(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】ヒト補体因子C2に結合する結合分子、及び、その使用。
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20221024BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20221024BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221024BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221024BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221024BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221024BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221024BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221024BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221024BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20221024BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20221024BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20221024BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221024BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221024BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221024BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221024BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221024BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221024BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221024BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P7/00
A61P7/06
A61P9/10
A61P9/10 103
A61P13/12
A61P17/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P29/00 101
A61P31/04
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2019148550
(22)【出願日】2019-08-13
(62)【分割の表示】P 2016515304の分割
【原出願日】2014-05-22
【審査請求日】2019-09-10
(32)【優先日】2013-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515325597
【氏名又は名称】ブロテイオ ファーマ ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】Broteio Pharma B.V.
【住所又は居所原語表記】Yalelaan 46, 3584 CM Utrecht, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ハック,コルネリス エリック
(72)【発明者】
【氏名】イルディス,カフェル
(72)【発明者】
【氏名】ブーン,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ,ペトリュス ヨハネス
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/189378(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0026928(US,A1)
【文献】RICKLIN, D. and LAMBRIS, J.D.,Nat. Biotechnol.,2007年,Vol.25, No.11,pp.1265-1275
【文献】XU, Y. and VOLANAKIS, J.E.,J. Immunol.,1997年,Vol.158, No.12,pp.5958-5965
【文献】OGLESBY, T.J. et al.,J. Immunol.,1988年,Vol.141, No.2,pp.926-931
【文献】WAGNER, E. and FRANK, M.M.,Nat. Rev. Drug Discov.,2010年,Vol.9,pp.43-56
【文献】PARRA-MEDINA, R. et al.,Autoimmunity: From Bench to Bedside,2013年07月18日,Chapter 4, pp.57-75
【文献】TROUTBECK, R. et al.,Clin. Experiment. Ophthalmol.,2012年,Vol.40,pp.18-26
【文献】広辞苑,第5版,1998年,第1441頁項目「すなわち」(3)
【文献】EMLEN, W. et al.,Semin. Thromb. Hemost.,2010年,Vol.36, No.6,pp.660-668
【文献】VAN DE WALLE, I. et al.,J. Allergy Clin. Immunol.,2021年,Vol.147,pp.1420-1429, 1429.e1-1429.e7
【文献】RICKLIN, D. and LAMBRIS, J.D.,Nat. Biotechnol.,2007年,Vol.25, No.11,pp.1265-1275
【文献】XU, Y. and VOLANAKIS, J.E.,J. Immunol.,1997年,Vol.158, No.12,pp.5958-5965
【文献】OGLESBY, T.J. et al.,J. Immunol.,1988年,Vol.141, No.2,pp.926-931
【文献】NAGASAWA, S. and STROUD, R.M.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1977年,Vol.74, No.7,pp.2998-3001
【文献】KRISHNAN, V. et al.,Acta. Cryst. D,2009年,Vol.65, No.3,pp.266-274
【文献】OGLESBY, T.J. et al.,Fed. Proc.,1987年,Vol.46, No.3,p.1023
【文献】OGLESBY, T.J. et al.,J. Immunol. Methods,1988年,Vol.110,pp.55-62
【文献】STENBAEK, E.I. et al.,Mol. Immunol.,1986年,Vol.23, No.8,pp.879-886
【文献】HEINZ, H.-P. and LOOS, M.,Complement Inflamm.,1989年,Vol.6,pp.166-174
【文献】ANDERSON C M; SIM E,A MONOCLONAL ANTIBODY AGAINST HUMAN COMPLEMENT COMPONENT C2,BIOCHEMICAL SOCIETY TRANSACTIONS,英国,PORTLAND PRESS LTD,1987年01月01日,V15 N4,P660-661
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む
、ヒト補体因子C2に結合する結合分子であって、該免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域が、
(a) それぞれ配列番号2および配列番号3または、それぞれ配列番号2および配列番号96のアミノ酸配列を含む;または、
(b) それぞれ配列番号103および配列番号99;それぞれ配列番号104および配列番号99;それぞれ配列番号105および配列番号99;それぞれ配列番号106および配列番号99;それぞれ配列番号103および配列番号100;それぞれ配列番号104および配列番号100;それぞれ配列番号105および配列番号100;それぞれ配列番号106および配列番号100;それぞれ配列番号103および配列番号101;それぞれ配列番号104および配列番号101;それぞれ配列番号105および配列番号101;それぞれ配列番号106および配列番号101;それぞれ配列番号103および配列番号102;それぞれ配列番号104および配列番号102;それぞれ配列番号105および配列番号102;または、それぞれ配列番号106および配列番号102のアミノ酸配列を含む;
または、
(c) (a)および/または(b)で特定され
たアミノ酸配列を含むが、
該アミノ酸配列の一方または両方が1~5個のアミノ酸置換を含み、かつ該1~5個のアミノ
酸置換はCDR領域にはなく、
該結合分子がヒト補体因子C2のC2bドメインに結合するものであ
り、20nM以下のC2との親和性を有している、前記結合分子。
【請求項2】
Fab断片、
F(ab')2断片、単鎖Fv(scFv)断片、
または抗体である、請求項1に記載の結合分子。
【請求項3】
前記抗体が、ヒト化または脱免疫化された、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体などの、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM抗体である、請求項2に記載の結合分子。
【請求項4】
(a) 配列番号53および配列番号54のアミノ酸配列を含む;または、
(b) 配列番号115および配列番号119;配列番号115および配列番号120;配列番号115および配列番号121;配列番号115および配列番号122;配列番号116および配列番号119;配列番号116および配列番号120;配列番号116および配列番号121;配列番号116および配列番号122;配列番号117および配列番号119;配列番号117および配列番号120;配列番号117および配列番号121;配列番号117および配列番号122;配列番号118および配列番号119;配列番号118および配列番号120;配列番号118および配列番号121;または、配列番号118および配列番号122のアミノ酸配列を含む;または、
(c) (a)および/または(b)で特定され
たアミノ酸配列を含むが、
該アミノ酸配列の一方または両方が1~5個のアミノ酸置換を含み、かつ該1~5個のアミノ
酸置換はCDR領域にはない、
請求項3に記載の結合分子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の結合分子をコードする核酸分子。
【請求項6】
配列番号42、配列番号43、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113または配列番号114の核酸配列を含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の核酸分子を含む遺伝子送達ビヒクルまたはベクター。
【請求項8】
請求項5もしくは6に記載の核酸分子または請求項7に記載の遺伝子送達ビヒクルもしくはベクターを含む、単離細胞、組換え細胞、またはインビトロの細胞培養細胞。
【請求項9】
治療に用いるための請求項1~4のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項10】
炎症性疾患、神経疾患または虚血-再灌流(I/R)傷害を患う又は患う危険がある個体の治療に使用するための請求項1~4のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項11】
前記個体が、抗体媒介性炎症、急性心筋梗塞等の虚血再灌流障害、脳卒中、敗血症、関節リウマチなどの免疫複合体疾患、全身性エリテマトーデス、血管炎、多発外傷、多巣性運動ニューロパチー、腎臓同種移植の抗体媒介性拒絶、(自己)免疫溶血性貧血、心肺バイパスおよび他の血管手術、特発性膜性腎症、または、グッドパスチャー症候群を患っている、請求項10に記載の結合分子。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に記載の結合分子を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学/生化学の分野に関する。本発明は、補体系の古典的経路及びレクチン経路の活性化を阻害するための手段及び方法と、ヒトの状態の治療におけるその使用方法に関する。本発明は、補体因子の阻害剤及びその使用に関する。本発明は、特に、ヒト補体因子C2に結合する結合分子、及び、抗体媒介性の炎症性疾患や虚血状態における虚血再灌流傷害(I/R)などの補体活性化の媒介している疾患または障害の治療又は予防における、結合分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
補体系は、血液中を循環するタンパク質を含む。補体因子は、不活性な前駆体タンパク質として循環する。系の活性化は、1因子が、補体タンパク質の特定のタンパク質分解によってその後の1因子が活性化されるという、活性化のカスケードに結びつく。補体系は、いわゆる血漿カスケードシステムに属している。補体系は、侵入微生物に対する宿主防御に関与するものの一つである。
【0003】
補体系の活性化は、古典的経路、レクチン経路、および代替経路という3つの経路を介して生じさせることができる。各経路は、中心的なコンポーネント、C3または第三補体因子、を活性化し、これは、膜侵襲複合体の形成をもたらす端末経路の活性化をもたらす(Muller-Eberhard, Annu Rev Biochem 1988, 57:321)。補体活性化の間に、アナフィラトキシンC3aおよびC5aのようないくつかの炎症性ペプチドが、膜侵襲複合体のC5b-9と同様、生成される。これらの活性化産物は、白血球の走化性、食細胞、肥満細胞および好塩基球の脱顆粒、平滑筋収縮、血管透過性の増加および細胞の溶解など、多面的な生物学的効果を誘発する(Hugli, Complement 1986, 3 :111)。補体活性化産物はまた、特に食細胞による、毒性の酸素ラジカルの生成と、アラキドン酸代謝産物とサイトカイン類の合成および放出を誘導し、炎症性反応をさらに増幅する。
【0004】
補体は、病原体に対する重要な防御ラインではあるが、その活性化は、本来ならば健康である宿主細胞に対しても、損傷を与え得る。敗血症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスおよび血管炎などの免疫複合体疾患、多発外傷、多巣性運動ニューロパチーのようないくつかの神経学的疾患、心筋梗塞などの虚血-再灌流(I/R)傷害などの、多くの炎症性疾患において、補体媒介性組織損傷が役割を果たしている。これら疾患状態における補体活性化の病原的役割は、その活性化産物の上述した生物学的効果の1またはそれ以上の結果である。補体活性化を阻害することは、それ故に、これら疾患状態に有益である。
【0005】
補体の活性化は、カスケードのいくつかのレベルでの活性化を制御する天然阻害剤によって阻害することができる。これらの阻害剤は、C1阻害剤、これは、古典的経路およびレクチン経路の活性化の初期段階を阻害し、H因子およびC4結合タンパク質、これはそれぞれC3-およびC4-転換を解離してI因子の補因子として機能して、C4bおよびC3bを分解し、調節膜タンパク質CR1、DAFおよびMCP、これはH因子と同様の機能を発揮し、ならびに血漿タンパク質のビトロネクチンとクラステリンと膜タンパク質CD59、これはMACを阻害する、を含む(Sahu et al., Immunol Res 1998, 17:109 ; Campbell et al., Annu Rev Immunol 1988,6:161)。
【0006】
補体活性化の阻害は、魅力的な治療選択肢である。実際に、いくつかの内因性の可溶性補体阻害剤(C1阻害剤;可溶性補体受容体1またはsCR1)は、組換えタンパク質として産生され、臨床試験において評価されている。また、例えば、C5のようなカスケード反応の重要なタンパク質を阻害する抗体の投与についても評価が行われている(Thomas et al., Mol Immunol 1996, 33:1389)。そのような抗体として、抗C5抗体であるSoliris(登録商標)またはエクリズマブがある。この抗体は、現在、発作性夜間血色素尿症および非定型溶血性尿毒症症候群の治療に使用するために承認されている。
【0007】
補体の役割は、侵入微生物に対する食作用を促進することである。したがって、炎症性疾患における補体の阻害は、感染症のリスクを増大させるという固有の欠点を有する。レクチン経路および補体活性化の代替経路は共に、直接微生物によって活性化することができるが、他方、古典的経路は、このような微生物の抗原に結合するIgGまたはIgM抗体によって活性化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ヒト補体因子C2に結合する結合分子を提供する。実施の形態の1つにおいて、結合分子は、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、
(a)それぞれ配列番号2および配列番号3;それぞれ配列番号2および配列番号96;それぞれ配列番号10および配列番号11;それぞれ配列番号18および配列番号19;それぞれ配列番号26および配列番号27;それぞれ配列番号97および配列番号27;それぞれ配列番号34および配列番号35;または、それぞれ配列番号98および配列番号35、のアミノ酸配列を含む;または、
(b)それぞれ配列番号99および配列番号103;それぞれ配列番号99および配列番号104;それぞれ配列番号99および配列番号105;それぞれ配列番号99および配列番号106;それぞれ配列番号100および配列番号103;それぞれ配列番号100および配列番号104;それぞれ配列番号100および配列番号105;それぞれ配列番号100および配列番号106;それぞれ配列番号101および配列番号103;それぞれ配列番号101および配列番号104;それぞれ配列番号101および配列番号105;それぞれ配列番号101および配列番号106;それぞれ配列番号102および配列番号103;それぞれ配列番号102および配列番号104;それぞれ配列番号102および配列番号105;または、それぞれ配列番号102および配列番号106、のアミノ酸配列を含む;または、
(a)および/または(b)の下で指定されたアミノ酸配列を含むが、その配列の1つまたは両方の配列が、1~5アミノ酸置換されている。
【0009】
Oglesbyらは、C2特異的な抗体を記載した(J Immunol 1988, 2: 926)。抗体は、脱グリコシル化および変性C2によるマウスの免疫化において同定された。野生型のグリコシル化C2を用いた免疫化では、適切なC2特異的な抗体を得ることは出来なかった。C2特異的抗体は、US2001/0026928公報に記載されている。そこで開発された抗体は、C2のサブコンポーネントC2aを指向している。抗体によって認識されるエピトープに関するさらなる詳細は、そこに開示されていない。
【0010】
本発明の結合分子は、C2上に結合されたエピトープが異なる。本発明に先立って、C2に、さらなる不活性化エピトープがあったことは知られていなかった。
【0011】
本発明の結合分子は、補体活性化を阻害し、様々な疾患の治療に使用することができる。本発明は、補体活性化によって媒介される疾患の予防または治療のための方法を提供し、この方法は、本発明の結合分子を、それを必要とする個体に投与することを含む。本発明はさらに、古典的経路および/またはレクチン経路を介する補体活性化によって媒介される疾患または障害の、予防または治療に使用するための本発明の結合分子を提供する。
【0012】
そのような疾患の例は、炎症性疾患、神経疾患または虚血-再灌流(I/R)傷害である。本発明の文脈において好ましい神経疾患は、神経炎症性疾患である。本発明の結合分子は完全には補体を阻害しない。微生物から無傷のまま身を守るために、補体系のキャパシティの少なくとも一部を残す。本発明の結合分子は、少なくとも補体活性化の代替経路は基本的にそのまま残す。本発明の結合分子のこの特徴は、一般的には、本発明の補体阻害剤の治療的適用、特に抗体に基づく補体阻害剤を大きく改善する。本発明の治療の好ましい例としては、腎臓同種移植片の抗体媒介性拒絶、特発性膜性腎症、免疫溶血性貧血、免疫複合体疾患、例えば、虚血-再灌流傷害などの虚血再灌流症状がある。本発明の結合分子は、体内の補体系の活性の影響を制限するのに有効である一方、微生物の感染および/または増殖に対する感受性による副作用の危険性を低減するので、様々な治療的介入の使用のための魅力的なオプションとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施の形態の1つでは、本発明の結合分子は、C2aドメインのエピトープに結合する。本発明のC2a結合分子は、C2を阻害するのに有効である。この結合分子は、それらが完全にはC1sによる切断を阻害しないという事実にもかかわらず、驚くほど効果的である。本発明のC2a結合分子は、C2bとC4bの結合はそのままの状態で残す。にもかかわらず、C2活性は、本発明のC2a結合分子により有意に抑制されている。
【0014】
実施の形態の1つでは、本発明の結合分子は、C2bドメインのエピトープに結合する。このような結合分子は、C1sによる切断を完全に阻害しないという事実にもかかわらず有効である。本発明のC2b結合分子は、C2aとC4bの結合はそのままの状態で残す。にもかかわらず、C2活性は、本発明のC2b結合分子により有意に抑制されている。
【0015】
好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、C2aのドメイン上に部分的に存在し、かつC2bのドメイン上に部分的に存在するエピトープに結合する。本発明の結合分子は、個々のC2aドメインとC2bのドメインに検出可能に結合する。本発明のこのようなC2a/C2b結合分子は、それが完全にはC1sによる切断を阻害しないという事実にもかかわらず、驚くほど効果的である。にもかかわらず、C2活性は、本発明のC2a/C2b結合分子によって著しく阻害される。
【0016】
本発明の結合分子は、好ましくは、Fab断片、単鎖Fv(scFv)断片、または抗体もしくはその抗体の抗原結合断片である。
【0017】
本明細書で使用する場合、「重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む結合分子」という用語は、抗体およびその抗原結合断片が包含されるが、これらに限定されない。好適な断片は、Fab断片、scFv断片などである。
【0018】
本発明の結合分子は、ヒトC2に結合する。好ましいヒトC2のアミノ酸配列は、配列番号1に示されている。結合分子は、好ましくは、ヒトC2に特異的に結合する。これは、天然のヒトサンプル中において、好ましくはヒト血漿のサンプルにおいて、血漿中の他のヒトタンパク質と比較した場合、ヒトC2に対して、結合分子は95%以上、好ましくは99%で結合することを意味しており、また、20nM以下のC2との親和性を有している。
【0019】
C2の活性化は、より小さな断片へのタンパク質分解性切断を伴う。これらの断片は、通常、C2aとC2bの断片と呼ばれている。本発明で使用される用語では、C2a断片は大きな70 kDaの断片である。C2a断片はC3-転換酵素C4bC2aを形成するためC4bと複合体を形成する。この複合体は、通常、表面に結合される。小さい約30kDaのN末端C2bの断片が流体相へ放出される。
【発明の効果】
【0020】
「C2活性」または同様の表現は、ここに、補体活性化カスケードにおけるC2タンパク質の役割を指すものとする。C2タンパク質は、酵素前駆体から、C1sによるタンパク分解的切断によって活性化される活性セリンプロテアーゼへと切り替わるとき、「活性」となる。活性C2は補因子のC4bと結合して、C3を活性化することができ、また、補因子のC4bおよび補因子のC3bと結合して、C5を活性化することができる。
【0021】
「C2阻害」または同様の表現の用語は、本明細書においては、補体活性化カスケードにおけるC2阻害の役割を指すものとして用いられる。C2タンパク質は、C2活性化シグナル(すなわち、C1s)がその環境に存在する場合に、補体を活性化するカスケードにおいてC2タンパク質としての役割を果たしていない場合に、「阻害されている」とされる。
【0022】
「抗体」の表現は、モノクローナルおよびポリクローナル抗体を指すものとする。抗体は、動物の血液から調製され得る。現在、抗体は、細胞中の核酸によって抗体を発現させている細胞によって調製されることがより一般的となっている。様々な細胞および細胞株が利用可能である。ハイブリドーマ細胞株が、マウスモノクローナル抗体の産生のために一般的には用いられていた。組換えDNA手法の出現によって、細胞株を使用することが最近では一般的なこととなった。好ましい細胞株は、PER.C6細胞株、CHO細胞株及びNSO細胞株である。抗体は、一価抗体、四価または他の多価抗体であり得る。主として、抗体は、上記のC2抗原結合部位を含む一価抗体である。
【0023】
実施の形態の1つにおいて、本発明の抗体は、多重特異性抗体である。プロトタイプの多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、2つ以上の異なる抗原結合部位を含む。このような多重特異性抗体においては、抗原結合部位のうちの少なくとも1つが、本発明の結合分子によって提供される。少なくとも1つの他の抗原結合部位は、C2上の異なるエピトープに向けられた抗原結合部位、もしくは好ましくは、別の分子上のエピトープに向けられた抗原結合部位である。他の抗原結合部位は、好ましくは抗体可変領域である。本発明の二重特異性抗体は、本発明の結合分子と、C2上の異なるエピトープまたは別の分子上のエピトープに特異的な、少なくとも1つの他の抗体可変領域(重鎖及び軽鎖)とを含む。
【0024】
抗原結合断片(Fab断片)は、抗原に結合する抗体の断片である。それは、重鎖及び軽鎖とも1個の定常および1個の可変ドメインから構成されている。これらのドメインは、抗原結合部位を形作る。2つの可変ドメインは、それらドメイン特異的抗原上のエピトープに結合する。Fab断片は、実験室で作製することができる。様々な酵素が、抗体から断片を切断するために、現在利用することができる。本発明において、Fab断片という用語は、1つの可変ドメインのFab断片に関する。2つの可変ドメインを含むF(ab')2断片も、抗原に結合する抗体の断片である。Fab断片という用語は、抗体を分割した時の断片、および、同様の断片であるが、1またはそれ以上のコード領域などから直接的に作製され、細胞によって発現されるものを示すために用いられる。
【0025】
本明細書で使用する「単鎖Fv」という用語は、scFvとも呼ばれ、結合抗体の(重鎖及び軽鎖の両方の)結合ドメインから単離され、そして結合機能の保存を可能にする連結部分を補うよう調製された、改変抗体を指すものとして用いられる。この形態は、実質的に、抗原を結合するために必要な超可変領域の部分だけを有する、徹底的に省略された抗体である。単鎖抗体の定量と構築については、例えば、Ladnerらによる米国特許第4,946,778号に記載されている。
【0026】
「K
D
」(M)は、本明細書においては、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指すものとして用いられる。
【0027】
配列番号2及び配列番号3としてそれぞれ特定される重鎖及び軽鎖可変領域は、5F2.4抗体の重鎖および軽鎖可変領域である。配列番号10及び配列番号11としてそれぞれ特定される重鎖及び軽鎖可変領域は、抗体13の重鎖および軽鎖可変領域である。配列番号18及び配列番号19としてそれぞれ特定される重鎖及び軽鎖可変領域は、抗体32の重鎖および軽鎖可変領域である。配列番号26及び配列番号27としてそれぞれ特定される重鎖及び軽鎖可変領域は、抗体35の重鎖および軽鎖可変領域である。配列番号34及び配列番号35としてそれぞれ特定される重鎖及び軽鎖可変領域は、抗体60の重鎖および軽鎖可変領域である。配列番号96に特定される軽鎖可変領域は、抗体5F2.4の軽鎖可変領域におけるコンセンサスマウスアミノ酸配列である。配列番号97に特定される重鎖可変領域は、抗体35の重鎖可変領域におけるコンセンサスマウスアミノ酸配列である。配列番号98に特定される重鎖可変領域は、抗体60の重鎖可変領域におけるコンセンサスマウスアミノ酸配列である。配列番号99-102は、5F2.4のヒト化軽鎖可変領域VL1-4のアミノ酸配列である。配列番号103-106は、5F2.4のヒト化重鎖可変領域VH1-4のアミノ酸配列である。配列番号107-110は、ヒト化VL1-VL4を含む5F2.4のヒト化κ軽鎖をコードするcDNA配列である。配列番号111-114は、ヒト化VH1-VH4を含む5F2.4のヒト化IgG4鎖をコードするcDNA配列である。配列番号115-118は、ヒト化VL1-VL4を含む5F2.4のヒト化κ軽鎖をコードするアミノ酸配列である。配列番号119-122は、ヒト化VH1-VH4を含む5F2.4のヒト化IgG4鎖をコードするアミノ酸配列である。
【0028】
本発明の結合分子の免疫グロブリン軽鎖または重鎖可変領域は、1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号2; 3; 10; 11; 18; 19; 26; 27; 34; 35; 96-106および115-122を有することができる。そのような置換された重鎖可変領域、置換された軽鎖可変領域またはその両方を有する本発明の結合分子は、同種の、必ずしも同程度ではない、C2抗原結合特性を有する。結合分子は、元となった結合分子と同じエピトープに結合する。1-5個のアミノ酸置換は、結合分子の脱免疫化バージョンを生成するために、特に許容される。ヒト被験者で使用するための脱免疫化は、重鎖の最大5箇所、軽鎖の最大5箇所またはその両方を改変することによって、一般的には達成することができる。ネズミ可変領域の脱免疫化は、常にヒトにおける免疫応答の誘導を確率的に減少させるような結合分子を生みだすという、確立された技術である。この結果を得るために必要とされるアミノ酸置換の数は、各鎖において一般的には5未満である。配列を変更しないものと比べたとき、ヒトにおける免疫反応の誘導が確率的に減少している本発明の結合分子を得るためには、多くの場合、各鎖における1,2または3アミノ酸の置換で十分である。
【0029】
好ましい実施の形態において、本発明の抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。本明細書においては、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むものとして用いられる。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基、例えばインビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入された変異を含んでいても構わない。
【0030】
本明細書で使用する「ヒト化抗体」という用語は、免疫グロブリンまたは操作された抗体構築物のフレームワーク領域の少なくとも一部がヒト免疫グロブリン配列に由来することを意味する。任意の方法が、抗体または抗体構築物をヒト化することが明らかで、例えば、可変ドメインリサーフェシング(Roguska et al., Proc Natl Acad Sci U S A 1994, 91: 969)またはCDR移植または再形成(Hurle et al., Curr Opin Biotechnol 1994, 5: 428)を使用することができる。ヒト化抗体は、他のヒト抗体フレームワークとの関連において、好ましくは、抗体5F2.4、13、32、35又は60のCDR領域を含む。従って、本発明はまた、配列番号4-6のCDR1-3配列を有するヒト重鎖可変領域および配列番号7-9のCDR1-3配列を有するヒト軽鎖可変領域を含むヒト抗体を提供する。移植されたCDR配列は、もちろん適切に配置され、すなわち、配列番号4の重鎖可変領域のCDR1領域は、移植プロセスに使用されるヒト抗体の重鎖可変領域のCDR1領域と置き換えられる。配列番号5のCDR2領域は、ヒト抗体の重鎖可変領域のCDR2領域などと置き換えられる。本発明はまた、配列番号12-14のCDR1-3配列のヒト重鎖可変領域と、配列番号15-17のCDR1-3配列のヒト軽鎖可変領域とを含むヒト抗体を提供する。CDR領域は、再び適切に配置される。本発明はまた、配列番号20-22のCDR1-3配列のヒト重鎖可変領域と配列番号23-25のCDR1-3配列のヒト軽鎖可変領域とを含むヒト抗体を提供する。CDR領域は、再び適切に配置される。本発明はまた、配列番号28-30のCDR1-3配列のヒト重鎖可変領域と配列番号31-33のCDR1-3配列のヒト軽鎖可変領域とを含むヒト抗体を提供する。CDR領域は、再び適切に配置される。本発明はまた、配列番号36-38のCDR1-3配列のヒト重鎖可変領域と配列番号39-41のCDR1-3配列のヒト軽鎖可変領域とを含むヒト抗体を提供する。CDR領域は、再び適切に配置される。
【0031】
好ましい実施の形態において、抗体5F2.4のCDRを有するヒト抗体におけるヒト化軽鎖可変領域は、任意に1から5個のアミノ酸置換を有する、配列番号99, 100, 101または102の配列からなる。好ましい実施の形態において、抗体5F2.4のCDRを有するヒト抗体におけるヒト化重鎖可変領域は、任意に1から5個のアミノ酸置換を有する、配列番号103, 104, 105または106の配列からなる。前記のアミノ酸置換は、あったとしても、CDR領域内のものではない。
【0032】
好ましい実施の形態において、抗体5F2.4のCDRを有するヒト抗体におけるヒト化軽鎖は、任意に1から5個のアミノ酸置換を有する、配列番号115, 116, 117または118のヒト化κ軽鎖配列からなる。前記のアミノ酸置換は、あったとしても、CDR領域内のものではない。好ましい実施の形態において、抗体5F2.4のCDRを有するヒト抗体におけるヒト化IgG4鎖は、任意に1から5個のアミノ酸置換を有する、配列番号119, 120, 121または122のヒト化IgG4鎖配列からなる。前記のアミノ酸置換は、あったとしても、CDR領域内のものではない。
【0033】
本明細書で使用する「キメラ型抗体」という用語は、(例えば、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ラマまたはラクダの可変ドメインなどの)ある種の可変ドメインを含み、それは脱免疫化され、ヒト化されまたは非ヒトのままであり、および、(例えば、非ヒト霊長類またはヒトの定常ドメインのような)別の種の定常ドメインを有するものとすることができる改変抗体構築物を指す(Hurle et al., Curr Opin Biotechnol 1994, 5: 428を参照のこと)。キメラ型抗体または抗体構築物を作製するために、当該分野で公知の任意の方法が使用することができることは、明らかである。
【0034】
本明細書で使用する「脱免疫化された」または「脱免疫化」という用語は、本発明の結合分子におけるT細胞エピトープを同定し、その後の除去することを指す。一般的に、必ずしもこれは、本発明の抗体の可変領域では行われない。さらによく、しかし常にそうされる必要はないが、これはフレームワーク領域内ひいてはCDR領域外で行われる。T細胞エピトープの除去は、一般的には、T細胞エピトープをコードする1つまたはそれ以上のアミノ酸を置換することによって達成される。配列は、その結果、T細胞エピトープとは異なる配列へと変更される。脱免疫化された可変領域は、一般的には、1-5個のアミノ酸置換を有している。置換されたアミノ酸は、可変領域の三次構造が著しく変化しないように選択されている。置換されたアミノ酸は、従って、一般的には、(中性、正の電荷を有する、負の電荷を有する、親油性の)同じ群のアミノ酸から選択される。同じグループ内のアミノ酸が利用できる場合には、構造的に近いヒト抗体内のアミノ酸は、可変領域における同一または類似の位置にあるアミノ酸に置換される。
【0035】
本発明の結合分子は、好ましくは、ヒト化または脱免疫化された抗体である。
【0036】
本発明における抗体は、好ましくは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のような、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM抗体である。
【0037】
好ましい実施の形態において、本発明の抗体の定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のような、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM抗体の定常領域である。定常領域に特定の特性を付与するために、定常領域は、アミノ酸置換のような修飾を含むものとすることができる。例えば、IgG4のヒンジ領域の変異は、分子半分の交換に対して抗体をより安定にする。他の修飾は、抗体の半減期に影響を与え、グリコシル化部位を付加または除去し、生産性を向上させ、大規模発酵槽等で産生された抗体製品の均一性を向上させる。
【0038】
抗体の軽鎖または重鎖の全体の定常部分は、天然に存在する抗体と比較して、0-5個のアミノ酸置換を含んでいてもよい。いくつかの実施の形態では、重鎖または軽鎖の定常部分は、1-3個のアミノ酸置換を含む。定常領域中のアミノ酸置換は、好ましくは、同じグループ(すなわち、中性、正の電荷を有する、負の電荷を有する、親油性)のアミノ酸ではないものによることが好ましい。
【0039】
好ましい実施の形態では、抗体の定常領域は、ヒト抗体の定常領域である。好ましい実施の形態において、本発明の抗体は、アミノ酸配列の配列番号53および配列番号54;配列番号55および配列番号56;配列番号57および配列番号58;配列番号57および配列番号59;配列番号60および配列番号61;または配列番号62および配列番号63を含み、前記配列の一方または両方は、0-5個、好ましくは1、2または3個のアミノ酸置換を有する。本明細書の他の箇所に示されるようにアミノ酸置換は、定常領域または可変領域のフレームワーク領域にあることが好ましい。
【0040】
好ましい実施の形態において、抗体はヒトまたはヒト化抗体である。好ましい実施の形態において、本発明の抗体は、
-配列番号99と、配列番号103、104、105または106のアミノ酸配列のうちの1つを含み、前記配列の一方または両方は、0-5個、好ましくは1、2または3個のアミノ酸置換を有し、
-配列番号100と、配列番号103、104、105または106のアミノ酸配列のうちの1つを含み、
前記配列の一方または両方は、0-5個、好ましくは1、2または3個のアミノ酸置換を有し、
-配列番号101と、配列番号103、104、105または106のアミノ酸配列のうちの1つを含み、前記配列の一方または両方は、0-5個、好ましくは1、2または3個のアミノ酸置換を有し、又は、
-配列番号102と、配列番号103、104、105または106のアミノ酸配列のうちの1つを含み、前記配列の一方または両方は、0-5個、好ましくは1、2または3個のアミノ酸置換を有する、
アミノ酸配列を備える。アミノ酸置換は、もしあっても、CDR中にはない。
【0041】
好ましい実施の形態において、本発明の抗体は、
-配列番号115と、配列番号119、120、121または122のアミノ酸配列のうちの1つを含み、前記配列の一方または両方は、0-5個、好ましくは1、2または3個のアミノ酸置換を有し、
-配列番号116と、配列番号119、120、121または122のアミノ酸配列のうちの1つを含み、前記配列の一方または両方は、0-5個、好ましくは1、2または3個のアミノ酸置換を有し、
-配列番号117と、配列番号119、120、121または122のアミノ酸配列のうちの1つを含み、前記配列の一方または両方は、0-5個、好ましくは1、2または3個のアミノ酸置換を有し、又は、
-配列番号118と、配列番号119、120、121または122のアミノ酸配列のうちの1つを含み、前記配列の一方または両方は、0-5個、好ましくは1、2または3個のアミノ酸置換を有する、
アミノ酸配列を備える。アミノ酸置換は、もしあっても、CDR中にはない。本明細書の他の箇所に示されるようにアミノ酸置換は、定常領域または可変領域のフレームワーク領域にあることが好ましい。
【0042】
本発明はさらに、
(b)配列番号115および配列番号119;配列番号115および配列番号120;配列番号115および配列番号121;配列番号115および配列番号122;
配列番号116および配列番号119;配列番号116および配列番号120;配列番号116および配列番号121;配列番号116および配列番号122;
配列番号117および配列番号119;配列番号117および配列番号120;配列番号117および配列番号121;配列番号117および配列番号122;
配列番号118および配列番号119;配列番号118および配列番号120;配列番号118および配列番号121;または、配列番号118および配列番号122のアミノ酸配列;または
(b)の下で指定されたアミノ酸配列を含むが、その配列の1つまたは両方の配列の、1~5アミノ酸が置換されているアミノ酸配列を含む、抗体を提供する。アミノ酸置換は、(もしあっても)CDR中にはない。
【0043】
本発明の抗体は、好ましくは、マウスIgG1またはIgG2a、補体活性化もしくはFc受容体相互作用を減少もしくは防止するために定常領域における変異がされたヒトIgG1、または、ヒトIgG4、または他のIgG4分子と分子半分の交換を防止するために変異がされたおよび/もしくはFc受容体相互作用を減少もしくは防止するために定常領域における変異がされたヒトIgG4である。
【0044】
いくつかの実施の形態では、本発明の抗体は、2つの非同一の重鎖定常領域および、または非同一の軽鎖定常領域を含む。通常、必ずしもそうではないが、非同一の定常領域は、アミノ酸位置の相違が僅か5に過ぎず、好ましくは僅か1-3個に過ぎない。この特性は、例えば二重特異性抗体および/または抗体のさらなる特性を提供する分野で使用されている。
【0045】
本発明における抗体の定常領域は、好ましくは、ヒト定常領域であり、それは好ましくは1つの自然発生ヒト抗体のものである。
【0046】
本発明はさらに、本発明に係る結合分子または抗体をコードする核酸分子を提供する。本発明はさらに、本発明のCDRをコードする核酸を提供する。好ましくは、抗体5F2.4;抗体13、抗体32、抗体35又は抗体60の、可変軽鎖や可変重鎖のCDRの全てをコードする。核酸は、好ましくは、配列番号42;配列番号43;配列番号44;配列番号45;配列番号46;配列番号47;配列番号48;配列番号49;配列番号50;配列番号51;配列番号52;配列番号107;配列番号108;配列番号109;配列番号110;配列番号111;配列番号112;配列番号113または配列番号114の核酸配列を含む。核酸分子は、本発明の結合分子を生成するために使用され得る。核酸を備えた細胞株は、実験室または製造プラント中で結合分子/抗体を産生することができる。あるいは、核酸は、それを必要とする動物の体内の細胞に導入され、結合分子/抗体が、形質転換された細胞によってインビボで産生される。本発明の核酸分子へは、典型的には、細胞内で結合分子を発現するように調節配列が提供される。しかし、今日の相同組換え技術は、はるかに効率的になってきている。例えば、TALENなどのヌクレアーゼを誘発する部位特異的二本鎖切断を使用して、相同組換えを支援する二重鎖切断も、この技術に含まれる。そのような又は類似の相同組換え系は、シスが必要な調節配列の1つ以上を提供する領域内に核酸分子を挿入することができる。
【0047】
本発明はさらに、本発明の核酸分子を含む遺伝子送達ビヒクルまたはベクターを提供する。遺伝子送達ビヒクルまたはベクターは、プラスミドまたは他の、細菌で複製された核酸であることができる。このような遺伝子送達ビヒクルまたはベクターは、例えば、プロデューサー細胞へ容易に移すことができる。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルスベクターであり得る。好ましいウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターである。
【0048】
本発明はさらに、本発明の核酸分子又はベクターを含む、単離もしくは組換え細胞、またはインビトロ細胞培養の細胞を提供する。本発明はさらに、本発明の結合分子、好ましくは抗体を含む、単離もしくは組換え細胞、またはインビトロ細胞培養の細胞を提供する。好ましくは、前記細胞は前記結合分子または抗体を産生する。好ましい実施の形態において、前記細胞はハイブリドーマ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO細胞またはPER-C6(商標)細胞である。特に好ましい実施の形態において、前記細胞はCHO細胞である。さらに、本発明の細胞を含む細胞培養物が提供される。様々な機関及び企業が、たとえば臨床使用のために、抗体の大規模生産のための細胞株を開発している。そのような細胞株の非限定的な例として、CHO細胞、NS0細胞、またはPER.C6(商標)細胞がある。これらの細胞はまた、タンパク質の産生のような他の目的のためにも使用される。タンパク質および抗体の工業的規模の生産のために開発された細胞株は、本明細書においてはさらに工業用細胞株と呼ばれる。本発明は、本発明の核酸分子、結合分子および/または抗体を含む工業用細胞株を提供する。本発明はまた、本発明の結合分子または抗体を含むタンパク質および/または抗体の大規模生産のために開発された細胞株を提供する。本発明はまた、本発明の結合分子および/または抗体の大規模生産のために開発された細胞株の使用を提供する。
【0049】
本発明はさらに、本発明の細胞を培養し、培養物から抗体を収穫することを含む、本発明の結合分子または抗体を産生するための方法を提供する。好ましくは、細胞は、無血清培地中で培養される。好ましくは、細胞は、懸濁液増殖に適合される。さらに、本発明の抗体の製造方法により得られる抗体を提供する。抗体は、好ましくは、培養の培地から精製される。好ましくは、抗体は、アフィニティー精製される。
【0050】
本発明の細胞は、例えば、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞、NS0細胞、または臨床目的のために、抗体産生のためのその適合性について知られているその他の細胞である。特に好ましい実施の形態において、細胞はヒト細胞である。細胞は、好ましくは、アデノウイルスE1領域またはその機能的等価物によって形質転換される。そのような細胞株の好ましい例はPER.C6(商標)細胞株またはその等価物である。特に好ましい実施の形態において、細胞はCHO細胞又はその変異体である。好ましくは、抗体の発現のためのグルタミンシンテターゼ(GS)ベクター系を利用した変異体である。
【0051】
したがって、本発明はさらに、結合分子を製造するための方法を提供し、本発明の結合分子または本発明の抗体が生産される。好ましくは、本発明は、結合分子および/または抗体を収集する方法を提供する。
【0052】
本発明はさらに、過剰なまたは過剰活性な補体活性を患う個体の治療に使用するための本発明の結合分子または抗体を提供する。過度または過剰活性な補体活性に関連する症状の少なくとも1つの軽減における処理結果が、述べられた。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「個体」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物を意味する。好ましい実施の形態では、個体は霊長類、より好ましくは、個体はヒトである。
【0054】
本発明はさらに、炎症性疾患、神経炎症性疾患または虚血再灌流(I/R)傷害の苦しみや患うリスクのある個体の治療に使用するための、本発明の結合分子または抗体を提供する。治療結果は、炎症、神経炎症性疾患または腎もしくは心筋機能障害、溶血性危機や筋力低下などの虚血再灌流傷害の症状の少なくとも1つの軽減に関する。
【0055】
本発明はさらに、本発明に従った使用のために結合分子または抗体を提供し、そこで、個体は、抗体媒介性炎症、急性心筋梗塞等の虚血再灌流障害、脳卒中、敗血症、関節リウマチなどの免疫複合体疾患、全身性エリテマトーデス、血管炎、多発外傷、多巣性運動ニューロパチー、腎臓同種移植の抗体媒介性拒絶、(自己)免疫溶血性貧血、心肺バイパスおよび他の血管手術、特発性膜性腎症、グッドパスチャー症候群、及びその他を患っている。
【0056】
本発明はまた、本発明に係る結合分子または抗体および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0057】
ヒト補体の第2コンポーネント(C2)は、補体活性化の古典的経路及びレクチン経路に関与する90-100 kDaの糖タンパク質である。C2は、古典的経路のC1sによって、または、レクチン経路のMASP2の活性化によって活性化することができる。C2は、C4bC2複合体を形成するよう(Mg2+の存在下で)表面結合のC4bに結合し、次いで活性化C1sまたはMASP2によって2つの断片に切断され、大きな70kDaの断片のC2aは、C3-転換酵素C4bC2aを形成するようにC4bに結合し続け、小さな30kDaのN末端断片C2bは、流体相に放出される。一旦活性化されてC4bに結合すると、C2aは、C3とC5をそれぞれ切断できるC3/C5転換酵素の触媒サブユニットを構成する。
【0058】
他の多くの血漿タンパク質のように、C2はモジュラー構造を有している。そのN末端から順に、C2は、3つの補体制御タンパク質(CCP1-3)モジュール(ショートコンセンサスリピート(SCR)またはスシ-ドメインリピートとしても知られる)、金属イオン依存性接着部位を含むフォンビルブランド因子タイプA(vWFA)ドメイン、および、セリンプロテアーゼ(SP)ドメインからなる(Arlaud et al., Adv Immunol 1998, 69: 249)。電子顕微鏡による解析により、C2は、3つのドメインからなることが明らかになった。3つのCCPモジュール(CCP1-3)は共に、N末端ドメインを形成しており、それがC2bに対応している。vWFAドメインは第2ドメインを構成し、SPドメインが第3ドメインを構成している。第2および第3ドメインが、分子における大きなC2a部分を共に構成している。
【0059】
CCPモジュールは、多数のタンパク質にある一般的な構造モチーフである。これらの球状の単位は約60個のアミノ酸残基から成り、そして、不変ジスルフィド結合システイン残基を中心に構築される6本から8本の鎖からなるβシート構造にコンパクトに折り畳まれている(Norman et al., J Mol Biol 1991, 219: 717)。隣接するCCPモジュールは、不完全に保存されたリンカーによって共有結合している。
【0060】
C2の表面結合のC4bへの最初の結合は、2つの低親和性部位により媒介され、その1つはC2b上にあり(Xu & Volanakis, J Immunol 1997, 158: 5958)、もう1つはC2aのvWFAドメイン上にある(Horiuchi et al., J Immunol 1991, 47: 584)。C2bとC2aの結晶構造は、1.8オングストロームの分解能で決定されているものの(Milder et al., Structure 2006, 14: 1587; Krishnan et al., J Mol Biol 2007, 367: 224; Krishnan et al., Acta Cristallogr D Biol Crystallogr 2009, D65: 266)、C2上のC4およびC3のための接触部位を構成するアミノ酸残基の正確な形態とその構造は不明である。それゆえ、C4との相互作用に関与するC2のアミノ酸残基は、まだ立証されていない(Krishnan et al., Acta Cristallogr D Biol Crystallogr 2009, D65: 266 )。
【0061】
C2bの上に位置するエピトープに対するモノクローナル抗体3A3.3は、C2のC4bへの結合を阻害し(Oglesby et al., J Immunol 1988, 2: 926)、それはC2bの上にC4b結合部位が存在することを示している。C2のC2a部分に対するモノクローナル抗体であって、C2の活性を阻害するものが、US2011/0165169A1において開示されている。これらのモノクローナル抗体のためのエピトープのアミノ酸配列は、公には報告されていない。したがって、C2のC4bへの結合に関与するヒトC2のアミノ酸配列は、同定されていないままである。
【0062】
本発明は、C2の活性を遮断することによって、古典的経路および/またはレクチン経路を介して補体活性化を阻害することができる結合分子を開示している。前記結合分子は、好ましくはヒトもしくはヒト化モノクローナル抗体またはその結合断片であって、それは、具体的には、C2上の特異的エピトープに結合するものである。好ましい実施の形態では、エピトープは、機能的なエピトープである。本発明の結合分子は、C3a、C3bと、C2の下流のその他の補体活性化産物の生成を防止することができる。本発明の結合分子は、抗体によって誘導される補体の膜侵襲複合体の形成を阻害し、それゆえ、これらの抗体によって感作された細胞を、溶解などの補体媒介性損傷から保護する。本発明の結合分子は、したがって、投与された抗体又は自己抗体の、補体活性化が媒介する効果に対抗する必要がある個体を治療するために、適している。この文脈においては、自己抗体とは、個体自身によって生成され産生される抗体のことである。
【0063】
本発明の結合分子は、(自己)抗体による古典的経路の活性化を少なくとも50%は阻害する。古典的経路の活性化は、好ましくは70%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは95%阻害される。古典的経路の活性を計算するために、Palarasay et al., Clin Exp Immunol 2011,164: 388に記載される補体活性アッセイ、または、CH50価の決定を基準とした。本発明の結合分子の非存在下での古典的経路の活性は、任意の100%として設定されている。
【0064】
本発明の結合分子は、CRPまたは損傷関連分子パターンを認識する他の分子による補体の活性化を少なくとも50%は阻害する。レクチン経路の活性化は、好ましくは70%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%阻害される。レクチン経路の活性を計算するために、Palarasay et al., Clin Exp Immunol 2011,164: 388によって基準が作られた。本発明の結合分子の非存在下でのレクチン経路の活性は、任意の100%として設定されている。
【0065】
本発明の結合分子は、補体活性化の代替経路の活性化を有意に阻害しない。代替経路の活性の計算のため、Palarasay et al., Clin Exp Immunol 2011, 164: 388に記載の試験またはAP50活性の決定により基準が作られた。本発明の結合分子の非存在下での代替経路の活性は、任意の100%として設定されている。結合分子の飽和量の存在下では経路の活性が20%以下で低減されている場合、C2結合分子は、有意には、または本質的には、代替経路を阻害しない。
【0066】
今や、本発明は、本発明の結合分子の有利な特性を示していることから、当業者は、同じエピトープに結合する他の結合分子を開発することが可能である。したがって、本発明はまた、C2に結合し、抗体の結合を遮断する結合分子であって、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、それぞれ配列番号2および配列番号3;それぞれ配列番号2および配列番号96;それぞれ配列番号10および配列番号11;それぞれ配列番号18および配列番号19;それぞれ配列番号26および配列番号27;それぞれ配列番号97および配列番号27;それぞれ配列番号34および配列番号35;又は、それぞれ配列番号98および配列番号35、のアミノ酸配列を含む結合分子を提供する。本発明はさらに、本発明の結合分子、好ましくは抗体であって、結合分子のコレクションにおいて本発明の結合分子を同定するための、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号2および配列番号3であり;それぞれ配列番号2および配列番号96であり;それぞれ配列番号10および配列番号11であり;それぞれ配列番号18および配列番号19であり;それぞれ配列番号26および配列番号27であり;それぞれ配列番号97および配列番号27であり;それぞれ配列番号34および配列番号35であり;又は、それぞれ配列番号98および配列番号35である抗体、の使用である。同定された結合分子は、好ましくは、結合分子および/または結合分子をコードする核酸配列を決定することを特徴とする。これは、とりわけ他の結合分子の製造と、結合分子のさらなる使用を可能にする。
【0067】
また、本発明は、本発明の既知の結合分子の存在下および非存在下でC2に結合する重鎖および軽鎖可変領域を含む、試験結合分子の能力を試験する工程を含む、本発明の結合分子を同定するための方法を提供する。試験結合分子は、本発明の既知の結合分子の不在下でC2を結合するとき、および、C2が本発明の既知の結合分子とプレインキュベートされる時にC2に少なくとも50%以下で特異的に結合する場合、試験結合分子は、本発明の結合分子であることが確認される。
【0068】
本発明はさらに、C2を結合する結合分子を提供し、それはC2a上のエピトープとC2b上のエピトープを認識する。抗体は、好ましくは、同一の抗原に結合する可変領域を含む。本発明はさらに、C2を結合する結合分子を提供し、それはC2aとC2bそれぞれへ特異的に結合する。本実施形態の目的のために、C1sにより消化したC2のゲル電気泳動によるサイズ分画は、2つの断片が互いに十分に分離され、C2a断片とC2b断片がレーンにおいて描写されるように考慮された。
【0069】
本発明の結合分子及び好ましくは二価モノクローナル抗体は、C2との解離定数(KD)が10-7 M未満、好ましくは10-8 M未満、好ましくは10-9 M未満、好ましくは10-9 M未満、好ましくは10-10 M未満、そして好ましくは10-11 M未満である。
【0070】
本発明の結合分子は、古典的経路および/またはレクチン経路の活性化を阻害するために使用することができる。そしてこれが生物学的に活性な、C4a及びC4b、C3a、C3b、C5aおよびその他のペプチドのような補体由来ペプチドの、血漿中、もしくは個体中、または補体機能性システム中での生成を阻害する。結合分子は、細胞および組織におけるこれらの補体由来ペプチドによる損傷の影響の少なくとも一部を防ぐことができる。本発明の結合分子は、インビボでの補体活性化を阻害することにより、ヒト疾患の臨床的徴候および症状を減衰させるための医薬の調製のために使用することができる。モノクローナル抗体分子は、補体媒介性の疾患または症状の治療のため、単独で又は別の薬物と組み合わせて使用することができる。
【0071】
本発明の方法または結合分子によって治療または予防できる疾患は、好ましくは、実験的アレルギー性神経炎のような自己免疫疾患、タイプ2コラーゲン誘発性関節炎、重症筋無力症、溶血性貧血、糸球体腎炎、特発性膜性腎症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、免疫複合体誘発性血管炎、成人呼吸窮迫症候群、脳卒中、異種移植、多発性硬化症、火傷傷害、体外血液酸素透析、敗血症および敗血症性ショックを含む炎症性疾患、サイトカインまたはモノクローナル抗体の生体内投与によって誘導される毒性、腎臓同種移植片などの同種移植片の抗体媒介性拒絶反応、多発外傷、虚血-再灌流傷害、心筋梗塞である。
【0072】
補体媒介性損傷が関与する疾患に罹患している、またはそのような補体媒介性の損傷を発症する危険性がある個体は、その必要とする個体に本発明の結合分子を投与することによって治療することができる。これにより、生物学的に活性な補体由来ペプチドの生成が阻害され、そして、溶解性と細胞や組織への補体の他の有害な影響が、減弱され、または、阻止される。「有効量」とは、個体において補体活性化を阻害することができる本発明の結合分子の量を意味する。
【0073】
(予防的または治療的)処置は、一般には、本発明の結合分子を医薬担体と一緒に非経口で、好ましくは静脈内または皮下に、投与することからなる。本発明の結合分子の投与量および処方計画は、目的とした補体活性化の阻害の程度に依存することとなる。典型的には、抗体である本発明の結合分子のための、その量は、体重1kgあたり2から20mgの範囲であろう。非経口投与のために、結合分子は、薬学的に許容される非経口溶媒と組み合わせた注射可能な形態として処方される。このような溶媒は、当技術分野で周知であり、例としては、生理食塩水、デキストロース溶液、リンガー溶液、およびヒト血清アルブミンの少量を含有する溶液が包含される。
【0074】
典型的には、本発明の結合分子は、1ml当たり約20mgから約100mgの濃度で処方される。本発明の実施の形態の1つにおいて、結合分子は、静脈内注射により投与される。
【0075】
本発明の範囲内には、循環中または局所的のいずれかにおいて十分に高いレベルを得るよう、本発明に記載のモノクローナル抗体またはその断片を投与するための実質的に全ての方法が、含まれることが意図されるものと理解すべきである。
【0076】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に製剤化することができ、ならびに(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995)などにおいて開示されているような、任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤と共に製剤化することができる。
【0077】
「薬学的に許容される担体」なる用語は、本質的に非毒性である担体または賦形剤に関する。そのような賦形剤の例としては、限定されるものではないが、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液がある。固定油およびオレイン酸エチルなどの非水性賦形剤を使用することもできる。
【0078】
医薬組成物は、好ましくは非経口的に投与され、より好ましくは、静脈内または皮下への注射または注入によって投与される。
【0079】
本明細書において用いられる「非経口投与」および「非経口的に投与される」などの用語は、通常は注射による、経腸および局所投与以外の投与様式を意味するものであり、そして、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内への注射および注入が、限定されることなく含まれる。
【0080】
医薬組成物は、典型的には、製造および貯蔵の条件下において、無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。本発明の医薬組成物に使用できる適切な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのような)ポリオール、及びそれらの適切な混合物、オリーブ油のような植物油、そして、オレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散液の場合における必要な粒子サイズの維持、および、界面活性剤を使用することなどにより、維持することができる。
【0081】
医薬組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含んでいてもよい。微生物の存在防止は、滅菌工程、および、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールなどを含んだものとすること、の両方により、なし得る。また、組成物中には、糖、マンニトール、ソルビトール、グリセロールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが望ましい。またさらに、薬学的に許容される抗酸化剤、例えば、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤、などを含むものとしてもよい。
【0082】
滅菌注射溶液は、例えば、上記に列挙したような成分の1つまたは組み合わせと共に適当な溶媒中に必要量のモノクローナル抗体を組み込むことによって調製することができ、必要に応じて滅菌精密ろ過を行う。一般に、分散液は、基本的な分散媒体および、例えば上記に列挙したものなどの必要な他の成分を含む滅菌溶媒中に、活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、その好ましい調製方法は、予め濾過滅菌したその溶液から活性成分に加えて任意のさらなる所望の成分からなる粉末を生じる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0083】
注射可能な抗C2モノクローナル抗体またはその断片の持続的吸収は、組成物中に、吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含ませることによってもたらすことができる。
【0084】
モノクローナル抗体の断片は、その迅速な放出に対して断片化合物を保持できる、例えば、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤などの担体を用いて調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者に一般に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson編, Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク, 1978を参照のこと。
【0085】
医薬組成物は、当該技術分野において公知の医療機器を用いて投与することができる。
【0086】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療反応など)が得られるように調整される。例えば、単回のボーラスを投与してもよく、いくつかに分割された用量を経時的に投与してもよく、または治療状況の緊急性に応じて、用量を比例的に減少または増加させてもよい。
【0087】
その本発明の医薬組成物中のモノクローナル抗体またはその断片の実際の用量レベルについては、特定の患者に対する所望の治療応答が達成でき、患者に対しては有毒とならないような活性成分量となるように、変更することができる。
【0088】
実施の形態の1つにおいて、本発明によれば、結合分子、特に抗体は、毎週10から500mg/m2、例えば、200から400mg/m2の用量で注入により投与することができる。このような投与は、例えば1から8回、一例として3から5回繰り返すことができる。この投与は、2から24時間にわたる、例えば2から12時間にわたる、連続的注入によって行うことができる。
【0089】
さらに別の実施の形態において、本発明で開示されるモノクローナル抗体もしくはその断片または任意の他の結合分子は、維持療法などにより投与することができ、例えば、6ヶ月またはそれ以上の期間にわたり週1回投与することができる。
【0090】
本発明について、これより特に有利な実施の形態を記載した以下の実施例を参照しながら説明する。しかし、これらの実施の形態は例示であり、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】野生型(レーン1)
及び脱グリコシル化組換えヒトC2(レーン2)、C1
s切断済C2(レーン3)及び脱グリコシル化C1
s切断済C2
(レーン4)の非還元SDS-PAGE。C1s切断はC1s
対C2を1:25の比率にて行った。未処理および処理済C2は、クマシーブリリアントブルーで可視化した。グリコシル
化C2(ほぼ100kDa)、グリコシル
化C2a(ほぼ70kDa)、グリコシル
化C2
b(ほぼ30kDa)は矢
じりで示される。分子量マーカーの位置も示した。*はPNGase酵素を示す。
【
図2】抗C2モノクローナル抗体の阻害活性をスクリーニングするため
のELISAの原理。阻害
モノクローナル抗体はC4結合に影響を及ぼさず、固相上
の凝集したIgGへのC3の結合が減少する点に注意のこと。
【
図3】(
図3A,
図3B)抗C2ハイブリドーマ上清の阻害活性のスクリーニング結果の一例。ポジティブコントロール
では、ハイブリドーマ上清なしで血清を希釈した。ネガティブコントロール
では、ハイブリドーマ上清なしで、EDTAと共に血清を希釈した。X軸上の数字は、ハイブリドーマ番号を
指す。矢印は、抗C2 ELISAにおいて
ネガティブのもので、コントロール群として試験したハイブリドーマ上清を示す。
【
図4】低用量コーティング(25ng/ウェル;灰色記号)または高用量コーティング(200ng/ウェル;黒色記号)における、組換えヒト補体C2に対するマウス抗ヒト補体C2抗体の結合。結果(450 nmでの吸
光度)は、平均値±標準偏差、n=2を示す。
【
図5】マウス抗C2モノクローナル抗体の、野生型(A)またはC1
s切断済組換えヒトC2(B)への結合。タンパク質の混合物は、ELISAプレート上にコートされ、様々な濃度の抗C2モノクローナル抗体と共にインキュベートされた。結果(450 nmでの吸
光度)は、平均値±標準偏差、n=2を示す。
【
図6】精製マウス抗C2モノクローナル抗体による
、固相凝集IgGへのC3固定の阻害。1容量の新鮮なヒト血
清が、示された濃度の1容量のモノクローナル抗体とインキュベートされた。点線は、モノクローナル抗体の非存在下(上側の線)、および、EDTAの存在下(下側の線)における固定レベルを示している。
【
図7】ヒト血清中における凝集IgGによるC3の活性化に対する抗C2モノクローナル抗体の効果。1容量の血清が、1容量のモノクローナル抗体(0.48 mg/ml)と混合された。活性化C3は、方法に記載したようにしてELISAにて測定された。結果は1ml当たりの任意単位(AU)として表示されている。
【
図8】同種移植片拒絶のためのヒトの生体外モデルにおける抗HLA抗体の補体依存性細胞
傷害性に対する抗C2モノクローナル抗体の効果。抗HLA抗体を含む血清1μlが、1μlの末梢血単核球(PBMC)懸濁液(2-5×10
6細胞/ml)とともに、室温にて1時間インキュベートされた。一方、5μlの新鮮な正常血清が、15μlのVB(ベロナール緩衝液)および抗C2モノクローナル抗体を含有する5μlのVBと、室温にて20分間インキュベートされた。10μlの各サンプルが、PBMC混合物と、室温にて2時間インキュベートされた。細胞
傷害性はFluoroquenchで測定し、顕微鏡検査によって評価した。細胞
傷害性のスコアが「0」とい
うのは、細胞が全く溶解しないことを意味し、対して、細胞の80%以上が溶解したときには、8のスコアが与えられた。抗C2モノクローナル抗体を含まない新鮮な血清はポジティブコントロールとして用いられ、EDTAはネガティブコントロールとして用いられた。モノクローナル抗体5F2.4は、このアッセイにおいて阻害効果を有するものの、この図には示されてはいない。モノクローナル抗体の抗C2-79は、このアッセイにおいて細胞
傷害性を減少させるものの、他のアッセイにおいては抑制効果がない。
【
図9】野生型およびC1
s切断
済組換えヒトC2のウェスタンブロッティングを用い
て、抗C2モノクローナル抗体によって認識されたC2aまたはC2
b上のエピトープ配置。同定されるC2(おおよそ100kDa)、C2a(おおよそ70kDa)およびC2b(おおよそ30kDa)は矢じりで示されている。検出は、100ng/ml(抗C2-5F2.4および-35)または200ng/mL(抗C2-13、-32および-60)の抗C2モノクローナル抗体で行われた。
【
図10】
ELISAで評価した
、(図10A)抗C2モノクローナル抗体の、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した組換えヒトC2
aへの結合、(
図10B
)抗C2モノクローナル抗体5F2.4の、脱グリコシル化(非変性/非還元)組換えヒトC2への結合、(
図10C)変性(非還元)または還元(変性)組換えヒトC2への結合。結果(450nmでの吸
光度)は、平均
値±SD、n=2を示す。
【
図11】阻害
性抗C2モノクローナル抗体は、補体活性化の間、C2の切断を防ぐ。10μlの血清と10μlの抗C2モノクローナル抗体(0.48 mg/ml)とを、10μlの凝集IgG(1 mg/ml)とともにインキュベートし、7.5%SDS-PAGEで分離した。
サンプルはブロットされ、C2の切断を評価するため、(野生型C2
へ、および、C2b
へ結合する)ビオチン化抗C2-5F2.4とインキュベートされた。分子量マーカー(M)の位置が示されている。矢印は
、抗C2
-5F2.4
モノクローナル抗体により可視化された、C2
及びC2bの位置を示す。Cは、抗C2を加えない
で凝集IgGとインキュベートした血清を示す。IgGは、ポリクローナルヒトIgG(0.48 mg/ml)の存在下で凝集IgGと共にインキュベートした血清を示す。
【
図12】阻害
性抗C2モノクローナル抗体は、C1sによる
流体相の野生型組換えヒトC2の切断を防止できない。C2は、抗C2モノクローナル抗体の存在下で、C1sと共にインキュベートされた。混合物は、非還元SDS-PAGEで分析され、
クマシーブリリアントブルーで可視化された。マウスIgG(おおよそ150kDa)、C2(おおよそ100kDa)、C2
a(おおよそ70kDa)およびC2b(おおよそ30kDa)が、矢じりで示されている。
【
図13】
少量(25ng/ウェル;灰色記号)または
多量(200ng/ウェル;黒色記号)コーティングにおける、マウス-ヒトキメラ型抗ヒト補体C2抗体の、組換えヒト補体C2への結合。結果(450nmでの吸
光度)は、平均
値±SD、n=2を示す。
【
図14】ヒト血清中の凝集IgGによるC3の活性化に対するマウス-ヒトIgG4キメラ型抗C2モノクローナル抗体の効果。実験計画は、抗C2モノクローナル抗体の組換えマウス-ヒトIgG4型が、モノクローナル抗体のマウス型の代わりにヒト血清に追加されたことを除き、
図6と同じである。抗C2-63は、
コントロールとして試験したヒトC2に対するマウス非阻害性モノクローナル抗体である。
コントロールとなるモノクローナル抗体は、ヒト第XI因子に対するモノクローナル抗体である。
コントロールとなるIgGは、
コントロールとして試験したヒトIgGである。
【
図15】同種移植片拒絶のためのヒト生体外モデルにおける、抗HLA抗体の補体依存性細胞傷害性に対する、マウス-ヒトIgG4キメラ型抗C2モノクローナル抗体の効果。実験計画は、抗C2モノクローナル抗体の組換えマウス-ヒトIgG4型が、モノクローナル抗体のマウス型の代わりにヒト血清に追加されたことを除き、
図8と同じである。細胞
傷害性は、「ライカQ WIN」プログラムで分析し、
溶解%として表した。抗C2-63は、
コントロールとして試験したヒトC2に対するマウス非阻害性モノクローナル抗体である。
コントロールとなるモノクローナル抗体は、ヒト第XI因子に対するモノクローナル抗体である。
コントロールとなるIgGは、
コントロールとして試験したヒトIgGである。
【
図17】ELISAを用いた
、組換えヒト補体C2に対するヒト化抗ヒト補体C2抗体の結合。結果(450nmでの吸
光度)は、平均
値±SD、n=2を示す。
【
図18】同種移植片拒絶のためのヒトの生体外モデルにおける、抗ヒトHLA-A、B、C(クローン:W6/32)抗体の補体依存性細胞
傷害性に対するヒト化抗C2モノクローナル抗体の効果。1μlのW6/32抗体溶液(31.25μg/ml)が、1μlのPBMC懸濁液(5×10
6細胞/ml)と共にインキュベートされた。一方、10μlの新鮮な正常血清が、10μlの、抗C2モノクローナル抗体を含有するVBと、室温にて30分間インキュベートされた。5μlの各サンプルが、PBMC混合物と、37℃にて1時間インキュベートされた。5μlのFluoroquenchが各ウェルに加えられ、そして、サンプルは暗所にて30分間インキュベートされた。その後、細胞傷害性が、自動化された顕微鏡(Leica Micro Systems)によって測定された。
溶解%は、ライカQ WINソフトウェアにより計算した。抗C2モノクローナル抗体を含まない新鮮血清がポジティブコントロールとして用いられ、EDTAおよびEGTAがネガティブコントロールとして用いられた。さらなるコントロールとして、無関係のヒトIgG4モノクローナル抗体とC2非含有血清が用いられた。結果は、平均
値±SD、n=2を示す。
【
図19】同種移植片拒絶のためのヒトの生体外モデルにおける、抗HLA抗体の補体依存性細胞
傷害性に対するヒト化抗C2モノクローナル抗体の効果。1μlの抗HLA抗体血清が、1μlのPBMC懸濁液(5×10
6細胞/ml)と共に、37℃において30分間インキュベートされた。一方、10μlの新鮮な正常血清が、10μlの、抗C2モノクローナル抗体を含有するVBと、室温にて30分間インキュベートされた。5μlの各サンプルが、PBMC混合物と、37℃にて1時間インキュベートされた。5μlのFluoroquenchが各ウェルに加えられ、そして、サンプルは暗所にて30分間インキュベートされた。その後、細胞傷害性が、自動化された顕微鏡(Leica Micro Systems)によって測定された。抗C2モノクローナル抗体を含まない新鮮血清がポジティブコントロールとして用いられ、EDTAがネガティブコントロールとして用いられた。結果は、平均
値±SD、n=2を示す。
【実施例】
【0092】
当業者は、日常的な実験を用いることで、本明細書に記載の本発明の特定の実施の形態に関する多くの等価物を、認識または確認することができるであろう。このような等価物は、以下の各請求項に包含されることが意図される。従属請求項に開示された実施の形態の任意の組合せもまた、本発明の範囲内である。
【0093】
本発明を実現するための材料および方法の様々な態様の議論において参照される全ての特許、特許出願および科学刊行物は、参照により本明細書にその全体が援用される。
【0094】
材料:
【0095】
凝集IgG(aggIgG)は、精製ヒトIgG(Gammaquin、Sanquin、アムステルダム、オランダ)を80mg/ml PBSにて、63℃で20分間加熱することによって調製した。その調製物は、10 mg/mlに希釈してから、使用するまで-80℃で保存した。
【0096】
ボランティアから新鮮なヒト血清を静脈穿刺により得て、一定分量毎に-80℃で保存した。熟成正常血清は、新鮮な正常血清を37℃で1週間インキュベートすることによって調製した。C2非含有血清は、シグマ-アルドリッチ社から購入した。
【0097】
アフィニティー精製されたニワトリポリクローナル抗C3およびヤギ抗C4抗体はそれぞれ、Mybiosource.com及びサーモサイエンティフィック社から購入した。それらの抗体は、製造業者のプロトコールに従い、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin(サーモサイエンティフィック社)を用いてビオチン化した。簡単に述べると、20倍M過剰のビオチンを抗体へ添加し、室温で30分間インキュベートした。次に、抗体をPBSに対して一晩透析処理し、さらに使用するまで4℃にて保存した。
【0098】
末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll-Paque(浮遊密度1.077g/ml;GEヘルスケア社)でヘパリン血から遠心分離して単離した。単離された細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で室温にて洗浄し、さらに使用するまで4℃のRPMI培地中で維持した。
【0099】
実施例1:マウス抗ヒト補体C2抗体の作製
【0100】
(a). 組換えヒト補体C2の作製
【0101】
N末端にhisタグを有する組換えヒト補体タンパク質C2は、U-Protein Express, Utrecht, オランダによって、作製された。簡単に述べると、ヒト補体タンパク質C2をコードするcDNA(GenBank配列:NM_000063;配列番号1を参照)がクローン化され、その後、HEK293細胞にて発現された。C2は、アフィニティークロマトグラフィーにより精製され、プレキャストゲルNuPage(登録商標)Novex(登録商標)system(Invitrogen)を用いて、SDS-PAGEにて分析された。タンパク質は、クマシーブリリアントブルーで染色された。
【0102】
図1(レーン1)に示されるように、C2の精製物は>95%の純度を示し、すなわち、一つのバンドは、おおよそ100 kDaの分子量として観察され、それは、グリコシル化ヒトC2の予想される質量と一致した。
【0103】
(b). 組換えヒト補体C2の生化学的特徴
【0104】
組換えC2a及び組換えC2bは、C2(400μg/mLの溶液を100μL)を、血漿由来の活性化C1s(16μg/mLの溶液100μL;Calbiochem社)をPBS中で37℃、1時間インキュベートすることによって(C1sとC2の比は1:25)生成された。C2上のN結合型グリカンの存在を決定するために、1.8μgの非切断組換えC2またはC1s切断済組換えC2が、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGアーゼF; New England Biolabs社)を用い、製造者の指示(New England Biolabs社)に基づき、反応緩衝液中で37℃で1時間インキュベートされた。タンパク質は、プレキャストゲル NuPage(登録商標)Novex(登録商標)system(Invitrogen)を用いて、SDS-PAGEにて分析され、そしてクマシーブリリアントブルーで染色された。
【0105】
図1に示されるように(レーン1対レーン3)、C1sは、組換えC2を、サブコンポーネントC2a(おおよそ70kDa)
及びC2b(おおよそ30kDa)へと切断し、
これらはC2a
及びC2bの予測質量とそれぞれ一致した。野生型組換えC2、
ならびに、C1
s切断
済組換え
の、C2a
及びC2b
両方は、N-結合グリカンを有していて、このことは、PNGアーゼFとのインキュベーション後の低い見かけの分子量の値から明らかであった(
図1のレーン1対レーン2、および、レーン3対レーン4を参照)。これらの結果は、ヒトのC2aおよびC2bは、それぞれ、6個および2個の、推定上のN結合型グリコシル化部位を有するという考えと一致する(Martini et al., BMC Immunol 2010, 11: 43; Krishnan et al., J Mol Biol 2007, 367: 224; Krishnan et al., Acta Cristallogr D Biol Crystallogr 2009, D65: 266)。
【0106】
(c).グリコシル化ヒト補体C2に対する免疫化及び抗体の作製
【0107】
従来技術によれば、グリコシル化ヒトC2に対する阻害抗体は、インタクトなグリコシル化精製ヒトC2でではなく、脱グリコシル化精製ヒトC2(Oglesbyら、J Immunol 1988,2:926)または精製されたヒトサブコンポーネントC2a(US 2001/0026928 A1)でのマウスの免疫化によってのみ得られる。
【0108】
Oglesbyらによる免疫化のアプローチ(上記参照;J Immunol 1988, 2: 926)とは対照的に、BALB/cマウス(メス、6-8週齢;チャールズ・リバー・ラボラトリーズ)は、500μLのグリコシル化組換えヒト補体C2を含むフロイント完全アジュバント(各マウスあたり、250μLのPBS-5mMベンズアミジンHCl(U-Protein Express)中の25μgのグリコシル化組換えヒト補体C2を250μLのフロイント完全アジュバント(シグマ)と混合)が0日目に皮下注射された。抗体反応は、グリコシル化組換えヒト補体C2を含むフロイント完全アジュバント(各マウスあたり、250μLのPBS-5mMベンズアミジンHCl(U-Protein Express)中の25μgのグリコシル化組換えヒト補体C2を250μLのフロイント完全アジュバント(シグマ)と混合)を21日目と42日目に皮下注射し、63日目および64日目にアジュバントなしのグリコシル化組換えC2(各マウスあたり、25μgのグリコシル化組換えヒト補体C2を250μLのPBS-5mMベンズアミジンHClと混合)を腹腔内注射して追加免疫することにより増幅させられた。67日目に、免疫化したマウスから取り出した脾細胞を、ケーラーとMilsteinによって記載(Nature 1975, 256: 495)された標準的なハイブリドーマ技術を用いてSP2/0-Ag14骨髄腫細胞(DSMZ)と融合させた。簡単に述べると、免疫化したマウスを屠殺した。脾臓から脾細胞を取り出し、GlutaMax medium入り無血清Opti-MEM(登録商標)I(SF medium; Invitrogen)中で洗浄した。対数増殖期にあるSP2/ 0-Ag14骨髄腫細胞をSF mediumで洗浄し、脾細胞対骨髄腫細胞の割合が5対1となるように脾細胞へ添加した。次いで、細胞をペレット化し、上清を除去した。ポリエチレングリコール4000(メルク社)の37%(v/v)溶液1mlを、その後、60秒間かけて滴下し、その後、細胞を37℃でさらに60秒間インキュベートした。8mlのSF mediumを、続いて5mlのGlutaMax入りOpti-MEM(登録商標)I/10%(v/v)ウシ胎児血清(FCS; Bodinco)を、ゆっくりと穏やかに撹拌しながら加えた。室温30分の後、細胞をペレット化し、GlutaMax入りOpti-MEM(登録商標)I/10%(v/v)FCSの液中で、残留しているポリエチレングリコールを除去するよう洗浄し、そして、最終的にアミノプテリン選択培地中に、すなわち、50×Hybri-Max(商標)アミノプテリン(de novo DNA synthesis inhibitor(Sigma))を添加したGlutaMax入りOpti-MEM(登録商標)I/10%(v/v)FCS中に、1ウェルあたり105
細胞/200μlの濃度となるようにして播種した。7日目からは、アミノプテリン選択培地は2-3日ごとに補充し、そして13日目に、アミノプテリン選択培地を、GlutaMax入りOpti-MEM I/10%FCSで置換した。
【0109】
細胞融合後13日目から、96ウェルプレート上にコーティングされたグリコシル化組換えヒトC2(U-Protein Express)による抗C2抗体の産生について、ハイブリドーマからの上清をELISAを用いてスクリーニングした。以下のようにELISAスクリーニングを行った。グリコシル化ヒト組換えC2を使って、コーティングした(250ng/PBS 100ml、25ng/100μl/ウェル)。PBS/0.05%(w/v)Tween 20にて十分に洗浄した後、プレートを、PBS/0.05%Tween 20(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)(Roche)により、室温(RT)で1時間ブロッキング処理を行った。その後、プレートを、100μlの希釈していないハイブリドーマ上清/ウェルでRTで1時間インキュベートした。PBS/0.05% Tween 20にて十分に洗浄した後、1:5000に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスFcγ-特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)で一時間室温処理し、引き続き、比色検出のための調製済TMB基質(Invitrogen社)にて、抗体の結合を測定した。1MのH2SO4を添加した後、光学密度(OD)を、マイクロプレートリーダー(BioRad)を用い450nmの波長にて(参照波長は655nmにて)測定した。このELISAスクリーニングでポジティブのハイブリドーマを増殖し、凍結保存した。
【0110】
複数回の細胞融合実験により、上述したELISAスクリーニング法で測定されるグリコシル化ヒトC2に対する抗体を産生する36個のハイブリドーマが得られた。これらハイブリドーマの培養上清については、後述の実施例において、グリコシル化C2に対する阻害活性が試験された。
【0111】
実施例2:抗C2ハイブリドーマ上清の阻害活性をスクリーニングするためのELISA
【0112】
抗C2抗体を産生するハイブリドー
マの培養上清は、C2に対する阻害効果が、最初にELISAシステムにてスクリーニングされた(
図2)。このELISAでは、凝集ヒトIgGをマイクロタイタープレート(Greiner-Bio-One)上に塗布し、そして次に、新鮮な血清と、
抗C2抗体を含むハイブリドーマ上
清と共にもしくは抗体抜きでプレインキュベートした。プレートへのC4
及びC3の固定、すなわち補体活性化の指標は、その後、ビオチン標識化されたポリクローナルアフィニティー精製抗C3および抗C4抗体を用いて測定された。プレートへの抗C3および抗C4の結合は、その
次に3',5'-テトラメチルベンジジンを用いて可視化したストレプトアビジンHRPを用いて測定した。簡単に説明すると、ELISAプレート(Greiner-Bio-One)を、PBS中に10μg/ mlとした凝集IgGをウェル当たり100μlにして入れ、室温で一晩コーティングした。この工程およ
びすべて
のELISA工程における最終容量は100μlであった。プレートは、使用前にミリQ水で5回洗浄した。試験されるサンプルは、以下のように調製された。新鮮なヒト血清を、1mM MgCl
2、0.15mM CaCl
2および0.1%(w/v)Tween 20を含有するベロナール緩衝生理食塩水(VB-T)、pH7.4(ロンザ)で1対100に希釈した。希釈した血清の1容量は、ハイブリドーマ上清の1容量とVB-Tの1容量と共にして、室温で30分間インキュベートした。ネガティブコントロールの
サンプルは、希釈された新鮮な正常血清100μlを100μlのEDTA(0.1 M)
及び100μlのVB-Tと共に混合することによって調製した。ポジティブコントロールとして、混合液は、希釈された血清と、培養上清の代わりにVB-Tとで調製された
。100μlの混合物が、その後、凝集IgG被覆プレート中で37℃で30分間インキュベートされた。プレートは洗浄され、PBSTで1から50倍までに希釈されたヒトC4およびC3に対するビオチン化抗体と共にインキュベートされた。結合した抗C4または抗C3マウス抗体は、PBS-Tで1:7500に希釈された100ストレプトアビジンHRP(BioLegend)と室温で1時間インキュベートすることにより検出された。最後に、プレートを蒸留水で5回洗浄し、3,5,3',5'-テトラメチルベンジジン(TMB substrate, Invitrogen)を用いて発色させた。反応は、各ウェルに2 M H
2SO
4100μlを添加することにより停止させた。各ウェルの吸光度をマルチスキャンEXプレートリーダー(Thermo Scientific)で450nmで読み取った。データは、Graphpad Prism 5を用いて解析した。
【0113】
いくつかの融合実験から得られた9個のハイブリドーマは、C3結合への実質的な阻害活性を示すもののC4固定には影響を与えないものであ
り(
図3Aおよび
図3B)、これらのC3活性化への
効果は、サンプルの処理中における
不特定
な補体の活性化及び補体の消費によるものである
という考えを除外
する。これらのハイブリドーマ番号は、次のとおりであった:抗C2-7、抗C2-13、抗C2-23、抗C2-24、抗C2-26、抗C2-27、抗C2-32、抗C2-5F2および抗C2-5G2。また、いくつかのボーダーライン上の阻害ハイブリドーマが同定された(ハイブリドーマ19、35、60および65)。重鎖および軽鎖の可変領域の配列決定により
、抗C2-24および抗C2-32
モノクローナル抗体は、同一であることが明らかになり、また
、抗C2-5F4および抗C2-5G2
モノクローナル抗体も同一であることが明らかになった。
【0114】
実施例3:精製したマウス抗C2-13、-32、-35、-60および-5F2.4抗体の結合能の評価
【0115】
(a). 抗C2-13、-32、-35、-60および-5F2.4 モノクローナル抗体の、グリコシル化組換えヒトC2への結合
【0116】
阻害および非阻害抗C2モノクローナル抗体を、プロテインGアフィニティークロマトグラフィー(GE Healthcare)を用いて精製した。重鎖および軽鎖は、マウスモノクローナルアイソタイピング用IsoQuick(商標)キット(Sigma)を用いて、アイソタイプクラスを同定した(表1)。
【0117】
(表1 ヒトC2に対するいくつかのマウスモノクローナル抗体の抗体クラス)
【表1】
【0118】
精製された抗C2-5F2.4、抗C2-13、抗C2-32、抗C2-35および抗C2-60モノクローナル抗体は、多量(1ウェルあたり200ng)及び少量(1ウェルあたり25ng)のグリコシル化組換えC2(U-protein Express)への結合能評価を、実施例1(c)に記載の手順によって行い、さらに特徴づけられた。
【0119】
図4に示されるように、抗C2-5F2.4、抗C2-13、抗C2-32、抗C2-35および抗C2-60抗体は、グリコシル
化組換えヒト補体C2に、
用量依存的に結合した。抗C2-5F2.4、抗C2-35および抗C2-60抗
体の結合は、25ng/
ウェルと200ng/
ウェルでコーティングされたC2への結合において若干の違いが認められたのみであったが、
それに対して、抗C2-1
3および抗C2-3
2抗体の結合は、200ng/
ウェルでコーティングされたC2に比べ、25ng/
ウェルでコーティングされたC2では明らかに減少していた(
図4)。したがって、マウス抗ヒト補体C2-13(mIgG1
κ)および抗C2-32(IgG1
κ)抗体の(相対的な)親和性は、抗C2-5F2.4(IgG2a
κ)、抗C2-35(mIgG1
κ)および抗C2-60(mIgG1
κ)抗体の親和性よりも低かった。
【0120】
(b). 抗C2-13、-32、-35、-60および-5F2.4モノクローナル抗体の、C1s切断済グリコシル化組換えヒトC2への結合
【0121】
精製された抗C2-5F2.4、抗C2-13、抗C2-32、抗C2-35および抗C2-60モノクローナル抗体の、グリコシル化組換えC2(1ウェルあたり200ng;U-protein Express)への結合、または、C1s切断済グリコシル化組換えC2(1ウェルあたり200ng)への結合を、実施例1(c)に記載の手順を用いて評価した。
【0122】
抗C2-5F2.4、抗C2-13、抗C2-32、抗C2-35および抗C2-60の各抗体は、グリコシル
化組換えC2(
図5A)およびC1
s切断
済グリコシル化組換えC2(
図5B)に用量依存的に結合した。後者の観察から以下のことが証明された、すなわち、抗C2-5F2.4、抗C2-13、抗C2-32、抗C2-35および抗C2-60の各抗体は、グリコシル化組換えヒト補体C2におけるC1s切断部位のエピトープ(
すなわち、Arg
243-│-Lys
244結合;http://www.uniprot.org/uniprot/P09871)を認識することができない。
【0123】
実施例4:精製マウス抗C2モノクローナル抗体による、C3の固相凝集IgGへの固定化に対する阻害活性
【0124】
抗C2モノクローナル抗体の阻害活性を確認するために、実験系の安定性を高めるよう各サンプル
で異なる調製がされた点を除いては、実施例2に記載したのと同じ実験系が用いられた。
サンプルは、10μlの新鮮な正常血清を、PBS中の精製抗C2モノクローナル抗体10μlと混合することによって調製した。ポジティブコントロール
サンプルは、10μlの新鮮な正常血清と10μlのVBとを混合することによって調製した。ネガティブコントロール
サンプルとして、10μlの新鮮な正常血清
と、10μlのEDTA(0.1M)
とを混合した。全てのサンプルを室温で30分間インキュベートした。次に、全てのサンプルを、PBS/0.1% Tween 20溶液で1から100倍に希釈し、その後、前述の実施例に記載のプロトコルに従って、同じプロトコルにて試験を行った。
図6に示すように、コントロールモノクローナル抗体も、抗C2-63モノクローナル抗体も共に、固相IgGに対するC3の固定に影響を与えることはなかった。一方、抗C2
-32、
-5F 2.4
及び-13
抗体は、プレートへのC3の固定を阻害した。他方、抗C2
-35
及び-60
モノクローナル抗体は、この試験において有意な活性を示さなかった。
【0125】
実施例5:精製マウス抗C2モノクローナル抗体による、新鮮な血清中の流体相凝集IgGによるC3の活性化に対する阻害活性
【0126】
流体相C3の活性化に
対する抗C
2-13、
-32、
-35、
-60及び
-5F2
モノクローナル抗体の効果は、抗C2モノクローナル抗体でプレインキュベートされた新鮮なヒト血清を、凝集IgGと共にインキュベートしたアッセイで測定された。C3の活性化が、以前に記載された
ように(Wolbink GJ et al., J Immunol Methods 1993, 63: 67)ELISAによりサンプル中にて測定された。サンプルは、30μlの新鮮な正常血清を抗C2モノクローナル抗体を含有した30μlのVBと混合し、室温にて20分間インキュベートして調製した。次に、30μlのVB中の凝集IgG(1mg/ml)を、30μlのVBを加えられるネガティブコントロールを除く
、全てのサンプルに加え
て、補体を活性化した。サンプルは、その後37℃にて30分間インキュベートした。補体活性化は、すべてのサンプルに60μlのEDTA(0.1 M)を添加することにより停止させた。室温で15分おいた後、すべてのサンプルは、10mMのEDTAを加えたPBS/0.1% Tween 20で希釈し(血清の最終
的な希
釈は1から4000まで
だった)、ELISAで
活性化C3の試験を行った。ポジティブコントロールとして、新鮮なヒト血清を、モノクローナル抗体を含有しない30μlのVBと共にプレインキュベートした。ネガティブコントロールとして、新鮮なヒト血清を、VBのみ加え、モノクローナル抗体や凝集IgGを加えずにインキュベートした。このコントロール試験は2回行われ、そのうち1回は、全てのインキュベーションの間、溶けかかった氷の上で保持するようにした。結果は、活性化されたC3の任意単位で表し、熟成した正常血清の連続希釈物からなる標準曲線との比較によって算出した。活性化
されたC3のためのアッセイは、C3
b、C3biまたはC3
cを区別しないので、活性化
されたC3は、C3b/cと表記した。
図7は、ヒト血清へ凝集IgGを添加すると
、C3b/c
が生成されたことを示している(
図7のポジティブコントロール)。IgGの添加(図中のGamma-Quin IgG)、無関係なコントロールモノクローナル抗体(
図6の(抗FXI))または非阻害抗C
2-63
モノクローナル抗体は、凝集IgGによる血清中のC3b/
cの生成に影響を及ぼさなかった。対照的に、抗C2
-7、
-13、
-32、
-35、
-60及び
-5F2.4
モノクローナル抗体はいずれも、凝集IgGによるC3b/cの生成を阻害した(
図7)。
【0127】
実施例6:抗HLA抗体の細胞傷害性に対する精製マウス抗C2モノクローナル抗体の効果
【0128】
人間の移植における抗体媒介性拒絶反応のex vivoモデルとして、移植患者候補における補体依存性抗体の存在について検査する診断交差試験を、修正した。通常の試験では、ドナー細胞またはドナーと同じHLA分子を有する細胞は、ウサギ補体の存在下で移植患者の、熱で不活性化された血清と混合される。移植患者がドナーのHLA分子に対する抗体を有するケースでは、細胞が溶解される。これは、顕微鏡で評価され、細胞傷害性のスコアとして(1:溶解せず、から、8:>80%が溶解)が示される。抗C2モノクローナル抗体の効果を試験するため、新鮮なヒト血清でウサギ血清を置換する変更を行った。また、複数のHLA分子に対する抗HLA抗体について高力価を有している患者の血清を用いた。
【0129】
修正された交差試験は、次のように実施された。Terasaki tray(Greiner社)のウェルを、HLA-抗体によって高度に免疫化された血清1μlとPBMC懸濁液(2-5×106
細胞/ml)1μlとで満たし、室温にて1時間インキュベートした。一方、試験に用いるサンプルは、5μlの新鮮な正常血清、15μlのVB、および5μlの抗C2モノクローナル抗体を含有するVBとを混合することにより調製した。ポジティブコントロールサンプルは、5μlの新鮮な正常血清を抗C2モノクローナル抗体なしの20μlのベロナール緩衝液へ加えて調製し、また、ネガティブコントロールサンプルとしては、5μlの新鮮な正常血清、15μlのベロナール緩衝液及び5μlの100 mM EDTAを混合することにより調製し、全てのサンプルは、室温にて20分間インキュベートした。次に、各サンプルの10μlを2つのウェルにそれぞれ対となるように添加し、室温で2時間インキュベートした。最後に、ウェルにFluoroquench(SANBIO社)を5μl加えた。30分後、Terasaki trayは、自動顕微鏡(Leica)を用いて読み取り、いくつかの実験においては、細胞溶解を「Leica Q WIN」と呼ばれる特別なプログラムを用いて計算し、他の溶解試験では、経験豊富な技術者によって細胞溶解を採点した。「0」の細胞傷害性スコアは細胞溶解がないことを意味し、細胞の>80%が溶解したときには8のスコアが与えられた。
【0130】
抗C2抗体は、1mlあたり0.6から1.5mgの範囲の濃度で試験を行った。抗C2
-18、
-19、
-23、
-31および
-63
モノクローナル抗体は、抗HLA抗体で感作された細胞の補体依存性死滅に影響を及ぼさなかった(
図8参照)。対照的に、抗体媒介性の同種移植拒絶反応のためのこのモデルにおいて
、抗C2-13、
-32、
-35、
-60、
-7、
-24、
-79
モノクローナル抗体の全てが、補体依存性細胞傷害
性を阻害した。
【0131】
実施例7:マウス抗ヒト補体C2-13、-32、-35、-60および-5F2.4抗体によって認識されたヒト補体C2における各ドメインの特徴付け
【0132】
(a). ウェスタンブロッティングによる、グリコシル化組換えヒトサブコンポーネントC2aおよびC2b上の抗C2-13、-32、-35、-60および-5F2.4モノクローナル抗体のエピトープのマッピング
【0133】
グリコシル
化組換えヒトC2(範囲は125-500ng/
レーン、
図9参照;U-protein Express)またはC1
s切断
済グリコシル化組換えヒトC2(範囲は62.5-1000ng/
レーン、
図9参照;C2切断の手法は、実施例1(b)を参照)は、4-12% Tris-BisゲルとMOPSランニングバッファー(Invitrogen)を用いた非還元状態下のプレキャストSDS-PAGE(NuPage(登録商標)Novex(登録商標)system)で電気泳動した。次に、C2タンパク質を、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)転写膜(Millipore)上にエレクトロブロットした。PBS/0.05% Tween 20/1% BSAフラクションV(Roche)で室温にて20分間ブロッキングした後、PDVF膜
を、抗C2モノクローナル抗体の抗C
2-5F2.4(100 ng/mL)、抗C2-13(200 ng/mL)、抗C2-32(200 ng/mL)、抗C2-35(100 ng/mL)、および、抗C2-60(200 ng/mL)と、室温にて一時間インキュベートした。PBS/0.05% Tween 20にて十分に洗浄した後、抗C2モノクローナル抗体の結合を、1:10,000に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスFcγ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)で室温にて1時間処理し、引き続き比色検出のための調製済みTMB基質(Sigma)で処理し
て、決定した。
【0134】
図9に示されたように、調べた全ての抗C2モノクローナル抗体は、非切断グリコシル化組換えヒトC2(おおよそ100kDa)に結合した。また
、抗C2-5F2.4および抗C2-35
モノクローナル抗体は、グリコシル
化サブコンポーネントC2
b(おおよそ30kDa)を特異的に認識したが
、抗C2-13
及び抗C2-32
モノクローナル抗体は、グリコシル化サブコンポーネントC2a(おおよそ70kDa)を特異的に認識した
。抗C2-60
モノクローナル抗体は、グリコシル化されたサブコンポーネント
のC2a
及びC2bの両方に結合するように見受けられた。
【0135】
(b). ELISAにおける、グリコシル化組換えヒトサブコンポーネントC2aへの、抗C2-13、-32、-35、-60および-5F2.4モノクローナル抗体の結合
【0136】
グリコシル化組換えヒトC2aを、サイズ排除クロマトグラフィー(Yarra(商標) 3U sec 2000 300× 4.60 column)によって、C1s切断済C2から精製した(C2切断手順については実施例1(b)を参照)。プレキャストゲル NuPage(登録商標) Novex(登録商標)system(Invitrogen)を用いたSDS-PAGE上で、C2aの調製物は、>95%均質であった(図示せず)。その後、精製した抗C2モノクローナル抗体を、さらに、精製C2aへの結合(1ウェルあたり200ng)を、上記実施例1(c)に記載のELISA法を用いて分析した。
【0137】
図10Aに示され、そしてウェスタンブロットのデータと一致するものであ
り(実施例7(a)参照)、抗C2-13及び抗C2-32モノクローナル抗体は、精製されたグリコシル化組換えC2aに対して用量依存性結合(すなわち、0.1μg/mLで飽和)を示したが、抗C2-60モノクローナル抗体は、C2aとの中間的な結合を示し、抗C2-5F2.4および抗C2-35モノクローナル抗体はほとんどC2aに結合しなかった。微量の非切断グリコシル化組換えC2から、観察された抗C2-5F2.4および抗C2-35モノクローナル抗体の結合が説明された。
【0138】
(c). ELISAにおける、脱グリコシル化され、変性し、還元された組換えヒトC2への、抗C2-5F2.4モノクローナル抗体の結合
【0139】
組換えC2の脱グリコシル化は、上記実施例1の(b)において記載の手順を用いて行い、ただし、反応緩衝液は変性/還元剤なしのものとし、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGアーゼF; New England Biolabs社)を用いた処理は、37℃にて一晩行った。組換えC2の変性および還元は、NuPAGE(登録商標)LDS Sample Buffer 4X(Invitogen)に、NuPAGE(登録商標)Reducing Agent 10X(Invitrogen)を併用または併用無しで行った。その後、精製した抗C2-5F2.4モノクローナル抗体は、さらに、未処理の組換えC2(1ウェルあたり200ng)、脱グリコシル化組換えC2(1ウェルあたり100ng)、変性組換えC2(1ウェルあたり200ng)、および、還元された組換えC2(1ウェルあたり200ng)との結合について、上記実施例1(c)に記載したELISA法を用い、分析した。
【0140】
図10Bに示すように
、抗C2-5F2.4
モノクローナル抗体は用量依存的に脱グリコシル化(非変性/非還元)組換えC2
へ結合した。
図10Cに示すように
、抗C2-5F2.4
モノクローナル抗体は用量依存的
に変性組換えC2への結合を示し、還元された(変性)組換えC2へ
は結合しなかった。
【0141】
要約すると(表2参照)、抗C2-5F2.4モノクローナル抗体は、ヒトC2のサブコンポーネントC2b上のエピトープを認識し、ヒトC2のサブコンポーネントC2a上のエピトープは認識しないように見受けられた(実施例7(a)及び7(b))。サブコンポーネントC2bへの抗C2-5F2.4モノクローナル抗体の結合は、ヒトC2の、C1sによる切断(実施例3(b)を参照)、脱グリコシル化および変性に影響を受けないよう見受けられた。しかし、内部のシステイン架橋は、サブコンポーネントC2bへの抗C2-5F2.4モノクローナル抗体の結合に重要であるように見受けられた。
【0142】
(表2
:抗C2-5F2.4
モノクローナル抗体の結合特性)
【表2】
【0143】
実施例8:抗C2-13、-32、-35、-60および-5F2モノクローナル抗体は、新鮮なヒト血清中における流体相での凝集IgGによるC2の切断を阻害する
【0144】
抗C2モノクローナル抗体の阻害のメカニズムを調べるために、血清10μlを、
0.48mg/mlの抗C2モノクローナル抗体10μlと共に
、室温にてインキュベートした。その後、1mg/mlの凝集IgGを10μl添加し、
サンプルを37℃にて30分間インキュベートした。5μlの水と35μlのサンプルバッファーをサンプルに添加し、その後10分間煮沸した。最後に、15μlの混合物を、7.5%SDS-PAGE上で分離した。サンプルはブロットされ、5μgのビオチン化抗C2-5F2.4と共にインキュベートされた。前の実施例に示したように、この抗体は、天然のC2とC2bとに特異的に結合し、分子量はおおよそ30
,000である。したがって、凝集IgGでの活性化の前に血清へ添加される
のが非阻害抗体の場
合は、C2の大部分はC2bとして血清サンプル中に存在
し(そして、C2aはブロット上で可視化されない)、また、少数
は分子量おおよそ90
,000のインタクトなC2と
して、血清サンプル中に存在することが予想される。確かに、こ
のことはコントロールのヒトIgG(
図11、IgGで標識されたレーン)と
、抗C2を加えないコントロールのモノクローナル抗体(
図11でCと表示のレーン)で観察され、および、非阻害C2モノクローナル抗体(
図11の63で標識されたレーン)でも観察され、おそらく、いくつかの立体障害のために、
抗C2を加えないコントロールのモノクローナル抗体で観察されたものに比べて、このモノクローナル抗体でのC2の切断
はやや少なかった。他のすべてのモノクローナル抗体は
、凝集IgGと
の補体系の活性化の際に血清中のC2の切断を減少させた(
図11)。
【0145】
実施例9:抗C2-13、-32、-35、-60および-5F2.4モノクローナル抗体は、遊離している流体相でのグリコシル化組換えヒトC2が、ヒトC1sにより切断されることを阻害しない
【0146】
抗C2モノクローナル抗体の阻害のメカニズムを調べるために、グリコシル化組換えヒトC2を、抗C2-5F2.4、抗C2-13、抗C2-32、抗C2-35および抗-C2-60モノクローナル抗体と共に(C2と抗体のモル比は1:2)室温にて30分間プレインキュベートした。並行して、マウスIgG1κ及びIgG2aκのアイソタイプコントロール(共にBD Biosciences社から)をネガティブコントロールとして試験した。その後、ヒトC1s(C1sとC2の比は1:25; Calbiochem)を37℃で1時間添加した。混合物は、プレキャストゲルNuPage(登録商標)Novex(登録商標)system(Invitrogen)を用いて、SDS-PAGEにて分析され、そしてクマシーブリリアントブルーで染色された。
【0147】
図12に示されるように、抗C2モノクローナル抗体のいずれも、C1sによる組換えC2の切断を阻害しなかった。さらには、高濃度(C2と抗体のモル比がおおよそ1:3から1:7の時)の抗C2モノクローナル抗体を使用した場合においても、C1sによ
るC2の切断には影響が観察されなかった(データは示さない)。まとめると、これらの結果は、抗C2-5F2.4、抗C2-13、抗C2-32、抗C2-35および抗C2-60モノクローナル抗体は、C1sの切断部位(すなわち、-Arg
243-|-Lys
244結合;http://www.uniprot.org/uniprot/P09871)のエピトープまたはその近傍を認識しなかったことを証明した。
【0148】
実施例10: 縮重プライマーを用いたマウス抗C2-5F2.4、-13、-32、-35および-60の分子遺伝学的特性評価
【0149】
ハイブリドーマ細胞をPBSで洗浄し、5×106個の細胞を含むようマイクロバイアルに分注し、-80℃でペレットとして保管した。これら細胞のペレットは、RNeasy Mini Isolation Kit(QIAGEN)を用いてRNAを抽出するために使用された。RNA濃度を測定し(A260nm)、RNAを-80℃で保管した。逆転写酵素によって、cDNAが2μgのRNAからReverAid(商標)H Minus First Strand cDNA Synthesis Kit(Fermentas)を用いて合成され、-20℃で保管された。抗体のアイソタイプに基づいて、表3に示されるプライマーが、マウス抗ヒトC2-5F2.4、-13、-32、-35及び-60のV領域を増幅するように設計された。
【0150】
(表3:抗C2モノクローナル抗体のcDNAの
クローン化に用いられたPCRプライマー)
【表3】
s = センス
、as = アンチセンス
、cs = 定常領域
+ VL =可変軽鎖領域
、VH =可変重鎖領域; * Bioceros内部コーディングシステムに従った番号; ** 縮重プライマー: M = C
又はA; V = G、A
又はC; N = A、C、G
又はT; Y = C
又はT; R = A
又はG; W = A
又はT;
及びS = G
又はC
。
【0151】
プライマー1はマウスVH領域のフレームワーク1(FR1)にアニーリングするよう設計されたセンスプライマーであり;プライマー2と204は、マウス重鎖の定常領域にアニーリングするアンチセンスプライマーである。プライマー213と265は、共にマウスVL領域(κ)のFR1にアニーリングするセンスプライマーであり;プライマー4と201は、共にマウスκ軽鎖の定常領域にアニーリングするように設計されたアンチセンスプライマーである。最後に、プライマー317は、FR1領域の上流のマウスのシグナルペプチド配列の一部を認識するように設計された。
【0152】
様々なPCRが、表3に示すプライマーの組み合わせを用いて行われた。マウス抗C2-5F2.4、-13、-32、-35および-60のV領域が増幅された。注目すべきことに、マウス抗C2-35及び-60の可変軽鎖領域は、アンチセンスプライマー201のみを用いて増幅がされた。
【0153】
Accuprime(商標) Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)が、マウス抗C2-5F2.4、-13、-32、-35及び-60の重鎖および軽鎖の可変領域を増幅するために使用された。PCR産物は1%アガロースゲルにて分析された。PCR反応産物はゲル精製され、pCR-Blunt II-TOPO(登録商標)ベクターにクローニングされた。PCR挿入物を含むプラスミドから、クローニングされた挿入物が、抗C2モノクローナル抗体の可変領域のコンセンサス配列情報を得るためのDNA配列決定(ServicXS B.V., Leiden, オランダ、および、Macrogen, Amsterdam, オランダによって実施された)により解析された。試験を行った全てのモノクローナル抗体に関する、少なくとも3つの有益な重鎖可変及び軽鎖可変領域の配列情報が得られた。使用されるセンスプライマーの性質のために、N末端側の6-8番目のアミノ酸は、ほとんど全ての決定されたアミノ酸コンセンサス配列のために使用された縮重プライマーによって決定されていることに留意すべきである。理論的には、これらの領域において、元のマウス配列は異なる場合がある。マウス抗C2-5F2.4、-13、-32、-35および-60の重鎖可変および軽鎖可変領域のアミノ酸コンセンサス配列が、それぞれ、配列番号2及び配列番号3、配列番号10及び配列番号11、配列番号18及び配列番号19、配列番号26及び配列番号27、配列番号34および配列番号35として決定された。
【0154】
本明細書における明らかな先行公開文献のリストまたは考察は、必ずしも、それら文書が最新技術の一部であるか、または一般的な知識であることの確認として解釈されるべきではない。
【0155】
実施例11:キメラ型ヒトIgG1κおよび/またはヒトIgG4κ(すなわち、定常ヒトIgGκドメインを定常マウスIgGκドメインと交換する)抗ヒト補体C2-5F2.4、-13、-32、-35および-60の作製
【0156】
特定されたマウス可変領域配列情報(実施例10を参照のこと)に基づいて、マウス抗C2-5F2.4、-13、-32、-35および-60モノクローナル抗体のキメラ型ヒト抗体のバージョンを設計した。この目的を達成するために、CHO細胞-最適化されたcDNA配列番号47(抗ヒトC2-32モノクローナル抗体のキメラ型ヒトIgG1重鎖をコード)およびcDNA配列番号48(抗ヒトC2-32のキメラ型ヒトκ軽鎖をコードする)がGENEART(Regensburg, ドイツ)より購入され、これらには、マウスのシグナルペプチドをエンコードされ、それぞれ、ヒトIgG1定常領域に連結されたマウス可変重鎖、または、ヒトκ定常領域に連結されたマウス可変軽鎖のいずれかが続いている。
【0157】
また、ヒト抗C2-5F2.4-13、-32、-35および-60のキメラ型の(安定化)IgG4形式のものを作製した。このために、可変重鎖および可変軽鎖領域は表4に示したプライマーを用いてPCR増幅した。サブクローン化の目的のために、適切な制限部位が、可変領域をコードするcDNAのN末端およびC末端部分に組み込まれた。抗ヒト補体C2抗体32のκ軽鎖は増幅されなかったが、これは、キメラ型ヒトIgG1κの作製(上記参照)に使用されたキメラ型ヒトκ構築物から、構築物が入手可能であったためである。野生型のマウスcDNAが、抗ヒト補体C2抗体32の可変重鎖を除いて、すべてのPCR反応の鋳型として用いられた。後者については、キメラ型ヒトIgG1構築物のCHO-最適化cDNA(上記参照)が用いられた。
【0158】
(表4
:抗C2モノクローナル抗体の可変重鎖および可変軽鎖領域
を増幅
するため
に使用
されたPCRプライマー)
【表4】
s = センス
、as = アンチセンス
+ VL = 可変軽鎖領域
、VH = 可変重鎖領域; * Bioceros内部コーディングシステムに従った番号; ** 縮重プライマー: M = C
又はA; V = G、A
又はC; N = A、C、G
又はT; Y = C
又はT; R = A
又はG; W = A
又はT;
及びS = G
又はC。
【0159】
Accuprime(商標) Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)が、抗C2-5F2.4、-13、-35及び-60の重鎖及び軽鎖の可変領域、および抗C2-32の重鎖の可変領域を増幅するために使用された。PCR反応産物は1%アガロースゲルで解析された。PCR反応産物はゲル精製され、pCR-Blunt II-TOPO(登録商標)ベクターに、配列解析のためにクローニングされた。PCR挿入物を含むプラスミドから、クローニングされた挿入物が、適切な制限部位を含む正確な可変領域情報を得るためのDNA配列決定(Macrogen, Amsterdam, オランダによって実施された)により解析された。その後、可変重鎖領域は、SacI/NdeIを用い、安定化されたヒトIgG4重鎖定常領域が続くマウスシグナルペプチドをコードするcDNAを含有するpcDNA3.1誘導体である発現プラスミドv319にサブクローン化された。可変軽鎖領域は、SacI/RsrIIを用い、ヒト軽鎖定常領域と組み合わされたマウスシグナルペプチドをコードするcDNAを含有する、類似する発現プラスミドv322にサブクローン化された。
【0160】
キメラ型ヒトIgG4κ抗ヒト補体C2抗体のcDNA配列については、配列番号42(抗C2-5F2.4のキメラ型ヒトIgG4重鎖をコード)、配列番号43(抗C2-5F2.4のキメラ型ヒトκ軽鎖をコード)、配列番号44(抗C2-13のキメラ型ヒトIgG4重鎖をコード)、配列番号45(抗C2-13のキメラ型ヒトκ軽鎖をコード)、配列番号46(抗C2-32のキメラ型ヒトIgG4重鎖をコード)、配列番号48(抗C2-32のキメラ型ヒトκ軽鎖をコード)、配列番号49(抗C2-35のキメラ型ヒトIgG4重鎖をコード)、配列番号50(抗C2-35のキメラ型ヒトκ軽鎖をコード)、配列番号51(抗C2-60のキメラ型ヒトIgG4重鎖をコード)、および、配列番号52(抗C2-60のキメラ型ヒトκ軽鎖をコード)を参照されたい。
【0161】
キメラ型ヒトIgG1κ及びキメラ型ヒトIgG4κ抗ヒト補体C2抗体のアミノ酸配列については、配列番号53(抗C2-5F2.4のキメラ型ヒトIgG4重鎖)、配列番号54(抗C2-5F2.4のキメラ型ヒトκ軽鎖)、配列番号55(抗C2-13のキメラ型ヒトIgG4重鎖)、配列番号56(抗C2-13のキメラ型ヒトκ軽鎖)、配列番号57(抗C2-32のキメラ型ヒトIgG4重鎖)、配列番号58(抗C2-32のキメラ型ヒトIgG1重鎖)、配列番号59(抗C2-32のキメラ型ヒトκ軽鎖)、配列番号60(抗C2-35のキメラ型ヒトIgG4重鎖)、配列番号61(抗C2-35のキメラ型ヒトκ軽鎖)、配列番号62(抗C2-60のキメラ型ヒトIgG4重鎖)、および配列番号63(抗C2-60のキメラ型ヒトκ軽鎖)を参照されたい。
【0162】
実施例12:マウス-ヒトキメラ型IgG1κおよび/またはIgG4κ抗ヒト補体C2抗体5F2.4、13、32、35および60の結合能の特性評価
【0163】
キメラ型マウス-ヒト抗体(抗C2-32のヒトIgG1κバージョン、および、抗C2-5F2.4、-13、-32、-35および-60のヒトIgG4κバージョン)は、FreeStyle(商標) MAX CHO(CHO-S細胞)Expression System(Invitrogen)を用いて発現させた。発現されたキメラ型マウス-ヒト抗ヒト補体C2抗体は、アフィニティークロマトグラフィーのプロテインAカラム(GE Healthcare)を用いて精製した。実施例3に記載したのと同じELISA法を使用して、すべての抗C2キメラ型モノクローナル抗体が、高濃度(1ウェルあた200ng)と低濃度(1ウェルあたり25ng)の組換えC2への結合について試験が行われた。簡単に述べると、ELISAプレート(Corning)を、4℃で一晩、PBS中でC2の指示量にて処理してコーティングした。PBS/0.05% Tween 20で十分に洗浄した後、プレートをPBS/0.05% Tween20/1% BSA fraction V(Roche)で室温で1時間のブロッキング処理を行った。その後、プレートを、0、0.00002-20.0(ブロック緩衝液中で10倍希釈段階)μg/mlのプロテインA精製されたキメラ型マウス-ヒトIgG1κおよび/またはIgG4κ抗C2-5F2.4、-13、-32、-35および-60と共に、室温にて1時間インキュベートした。PBS/0.05% Tween 20で十分に洗浄した後、抗体の結合を、1:5000に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG特異的(重鎖および軽鎖)抗体(Jackson ImmunoResearch)で室温にて1時間処理し、次いで比色検出のための調製済みTMB基質(Invitrogen)を添加した。1M H2SO4を添加した後、光学密度を、マイクロプレートリーダー(BioRad)を用いて450nmの波長で(参照波長は655nmで)測定した。
【0164】
図13(平均
値±SD、n=2)
は、キメラ型抗体の結合特性は、精製されたマウス抗体のもの(
図4)と全く同じであったことを示している。キメラ型の抗C2-13
及び抗C2-32は、低濃度でコートされたC2に十分に結合せず、一方で
その他のキメラ型抗体は両方の濃度のC2によく結合した。そのため、キメラ型マウス-ヒト抗C2-13(chuIgG4κ)
及び-32
(ヒトIgG1κバージョンおよびヒトIgG4κバージョン)の(相対)親和性は、キメラ型マウス-ヒト(chuIgG4κ)抗C2-5F2.4、-35および-60
のものよりも低いように見受けられた。
【0165】
実施例13:マウス-ヒトキメラ型IgG4 抗ヒトC2-5F2.4、-13、-32、-35および-60の機能的活性
【0166】
マウス-ヒトキメラ型の抗C2モノクローナル抗体
を、実施例4(固相IgGに対するC3固定)、実施例5(凝集IgGによる血清中の流
体相C3の活性化)および実施例6(抗HLA抗体による補体依存性細胞傷害
性)に記載されているのと同じアッセイで試験した。これらのアッセイにおいて5種類のキメラ型マウス-ヒト抗体の機能的活性は、マウス抗体について記載されたものと同様であって、すなわち、それらは、固相IgGに対するC3の固定を阻害し、凝集IgGによる血清中のC3の活性化を阻害し(
図14)、抗HLA抗体による補体依存性細胞傷害を阻害した(
図15)。
【0167】
実施例14:シグナルペプチド領域でのプライマーアニーリングによるマウス抗C2-5F2.4、-35および-60の可変領域のN末端アミノ酸配列の決定
【0168】
実施例10で述べたように、理論的には、可変領域のコンセンサスマウスN末端アミノ酸配列は、縮重センスプライマーを使用することにより、決定された配列とは異なるものとすることができる。したがって、抗C2-5F2.4、-35および-60の重鎖可変および軽鎖可変領域を、表5に記載されたプライマー、すなわち、マウス抗体のシグナルペプチド領域内にアニールするセンスプライマーを使用することによって、再度測定した。
【0169】
(表5:抗C2-5F2.4, -35および-60の
コンセンサスマウス可変重鎖および可変軽鎖領域を増幅するために使用
されたPCRプライマー)
【表5】
s = センス
、as = アンチセンス
+ VL = 可変軽鎖領域
、VH = 可変重鎖領域; * Bioceros内部コーディングシステムに従った番号; ** プライマー: M = C
又はA; V = G、A
又はC; N = A、C、G
又はT; Y = C
又はT; R = A
又はG; W = A
又はT;
及びS = G
又はC。
【0170】
RNAは、RNeasy Mini Isolation Kit(QIAGEN)を用いてハイブリドーマ細胞から抽出された。RNA濃度を測定し(A260nm)、RNAを-80℃で保管した。逆転写酵素によってcDNAが2μgのRNAからReverAid(商標)H MinusFirst Strand cDNA Synthesis Kit(Fermentas)を用いて合成され、-20℃で保管された。
【0171】
Accuprime(商標) Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)が、マウス抗C2-5F2.4、-35及び-60の重鎖および軽鎖の可変領域を増幅するために使用された。使用したプライマーのセットを、表5に示す。PCR反応産物はゲル精製され、pCR-Blunt II-TOPO(登録商標)ベクターに、配列解析のためにクローニングされた。PCR挿入物を含むプラスミドから、クローニングされた挿入物が、これら3つの抗C2モノクローナル抗体の可変領域のコンセンサス配列情報を得るためのDNA配列決定(Macrogen, Amsterdam, オランダによって実施された)により解析された。全ての試験を行ったモノクローナル抗体に関する、少なくとも3つの有益な重鎖可変及び軽鎖可変領域の配列情報が得られた。
【0172】
表5からのプライマーセットを使用することにより、抗C2-5F2.4のコンセンサスマウス可変重鎖アミノ酸配列および抗C2-35および-60のコンセンサスマウス可変軽鎖アミノ酸配列が、実施例10において見出されたアミノ酸配列と(すなわち、配列番号2, 27および35とそれぞれ)同じであることが発見された。
【0173】
しかしながら、抗C2-5F2.4のN末端の可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号96)は、実施例10で見出された抗C2-5F2.4のN末端の可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号3)とは1アミノ酸(I2N)異なっている。抗C2-35のN末端の可変重鎖アミノ酸配列(配列番号97)は、実施例10で見出された抗C2-35のN末端の可変重鎖アミノ酸配列(配列番号26)とは1アミノ酸(Q1E)が異なっている。抗C2-60のN末端の可変重鎖アミノ酸配列(配列番号98)は、実施例10で見出された抗C2-60のN末端の可変重鎖アミノ酸配列(配列番号34)とは3アミノ酸(Q3A、Q5K及びQ6E)が異なっている。
【0174】
実施例15:ヒト化IgG4/κ抗ヒト補体C2-5F2.4の作製
【0175】
決定されたマウス抗C2-5F2.4のマウス可変領域に基づき(重鎖可変領域についての配列番号2、および、軽鎖可変領域についての配列番号96、実施例13を参照のこと)、ヒト化抗体のバージョンを作製した。
【0176】
マウス抗C2-5F2.4の、ヒト化軽鎖可変領域の配列情報およびヒト化重鎖可変領域の配列情報を、Germline Humanisation(CDR-grafting)technology(Antitope Ltd, ケンブリッジ, 英国により実施)を用いて得た。ヒト化軽鎖および重鎖の可変領域のアミノ酸配列情報については、配列番号99(5F2.4-VL1)、100(5F2.4-VL2)、101(5F2.4-VL3)、102(5F2.4-VL4)、および103(5F2.4-VH1)、104(5F2.4VH2)、105(5F2.4-VH3)、106(5F2.4-VH4)をそれぞれ参照のこと。
【0177】
この設計の後、cDNA配列(配列番号107、108、109および110(ヒト化κ軽鎖5F2.4の各バージョンの全長、すなわち、VL1、VL2、VL3およびVL4をそれぞれコードしている)、および、配列番号111、112、113および114(ヒト化重鎖IgG4 5F2.4の各バージョンの全長、すなわち、VH1、VH2、VH3およびVH4をそれぞれコードしている)を参照)を、GENEART(Regensburg, ドイツ)より購入し、それは、ヒトκ定常領域に連結するヒト化可変軽鎖が続くシグナルペプチドをコードする、およびヒトIgG4定常領域に連結するヒト化可変重鎖が続くシグナルペプチドをコードする。さらに、すべてのヒト化抗体は、安定化された(Angalら、Mol Immunol 1993, 30: 105)ヒトIgG4分子として発現された。適切な制限酵素を用いて、作製されたcDNAは、pcDNA3.1由来の発現プラスミドにサブクローニングされた。
【0178】
ヒト化抗C2-5F2.4のバージョンは、FreeStyle(商標)293 Expression System(Life Technologies)を用いて発現させた。生成されたヒト化抗体は、アフィニティークロマトグラフィーのプロテインAカラム(GE Healthcare)を用いて、精製をした。このようにして、抗体5F2.4の8種類の精製されたヒト化バージョン、すなわち、VL1VH1、VL2VH1、VL1VH2、VL2VH2、VL3VH3、VL4VH3、VL3VH4およびVL4VH4が作製された。
【0179】
全長ヒト化抗C2-5F2.4抗体のアミノ酸配列情報については、配列番号115、116、117および118(ヒト化κ軽鎖5F2.4のバージョン、すなわち、VL1、VL2、VL3及びVL4を、それぞれコードしている)、および、配列番号119、120、121および122(ヒト化IgG4重鎖5F2.4のバージョン、すなわち、VH1、VH2、VH3およびVH4を、それぞれコードしている)を参照のこと。
【0180】
実施例16:ヒト化IgG4/κ抗ヒト補体C2-5F2.4の結合特性解析
【0181】
ヒト化抗C2-5F2.4モノクローナル抗体のバージョンVL3VH3、VL4VH3、VL3VH4、および、VL4VH4の、C2への結合を、上記実施例12に記載した
ものと同様にして(組換えヒトC2は2μg/mlでプレートに固定化した)、ELISAにより評価した。
図17に示されたように、試験を行った全ての4つのヒト化抗5F2.
4モノクローナル抗体のバージョンは、キメラ型抗C2-5F2.4モノクローナル抗体と比較して、固相C2に対して、類似の結合能を示した。
【0182】
実施例17:ヒト化IgG4/κ抗ヒト補体C2-5F2.4の機能的活性
【0183】
実施例6において、マウス抗C2抗体について記載されるのと同様にして、修正された交差試験を行った。
【0184】
最初の抗HLAモノクローナル抗体(クローンW6/32)
が、細胞を感作するために使用された。キメラ型抗C2-5F2.4およびヒト化抗C2抗体のバージョンVL3VH3、VL4VH3、VL3VH4、およびVL4VH4を、抗体:C2のモル比を5:1から0.312:1の
範囲に設定して(正
常血清中の天然C2濃度が20μg/mlであると仮定した)試験を行った。全ての抗C2モノクローナル抗体(キメラ型および4種類のヒト化抗体のバージョン)が、用量依存的に
、抗HLA抗体W6/32-感作細胞
の補体依存
性の死滅を阻害した(
図18を参照)。VL3含有バージョン(すなわち、VL3VH3とVL3VH4)は、交差
試験でキメラ型抗C2-5F2.4モノクローナル抗体と同等の阻害活性を示した。また、VL3含有バージョン(すなわち、VL3VH3とVL3VH4)は、VL4含有バージョン(すなわち、VL4VH3とVL4VH4)よりも優れているように見受けられた。
【0185】
加えて、細胞を感作するために抗HLA抗体を高レベルで含む患者の血清を用いた交差試験も行
ったが、これは、より密接に生理学的状況に近づけ
られたものである。キメラ型抗C2-5F2.4およびヒト化抗C2抗体のバージョンVL3VH3、VL4VH3、VL3VH4、およびVL4VH4は、160μg/mlにて試験を行った。すべての抗C2モノクローナル抗体(キメラ型および4種類のヒト化抗体の各バージョン)は、血清抗HLA抗体感作細胞の補体依存性殺傷を阻害した(
図19を参照)。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
(a)それぞれ配列番号2および配列番号3;それぞれ配列番号2および配列番号96;それぞれ配列番号10および配列番号11;それぞれ配列番号18および配列番号19;それぞれ配列番号26および配列番号27;それぞれ配列番号97および配列番号27;それぞれ配列番号34および配列番号35;または、それぞれ配列番号98および配列番号35のアミノ酸配列を含む;または、
(b)それぞれ配列番号99および配列番号103;それぞれ配列番号99および配列番号104;それぞれ配列番号99および配列番号105;それぞれ配列番号99および配列番号106;それぞれ配列番号100および配列番号103;それぞれ配列番号100および配列番号104;それぞれ配列番号100および配列番号105;それぞれ配列番号100および配列番号106;それぞれ配列番号101および配列番号103;それぞれ配列番号101および配列番号104;それぞれ配列番号101および配列番号105;それぞれ配列番号101および配列番号106;それぞれ配列番号102および配列番号103;それぞれ配列番号102および配列番号104;それぞれ配列番号102および配列番号105;または、それぞれ配列番号102および配列番号106のアミノ酸配列を含む;または、
(c) (a)および/または(b)で特定された各アミノ酸配列を含むが、前記各アミノ酸配列の一方または両方が1~5個のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む、
免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を含むヒト補体因子C2に結合する結合分子で、その結合分子が、ヒト補体因子C2のC2aドメインのエピトープ、ヒト補体因子C2のC2bドメインのエピトープ、または、その両方に結合する、結合分子。
(態様2)
Fab断片、単鎖Fv(scFv)断片、抗体、またはそ
の抗原結合断片である、態様1に記載の結合分子。
(態様3)
ヒト化または脱免疫化された、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体などの、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM抗体である、態様2に記載の抗体。
(態様4)
(a) アミノ酸配列の配列番号53および配列番号54;配列番号55および配列番号56;配列番号57および配列番号58;配列番号57および配列番号59;配列番号60および配列番号61;または配列番号62および配列番号63のアミノ酸配列を含む;または、
(b) アミノ酸配列の配列番号115および配列番号119;配列番号115および配列番号120;配列番号115および配列番号121;配列番号115および配列番号122;配列番号116および配列番号119;配列番号116および配列番号120;配列番号116および配列番号121;配列番号116および配列番号122;配列番号117および配列番号119;配列番号117および配列番号120;配列番号117および配列番号121;配列番号117および配列番号122;配列番号118および配列番号119;配列番号118および配列番号120;配列番号118および配列番号121;または、配列番号118および配列番号122のアミノ酸配列を含む;または
(c) (a)および/または(b)で特定された各アミノ酸配列を含むが、前記各アミノ酸配列の一方または両方が1~5個のアミノ酸置換を含み、前記1~5個のアミノ酸の置換はCDR領域にはない、
態様3に記載の抗体。
(態様5)
態様1~4のいずれか一項に記載の結合分子又は抗体をコードする核酸分子。
(態様6)
配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113または配列番号114の核酸配列を含む、態様5に記載の核酸分子。
(態様7)
態様5または態様6に記載の核酸分子を含む遺伝子送達ビヒクルまたはベクター。
(態様8)
態様5~6に記載の核酸分子または態様7に記載の遺伝子送達ビヒクル
もしくはベクターを含む
、単離細胞または組換え細胞、またはインビトロの細胞培養細胞。
(態様9)
結合分子を作製するための方法であって、結合分子は、態様1~4のいずれか1項に記載の結合分子、または、態様3または態様4に記載の抗体であることを特徴とする方法。
(態様10)
さらに、結合分子の収集を含む、態様9に記載の方法。
(態様11)
治療に用いるための態様1~4のいずれか一項に記載の結合分子または抗体。
(態様12)
過剰または過活動補体活性に罹患した個体の治療に使用するための態様1~4のいずれか1項に記載の結合分子または抗体。
(態様13)
炎症性疾患、神経疾患または虚血-再灌流(I/R)傷害を患う個体または
患う危険のある個体の治療に使用するための態様1~4のいずれか1項に記載の結合分子または抗体。
(態様14)
前記個体が、抗体媒介性炎症
、急性心筋梗塞等の虚血再灌流障害、脳卒中、敗血症、関節リウマチなどの免疫複合体疾患、全身性エリテマトーデス、血管炎、多発外傷、多巣性運動ニューロパチー、腎臓同種移植の抗体媒介性拒絶、(自己)免疫溶血性貧血、心肺バイパスおよび他の血管手術、特発性膜性腎症、
または、グッドパスチャー症候群を患っている、態様13に記載の使用のための結合分子または抗体。
(態様15)
態様1-4のいずれか1項に記載の結合分子または抗体、および、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。