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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】人工歯肉を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/01 20060101AFI20221024BHJP
   A61C 13/34 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A61C13/01
A61C13/34 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019572144
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067983
(87)【国際公開番号】W WO2019007976
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】102017211249.2
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500058187
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】セン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】オスカム,トーマス
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513573(JP,A)
【文献】特開2005-066166(JP,A)
【文献】特開2007-325930(JP,A)
【文献】特開2016-043127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/01
A61C 13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工歯肉(1)を製造するための方法であって、前記人工歯肉(1)の3Dモデル(3)が、既に提供されており、
前記人工歯肉(1)を取り付けるための相応する内部構造(12)を備えた歯科用模型(2)のデータが、使用者により手動で又はコンピュータ(23)を用いて全自動で構築され、
歯科用模型(2)が構築された前記歯科用模型(2)のデータから製造される際、前記歯科用模型(2)は、CAM製造機械のような除去製造方法を用いるか、又は3Dプリンタ(29)のような付加製造方法を用いて製造され、
前記人工歯肉(1)の前記3Dモデル(3)の少なくとも部分的領域(5)を表す歯肉鋳型(4)のデータが、前記人工歯肉(1)の前記3Dモデル(3)を使用してネガ型として構築されることを特徴とし、
前記歯肉鋳型(4)のデータが、少なくとも2つの部品(16、17、18)から構築され、前記歯肉鋳型(4)のデータの前記部品(16、17、18)が、それらが接続手段(19)を使用して互いに接続可能な方式で構築され、
製造される歯肉鋳型(4)内に、シリコーンを含む歯肉材料が導入され、硬化され、前記人工歯肉(1)が製造され、
製造される前記人工歯肉(1)が、少なくとも1つのインプラントアナログのための少なくとも1つのインプラント陥凹(21)を含み、
前記歯肉鋳型(4)の追加の分離可能な部品(18)が、製造される前記人工歯肉(1)の各インプラント陥凹(21)に対して構築される、方法。
【請求項2】
異なる面(20、22)、すなわち、非臨界面(22)、座面(54)および、アンダーカット面(20)が、前記人工歯肉(1)の前記3Dモデル(3)が、少なくとも一つの非臨界面(8)、少なくとも一つの取付面(9)及び/又は少なくとも一つのアンダーカット面(10)を有するように前記歯肉鋳型(4)のデータの構築において構築されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記歯肉鋳型(4)のデータが、コンピュータ(23)を使用してユーザによって手動で構築されることを特徴とし、少なくとも1つの非臨界面(22)、製造される前記人工歯肉(1)の挿入方向(39)に対する少なくとも1つのアンダーカット面(20)、および/または少なくとも1つの座面が、画定される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記歯肉鋳型(4)のデータが、コンピュータ(23)を使用して完全に自動で構築されることを特徴とし、少なくとも1つの非臨界面(22)、製造される前記人工歯肉(1)の挿入方向(39)に対する少なくとも1つのアンダーカット面(20)、および/または少なくとも1つの座面が、画定される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記歯肉鋳型(4)の少なくとも1つの追加の分離可能な部品(17)が、各アンダーカット面(20)対して構築されることを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
製造される前記歯肉鋳型(4)の前記少なくとも1つの非臨界面(22)が、歯肉材料を注入するための注入チャネルとして使用されることを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記構築された歯肉鋳型(4)の前記少なくとも1つの部品(16、17、18)が、CAM機械などの除去製造法を使用して、または3Dプリンタ(29)などの付加製造法を使用して製造されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの注入チャネルの硬化された人工歯肉(1)の過剰な材料が、手動で、または切断デバイスを使用して自動で、前記硬化された前記人工歯肉(1)から切り取られることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記硬化された人工歯肉(1)が、前記歯肉鋳型(4)から取り外されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記歯肉鋳型(4)の前記部品(16、17、18)が、プラグ接続などの接続手段(19)を使用して互いに機械的に接続可能であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記歯肉鋳型(4)は、硬質プラスチックのような鋳型材料から製造されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記歯肉鋳型(4)は、少なくとも一つの取付面(9)を有するバー(60)を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工歯肉を製造するための方法に関し、この方法では、人工歯肉の3Dモデルが既に提供されている。
【背景技術】
【0002】
人工歯肉を製造するための方法は、最新の当該技術分野において既知である。
【0003】
DE10 2014 215 103 B4は、仮想人工歯肉の仮想後処理のための方法を開示しており、この方法では、人工歯肉の仮想3Dモデルは、仮想ツールを使用して標的化された様式で処理される。
【0004】
EP3087948A1は、人工歯肉および人工歯からなる歯科補綴を構築するための方法を開示しており、この方法では、人工歯肉は、CAD/CAMシステムを使用して構築および製造される。その後、歯が人工歯肉に挿入される。
【0005】
EP2322115A1は、人工歯肉および人工歯からなる歯科補綴を構築するための方法を開示しており、この方法では、人工歯肉の3Dモデルは、顎骨および歯などの隣接する構造に適応される。
【0006】
WO2013/120955A1は、人工歯肉および人工歯からなる歯科補綴を構築するための方法を開示しており、この方法では、仮想人工歯は、歯肉の仮想モデルに関連して配置される。
【0007】
既知の方法の1つの不利な点は、人工歯肉が、例えば、CAD/CAMシステムを使用して、または歯科技工士によって手動で製造されることである。人工歯肉は、元々ある歯ぐきを模擬することを意図した可撓性の材料で作製される。結果として、製造された人工歯肉が人工歯肉の構築された3Dモデルから逸脱した結果として、製造誤差が生じる可能性がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、高度の自動化をもって簡便な様式で人工歯肉を製造することである。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、人工歯肉を製造するための方法に関し、この方法では、人工歯肉の3Dモデルが既に提供されている。人工歯肉の3Dモデルの少なくとも部分的領域を表す歯肉鋳型が、人工歯肉の3Dモデルを使用してネガ型として構築される。
【0010】
人工歯肉は、シリコーンなどの軟質弾性材料で作製することができ、それによって元々ある歯ぐきの特性を模倣することが意図される。人工歯肉は、例えば、元々ある歯肉の自然な色を模倣するために、ピンク色に着色されてもよい。人工歯肉は、歯科状況の歯科モデルで、例えば、歯科状況のインプラント回復を計画するために使用することができる。
【0011】
本方法によると、人工歯肉の3Dモデルは、既に構築されている。その後、3Dモデルの少なくとも部分的領域を表す歯肉鋳型が、3Dモデルを使用してネガ型として構築される。その後、歯肉鋳型を使用して、人工歯肉を製造することができる。歯肉鋳型は、少なくとも1つの部品からなり得る。
【0012】
この方法の1つの利点は、例えば、歯肉鋳型にシリコーンを注入することによって人工歯肉が製造され得るように、歯肉鋳型が硬質の非弾性材料で作製されることである。結果として、硬化され製造された歯肉の寸法は、計画された3Dモデルに対応する。
【0013】
歯肉鋳型は有利に、少なくとも2つの部品から構築することができ、それによって歯肉鋳型の部品が、それらが接続手段を使用して互いに接続され得るような方式で構築される。
【0014】
結果として、少なくとも2つの部品を組み立てて、歯肉鋳型を形成することができる。接続手段は、例えば、Legoブロックの様式で噛み合わせて組み立てることができるプラグ接続であってもよい。
【0015】
製造される人工歯肉は有利に、少なくとも1つのインプラントアナログのための少なくとも1つのインプラント陥凹を含むことができる。
【0016】
したがって、人工歯肉は、インプラントアナログのための少なくとも1つのインプラント陥凹を含む。人工歯肉はまた、異なる配向を有する2つまたは3つのインプラント陥凹を含んでもよい。
【0017】
歯肉鋳型の構築では、異なる表面、すなわち、非臨界面、座面、およびアンダーカット面を構築することが有利に可能である。
【0018】
非臨界面は、歯科モデルへの挿入時に歯科モデルの内部構造とは接触しないため、それらは、高度の誤差許容度をもって製造され得る表面である。
【0019】
座面は、人工歯肉が歯科モデルに挿入されたときに歯科モデルの内部構造に寄り掛かる、低度の誤差許容度を有する表面である。人工歯肉のアンダーカット面は、挿入方向に対するアンダーカットを含む。
【0020】
歯肉鋳型は有利に、ユーザがコンピュータを使用して手動で構築することができ、それによって少なくとも1つの非臨界面、製造される人工歯肉の挿入方向に対する少なくとも1つのアンダーカット面、および/または少なくとも1つの座面が画定される。
【0021】
したがって、個々の種類の表面は、コンピュータの助けを借りてユーザによって構築される。ユーザは、異なる仮想ツールを使用して、個々の表面を画定することができる。製造される人工歯肉の挿入方向は、例えば、円筒形のインプラント陥凹の配向によって、および/または人工歯肉の丘形の表面の対称軸として画定され得る。
【0022】
歯肉鋳型は有利に、コンピュータを使用して完全に自動で構築することができ、それによって少なくとも1つの非臨界面、製造される人工歯肉の挿入方向に対する少なくとも1つのアンダーカット面、および/または少なくとも1つの座面が画定される。
【0023】
したがって、個々の種類の表面は、コンピュータを使用して完全に自動で構築される。人工歯肉の下部面に対応する少なくとも1つの非臨界面が画定されてもよく、それによって人工歯肉の下部面が、歯科モデルの内部構造から少し離れるために、それには寄り掛からない。非臨界面は、歯肉鋳型内の注入チャネルとして使用することができる。第2のステップでは、歯科モデルの内部構造に寄り掛かる少なくとも1つの座面が画定され得る。第3のステップでは、少なくとも1つのアンダーカット面は、少なくとも1つのアンダーカット上の挿入方向に対して画定され得る。第2のアンダーカット面は、第2のアンダーカット上で同様に画定され得る。
【0024】
したがって、歯肉鋳型の構築は、人工歯肉の3Dモデルの知識によって完全に自動になるために、歯肉鋳型の構築時間が低減される。
【0025】
歯肉鋳型の少なくとも1つの追加の分離可能な部品は有利に、各アンダーカット面に対して構築され得る。
【0026】
したがって、個々の部品を分離して、硬化された人工歯肉を取り外すことができるように、歯肉鋳型の少なくとも1つの追加の部品は、各アンダーカット面に対して構築される。
【0027】
非常に小さいアンダーカットの場合、小さいアンダーカットにも関わらず、人工鋳型の材料には歯肉鋳型から取り外すのに十分な弾性があるため、歯肉鋳型の追加の分離可能な部品を構築しないことが好都合であり得る。
【0028】
歯肉鋳型の追加の分離可能な部品は有利に、製造される人工歯肉の各インプラント陥凹に対して構築され得る。
【0029】
したがって、ネガとして、追加の分離可能な部品は、インプラントアナログを挿入するための円筒形状のインプラント陥凹を同様に有してもよい。その後、歯肉鋳型の組み立てられた個々の部品を分離して、硬化された人工歯肉を取り外すことができる。
【0030】
製造される歯肉鋳型の少なくとも1つの非臨界面は有利に、歯肉材料を注入するための注入チャネルとして使用することができる。
【0031】
例えば、シリコーンなどの材料が、シリンジの助けを借りて注入され得る。したがって、少なくとも1つの非臨界面を注入チャネルとして使用することで、非常に大きな自由度でのシリンジの移動が可能となる。その後、ユーザは、シリンジを用いて歯肉鋳型の全ての隅に到達することができるために、注入中の気泡の発生を防止することができる。
【0032】
構築された歯肉鋳型の少なくとも1つの部品は有利に、CAM機械などの除去製造法を使用して、または3Dプリンタなどの付加製造法を使用することによって製造することができる。
【0033】
CAM機械を使用する製造については、構築された歯肉鋳型のそれぞれの部品が製造されるまで、ブランクがCAM機械に固定され、摩砕ツールおよび/または粉砕ツールによって処理される。3Dプリンタを使用する場合、歯肉鋳型のそれぞれの部品が印刷される。3Dプリンタは、例えば、結合剤または追加の組み立てステップなしで3次元の物体の印刷を可能にする、SLS法(選択的レーザー焼結)に基づいてもよい。製造される物体の既存の3Dモデルは、特別なスライスソフトウェアによって多数の水平面に分解され、制御コマンドとして3Dプリンタに渡される。その後、3Dプリンタは、物体を層毎に印刷し、それによって粉体床にある個々の粉末粒子が、高温のレーザーでともに融合される。その後、物体は下降され、新たな粉末層が適用される。3次元の物体全体が完全に印刷されるまで、このプロセスが反復される。3Dプリンタはまた、レーザーを使用して、感光樹脂および材料粒子からなる塊を重合する、光造形法に基づいてもよい。製造される歯肉鋳型の材料は、硬質プラスチックであってもセラミックであってもよい。
【0034】
人工歯肉を挿入するための対応する内部構造を有する歯科モデルは有利に、ユーザによって手動で、またはコンピュータを使用して完全に自動で構築することができ、それによって構築された歯科モデルが、CAM機械などの除去製造法を使用して、または3Dプリンタなどの付加製造法を使用して製造される。
【0035】
したがって、歯科モデルの可視表面および歯科モデルの内部構造の知識によって、歯科モデルは、人工歯肉の内部構造のネガとして完全に自動で構築される。その後、歯科モデルは、歯科モデルの構築された3Dモデルに従って完全に自動で製造される。これにより、歯科モデルの構築時間および製造時間が低減される。
【0036】
シリコーンなどの歯肉材料が有利に、製造された歯肉鋳型に導入され、硬化され得る。
【0037】
これにより、元々の歯肉の弾性および色を模倣し、人工歯肉の構築された3Dモデルの寸法とよりよく適合する人工歯肉が製造される。
【0038】
硬化された人工歯肉の過剰な材料、少なくとも1つの注入チャネルは有利に、手動で、または切断デバイスを使用して自動で、製造された人工歯肉から切り取ることができる。
【0039】
したがって、過剰な材料は、ユーザによって手動で、または切断デバイスを使用して自動で、硬化された人工歯肉から切り取ることができる。切断デバイスは、例えば、電動機によって駆動され、注入チャネルで過剰な材料を切り取るように適宜制御されるブレードであってもよい。自動切断デバイスは、しっかりと画定された切断縁を可能にする。
【0040】
硬化された人工歯肉は有利に、歯肉鋳型から取り外すことができる。
【0041】
最終製造ステップでは、人工歯肉が歯肉鋳型から取り外される。歯肉鋳型が複数の部品からなる場合、個々の部品を互いに分離して、硬化された人工歯肉の取り外しを促進することができる。
【0042】
本発明はさらに、前述の方法を使用して製造される人工歯肉に関し、歯肉鋳型は、一体型に製造されるか、または複数の部品に製造され、接続手段を使用して組み立てられ、歯肉材料が、歯肉鋳型に導入され、硬化され、製造された人工歯肉が、歯肉鋳型から取り外される。
【0043】
前述の方法に従って製造される人工歯肉の1つの利点は、硬化された人工歯肉の寸法が歯肉の構築された3Dモデルに対応することである。
【0044】
追加の利点は、人工歯肉が前述の方法に従って完全に自動で製造され得るために、製造時間が低減され、手動での製造中に生じ得る製造誤差が防止されることである。
【0045】
人工歯肉は有利に、少なくとも1つの非臨界面、少なくとも1つの座面、および/または少なくとも1つのアンダーカット面を含むことができる。
【0046】
したがって、歯肉鋳型のネガとして、人工歯肉は、非臨界面、少なくとも1つの座面、および/または少なくとも1つのアンダーカット面を同様に含む。
【0047】
人工歯肉は有利に、シリコーンなどの歯肉材料で作製することができる。
【0048】
シリコーンは、元々の歯肉をできるだけ近く模倣するための所望の弾性および呈色を提供する。
【0049】
本発明はさらに、人工歯肉を製造するための歯肉鋳型に関し、この歯肉鋳型では、人工歯肉の3Dモデルが既に提供されている。最初に、人工歯肉の3Dモデルを使用して、人工歯肉の3Dモデルの少なくとも部分的領域を表す歯肉鋳型がネガ型として構築され、それによって製造された歯肉鋳型の少なくとも1つの部品が、CAM機械などの除去製造法を使用して、または3Dプリンタなどの付加製造法を使用して製造される。
【0050】
したがって、歯肉鋳型の1つの利点は、歯肉鋳型が、人工歯肉の3Dモデルの知識によって完全に自動でネガ型として構築され、その後、製造され得ることである。
【0051】
これにより、歯肉鋳型の製造時間が低減され、歯肉鋳型を手動で製造した場合に生じ得る構築誤差および製造誤差が防止される。
【0052】
歯肉鋳型は有利に、少なくとも2つの部品に構築および製造することができ、それによって歯肉鋳型の部品が、プラグ接続などの接続手段を使用して互いに機械的に接続され得る。
【0053】
したがって、歯肉鋳型は、少なくとも2つの部品から組み立てられ、それによって接続手段が、例えば、Legoブロックの様式のプラグ接続であってもよい。したがって、プラグ接続は、互いに純粋に機械的に接続され、これにより、形態適合接続および/または摩擦接続がもたらされる。
【0054】
歯肉鋳型は有利に、一体型に構築および製造することができ、それによって人工歯肉が硬化した後に、歯肉鋳型が、人工歯肉を取り外すためにユーザによって手動で破壊され得るように、歯肉鋳型の材料は、高度な脆性を有する。
【0055】
使用される材料は、例えば、PMMAプラスチックであってもよい。材料は、高度の脆性だけでなく、低弾性または寸法安定性もまた有する必要がある。人工歯肉が硬化した後に、歯肉鋳型が粉々に破壊され得るように、一体型の歯肉鋳型には、代替的に破断点が提供されてもよい。
【0056】
歯肉鋳型は有利に、少なくとも1つの非臨界面、少なくとも1つの座面、および/または少なくとも1つのアンダーカット面を含むことができる。
【0057】
したがって、人工歯肉は、歯肉鋳型を使用して、所望の表面をもって製造される。
【0058】
歯肉鋳型の少なくとも1つの追加の分離可能な部品は有利に、各アンダーカット面に対して製造することができる。
【0059】
したがって、歯肉鋳型の追加の分離可能な部品を分離して、硬化された人工歯肉を歯肉鋳型から取り外すことができる。
【0060】
歯肉鋳型の追加の分離可能な部品は有利に、製造される人工歯肉の少なくとも1つのインプラント陥凹に対して製造することができる。
【0061】
結果として、分離可能な部品が各インプラント陥凹に対して製造され、これにより、人工歯肉が硬化した後に歯肉鋳型の分離が促進される。
【0062】
歯肉鋳型の少なくとも1つの非臨界面は有利に、歯肉材料を注入するための注入チャネルとして使用することができる。
【0063】
非臨界面全体が注入チャネルとして機能するため、歯肉材料を有するシリンジは、自由に移動して、歯肉鋳型の隅へのアクセスを促進することができる。注入中に発生するいかなる気泡も、防止することができる。
【0064】
歯肉鋳型は有利に、硬質プラスチックなどの鋳型材料で作製することができる。
【0065】
これにより、人工歯肉が硬化後に構築された3Dモデルの寸法に対応するように、歯肉鋳型の望ましくない変形が防止される。
【0066】
歯肉鋳型は有利に、少なくとも1つの座面を有するバーを含むことができる。
【0067】
バーは、平坦な座面を確保するために、歯肉鋳型の内部構造の一部として構築され得る。人工歯肉を挿入するための歯科モデルでは、人工歯肉がバーの座面上に乗るように、バーは、同じ寸法で構築および製造される。したがって、バーの座面は、歯科モデルへの挿入中に弾性の人工歯肉が曲がることで、構築された3Dモデルから逸脱するのを防止する。
【0068】
人工歯肉が歯科モデルに挿入された時に座面がバー上に乗ることで、特にインプラント陥凹近傍での弾性変形を防止するように、バーは、インプラント陥凹と一体型で実現することができる。
【0069】
この歯科モデルの1つの利点は、歯科モデルが完全に自動で構築および製造され得ることである。これにより、構築時間および製造時間が低減され、歯肉鋳型を手動で製造した場合に生じ得る製造誤差が防止される。
【0070】
歯科モデルの可視表面は、歯科状況の構築された3Dモデルによって画定される。人工歯肉を挿入するための内部構造は、人工歯肉の内部構造によってネガとして画定され、それによって非臨界面に対して、人工歯肉の非臨界面と歯科モデルの内部構造との間に距離が提供される。
【0071】
本発明はさらに、前述の方法を使用して製造される歯科モデルに関し、この歯科モデルでは、人工歯肉を挿入するための内部構造は、ユーザによって手動で、またはコンピュータを使用して完全に自動で構築することができ、それによって構築された歯科モデルが、CAM機械などの除去製造法を使用して、または3Dプリンタなどの付加製造法を使用して製造される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
本発明は、以下の図面を参照して説明される。図面は、以下のものを示す。
【0073】
図1】人工歯肉を製造するための方法を明確化するためのスケッチである。
図2】歯科モデルの様々な断面図のスケッチである。
図3】歯科モデルの様々な断面図のスケッチである。
図4】歯肉鋳型の様々な断面図のスケッチである。
図5】歯肉鋳型の様々な断面図のスケッチである。
図6】歯肉鋳型の様々な断面図のスケッチである。
図7】歯肉鋳型の様々な断面図のスケッチである。
図8】歯肉鋳型の様々な断面図のスケッチである。
図9】歯肉鋳型の様々な断面図のスケッチである。
図10】歯肉鋳型の様々な断面図のスケッチである。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、歯科モデル2のための人工歯肉1を製造するための方法を明確化するためのスケッチを示し、人工歯肉1の3Dモデル3は、少なくとも部分的に構築されている。例えば、3Dモデル3の可視表面5を表面6の形態のネガ型として描写する歯肉鋳型4は、人工歯肉1の3Dモデル3を使用して構築される。人工歯肉の3Dモデル3は、少なくとも1つの非臨界面8、少なくとも1つの座面9、および/またはアンダーカット面10からなる内部構造7を含む。人工歯肉1の3Dモデル3の残りの部分は、可視表面5によって画定される。その後、歯科モデル2の3Dモデル11が構築され、それによって歯科モデル2が、人工歯肉1の3Dモデル3の内部構造7のネガ型として少なくとも部分的に構成される内部構造12を含む。歯科モデル2の3Dモデル11の内部構造12は、少なくとも1つの座面13、少なくとも1つの非臨界面14、および/または少なくとも1つのアンダーカット面15を含む。したがって、人工歯肉1が歯科モデル2に挿入された時に、人工歯肉1の座面9は、歯科モデル2の内部構造12の座面13と接触し、それによって人工歯肉1の非臨界面8が、歯科モデル2の臨界面14から少し離れて配置される。したがって、人工歯肉1のアンダーカット面10は、歯科モデル2のアンダーカット面15と接触し、それによって弾性の人工歯肉1が、それが歯科モデルの非弾性の内部構造12に適合するような方式で変形する。示される実施形態では、歯肉鋳型4は、第1の部品16、第2の部品17、および第3の部品18で構築される。個々の部品16、17、および18は、プラグ接続などの接続手段19を使用して互いに接続されてもよい。アンダーカット面20にも関わらず、硬化された人工歯肉1を歯肉鋳型4から取り外すことができるように、第2の部品17は、第1の部品16から分離可能であるように構築される。第3の部品18は、インプラントアナログのためのインプラント陥凹21をもたらすように提供される。網掛けされた非臨界面22は、シリコーンを注入するための注入チャネルとして使用される。これにより、ユーザがシリコーンシリンジを用いて歯肉鋳型4の角に到達するのがより容易になるために、気泡の形成が防止される。人工歯肉1の3Dモデル3の構築、歯科モデル2の3Dモデル11、および歯肉鋳型4の構築は、ユーザによって可視的に、またはキーボード24およびマウス25などの入力手段が接続されるコンピュータ23を使用して完全に自動で実行される。3Dモデルをグラフィック表示および処理するためのモニタなどの表示デバイス26もまた、コンピュータ23に接続される。ユーザは、人工歯肉1の3Dモデル3、歯科モデル2の3Dモデル11、および歯肉鋳型の3Dモデルを処理して、入力手段24および25ならびにカーソル27を使用して該モデルを構築することができる。構築は完全に自動で行うことができ、それによって人工歯肉1の内部構造7および歯科モデル2の内部構造12の構造に関する所定の基準が考慮される。自動構築の場合、人工歯肉1および故に3Dモデル3の縁線28、ならびに可視表面5の形状は、例えば、入力データとして使用することができる。その後、内部構造7および内部構造12のアンダーカット面10が画定される。アンダーカット面は、弾性的に変形可能な人工歯肉1が歯科モデル2から落ちないように、それを固定するように機能する。第2のステップでは、人工歯肉1の座面9、および故に歯科モデル2の内部構造12の座面13が画定される。非臨界面8は、第3のステップで画定される。個々の部品16、17、および18は、3Dプリンタ29を使用して製造することができ、それによって3Dプリンタがコンピュータ23によって適宜制御される。図1は、歯肉鋳型4の第1の部品16が、3Dプリンタ29によって印刷されることを示す。自動製造はまた、CAM機械を使用して実行することもできる。示される実施形態では、3Dプリンタは、SLS法に基づく。3Dプリンタには、使用済み材料30が充填される。材料30は、使用済み材料の粒子からなる、ペースト、塊、粉末、または液体であってもよい。第1の部品16は、3Dプリンタによって印刷され、この3Dプリンタでは、プラットフォーム31が、調節手段32を使用して層毎に下降される。各層について、使用済み材料30の表面33が、点毎にスキャンされる。レーザー34は、レーザービーム35を放射し、それによってレーザービーム35が、第1の調節可能な偏向ミラー36および第2の調節可能な偏向ミラー37によって偏向され、焦点38に焦点が合わせられる。焦点38では、高温の入射レーザービーム35は、材料30の粒子の融合をもたらす。物体の所望の層がスキャンされるように、偏向ミラー36および37は、3Dプリンタ29の制御ユニットによって制御される。1つの層を印刷した後、プラットフォーム31が下降し、次の層が印刷される。したがって、部品16全体が層毎に印刷される。その後、歯肉鋳型4の第2の部品17および第3の部品18もまた印刷される。
【0075】
その後、個々の部品16、17、および18が組み立てられ、それによってシリコーンなどの歯肉材料が歯肉鋳型4に注入され、硬化される。その後、硬化された人工歯肉1の過剰な材料は、非臨界面22で切り取られる。その後、硬化された人工歯肉1は、歯肉鋳型4から取り外される。同様に、3Dプリンタ29を使用して、歯科モデル2が、3Dモデル11に従って印刷され得る。その後、製造された人工歯肉1は、印刷された歯科モデル2に挿入される。
【0076】
アンダーカット面20は、製造される人工歯肉1または歯肉鋳型4の3Dモデル3の挿入方向39に対して画定される。挿入方向39は、例えば、円筒形のインプラント凹部21の対称軸と一致してもよい。
【0077】
図2は、歯科モデル2、および人工歯肉1の非臨界面8と非臨界面14との間の距離40をもって歯科モデル2に挿入された人工歯肉1の断面図のスケッチを示す。人工歯肉1の座面9およびアンダーカット面10もまた示される。図2は、第1の断面平面Aおよび第2の断面平面Bを示す。
【0078】
図3は、図2の断面平面Aにある歯科モデル2および人工歯肉1の断面図を示し、それによって図3はまた、歯科モデル2の長軸方向にある第3の断面平面Cも示す。
【0079】
図4は、図2の断面平面Aを通した断面図における、第1の部品50、人工歯肉1のアンダーカット面10を製作するためのアンダーカット面52の第2の部品51、およびインプラント陥凹21を製作するための第3の部品53からなる歯肉鋳型4の第1の変化形を示す。歯肉鋳型4の座面54もまた、図4に示される。
【0080】
図5は、図2の断面平図Bを通した断面図における、部品50、51、および53からなる歯肉鋳型4を示す。
【0081】
図6は、図3の断面平図Cを通した断面図における歯肉鋳型4を示し、それによって第3の部品53が、人工歯肉1の座面9を製作するためのバー60を含む。
【0082】
図4および図5に示されるように、シリコーンは、非臨界面22を通して歯肉鋳型4に注入される。
【0083】
図7は、第1の部品50、第2の部品51、および第3の部品53からなる歯肉鋳型の第2の変形を示し、それによって図4とは異なり、接続手段19が、第1の部品50と第3の部品53との間かつ第2の部品51と第3の部品53との間に配置される。図7は、図2の断面平図Aに沿った断面図である。
【0084】
図8は、図2の断面平図Bに沿った歯肉鋳型の断面図である。
【0085】
図9は、図3の断面平図Bに沿った歯肉鋳型4の断面図を示す。
【0086】
図10は、さらなる実施形態のスケッチを示し、この実施形態では、歯肉鋳型4が1つの部品のみからなり、かつ製造された歯科モデル2上に直接置かれ、それによって一体型の歯肉鋳型4が、シリコーンを注入するための2つの注入チャネル70を含む。したがって、人工歯肉1は、注入チャネル70を通して、歯肉鋳型4と歯科モデル2の内部構造12との間の空間にシリコーンを注入することによって直接製造される。
【符号の説明】
【0087】
1 歯肉
2 歯科モデル
3 3Dモデル
4 歯肉鋳型
5 表面積
6 表面
7 内部構造
8 非臨界面
9 座面
10 アンダーカット面
11 3Dモデル
12 内部構造
13 座面
14 非臨界面
15 アンダーカット面
16 第1の部品
17 第2の部品
18 第3の部品
19 接続手段
20 アンダーカット面
21 インプラント陥凹
22 非臨界面
23 コンピュータ
24 キーボード
25 マウス
26 表示デバイス
27 カーソル
28 縁線
29 3Dプリンタ
30 材料
31 プラットフォーム
32 調節手段
33 表面積
34 レーザー
35 レーザービーム
36 偏光ミラー
37 偏光ミラー
38 焦点
39 挿入方向
40 距離
50 第1の部品
51 第2の部品
53 第3の部品
54 歯肉鋳型の座面
60 バー
70 注入チャネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10