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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/25 20180101AFI20221024BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221024BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221024BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C09J7/25
C09J7/38
C09J11/06
C09J133/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019165490
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021042314
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉城 武宣
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-105275(JP,A)
【文献】特開2004-067873(JP,A)
【文献】特開2015-140379(JP,A)
【文献】特開2015-004861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体としてポリアミドフィルムを用い、支持体上にアクリル粘着剤と酸化防止剤とエポキシシランカップリング剤を少なくとも含有する粘着層を有し、粘着層におけるエポキシシランカップリング剤の含有量がアクリル粘着剤の固形分に対し10質量%より多い粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関し、特にプリント配線基板等の電子工業材料の製造に用いられる再剥離性を有する工程フィルムとして使用できる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板は、それに搭載される電気・電子部品間を接続するために必要な導体の回路パターンが、絶縁基板の表面又は表面とその内部にプリントなどによって形成された配線板である。このようなプリント配線基板は、形状面から見ると硬質プリント配線基板とフレキシブルプリント配線基板に大別することができ、また構造的には単層と、2層以上の多層に分けられる。これらのプリント配線基板の中で、フレキシブルプリント配線基板は、柔軟性に富む絶縁性の基材シートに導体の回路パターンを形成したものであって、電子機器内部の狭くて複雑な構造をもつスペース内での立体的な高密度実装には不可欠な基板である。このようなフレキシブルプリント配線基板は、近年の電子機器類の小型軽量化、高密度化、高精度化などの要請に応え得る最も有力な電子機器用部材の一つであり、その需要は急速に伸びてきている。
【0003】
前記フレキシブルプリント配線基板においては、可撓性が要求されることから、絶縁性の基材シートとしてプラスチックシート、特に、例えばポリイミドシート、ポリフェニレンスルフィドシートなどの耐熱性や絶縁性などに優れるプラスチックシートが用いられ、この基材シートの表面又は表面とその内部に、銅などの金属材料により回路パターンが形成される。回路パターンの形成方法としては、例えば銅張り積層板の銅箔の必要な部分のみを残して、他をエッチング処理により溶解除去するサブストラクティブ法の外、アディティブ法などが知られている。このアディティブ法は、基板の必要部分のみにメッキ処理を施して回路パターンを形成させる方法であって、セミアディティブ法とフルアディティブ法がある。このようなフレキシブルプリント配線基板に要求される性能としては、例えば寸法精度、低反り・ねじれ率、耐熱性、引き剥がし強さ、曲げ強さ、高体積抵抗率、耐薬品性、加熱曲げ強さなどの外、プリント配線基板の加工適性も重要である。
【0004】
このようなフレキシブルプリント配線基板においては、上述した回路形成や電気・電子部品を実装する過程において、該配線基板への溶剤汚染、異物混入、瑕の発生などを抑制するために、一般にそれらの処理を行う前に、用いられる基材シートに予め、再剥離性を有する工程フィルム(以下、「再剥離工程フィルム」という。)が貼付される。この再剥離工程フィルムは、基材フィルムの一方の面に再剥離が可能な粘着層が設けられたものであって、フレキシブルプリント配線基板用の基材シートに貼付された後、抜き加工、溶剤への浸漬、熱プレスなどの種々の工程を経たのち、作製されたフレキシブルプリント配線基板から剥離される。従って、前記工程中で浮きや剥がれなどが発生しない上に、剥がした後で被着体(基材シート)に糊残りがなく、かつ被着体にカールの発生をもたらすことがないような再剥離性を有することが肝要である。
【0005】
更に近年、フレキシブルプリント配線基板への部品実装工程において、部品と基板とを位置合わせした状態で、半田リフロー炉へ投入することにより、一括して接続実装する方法(半田リフロー工程)が多く採用されている。この場合、半田付け等の高温領域での操作が含まれるので、再剥離工程フィルムの基材フィルム及び粘着層には、耐熱性が要求される。現在、200℃程度以上の半田リフロー炉を用いる場合には、再剥離工程フィルムの基材フィルム(支持体)として、高耐熱性を有するポリイミドフィルムを用いることが主流となっている。あるいはポリエーテルエーテルケトンフィルムを基材フィルムとして用いる方法も提案されている。
【0006】
また近年、基材フィルムとして耐熱性の高い全芳香族系ポリアミドフィルムを用いた粘着シートが提案されている(例えば特許文献1や2)。ポリアミドフィルムはポリイミドフィルムより耐熱性は劣るものの、無色であることや、価格の安いこと、半田リフロー工程に耐えられるだけの耐熱性を有していることから、好ましい基材フィルムであるといえる。
【0007】
粘着剤は高温領域に置かれると、炭化したり、粘着力が消失したり、粘着力が強くなったり、着色したりする問題がある。従来はそのためシリコーン樹脂からなる粘着剤が用いられることが多かったが、シリコーン樹脂はシリコーンオリゴマーを放出することがあり、その場合電子機器の電気接点に不良をもたらすという問題もあった。近年では半田リフロー工程に耐えられるだけの耐熱性を有するアクリル粘着剤が提案されている(例えば特許文献3や特許文献4)。またアクリル粘着剤に酸化防止剤を加える方法は特許文献5などでも知られている。
【0008】
粘着シートには一旦貼合した後、再度剥離して使う用途もある。そのような用途では剥離性に優れるだけでなく、高温環境あるいは高温高湿環境下に置かれた場合浮きや剥がれがないことも要求される。そのような要求に対応した粘着剤も提案されている(例えば特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-105275号公報
【文献】特開2004-95461号公報
【文献】特許第6562131号公報
【文献】特開2010-116532号公報
【文献】特開2006-96957号公報
【文献】特開2016-180018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の通り、ポリアミドフィルムは半田リフロー工程に耐えられるだけの耐熱性を有しており、各種の耐熱性が要求される用途に用いられる。しかしながら、本発明者の注意深い検討から、基材フィルムとしてポリアミドフィルムを使って作成した粘着シートは高温に曝されることで粘着力が増大してしまい、特に再剥離が必要な工程フィルムとして用いられる粘着シートには致命的な問題になる場合もあった。従って、ポリアミドフィルムを使って粘着シートを作製しようとすると、耐熱性のある粘着層を設ける必要がある。しかしながら、特許文献1においては、耐熱性のある粘着層が好ましい旨の示唆はあるものの、具体的な解決法は提示されておらず、また特許文献2は再剥離不要なタクトスイッチ用粘着シートの提案である。
【0011】
特許文献3においては、耐熱性を有し、再剥離した際の汚染を少なくする粘着剤を提供するために、特定のアクリル樹脂とエポキシ硬化剤とを含有し、更にセミヒンダードフェノール系酸化防止剤を始めとする酸化防止剤を含有する粘着剤が提案されている。しかしながら、粘着シートの基材フィルムとしては塩化ビニル他、各種プラスチックフィルムが記述されているが、ポリアミドフィルム特有の問題については何ら解決策が提示されていない。また特許文献4においても、同様にポリアミドフィルム特有の問題についての言及はない。
【0012】
特許文献5では、粘着付与剤の黄変を防ぐことを目的としてアクリル粘着剤に酸化防止剤を含有させることが提案されているが、再剥離性に関する言及はない。
【0013】
特許文献6では、高温下あるいは高温高湿下に置かれた場合に被着体からの浮きや剥がれが起きにくい粘着剤およびそれを使った粘着シートを作るため、アクリル共重合体とイソシアネート系硬化剤とシランカップリング剤を含有する粘着剤が提案され、更には粘着剤に酸化防止剤を含有させても良いとも記載されている。しかしながら特許文献6では、得られる粘着剤の粘着力が10N/25mm以上と、工程フィルムで使うには強すぎる範囲であり、また、対応できる温度が高温といっても100℃以下の低い領域を対象としていることから、リフロー工程での問題を解決できるものではない。
【0014】
従って本発明の目的は、半田リフロー工程に耐えられる耐熱性を有し、再剥離性に優れた粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成の粘着シートによって解決できることを見出した。
【0016】
支持体としてポリアミドフィルムを用い、支持体上にアクリル粘着剤と酸化防止剤とエポキシシランカップリング剤を少なくとも含有する粘着層を有し、粘着層におけるエポキシシランカップリング剤の含有量がアクリル粘着剤の固形分に対し10質量%より多い粘着シート。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、半田リフロー工程に耐えられる耐熱性を有し、再剥離性に優れた粘着シートを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の粘着シートは、支持体としてポリアミドフィルムを用い、支持体上にアクリル粘着剤と酸化防止剤とエポキシシランカップリング剤とを少なくとも含有する粘着層を有する。
【0019】
<粘着層>
本発明の粘着シートが有する粘着層が含有するアクリル粘着剤としては、半田リフロー工程に耐えられる耐熱性を備えた粘着剤であることが好ましく、従って、乾燥物の5%重量減少温度が200℃以上であることが好ましく、250℃以上のものが更に好ましい。なお、乾燥物の5%重量減少温度は熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)で測定することができる。
【0020】
本発明の粘着シートが有する粘着層が含有するアクリル粘着剤としては、アクリルモノマーを含む複数のモノマー成分を重合したアクリル共重合体を用いることができる。アクリルモノマーを含めて使用できるモノマー成分としては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマーまたはその無水物(例えば無水マレイン酸等)、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の炭素数が1~20の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、アリルアルコール等のヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアミド基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のグリシジル基含有モノマー、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー、N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマー、ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー、2-ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート等のリン酸基含有モノマー、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー等が挙げられる。
【0021】
本発明で用いるアクリル粘着剤には熱可塑性樹脂を含有することもできる。熱可塑性樹脂としてはポリアミド、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリイソブチレン、石油樹脂、ロジン、ニトロセルロース、ショ糖エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体、エチレン/酢酸ビニル系共重合体、α-オレフィン/無水マレイン酸系共重合体、スチレン/無水マレイン酸系共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂はアクリル共重合体に対し、10~80質量%の範囲で用いられることが好ましい。
【0022】
本発明で用いるアクリル粘着剤には粘着付与剤を含有することができる。粘着付与剤としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの未変性ロジンをアルコールなどでエステル化したロジンエステルや、未変性ロジンを変性した不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジンなどの変性ロジン、これら変性ロジンを更にアルコールなどでエステル化した不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステルなどの変性ロジンエステル、未変性ロジンにフェノールを付加したロジンフェノール、テルペンフェノール樹脂、ジペンテン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、酸変性テルペン樹脂、スチレン化テルペン樹脂などのテルペン系樹脂、石油樹脂等が挙げられる。粘着付与剤は単独でも複数を組み合わせて用いてもよく、中でもロジン系粘着付与剤とテルペン系粘着付与剤を組み合わせて用いることも好ましい。粘着付与剤の量はアクリル共重合体に対して5~100質量%の範囲で用いられることが好ましい。
【0023】
上記で述べたアクリル粘着剤の市販品としては、例えばトーヨーケム(株)製オリバイン(登録商標)BPS6430OP、オリバインBPS5978、オリバインBPS5227-1などが挙げられる。
【0024】
本発明においてアクリル粘着剤の凝集力をより一層向上させ、安定した粘着性を得る上で、粘着層はアクリル粘着剤とともに架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤等を使用することができる。中でもアジリジン系架橋剤を使用することが好ましい。好ましいアジリジン系架橋剤としては、N、N′-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフォンオキサイド、N,N′-ジフェニルエタン-4,4′-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。架橋剤の量は、アクリル粘着剤の固形分(アクリル共重合体、粘着付与剤、熱可塑性樹脂の合計量)の0.01~10質量%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは0.1~5質量%の範囲である。
【0025】
本発明において、粘着層は酸化防止剤を含有する。酸化防止剤としては、例えばアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられ、この中ではアミン系酸化防止剤が好ましい。アミン系酸化防止剤としては、例えばヒンダードアミン系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、アミンケトン系酸化防止剤等が挙げられ、この中では芳香族アミン系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、(株)ADEKA製のアデカスタブ(登録商標)LAシリーズ、BASF社製のTINUVIN(登録商標)シリーズ等が挙げられる。芳香族アミン系酸化防止剤としては、特に芳香族第二級アミン系酸化防止剤が好ましい。芳香族第二級アミン系酸化防止剤としては、ジフェニルアミン、N-フェニル-o-トルイジン、N-フェニル-m-トルイジン、N-フェニル-p-トルイジン、ビス(2-メチルフェニル)アミン、ビス(3-メチルフェニル)アミン、ビス(4-メチルフェニル)アミン、p,p′-ジオクチルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N′-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、フェノチアジン等が挙げられる。アミンケトン系酸化防止剤としては2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物等が挙げられる。
【0026】
フェノール系酸化防止剤は、例えば2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール及びステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)及び3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール系酸化防止剤、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′-ビス-(4′-ヒドロキシ-3′-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン及びトコフェロール等の高分子量型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0027】
硫黄系酸化防止剤は、例えばジラウリル3,3′-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′-チオジプロピオネート及びジステアリル3,3′-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0028】
リン系酸化防止剤は、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト及びフェニルジイソデシルホスファイト等が挙げられる。
【0029】
酸化防止剤は、単独または2種以上を使用できる。酸化防止剤の使用量はアクリル粘着剤の固形分(アクリル共重合体、熱可塑性樹脂、粘着付与剤の合計量)の0.1~30質量%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは1~20質量%の範囲である。
【0030】
本発明において、粘着層はエポキシシランカップリング剤を含有する。エポキシシランカップリング剤はエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物のことであり、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0031】
エポキシシランカップリング剤はアクリル粘着剤の固形分(アクリル共重合体、粘着付与剤、熱可塑性樹脂の合計量)の10質量%より多い範囲で用いられる。好ましくは20~30質量%の範囲である。
【0032】
本発明の粘着シートが有する粘着層にはエポキシシランカップリング剤以外のシランカップリング剤も含有することもできる。
【0033】
本発明の粘着シートが有する粘着層は、更に、可塑剤、マット剤、界面活性剤、金属石鹸、難燃剤など公知の物質を使用することができる。
【0034】
本発明の粘着シートが有する粘着層の厚みは5~100μmが好ましく、10~50μmであることがより好ましい。
【0035】
<支持体>
本発明の粘着シートは支持体としてポリアミドフィルムを用いる。ポリアミドフィルムを構成するポリアミドには脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドがある。脂肪族ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66等が挙げられる。芳香族ポリアミドには半芳香族ポリアミドと全芳香族ポリアミドがあり、半芳香族ポリアミドとしては、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T等が挙げられる。全芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジアミンから得られる。本発明においては吸水性が低く、耐熱性の高い芳香族ポリアミドが好ましい。芳香族ポリアミドは、芳香族基を主鎖に有するものであればよく、いわゆる、パラ型アラミドやメタ型アラミドの他、骨格の一部をジフェニルエーテル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルケトン、ジフェニルスルホキシド、ビフェニル等で置換したものや、芳香環の水素基をメチル基、ハロゲン原子等で置換したものなどが挙げられる。なお、ポリアミドは、芳香族基の他に脂肪族基ないし脂環族基を有していてもよい。
【0036】
本発明で用いるポリアミドフィルムの厚みは15~100μmが好ましく、更に好ましくは25~50μmである。
【0037】
本発明の粘着シートは支持体、粘着層の他に、例えば帯電防止層、ハードコート層、離型層など公知の層を設けることもできる。
【実施例
【0038】
以下に本発明を実施例により更に詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において濃度に関しては、実質成分が固体状の物であっても液体状の物であっても、便宜上共通して「固形分濃度」と記載する。
【0039】
「粘着剤の5%重量減少温度測定」
下記物性測定用塗液を作製し、離型フィルム(アイム(株)製RF-CS001。厚み75μm)上に乾燥膜厚20μmとなるよう塗布した。得られた粘着フィルムをアルミパンに貼り付け、離型フィルムを剥がした後、(株)島津製作所製DTG-60熱重量示差熱分析装置を用い昇温速度10℃/分で、130℃(残留溶媒分がすべて蒸発した乾燥物と考えられる)の状態に対する5%重量減少温度を測定したところ、256℃であった。よって、下記物性測定用塗液に含まれるアクリル粘着剤を用いた粘着シートは、半田リフロー工程に耐えられる耐熱性を有する。
【0040】
<物性測定用塗液>
オリバインBPS5978(トーヨーケム(株)製アクリル粘着剤。固形分濃度35質量%) 100g
オリバインBXX5134(トーヨーケム(株)製アジリジン系架橋剤。固形分濃度5質量%) 9g
酢酸エチルを加えて全量を350gとした。
【0041】
「粘着シート1の作製」
下記粘着層塗液1を作製し、離型フィルム(アイム(株)製RF-CS001)上に乾燥膜厚30μmとなるよう塗布、乾燥した。続けて芳香族ポリアミドフィルム(ユニチカ(株)製ユニアミド(登録商標)EX、厚み25μm)を貼合し、粘着シート1を作製した。粘着層塗液1において、エポキシシランカップリング剤は含有していない。
【0042】
<粘着層塗液1>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラック(登録商標)CD(大内新興化学工業(株)製芳香族第二級アミン系酸化防止剤。固形分濃度100質量%) 1.750g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0043】
「粘着シート2の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液2を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート2を作製した。粘着層塗液2におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し25質量%である。
【0044】
<粘着層塗液2>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM403(信越シリコーン(株)製エポキシシランカップリング剤。固形分濃度100質量%) 8.750g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0045】
「粘着シート3の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液3を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート3を作製した。粘着層塗液3において、エポキシシランカップリング剤は含有していない。
【0046】
<粘着層塗液3>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックNS-5(大内新興化学工業(株)製フェノール系酸化防止剤。固形分濃度100質量%) 1.750g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0047】
「粘着シート4の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液4を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート4を作製した。粘着層塗液4におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し25質量%である。
【0048】
<粘着層塗液4>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックNS-5 1.750g
KBM403 8.750g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0049】
「粘着シート5の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液5を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート5を作製した。粘着層塗液5において、エポキシシランカップリング剤は含有していない。
【0050】
<粘着層塗液5>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0051】
「粘着シート6の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液6を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート6を作製した。粘着層塗液6におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し25質量%である。
【0052】
<粘着層塗液6>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
KBM403 8.750g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0053】
「粘着シート7の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液7を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート7を作製した。粘着層塗液7におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し7.5質量%である。
【0054】
<粘着層塗液7>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM403 2.625g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0055】
「粘着シート8の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液8を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート8を作製した。粘着層塗液8におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し12.5質量%である。
【0056】
<粘着層塗液8>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM403 4.375g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0057】
「粘着シート9の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液9を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート9を作製した。粘着層塗液9におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し17.5質量%である。
【0058】
<粘着層塗液9>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM403 6.125g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0059】
「粘着シート10の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液10を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート10を作製した。粘着層塗液10におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し22.5質量%である。
【0060】
<粘着層塗液10>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM403 7.875g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0061】
「粘着シート11の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液11を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート11を作製した。粘着層塗液11におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し27.5質量%である。
【0062】
<粘着層塗液11>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM403 9.625g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0063】
「粘着シート12の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液12を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート12を作製した。粘着層塗液12におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し32.5質量%である。
【0064】
<粘着層塗液12>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM403 11.375g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0065】
「粘着シート13の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液13を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート13を作製した。粘着層塗液13におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し25質量%である。
【0066】
<粘着層塗液13>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM303(信越シリコーン(株)製エポキシシランカップリング剤。固形分100質量%) 8.750g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0067】
「粘着シート14の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液14を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート14を作製した。粘着層塗液14におけるエポキシシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し25質量%である。
【0068】
<粘着層塗液14>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM402(信越シリコーン(株)製エポキシシランカップリング剤。固形分100質量%) 8.750g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0069】
「粘着シート15の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液15を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート15を作製した。粘着層塗液15において、エポキシシランカップリング剤は含有していない。粘着層塗液15におけるアミノシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し25質量%である。
【0070】
<粘着層塗液15>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM903(信越シリコーン(株)製アミノシランカップリング剤。固形分100質量%) 8.750g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0071】
「粘着シート16の作製」
粘着層塗液1に代えて下記処方の粘着層塗液16を塗布する以外、粘着シート1と同様にして粘着シート16を作製した。粘着層塗液16において、エポキシシランカップリング剤は含有していない。粘着層塗液16におけるメルカプトシランカップリング剤の量は、アクリル粘着剤の固形分に対し25質量%である。
【0072】
<粘着層塗液16>
オリバインBPS5978 100g
オリバインBXX5134 9.0g
ノクラックCD 1.750g
KBM803(信越シリコーン(株)製メルカプトシランカップリング剤。固形分濃度100質量%) 8.750g
酢酸エチルを加えて全量を150gとした。
【0073】
「粘着シート17の作製」
芳香族ポリアミドフィルムに代えて、支持体として0.1mm厚みのアルミシートを用いる以外、粘着シート1と同様にして粘着シート17を作製した。
【0074】
得られた粘着シート1~17の作製直後の未加温時粘着力と、260℃20分加温後の粘着力と、糊残りを下記方法に従って測定した。未加温時粘着力に対する加温後粘着力の変化倍数(加温後の粘着力/未加温時粘着力)と共に、結果を表1に示す。
【0075】
<未加温時粘着力評価>
粘着シートの離型フィルム(RF-CS001)を剥離し、0.1mm厚みのアルミニウム板に貼合し、その後幅25mmに裁断した。得られた試験片の密着強度を剥離機((株)イマダ製T字剥離法アタッチメントとフォースゲージDSTの組み合わせ)で測定した。
【0076】
<260℃20分加温後粘着力評価>
粘着シートの離型フィルム(RF-CS001)を剥離し、0.1mm厚みのアルミニウム板に貼合し、260℃下で20分間置いた後に幅25mmに裁断した。得られた試験片の密着強度を剥離機((株)イマダ製T字剥離法アタッチメントとフォースゲージDSTの組み合わせ)で測定した。なお、加温後の粘着力が未加温の粘着力に近く、未加温時粘着力に対する加温後粘着力の変化倍数が小さいほど再剥離性に優れている。
【0077】
<糊残り>
260℃20分加温後粘着力を評価し終わったサンプルのアルミニウム板の表面を観察し、粘着シートが剥離できないもの、あるいは全面に粘着層成分が付いているものを×、一部粘着層成分が付いているものを△、付いていないものを○とした。
【0078】
【表1】
【0079】
以上の結果から本発明の効果が明らかにわかる。