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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】リアルタイム音響プロセッサ
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20221024BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G10K11/178 120
H04R3/00 310
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019548633
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 US2018021748
(87)【国際公開番号】W WO2018165550
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/469,461
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517110391
【氏名又は名称】アバネラ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Avnera Corporation
【住所又は居所原語表記】1600 NW Compton Drive,Suite 300,Hillsboro,Oregon 97006 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クマール,アミット
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0322432(US,A1)
【文献】特表2012-529061(JP,A)
【文献】特表2015-520974(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167040(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
H04R 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響処理ネットワークであって、
第1の周波数で動作するデジタル信号プロセッサを備え、
前記デジタル信号プロセッサは、1つ以上のマイクロフォンからノイズ信号を受信し、少なくとも1つのマイクロフォンは、フィードフォワードマイクロフォンであり、および前記ノイズ信号に基づいてノイズフィルタを生成するように構成され、前記デジタル信号プロセッサは、
音声入力に基づいて音声信号を生成し、および
前記音声入力および前記音響処理ネットワークの周波数応答に基づいて、期待の出力信号を生成するようにさらに構成され、
前記第1の周波数よりも高い第2の周波数で動作するリアルタイム音響プロセッサを備え、
前記リアルタイム音響プロセッサは、前記1つ以上のマイクロフォンから前記ノイズ信号を受信し、前記デジタル信号プロセッサから前記ノイズフィルタを受信し、前記ノイズ信号および前記ノイズフィルタに基づいて、能動型ノイズキャンセルに使用されるアンチノイズ信号を生成し、前記アンチノイズ信号を生成するときに、環境認識フィルタを適用して前記ノイズ信号の所定の周波数帯域を強化することによって、強化された所定の周波数帯域を生成し、および前記強化された所定の周波数帯域を含む前記アンチノイズ信号をスピーカに転送して、ユーザに出力するように構成され、前記リアルタイム音響プロセッサは、さらに、
前記デジタル信号プロセッサから前記音声信号を受信し、
前記音声信号と前記アンチノイズ信号とを混合し、および
前記アンチノイズ信号を生成するときに、前記期待の出力信号を基準点として設定することによって、前記アンチノイズ信号による前記音声信号のキャンセルを軽減するようにさらに構成される、音響処理ネットワーク。
【請求項2】
前記リアルタイム音響プロセッサは、
前記アンチノイズ信号を増幅するための調整可能なアンプと、
前記調整可能なアンプを制御することによって、前記アンチノイズ信号の乱れを軽減するためのコンプレッサ回路とを含む、請求項1に記載の音響処理ネットワーク。
【請求項3】
前記リアルタイム音響プロセッサは、圧縮状態を格納するための圧縮状態レジスタをさらに含み、
前記コンプレッサ回路は、前記圧縮状態に基づいて、前記調整可能なアンプを制御するようにさらに構成される、請求項2に記載の音響処理ネットワーク。
【請求項4】
前記圧縮状態は、ピーク信号推定値、瞬間ゲイン、目標ゲイン、攻撃パラメータ、解除パラメータ、減衰パラメータ、維持パラメータ、またはそれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の音響処理ネットワーク。
【請求項5】
前記圧縮状態は、前記アンチノイズ信号の二乗平均平方根を含む、請求項3に記載の音響処理ネットワーク。
【請求項6】
前記デジタル信号プロセッサは、
前記リアルタイム音響プロセッサから現在の圧縮状態を受信し、
前記ノイズ信号および前記現在の圧縮状態に基づいて、新たな圧縮状態を決定し、および
前記新たな圧縮状態を前記リアルタイム音響プロセッサに転送することによって、前記調整可能なアンプの制御をサポートするようにさらに構成される、請求項2に記載の音響処理ネットワーク。
【請求項7】
前記リアルタイム音響プロセッサは、前記デジタル信号プロセッサからの前記ノイズフィルタを実装し、前記アンチノイズ信号を生成するための1つ以上のプログラム可能な双2次フィルタを含む、請求項1に記載の音響処理ネットワーク。
【請求項8】
前記双2次フィルタは、1つ以上の極を使用して前記アンチノイズ信号のサンプルの一部を増幅し、1つ以上の零点を使用して前記アンチノイズ信号の前記サンプルの一部を減衰し、フィルタレジスタを使用して前記アンチノイズ信号の前記サンプルの量子化を保存し、
前記双2次フィルタは、前記サンプルを量子化する前に前記サンプルを増幅し、その後、前記サンプルを減衰するように構成される、請求項7に記載の音響処理ネットワーク。
【請求項9】
前記1つ以上のマイクロフォンからノイズ信号サンプルを受信してから対応するアンチノイズ信号サンプルを前記スピーカに転送するまでの遅延は、100マイクロ秒未満である、請求項1に記載の音響処理ネットワーク。
【請求項10】
前記リアルタイム音響プロセッサは、前記アンチノイズ信号をデジタルアナログコンバータアンプコントローラに転送することによって、アンチノイズ信号レベルに基づいてデジタルアナログコンバータアンプの調整をサポートするようにさらに構成される、請求項1に記載の音響処理ネットワーク。
【請求項11】
リアルタイム音響処理方法であって、
第1の周波数で動作するデジタル信号プロセッサでノイズ信号を受信することを含み、前記ノイズ信号は、少なくとも1つのマイクロフォンから受信され、
前記ノイズ信号に基づいて、前記デジタル信号プロセッサでノイズフィルタを生成することと、
前記ノイズフィルタを、前記デジタル信号プロセッサから前記第1周波数よりも高い第2周波数で動作するリアルタイム音響プロセッサに送信することと、
前記リアルタイム音響プロセッサで、前記マイクロフォンから前記ノイズ信号を受信することと、
前記ノイズ信号および前記ノイズフィルタに基づいて、前記リアルタイム音響プロセッサで能動型ノイズキャンセルに使用されるアンチノイズ信号を生成することと、
音声入力に基づいて、前記デジタル信号プロセッサで音声信号を生成することと、
前記音声入力および音響処理ネットワークの周波数応答に基づいて、前記デジタル信号プロセッサで期待の出力信号を生成することと、
前記音声信号を前記デジタル信号プロセッサから前記リアルタイム音響プロセッサに送信することと、
前記リアルタイム音響プロセッサで前記音声信号と前記アンチノイズ信号とを混合することと、
前記アンチノイズ信号を生成するときに、前記期待の出力信号を基準点として設定することによって、前記アンチノイズ信号による前記音声信号のキャンセルを軽減することとを含む、リアルタイム音響処理方法。
【請求項12】
前記リアルタイム音響プロセッサで現在の圧縮状態を使用して調整可能なアンプを制御することによって、前記アンチノイズ信号を調整することと、
前記現在の圧縮状態を前記リアルタイム音響プロセッサから前記デジタル信号プロセッサに送信することと、
前記ノイズ信号および前記現在の圧縮状態に基づいて、前記デジタル信号プロセッサで新たな圧縮状態を決定することと、
前記新たな圧縮状態を前記デジタル信号プロセッサから前記リアルタイム音響プロセッサに送信することによって、前記調整可能なアンプの制御をサポートすることとをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記圧縮状態および前記新たな圧縮状態は、前記アンチノイズ信号のピーク信号推定値、瞬間ゲイン、目標ゲイン、二乗平均平方根またはそれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アンチノイズ信号は、前記デジタル信号プロセッサからの前記ノイズフィルタを実装するように1つ以上のプログラム可能な双2次フィルタを構成することによって、前記リアルタイム音響プロセッサで生成される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記双2次フィルタは、前記アンチノイズ信号のサンプルを増幅し、前記アンチノイズ信号のサンプルを量子化し、および前記アンチノイズフィルタのサンプルを減衰させるようにさらに構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アンチノイズ信号をデジタルアナログコンバータアンプコントローラに転送することによって、アンチノイズ信号レベルに基づいてデジタルアナログコンバータアンプの調整をサポートすることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
能動型ノイズキャンセル(ANC)を使用して、ヘッドフォンを装着しているユーザが聞こえる環境ノイズの量を低減することができる。ANCにおいて、ノイズ信号が測定され、対応するアンチノイズ信号が生成される。アンチノイズ信号は、ノイズ信号に近似する逆信号である。ノイズ信号とアンチノイズ信号とは、相殺的に干渉することによって、ユーザの耳から環境ノイズの一部または全てを除去することができる。高品質ANC用の精確なアンチノイズ信号を生成するために、対応するシステムは、環境ノイズの変化に迅速に反応する必要がある。迅速に反応しないと、ノイズを適切にキャンセルできないため、遅延がANCに好ましくない。また、補正回路が迅速に反応しないと、誤ったノイズの増幅、ノイズ信号をキャンセルしないアンチノイズのバーストなどを引き起こす可能性がある。さらに、ヘッドフォンで音楽を聴く場合、ANCは、さらに複雑になる可能性がある。場合によって、ANCは、ノイズと低周波音楽とを区別できない可能性がある。これによって、音楽信号は、ノイズ信号と共に誤って除去されてしまう。
【0002】
本開示の実施形態の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照して以下の実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】例示的な音響処理ネットワークを示す概略図である。
図2】例示的なリアルタイム音響プロセッサ(RAP)の入力/出力(I/O)を示す概略図である。
図3】コンプレッサ状態を共有するための例示的な音響処理ネットワークを示す概略図である。
図4】音声入力の等化を行うための例示的な音響処理ネットワークを示す概略図である。
図5】例示的なRAPアーキテクチャを示す概略図である。
図6】別の例示的なRAPアーキテクチャを示す概略図である。
図7】RAPの例示的なプログラム可能なトポロジを示す概略図である。
図8】RAPの別の例示的なプログラム可能なトポロジを示す概略図である。
図9】双2次フィルタ構造を示す概略図である。
図10】音響処理ネットワークを動作させる例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
詳細な説明
本明細書は、例示的な音響処理ネットワークを開示している。このネットワークは、第1の周波数で動作するデジタル信号プロセッサ(DSP)と、より高い第2の周波数で動作するRAPとを含む。DSPは、精確なアンチノイズ信号の生成をサポートするように、強力なノイズフィルタを生成することができる。DSPは、これらのノイズフィルタをRAPに転送して実装する。RAPは、DSPよりも高速に動作するため、聴覚の変化に迅速に対応することができる。これによって、遅延を短縮することができ、精確なアンチノイズ信号を維持することができる。DSPによって提供されたフィルタは、ユーザの入力および/または環境の変化に依存することができる。例えば、ユーザが静かな環境からうるさい環境に移動すると、DSPは、ノイズフィルタを変更することができる。別の例として、RAPは、一対のヘッドフォン内の調整可能なアンプを制御するためのコンプレッサ回路を使用することができる。コンプレッサ回路は、コンプレッサ状態に基づいて、アンプを調整することができる。このことは、アンチノイズ信号の音量変化の速度を制限することがある。音量の急速な変化を制限しないと、ユーザがポップ音またはクリック音として感じる信号のクリッピングが発生する可能性がある。DSPは、環境音の変化に基づいて、RAPのコンプレッサ状態を調整することによって、このような音量変化に対応することができる。また、DSPおよびRAPは、ユーザから入力を受信するときに環境認識をサポートすることができる。環境認識は、所定の周波数帯域、例えば人間の発話に関連する周波数帯域に関連付けられてもよい。DSPは、ノイズ信号の所定の周波数帯域のゲインを増加させるノイズフィルタを生成することができる。それに応じて、RAPは、アンチノイズ信号を生成するときに、関連する帯域を増幅する。これによって、対応する周波数帯域の音(例えば、発話)を強調すると共に、環境ノイズをキャンセルすることができる。また、DSPは、音声信号および音響処理ネットワークの期待周波数応答に基づいて調整された音声信号を提供することができる。RAPは、ANCを実行するときに、この調整された音声信号を基準点として使用することができる。これによって、RAPは、出力をゼロにドライブし、音声信号の一部(例えば、低周波音楽)をキャンセルする代わりに、出力の全体を期待の音声出力にドライブすることができる。また、RAPは、アンチノイズ信号を、ヘッドフォンのデジタルアナログコンバータ(DAC)のクラスGアンプを制御するための1つ以上のクラスGコントローラに転送するように設計されている。これにより、アンチノイズ信号のゲイン制御がサポートされ、信号の乱れがさらに軽減される。さらに、RAPは、双2次フィルタを使用して、DSPからの様々なノイズフィルタを実装することができる。双2次フィルタは、信号サンプルを保存するときに信号サンプルを自然に量子化するため、信号忠実度の部分損失を引き起こす可能性がある。一例として、RAPは、実装された双2次フィルタを使用して、サンプルを増幅してから、サンプルを量子化し、その後、サンプルを減衰させる。この順序で処理することによって、量子化誤差を低減し、したがって最小化する。よって、より精確なアンチノイズ信号が得られる。
【0005】
図1は、ANCに使用され得る例示的な音響処理ネットワーク100を示す概略図である。音響処理ネットワーク100は、第1の周波数で動作するDSP110と、第1の周波数よりも高い第2の周波数で動作するRAP120とを含み、第2の周波数は、第1の周波数よりも高い。例えば、DSP110は、96キロヘルツ(kHz)以下で動作することができる。多くの場合、DSP110は、約48kHz(例えば、第1の周波数)で動作することができる。RAP120は、最大約6.144メガヘルツ(MHz)の周波数で動作することができる。特定の例として、RAP120は、0.768MHz、1.5MHz、3MHzおよび/または6.144MHz(例えば、第2の周波数)で動作することができる。DSP110は、高度にプログラム可能であってもよく、かなりの処理能力を有してもよい。しかしながら、RAP120は、より高い周波数で動作するため、DSP110よりもかなり速く動作することができる。したがって、RAP120は、DSP110よりも遥かに低い遅延で反応する。したがって、音響処理ネットワーク100は、DSP110を用いて、音声フィルタを生成し、ネットワーク100を制御する。一方、RAP120は、ANCおよび類似する機能を実行するときに、DSP110によって提供された音声フィルタを用いて環境変化にすばやく対応する。
【0006】
DSP110は、デジタル信号を処理するために最適化された任意の特殊処理回路である。DSP110は、多くの異なる機能をサポートする。例えば、音響処理ネットワーク100は、1組のヘッドフォンで動作することができる。ユーザに対して音楽または他の音声を再生するときに、DSP110は、メモリおよび/または汎用処理ユニットからデジタル形式の音声入力を受信することができる。DSP110は、音声入力に対応する音声信号143を生成することができる。音声信号143は、スピーカ136を介してユーザに対して再生される音声を含むデジタルデータのストリームである。例えば、DSP110は、ユーザの左耳に適用される左側音声信号143およびユーザの耳に適用される右側音声信号143を生成することができる。以下で説明するように、いくつかの例において、DSP110は、各耳に対して一対の音声信号143を生成することができる。また、DSP110は、例えば、音響処理ネットワーク100の動作によって生じたノイズを補償するために、音声信号143に適用される様々なノイズフィルタを生成する。
【0007】
また、DSP110は、ANCを提供するときに、アンチノイズ信を生成するときに使用されるノイズフィルタを生成することができる。この場合、DSP110は、1つ以上のマイクロフォン137から1つ以上のノイズ信号144を受信する。マイクロフォン137は、ユーザの外耳道の外側に配置されたフィードフォワード(FF)マイクロフォンを含むことができる。FFマイクロフォンは、ユーザが環境ノイズを経験する前にそのノイズを記録するように配置されている。したがって、DSP110は、FFマイクロフォン137からのノイズ信号144を使用して、近い将来にユーザが経験すると予想されるノイズを決定することができる。次に、DSP110は、ノイズ信号144に基づいて、ノイズフィルタを生成することができる。次いで、このノイズフィルタは、(例えば、RAP120によって)使用され、アンチノイズ信号を生成することによって、ノイズ信号144をキャンセルすることができる。マイクロフォン137は、フィードバック(FB)マイクロフォンを含むこともできる。FBマイクロフォンは、ユーザの外耳道の内側に配置される。したがって、FBマイクロフォン137は、アンチノイズ信号を適用した後にユーザが実際に経験しているノイズを記録するように配置されている。したがって、FBマイクロフォン137からのノイズ信号144を使用して、アンチノイズ信号のノイズフィルタを繰り返して調整することによって、信号誤差を補正することができる。なお、各耳に少なくともFFマイクロフォンおよびFBマイクロフォン137(例えば、4つ以上のマイクロフォン137)を使用することによって、最高のパフォーマンスを実現することができる。しかしながら、FFマイクロフォンまたはFBマイクロフォン137のみを用いて、ANCを実現することもできる。
【0008】
DSP110は、制御および設定パラメータ141を提供することによって、RAP120と通信することができる。パラメータ141は、アンチノイズ信号を生成するためのノイズフィルタ、音声信号143を調整するためのノイズフィルタ、および様々な機能を実施するためのコマンドを含むことができる。RAP120は、制御および設定パラメータ141を介してDSP110からノイズフィルタを受け取り、様々な音声処理を実行することができる。RAP120は、低遅延デジタルフィルタリングを行うために最適化された任意のデジタルプロセッサあってもよい。また、RAP120は、ANCを実行するときに、マイクロフォン137からノイズ信号144を受信することができる。RAP120は、ノイズ信号144およびDSP110からのノイズフィルタに基づいて、アンチノイズ信号を生成することができる。アンチノイズ信号は、スピーカ136に転送され、ANCに使用される。また、RAP120は、DSP110からのノイズフィルタを用いて、スピーカ136に出力される音声信号143を変更することができる。したがって、RAP120は、アンチノイズ信号および変更された音声信号143を混合して、出力信号145を生成することができる。その後、出力信号145は、スピーカ136に転送され、ユーザに再生される。スピーカ136は、任意のヘッドフォンスピーカであってもよい。場合によって、マイクロフォン137は、一対のスピーカ136(例えば、左側ヘッドフォンスピーカおよび右側ヘッドフォンスピーカ)に物理的に固定されてもよい。
【0009】
上述したように、RAP120は、DSP110よりも高い周波数で動作することができるため、DSP110よりも低い遅延で動作することができる。例えば、DSP110は、ユーザ周囲環境の通常ノイズのレベル変化に基づいて、ノイズフィルタを生成することができる。例えば、ユーザがうるさい部屋から静かな部屋に移動するときに、DSP110は、異なるノイズフィルタを生成することができる。このような変化が比較的に遅いため、DSP110の遅延は、このような変化に十分に対応できる。一方、RAP120は、ノイズフィルタを適用することによって、特定のノイズ変化に迅速に対応する。例えば、RAP120は、うるさい部屋に対応するノイズフィルタを用いて、アンチノイズ信号を生成することによって、板の落下音、子供の泣き声、ドアの閉め音などの特定の感覚ノイズを低減することができる。特定の例として、マイクロフォン137からノイズ信号144のサンプルを受信してから対応するアンチノイズ信号のサンプルをスピーカ136に転送するまでの遅延は、約100ミクロ秒未満(例えば、約5ミクロ秒)であってもよい。
【0010】
また、DSP110は、RAP120から様々なRAP状態142を取得して処理するように構成されてもよい。RAP状態142は、RAP120の有限状態マシンによって使用される様々な状態および他の中間信号を含むことができる。DSP110は、RAP状態142を用いて、制御および設定パラメータ141を決定することができる。したがって、RAP状態142は、RAP120からDSP110にフィードバックを提供することによって、DSP110によるRAP120の動的制御を可能にする。例えば、以下に説明するように、RAP120は、音声圧縮を利用することができ、RAP状態142は、圧縮状態を含むことができる。これによって、DSP110は、RAP120に行われた圧縮を動的に変更することができる。なお、RAP120は、一時停止を利用して、信号のクリッピング、フェザリングの完了、左チャネルで検出された不安定性および右チャネルで検出された不安定性などの重要なイベントをDSP110に表示することができる。このような一時停止は、プログラム可能なレジスタを利用して、それぞれ有効/無効にすることができる。
【0011】
図1に示すように、DSP110およびRAP120は、デジタルドメインの異なる周波数で動作するが、スピーカ136およびマイクロフォン137は、アナログドメインで動作する。音響処理ネットワーク100は、様々なコンポーネントを利用して、ドメインと周波数速度との間の変換をサポートする。例えば、補間器135を利用して、音声信号143の周波数を、DSP110によって使用される第1の周波数からRAP120によって使用される第2の周波数に増加させることができる。補間器135は、補間を利用して、有効サンプリングレートを増加させることによって信号の周波数を増加させる任意の信号処理コンポーネントである。音声信号143は、人間の耳に聞こえるレートでサンプリングされてもよい。補間器135は、RAP120に入力される音声信号143のサンプリングレートを(例えば、48kHzから384kHzに)増加させることができる。したがって、補間された音声信号143は、音声再生のためにオーバーサンプリングされていると見なされてもよい。換言すれば、聴覚信号に関連する帯域幅は、約20kHzである。ナイキスト(Nyquist)基準によれば、20kHzの信号を完全に取り込むためには、40kHzのサンプリングが必要である。したがって、RAP120の音声信号143は、強くオーバーサンプリングされていると見なされてもよい。
【0012】
RAP120とDSP110との間の(ノイズ信号経路に沿った)通信は、デシメータ134を介して行うことができる。デシメータ134は、デシメーションを利用して、有効サンプリングレートを減少させることによって信号の周波数を減少させる任意の信号処理コンポーネントである。したがって、デシメータ142を利用して、信号(例えば、RAP状態信号142およびノイズ信号)の周波数を、RAP120によって使用される第2の周波数からDSP120によって使用される第1の周波数に減少させることができる。換言すれば、補間器135は、信号をアップコンバート/アップサンプリングし、デシメータ134は、信号をダウンコンバート/ダウンサンプリングする。
【0013】
また、ネットワーク100は、1つ以上のデジタルアナログコンバータ(DAC)131および1つ以上のアナログデジタルコンバータ(ADC)133を利用して、アナログドメインとデジタルドメインを変換する。DAC131は、デジタル信号をアナログ信号に変換する信号処理コンポーネントである。ADC33は、アナログ信号をデジタル信号に変換する信号処理コンポーネントである。具体的には、ADC133は、マイクロフォン137からアナログノイズ信号144を受信し、RAP120およびDSP110に使用されるために、この信号をデジタルドメインに変換する。一方、DAC131は、RAP120から(アンチノイズ信号および/または音声信号143を含む)デジタル形式の出力信号145を受信し、出力信号145をスピーカ136によって出力可能なアナログ形式に変換する。いくつかの例において、変調器132、例えばデルタ-シグマ変調器を利用して、DAC131をサポートすることができる。変調器132は、DAC131によるデジタル/アナログ変換前の前処理ステップとして、デジタル信号のビット数を減少させ、周波数を増加させる信号コンポーネントである。変調器132は、DAC131をサポートすることができるが、いくつかの例では使用されなくてもよい。なお、変調器132およびDAC131は、固定伝達関数を有してもよい。したがって、RAP120は、高い構成可能性を有する音声処理チェーンの最後のブロックであってもよい。
【0014】
DAC131は、例えばクラスGアンプなどのアンプを利用して、出力信号143の音量を、スピーカ136による再生に適したレベルまで増加させることができる。ネットワーク100は、例えばクラスGアンプコントローラなどのアンプコントローラ130を利用して、DAC131の増幅を制御することができる。例えば、低音量の出力信号145(例えば、静かな環境用のアンチノイズ信号および/または音声信号143の無音)は、殆ど増幅を必要としない。逆に、大音量の出力信号145は、大きな増幅(例えば、大きなノイズおよび/または音声信号143の大音量の音楽に対して大きなアンチノイズ信号)を必要とする場合がある。DAC131から出力されるアンチノイズ信号が潜在的に非常に可変であるため、音量の突然変化が発生する可能性がある。このような突然変化は、音声乱れを引き起こす可能性がある。例えば、出力信号145がDAC131のアンプの能力を超えて突然増加する場合、無音から大音量のアンチノイズ信号への突然変化(例えば、静かな部屋での突然の拍手)は、DAC131アンプによる信号のクリッピングを引き起こす可能性がある。このようなクリッピングは、ポップまたはクリックとしてユーザに体験される。このような乱れを回避するために、RAP120は、アンチノイズ信号のコピーをデジタルアンプコントローラ130に転送する。アンプコントローラ130は、アンチノイズ信号のレベルに基づいて、(例えば、印加電圧を変更することによって)DAC131アンプの調整をサポートすることができる。アンプコントローラ130は、アンチノイズ信号の変化を動的に検討することによって、出力信号145の電位変化を予測することができる。次に、アンプコントローラ130は、アンチノイズ信号の変化(および/または音声信号143の変化)に基づいて、DAC131の増幅設定を変更して、増幅を減少させることによって電力を節約することができ、または増幅を増加させることによってクリッピングを防ぐことができる。図1を参照して上記で一般的に説明した機能は、以下でより詳細に説明する。なお、これらの機能の各々は、ユーザ入力に基づいて、単独でまたは組み合わせて有効にするできる(例えば、音声入力の有無にかかわらず、ANCを有効にすることができる)。
【0015】
なお、ユーザの耳に入るノイズは、頭および耳の形状並びにヘッドフォンの密閉性およびフィット性を含む多くの要因に依存する。また、ヘッドフォンによって生成された音声信号は、ユーザの耳とヘッドフォンとの間の密閉性に依存する場合がある。換言すれば、ヘッドフォンの伝達関数は、密閉性に依存する場合がある。これらの可変性によって、アンチノイズ信号を生成する単一ANCフィルタの設計は、全てのユーザに対して最適ではない可能性がある。適応型ANCは、現在のユーザに対して最適化されたANCフィルタ設計になる。DSP110は、FFおよびFBマイクロフォン137のノイズ信号144を利用できるため、適応型ANCを実現することができる。DSP110は、較正段階中に、特定のユーザのためにFFおよびFBノイズ信号144間の伝達関数を推定することができる。例えば、DSP110は、FFマイクロフォン137のノイズに基づいて、耳内のノイズを決定することができる。較正プロセスの第2部分は、ヘッドフォンに特定の信号を再生し、FBマイクロフォン137の信号を録音することによって、ヘッドフォンの伝達関数を推定することができる。DSP110は、最適のFF ANCフィルタを計算した後、RAP120の係数をプログラムすることができる。
【0016】
図2は、RAP、例えばRAP120に適用できる例示的なRAP I/O 200を示す概略図である。RAP I/O 200は、プロセッサ周辺バス241を含む。プロセッサ周辺バス241は、DSPから、例えば、ユーザ入力、コマンド、計算済みのノイズフィルタ、圧縮フィルタ、環境認識フィルタ、および/または本明細書に説明された他のフィルタなどの制御および設定パラメータ(例えば、制御および設定パラメータ141)を受信するための通信リンクであってもよい。また、RAP I/O 200は、DSPから音声信号(例えば、音楽)243を受信するための入力を含む。音声信号243は、実質的に音声信号143と同様であってもよい。RAP I/O 200は、ノイズ信号244を受信するための入力をさらに含む。ノイズ信号244は、実質的にノイズ信号144と同様であってもよい。ノイズ信号244は、4つの入力として示されている。その理由は、左右のヘッドフォンの各々にFFおよびFBマイクロフォンを使用する場合、ノイズ信号244が4つになるからである。しかしながら、任意の数のノイズ信号244を使用してもよい。RAP I/O 200は、出力信号245、アンチノイズ信号246および中間信号242を出力するための出力を含む。アンチノイズ信号246は、プロセッサ周辺バス241を介して受信されたノイズフィルタおよび対応するマイクロフォンから受信されたノイズ信号244に基づいて生成されてもよい。アンチノイズ信号246は、DACアンプの制御をサポートするアンプコントローラに転送され、クリッピングおよび関連するノイズ乱れを軽減することができる。実質的に出力信号145と同様である出力信号245は、音声信号243に基づいて、等化音声と混合されたアンチノイズ信号246を含むことができる。出力信号245は、左右のスピーカに転送され、ユーザに再生されてもよい。中間信号242は、部分的に等化された音声信号、アンチノイズ信号246、部分的に生成されたアンチノイズ信号、RAP状態、圧縮状態、現在使用されているフィルタ、および/またはRAPによって実行された音声処理を示す他のRAP情報を含むことができる。中間信号242をフィードバックとしてDSPに転送することによって、DSPは、RAP機能に変更を加えるときに、現在のRAP動作パラメータを考慮することができる。したがって、中間信号242によって、DSPは、性能および高度な制御を向上させるために、RAP構成を動的に修正することができる。中間信号242とDSPによって使用される処理周波数とを一致させるために、中間信号242の一部をデシメーションフィルタに通過することによってリサンプリングしてもよい。他の中間信号242(例えば、信号レベルおよびプロセッサゲインなどのゆっくり変化する信号)は、定期的なサンプリングを行うために、レジスタインターフェイスを介してDSPに転送される。なお、RAP I/O 200は、他の入力および/または出力を含んでもよい。RAP I/O 200を用いて主な機能的I/Oを説明したが、網羅的であることを意図していない。
【0017】
図3は、コンプレッサ状態を共有するための例示的な音響処理ネットワーク300を示す概略図である。ネットワーク300は、DSP310およびRAP320を含む。DSP310およびRAP320はそれぞれ、DSP110およびRAP120と実質的に同様であってもよい。明瞭化のために、他のコンポーネントが省略される。RAP320は、調整可能なアンプ326を含む。調整可能なアンプ326は、信号のゲインをRAP320によって設定された目標値に変更できる任意の回路であってもよい。上述したように、RAP320は、DSP310からのフィルタおよびマイクロフォンからのノイズ信号に基づいて、アンチノイズ信号342を生成する。調整可能なアンプ326は、(例えば、DACおよび関連するアンプによる変換の後に)アンチノイズ信号342を十分な値まで増幅することによってノイズをキャンセルする。また、RAP320は、RAPコンプレッサ回路325をさらに含む。RAPコンプレッサ回路325は、調整可能なアンプ326を制御するように構成された任意の回路であってもよい。具体的には、RAPコンプレッサ回路325は、調整可能なアンプ326を制御して、クリッピングなどによるアンチノイズ信号342の乱れを軽減する。RAP320は、圧縮状態レジスタ323をさらに含む。圧縮状態レジスタ323は、任意の読み取り/書き込みメモリコンポーネントであってもよい。圧縮状態レジスタ323は、圧縮状態を格納し、RAPコンプレッサ回路325は、圧縮状態に基づいて、調整可能なアンプ326を制御する。
【0018】
RAPコンプレッサ回路325および調整可能なアンプ326を利用して、アンチノイズ信号342の値の急変を緩和することができる。例えば、RAPコンプレッサ回路325および調整可能なアンプ326は、自動車のドアのスラム閉めによってアンチノイズ信号342の値(および関連する信号の乱れ)の急上昇を緩和することができるが、静かな部屋からうるさい部屋への移動によるアンチノイズ信号342の継続的な増加を許可する。調整可能なアンプ326の調整を決定するために、RAPコンプレッサ回路325は、圧縮状態レジスタ323に格納された圧縮状態を検討する。圧縮状態は、アンチノイズ信号342のピーク信号推定値、瞬間ゲイン、目標ゲイン、攻撃パラメータ、解除パラメータ、ピーク減衰パラメータ、維持パラメータ、および/または二乗平均平方根(RMS)パラメータを含むことができる。ピーク信号推定値は、アンチノイズ信号342の最大期待値の推定値を含む。ピーク信号推定値を利用して適切な増幅量を決定することによって、アンチノイズ信号342の任意の部分を、DACアンプの範囲外に増幅すること(例えば、クリッピングをもたらすこと)を防止することができる。瞬間ゲインは、特定の瞬間で調整可能なアンプ326によって提供された現在のゲインを示し、目標ゲインは、調整可能なアンプ326が信号変化を調整するために達成すべきゲインを示す。攻撃パラメータは、信号の乱れを引き起こすことなく、ゲインを増加させる速度を示す。解除パラメータは、信号の乱れを引き起こすことなく、ゲインを減少させる速度を示す。維持パラメータは、アンチノイズ信号342が正常値に戻った後、例えば、別の大きなノイズが発生する可能性に備えるために、増加したゲインを維持する時間を示す。ピーク減衰パラメータは、アンチノイズ信号342が維持パラメータのために正常値に戻ったと見なされる前に、アンチノイズ信号342がピーク値から変化しなければならない量を示す。追加的にまたは代替的に、クリッピングを軽減するために、調整可能なアンプ326は、アンチノイズ信号342のRMSに基づいて調整されてもよい。
【0019】
RAP320は、DSP310よりも遥かに高速に動作するが、非常に簡単な圧縮アルゴリズムに制限される。したがって、DSP310は、DSPコンプレッサ311を含む。DSPコンプレッサ311は、RAP320の圧縮状態を考慮し、圧縮状態に複雑な圧縮アルゴリズムを適用することによって、より遅い時間スケールで調整可能なアンプ326のより精確な設定を決定できるプログラム可能な回路である。よって、DSP310は、RAP320から、圧縮状態レジスタ323に格納された現在の圧縮状態を受信するように構成される。このデータは、中間信号(例えば、中間信号242)の出力および/またはRAP状態信号(例えば、RAP状態142)の経路を介して通信されてもよい。DSPコンプレッサ311は、ノイズ信号および現在の圧縮状態に基づいて、新たな圧縮状態を決定することができる。次に、DSPコンプレッサ311は、調整可能なアンプ326の制御をサポートするために、新たな圧縮状態をRAPに転送することができる。例えば、DSPコンプレッサ311は、新たな圧縮状態を圧縮状態レジスタ323に転送することによって、RAP320を直接にプログラムして圧縮を行うことができる。
【0020】
図4は、音声入力の等化を行うための例示的な音響処理ネットワーク400を示す概略図である。音響処理ネットワーク400は、DSP410およびRAP420を含み、DSP410およびRAP420は、DSP110および310並びにRAP120および320の各々と実質的に同様であってもよい。上述したように、DSP410は、音声入力448に基づいて、RAP420によって使用される音声信号443を生成することができる。DSP410は、第1のイコライザ412を利用して、音声信号443を生成することができる。イコライザとは、実用的または審美的な理由のために、ネットワークの周波数応答を調整するための任意の回路である。例えば、第1のイコライザ412は、ネットワーク400の周波数応答に応じて、音声の低音、高音などを調整することによって音声信号443をカスタマイズすることができる。
【0021】
ユーザに対して音声を再生すると同時に、アンチノイズ信号を適用することによってノイズをキャンセルすることは、困難である。具体的には、ユーザの外耳道にあるFBマイクロフォンは、音声信号443の全てまたは一部をノイズとして記録することがある。この場合、RAP420は、アンチノイズ信号を生成して、音声信号443の一部をキャンセルしてしまう。例えば、アンチノイズ信号は、音声信号443の一部の低周波音声をキャンセルしてしまい、ヘッドフォンの誤った性能をもたらす。この問題に対処するために、DSP410は、第2のイコライザ413を含む。第2のイコライザ413は、第1のイコライザ412と実質的に同様であるが、異なる目的に使用される。DSP410および/または第2のイコライザ413は、ネットワーク400の周波数応答をモデル化する。次いで、第2のイコライザ413は、モデルを利用して、音声入力448および音響処理ネットワーク400の周波数応答に基づいて、期待の出力信号449を生成する。期待の出力信号449は、事実上、ネットワーク400の回路の予想された効果に従って修正された音声信号443のコピーである。音声がない場合、ANCプロセスは、ノイズをゼロにしようとする。期待の出力信号449をRAP 420に転送することによって、ANCプロセスは、期待の出力信号449を基準点として設定することができる。したがって、ANCプロセスは、RAP420からの出力信号をゼロではなく期待の出力信号449にすることができる。この方法は、音声信号443のANC効果を低減/除去する可能性がある。
【0022】
したがって、RAP420は、DSP410から音声信号443を受信する。次いで、RAP420は、音声信号443をアンチノイズ信号と混合する。また、RAP420は、アンチノイズ信号を生成するときに、期待の出力信号449を基準点として設定することによって、アンチノイズ信号による音声信号のキャンセルを軽減する。
【0023】
図5は、例示的なRAPアーキテクチャ500を示す概略図である。RAPアーキテクチャ500は、例えば、RAP120、320および/または420に使用されてもよい。RAPアーキテクチャ500は、双2次エンジン524、乗算累算器525、データレジスタ522、および双2次メモリ521を採用する。これらのコンポーネントは、双2次係数527、ゲイン係数526およびフェザリング/圧縮ゲイン係数523を用いて、入力をフィルタリングすることによって、出力信号、例えば出力信号145を生成する。
【0024】
双2次エンジン524は、2つの極(pole)および2つの零点(zero)を有するデジタルフィルタを生成するための回路である。極は、システムの伝達関数の多項式の分母の根であり、零点は、伝達関数の多項式の分子である。換言すれば、極は、フィルタリングされている信号を無限大に向かってプッシュし、零点は、フィルタリングされている信号をゼロに向かってプッシュする。なお、極が非ゼロである場合、このようなフィルタは、無限インパルス応答(IIR)を有する。このようなフィルタは、双2次フィルタとして呼ばれる。その意味は、フィルタの伝達関数が2つの2次関数の比であるという概念を指す。双2次エンジン524は、双2次エンジン524によって処理される信号よりも高い周波数で動作する。したがって、双2次エンジン524は、単一の信号サンプルに複数回に適用することができ、および/または異なる方法で信号の異なる部分に適用することができる。双2次エンジン524は、プログラム可能であるため、以下で説明する処理の様々なトポロジを作成することができる。RAPアーキテクチャ500は、双2次フィルタを使用するものとして説明されているが、特定の実装詳細に応じて、他のフィルタアーキテクチャ、すなわち、2つの極および2つの零点以外の極および零点を有するフィルタを用いて、双2次フィルタを置換することができる。
【0025】
乗算累算器525は、値を加算および/または乗算するための回路である。例えば、乗算累算器525を用いて、信号および/または信号部分をスケーリングすることができる。また、乗算累算器525を用いて、複数の信号および/または信号部分の加重和を計算することができる。乗算累算器525は、双2次エンジン524から出力を受け入れることができ、その逆も同様である。データレジスタ522は、データを格納するための任意のメモリ要素であってもよい。具体的には、データレジスタ522は、双2次エンジン524および/または乗算累算器525からの出力などの信号を格納することができる。したがって、双2次エンジン524、乗算累算器525およびデータレジスタ522は、協働して、数学的および/または他の特殊なデジタル信号変更プロセスを、音声信号543および/またはノイズ信号544のサンプルに反復的に適用することができる。音声信号543およびノイズ信号544は各々、音声信号143およびノイズ信号144と実質的に同様であってもよい。
【0026】
双2次状態メモリ521は、現在の双2次状態を格納するためのメモリモジュール、例えばレジスタである。双2次エンジン524は、有限状態マシンとして動作するようにプログラム可能である。双2次状態メモリ521は、双2次エンジン524の利用可能な状態および/または現在の状態を示すデータを格納する。双2次エンジン524は、双2次状態メモリ521からデータを読み取ることができ、双2次状態メモリ521にデータを格納することができる。
【0027】
要約すると、双2次状態メモリ521からの状態データを用いて、様々なトポロジを実装するように双2次エンジン524および乗算累算器525をプログラムすることができる。中間信号のデータは、データレジスタ522に格納されてもよい。RAPアーキテクチャ500は、制御および設定パラメータ141と実質的に同様であり得る制御および設定パラメータ541を受信することができる。制御および設定パラメータ541は、双2次係数527およびゲイン係数526に基づいてエンコードされたノイズフィルタを含む。双2次エンジン524は、DSPから受信されるとローカルメモリに格納され得る双2次係数527に基づいて、処理されている信号(例えば、音声信号543および/またはノイズ信号544)の形状を変更する。さらに、乗算累算器525は、DSPから受信されるとローカルメモリに格納され得るゲイン係数526に基づいて、処理されている信号(例えば、音声信号543および/またはノイズ信号544)のゲインを増加/変更する。
【0028】
場合によって、ゲイン係数をフェザリングする必要がある。フェザリングは、第1の値から第2の値への段階的な変化を意味する。乗算累算器525は、フェザリング/圧縮ゲイン523の入力から受信したフェザリング係数を移植することによって、フェザリングユニットとして機能することができる。例えば、乗算累算器525は、左チャネルに3つのフェザリングユニットを実装することができ、右チャネルに3つのフェザリングユニットを実装することができる。別の例において、乗算累算器525は、各チャネルに6つのフェザリングユニットを実装することができる。
【0029】
乗算累算器525は、フェザリング/圧縮ゲイン523の入力から圧縮状態を受信することができる。この圧縮状態は、圧縮状態323と実質的に同様であってもよく、ローカルメモリに格納されてもよく、DSPから受信されてもよい。乗算累算器525は、信号が強すぎる場合に、信号に適用されるゲインを変更できるコンプレッサ(例えば、非線形プロセッサ)として機能することができる。乗算累算器525を用いて、信号流のゲインを動的に下げることによって、クリッピングを回避することができる。例えば、DACに対してアンチノイズが強すぎる場合に、アンチノイズ信号にコンプレッサを適用すると、ゲインを一時的に低下することができる。このことは、ANC強度を一時的に低下するが、信号のクリッピングによる不快な乱れの発生を防止する。乗算累算器525は、左チャネルに3つのフェザリングユニットを実装することができ、右チャネルに3つのフェザリングユニットを実装することができる。別の例において、乗算累算器525は、各チャネルに6つのフェザリングユニットを実装することができる。
【0030】
RAPアーキテクチャ500は、有限状態マシンの複数の状態に亘って様々な係数を使用することによって、1つ以上のプログラム可能な双2次フィルタを実装することができる。これらの双2次フィルタは、DSPからのノイズフィルタを実装して、アンチノイズ信号を生成する。また、RAPアーキテクチャ500は、アンチノイズ/ノイズ信号544を音声信号543と混合することができる。さらに、RAPアーキテクチャ500は、必要に応じて、音声信号543にフィルタを適用することができる。
【0031】
図6は、別の例示的なRAPアーキテクチャ600を示す概略図である。RAPアーキテクチャ600は、RAPアーキテクチャ500の特定の実装例である。明瞭化のために、RAPアーキテクチャ600は、音声信号処理を省略してANCを生成するように動作するように示されている。RAPアーキテクチャ600は、信号データを乗算および/または加算するための回路である乗算累算器625を含む。また、RAPアーキテクチャ600は、乗算累算器625の出力を格納するためのメモリ回路である累算器レジスタ622を含む。乗算累算器625と累算器レジスタ622とは、乗算累算器525を実装することができる。さらに、RAPアーキテクチャ600は、双2次エンジン624および双2次出力レジスタ628を含む。双2次エンジン624と双2次出力レジスタ628とは、双2次エンジン524を実装することができる。双2次エンジン624は、フィルタを実装するための回路であり、双2次出力レジスタ628は、双2次エンジン624による計算の結果を格納するためのメモリである。また、RAPアーキテクチャ600は、双2次エンジン624からの部分的な結果を格納するためのメモリユニットであり得る双2次メモリ621を含む。双2次メモリ621は、双2次状態メモリ521を実装することができる。
【0032】
図示のように、これらのコンポーネントは、マルチプレクサ(MUX)661、MUX662およびMUX663によって互いに連結され、外部ローカルメモリおよび/または(例えばDSPからの)リモート信号に連結される。図示のように、これらのコンポーネントは、それぞれがフェザリング/圧縮ゲイン523、ゲイン係数526および双2次係数527と実質的に同様であり得るフェザリング係数623、乗算係数626および双2次係数627を受信することができる。これらのコンポーネントは、ANCを行うために、マイクロフォン/スピーカからノイズ信号644を受信することができる。ノイズ信号644は、ノイズ信号144と実質的に同様であってもよい。また、これらのコンポーネントは、サイクルインデックス647を受信することができる。サイクルインデックス647は、RAPデューティサイクルにおける現在の位置を示すデータである。図示のように、様々な信号、インデックスおよび係数は、MUX661~663を介して、対応するコンポーネントにルーティングされる。
【0033】
動作中、サイクルインデックス647を用いて、対応する状態の双2次係数627を選択する。双2次係数627および/またはサイクルインデックス647は、双2次エンジン624に転送され、ノイズ信号644に適用される。状態情報は、双2次メモリ621から取得することができる。また、部分的な結果は、双2次メモリ621に格納されてもよく、および/または双2次係数627にフィードバックされ、次の状態に適用されてもよい。最終の結果は、乗算累算器625に出力するために、双2次出力レジスタ662に格納されてもよい。さらに、双2次出力レジスタ662からの出力は、双2次エンジン624にフィードバックされることができる。また、累算器レジスタ622からの出力は、双2次エンジン624にフォワードバックされることができる。さらに、ノイズ信号644は、双2次エンジン624をバイパスし、乗算累算器625に直接に移すことができる。
【0034】
また、サイクルインデックス647を用いて、対応する状態の乗算係数626を選択する。乗算係数626、フェザー係数623および/またはサイクルインデックス626は、乗算累算器625に転送され、様々な入力に適用される。乗算累算器625は、双2次出力レジスタ662の出力、ノイズ信号644および/または乗算累算器625の出力を入力として受信することができる。換言すれば、乗算累算器625の出力は、乗算累算器の入力にフィードバックされることができる。対応する状態に基づいて係数を入力に適用すると、乗算累算器625の出力は、他のコンポーネントに出力するために、累算器レジスタ622に格納される。累算器レジスタ622の出力および/または双2次出力レジスタ628の出力は、RAPアーキテクチャ600の出力としてスピーカに転送することもできる。以下で説明するように、RAPアーキテクチャ600の相互接続によって、コンポーネントをプログラムすることによって、様々な音声処理スキームに適用される様々なトポロジを実装することができる。
【0035】
図7は、RAPアーキテクチャ500および/または600に従って実装される、RAP120、320および/または420などのRAPの例示的なプログラマブルトポロジ700を示す概略図である。トポロジ700は、音声信号を出力すると共に、ANCを提供するように構成される。トポロジ700は、第1の音声信号743(音声1)および第2の音声信号753(音声2)を受信する。音声信号743および753は、音声信号143と実質的に同様であってもよく、左右の耳に各々与える音声を含んでもよい。いくつかの例において、音声信号743および753は、それぞれ、期待される出力信号449および音声信号443であってもよい。また、トポロジ700は、ノイズ信号144と実質的に同様であり得るFBマイクロフォン信号744およびFFマイクロフォン信号754を受信する。音声信号743および753並びにFBマイクロフォン信号744およびFFマイクロフォン信号754を含むノイズ信号を用いて、ANC用の音声信号を出力745として生成する。
【0036】
トポロジは、アンプ729を用いて、第1の音声信号743、第2の音声信号753およびFBマイクロフォン信号744を増幅する。このようなアンプは、最初の3つの状態において、ゲイン係数を使用して、乗算累算器525などの乗算累算器によって実装されてもよい。第2の音声信号753およびFBマイクロフォン信号744は、ミキサ725によって混合される。ミキサ725は、第4の状態において乗算累算器によって実装されてもよい。ミキサの出力は、一連の双2次フィルタ724、この例では直結している8つの連続双2次フィルタ724を介して転送される。双2次フィルタ724は、(例えば、8つの状態に亘って)対応する双2次係数527の組を使用して、乗算累算器および双2次エンジン524によって実装されてもよい。同時に、FFマイクロフォン信号754は、一連の双2次フィルタ724、この例では8つの双2次フィルタ724を介して転送される。FFマイクロフォン信号754と混合された第2の音声信号753およびFBマイクロフォン信号744とは、各々のアンプ729によって増幅され、ミキサ725によって混合される(例えば、各々が乗算累算器の対応する状態に実装された)。次に、混合されたFFマイクロフォン信号754、第2の音声信号753およびFBマイクロフォン信号744は、フェザリングアンプ726に転送され、フェザリングされる。これは、例えば、フェザリング/圧縮ゲイン523からのフェザリング係数を使用して、乗算累算器によって実装されてもよい。フェザリング結果は、(例えば、乗算累算器によって実装され得る)ミキサ725によって混合され、出力745を生成する。
【0037】
上記の議論から分かるように、双2次エンジンおよび乗算累算器のコンポーネントは、様々な状態で、各信号からのサンプルに対して様々な演算を適用することができる。双2次エンジンおよび乗算累算器は、様々な状態に亘ってトポロジ700を実装し、サンプルに対して対応する演算を実行することによって、出力745を生成する。一組のサンプルに対して出力745を生成した後、別の組のサンプルを取り込み、様々な状態で変更することによって、別の出力745を生成する。さらに、関連する係数に従って双2次エンジンおよび乗算累算器の状態を再プログラミングすることによって、トポロジ700を変更することができる。
【0038】
図8は、RAPアーキテクチャ500および/または600に従って実装される、RAP120、320および/または420などのRAPの別の例示的なプログラム可能なトポロジ800を示す概略図である。トポロジ800は、トポロジ700を再プログラミングすることによって作成される。トポロジ800は、適応型ANC、環境認識および側音強調を提供するように構成されている。したがって、ユーザから入力を受信すると、環境認識および側音を含むようにトポロジ700を再構成することによって、トポロジ800を取得することができる。環境認識は、特定の周波数帯域を強調するように動作する。例えば、人間の発話に関連する周波数帯域を強調することによって、ANCは、ノイズをキャンセルすると共に、発話を会話の一部として強調することができる。側音は、ユーザの声を指す。したがって、トポロジ800を用いて側音強調を提供することによって、ユーザは、ユーザ自身の声を明瞭に聴くことができる。よって、トポロジ800は、環境ノイズを低減できる一方、ユーザがユーザ自分の声だけでなく他人の声も明瞭に聴くことを可能にする。したがって、トポロジ800を用いて、一対のヘッドフォンを聴覚強化装置に変換することができる。
【0039】
トポロジ800は、トポロジ700と同様に、双2次エンジン524などの双2次エンジンによって実装され得る双2次フィルタ824を使用する。また、トポロジ800は、トポロジ700と同様に、乗算累算器525などの乗算累算器によって実装され得るアンプ829、ミキサ825およびフェザリングアンプ826を使用する。トポロジ800は、各々が第1の音声信号743、第2の音声信号753、FBマイクロフォン信号744およびFFマイクロフォン信号754と実質的に同様である第1の音声信号843(音声1)、第2の音声信号853(音声2)、FBマイクロフォン信号844およびFFマイクロフォン信号854を受信する。
【0040】
FFマイクロフォン信号854は、環境認識を行うために使用される。例えば、FFマイクロフォン信号854の経路上の双2次フィルタ824は、環境認識フィルタとして機能する。したがって、トポロジ800がアンチノイズ信号を生成しているときに、FFマイクロフォン信号854の経路に環境認識フィルタを適用することによって、ノイズ信号の所定の周波数帯域を強化することができる。これによって、所定の周波数帯域、例えば発話帯域を強化することができる。FFマイクロフォン信号854の経路は、所定の周波数帯域が強化されたアンチノイズ信号をスピーカに転送し、出力845としてユーザに出力することができる。
【0041】
さらに、トポロジ800は、第1の音声マイクロフォン信号848(音声マイク1)および第2の音声マイクロフォン信号858(音声マイク2)を使用する。これらの信号は、ユーザの声を録音するために配置されたマイクロフォン、例えばマイクロフォン137によって録音されてもよい。例えば、このようなマイクロフォンは、例えば、ヘッドフォンに取り付けられ且つユーザの胸に配置されるラペルクリップに設置されてもよい。したがって、第1の音声マイクロフォン信号848および第2の音声マイクロフォン信号858は、側音(例えば、ユーザの声)のサンプルを含むことができる。
【0042】
機能的に、FBマイクロフォン信号844および第1の音声マイクロフォン信号848の各々は、双2次フィルタ824およびアンプ829を介して転送される。また、第2の音声マイクロフォン信号858および第2の音声信号853は、アンプ829を介して転送される。図示のように、これらの信号は、ミキサ825によって混合される。結果は、一組の双2次フィルタ824、この場合では5つの直列フィルタ、および別のアンプ829を介して転送される。これらの信号は、側音、ANCのFB部分、および音声信号の第2部分を含む。
【0043】
一方、ANCのFF部分および環境認識部分を含むFFマイクロフォン信号854は、フェザリングアンプ826を介して転送される。このフェザリングアンプ826を使用して、環境認識およびANCモードを軽く変更することができる。次に、FFマイクロフォン信号854は、双2次フィルタ824、この場合では3つの直列フィルタおよび5つの直列フィルタを介して並列に送信される。その結果は、アンプ829によって増幅され、ミキサ825によって混合される。混合結果の一部は、双2次フィルタ824、アンプ829および第2のフェザリングアンプ826を介して転送される。混合結果の別の部分は、これらのコンポーネントをバイパスして並列に転送される。経路は、ミキサ825によって共に混合される。第2のフェザリングアンプ826は、コンプレッサを使用して、信号クリッピングなしで強力なFF ANCを可能にする。
【0044】
次に、FFマイクロフォン信号854の経路の結果は、側音、ANCのFB部分および音声信号の第2の部分を含む信号経路に混合される前に、アンプ829によって増幅される。図示のように、FFマイクロフォン信号854経路は、ミキサ825によって、5つの双2次フィルタ824の前後で混合される。このような信号の結果は、ANCをオンおよびオフにするために使用される別のフェザリングアンプ826を通過する。このフェザリングアンプ826は、デジタルコンプレッサを適用することによって、クリッピングをさらに軽減することができる。さらに、第1の音声信号は、アンプ829によって増幅され、ミキサ825によって信号の残り部分と混合される。これによって、音声信号、FFアンチノイズ信号、FBアンチノイズ信号、側音および環境認識の強調が全て混合され、スピーカを介してユーザに再生される出力845を生成する。
【0045】
図9は、例えば双2次エンジン524および/または624などの双2次エンジンによって使用され、本明細書に開示されたノイズ信号、アンチノイズ信号、音声信号および/または他の信号に適用され得る双2次フィルタ900の構造を示す概略図である。一般的に、双2次フィルタは、以下の式1に従って数学的に記述される。
【0046】
【数1】
【0047】
式中、x[n]は、双2次フィルタへの入力であり、y[n]は、双2次フィルタからの出力であり、b、b、b、aおよびaは、双2次係数、例えば双2次係数527および/または627である。したがって、双2次フィルタ900の機能は、これらの係数を変更することによって変更することができる。
【0048】
代わりに、双2次フィルタ900は、異なる係数を使用する。具体的には、図示のように、双2次フィルタ900は、ゲイン係数b(973)、-c(975)、-c(976)、d(974)、およびd(978)を使用する。ゲイン係数973は、調整可能なアンプによって実装されてもよい。他のゲイン係数は、式1を参照して、以下の式2~5によって数学的に定義される。
【0049】
【数2】
【0050】
また、双2次フィルタ900は、乗算累算器によって実装され得る乗算器972を使用する。動作時に、双2次フィルタ900は、入力を受信する。この入力は、ミキサ982およびゲイン係数b(973)を介して出力に向かって転送される。また、入力は、別のミキサ981を介して過去状態ブロック971に転送され、メモリに格納される。次のサイクル/状態において、過去状態ブロック971の出力は、ゲイン係数d(974)を介してミキサ983に転送され、ゲイン係数-c(975)を介してミキサ984に転送され、ミキサ985を介して別の過去状態ブロック972に転送される。別の状態において、過去状態972の出力は、ゲイン係数d(978)を介してミキサ983に転送される。ミキサ983は、過去状態972の出力、ゲイン係数d(978)、過去状態971の出力およびゲイン係数d(974)を混合する。その結果は、ミキサ982に転送され、入力と混合される。また、過去状態972の出力は、ゲイン係数-c(976)を介してミキサ984に転送される。したがって、過去状態972の出力およびゲイン係数-c(976)は、過去状態971の出力およびゲイン係数-c(975)と混合される。その結果は、ミキサ981に転送される。ミキサ981は、ミキサ984からの結果を入力と混合して、過去状態971にフィードバックする。また、双2次フィルタ900は、「0」のゲインまたは「1」のゲインを適用するスイッチ977を使用する。スイッチ977が「1」のゲインを設定する場合、過去状態972の出力は、ミキサ985を介して過去状態972にフィードバックすることができる。スイッチ977が「0」を設定する場合、全ての係数が式1に従って変化することによって、双2次フィルタ900をいわゆる直接型双2次フィルタに変換する。
【0051】
図示のように、第1の状態で変更された入力は、第2の状態で変更された入力と混合され、その後、第3の状態で入力と混合される。したがって、入力信号サンプルは、後で受信されるさらなる入力サンプルを継続的に変更する。
【0052】
留意すべきことは、双2次フィルタのエラー発生源は、量子化であることである。量子化は、例えば過去状態971および/または972で信号サンプルを保存するときに発生する。具体的には、サンプルの保存に使用されたメモリが完全な解像度でサンプルを保存するのに足りない場合、量子化は、丸め誤差の結果として生じる。上述したように、双2次フィルタは、極および零点を使用する。直接型双2次フィルタは、零点を適用することによって信号を減衰させ、量子化の原因となる信号を保存してから、極を適用することによって信号を増幅する。この手法によって、量子化に関連するエラーが増幅される。合理的な信号対雑音比(SNR)を得るために、このような直接型双2次フィルタは、通常、双2次フィルタ900よりも多くのビットを使用する。これに対して、双2次フィルタ900は、信号を増幅し、信号を保存および量子化してから、信号を減衰させる。この手法によって、量子化誤差は、増幅されるではなく減衰される。その結果、双2次フィルタ900は、過去状態メモリ内の同様のビット数を使用する直接型双2次よりも60デシベル(dB)低いSNRを達成することができる。代わりに、双2次フィルタ900は、同様のSNRを達成するために、約10ビット少ないメモリで動作することができ、実質的なスペースを節約する。
【0053】
双2次フィルタ900の動作順序は、係数で分かる。具体的には、b(973)、d(974)およびd(978)は、零点を適用し、-c(975)および-c(976)は、極を適用する。図9に示すように、信号は、過去状態971および972によって量子化される前に、常に極(-c(975)、-c(976))を適用するアンプを通過する。この状態の出力は、後の状態に使用されるために、システムにフィードバックされるまたは零点(例えば、零点b(973)、d(974)およびd(978))を適用するアンプを介して出力される。
【0054】
換言すれば、双2次フィルタ900は、極を使用して、ノイズ信号/アンチノイズ信号サンプルの一部を増幅する。また、双2次フィルタ900は、零点を使用して、ノイズ信号/アンチノイズ信号サンプルの一部を減衰させる。さらに、双2次フィルタ900は、フィルタレジスタを使用して、ノイズ信号/アンチノイズ信号サンプルの量子化を保存する。さらに、双2次フィルタ900は、サンプルを量子化する前にサンプルを増幅し、その後サンプルを減衰させるように構成される。
【0055】
双2次設計の目標は、入力信号の種類およびターゲットフィルタが与えられた場合、所望の性能を達成しながら、格納サイズおよび電流を削減することによって、必要条件を最小限にすることである。上述したように、本明細書に使用された双2次フィルタの目標周波数は、一般的にサンプリングレート(例えば1MHz未満)よりも大幅に小さい音声帯域(例えば20kHz未満)にある。このシナリオ(例えば、中心周波数がサンプリングレートよりも遥かに低い場合)において、双2次フィルタ900の性能は、双2次設計の性能を大幅に上回る。一例として、250Hzで1の品質係数(Q)および40dBのゲインを有するピークフィルタを実装するように約6.144MHzで動作する場合、双2次フィルタ900は、同じビット数で直接型双2次よりも約60dB低いノイズを生成することができる。その結果、約10ビットを節約することができる。
【0056】
別の特徴は、双2次フィルタ900が入力信号に対して乗算器を直接に適用する必要がないことである。これによって、簡単にパイプライン化できる設計が得られる。さらに、b(973)による乗算は、出力の近くに配置される。したがって、双2次フィルタ900は、最終ゲイン段に続くフィルタとして機能する。これは、複数の双2次を直列に使用する場合に便利である。その場合、b(973)乗算を信号乗算ステップに結合することができる。したがって、N個の双2次の場合、直接型双2次は、5N回の乗算を必要とする。対照的に、双2次フィルタ900は、4N+1回の乗算のみを使用する。直列カスケードの出力に乗算器を設けることは、RAPハードウェアアーキテクチャの場合に特に有用であり得る。
【0057】
図10は、RAP I/O 200などのI/Oおよび双2次フィルタ900などの双2次フィルタを含むトポロジ700および/または800などのトポロジを使用するRAPアーキテクチャ500および/または600を備えたRAPを含むネットワーク100、300および/または400などの音響処理ネットワークを動作させる例示的な方法1000を示すフローチャートである。換言すれば、方法1000は、上述した様々な図面に示されたコンポーネントの様々な組み合わせを使用して実施されてもよい。
【0058】
ブロック1001において、DSPは、音声入力に基づいて音声信号を生成する。さらに、DSPは、音声入力および音響処理ネットワークの周波数応答に基づいて、期待の出力信号を生成する。次に、ネットワーク400に示すように、音声信号および期待の出力信号は、DSPからRAPに送信される。
【0059】
ブロック1003において、DSPは、ノイズ信号を受信する。ノイズ信号は、少なくとも1つのマイクロフォンから受信される。DSPは、ノイズ信号に基づいてノイズフィルタを生成する。また、ネットワーク100に示すように、DSPは、ノイズフィルタをDSPからRAPに送信する。上述したように、DSPは、第1の周波数で動作し、RAPは、第1の周波数よりも高い第2の周波数で動作する。
【0060】
ブロック1005において、RAPは、アンチノイズ信号を調整するために、RAP内の現在の圧縮状態を使用して調整可能なアンプを制御する。ネットワーク300に示すように、RAPによって使用されている現在の圧縮状態は、RAPからDSPに送信される。DSPは、ノイズ信号および現在の圧縮状態に基づいて、新たな圧縮状態を決定する。DSPは、調整可能なアンプの制御をサポートするために、新たな圧縮状態をRAPに送信する。新たな圧縮状態は、ピーク信号推定値、瞬間ゲイン、目標ゲイン、攻撃パラメータ、解除パラメータ、ピーク減衰パラメータ、維持パラメータ、アンチノイズ信号のRMS、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0061】
ブロック1007において、RAPは、DSPから、音声信号、期待の出力信号、ノイズフィルタ、および/または新たな圧縮状態を受信すると共に、マイクロフォン(例えば、FFおよび/またはFBマイクロフォン)からのノイズ信号を受信する。
【0062】
ブロック1009において、RAPは、ノイズ信号およびノイズフィルタに基づいて、ANCに使用されるアンチノイズ信号を生成する。さらに、RAPは、アンチノイズ信号を生成するときに、期待の出力信号を基準点として設定することによって、アンチノイズ信号による音声信号のキャンセルを軽減する。アンチノイズ信号は、DSPからのノイズフィルタを実装するようにプログラム可能な双2次フィルタを構成することにより、RAPで生成することができる。例えば、双2次900に示すように、双2次フィルタは、アンチノイズ信号のサンプルを増幅し、アンチノイズ信号のサンプルを量子化してから、アンチノイズフィルタのサンプルを減衰させることができる。
【0063】
ブロック1011において、トポロジ800に関して説明したようにアンチノイズ信号を生成するときに、環境認識フィルタをRAPに適用して、ノイズ信号の所定の周波数帯域を強化する。これにより、所定の周波数帯域、例えば音声に関連する周波数帯域を強化することができる。いくつかの例において、追加のフィルタを適用して、側音を追加することもできる。
【0064】
ブロック1013において、RAPは、音声信号をアンチノイズ信号と混合する。RAPは、得られた信号をスピーカに転送してユーザに出力する。場合によって、得られた信号は、音声、アンチノイズ、側音、所定の周波数帯域を強化した環境認識信号、および/または本明細書に記載の他の特徴を含むことができる。
【0065】
ブロック1015において、RAPは、アンチノイズ信号をDACアンプコントローラに転送して、アンチノイズ信号レベルに基づいてDACアンプの調整をサポートすることによって、クリッピングおよび他の乱れを軽減する。なお、上述の方法1000は、本明細書に開示された全ての特徴の同時動作を説明しようとする。したがって、全ての機能を常にアクティブにする必要がないため、方法1000は、多くの選択ステップを含む。さらに、方法1000は、絶えず動作する可能性があるため、常に示された順序で動作するとは限らない。
【0066】
本開示の例は、特に製作されたハードウェア上、ファームウェア上、デジタル信号処理装置上、またはプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作することができる。本明細書に使用された「コントローラ」または「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、特定用途向け集積回路(ASIC)および専用ハードウェアコントローラを含むことを意図している。本開示の1つ以上の態様は、1つ以上のプロセッサ(監視モジュールを含む)または他の装置によって実行される1つ以上のプログラムモジュールなどのコンピュータ使用可能データおよびコンピュータ実行可能命令(例えば、コンピュータプログラム製品)に具体化することができる。一般に、プログラムモジュールは、コンピュータまたは他の装置のプロセッサによって実行されるときに特定のタスクを実行するかまたは特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。コンピュータ実行可能命令は、非一時的コンピュータ可読媒体、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、キャッシュ、電気的消去可能プログラム可能な読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリまたは他のメモリ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、デジタルビデオディスク(DVD)、またはその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置、またはその他の磁気記憶装置、任意の技術で実装された他の揮発性または不揮発性媒体、取り外し可能または取り外し不可能な媒体に格納することができる。コンピュータ可読媒体は、信号自体および一時的な信号伝送形態を除外する。また、機能は、全体的にまたは部分的にファームウェアまたはハードウェア等価物、例えば、集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などで具現化することができる。特定のデータ構造を用いて、本開示の1つ以上の態様をより効果的に実施することができる。このようなデータ構造は、本明細書に記載のコンピュータ実行可能命令およびコンピュータ使用可能データの範囲に含まれると考えられる。
【0067】
本開示の態様は、様々な修正形態および代替形態で動作する。特定の態様は、図面において例として示されており、以下に詳細に説明される。しかしながら、本明細書に開示された例は、説明を明確にする目的で提示されたものであり、特に明記しない限り、開示された一般的概念の範囲を本明細書に記載された特定の例に限定することを意図していない。したがって、本開示は、添付の図面および特許請求の範囲に照らして説明された態様の全ての修正物、等価物および代替物を網羅することを意図している。
【0068】
本明細書における実施形態、実施態様および実施例などの言及は、説明された項目が特定の特徴、構造または特性を含み得ることを示している。しかしながら、開示された態様の全ては、必ずしも特定の特徴、構造または特性を含まなくてもよい。また、このような表現は、特に明記しない限り、必ずしも同一の態様を指すとは限らない。さらに、特定の態様に関連して特定の特徴、構造または特性を説明した場合、このような特徴、構造、または特性は、他の態様に関連して明示的に説明されたか否かにかかわらず、別の態様に適用することができる。
【0069】
実施例
以下、本明細書に開示された技術の例示的な実施例を提供する。本技術の実施形態は、以下に記載される実施例のうち任意の1つ以上または任意の組み合わせを含んでもよい。
【0070】
実施例1は、音響処理ネットワークを含む。音響処理ネットワークは、第1の周波数で動作するデジタル信号プロセッサ(DSP)を備え、DSPは、少なくとも1つのマイクロフォンからノイズ信号を受信し、およびノイズ信号に基づいてノイズフィルタを生成する。音響処理ネットワークは、第1の周波数よりも高い第2の周波数で動作するリアルタイム音響プロセッサ(RAP)を備え、RAPは、マイクロフォンからノイズ信号を受信し、DSPからノイズフィルタを受信し、およびノイズ信号およびノイズフィルタに基づいて、能動型ノイズキャンセル(ANC)に使用されるアンチノイズ信号を生成する。
【0071】
実施例2は、実施例1の音響処理ネットワークを含み、RAPは、アンチノイズ信号を増幅するための調整可能なアンプと、調整可能なアンプを制御することによって、アンチノイズ信号の乱れを軽減するためのコンプレッサ回路とを含む。
【0072】
実施例3は、実施例2の音響処理ネットワークを含み、RAPは、圧縮状態を格納するための圧縮状態レジスタをさらに含み、コンプレッサ回路は、圧縮状態に基づいて、調整可能なアンプをさらに制御する。
【0073】
実施例4は、実施例3の音響処理ネットワークを含み、圧縮状態は、ピーク信号推定値、瞬間ゲイン、目標ゲイン、攻撃パラメータ、解除パラメータ、減衰パラメータ、維持パラメータ、またはそれらの組み合わせを含む。
【0074】
実施例5は、実施例3の音響処理ネットワークを含み、圧縮状態は、アンチノイズ信号の二乗平均平方根(RMS)を含む。
【0075】
実施例6は、実施例1~4の音響処理ネットワークを含み、DSPは、RAPから現在の圧縮状態を受信し、ノイズ信号および現在の圧縮状態に基づいて、新たな圧縮状態を決定し、および新たな圧縮状態をRAPに転送することによって、調整可能なアンプの制御をサポートする。
【0076】
実施例7は、実施例1~6の音響処理ネットワークを含み、RAPは、DSPからのノイズフィルタを実装し、アンチノイズ信号を生成するための1つ以上のプログラム可能な双2次フィルタを含む。
【0077】
実施例8は、実施例7の音響処理ネットワークを含み、双2次フィルタは、1つ以上の極を使用してアンチノイズ信号のサンプルの一部を増幅し、1つ以上の零点を使用してアンチノイズ信号のサンプルの一部を減衰し、フィルタレジスタを使用してアンチノイズ信号のサンプルの量子化を保存し、双2次フィルタは、サンプルを量子化する前にサンプルを増幅し、その後、サンプルを減衰させる。
【0078】
実施例9は、実施例1~8の音響処理ネットワークを含み、マイクロフォンは、フィードフォワードマイクロフォンであり、RAPは、さらに、アンチノイズ信号を生成するときに、環境認識フィルタを適用してノイズ信号の所定の周波数帯域を強化することによって、強化された所定の周波数帯域を生成し、強化された所定の周波数帯域を含むアンチノイズ信号をスピーカに転送して、ユーザに出力する。
【0079】
実施例10は、実施例1~9の音響処理ネットワークを含み、マイクロフォンからノイズ信号サンプルを受信してから対応するアンチノイズ信号サンプルをスピーカに転送するまでの遅延は、100ミクロ秒未満である。
【0080】
実施例11は、実施例1~10の音響処理ネットワークを含み、DSPは、さらに、音声入力に基づいて音声信号を生成し、および音声入力および音響処理ネットワークの周波数応答に基づいて、期待の出力信号を生成し、RAPは、さらに、DSPから音声信号を受信し、音声信号とアンチノイズ信号とを混合し、およびアンチノイズ信号を生成するときに、期待の出力信号を基準点として設定することによって、アンチノイズ信号による音声信号のキャンセルを軽減する。
【0081】
実施例12は、実施例1~11の音響処理ネットワークを含み、RAPは、アンチノイズ信号をデジタルアナログコンバータ(DAC)アンプコントローラに転送することによって、アンチノイズ信号レベルに基づいてDACアンプの調整をサポートするようにさらに構成される。
【0082】
実施例13は、方法を含む。方法は、第1の周波数で動作するデジタル信号プロセッサ(DSP)でノイズ信号を受信することを含み、ノイズ信号は、少なくとも1つのマイクロフォンから受信され、ノイズ信号に基づいて、DSPでノイズフィルタを生成することと、ノイズフィルタを、DSPから第1周波数よりも高い第2周波数で動作するリアルタイム音響プロセッサ(RAP)に送信することと、RAPで、マイクロフォンからノイズ信号を受信することと、ノイズ信号およびノイズフィルタに基づいて、RAPで能動型ノイズキャンセル(ANC)に使用されるアンチノイズ信号を生成することとを含む。
【0083】
実施例14は、実施例13の方法を含み、方法、RAPで現在の圧縮状態を使用して調整可能なアンプを制御することによって、アンチノイズ信号を調整することと、現在の圧縮状態をRAPからDSPに送信することと、ノイズ信号および現在の圧縮状態に基づいて、DSPで新たな圧縮状態を決定することと、新たな圧縮状態をDSPからRAPに送信することによって、調整可能なアンプの制御をサポートすることとをさらに含む。
【0084】
実施例15は、実施例14の方法を含み、圧縮状態は、アンチノイズ信号のピーク信号推定値、瞬間ゲイン、目標ゲイン、二乗平均平方根(RMS)またはそれらの組み合わせを含む。
【0085】
実施例16は、実施例13~15の方法を含み、アンチノイズ信号は、DSPからのノイズフィルタを実装するように1つ以上のプログラム可能な双2次フィルタを構成することによって、RAPで生成される。
【0086】
実施例17は、実施例16の方法を含み、双2次フィルタは、アンチノイズ信号のサンプルを増幅してから、アンチノイズ信号のサンプルを量子化し、その後、アンチノイズフィルタのサンプルを減衰させる。
【0087】
実施例18は、実施例13~17の方法を含み、方法は、アンチノイズ信号を生成するときに、RAPで環境認識フィルタを適用してノイズ信号の所定の周波数帯域を強化することによって、強化された所定の周波数帯域を生成することと、強化された所定の周波数帯域を含むアンチノイズ信号をスピーカに転送して、ユーザに出力することをさらに含む。
【0088】
実施例19は、実施例13~18の方法を含み、方法は、音声入力に基づいて、DSPで音声信号を生成することと、音声入力および音響処理ネットワークの周波数応答に基づいて、DSPで期待の出力信号を生成することと、音声信号をDSPからRAPに送信することと、RAPで音声信号とアンチノイズ信号とを混合することと、アンチノイズ信号を生成するときに、期待の出力信号を基準点として設定することによって、アンチノイズ信号による音声信号のキャンセルを軽減することとをさらに含む。
【0089】
実施例20は、実施例13~19の方法を含み、方法は、アンチノイズ信号をデジタルアナログコンバータ(DAC)アンプコントローラに転送することによって、アンチノイズ信号レベルに基づいてDACアンプの調整をサポートすることをさらに含む。
【0090】
開示された主題の前述した実施例は、既に説明されたまたは当業者に明らかである多くの利点を有する。しかしながら、開示された装置、システムまたは方法の全ては、これらの利点または特徴の全てを備える必要がない。
【0091】
さらに、書面記載は、特定の特徴を言及する。開示された本明細書は、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせを含むことを理解すべきである。特定の態様または実施例に開示された特定の特徴は、可能な範囲で他の態様および実施例に適用することができる。
【0092】
また、本願において2つ以上の所定の工程または操作を有する方法を言及する場合、文脈上でその可能性を排除しない限り、所定の工程または操作は、任意の順序でまたは同時に実施されてもよい。
【0093】
本開示の特定の例が例示の目的で例示され記載されてきたが、理解すべきことは、本開示の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができることである。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲のみによって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10