(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】センターピラーリインフォースメント
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
B62D25/04 B
(21)【出願番号】P 2019223504
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 洋康
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/030463(WO,A1)
【文献】特開2009-1121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0147111(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0341684(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端縁部がサイドシルに接合される下部部材と、
前記下部部材の上方側に配置されて互いの端面が溶接により接合されると共に、上端縁部がルーフサイドレールに接合される上部部材と、
を備え、
前記下部部材と前記下部部材の引張強度よりも大きい引張強度を有する前記上部部材とからなるテーラードブランクをプレス成形によって所定形状に成形されたセンターピラーリインフォースメントにおいて、
前記下部部材は、前記上部部材との接合部よりも下方に、車幅方向外側へ突出する凸状平面部を有し、
前記上部部材は、前記接合部よりも上方の縦壁部に形成されたドアストライカ取付部を有し、
前記凸状平面部の上方側端縁部から前記ドアストライカ取付部よりも下方側の位置にかけて、長手方向に沿って前記接合部をまたいで車幅方向外側へ突出するように成形されたビードを備えた、
センターピラーリインフォースメント。
【請求項2】
請求項1に記載のセンターピラーリインフォースメントにおいて、
前記上部部材は、引張強度が980MPa以上の高張力鋼板で構成されており、
前記下部部材は、引張強度が440MPa以上の高張力鋼板で構成されており、
前記上部部材は、前記下部部材の引張強度の1.5倍以上の引張強度を有する、
センターピラーリインフォースメント。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のセンターピラーリインフォースメントにおいて、
前記ビードは、前記凸状平面部の上方側端縁部から上方側へ徐々に突出高さが低くなるように成形されている、
センターピラーリインフォースメント。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のセンターピラーリインフォースメントにおいて、
前記ビードは、前記凸状平面部の上方側端縁部から上方側へ同じ突出高さになるように成形されている、
センターピラーリインフォースメント。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のセンターピラーリインフォースメントにおいて、
前記ビードは、天井部の車両前後方向における中央位置に配置され、
前記天井部は、前記ビードの車両前後方向両側に、前記天井部の内側面に配置された補強部材を溶接する溶接部を有する、
センターピラーリインフォースメント。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のセンターピラーリインフォースメントにおいて、
前記凸状平面部は、車幅方向外側へ突出するドアヒンジ平面部を含む、
センターピラーリインフォースメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターピラーリインフォースメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、センターピラーリインフォースメントに関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載される車体構造では、センターピラーの閉断面に配置されるセンターピラーリインフォースメントは、所謂テーラードブランクであり、互いの端面でプラズマ溶接により接合された上側のアッパーパネルと、アッパーパネルよりも薄い下側のロアパネルとを有している。アッパーパネルとロアパネルの境界部分、つまり、溶接の接合部は、乗員の腰部よりも低く設定されている。
【0003】
また、アッパーパネルの接合部よりも上側の部分に、車幅方向外側へ向かって凸に形成されたビードが配置されている。これにより、側面衝突時に、接合部とビードとの間の部分にかかる荷重をアッパーパネルとロアパネルに伝達して、アッパーパネルとロアパネルとの接合部近傍が折り曲げられる変形モードを実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ビードは、センターピラーリインフォースメントの長手方向に沿って、溶接の接合部をまたいで配置されていない。このため、アッパーパネルのブランクとロアパネルのブランクとをプラズマ溶接によって接合した後、冷間プレスにより成形した場合には、アッパーパネルとロアパネルの引張強度差が大きいと、溶接部の外側表面に長手方向に沿ってしわが発生し、プレス成形性が悪化する。また、ロアパネルの接合部よりも下方の位置に、折れ曲がり起点を設定した場合に、アッパーパネルとロアパネルの引張強度差が大きいと、側面衝突時に、折れ曲がり起点よりも上方に位置する接合部から折れ曲がる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、引張強度差の大きい上部部材と下部部材とが接合されたテーラードブランクのプレス成形におけるプレス成形性を向上させることができるセンターピラーリインフォースメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1発明は、下端縁部がサイドシルに接合される下部部材と、前記下部部材の上方側に配置されて互いの端面が溶接により接合されると共に、上端縁部がルーフサイドレールに接合される上部部材と、を備え、前記下部部材と前記下部部材の引張強度よりも大きい引張強度を有する前記上部部材とからなるテーラードブランクをプレス成形によって所定形状に成形されたセンターピラーリインフォースメントにおいて、前記下部部材は、前記上部部材との接合部よりも下方に、車幅方向外側へ突出する凸状平面部を有し、前記上部部材は、前記接合部よりも上方の縦壁部に形成されたドアストライカ取付部を有し、前記凸状平面部の上方側端縁部から前記ドアストライカ取付部よりも下方側の位置にかけて、長手方向に沿って前記接合部をまたいで車幅方向外側へ突出するように成形されたビードを備えた、センターピラーリインフォースメントである。
【0008】
第2発明は、上記第1発明に係るセンターピラーリインフォースメントにおいて、前記上部部材は、引張強度が980MPa以上の高張力鋼板で構成されており、前記下部部材は、引張強度が440MPa以上の高張力鋼板で構成されており、前記上部部材は、前記下部部材の引張強度の1.5倍以上の引張強度を有する、センターピラーリインフォースメントである。
【0009】
第3発明は、上記第1発明又は第2発明に係るセンターピラーリインフォースメントにおいて、前記ビードは、前記凸状平面部の上方側端縁部から上方側へ徐々に突出高さが低くなるように成形されている、センターピラーリインフォースメントである。
【0010】
第4発明は、上記第1発明又は第2発明に係るセンターピラーリインフォースメントにおいて、前記ビードは、前記凸状平面部の上方側端縁部から上方側へ同じ突出高さになるように成形されている、センターピラーリインフォースメントである。
【0011】
第5発明は、上記第1発明乃至第4発明のいずれか1の発明に係るセンターピラーリインフォースメントにおいて、前記ビードは、天井部の車両前後方向における中央位置に配置され、前記天井部は、前記ビードの車両前後方向両側に、前記天井部の内側面に配置された補強部材を溶接する溶接部を有する、センターピラーリインフォースメントである。
【0012】
第6発明は、上記第1発明乃至第5発明のいずれか1の発明に係るセンターピラーリインフォースメントにおいて、前記凸状平面部は、車幅方向外側へ突出するドアヒンジ平面部を含む、センターピラーリインフォースメントである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記各発明の構成をとることによって、引張強度差の大きい上部部材と下部部材とが接合されたテーラードブランクのプレス成形におけるプレス成形性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメントの一例を示す正面図である。
【
図2】
図1に示すセンターピラーリインフォースメントの側面図である。
【
図3】
図1に示すセンターピラーリインフォースメントのブランクの一例を示す図である。
【
図4】
図1に示す下部部材と上部部材の接合部を示す要部拡大正面図である。
【
図5】
図2に示す下部部材と上部部材の接合部を示す要部拡大側面図である。
【
図8】
図4のVIII-VIII矢視断面図である。
【
図9】ビードを有する場合の成形解析結果の一例を示す図である。
【
図10】ビードを有しない場合の成形解析結果の一例を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係るセンターピラーリインフォースメントの下部部材と上部部材の接合部を示す要部拡大正面図である。
【
図13】第3実施形態に係るセンターピラーリインフォースメントの下部部材と上部部材の接合部を示す要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るセンターピラーリインフォースメントを具体化した第1実施形態乃至第3実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本発明に係るセンターピラーリインフォースメントを具体化した第1実施形態について
図1乃至
図10に基づいて説明する。尚、各図に適宜に示される矢印FRは、車両前方側を示し、又、矢印UPは車両上方側を示している。更に、矢印INは、車幅方向内側を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
【0016】
[第1実施形態]
図1乃至
図3は、本発明の第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1の概略構成を示す。
図1及び
図2に示すように、長尺状のセンターピラーリインフォースメント1は、不図示のセンターピラーアウタと不図示のセンターピラーインナとで閉じ断面とされるセンターピラーの内部に、スポット溶接やリベット締結等によって一体的に固定される。
【0017】
センターピラーリインフォースメント1は、車幅方向内側に開口する断面ハット形状の所定形状に形成されており、断面溝状の開口側の両端縁には、それぞれ外側へ略直角に折り曲げられたフランジ部14が設けられている。このセンターピラーリインフォースメント1は、取付部15を介して上端縁部がルーフサイドレール3に接続される正面視略T字状の上部部材11と、取付部16を介して下端縁部がサイドシル5に接続される正面視略逆T字状の下部部材12と、から構成され、車両上下方向に配置されている。
【0018】
上部部材11と下部部材12は、長手方向に対して全幅に渡って交差する接合部としての接合線18で相互に一体的に溶接によって接合されている。下部部材12の範囲は、センターピラーリインフォースメント1の断面形状や大きさ等を考慮して所定の補強強度が得られるように適宜設定される。
図2に示すように、下部部材12の範囲は、センターピラーリインフォースメント1の全高Hの約1/5~1/3の範囲内で、例えば、下端から約1/3程度の高さの範囲に設定される。具体的には、下部部材12の上端縁部は、例えば、着座した乗員の腰部よりも低くなるように設定される。
【0019】
ここで、
図3に示すように、センターピラーリインフォースメント1は、所謂テーラードブランク21を冷間プレスによって成形した鋼板部材である。尚、センターピラーリインフォースメント1は、テーラードブランク21を熱間プレス又は温間プレスによっても成形可能である。
【0020】
このテーラードブランク21は、長手方向に対して全幅に渡って交差する接合部としての接合線18に沿って上部部材11の下端縁と下部部材12の上端縁とが溶接によって接合されている。上部部材11と下部部材12の溶接方法は、レーザ溶接、プラズマ溶接、(マッシュ)シーム溶接等、任意の適切な溶接方法を用いることができる。上部部材11と下部部材12は、互いの端面同士を突き合わせた状態で溶接することができる。
【0021】
上部部材11と下部部材12は、ほぼ同じ板厚(例えば、厚さ約1.4~2.0mm)の高張力鋼板で構成され、上部部材11は、下部部材12の引張強度よりも大きい引張強度を有し、好ましくは、約1.5倍以上の引張強度を有するように設定されている。具体的には、上部部材11の引張強度は、980MPa以上であり、例えば、980MPa、1180MPa、1470MPa等である。下部部材12の引張強度は、440MPa以上であり、例えば、590MPa、780MPa等である。
【0022】
尚、上部部材11と下部部材12は、必ずしも同じ板厚である必要はなく、必要強度やプレス成形性を考慮して個別に設定することができる。例えば、下部部材12の板厚を上部部材11の板厚よりも薄く設定して、下部部材12の材料強度が上部部材11の材料強度よりも小さくなるように設定してもよい。また、上部部材11と下部部材12は、必ずしも突き合わせて溶接する必要はなく、端部を重ね合わせてスポット溶接等により溶接して接合してもよい。
【0023】
次に、上部部材11と下部部材12の接合線18に沿って溶接された接合部分の構成について
図4乃至
図8に基づいて説明する。
図4乃至
図6に示すように、上部部材11は、車幅方向内側に開口する断面略ハット形状に形成されており、車両前後方向前側から後側へ、前側フランジ部11A、前側縦壁部11B、車両上下方向に形成された縦長ビード部11C、略平坦に形成された天井部11D、後側縦壁部11E、後側フランジ部11Fをこの順に有している。前側縦壁部11Bと後側縦壁部11Eは、略平坦に形成された前側フランジ部11Aと後側フランジ部11Fから、それぞれ車幅方向外側へ立ち上がり、縦長ビード部11C及び天井部11Dによって車幅方向外側端が接続されている。
【0024】
また、
図4及び
図5に示すように、天井部11Dの車両上下方向上端部には、天井部11Dの車両前後方向の全幅に渡って、車幅方向外側へ所定高さ(例えば、高さ約3mm~10mm)突出する上側ドアヒンジ平面部11Gが形成されている。上側ドアヒンジ平面部11Gには、不図示のリヤドア用ヒンジが取り付けられる一対の貫通孔11Hが車両上下方向に沿って配置されている。また、前側縦壁部11Bには、天井部11Dの車両上下方向略中央位置を挟んで、車両上下方向の2箇所に一対のドアストライカ取付部25が貫通して設けられている。
【0025】
図4、
図5及び
図6に示すように、下部部材12は、上端側が上部部材11と接合線18を挟んで連続的に形成され、車幅方向内側に開口する断面略ハット形状に形成されている。下部部材12は、上部部材11と同様に車両前後方向前側から後側へ、前側フランジ部12A、前側縦壁部12B、車両上下方向に形成された縦長ビード部12C、略平坦に形成された天井部12D、後側縦壁部12E、後側フランジ部12Fをこの順に有している。前側縦壁部12Bと後側縦壁部12Eは、略平坦に形成された前側フランジ部12Aと後側フランジ部12Fから、それぞれ車幅方向外側へ立ち上がり、縦長ビード部12C及び天井部12Dによって車幅方向外側端が接続されている。
【0026】
また、天井部12Dの接合線18よりも少し下側の位置には、天井部12Dの車両前後方向の全幅に渡って、車幅方向外側へ所定高さ(例えば、高さ約3mm~10mm)突出する正面視横長矩形状のドアヒンジ平面部12Gが形成されている。このドアヒンジ平面部12Gは、凸状平面部の一例として機能する。
【0027】
ドアヒンジ平面部12Gには、不図示のリヤドア用ヒンジが取り付けられる一対の貫通孔12Hが車両前後方向に沿って配置されている。また、縦長ビード部12Cは、ドアヒンジ平面部12Gの車両前後方向の前側端縁の下端に対向する位置まで設けられている。ドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向下端縁より下側の天井部12Dは、略平坦に形成されて、下端が横長矩形状の取付部16に接続されている。
【0028】
また、
図4及び
図5に示すように、ビード27が、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端縁の車両前後方向略中央部から、上部部材11の天井部11Dにおける一対のドアストライカ取付部25よりも下方側の位置にかけて、接合線(接合部)18をまたいで長手方向に沿って設けられている。
【0029】
図4、
図7及び
図8に示すように、ビード27は、車幅方向外側へ突出する断面円弧の凸形状で、長手方向に細長く延びる凸条に形成されている。具体的には、ビード27は、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの上端から天井部12Dの車幅方向略中央を通って、更に、接合線(接合部)18またいで、上部部材11の天井部11Dのドアストライカ取付部25よりも下方側の位置にかけて細長く延びる凸条に成形されている。
【0030】
ビード27の車両前後方向の幅は、各天井部11D、12Dの車両前後方向の幅の約1/4~1/5に設定され、車両上下方向に長い正面視略細長矩形状に成形されている。また、ビード27の下端部の天井部12Dからの突出高さは、ドアヒンジ平面部12Gの天井部12Dからの突出高さにほぼ等しい高さに成形されている。そして、ビード27は、車両上下方向上方側へ徐々に突出高さが低くなるように成形され、上端部の天井部11Dからの突出高さが、下端部の約1/2になるまで、車両前後方向幅がほぼ同じ幅で成形された後、正面視先細り状に成形されている。
【0031】
これにより、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端から、上部部材11の天井部11Dのビード27の上端部までを含む接合線(接合部)18を挟んだ各天井部12D、11Dの曲げ強度を、ビード27によって、ドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向下端よりも下方側の曲げ強度よりも大きくすることができる。また、ビード27は、ドアヒンジ平面部12Gの上方側端縁部から上方側へ徐々に突出高さが低くなるように成形されているため、応力集中を避けることができる。
【0032】
その結果、上部部材11の引張強度が、下部部材12の引張強度の約1.5倍以上に設定されていても、接合線(接合部)18が側面衝突時の破断起点になることを防止できる。従って、側面衝突時に、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向下端よりもサイドシル5側(下方側)に設定される折れ曲がり起点から確実に折れ曲がり、衝突物の車両室内側への侵入量の低減化を図ることができる。
【0033】
尚、
図4、
図5及び
図7に示すように、ビード27の車両前後方向の幅は、各天井部11D、12Dの車両前後方向の幅の約1/4~1/5に設定されているため、ビード27の車両前後方向両側に、スポット溶接等を行う各溶接部28A~28Dを設定してもよい。そして、例えば、各天井部11D、12Dのビード27に対向する車幅方向内側面に、車幅方向内側に開口する浅い断面略溝状に形成された2点鎖線で示す補強部材31を配置して、スポット溶接等によって溶接してもよい。
【0034】
図4及び
図7において、×印により溶接箇所を示している。これにより、補強部材31をスポット溶接等により溶接接合することによって、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端から、上部部材11の天井部11Dのビード27の上端部までを含む接合線(接合部)18を挟んだ各天井部12D、11Dの曲げ強度を更に大きくすることができる。
【0035】
次に、上記のように構成されたセンターピラーリインフォースメント1のビード27を有する場合と、ビード27を有しない場合における接合線(接合部)18を含む部分のCAE(Computer Aided Engineering)による成形解析結果の一例を
図9及び
図10に基づいて説明する。尚、上部部材11は、引張強度1470MPaで、板厚1.6mmの高張力鋼板に設定した。下部部材12は、引張強度590MPaで、板厚1.4mmの高張力鋼板に設定した。また、センターピラーリインフォースメント1は、テーラードブランク21の冷間プレスによる成形に設定した。
【0036】
図9に示すように、ビード27を有する場合は、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端から、上部部材11の天井部11Dのビード27の上端部までを含む接合線(接合部)18を挟んだ各天井部12D、11Dには、しわが発生していない。これは、冷間プレスによるプレス成形時に、ビード27が断面線長のつじつまを合わせるように変形するため、しわの発生を抑制でき、プレス成形性を向上させることができる。
【0037】
一方、
図10に示すように、ビード27を有しない場合には、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端から、上部部材11の天井部11Dのビード27の上端部までを含む接合線(接合部)18を挟んだ各天井部12D、11Dには、大きな各しわ29が発生している。これは、上部部材11は、引張強度1470MPaの高張力鋼板であり、下部部材12は、引張強度590MPaの高張力鋼板であるため、上部部材11の延性は下部部材12の延性よりも小さくなり、冷間プレスによるプレス成形時に、大きな各しわ29が長手方向に沿って発生している。
【0038】
以上詳細に説明した通り、第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1では、接合線(接合部)18をまたいで形成されたビード27によって、ドアヒンジ平面部12Gの上方側端縁部から一対のドアストライカ取付部25よりも下方側の位置までの冷間プレス等のプレス成形時に、断面線長の均一化を図ることができ、しわの発生を効果的に抑制してプレス成形性の向上を図ることができる。
【0039】
また、ビード27によって、ドアヒンジ平面部12Gの上方側端縁部から一対のドアストライカ取付部25よりも下方側の位置までの接合線(接合部)18を挟んだ部分の曲げ強度を大きくすることができる。その結果、側面衝突時において、下部部材12に設定されたドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向下端よりも下方に設定された折れ曲がり起点から確実に折れ曲がり、衝突物の車両室内側への侵入量の低減化を図ることができる。
【0040】
また、上部部材11は、引張強度が980MPa以上の高張力鋼板で構成されており、下部部材12は、引張強度が440MPa以上の高張力鋼板で構成されており、上部部材11は、下部部材12の引張強度の約1.5倍以上の引張強度を有している。その結果、冷間プレス等のプレス成形におけるプレス成形性を向上させつつ、必要な材料強度を確保すると共に、上部部材11の軽量化を図ることができる。また、ビード27は、ドアヒンジ平面部12Gの上方側端縁部から上方側へ徐々に突出高さが低くなるように成形されているため、応力集中を避け、側面衝突時の破断起点になることを防止できる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント41について
図11及び
図12に基づいて説明する。尚、上記第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1と同一符号は、上記第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0042】
第2実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント41は、第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1とほぼ同じ構成である。但し、
図11及び
図12に示すように、前記ビード27に替えて、ビード43が設けられている点で異なっている。具体的には、
図11及び
図12に示すように、ビード43が、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端縁の車両前後方向略中央部から、上部部材11の天井部11Dにおける一対のドアストライカ取付部25よりも下方側の位置にかけて、接合線(接合部)18をまたいで長手方向に沿って設けられている。
【0043】
ビード43は、車幅方向外側へ突出する断面円弧の凸形状で、長手方向に細長く延びる凸条に形成されている。具体的には、ビード43は、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの上端から天井部12Dの車幅方向略中央を通って、更に、接合線(接合部)18またいで、上部部材11の天井部11Dのドアストライカ取付部25よりも下方側の位置にかけて細長く延びる凸条に成形されている。ビード43の車両前後方向の幅は、各天井部11D、12Dの車両前後方向の幅の約1/4~1/5に設定され、車両上下方向に長い正面視略細長矩形状に成形されている。
【0044】
また、ビード43の下端部の天井部12Dからの突出高さは、ドアヒンジ平面部12Gの天井部12Dからの突出高さよりも少し低い高さ(例えば、約70~90%の高さ)に成形されている。そして、ビード43は、車両上下方向上方側へ、車両前後方向幅がほぼ同じ幅で、各天井部12D、11Dからの突出高さがほぼ同じ高さになるように成形された後、正面視先細り状に成形されている。
【0045】
これにより、ビード43は、ドアヒンジ平面部12Gの上方側端縁部から上方側へ同じ突出高さになるように成形されているため、ドアヒンジ平面部12Gの上方側端縁部から接合線(接合部)18を挟んでビード43が形成された部分までの曲げ強度を向上させることができる。その結果、上部部材11の引張強度が、下部部材12の引張強度の約1.5倍以上に設定されていても、接合線(接合部)18を挟んだ部分が、側面衝突時の破断起点になることを防止できる。従って、側面衝突時に、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向下端よりもサイドシル5側(下方側)に設定される折れ曲がり起点から確実に折れ曲がり、衝突物の車両室内側への侵入量の低減化を図ることができる。
【0046】
また、第2実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント41では、第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1と同様に、接合線(接合部)18をまたいで形成されたビード43によって、ドアヒンジ平面部12Gの上方側端縁部から一対のドアストライカ取付部25よりも下方側の位置までの冷間プレス等のプレス成形時に、断面線長の均一化を図ることができ、しわの発生を効果的に抑制してプレス成形性の向上を図ることができる。
【0047】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント51について
図13及び
図14に基づいて説明する。尚、上記第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1と同一符号は、上記第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0048】
第3実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント51は、第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1とほぼ同じ構成である。但し、
図13及び
図14に示すように、前記ビード27に替えて、ビード53が設けられている点で異なっている。具体的には、
図13及び
図14に示すように、ビード53が、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端縁の車両前後方向略中央部から、上部部材11の天井部11Dにおける一対のドアストライカ取付部25のうちの上方側のドアストライカ取付部25に対向する位置まで、接合線(接合部)18をまたいで長手方向に沿って設けられている。
【0049】
ビード53は、車幅方向外側へ突出する断面円弧の凸形状で、長手方向に細長く延びる凸条に形成されている。具体的には、ビード53は、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの上端から天井部12Dの車幅方向略中央を通って、更に、接合線(接合部)18またいで、上部部材11の天井部11Dの上方側のドアストライカ取付部25に対向する位置にかけて細長く延びる凸条に成形されている。ビード53の下端部の車両前後方向の幅は、ドアヒンジ平面部12Gの車両前後方向の幅の約1/4~1/5に設定され、上方にいくに従って徐々に先細りになる正面視略細長三角形状に成形されている。
【0050】
また、ビード53の下端部の天井部12Dからの突出高さは、ドアヒンジ平面部12Gの天井部12Dからの突出高さにほぼ等しい高さに成形されている。そして、ビード53は、車両上下方向上方側へ徐々に突出高さが低くなり、上端部が上部部材11の天井部11Dの車幅方向外側の表面に達するように成形されている。
【0051】
これにより、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端から、上部部材11の天井部11Dのビード53の上端部までを含む接合線(接合部)18を挟んだ各天井部12D、11Dの曲げ強度を、ビード53によって、ドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向下端よりも下方側の曲げ強度よりも大きくすることができる。また、ビード53は、ドアヒンジ平面部12Gの上方側端縁部から上方側へ徐々に突出高さが低くなるように成形されているため、応力集中を避けることができる。
【0052】
その結果、上部部材11の引張強度が、下部部材12の引張強度の約1.5倍以上に設定されていても、接合線(接合部)18が側面衝突時の破断起点になることを防止できる。従って、側面衝突時に、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向下端よりもサイドシル5側(下方側)に設定される折れ曲がり起点から確実に折れ曲がり、衝突物の車両室内側への侵入量の低減化を図ることができる。
【0053】
また、第3実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント51では、第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1と同様に、接合線(接合部)18をまたいで形成されたビード53によって、ドアヒンジ平面部12Gの上方側端縁部から一対のドアストライカ取付部25のうちの上方側のドアストライカ取付部25に対向する位置までの冷間プレス等のプレス成形時に、断面線長の均一化を図ることができ、しわの発生を効果的に抑制してプレス成形性の向上を図ることができる。
【0054】
尚、本発明は前記第1実施形態乃至第3実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形、追加、削除が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。尚、以下の説明において、上記第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1と同一符号は、上記第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0055】
(A)例えば、第1実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント1において、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端縁から、上部部材11の天井部11Dにおける一対のドアストライカ取付部25よりも下方側の位置にかけて、2個のビード27を車両前後方向に所定距離だけ離して長手方向に沿って配置するようにしてもよい。また、例えば、第2実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント41において、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端縁から、上部部材11の天井部11Dにおける一対のドアストライカ取付部25よりも下方側の位置にかけて、2個のビード43を車両前後方向に所定距離だけ離して長手方向に沿って配置するようにしてもよい。
【0056】
また、例えば、第3実施形態に係るセンターピラーリインフォースメント51において、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端縁から、上部部材11の天井部11Dにおける一対のドアストライカ取付部25のうち上方側のドアストライカ取付部25に対向する位置にかけて、2個のビード53を車両前後方向に所定距離だけ離して長手方向に沿って配置するようにしてもよい。
【0057】
これにより、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向上端から、上部部材11の天井部11Dの各ビード27、43、53の上端部までを含む接合線(接合部)18を挟んだ各天井部12D、11Dの曲げ強度を、2個の各ビード27、43、53によって、ドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向下端よりも下方側の曲げ強度よりも更に大きくすることができる。
【0058】
その結果、上部部材11の引張強度が、下部部材12の引張強度の約1.5倍以上に設定されていても、接合線(接合部)18が側面衝突時の破断起点になることを防止できる。従って、側面衝突時に、下部部材12のドアヒンジ平面部12Gの車両上下方向下端よりもサイドシル5側(下方側)に設定される折れ曲がり起点から確実に折れ曲がり、衝突物の車両室内側への侵入量の低減化を図ることができる。
【0059】
(B)また、前記第1発明乃至第6発明は、以下の効果を奏する。例えば、第1発明に係るセンターピラーリインフォースメントによれば、接合部をまたいで形成されたビードによって、凸状平面部の上方側端縁部からドアストライカ取付部よりも下方側の位置までのプレス成形による断面線長の均一化を図ることができ、しわの発生を効果的に抑制でき、プレス成形性の向上を図ることができる。また、ビードによって、凸状平面部の上方側端縁部からドアストライカ取付部よりも下方側の位置までの接合部を挟んだ部分の曲げ強度を大きくすることができる。その結果、側面衝突時に、下部部材に設定された折れ曲がり起点から確実に折れ曲がり、衝突物の車両室内側への侵入量の低減化を図ることができる。
【0060】
また、第2発明に係るセンターピラーリインフォースメントによれば、上部部材は、引張強度が980MPa以上の高張力鋼板で構成されており、下部部材は、引張強度が440MPa以上の高張力鋼板で構成されており、上部部材は、下部部材の引張強度の1.5倍以上の引張強度を有している。その結果、プレス成形におけるプレス成形性を向上させつつ、必要な材料強度を確保すると共に、上部部材の軽量化を図ることができる。また、第3発明に係るセンターピラーリインフォースメントによれば、ビードは、凸状平面部の上方側端縁部から上方側へ徐々に突出高さが低くなるように成形されているため、応力集中を避け、側面衝突時の破断起点になることを防止できる。
【0061】
また、第4発明に係るセンターピラーリインフォースメントによれば、ビードは、凸状平面部の上方側端縁部から上方側へ同じ突出高さになるように成形されているため、凸状平面部の上方側端縁部から接合部を挟んでビードが形成された部分までの曲げ強度を向上させることができる。その結果、上部部材の引張強度が、下部部材の引張強度よりも大きい引張強度に設定されていても、接合部を挟んだ部分が、側面衝突時の破断起点になることを効果的に防止できる。また、第5発明に係るセンターピラーリインフォースメントによれば、ビードは、天井部の車両前後方向における中央位置に配置されるため、天井部の内側面に配置された補強部材を溶接する溶接部を広くすることができ、作業性の向上を図ることができる。
【0062】
また、第6発明に係るセンターピラーリインフォースメントによれば、接合部をまたいで形成されたビードによって、ドアヒンジ平面部の上方側端縁部からドアストライカ取付部よりも下方側の位置までのプレス成形による断面線長の均一化を図ることができ、しわの発生を効果的に抑制でき、プレス成形性の向上を図ることができる。また、ビードによって、ドアヒンジ平面部の上方側端縁部からドアストライカ取付部よりも下方側の位置までの接合部を挟んだ部分の曲げ強度を大きくすることができる。その結果、側面衝突時に、下部部材に設定された折れ曲がり起点から確実に折れ曲がり、衝突物の車両室内側への侵入量の低減化を図ることができる。
【符号の説明】
【0063】
1、41、51 センターピラーリインフォースメント
3 ルーフサイドレール
5 サイドシル
11 上部部材
11B 前側縦壁部
11D、12D 天井部
12 下部部材
12G ドアヒンジ平面部
18 接合線(接合部)
21 テーラードブランク
25 ドアストライカ取付部
27、43、53 ビード
28A~28D 溶接部