(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】アライメント装置、レンズアライメントシステム
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20221024BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20221024BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20221024BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20221024BHJP
G12B 5/00 20060101ALI20221024BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G03B21/14 D
G03B21/00 D
G02B7/00 B
G02B7/02 C
G12B5/00 T
F16H25/20 A
(21)【出願番号】P 2019132721
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】廣田 淳
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-302703(JP,A)
【文献】特開2005-062434(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126426(WO,A1)
【文献】特開2006-091464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0070695(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0004676(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00 - 21/64
G12B 5/00
F16H 25/20
G02B 7/00
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーステーブルと、
前記ベーステーブルに取り付けられた複数の直動装置と、
前記複数の直動装置に支持されたアライメントテーブルと、を備え、
前記複数の直動装置のそれぞれは、
前記ベーステーブル及び前記アライメントテーブルの一方に固定されたナットと、
前記ナットを、前記ベーステーブル及び前記アライメントテーブルの他方に対して近接離反する方向に移動させるねじ軸と、を備え、
前記ねじ軸の外径をM、前記ねじ軸の相互間距離をL、前記ベーステーブルに対する前記アライメントテーブルの傾きをθ、前記ねじ軸に対する前記ナットのスラスト方向のかかり長さをN、前記ナットと前記ねじ軸とのラジアル方向の隙間量をTrとしたときに、
Tr>(M+L)(1-cosθ)+Nsinθ
の関係を満足する、ことを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
さらに、前記ねじ軸に対する前記ナットのラジアル方向の引っかかり高さをH1、前記ねじ軸のねじ山角度をΦとしたときに、
Tr>(M+L)(1-cosθ)+Nsinθ+H1sinθ/tanΦ
の関係を満足する、ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項3】
前記Lは、前記ねじ軸が3本以上ある場合、それら相互間距離のうち最も長い距離とされている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のアライメント装置。
【請求項4】
前記直動装置は、前記ねじ軸を回転させるモータを備える電動アクチュエータである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のアライメント装置。
【請求項5】
前記ベーステーブルに対して近接あるいは離間する方向に前記アライメントテーブルを付勢する付勢部材を有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のアライメント装置。
【請求項6】
光を投射するレンズの煽り角、及び、該レンズのフォーカスの少なくともいずれか一方を調整する請求項1~5のいずれか一項に記載のアライメント装置と、
前記アライメント装置を支持し、該アライメント装置を、少なくとも前記光の光軸方向と直交する2軸直交方向に移動させるレンズシフト装置と、を備える、ことを特徴とするレンズアライメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライメント装置、レンズアライメントシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載されたアライメント装置は、傾斜調整機構を備えている(特許文献1の第10図及び第11図参照)。この傾斜調整機構は、スライドベース(ベーステーブル)と、光学係を搭載したコモンベース(アライメントテーブル)と、の間に介在する第1~4の調整ねじを備え、これら第1~4の調整ねじを可動させることで、スライドベースに対してコモンベースの傾きを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スライドベースに対してコモンベースの傾きを調整するためには、上記調整ねじのナットとねじ軸との間に、ある程度の隙間が必要となる。しかしながら、目標とする傾きに応じて必要な隙間量は変化するため、適切なナットとねじ軸の選定が困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、目標とするアライメントテーブルの傾きに対し、適切なナットとねじ軸の隙間量を備えるアライメント装置、レンズアライメントシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、ベーステーブルと、前記ベーステーブルに取り付けられた複数の直動装置と、前記複数の直動装置に支持されたアライメントテーブルと、を備え、前記複数の直動装置のそれぞれは、前記ベーステーブル及び前記アライメントテーブルの一方に固定されたナットと、前記ナットを、前記ベーステーブル及び前記アライメントテーブルの他方に対して近接離反する方向に移動させるねじ軸と、を備え、前記ねじ軸の外径をM、前記ねじ軸の相互間距離をL、前記ベーステーブルに対する前記アライメントテーブルの傾きをθ、前記ねじ軸に対する前記ナットのスラスト方向のかかり長さをN、前記ナットと前記ねじ軸とのラジアル方向の隙間量をTrとしたときに、
Tr>(M+L)(1-cosθ)+Nsinθ
の関係を満足する、アライメント装置を採用する。
【0007】
また、本発明は、光を投射するレンズの煽り角、及び、該レンズのフォーカスの少なくともいずれか一方を調整する先に記載のアライメント装置と、前記アライメント装置を支持し、該アライメント装置を、少なくとも前記光の光軸方向と直交する2軸直交方向に移動させるレンズシフト装置と、を備える、レンズアライメントシステムを採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目標とするアライメントテーブルの傾きに対し、適切なナットとねじ軸の隙間量を備えるアライメント装置、レンズアライメントシステムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態における電動アライメント装置の構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における電動アライメント装置のモデル図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における直動装置のモデル図である。
【
図4】本発明の第1実施形態におけるナットとねじ軸のスラスト方向の隙間量の変化を、ラジアル方向の隙間量に換算するための参考図である。
【
図5】本発明の第2実施形態におけるレンズアライメントシステムの正面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態におけるレンズアライメントシステムの右側面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態におけるリニアガイドの構成図である。
【
図8】本発明の第2実施形態における電動アクチュエータの斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態における電動アクチュエータの平面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態における電動アクチュエータの分解斜視図である。
【
図11】本発明の第2実施形態における電動アクチュエータの断面構成図である。
【
図12】本発明の第2実施形態におけるナットとねじ軸の噛み合い部の拡大図である。
【
図13】本発明の第2実施形態における適切なナットとねじ軸との隙間量の設定の仕方を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために、例を挙げて説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における電動アライメント装置2の構成図である。
電動アライメント装置2(アライメント装置)は、ベーステーブル80と、ベーステーブル80に取り付けられた複数の直動装置93と、複数の直動装置93に支持されたアライメントテーブル100と、を備える。本実施形態の直動装置93は、モータ91を備える電動アクチュエータである。なお、直動装置93は、モータ91を備えなくてもよい。つまり、手動のアライメント装置であっても構わない。
【0012】
ベーステーブル80は、水平面に沿って延びる板状に形成されている。アライメントテーブル100は、ベーステーブル80の上方に配置され、ベーステーブル80と平行に、水平面に沿って延びる板状に形成されている。直動装置93は、ベーステーブル80とアライメントテーブル100との間に介在し、アライメントテーブル100をベーステーブル80に対して近接離反する方向(
図1では鉛直方向)に移動させる。
【0013】
直動装置93は、アライメントテーブル100に固定されたナット95と、当該ナット95をベーステーブル80に対して近接離反する方向に移動させるねじ軸94と、を備える。ナット95は、アライメントテーブル100に形成された貫通孔101に挿入され、図示しないボルトなどによって、アライメントテーブル100に対し固定されている。ナット95は、ねじ軸94の上側に螺合しており、ねじ軸94の下側は図示しない減速機などを介してモータ91と接続されている。
【0014】
上記構成の直動装置93によれば、モータ91によってねじ軸94を軸回りに回転させると、アライメントテーブル100に固定されたナット95が、軸方向にねじ送りされる。これにより、ベーステーブル80に対して近接離反する方向(鉛直方向)に、アライメントテーブル100が移動する。ねじ軸94とナット95との間には、ベーステーブル80に対してアライメントテーブル100を傾かせるための隙間(後述)が形成されており、それぞれの直動装置93におけるナット95の送り量を異ならせることで、アライメントテーブル100を水平面に対して傾かせることができる。
【0015】
なお、アライメントテーブル100とベーステーブル80との間には、付勢部材151が配置されている。本実施形態の付勢部材151は、引張ばねであり、ベーステーブル80に対して近接する方向にアライメントテーブル100を付勢する。これにより、付勢部材151は、上述したねじ軸94とナット95との隙間によるアライメントテーブル100のガタツキを抑制する。
【0016】
続いて、上記構成の電動アライメント装置2において、目標とするアライメントテーブル100の傾きに対して必要なナット95とねじ軸94の隙間量について説明する。
【0017】
図2は、本発明の第1実施形態における電動アライメント装置2のモデル図である。
上述したように、電動アライメント装置2は、ナット95とねじ軸94を備え、ナット95のねじ送りを可能としているが、ここでは、円筒形状で簡略化したモデルにおいて、ナット95とねじ軸94のラジアル方向の隙間量を導出する。
なお、
図2に示す円筒モデルよりも、ねじモデルの方がより多くの隙間が必要になるが、隙間量の下限としては、以下説明する式で規定できる。
【0018】
電動アライメント装置2は、
図2に示すように、一方のナット95が支点Fとなり、他方のナット95が変位することにより、アライメントテーブル100の傾きθを発生させる。アライメントテーブル100が傾くと、支点Fとなっていないナット95側でα分、支点Fとなっているナット95側でβ分の変位が発生し、ナット95とねじ軸94のラジアル方向の隙間量(Tr)が減る。なお、Trとは、ナット95とねじ軸94のラジアル方向の総隙間量である。
【0019】
ここで、ねじ軸94の外径をM、ねじ軸94の相互間距離(中心軸間距離)をL、ベーステーブル80に対するアライメントテーブル100の傾きをθ、ねじ軸94に対するナット95のスラスト方向のかかり長さをN、支点Fとなっていないナット95のラジアル方向の変位量をαとすると、αは、下式(1)で計算できる。
α=(M+L)-(M+L)cosθ
=(M+L)(1-cosθ)…(1)
【0020】
また、支点Fとなっているナット95のラジアル方向の変位量をβとすると、βは、下式(2)で計算できる。
β=Nsinθ…(2)
【0021】
上式(1)及び上式(2)で計算したαとβを足した値が、アライメントテーブル100の傾きθに対し、最低限必要なナット95とねじ軸94のラジアル方向の隙間量Trとなる。つまり、Trは、下式(3)で計算できる。
Tr=α+β
=(M+L)(1-cosθ)+Nsinθ…(3)
【0022】
上記Trは、ナット95とねじ軸94のラジアル方向の隙間量の下限値であるので、実際(実機)の隙間量Trは、下式(4)を満足するとよい。これにより、目標とするアライメントテーブル100の傾きθに対し、適切なナット95とねじ軸94を選定できる。
Tr>(M+L)(1-cosθ)+Nsinθ…(4)
【0023】
なお、上式(4)に、ナット95とねじ軸94のスラスト方向の隙間量をラジアル方向の隙間量に換算して加えると、より適切なナット95とねじ軸94を選定できる。
【0024】
図3は、本発明の第1実施形態における直動装置93のモデル図である。
図4は、本発明の第1実施形態におけるナット95とねじ軸94のスラスト方向の隙間量の変化を、ラジアル方向の隙間量に換算するための参考図である。
上述したように、アライメントテーブル100に傾きθが発生すると、
図3に示すように、ナット95にも傾きθが発生する。
【0025】
ここで、ナット95の傾き(ベーステーブル80に対するアライメントテーブル100の傾き)をθ、ねじ軸94に対するナット95のラジアル方向の引っかかり高さをH1、ナット95の傾きθに対して必要なナット95とねじ軸94のスラスト方向の隙間量をTsとすると、Tsは、下式(5)で計算できる。
Ts=H1sinθ…(5)
【0026】
図4に示すように、例えば、ナット95(めねじ)とねじ軸94(おねじ)が並目ねじである場合、ラジアル方向の引っかかり高さH1は、並目ねじのJIS規格から導出することができる。なお、同図のPは、ピッチである。また、Hは、ねじ山の高さである。また、D、D2、D1は、めねじの谷の径、有効径、内径である。また、d、d2、d1は、おねじの外径、有効径、谷の径である。
【0027】
また、ナット95とねじ軸94が
図4に示すような並目ねじである場合、ねじ山角度は30degである。このようなねじ山角度をΦ、上述したナット95とねじ軸94のスラスト方向の隙間量をTs、Tsをラジアル方向の隙間量に換算した隙間量をTrsとすると、下式(6)が成り立つ。
tanΦ=Ts/Trs…(6)
【0028】
つまり、Trsは、下式(7)で計算できる。
Trs=Ts/tanΦ
=H1sinθ/tanΦ…(7)
【0029】
上式(7)を、上式(3)に加算し、ナット95とねじ軸94の隙間量を、ラジアル方向の隙間量で統一すると、ラジアル方向の総隙間量Trgは、下式(8)で計算できる。
Trg=(M+L)(1-cosθ)+Nsinθ+H1sinθ/tanΦ…(8)
【0030】
上記Trgは、ナット95とねじ軸94のラジアル方向の総隙間量の下限値であるので、実際(実機)の隙間量Trは、下式(9)を満足するとよい。これにより、目標とするアライメントテーブル100の傾きθに対し、ラジアル方向だけでなくスラスト方向の隙間量も加味した適切なナット95とねじ軸94を選定できる。
Tr>(M+L)(1-cosθ)+Nsinθ+H1sinθ/tanΦ…(9)
【0031】
なお、アライメントテーブル100の傾きθが小さいときは、ナット95とねじ軸94のラジアル方向の隙間量の方が、スラスト方向の隙間量よりも大きい。例えば、θ<1degのときは、ラジアル方向の隙間量の方が10倍程大きく、ラジアル方向の隙間量の方がスラスト方向の隙間量よりも支配的である。したがって、上式(4)を用いて、適切なナット95とねじ軸94を選定しても構わない。
【0032】
このように、上述した本実施形態によれば、ベーステーブル80と、ベーステーブル80に取り付けられた複数の直動装置93と、複数の直動装置93に支持されたアライメントテーブル100と、を備え、複数の直動装置93のそれぞれは、ベーステーブル80及びアライメントテーブル100の一方に固定されたナット95と、ナット95を、ベーステーブル80及びアライメントテーブル100の他方に対して近接離反する方向に移動させるねじ軸94と、を備え、ねじ軸94の外径をM、ねじ軸94の相互間距離をL、ベーステーブル80に対するアライメントテーブル100の傾きをθ、ねじ軸94に対するナット95のスラスト方向のかかり長さをN、ナット95とねじ軸94とのラジアル方向の隙間量をTrとしたときに、上式(4)の関係を満足する、電動アライメント装置2を採用することによって、目標とするアライメントテーブル100の傾きθに対し、適切なナット95とねじ軸94を選定できる。
【0033】
また、本実施形態では、さらに、ねじ軸94に対するナット95のラジアル方向の引っかかり高さをH1、ねじ軸94のねじ山角度をΦとしたときに、上式(9)の関係を満足することによって、ラジアル方向の隙間量にスラスト方向の隙間量を加味し、より適切なナット95とねじ軸94を選定できる。
【0034】
また、本実施形態では、
図1に示すように、直動装置93は、ねじ軸94を回転させるモータ91を備える電動アクチュエータであるため、アライメント作業を電動化し、簡単にアライメント作業をすることが可能となる。これにより、このアライメント作業にねじ回しなどの熟練性を要求されずに済む。
【0035】
また、本実施形態では、ベーステーブル80に対して近接する方向にアライメントテーブル100を付勢する付勢部材151を有するため、ナット95とねじ軸94との間に設定した隙間量による、アライメントテーブル100のガタツキを防止することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、以下説明するレンズアライメントシステムに、上述の電動アライメント装置を適用した形態を例示する。なお、以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0037】
図5は、本発明の第2実施形態におけるレンズアライメントシステム1の正面図である。
図6は、本発明の第2実施形態におけるレンズアライメントシステム1の右側面図である。
これらの図に示すように、レンズアライメントシステム1は、光を投射するレンズ200が取り付けられる電動アライメント装置2と、該電動アライメント装置2を、少なくとも光の光軸方向と直交する2軸直交方向に移動させる電動レンズシフト装置3(レンズシフト装置)と、を備える。
【0038】
なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。Y軸方向は光軸方向(レンズアライメントシステム1の前後方向)であり、X軸方向は光軸方向と直交する光軸直交方向(レンズアライメントシステム1の左右方向)であり、Z軸方向はX,Y軸方向と直交する第2の光軸直交方向(レンズアライメントシステム1の上下方向)である。
【0039】
電動レンズシフト装置3は、
図6に示すように、プロジェクタなどの図示しない取付対象物に固定される固定側支持部材10と、固定側支持部材10の前方に配置された中間部材20と、固定側支持部材10に対して中間部材20をX軸方向に案内する第1レンズ案内部30と、中間部材20に対して電動レンズシフト装置3のベーステーブル80をZ軸方向に案内する第2レンズ案内部40と、第1レンズ案内部30、第2レンズ案内部40を介して、固定側支持部材10、中間部材20及びベーステーブル80を相対的に移動させる駆動部50と、を有する。
【0040】
固定側支持部材10は、X-Z平面に沿って延びる板状に形成されている。
図5に示すように、固定側支持部材10の略中央部には、Y軸方向においてレンズ200が挿通して配置される挿通孔10aが形成されている。また、固定側支持部材10の下端部には、上方に向かって凹状に窪んだ窪み10bが形成されている。窪み10bの左右両側には、
図6に示すように、固定側支持部材10の前方に延びる接地部11が設けられている。接地部11の上面と固定側支持部材10の前面は、側面視略台形の板状のリブ12によって接続されている。
【0041】
中間部材20は、固定側支持部材10と平行に、X-Z平面に沿って延びる板状に形成されている。
図5に示すように、中間部材20の略中央部には、Y軸方向においてレンズ200が挿通して配置される挿通孔20aが形成されている。中間部材20の挿通孔20aより上側には、左右方向に延びる長孔20bが形成されている。長孔20bは、例えば、中間部材20を把持するときなどに使用される。
【0042】
第1レンズ案内部30及び第2レンズ案内部40は、
図6に示すように、軌道レール61(軌道体)及びスライダブロック62(移動体)を具備するリニアガイド60を備える。第1レンズ案内部30は、固定側支持部材10の前面における挿通孔10aの周囲4箇所に、1本の軌道レール61に1台のスライダブロック62が組み付けられたX軸方向のリニアガイド60を備える。また、第2レンズ案内部40は、中間部材20の前面における挿通孔20aの左右両側の2箇所に、1本の軌道レール61に2台のスライダブロック62が組み付けられたY軸方向のリニアガイド60を備える。
【0043】
図7は、本発明の第2実施形態におけるリニアガイド60の構成図である。
リニアガイド60は、長手方向に沿って転動体転走溝63が設けられた軌道レール61と、転動体転走溝63に対向する負荷転動体転走溝64が設けられたスライダブロック62と、転動体転走溝63と負荷転動体転走溝64との間に配置された複数のボール65(転動体)と、を備える。
【0044】
軌道レール61は、断面視略矩形状の長尺部材である。軌道レール61の幅方向(
図7において紙面左右方向)の外側面61bには、軌道レール61の長手方向(
図7において紙面垂直方向)に沿って転動体転走溝63が形成されている。転動体転走溝63は、外側面61bに対して略円弧状に窪んでいる。この転動体転走溝63は、軌道レール61の左右に一対で形成されている。
【0045】
軌道レール61には、対象物(固定側支持部材10、中間部材20)に固定されるための固定孔66(軌道体固定孔)が形成されている。固定孔66は、軌道レール61の厚み方向(
図7において紙面上下方向)に貫通して形成されている。固定孔66には、軌道レール61を固定するボルト(不図示)を、軌道レール61の上面61aよりも低い位置に位置させる座ぐり66aが形成されている。
【0046】
スライダブロック62は、ブロック本体67と、ブロック本体67に取り付けられた蓋体68と、を備える。ブロック本体67は、軌道レール61を収容するレール収容溝69を有する。レール収容溝69は、ブロック本体67の下面に開口している。ブロック本体67の上面である取付面67aには、対象物(中間部材20、ベーステーブル80)を固定するための固定孔70(移動体固定孔)が形成されている。固定孔70は、ブロック本体67の厚み方向に所定の深さで形成されている。固定孔70は、ネジ孔であり、上記対象物を固定するボルト(不図示)が螺合する。
【0047】
レール収容溝69には、軌道レール61の転動体転走溝63に対向する負荷転動体転走溝64が形成されている。負荷転動体転走溝64は、レール収容溝69の内側面に対して円弧状に窪んでいる。この負荷転動体転走溝64は、軌道レール61を挟むように、スライダブロック62の左右に一対で形成されている。負荷転動体転走溝64は、軌道レール61の転動体転走溝63と対向し、負荷をかけた状態でボール65を転動させる負荷転動体転走路C1を形成する。
【0048】
また、ブロック本体67には、無負荷転動体転走路C2が形成されている。無負荷転動体転走路C2は、ブロック本体67を長手方向に貫通して形成されている。無負荷転動体転走路C2の内径は、ボール65のボール径よりも大きく、ボール65に負荷をかけないようになっている。この無負荷転動体転走路C2は、負荷転動体転走溝64(負荷転動体転走路C1)に対応して、スライダブロック62の左右に一対で形成されている。
【0049】
蓋体68は、ブロック本体67の長手方向の両端面に取り付けられている。蓋体68は、ブロック本体67と同様に、軌道レール61を収容するレール収容溝71を有する。蓋体68には、ブロック本体67の両端面と対向する対向面に、転動体方向転換路C3が形成されている。一対の転動体方向転換路C3は、負荷転動体転走路C1と無負荷転動体転走路C2の両端をそれぞれ連結し、ボール65の無限循環路Cを形成する。
【0050】
無限循環路Cは、軌道レール61の長手方向に延びる一対の直線状部分(負荷転動体転走路C1及び無負荷転動体転走路C2)と、この一対の直線状部分の端部同士を連結する一対の半円弧曲線状部分(転動体方向転換路C3)とから構成される。本実施形態では、軌道レール61の幅方向において間隔をあけ、軌道レール61の長手方向に沿って平行に延在するように2条の無限循環路Cが形成される。なお、リニアガイド60は、左右に2条ずつ、計4条の無限循環路Cが形成されるものを使用してもよい。また、リニアガイド60として、無限循環路Cが形成されない有限ストローク型リニアガイドを使用してもよい。この有限ストローク型リニアガイドは、転動体転走溝63と負荷転動体転走溝64との間にケージ(転動体保持部材)が配置され、当該ケージに設けられたボールホルダでボール65を回転自在に保持するものである。
【0051】
ボール65は、軌道レール61とスライダブロック62との間に介在して、軌道レール61に対するスライダブロック62の移動を円滑に行わせるものである。本実施形態のボール65は、無限循環路Cの内部にほぼ隙間無く配設されて、無限循環路Cを循環する。
【0052】
図6に戻り、駆動部50は、固定側支持部材10に取り付けられた第1レンズ案内部30を介して、中間部材20をX軸方向に移動させる第1駆動部50Aを有する。第1駆動部50Aは、固定側支持部材10の背面に固定されたモータ51と、モータ51と接続され、X軸方向に延びるねじ軸52と、ねじ軸52に螺合するナット53と、固定側支持部材10の下端部の窪み10b(
図5参照)を通って前方に延び、ナット53と中間部材20とを接続する接続部材54と、を有する。モータ51によってねじ軸52がX軸回りに回転すると、ナット53がX軸方向にねじ送りされ、接続部材54を介してナット53と接続された中間部材20が、固定側支持部材10に対してX軸方向に移動する。
【0053】
また、
図5に示すように、駆動部50は、中間部材20に取り付けられた第2レンズ案内部40を介して、ベーステーブル80をZ軸方向に移動させる第2駆動部50Bを有する。第2駆動部50Bは、中間部材20の前面の左側端部に固定されたモータ51と、モータ51と接続され、Z軸方向に延びるねじ軸52と、ねじ軸52に螺合するナット53と、ナット53とベーステーブル80とを接続する接続部材54と、を有する。モータ51によってねじ軸52がZ軸回りに回転すると、ナット53がZ軸方向にねじ送りされ、接続部材54を介してナット53と接続されたベーステーブル80が、中間部材20に対してZ軸方向に移動する。
【0054】
次に、電動アライメント装置2の構成について説明する。電動アライメント装置2は、
図6に示すように、中間部材20の前方に配置され、第2レンズ案内部40によってZ軸方向に移動可能なベーステーブル80と、ベーステーブル80に取り付けられた複数の電動アクチュエータ90と、複数の電動アクチュエータ90に支持されたアライメントテーブル100と、を備える。
【0055】
ベーステーブル80は、中間部材20と平行に、X-Z平面に沿って延びる板状に形成されている。
図5に示すように、ベーステーブル80の略中央部には、Y軸方向においてレンズ200が挿通して配置される挿通孔80aが形成されている。ベーステーブル80の挿通孔80aより上側には、左右方向に延びる長孔80bが形成されている。長孔80bは、例えば、ベーステーブル80を把持するときなどに使用される。
【0056】
アライメントテーブル100は、ベーステーブル80の前方に配置されると共に、中間部材20と平行に、X-Z平面に沿って延びる板状に形成されている。
図5に示すように、ベーステーブル80の略中央部には、レンズ200が取り付けられる取付孔100aが形成されている。レンズ200は、例えば、投射レンズ等を収容するレンズ鏡筒であり、取付孔100aに設けられた図示しない嵌合部や取付孔100aの周囲に配置されたボルト(不図示)等によってアライメントテーブル100に固定される。
【0057】
なお、ベーステーブル80の挿通孔80aは、アライメントテーブル100の取付孔100aよりも一回り大きい。また、中間部材20の挿通孔20aは、ベーステーブル80の挿通孔80aをZ軸方向に拡張した長孔形状を有する。また、固定側支持部材10の挿通孔10aは、ベーステーブル80の挿通孔80aをさらにX軸方向に拡張した矩形状を有する。これにより、取付孔100aに取り付けられたレンズ200がX-Z平面上で移動したときの、各挿通孔10a、20a、80aへの衝突が防止される。
【0058】
複数の電動アクチュエータ90は、
図5に示すように、矩形板状のアライメントテーブル100の4隅を支持している。本実施形態の電動アクチュエータ90は、取付孔100aを挟み、且つ、取付孔100aの中心(光軸201が通る位置)において直交した対角線202、203上に、それぞれ配置されている。これら電動アクチュエータ90のそれぞれは、ベーステーブル80に対して近接離反する方向(Y軸方向)にアライメントテーブル100を駆動する直動装置93を有している。
【0059】
図8は、本発明の第2実施形態における電動アクチュエータ90の斜視図である。
図9は、本発明の第2実施形態における電動アクチュエータ90の平面図である。
図10は、本発明の第2実施形態における電動アクチュエータ90の分解斜視図である。
図11は、本発明の第2実施形態における電動アクチュエータ90の断面構成図である。
これらの図に示すように、電動アクチュエータ90は、モータ91と、減速機92と、直動装置93と、を備える。
【0060】
図10に示すように、モータ91の回転軸91aは、減速機92のウォームシャフト110と接続される。ウォームシャフト110は、減速機92のギアボックス111に形成された第1収容部111Aに収容されている。第1収容部111Aは、ウォームシャフト110のスラスト方向に沿って、長手方向が延びる矩形箱状に形成されている。第1収容部111Aには、長手方向に貫通して、ウォームシャフト110を収容する収容孔111A1が形成されている。
【0061】
ウォームシャフト110の両端部は、軸受112によって軸支される。軸受112は、第1収容部111Aの長手方向の両端面に、ボルト114を介して取り付けられる蓋体113に支持される。第1収容部111Aの短手方向の一方の側壁部には、第1収容部111Aに収容されたウォームシャフト110を露出させる窪み111A2が形成されている。窪み111A2は、
図9に示す平面視で円弧状に形成されている。
【0062】
ギアボックス111は、窪み111A2が形成された第1収容部111Aの短手方向一方側に、半円柱状に形成された第2収容部111Bを有する。第2収容部111Bは、
図10に示すように、第1収容部111Aの下面に連設されると共に、第1収容部111Aの短手方向一方側に突出している。第2収容部111Bには、軸受117を介して、直動装置93のねじ軸94が支持されている。ねじ軸94には、
図11に示すように、ウォームシャフト110と噛み合うウォームホイール115が取り付けられている。
【0063】
第2収容部111Bには、軸受117を収容する収容溝111B1が形成されている。
収容溝111B1は、環状に形成され、軸受117の外輪119を支持している。軸受117は、外輪119に形成されたV字形状のローラ転走部と、内輪118に形成されたV字形状のローラ転走部と、内輪118及び外輪119のローラ転走部を転走する複数の円筒状のローラ120(転動体)と、を備える。複数のローラ120は、回転軸が交互に直交するように配列されている。この軸受117は、所謂クロスローラベアリングであって、一つの軸受117でラジアル荷重、アキシャル荷重及びモーメント荷重などの種々の方向の荷重を受けることができる。
【0064】
収容溝111B1に支持された外輪119は、
図10に示すように、一対の軸受カバー121を介して第2収容部111Bに固定されている。第2収容部111Bの収容溝11B1の周囲には、周方向に間隔をあけて複数の貫通孔111B2が形成されている。貫通孔111B2には、第2収容部111Bの下面側からボルト123が挿通される。ボルト123の先端には、ナット124が螺合する。ボルト123、ナット124により、軸受カバー121が第2収容部111Bに締結固定される。なお、ボルト123のいくつか(例えば、
図11において点線で示す)は、ベーステーブル80を共締めしており、これにより、ギアボックス111がベーステーブル80に締結固定されている。
【0065】
軸受117の内輪118は、
図11に示すように、ねじ軸94の下端部に固定されている。ねじ軸94の下端部には、ラジアル方向外側に拡径した環状のフランジ94bが形成されている。フランジ94bは、内輪118とスラスト方向(軸方向)で当接している。また、内輪118は、ウォームホイール115とスラスト方向で当接している。ねじ軸94には、フランジ94bとの間で、内輪118及びウォームホイール115をスラスト方向で挟み込む固定ナット116が螺合している。つまり、内輪118は、ウォームホイール115と共に、スラスト方向においてフランジ94bと固定ナット116との間に挟み込まれている。
【0066】
ねじ軸94の下端面には、可変抵抗器130を取り付けるための取付孔94cが形成されている。可変抵抗器130は、ねじ軸94の回転角度ないし回転数を検出するものである。可変抵抗器130は、抵抗器本体131と、抵抗器本体131に対して回転可能に設けられたつまみ132と、を有する。つまみ132は、円柱状に形成され、ねじ軸94の取付孔94cに挿入されている。抵抗器本体131は、取付プレート140を介して第2収容部111Bの下面に固定されている。
【0067】
図10に示すように、抵抗器本体131には、つまみ132の根本付近を支持する円筒部を有し、該円筒部には雄ねじ131aが形成されている。取付プレート140は、雄ねじ131aに螺合した固定ナット141によって、抵抗器本体131に挟持されている。取付プレート140の両端は、ボルト142によってギアボックス111(収容部111Bの下面)に固定されている。
【0068】
図11に示すように、ウォームホイール115は、固定ナット116側に、固定ナット116を収容する環状溝115aを有する。また、ウォームホイール115は、内輪118側に向かって延びる円筒部115bを有する。円筒部115bは、内輪118に当接している。円筒部115bは、止めねじ125によってねじ軸94に固定されている。つまり、止めねじ125は、ねじ軸94に対するウォームホイール115の相対回転を規制している。
【0069】
また、可変抵抗器130のつまみ132は、止めねじ126によってねじ軸94に固定されている。つまり、止めねじ126は、ねじ軸94に対するつまみ132の相対回転を規制している。ねじ軸94の上端面には、マイナス溝のすり割り94aが形成されている。ねじ軸94のすり割り94aは、つまみ132に形成されたマイナス溝のすり割り132aと同位相である。つまり、つまみ132は、すり割り94a、132aの位相を合わせた状態で、ねじ軸94に固定されている。これにより、すり割り94aの角度からねじ軸94の内部に挿入されたすり割り132aの角度、つまり、つまみ132の回転角度を認識することができる。
【0070】
ねじ軸94の固定ナット116よりも上側には、ナット95が螺合している。ナット95は、
図10に示すように、円筒部95aと、鍔部95bと、を有する。円筒部95aは、
図11に示すように、アライメントテーブル100に形成された貫通孔101に挿入されている。円筒部95aの内側には、
図8に示すように、ねじ軸94が配置され、すり割り94aなどを確認することができる。
【0071】
鍔部95bは、円筒部95aから半円板状に拡張された部分であり、
図11に示すように、アライメントテーブル100の背面側に当接する。鍔部95bには、位置決めピン96が挿入される位置決め孔95b2が複数形成されている(
図10参照)。位置決めピン96は、
図11に示すように、アライメントテーブル100に形成された嵌合孔102に嵌合しており、アライメントテーブル100とナット95を、ねじ軸94のスラスト方向と交差した平面方向(具体的にはX-Z平面方向)において位置決めする。なお、位置決めピン96は、鍔部95b側に取り付けられていてもよい。
【0072】
また、鍔部95bには、ボルト128が螺合する複数のねじ孔95b1(
図10参照)が形成されている。
図11に示すボルト128は、アライメントテーブル100の正面側からねじ孔95b1に螺合し、アライメントテーブル100を鍔部95bに固定している。
図9に示すように、円筒部95aを挟んで鍔部95bと反対側には、切欠部95cが形成されている。切欠部95cは、ギアボックス111の第1収容部111Aとの干渉をさけるために形成されたものであり、第1収容部111Aの短手方向一方側の側壁部及び窪み111A2と相似形状を有している。切欠部95cにより、ナット95は、第1収容部111Aと重複するスラスト方向位置まで移動することができる。これにより、電動アクチュエータ90のスラスト方向の寸法を小さくでき、
図6に示す、ベーステーブル80とアライメントテーブル100との隙間に電動アクチュエータ90(具体的は、第2収容部111B及び直動装置93)を配置することが可能となる。
【0073】
上記構成の電動アクチュエータ90によれば、モータ91によってウォームシャフト110が回転すると、
図11に示すように、ウォームシャフト110に噛み合うウォームホイール115が回転する。ウォームホイール115が回転すると、ウォームホイール115に固定されたねじ軸94が軸回りに回転し、アライメントテーブル100に固定されたナット95が、スラスト方向にねじ送りされる。このねじ軸94のスラスト方向を、
図5に示す光軸方向(Y軸方向)に設定することにより、ベーステーブル80に対してアライメントテーブル100を近接離反する方向(Y軸方向)に移動させることができる。
【0074】
図12は、本発明の第2実施形態におけるナット95とねじ軸94の噛み合い部の拡大図である。
図12に示すように、ナット95とねじ軸94との間には、ベーステーブル80に対してアライメントテーブル100をX-Z平面に対して傾かせるための煽り角調整部として、ラジアル方向の隙間である上述したTrと、スラスト方向の隙間量である上述したTsとが形成されている。なお、Trは、Tsをラジアル方向の隙間量に変換したTrsを加算したTrgよりも大きいとよい。
【0075】
図13は、本発明の第2実施形態における適切なナット95とねじ軸94との隙間量の設定の仕方を説明する説明図である。
図13に示すように、第2実施形態では、4本のねじ軸94(直動装置93)を有するため、上述した式(4)ないし式(9)のねじ軸94の相互間距離のLは、それら相互間距離のうち最も長い距離Lmaxとするとよい。つまり、L=Lmaxとした上式(4)ないし上式(9)の関係を満たすラジアル方向の隙間量を、それぞれの直動装置93が有しているとよい。これにより、アライメントテーブル100を傾けた際に、一番寸法が厳しくなる直動装置93のナット95とねじ軸94の隙間量を基準に、それぞれの直動装置93の隙間量が設定されるので、安全サイドでアライメント調整を行うことができる。
【0076】
図11に戻り、アライメントテーブル100の背面側には、ベーステーブル80に対して離反する方向にアライメントテーブル100を付勢する付勢部材151が配置されている。付勢部材151は、圧縮したコイルバネからなり、ボルト150の周囲に配置されている。ボルト150は、アライメントテーブル100の正面側から挿入孔103に挿入され、ベーステーブル80に螺合している。付勢部材151は、上述したねじ軸94とナット95とのガタによるアライメントテーブル100のガタツキを抑制することができる。
【0077】
挿入孔103には、孔部103aと、座ぐり103bが形成されている。孔部103aとボルト150との間、座ぐり103bとボルト150との間には、ラジアル方向に隙間が形成されている。この隙間は、上述したねじ軸94とナット95との隙間よりも大きく、ねじ軸94とナット95との隙間を利用したベーステーブル80に対するアライメントテーブル100の傾きを許容している。すなわち、ボルト150は、アライメントテーブル100を固定するものではなく、付勢部材151の付勢によるアライメントテーブル100の抜け止めとして機能している。
【0078】
続いて、上記構成の電動アクチュエータ90を用いた、電動アライメント装置2のアライメント動作(アライメント作業)について説明する。
【0079】
図5に示すように、電動アライメント装置2は、アライメントテーブル100を支持する複数の電動アクチュエータ90を備えている。この電動アライメント装置2によれば、例えば、アライメントテーブル100の取付孔100aを挟んで上下に配置された電動アクチュエータ90を駆動させることで、レンズ200のX軸回りの煽り角を調整することができる。また、電動アライメント装置2は、アライメントテーブル100の取付孔100aを挟んで左右に配置された電動アクチュエータ90を駆動させることで、レンズ200のZ軸回りの煽り角を調整することができる。
【0080】
さらに、電動アライメント装置2は、取付孔100aの対角線202上に配置された電動アクチュエータ90を駆動させることで、対角線202と直交する、レンズ200の対角線203回りの煽り角を調整することもできる。また、電動アライメント装置2は、取付孔100aの対角線203上に配置された電動アクチュエータ90を駆動させることで、対角線203と直交する、レンズ200の対角線202回りの煽り角を調整することもできる。
【0081】
加えて、電動アライメント装置2は、アライメントテーブル100の取付孔100aの周囲4箇所に配置された全ての電動アクチュエータ90を同期して駆動させ、ベーステーブル80に対しアライメントテーブル100を近接離反させることで、レンズ200のフォーカスを調整することができる。
【0082】
このように、上述した本実施形態によれば、ベーステーブル80と、ベーステーブル80に取り付けられた複数の電動アクチュエータ90と、複数の電動アクチュエータ90に支持されたアライメントテーブル100と、を備え、複数の電動アクチュエータ90のそれぞれは、ベーステーブル80に対して近接離反する方向にアライメントテーブル100を駆動する直動装置93を有する、という構成を採用することによって、従来、手動で行っていたレンズ200のアライメント作業を電動アクチュエータ90によって電動化すると共に、高精度の直動装置93の送りによって、高精度のアライメント作業を容易に行うことができる。例えば、作業者は、スクリーンに投影された画像を見ながら、リモコン操作などで簡単にアライメント作業をすることが可能となる。これにより、このアライメント作業にねじ回しなどの熟練性を要求されずに済み、また、プロジェクタなどに組み込まれた後であってもアライメント作業を行うことができるようになる。
【0083】
また、本実施形態では、直動装置93は、
図11に示すように、アライメントテーブル100に固定されたナット95と、ナット95を、ベーステーブル80に対して近接離反するスラスト方向に駆動するねじ軸94と、を有する。この構成によれば、ねじ軸94によるナット95のねじ送りによって、ベーステーブル80に対してアライメントテーブル100を高精度で移動させることができる。
【0084】
また、本実施形態では、
図12に示すように、ねじ軸94とナット95との間には、ベーステーブル80に対してアライメントテーブル100を傾かせるための煽り角調整部として、ラジアル方向の隙間量Trが設定されている。このTrを算出する変数の1つのねじ軸94の相互間距離Lは、本実施形態のように、ねじ軸94が4本ある場合、それら相互間距離のうち最も長い距離Lmaxとするとよい。この構成によれば、安全サイドでナット95とねじ軸94のラジアル方向の隙間量を設定できるので、レンズ200のあらゆる煽り角に適した調整が可能となる。なお、ねじ軸94が3本、5本以上ある場合でも同様に、Lはそれら相互間距離のうち最も長い距離Lmaxとするとよい。
【0085】
また、本実施形態では、
図11に示すように、ベーステーブル80に対して離反する方向にアライメントテーブル100を付勢する付勢部材151を有する。この構成によれば、ねじ軸94とナット95との間に設定した隙間による、アライメントテーブル100のガタツキを防止することができる。
【0086】
また、本実施形態では、アライメントテーブル100とナット95を、スラスト方向と交差した平面方向(ラジアル方向)において位置決めする位置決めピン96を有する。この構成によれば、ナット95をアライメントテーブル100に固定する際の、平面方向の位置ずれを防止できる。このため、ナット95の平面方向の位置ずれによる、ねじ軸94とナット95との間に設定したラジアル方向の隙間量であるTrの消費を防止できる。つまり、ナット95の位置ずれを、隙間量のTrで吸収せずに済むため、アライメントテーブル100を適切に傾かせることができる。
【0087】
また、本実施形態のレンズアライメントシステム1は、光を投射するレンズ200の煽り角、及び、該レンズ200のフォーカスの少なくともいずれか一方を調整する電動アライメント装置2と、電動アライメント装置2を支持し、該電動アライメント装置2を、少なくとも光の光軸方向と直交する2軸直交方向に移動させる電動レンズシフト装置3と、を備える。この構成によれば、レンズアライメントの自動化が可能になる。例えば、プロジェクタに内臓のカメラでスクリーンに投影された投影画像を撮影し、電動アライメント装置2の煽り調整を自動化すると共に、電動レンズシフト装置3のレンズシフトと組み合わせることにより、プロジェクタの設置作業を自動化することができる。
【0088】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0089】
例えば、上記実施形態では、電動アクチュエータ90が4個設けられる形態について説明したが、電動アクチュエータ90は3個(つまり、ねじ軸94が3本)以上あればよい。なお、電動アクチュエータ90が2個であっても、一方向の煽り角の調整(例えば、水平方向の煽り角の調整のみ)は可能である。
【0090】
また、例えば、上記実施形態では、直動装置93として、ねじ軸94によってナット95をねじ送りする形態について説明したが、直動装置93はこの形態に限定されない。例えば、直動装置93は、転動体が介在するボールねじなどであってもよい。また、電動アクチュエータ90は、回転モータを駆動源とする構成のみならず、リニアモータを駆動源とする構成であってもよいし、圧電素子(ピエゾ素子)などの他の電力を力に変換する素子を駆動源としてもよい。
【0091】
また、例えば、上記実施形態では、電動レンズシフト装置3が光軸方向と直交する2軸直交方向に電動アライメント装置2を移動させる形態について説明したが、Y軸方向のリニアガイド60を追加し、電動レンズシフト装置3が光軸方向を含む3軸直交方向に電動アライメント装置2を移動させる形態であってもよい。また、電動レンズシフト装置3から駆動部を取り外し、手動のレンズシフト装置としても構わない。
【0092】
また、例えば、上記実施形態では、直動装置93が、アライメントテーブル100(一方)に固定したナット95を、ベーステーブル80(他方)に対して近接離反させる形態について説明したが、ナット95をベーステーブル80に固定し、そのナット95をアライメントテーブル100に対して近接離反させる形態であってもよい。また、この場合、ナット95を位置決めする位置決めピン96は、ベーステーブル80側に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…レンズアライメントシステム、2…電動アライメント装置(アライメント装置)、3…電動レンズシフト装置(レンズシフト装置)、80…ベーステーブル、90…電動アクチュエータ、91…モータ、93…直動装置、94…ねじ軸、95…ナット、100…アライメントテーブル