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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】抗-IL-22R抗体
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/08 20060101AFI20221024BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221024BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221024BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221024BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221024BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221024BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221024BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C12P21/08
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P17/06
A61P17/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C12N15/13 ZNA
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019501641
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2017067923
(87)【国際公開番号】W WO2018011420
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】1612337.4
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517303085
【氏名又は名称】アルジェニクス ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クリストプヘ フレデリク ジェローム ブランチェトト
(72)【発明者】
【氏名】ビアギッテ ウルソ
(72)【発明者】
【氏名】ティネ スカク‐ニールセン
(72)【発明者】
【氏名】マレネ ベルテルセン
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ヴァン デル ウォニング
(72)【発明者】
【氏名】マイケル サウンダース
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ジョセフ ウィルヘルムス デ ハアルド
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530087(JP,A)
【文献】国際公開第2004/085476(WO,A2)
【文献】国際公開第2006/047249(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/061119(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL-22Rに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
該抗体又はその抗原結合断片が、
配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:36を含むHCDR2;及び配列番号:34を含むHCDR1の可変重鎖CDR配列の組合せを含む重鎖可変ドメイン、並びに
配列番号:54を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;及び配列番号:16を含むLCDR1の可変軽鎖CDR配列の組合せを含む軽鎖可変ドメイン
を含む、前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体又はその抗原結合断片が、
配列番号:63のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び
配列番号:64のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
から選択されるVH及びVLの組合せを含む、請求項1記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号:67のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む重鎖、及び
配列番号:68のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖
から選択される少なくとも一つの重鎖及び少なくとも一つの軽鎖を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合断片が
(i)Tyr60を含まないIL-22Rタンパク質内のエピトープに結合する;
(ii)高親和性でヒトIL-22Rに結合する;
(iii)IL-22のIL-22Rへの結合をブロックする;
(iv)IL-22RのIL-22-依存型活性化及び/又はIL-22RのIL-20-依存型活性化を阻害する;
(v)マウスのIL-22Rと交差反応しない
という特性の少なくとも1以上を示す、請求項1~3のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
ヒトIgGのヒンジ領域、CH2ドメイン及び/又はCH3ドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
前記重鎖可変ドメイン及び前記軽鎖可変ドメインが一緒に、最も良くマッチしている生殖細胞系列のヒトIgGのVH配列及びVL配列少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を示す、請求項1~5のいずれか一項記載の抗体。
【請求項7】
前記重鎖可変ドメイン及び前記軽鎖可変ドメインが一緒に、最も良くマッチしている生殖細胞系列のヒトIgG1のVH配列及びVL配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を示す、請求項1~5のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
前記VHドメイン及び/又はVLドメイン又は1以上の前記CDRが、ラクダ科の動物-由来である、請求項1~7のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
前記動物が、ラマである、請求項8記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片をコードしている、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
抗体又は抗原結合断片の可変重鎖ドメインをコードしているポリヌクレオチドを含み
該ポリヌクレオチドが、配列番号:78により表される配列を含む、請求項10記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
抗体又は抗原結合断片の可変軽鎖ドメインをコードしているポリヌクレオチドを含み
該ポリヌクレオチドが、配列番号:79により表される配列を含む、請求項10記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
宿主細胞又は無細胞発現システムにおける抗体、抗原結合断片、可変重鎖ドメインもしくは可変軽鎖ドメインの発現を可能にする調節配列に機能的に連結された、請求項1012のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項14】
請求項13記載の発現ベクターを含む、宿主細胞又は無細胞発現システム。
【請求項15】
組換え抗体又はその抗原結合断片の製造方法であって、
請求項14記載の宿主細胞又は無細胞発現システムを、該抗体又はその抗原結合断片の発現を可能にする条件下で培養すること、及び
発現された該抗体又は抗原結合断片を回収すること
を含む、前記方法。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片を含む、医薬組成物。
【請求項17】
医薬品としての使用のための、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体もしくはその抗原結合断片、又は請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
乾癬、乾癬性関節炎又はアトピー性皮膚炎の治療又は予防において使用するための、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体もしくはその抗原結合断片、又は請求項16記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、サイトカイン受容体IL-22R、特にヒトIL-22Rに結合する、抗体及びそれらの抗原結合断片に関する。本発明のIL-22R抗体及び抗原結合断片は、先行技術において説明されたIL-22R抗体と比べ、明確な特性を、特に明確な特性の組合せを発揮する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
IL-22R(IL-22R1及びIL-22RAとしても公知)は、皮膚細胞及び上皮細胞上で選択的に発現される、II型サイトカイン受容体である。この受容体は、3種のサイトカイン:インターロイキン22(IL-22)、インターロイキン20(IL-20)及びインターロイキン24(IL-24)を介したシグナリングを媒介する。IL-22Rを介したサイトカインシグナリングは、細胞表面でのヘテロ二量体複合体の形成を必要とする。図1に示したように、IL-22は、IL-22R及びIL-10Rβ(IL-10R2としても公知)からなる複合体に結合し、且つこれを介してシグナル伝達するのに対し、IL-20及びIL-24は、IL-22R及びIL-20Rβ(IL-20R2としても公知)からなるヘテロ二量体性複合体に結合し、且つこれを介してシグナル伝達する。
【0003】
インターロイキン-22は、免疫細胞、特に活性化された樹状細胞及びT細胞により発現されるサイトカインである。一旦免疫系により生成されると、IL-22は、上皮細胞上のIL-22Rに結合し且つこれを活性化することにより、その生物学的作用を発揮する。IL-22結合の下流のIL-22R-IL-10Rβ複合体の活性化は、炎症促進反応、細菌性病原体に対する宿主防御にとって重大な抗-微生物タンパク質の誘導、並びに肺及び肝臓などの一部の臓器の保護的作用につながる。IL-22はまた、疾患病理、特に乾癬、乾癬性関節炎及びアトピー性皮膚炎などの炎症障害の発生に関与している(Maらの文献、J Clin. Invest. 118: 597-607 (2008);Van Belleらの文献、J Immunol. Jan 1;188(1):462-9 (2012);Sabatらの文献、Nat. Rev. Drug Discov. 13(1): 21-38 (2014))。
【0004】
IL-22Rの細胞外ドメインとの複合体中のIL-22の結晶構造は解明されており、且つこのリガンドはどのようにその受容体と会合するかについて重要な見識が提供されている(Jonesらの文献、Structure 16(9): 1333-1344 (2008))。IL-22Rの細胞外領域は、互いにほぼ正確な角度で配向された2種のフィブロネクチンIII型(FBNIII)ドメイン(D1及びD2)を含む。これらのドメインの境界面に位置した5つのループは主に、リガンド-受容体複合体におけるIL-22残基の接触状態(engaging)に係わっている。受容体結合に寄与するIL-22残基は、リガンド内のサイト1a及びサイト1bの2つのサイトでクラスター化されている。受容体及びリガンドの両方によりもたらされる重要な残基の見識は、治療戦略として、そこでこの相互作用が破壊され、IL-22シグナリングが無効になる方式を明らかにしている。
【0005】
インターロイキン-20及びインターロイキン-24は、単球及びケラチノサイトにより発現され、並びにIL-22同様、これらのサイトカインは、皮膚のホメオスタシス及び病理において役割を果たすことがわかっている。これは、この受容体を活性化するリガンドの結合をブロックすることにより、IL-22Rの下流のシグナリングを阻害又は低下する戦略は、特に乾癬及びアトピー性皮膚炎などの皮膚の状態の治療において、治療的有用性を有することに続く。
【0006】
IL-22Rに結合し、且つIL-22とIL-22Rの間の相互作用をブロックする抗体が開発されている。例えば、WO2011/061119は、最初にWO2006/047249に説明されたマウス抗-ヒトモノクローナル抗体から作製されたヒト化IL-22R抗体を説明している。そこでは「280-346-TSY」と称されるこのヒト化抗体は、細胞増殖アッセイにおいて、IL-22RA介して、IL-22シグナリングを阻害し、且つ乾癬マウスモデルにおいてIL-23-が引き起こした耳の炎症を阻害した。
【発明の概要】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、サイトカイン受容体IL-22Rに結合し、且つ先行技術に説明されたIL-22R抗体とは異なる特性を発揮する抗体又はそれらの抗原結合断片を提供することにより、当該技術分野の状態を改善する。これらの抗体又はそれらの抗原結合断片は典型的には、先行技術のIL-22R抗体の、特にWO2011/061119において説明されたヒト化IL-22R抗体の特性とは異なる、及び特定の場合においてはよりすぐれた特性の組合せを示す。これらの抗体の特性は、ヒト療法における使用に関して、特に乾癬、乾癬性関節炎及びアトピー性皮膚炎などの状態の治療について特に利点がある。
【0008】
第一の態様において、本発明は、ヒトIL-22Rに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここでこの抗体又はその抗原結合断片は、Tyr60を含まないIL-22Rタンパク質内のエピトープに結合する。
【0009】
特定の実施態様において、本抗体又はそれらの抗原結合断片は、以下から選択される1以上の追加の特性を有する:
(i)IL-22Rタンパク質のD2ドメインの少なくとも一部に配置されたヒトIL-22Rのエピトープに結合する能力;
(ii)高親和性で、ヒトIL-22Rに結合する能力;
(iii)IL-22のヒトIL-22Rへの結合をブロックする能力;
(iv)IL-22RのIL-22依存型活性化を阻害する能力;
(v)IL-22RのIL-20依存型活性化を阻害する能力;
(vi)IL-22RのIL-22及びIL-20依存型活性化を阻害する能力;並びに
(vii)マウスのIL-22Rとの交差反応性の欠如。
【0010】
本抗体又は抗原結合断片は、本明細書別所に規定したように、高いヒト相同性を示すことができる。特定の実施態様において、本抗体又はそれらの抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここでVH及び/又はVLドメイン又は1以上のそれらの相補性決定領域(CDR)は、ラクダ科の動物から誘導され、すなわちラクダ科動物-由来である。高いヒト相同性を示すか又は少なくとも1つのラクダ科動物-由来のCDR配列、VH及び/又はVLドメインを有する抗体又は抗原結合断片は、ラクダ科動物の通常抗体のVH又はVLドメインのヒト化された又は生殖細胞系列化されたバリアントであってよく、ここで用語「ヒト化」及び「生殖細胞系列化」は、本明細書の別所に規定されている。
【0011】
非限定的実施態様において、本発明は、以下の抗体又はそれらの抗原結合断片を提供し、これらは、特定の構造特徴、すなわちCDR(配列番号:2、4、6、9、11、13、34、36、41、43(重鎖CDR)もしくは配列番号:16、18、20、23、25、27、47、54、57、59(軽鎖CDR)の1以上)、又は全可変ドメイン(配列番号:29、31、63、65(重鎖可変ドメイン)もしくは配列番号:30、32、62、64、66(軽鎖可変ドメイン)の1以上)のいずれかの特定されたアミノ酸配列を参照し、規定されている。これらの抗体は全て、ヒトサイトカイン受容体IL-22Rに結合する。
【0012】
特定の実施態様において、以下の構造特徴により規定された抗体は、本明細書に定義されたように、高いヒト相同性を示すことがある。これらの抗体は、組換え手段により作製されたモノクローナル抗体であってよい。以下のIL-22R抗体のCDRは、ラクダ科動物-由来であってよく、すなわちラクダ科動物(具体的にはラマ)の免疫により生じた通常抗体から誘導される。本発明はまた、本明細書に定義されたような、ヒト化された又はヒト生殖細胞系列化されたバリアント、親和性バリアント及び保存的アミノ酸置換を含むバリアントも提供する。
【0013】
本発明のIL-22R抗体の実施態様は、構造特徴を参照し、ここで更に説明される。
【0014】
一実施態様において、サイトカイン受容体IL-22Rに結合する抗体又はその抗原結合断片が提供され、該抗体又は抗原結合断片は、以下から選択された重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含み:
【化1】
、又はその配列バリアント、
【化2】
、又はその配列バリアント、
【化3】
、又はその配列バリアント;
ここで配列バリアントは、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0015】
抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変ドメインは、代わりに又は追加して、以下から選択された重鎖CDR2を含んでよく:
【化4】
、又はその配列バリアント、
【化5】
、又はその配列バリアント、
【化6】
、又はその配列バリアント、
【化7】
、又はその配列バリアント;
ここで配列バリアントは、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0016】
抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変ドメインは、代わりに又は追加して、以下から選択された重鎖CDR1を含んでよく:
【化8】
、又はその配列バリアント、
【化9】
、又はその配列バリアント、
【化10】
、又はその配列バリアント;
ここで配列バリアントは、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0017】
代わりに又は追加して、サイトカイン受容体IL-22Rに結合する抗体又はそれらの抗原結合断片は、以下から選択される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含んでよく:
【化11】
、又はその配列バリアント、
【化12】
、又はその配列バリアント、
【化13】
、又はその配列バリアント;
ここで配列バリアントは、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0018】
抗体又はその抗原結合断片の軽鎖可変ドメインは、代わりに又は追加して、以下から選択される軽鎖CDR2を含んでよく:
【化14】
、又はその配列バリアント、
【化15】
、又はその配列バリアント、
【化16】
、又はその配列バリアント、
【化17】
、又はその配列バリアント;
ここで配列バリアントは、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0019】
抗体又はその抗原結合断片の軽鎖可変ドメインは、代わりに又は追加して、以下から選択された軽鎖CDR1を含んでよく:
【化18】
、又はその配列バリアント、
【化19】
、又はその配列バリアント、
【化20】
、又はその配列バリアント;
ここで配列バリアントは、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0020】
特定の実施態様において、サイトカイン受容体IL-22Rに結合する、抗体又はその抗原結合断片が提供され、この抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖CDR3(HCDR3)、可変重鎖CDR2(HCDR2)、及び可変重鎖CDR1(HCDR1)の組合せを含み、ここでこの組合せは、以下からなる群から選択される:
(i)配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:36を含むHCDR2;配列番号:34を含むHCDR1;
(ii)配列番号:43を含むHCDR3;配列番号:41を含むHCDR2;配列番号:9を含むHCDR1;
(iii)配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:4を含むHCDR2;配列番号:2を含むHCDR1;並びに、
(iv)配列番号:13を含むHCDR3;配列番号:11を含むHCDR2;配列番号:9を含むHCDR1。
【0021】
代わりに又は追加して、サイトカイン受容体IL-22Rに結合する抗体又はそれらの抗原結合断片は、以下からなる群から選択される可変軽鎖CDR3(LCDR3)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)及び可変軽鎖CDR1(LCDR1)の組合せを含んでよい:
(i)配列番号:54を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;配列番号:16を含むLCDR1;
(ii)配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:59を含むLCDR2;配列番号:57を含むLCDR1;
(iii)配列番号:20を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;配列番号:16を含むLCDR1;
(iv)配列番号:20を含むLCDR3;配列番号:18を含むLCDR2;配列番号:16を含むLCDR1;並びに、
(v)配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:25を含むLCDR2;配列番号:23を含むLCDR1。
【0022】
特定の実施態様において、サイトカイン受容体IL-22Rに結合する抗体又はそれらの抗原結合断片が、本明細書に提供され、ここでこれらの抗体又は抗原結合断片は、以下に説明する実施態様に従い、可変重鎖CDR3(HCDR3)、可変重鎖CDR2(HCDR2)及び可変重鎖CDR1(HCDR1)、可変軽鎖CDR3(LCDR3)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)及び可変軽鎖CDR1(LCDR1)の組合せを含む。
【0023】
一実施態様において、サイトカイン受容体IL-22Rに結合し、且つ配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:36を含むHCDR2;配列番号:34を含むHCDR1;配列番号:54を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;及び、配列番号:16を含むLCDR1:のVH及びVL CDR配列の組合せを含む、抗体又はその抗原結合断片が、本明細書に提供される。
【0024】
一実施態様において、サイトカイン受容体IL-22Rに結合し、且つ配列番号:43を含むHCDR3;配列番号:41を含むHCDR2;配列番号:9を含むHCDR1;配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:59を含むLCDR2;及び、配列番号:57を含むLCDR1:のVH及びVL CDR配列の組合せを含む、抗体又はその抗原結合断片が、本明細書に提供される。
【0025】
一実施態様において、サイトカイン受容体IL-22Rに結合し、且つ配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:4を含むHCDR2;配列番号:2を含むHCDR1;配列番号:20を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;及び、配列番号:16を含むLCDR1:のVH及びVL CDR配列の組合せを含む、抗体又はその抗原結合断片が、本明細書に提供される。
【0026】
一実施態様において、サイトカイン受容体IL-22Rに結合し、且つ配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:4を含むHCDR2;配列番号:2を含むHCDR1;配列番号:20を含むLCDR3;配列番号:18を含むLCDR2;及び、配列番号:16を含むLCDR1:のVH及びVL CDR配列の組合せを含む、抗体又はその抗原結合断片が、本明細書に提供される。
【0027】
一実施態様において、サイトカイン受容体IL-22Rに結合し、且つ配列番号:13を含むHCDR3;配列番号:11を含むHCDR2;配列番号:9を含むHCDR1;配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:25を含むLCDR2;及び、配列番号:23を含むLCDR1:のVH及びVL CDR配列の組合せを含む、抗体又はその抗原結合断片が、本明細書に提供される。
【0028】
特定の実施態様において、サイトカイン受容体IL-22Rに結合する抗体又はそれらの抗原結合断片が、本明細書に提供され、ここで該抗体又は抗原結合断片は、以下から選択される重鎖可変ドメイン(VH)を含む:
(i)配列番号:29又は31のアミノ酸配列を含む又はからなるVH;
(ii)配列番号:29又は31のアミノ酸配列を含む又はからなるVHの親和性バリアント又はヒト生殖細胞系列化バリアント;或いは、
(iii)配列番号:29又は31のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるVH。
【0029】
代わりに又は追加して、本抗体又は抗原結合断片は、以下から選択される軽鎖可変ドメイン(VL)を含み得る:
(i)配列番号:30、32又は62のアミノ酸配列を含む又はからなるVL;
(ii)配列番号:30、32又は62のアミノ酸配列を含む又はからなるVHの親和性バリアント又はヒト生殖細胞系列化バリアント;或いは、
(iii)配列番号:30、32又は62のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるVL。
【0030】
抗体又は抗原結合断片のドメインが、参照配列に対する特定の%配列同一性により規定される実施態様に関して、VH及び/又はVLドメインは、参照配列中に存在するものと同一のCDR配列を保持してよく、その結果変動は、フレームワーク領域内のみに存在する。
【0031】
特定の実施態様において、本発明の抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含んでよい。
【0032】
特に好ましい本発明の抗体を、以下に説明する。
【0033】
(230C9及びそれに関連した抗体)
特定の実施態様において、IL-22Rに特異的に結合する、単離された抗体、又はそれらの抗原結合断片が提供され、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメインを含み、ここで:
可変重鎖CDR3配列は、
【化21】
又はその配列バリアントであり;
可変重鎖CDR2配列は、
【化22】
又はその配列バリアントであり;及び
可変重鎖CDR1配列は、
【化23】
又はその配列バリアントであり、並びに
ここで、この配列バリアントは、列挙された配列において、1、2又は3つのアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0034】
本抗体又は抗原結合断片は、更に軽鎖可変ドメインを含んでよく、ここで:
可変軽鎖CDR3配列は、
【化24】
又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列は、
【化25】
又はその配列バリアントであり;及び
可変軽鎖CDR1配列は、
【化26】
又はその配列バリアントであり、並びに
ここで、この配列バリアントは、列挙された配列において、1、2又は3つのアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0035】
特定の実施態様において、IL-22Rに特異的に結合する、単離された抗体、又はそれらの抗原結合断片が提供され、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメインを含み、ここで:
可変重鎖CDR3配列は、
【化27】
を含む又はからなり;
可変重鎖CDR2配列は、
【化28】
を含む又はからなり;
可変重鎖CDR1配列は、
【化29】
を含む又はからなり;
可変軽鎖CDR3配列は、
【化30】
を含む又はからなり;
可変軽鎖CDR2配列は、
【化31】
を含む又はからなり;並びに
可変軽鎖CDR1配列は、
【化32】
を含む又はからなる。
【0036】
本抗体又はそれらの抗原結合断片は、配列番号:63のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び任意に配列番号:64のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含んでよい。特定の実施態様において、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む、モノクローナル抗体又はそれらの抗原結合断片が、本明細書に提供され、該重鎖可変ドメインは、配列番号:63として示されたアミノ酸配列に対し、少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を伴うVH配列を含み、並びに/又は該軽鎖可変ドメインは、配列番号:64として示されたアミノ酸配列に対し、少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を伴うVLを含む。抗体又は抗原結合断片のドメインが、参照配列に対する特定の%配列同一性により規定される実施態様に関して、VH及び/又はVLドメインは、参照配列に存在するものと同一のCDR配列を保持してよく、結果的に変動は、フレームワーク領域内にのみ存在する。特定の実施態様において、各々、配列番号:63及び64に対する特定の%同一性を有すると規定される重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインを含む抗体又は抗原結合断片は、以下のCDR配列を有するであろう:
可変重鎖CDR3配列は、
【化33】
を含む又はからなり;
可変重鎖CDR2配列は、
【化34】
を含む又はからなり;
可変重鎖CDR1配列は、
【化35】
を含む又はからなり;
可変軽鎖CDR3配列は、
【化36】
を含む又はからなり;
可変軽鎖CDR2配列は、
【化37】
を含む又はからなり;並びに
可変軽鎖CDR1配列は、
【化38】
を含む又はからなる。
【0037】
IL-22Rに特異的に結合する抗体は、少なくとも1つの完全長免疫グロブリン重鎖及び/又は少なくとも1つの完全長ラムダ又はカッパ軽鎖を含んでよい。特定の実施態様において、これらの抗体は、配列番号:67のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号:68のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。特定の実施態様において、配列番号:67として示されたアミノ酸配列に対し、少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を伴う重鎖、並びに/又は配列番号:68として示されたアミノ酸配列に対し、少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を伴う軽鎖を含むモノクローナル抗体が、本明細書に提供される。抗体の鎖が参照配列に対する特定の%配列同一性により規定される実施態様に関して、重鎖及び/又は軽鎖は、参照配列中に存在するものに対し同一のCDR配列を保持してよく、結果的にこの変動は、CDR領域の外側のみに存在する。
【0038】
(223G5及びそれに関連した抗体)
特定の実施態様において、IL-22Rに特異的に結合する、単離された抗体、又はその抗原結合断片が提供され、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメインを含み、ここで:
可変重鎖CDR3配列は、
【化39】
又はその配列バリアントであり;
可変重鎖CDR2配列は、
【化40】
又はその配列バリアントであり;及び
可変重鎖CDR1配列は、
【化41】
又はその配列バリアントであり、並びに
ここで、この配列バリアントは、列挙された配列において、1、2又は3つのアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0039】
本抗体又は抗原結合断片は、更に軽鎖可変ドメインを含み、ここで:
可変軽鎖CDR3配列は、
【化42】
又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列は、
【化43】
又はその配列バリアントであり;及び
可変軽鎖CDR1配列は、
【化44】
又はその配列バリアントであり、並びに
ここで、この配列バリアントは、列挙された配列において、1、2又は3つのアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0040】
特定の実施態様において、IL-22Rに特異的に結合する、単離された抗体、又はその抗原結合断片が提供され、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメインを含み、ここで:
可変重鎖CDR3配列は、
【化45】
を含む又はからなり;
可変重鎖CDR2配列は、
【化46】
を含む又はからなり;
可変重鎖CDR1配列は、
【化47】
を含む又はからなり;
可変軽鎖CDR3配列は、
【化48】
を含む又はからなり;
可変軽鎖CDR2配列は、
【化49】
を含む又はからなり;並びに
可変軽鎖CDR1配列は、
【化50】
を含む又はからなる。
【0041】
本抗体又はそれらの抗原結合断片は、配列番号:65のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び任意に配列番号:66のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含んでよい。特定の実施態様において、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む、モノクローナル抗体又はそれらの抗原結合断片が、本明細書に提供され、該重鎖可変ドメインは、配列番号:65として示されたアミノ酸配列に対し、少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を伴うVH配列を含み、並びに/又は該軽鎖可変ドメインは、配列番号:66として示されたアミノ酸配列に対し、少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を伴うVLを含む。抗体又は抗原結合断片のドメインが、参照配列に対する特定の%配列同一性により規定される実施態様に関して、VH及び/又はVLドメインは、参照配列に存在するものと同一のCDR配列を保持してよく、結果的に変動は、フレームワーク領域内にのみ存在する。特定の実施態様において、各々、配列番号:65及び66に対する特定の%同一性を有すると規定される重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインを含む抗体又は抗原結合断片は、以下のCDR配列を有するであろう:
可変重鎖CDR3配列は、
【化51】
を含む又はからなり;
可変重鎖CDR2配列は、
【化52】
を含む又はからなり;
可変重鎖CDR1配列は、
【化53】
を含む又はからなり;
可変軽鎖CDR3配列は、
【化54】
を含む又はからなり;
可変軽鎖CDR2配列は、
【化55】
を含む又はからなり;並びに
可変軽鎖CDR1配列は、
【化56】
を含む又はからなる。
【0042】
IL-22Rに特異的に結合する抗体は、少なくとも1つの完全長免疫グロブリン重鎖及び/又は少なくとも1つの完全長ラムダ又はカッパ軽鎖を含んでよい。特定の実施態様において、本抗体は、配列番号:69のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号:70のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。特定の実施態様において、配列番号:69として示されたアミノ酸配列に対し、少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を伴う重鎖、並びに/又は配列番号:70として示されたアミノ酸配列に対し、少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を伴う軽鎖を含むモノクローナル抗体が、本明細書に提供される。抗体の鎖が参照配列に対する特定の%配列同一性により規定される実施態様に関して、重鎖及び/又は軽鎖は、参照配列に存在するものに対し同一のCDR配列を保持してよく、結果的にこの変動は、CDR領域の外側のみに存在する。
【0043】
具体的アミノ酸配列を参照して規定されるVHドメイン又は重鎖、及び同じく具体的アミノ酸配列を参照して規定されるVLドメイン又は軽鎖の組合せを含む、特定の抗体、又は抗原-結合領域が同定される場合、列挙された各具体的VH/VL又は重鎖/軽鎖の組合せに関して、(別に言及しない限りは)この定義は、言及したVH/重鎖アミノ酸配列に対し、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメイン/重鎖と、言及したVL/軽鎖アミノ酸配列に対し、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメイン/軽鎖の組合せにより形成される、抗体、又は抗原結合領域を含むと見なされてよい。各場合において、言及されたドメイン/鎖アミノ酸配列に対する%配列同一性により規定されたドメイン/鎖は、言及されたVH/VLドメイン又は重鎖/軽鎖アミノ酸配列に存在するものと、同一CDR配列を保持してよいのに対し、アミノ酸配列変動は、フレームワーク領域内又はCDR領域の外側の他の領域に存在する。
【0044】
本願において別に言及しない限りは、2つのアミノ酸配列間の%配列同一性は、最適な様式で並置され、且つそこで比較されるべきアミノ酸配列は、これら2つの配列間の最適なアラインメントに関して参照配列を参照して、付加又は欠失を含むことができる、これら2つの配列を比較することにより決定することができる。%同一性は、アミノ酸残基が2つの配列間で同一である同一位置の数を決定し、この同一位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で除算し、且つこれら2つの配列間の%同一性を得るために、得られた結果を100倍することにより計算される。例えば、これはBLASTプログラム"BLAST 2 Sequences"(Tatusovaらの文献、「Blast 2配列-タンパク質配列及びヌクレオチド配列比較のための新規ツール(Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences)」、FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)を使用可能であり、このプログラムはサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.html上で入手可能であり、且つ使用したパラメータは、デフォルトで供されたものであり(特にパラメータは、"オープンギャップペナルティ":5、及び"イクステンションギャップペナルティ":2;選択したマトリックスは、例えば、本プログラムにより提唱されたマトリックス"BLOSUM 62"である)、比較されるべき2つの配列間の%同一性は、本プログラムにより直接算出される。
【0045】
本明細書に提供されるIL-22R抗体又はそれらの抗原結合断片は各々、以下の特性/特徴の1つ、又は任意の組合せを示してよい:
-抗体又は抗原結合断片は、Tyr60を含まないヒトIL-22Rタンパク質内のエピトープに結合する;
-抗体又は抗原結合断片は、ヒトIL-22Rタンパク質のD2ドメインにおける少なくとも一部に配置されたエピトープに結合し、ここでD2ドメインは、配列番号:71のアミノ酸残基125~228である;
-抗体又は抗原結合断片は、高親和性でヒトIL-22Rに結合する;
-抗体又は抗原結合断片は、IL-22のIL-22Rへの結合をブロックする;
-抗体又は抗原結合断片は、IL-22RのIL-22-依存型活性化を阻害する;
-抗体又は抗原結合断片は、IL-22RのIL-20-依存型活性化を阻害する;
-抗体又は抗原結合断片は、IL-22RのIL-22-依存型活性化及びIL-22RのIL-20-依存型活性化を阻害する;
抗体又は抗原結合断片は、マウスのIL-22Rと交差反応しない。
【0046】
本明細書に提供されるIL-22R抗体又はそれらの抗原結合断片は好ましくは、以下の特性/特徴の2つ以上を示す:
-抗体又は抗原結合断片は、Tyr60を含まないヒトIL-22Rタンパク質内のエピトープに結合する;
-抗体又は抗原結合断片は、高親和性でヒトIL-22Rに結合する;
-抗体又は抗原結合断片は、IL-22RのIL-22-依存型活性化及びIL-22RのIL-20-依存型活性化を阻害する。
【0047】
本明細書に提供されるIL-22R抗体、又はそれらの抗原結合断片は、キメラ抗体であってよい。特定の実施態様において、本抗体又はそれらの抗原結合断片は、ヒトIgGのヒンジ領域、CH2ドメイン及び/又はCH3ドメインを含む。特定の実施態様において、本抗体又はそれらの抗原結合断片は、ヒトIgG、好ましくはIgG1と高い相同性を示し、ここで「高いヒト相同性」は、本明細書の別所において規定される。特定の実施態様において、本抗体又はそれらの抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここでVH及び/又はVLドメイン又は1以上のそれらの相補性決定領域(CDR)は、ラクダ科の動物から誘導される、すなわちラクダ科動物-由来であり、好ましくはここでラクダ科動物は、ラマである。
【0048】
更なる態様において、本発明は、先に列挙した抗体及び抗原結合断片をコードしているポリヌクレオチド分子、加えて該ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、該ベクターを含む宿主細胞、及び、本明細書記載の抗体の組換え発現/作製方法も提供する。
【0049】
より更なる態様において、本発明は、本明細書記載のIL-22R抗体又はそれらの抗原結合断片のいずれか1つ、及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0050】
本発明のより更なる態様は、特に乾癬、乾癬性関節炎及びアトピー性皮膚炎などの状態の予防及び/又は治療において、先に列挙したIL-22R抗体又はそれらの抗原結合断片を使用する医学治療方法に関する。
【0051】
本発明のこれらの及び他の実施態様は、以下の説明及び添付図面と組合せて考慮される場合に、より良く評価及び理解されるであろう。しかし、以下の説明は、本発明の様々な実施態様及びそれらの多くの具体的詳細を指摘しているが、これらは例証として提供され且つ限定ではないことは理解されるべきである。多くの置換、改変、追加及び/又は再配列は、それらの精神から逸脱することなく、本発明の範囲内であることができ、且つ本発明は、そのような置換、改変、追加及び/又は再配列を全て含む。
【図面の簡単な説明】
【0052】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、サイトカインIL-22、IL-20及びIL-24を介したシグナリングを媒介する、様々な受容体複合体を示す。IL-22Rは、2種の異なる受容体パートナーIL-10Rβ(又はIL-10R2)及びIL-20Rβ(又はIL-20R2)とヘテロ二量体性複合体を形成することが可能であり、且つこれらの異なる複合体のリガンド結合による活性化は、細胞内下流経路を介したシグナリングの引き金をひく。
図2図2は、ヒトIL-22Rの完全長アミノ酸配列(配列番号:71)を示す。
図3図3は、ヒトIL-22Rをコードしている完全長ヌクレオチド配列(配列番号:72)を示す。
図4図4は、細胞-ベース増殖アッセイにおけるIL-22Rを介したIL-22及びIL-20媒介性シグナリングの阻害を示す。(A)BW-hIL-22R細胞株の増殖に対するIL-22R mAbの作用が示される。BW-hIL-22R細胞は、ヒトIL-22Rを安定して発現し、且つ成長は、リガンドIL-22に対する反応で阻害/停止される。IL-22とhIL-22Rの間の相互作用をブロックすることが可能な抗体は、リガンド-受容体結合により媒介される成長阻害を軽減する。(B)Baf3-hIL-22R/IL20Rb細胞株の増殖に対するIL-22R mAbの作用が示される。Baf3-hIL-22R/IL20Rb細胞は、受容体複合体IL-22R/IL20Rbの成分を安定して発現し、その結果これらの細胞はIL-20の存在下で増殖する。IL-20とこの受容体複合体の間の相互作用をブロックすることが可能な抗体は、リガンド結合により誘導された増殖を阻害する。
図5図5は、様々な種に由来するIL-22R細胞外ドメインのアラインメントを示す。(A)は、Genbankから入手可能な、部分的EST配列を示し;(B)は、カニクイザルcDNAライブラリーからのカニクイザル及びアカゲザルIL-22Rのクローニング後に決定された配列を示す。
図6図6は、IL-22R mAbのエピトープをマッピングするために実行された競合的ELISA実験の結果を示す。様々なエピトープを、VHファミリー1-8、10、11、19及び22の抗体について同定した。これらのエピトープは、抗体が、(i)インビトロにおいてIL-22結合がブロックされ、且つ細胞-ベースアッセイにおいてIL-22シグナリングが中和された(下側左四半分);(ii)インビトロにおいてIL-22結合はブロックされるが、細胞-ベースアッセイにおいて活性は中和されない(上側右四半分);又は、(iii)インビトロにおいてIL-22結合はブロックしないが、細胞-ベースアッセイにおいて活性を中和しない(下側右四半分):のいずれかどうかに従い群別した。
図7図7は、IL-22との複合体中のIL-22Rの結晶構造を示す。(A)IL-22RのドメインD1及びD2は、リガンドIL-22との境界面へ残基をもたらす。(B)ドメインD1中のY60は、IL-22リガンドのサイト1Aとの相互作用に寄与する重要なIL-22R残基である。
図8図8は、細胞-ベース増殖アッセイにおけるIL-22Rを介したIL-20媒介性シグナリングの阻害を示す。様々なIL-22R mAbを、Baf3-hIL-22R/IL20Rb細胞のIL-20が誘導した増殖を阻害するそれらの能力について試験した。
図9図9は、細胞-ベース増殖アッセイにおけるIL-22Rを介したIL-22及びIL-20媒介性シグナリングの阻害を示す。(A)BW-hIL-22R細胞株の増殖に対するIL-22R mAbの作用が示される。BW-hIL-22R細胞は、ヒトIL-22Rを安定して発現し、且つ成長は、リガンドIL-22に対する反応で阻害/停止される。IL-22とhIL-22Rの間の相互作用をブロックすることが可能な抗体は、リガンド-受容体結合により媒介される成長阻害を軽減する。(B)Baf3-hIL-22R/IL20Rb細胞株の増殖に対するIL-22R mAbの作用が示される。Baf3-hIL-22R/IL20Rb細胞は、受容体複合体IL-22R/IL20Rbの成分を安定して発現し、その結果これらの細胞はIL-20の存在下で増殖する。IL-20とこの受容体複合体の間の相互作用をブロックすることが可能な抗体は、リガンド結合により誘導された増殖を阻害する。
図10図10は、生殖細胞系列化IL-22R抗体230C9及び223G5に関するエピトープマッピング実験の結果を概略的に示す。NB「Zymo」は、280-346-TSYと同等である。
図11図11は、FACS分析により決定された、ヒト及びカニクイザルIL-22Rに対する生殖細胞系列化抗体の交差反応性を示す。抗体230C9は、ヒトIL-22R及びカニクイザルIL-22Rと交差反応する(左側パネル)のに対し、抗体223G5は、ヒトIL-22Rとは結合するが、カニクイザルIL-22Rとは交差反応しない(右側パネル)。
図12図12は、IL-22R抗体230C9に関する薬物動態データを示す。カニクイザルには、抗体の単回10mg/kg投与量を静脈内に注射した。試料は、異なる時点で採取し、且つELISAにより抗体の血漿濃度について試験した。抗体230C9は、半減期約19.4日を有することがわかった。
図13図13は、様々な投与量のIL-22R抗体230C9に関する薬物動態データを示す。高投与量(≧10mg/kg)は、標的媒介性薬物配置(TMDD)の容量が飽和された場合、クリアランス値は、RESにより非特異的クリアランスに近づく。B.カニクイザルにおける230C9-N297Qのクリアランス。総クリアランスは、1)非線形及び飽和可能であるTMDD、並びに2)線形でありRESに寄与した非特異的クリアランス:の合計を表す。血漿半減期は、クリアランスと反比例関係を有し、標的媒介性クリアランスに起因した、高投与量での長い半減期、及び低投与量でのより短い半減期につながる。
図14図14は、IL-22R抗体230C9の薬力学作用を示す。カニクイザルを、異なる投与量で230C9に曝露し、且つサルのIMQ-処置した皮膚切片及び正常皮膚切片に対する作用を評価した。抗体230C9の増大する投与量は、IMQ-処置した皮膚切片において、表皮厚の正常化(A)、及びKi67陽性核頻度の減少(B)を認めた。
図15図15は、皮膚パンチ生検標本におけるIL-22-調節されたFLG2 mRNAレベルに対するIL-22R抗体230C9(ARGX-112)の作用を示す。カニクイザルには、異なる投与量で、抗体230C9を単回IV注入により投与した:1mg/kg、5mg/kg及び30mg/kg(1投与量につき3匹の動物)。組換えヒトIL-22は、総皮膚FLG2 mRNAレベルを低下したのに対し、この作用は、抗体230C9により逆転された。y軸は、参照遺伝子と比較した、相対FLG2発現を示した。群間の統計学的比較は、以下の信頼区間でグラフの最上部のラインにより示された:*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。示された%(各々、60%、64%、60%)は、シグナルの阻害%を示している。
図16図16は、ヒトのエクスビボ皮膚外植片におけるIL-22調節されたDEFB4遺伝子発現に対するIL-22R抗体230C9(ARGX-112)の作用を示す。腹部皮膚外植片を、漸増濃度の抗体230C9により処理し、その後20ng/mlのrhIL-22により刺激した。抗体230C9は、投与量-依存型様式でDEFB4 mRNAレベルのIL-22-媒介した増加を逆転することができる。y軸は、参照遺伝子と比較した相対DEFB4発現を示す。LLOQは、定量下限を意味する。
図17図17は、カニクイザルのエクスビボ皮膚外植片におけるIL-22調節したFLG2及びLOR遺伝子発現に対する、IL-22R抗体230C9(ARGX-112)の作用を示す。皮膚生検標本は、漸増濃度の抗体230C9により処置し、その後20ng/mlのrhIL-22で刺激した。抗体230C9は、投与量-依存的様式で、FLG2 mRNAレベル(A)及びLOR mRNAレベル(B)の、IL-22-媒介した減少を逆転することができる。y軸は、参照遺伝子と比較した相対FLG2及びLOR発現を示す。
図18図18は、初代ヒトケラチノサイトに対する、IL-22R抗体230C9(ARGX-112) の作用を示す。ケラチノサイトは、230C9抗体により予備処理し、その後IL-4、IL-13、IL-22及びIFN-γの混合物により刺激した。対照細胞は、IL-4、IL-13、IL-22及びIFN-γの混合物により処理した。230C9抗体は、CCL2分泌の投与量-依存型阻害を示した。
【発明を実施するための形態】
【0053】
(詳細な説明)
(A. 定義)
「抗体」又は「免疫グロブリン」-本明細書で使用する用語「免疫グロブリン」は、何らかの関連のある特異的な免疫反応性を有するかどうかに関わらず、2本の重鎖及び2本の軽鎖の組合せを有するポリペプチドを含む。「抗体」とは、関心対象の抗原(例えばサイトカイン受容体IL-22R)に対し有意な既知の特異的免疫反応活性を有するそのような集成体をいう。用語「IL-22R抗体」は、ヒトIL-22R及び場合によってはそれらの種ホモログを含む、IL-22Rタンパク質に関して免疫学的特異性を示す抗体を意味するように本明細書において使用される。抗体及び免疫グロブリンは、軽鎖と重鎖の間の鎖内共有結合を伴う又は伴わずに、軽鎖及び重鎖で構成される。脊椎動物系の基本的免疫グロブリン構造は、かなり良く理解されている。
【0054】
一般的用語「免疫グロブリン」は、生化学的に区別することができる抗体の5つの個別のクラスを含む。抗体の5つのクラスは全て、本発明の範囲内である。下記の考察は概して免疫グロブリン分子のIgGクラスに関する。IgGに関して、免疫グロブリンは、分子量およそ23,000ダルトンの2本の同一のポリペプチド軽鎖、及び分子量53,000~70,000の2本の同一の重鎖を含む。これら4本の鎖は、「Y字」配置でジスルフィド結合により連結され、ここで軽鎖は、「Y字」の口で始まり且つ可変領域を通じて続く重鎖を腕木で支えている(bracket)。
【0055】
抗体の軽鎖は、カッパ又はラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスは、κ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかと結合され得る。一般に軽鎖及び重鎖は、互いに共有結合され、これら2本の重鎖の「尾」部は、ジスルフィド共有結合により、又は免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞若しくは遺伝子操作された宿主細胞のいずれかにより作製される場合は非共有結合により、互いに結合されている。重鎖において、アミノ酸配列は、Y字配置の分岐端のN-末端から、各鎖の底のC-末端へと並んでいる。当業者は、重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、その一部はサブクラス(例えばγ1-γ4)に分類されることを理解するであろう。これは、抗体の「クラス」を、各々、IgG、IgM、IgA、IgD、又はIgEと決定するこの鎖の本質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは、良く特徴付けられ、機能性特化をもたらすことがわかっている。これらのクラス及びアイソタイプの各々の改変された型を、本開示を考慮し、当業者は容易に識別することができ、従ってこれらは本発明の範囲内である。
【0056】
前述のように、抗体の可変領域は、その抗体が、抗原上のエピトープを選択的に認識し、且つ特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体のVLドメインとVHドメインは一緒に、三次元的に抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この4つ一組の抗体構造は、Y字の各アームの端に存在する抗原結合部位を形成する。より詳細には、抗原結合部位は、VH鎖及びVL鎖の各々の上の3つの相補性決定領域(CDR)により規定される。
【0057】
「IL-22R」-本明細書で使用する用語「IL-22R」は、リガンドIL-22、IL-20及びIL-24を介してシグナリングを媒介するII型サイトカイン受容体を意味する。IL-22Rは、IL-10R2及びIL-20R2と、細胞表面でヘテロ二量体性複合体を形成することが可能である。IL-22Rはまた、IL22R、IL-22R1、IL22R1、IL22RA、IL-22RA、CRF2-9及びZcytor 11と称されることもある。用語「IL-22R1」は、この受容体のヒト型及び種ホモログを対象とするのに十分に広い。完全長ヒトIL-22Rのアミノ酸配列は、配列番号:71により表され、コードヌクレオチド配列は、配列番号:72により表される(図2及び3参照)。これらの配列は、ヒトタンパク質インターロイキン-22受容体サブユニットとして、寄託番号Q8N6P7で、SwissProtデータベースに寄託された配列に相当する。
【0058】
「結合部位」-本明細書で使用する用語「結合部位」は、関心対象の標的抗原(例えばIL-22R)への選択的結合に係わっているポリペプチドの領域を含む。結合ドメインは、少なくとも1つの結合部位を含む。結合ドメインの例としては、抗体可変ドメインが挙げられる。本発明の抗体分子は、1つの結合部位又は複数(例えば、2、3若しくは4つ)の結合部位を含むことができる。
【0059】
「から誘導された」-本明細書で使用する用語である指定のタンパク質(例えばラクダ科動物抗体又はその抗原結合断片)「から誘導された」とは、そのポリペプチド又はアミノ酸配列の起源をいう。一実施態様において、特定の出発ポリペプチドから誘導されたポリペプチド又はアミノ酸配列は、CDR配列又はそれらに関連した配列である。一実施態様において、特定の出発ポリペプチドから誘導されたアミノ酸配列は、近接していない。例えば一実施態様において、1、2、3、4、5又は6のCDRが、出発抗体から誘導される。一実施態様において、特定の出発ポリペプチド又はアミノ酸配列から誘導されるポリペプチド又はアミノ酸配列は、出発配列又はそれらの部分と本質的に同一であるアミノ酸配列であって、ここで該部分は、少なくとも3~5個のアミノ酸、少なくとも5~10個のアミノ酸、少なくとも10~20個のアミノ酸、少なくとも20~30個のアミノ酸、又は少なくとも30~50個のアミノ酸からなり、又はそうでなければ当業者が、出発配列にその起源を有するとして同定可能であるアミノ酸配列を有する。一実施態様において、出発抗体から誘導された1以上のCDR配列は、変更され、バリアントCDR配列、例えば親和性バリアントを生じ、ここで該バリアントCDR配列は、標的抗原結合活性を維持している。
【0060】
「ラクダ科動物-由来の」-特定の好ましい実施態様において、本発明の抗体は、ラクダ科動物の能動免疫により生じたラクダ科動物通常型抗体から誘導されたフレームワークアミノ酸配列及び/又はCDRアミノ酸配列を含む。しかし、ラクダ科動物-由来のアミノ酸配列を含む本発明の抗体は、ヒトアミノ酸配列(すなわち、ヒト抗体)又は他の非-ラクダ科の哺乳動物種から誘導されたフレームワーク配列及び/又は定常領域配列を含むように操作することができる。例えば、ヒト又は非-ヒト霊長類フレームワーク領域、重鎖部分、及び/又はヒンジ部分を、対象のIL-22R抗体に含むことができる。一実施態様において、1以上の非-ラクダ科動物アミノ酸が、「ラクダ科動物-由来の」抗体のフレームワーク領域に存在することができ、例えばラクダ科動物フレームワークアミノ酸配列は、その中に対応するヒト又は非-ヒト霊長類アミノ酸残基が存在する1以上のアミノ酸変異を含むことができる。更にラクダ科動物-由来のVHドメイン及びVLドメイン、又はそれらのヒト化されたバリアントは、ヒト抗体の定常ドメインに連結され、本明細書の別所に記載するキメラ分子を作製することができる。
【0061】
「保存的アミノ酸置換」-「保存的アミノ酸置換」は、その中のアミノ酸残基が、類似側鎖を持つアミノ酸残基で置き換えられているものである。類似側鎖を持つアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。従って免疫グロブリンポリペプチド内の非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基と置き換えることができる。別の実施態様において、アミノ酸の列(string)は、側鎖ファミリーメンバーの順番及び/又は組成が異なる構造的に類似した列で置き換えることができる。
【0062】
「重鎖部分」-本明細書で使用する用語「重鎖部分」は、免疫グロブリン重鎖の定常ドメインから誘導されたアミノ酸配列を含む。重鎖部分を含むポリペプチドは、以下の少なくとも1つを含む:CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央、及び/又は下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらのバリアント若しくは断片。一実施態様において、本発明の抗体又は抗原結合断片は、免疫グロブリン重鎖のFc部分(例えば、ヒンジ部分、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン)を含むことができる。別の実施態様において、本発明の抗体又は抗原結合断片は、定常ドメインの少なくとも一部分(例えば、CH2ドメインの全て又は一部)を欠いている。特定の実施態様において、少なくとも1つ、及び好ましくは全ての定常ドメインが、ヒト免疫グロブリン重鎖から誘導されている。例えば好ましい一実施態様において、重鎖部分は、完全ヒトヒンジドメインを含む。別の好ましい実施態様において、重鎖部分は、完全ヒトFc部分(例えば、ヒト免疫グロブリン由来のヒンジ、CH2及びCH3ドメイン配列)を含む。
【0063】
特定の実施態様において、重鎖部分の構成的定常ドメインは、異なる免疫グロブリン分子に由来している。例えば、ポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子から誘導されたCH2ドメイン、及びIgG3又はIgG4分子から誘導されたヒンジ領域を含むことができる。他の実施態様において、定常ドメインは、異なる免疫グロブリン分子の部分を含むキメラドメインである。例えば、ヒンジは、IgG1分子由来の第一の部分、及びIgG3又はIgG4分子由来の第二の部分を含むことができる。先に示したように、当業者には、重鎖部分の定常ドメインは、天然の(野生型の)免疫グロブリン分子から、アミノ酸配列が変動するように改変され得ることは理解されるであろう。すなわち、本明細書に開示された本発明のポリペプチドは、1以上の重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2又はCH3)に、及び/又は軽鎖定常領域ドメイン(CL)に、変更又は改変を含むことができる。改変の例としては、1つ以上のドメイン内の1個以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換が挙げられる。
【0064】
「キメラ」-「キメラ」タンパク質は、本来は天然には連結しない第二のアミノ酸配列に連結された第一のアミノ酸配列を含む。これらのアミノ酸配列は、融合ポリペプチドにおいて一緒にされた個別のタンパク質において正常に存在することができるか、或いはこれらは同じタンパク質内において正常に存在するが、融合ポリペプチド内では新たな並びで配置されることができる。キメラタンパク質は、例えば、キメラ合成によるか、又はその中にペプチド領域が所望の関係でコードされているポリヌクレオチドの作出及び翻訳により作製することができる。本発明のキメラ抗体の例は、ヒト抗体、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の定常ドメインに融合された、ラクダ科動物-由来のVHドメイン及びVLドメイン、又はそれらのヒト化されたバリアントを含む融合タンパク質が挙げられる。
【0065】
「可変領域」又は「可変ドメイン」-用語「可変領域」及び「可変ドメイン」は、本明細書において互換的に使用し、且つ同等の意味を有することが意図される。用語「可変」とは、可変ドメインVH及びVLのある部分は、抗体間で配列が大きく異なるという事実をいい、且つ特定の抗体の各々のその標的抗原に対する結合及び特異性において使用される。しかしその可変性は、抗体の可変ドメインを通じて均等には分散していない。これは、抗原結合部位の一部を形成しているVLドメイン及びVHドメインの各々において「超可変ループ」と称される3つのセグメントに集中している。Vλ軽鎖ドメインの第一、第二及び第三の超可変ループは、本明細書においてL1(λ)、L2(λ)及びL3(λ)と称され、且つVLドメインにおいて残基24-33(9、10又は11個のアミノ酸残基からなる、L1(λ))、49-53(3個の残基からなる、L2(λ))及び90-96(5個の残基からなる、L3(λ))を含むと定義され得る(Moreaらの文献、Methods, 20:267-279 (2000))。Vκ軽鎖ドメインの第一、第二及び第三の超可変ループは、本明細書において、L1(κ)、L2(κ)及びL3(κ)と称され、且つVLドメインにおいて残基25-33(6、7、8、11、12又は13個の残基からなる、L1(κ))、49-53(3個の残基からなる、L2(κ))及び90-97(6個の残基からなる、L3(κ))を含むと定義され得る(Moreaらの文献、Methods, 20:267-279 (2000))。VHドメインの第一、第二及び第三の超可変ループは、本明細書において、H1、H2及びH3と称され、且つVHドメインにおいて残基25-33(7、8又は9個の残基からなる、H1)、52-56(3又は4個の残基からなる、H2)及び91-105(長さが高度に変動する、H3)を含むと定義され得る(Moreaらの文献、Methods, 20: 267-279 (2000))。
【0066】
用語L1、L2及びL3は、別に指摘しない限りは、各々、VLドメインの第一、第二及び第三の超可変ループを意味し、且つVκ及びVλ両アイソタイプから得られた超可変ループを包含している。用語H1、H2及びH3は、各々、VHドメインの第一、第二及び第三の超可変ループを意味し、且つγ、ε、δ、α又はμを含む、公知の重鎖アイソタイプのいずれかから得られた超可変ループを包含している。
【0067】
超可変ループL1、L2、L3、H1、H2及びH3は、各々、以下に規定するように、「相補性決定領域」又は「CDR」の一部を含むことができる。超可変ループ(HV)は構造を基に規定されるのに対し、相補性決定領域(CDR)は配列可変性を基に規定されるので、用語「超可変ループ」と「相補性決定領域」は、厳密には同義語ではなく(Kabatらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、第5版、Public Health Service、米国国立衛生研究所(NIH)、Bethesda、MD.、1983)、且つHVとCDRの境界は、一部のVHドメイン及びVLドメインにおいて異なることがあってよい。
【0068】
前記VL及びVHドメインのCDRは、典型的には、下記のアミノ酸を含むと定義されることができる:軽鎖可変ドメイン中の残基24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)及び89-97(LCDR3)、並びに重鎖可変ドメイン中の残基31-35又は31-35b(HCDR1)、50-65(HCDR2)及び95-102(HCDR3);(Kabatらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列」、第5版、Public Health Service、米国国立衛生研究所、Bethesda、MD.、(1991))。従ってこれらのHVは、対応するCDR内に含まれることができ、且つ別に指摘しない限りは、本明細書におけるVH及びVLドメインの「超可変ループ」の言及は、対応するCDRも包含すると解釈されるべきであり、その逆もまた同様である。
【0069】
可変ドメインのより高度に保存された部分は、以下に定義したように、フレームワーク領域(FR)と称される。未変性の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々、3つの超可変ループにより接続された、β-シート配置を主として採用している4つのFR(各々、FR1、FR2、FR3及びFR4)を含む。各鎖内の超可変ループは、これらのFRにより密に近接して保持され、且つ他方の鎖由来の超可変ループと一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に貢献する。抗体の構造解析は、相補性決定領域により形成された結合部位の配列と形状の間の関係を明らかにした(Chothiaらの文献、J. Mol. Biol., 227: 799-817 (1992));Tramontanoらの文献、J. Mol. Biol., 215: 175-182 (1990))。それらの高度な配列可変性にもかかわらず、これら6つのループの5つは、「カノニカル構造」と称される、主鎖高次構造の小さいレパトアのみを採用している。これらの高次構造は、まず第一にループの長さにより決定され、且つ第二に、それらのパッキング、水素結合又は通常でない主鎖高次構造を推定する能力を通じ、高次構造を決定するループ内及びフレームワーク領域内の特定位置での重要残基の存在により決定される。
【0070】
「CDR」-本明細書で使用する用語「CDR」又は「相補性決定領域」は、重鎖及び軽鎖の両ポリペプチドの可変領域内に認められる不連続な抗原結合部位を意味する。これらの特定の領域は、Kabatらの文献、J. Biol. Chem. 252: 6609-6616 (1977)、及びKabatらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列」(1991)、及びChothiaらの文献、J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987)、及びMacCallumらの文献、J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996)に説明されており、そこでこれらの定義は、互いに比較した場合のアミノ酸残基の重複又はサブセットを含んでいる。先に引用した各参考文献により定義されたCDRを包含しているアミノ酸残基を、比較のために示す。好ましくは、用語「CDR」は、配列比較を基にKabatにより定義されるCDRである。
【0071】
表1:CDR定義
【表1】
1 残基の番号付けは、Kabatらの文献、前掲の命名法に従う
2 残基の番号付けは、Chothiaらの文献、前掲の命名法に従う
3 残基の番号付けは、MacCallumらの文献、前掲の命名法に従う
【0072】
「フレームワーク領域」-本明細書で使用する用語「フレームワーク領域」又は「FR領域」は、可変領域の一部であるが、CDRの一部ではない、アミノ酸残基を含む(例えば、CDRのKabat定義を使用する)。従って、可変領域フレームワークは、長さが約100~120個のアミノ酸であるが、CDRの外側のそれらのアミノ酸のみを含む。重鎖可変ドメインの具体例及びKabatらにより定義されたCDRについて、フレームワーク領域1は、アミノ酸1-30を包含する可変領域のドメインに相当し;フレームワーク領域2は、アミノ酸36-49を包含する可変領域のドメインに相当し;フレームワーク領域3は、アミノ酸66-94を包含する可変領域のドメインに相当し、且つフレームワーク領域4は、アミノ酸103からその可変領域の末端までの可変領域のドメインに相当している。軽鎖のフレームワーク領域は同様に、軽鎖可変領域CDRの各々により隔てられている。同様に、Chothiaら又はMcCallumらによるCDRの定義を使用し、フレームワーク領域の境界は、先に説明したように、それぞれのCDR末端により隔てられる。好ましい実施態様において、CDRは、Kabatにより定義されているものである。
【0073】
天然の抗体において、各モノマー抗体に存在する6つのCDRは、抗体が水性環境においてその三次元立体配置を呈するときに抗原結合部位を形成するように特異的に配置されているアミノ酸の短い不連続な配列である。重鎖及び軽鎖可変ドメインの残りは、アミノ酸配列においてより少ない分子間の可変性を示し、フレームワーク領域と称される。これらのフレームワーク領域は大部分、β-シート高次構造を採用し、且つこれらのCDRは、β-シート構造に接続し、場合によってはβ-シート構造の一部を形成しているループを形成する。従ってこれらのフレームワーク領域は、鎖間非共有相互作用により正確に方向付けられた6つのCDRの配置を供するスカフォールドを形成するように働く。配置されたCDRにより形成された抗原結合部位は、免疫反応性抗原上のエピトープに対する表面相補性を規定する。この相補性表面は、免疫反応性抗原エピトープに対する抗体の非共有結合を促進する。当業者により、CDRの位置は、容易に同定され得る。
【0074】
「ヒンジ領域」-本明細書で使用する用語「ヒンジ領域」は、CH1ドメインをCH2ドメインに接続する重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は、およそ25の残基を含み、且つ柔軟性があり、結果的に2つのN-末端抗原結合領域が独立して動くことを可能にしている。ヒンジ領域は、上部、中央、及び下部ヒンジドメインの3つの別のドメインに更に分割することができる(Roux K.H.らの文献、J. Immunol. 161:4083-90 1998)。「完全ヒト」ヒンジ領域を含む本発明の抗体は、下記表2に示したヒンジ領域配列の一つを含むことができる。
【0075】
表2:ヒトヒンジ配列
【表2】
【0076】
「CH2ドメイン」-本明細書で使用する用語「CH2ドメイン」は、慣習的番号付けスキームを使用し、例えば抗体のほぼ残基244から残基360まで伸びる重鎖分子の部分を含む(残基244から360、カバット番号付けシステム;及び、残基231-340、EU番号付けシステム、Kabat EAらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列」、Bethesda、US Department of Health and Human Services, NIH. 1991)。CH2ドメインは、別のドメインと密に対合しない点で独特である。むしろ、2つのN-結合型分岐した糖鎖が、無傷の未変性のIgG分子の2つのCH2ドメイン間に差し挟まれている。また、CH3ドメインは、CH2ドメインから、IgG分子のC-末端まで伸びていて、およそ108残基を含むことも良く実証されている。
【0077】
「断片」-本発明の抗体の文脈において使用される用語「断片」とは、無傷の又は完全な抗体又は抗体鎖よりもより少ないアミノ酸残基を含む抗体又は抗体鎖の一部又は部分をいう。用語「抗原結合断片」とは、抗原に結合するか、或いは抗原結合(すなわち、IL-22Rへの特異的結合)について無傷の抗体(すなわち、それらが誘導元となる無傷の抗体)と競合する、免疫グロブリン又は抗体のポリペプチド断片をいう。本明細書で使用する用語、抗体分子の「断片」とは、抗体の抗原結合断片、例えば、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、単鎖抗体(scFv)、F(ab’)2断片、Fab断片、Fd断片、Fv断片、及び単一ドメイン抗体断片(DAb)を含む。断片は、例えば、無傷の又は完全な抗体又は抗体鎖の化学処理若しくは酵素処理によるか、又は組換え手段により得ることができる。
【0078】
「結合価」-本明細書で使用する用語「結合価」とは、ポリペプチド中の可能性のある標的結合部位の数をいう。各標的結合部位は、1つの標的分子又は標的分子上の特異的部位に特異的に結合する。ポリペプチドが2以上の標的結合部位を含む場合、各標的結合部位は、同じ又は異なる分子に特異的に結合することができる(例えば、異なるリガンド又は異なる抗原、或いは同じ抗原上の異なるエピトープに結合することができる)。
【0079】
「特異性」-用語「特異性」とは、所与の標的、例えばIL-22Rと結合する(例えば免疫反応する)能力をいう。ポリペプチドは、単一特異性であり、且つ標的に特異的に結合する結合部位を1以上含むことができるか、或いはポリペプチドは、多重特異性であり、且つ同じ又は異なる標的に特異的に結合する2以上の結合部位を含むことができる。
【0080】
「合成の」-ポリペプチドに関して本明細書で使用する用語「合成の」は、天然ではないアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。例えば、天然ではないポリペプチドは、天然のポリペプチドの改変された形態であるか(例えば、付加、置換又は欠失などの変異を含む)、又は事実上天然には連結されない第二のアミノ酸配列(これは天然であってもなくてもよい)に、アミノ酸の線状配列で連結された第一のアミノ酸配列(これは天然であってもなくてもよい)を含む。
【0081】
「操作された」-本明細書で使用する用語「操作された」は、合成手段による(例えば、組換え技術、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素的又は化学的カップリング、又はこれらの技術のいくつかの組合せによる)、核酸又はポリペプチド分子の操作を含む。好ましくは、本発明の抗体は操作されており、例えば、ヒト化及び/又はキメラ抗体、並びに抗原結合、安定性/半減期又はエフェクター機能などの1以上の特性を改善するよう操作されている抗体を含む。
【0082】
「改変された抗体」-本明細書で使用する用語「改変された抗体」は、天然に生じないように変更された抗体の合成の形態を含み、例えば、少なくとも2つの重鎖部分を含むが2つの完全重鎖は含まない抗体(例えば、ドメイン欠失された抗体又はミニボディ);2つ以上の異なる抗原又は単独の抗原上の異なるエピトープに結合するように変更された抗体の多重特異性形態(例えば、二特異性、三特異性など);scFv分子に結合された重鎖分子などがある。scFv分子は、当該技術分野において公知であり、且つ例えば米国特許第5,892,019号に説明されている。加えて、用語「改変された抗体」は、抗体の多価の形態(例えば、同じ抗原の3以上のコピーに結合する三価、四価などの抗体)を含む。別の実施態様において、本発明の改変された抗体は、CH2ドメインを欠く少なくとも1つの重鎖部分を含み、且つ受容体リガンド対の一員の結合部分を含むポリペプチドの結合ドメインを含む融合タンパク質である。
【0083】
用語「改変された抗体」は、本明細書に構造的に定義されたように本発明の抗体のアミノ酸配列バリアントを意味するように本明細書で使用することもできる。当業者には、抗体は、その誘導元となる抗体に比べ、アミノ酸配列が変動しているバリアント抗体を作出するように改変することができることは、理解されるであろう。例えば、保存的置換又は「非必須」アミノ酸残基での変化につながるヌクレオチド又はアミノ酸の置換を行うことができる(例えば、CDR及び/又はフレームワーク残基において)。アミノ酸置換は、1以上のアミノ酸の、天然の又は非天然のアミノ酸との置き換えを含むことができる。
【0084】
「ヒト化置換」-本明細書で使用する用語「ヒト化置換」とは、抗体(例えば、ラクダ科動物-由来のIL-22R抗体)のVH又はVLドメイン中の特定の位置に存在するアミノ酸残基が、参照ヒトVH又はVLドメイン中の同等の位置に生じるアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換をいう。参照ヒトVH又はVLドメインは、ヒト生殖細胞系列によりコードされたVH又はVLドメインであってよい。ヒト化置換は、本明細書に定義されたように、抗体のフレームワーク領域及び/又はCDRに行うことができる。
【0085】
「ヒト化バリアント」-本明細書において使用する用語「ヒト化バリアント」とは、参照抗体と比べ1以上の「ヒト化置換」を含むバリアント抗体をいい、ここで該参照抗体の部分(例えば、VHドメイン及び/又はVLドメイン又は少なくとも1つのCDRを含むそれらの一部)は、非-ヒト種由来のアミノ酸を有し、且つ「ヒト化置換」は、非-ヒト種由来のアミノ酸配列内に起こる。
【0086】
「生殖細胞系列化バリアント」-用語「生殖細胞系列化バリアント」は、「ヒト化置換」が、抗体(例えば、ラクダ科動物-由来のIL-22R抗体)のVH又はVLドメイン中の特定の位置に存在する1以上のアミノ酸残基が、ヒト生殖細胞系列によりコードされた参照ヒトVH又はVLドメイン中の同等の位置に生じるアミノ酸残基により置き換えられる「ヒト化バリアント」を具体的に指すように、本明細書において使用する。いずれか所定の「生殖細胞系列化バリアント」に関して、生殖細胞系列化バリアントへと置換された置き換えアミノ酸残基は、専ら若しくは優先的に単独のヒト生殖細胞系列-コードされたVH又はVLドメインから得られることは、一般的である。用語「ヒト化バリアント」と「生殖細胞系列化バリアント」は、本明細書において互換的に使用することが多い。1以上の「ヒト化置換」のラクダ科動物-由来の(例えば、ラマ由来の)VH又はVLドメインへの導入は、結果的にラクダ科動物(ラマ)-由来のVH又はVLドメインの「ヒト化バリアント」を生成する。この置換されたアミノ酸残基が優先的又は専ら単独のヒト生殖細胞系列-コードされたVH又はVLドメイン配列に由来する場合、結果的にラクダ科動物(ラマ)-由来のVH又はVLドメインの「ヒト生殖細胞系列化バリアント」が生じる。
【0087】
「親和性バリアント」-本明細書で使用する用語「親和性バリアント」とは、参照抗体と比べアミノ酸配列に1以上の変化を示す「バリアント抗体」をいい、ここで該親和性バリアントは、標的抗原について参照抗体と比べ変更された親和性を示す。例えば、親和性バリアントは、IL-22Rについて参照IL-22R抗体と比べ変化された親和性を示すであろう。好ましくは、親和性バリアントは、標的抗原、例えばIL-22Rについて参照抗体と比べ「改善された」親和性を示すであろう。親和性バリアントは典型的には、参照抗体と比べ、CDRのアミノ酸配列に1以上の変化を示す。そのような置換は、CDRの所定の位置に存在する当初のアミノ酸の、天然のアミノ酸残基又は非天然のアミノ酸残基であってよい異なるアミノ酸残基との置き換えを生じることができる。このアミノ酸置換は、保存的又は非保存的であることができる。
【0088】
「高ヒト相同性」-重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体は、このVHドメイン及びVLドメインが一緒に、最も良くマッチしているヒト生殖細胞系列VH配列及びVL配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を示す場合に、高ヒト相同性を有するとみなされるであろう。高ヒト相同性を有する抗体は、例えば、ラクダ科動物の通常型抗体のVH及びVLドメインを含む抗体、加えてそのような抗体の操作された、特にヒト化若しくは生殖細胞系列化されたバリアント及びまた「完全ヒト」抗体を含む、ヒト生殖細胞系列配列と十分に高い%配列同一性を示す、未変性の非ヒト抗体のVH及びVLドメインを含む抗体を含むことができる。
【0089】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり、1つ以上のヒトVHドメインと、80%以上のアミノ酸配列同一性又は配列相同性を示すことができる。他の実施態様において、本発明のポリペプチドのVHドメインと最も良くマッチしているヒト生殖細胞系列VHドメイン配列の間のアミノ酸配列同一性又は配列相同性は、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%でさえであることができる。
【0090】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり、最も近いマッチしたヒトVH配列と比べ、1以上(例えば1~10)のアミノ酸配列ミスマッチを含むことができる。
【0091】
別の実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトVLドメインと、80%以上の配列同一性又は配列相同性を示すことができる。他の実施態様において、本発明のポリペプチドのVLドメインと最も近いマッチしたヒト生殖細胞系列VLドメイン配列の間のアミノ酸配列同一性又は配列相同性は、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%でさえであることができる。
【0092】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり、最も近いマッチしたヒトVL配列と比べ、1以上(例えば1~10)のアミノ酸配列ミスマッチを含むことができる。
【0093】
高ヒト相同性を伴う抗体と、ヒト生殖細胞系列VH及びVLの間の%配列同一性を解析する前に、そのカノニカルフォールドを決定することができ、このことは、H1及びH2又はL1及びL2(及びL3)に関するカノニカルフォールドの同一の組合せを伴うヒト生殖細胞系列セグメントファミリーの同定を可能にする。引き続き、関心対象の抗体の可変領域と最高度の配列相同性を有するヒト生殖細胞系列ファミリーのメンバーが、配列相同性のスコア化のために選択される。超可変ループL1、L2、L3、H1及びH2のショティアカノニカルクラスの決定は、www.bioinf.org.uk/abs/chothia.htmlのウェブページ上で公に利用可能なバイオインフォマティクスツールにより実行することができる。このプログラムのアウトプットは、データファイルにおける重要残基の必要要件を示す。これらのデータファイルにおいて、重要残基の位置は、各位置で可能なアミノ酸と共に示される。関心対象の抗体の可変領域の配列は、インプットとして入力され、且つカバット番号付けスキームを割り当てるために、最初にコンセンサス抗体配列と並置される。このカノニカルフォールドの解析は、Martin及びThorntonにより開発された自動化された方法によりもたらされた重要残基鋳型のセットを使用する(Martinらの文献、J. Mol. Biol. 263: 800-815 (1996))。
【0094】
H1及びH2又はL1及びL2(及びL3)に関するカノニカルフォールドの同じ組合せを使用する、公知の特定のヒト生殖細胞系列Vセグメントにより、配列相同性に関するベストマッチングファミリーメンバーを決定することができる。関心対象の抗体のVH及びVLドメインフレームワークアミノ酸配列と、ヒト生殖細胞系列によりコードされた対応する配列の間の%配列同一性は、バイオインフォマティクスツールにより決定することができるが、実際にはこれらの配列の手作業によるアラインメントも適用することができる。ヒト免疫グロブリン配列は、VBase (http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)又はPluckthun/Honeggerデータベース(http://www.bioc.unizh.ch/antibody/Sequences/Germlines)のような、いくつかのタンパク質データベースから同定することができる。ヒト配列を関心対象の抗体のVH又はVLドメインのV領域と比較するために、配列アラインメントアルゴリズム、例えばウェブサイトwww.expasy.ch/tools/#alignなどを介して利用可能なものを使用することができるが、同じく配列の限定されたセットとの手作業によるアラインメントも行うことができる。カノニカルフォールドの同じ組合せを持ち、且つ各鎖のフレームワーク領域1、2、及び3との最高度の相同性を伴うこれらのファミリーのヒト生殖細胞系列軽鎖及び重鎖配列が選択され、且つ関心対象の可変領域と比較され;またこのFR4は、ヒト生殖細胞系列JH及びJK又はJL領域に対してチェックされる。
【0095】
全体の%配列相同性の計算において、FR1、FR2及びFR3の残基は、カノニカルフォールドの同じ組合せを持つヒト生殖細胞系列ファミリーから最も近いマッチング配列を用いて評価されることに留意されたい。カノニカルフォールドの同じ組合せを持つ同じファミリーの最も近いマッチングのメンバー又は他のメンバーと異なる残基のみが、スコア化される(NB-プライマーにコードされた差異は除外する)。しかしヒト化の目的のためには、カノニカルフォールドの同じ組合せを有さない他のヒト生殖細胞系列ファミリーのメンバーと同じフレームワーク領域内の残基は、先に記載のストリンジェントな条件に従い「ネガティブ」とスコア化されるという事実にもかかわらず、これらは「ヒト」と考えることができる。この前提は、Quとその同僚(Quらの文献、Clin. Cancer Res. 5: 3095-3100 (1999))並びにOnoとその同僚(Onoらの文献、Mol. Immunol. 36: 387-395 (1999))により研究されたように、FR1、FR2、FR3及びFR4の各々が、その最も近いマッチングのヒト生殖細胞系列配列と個別に比較され、その結果ヒト化された分子は、異なるFRの組合せを含むという、ヒト化のための「ミックス及びマッチ」法を基本にしている。個々のフレームワーク領域の境界は、ショティア番号付けスキームの改変である、IMGT番号付けスキームを用いて割り当てることができる(Lefrancらの文献、NAR, 27: 209-212 (1999);imgt.cines.fr)。
【0096】
高ヒト相同性を伴う抗体は、以下に詳細に考察するように、ヒト又はヒト-様のカノニカルフォールドを有する超可変ループ又はCDRを含むことができる。
【0097】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメイン又はVLドメインのいずれかの中の少なくとも1つの超可変ループ又はCDRは、非ヒト抗体、例えばラクダ科の種由来の通常型抗体のVHドメイン又はVLドメインから得るか又は誘導することができ、その上ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を示す。
【0098】
ヒト生殖細胞系列によりコードされたVHドメイン及びVLドメインの両方に存在する超可変ループの一次アミノ酸配列は、定義により、高度に可変性であるが、VHドメインのCDR H3以外の全ての超可変ループは、カノニカルフォールドと称されるわずかに数種類の独特な構造の高次構造を採用し(Chothiaらの文献、J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987);Tramontanoらの文献、Proteins, 6: 382-94 (1989))、これは超可変ループの長さ及びいわゆるカノニカルアミノ酸残基の存在の両方によって決まる(Chothiaらの文献、J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987))ことは、当該技術分野においてよく確立されている。無傷のVH又はVLドメイン中の超可変ループの実際のカノニカル構造は、構造解析(例えばX線結晶解析)により決定することができるが、特定の構造に特徴的である重要なアミノ酸残基を基に、カノニカル構造を予測することも可能である(以下に更に考察する)。本質的に、各々のカノニカル構造を決定する残基の特異的パターンは、そのカノニカル構造が未知の構造のVH又はVLドメインの超可変ループにおいて認められることを可能にする「署名(signature)」を形成し;その結果カノニカル構造は、一次アミノ酸配列だけを基に予測することができる。
【0099】
高ヒト相同性を伴う抗体中のいずれか所定のVH又はVL配列の超可変ループに関して予測されたカノニカルフォールド構造は、www.bioinf.org.uk/abs/chothia.html、www.biochem.ucl.ac.uk/~martin/antibodies.html、及びwww.bioc.unizh.ch/antibody/Sequences/Germlines/Vbase_hVk.htmlから公に利用可能であるアルゴリズムを用いて解析することができる。これらのツールは、クエリーVH又はVL配列を、公知のカノニカル構造のヒトVH又はVLドメイン配列に対して並置すること、並びにクエリー配列の超可変ループに関して生じたカノニカル構造の予測を可能にする。
【0100】
VHドメインの場合、H1及びH2ループは、少なくとも下記の第一の判定基準、好ましくは両方の判定基準が満たされる場合、ヒト抗体において生じることがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとして、スコア化することができる:
1.残基の数により決定された、最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスと、同一の長さ、
2.対応するヒトH1及びH2のカノニカル構造クラスに関して説明された重要なアミノ酸残基との、少なくとも33%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性。
(前述の解析を目的として、H1及びH2ループは、個別に処理され、且つ各々その最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスに対し比較されることに留意されたい)。
【0101】
前記解析は、関心対象の抗体のH1及びH2ループのカノニカル構造の予測に頼っている。例えばX線結晶解析を基に関心対象の抗体のH1及びH2ループの実際の構造がわかっている場合には、関心対象の抗体のH1及びH2ループはまた、そのループの長さは最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスの長さと異なる(典型的には±1又は±2個のアミノ酸)が、関心対象の抗体のH1及びH2ループの実際の構造はヒトカノニカルフォールドの構造とマッチする場合に、ヒト抗体において生じることがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化することができる。
【0102】
ヒトVHドメインの第一及び第二の超可変ループ(H1及びH2)に関してヒトカノニカル構造クラスにおいて認められた重要なアミノ酸残基は、Chothiaらの文献(J. Mol. Biol. 227: 799-817 (1992))に記載されており、この文献の内容はその全体が引用により本明細書中に組み込まれている。特に、引用により本明細書中に具体的に組み込まれているChothiaらの文献の802頁の表3は、ヒト生殖細胞系列において認められたH1カノニカル構造の重要な位置での好ましいアミノ酸残基を列記しているのに対し、同じく具体的に引用によりに組み込まれている803頁の表4は、ヒト生殖細胞系列において認められたCDR H2カノニカル構造の重要な位置での好ましいアミノ酸残基を列記している。
【0103】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメイン中のH1及びH2の両方は、ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を示す。
【0104】
高ヒト相同性を伴う抗体は、そこで超可変ループH1及びH2が、少なくとも1つのヒト生殖細胞系列VHドメインにおいて生じることがわかっているカノニカル構造の組合せと同一であるカノニカルフォールド構造の組合せを形成するVHドメインを含むことができる。H1及びH2でのカノニカルフォールド構造のある種の組合せのみが、ヒト生殖細胞系列によりコードされたVHドメインにおいて実際に生じることが認められている。ある実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメイン中のH1及びH2は、非ヒト種、例えばラクダ科の種のVHドメインから得ることができ、それでもヒト生殖細胞系列又は体細胞変異されたVHドメインにおいて生じることがわかっているカノニカルフォールド構造の組合せと同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成する。非限定的実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメイン中のH1及びH2は、非ヒト種、例えばラクダ科の種のVHドメインから得ることができ、且つ1-1、1-2、1-3、1-6、1-4、2-1、3-1及び3-5のカノニカルフォールド組合せのひとつを形成する。
【0105】
高ヒト相同性を伴う抗体は、ヒトVHと高い配列同一性/配列相同性の両方を示し、且つヒトVHと構造相同性を示す超可変ループを含むVHドメインを含むことができる。
【0106】
高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメイン中のH1及びH2に存在するカノニカルフォールド、並びにそれらの組合せに関して、全体の一次アミノ酸配列の同一性の観点で、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメインと最も近いマッチングを示すヒトVH生殖細胞系列配列に「補正」されることは有利である。例として、最も近い配列マッチングがヒト生殖細胞系列のVH3ドメインとである場合、H1及びH2が、ヒトVH3ドメインにおいても天然に生じるカノニカルフォールドの組合せを形成することは有利であることができる。非ヒト種から誘導された高ヒト相同性を伴う抗体、例えば、ラクダ科動物の通常型抗体から誘導されたVH及びVLドメインを含む抗体、特にヒト化されたラクダ科動物のVH及びVLドメインを含む抗体の場合、このことは特に重要である。
【0107】
従って一実施態様において、高ヒト相同性を伴うIL-22R抗体のVHドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたりヒトVHドメインと80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%さえもの配列同一性又は配列相同性を示すことができ、且つ加えて、同じ抗体のH1及びH2は、非ヒトの(例えば、ラクダ科の種から誘導された)VHドメインから得られるが、同じヒトVHドメインにおいて天然に生じることがわかっているカノニカルフォールド組合せと同じである予測された又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成する。
【0108】
他の実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメインのL1及びL2は、各々、非ヒト種のVLドメイン(例えば、ラクダ科動物-由来のVLドメイン)から得られ、且つ各々、ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を示す。
【0109】
前述のVHドメインと同様に、Vλ型及びVκ型の両方のVLドメインの超可変ループは、長さにより、及び特定のカノニカル位置での重要なアミノ酸残基の存在によっても一部決定される、限られた数の高次構造又はカノニカル構造を採用することができる。
【0110】
高ヒト相同性を有する関心対象の抗体内の、非ヒト種、例えばラクダ科の種のVLドメインから得られたL1、L2及びL3ループは、少なくとも下記の第一の判定基準、好ましくは両方の判定基準が満たされる場合、ヒト抗体において生じることがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとして、スコア化することができる:
1.残基の数により決定された、最も近いマッチングのヒトの構造クラスと、同一の長さ、
2.Vλ又はVκレパトアのいずれかからの、対応するヒトL1又はL2のカノニカル構造クラスに関して説明された重要なアミノ酸残基との、少なくとも33%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性。
(前述の解析を目的として、L1及びL2ループは、個別に処理され、且つ各々その最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスに対し比較されることに留意されたい)。
【0111】
前記解析は、関心対象の抗体のVLドメインのL1、L2及びL3ループのカノニカル構造の予測に頼っている。例えばX線結晶解析を基にL1、L2及びL3ループの実際の構造がわかっている場合には、関心対象の抗体から誘導されたL1、L2又はL3ループはまた、そのループの長さは最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスの長さと異なる(典型的には±1又は±2個のアミノ酸)が、これらのラクダ科ループの実際の構造はヒトカノニカルフォールドとマッチする場合に、ヒト抗体において生じることがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとして、スコア化することができる。
【0112】
ヒトVλ及びVκドメインのCDRに関してヒトカノニカル構造クラスにおいて認められた重要なアミノ酸残基は、Moreaらの文献、Methods, 20: 267-279 (2000)、及びMartinらの文献、J. Mol. Biol., 263: 800-815 (1996)に説明されている。同じくヒトVκドメインの構造的レパトアは、Tomlinsonらの文献、EMBO J. 14: 4628-4638 (1995)に、並びにVλドメインの構造的レパトアは、Williamsらの文献、J. Mol. Biol., 264: 220-232 (1996)に説明されている。これらの論文の全ての内容は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0113】
高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメイン中のL1及びL2は、ヒト生殖細胞系列VLドメインにおいて生じることがわかっているカノニカルフォールド構造の組合せと同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成することができる。非限定的実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体(例えば、ラクダ科動物-由来のVLドメインを含む抗体又はそれらのヒト化されたバリアント)のVλドメイン中のL1及びL2は、11-7、13-7(A,B,C)、14-7(A,B)、12-11、14-11及び12-12のカノニカルフォールド組合せのひとつを形成することができる(Williamsらの文献、J. Mol. Biol. 264: 220-32 (1996)に規定され、且つhttp://www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequences/Germlines/VBase_hVL.htmlに示されている)。非限定的実施態様において、Vκドメイン中のL1及びL2は、2-1、3-1、4-1及び6-1のカノニカルフォールド組合せのひとつを形成することができる(Tomlinsonらの文献、EMBO J. 14: 4628-38 (1995)に規定され、且つhttp://www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequences/Germlines/VBase_hVK.htmlに示されている)。
【0114】
更なる実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメインのL1、L2及びL3の3つは全て、実質的なヒト構造を示すことができる。高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメインは、ヒトVLと高い配列同一性/配列相同性の両方を示すこと、同じくVLドメイン中の超可変ループはヒトVLと構造相同性を示すことが好ましい。
【0115】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴うIL-22R抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたりヒトVLドメインと80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%さえもの配列同一性を示すことができ、且つ加えて、超可変ループL1及び超可変ループL2は、同じヒトVLドメインにおいて天然に生じることがわかっているカノニカルフォールド組合せと同じである予測された又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成することができる。
【0116】
当然、ヒト-コードされたVH/VL対合と最大の配列及び構造の相同性を伴うVH/VL対合(例えば、ラクダ科動物-由来したVH/VL対合)を含む高ヒト相同性を伴う抗体を提供するために、ヒトVHとの高い配列同一性/配列相同性を及びまたヒトVHの超可変ループとの構造相同性をも示すVHドメインを、ヒトVLとの高い配列同一性/配列相同性を及びまたヒトVLの超可変ループとの構造相同性をも示すVLドメインと組合せることが想定されている。
【0117】
「scFv」又は「scFv断片」-scFv又はscFv断片は、単鎖可変断片を意味する。scFvは、リンカーにより結合された抗体のVHドメイン及びVLドメインの融合タンパク質である。
【0118】
(B. IL-22R抗体)
本発明は、ヒトIL-22Rに特異的に結合する抗体及びそれらの抗原結合断片に関する。本明細書記載のIL-22R抗体及び抗体断片は、先行技術のIL-22R抗体とは異なり且つ場合によってはより優れている、特性、特に特性の組合せを有する。これらの特性及び特徴を、ここで更に詳細に説明する。
【0119】
(IL-22Rエピトープ)
本発明のIL-22R抗体及び抗原結合断片は、アミノ酸残基チロシン60(Tyr60又はY60)を含まないヒトIL-22Rタンパク質内のエピトープに結合し、ここでこのアミノ酸位置は、図2に示されたIL-22Rの配列(配列番号:71)を参照し規定される。このIL-22Rの表面に露出された残基は、リガンド結合に重要なものとして先に規定され、且つ本明細書に報告されたように(特に実施例8参照)、先行技術のIL-22R抗体280.346.TSY(WO2011/061119に記載)は、この残基を含むエピトープに結合する。本発明のIL-22R抗体及び抗原結合断片は、驚くべきことに、この重要な残基を含まないエピトープに結合し、且つ更に特定の実施態様において、IL-22結合をブロックし並びに/又はIL-22Rを介したIL-22及び/もしくはIL-20媒介性シグナル伝達を阻害することが可能である。
【0120】
IL-22Rの細胞外ドメインとそのリガンドIL-22の間の結合境界面は、その内容はそれらの全体が本明細書中に組み込まれている、Jonesらの文献(Structure 16(9): 1333-1344 (2008))で特徴付けられている。IL-22Rの細胞外ドメインは、5つのループ(L2-L6)からなり、その特定の残基は、IL-22リガンド上の表面に露出された残基との相互作用を媒介するのに重要である。チロシン60は、IL-22Rタンパク質のD1ドメイン内の残基により形成されたL2ループ内に位置する。IL-22/可溶性IL-22R複合体において、残基Tyr60は、リガンドのサイト1a内に作製されたIL-22上の小さい空洞に挿入する。より具体的には、この空洞は、ヘリックスF及びABループの交差で作製され、2つの個別の二次構造は、IL-22リガンドにおいて認められる。リガンド上のヘリックスF残基Lys162及びGlu166は、IL-22RのTyr60のOHへの水素結合を形成し、従ってTyr60は、リガンド上のサイト1aと受容体のドメインD1の間の相互作用を媒介する重要な残基である。
【0121】
本明細書に記載された抗体及び抗原結合断片は、Tyr60を含まないエピトープに結合する。先に記したように、Tyr60は、この受容体のD1ドメイン中のL2ループ内に配置される。特定の実施態様において、それにIL-22R抗体又は抗原結合断片が結合するエピトープは、IL-22RのD2ドメインの少なくとも一部に、すなわち配列番号:71の残基125と228の間に、配置される。特定の実施態様において、それにIL-22R抗体又は抗原結合断片が結合するエピトープは、IL-22Rタンパク質のD2ドメイン内に配置された、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3のアミノ酸残基を含む。
【0122】
本発明者らは、本発明の抗体及び抗原結合断片は、Tyr60を含まないエピトープに結合するという事実は、それらの作用様式に関連していると考えている。本抗体及びそれらの抗原結合断片は、D1ドメインとの相互作用の代わりに又はこれに加えて、IL22RのD2ドメインと相互作用すると考えられる。IL-22RのD2ドメインは、共-受容体との相互作用に関与することがわかっている。理論により結びつけられることを欲するものではないが、本発明者らは、本発明の抗体分子は、リガンドとの結合の防止及び共-受容体との相互作用の防止の二重の作用様式を有すると考えている。
【0123】
本発明の抗体又は抗原結合断片が結合するエピトープは、線状エピトープ(すなわち、標的抗原内の線状アミノ酸配列からなるエピトープ)又は高次構造エピトープ(すなわち、標的抗原に必ずしも隣接していないアミノ酸からなるエピトープ)であってよい。
【0124】
(結合親和性)
特定の実施態様において、本発明の抗体及び抗原結合断片は、高親和性でヒトIL-22Rに結合する。
【0125】
本明細書に使用される用語「親和性」又は「結合親和性」は、抗体結合の状況において当該技術分野における通常の意味を基に理解されるべきであり、且つ抗原と抗体もしくはその抗原結合断片の上の結合部位の間の結合の強度及び/又は安定性を反映している。
【0126】
その各抗原に関する抗体又はその抗原結合断片の結合親和性は、当該技術分野において公知の技術を用い実験により決定することができる。例えば、BIACORE装置は、バイオセンサーチップ上の標的タンパク質又は抗原の固定化を基に親和性を測定する一方で、抗体又は抗体断片は、特定のフロー条件下で固定化された標的上を通過する。これらの実験は、kon及びkoff測定値を生じ、これらは、KD値に変換することができ、ここでKDは、抗原の抗体又はその断片との解離の平衡定数である。より小さいKD値は、抗体とその標的抗原の間のより強力な結合相互作用である。先に注記したように、抗体の親和性は、例えば、本明細書別所に記載されたプロトコールを使用する、Biacoreにより決定されてよい(実施例6参照)。Biacoreにより測定されたヒトIL-22Rに関する抗体又は抗原結合断片の親和性は、例えば、実施例3及び6に記載されたような、組換え完全長IL-22R構築体を用いて、決定することができる。
【0127】
本発明のIL-22R抗体又はそれらの抗原結合断片は、mAbとして試験した場合、例えば軽鎖可変ドメインと対合した重鎖可変ドメインの親和性が、IgG1分子との関連で試験される場合に、IL-22Rについて、2×10-3 s-1未満、1.5×10-3 s-1未満、1.2×10-3 s-1未満のオフレート(koff)を示してよい。好ましい実施態様において、本発明のIL-22R抗体又はそれらの抗原結合断片は、mAbとして試験した場合、例えば軽鎖可変ドメインと対合した重鎖可変ドメインの親和性が、IgG1分子との関連で試験される場合に、IL-22Rについて、2.5×10-4 s-1未満、好ましくは1.5×10-4 s-1未満、より好ましくは1×10-4 s-1未満のオフレート(koff)を示す。
【0128】
本発明のIL-22R抗体又はそれらの抗原結合断片は、IL-22Rについて、1×10-6s-1~2×10-3 s-1の範囲、好ましくは1×10-6s-1~2.5×10-4 s-1の範囲、より好ましくは1×10-5 s-1~1×10-4 s-1の範囲のオフレート(koff)を示してよい。
【0129】
本発明のIL-22R抗体又はそれらの抗原結合断片は、3×10-9 M未満、2.5×10-9 M未満、1×10-9 M未満のKD値を示してよい。好ましい実施態様において、本発明のIL-22R抗体又はそれらの抗原結合断片は、5×10-10 M未満、好ましくは2×10-10 M未満、好ましくは1.5×10-10 M未満のKD値を示す。
【0130】
(IL-22及びIL-20結合及び下流シグナリングの阻害)
特定の実施態様において、本発明の抗体及び抗原結合断片は、ヒトIL-22Rに結合し、且つこの受容体へのリガンド結合を阻害する。本明細書記載の抗体は、Tyr60を含まないエピトープに結合することから、これは特に驚くべきことである。先に説明したように、Tyr60は、リガンド結合に重要な残基として同定されており、従って本発明のIL-22R抗体及び抗原結合断片は、リガンド結合を阻害するそれらの能力、及び特定の実施態様において、IL-22Rの下流のシグナリングを阻害するそれらの能力において驚くべきものである。
【0131】
本抗体及び抗原結合断片は、ヒトIL-22Rに結合し、且つIL-22結合を阻害するか又はIL-20結合を阻害する。好ましくは、本明細書記載の抗体及び抗原結合断片は、IL-22RへのIL-22及びIL-20の結合を阻害する。
【0132】
共-受容体IL-10R2又はIL-20R2のいずれかを発現している細胞上のIL-22Rへのリガンド結合は、この受容体複合体における高次構造変化を誘導し、その結果受容体の下流のシグナリング経路が活性化される。本明細書記載の抗体又はそれらの抗原結合断片は、IL-22RのIL-22-依存型活性化を阻害してよく、又はIL-22RのIL-20-依存型活性化を阻害してよい。本明細書において使用される用語「IL-22RのIL-22-依存型活性化」は、リガンドIL-22のIL-22R/IL-10R2複合体への結合時に、IL-22R受容体複合体の下流で生じるシグナリング事象の連鎖を意味すると考えられるべきである。本明細書において使用される用語「IL-22RのIL-20-依存型活性化」は、リガンドIL-20のIL-22R/IL-20R2複合体への結合時の、IL-22Rの下流に生じるシグナリング事象の連鎖を意味すると考えられるべきである。
【0133】
IL-22RのIL-22-依存型活性化は、IL-22R及び共-受容体IL-10R2の両方を発現している細胞又は細胞株において、例えば、その内容の全体が本明細書中に組み込まれているDumoutierらの文献(J Biol Chem. 2009 Sep 25; 284(39): 26377-84)に説明されたBW-hIL-22R細胞株において、測定することができる。IL-22は、BW-hIL-22R細胞株における成長停止を誘導し、その結果この細胞株におけるIL-22RのIL-22依存型活性化は、例えば実施例6に記載したように、BW-hIL-22R細胞の増殖を測定することにより、この細胞株において決定することができる。特定の実施態様において、本明細書記載の抗体又は抗原結合断片は、IL-22依存型細胞-ベースの増殖アッセイにおいて、650pM未満、好ましくは600pM未満のIC50(活性化の50%阻害に達する濃度)を示す。細胞-ベース増殖アッセイは、好ましくは、本明細書記載のBW-hIL-22R細胞株が関与するアッセイである。
【0134】
IL-22RのIL-20-依存型活性化は、IL-22R及び共-受容体IL-20R2の両方を発現している細胞又は細胞株において、例えば同じく、その内容の全体が本明細書中に組み込まれているDumoutierらの文献(J Biol Chem. 2009 Sep 25; 284(39): 26377-84)に説明されたBaf3-hIL-22R/IL20Rb細胞株において、測定することができる。IL-20は、Baf3-hIL-22R/IL20Rb細胞株における増殖を誘導し、その結果IL-22RのIL-20 依存型活性化は、例えば実施例6に記載したように、Baf3-hIL-22R/IL20Rb細胞の増殖を測定することにより、この細胞株により決定することができる。特定の実施態様において、本明細書記載の抗体又は抗原結合断片は、IL-20依存型細胞-ベース増殖アッセイにおいて、1nM未満、好ましくは800pM未満のIC50(活性化の50%阻害に達する濃度)を示す。細胞-ベース増殖アッセイは、好ましくは、本明細書記載のBaf3-hIL-22R/IL20Rb細胞株が関与するアッセイである。
【0135】
先に説明した増殖アッセイに加え、IL-22RのIL-22及び/又はIL-20-依存型活性化は、代替細胞アッセイ、例えば、WO2011/061119に記載されたSTAT3リン酸化アッセイを用いて、測定される。
【0136】
好ましい実施態様において、本発明の抗体又は抗原結合断片は、ヒトIL-22Rに結合し、且つIL-22RのIL-22依存型活性化及びIL-22RのIL-20-依存型活性化の両方を阻害する。かかる実施態様において、抗体又は抗原結合断片の阻害又は「中和」活性は、IL-22及びIL-20-依存型活性化の両方について等しい効力であってよい。あるいは、抗体又は抗原結合断片の阻害又は中和活性は、他のリガンドにより媒介されたIL-22Rの活性化と比べ、これらのリガンドのひとつにより媒介されたIL-22Rの活性化についてより大きい。特定の実施態様において、本発明の抗体又は抗原結合断片は、IL-22RのIL-20依存型活性化と比べ、IL-22RのIL-22依存型活性化について、より強力な阻害活性を示すであろう。しかしかかる実施態様において、IL-22RのIL-22-依存型活性化に関する抗体又は抗原結合断片の阻害活性は、IL-22RのIL-20-依存型活性化に関する抗体又は抗原結合断片の阻害活性よりも、典型的には5倍未満、好ましくは4倍未満、より好ましくは2倍未満であろう。
【0137】
(交差反応性)
特定の実施態様において、ヒトIL-22Rに結合する本明細書記載の抗体又は抗原結合断片は、IL-22Rの1種以上の種ホモログ、例えば霊長類起源のIL-22Rホモログと交差反応することができる。
【0138】
特定の実施態様において、本発明の抗体又は抗原結合断片は、マウスIL-22Rとは交差反応しない。代わりに又は追加して、本抗体又は抗原結合断片は、霊長類起源の1種以上のIL-22Rホモログ、例えば、アカゲザル及びカニクイザル由来のIL-22Rタンパク質とは結合することができる。他の種ホモログとの交差反応性は、治療的抗体の開発及び試験において特に利点となり得る。例えば、治療的抗体の前臨床毒性試験は、非限定的にアカゲザル及びカニクイザルを含む霊長類種において実行されることが多い。従ってこれらの種ホモログとの交差反応性は、臨床候補としての抗体の開発について、特に利点がある。
【0139】
(ラクダ科動物-由来の抗体)
本発明の特定の実施態様において、本明細書記載の抗体又はその抗原結合断片は、ラクダ科ファミリーの種のVHドメイン又はVLドメインから得られる、少なくとも1つの超可変ループ又は相補性決定領域を含むことができる。特に該抗体又は抗原結合断片は、IL-22R抗原またはその断片による、非近交系ラクダ科動物、例えばラマの能動免疫により得られた、VH及び/又はVLドメイン、又はそれらのCDRを含み得る。
【0140】
「ラクダ科ファミリーの種のVHドメイン又はVLドメインから得られる超可変ループ又は相補性決定領域」とは、その超可変ループ(HV)又はCDRが、ラクダ科免疫グロブリン遺伝子によりコードされている超可変ループ又はCDRのアミノ酸配列と同一であるか、又は実質的に同一であるアミノ酸配列を有することを意味する。この文脈において、「免疫グロブリン遺伝子」は、生殖細胞系列遺伝子、再編成を受けている免疫グロブリン遺伝子、及び同じく体細胞変異された遺伝子を含む。従って、ラクダ科の種のVH又はVLドメインから得られたHV又はCDRのアミノ酸配列は、成熟したラクダ科通常型抗体に存在するHV又はCDRのアミノ酸配列と同一であることができる。この文脈において用語「から得られた」とは、IL-22R抗体のHV又はCDRは、ラクダ科免疫グロブリン遺伝子により当初コードされたアミノ酸配列(又はそれらの重要でないバリアント)を具現化するという意味での構造的関係を暗示している。しかしこれは、IL-22R抗体の調製に使用される製造方法の観点から特定の関係を必ずしも暗示していない。
【0141】
ラクダ科動物-由来のIL-22R抗体は、とりわけ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、ヴィクーニャ、グアナコ又はラクダを含む、任意のラクダ科動物の種に由来することができる。
【0142】
ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン、又はそれらのCDRを含むIL-22R抗体は、典型的には組換えにより発現されたポリペプチドであり、且つキメラポリペプチドであることができる。用語「キメラポリペプチド」とは、そうでなければ近接して生じることのない2つ以上のペプチド断片の並立により作製される人工の(非天然の)ポリペプチドをいう。この定義に含まれるのは、例えばラクダ科動物とヒトのような、2以上の種によりコードされたペプチド断片の並立により作製された「種」キメラポリペプチドである。
【0143】
ラクダ科動物-由来のCDRは、配列番号:6及び13(重鎖CDR3)、もしくは配列番号:4及び11(重鎖CDR2)、もしくは配列番号:2及び9(重鎖CDR1)として示されたCDR配列の1つ、又は配列番号:20及び27(軽鎖CDR3)、もしくは配列番号:18、25及び47(軽鎖CDR2)、もしくは配列番号:16及び23(軽鎖CDR1)として示されたCDR配列の1つを含むことができる。
【0144】
一実施態様において、全VHドメイン及び/又は全VLドメインは、ラクダ科ファミリーの種から得ることができる。具体的実施態様において、ラクダ科動物-由来のVHドメインは、配列番号: 29及び31から選択されたアミノ酸配列を含むのに対し、ラクダ科動物-由来のVLドメインは、配列番号: 30、32及び62から選択されたアミノ酸配列を含むことができる。次にラクダ科動物由来のVHドメイン及び/又はラクダ科動物由来のVLドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠失がラクダ科動物アミノ酸配列に導入されるタンパク質操作に供される。これらの操作された変化は、ラクダ科動物配列に対するアミノ酸置換を含むことが好ましい。このような変化は、ラクダ科動物-コードされたVH又はVLドメイン中の1個以上のアミノ酸残基が、相同のヒト-コードされたVH又はVLドメイン由来の同等の残基と置き換えられる「ヒト化」又は「生殖細胞系列化」を含む。特定の実施態様において、ラクダ科動物-由来のVHドメインは、配列番号:29又は31として示されたアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、97%、98%又は99%の同一性を示すことができる。或いは、又は加えて、ラクダ科動物-由来のVLドメインは、配列番号:30、32又は62として示されたアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、97%、98%又は99%の同一性を示すことができる。
【0145】
ヒトIL-22R抗原によるラクダ科動物(例えばラマ)の能動免疫により得られた単離されたラクダ科動物VH及びVLドメインは、本発明に従い抗原結合ポリペプチドを操作するための基礎として使用することができる。無傷のラクダ科動物VH及びVLドメインから出発し、この出発ラクダ科動物配列から逸脱する1つ以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠失を操作することが可能である。特定の実施態様において、そのような置換、挿入又は欠失は、VHドメイン及び/又はVLドメインのフレームワーク領域中に存在することができる。一次アミノ酸配列におけるそのような変化の目的は、恐らく好ましくない特性(例えば、ヒト宿主における免疫原性(いわゆるヒト化)、可能性のある生成物の不均一性及び/又は不安定性の部位(グリコシル化、脱アミド化、異性体化など)を減らすか、或いはこの分子のいくつかの他の好ましい特性(例えば、溶解度、安定性、生物学的利用能など)を増強することである。他の実施態様において、一次アミノ酸配列の変化は、能動免疫により得られたラクダ科VH及び/又はVLドメインの1つ以上の超可変ループ(又はCDR)において操作することができる。このような変化は、抗原結合親和性及び/若しくは特異性を増強するために、又は恐らく好ましくない特性、例えばヒト宿主における免疫原性(いわゆるヒト化)、可能性のある生成物の不均一性及び/又は不安定性の部位、グリコシル化、脱アミド化、異性体化などを減少するために、或いはこの分子のいくつかの他の好ましい特性、例えば溶解度、安定性、生物学的利用能などを増強するために導入することができる。
【0146】
従って一実施態様において、本発明は、ラクダ科動物-由来のVH又はVLドメインと比べ、VHドメイン又はVLドメインのいずれかの少なくとも1つのフレームワーク又はCDR領域に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、バリアントIL-22R抗体を提供し、その例は、配列番号: 29及び31として示されたアミノ酸配列を含むラクダ科動物VHドメイン、及び配列番号: 30、32又は62として示されたアミノ酸配列を含むラクダ科動物VLドメインを含むが、これらに限定されるものではない。
【0147】
他の実施態様において、ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン(又はそれらの操作されたバリアント)並びに非ラクダ科動物の抗体由来の1つ以上の定常ドメイン、例えばヒト-コードされた定常ドメイン(又はそれらの操作されたバリアント)を含む、「キメラ」抗体分子を提供する。そのような実施態様において、VHドメイン及びVLドメインは両方とも、ラクダ科動物の同じ種から得ることが好ましく、例えば、VH及びVLの両方がラマ・グラマ由来であるか、又はVH及びVLの両方がラマ・パコス由来である(操作されたアミノ酸配列の変動の導入前)ことは好ましい。そのような実施態様において、VH及びVLドメインの両方は、単独の動物、特にIL-22R抗原により能動免疫化された単独の動物に由来することができる。
【0148】
ラクダ科VH及び/又はVLドメインの一次アミノ酸配列において変化を操作する代わりに、個別のラクダ科動物-由来の超可変ループ若しくはCDR、又はそれらの組合せを、ラクダ科動物VH/VLドメインから単離し、且つCDRグラフティングすることにより、代替(すなわち非ラクダ科)のフレームワーク、例えばヒトVH/VLフレームワークへ移すことができる。特に非限定的実施態様において、ラクダ科動物-由来のCDRは、配列番号:6及び13(重鎖CDR3)、もしくは配列番号:4及び11(重鎖CDR2)、もしくは配列番号:2及び9(重鎖CDR1)として示されたアミノ酸配列を有するCDR、又は配列番号:20及び27(軽鎖CDR3)、もしくは配列番号:18、25及び47(軽鎖CDR2)、もしくは配列番号:16及び23(軽鎖CDR1)として示されたCDR配列のひとつから選択することができる。
【0149】
ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン、又はそれらのCDRを含むIL-22R抗体は、VHドメイン及びVLドメインの両方が存在する様々な異なる実施態様をとることができる。本明細書において用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、且つそれらがIL-22Rタンパク質について適切な免疫学的特異性を示す限りは、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)を包含するが、これらに限定されるものではない。本明細書において使用する用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体をいい、すなわちその集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然の変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異性があり、単独の抗原部位に対し向けられている。更に、抗原上の異なる決定基(エピトープ)に対し向けられた様々な抗体を典型的には含む通常型(ポリクローナル)抗体調製品とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単独の決定基又はエピトープに対して向けられる。
【0150】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般にそれらの抗原結合ドメイン又は可変ドメインを含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、二重特異性Fab'、及びFv断片、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体分子、単鎖可変部断片(scFv)、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む(Holliger及びHudsonの文献、Nature Biotechnol., 23:1126-36 (2005)を参照することとし、その内容は引用により本明細書中に組み込まれている。)。
【0151】
非限定的実施態様において、ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン、又はそれらのCDRを含むIL-22R抗体は、CH1ドメイン及び/又はCLドメインを含むことができ、それらのアミノ酸配列は、完全に又は実質的にヒトである。本発明の抗原結合ポリペプチドが、ヒト治療上の使用が意図された抗体である場合、これは、その抗体の定常領域全体、又は少なくともそれらの一部について典型的には、完全に又は実質的にヒトアミノ酸配列を有する。従って、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCLドメイン(並びに存在するならばCH4ドメイン)の1つ以上若しくは任意の組合せは、そのアミノ酸配列に関して完全に又は実質的にヒトであることができる。
【0152】
有利なことに、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCLドメイン(並びに存在するならばCH4ドメイン)は全て、完全に又は実質的にヒトアミノ酸配列を有することができる。ヒト化又はキメラ抗体、又は抗体断片の定常領域の文脈において、用語「実質的にヒト」とは、ヒト定常領域との少なくとも90%、又は少なくとも92%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性をいう。この文脈において用語「ヒトアミノ酸配列」は、生殖細胞系列、再編成された及び体細胞変異された遺伝子を含む、ヒト免疫グロブリン遺伝子によりコードされたアミノ酸配列をいう。本発明はまた、「完全にヒト」ヒンジ領域の存在が明確に必要とされるそれらの実施態様を除き、ヒト配列に関して1つ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換により変更されている「ヒト」配列の定常ドメインを含むポリペプチドも意図している。
【0153】
本発明のIL-22R抗体中の「完全にヒト」ヒンジ領域の存在は、該抗体の免疫原性を最小化し且つ安定性を最適にするという両方の恩恵がある。本明細書の別所において考察するように、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠失は、重鎖及び/又は軽鎖の定常領域内、特にFc領域内になされることが意図されている。アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸の、異なる天然のアミノ酸との、又は非天然若しくは改変されたアミノ酸との置き換えを生じることができる。例えばグリコシル化パターンの変化(例えば、N-又はO-結合型グリコシル化部位の付加又は欠失による)などの、他の構造上の改変も許される。抗体の意図された用途に応じて、Fc受容体へのその結合特性に関して本発明の抗体を改変すること、例えばエフェクター機能を調節することが望ましいことがある。例えば、システイン残基をFc領域に導入することができ、これによりこの領域内での鎖内ジスルフィド結合形成が可能になる。こうして作出されたホモ二量体型抗体は、改善されたインターナリゼーション能並びに/又は増強された補体媒介性細胞傷害作用及び抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を有し得る。Caronらの文献、J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes B.の文献、J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)を参照されたい。本発明はまた、化学療法薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性がある毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位元素(すなわち、放射性複合体)などの、細胞毒性物質に複合された、本明細書に記載の抗体を含む免疫複合体も意図している。またChan及びCarterにより説明されているように(引用により本明細書中に組み込まれている、Nature Reviews: Immunology, Vol.10, pp301-316, 2010)、Fc領域を、半減期を延長するように操作することもできる。
【0154】
更に別の実施態様において、Fc領域は、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を媒介する抗体の能力を増大し、及び/又は1以上のアミノ酸の改変によりFcγ受容体に対する抗体の親和性を増加するように改変される。別の実施態様において、Fc領域は、エフェクター機能が存在しないように操作されてよい。Fcエフェクター機能を有さないIL-22R抗体は、受容体遮断薬として特に有用であり得る。特定の実施態様において、本発明の抗体は、低下したエフェクター機能を有する天然のIgGアイソタイプ、例えばIgG4由来のFc領域を有することができる。IgG4由来のFc領域は更に、例えば、インビボにおいてIgG4分子間のアームの交換を最小化する改変の導入により、治療的有用性を増大するように改変されることができる。
【0155】
また別の実施態様において、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、無グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体はグリコシル化されない)。グリコシル化は、例えば、標的抗原に対する抗体の親和性を増大するように、変更することができる。そのような糖改変は、例えば抗体配列内の1以上のグリコシル化部位の変更により達成することができる。例えば、1以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の排除を生じ、これによりその部位でのグリコシル化を排除する1以上のアミノ酸置換を行うことができる。そのような無グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増大することができる。
【0156】
またフコシル基の量が減少した低フコシル化抗体又は完全にもしくは部分的に脱フコシル化された抗体(Natsumeらの文献、Drug Design Development and Therapy, Vol.3, pp7-16, 2009に説明されている)、又は増加した二分岐GlcNac構造を有する抗体などの、変更されたグリコシル化型を有するバリアントIL-22R抗体も想定されている。そのような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC活性を増大し、典型的には「未変性の」ヒトFcドメインを含む等価抗体と比べADCCの10倍の増強を生じることが明らかにされている。そのような糖改変は、例えば変更されたグリコシル化酵素機構を持つ宿主細胞において抗体を発現することにより達成することができる(Yamane-Ohnuki及びSatohの文献、mAbs 1:3, 230-236, 2009に説明されている)。増強されたADCC機能を伴う非フコシル化抗体の例としては、BioWa社のPotelligent(商標)技術を用い作製されたものがある。
【0157】
本発明は、特定の実施態様において、キメララクダ科/ヒト抗体、及び特にVH及びVLドメインが完全にラクダ科動物の配列(例えば、ラマ又はアルパカ)のものであり、且つその抗体の残りが完全にヒト配列のものであるキメラ抗体を包含することができる。IL-22R抗体は、ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン、又はそれらのCDRの「ヒト化」又は「生殖細胞系列化」バリアントを含む抗体、並びにVH及びVLドメインが、IL-22R抗原もしくはその断片によるラクダ科動物の能動免疫により得られたラクダ科動物VH及びVLドメインと比べ、そのフレームワーク領域内に1つ以上のアミノ酸置換を含む、ラクダ科動物/ヒトキメラ抗体を含むことができる。そのような「ヒト化」は、出発のラクダ科VH又はVLドメイン中のミスマッチしたアミノ酸残基を、ヒト生殖細胞系列-コードされたVH又はVLドメイン中に認められた等価残基と置き換えることにより、ヒト生殖細胞系列VH又はVLドメインとの%配列同一性を増大する。
【0158】
IL-22R抗体はまた、ラクダ科動物抗体に由来した、又はそうでなければラクダ科動物遺伝子によりコードされたCDR(又は超可変ループ)が、ヒトVH及びVLフレームワーク上にグラフティングされており、その抗体の残りも完全にヒト起源である、CDR-グラフティング抗体であることもできる。そのようなCDR-グラフティングIL-22R抗体は、配列番号:6及び13(重鎖CDR3)、もしくは配列番号:4及び11(重鎖CDR2)、もしくは配列番号:2及び9(重鎖CDR1)として示されたアミノ酸配列を有するCDR、又は配列番号:20及び27(軽鎖CDR3)、もしくは配列番号:18、25及び47(軽鎖CDR2)、もしくは配列番号:16及び23(軽鎖CDR1)として示されたCDR配列のひとつを含むことができる。
【0159】
前述のヒト化、キメラ及びCDR-グラフティングIL-22R抗体、特にラクダ科動物の能動免疫から誘導された超可変ループ又はCDRを含む抗体は、関心対象のポリペプチドを作出するように操作され、且つ非限定的に細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞を含む、原核宿主細胞又は真核宿主細胞を使用し、通常の組換えDNA操作及び発現技術を用い、容易に産生することができ、それらの一部は本明細書に説明され且つ付随する実施例において例示されている。
【0160】
ラクダ科動物-由来のIL-22R抗体は、VHドメイン及び/又はVLドメインの超可変ループ又はCDRが、ヒトIL-22Rに対し生じた通常型ラクダ科動物抗体から得られるが、該(ラクダ科動物由来の)超可変ループ又はCDRの少なくとも1つは、ラクダ科動物-コードされた配列と比べ1つ以上のアミノ酸の置換、付加又は欠失を含むように操作されているバリアントを含む。そのような変化は、超可変ループ/CDRの「ヒト化」を含む。この方式で操作されているラクダ科動物由来のHV/CDRは、ラクダ科動物-コードされたHV/CDRのアミノ酸配列と「実質的に同一」であるアミノ酸配列を依然示すことができる。この文脈において、「実質的同一性」とは、ラクダ科動物-コードされたHV/CDRとの、わずかに1つ、又はわずかに2つのアミノ酸配列ミスマッチを容認することができる。IL-22R抗体の特定の実施態様は、配列番号:6及び13(重鎖CDR3)、もしくは配列番号:4及び11(重鎖CDR2)、もしくは配列番号:2及び9(重鎖CDR1)として示されたCDR配列、又は配列番号:20及び27(軽鎖CDR3)、もしくは配列番号:18、25及び47(軽鎖CDR2)、もしくは配列番号:16及び23(軽鎖CDR1)として示されたCDR配列の1つのヒト化されたバリアントを含むことができる。
【0161】
本明細書に提供するラクダ科動物-由来のIL-22R抗体は、任意のアイソタイプであることができる。ヒト治療上の使用が意図された抗体は、典型的にはIgA、IgD、IgE、IgG、IgM型であり、頻繁にはIgG型であり、その場合これらは4種のサブ-クラスIgG1、IgG2a及びb、IgG3又はIgG4のいずれかに属することができる。これらのサブ-クラスの各々において、そのFc部分内に1つ以上のアミノ酸の置換、挿入若しくは欠失を生じるか、又は例えばFc-依存型機能性を増強若しくは低下させるために、他の構造上の改変を生じることが可能である。
【0162】
(好ましいIL-22R抗体-230C9及び223G5及びそれらに関連した抗体)
本発明の好ましいIL-22R抗体及びそれらの抗原結合断片は、本明細書記載のラクダ科動物-由来の抗体のヒト化バリアント及び生殖細胞系列化バリアントである。ヒト化バリアント及び生殖細胞系列化バリアントは、高いヒト相同性を示し、好ましくはヒトIgG分子に対し、より好ましくはIgG1に対し、高い相同性を示す。特定の実施態様において、本発明の好ましいIL-22R抗体及び抗原結合断片は、本明細書において別所記載のヒト又はヒト-様カノニカルフォールドを有する、超可変ループ又はCDRを含む。
【0163】
本発明の好ましいIL-22R抗体は、特にフレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり、1以上のヒトVHドメインと、93%以上のアミノ酸配列同一性を示すことができる。代わりに又は追加して、好ましいIL-22R抗体は、特にフレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり、1以上のヒトVLドメインと、96%以上のアミノ酸配列同一性を示すことができる。本発明の好ましいIL-22R抗体は、1以上のヒトVHドメインと93%以上のアミノ酸配列同一性を、並びに特に配列同一性がフレームワーク領域にわたり決定された1以上のヒトVHドメイン及び1以上のヒトVLドメインと93%以上の組合せたアミノ酸配列同一性を示すことができる。
【0164】
高いヒト相同性のために、本明細書に提供される好ましいIL-22R抗体は、「HLAクラスII-Caucasian v3.0」設定を使用するLonza社のEpibase(商標)プラットフォーム(DRB-1スコア)により評価された、低い免疫原性を示す。特定の実施態様において、本発明のIL-22R抗体は、950未満の、好ましくは850未満の、より好ましくは750未満の、最も好ましくは650未満のDRB-1スコアを示す。
【0165】
本発明の好ましいIL-22R抗体は、ヒトIgG、好ましくはIgG1由来の、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むモノクローナル抗体である。特定の実施態様において、モノクローナル抗体のFc領域は、エフェクター機能を有さない、すなわちヌルFcである。これは、治療的ブロック抗体のために特に有用である。
【0166】
本発明の好ましいIL-22R抗体及び抗原結合断片は、それらを先行技術において説明されたIL-22R抗体よりも優れたものとする特性の組合せを示す。本発明の好ましいIL-22R抗体及び抗原結合断片は、以下の特性の組合せを示すことができる:
(i)Tyr60を含まないIL-22Rタンパク質内のエピトープに結合する;
(ii)IL-22Rタンパク質のD2ドメイン内の少なくとも一部に配置されたエピトープへの結合;
(iii)ヒトIL-22Rへの高い結合親和性;
(iv)IL-22RのIL-22-依存型活性化及びIL-22RのIL-20-依存型活性化の阻害;
(v)マウスのIL-22Rと交差反応なし;並びに
(vi)アカゲザル及び/又はカニクイザルIL-22Rとの交差反応性。
【0167】
本発明の好ましいIL-22R抗体は、重要な残基Tyr60を含まないエピトープに結合することができる。本発明の好ましいIL-22R抗体は、IL-22RのD2ドメインの少なくとも一部に配置されたエピトープに結合してよく、ここでD2ドメインは、配列番号:71のアミノ酸125からアミノ酸228である。本発明の好ましいIL-22R抗体はまた、ヒトIL-22Rへ高親和性で結合することができ、典型的にはmAbとして測定した場合に、ヒトIL-22Rに関するオフレート(ここでkoffは、Biacoreにより測定する)2.5×10-4 s-1未満を示す。特定の実施態様において、本発明の好ましいIL-22R抗体は、ヒトIL-22Rへ高親和性で結合することができ、ヒトIL-22Rに関するオフレート(ここでkoffは、Biacoreにより測定する)1×10-6 s-1~2.5×10-4 s-1の範囲を示す。特定の実施態様において、本発明の好ましいIL-22R抗体は、5×10-10 M未満のKD値を示し、ヒトIL-22Rに結合する。
【0168】
好ましいIL-22R抗体はまた、IL-22RのIL-22及びIL-20依存型活性化の両方を阻害することができ、且つ典型的にはIL-22-依存型活性化について示された阻害活性よりも4倍未満大きい、IL-20-依存型活性化に関する阻害活性を示す。好ましいIL-22R抗体は、高親和性でヒトIL-22Rに結合し、且つアカゲザル及びカニクイザル由来のIL-22R種ホモログと交差反応することはできるが、マウスのIL-22Rとは交差反応しない。
【0169】
特定の実施態様において、本発明の好ましい抗体及び抗原結合断片は、少なくとも1つの重鎖可変ドメイン(VH)及び少なくとも1つの軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここでVHドメインは:
-アミノ酸配列
【化57】
を含む又はからなる可変重鎖CDR3;
-アミノ酸配列
【化58】
を含む又はからなる可変重鎖CDR2;
-アミノ酸配列
【化59】
を含む又はからなる可変重鎖CDR1;を含み、並びに、VLドメインは:
-アミノ酸配列
【化60】
を含む又はからなる可変軽鎖CDR3、
-アミノ酸配列
【化61】
を含む又はからなる可変軽鎖CDR2、
-アミノ酸配列
【化62】
を含む又はからなる可変軽鎖CDR1:を含む。
【0170】
先に定義されたVH及びVLドメインCDR配列を有する抗体及び抗原結合断片は、配列番号:63の配列を含む又はからなるVHドメイン及び/又は配列番号:64の配列を含む又はからなるVLドメインを含んでよい。特定の実施態様において、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む抗体又はその抗原結合断片が、本明細書に提供され、この重鎖可変ドメインは、配列番号:63として示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%配列同一性を伴うVH配列を含み、並びに/又はこの軽鎖可変ドメインは、配列番号:64として示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%配列同一性を伴うVLを含む。抗体又は抗原結合断片のドメインが、参照配列に対する特定の%配列同一性により規定されている実施態様に関して、VH及び/又はVLドメインは、参照配列に存在するものと同じCDR配列を保持してよく、その結果変動は、フレームワーク領域内にのみに存在する。
【0171】
先に定義されたVH及びVLドメインCDR配列を有する抗体及び抗原結合断片は、配列番号:67のアミノ酸配列を含む又はからなる完全長免疫グロブリン重鎖、及び/又は配列番号:68のアミノ酸配列を含む又はからなる完全長免疫グロブリン軽鎖を含んでよい。特定の実施態様において、配列番号:67として示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%配列同一性を伴う重鎖、及び/又は配列番号:68として示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%、もしくは99%配列同一性を伴う軽鎖を含む抗体が、本明細書に提供される。抗体の鎖が、参照配列に対する特定の%配列同一性により規定される実施態様に関して、重鎖及び/又は軽鎖は、参照配列に存在するそのようなものと同じCDR配列を保持してよく、その結果変動は、CDR領域の外側のみに存在する。
【0172】
特定の実施態様において、本発明の好ましい抗体及び抗原結合断片は、少なくとも1つの重鎖可変ドメイン(VH)及び少なくとも1つの軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここでVHドメインは:
-アミノ酸配列
【化63】
を含む又はからなる可変重鎖CDR3;
-アミノ酸配列
【化64】
を含む又はからなる可変重鎖CDR2;
-アミノ酸配列
【化65】
を含む又はからなる可変重鎖CDR1;を含み、並びに、VLドメインは:
-アミノ酸配列
【化66】
を含む又はからなる可変軽鎖CDR3、
-アミノ酸配列
【化67】
を含む又はからなる可変軽鎖CDR2、
-アミノ酸配列
【化68】
を含む又はからなる可変軽鎖CDR1:を含む。
【0173】
先に定義されたVH及びVLドメインCDR配列を有する抗体及び抗原結合断片は、配列番号:65の配列を含む又はからなるVHドメイン及び/又は配列番号:66の配列を含む又はからなるVLドメインを含んでよい。特定の実施態様において、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む抗体又はその抗原結合断片が、本明細書に提供され、この重鎖可変ドメインは、配列番号:65として示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%配列同一性を伴うVH配列を含み、並びに/又はこの軽鎖可変ドメインは、配列番号:66として示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%配列同一性を伴うVLを含む。抗体又は抗原結合断片のドメインが、参照配列に対する特定の%配列同一性により規定されている実施態様に関して、VH及び/又はVLドメインは、参照配列に存在するものと同じCDR配列を保持してよく、その結果変動は、フレームワーク領域内にのみに存在する。
【0174】
先に定義されたVH及びVLドメインCDR配列を有する抗体及び抗原結合断片は、配列番号:69のアミノ酸配列を含む又はからなる完全長免疫グロブリン重鎖、及び/又は配列番号:70のアミノ酸配列を含む又はからなる完全長免疫グロブリン軽鎖を含んでよい。特定の実施態様において、配列番号:69として示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%もしくは99%配列同一性を伴う重鎖、及び/又は配列番号:70として示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%、もしくは99%配列同一性を伴う軽鎖を含む抗体が、本明細書に提供される。抗体の鎖が、参照配列に対する特定の%配列同一性により規定される実施態様に関して、重鎖及び/又は軽鎖は、参照配列に存在するそのようなものと同じCDR配列を保持してよく、その結果変動は、CDR領域の外側のみに存在する。
【0175】
(交差競合する抗体)
本発明はまた、本明細書に開示された抗体又は抗原結合断片と「交差競合する」(モノクローナル)抗体又はそれらの抗原結合断片も含む。
【0176】
特に、可変重鎖CDR3(HCDR3)、可変重鎖CDR2(HCDR2)及び可変重鎖CDR1(HCDR1)、可変軽鎖CDR3(LCDR3)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)及び可変軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、サイトカイン受容体IL-22Rに結合し、且つ抗体又はそれらの抗原結合断片と交差競合する抗体又はそれらの抗原結合断片が、本明細書に提供され、ここでこの組合せは、下記からなる群から選択される:
(i)配列番号:43を含むHCDR3;配列番号:41を含むHCDR2;配列番号:9を含むHCDR1;配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:59を含むLCDR2;配列番号:57を含むLCDR1;並びに
(ii)配列番号:13を含むHCDR3;配列番号:11を含むHCDR2;配列番号:9を含むHCDR1;配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:25を含むLCDR2;配列番号:23を含むLCDR1。
【0177】
特定の実施態様において、サイトカイン受容体IL-22Rに結合し、且つ少なくとも1つの重鎖可変ドメイン(VH)及び少なくとも1つの軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片と交差競合する、抗体又はその抗原結合断片が、本明細書に提供され、ここでVHドメインは:
-アミノ酸配列
【化69】
を含む又はからなる可変重鎖CDR3;
-アミノ酸配列
【化70】
を含む又はからなる可変重鎖CDR2;
-アミノ酸配列
【化71】
を含む又はからなる可変重鎖CDR1;を含み、並びに、VLドメインは:
-アミノ酸配列
【化72】
を含む又はからなる可変軽鎖CDR3、
-アミノ酸配列
【化73】
を含む又はからなる可変軽鎖CDR2、
-アミノ酸配列
【化74】
を含む又はからなる可変軽鎖CDR1:を含む。
【0178】
交差競合する抗体又はそれらの抗原結合断片は、配列番号:65の配列を含む又はからなるVHドメイン及び/又は配列番号:66の配列を含む又はからなるVLドメインを有する抗体又は抗原結合断片と競合してよい。交差競合する抗体又はそれらの抗原結合断片は、配列番号:69のアミノ酸配列を含む又はからなる完全長免疫グロブリン重鎖及び/又は配列番号:70のアミノ酸配列を含む又はからなる完全長免疫グロブリン軽鎖を有する抗体と競合してよい。
【0179】
本発明の文脈において、交差競合する抗体は、本IL-22R抗体が結合する部位と重複するか又はその部位と同一である部位でIL-22Rに結合するものである。競合する(モノクローナル)抗体又はそれらの抗原結合断片は、例えば抗体競合アッセイにより、同定することができる。例えば、IL-22R抗原又はその断片は、固形支持体に結合させることができる。次に本発明の抗体化合物又はその抗原結合断片、及びそのような本発明の抗体と競合し得ることが疑われるモノクローナル抗体又はその抗原結合断片が添加される。これら2種の分子の一方は、標識されている。標識化合物及び非標識化合物が、IL-22R抗原上の個別の離れた部位に結合する場合、標識化合物は、疑わしい競合する化合物が存在するかどうかに関わらず、同じレベルで結合するであろう。しかしこの相互作用の部位が同じ(又は重複する)場合、非標識化合物は競合し、且つ該抗原に結合した標識化合物の量は減少するであろう。非標識化合物が過剰に存在する場合、結合するとしても非常にわずかな標識化合物が結合するであろう。本発明の目的のために、競合するモノクローナル抗体又はそれらの抗原結合断片は、本抗体のIL-22Rへの結合を、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%減少するものである。そのような競合アッセイを実行する手順の詳細は、当該技術分野において周知であり、且つ例えばHarlow及びLaneの著書「抗体、実験マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、Cold Spring Harbor、New York、567-569頁、ISBN 0-87969-314-2(1988)において認めることができる。そのようなアッセイは、精製された抗体を用い、定量的に実行することができる。標準曲線は、1つの抗体の、それ自身に対する滴定により確立され、すなわち、標識物と競合物の両方で同じ抗体が使用される。非標識の競合するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片が、プレートへの標識分子の結合を阻害する能力が、滴定される。これらの結果はプロットされ、所望の結合阻害度を達成するために必要な濃度が比較される。
【0180】
(IL-22R抗体をコードしているポリヌクレオチド)
本発明はまた、本発明のIL-22R抗体又はそれらの断片をコードしているポリヌクレオチド分子、同じく宿主細胞又は無細胞発現システムにおいてこの抗体又はその断片の発現を可能にする調節配列に機能的に連結された本発明の該ヌクレオチド配列を含む発現ベクター、並びにこの発現ベクターを含む宿主細胞又は無細胞発現システムも提供する。
【0181】
特定の実施態様において、本発明のIL-22R抗体をコードしているポリヌクレオチドは、配列番号:52、73、74、75、76、77、78、79、80又は81として示されたポリヌクレオチド配列の1以上を含んでよく、この配列は、IL-22R抗体のVH又はVLドメインをコードしている。
【0182】
特定の実施態様において、本発明のIL-22R抗体をコードしているポリヌクレオチドは、IL-22R抗体の機能性VH又はVLドメインをコードしているバリアント配列を含んでよく、ここで該バリアント配列は、配列番号:52、73、74、75、76、77、78、79、80又は81のいずれか一つと、最適に並置された場合、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%又は99%の配列同一性を示す。
【0183】
この文脈において、2つのポリヌクレオチド配列間の%配列同一性は、最適な様式で並置され、且つそこで比較されるべきポリヌクレオチド配列が、これら2つの配列間の最適なアラインメントのために参照配列に関して付加又は欠失を含むような、これら2つの配列を比較することにより、決定されてよい。この%同一性は、ヌクレオチド残基が二つの配列の間で同一である同一位置の数を決定し、この同一位置の数を、比較ウインドウの位置の総数により除算し、且つこれら2つの配列間の%同一性を得るために、得られた結果を適切に100倍することにより、計算される。例えば、サイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/ gorf/bl2.htmlで入手可能な、BLASTプログラム「BLAST 2配列」(Tatusovaらの文献、「Blast 2配列-タンパク質及びヌクレオチド配列の比較のための新規ツール(Blast 2 Sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences)」、FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)を使用することが可能であり、ここで使用されるパラメータは、デフォルトで与えられるものであり(特にパラメータ「オープンギャップペナルティ」:5、及び「イクステンションギャップペナルティ」:2であり、選択されたマトリクスは、例えば本プログラムにより提唱されるマトリクス「BLOSUM 62」である)、比較されるべき2つの配列の間の%同一性は、このプログラムにより直接計算される。
【0184】
特定の実施態様において、本発明のIL-22R抗体又は抗原結合断片の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、第一及び第二のポリヌクレオチド配列の組合せによりコードされており、ここで第一及び第二のポリヌクレオチド配列は、以下の対から選択される:
(i)配列番号:52を含む可変重鎖ドメインをコードしている第一のポリヌクレオチド、及び配列番号:73を含む可変軽鎖ドメインをコードしている第二のポリヌクレオチド;
(ii)配列番号:74を含む可変重鎖ドメインをコードしている第一のポリヌクレオチド、及び配列番号:75を含む可変軽鎖ドメインをコードしている第二のポリヌクレオチド;
(iii)配列番号:76を含む可変重鎖ドメインをコードしている第一のポリヌクレオチド、及び配列番号:77を含む可変軽鎖ドメインをコードしている第二のポリヌクレオチド;
(iv)配列番号:78を含む可変重鎖ドメインをコードしている第一のポリヌクレオチド、及び配列番号:79を含む可変軽鎖ドメインをコードしている第二のポリヌクレオチド;又は
(v)配列番号:80を含む可変重鎖ドメインをコードしている第一のポリヌクレオチド、及び配列番号:81を含む可変軽鎖ドメインをコードしている第二のポリヌクレオチド。
【0185】
本発明の抗体をコードしているポリヌクレオチド分子は、例えば、組換えDNA分子を含む。用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド分子」は、本明細書において互換的に使用され、且つ1本鎖又は2本鎖のいずれかのDNA又はRNA分子、及び1本鎖の場合、その相補配列の分子をいう。核酸分子の考察において、特定の核酸分子の配列又は構造は、5'から3'方向で配列が提供される通常の慣習に従い本明細書において説明する。本発明の一部の実施態様において、核酸又はポリヌクレオチドは、「単離され」ている。この用語は、核酸分子に適用される場合、それが起源とする生物の天然のゲノム内でそれが直ぐ近接している配列から分離されている核酸分子をいう。例えば「単離された核酸」は、プラスミドベクター若しくはウイルスベクターなどのベクターに挿入されたDNA分子、又は原核細胞若しくは真核細胞若しくは非-ヒト宿主生物のゲノムDNAに組み込まれたDNA分子を含むことができる。用語「単離されたポリヌクレオチド」とは、RNAに適用される場合、主に先に定義された単離されたDNA分子によりコードされたRNA分子をいう。或いは、この用語は、その自然の状態(すなわち細胞又は組織内)ではそれが会合されるであろう他の核酸から精製/分離されているRNA分子をいうことができる。単離されたポリヌクレオチド(DNA又はRNAのいずれか)は、生物学的手段又は合成手段により直接作製され、且つその作製時に存在する他の成分から分離された分子を更に表すことができる。
【0186】
本発明の抗体の組換え生成に関して、これをコードしている組換えポリヌクレオチドは、(標準の分子生物学的技術を用いて)調製され、且つ選択された宿主細胞、又は無細胞発現システムにおいて発現するために、複製可能なベクターに挿入されることができる。好適な宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞、又はより高等な真核細胞、具体的には哺乳動物細胞であることができる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40により形質転換されたサル腎CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎株(293細胞又は懸濁培養における増殖のために継代された293細胞、Grahamらの文献、J. Gen. Virol. 36: 59 (1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaubらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Matherの文献、Biol. Reprod. 23: 243-251 (1980));マウス骨髄腫細胞SP2/0-AG14(ATCC CRL 1581;ATCC CRL 8287)又はNSO(HPAカルチャーコレクション番号85110503);サル腎細胞(CV1、ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファロー系ラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherらの文献、Annals N. Y. Acad. Sci. 383: 44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;並びに、ヒト肝癌株(Hep G2)、更にはDSMのPERC-6細胞株である。これらの宿主細胞の各々における使用に適した発現ベクターも、概して当該技術分野において公知である。
【0187】
用語「宿主細胞」は一般に、培養された細胞株をいうことは留意しなければならない。本発明の抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターが導入されているヒト全体は、「宿主細胞」の定義から明白に除外される。
【0188】
(抗体産生)
重要な態様において、本発明はまた、本発明の抗体の発現が可能である条件下で、その抗体をコードしているポリヌクレオチド(例えば発現ベクター)を含む宿主細胞(又は無細胞発現システム)を培養すること、及び発現された抗体を回収することを含む、本発明の抗体を産生する方法を提供する。この組換え発現プロセスは、ヒト治療上の使用が意図されたモノクローナル抗体を含む、本発明のIL-22R抗体を含む抗体の大規模製造において使用することができる。インビボ治療上の使用に適した組換え抗体の大規模製造に好適なベクター、細胞株及び製造プロセスは、一般に、当該技術分野において入手可能であり、且つ当業者には周知であろう。
【0189】
(IL-22R抗体の治療的有用性)
本明細書に提供されるIL-22R抗体は、医薬品として使用する、特に、その病理が細胞表面IL-22R複合体を介した調節不全のシグナリングに起因する障害の治療又は予防において使用することができる。そのような調節不全のシグナリングは、サイトカインIL-22、IL-20及び/又はIL-24のいずれか一つの過剰発現又は過剰生産に結びつけられることがある。
【0190】
用語「治療する」又は「治療」は、症状、障害、状態又は疾患の重症度を遅延、中断、阻止、管理、改善、停止、軽減することを意味するが、必ずしも全ての疾患に関連した症状、状態又は障害の全体の排除に関与しない。用語「予防」は、障害、状態もしくは疾患の開始を防止するか、又は障害、状態もしくは疾患に関連した症状の開始を防止することを意味する。
【0191】
IL-22Rを介してシグナリングするリガンドは、数多くの疾患に関与しており、且つIL-22Rは皮膚細胞及び上皮細胞上で選択的に発現されるので、重要な疾患は、非限定的に乾癬、乾癬性関節炎及びアトピー性皮膚炎を含む、皮膚及び上皮に影響を及ぼすものである。高レベルのIL-22は、ヒト乾癬プラークにおいて認められ(Bonifaceらの文献、Clin Exp Immunol. 150: 407-415 (2007))、且つ乾癬の病理におけるこのサイトカインの関与は、皮膚炎症のマウスモデルにおいて実験的に明らかにされている(Maらの文献、J Clin Invest. 118: 597-607 (2008);Van Belleらの文献、J Immunol. Jan 1;188(1):462-9 (2012))。
【0192】
特定の実施態様において、皮膚炎症疾患を治療する方法が、本明細書に提供される。特定の実施態様において、ヒト対象において乾癬、乾癬性関節炎、接触性皮膚炎又はアトピー性皮膚炎から選択された皮膚炎症疾患を治療する方法が、本明細書に提供される。これらの方法は、本明細書別所に定義されたようなIL-22R抗体又は抗原結合断片のいずれかの治療的有効量を、それを必要とする患者へ投与することを含む。本明細書に記載されたIL-22R抗体又は抗原結合断片の全ての実施態様は、本発明の治療方法に等しく適用可能である。
【0193】
特定の実施態様において、ヒト対象において、シェーグレン症候群、又は肝細胞癌、脂肪肉腫。口腔の扁平上皮癌、結腸及び結腸直腸癌、膵臓癌、小細胞及び大細胞肺癌、乳癌、膠芽細胞腫、皮膚T細胞性リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫から選択された癌を治療する方法が、本明細書に提供され、これらの方法は、本明細書別所に定義されたようなIL-22R抗体又は抗原結合断片のいずれかの治療的有効量を、それを必要とする患者へ投与することを含む。本明細書に記載されたIL-22R抗体又は抗原結合断片の全ての実施態様は、本発明の治療方法に等しく適用可能である。
【0194】
ヒト治療上の使用に関して、本明細書に記載のIL-22R抗体は、「有効量」で治療を必要とするヒト対象へ投与することができる。用語「有効量」とは、ヒト患者への単回投与量又は反復投与量での投与時に、疾患の治療における治療的有効性を提供するIL-22R抗体の量又は投与量をいう。本IL-22R抗体の治療有効量は、1回の投与量当たり約0.1mg/kg~約20mg/kgの範囲の量を含むことができる。いずれか所定の時点で投与される抗体の量は、単独での使用又は他の治療薬との併用かに関わらず、IL-22R抗体の最適量が治療過程で投与されるように、変動することができる。
【0195】
併用療法として、先に規定した疾患の治療に適した任意の他の治療と組合せて、本明細書記載のIL-22R抗体、又はそのような抗体を含有する医薬組成物を投与することも意図される。
【0196】
(医薬組成物)
本発明の範囲は、1種以上の医薬として許容し得る担体又は賦形剤と共に製剤化された、本発明のIL-22R抗体、又はそれらの抗原結合断片の1つ又は組合せを含有する医薬組成物を含む。そのような組成物は、IL-22R抗体の1つ又は組合せ(例えば、2以上の異なるもの)を含むことができる。ヒト治療上の使用のためのモノクローナル抗体の製剤技術は、当該技術分野において周知であり、且つ例えば、Wangらの文献、Journal of Pharmaceutical Sciences, 第96巻、1-26頁、2007年において検証されており、その文献の内容は全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0197】
特定の実施態様において、本医薬組成物は、筋肉内、静脈内、皮内、腹腔内の注射、皮下、硬膜外、経鼻、経口、経直腸、局所、吸入、口腔内(例えば、舌下)、及び経真皮の投与を含むが、これらに限定されるものではない、いずれか好適な投与経路による、対象への投与のために、製剤化される。好ましい実施態様において、本組成物は、皮下投与のために製剤化される。
【0198】
(参考文献の組込み)
様々な刊行物が、前述の説明において及び以下の実施例を通じて引用されており、その各々は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【実施例
【0199】
(実施例)
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照し、更に理解されるであろう。
【0200】
(実施例1:ラマの免疫化)
2頭のラマを、下記表5に示した免疫化スケジュールに従い、組換えヒトIL22Rタンパク質(R&D systems)及びヒトFn14-Fcの混合物により免疫化した。組換えタンパク質の注射後6週間で、血液を採取し、免疫化したラマの血清を使用し、免疫化前後の免疫化した抗原に対する抗体の存在を検出することにより、IL22Rに対する体液性免疫応答を測定した。両方のラマは、IL22Rに対する有意且つ特異的免疫応答を生じた。
【0201】
表5 各ラマの免疫化スケジュール
【表3】
【0202】
(実施例2:ライブラリー構築及び選択)
免疫化後、PBMCを収集し、且つRNAを抽出した。ランダムプライミングcDNA合成を実行し、且つラマVHCH1、VλCλ及びVκCκ遺伝子セグメントを、PCR増幅した。2つのアプローチを使用し、軽鎖をPCR増幅した。第一のアプローチは、制限部位リンカーを伴わないプライマーによる、プライマリーPCR増幅、引き続き制限部位(ApaLI及びAscI)でタグ付けしたプライマーによるPCR増幅を使用した。第二のアプローチに関しては、タグ付けしたプライマーを使用し、cDNAを直接増幅した。VHCH1ライブラリーを、タグ付けしないプライマーによる25サイクル、引き続きこれらのプライマーのタグ付け型(SfiI及びNotI制限部位を含む)を用い10サイクルを行う、2段階PCRを用いて構築した(WO2010/001251参照)。
【0203】
PCR-増幅した軽鎖を、ApaLI及びAscIにより消化する一方で、PCR-増幅した重鎖を、SfiI及びNotIにより消化し、且つ軽鎖ライブラリー挿入断片をApaLI及びAscI制限部位を使用し重鎖ライブラリーpCB3ベクターへクローニングすることにより、Fabライブラリーへ一緒にした。最終のFabライブラリーは、必要な多様性>109の異なるクローンであることがわかった。
【0204】
ライブラリー構築後、ファージを作製し、ヒトIL22R(Biotechne, 2770-LR)についてのファージディスプレイ選択を行った。IL22R-特異的クローンの選択に関して、ヒトIL22Rは、(i)MaxiSorp(商標)プレート(Nunc)へ直接コーティングさせるか;又は、(ii)非競合的抗-ヒトIL22R抗体(MAB2770、R&D systems)により捕獲するか;又は、(iii)ビオチン化後にニュートラアビジンにより捕獲した。IL22Rのコーティング及び捕獲は、通常2つの異なる濃度で行った:例えば、5μg/ml及び0.1μg/ml。
【0205】
選択の第1ラウンド後には、明確な濃縮は認められなかったが、第2及び第3ラウンド後に、全てのライブラリーにおいて投与量-依存式の濃縮が認められた:第2ラウンド後に100倍まで、及び第3ラウンド後に10,000倍まで。抗体捕獲されたIL22Rに対する濃縮は、直接コーティングされたIL22Rに対するものと比較して、より高いことがわかった。これは、IL22Rは、わずか25kDaであり、且つ直接コーティングはその高次構造に影響を及ぼすか又は利用可能なエピトープを制限するという事実によるであろう。従って第3の選択キャンペーンは、ビオチン化されたhIL22Rを用いて行った。
【0206】
前述の選択に加え、2回の余分な選択ラウンドを、MAB2770-捕獲したヒトIL-22Rに対する選択の第1ラウンド後に、ビオチン化された組換えマウスIL22Rに対し行った。この選択は、マウスIL22RとのFab交差反応を同定するために行った。これらの選択に関する陽性対照として、ニュートラアビジン-捕獲したヒトIL-22R-ビオチンに対する選択を、並行して行った。全般的選択プロセスは、IL22R Fabバインダーについて認められた有意な濃縮により非常に巧くいった。
【0207】
(実施例3:IL22R特異的Fabのスクリーニング)
巧くいったファージディスプレイ選択後に、ペリプラズム中に存在するFabを、IL-22のIL22Rへの結合をブロックするそれらの能力について試験した。加えて、マウスIL22R1に結合するクローンを同定するために、スクリーニングを行った。新規アプローチは、1回のスクリーニングで、リガンド競合、ヒト及びマウスの交差反応性への親和性の両方を試験することが可能である、表面プラズモン共鳴(SPR)を基に開発した。
【0208】
Biacoreチップ(CM5)の異なるチャンネルを、以下によりコーティングした:
1. なし(ブランク)、
2. Fabの競合活性を試験するためのIL-22(3000RU)(IL22Rは同時注射される)、
3. 標的への結合を試験するための、ヒトIL22R(3000RU)、
4. 交差反応性を試験するための、マウスIL22R(2500RU)。
【0209】
リガンド競合を試験するために、注射前に、低濃度の可溶性IL22R1(0.2μg/ml)を、ペリプラズム抽出物と予め混合した。この方式において、同じくチャンネル2で、リガンド-受容体相互作用をブロックするFabの能力を測定することも可能である。得られたペリプラズム抽出物を、ヒトIL22Rへの結合(チャンネル3)及びマウスIL22Rへの結合(チャンネル4)についてスクリーニングした。
【0210】
通常型ELISA(結合又は競合)と比べたこの方法の利点は、Fabのいくつかの特徴が、同時に試験されることである:1)標的ヒトIL-22Rへの結合;2)競合的活性;及び、3)交差反応性。更に、オフレートの測定は、試験したFabの親和性の強度指標をもたらす。
【0211】
この代替スクリーニング法を用いて、全ての可能性のある特徴を持つFabを、同定し、且つそれらのオフレートを基に分類した:
・競合的又は非競合的
・交差反応性及び非交差反応性
・競合的及び交差反応性
・非競合的及び交差反応性。
その後様々なクローンをシークエンシングに送った。
【0212】
(実施例4:IL-22R Fabの配列解析)
Biacore分析により同定されたクローン(例えば、リガンド競合、最大結合、低いオフレート又はマウスとの交差反応性)を、配列決定した。その後クローンをそれらのCDR3同一性を基に群別し、VHファミリーを形成した。
【0213】
合わせて、13種の異なるVHファミリーに属する67種の異なるVHを同定した。より多くの軽鎖ファミリー(80種より多いVλ及びVκ配列)を同定した。Fabの配列及び機能の大きい多様性は、免疫化及び選択が非常に巧くいったことを示している。
【0214】
特に興味深いクローンのVH及びVLドメインアミノ酸配列を、下記表6-8に示し、これらのクローンのポリヌクレオチド配列を、表9に示している。
【0215】
表6 IL-22R FabのVHドメインのフレームワーク領域及びCDR配列
【表4】
【0216】
表7 IL-22R FabのVLドメインのフレームワーク領域及びCDR配列
【表5】
【0217】
表8 IL-22R Fabの可変ドメイン配列
【表6】
【0218】
表9 IL-22R Fabのポリヌクレオチド配列
【表7】
【0219】
(実施例5:Fabの特徴決定)
最良のオフレートを有するクローンを、pCB4へ再クローニングし、発現させ、且つIMAC(ClonentechからのTalon)により精製した。これらのクローンを、Biacoreを用いて、再度試験した。更なるFab特徴決定の結果を、下記表10に示している。
【0220】
表10 IL-22R結合性Fabの特徴決定
【表8】
(*)非常に低い親和性を示唆している精製されたFab(peri又はmAbではない)においてのみ認められた
【0221】
VHファミリーの多様性、競合活性及び親和性(Biacoreで得られたkoffを用いて測定)に応じて、各ファミリー由来の1又は数種のクローンを選択し、且つ更なる特徴決定のために、モノクローナル抗体(mAb)へ再編成させた。
【0222】
(実施例6 IL-22R結合性mAbの特徴決定)
前記のように、各VHファミリーの選択的クローンを、IgG1として作製した。ヒト定常ドメインを含む個別のpUPE発現ベクターへのHC及びLC可変領域の再クローニング後、HEK293Eを、一方は全重鎖をコードし且つ第二のものは軽鎖をコードしている、2つのプラスミドにより一過性にトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞を、6日間の細胞培養期間中に、抗体を発現させた。プロテインAビーズを使用する細胞培養上清からの抗体精製の後、精製された抗体を、以下に説明したような様々な細胞株を用い、ヒト及びマウスIL22Rシグナリングを中和するそれらの能力について試験した。
【0223】
-BW-hIL22R細胞株:これは、BW胞株に由来し、且つヒトIL22Rの安定した発現を有し、IL22-依存型成長停止を誘導する。従って、この細胞は、IL22-IL22R相互作用がブロックされた場合にのみ、増殖するであろう。強力な抗体は、低い抗体濃度で増殖を促進するであろう。増殖は、チミジン取込みにより測定される。
-Baf3-mIL22R細胞株:これは、Baf3細胞株に由来し、且つマウスIL22Rの安定した発現を有し、IL22-依存型増殖を生じる。mIL22Rを中和する抗体は、抗体濃度依存様式で増殖をブロックするであろう。
-Baf3-hIL22R/IL20Rb細胞株:これは、Baf3細胞株に由来するが、hIL20RβとhIL22Rを共発現し、この細胞がIL20の存在下で増殖することを可能にする。hIL22Rを中和する抗体は、IL20により刺激された細胞の増殖をブロックするであろう。
【0224】
BW-hIL22R細胞株及びBaf3-hIL22R/IL20Rb細胞株に対する様々なIL22R mAbを試験した結果を、図4及び表11に示す。図4Aにおいて、BW-hIL22R細胞株の増殖の回復におけるIL22Rを中和する抗体の作用を、認めることができる。図4Bにおいて、IL-22R発現細胞株のIL-20増殖の阻害におけるIL22Rを中和する抗体の作用を認めることができる。WO2011/061119に説明されたIL22R抗体(280.346.TSY)は、ベンチマーク又は参照IL-22R抗体として本実験に含んだ。
【0225】
細胞に対する効能に加え、精製された抗体のインビトロ結合動態及びブロック活性は、Biacore(3000)において測定した。親和性測定に関して、組換えIL22Rを、標準コーティングプロトコール(IL22Rは、酢酸緩衝液pH4.5中に10μg/mlで注入される)を用い、Biacore CM5チップ上に200RUでコーティングした。濃度範囲で試験し且つHBSEP緩衝液pH7.4(Biacore)中に調製した抗体を、60秒間、30μl/分で注入し、HBSEP緩衝液pH7.4(Biacore)により10~20分間洗浄した。得られたセンサーグラムは、BIAevaluationソフトウェアにより解析し、且つ動態は、標準フィッティング(質量移動を伴うラングミュラー1:1)を用いて決定した。
【0226】
Biacore 3000を使用するブロック活性に関して、組換えIL22(RnD System)は、CM5チップ上に2000RUでコーティングした。抗原結合ドメイン(精製IgG、精製Fab又はFabを含むペリプラズム抽出物)を、組換えヒトIL22R(濃度0.2~1μg)と共に、プレインキュベーションし、その後hIL22コーティングされたチャンネルに注入した。結合の検出(IL22R:IL22)は、抗原結合ドメインは、競合しないことを指摘したが、結合(IL22R:IL22)が検出されない場合、これは、この抗原結合ドメインは、インビトロにおけるIL22:IL22R相互作用をブロックしたことを指摘した。Biacore及び増殖アッセイの結果は、下記表11にまとめている。
【0227】
表11 hIL22R抗体パネルの特徴決定のまとめ
【表9】
*数回の実験にわたり観察された範囲
【0228】
IL22R抗体157A2及び166G8は、ピコモル効能を示した。
【0229】
(実施例7:IL-22R mAbの種交差反応性)
IL22R mAbは、マウスIL-22R及び非ヒト霊長類IL-22Rに対する種交差反応性について試験した。
【0230】
カニクイザルIL22RのcDNAは、入手できず、カニクイザルcDNAライブラリーから抽出しなければならなかった。プライマーは、NCBIの公開されたデータベースを基にデザインした。cynoIL22R ECDに関するいくつかの配列が、公開されたデータベース(Genbank、NCBI)から入手可能であり、且つ挿入、欠失のいずれか又は両方を含んだ(図5参照)。真のカニクイザルIL22R配列に関する不確実性は、cyno cDNAからのクローニングを正当化した。
【0231】
カニクイザルIL22R ECDを、cDNAライブラリーからのPCRにより増幅し、且つpUPEベクター中のIgGκシグナルペプチドの下流及びヒトFcの上流にインフレームでクローニングした。使用したcDNAはカニクイザル由来であるが、いくつかのクローンのシークエンシングは、アカゲザルIL22Rもクローニングされたことを示した。アカゲザルIL22R-ECDは、カニクイザルにおいて認められる欠失及び挿入(図5のボックス)の非存在により、並びにアカゲザルとカニクイザルのIL22Rの間の2個のアミノ酸差異(図5の太字)により、特徴付けられた。
【0232】
cyIL22R-Fc及びrhIL22R-Fcの作製及び精製後、一次選択由来の全ての抗体のカニクイザル、アカゲザル及びマウスIL22R ECDに対する結合特異性を、ELISA及びSPR(Biacore)により試験した。モノマー性マウスIL22Rは、R&D Systems(カタログ番号4248-MR)から購入した。結果は、表12にまとめている。
【0233】
表12 IL-22R mAbの種交差反応性
【表10】
nt=試験せず
【0234】
(実施例8:エピトープマッピング)
2つの方法を利用し、IL22R mAbにより結合したエピトープを同定及び比較した:競合的ELISA及びFACS。
【0235】
(8.1 競合的ELISAを使用するエピトープマッピング)
本抗体により認識されたエピトープを、競合的ELISAにより、互いに比較した。各VHファミリーの代表的な少なくとも1つのmAbを、Maxisorpプレートにコーティングした。引き続き、ビオチン化ヒトIL22Rを、大過剰量の試験されるmAbの存在下で添加した。ビオチン化IL22Rのコーティングされた抗体への結合は、HRP-複合ストレプトアビジンを用いて検出した。可溶性mAbは、コーティングされたmAbへの結合を妨害したことを意味する、ビオチン化IL22Rが検出されない場合は、両方のmAbは、同じエピトープへ結合するか、又は重複するエピトープを有することが決定された。このエピトープマッピングは、これらのmAbの代わりにFabを用いることにより、更に精緻化した。小型Fab断片は、非常に近いエピトープのいくらかの識別を可能にした。
【0236】
様々なエピトープを、VHファミリー1-8、10、11、19及び22の抗体について同定した。エピトープマッピングは、そのような小型のタンパク質(25kDa)について、非常に広範なエピトープカバレッジを示す。図6に示したように、エピトープは、抗体が、(i)インビトロにおいてIL-22結合をブロックし、且つ細胞-ベースアッセイにおけるIL-22シグナリングを中和する(左下側四半分);(ii)インビトロにおいてIL-22結合をブロックするが、中和活性を有さない(右上側四半分);或いは、(iii)インビトロにおいてIL-22結合をブロックしないが、細胞-ベースアッセイにおける中和活性を有する(右下側四半分):かどうかに従い、群別した。ブロックされ且つ中和されるべき6種の重複するが識別可能なエピトープが、認められ(左下側四半分参照)、並びにこれら6種のエピトープ中、2種(ファミリー4及び22からのmAb)は、ベンチマーク抗体(280.346.TSY、特許出願WO2011/061119参照)と重複するエピトープを有した。これらのmAb(ファミリー4及び22由来)は、このベンチマーク抗体とは競合することができないが、ファミリー1、5、6及び7由来の全てのmAbとも競合することができるので、このエピトープは、ベンチマークとは同一ではなかった。まとめるとこれらのデータは、2つの個別のエピトープ群を示唆し、一方はベンチマークにより形成され、且つ一方はファミリー1、5、6及び7由来のmAbにより形成され、並びに第三の群(ファミリー4及び22由来のmAb)は、両方の群と重複している(図6)。
【0237】
図6の右上側四半分に示されたように、IL22Rに結合するが、IL22結合をブロックせず又はインビボにおける活性を中和しない3種の抗体が、同定された。これらの抗体は恐らく、リガンド結合又はシグナル伝達の活性化に関与しないIL22Rの領域に結合し、且つ純粋な検出に使用することができるであろう。図6の右下側四半分に示された3種の抗体は、通常、インビボにおいてIL22R活性を中和するが、インビトロにおいてIL22をブロックせず、これは新たな機能性エピトープ及び予想外の作用様式を示唆している。
【0238】
(8.2 FACS分析を使用するエピトープマッピング)
Jonesらの文献(Structure 16(9): 1333-1344 (2008))は、IL22R1の細胞外ドメインに結合したIL-22の構造を報告している。この文献において、著者らは、D1及びD2と称される2つのIL22Rドメインは、各々、サイト1A及びサイト1Bで、IL-22リガンドと相互作用することを示している(図7参照)。IL22のサイト1Aとの直接相互作用に関与したIL22R-D1における2つの重要な残基は、リジン58(K58)及びチロシン60(Y60)である。IL22R-D2のトリプトファン208(W208)は、IL22のサイト1Bとの相互作用に直接関与している(図7参照)。
【0239】
IL22R抗体及びベンチマーク抗体(280.346.TSY)の、様々なIL22R変異体を過剰発現しているBW細胞への結合を、試験した。IL22R変異体は、IL-22/IL22R相互作用に関与することがわかっているアミノ酸の変異を有する。この状況において、抗体は、ビオチン化され、細胞へ添加され、抗体のIL22Rへの結合が、フローサイトメトリー(FACS)を使い、標識したストレプトアビジンにより検出された。表13は、得られた結果をまとめている。
【0240】
表13 IL22R変異体を発現している細胞への抗体結合
【表11】
+=結合;X=IL22Rにおける変異は抗体結合の喪失を生じる
【0241】
このFACs結果は、ベンチマーク抗体280.346.TSYは、D1ドメインの残基(K58及びY60)と相互作用することを、明確に示している。同じことが、第二の対照IL-22R抗体であるAMR22にも当てはまるが、そのエピトープは完全には同じではなく、その理由はR112A変異が、AMR22結合に影響を及ぼすからである。特定のラマ抗体は280.346.TSYと競合しないことを示すELISAエピトープマッピングから予想されるように、試験した他の抗体は、280.346.TSYのIL22Rへの結合に影響を及ぼす変異により影響を受けなかった。このことは、本抗体は、恐らくD2ドメイン中の残基を含む、別のエピトープを標的とすることを確認した。実際に、IL22RのD2ドメイン中のA209D変異は、198A1の結合を抑止し、このことは198A1及びファミリー5由来の抗体は、IL22RのD2ドメインに結合することを確認している(図7B参照)。
【0242】
驚くべきことに、抗体166G8は、198A1と厳密に同じVHを共有するが、異なるVLを有し、これはA209D変異により影響を受けず、このことはVLがこの相互作用に関与していることを示唆している。推定されるように、166G8のVLは、209位置の大型残基を可能にしているのに対し、198A1のVLは可能にしない。この仮説は、アカゲザルIL22Rへのそれらの結合特異性により確認される。アカゲザルにおいて、IL22Rは、209位にセリンを有する。166G8はその位置での大型アミノ酸を可能にするので、これはアカゲザルIL22Rに結合することができるのに対し、198A1は、大型残基を可能にしないので、これはrhIL22Rに結合することができない。
【0243】
(実施例9:細胞-ベースアッセイにおけるIL20及びIL24シグナリングの中和)
IL22R抗体を、IL22R及びIL20Rbを共発現している細胞において、IL-20及びIL-24依存型シグナリングをブロックするそれらの能力について試験した。機構上の(mechanistic)差異が、IL-22、IL-20及びIL-24依存型受容体活性化の間に存在する。IL-22は、IL22Rへの最初の結合、共-受容体IL10R2動員の駆動、及びこの三量体複合体の活性化により、シグナリングを誘導すると考えられている。IL-20に関して、このサイトカインは、最初に共-受容体(IL20R2)に結合し、その後IL22Rを動員し、且つ三量体複合体を活性化すると考えられている。最後にIL-24に関して、どのように受容体複合体が動員され且つ活性化されるかは明らかではなく、IL-24が結合する場所も明らかではない。
【0244】
(9.1 IL-24シグナリング)
いくつかの細胞株を使用し、IL-24依存型シグナリング、Baf3-hIL22R/20R2又はBaf3-mIL22R/20R2を試験した。IL-24はこれらの細胞株の増殖を誘導し、Baf3-hIL22R/20Rb細胞に関してOD 0.17~1.5の範囲で、及びBaf3-mIL22R/20Rb細胞に関して0.15~0.8の範囲で、ヘキソサミニダーゼレベル(細胞をカウントするために使用した読み取り)により測定された特定のウインドウを伴った。試験した抗体は、IL-24誘導した増殖に対する作用を有さなかった。これらの結果は、IL-24は、IL22及びIL-20の非常に異なる部位への結合により、IL22R活性化の完全に異なる様式を有すること、又はIL22Rは、試験した細胞株におけるIL-24シグナリングに関与していないこと(及びこのアッセイは、中和活性を予測しない)のいずれかを示唆している。
【0245】
(9.2 IL-20シグナリング)
Baf3-hIL22R/IL20Rb細胞株は、Baf3細胞株に由来するが、hIL20Rβと共にhIL22Rを共発現し、この細胞のIL-20の存在下での増殖が可能である。hIL22Rを中和する抗体は、IL-20により刺激された細胞の増殖をブロックするであろう。280.346.TSY及びAMR22ベンチマーク抗体と並行してラマ抗体を試験して生じた結果を、図8に示す。
【0246】
Baf3-hIL22R/IL20Rb上のIL-20増殖は、BW-hIL22RのIL-22増殖アッセイと並行して試験し、これら2種のサイトカイン間の良好な比較が可能であった。最大3つの独立した実験の結果を、表14に示す。
【0247】
表14 IL22RによるIL-22及びIL-20シグナリングのブロックにおける抗体の効能
【表12】
*最大3つの実験について観察された範囲(IL-20について2250、2292、2301及びIL-22について2253、2292、2301、2428);nc:競合せず;nt:試験せず;cs:シャッフルされた鎖
【0248】
ファミリー#1、#4及び#5由来の抗体全ては、IL-20及びIL-22の両方をブロックすることができると結論付けることができる。IL-22及びIL-20-刺激された増殖の間での効能を比較することは、サイトカイン濃度、受容体数及び細胞内の生物学的変動に応じて異なる感度の差異のために、困難である。しかし、ほとんどの抗体は、IL-20シグナリングのブロックと比べ、IL-22シグナリングのブロックがより強力であることが認められた。興味深い例外は、IL-22及びIL-20のブロックに対し同じ効能を有する157A2であった。
【0249】
(実施例10:リード抗体の選択及び生殖細胞系列化)
最も興味深い抗体の親和性(IL22シグナリングの中和)を、軽鎖シャッフリングにより更に改善した。軽鎖シャッフリング時に、選択された抗体のVHCH1を、それからVHCHが認められたラマと同じラマ由来の軽鎖のライブラリーと一緒にした。次に数ラウンドのオフレート(off-rate)ファージディスプレイ選択を行い、最良の親和性を有するVHCH:VLCL対を同定した。抗体166G8の場合、改善された結合動態を伴う数種のクローンが認められ、これは198A1を含むが、残念なことにこのクローンは、そのアカゲザル交差反応性のほとんどを喪失しており、従って依然166G8が、開発のためのファミリー#5の最も魅力的な候補であった。157A2(ファミリー#4由来)の場合、157A2と比べ改善された親和性を伴う数種のFab(例えば218A7)が、同定された。以下の抗体は、更なる開発の見込みがある。これらの抗体は、効能、種交差反応性及びエピトープ又は作用様式を基に選択された。
・218A7(157A2、ファミリー#4の改善されたバリアント)-この抗体は、IL-22及びIL-20に対し非常に良い効能(nM以下)を有し、非-ヒト霊長類IL22Rと交差反応するが、マウスIL22Rとは交差反応しないことがわかった。157A2は、280.346.TSYベンチマーク抗体と異なるが重複するIL22R上のエピトープを有する事がわかった。
・166G8(ファミリー#5)-この抗体は、高い効能を有する(低pM)ことがわかり、且ついくらかの種交差反応性を有し、その理由はこれは、アカゲザルIL22Rには結合する(しかしカニクイザルにもマウスのIL22Rにも結合しない)からである。
【0250】
見込みのあるIL22R抗体の特徴を、下記表15にまとめた。
【0251】
表15 生殖細胞系列化のために選択されたラマIL22R抗体の特徴
【表13】
h=ヒト;cyno=カニクイザル;rh=アカゲザル;m=マウス
【0252】
(実施例11:IL-22R抗体218A7及び166G8の生殖細胞系列化)
生殖細胞系列化は、その内容が全体で本明細書中に組み込まれている、国際特許出願WO2011/080350に記載されているように、実行した。CDRは、同一対を持つ同じVH及びVLファミリー由来の抗体において変動することがわかった、特定の別の位置との可能性のある翻訳後修飾を除くために、変異させた。ラマ抗体218A7及び166G8から作製された生殖細胞系列化抗体のVHドメイン及びVLドメインを、それらのヒト配列との同一性について評価した。ベンチマーク抗体280.346.TSYとの比較も行った。結果を、下記表16に示している。
【0253】
表16:218A7及び166G8から作製された生殖細胞系列化IL-22R抗体のヒト同一性
【表14】
* Fab断片に関する決定
【0254】
抗体230C9を、抗体218A7の生殖細胞系列化バリアントとして選択し、且つ抗体223G5を、抗体166G8の生殖細胞系列化バリアントとして選択した。抗体218A7、230C9及び223G5のVH及びVLドメイン配列を、下記表17-21に示している。(166G8の配列は、先の表6-9に示している)。
【0255】
表17 218A7、230C9及び223G5のVHドメインのフレームワーク領域及びCDR配列
【表15】
【0256】
表18 218A7、230C9及び223G5のVLドメインのフレームワーク領域及びCDR配列
【表16】
【0257】
表19 218A7、230C9、223G5の可変ドメイン配列
【表17】
【0258】
表20 230C9及び223G5の重鎖及び軽鎖配列
【表18】
配列の影付き部分は、重鎖及び軽鎖の定常領域を示す。重鎖の定常領域中の太字で示された“Q”残基は、“N”からの変異を表す。
【0259】
表21 218A7、230C9及び223G5の可変ドメイン配列/重鎖及び軽鎖配列をコードしているポリヌクレオチド配列
【表19】
【0260】
(実施例12:生殖細胞系列化抗体230C9及び223G5の特徴決定)
(12.1 生殖細胞系列化mAbの結合親和性)
230C9及び223G5抗体の親和性を、SPR(Biacore 300)を用いて測定した。簡単に述べると、ヒトIL22R(Biotechne, 2770-LR)の250RUを、標準方法(酢酸緩衝液pH4.5中濃度2μg/mlでのIL22RのEDCカップリング)を用い、CM5チップ上にコーティングした。次に様々な濃度の抗体を、HBSEP+緩衝液(pH7.4)へ2分間かけて注入した。この結合を、10分間の洗浄(HBSEP+)期間中、モニタリングした。
【0261】
ラングミュラー1:1フィッティングを用いるBIAevaluationソフトウェアを使用し計算した親和性を、下記表22に示している。
【0262】
表22 生殖細胞系列化抗体の結合親和性
【表20】
【0263】
抗体223G5及び224C4(両方共166G8の生殖細胞系列化バリアント)は、IL-22Rについて非常に高い親和性(10~20pM)を示したのに対し、抗体230C9は、0.13nMの親和性を有した。これらの生殖細胞系列化抗体は全て、参照抗体280.346.TSY(0.69nM)よりもより高い親和性を示した。
【0264】
親和性測定時に二価分子がリガンドとして使用される場合に認められる潜在的なアビディティ作用のために、逆の(reverse)実験設定で試験した。この設定において、抗体は標準方法に従い250RUにコーティングした。モノマー性ヒトIL22Rを、異なる濃度で添加し、且つラングミュラー1:1フィッティングを用いるBIAevaluationソフトウェアを使用し計算した親和性を、下記表23に示している。
【0265】
表23 ヒトIL-22Rへの230C9の結合親和性
【表21】
【0266】
残念なことに、抗体223G5は、コーティングプロセスにより失活し、この設定を使用しては、親和性を決定することはできなかった。
【0267】
230C9の親和性は、親和性測定の設定とは一貫して独立しており、このことは両方の条件で使用した低いコーティングは、任意のアビディティ作用を低下するのに十分であることを示している。
【0268】
(12.2 IL-22及びIL-20依存型IL-22R1活性化及びシグナリングの阻害)
抗体218A7(生殖細胞系列化ではない)、及び230C9(生殖細胞系列化された同等物)を、他の生殖細胞系列化抗体と共に、IL-22R1を介したIL-22及びIL-20-媒介性シグナリングを中和するそれらの能力について試験した。試験は、実施例6及び実施例9において説明した細胞-ベース増殖アッセイを用いて行った。
【0269】
図9Aは、218A7及び230C9の、IL-22R1のIL-22-依存型活性化を中和する能力を示している。図9Bは、230C9の異なるバッチの、IL-22R1のIL-20-依存型活性化を中和する能力を示している。試験した抗体の相対強度は、下記表24及び表25に示している。
【0270】
表24 IL22R(BWhIL22R細胞株)を介したIL-22シグナリングのブロックにおける218A7及び230C9抗体の効能
【表22】
【0271】
表25 IL22R(Baf3hIL22R/IL20Rb細胞株)を介したIL-20シグナリングのブロックにおける230C9抗体の効能
【表23】
* 230C9抗体の異なる精製バッチ
【0272】
(12.3 確認のエピトープマッピング)
生殖細胞系列化された抗体230C9及び223G5に関する確認のエピトープマッピングを、実施例8.2に説明されたように、FACS分析を用いて実行した。抗体230C9は、IL-22R1との結合に関して、ベンチマーク抗体280.346.TSY及び同じく223G5と、競合することがわかった。抗体223G5は、ベンチマーク抗体280.346.TSYと、IL-22R1への結合に関して競合しなかった。
【0273】
FACS分析の結果は、先に説明した増殖アッセイの結果と一緒にし、エピトープに関する結論を、図10に示した。指摘したように、(i)抗体230C9は、個別のエピトープに結合するが、280.346.TSYにより結合されたエピトープと比べ重複する;並びに、(ii)抗体223G5は、280.346.TSYとは別のエピトープに結合する:と、結論付けることができる。
【0274】
FACS分析はまた、実施例8.2に説明されたように実行し、様々なIL-22R変異体への生殖細胞系列化された抗体の結合を試験した。結果は、下記表26に示している。
【0275】
表26 IL22R変異体を発現している細胞への抗体結合
【表24】
+/-=R112Aを有する変異体の部分的認識
【0276】
これらの結果は、抗体230C9及び223G5は、Y60を含まないエピトープに結合することを確認している。変異A209Dは、223G5の結合に影響を及ぼすことが認められたが、ラマ抗体166G8の結合は、この変化により影響を受けなかった。これは恐らく、A209D変異に対する166G8の感度の検出が難しいこと(166G8は1回のみ試験した)が原因であり、166G8の生殖細胞系列化時のCDR配列におけるわずかな変化がおそらく原因であろう。これらのデータは、280.346.TSYはIL22RのD1に結合すること、223G5はIL22RのD2へ結合すること、並びに230C9は、重複を有するが別のエピトープを有することを確認している。
【0277】
(12.4 生殖細胞系列化抗体の種交差反応性)
抗体230C9は、ヒトIL-22Rに結合するが、マウス、ラット及びウサギ由来のIL-22Rとは交差反応性を示さない。これは、ベンチマーク抗体280.346.TSYと比べて、別のエピトープを有する230C9と一致している-先の12.3参照。
【0278】
細胞上に一旦発現されたcyno-IL22Rに結合する抗体の能力は、異なる種由来のIL22R細胞外ドメイン(ECD)がヒト膜貫通ドメイン(TM)及びヒト細胞内ドメイン(ID)に融合されたキメラ構築体を作製することにより、試験した。一過性トランスフェクションの効率は大きくないが、FACS分析は、FACSプロット上の広幅ピークの存在により観察された、230C9-N297Q抗体は、cynoIL22R_ECD-ヒトTM_ヒトICDに結合されたが、223G5-N297Qは結合されなかったことを示した(矢印が広幅ピークを示している図11参照)。
【0279】
更に、同じくキメラ構築体が、HEK細胞へSTAT3-レポーター遺伝子と共トランスフェクションされた場合に、ヒトIL22の添加後のIL22Rの活性は、抗体の中和の存在及び非存在下で測定することができた。下記表27に表した結果は、試験した全ての抗体は、ヒトIL22Rを中和することができること、並びに霊長類の交差反応性(230C9及び280.346.TSY)のみが、カニクイザル及びアカゲザルのキメラに結合しその活性をブロックすることができることを示しており、これはこれらの抗体は、霊長類の研究において機能を果たすであろうことを示唆している。
【0280】
表27 ヒト、アカゲザル及びカニクイザルIL-22RとのIL-22R抗体の交差反応性
【表25】
【0281】
(12.5 免疫原性分析)
生殖細胞系列化抗体の免疫原性を、予測ツールを用いて評価した。特に、可変ドメイン中の可能性のある免疫原性ペプチドの存在は、「HLAクラスII-コーカシアンv3.0設定(HLA class II-Caucasian v3.0” settings)」を使用する、Lonza社のEpibase(商標)プラットフォーム(DRB-1スコア)を用いて評価した。このプラットフォームは、VH及びVL配列から誘導された全ての10-merペプチドのHLA結合特異性を分析する。プロファイリングは、アロタイプレベルで、15のDRB1、6のDRB3/4/5、12のDQ及び7のDPで、すなわち合計40のHLAクラスII受容体で行った。DRB1、DRB3/4/5の強力及び中等度のバインダーが同定され、並びにDQ及びDPエピトープの強力なバインダーも同定された。エピトープのカウントは、強力及び中等度の親和性DRB1バインダーについて個別に行った。同じ群の複数のアロタイプに結合するペプチドは、1としてカウントした。最悪の場合の免疫原性リスクを表している見込みスコアは、以下のように計算した:スコア=Σ(エピトープカウント×アロタイプ頻度)。別の言い方をすると、特定のHLAアロタイプに影響を及ぼすエピトープの数を、影響を受けたアロタイプのアレル頻度で積算する。所定の配列に関して、これらの積(products)は、コーカシアン集団の2%以上に存在する本試験で使用した全てのDRB1アロタイプについて合計した。
【0282】
結果を、下記表28に示している。
【0283】
表28 様々な他の市販の抗体と比較した生殖細胞系列化IL-22R抗体のDRB1スコア
【表26】
【0284】
表28から認めることができるように、抗体230C9は、非常に低いDRB1スコアを有し、他の市販の抗体よりも十分に低いのに対し、223G5は、他の市販のヒト又はヒト化抗体と同程度の低いDRB1スコアを有す。これらのデータは、230C9(及び223G5)は、好ましい免疫原性プロファイルを有することを示唆している。
【0285】
(実施例13:抗体230C9-N297Qのカニクイザルにおける薬物動態(PK)試験)
抗体クローン230C9の薬物動態分析を、実施した。2匹のカニクイザルに、単回10mg/kg投与量の抗体を、2時間かけて、静脈内注射した。試料を、様々な時点で採取し、ELISAにより、mAbの血漿濃度について試験した。具体的には、マイクロタイタープレート(Maxisorb Nunc)を、PBS中2μg/mlの組換えhIL22R(Biotechne;カタログ番号2770-LR)により、4℃で一晩コーティングした。プレートを、PBS-Tweenにより3回洗浄し、且つ250μlのPBS-1%カゼインにより、2時間ブロックした。PBS-Tweenにより3回洗浄した後、試料に適用した。全ての希釈物を、1%プールした血漿(これは3匹のナイーブカニクイザル由来のプールである)中に作製した。これらの試料を、RTで2時間結合させた。次にプレートを、PBS-Tweenにより5回洗浄し、且つHRPにカップリングしたヤギビオチン化した抗-ヒトIgG重鎖及び軽鎖サル吸着したポリクローナル抗体を、50,000倍希釈で適用し(Bethyl、カタログ番号:A80-319P)、且つRTで1時間結合させた。次にプレートを、PBS-Tweenにより5回洗浄し、且つs(HS)TMB weakener (SDT, #sTMB-W)を添加した。染色を10分間進行させ、次に1N H2SOにより停止し、その後光学濃度を450nmで測定した。試料は、3回分析し、且つ230C9-N297Q(動物へ注射したものと同じバッチに由来)を、標準曲線に使用した。
【0286】
2-コンパートメントIV-注入モデル分析のための関連のあるPKパラメータは、表29に示している。230C9-N297Q抗体に関する薬物動態プロファイルは、図12に図示した(示された結果は、2匹のサルの平均の結果である)。このデータは、本抗体は、長い平均滞留時間(MRT)を有することを明確に示している。興味深いことに、本抗体は、半減期を改善するためのいかなる修飾も伴わない非-グリコシル化IgG1 Fc領域を含むが、230C9-N297Qの半減期は、驚く程長かった。具体的には、230C9-N297Qは、約19.4日間の半減期を有した。従って本発明の抗体の延長された半減期は、Fab領域の特性に起因するように見える。
【0287】
表29 PKパラメータ
【表27】
【0288】
更なるPK試験を、合計10匹のサルに230C9-N297Qの単回IV投与量(0.1、1、3、10及び30mg/kg)を投与することにより、カニクイザルにおいて実行した。カニクイザルにおける動態は、2-コンパートメント非線形動態を示した。10mg/kgよりも低い投与量で、クリアランス(CL)は、投与量の低下と共に増加し、これは投与量の減少に伴い、曝露(AUC)における投与量比例した減少を超える低下を生じた。これは、モノクローナル抗体に関する周知の現象である(表30及び図13参照)。
【0289】
表30 1投与群につき2匹のサル及び5投与群を基にしたPKパラメータ
【表28】
【0290】
ヒト薬物動態を予測するためのこれらのパラメータのスケーリングは、他のヒトIgG1分子からの経験的知見を基に予想することができるものに類似したヒトプロファイルを生じ、ヒト半減期(T1/2)約18日間の推定値を含み、これは先に報告された先行する研究と一致する。
【0291】
(実施例14:カニクイザルにおける抗体230C9 N297Qの薬力学(PD)作用)
抗体230C9 N297Q(ARGX-112)の薬力学作用を、異なる投与量(0.3、1、3、10、30mg/kg)の230C9のIV注射により、サルに投与することにより、カニクイザルにおいて分析した。同じくサルの皮膚切片を、イミキモド(IMQ)により処理し、230C9 N297Qの皮膚炎症に対する作用を評価した。IMQは、マウスにおいて皮膚炎症を誘導することが報告されており(Van Belleらの文献、2012, J Immunol. Jan 1;188(1):462-9)、且つまた一つの報告は、非-ヒト霊長類における(Poirierらの文献、2016, Exp Dermatol. Mar;25(3):233-4;Poirierらの文献、2016, J Immunol. Jan 1;196(1):274-83)、及びヒトにおける(Vinterらの文献、2015, Br J Dermatol. Feb;172(2):345-53)、同様の効果も明らかにしている。
【0292】
IMQ処置の5日後、皮膚のIMQ非処置領域及び皮膚のIMQ処置領域から、生検標本を採取し、230C9 N297QのIMQ-誘導した作用に対する効果を評価した。これらの効果は、表皮の厚さ及び表皮中の核増殖の頻度(Ki67頻度)を比較することにより、評価し、且つこれらの結果を図14に示した。抗体230C9 N297Qの増加する投与量は、表皮の厚さの正常化を可能にし(図14A)、且つKi67陽性核の頻度を低下した(図14B)。EC50は、およそ3mg/kgであった。
【0293】
(実施例15:カニクイザルにおける230C9 N297Qの単回IV注入後の血清PK及び皮膚外植片PD反応関係)
皮膚標的の接触状態(engagement)を、抗体230C9 N297Qの単回15分間の静脈内注入(5ml/kg)を投与したカニクイザルにおいて調べた。雌サルを、試験1日目に、未処置又は1、5もしくは30mg/kgの230C9への曝露のいずれかに配置した(1群につき3匹の動物)。血液を、様々な時点で、全ての投与した動物から収集し(3×150μL)、最終試料は7日目に採取した。血清試料(1%v/v)を、ELISAにより230C9 N297Q曝露レベルについて試験した。
【0294】
皮膚パンチ生検標本(3mm)を、各動物から、-1日目(投与前)及び7日目に採取し、rhIL-22の存在(-1日目、7日目)又は非存在(7日目)下で、加湿した空気/CO2(95%/5%)中、37℃で24時間インキュベーションし、その後qPCRにより、FLG2 mRNAレベルを測定した。結果を、図15に示している。
【0295】
rhIL22による刺激は、総皮膚FLG2 mRNAレベルの5倍の減少を生じた。IL-22-媒介性FLG2転写産物の抑制は、230C9 N297Q-処置動物において有意に回復し、これは全ての投与量群における有意な皮膚曝露を示唆している。
【0296】
(実施例16:生存ヒト及びカニクイザルのエクスビボ皮膚外植片における230C9 N297Qの効果)
健常なヒトドナーから新たに供給された腹部皮膚を使用し、抗体230C9 N297QのrhIL-22誘導したDEFB4 mRNAレベルを阻害する能力を評価した。
【0297】
皮膚パンチ生検標本(3mm)を、96-ウェル組織プレート中の垂直な位置に配置し、ヒドロコルチゾン非含有ヒトケラチノサイト増殖用サプリメント(HKGS)(Invitrogen)を補充した100μL EpiLife培地中で、気液境界面で培養した。
【0298】
これらの試料を、漸増濃度の抗体230C9 N297Qと共に、加湿した空気/CO2(95%/5%)中37℃で24時間インキュベーションし、その後20ng/ml rhIL-22(R&D Systems)で刺激し、更に37℃で24時間インキュベーションした。皮膚溶解液中の相対DEFB4遺伝子発現レベルを、バリデートされた遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)及びABI PRISM(登録商標)7900HT配列検出システムを使用し、リアルタイム定量的PCR(qPCR)により決定した。
【0299】
図16は、一つの代表的実験からのrhIL-22誘導したDEFB4 mRNAレベルの投与量依存型の減少を示している(EC50 [CI95%]=4nM [0.5-29nM];4名のドナー)。230C9 N297Qプレ-インキュベーション時間が48時間まで増加した場合に、類似の効能が得られ、これはIL-22RA結合平衡に到達したことを示唆している。アイソタイプ対照抗体は、DEFB4 mRNAレベルのrhIL-22媒介性増加に対する効果を有さなかった。
【0300】
カニクイザル(マカカ・ファスシキュラリス)から新たに単離した皮膚生検標本(3mm)において、DEFB4遺伝子は、rhIL-22により調節されなかった。対照的に、FLG2及びLORの両方は、ヒト皮膚外植片設定について説明されたものと同じプロトコールを用い、rhIL-22との24時間インキュベーション後ダウンレギュレーションされた。これらの反応は、図17に示したように、抗体230C9 N297Qとの24時間プレ-インキュベーションにより、完全にブロックされた(EC50=11nM;両方の遺伝子)。
【0301】
(実施例17:ヒトケラチノサイトにおける230C9 N297Qの有効性)
このアッセイは、初代ヒトケラチノサイトでの機能アッセイにおけるIL-22R抗体の効能を試験するためにデザインした。これらの細胞は、IL-4、IL-13、IL-22(全て10ng/mL)及びIFN-γ、1ng/mLのサイトカイン混合物により48時間刺激し、その後培養上清中のCCL2のレベルを、MSDプラットフォームを用いて調べた。
【0302】
ケラチノサイトを、以下の増殖サプリメントを添加したEpiLife培地(Life Technologies)中で懸濁した:EGF;BPE;インスリン;トランスフェリン及びゲンタマイシン/アンホテリシン。細胞を、384ウェルのホワイトプロキシプレート(Perkin Elmer)に播種し、37℃、5%CO2/95%空気中で2時間インキュベーションした。次に細胞を、80nl抗体(図18に示した異なる濃度で)又はビヒクルで処理した。次に40μlの刺激混合物(IL-4、IL-13、IL-22(R&D systems、全て最終濃度10ng/mL)及びIFN-γ(R&D systems、最終濃度1ng/mL))を添加し、プレートを、37℃、5%CO2/95%空気中で2日間インキュベーションした。対照ウェルは、IL-4及びIL-13(両方共10ng/mL)及びIFN-γ、1ng/mLの混合物で処理し、且つIL-22シグナリングの100%阻害を規定した。培養上清中のCCL2濃度は、MSD CCL2キット(Mesoscale、カタログ番号K151AYB-2)により測定した。細胞の生存度は、PrestoBlue(登録商標)試薬により測定した。
【0303】
230C9 N297Qの効能は、5つの実験で試験し、EC50値0.10nM[0.042~0.24nM]での、CCL2レベルの投与量-依存性阻害を示した。1つの実験からの代表的実験結果を、図18に示している。
【0304】
本発明は、本明細書記載の具体的実施態様による範囲に限定されるものではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、先の説明及び添付図面から、当業者には明らかになるであろう。そのような改変は、添付された請求の範囲内に収まることが意図されている。更に、本明細書記載の全ての実施態様は、広く適用可能であり、且つ適切であるならば、任意の及び全ての一貫性のある実施態様と組合せ可能であると考えられる。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
ヒトIL-22Rタンパク質に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、該抗体又はその抗原結合断片が、Tyr60を含まないIL-22Rタンパク質内のエピトープに結合する、前記抗体又は抗原結合断片。
(態様2)
前記IL-22Rタンパク質のD2ドメイン由来のアミノ酸を含むこのタンパク質内のエピトープに結合する抗体又は抗原結合断片であって、ここでD2ドメインが、配列番号:71のアミノ酸125からアミノ酸228である、態様1記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様3)
ヒトIL-22Rに高親和性で結合する、態様1又は態様2記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様4)
少なくとも1つの重鎖可変ドメイン(VH)及び少なくとも1つの軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又は抗原結合断片であって、ここで該VHドメイン及びVLドメインが、mAbとして試験される場合、2×10 -3 s -1 未満のヒトIL-22Rに関するオフレート(k off )を示す、態様3記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様5)
少なくとも1つの重鎖可変ドメイン(VH)及び少なくとも1つの軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又は抗原結合断片であって、ここで該VHドメイン及びVLドメインが、mAbとして試験される場合、1×10 -6 s -1 ~2×10 -3 s -1 の範囲のヒトIL-22Rに関するオフレート(k off )を示す、態様3記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様6)
IL-22のヒトIL-22Rへの結合をブロックする、態様1~5のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様7)
IL-22RのIL-22-依存型活性化又はIL-22RのIL-20-依存型活性化を阻害する、態様1~6のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様8)
IL-22RのIL-22-依存型活性化及びIL-22RのIL-20-依存型活性化を阻害する、態様1~6のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様9)
少なくとも1つの重鎖可変ドメイン(VH)及び少なくとも1つの軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又は抗原結合断片であって、ここで該VHドメイン及びVLドメインが、mAbとして試験される場合、500pM未満のIL-22-依存型活性化のIC 50 及び/又は500pM未満のIL-20-依存型活性化のIC 50 を示す、態様7又は態様8記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様10)
マウスのIL-22Rと交差反応しない、態様1~9のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様11)
高いヒト相同性を有する、態様1~10のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様12)
重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又は抗原結合断片であって、ここで該VH及びVLドメイン、又はそれらの1以上のCDRが、ラクダ科動物-由来である、態様1~11のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様13)
前記VHドメイン及び/又はVLドメインが、ラクダ科動物-由来のVH又はVLドメインのヒト化された又は生殖細胞系列化されたバリアントである、態様11又は態様12記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様14)
配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:36を含むHCDR2;及び、配列番号:34を含むHCDR1:の可変重鎖CDR配列の組合せ、並びに配列番号:54を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;及び、配列番号:16を含むLCDR1:の可変軽鎖CDR配列の組合せを含む、態様1~13のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様15)
配列番号:43を含むHCDR3;配列番号:41を含むHCDR2;及び、配列番号:9を含むHCDR1:の可変重鎖CDR配列の組合せ、並びに配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:59を含むLCDR2;及び、配列番号:57を含むLCDR1:の可変軽鎖CDR配列の組合せを含む、態様1~13のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様16)
配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:4を含むHCDR2;及び、配列番号:2を含むHCDR1:の可変重鎖CDR配列の組合せ、並びに配列番号:20を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;及び、配列番号:16を含むLCDR1:の可変軽鎖CDR配列の組合せを含む、態様1~13のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様17)
配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:4を含むHCDR2;及び、配列番号:2を含むHCDR1:の可変重鎖CDR配列の組合せ、並びに配列番号:20を含むLCDR3;配列番号:18を含むLCDR2;及び、配列番号:16を含むLCDR1:の可変軽鎖CDR配列の組合せを含む、態様1~13のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様18)
配列番号:13を含むHCDR3;配列番号:11を含むHCDR2;及び、配列番号:9を含むHCDR1:の可変重鎖CDR配列の組合せ、並びに配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:25を含むLCDR2;及び、配列番号:23を含むLCDR1:の可変軽鎖CDR配列の組合せを含む、態様1~13のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様19)
前記抗体又はその抗原結合断片が:
(i)配列番号:29又は31のアミノ酸配列を含む又はからなるVH;
(ii)配列番号:29又は31のアミノ酸配列を含む又はからなるVHの親和性バリアント又はヒト生殖細胞系列化バリアント;もしくは、
(iii)配列番号:29又は31のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるVH:
から選択される重鎖可変ドメイン(VH)を含む、態様1~18のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様20)
前記抗体又はその抗原結合断片が:
(i)配列番号:30、32又は62のアミノ酸配列を含む又はからなるVL;
(ii)配列番号:30、32又は62のアミノ酸配列を含む又はからなるVHの親和性バリアント又はヒト生殖細胞系列化バリアント;もしくは、
(iii)配列番号:30、32又は62のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるVL:
から選択される軽鎖可変ドメイン(VL)を更に含む、態様19記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様21)
前記抗体又はその抗原結合断片が:
(i)配列番号:63のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号:64のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含むVL;
(ii)配列番号:65のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号:66のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含むVL:
から選択される重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)の組合せを含む、態様1~18のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様22)
(i)配列番号:67のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号:68のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(ii)配列番号:69のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号:70のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖:
から選択された少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含む、態様1~18のいずれか一項記載の抗体。
(態様23)
IL-22Rに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、ここで該抗体又は抗原結合断片が、配列番号:2、4、6、9、11、13、34、36、41、43又はそれらの配列バリアントから選択された少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変ドメインを含み、ここで該配列バリアントが、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換を含む、前記抗体又はその抗原結合断片。
(態様24)
前記重鎖可変ドメインが:
(化1)
、又はその配列バリアント、
(化2)
、又はその配列バリアント、
(化3)
、又はその配列バリアント:から選択された重鎖CDR3を含み;
ここでこの配列バリアントが、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換を含む、態様23記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様25)
前記重鎖可変ドメインが:
(化4)
、又はその配列バリアント、
(化5)
、又はその配列バリアント、
(化6)
、又はその配列バリアント、
(化7)
、又はその配列バリアント:から選択された重鎖CDR2を含み;
ここでこの配列バリアントが、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換を含む、態様23又は態様24記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様26)
前記重鎖可変ドメインが:
(化8)
、又はその配列バリアント
(化9)
、又はその配列バリアント
(化10)
、又はその配列バリアント:から選択された重鎖CDR1を含み;
ここでこの配列バリアントが、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換を含む、態様23~25のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様27)
前記抗体又は抗原結合断片が、配列番号: 16、18、20、23、25、27、47、54、57、59又はそれらの配列バリアントから選択された少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変ドメインを含み、ここで該配列バリアントが、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換を含む、態様23~26のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様28)
前記抗体又は抗原結合断片が:
(化11)
、又はその配列バリアント
(化12)
、又はその配列バリアント
(化13)
、又はその配列バリアント:から選択された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含み:
ここでこの配列バリアントが、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換を含む、態様27記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様29)
前記抗体又は抗原結合断片が:
(化14)
、又はその配列バリアント
(化15)
、又はその配列バリアント
(化16)
、又はその配列バリアント
(化17)
、又はその配列バリアント:から選択された軽鎖CDR2を含む軽鎖可変ドメインを含み;
ここでこの配列バリアントが、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換を含む、態様27又は態様28記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様30)
前記抗体又は抗原結合断片が:
(化18)
、又はその配列バリアント
(化19)
、又はその配列バリアント
(化20)
、又はその配列バリアント:から選択された軽鎖CDR1を含む軽鎖可変ドメインを含み;
ここでこの配列バリアントが、列挙された配列において1、2又は3のアミノ酸置換を含む、態様27~29のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様31)
可変重鎖CDR3(HCDR3)、可変重鎖CDR2(HCDR2)、及び可変重鎖CDR1(HCDR1)の組合せを含む、態様23記載の抗体又はその抗原結合断片であって、ここで該組合せが:
(i)配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:36を含むHCDR2;配列番号:34を含むHCDR1;
(ii)配列番号:43を含むHCDR3;配列番号:41を含むHCDR2;配列番号:9を含むHCDR1;
(iii)配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:4を含むHCDR2;配列番号:2を含むHCDR1;並びに
(iv)配列番号:13を含むHCDR3;配列番号:11を含むHCDR2;配列番号:9を含むHCDR1:
からなる群から選択される、前記抗体又は抗原結合断片。
(態様32)
(i)配列番号:54を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;配列番号:16を含むLCDR1;
(ii)配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:59を含むLCDR2;配列番号:57を含むLCDR1;
(iii)配列番号:20を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;配列番号:16を含むLCDR1;
(iv)配列番号:20を含むLCDR3;配列番号:18を含むLCDR2;配列番号:16を含むLCDR1;並びに
(v)配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:25を含むLCDR2;配列番号:23を含むLCDR1:
からなる群から選択される可変軽鎖CDR3(LCDR3)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)及び可変軽鎖CDR1(LCDR1)の組合せを含む軽鎖可変ドメインを含む、態様31記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様33)
配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:36を含むHCDR2;及び、配列番号:34を含むHCDR1:の可変重鎖CDR配列の組合せ、並びに配列番号:54を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;及び、配列番号:16を含むLCDR1:の可変軽鎖CDR配列の組合せ:を含む、態様32記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様34)
配列番号:43を含むHCDR3;配列番号:41を含むHCDR2;及び、配列番号:9を含むHCDR1:の可変重鎖CDR配列の組合せ、並びに配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:59を含むLCDR2;及び、配列番号:57を含むLCDR1:の可変軽鎖CDR配列の組合せを含む、態様32記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様35)
配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:4を含むHCDR2;及び、配列番号:2を含むHCDR1:の可変重鎖CDR配列の組合せ、並びに配列番号:20を含むLCDR3;配列番号:47を含むLCDR2;及び、配列番号:16を含むLCDR1:の可変軽鎖CDR配列の組合せを含む、態様32記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様36)
配列番号:6を含むHCDR3;配列番号:4を含むHCDR2;及び、配列番号:2を含むHCDR1:の可変重鎖CDR配列の組合せ、並びに配列番号:20を含むLCDR3;配列番号:18を含むLCDR2;及び、配列番号:16を含むLCDR1:の可変軽鎖CDR配列の組合せを含む、態様32記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様37)
配列番号:13を含むHCDR3;配列番号:11を含むHCDR2;及び、配列番号:9を含むHCDR1:の可変重鎖CDR配列の組合せ、並びに配列番号:27を含むLCDR3;配列番号:25を含むLCDR2;及び、配列番号:23を含むLCDR1:の可変軽鎖CDR配列の組合せを含む、態様32記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様38)
前記抗体又はその抗原結合断片が:
(i)配列番号:29又は31のアミノ酸配列を含む又はからなるVH;
(ii)配列番号:29又は31のアミノ酸配列を含む又はからなるVHの親和性バリアント又はヒト生殖細胞系列化バリアント;もしくは
(iii)配列番号:29又は31のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるVH:
から選択される重鎖可変ドメイン(VH)を含む、態様23記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様39)
前記抗体又はその抗原結合断片が:
(i)配列番号:30、32又は62のアミノ酸配列を含む又はからなるVL;
(ii)配列番号:30、32又は62のアミノ酸配列を含む又はからなるVHの親和性バリアント又はヒト生殖細胞系列化バリアント;もしくは
(iii)配列番号:30、32又は62のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるVL:
から選択される軽鎖可変ドメイン(VL)を更に含む、態様38記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様40)
前記抗体又はその抗原結合断片が:
配列番号:63のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号:64のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含むVL:
から選択される重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)の組合せを含む、態様23又は態様33記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様41)
前記抗体又はその抗原結合断片が:
配列番号:65のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号:66のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含むVL:
から選択される重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)の組合せを含む、態様23又は態様34記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様42)
配列番号:67のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号:68のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖:
から選択される少なくとも一つの重鎖及び少なくとも一つの軽鎖を含む、態様23又は態様33記載の抗体。
(態様43)
配列番号:69のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号:70のアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖:
から選択される少なくとも一つの重鎖及び少なくとも一つの軽鎖を含む、態様23又は態様34記載の抗体。
(態様44)
態様1~43のいずれか一項記載の抗体と同じエピトープに結合する、抗体又はその抗原結合断片。
(態様45)
前記抗体又はその抗原結合断片が:
(i)Tyr60を含まないIL-22Rタンパク質内のエピトープに結合する;
(ii)高親和性でヒトIL-22Rに結合する;
(iii)IL-22のIL-22Rへの結合をブロックする;
(iv)IL-22RのIL-22-依存型活性化及び/又はIL-22RのIL-20-依存型活性化を阻害する;
(v)マウスのIL-22Rと交差反応しない:
という特性の少なくとも1以上を示す、態様23~44のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様46)
ヒトIgGのヒンジ領域、CH2ドメイン及び/又はCH3ドメインを含む、態様23~45のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様47)
ヒトIgG、好ましくはIgG1と高い相同性を示す、態様23~46のいずれか一項記載の抗体。
(態様48)
前記VHドメイン及び/又はVLドメイン又は1以上のCDRが、ラクダ科の動物-由来である、態様23~47のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様49)
前記動物が、ラマである、態様48記載の抗体又は抗原結合断片。
(態様50)
態様1~49のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片をコードしている、単離されたポリヌクレオチド。
(態様51)
抗体又は抗原結合断片の可変重鎖ドメインをコードしている単離されたポリヌクレオチドであって、ここでこの抗体又は抗原結合断片が、ヒトIL-22Rタンパク質に結合し、且つこの単離されたポリヌクレオチドが、配列番号:52、74、76、78又は80のいずれかにより表される配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
(態様52)
抗体又は抗原結合断片の可変軽鎖ドメインをコードしている単離されたポリヌクレオチドであって、ここでこの抗体又は抗原結合断片が、ヒトIL-22Rタンパク質に結合し、且つこの単離されたポリヌクレオチドが、配列番号:73、75、77、79又は81のいずれかにより表される配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
(態様53)
宿主細胞又は無細胞発現システムにおける抗体、抗原結合断片、可変重鎖ドメインもしくは可変軽鎖ドメインの発現を可能にする調節配列に機能的に連結された、態様50~52のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
(態様54)
態様53記載の発現ベクターを含む、宿主細胞又は無細胞発現システム。
(態様55)
態様54記載の宿主細胞又は無細胞発現システムを、該抗体又は抗原結合断片の発現を可能にする条件下で培養すること、並びに発現された抗体又は抗原結合断片を回収することを含む、組換え抗体又はその抗原結合断片の製造方法。
(態様56)
態様1~49のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片、及び少なくとも1種の医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含有する、医薬組成物。
(態様57)
態様1~49のいずれか一項記載の抗体又はその抗原結合断片の治療的有効量を、それを必要とする患者へ投与することを含む、ヒト対象における乾癬、乾癬性関節炎又はアトピー性皮膚炎を治療する方法。
(態様58)
医薬品としての使用のための、態様1~49のいずれか一項記載の抗体もしくはその抗原結合断片、又は態様56記載の医薬組成物。
(態様59)
乾癬、乾癬性関節炎又はアトピー性皮膚炎の治療又は予防において使用するための、態様1~49のいずれか一項記載の抗体もしくはその抗原結合断片、又は態様56記載の医薬組成物。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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