(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】スリットダイ
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
B05C5/02
(21)【出願番号】P 2020043583
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】北島 賢司
(72)【発明者】
【氏名】栗秋 武史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
(72)【発明者】
【氏名】前田 和紀
(72)【発明者】
【氏名】中島 一茂
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-103728(JP,A)
【文献】特開2017-136551(JP,A)
【文献】特開2015-153527(JP,A)
【文献】特開2014-160564(JP,A)
【文献】特開2018-122269(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143342(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00- 5/04
B05D 1/00- 7/26
F16B23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗液を基材に吐出するスリットダイであって、
それぞれが塗液を溜める空間であり、幅方向に設けられた複数のマニホールドと、
前記複数のマニホールドにそれぞれ塗液を供給する複数の塗液供給口と、
前記幅方向に広いスリットを経由して当該複数のマニホールドと繋がり、塗液を基材に対して吐出する一の吐出口と、
前記スリットの高さを構成するために設けられたシムと、を備え、
前記シムは、当該スリットダイの両端部に前記吐出口まで延びる端部突起部を有するとともに、各マニホールド間にそれぞれ各マニホールドよりも前記吐出口方向に延びた中間突起部を有し
、
前記中間突起部は、前記吐出口方向に向かって幅が細くなる幅方向テーパ形状を有し、前記幅方向テーパ形状は、階段形状であることを特徴とするスリットダイ。
【請求項2】
前記中間突起部における前記幅方向テーパ形状は、前記マニホールド内から吐出口方向に傾斜が開始する形状であることを特徴とする請求項
1に記載のスリットダイ。
【請求項3】
前記中間突起部は、前記吐出口方向に向かって厚みが薄くなる厚み方向テーパ形状を有している請求項1
又は2に記載のスリットダイ。
【請求項4】
塗液を基材に吐出するスリットダイであって、
それぞれが塗液を溜める空間であり、幅方向に設けられた複数のマニホールドと、
前記複数のマニホールドにそれぞれ塗液を供給する複数の塗液供給口と、
前記幅方向に広いスリットを経由して当該複数のマニホールドと繋がり、塗液を基材に対して吐出する一の吐出口と、
前記スリットの高さを構成するために設けられたシムと、を備え、
前記シムは、当該スリットダイの両端部に前記吐出口まで延びる端部突起部を有するとともに、各マニホールド間にそれぞれ各マニホールドよりも前記吐出口方向に延びた中間突起部を有し、
前記中間突起部は、前記吐出口方向に向かって厚みが薄くなる厚み方向テーパ形状を有していることを特徴とするスリットダイ。
【請求項5】
前記マニホールド毎に前記塗液供給口を複数備え、
一つの前記マニホールドにおける複数の前記塗液供給口は、供給される塗液の流量の範囲が互いに異なることを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載のスリットダイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に塗液を塗工するスリットダイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロールツーロールで送られる基材に、塗液をダイの吐出口から塗工して電池の極板等を製造することが行われている。基材上に形成される塗工膜の厚さは、例えば電池の場合、電池の充放電量に直接影響を与えることから、基材に塗工する塗工液の膜厚管理は非常に重要となる。つまり、塗液は、基材の幅方向及び送り方向に沿って均一な厚さで塗工される必要がある。
【0003】
特許文献1には、局所的な流速変動を分散させることで塗工スジの発生を抑え、基材上に形成される塗工膜の厚さを均一にする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特許第6425776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のものは、ダイ内部での塗液に圧力が印加されることで塗液が分離しやすく、また分離した塗液をタンクに戻して再利用されることで塗工膜の品質にも影響を与える恐れがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決して、品質がよく厚さが均一な塗工膜を塗工することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明は、塗液を基材に吐出するスリットダイであって、
それぞれが塗液を溜める空間であり、幅方向に設けられた複数のマニホールドと、
前記複数のマニホールドにそれぞれ塗液を供給する複数の塗液供給口と、
前記幅方向に広いスリットを経由して当該複数のマニホールドと繋がり、塗液を基材に対して吐出する一の吐出口と、
前記スリットの高さを構成するために設けられたシムと、を備え、
前記シムは、当該スリットダイの両端部に前記吐出口まで延びる端部突起部を有するとともに、各マニホールド間にそれぞれ各マニホールドよりも前記吐出口方向に延びた中間突起部を有し、
前記中間突起部は、前記吐出口方向に向かって幅が細くなる幅方向テーパ形状を有し、前記幅方向テーパ形状は、階段形状であることを特徴とするスリットダイを提供するものである。
【0008】
この構成により、幅方向の吐出量を制御することが可能で、品質がよく厚さが均一な塗工膜を塗工することができる。
また、複数のマニホールドにおける塗液が吐出口手前付近で合流しやすく、安定した塗工膜を塗工することができる。
【0011】
前記中間突起部における前記幅方向テーパ形状は、前記マニホールド内から吐出口方向に傾斜が開始する形状である構成としてもよい。
【0012】
この構成により、複数のマニホールドにおける塗液が吐出口手前付近でさらに合流しやすく、安定した塗工膜を塗工することができる。
【0013】
前記中間突起部は、前記吐出口方向に向かって厚みが薄くなる厚み方向テーパ形状を有している構成としてもよい。
【0014】
この構成により、複数のマニホールドにおける塗液が吐出口手前付近でさらに合流しやすくなり、安定した塗工膜を塗工することができる。
【0015】
また、上記の課題を解決するために本発明は、塗液を基材に吐出するスリットダイであって、
それぞれが塗液を溜める空間であり、幅方向に設けられた複数のマニホールドと、
前記複数のマニホールドにそれぞれ塗液を供給する複数の塗液供給口と、
前記幅方向に広いスリットを経由して当該複数のマニホールドと繋がり、塗液を基材に対して吐出する一の吐出口と、
前記スリットの高さを構成するために設けられたシムと、を備え、
前記シムは、当該スリットダイの両端部に前記吐出口まで延びる端部突起部を有するとともに、各マニホールド間にそれぞれ各マニホールドよりも前記吐出口方向に延びた中間突起部を有し、
前記中間突起部は、前記吐出口方向に向かって厚みが薄くなる厚み方向テーパ形状を有していることを特徴とするスリットダイを提供するものである。
【0016】
この構成により、幅方向の吐出量を制御することが可能で、品質がよく厚さが均一な塗工膜を塗工することができる。
また、複数のマニホールドにおける塗液が吐出口手前付近でさらに合流しやすくなり、安定した塗工膜を塗工することができる。
【0017】
各前記マニホールド毎に前記塗液供給口を複数備え、一つの前記マニホールドにおける複数の前記塗液供給口は、供給される塗液の流量の範囲が互いに異なる構成としてもよい。
【0018】
この構成により、塗液流量の調節範囲を広くすることができ、均一な塗工膜を塗工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1におけるスリットダイを説明する図である。
【
図3】本発明の実施例1における(a)はb矢視図で、(b)はシム15の平面図である。
【
図4】本発明の実施例2における(a)はb矢視図で、(b)はシム115の平面図である。
【
図5】本発明の実施例3における(a)はb矢視図で、(b)はシム215の平面図である。
【
図6】本発明の実施例4における(a)はb矢視図で、(b)はシム315の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1におけるスリットダイを説明する図である。
図2は、本発明の実施例1におけるa矢視図である。
図3は、本発明の実施例1における(a)はb矢視図で、(b)はシム15の平面図である。
【0021】
実施例1におけるスリットダイ1は、ロールツーロールで送られる基材2に、塗液3を塗工するためのものである。塗液3は、基材2の送り方向MDに沿って均一な厚さ(均一な塗工量)で塗工される。なお、基材2の幅方向TDは、基材2の送り方向MDに直交する方向であり、
図1におけるY軸方向がこれに相当する。
【0022】
スリットダイ1は、基材2の幅方向に沿って長く構成され、このスリットダイ1には供給手段20から塗液3が供給される。スリットダイ1において、その長手方向(
図1におけるY軸方向)を幅方向TDという。実施例1においては、スリットダイ1に対向するローラ5が設置されており、スリットダイ1の幅方向とローラ5の回転中心線の方向とは平行である。基材2は、このローラ5に案内され、基材2とスリットダイ1との間隔(隙間)が一定に保たれ、この状態で塗液3の塗工が行われる。
【0023】
スリットダイ1は、先細り形状である第一リップ13aを有する第一分割体13と、先細り形状である第二リップ14aを有する第二分割体14とを、これらの間にシム板15を挟んで、組み合わせた構成からなる。
図2は、
図1のa矢視の断面図である。
図3(a)は、
図1のb矢視の断面図であり、シム板15を、
図3(b)に示している。スリットダイ1は、その内部に、幅方向に複数の空間からなる複数のマニホールド11(11a、11b、11c)が均等に同じ幅方向の長さを有して3個設けられている。この3個のマニホールド11(11a、11b、11c)と繋がる一のスリット12とが形成され、また、第一リップ13aと第二リップ14aとの間には、スリット12の解放端である一の吐出口4が形成されている。すなわち、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)と一の吐出口4とは、スリット12を経由して繋がっている。
【0024】
この構成により、供給手段20により供給された塗液3は、先ず3個のマニホールド11(11a、11b、11c)に溜められ、次に、スリット12を経由して幅広の一の吐出口4から吐出される。
【0025】
スリット12は、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)が設けられた幅方向TDに長く形成されており、スリット12の幅方向寸法は、後述するシム板15の内寸W(
図3(b)参照)によって決定され、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)の各々から流出する塗液3がスリット12で合流して、幅方向に長い寸法の塗液3を、一の吐出口4から基材2上に塗工することができる。スリット12の隙間寸法(高さ寸法)は、例えば0.4~1.5mmである。実施例1では、スリット12の隙間方向が上下方向であり、幅方向が水平方向となる姿勢でスリットダイ1は設置されている。つまり、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)とスリット12とが水平方向に並んで配置される姿勢でスリットダイ1は設置されている。したがって、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)に溜められている塗液3をスリット12および吐出口4を通じて基材2へと流す方向は水平方向となる。
【0026】
なお、シム板15の厚さを変更することにより、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)内部の圧力(塗工圧力)を調整することができ、この調整によって、様々な特性を有する塗液3で均一な膜厚の塗工を行うことが可能となる。
【0027】
また、実施例1においては、塗液3が吐出口4を通じて基材2へと流れる方向を水平方向としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、上方向としてもよいし、下方向としてもよく、任意の方向に設定することができる。
【0028】
スリットダイ1の幅方向に、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)毎に3個の塗液供給口16(16a、16b、16c)が設けられており、この塗液供給口16(16a、16b、16c)は、スリットダイ1の外部から3個のマニホールド11(11a、11b、11c)へ繋がる貫通孔(流入口)からなる。供給手段20は、この塗液供給口16(16a、16b、16c)に一端部が接続されている流入パイプ21と、塗液3を貯留しているタンク22と、このタンク22内の塗液3を、パイプ21を通じてスリットダイ1へ供給するためのポンプ23と、マニホールド11(11a、11b、11c)毎に3個のバルブ24(24a、24b、24c)を有している。以上より、供給手段20は、バルブ24(24a、24b、24c)で個別に流量制限して、それぞれのマニホールド11(11a、11b、11c)に塗液供給口16(16a、16b、16c)から塗液3を供給することができる。なお、実施例1では、
図1に示すように、塗液供給口16(16a、16b、16c)は、マニホールド11(11a、11b、11c)の底部17(17a、17b、17c)と繋がっており、この底部17(17a、17b、17c)からそれぞれのマニホールド11(11a、11b、11c)に塗液3を流入させる構成としている。
【0029】
そして、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)は、供給手段20から供給された塗液3を溜めることができ、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)に溜められている塗液3を、スリット12で合流させて一の吐出口4からロールツーロールで送られる基材2に対して吐出し、この基材2に対して塗液3を連続的に塗工することができる。スリット12の隙間寸法はその幅方向に一定であり、基材2上に塗工される塗液3の厚さは幅方向に一定となる。
【0030】
前述したように、実施例1においては、塗液供給口16(16a、16b、16c)から底部17(17a、17b、17c)を介して、複数のマニホールド11(11a、11b、11c)に塗液3を流入させ、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)に溜められた塗液3は、一の吐出口4において合流して吐出される。
【0031】
スリットダイ1において、3個のマニホールド11(11a、11b、11c)を区切っているのは、シム15である。このシム15について、詳しく説明する。シム15は
図3(a)、(b)に示すように、スリットダイ1の両端部に吐出口4まで延びる端部突起部18(18a、18b)を有するとともに、各マニホールド11(11a、11b、11c)間にそれぞれ各マニホールド11(11a、11b、11c)よりも吐出口4方向に延びた中間突起部19(19a、19b)を有した櫛歯状の形状を有している。シム15の幅方向(Y方向)の長さは、スリットダイ1の幅方向の長さとほぼ同じであり、厚さ方向(Z方向)の長さは、スリット12の高さを規定する長さである。
【0032】
端部突起部18(18a、18b)のTD方向と直交するX方向の長さは、スリットダイ1のX方向の長さとほぼ同じである。中間突起部19(19a、19b)のX方向の長さは、各マニホールド11(11a、11b、11c)よりも吐出口4方向に延び、端部突起部18(18a、18b)よりも短く構成されている。また、中間突起部18(18a、18b)の吐出口4(X方向)側の端部は、吐出口4方向と直交する方向に直線的に構成されている。これらの構成により、各マニホールド11(11a、11b、11c)に溜められた塗液3が吐出口4まで到達する前のスリット12において合流することができ、滑らかで安定した塗工をすることができる。
【0033】
また、中間突起部19(19a、19b)があることにより、各マニホールド11(11a、11b、11c)間が区切られて独立した各マニホールド11(11a、11b、11c)を構成している。各マニホールド11(11a、11b、11c)が独立し、それぞれ別のバルブ24(24a、24b、24c)から塗液3を供給することにより、各マニホールド11(11a、11b、11c)からスリット12へ流れる塗液3の量を制御しやすくできる。また、中間突起部19(19a、19b)のX方向の長さを端部突起部18(18a、18b)よりも短く構成することにより、各マニホールド11(11a、11b、11c)から流出する塗液3が吐出口4に到達する前のスリット12で合流しやすくできる。これらの構成により、吐出する塗液3の量を幅方向において、顕著に制御することができるとともに、マニホールド11(11a、11b、11c)毎に塗液3の量が不連続に変化することがないため塗工膜に窪みが生じることがなく、塗工した膜厚を一定にすることが可能とすることができる。
【0034】
なお、実施例1においては、マニホールドの数を3個とし、それぞれ均等に同じ幅方向の長さを有して設けられた構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、マニホールドの数を2個としてもよいし、4個以上としてもよい。また、マニホールド間の長さは均等ではなく、いずれかのマニホールドの幅方向の長さを長く構成するように構成してもよい。つまり、スリットダイ1の幅方向の長さに基づき、膜厚制御が可能になるように、マニホールド数、及び各マニホールドの長さを決めればよい。また、マニホールドの数に基づいて、中間突起部及び塗液供給口の数を決めればよい。
【0035】
また、実施例1においては、複数のマニホールド11(11a、11b、11c)に溜められている塗液3をスリット12および吐出口4を通じて基材2へと流す方向は水平方向としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、垂直方向(上方向又は下方向)としてもよいし、斜め方向としてもよい。
【0036】
さらに、実施例1においては、バルブ24(24a、24b、24c)により、各マニホールド11(11a、11b、11c)に流入する塗液3の量を制御するように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、バルブ24(24a、24b、24c)に替えて、3個のポンプをそれぞれ各マニホールド11(11a、11b、11c)に接続して流入する塗液3の量を制御するように構成してもよい。
【0037】
また、実施例1におけるスリットダイ1は、固定されており、ローツーロールで搬送される基材2に塗液3を塗工する構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、静止している個片の基材にスリットダイ1が移動して塗液3を塗工するように構成してもよい。
【0038】
このように、実施例1においては、塗液を基材に吐出するスリットダイであって、
それぞれが塗液を溜める空間であり、幅方向に設けられた複数のマニホールドと、
前記複数のマニホールドにそれぞれ塗液を供給する複数の塗液供給口と、
前記幅方向に広いスリットを経由して当該複数のマニホールドと繋がり、塗液を基材に対して吐出する一の吐出口と、
前記スリットの高さを構成するために設けられたシムと、を備え、
前記シムは、当該スリットダイの両端部に前記吐出口まで延びる端部突起部を有するとともに、各マニホールド間にそれぞれ各マニホールドよりも前記吐出口方向に延びた中間突起部を有したことを特徴とするスリットダイにより、幅方向の吐出量を制御することが可能で、品質がよく厚さが均一な塗工膜を塗工することができる。
【実施例2】
【0039】
本発明の実施例2は、中間突起部が吐出口方向に向かって幅が細くなる幅方向テーパ形状を有している点で、実施例1と異なっている。実施例2について、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施例2における(a)はb矢視図で、(b)はシム115の平面図である。
【0040】
実施例2におけるスリットダイ101におけるスリット115は、
図4(a)、(b)に示すように、中間突起部119(119a、119b)が、マニホールド11(11a、11b、11c)より吐出口4方向においてマニホールド11(11a、11b、11c)よりも吐出口4側から傾斜が開始して幅中心に向かってY方向の幅が直線的に細くなる幅方向テーパ形状を有している。これにより、複数のマニホールド11(11a、11b、11c)における塗液3が吐出口4のマニホールド11(11a、11b、11c)側で合流しやすく、安定した塗工膜を塗工することができる。
【0041】
なお、実施例2においては、中間突起部119(119a、119b)の幅中心に向かって幅が直線的に細くなる幅方向テーパ形状を有している構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、中間突起部119(119a、119b)の幅中心に向かって幅が曲線的に細くなる幅方向テーパ形状を有している構成としてもよい。
【0042】
このように、実施例2においては、前記中間突起部は、前記吐出口方向に向かって幅が細くなる幅方向テーパ形状を有していることにより、複数のマニホールドにおける塗液が吐出口手前付近で合流しやすく、安定した塗工膜を塗工することができる。
【実施例3】
【0043】
本発明の実施例3は、中間突起部における幅方向テーパ形状は、マニホールド内から吐出口方向に傾斜が開始する形状である点で実施例1、2と異なっている。実施例3について
図5を参照して説明する。
図5は、本発明の実施例3における(a)はb矢視図で、(b)はシム215の平面図である。
【0044】
実施例3におけるスリットダイ201におけるスリット215は、
図5(a)、(b)に示すように、中間突起部219(219a、219b)が、マニホールド11(11a、11b、11c)内から吐出口4方向に向かって、幅中心に向かって幅が直線的に細くなる幅方向テーパ形状を有している。これにより、複数のマニホールドにおける塗液が吐出口付近でさらに合流しやすく、安定した塗工膜を塗工することができる。
【0045】
なお、実施例3においては、中間突起部219(219a、219b)の幅が幅中心に向かって直線的に細くなる幅方向テーパ形状を有している構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、中間突起部219(219a、219b)の幅が幅中心に向かって曲線的に細くなる幅方向テーパ形状を有している構成としてもよい。
【0046】
このように、実施例3においては、中間突起部における幅方向テーパ形状は、マニホールド内から吐出口方向に傾斜が開始する形状であることで、複数のマニホールドにおける塗液が吐出口手前付近でさらに合流しやすく、安定した塗工膜を塗工することができる。
【実施例4】
【0047】
本発明の実施例4は、中間突起部における幅方向テーパ形状は、階段形状である点で実施例1~3と異なっている。実施例4について
図6を参照して説明する。
図6は、本発明の実施例4における(a)はb矢視図で、(b)はシム315の平面図である。
【0048】
実施例4におけるスリットダイ301におけるスリット315は、
図6(a)、(b)に示すように、中間突起部319(319a、319b)が、マニホールド11(11a、11b、11c)より吐出口方向においてマニホールド11(11a、11b、11c)よりも吐出口4側から傾斜が開始して幅が幅中心に向かって階段状に細くなる幅方向テーパ形状を有している。これにより、複数のマニホールドの独立性を保ちつつ、塗液が吐出口手前付近で合流しやすく、安定した塗工膜を塗工することができる。
【0049】
なお、実施例4においては、中間突起部319(319a、319b)が、マニホールド11(11a、11b、11c)より吐出口方向においてマニホールド11(11a、11b、11c)よりも吐出口4側から傾斜が開始して幅が幅中心に向かって階段状に細くなる幅方向テーパ形状を有しているように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、マニホールド11(11a、11b、11c)内、すなわち、中間突起部319(319a、319b)の根元から吐出口4方向に向かって、幅中心に向かって幅が階段状に細くなる幅方向テーパ形状を有した構成としてもよい。
【0050】
このように、実施例4においては、中間突起部における幅方向テーパ形状は、階段形状であることで、複数のマニホールドの独立性を保ちつつ、塗液が吐出口手前付近で合流しやすく、安定した塗工膜を塗工することができる。
【実施例5】
【0051】
本発明の実施例5は、中間突起部が吐出口方向に向かって厚みが薄くなる厚み方向テーパ形状を有している点で実施例1~4と異なっている。実施例5について
図7を参照して説明する。
図7は、本発明の実施例5におけるa矢視図である。
【0052】
実施例5におけるスリットダイ401におけるスリット415は、
図7に示すように、中間突起部419(419a、419b)が、マニホールド11(11a、11b、11c)より吐出口4方向においてマニホールド11(11a、11b、11c)よりも吐出口4側から傾斜を開始してZ方向の厚みが厚み中心に向かって直線的に薄くなる厚み方向テーパ形状を有している。これにより、複数のマニホールドにおける塗液が吐出口手前付近でさらに合流しやすく、安定した塗工膜を塗工することができる。
【0053】
なお、実施例5においては、中間突起部419(419a、419b)が、マニホールド11(11a、11b、11c)より吐出口方向においてマニホールド11(11a、11b、11c)よりも吐出口4側から傾斜を開始して厚みが厚み中心に向かって直線的に薄くなる幅方向テーパ形状を有しているように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、マニホールド11(11a、11b、11c)内、すなわち、中間突起部419(419a、419b)の根元から吐出口4方向に向かって、厚みが厚み中心に向かって曲線的に薄くなる厚み方向テーパ形状を有した構成としてもよいし、階段状に薄くなる厚み方向テーパ形状を有した構成としてもよい。
【0054】
このように、実施例5においては、中間突起部が吐出口方向に向かって厚みが薄くなる厚み方向テーパ形状を有していることで、複数のマニホールドにおける塗液が吐出口手前付近でさらに合流しやすく、安定した塗工膜を塗工することができる。
【実施例6】
【0055】
本発明の実施例6は、マニホールド毎に塗液供給口を複数備え、一つのマニホールドにおける複数の塗液供給口は、供給される塗液の流量の範囲が互いに異なる点で、実施例1~5と異なっている。
【0056】
実施例6における図示しないスリットダイは、マニホールド11(11a、11b、11c)毎に塗液供給口を2個備え、それぞれ別のバルブに接続され、互いに異なる塗液の流量を供給できるように構成している。この構成により、塗液流量の調節範囲を広くすることができ、均一な塗工膜を塗工することができる。
【0057】
なお、実施例6においては、マニホールド11(11a、11b、11c)毎に塗液供給口を2個備え、それぞれ別のバルブに接続される構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、マニホールド11(11a、11b、11c)毎に塗液供給口を2個備え、それぞれ別のポンプに接続される構成としてもよい。
【0058】
また、実施例6においては、マニホールド11(11a、11b、11c)毎に塗液供給口を2個備える構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、マニホールド11(11a、11b、11c)毎に塗液供給口を3個以上備える構成としてもよい。これにより、さらに、塗液流量の調節範囲を広くすることができる。
【0059】
このように、実施例6においては、マニホールド毎に塗液供給口を複数備え、一つのマニホールドにおける複数の塗液供給口は、供給される塗液の流量の範囲が互いに異なることで、塗液流量の調節範囲を広くすることができ、均一な塗工膜を塗工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、基材に塗液を塗工するスリットダイに幅広く適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1:スリットダイ 2:基材 3:塗液 5:ローラ 4:吐出口 11:マニホールド11(11a、11b、11c) 12:スリット 15:シム 16(16a、16b、16c):塗液供給口 17(17a、17b、17c):底部 18(18a、18b):端部突起部 19(19a、19b、19c):中間突起部 20:供給手段 22:タンク 23:ポンプ 24(24a、24b、24c):バルブ 101:スリットダイ 115:シム 119(119a、119b):中間突起部 201:スリットダイ 215:シム 219(219a、219b):中間突起部 301:スリットダイ 315:シム 319(319a、319b):中間突起部