(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】荷電粒子加速器及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
H05H 7/14 20060101AFI20221024BHJP
F16L 19/065 20060101ALI20221024BHJP
F16L 19/07 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
H05H7/14
F16L19/065
F16L19/07
(21)【出願番号】P 2019077344
(22)【出願日】2019-04-15
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寛昌
(72)【発明者】
【氏名】田島 裕二郎
(72)【発明者】
【氏名】金井 芳治
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-057380(JP,A)
【文献】特開平8-050999(JP,A)
【文献】特開平08-326968(JP,A)
【文献】特開2002-130563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0294557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 7/14
F16L 19/065
F16L 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子が通過するダクト部品に挿通する継手部材、環状シール材、リング部材、ナット部材を備え、
前記継手部材は、雄螺子が外周面に刻設され、前記環状シール材に接触する接触面が内周面の末端に形成され、
前記リング部材は、前記継手部材の前記接触面に向かって前記環状シール材を押圧する押圧面が形成され、
前記ナット部材は、前記リング部材に当接する当接面が形成され、前記継手部材の雄螺子と螺合する雌螺子が内周面に刻設されている荷電粒子加速器。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子加速器において、
前記継手部材は、先端側にフランジ板が形成されている荷電粒子加速器。
【請求項3】
請求項1に記載の荷電粒子加速器において、
前記継手部材は、
前記環状シール材に接触する前記接触面が両端に形成され、
前記外周面に刻設された前記雄螺子は、両端に二つの前記ナット部材が螺合する荷電粒子加速器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の荷電粒子加速器において、
前記ダクト部品と前記継手部材とにより形成されるクリアランスと、前記ダクト部品と前記ナット部材とにより形成されるクリアランスとは、前記継手部材に対する前記ダクト部品の傾斜を許容するものである荷電粒子加速器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の荷電粒子加速器において、
前記ダクト部品を通過する前記荷電粒子と相互作用する機器と、
前記機器を床面に対して支持する支持部材と、を備える荷電粒子加速器。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子加速器の施工方法であって、
前記機器に前記ダクト部品を挿通させるステップと、
前記ナット部材、前記リング部材、前記環状シール材、前記継手部材をこの順番で、前記ダクト部品の先端から挿入するステップと、
前記継手部材の前記雄螺子と前記ナット部材の前記雌螺子とを螺合させるステップと、を含む荷電粒子加速器の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、荷電粒子加速器及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加速器は、複数のダクト部品の両端を継手部材で相互接続した真空ダクトにより、荷電粒子の軌道が形成されている。そして、この真空ダクトに沿って偏向電磁石、四極電磁石、スクリーンモニターといった複数の機器が設置され、この真空ダクトの内部空間を運動する荷電粒子の軌道が制御される。そして、従来における加速器の真空ダクトを構成する継手部材は、ダクト部品の両端部に溶接されたフランジ体であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、各種機器を組み込むダクト部品を相互接続するにあたり、次のような工程を経ることが不可避であった。すなわち、工場又は現地で電磁石等の機器を分解し、フランジ付のダクト部品を設置し、再組立後に出荷する工程である。もしくは、現地に電磁石等の機器を設置し、一端のみにフランジを有するダクト部品を機器に挿入後、反対端にフランジ体を溶接する工程である。このため工場及び現地において、加速器の真空ダクトを組み立てる際には、多くの作業を要していた。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、組み立て作業を簡略化することができる荷電粒子加速器及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る荷電粒子加速器は、荷電粒子が通過するダクト部品に挿通する継手部材、環状シール材、リング部材、ナット部材を備え、前記継手部材は雄螺子が外周面に刻設され前記環状シール材に接触する接触面が内周面の末端に形成され、前記リング部材は前記継手部材の前記接触面に向かって前記環状シール材を押圧する押圧面が形成され、前記ナット部材は前記リング部材に当接する当接面が形成され前記継手部材の雄螺子と螺合する雌螺子が内周面に刻設される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、組み立て作業を簡略化することができる荷電粒子加速器及びその施工方法提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る荷電粒子加速器の一部分の分解図。
【
図2】第1実施形態に係る荷電粒子加速器の一部分の組立図。
【
図3】真空ダクト接合部を拡大して示す
図2のA部拡大断面図。
【
図4】(A)(B)(C)第1実施形態に係る荷電粒子加速器の施工方法の説明図。
【
図5】(A)(B)(C)第1実施形態の他の例に係る荷電粒子加速器の施工方法の説明図。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る荷電粒子加速器の一部分の分解図。
【
図7】第2実施形態に係る荷電粒子加速器の一部分の組立図。
【
図8】(A)(B)(C)第2実施形態に係る荷電粒子加速器の施工方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る荷電粒子加速器の一部分の分解図である。このように荷電粒子加速器は、その一部分である真空ダクト接合部10A(10)において、荷電粒子が通過するダクト部品17に挿通する継手部材11A、環状シール材12、リング部材15、ナット部材16を備えている。
【0010】
継手部材11Aは、雄螺子21が外周面に刻設され、環状シール材12に接触する接触面25が内周面22の末端に形成されている。そして第1実施形態における継手部材11Aの先端側にはフランジ板18が形成されている。リング部材15は、継手部材11Aの接触面25に向かって環状シール材12を押圧する押圧面26が形成されている。ナット部材16は、リング部材15に当接する当接面28が形成され、継手部材11Aの雄螺子21と螺合する雌螺子27が内周面に刻設されている。
【0011】
図2は第1実施形態に係る荷電粒子加速器の一部分の組立図である。このようにダクト部品17の末端に設けられた真空ダクト接合部10Aを、二つの対向する継手部材11Aのフランジ板18(
図1)同士で突合せ、ネジ等で締結する。なお、フランジ板18の突合せ面には、内部の密封性を確保するためのガスケットやOリングなどのシール材(図示略)が配置されている。このようにして複数のダクト部品17を繋ぐことにより、運動する荷電粒子の軌道となる真空ダクトが形成される。
【0012】
図3は真空ダクト接合部10(
図2)の破線部分A部の拡大断面図である。このようにダクト部品17と継手部材11との間にはクリアランス31が形成されている。そして、ダクト部品17とナット部材16との間にもクリアランス31が形成されている。そしてこのクリアランス31により、継手部材11に対するダクト部品17の傾斜が許容される。
【0013】
継手部材11の内径は、挿通するダクト部品17の外径よりも寸法余裕を有している。そして、継手部材11の末端に形成された接触面25(
図1)は、リング部材15の外周が係合する程度に内周面22が拡径され、さらに環状シール材12が密着する面はテーパ状に形成されている。そして、リング部材15の内径は挿通するダクト部品17の外径よりも寸法余裕を有し、さらに環状シール材12が密着する端面は、テーパ状に形成されている。さらにリング部材15は、ナット部材16の回転時に連れ回りしない程度に、ナット部材16の当接面28(
図1)に当接する端面が、滑面に形成されている。
【0014】
環状シール材12は、押圧力を受けて弾性変形し、接触面に密着して密閉性を発揮するOリング等が用いられる。継手部材11がナット部材16に螺入することにより、環状シール材12は、継手部材11の末端とリング部材15の端面とダクト部品17の外周面とから押圧力を受ける。弾性変形した環状シール材12は、ダクト部品17の外周面に沿う外気の侵入ルートを密閉し、ダクト部品17内部の真空度を維持する。また、クリアランス31において、ダクト部品17が継手部材11に対し傾斜しても、環状シール材12の弾性変形が追従するので、密閉性が損なわれない。このため施工時の位置ずれ等は、一般にベローズを設置して吸収するが、各実施形態においては、そのようなベローズ無しで吸収することができる。
【0015】
図4(A)(B)(C)は、第1実施形態に係る荷電粒子加速器30Aの施工方法の説明図である。
図4に示されるように荷電粒子加速器30Aは、ダクト部品17を通過する荷電粒子と相互作用する機器35と、この機器35を床面(図示略)に対して支持する支持部材36と、を備えている。なお、通過する荷電粒子と相互作用する機器35としては、偏向電磁石、四極電磁石、スクリーンモニターが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
そして第1実施形態に係る荷電粒子加速器30Aの施工方法は、
図4(A)に示すように、機器35にダクト部品17を挿通させる。そして
図4(B)に示すように、ナット部材16、リング部材15、環状シール材12、継手部材11Aをこの順番で、ダクト部品17の先端から挿入する。さらに、継手部材11Aの雄螺子21(
図1)とナット部材16の雌螺子27(
図1)とを螺合させる。これにより、
図4(C)に示すように真空ダクト接合部10Aの組み立てが終了する。
【0017】
図5(A)(B)(C)は、第1実施形態の他の例に係る荷電粒子加速器30Bの施工方法の説明図である。このように、複数の機器35にダクト部品17を挿通させる場合がある。この荷電粒子加速器30Bの施工方法は、上述した荷電粒子加速器30Bの施工方法に準ずるので説明を省略する。
【0018】
(第2実施形態)
次に
図6から
図8を参照して本発明における第2実施形態について説明する。なお、
図6から
図8において
図1から
図5と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図6は本発明の第2実施形態に係る荷電粒子加速器の一部分の分解図である。
図7は第2実施形態に係る荷電粒子加速器の一部分の組立図である。
【0019】
このように荷電粒子加速器は、その一部分である真空ダクト接合部10B(10)において、荷電粒子が通過するダクト部品17に挿通する継手部材11B、環状シール材12、リング部材15、ナット部材16を備えている。
【0020】
継手部材11Bは、雄螺子21が外周面に刻設され、環状シール材12に接触する接触面25が内周面22の末端に形成されている。そして第2実施形態における継手部材11Bは、環状シール材12に接触する接触面25が両端に形成され、外周面に刻設された雄螺子21は、両端に二つのナット部材16が螺合する。リング部材15は、継手部材11Bの接触面25に向かって環状シール材12を押圧する押圧面26が形成されている。ナット部材16は、リング部材15に当接する当接面28が形成され、継手部材11の雄螺子21と螺合する雌螺子27が内周面に刻設されている。
【0021】
図8(A)(B)(C)は、第2実施形態に係る荷電粒子加速器30Cの施工方法の説明図である。
図8に示されるように荷電粒子加速器30Cは、ダクト部品17を通過する荷電粒子と相互作用する機器35と、この機器35を床面(図示略)に対して支持する支持部材36と、を備えている。
【0022】
そして第2実施形態に係る荷電粒子加速器30Cの施工方法は、
図8(A)に示すように、機器35にダクト部品17を挿通させる。そして
図8(B)に示すように、ナット部材16、リング部材15、環状シール材12、継手部材11Bをこの順番で、ダクト部品17の先端から挿入する。なお継手部材11Bの両端には、対向する二つのダクト部品17が挿入されている。さらに、継手部材11Bの雄螺子21(
図6)とナット部材16の雌螺子27(
図6)とを螺合させる。これにより、
図7および
図8(C)に示すように真空ダクト接合部10Bの組み立てが終了する。
【0023】
このように、各実施形態に係る荷電粒子加速器30の施工方法によれば、ダクト部品17を電磁石等の機器35に挿通させるに当たり、機器35を分解したりフランジの溶接作業を実施したりする必要がなくなる。さらに、施工現場において、機器35を設置した後に、真空タクトを施設することができ、工事の自由度を高めることができる。
【0024】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の荷電粒子加速器によれば、ダクト部品の先端を、継手部材、環状シール材、リング部材、ナット部材で構成することにより、組み立て作業を簡略化することが可能となる。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0026】
10(10A,10B)…真空ダクト接合部、11(11A,11B)…継手部材、12…環状シール材、15…リング部材、16…ナット部材、17…ダクト部品、18…フランジ板、21…雄螺子、22…継手部材の内周面、25…継手部材の接触面、26…リング部材の押圧面、27…雌螺子、28…ナット部材の当接面、30(30A,30B,30C)…荷電粒子加速器、31…クリアランス、35…機器、36…支持部材。