(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】冷媒回路の製造方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
F25B 45/00 20060101AFI20221024BHJP
F28G 9/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
F25B45/00 Z
F28G9/00 B
(21)【出願番号】P 2019073944
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2021-10-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年 3月17日、プロステップ株式会社のウェブサイト(http://pro-step.co.jp/)にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305062457
【氏名又は名称】プロステップ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 丈博
(72)【発明者】
【氏名】砂原 宏光
(72)【発明者】
【氏名】松崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 茂
(72)【発明者】
【氏名】内田 稔
(72)【発明者】
【氏名】根市 浩
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-094216(JP,A)
【文献】特開2004-116929(JP,A)
【文献】特開2006-220381(JP,A)
【文献】特開2005-055077(JP,A)
【文献】特開2012-117719(JP,A)
【文献】特開2016-200358(JP,A)
【文献】特開2005-127542(JP,A)
【文献】特開2005-188825(JP,A)
【文献】特開平03-164673(JP,A)
【文献】特表平08-505935(JP,A)
【文献】実開平04-100695(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0326942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 45/00
F28G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサ、コンデンサ、エキスパンションバルブおよびエバポレータを有し、前記コンプレッサから前記コンデンサ、前記エキスパンションバルブ、前記エバポレータを順に通って前記コンプレッサに戻るように冷媒が循環する冷媒回路の製造方法であって、
前記冷媒回路に冷媒を充填する前に、前記冷媒回路を洗浄流体で洗浄する洗浄工程を含み、
前記洗浄工程は、
洗浄のために前記冷媒回路に充填されている洗浄流体を、前記冷媒回路における前記コンプレッサと前記コンデンサとの間の第1回路中途部、および前記冷媒回路における前記コンプレッサと前記エバポレータとの間の第2回路中途部のそれぞれから回収する洗浄流体回収工程、を含
み、
前記洗浄工程は、前記洗浄流体回収工程の前において、
前記冷媒回路内を真空引きする真空引き工程と、
前記真空引き工程の後に、前記第1回路中途部および前記第2回路中途部のそれぞれから前記冷媒回路に洗浄流体を充填する洗浄流体充填工程と、を更に含む
ことを特徴とする冷媒回路の製造方法。
【請求項2】
前記洗浄工程は、前記洗浄流体充填工程と前記洗浄流体回収工程との間に、
前記冷媒回路に充填されている洗浄流体の一部を、前記第1回路中途部および前記第2回路中途部のそれぞれから回収する中間回収工程と、
前記中間回収工程の後に、前記第1回路中途部および前記第2回路中途部のそれぞれから前記冷媒回路に洗浄流体を充填する中間充填工程と、を更に含む
ことを特徴とする請求項
1記載の冷媒回路の製造方法。
【請求項3】
前記中間回収工程と前記中間充填工程とを繰り返す
ことを特徴とする請求項
2記載の冷媒回路の製造方法。
【請求項4】
前記洗浄工程は、前記コンプレッサを前記冷媒回路から切り離した状態で行われる
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
コンプレッサ、コンデンサ、エキスパンションバルブおよびエバポレータを有し、前記コンプレッサから前記コンデンサ、前記エキスパンションバルブ、前記エバポレータを順に通って前記コンプレッサに戻るように冷媒が循環する冷媒回路の製造方法であって、
前記冷媒回路に冷媒を充填する前に、前記冷媒回路を洗浄流体で洗浄する洗浄工程を含み、
前記洗浄工程は、
洗浄のために前記冷媒回路に充填されている洗浄流体を、前記冷媒回路における前記コンプレッサと前記コンデンサとの間の第1回路中途部、および前記冷媒回路における前記コンプレッサと前記エバポレータとの間の第2回路中途部のそれぞれから回収する洗浄流体回収工程、を含
み、
前記洗浄工程は、前記コンプレッサを前記冷媒回路から切り離した状態で行われる
ことを特徴とする冷媒回路の製造方法。
【請求項6】
前記洗浄流体としてフロンを用いる
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の冷媒回路の製造方法。
【請求項7】
コンプレッサ、コンデンサ、エキスパンションバルブおよびエバポレータを有し、前記コンプレッサから前記コンデンサ、前記エキスパンションバルブ、前記エバポレータを順に通って前記コンプレッサに戻るように冷媒が循環する冷媒回路の処理装置であって、
前記冷媒回路を洗浄する洗浄流体を貯蔵するタンクと、
前記冷媒回路における前記コンプレッサと前記コンデンサとの間の第1回路中途部と、前記タンクとを連通する第1管路と、
前記冷媒回路における前記コンプレッサと前記エバポレータとの間の第2回路中途部と、前記タンクとを連通する第2管路と、
前記第1管路が有する第1連結部と前記第2管路が有する第2連結部とを連結し、前記第1管路と前記第2管路とを連通する第3管路と、
前記第1管路の中途部であって前記タンクと前記第1連結部との間に設けられた装置用コンプレッサと、
前記第1管路の中途部であって前記装置用コンプレッサと前記第1連結部との間に設けられた第1バルブと、
前記第2管路の中途部であって前記タンクと前記第2連結部との間に設けられた第2バルブと、を備え、
前記第2バルブを閉じ、前記第1バルブを開き、前記装置用コンプレッサを駆動した状態において、洗浄のために前記冷媒回路に充填されている洗浄流体を、前記第1回路中途部および前記第2回路中途部のそれぞれから回収する
ことを特徴とする冷媒回路の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路の製造技術および処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開平8-94216号公報)には、車両に搭載される空調装置のA/Cサイクルの洗浄および冷媒・オイルの回収を行うことのできる洗浄装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の洗浄装置では、冷媒回路(A/Cサイクル)内の真空引きを行った後、冷媒を循環させて各部の洗浄が行われる(特許文献1の明細書段落[0025]参照)。しかしながら、単に冷媒回路内で冷媒を一方向に循環させただけでは、配管内に付着した油分や錆などの異物(スラッジ)を十分に除去することができない場合がある。配管に油分や異物が付着し、配管に詰まりが生じた場合には、空調装置として機能が低下してしまう。
【0005】
本発明の一目的は、冷媒回路内を洗浄する効率を向上することのできる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一解決手段は、コンプレッサ、コンデンサ、エキスパンションバルブおよびエバポレータを有し、前記コンプレッサから前記コンデンサ、前記エキスパンションバルブ、前記エバポレータを順に通って前記コンプレッサに戻るように冷媒が循環する冷媒回路の製造方法にある。この冷媒回路の製造方法は、前記冷媒回路に冷媒を充填する前に、前記冷媒回路を洗浄流体で洗浄する洗浄工程を含む。前記洗浄工程は、洗浄のために前記冷媒回路に充填されている洗浄流体を、前記冷媒回路における前記コンプレッサと前記コンデンサとの間の第1回路中途部、および前記冷媒回路における前記コンプレッサと前記エバポレータとの間の第2回路中途部のそれぞれから回収する洗浄流体回収工程、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一解決手段によれば、冷媒回路内を洗浄する効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】冷媒回路および冷媒処理装置の概略構成図である。
【
図3】冷媒回路の製造方法における回収再生工程のフロー図である。
【
図4】冷媒回路の製造方法における洗浄工程のフロー図である。
【
図5】冷媒回路の製造方法における充填工程のフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る冷媒回路および冷媒処理装置の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、冷媒回路60および冷媒処理装置100の概略構成図である。冷媒回路60は車両用空調システム(カーエアコンディショナ)に適用されるものとして説明し、
図1ではその冷媒回路60に種々の処理を施すための冷媒処理装置100が接続される状態を示している。
【0010】
冷媒回路60は、コンプレッサ62、コンデンサ64、エキスパンションバルブ66およびエバポレータ68を備えている。冷媒回路60は、冷媒がコンプレッサ62からコンデンサ64、エキスパンションバルブ66、エバポレータ68を順に通ってコンプレッサ62に戻るように配管(回路形成)されている。冷媒としては、例えば、フロンを用いることができる。なお、冷媒処理装置100を接続して冷媒回路60に処理を施す場合、冷媒回路60からコンプレッサ62が切り離された状態とするため、
図1では、コンプレッサ62のコンデンサ64側(高圧側)およびエバポレータ68側(低圧側)の経路を破線で示している。完成品の冷媒回路60としては、回路上にコンプレッサが設けられ、回路内に冷媒が充填された状態であるが、以下では、コンプレッサ62が切り離された状態や、冷媒が充填されていない状態であっても冷媒回路60として説明する場合がある。
【0011】
ここで、車両用空調システムにおける冷媒回路60の動作(冷媒処理装置100が接続されていない状態での動作)について説明する。まず、冷媒回路60内に充填されている冷媒は、コンプレッサ62の駆動によって圧縮され、高温高圧のガス状となってコンデンサ64を通過する。このとき冷媒はコンデンサファン(図示せず)によって冷却されて液化していく。コンデンサ64とエキスパンションバルブ66との間にレシーバ(図示せず)を設けることで、液化できなかった冷媒を液状の冷媒と分離して取り除くことができる。液状となった冷媒は、エキスパンションバルブ66の微少なノズル穴(すなわちノズル穴径はコンデンサ64とエキスパンションバルブ66との間の管路径よりも小さい)からエバポレータ68内へ噴射されて気化する。低温低圧の霧状となった冷媒は、エバポレータ68の周りの熱を奪っていき、エバポレータ68を冷やす。このエバポレータ68にブロワファン(図示せず)の風を通過させ、車内(車両の室内)に送り込むことで冷房される。なお、後述する処理技術によれば、冷媒回路60内の詰まりを防止することができるため、冷房効率を向上することができる。
【0012】
このような冷媒回路60の動作では、コンプレッサ62からエキスパンションバルブ66までは高圧側となり、エキスパンションバルブ66からコンプレッサ62までは低圧側となって冷媒が冷媒回路60を循環する。このため、本実施形態では、冷媒処理装置100と冷媒回路60とが接続されるにあたり、冷媒処理装置100が冷媒回路60に接続される高圧バルブVHおよび低圧バルブVLを備えているものとする。この高圧バルブVHは、冷媒回路60におけるコンプレッサ62とコンデンサ64との間の第1回路中途部70と連通(接続)して設けられている。また、低圧バルブVLは、冷媒回路60におけるコンプレッサ62とエバポレータ68との間の第2回路中途部72と連通(接続)して設けられている。
【0013】
車両用空調システムにおける冷媒回路60には冷媒が充填されるが、冷媒処理装置100は、冷媒回路60に冷媒を充填する機能を備えている。また、冷媒処理装置100は、冷媒回路60に冷媒を充填する前に、冷媒回路60を洗浄流体で洗浄する機能も備えている。洗浄流体としては、例えば、フロンを用いることができる。洗浄流体を冷媒回路60から回収する際には、洗浄流体としてフロンを用いることで洗浄液体よりも短時間で行うことができる。また、冷媒回路60の冷媒および洗浄流体に同じ流体(フロン)を用いることで、冷媒処理装置100の構成を簡略化することができる。このため、以下では、洗浄流体を冷媒回路60に充填される冷媒と同じとして用いる冷媒処理装置100について説明する。
【0014】
冷媒処理装置100は、装置本体1(筐体)と、装置本体1から延出し、冷媒回路60と接続される高圧ホース2および低圧ホース3とを備えている。また、冷媒処理装置100は、装置本体1内に設けられる高圧管路6および低圧管路7を備えている。高圧ホース2は、一端にカプラ4を備え、カプラ4を介して高圧バルブVHと接続され、他端が装置本体1内の高圧管路6と接続されている。また、低圧ホース3は、一端にカプラ5を備え、他端が装置本体1内の低圧管路7に接続されている。
【0015】
高圧管路6は、高圧用圧力センサ8と、冷媒を減圧気化するためのエバポレータ9とを備え、回収冷媒から冷凍機油を分離するオイルセパレータ10と、冷媒から不純物や水分を除去するためのフィルタドライヤ11を経由して装置用コンプレッサ12に配管されている。低圧管路7は、低圧用圧力センサ13と、車両用空調システムの冷媒回路60内を真空引きする真空ポンプ14とを備え、低圧用圧力センサ13と真空ポンプ14の間に接続管路15を連結して高圧管路6に接続している。
【0016】
また、冷媒処理装置100は、供給管路16を備えている。供給管路16は、装置用コンプレッサ12の排出側に接続され、オイルセパレータ10内で熱交換するコンデンサ17と、オイルセパレータ10外のコンデンサ18を経由して冷媒を回収できるタンク19に配管されている。また、冷媒処理装置100は、冷凍機油受け20を備えている。冷凍機油受け20には、オイルセパレータ10で分離された冷凍機油が排油パイプ21を通じて排出される。
【0017】
冷媒処理装置100が備えるタンク19は、冷媒を貯蔵するものであるが、本実施形態では、冷媒回路60を洗浄する洗浄流体を貯蔵するものでもある。タンク19の上部には安全弁22が取り付けられており、タンク19内の圧力が所定以上になると大気開放してタンク19上部の空気を排出する。また、タンク19にはロードセル23が取り付けられており、タンク19内に貯留される冷媒(洗浄流体)の重量を計量する。
【0018】
また、冷媒処理装置100は、充填管路24および循環管路25を備えている。充填管路24は、タンク19と接続管路15とに連結されており、タンク19内の冷媒を車両用空調システムの冷媒回路60に充填する際に用いられる。循環管路25は、先端で分岐するバルブ26およびバルブ27を備えている。冷媒処理装置100の内部回路に冷媒を循環させて洗浄する際には、バルブ26とカプラ4とが連結され、バルブ27とカプラ5とが連結される。
【0019】
また、冷媒処理装置100は、補充管路28を備えている。補充管路28は、接続管路15に連結され、また、再生冷媒充填時に冷凍機油を補充するためのオイル缶29と、タンク19内の再生冷媒の量が不足した場合に新規な冷媒をタンク19内に補充するためのフロン缶30が接続される。
【0020】
また、冷媒処理装置100は、管路切換用の電磁弁31~39を備えている。電磁弁31は、高圧管路6における高圧用圧力センサ8と接続管路15の連結位置(第1連結部78)との間に設けられている。電磁弁32は、接続管路15の連結位置(第1連結部78)とエバポレータ9との間に設けられている。電磁弁33は、低圧管路7における低圧ホース3の接続位置と低圧用圧力センサ13との間に設けられている。電磁弁34は、接続管路15の連結位置(第2連結部80)と真空ポンプ14との間に設けられている。電磁弁35は、排油パイプ21に設けられている。電磁弁36は、充填管路24に設けられている。電磁弁37は、循環管路25に設けられている。電磁弁38は、補充管路28におけるオイル缶29側に設けられている。電磁弁39は、補充管路28におけるフロン缶30側に設けられている。
【0021】
また、冷媒処理装置100は、逆止弁40~43を備えている。逆止弁40は、充填管路24に設けられている。逆止弁41は、循環管路25に設けられている。逆止弁42は、補充管路28におけるオイル缶29側に設けられている。逆止弁43は、補充管路28におけるフロン缶30側に設けられている。
【0022】
冷媒回路60を洗浄流体で洗浄するにあたり、冷媒処理装置100は、冷媒回路60における第1回路中途部70とタンク19とを連通する第1管路74を備えている。本実施形態では、第1管路74は、第1回路中途部70から、高圧ホース2、電磁弁32(第1バルブ)が設けられた高圧管路6、および装置用コンプレッサ12が設けられた供給管路16を通ってタンク19に到達する経路を構成している。電磁弁32(第1バルブ)は、第1管路74の中途部であって装置用コンプレッサ12と第1連結部78(接続管路15との連結位置)との間に設けられ、その開閉により第1管路74における洗浄流体の流れを制御することができる。
【0023】
また、冷媒処理装置100は、冷媒回路60を洗浄流体で洗浄するにあたり、冷媒回路60における第2回路中途部72とタンク19とを連通する第2管路76とを備えている。本実施形態では、第2管路76は、第2回路中途部72から、低圧ホース3、低圧管路7、および電磁弁36(第2バルブ)が設けられた充填管路24を通ってタンク19に到達する経路を構成している。電磁弁36(第2バルブ)は、第2管路76の中途部であってタンク19と第2連結部80(接続管路15との連結位置)との間に設けられ、その開閉により第2管路76における洗浄流体の流れを制御することができる。
【0024】
また、冷媒処理装置100は、冷媒回路60を洗浄流体で洗浄するにあたり、第1管路74が有する第1連結部78と第2管路76が有する第2連結部80とを連結し、第1管路74と第2管路76とを連通する第3管路82を備えている。本実施形態では、第3管路82は、接続管路15による経路を構成している。
【0025】
また、冷媒処理装置100は、第1管路74の中途部であってタンク19と第1連結部78との間に設けられた装置用コンプレッサ12を備えている。この装置用コンプレッサ12は、冷媒回路60内の洗浄流体をタンク19へ押圧して回収するために用いられる。
【0026】
図2は冷媒処理装置100の制御系を示すブロック図である。冷媒処理装置100は、制御部44を備えている。制御部44は、操作パネル45から信号を受け取り、記憶されたプログラム(複数のステップを含む)に基づいて電磁弁31~39など装置の各機器を作動させる。操作パネル45は、表示機能として冷媒充填量を表示する充填量表示部46と、高圧側の圧力を表示する高圧用圧力表示部47と、低圧側の圧力を表示する低圧用圧力表示部48とを備えている。また、操作パネル45は、入力機能として、コース選択キー49と、充填量等を調整する調整キー50と、スタートキー51と、作業を一時中断させるための一時停止キー52と、全作業終了後、装置を初期状態に戻すための終了キー53とを備えている。
【0027】
次に、冷媒回路60に対して処理を施す冷媒処理装置100の動作(冷媒回路60の製造方法)の一例について説明する。ここでは、車両用空調システム(カーエアコンディショナ)が備える冷媒回路60の冷媒を回収し、冷媒を再生する工程(回収再生工程)、冷媒回路60を洗浄する工程(洗浄工程)、冷媒回路60に冷媒を充填する工程(充填工程)を順に実行する場合について、
図3~
図5を参照して説明する。
図3は、回収再生工程のフロー図である。
図4は、洗浄工程のフロー図である。
図5は、充填工程のフロー図である。なお、冷媒処理装置100では、コース選択キー49においてこれらの工程を選択することができる。また、各工程を開始する際には、スタートキー51を入力すればよい。
【0028】
<回収再生工程>
回収再生工程を行うにあたり、作業者は、車両エンジンを停止してコンプレッサ62を停止しておく。この状態から高圧バルブVHに高圧ホース2をカプラ4によって接続する。また、低圧バルブVLに低圧ホース3をカプラ5によって接続する。
【0029】
回収再生工程が開始すると、閉じられた状態にある電磁弁31~39のうち、電磁弁31、電磁弁32が開き(S1)、装置用コンプレッサ12が駆動する(S2)。装置用コンプレッサ12の駆動に伴い、高圧ホース2から冷媒回路60の冷媒が高圧液体の状態で導入され、高圧管路6を通じてエバボレータ9で減圧気化されて、オイルセパレータ10で冷凍機油が分離された後、供給管路16を通じてフィルタドライヤ11で濾過及び除水され、コンデンサ17、18で液化されてタンク19に冷媒が回収される。このとき、オイルセパレータ10では、内蔵したコンデンサ17による冷媒の凝縮液化が行われるため、気化と液化が相乗的に作用して熱交換が効率良く実行される。
【0030】
高圧管路6の高圧用圧力センサ8で検出される圧力Pが第1所定圧P1以下になると(S3)、冷媒回路60の高圧側に残留している冷媒がほぼ気体状態であると判断して、電磁弁33を開く(S4)。これにより、冷媒回路60の高圧側及び低圧側に残留している気体冷媒がタンク19に回収される。
【0031】
その後、低圧管路7の低圧用圧力センサ13で検出される圧力Pが第2所定圧P2以下になると(S5)、電磁弁32を閉じ(S6)、コンプレッサ12を停止する(S7)。そして、電磁弁34を開き(S8)、真空ポンプ14を作動して(S9)、真空引きが行われる。低圧用圧力センサ13で検出される圧力が第3所定圧P3以下になると(S10)、ほぼ全量の冷媒の回収が終了したと判断して、真空ポンプ14を停止して(S11)、電磁弁31、33、34を閉じて(S12)、回収を終了する。
【0032】
冷媒回収が終了すると、電磁弁35を開き(S13)、オイルセパレータ10内の分離された冷凍機油を、排出パイプ21を通じて冷凍機油受け20に排出し、所定時間T1が経過すると(S14)、電磁弁35を閉じて(S15)、回収再生工程が終了となる。そして、回収再生工程が終了したことなどの案内を出力する(S16)。このように、冷媒処理装置100の回収再生工程では、冷媒回路60から冷媒を抜き取り、冷媒と冷凍機油とを分離して冷媒の洗浄・補充、冷凍機油の交換等を行って冷媒を再生することができる。
【0033】
<洗浄工程>
洗浄流体を用いて冷媒回路60を洗浄する洗浄工程を行うにあたり、本実施形態では、冷媒回路60からコンプレッサ62を切り離し、その切り離された箇所を閉塞しておく。この状態から高圧バルブVHに高圧ホース2をカプラ4によって接続する。また、低圧バルブVLに低圧ホース3をカプラ5によって接続する。
【0034】
洗浄工程を開始すると、閉じられた状態にある電磁弁31~39のうち、電磁弁31、33、34を開き、真空ポンプ14を作動して(S21)、冷媒回路60内を減圧するよう真空引きが行われる(真空引き工程)。冷媒回路60内の減圧に対しては低圧用圧力センサ13で検出される圧力で確認したり、真空引きの時間で調整したりすることができる。本実施形態では、低圧用圧力センサ13で検出される圧力が第4所定圧P4以下になると(S22)、真空ポンプ14を停止して、電磁弁34を閉じて(S23)、冷媒回路60内を減圧した状態とする。
【0035】
次いで、電磁弁31、電磁弁33、電磁弁36(第2バルブ)を開いた状態(その他の電磁弁32などは閉じた状態)とすることで(S24)、真空引きされた冷媒回路60にタンク19から洗浄流体が注入される(洗浄流体充填工程)。冷媒回路60が減圧されているので、洗浄流体は、第1回路中途部70および第2回路中途部72のそれぞれから冷媒回路60に注入される。一カ所ではなく複数箇所(第1回路中途部70および第2回路中途部72)から冷媒回路60へ洗浄流体を注入することで、短時間で洗浄流体を充填することができる。このため、洗浄工程全体が短縮され、洗浄効率を向上することができる。冷媒回路60に注入される洗浄流体の量は、ロードセル22によるタンク19の重量を検出することで算出される。ロードセル23でタンク19内の洗浄流体が規定量だけ減少したことを検出すると、冷媒回路60内に規定量の洗浄流体が充填されたと判断する(S25)。
【0036】
洗浄のために冷媒回路60内が洗浄流体で充填された後、電磁弁36(第2バルブ)を閉じ、電磁弁31、電磁弁32(第1バルブ)および電磁弁33を開き、装置用コンプレッサ12を駆動させる(S26)。装置用コンプレッサ12の駆動によって、冷媒回路60内の洗浄流体はタンク19へ押圧されて回収される。ロードセル23でタンク19内の洗浄流体が規定量だけ増加したことを検出すると、冷媒回路60内の洗浄流体が規定量回収されたと判断する(S27)。ここでは、冷媒回路60に充填されている洗浄流体の一部を、第1回路中途部70および第2回路中途部72のそれぞれから回収する(中間回収工程)。
【0037】
その後、電磁弁32(第1バルブ)を閉じ、電磁弁31、電磁弁33および電磁弁36(第2バルブ)を開いた状態とすることで(S28)、洗浄流体の一部が回収された冷媒回路60にタンク19から洗浄流体が注入される(中間充填工程)。装置用コンプレッサ12によってタンク19の内圧が高められているので、タンク19内の洗浄流体が第1回路中途部70および第2回路中途部72のそれぞれから冷媒回路60に注入される。ロードセル23でタンク19内の洗浄流体が規定量だけ減少したことを検出することで、冷媒回路60内に規定量の洗浄流体が充填されたと判断する(S29)。
【0038】
このように、冷媒回路60内を洗浄流体で充填した後、その一部を回収し、再度冷媒回路60内を洗浄流体で充填することで、冷媒回路60内で洗浄流体を往復動させる。具体的には、冷媒回路60において管路径が小さくなるエキスパンションバルブ66を境に、第1回路中途部70からコンデンサ64を介してエキスパンションバルブ66までに至る管路と、第2回路中途部72からエバポレータ68を介してエキスパンションバルブ66までに至る管路とに冷媒回路60が分かれ、それぞれで洗浄流体が往復動する。
【0039】
これにより、洗浄流体の流れが一方向では除去することができなかった冷媒回路60内で付着している油分や異物に対して、洗浄流体を往復動させることで洗浄除去することができる。特に、エキスパンションバルブ66を境に洗浄流体が往復動するので、他の管路よりも径が小さいエキスパンションバルブ66のノズル穴の詰まりを解消することができる。また、中間回収工程と、中間充填工程とを所定回数繰り返すことで(S30)、洗浄流体を往復動させる回数が増えるので、油分などをより洗浄除去することができる。また、冷媒回路60をエキスパンションバルブ66に対して2つの管路(経路)に分けてそれぞれを同時に洗浄することができる。したがって、冷媒回路60内を洗浄する効率を向上することができる。なお、冷媒回路60内から除去された油分などは前述の回収再生工程と同様に分離することができる。
【0040】
次いで、洗浄のために冷媒回路60に充填されている洗浄流体のすべてを、第1回路中途部70および第2回路中途部72のそれぞれから回収する(洗浄流体回収工程)。具体的には、電磁弁36(第2バルブ)を閉じ、電磁弁31、電磁弁32(第1バルブ)および電磁弁33を開いた状態とし、装置用コンプレッサ12を駆動する(S31)。一カ所ではなく複数箇所(第1回路中途部70および第2回路中途部72)から冷媒回路60の洗浄流体を回収することで、短時間で洗浄流体を充填することができる。このため、洗浄工程全体が短縮され、洗浄効率を向上することができる。
【0041】
その後、装置用コンプレッサ12を停止し、電磁弁31、電磁弁32および電磁弁33を閉じた状態とし(S32)、洗浄工程が終了となる。そして、洗浄工程が終了したことなどの案内を出力する(S33)。なお、本実施形態では、洗浄工程において冷媒回路60からコンプレッサ62を引き離しているため、コンプレッサ62を接続し直して真空引きを行う。
【0042】
<充填工程>
冷媒回路60に冷媒を充填する充填工程を行うにあたり、作業者は、高圧バルブVHに高圧ホース2をカプラ4によって接続する。また、低圧バルブVLに低圧ホース3をカプラ5によって接続する。また、充填工程では、車両エンジンを駆動させて行うこともできるが、冷媒回路60を保護するために、車両エンジンを停止させたまま行うこととする。その際、電磁弁31、電磁弁36を開き、タンク19内の圧力で媒回路60に冷媒をある程度供給(予備充填)しておくことができる。
【0043】
冷媒処理装置100の案内に従って作業者がスタートキー51を入力すると、充填工程が開始される。充填工程が開始すると、閉じられた状態にある電磁弁31~39のうち、電磁弁31および電磁弁36が開き(S41)、タンク19内の冷媒が第2回路中途部72から冷媒回路60に供給される。また、事前に補充管路28の電磁弁38を開いておくことで、オイル缶29の冷凍機油が、冷媒とともに冷媒回路60に注入される。
【0044】
その後、ロードセル23でタンク19内の冷媒が設定した規定冷媒量Cだけ減少したことを検出すると(S42)、冷媒回路60内に規定量Cの冷媒が充填されたと判断する。これにより、充填管路24の電磁弁31、電磁弁36を閉じ、また、補充管路28の電磁弁38を閉じて(S43)、充填工程が終了となる。そして、充填工程が終了したことなどの案内を出力する(S44)。このように、冷媒処理装置100の充填工程では、冷媒回路60に適量の冷媒を充填することができる。
【0045】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0046】
前記実施形態では、冷媒および洗浄流体としてフロン(例えば、ハイドロフルオロカーボン:HFC)を用いた場合について説明した。これに限らず、冷媒や洗浄流体として、例えば、ハイドロフルオロオレフィンを用いることができる。
【0047】
また、前記実施形態では、回収再生工程の後に、洗浄工程を行う場合について説明した。これに限らず、冷媒回路に初めて冷媒を充填する前に洗浄工程を行ってもよい。これにより、エキスパンションバルブなどの組み付け時に付着した異物を除去することができる。
【0048】
また、前記実施形態では、洗浄工程を行うにあたり、冷媒回路のコンプレッサを切り離した場合について説明した。これに限らず、冷媒回路にコンプレッサを連結させたままであってもよい。冷媒回路にコンプレッサを連結させたままであるとコンプレッサは減圧要因となるが、コンプレッサの両方の連結側にある第1回路中途部および第2回路中途部から同時に洗浄流体を注入、回収することで、コンプレッサによる影響を抑制することができるからである。
【0049】
また、前記実施形態では、車両用空調システム(カーエアコンディショナ)に適用される冷媒回路に適用した場合について説明した。これに限らず、例えば冷蔵庫などに適用される冷媒回路にも適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 装置本体、 2 高圧ホース、 3 低圧ホース、 4、5 カプラ、 6 高圧管路、 7 低圧管路、 8 高圧用圧力センサ、 9 エバポレータ、 10 オイルセパレータ、 11 フィルタドライヤ、 12 装置用コンプレッサ、 13 低圧用圧力センサ、 14 真空ポンプ、 15 接続管路、 16 供給管路、 17、18 コンデンサ、 19 タンク、 20 冷凍機油受け、 21 排油パイプ、 22 安全弁、 23 ロードセル、 24 充填管路、 25 循環管路、 26、27 バルブ、 28 補充管路、 29 オイル缶、 30 フロン缶、 31~39 電磁弁、 40~43 逆止弁、 44 制御部、 45 操作パネル、 46 充填量表示部、 47 高圧用圧力表示部、 48 低圧用圧力表示部、 49 コース選択キー、 50 調整キー、 51 スタートキー、 52 一時停止キー、 53 終了キー、 60 冷媒回路、 62 コンプレッサ、 64 コンデンサ、 66 エキスパンションバルブ、 68 エバポレータ、 70 第1回路中途部、 72 第2回路中途部、 74 第1管路、 76 第2管路、 78 第1連結部、 80 第2連結部、 82 第3管路、 100 冷媒処理装置、 U 車両用空調システム、 VH 高圧バルブ、 VL 低圧バルブ