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特許7163256光トランシーバおよびネットワークシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】光トランシーバおよびネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 69/08 20220101AFI20221024BHJP
   H04L 43/10 20220101ALI20221024BHJP
   H04L 41/06 20220101ALI20221024BHJP
【FI】
H04L69/08
H04L43/10
H04L41/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019156067
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021034978
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】517121630
【氏名又は名称】APRESIA Systems株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 統
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 絢也
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0249567(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0140126(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0294154(US,A1)
【文献】特開2010-263373(JP,A)
【文献】特開2011-239220(JP,A)
【文献】特開2002-163164(JP,A)
【文献】特開2011-248243(JP,A)
【文献】特開2004-282155(JP,A)
【文献】TTC仕様書 TS-1000 光加入者線インタフェース -100Mbit/s 一心WDM方式-,第2版,社団法人情報通信技術委員会,2004年01月27日,P.1-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下位装置に光ファイバを介して接続可能な光コネクタと、
上位装置のポートに接続可能な電気コネクタと、
受信した電気信号を光信号に変換して前記光コネクタへ送信し、前記光コネクタからの光信号を電気信号に変換して前記電気コネクタ側へ送信する光信号インタフェースと、
前記光信号インタフェースと前記電気コネクタとの間に設けられ、前記下位装置との間で用いられるTS-1000規格に基づく保守フレームと、前記上位装置との間で用いられるIEEE 802.3ah規格またはIEEE 802.1ag規格に基づくOAM(Operations, Administration, Maintenance)フレームとを相互に変換するフレーム変換回路と、
を有する光トランシーバ。
【請求項2】
請求項1記載の光トランシーバにおいて、
前記フレーム変換回路は、前記TS-1000規格で規定される前記保守フレーム内の制御情報および状態情報と、前記IEEE 802.3ah規格で規定される前記OAMフレーム内のEFM(Ethernet in First Mile)データとを、予め定めた対応関係に基づいて相互に変換するコマンドデータ変換回路を有する、
光トランシーバ。
【請求項3】
請求項1記載の光トランシーバにおいて、
前記フレーム変換回路は、前記TS-1000規格で規定される前記保守フレーム内の制御情報および状態情報と、前記IEEE 802.1ag規格で規定される前記OAMフレーム内のCFM(Connectivity Fault Management)データとを、予め定めた対応関係に基づいて相互に変換するコマンドデータ変換回路を有する、
光トランシーバ。
【請求項4】
請求項2記載の光トランシーバにおいて、
前記フレーム変換回路は、
前記下位装置からの前記保守フレームを受信した際に、前記保守フレーム内の前記制御情報、前記状態情報および管理情報を、前記コマンドデータ変換回路による変換後の前記EFMデータ内の所定の領域に格納する保守フレーム埋め込み回路と、
前記上位装置からのフレームを受信した際に、当該フレームが独自仕様に基づくイーサネットフレームである管理フレームであるか否かを識別する管理フレーム識別回路と、
前記管理フレーム識別回路の識別結果が前記管理フレームであった場合に、前記管理フレーム内の前記所定の領域から前記保守フレームの前記制御情報、前記状態情報および前記管理情報を抽出する保守フレーム抽出回路と、
を有する、
光トランシーバ。
【請求項5】
下位装置に光ファイバを介して接続可能な光コネクタと、
上位装置のポートに接続可能な電気コネクタと、
受信した電気信号を光信号に変換して前記光コネクタへ送信し、前記光コネクタからの光信号を電気信号に変換して前記電気コネクタ側へ送信する光信号インタフェースと、
前記光信号インタフェースと前記電気コネクタとの間に設けられ、前記下位装置からのTS-1000規格に基づく保守フレームを受信した際に、前記保守フレームを独自仕様に基づくイーサネットフレームである管理フレームのペイロードに格納して前記上位装置へ送信し、前記上位装置からの前記管理フレームを受信した際に、前記管理フレーム内から前記保守フレームを抽出して前記下位装置へ送信するフレーム変換回路と、
を有する光トランシーバ。
【請求項6】
請求項5記載の光トランシーバにおいて、
前記フレーム変換回路は、前記管理フレームのヘッダ内のタイプを、前記管理フレームであることを表す所定の識別子に定める、
光トランシーバ。
【請求項7】
TS-1000規格の対応装置である下位装置と、
ポートを有し、前記TS-1000規格の非対応装置である上位装置と、
前記上位装置の前記ポートに装着して使用され、光ファイバを介して前記下位装置に接続される光トランシーバと、
を備えるネットワークシステムであって、
前記光トランシーバは、
前記光ファイバに接続される光コネクタと、
前記上位装置の前記ポートに接続される電気コネクタと、
受信した電気信号を光信号に変換して前記光コネクタへ送信し、前記光コネクタからの光信号を電気信号に変換して前記電気コネクタ側へ送信する光信号インタフェースと、
前記光信号インタフェースと前記電気コネクタとの間に設けられ、前記下位装置との間で用いられる前記TS-1000規格に基づく保守フレームと、前記上位装置との間で用いられるIEEE 802.3ah規格またはIEEE 802.1ag規格に基づくOAM(Operations, Administration, Maintenance)フレームとを相互に変換するフレーム変換回路と、
を有する、
ネットワークシステム。
【請求項8】
請求項7記載のネットワークシステムにおいて、
前記フレーム変換回路は、前記TS-1000規格で規定される前記保守フレーム内の制御情報および状態情報と、前記IEEE 802.3ah規格で規定される前記OAMフレーム内のEFM(Ethernet in First Mile)データとを、予め定めた対応関係に基づいて相互に変換するコマンドデータ変換回路を有する、
ネットワークシステム。
【請求項9】
請求項7記載のネットワークシステムにおいて、
前記フレーム変換回路は、前記TS-1000規格で規定される前記保守フレーム内の制御情報および状態情報と、前記IEEE 802.1ag規格で規定される前記OAMフレーム内のCFM(Connectivity Fault Management)データとを、予め定めた対応関係に基づいて相互に変換するコマンドデータ変換回路を有する、
ネットワークシステム。
【請求項10】
請求項8記載のネットワークシステムにおいて、
前記フレーム変換回路は、
前記下位装置からの前記保守フレームを受信した際に、前記保守フレーム内の前記制御情報、前記状態情報および管理情報を、前記コマンドデータ変換回路による変換後の前記EFMデータ内の所定の領域に格納する保守フレーム埋め込み回路と、
前記上位装置からのフレームを受信した際に、当該フレームが独自仕様に基づくイーサネットフレームである管理フレームであるか否かを識別する管理フレーム識別回路と、
前記管理フレーム識別回路の識別結果が前記管理フレームであった場合に、前記管理フレーム内の前記所定の領域から前記保守フレームの前記制御情報、前記状態情報および前記管理情報を抽出する保守フレーム抽出回路と、
を有する、
ネットワークシステム。
【請求項11】
TS-1000規格の対応装置である下位装置と、
ポートを有し、前記TS-1000規格の非対応装置である上位装置と、
前記上位装置の前記ポートに装着して使用され、光ファイバを介して前記下位装置に接続される光トランシーバと、
を備えるネットワークシステムであって、
前記光トランシーバは、
前記光ファイバに接続される光コネクタと、
前記上位装置の前記ポートに接続される電気コネクタと、
受信した電気信号を光信号に変換して前記光コネクタへ送信し、前記光コネクタからの光信号を電気信号に変換して前記電気コネクタ側へ送信する光信号インタフェースと、
前記光信号インタフェースと前記電気コネクタとの間に設けられ、前記下位装置からの前記TS-1000規格に基づく保守フレームを受信した際に、前記保守フレームをイーサネットフレームである管理フレームのペイロードに格納して前記上位装置へ送信し、前記上位装置からの前記管理フレームを受信した際に、当該管理フレームの中から前記保守フレームを抽出して前記下位装置へ送信するフレーム変換回路と、
を有し、
前記上位装置は、
前記保守フレームを含む前記管理フレームを生成し、前記ポートから送信する管理フレーム送信部と、
前記ポートで前記管理フレームを受信した際に、前記管理フレーム内の前記保守フレームの内容に応じた所定の処理を行う管理フレーム受信部と、
を有する、
ネットワークシステム。
【請求項12】
請求項11記載のネットワークシステムにおいて、
前記光トランシーバの前記フレーム変換回路は、前記管理フレームのヘッダ内のタイプを、前記管理フレームであることを表す所定の識別子に定め、
前記上位装置の前記管理フレーム送信部は、前記管理フレームの前記タイプを、前記所定の識別子に定める、
ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光トランシーバおよびネットワークシステムに関し、例えば、TTC(Telecommunication Technology Committee) TS-1000規格に基づく保守管理機能の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、保守フレームを用いて上流から下流へ順次接続される複数のメディアコンバータを保守する方式が示される。最上流のメディアコンバータは、カウンタの初期値を格納した保守フレームを下流へ送信し、下流の各メディアコンバータは、上流から受信した保守フレームを、カウンタの計数値を更新しながら順次下流へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-120327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
100Mbpsの光通信規格として、TS-1000規格が知られている。TS-1000規格は、古くから存在している規格であり、現在においても、TS-1000規格に対応する各装置を設置したネットワークシステムが多く存在している。具体例として、下位ネットワーク内に下位装置(100Mbpsのメディアコンバータ等)を設置し、上位ネットワーク内に、当該下位装置を収容する上位装置(100Mbpsのスイッチ装置等)を設置したような構成が挙げられる。
【0005】
ここで、例えば、上位ネットワークでは、既存の上位装置(100Mbpsのスイッチ装置等)が、より高性能な新たな上位装置(1Gbps以上のスイッチ装置等)に入れ替えられる場合がある。しかし、この際に、保守管理上の問題が生じる恐れがあった。具体的には、下位装置と既存の上位装置との間では、通常、TS-1000規格で定められる保守フレームを用いて、障害情報の通知やループ試験といった保守管理が行われている。一方、新たな上位装置は、TS-1000規格に非対応の装置である場合が多く、その結果、保守管理が困難となる。
【0006】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、TS-1000規格の対応装置と非対応装置との間で保守管理を実現させる光トランシーバおよびネットワークシステムを提供することにある。
【0007】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
一実施の形態による光トランシーバは、光コネクタと、電気コネクタと、光信号インタフェースと、フレーム変換回路と、を有する。光コネクタは、下位装置に光ファイバを介して接続可能であり、電気コネクタは、上位装置のポートに接続可能である。光信号インタフェースは、受信した電気信号を光信号に変換して光コネクタへ送信し、光コネクタからの光信号を電気信号に変換して電気コネクタ側へ送信する。フレーム変換回路は、光信号インタフェースと電気コネクタとの間に設けられ、下位装置との間で用いられるTS-1000規格に基づく保守フレームと、上位装置との間で用いられるIEEE 802.3ah規格またはIEEE 802.1ag規格に基づくOAMフレームとを相互に変換する。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、TS-1000規格の対応装置と非対応装置との間での保守管理が実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1によるネットワークシステムの構成例を示す概略図である。
図2】(a)は、TS-1000規格に基づく保守フレームの構成例を示す概略図であり、(b)は、IEEE 802.3ah規格に基づくOAMフレーム(EFM)の構成例を示す概略図である。
図3図1における光トランシーバの概略構成例を示すブロック図である。
図4図3におけるフレーム変換回路の模式的な構成例を示すブロック図である。
図5図4におけるコマンドデータ変換回路の概略的な動作例を説明する図である。
図6】本発明の実施の形態2による光トランシーバにおいて、図3のフレーム変換回路の模式的な構成例を示すブロック図である。
図7】本発明の実施の形態2によるネットワークシステムにおいて、図1の上位装置の構成例を示す概略図である。
図8】IEEE 802.1ag規格に基づくOAMフレーム(CFM)の構成例を示す概略図である。
図9】本発明の実施の形態3による光トランシーバにおいて、図3のフレーム変換回路の模式的な構成例を示すブロック図である。
図10】本発明の実施の形態4による光トランシーバにおいて、図3のフレーム変換回路の模式的な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
(実施の形態1)
《ネットワークシステムの概略》
図1は、本発明の実施の形態1によるネットワークシステムの構成例を示す概略図である。図1に示すネットワークシステムは、上位ネットワーク10と、複数の下位ネットワーク11[1]~11[n]とを有し、上位ネットワーク10と下位ネットワーク11[1]~11[n]のそれぞれとが光ファイバ12で接続された構成となっている。上位ネットワーク10は、複数の上位装置15を含んだ通信キャリア用のネットワーク等である。下位ネットワークは、下位装置17やユーザ端末18を含んだユーザ(法人等)用のネットワーク等である。
【0014】
上位装置15は、例えば、1Gbps以上の通信速度に対応するレイヤ2(L2)スイッチ装置、レイヤ3(L3)スイッチ装置、または、メディアコンバータ等であり、単数または複数のポートPTを備える。ポートPTは、例えば、1000BASE-X規格に対応するSFP(Small Form factor Pluggable)ポート等である。ここで、上位装置15の複数のポートPTには、適宜、光トランシーバ16[1]~16[n]が装着される。
【0015】
光トランシーバ16[1]~16[n](符号16で総称する)は、例えば、SFPトランシーバ(SFPモジュール)等である。光トランシーバ16は、上位装置15のポート(SFPポート)PTに接続される電気コネクタ(図示せず)と、光ファイバ12に接続され、光ファイバ12を介して下位装置17に接続される光コネクタCNoとを備える。光コネクタCNoは、例えば、LCコネクタ等である。
【0016】
下位装置17は、例えば、メディアコンバータ等であり、光ファイバ12を介して光トランシーバ16(ひいては上位装置15)に接続される。下位装置17は、100Mbpsの光通信規格であるTS-1000規格の対応装置である。ユーザ端末18は、例えば、イーサネット(登録商標)ケーブル19を介して下位装置17に接続され、下位装置17を介して光トランシーバ16(ひいては上位装置15)に接続される。なお、ユーザ端末18と下位装置17との間には、適宜、L2スイッチ装置、L3スイッチ装置等が設置されてもよい。
【0017】
《前提となる問題点および解決策》
図1において、既存の上位装置15は、例えば、TS-1000規格の対応装置である100Mbpsのスイッチ装置等である。この場合、既存の上位装置15と下位装置17との間では、TS-1000規格に基づく保守フレームを用いて、障害情報の通知やループ試験といった保守管理を行うことができる。しかし、既存の上位装置15は、例えば、1Gbps以上のスイッチ装置といった、より高性能な新たな上位装置15に入れ替えられる場合がある。このような新たな上位装置15は、TS-1000規格の非対応装置である場合が多い。
【0018】
一方、新たな上位装置15は、通常、TS-1000規格のような専用の保守フレームではなく、一般的なイーサネットフレームを用いた保守管理機能を備える。このような保守管理機能は、イーサネットOAM(Operations, Administration, Maintenance)と呼ばれる。イーサネットOAMの仕様は、IEEE 802.3ah規格や、または、IEEE 802.1ag規格(またはITU-T Y.1731規格)で規定される。
【0019】
IEEE 802.3ah規格は、EFM(Ethernet in First Mile)とも呼ばれる。当該規格に基づくと、規格上で定められるOAMフレーム(EFM)を用いて主にポイント・ツー・ポイントでの通信状態を管理することができる。一方、IEEE 802.1ag規格は、CFM(Connectivity Fault Management)とも呼ばれる。当該規格に基づくと、規格上で定められるOAMフレーム(CFM)を用いて主にVLAN(Virtual LAN)単位での通信状態を管理することができる。
【0020】
ここで、新たな上位装置15と下位装置17との間で保守管理を行うため、既存の上位装置15を新たな上位装置15に入れ替える際に、併せて、下位装置17を、イーサネットOAMに対応する新たな下位装置17に入れ替えることが考えられる。ただし、下位装置17は、通常、多くの数が存在するため、全てを入れ替えると多大なコストが発生する。そこで、図1に示した光トランシーバ16を用いることが有益となる。
【0021】
《フレーム構造》
図2(a)は、TS-1000規格に基づく保守フレームの構成例を示す概略図であり、図2(b)は、IEEE 802.3ah規格に基づくOAMフレーム(EFM)の構成例を示す概略図である。図2(a)に示す保守フレームFRSは、12バイトのフレームであり、1バイトのプリアンブル(PRE)22と、2バイトの制御情報23と、2バイトの状態情報24と、6バイトの管理情報25と、1バイトのCRC(Cyclic Redundancy Check)26とを備える。概略的には、制御情報23は、命令や要求内容等を表し、状態情報24は、電源障害やリンク障害といった障害情報等を表す。管理情報25は、ベンダコードおよびベンダ毎のモデル番号を表す。
【0022】
図2(b)に示すOAMフレーム(EFM)FREは、イーサネットフレームの一種であり、ヘッダ30と、ペイロード(EFMデータ)31aと、4バイトのFCS(Frame Check Sequence)32とを備える。ヘッダ30は、8バイトのプリアンブル(PRE)33と、6バイトの宛先MAC(Media Access Control)アドレス(DMAC)34と、6バイトの送信元MACアドレス(SMAC)35と、2バイトのタイプ(TYP)36とを備える。
【0023】
ペイロード(EFMデータ)31aは、46バイト以上であり、1バイトのサブタイプ40と、2バイトのフラグ41と、1バイトのコード42と、42バイト以上のデータ(パディングデータ含む)43とを備える。概略的には、フラグ41は、障害情報等を表し、コード42は、命令や要求内容等を表す。データ43は、コード42の内容毎に定められる単数または複数のTLV(Type Length Value)44[1]~44[n]を含む。
【0024】
ここで、OAMフレーム(EFM)FREでは、IEEE 802.3ah規格に基づき、宛先MACアドレス(DMAC)34は、マルチキャストアドレスである“Ox0180C2000002”に定められる。また、タイプ(TYP)36は、スロープロトコルを表す“Ox8809”に定められ、サブタイプ40は、OAMフレーム(EFM)であることを表す“Ox03”に定められる。
【0025】
《光トランシーバの概略》
図3は、図1における光トランシーバの概略構成例を示すブロック図である。図3に示す光トランシーバ16は、光コネクタCNoと、電気コネクタCNeと、光信号インタフェース(I/F)48と、アナログフロントエンド(AFE)回路47と、ロジック回路46と、電気信号インタフェース45と、CPU(Central Processing Unit)49とを備える。図1で述べたように、光コネクタCNoは、光ファイバ12に接続されるLCコネクタ等であり、光ファイバ12を介して下位装置17に接続可能となっている。また、電気コネクタCNeは、上位装置15のポート(例えばSFPポート)PTに接続可能(言い換えれば、着脱可能)となっている。
【0026】
光信号インタフェース48は、レーザダイオードLDと、フォトダイオードPDとを備える。レーザダイオードLDは、受信した電気信号を光信号に変換して光コネクタCNoへ送信する。フォトダイオードPDは、光コネクタCNoからの光信号を電気信号に変換して電気コネクタCNe側へ送信する。アナログフロントエンド回路47は、ロジック回路46と、光信号インタフェース48との間に設けられ、ドライバ55と、ポストアンプ56とを備える。ドライバ55は、ロジック回路46からの電気信号に基づいてレーザダイオードLDを駆動する。ポストアンプ56は、フォトダイオードPDからの電気信号を増幅してロジック回路46へ送信する。
【0027】
ロジック回路46は、AFE回路47と、電気信号インタフェース45との間に設けられ、フレーム変換回路53を備える。フレーム変換回路53は、詳細は後述するが、下位装置17との間(すなわち光コネクタCNo側)で用いられるTS-1000規格に基づく保守フレームFRSと、上位装置15との間(すなわち電気コネクタCNe側)で用いられる保守用のイーサネットフレームとを相互に変換する。実施の形態1では、フレーム変換回路53は、図2(a)に示した保守フレームFRSと、図2(b)に示したIEEE 802.3ah規格に基づくOAMフレーム(EFM)とを相互に変換する。
【0028】
電気信号インタフェース45は、ロジック回路46と電気コネクタCNeとの間に設けられ、速度変換回路51を備える。速度変換回路51は、例えば、SGMII(Serial Gigabit Media Independent Interface)等であり、電気コネクタCNeの通信速度とロジック回路46の通信速度とを相互に変換する。具体的には、速度変換回路51は、例えば、電気コネクタCNeからの1.25Gbpsのフレームを125Mbpsに変換してロジック回路46へ送信し、ロジック回路46からの125Mbpsのフレームを1.25Gbpsに変換して電気コネクタCNeへ送信する。CPU49は、所定の管理/制御プログラムに基づいて、光トランシーバ16全体を管理/制御する。
【0029】
図3において、アナログフロントエンド回路47は、IC(Integrated Circuit)等で構成され、光信号インタフェース48は、OSA(Optical SubAssembly)等で構成される。ロジック回路46は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成される。電気信号インタフェース45は、ロジック回路46を構成するFPGAまたはASIC内に実装されるか、または、別のASIC等で構成される。なお、各部の実装形態は、勿論、これに限定されず、例えば、ロジック回路46をソフトウェア処理で実装するなど、適宜変更可能である。
【0030】
《フレーム変換回路の詳細》
図4は、図3におけるフレーム変換回路の模式的な構成例を示すブロック図である。図4に示すフレーム変換回路53aは、フレームバッファ60,61と、保守フレーム識別回路62と、OAMフレーム(EFM)生成回路63と、OAMフレーム(EFM)識別回路64と、保守フレーム生成回路65と、コマンドデータ変換回路66とを備える。
【0031】
フレームバッファ60は、125MHzのクロック信号CK1に同期して動作し、光コネクタCNo側との間で保守フレームFRSやイーサネットフレームを含む各種フレームのシリアル受信またはシリアル送信を行う。フレームバッファ61は、125MHzのクロック信号CK2に同期して動作し、電気コネクタCNe側との間でOAMフレーム(EFM)FREや、その他のイーサネットフレームを含む各種フレームのシリアル受信またはシリアル送信を行う。
【0032】
ここで、まず、フレームバッファ60が光コネクタCNo側からの各種フレームをシリアル受信した場合を想定する。保守フレーム識別回路62は、光コネクタCNo側からのフレームが保守フレームFRSであるか否かを識別する。具体的には、保守フレーム識別回路62は、例えば、プリアンブル(PRE)22の長さが1バイトであるか否かに基づいて、保守フレームFRSであるかイーサネットフレームであるかを識別する。保守フレームFRSでは、制御情報23の最初のビットが“0”に定められ、これによって“1010…”のプリアンブル(PRE)22の終点を識別可能となっている。
【0033】
OAMフレーム(EFM)生成回路63は、保守フレーム識別回路62の識別結果が保守フレームFRSであった場合に、フレームバッファ61内にOAMフレーム(EFM)FREを生成する。この際に、OAMフレーム(EFM)生成回路63は、OAMフレーム(EFM)FREのヘッダ30内の宛先MACアドレス(DMAC)34およびタイプ(TYP)36と、ペイロード(EFMデータ)31a内のサブタイプ40とを、図2(b)に示したような値に定める。また、OAMフレーム(EFM)生成回路63は、例えば、保守フレームFRS内の管理情報25の値等を用いて、ヘッダ30内の送信元MACアドレス(SMAC)35を定める。
【0034】
コマンドデータ変換回路66は、予め定めた対応関係に基づいて、フレームバッファ60における保守フレームFRS内の制御情報23および状態情報24を、フレームバッファ61におけるOAMフレーム(EFM)FRE内のペイロード(EFMデータ)31aに変換する。すなわち、コマンドデータ変換回路66は、OAMフレーム(EFM)生成回路63で生成されたOAMフレーム(EFM)FREを対象に、ペイロード(EFMデータ)31a内のフラグ41、コード42およびデータ43を生成する。フレーム変換回路53aは、このようにして生成されたOAMフレーム(EFM)FREを、125Mbpsの通信速度で電気コネクタCNe側へシリアル送信する。
【0035】
次に、フレームバッファ61が電気コネクタCNe側からの各種フレームをシリアル受信した場合を想定する。OAMフレーム(EFM)識別回路64は、電気コネクタCNe側からのフレームがOAMフレーム(EFM)FREであるか否かを識別する。具体的には、OAMフレーム(EFM)識別回路64は、宛先MACアドレス(DMAC)34、タイプ(TYP)36およびサブタイプ40の値に基づいて、OAMフレーム(EFM)FREであるかOAMフレーム(EFM)FREを除くイーサネットフレームであるかを識別する。
【0036】
保守フレーム生成回路65は、OAMフレーム(EFM)識別回路64の識別結果がOAMフレーム(EFM)FREであった場合に、フレームバッファ60内に保守フレームFRSを生成する。この際に、保守フレーム生成回路65は、例えば、管理情報25を予め定めた所定の値に定める。
【0037】
コマンドデータ変換回路66は、予め定めた対応関係に基づいて、フレームバッファ61におけるペイロード(EFMデータ)31a(具体的には、フラグ41、コード42およびデータ43)を、保守フレームFRS内の制御情報23および状態情報24に変換する。すなわち、コマンドデータ変換回路66は、保守フレーム生成回路65で生成された保守フレームFRSを対象に、制御情報23および状態情報24を作成する。フレーム変換回路53aは、このようにして生成された保守フレームFRSを、125Mbpsの通信速度で光コネクタCNo側へシリアル送信する。
【0038】
なお、ここでは、説明の便宜上、光コネクタCNo側から電気コネクタCNe側へのフレーム変換と、その逆方向のフレーム変換とで共通のフレームバッファ60,61を用いる構成を示したが、詳細には、各方向に対してそれぞれフレームバッファ60,61が設けられるような構成であってもよい。具体的には、光コネクタCNo側から電気コネクタCNe側への方向に対して、フレームバッファ60,61と、保守フレーム識別回路62と、OAMフレーム(EFM)生成回路63と、コマンドデータ変換回路66とが設けられる。一方、電気コネクタCNe側から光コネクタCNo側への方向に対して、別のフレームバッファ60,61と、OAMフレーム(EFM)識別回路64と、保守フレーム生成回路65と、コマンドデータ変換回路66とが設けられる。
【0039】
図5は、図4におけるコマンドデータ変換回路の概略的な動作例を説明する図である。前述したように、コマンドデータ変換回路66は、保守フレームFRS内の制御情報23および状態情報24と、OAMフレーム(EFM)FRE内のEFMデータ31aとを、予め定めた対応関係に基づいて相互に変換する。図5に示されるように、制御情報23は、ループ試験の制御命令等を含む各種命令/要求内容を定める。状態情報24は、電源障害、受信光障害、リンク障害を含む各種障害情報を定める。
【0040】
一方、EFMデータ31a内のフラグ41は、リンク障害、回復不能な障害(例えば電源障害等)、重大イベントの発生等を含む各種障害情報を定める。EFMデータ31a内のコード42は、イベント通知、ループ試験の制御命令等を含む各種命令/要求内容を定める。なお、コード42でループ試験制御(“Ox04”)が定められた場合、コード42に続くデータ43内で開始/終了の種別が定められる。
【0041】
このように、保守フレームFRS内の制御情報23および状態情報24と、OAMフレーム(EFM)FRE内のEFMデータ31aとは、障害情報を通知する点とループ試験の制御命令を発行する点で相互に変換可能となっている。コマンドデータ変換回路66は、図5に基づく対応関係を予め保持し、当該対応関係に基づいて相互変換を行う。
【0042】
《実施の形態1の主要な効果》
以上、実施の形態1の光トランシーバを用いることで、TS-1000規格の対応装置(下位装置17)と非対応装置(上位装置15)との間で保守管理を行えるようになる。具体的には、IEEE 802.3ah規格の対応装置(TS-1000規格の非対応装置)である上位装置15を用いて、TS-1000規格に基づく保守管理を行えるようになる。その結果、例えば、既存の上位装置15を新たな上位装置15に入れ替えた場合であっても、既存の下位装置17をそのまま維持した状態で保守管理を行えるようになるため、下位装置16の入れ替えコスト等を低減できる。
【0043】
(実施の形態2)
《フレーム変換回路の詳細》
図6は、本発明の実施の形態2による光トランシーバにおいて、図3のフレーム変換回路の模式的な構成例を示すブロック図である。図6に示すフレーム変換回路53bは、図4で述べたようなフレームバッファ60,61および保守フレーム識別回路62に加えて、管理フレーム生成回路75と、管理フレーム識別回路76と、保守フレーム抽出回路77とを備える。
【0044】
概略的には、図6のフレーム変換回路53bは、下位装置17からの保守フレームFRSを受信した際に、当該保守フレームFRSを管理フレームFRMのペイロード31bに格納して上位装置15へ送信する。管理フレームFRMは、独自仕様に基づくイーサネットフレームである。また、当該フレーム変換回路53bは、上位装置15からの管理フレームFRMを受信した際に、当該管理フレームFRM内から保守フレームFRSを抽出して下位装置17へ送信する。
【0045】
具体的には、まず、フレームバッファ60が光コネクタCNo側からの各種フレームをシリアル受信した場合を想定する。保守フレーム識別回路62は、図4の場合と同様に、フレームバッファ60で受信されたフレームが保守フレームFRSであるか否かを識別する。管理フレーム生成回路75は、保守フレーム識別回路62の識別結果が保守フレームFRSであった場合に、フレームバッファ61内に管理フレームFRMを生成する。
【0046】
具体例として、管理フレーム生成回路75は、タイプ(TYP)36を、管理フレームFRMであることを表す所定の識別子に定める。一例として、タイプ(TYP)36は、予め定めた管理用のVLAN識別子等に定められる。また、管理フレーム生成回路75は、宛先MACアドレス(DMAC)34および送信元MACアドレス(SMAC)35を、予め定めた所定の値に定める。一例として、宛先MACアドレス(DMAC)34は、所定のマルチキャストアドレスに定められ、送信元MACアドレス(SMAC)35は、保守フレームFRS内の管理情報25の値に定められる。
【0047】
そして、管理フレーム生成回路75は、フレームバッファ60内の保守フレームFRSを、フレームバッファ61内の管理フレームFRMのペイロード31bに格納する。この際に、46バイト以上が必要とされるペイロード31bに対して、保守フレームFRSは12バイトであるため、管理フレーム生成回路75は、残りの34バイトにパディングデータ71を格納する。
【0048】
すなわち、前述した新たな上位装置15は、仕様上で、プリアンブル22が1バイトしかない、またはフレーム長が12バイトしかないような保守フレームFRSを物理層で破棄または無視する場合がある。そこで、保守フレームFRSが格納されたイーサネットフレーム(管理フレームFRM)を生成することで、このような事態を防止できる。フレーム変換回路53bは、このようにして生成された管理フレームFRMを、125Mbpsの通信速度で電気コネクタCNe側へシリアル送信する。
【0049】
次に、フレームバッファ61が電気コネクタCNe側からの各種フレームをシリアル受信した場合を想定する。管理フレーム識別回路76は、電気コネクタCNe側からのフレームが管理フレームFRMであるか否かを識別する。具体的には、管理フレーム識別回路76は、例えば、宛先MACアドレス(DMAC)34およびタイプ(TYP)36の値に基づいて、管理フレームFRMであるか管理フレームFRMを除くイーサネットフレームであるかを識別する。
【0050】
保守フレーム抽出回路77は、管理フレーム識別回路76の識別結果が管理フレームFRMであった場合に、管理フレームFRM内の12バイトの保守フレームFRSを抽出してフレームバッファ60に格納する。そして、フレーム変換回路53bは、このようにしてフレームバッファ60に格納された保守フレームFRSを、125Mbpsの通信速度で光コネクタCNo側へシリアル送信する。
【0051】
《上位装置の構成》
図7は、本発明の実施の形態2によるネットワークシステムにおいて、図1の上位装置の構成例を示す概略図である。ここでは、図1の上位装置15がL2スイッチ装置である場合を例とする。図7の上位装置15aは、単数または複数のポート(例えばSFPポート)PT[0]~PT[n]と、フレームインタフェース80と、中継処理回路81と、FDB(Forwarding DataBase)82と、管理部83とを備える。
【0052】
フレームインタフェース80は、ポートPT[0]~PT[n]で受信したフレームを中継処理回路81または管理部83へ送信し、中継処理回路81または管理部83からのフレームを宛先ポートとなる所定のポートPT[0]~PT[n]へ送信する。この際に、フレームインタフェース80は、ポートPT[0]~PT[n]で受信したフレームがイーサネットフレームであるか否かを判別し、イーサネットフレームでない場合には、受信したフレームを破棄する。
【0053】
中継処理回路81は、ポートPT[0]~PT[n]でイーサネットフレームを受信した場合に、当該受信フレームの送信元MACアドレス(SMAC)35を、受信ポートの識別子に対応付けてFDB82に学習する。また、中継処理回路81は、当該受信フレームの宛先MACアドレス(DMAC)34を検索キーとしてFDB82を検索することで宛先ポートを取得する。そして、中継処理回路81は、当該受信フレームを、フレームインタフェース80を介して宛先ポートへ中継する。
【0054】
管理部83は、管理フレーム送信部85と、管理フレーム受信部86とを備える。管理フレーム送信部85は、図6に示したような保守フレームFRSが格納された管理フレームFRMを生成し、当該管理フレームFRMを所定のポート(例えばPT[0])から送信する。一方、管理フレーム受信部86は、所定のポート(例えばPT[0])で管理フレームFRMを受信した際に、管理フレームFRM内の保守フレームFRSの内容に応じた所定の処理を行う。具体的には、管理フレーム送信部85は、保守フレーム生成部87と、管理フレーム生成部88とを備え、管理フレーム受信部86は、管理フレーム識別部89と、保守フレーム処理部90とを備える。
【0055】
保守フレーム生成部87は、TS-1000規格に基づき保守フレームFRSを生成する。管理フレーム生成部88は、保守フレーム生成部87からの保守フレームFRSが格納された管理フレームFRMを生成し、当該管理フレームFRMを光トランシーバ16が装着される所定のポート(例えばPT[0])へ送信する。この際に、管理フレーム生成部88は、図6の管理フレーム生成回路75の場合と同様に、例えば、宛先MACアドレス(DMAC)34を所定のマルチキャストアドレスに定め、タイプ(TYP)36を、管理フレームFRMであることを表す所定の識別子に定める。
【0056】
管理フレーム識別部89は、図6の管理フレーム識別回路76および保守フレーム抽出回路77の場合と同様に、所定のポート(例えばPT[0])で受信したフレームが管理フレームFRMであるか否かを識別し、管理フレームFRMである場合には、管理フレームFRM内の保守フレームFRSを抽出する。保守フレーム処理部90は、管理フレーム識別部89で抽出された保守フレームFRSの内容に応じて、所定の処理を行う。
【0057】
なお、図7において、フレームインタフェース80は、ASIC等で構成される。中継処理回路81は、FPGAまたはASIC等で構成され、FDB82は、CAM(Content Addressable Memory)等で構成される。管理部83は、CPUを用いたプログラム処理等で構成される。ただし、各部の実装形態は、勿論、これに限定されず、適宜、ハードウェアまたはソフトウェアあるいはその組合せを用いたものであればよい。
【0058】
《実施の形態2の主要な効果》
以上、実施の形態2の光トランシーバおよびネットワークシステムを用いることで、実施の形態1の場合と同様に、TS-1000規格の対応装置(下位装置17)と非対応装置(上位装置15)との間で保守管理を行えるようになる。その結果、下位装置17の入れ替えコスト等を低減できる。また、実施の形態1の場合と比較して、上位装置15内に管理フレーム送信部85および管理フレーム受信部86を設ける必要があるが、光トランシーバでコマンド変換等を行わずに済むため、光トランシーバの構成および動作を簡素化できる。また、管理フレーム送信部85および管理フレーム受信部86を例えばCPU等に実装することで、上位装置15のハードウェア変更等も不要となる。
【0059】
(実施の形態3)
《フレーム構造》
実施の形態3では、実施の形態1で用いたIEEE 802.3ah規格に基づくOAMフレーム(EFM)の代わりに、IEEE 802.1ag規格に基づくOAMフレーム(CFM)が用いられる。図8は、IEEE 802.1ag規格に基づくOAMフレーム(CFM)の構成例を示す概略図である。図8に示すOAMフレーム(CFM)FRCは、イーサネットフレームの一種であり、図2(b)の場合と同様のヘッダ30およびFCS32と、ペイロード(CFMデータ)31cとを備える。ヘッダ30内の宛先MACアドレス(DMAC)34は、“Ox0180C200003Z”(ただし、“Z”はMA(Maintenance Association)レベルに基づく値)に定められ、タイプ(TYP)36は、CFMであることを表す“Ox8902”に定められる。
【0060】
ペイロード(CFMデータ)31cは、46バイト以上であり、例えば、管理ポイント(MEP(Maintenance End Point)等)を用いた疎通性の監視機能や、ループ試験機能等を代表とする保守管理機能毎に対応するフォーマットが定められる。例えば、ループ試験を行う場合、ペイロード(CFMデータ)31cは、4バイトのOAMヘッダ93と、4バイトのトランザクションIDと、ループ試験用のデータ95とを備える。OAMヘッダ93には、ループバック要求を表すオペコード“Ox03”や、ループバック応答を表すオペコード“Ox02”等が含まれる。
【0061】
《フレーム変換回路の詳細》
図9は、本発明の実施の形態3による光トランシーバにおいて、図3のフレーム変換回路の模式的な構成例を示すブロック図である。図9に示すフレーム変換回路53cは、図4の場合と異なり、TS-1000規格に基づく保守フレームFRSと、IEEE 802.1ag規格に基づくOAMフレーム(CFM)FRCとを相互に変換する。当該フレーム変換回路53cは、図4で述べたようなフレームバッファ60,61、保守フレーム識別回路62および保守フレーム生成回路65に加えて、OAMフレーム(CFM)生成回路97と、OAMフレーム(CFM)識別回路98と、コマンドデータ変換回路99とを備える。
【0062】
まず、フレームバッファ60が光コネクタCNo側からの各種フレームをシリアル受信し、保守フレーム識別回路62の識別結果が保守フレームFRSであった場合を想定する。この場合、OAMフレーム(CFM)生成回路97は、フレームバッファ61内にOAMフレーム(CFM)FRCを生成する。この際に、OAMフレーム(CFM)生成回路97は、OAMフレーム(CFM)FRCのヘッダ30内の宛先MACアドレス(DMAC)34およびタイプ(TYP)36を図8に示したような値に定める。また、OAMフレーム(CFM)生成回路97は、例えば、保守フレームFRS内の管理情報25の値等を用いて、ヘッダ30内の送信元MACアドレス(SMAC)35を定める。
【0063】
コマンドデータ変換回路99は、予め定めた対応関係に基づいて、保守フレームFRS内の制御情報23および状態情報24を、OAMフレーム(CFM)FRC内のCFMデータ31cに変換する。フレーム変換回路53cは、このようにして生成されたOAMフレーム(CFM)FRCを、125Mbpsの通信速度で電気コネクタCNe側へシリアル送信する。
【0064】
次に、フレームバッファ61が電気コネクタCNe側からの各種フレームをシリアル受信した場合を想定する。OAMフレーム(CFM)識別回路98は、電気コネクタCNe側からのフレームがOAMフレーム(CFM)FRCであるか否かを識別する。具体的には、OAMフレーム(CFM)識別回路98は、宛先MACアドレス(DMAC)34およびタイプ(TYP)36の値に基づいて、OAMフレーム(CFM)FRCであるかOAMフレーム(CFM)FRCを除くイーサネットフレームであるかを識別する。
【0065】
保守フレーム生成回路65は、OAMフレーム(CFM)識別回路98の識別結果がOAMフレーム(CFM)FRCであった場合に、フレームバッファ60内に保守フレームFRSを生成する。この際に、保守フレーム生成回路65は、例えば、管理情報25を予め定めた所定の値に定める。コマンドデータ変換回路99は、予め定めた対応関係に基づいて、フレームバッファ61におけるペイロード(CFMデータ)31cを、保守フレームFRS内の制御情報23および状態情報24に変換する。フレーム変換回路53cは、このようにして生成された保守フレームFRSを、125Mbpsの通信速度で光コネクタCNo側へシリアル送信する。
【0066】
以上のように、コマンドデータ変換回路99は、保守フレームFRS内の制御情報23および状態情報24と、OAMフレーム(CFM)FRC内のCFMデータ31cとを、予め定めた対応関係に基づいて相互に変換する。この際に、コマンドデータ変換回路99は、図8に示したように、ループ試験の制御命令を相互に変換することが可能である。また、コマンドデータ変換回路99は、障害情報に関しても、CFMデータ31cの各種フォーマットを用いて、適宜、相互変換することが可能である。
【0067】
《実施の形態3の主要な効果(実施の形態1との比較)》
以上、実施の形態3の光トランシーバを用いることで、TS-1000規格の対応装置(下位装置17)と非対応装置(上位装置15)との間で保守管理を行えるようになる。具体的には、IEEE 802.1ag規格の対応装置(TS-1000規格の非対応装置)である上位装置15を用いて、TS-1000規格に基づく保守管理を行えるようになる。その結果、下位装置16の入れ替えコスト等を低減できる。なお、OAMフレーム(CFM)FRCを用いる場合、実施の形態1の場合と異なり、詳細にはMEPの設定等が別途必要とされることがあるため、光トランシーバの処理や構成が複雑化する恐れがある。この観点では、実施の形態1の方式が望ましい。
【0068】
(実施の形態4)
《フレーム変換回路の詳細》
図10は、本発明の実施の形態4による光トランシーバにおいて、図3のフレーム変換回路の模式的な構成例を示すブロック図である。図10に示すフレーム変換回路53dは、概略的には、実施の形態1で述べた図4の構成と、実施の形態2で述べた図6の構成とを組み合わせたような構成となっている。当該フレーム変換回路53dは、図4の場合と同様のフレームバッファ60,61、保守フレーム識別回路62、OAMフレーム(EFM)生成回路63、OAMフレーム(EFM)識別回路64およびコマンドデータ変換回路66と、図4の場合とは若干異なる保守フレーム生成回路65aとを備える。
【0069】
さらに、当該フレーム変換回路53dは、保守フレーム埋め込み回路101と、管理フレーム識別回路102と、保守フレーム抽出回路103とを備える。保守フレーム埋め込み回路101は、下位装置からの保守フレームFRSを受信した際に、保守フレームFRS内の制御情報23、状態情報24および管理情報25を、コマンドデータ変換回路66による変換後のEFMデータ31a内の所定の領域に格納する。
【0070】
具体的に説明すると、前述した図6の構成例では、管理フレーム生成回路75が、管理フレームFRM内のペイロード31bに保守フレームFRS全体を格納した。一方、図10の構成例では、図4の場合と同様に、まず、OAMフレーム(EFM)生成回路63は、保守フレーム識別回路62の識別結果を受けて、コマンドデータ変換回路66を用いてOAMフレーム(EFM)FREを生成する。そして、保守フレーム埋め込み回路101は、保守フレーム識別回路62の識別結果を受けて、当該生成されたOAMフレーム(EFM)FREにおけるEFMデータ31a内のデータ43の一部に制御情報23、状態情報24および管理情報25を格納する。このデータ43の一部として、例えば、コマンドデータ変換回路66で使用されないTLV(図2(b)参照)を用いることができる。
【0071】
管理フレーム識別回路102は、図6の場合と同様に、上位装置からのフレームを受信した際に、当該フレームが独自仕様に基づくイーサネットフレームである管理フレームであるか否かを識別する。保守フレーム抽出回路103は、管理フレーム識別回路102の識別結果が管理フレームであった場合に、当該管理フレーム内の所定の領域(データ43の一部)から保守フレームFRSの制御情報23、状態情報24および管理情報25を抽出する。すなわち、保守フレーム抽出回路103は、図6の場合とは、抽出対象の領域が異なっている。
【0072】
そして、保守フレーム生成回路65aは、保守フレーム抽出回路103によって抽出された情報にプリアンブル(PRE)22およびCRC26を付加することでフレームバッファ60内に保守フレームFRSを生成し、下位装置に向けて送信する。なお、上位装置からのフレームが管理フレームでなくOAMフレーム(EFM)FREであった場合には、図4の場合と同様の処理が行われる。すなわち、OAMフレーム(EFM)識別回路64は、OAMフレーム(EFM)FREであることを識別し、保守フレーム生成回路65aは、コマンドデータ変換回路66を用いてフレームバッファ60内に保守フレームFRSを生成する。
【0073】
《実施の形態4の主要な効果》
以上、実施の形態4の光トランシーバを用いることで、実施の形態1または実施の形態2で述べた効果と同様の効果が得られる。さらに、IEEE 802.3ah規格に対応する上位装置と、IEEE 802.3ah規格には対応しないが独自仕様に対応する上位装置とに、同一仕様の光トランシーバを適用することが可能になる。言い換えれば、IEEE 802.3ah規格に対応する上位装置と非対応の上位装置とが混在するようなネットワークシステムであっても、非対応の上位装置に独自仕様に基づく機能を実装することで、当該ネットワークシステム上で同一仕様の光トランシーバを介して保守管理を行えるようになる。
【0074】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 上位ネットワーク
11 下位ネットワーク
12 光ファイバ
15,15a 上位装置
16 光トランシーバ
17 下位装置
18 ユーザ端末
19 イーサネットケーブル
22,33 プリアンブル
23 制御情報
24 状態情報
25 管理情報
26 CRC
30 ヘッダ
31a ペイロード(EFMデータ)
31b ペイロード
31c ペイロード(CFMデータ)
32 FCS
34 宛先MACアドレス
35 送信元MACアドレス
36 タイプ
40 サブタイプ
41 フラグ
42 コード
43 データ
44 TLV
45 電気信号インタフェース
46 ロジック回路
47 アナログフロントエンド回路
48 光信号インタフェース
49 CPU
51 速度変換回路
53,53a,53b,53c フレーム変換回路
55 ドライバ
56 ポストアンプ
60,61 フレームバッファ
62 保守フレーム識別回路
63 OAMフレーム(EFM)生成回路
64 OAMフレーム(EFM)識別回路
65,65a 保守フレーム生成回路
66 コマンドデータ変換回路
71 パディングデータ
75 管理フレーム生成回路
76 管理フレーム識別回路
77 保守フレーム抽出回路
80 フレームインタフェース
81 中継処理回路
82 FDB
83 管理部
85 管理フレーム送信部
86 管理フレーム受信部
87 保守フレーム生成部
88 管理フレーム生成部
89 管理フレーム識別部
90 保守フレーム処理部
93 OAMヘッダ
94 トランザクションID
95 データ
97 OAMフレーム(CFM)生成回路
98 OAMフレーム(CFM)識別回路
99 コマンドデータ変換回路
101 保守フレーム埋め込み回路
102 管理フレーム識別回路
103 保守フレーム抽出回路
CK1,CK2 クロック信号
CNe 電気コネクタ
CNo 光コネクタ
FRC OAMフレーム(CFM)
FRE OAMフレーム(EFM)
FRM 管理フレーム
FRS 保守フレーム
LD レーザダイオード
PD フォトダイオード
PT ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10