形の最後のタイミングにあたるステートの設定は、前記駆動電圧波形の終了後に保持するトランジスタのON/OFFの状態を決める。
【0066】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
10 インクジェットプリンタ
1A~1D インクジェットヘッド
4 インク供給部
51 ノズル
7 ヘッド駆動回路
72 コマンド解析部
74 印字データバッファ
75 波形選択部
76 出力バッファ
8 アクチュエータ
100 印刷制御装置
307 WGレジスタ記憶部
400 WGGレジスタ
Q0 第1のトランジスタ
Q1 第2のトランジスタ
Q2 第3のトランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図20