(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】簡易仕切りおよび簡易仕切りの形成方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
E04B2/74 541P
(21)【出願番号】P 2020013521
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391061646
【氏名又は名称】株式会社流機エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】網野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】濱田 洋志
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
(72)【発明者】
【氏名】朝山 陽一
(72)【発明者】
【氏名】西村 和
(72)【発明者】
【氏名】奥山 俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕光
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014289(JP,A)
【文献】特開2003-206588(JP,A)
【文献】実開昭50-100314(JP,U)
【文献】特開2002-303014(JP,A)
【文献】実開平06-051317(JP,U)
【文献】特開2019-183398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/72 - 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に気体が注入されることで膨張する袋状の柱体と、前記柱体の側部に連結されて起立状態で横方向に延在するシート状で非膨張性の仕切り部材とを備え
、上下方向において前記仕切り部材の端部が前記柱体の端部よりも外側に突出していることを特徴とする簡易仕切り。
【請求項2】
内部に気体が注入されることで膨張する袋状の柱体と、前記柱体の側部に連結されて起立状態で横方向に延在するシート状で非膨張性の仕切り部材とを備え
、前記仕切り部材の上部または下部の少なくともいずれかに上下に湾曲可能な弾性部材が設けられていることを特徴とする簡易仕切り。
【請求項3】
前記仕切り部材の上部または下部の少なくともいずれかに上下に湾曲可能な弾性部材が設けられている
請求項1に記載の簡易仕切り。
【請求項4】
内部に気体を注入して膨張させた袋状の柱体を立設し、前記柱体の側部に連結したシート状で非膨張性
であり、かつ、上下方向において端部が前記柱体の端部よりも外側に突出している仕切り部材を起立状態で横方向に張設することを特徴とする簡易仕切りの形成方法。
【請求項5】
内部に気体を注入して膨張させた袋状の柱体を立設し、前記柱体の側部に連結したシート状で非膨張性の仕切り部材を起立状態で横方向に張設
するに際して、前記仕切り部材の上部または下部の少なくともいずれかに弾性部材を設け、前記仕切り部材とともに前記弾性部材を上下方向に隣接して対向する対象面の少なくともいずれかに押し当てて上下に湾曲させた状態にして前記仕切り部材を張設することを特徴とする簡易仕切りの形成方法。
【請求項6】
内部に気体を注入して膨張させた袋状の柱体を立設し、前記柱体の側部に連結したシート状で非膨張性の仕切り部材を起立状態で横方向に張設
し、前記柱体および前記仕切り部材により区画された一方側領域の空気を吸引する吸気機構を設けることを特徴とする簡易仕切りの形成方法。
【請求項7】
前記仕切り部材の上部または下部の少なくともいずれかに弾性部材を設け、前記仕切り部材とともに前記弾性部材を上下方向に隣接して対向する対象面の少なくともいずれかに押し当てて上下に湾曲させた状態にして前記仕切り部材を張設する
請求項4または6に記載の簡易仕切りの形成方法。
【請求項8】
前記柱体および前記仕切り部材により区画された一方側領域の空気を吸引する吸気機構を設ける
請求項4に記載の簡易仕切りの形成方法。
【請求項9】
膨張させた前記柱体の上面と底面とをそれぞれ、上下に離間している上方対象面と下方対象面とに押し当てた状態で、前記上方対象面と前記下方対象面との上下すき間に前記柱体を立設する
請求項4~8に記載の簡易仕切りの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易仕切りおよび簡易仕切りの形成方法に関し、さらに詳しくは、仕切りを短時間に簡易な作業で形成できる簡易仕切りおよび簡易仕切りの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
桟橋などの水上構造物の補修作業を行う際には、水上構造物を構成する床板と梁の下方に仮設足場を構築し、その仮設足場の上で作業者が床板や梁を斫る作業等を行う。床板や梁を斫る作業では粉塵が発生するため、粉塵の外部への飛散を抑制する仕切り空間を形成して、その内側で作業を行うことが望ましい。従来では、鋼管や連結金具などによって骨組みを組み上げて、その骨組みにシートを取り付けることで仕切りを形成していた。そのため、床板や梁の下に骨組みの構成部材を搬入する作業や骨組みを組み上げる作業に多くの労力と時間を要していた。
【0003】
簡易な作業で形成できる仕切りとして、袋体に形成されたエアマット壁体どうしをファスナーによって結合する構造の簡易間仕切りが提案されている(特許文献1参照)。この簡易間仕切りでは、空気を充填したエアマット壁体を連続させた構造になるのでエアマット壁体への空気の充填作業に多くの時間を要し、撤去する際にもエアマット壁体の空気を抜く作業に多くの時間を要する。また、エアマット壁体に空気を充填した状態で搬入、搬出する場合にはエアマット壁体が非常にかさばるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、仕切りを短時間に簡易な作業で形成できる簡易仕切りおよび簡易仕切りの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の簡易仕切りは、内部に気体が注入されることで膨張する袋状の柱体と、前記柱体の側部に連結されて起立状態で横方向に延在するシート状で非膨張性の仕切り部材とを備え、上下方向において前記仕切り部材の端部が前記柱体の端部よりも外側に突出していることを特徴とする。
本発明の別の簡易仕切りは、内部に気体が注入されることで膨張する袋状の柱体と、前記柱体の側部に連結されて起立状態で横方向に延在するシート状で非膨張性の仕切り部材とを備え、前記仕切り部材の上部または下部の少なくともいずれかに上下に湾曲可能な弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の簡易仕切りの形成方法は、内部に気体を注入して膨張させた袋状の柱体を立設し、前記柱体の側部に連結したシート状で非膨張性であり、かつ、上下方向において端部が前記柱体の端部よりも外側に突出している仕切り部材を起立状態で横方向に張設することを特徴とする。
本発明の別の簡易仕切りの形成方法は、内部に気体を注入して膨張させた袋状の柱体を立設し、前記柱体の側部に連結したシート状で非膨張性の仕切り部材を起立状態で横方向に張設するに際して、前記仕切り部材の上部または下部の少なくともいずれかに弾性部材を設け、前記仕切り部材とともに前記弾性部材を上下方向に隣接して対向する対象面の少なくともいずれかに押し当てて上下に湾曲させた状態にして前記仕切り部材を張設することを特徴とする。
本発明のさらに別の簡易仕切りの形成方法は、内部に気体を注入して膨張させた袋状の柱体を立設し、前記柱体の側部に連結したシート状で非膨張性の仕切り部材を起立状態で横方向に張設し、前記柱体および前記仕切り部材により区画された一方側領域の空気を吸引する吸気機構を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内部に空気等の気体を注入して膨張させた袋状の柱体を立設し、柱体の側部に連結したシート状で非膨張性の仕切り部材を起立状態で横方向に張設することで、簡易仕切りを短時間に簡易な作業で形成できる。気体を充填させるのは柱体だけでよいので気体の充填作業に要する時間を短縮でき、撤去する際の気体を抜く作業に要する時間も短縮できる。さらに、気体を抜いた状態の柱体と仕切り部材はコンパクトに折り畳んだ状態で持ち運ぶことができ、比較的軽量である。それ故、利便性が非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態の簡易仕切りを斜視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の簡易仕切りを、水上構造物を構成する梁と仮設足場との上下すき間に形成した状態を側面視で例示する説明図である。
【
図5】本発明に係る別の実施形態の簡易仕切りを、水上構造物を構成する梁と仮設足場との上下すき間に形成した状態を側面視で例示する説明図である。
【
図6】本発明に係るさらに別の実施形態の簡易仕切りを斜視で例示する説明図である。
【
図7】本発明に係るさらに別の実施形態の簡易仕切りを斜視で例示する説明図である。
【
図8】冷蔵倉庫の内部に簡易仕切りを形成した状態を横断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の簡易仕切りおよび簡易仕切りの形成方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示するように、本発明の簡易仕切り1は、内部に気体が注入されることで膨張する袋状の柱体2と、柱体2の側部に連結されて起立状態で横方向に延在するシート状で非膨張性の仕切り部材8とを備えている。柱体2に注入する気体としては空気が例示できるが、その他の気体を注入することもできる。
【0012】
本発明でいうシート状で非膨張性の仕切り部材8とは、仕切り部材8がエアマットのような内部に気体を出し入れして膨張、収縮させる膨張性の部材ではないことを意味しており、仕切り部材8が温度変化による熱膨張をしないという意味ではない。即ち、シート状で非膨張性の仕切り部材8とは、完成品の状態で気体の出し入れを行うことがないシート状の部材を示している。
【0013】
柱体2と仕切り部材8は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂やゴムなどの柔軟性を有する非剛性材料で形成される。簡易仕切り1の用途に応じて、仕切り部材8は不透明なシートで構成することもできるし、透明なシートで構成することもできる。また、仕切り部材8を、例えば、耐風性に優れたメッシュ状のシートや、防臭性能や脱臭性能を有するシート、遮光性能を有するシート、防音性能を有するシート、防炎性能を有するシート等で構成することもできる。仕切り部材8として、例えば、発砲ポリエチレンシートなどの内部に無数の微細な空洞を有する発泡シートや、空気等の気体が密封された無数の小さな気泡粒が配列されたシート状の気泡緩衝材を用いることもできる。
【0014】
柱体2は、一層の筒状の袋体で構成した単層構造にすることもできるし、筒状の袋体を複数枚重ねて形成した複層構造にすることもできる。複層構造の柱体2にする場合には、気体を充填する内側の袋体と仕切り部材8を連結する外側の部材とを、例えば、同じ素材で形成することもできるし、別々の素材で形成することもできる。柱体2の側部には気体の注入および排出を行う注入口3と、注入口3を塞ぐ蓋4が設けられている。注入口3には逆止弁が設けられていて、柱体2の内部に注入した気体の漏出が抑制される構造になっている。柱体2は内部に気体が充填されると自立可能な状態となり、内部の気体が抜かれると萎んで折り畳める状態となる。
【0015】
この実施形態では、気体が充填された状態で円柱形状となる柱体2を例示しているが、例えば、気体が充填された状態で楕円柱形状や多角柱形状となる柱体2にすることもできる。柱体2の上面と底面にはそれぞれ滑り止め部6が設けられている。滑り止め部6はゴムや合成樹脂などの摩擦係数の高い材料で形成される。滑り止め部6は任意に設けることができる。
【0016】
この実施形態では、柱体2に対して仕切り部材8が着脱可能な構成になっている。柱体2の側部には連結部5が設けられていて、仕切り部材8には連結部5に対して着脱可能な被連結部9が設けられている。連結部5は、柱体2の上端部から下端部まで上下方向に延在して設けられている。この実施形態では、平面視において柱体2の周方向の四方にそれぞれ帯状の連結部5が設けられている。被連結部9は、仕切り部材8の横方向の端部にそれぞれ上下方向に延在して設けられている。連結部5と被連結部9とを連結することで柱体2と仕切り部材8とが一体化し、連結部5と被連結部9との連結を解除すると柱体2と仕切り部材8とが分離した状態となる。この実施形態の連結部5および被連結部9は、一対の面ファスナーで構成されている。連結部5および被連結部9は他にも例えば、スライドファスナーや留め具などで構成することもできる。
【0017】
この実施形態では、気体を充填させた状態の柱体2の高さ寸法よりも仕切り部材8の上下方向の長さ寸法が長く設定されている。柱体2と仕切り部材8とを連結した状態では、仕切り部材8の上端部が柱体2の上端部よりも上側に突出し、仕切り部材8の下端部が柱体2の下端部よりも下側に突出した状態になっている。
【0018】
仕切り部材8の上部と下部にはそれぞれ上下に湾曲可能な弾性部材10が設けられている。弾性部材10は例えば、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタラートなどの柔軟性と弾性を有する合成樹脂等で形成される。この実施形態では、仕切り部材8の上部と下部にそれぞれ、上下方向に延在する棒状の弾性部材10が仕切り部材8の横方向(幅方向)に互いに一定の間隔をあけて複数配設されている。
【0019】
柱体2と仕切り部材8とを連結した状態で、仕切り部材8の上部に設けられた弾性部材10の上端部は柱体2の上端部よりも上側に位置し、弾性部材10の下端部は柱体2の上端部よりも下側に位置している。仕切り部材8の下部に設けられた弾性部材10の上端部は柱体2の下端部よりも上側に位置し、弾性部材10の下端部は柱体2の下端部よりも下側に位置している。
【0020】
仕切り部材8に対して弾性部材10が接合されている構成にすることもできるし、仕切り部材8に対して弾性部材10が着脱可能な構成にすることもできる。例えば、仕切り部材8における弾性部材10の取付け位置と、弾性部材10とにそれぞれ面ファスナーや留め具などを設けた構成にすることで、仕切り部材8に対して弾性部材10を容易に着脱することが可能となる。弾性部材10は任意に設けることができる。
【0021】
仕切り部材8には出入口11を設けることもできる。出入口11は仕切り部材8に形成された開口と、その開口を開閉可能に塞ぐ扉部材とで構成されている。扉部材は例えば、仕切り部材8と同じ部材で形成される。この実施形態では、仕切り部材8の開口の周縁と扉部材の外周縁とを面ファスナーで接着する構成にしているが、例えば、仕切り部材8と扉部材とをスライドファスナーや留め具で連結した構成にすることもできる。出入口11は任意に設けることができる。
【0022】
次に、簡易仕切り1の形成方法を説明する。
図2~
図4に例示するように、この実施形態では、水上構造物20を構成する床板22や梁23の下方に簡易仕切り1を形成する場合を例示する。なお、
図2および
図3では、一部の連結部5や弾性部材10等を省略して図示していない。
図2では簡易仕切り1の部分にハッチングを付している。
【0023】
図2に例示するように、桟橋などの水上構造物20は、水域に立設された複数の杭21の上端部にコンクリート製の床板22や梁23を支持させた構造になっている。この実施形態では、隣り合う杭21どうしを連結する梁23が床板22の下面より下方に突出した構造になっている。床板22の下面や梁23などの補修作業を行うときには、床板22や梁23の下方に仮設足場24を構築する。仮設足場24は例えば、杭21に固定される。仮設足場24の上面から梁23の下面までの高さは例えば、0.5m~1.5m程度に設定される。仮設足場24の上面から床板22の下面までの高さは例えば、1.5m~3.0m程度となる。
【0024】
図3に例示するように、この実施形態では、横方向において隣り合う杭21どうしの間に延在し、上下方向において仮設足場24の上面から梁23の下面まで延在する簡易仕切り1を形成する。そして、4本の杭21のそれぞれの間に、四方を囲う計4枚の直線状の簡易仕切り1を形成することで、仕切り空間PSを形成する。以下に、簡易仕切り1を形成する作業手順を説明する。
【0025】
気体を充填していない萎んだ状態の柱体2と、仕切り部材8とを仮設足場24上に搬入する。この実施形態では、柱体2と仕切り部材8とを分離した状態で搬入する場合を例示するが、柱体2と仕切り部材8とを連結した状態で搬入することもできる。弾性部材10は、仕切り部材8に取り付けた状態で搬入することもできるし、仕切り部材8と分離した状態で搬入した後に仕切り部材8に取り付けることもできる。
【0026】
次いで、柱体2に設けられている注入口3にブロワーを接続する。そして、ブロワーによって袋状の柱体2の内部に気体(空気)を注入して柱体2を膨張させ、気体を充填した柱体2を仮設足場24の上に立設する。この実施形態では、膨張させた柱体2の上面と底面とをそれぞれ、上下に離間している梁23の下面と仮設足場24の上面とに押し当てた状態で、梁23の下面と仮設足場24の上面との上下すき間に柱体2を立設している。
【0027】
前述した柱体2を立設する作業では、萎んでいる柱体2を横倒しにした状態で柱体2の内部への気体の注入を開始して、柱体2が完全に膨張する前の時点で柱体2を立てる。そして、柱体2を立てた状態で支えながら気体をさらに注入していくと柱体2を少人数で円滑に立設できる。柱体2への気体の充填作業は、ブロワーに限らずその他の注入機器や手動の空気入れなどを用いて行ってもよい。柱体2の内部に空気以外の気体を注入してもよい。
【0028】
前述した柱体2の立設作業を繰り返して、梁23に沿って、隣り合う杭21どうしの間に複数の柱体2を横方向に間隔をあけて配設する。杭21どうしの間の両端に配置するそれぞれの柱体2は側面を杭21の側面に密着させた状態にして、杭21と柱体2との間にすき間が生じない状態にする。この実施形態では、隣り合う杭21どうしの間にそれぞれ3本の柱体2を配置しているが、柱体2の配置数や柱体2どうしの離間距離は適宜設定できる。
【0029】
次いで、柱体2の連結部5に仕切り部材8の被連結部9を連結して、柱体2の側部に仕切り部材8を連結する。そして、柱体2の側部に連結した仕切り部材8を起立状態で横方向に張設することで簡易仕切り1を形成する。
【0030】
この実施形態では、仕切り部材8の両側の端部をそれぞれ異なる柱体2に連結して、隣り合う柱体2どうしの間にそれぞれ仕切り部材8を張設することで、隣り合う杭21どうしの間に3本の柱体2と2枚の仕切り部材8とで形成された平面視で直線状の簡易仕切り1を形成している。仕切り部材8に弛みがある場合には、柱体2を周方向に回転させて仕切り部材8を柱体2の側面に巻き付けることで仕切り部材8の張り具合を調整することが可能である。
【0031】
図4に例示するように、この実施形態では、仕切り部材8を張設する際に、仕切り部材8の上部に設けている弾性部材10を仕切り部材8とともに梁23の下面に押し当てて上下に湾曲させた状態にしている。さらに、仕切り部材8の下部に設けている弾性部材10を仕切り部材8とともに仮設足場24の上面に押し当てて上下に湾曲させた状態にしている。これにより、梁23の下面と仕切り部材8の上部との間と、仮設足場24の上面と仕切り部材8の下部との間にすき間が生じることを抑制している。
【0032】
図3に例示するように、この実施形態では、さらに、柱体2および仕切り部材8によって区画された仕切り空間PSの内側領域の空気を吸引する吸気機構12を設けている。さらに、仕切り空間PSの外側領域に吸気機構12に接続された集塵機構13を設けている。
図3の右下側に図示している仕切り部材8には、吸気機構12と集塵機構13とを接続する接続管が挿通する挿通孔が設けられている。集塵機構13は、吸気機構12によって空気とともに吸引された粉塵を集塵する集塵部と、集塵部を通過した粉塵が除去された状態の空気を排気する排気口を有している。吸気機構12の吸気口は、仕切り空間PSの内側領域の中央に近い位置に配置することが好ましい。吸気機構12の吸気口が仕切り空間PSの内側領域に配置され、集塵機構13の排気口が仕切り空間PSの外側領域に配置されていれば、吸気機構12と集塵機構13の配置は特に限定されない。
図3の左上側に図示している仕切り部材8には、換気口14が設けられている。換気口14には、粉塵の通過を防ぐフィルターを設けることが好ましい。なお、吸気機構12、集塵機構13、および換気口14はそれぞれ任意に設けることができる。
【0033】
作業者は、簡易仕切り1と杭21によって仕切られた仕切り空間PSの内側領域で床板22や梁23を斫る作業などを行う。この際、吸気機構12によって仕切り空間PSの内側領域の空気を吸引する。
【0034】
床板22や梁23を斫る作業によって発生する粉塵の仕切り空間PSの外側領域への飛散は、簡易仕切り1(柱体2および仕切り部材8)によって抑制される。さらに、吸気機構12によって仕切り空間PSの内側領域の空気とともに粉塵が吸引される。そして、吸気機構12によって吸引された空気と粉塵は接続管を通って集塵機構13に送られ、粉塵は集塵機構13の集塵部に溜められる。集塵部によって粉塵が除去された状態の空気は集塵機構13の排気口から仕切り空間PSの外側領域に排気される。
【0035】
吸気機構12によって仕切り空間PSの内側領域の空気が吸引され、その空気が集塵機構13を介して仕切り空間PSの外側領域に排気されることで、仕切り空間PSの内側領域の気圧が仕切り空間PSの外側領域の気圧に比して低くなり、仕切り空間PSの内側領域で発生した粉塵が仕切り空間PSの外側領域に向かって飛散し難い状態となる。換気口14を介して仕切り空間PSの外側領域の空気が相対的に気圧の低い仕切り空間PSの内側領域に流入することで、仕切り空間PSの内側領域の空気が換気され、仕切り空間PSの内側領域の気圧が過度に低くなることや仕切り空間PSの内側領域の酸素濃度の低下が抑制される。
【0036】
簡易仕切り1を撤去する際には、柱体2の注入口3にブロワーを接続して、柱体2の内部の気体(空気)を抜く。そして、必要に応じて柱体2から仕切り部材8を取り外し、萎んだ状態の柱体2と仕切り部材8とを仮設足場24から搬出して撤去する。柱体2の内部の気体を抜く前に仕切り部材8を柱体2から取り外してもよい。
【0037】
このように、本発明によれば、内部に空気等の気体を注入して膨張させた袋状の柱体2を立設し、柱体2の側部に連結したシート状で非膨張性の仕切り部材8を起立状態で横方向に張設することで簡易仕切り1を短時間に簡易な作業で形成できる。気体で膨張させた柱体2を支柱にして、その側部に仕切り部材8を連結した構造にすることで、骨組みなどを構築しなくともシート状の仕切り部材8を安定した状態で張設することが可能となる。気体を充填させるのは柱体2だけでよく、仕切り部材8に気体を注入する必要がないので、特許文献1に記載の発明のように、エアマット壁体を連続させた構造にする場合よりも、気体の充填作業に要する時間と撤去する際の気体を抜く作業に要する時間を大幅に短縮できる。具体的には、例えば、高さが1.0m程度で幅と奥行きが0.5m程度の柱体2であれば、ブロワーを用いて1分程度で柱体2を立設することが可能である。
【0038】
従来の骨組みを構築する鋼管や連結金具に比して柱体2および仕切り部材8は軽量であり、気体を抜いた状態の柱体2と仕切り部材8はコンパクトに折り畳んだ状態で持ち運ぶことが可能である。それ故、鋼管や連結金具などを用いる場合に比して、作業者の軽労化を図ることができる。また、簡易仕切り1を形成した現場において台風などの悪天候が予測される場合には、簡易仕切り1を短時間に簡易な作業で撤去できる。それ故、本発明は利便性が非常に高い。
【0039】
柱体2に対して仕切り部材8を着脱可能な構成にすると、柱体2と仕切り部材8とを分離した、よりコンパクトな状態で持ち運ぶことが可能となる。柱体2と仕切り部材8とを分離しておくことで、柱体2の立設作業もより行い易くなる。現場に応じて様々な寸法の柱体2と仕切り部材8とを組み合わせることも可能となる。簡易仕切り1の用途に応じて柱体2に連結する仕切り部材8を変更することも可能となる。それ故、汎用性が非常に高くなる。
【0040】
この実施形態のように、膨張させた柱体2の上面と底面とをそれぞれ、上下に離間している上方対象面と下方対象面とに押し当てた状態で、上方対象面と下方対象面との上下すき間に柱体2を立設すると、固定具などを用いなくとも柱体2を非常に安定した状態で固定できる。この実施形態では、梁23の下面が上方対象面であり、仮設足場24の上面が下方対象面である。
【0041】
柱体2の上面または底面の少なくともいずれかに滑り止め部6を設けると、上方対象面や下方対象面に対して柱体2がよりずれ難くなるので、柱体2を安定した状態で固定するにはより有利になる。好ましくは、柱体2の上面と底面の両方にそれぞれ滑り止め部6を設けるとよい。
【0042】
上下方向において仕切り部材8の端部が柱体2の端部よりも外側に突出している構成にすると、上方対象面と仕切り部材8の上部との間や、下方対象面と仕切り部材8の下部との間にすき間が生じることを防ぐには有利になる。
【0043】
仕切り部材8の上部または下部の少なくともいずれかに弾性部材10を設け、仕切り部材8とともに弾性部材10を上下方向に隣接して対向する対象面の少なくともいずれかに押し当てて上下に湾曲させた状態にして仕切り部材8を張設すると、弾性部材10の復元力を利用して、弾性部材10を設けた仕切り部材8の上部または下部を対象面に付勢して密着させた状態にできる。それ故、仕切り部材8と対象面との間にすき間が生じることを防ぐには有利になり、簡易仕切り1の密閉性を高めることができる。簡易仕切り1の密閉性を高めるには、弾性部材10を仕切り部材8の上部と下部の両方にそれぞれ設けることが好ましい。
【0044】
例えば、仕切り部材8の上部や下部を上下方向に隣接して対向する対象面に接着テープや固定具を用いて固定することもできるが、接着テープを用いる場合には接着テープを貼る作業や剥がす作業が必要となり、フック付きのアンカーボルトなどの固定具を用いる場合には対象面に固定具を固定する作業が必要となる。一方で、仕切り部材8に弾性部材10を設けると、仕切り部材8を張設する際には、仕切り部材8とともに弾性部材10を対象面に押し当てて上下に湾曲させた状態にするだけでよい。また、仕切り部材8を撤去する際にも、柱体2の内部の気体を抜く、或いは、柱体2と仕切り部材8との連結を解除するだけで、対象面から仕切り部材8を容易に外すことができる。それ故、仕切り部材8に弾性部材10を設けると、接着テープや固定具を用いる場合よりも、仕切り部材8の張設作業や撤去作業に要する労力と時間を低減できる。
【0045】
この実施形態のように、複数の棒状の弾性部材10を仕切り部材8の横方向に互いに間隔をあけて配設した構成にすると、対象面に起伏や凹凸がある場合にも、対象面の形状に合わせてそれぞれの棒状の弾性部材10が湾曲するので、対象面と仕切り部材8との間にすき間が生じ難くなる。さらに、棒状の弾性部材10を互いに間隔をあけて配置することで、搬入時や撤去時に仕切り部材8を折り畳みやすくなる。
【0046】
柱体2および仕切り部材8により区画された一方側領域(仕切り空間PSの内側領域)の空気を吸引する吸気機構12を設けると、一方側領域で粉塵が発生するような作業を行う場合に、吸気機構12によって一方側領域の空気を吸引することで、一方側領域の気圧を柱体2および仕切り部材8を介した他方側領域の気圧に比して相対的に低くできる。それ故、一方側領域で発生した粉塵が他方側領域に向かって飛散し難くなる。さらに、吸気機構12によって一方側領域の空気とともに粉塵を吸引し、集塵機構13によって粉塵を集塵することで、一方側領域で発生した粉塵の他方側領域への飛散を効果的に抑制できる。また、一方側領域に滞留する粉塵を低減できるので、一方側領域の作業環境を向上させるにも有利になる。
【0047】
本発明の簡易仕切り1は
図5に例示するような構成にすることもできる。
図5では簡易仕切り1の部分にハッチングを付している。
【0048】
この実施形態では、仕切り部材8の上端部と梁23の下面との間にすき間を設けた状態で仕切り部材8を張設している。仕切り部材8の上部には弾性部材10を設けていない。また、仕切り部材8に換気口14は設けていない。その他の構成は、
図1~
図4に例示した実施形態と同じである。
【0049】
この実施形態のように、仕切り部材8の上端部と上方対象面(梁23の下面)との間にすき間を設けた状態で仕切り部材8を張設し、柱体2および仕切り部材8により区画された一方側領域(仕切り空間PSの内側領域)の空気を吸引する吸気機構12を設けると、一方側領域で粉塵が発生するような作業を行う場合に、吸気機構12によって一方側領域の空気を吸引してその吸引した空気を他方側領域(仕切り空間PSの外側領域)に排気することで、一方側領域の気圧が他方側領域の気圧に比して相対的に低くなる。これにより、他方側領域の空気が仕切り部材8の上端部と上方対象面との間のすき間から一方側領域に向かって流れ込む空気の流れができる。そのため、一方側領域で発生した粉塵が他方側領域へ向かって飛散し難くなり、一方側領域で発生した粉塵の他方側領域への飛散を効果的に抑制できる。また、仕切り部材8に換気口14を設けずとも、一方側領域の空気を換気することが可能となる。仕切り部材8の上端部と上方対象面との間にすき間の上下幅は適宜設定できるが、例えば、50mm~100mm程度の範囲内で設定するとよい。
【0050】
柱体2および仕切り部材8は
図6に例示するような構成にすることもできる。
【0051】
この実施形態では、柱体2の外周面に全周に延在する平面視で環状の連結部5が設けられていて、柱体2の周方向のどの位置でも被連結部9を連結できる構成になっている。
図6では連結部5の部分にハッチングを付している。この実施形態では、上下方向において、連結部5を設けた部分と連結部5を設けていない部分とを交互に設けた構成にしているが、例えば、柱体2の外周面の全面に連結部5を設けることもできる。このように、柱体2の全周に延在する連結部5を設けると、柱体2に対して様々な方向に仕切り部材8を連結することが可能となるので、簡易仕切り1の汎用性が高くなる。
【0052】
柱体2および仕切り部材8は
図7に例示するような構成にすることもできる。
【0053】
この実施形態の柱体2は、柱体2の高さを変更可能な伸縮部7を有している。この実施形態の伸縮部7は、柱体2の側面の高さ方向の一部分に設けられた上下一対の面ファスナーで構成されている。
図7の右側に示す柱体2のように伸縮部7を構成する上下一対の面ファスナーどうしを剥がした状態では伸縮部7が伸長した状態となり、
図7の左側の柱体2のように伸縮部7を構成する上下一対の面ファスナーどうしを接着させた状態では伸縮部7が縮んだ状態となる構造になっている。
【0054】
このように、柱体2に伸縮部7を設けると、柱体2の高さを変更することが可能になるので、簡易仕切り1の汎用性が高くなる。伸縮部7は、柱体2の高さを変更できる構成であればこの実施形態の構造に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。
【0055】
この実施形態の仕切り部材8には横方向の端部だけでなく、横方向における仕切り部材8の中央側にも被連結部9が設けられている。このように、仕切り部材8の横方向において複数箇所に被連結部9を設けると、柱体2の連結部5に連結する被連結部9を変更することで、張設する仕切り部材8の横幅を容易に変更することが可能となる。それ故、簡易仕切り1の汎用性がより高くなる。
【0056】
この実施形態では、仕切り部材8の上部と下部にそれぞれ上下に湾曲可能な板状の弾性部材10を設けている。このように、板状の弾性部材10にした場合にも、棒状の弾性部材10と同様の作用効果を発揮することができる。この実施形態では、柱体2の連結部5に仕切り部材8のどの位置の被連結部9を連結した場合にも、弾性部材10が柱体2と仕切り部材8との連結を阻害しないように、板状の弾性部材10における仕切り部材8の被連結部9に対応する位置にそれぞれ切れ目を設けている。
【0057】
図8に例示するように、本発明の簡易仕切り1は、冷蔵倉庫30の内部に仕切り空間PSを形成する仕切りとして使用することもできる。
【0058】
既存建物の耐震補強工法として、外枠と鉄骨ブレースとからなる補強体32を柱31と梁とで囲まれた開口部に設置し、補強体32と開口部の内面との間隙にモルタル33を充填して硬化させる工法がある。しかし、冷蔵倉庫30の冷蔵エリアRのように温度が低い環境下ではモルタル33が硬化しない、或いは、硬化するまでに長い時間を要する。そのため、稼働している冷蔵倉庫30の内部で前述した耐震補強工事を行うには、冷蔵倉庫30の内部に冷気の流入を抑制する仕切りを仮設して仕切り空間PSを形成し、その仕切り空間PSの内側領域で耐震補強工事を行うことが好ましい。
【0059】
この実施形態では、複数の柱体2および仕切り部材8を組み合わせて、冷蔵倉庫30の隅に平面視でL字状の簡易仕切り1を形成することで、冷蔵倉庫30の内部に仕切り空間PSを形成している。このように、本発明では、柱体2と仕切り部材8を組み合わせることで、平面視で直線状の簡易仕切り1に限らず、平面視でL字状や多角形状などの簡易仕切り1を形成することが可能である。
【0060】
この実施形態では、簡易仕切り1の断熱性能をより高めるために、隣り合う柱体2と柱体2との間にそれぞれ、柱体2の奥行方向に間隔をあけて2枚の仕切り部材8を張設している。このように、複数枚の仕切り部材8を奥行方向に間隔をあけて張設し、仕切り部材8どうしの間に空気の層を形成すると、簡易仕切り1の断熱性能をより高めることができ、冷蔵エリアRの冷気が仕切り空間PSの内側領域により伝わり難くなる。冷蔵倉庫30に簡易仕切り1を形成する場合には、柱体2および仕切り部材8は、冷蔵倉庫30の床面から天井面まで上下に延在して設けることが好ましい。
【0061】
この実施形態のように、複数枚の仕切り部材8を奥行方向に重ねて張設する場合にも、気体を充填させるのは柱体2だけでよく、仕切り部材8や仕切り部材8どうしの間の空間に気体を注入する必要はない。それ故、簡易仕切り1は短時間に簡易な作業で形成することができ、撤去作業も短時間で完了できる。また、冷蔵倉庫30では、接着テープや接着剤を使用できない場合があるが、本発明では、接着テープや接着剤を使用しなくとも簡易仕切り1を簡易な作業で形成することが可能である。それ故、本発明は冷蔵倉庫30での工事においても非常に有用である。
【0062】
なお、本発明の簡易仕切り1は、上記で例示した実施形態の構成に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、膨張させた柱体2の上面を上方対象面に押し当てずに柱体2を自立させた状態で立設することもできる。例えば、仕切り部材8は起立状態であれば、鉛直方向に対して傾けた状態で張設することもできる。また、例えば、仕切り部材8の横方向の片側を柱体2以外の対象物に固定して張設する構成にすることもできる。即ち、例えば、仕切り部材8の横方向の一方側を柱体2に連結し、その仕切り部材8の横方向の他方側を柱体2以外の杭21や柱31などの対象物に固定する構成にすることもできる。
【0063】
本発明の簡易仕切り1は、上記で例示した実施形態の用途に限定されず、他にも様々な用途で使用できる。例えば、簡易仕切り1は、水上構造物20や冷蔵倉庫30以外の施工現場で使用することもできるし、災害時の仮設の仕切り空間PSを形成する仕切りとして使用することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 簡易仕切り
2 柱体
3 注入口
4 蓋
5 連結部
6 滑り止め部
7 伸縮部
8 仕切り部材
9 被連結部
10 弾性部材
11 出入口
12 吸気機構
13 集塵機構
14 換気口
20 水上構造物
21 杭
22 床板
23 梁
24 仮設足場
30 冷蔵倉庫
31 (冷蔵倉庫の)柱
32 補強体
33 モルタル
PS 仕切り空間
R 冷蔵エリア