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特許7163321工業プロセス用のフィールド機器及びフィールド機器の充電電力調節方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】工業プロセス用のフィールド機器及びフィールド機器の充電電力調節方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221024BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20221024BHJP
   G08C 19/02 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
H02J7/00 B
G08C19/00 G
G08C19/02 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019572127
(86)(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018027219
(87)【国際公開番号】W WO2019005264
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-01-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】15/634,339
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】ワインホールド,ニコラス,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ワイマン,マシュー,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ブロンチック,アンドリュー,ジェームズ
【合議体】
【審判長】角田 慎治
【審判官】寺谷 大亮
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-157865(JP,A)
【文献】特表2011-524716(JP,A)
【文献】特表2013-526737(JP,A)
【文献】特表2009-501458(JP,A)
【文献】特開2007-66035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
G08C13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を受電し、2線プロセス制御ループを介してデータを伝達するように構成された機器回路と、
前記電力の未使用部分を電気グランドに分流するように構成されたシャント回路と、
電力が供給されるバルク供給装置と、
前記未使用部分の大きさの増加に伴い、前記バルク供給装置に提供される過剰部分が増加するよう調整することで、前記未使用部分の大きさに基づくとともに、充電速度を制御して前記バルク供給装置を充電するように構成された充電電力調節器と、
前記バルク供給装置により給電される補助回路と、
を備えることを特徴とする工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項2】
前記充電電力調節器が、
供給電圧を前記バルク供給装置に接続する可変インピーダンスであって、前記バルク供給装置に送られる前記電力の前記過剰部分が該可変インピーダンスに基づいて変化する可変インピーダンスと、
前記可変インピーダンスを調整し、前記未使用部分に基づいて前記電力の前記過剰部分を調節するように構成されたインピーダンス調節器と、
を備える請求項1に記載の工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項3】
前記シャント回路が、抵抗を含み、
前記インピーダンス調節器が、前記抵抗全体の電圧低下に基づいて前記可変インピーダンスを調整する請求項2に記載の工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項4】
前記インピーダンス調節器が、前記抵抗全体の前記電圧低下に基づいて制御信号を出力し、
前記可変インピーダンスが、前記制御信号に基づいて該可変インピーダンスを調整するトランジスタを含む請求項3に記載の工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項5】
前記バルク供給装置が、関連する時定数を有するキャパシタを備え、
前記インピーダンス調節器が、前記電力の前記未使用部分に基づいて前記時定数を制御する請求項2に記載の工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項6】
前記バルク供給装置が、バッテリを備える請求項1に記載の工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項7】
前記バルク供給装置の電荷を示す電荷出力を有する比較器をさらに備え、前記機器回路のコントローラが前記電荷出力に基づいて前記補助回路の作動を制御する請求項1に記載の工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項8】
プロセスパラメータを検知するように構成されたセンサと、
プロセスを制御するように構成された制御要素と、
の少なくとも一方をさらに備える請求項1に記載の工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項9】
前記機器回路が、
前記プロセスパラメータを示す前記センサからの出力を処理するように構成された測定回路と、
前記制御要素を制御するように構成された制御回路と、
の少なくとも一方を備える請求項8に記載の工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項10】
前記補助回路が、データを外部機器に伝達するように構成されている請求項1に記載の工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項11】
前記補助回路が、Bluetooth(登録商標)通信プロトコルに従ってデータを前記外部機器に伝達するように構成されている請求項10に記載の工業プロセス用のフィールド機器。
【請求項12】
工業プロセス用のフィールド機器を動作させる方法であって、前記フィールド機器が、機器回路、シャント回路、電力が供給されるバルク供給装置、充電電力調節器、および補助回路を備え、
前記機器回路を用いて電力を受電し、2線プロセス制御ループを介してデータを伝達する処理と、
前記シャント回路を用いて前記電力の未使用部分を電気グランドに分流する処理と、
前記充電電力調節器を用いて、前記未使用部分の大きさの増加に伴い、前記バルク供給装置に提供される過剰部分が増加するよう調整することで前記電力の過剰部分を調節し、前記未使用部分の大きさに基づくとともに充電速度を制御して前記バルク供給装置を充電する処理と、
前記バルク供給装置を用いて前記補助回路に給電する処理と、
を含むことを特徴とするフィールド機器の充電電力調節方法。
【請求項13】
前記充電電力調節器が、
供給電圧を前記バルク供給装置に接続する可変インピーダンスであって、前記バルク供給装置に送られる前記電力の前記過剰部分が該可変インピーダンスに基づいて変化する可変インピーダンスと、インピーダンス調節器と、を備え、
前記電力の前記過剰部分を調節することが、前記インピーダンス調節器を用いて、前記電力の前記未使用部分に基づいて前記可変インピーダンスを調整することを含む請求項12に記載の充電電力の調節方法。
【請求項14】
前記シャント回路が抵抗を含み、
該調方法が、前記抵抗全体の電圧低下を検知することを含む前記電力の前記未使用部分を検知することを含み、
前記可変インピーダンスを調整することが、前記検知した電圧低下に基づいて前記可変インピーダンスを調整することを含む請求項13に記載の充電電力の調節方法。
【請求項15】
前記インピーダンス調節器を用いて、前記検知した電圧低下に基づいて制御信号を出力する処理と、
前記制御信号を前記可変インピーダンスのトランジスタに伝達することと、前記制御信号に基づいて前記可変インピーダンスを調整することから前記可変インピーダンスを調整する処理と、を含む請求項14に記載の充電電力の調節方法。
【請求項16】
前記バルク供給装置が、関連する時定数を有するキャパシタを備え、
前記電力の前記過剰部分を調節することが、前記インピーダンス調節器を用いて前記電力の前記未使用部分に基づいて前記時定数を制御することを含む請求項13に記載の充電電力の調節方法。
【請求項17】
前記バルク供給装置の電荷を検知する処理と、
前記機器回路のコントローラを用いて前記検知した電荷に基づいて前記補助回路の作動を制御する処理と、をさらに含む請求項12に記載の充電電力の調節方法。
【請求項18】
センサを用いてプロセスパラメータを検知する処理と、
制御要素を用いてプロセスを制御する処理と、
の少なくとも一方を実行することをさらに含む請求項12に記載の充電電力の調節方法。
【請求項19】
前記補助回路を用いてデータを外部機器に伝達する処理をさらに含む請求項12に記載の調節方法。
【請求項20】
データを前記外部機器に伝達する処理は、Bluetooth(登録商標)通信プロトコルに従ってデータを前記外部機器に伝達する処理を含む請求項19に記載の充電電力の調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、工業プロセス制御またはモニタリングシステムに関する。より具体的には、本開示の実施形態は、補助回路に給電するための、フィールド機器における充電電力の調節に関する。
【背景技術】
【0002】
工業環境においては、工業および化学プロセス等の在庫をモニタリングして制御するために制御システムが使用されている。通例、制御システムは、工業プロセスの重要な場所に分散されてプロセス制御ループにより制御室の制御回路に結合されたフィールド機器を用いて、これらの機能を行う。用語「フィールド機器」は、工業プロセスの測定、制御、および/またはモニタリングに用いられる現時点で既知または未知のすべての機器を含めて、分散制御またはプロセスモニタリングシステムにおいてある機能を行う任意の機器を表す。
【0003】
典型的なフィールド機器は、1つ以上のセンサを用いたプロセスパラメータのモニタリングと測定、および/または1つ以上の制御要素を用いたプロセス制御動作等、フィールド機器が従来のタスクを行うことを可能にする機器回路を含む。例示的なセンサは、圧力センサ、流量センサ、レベルセンサ、温度センサ、および工業プロセスにおいて用いられる他のセンサを含む。例示的な制御要素は、アクチュエータ、ソレノイド、バルブ、および他の制御要素を含む。
【0004】
また、フィールド機器の機器回路は、センサおよび/または制御要素の制御に用いられるとともに、たとえば4~20mAプロセス制御ループ等のプロセス制御ループを介したプロセス制御室または他の回路との通信に用いられるコントローラも含んでもよい。いくつかの設備において、プロセス制御ループは、フィールド機器に給電するために、調節された電流および/または電圧をフィールド機器に送るために用いられる。また、プロセス制御ループは、検知されたプロセスパラメータに対応するプロセスパラメータ値等のデータを搬送可能である。このデータは、アナログ信号またはデジタル信号として、プロセス制御ループを介して伝達され得る。
【0005】
フィールド機器は、プロセス制御ループにより給電される場合、通例、ごくわずかな電力しか消費しないように設計されている。たとえば無線データ通信またはフラッシュ書き込み等、機器回路が通例提供する以外の動作を提供するために、フィールド機器は一般的に、このような動作を行うのに用いられる回路に給電可能な太陽電池パネル等の補助電源か、またはバルク供給回路(たとえば、バッテリまたはキャパシタ)を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のフィールド機器におけるバルク供給回路は、動作を行うのに用いられる回路への給電に十分な電流を提供できるようになるまでトリクル充電される。トリクル充電は、機器回路が常に、そのプロセスパラメータのモニタリングもしくは測定および/またはプロセス制御機能を行うのに十分な電力を確実に有するように、ごく低速に設定されている。たとえば、バルク供給回路がキャパシタを充電するように構成されている場合、充電回路は、機器回路に対する最悪ケースの電力量に制限されたキャパシタを充電するために、固定の長い時定数を有さざるを得ない。その結果、バルク供給装置は、充電速度の向上を可能にするような、制御ループからの過剰な電力が利用可能であっても、非常にゆっくりと充電される。また、フィールド機器が大電力動作を行うことができる周波数は、非常に低い。
【0007】
補助動作が行われ得る低周波数は、複数の動作を行って無線データ通信等の所望のタスクを完了させることが必要な場合に問題となる可能性がある。たとえば、利用可能な電力が制限されていることから、単一の無線データ通信では、少量のデータしか送信できない可能性がある。このため、データ量がより多い場合は、バルク供給回路の充電とバルク供給回路の放電とを複数サイクル行って、無線通信回路に給電する必要がある。バルク供給回路の充電が遅く、その結果として、動作を行うことができる周波数が低いことから、データ通信を行うにはかなりの時間を要する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態は、補助回路の給電に用いられるバルク供給装置の充電を調節するように構成された工業プロセス用のフィールド機器を対象とする。別の実施形態は、フィールド機器を動作させる方法を対象とする。
【0009】
フィールド機器の一実施形態は、機器回路、シャント回路、バルク供給装置、充電電力調節器、および補助回路を含む。機器回路は、電力を受電し、2線プロセス制御ループを介してデータを伝達するように構成されている。シャント回路は、電力の未使用部分を電気グランドに分流するように構成されている。充電電力調節器は、電力の過剰部分を調節し、未使用部分に基づいてバルク供給装置を充電するように構成されている。補助回路は、バルク供給装置により給電される。
【0010】
方法の実施形態は、機器回路、シャント回路、バルク供給装置、充電電力調節器、および補助回路を含む、工業プロセス用のフィールド機器の動作を対象とする。方法の一実施形態においては、電力を受電し、機器回路を用いて、2線プロセス制御ループを介してデータを伝達する。シャント回路を用いて、電力の未使用部分を電気グランドに分流する。充電電力調節器を用いて、電力の過剰部分を調節し、未使用部分に基づいてバルク供給装置を充電する。バルク供給装置を用いて、補助回路に給電する。
【0011】
本概要は、さまざまな概念(以下の詳細な説明において詳述される)を簡略化した形態で導入するために提供している。本概要は、特許請求の範囲に係る主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものでもなければ、特許請求の範囲に係る主題の範囲の決定の助けに使用されることを意図したものでもない。特許請求の範囲に係る主題は、背景に記載のありとあらゆる不都合を解消する実施態様に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態に係る2線プロセス制御ループに結合された例示的なフィールド機器の簡易ブロック図である。
図2】本開示の実施形態に係る、図1のフィールド機器の例示的な回路図である。
図3】本開示の実施形態に係る、フィールド機器を動作させる方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本開示の実施形態をより詳細に説明する。ただし、本開示の種々実施形態は、多くの異なる形態で具現化可能であり、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的かつ完全で、当業者に対して本開示の範囲が十分に伝わるように提供されている。
【0014】
以下の説明においては、実施形態の十分な理解が得られるように、具体的詳細を与える。ただし、当業者であれば、これらの具体的詳細なく実施形態を実現可能であることが了解される。たとえば、実施形態の詳細が不必要に不明瞭となることのないように、回路、システム、ネットワーク、プロセス、フレーム、支持部、コネクタ、モータ、プロセッサ、および他の構成要素を示していない場合も、または、ブロック図の形態で示している場合もある。
【0015】
本開示の実施形態のコンピュータプログラムまたはソフトウェア態様は、コンピュータ可読媒体またはメモリに格納されたコンピュータ可読命令またはコードを含み得る。1つ以上のプロセッサ(たとえば、中央演算処理装置またはコントローラ)によるプログラム命令の実行によって、該1つ以上のプロセッサは、本明細書に記載の1つ以上の機能または方法ステップを行うことになる。任意適当な特許主題に相応しいコンピュータ可読媒体またはメモリが利用されてもよい。このようなコンピュータ可読媒体またはメモリは、一過性の波も信号も含まない。
【0016】
また、本開示の実施形態は、フローチャート図およびブロック図を用いても説明可能である。フローチャートおよびブロック図は、動作を逐次プロセスとして説明し得るものの、動作の多くは、並列または同時に行うことができる。また、動作の順序は、並べ替えることができる。プロセスは、その動作が完了となった場合に終了となるが、本明細書に図示も記載もない付加的なステップを有することも可能である。
【0017】
本開示の実施形態は一般的に、工業プロセス用のフィールド機器と、フィールド機器を使用する方法とを対象とする。図1は、本開示の実施形態に係る、例示的なフィールド機器100の簡易ブロック図である。フィールド機器100は、2線プロセス制御ループ104を介して制御室102に結合されている。
【0018】
いくつかの実施形態においては、フィールド機器100が機器回路106を含んでおり、機器回路106は、たとえばコントローラ108、1つ以上のセンサまたは制御要素110、測定または制御回路112、デジタル-アナログ変換器(DAC)114、端子ブロック116、および/または電源回路118等の、従来のフィールド機器構成要素を含んでもよい。また、センサまたは制御要素110は、機器回路106から分離され、機器100から物理的に分離されていてもよい。制御室102は、プロセス制御ループ104を介して端子ブロック116を通じてフィールド機器100に給電する電源を含む。電源回路118は、プロセス制御ループ104から受電される電力を調節して、フィールド機器100の構成要素に電力を供給する。
【0019】
制御室102とフィールド機器100との間の通信は、従来のアナログおよび/またはデジタル通信プロトコルに従って、制御ループ104を介して行われてもよい。いくつかの実施形態において、プロセス制御ループ104は、4~20mAプロセス制御ループを含み、プロセス制御ループ104を流れるループ電流Iのレベルによってプロセス変数が表されてもよい。例示的なデジタル通信技術は、HART(登録商標)通信規格等、2線プロセス制御ループ104のアナログ電流レベルに対して変調されるデジタル信号を含む。また、Foundation(登録商標)FieldBusおよびProfibus通信プロトコル等、他の純粋なデジタル技術も採用されてもよい。たとえばコントローラ108およびDAC114によって、フィールド機器100用の適当な通信回路が表されてもよい。
【0020】
フィールド機器100は一般的に、制御室102から遠隔に位置付けられ、パイプ、タンク、または別の工業プロセス等、工業プロセス(図示せず)に結合されてもよい。フィールド機器100は、ボックス110によって表される1つ以上のセンサを用いて、プロセスの温度、レベル、圧力、流量、または別のパラメータ等、プロセスのパラメータの検知または測定に用いられてもよい。例示的なセンサ110は、圧力センサ、温度センサ、レベルセンサ、流量センサ、および/またはプロセスパラメータの検知もしくは測定に用いられる他のセンサを含む。また、フィールド機器100は、ボックス110によって表される1つ以上の制御要素を用いて、プロセスの一態様を制御するようにも構成されてもよい。例示的な制御要素110は、アクチュエータ、ソレノイド、バルブ、およびフィールド機器においてプロセスの制御に用いられる他の従来のプロセス制御要素を含む。
【0021】
測定または制御回路112は、センサまたは制御要素110と相互作用する回路を表す。たとえば、回路112は、センサからの出力をコントローラ108による使用のために変換する測定回路を含んでもよい。また、回路112は、コントローラ108から受信される信号に応答して制御要素を制御するのに用いられてもよい。DAC114は、コントローラ108による使用により、たとえばNPNトランジスタ119の制御によってセンサ110が検知するプロセスパラメータの値を示すようにループ電流Iを調整すること等により、2線プロセス制御ループ104を介して制御室102に伝達されるアナログ信号へと、デジタル信号を変換してもよい。
【0022】
コントローラ108は、機器100の特許主題に相応しいコンピュータ可読媒体またはメモリにおいてローカルに格納され得る命令の実行に応答して本明細書に記載の1つ以上の機能を行うようにフィールド機器100の構成要素を制御する、1つ以上のプロセッサ(すなわち、マイクロプロセッサ、中央演算処理装置等)を表してもよい。いくつかの実施形態において、コントローラ108のプロセッサは、1つ以上のコンピュータベースのシステムの構成要素である。いくつかの実施形態において、コントローラ108は、機器100の構成要素を制御して本明細書に記載の1つ以上の機能を行うのに用いられる、1つ以上の制御回路、マイクロプロセッサベースのエンジン制御システム、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の1つ以上のプログラマブルハードウェア構成要素を含む。また、上述の通り、コントローラ108は、通信回路および/または他の従来のフィールド機器回路も表してもよい。
【0023】
より詳しく以下に論じる通り、本開示の実施形態は、一般的には機器回路106の構成要素ではなく、フィールド機器100のための動作を行うように構成された補助回路の給電の改良に関する。これらの動作は、たとえば有線または無線データ通信等、2線プロセス制御ループ104を介して行われないデータ通信と、メモリ(たとえば、フラッシュメモリ)に対するデータ書き込み動作とを含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、フィールド機器100は、充電電力調節器120、バルク供給装置122、および補助回路124を含む。いくつかの実施形態において、フィールド機器100は、2線プロセス制御ループ104を介して制御室102から受電された電力の過剰部分の可用性に基づいてバルク供給装置122の充電を調節することにより、補助回路124の給電を改善する。電力の過剰部分は、何もしなければ機器100(機器回路106等)が使用しないであろう電力に関する。
【0025】
いくつかの実施形態において、機器100は、プロセス制御ループ104を介して受電した電力の未使用部分を電気グランド128に分流するように構成されたシャント回路126を含む。いくつかの実施形態において、シャント回路126は抵抗130を含み、抵抗130を通って、シャント電流Iがグランド128に送られる。抵抗130を通るシャント電流Iおよび抵抗130全体のシャント電圧は、プロセス制御ループ104を介して機器100が受電した電力の未使用部分に対応する。また、電力の未使用部分を決定するための他の技術が用いられてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、充電電力調節器120は、インピーダンス調節器132および可変インピーダンス134を含む。インピーダンス調節器132は、可変インピーダンス134を調整し、バルク供給装置122の充電に用いられる電力の過剰部分を電力の未使用部分に基づいて調節するように構成されている。いくつかの実施形態において、インピーダンス調節器132は、ライン136を介して、電力の未使用部分を示す抵抗130全体のシャント電圧を入力として受信し、この入力に基づいて制御信号137を生成する。
【0027】
可変インピーダンス134は、インピーダンス調節器132からの制御信号137に応答して電源回路118が与える供給電圧(Vsupply)からライン138を介してバルク供給装置122に送られる電力の過剰部分を制御する。これにより、ライン136上に示される電力の未使用部分の大きさに応じて、インピーダンス調節器132は、可変インピーダンス134を変化させて、バルク供給装置122を充電するライン138上の電流を制御する。
【0028】
いくつかの実施形態において、可変インピーダンス134は、たとえばバルク供給装置122がバルクキャパシタを含む場合等に、バルク供給装置122と関連付けられた時定数を制御する。検出された、電力の未使用部分の増加に応答して可変インピーダンス134が低下すると、時定数が小さくなる。これにより、バルク供給装置122を充電可能な速度が上昇するため、機器100は、何もしなければグランド128に分流するであろう過剰電力を利用可能となる。さらに、このように充電速度が上がることによって、補助回路124は、より高い周波数でその動作を行うことができるようにもなる。電力の未使用部分が減少している間等、可変インピーダンス134が上昇した場合は、バルク供給装置122と関連付けられた時定数が大きくなるため、機器100の他の構成要素(たとえば、機器回路106等)がより多くの電力を必要とする場合のバルク供給装置122による過剰電力の消費がゆっくりとなる。
【0029】
いくつかの実施形態において、機器100は、バルク供給装置122が閾値電荷または電圧レベルに達したタイミングを決定するのに用いられる比較器144を含み、比較器144は、補助回路が動作を行うのに必要となり得る。いくつかの実施形態において、比較器144は、ライン138での電圧入力と、閾値電荷または電圧レベルに対応する基準電圧(VRef)とを受信する。ライン138での電圧が基準電圧に達するタイミングを、比較器144からの電荷出力146が示してもよい。いくつかの実施形態において、コントローラ108は、電荷出力146を用いて、補助回路124に給電して所望の動作を行うためにバルク供給装置122が十分に充電されるタイミングを決定する。
【0030】
補助回路124は、フィールド機器またはフィールド機器のオペレータの任意適当な動作を行うように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、補助回路124は、機器回路106が従来は行わない動作を行うように構成されている。補助回路124が行い得る例示的な動作は、外部機器148とのデータ通信を含む。いくつかの実施形態において、データ通信は、機器148との有線もしくは無線データ通信、Bluetooth(登録商標)プロトコルに従って行われる機器148との無線データ通信、機器148(たとえば、フラッシュメモリ)へのデータ書き込み動作、または機器148との他のデータ通信を含む。機器148は、ユーザが操作するコントローラ、モバイルコンピュータ機器、ルータ、2線プロセス制御ループ104に接続されていないフィールド機器等の別のフィールド機器、または別の機器を表してもよい。補助回路124が行うように構成可能な他の例示的な動作は、フィールド機器の一部の加熱、(たとえば、機器148への)情報の表示、可聴および/もしくは可視信号の送信、ならびに/または別の動作を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、バルク供給装置122は、パルス保護回路150を含む。パルス保護回路150は、たとえば電源回路118および/または補助回路124に対して潜在的に損傷を与える可能性のある過渡電流パルスを減衰させるように動作する。
【0032】
図2は、本開示の実施形態に係る、図1のフィールド機器の例示的な回路図である。図2は、インピーダンス調節器132、可変インピーダンス134、バルク供給装置122、パルス保護回路150、および比較器144を構成する、例示的な回路を示している。例示的な回路は、これら構成要素の機能を行うように実装可能な多くの選択肢のうちの1つに過ぎないことが了解される。本開示の実施形態に直接関連しない従来のフィールド機器構成要素の詳細については、図2に示していない。
【0033】
充電電力調節器120のインピーダンス調節器132の例示的な一実施形態は、抵抗130全体のシャント電圧をその正負入力端子全体の入力として受ける演算増幅器151を含む、ローパスフィルタの形態である。オペアンプ151からの制御信号137は、抵抗130全体のシャント電流(I)およびシャント電圧の値の増大とともに大きくなる。いくつかの実施形態において、インピーダンス調節器132は、電気グランド128とオペアンプ151の負入力端子との間に結合された抵抗器Rと、オペアンプ151の負入力端子と出力との間に接続された抵抗器Rと、抵抗器Rと並列に接続された抵抗器RおよびキャパシタCとを含む。いくつかの例示的な実施形態によれば、抵抗器Rは1kΩ、Rは178kΩ、Rは301kΩ、Cは0.033μFである。また、インピーダンス調節器132の機能を行う他の回路も用いられてもよい。
【0034】
例示的な一実施形態において、充電電力調節器120の可変インピーダンス134は、図2に示すように、nチャンネルMOSFET152および抵抗154を含む。インピーダンス調節器132から出力された制御信号137は、ライン156を通じてMOSFET152のゲートに結合されている。電源回路118により生成された供給電圧Vsupplyは、MOSFET152のドレインに電気的に結合され、MOSFET152のソースは、抵抗154を通じてバルク供給装置122に電気的に結合されている。抵抗154は、たとえば500Ωであってもよい。
【0035】
シャント電圧により示される未使用電力が増加すると、インピーダンス調節器132からの制御信号137が大きくなり、MOSFET152のゲートとソースとの間の正電圧低下の増大によって、MOSFET152のインピーダンスが低下する。これによって、電源回路118からバルク供給装置122に流れる充電電流Iが大きくなるとともに、バルク供給装置122の充電速度が上がる。シャント電圧が低下することによってインピーダンス調節器132からの制御信号137が電圧低下すると、MOSFET152のゲートとソースとの間の正電圧低下の減少によって、MOSFET152のインピーダンスが上昇し、その結果、充電電流Iが小さくなる。これにより、バルク供給装置122の充電速度が下がる。シャント電圧がごく低い場合またはゼロの場合、インピーダンス調節器132からの制御信号137の電圧は、MOSFET152の作動に不十分である。このため、MOSFET152は、開回路として動作し、充電電流Iおよびバルク供給装置122の充電を終端させる。したがって、充電電力調節器120のインピーダンス調節器132および可変インピーダンス134は、プロセス制御ループ104を介して機器100が受電した電力の未使用部分に基づいて、バルク供給装置122の充電を制御するように動作する。
【0036】
いくつかの実施形態において、バルク供給装置122は、充電電流Iにより充電されるバルクキャパシタ160(たとえば、68μF)を含む。あるいは、バルク供給装置122は、充電電流Iにより充電される充電式バッテリを備えてもよい。
【0037】
バルク供給装置122がバルクキャパシタ160を利用する場合、このバルクキャパシタ160は、可変インピーダンス134に基づく、関連する時定数を有する。その結果、インピーダンス調節器132は、プロセス制御ループ104を介して機器100が受電した電力の未使用部分に基づいて可変インピーダンス134を調節することにより、バルクキャパシタ160の時定数を制御する。電力の未使用部分の増加に応答してMOSFET152のインピーダンスが低下すると、キャパシタ160と関連付けられた時定数が小さくなる。これにより、バルクキャパシタ160は、より高速で充電されることによって、電力の利用可能な過剰部分を使用可能となる。ただし、機器100が受電した電力の未使用部分の減少に応答して、インピーダンス調節器132がMOSFET152全体のインピーダンスを上昇させると、キャパシタ160と関連付けられた時定数が大きくなるため、バルクキャパシタ160の充電速度が下がる。その結果、バルクキャパシタ160は、未使用電力ひいては充電電力調節器120に利用可能な過剰電力がほとんどない場合、より低速で充電を行うか、または、充電を一切行わない。
【0038】
例示的な比較器144は、バルク供給装置122の電荷レベルを示すライン138での電圧と入力での基準電圧とを受信し、その差に基づいて電荷レベル出力146を生成する演算増幅器170を含む。電荷レベル出力146は、コントローラ108に供給される。いくつかの実施形態において、演算増幅器170からの出力146が、ライン138での電圧またはバルク供給装置122(たとえば、バルクキャパシタ160)の電荷レベルが基準電圧未満であることを示す場合、コントローラ108は、補助回路124の作動を保留する。演算増幅器170からの出力が、バルクキャパシタ160が基準電圧を満足または超過する電荷を有することを示す場合、コントローラ108は、補助回路124を作動させ、ライン172を介した信号によって、上述の動作のうちの1つ以上等の動作を行わせてもよい。
【0039】
前述の通り、バルク供給装置122は、何もしなければ補助回路124の作動に応答して発生する可能性がある過渡電流パルスを減衰させるように動作する、パルス保護回路150を含んでもよい。例示的な一実施形態において、パルス保護回路150は、図2に示すように、ベースが接続された一対のNPNトランジスタ174および176を含む。トランジスタ174のエミッタは、抵抗178を通じて供給電圧Vsupplyに結合され、そのコレクタは、そのベースに結合されている。トランジスタ176は、ライン138に結合されている。トランジスタ174のエミッタと電気グランド128との間には、電圧源180が結合されている。
【0040】
動作時、コントローラ108は、バルクキャパシタ160の電荷が閾値電荷(VRef)に達した場合または閾値電荷(VRef)を超えた場合、補助回路124を作動させる。これにより、バルクキャパシタ160からトランジスタ176を通じて補助回路124に電流が流れ、補助回路124に給電可能となる。補助回路124が動作を行っている間、パルス保護回路150は、潜在的に有害な過渡電流パルスが電源回路118に生じることを防止する。
【0041】
図3は、本開示の実施形態に係る、フィールド機器100を使用する方法を示したフローチャートである。方法の190において、フィールド機器100(図1および図2)は、電力を受電し、2線プロセス制御ループ104を介してデータを伝達してもよい。プロセス制御ループ104を介して受電された電力は、機器100の回路の給電に用いられる。この電力の一部は、電源回路118によって表される。機器100は、たとえばコントローラ108およびDAC114を用いて、プロセス制御ループ104を流れるループ電流Iを制御することにより、プロセス変数測定結果を制御室102に伝達してもよい。
【0042】
192においては、シャント回路126を用いて、プロセス制御ループ104を介して機器100が受電した電力の未使用部分を電気グランド128に分流する。上述の通り、シャント回路126は抵抗130を含んでもよく、抵抗130を通って、電力の未使用部分に対応するシャント電流Iが電気グランド128に送られる。また、シャント電流Iに起因する抵抗130全体のシャント電圧は、電力の未使用部分に対応する。
【0043】
方法の194においては、充電電力調節器120を用いて、電力の過剰部分を調節し、電力の未使用部分に基づいてバルク供給装置122を充電する。上述の通り、充電電力調節器120の実施形態は、インピーダンス調節器132および可変インピーダンス134を含む。いくつかの実施形態において、可変インピーダンス134は、供給電圧Vsupplyをバルク供給装置122に接続する。バルク供給装置122に送られる電力の過剰部分は、可変インピーダンス134に基づいて変化し、インピーダンス調節器132を用いて、たとえば抵抗130全体のシャント電圧が示すような電力の未使用部分に基づいて可変インピーダンス134を調整することにより調節される。いくつかの実施形態において、インピーダンス調節器132は、シャント電圧に基づいて制御信号137を生成し、可変インピーダンス134は、制御信号137に応答して調整される。
【0044】
バルク供給装置122は、関連する時定数を有するキャパシタ160(図2)を含んでもよい。電力の過剰部分は、インピーダンス調節器132を用いて、シャント電圧が示すような電力の未使用部分に基づいて時定数を制御することにより、充電電力調節器120によって調節される。
【0045】
方法の196においては、バルク供給装置122を用いて補助回路124に給電する。いくつかの実施形態において、これは、コントローラ108による補助回路124の作動を伴う。コントローラ108による補助回路124の作動は、上述の通り、バルク供給装置122の電荷レベルを示す比較器144からの電荷出力146に基づいて行われてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態においては、補助回路124の作動の結果、補助回路124が動作を行うことになる。いくつかの実施形態において、補助回路124が行う動作は、上述の動作のうちの1つ以上を含む。一実施形態において、補助回路124が行う動作は、Bluetooth(登録商標)通信プロトコルに従った外部機器148との無線データ通信を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、フィールド機器は、センサまたは制御要素110と、測定または制御回路112とを含む。いくつかの実施形態において、フィールド機器100は、センサ110と測定または制御回路112とを用いてプロセスパラメータの検知し、および/または測定または制御回路112を用いて制御要素110を制御する。
【0048】
以上、好適な実施形態を参照しつつ本開示の実施形態を説明してきたが、当業者であれば、本開示の主旨および範囲から逸脱することなく、形式および内容の変更が可能であることが認識されよう。
【符号の説明】
【0049】
100…工業プロセス用のフィールド機器
104…2線プロセス制御ループ
106…機器回路
120…充電電力調節器
122…バルク供給装置
124…補助回路
126…シャント回路
128…電気グランド
図1
図2
図3