(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】高分子フィルム及びそれを含む合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20221024BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221024BHJP
B32B 27/22 20060101ALI20221024BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20221024BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20221024BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20221024BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20221024BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C03C27/12 D
B32B27/30 102
B32B27/22
B32B27/18 Z
B32B17/10
C08L29/14
C08K5/05
C08K5/10
(21)【出願番号】P 2020077467
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【氏名又は名称】福井 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】王 晨帆
(72)【発明者】
【氏名】張 晉諺
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-156742(JP,A)
【文献】特開昭59-038251(JP,A)
【文献】特公昭57-016134(JP,B1)
【文献】特開2012-254924(JP,A)
【文献】特表2012-530034(JP,A)
【文献】特表2017-537201(JP,A)
【文献】特表2018-502948(JP,A)
【文献】特開平07-172878(JP,A)
【文献】特開昭59-145235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00-29/00
B32B 1/00-43/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂(polyvinyl acetal resin)と、
可塑剤と、
脂肪族環(aliphatic ring)及び少なくとも1つの水酸基を含む混和剤と、を含み、
前記混和剤は脂環式アルコール(alicyclic alcohol)である、
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項2】
前記脂肪族環は多環構造を有する、請求項1に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項3】
前記脂肪族環は脂環式炭化水素基(alicyclic hydrocarbon group)を含む、請求項1または2に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項4】
前記脂環式炭化水素基は3~12個の炭素を有する、請求項3に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項5】
前記脂環式炭化水素基は、シクロアルキル基(cycloalkyl)、縮合ビシクロアルキル基(fused bicycloalkyl)、スピロアルキル基(spiroalkyl)、架橋ビシクロアルキル基(bridged bicycloalkyl)及びC
1~C
3鎖状アルキル基により第2シクロアルキル基と接続された第1シクロアルキル基で組成されたグループから選択される、請求項3又は4に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項6】
前記脂肪族環は、少なくとも1つの水酸基か又は少なくとも1つの水酸基で置換された(C
1~C
6)アルキル基によって置換されている、請求項3から5のいずれか1項に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項7】
前記混和剤は、トリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol,TCDDM)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol,CHDM)、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(2,2’-bis(4-hydroxycyclohexyl)propane,HBPA)、デカヒドロ-2-ナフトール(decahydro-2-naphthol)、シクロヘキサノール及び1,4-シクロヘキサンジオールで組成されたグループから選択される少なくとも1つである、請求項1から6のいずれか1項に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項8】
前記混和剤はトリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol,TCDDM)である、請求項7に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項9】
前記混和剤は少なくとも2つの水酸基を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項10】
前記ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール(polyvinyl butyral,PVB)樹脂である、請求項1から9のいずれか1項に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項11】
前記可塑剤はトリエチレングリコールビス(2‐エチルヘキサノエート)(triethylene glycol bis(2-ethylhexanoate),3GO)を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項12】
前記混和剤の量は少なくとも0.005phr(parts per hundred parts of resin)である、請求項1から11のいずれか1項に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項13】
前記高分子フィルムの屈折率は少なくとも1.460である、請求項1から12のいずれか1項に記載の
積層板に用いられる高分子フィルム。
【請求項14】
複数個の外部透明薄層と、請求項1から13のいずれか1項に記載の
積層板に用いられる高分子フィルムが含まれた中間層とを含む、積層板。
【請求項15】
前記複数個の外部透明薄層はガラスである、請求項14に記載の積層板。
【請求項16】
前記積層板の透明度は88.28よりも大きい、請求項15に記載の積層板。
【請求項17】
前記積層板の黄色度指数(yellowness index)は0.30よりも小さい、請求項15又は16に記載の積層板。
【請求項18】
前記積層板の平均破壊高さ(mean break height,MBH)は4.50mよりも大きい、請求項15から17のいずれか1項に記載の積層板。
【請求項19】
積層板であって、
2枚のガラス外層及び高分子フィルム中間層を含み、前記高分子フィルム中間層はポリビニルアセタール樹脂(polyvinyl acetal resin)、可塑剤、及び脂肪族環(aliphatic ring)と少なくとも1つの水酸基を含む混和剤を含み、そのうち前記混和剤の量は少なくとも0.005phr(parts per hundred parts of resin)であり、
そのうち前記積層板の透明度は88.28よりも大きく、
そのうち前記積層板の平均破壊高さ(mean break height,MBH)は少なくとも4.50mであり、
そのうち前記積層板の黄色度指数(yellowness index)は0.30よりも小さい、積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板の中間層に使用可能な高分子フィルムに関するものであり、特に積層板に用いられる中間層高分子フィルム及び中間層高分子フィルムを用いて製造される積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、透明な熱可塑性フィルムで製造された中間層を用いて2枚のガラスを合わせて固定した構成になっているが、上述の熱可塑性フィルムは、例えばポリビニルブチラール(polyvinyl butyral,PVB)又はエチレン酢酸ビニル(ethylene-vinyl acetate,EVA)などである。熱可塑性フィルムは、2枚のガラスを互いに固定できるだけでなく、ガラスが割れた場合でも接着状態を維持させることができる。上述の合わせガラスが提供する安全性能により、大きなガラス破片によって人身傷害が生じる可能性がある場合や、致命的な事故の発生時に物体がガラスを突き抜けてガラスが割れてしまう可能性がある状況において、安全ガラスとして使用することができる。例を挙げると、このタイプの合わせガラスは一般的に車両(例えば自動車)や建築物(例えば超高層ビル、天窓及び耐ハリケーン建築)において使用されている。その他の応用分野として、合わせガラスは窓の遮音効果改善にも用いることができる。また合わせガラスは、他の効果も提供することが可能であり、例えば紫外線及び/又は赤外線の照射を減少させたり、色、模様などを加えて窓の美観を高めたりすることができる。さらに、理想的な音響特性を具備した合わせガラスもあり、内部空間をより静かにすることが可能である。
【0003】
合わせガラスの技術は既に一世紀以上の歴史を有するが、課題も依然として存在する。所望の性能(例えば音響性能)を得るために選択されるポリマーは、一般にその他の必要な性能(例えば高い耐衝撃性又は強度)が欠けている。そのため、現代において合わせガラス技術は熱可塑性樹脂と数種類の様々な添加剤を組み合わせた複雑な調製法へと発展を遂げてきた。そうした添加剤は何らかの改善を生むだけではなく、予測不能な好ましくない性能までもたらしてしまうのが常であり、慎重かつ周到にバランスを取って選択しなければならなかった。
【0004】
例えば、よく使用される添加剤タイプの1つは接着制御剤であるが、それは金属塩でよく、酢酸マグネシウムや酢酸カリウムなどが熱可塑性プラスチックとガラスとの間の水素結合を調整するために用いられている。しかし、これらの塩類は凝集又は沈殿する可能性があり、例えば粒子の凝集による光散乱が合わせガラスの透明度に影響を及ぼすことがある。こうしたマイナスの影響を除去するため、例えば自動車のフロントガラスなどの高い透明度が必要な用途において、使用する接着制御剤の濃度を低くするという解決方法もあるものの、それにより貫通抵抗力が低下してしまう。別の解決方法は、分散剤を添加して金属塩添加剤の凝集を防ぐというものだが、一般に分散剤は低沸点化合物であって、気泡が形成されるなどの他の欠陥を招く可能性があり、やはり合わせガラスの透明度や耐衝撃性にマイナスの影響を及ぼしかねない。
【0005】
光学的に相容れないタイプが異なるポリマー及び/又は可塑剤を配合するか混合するかした場合には、高い曇度が生じてしまう。そのため、樹脂と小さな分子を均一に混合させることのできる混和剤がさらに必要となる。例えば、特許文献1(WO2016/094205A1)では、合わせガラス中で用いられている樹脂によって生じる曇度を低減するために、グリコールエーテルを混和剤として使用することが開示されている。
【0006】
合わせガラスの製造工程には明らかに厳格且つ難度の高い管理が求められるが、それには複雑な調製法も含まれており、通常、プロセス中では良好な接着力及び高い透明度など、様々な要求のバランスを取らなければならない。より良好な安全ガラスを車両に提供し、より良好な建築用ガラスを建築物に提供するためには、例えば合わせガラスに高光透過性、低曇度、低黄色度及び高耐衝撃性を備えさせるなどして、透明積層板を改良する必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開特許WO2016/094205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、概して中間層及びその中間層を使用した積層板に関するものである。例えば、高耐衝撃性及び高透明性を有する積層板である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様において、本発明は高分子フィルムを含み、高分子フィルムはポリビニルアセタール樹脂(polyvinyl acetal resin)、可塑剤、及び脂肪族環(aliphatic ring)と少なくとも1つの水酸基を含む混和剤を含んでいる。選択的に、混和剤は脂環式アルコール(alicyclic alcohol)である。選択的に、脂肪族環は脂環式炭化水素基(alicyclic hydrocarbon group)を含み、例として、そのうちの脂環式炭化水素基は3~12個の炭素を有する。選択的に、そのうちの脂環式炭化水素基は、シクロアルキル基(cycloalkyl)、縮合ビシクロアルキル基(fused bicycloalkyl)、スピロアルキル基(spiroalkyl)、架橋ビシクロアルキル基(bridged bicycloalkyl)及びC1~C3鎖状アルキル基により第2シクロアルキル基と接続された第1シクロアルキル基で組成されたグループから選択される。選択的に、脂肪族環は、少なくとも1つの水酸基か又は少なくとも1つの水酸基で置換された(C1~C6)アルキル基によって置換されている。選択的に、混和剤は、トリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol,TCDDM)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol,CHDM)、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(2,2’-bis(4-hydroxycyclohexyl)propane,HBPA)、デカヒドロ-2-ナフトール(decahydro-2-naphthol)、シクロヘキサノール(cyclohexanol)及び1,4-シクロヘキサンジオール(1,4-cyclohexanediol)で組成されたグループから選択される少なくとも1つである。例えば、選択的に、混和剤はTCDDMである。選択的に、混和剤は少なくとも2つの水酸基を含む。選択的に、ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール(polyvinyl butyral,PVB)樹脂である。選択的に、可塑剤はトリエチレングリコールビス(2‐エチルヘキサノエート)(triethylene glycol bis(2-ethylhexanoate),3GO)を含む。幾つかの選択において、混和剤の量は少なくとも0.005phr(parts per hundred parts of resin)である。選択的に、高分子フィルムの屈折率は少なくとも1.460である。
【0010】
第2の態様において、本発明は積層板を含み、それには外部透明薄層、及び第1の態様に基づく高分子フィルムを含む中間層が含まれている。選択的に、外部透明薄層はガラスである。選択的に、積層板の透明度は88.28よりも大きい。選択的に、積層板の黄色度指数(yellowness index)は0.30よりも小さい。選択的に、積層板の平均破壊高さ(mean break height,MBH)は4.50mよりも大きい。
【0011】
第3の態様において、本発明は積層板を含み、積層板は2枚のガラス外層及び高分子フィルム中間層を含み、高分子フィルム中間層はポリビニルアセタール樹脂、可塑剤、及び脂肪族環と少なくとも1つの水酸基を含む混和剤を含み、そのうちの混和剤の量は少なくとも0.005phrである。さらに、積層板は88.28よりも大きい透明度、少なくとも4.50mの平均破壊高さ、及び0.30よりも小さい黄色度指数を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高分子フィルムを使用することで、優れた光学特性及び高耐衝撃性を有する積層板を製造することができる。例えば、本発明の高分子フィルムで高透明度、低曇度及び高耐衝撃性を有する合わせガラスを形成してもよい。
【0013】
上述は本発明における全ての実施例又は全ての態様を示したものではなく、本明細書で詳述する新しい態様及び新しい特性の実施例を提供したに過ぎない。本発明における上述の特性並びに利点及びその他の特性並びに利点は、以下で詳述する本発明を実施するための代表的な実施例並びに方法及び添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、高分子フィルム及びそれらの高分子フィルムを使用した積層板について説明する。例えば積層板に用いられる樹脂中に混和化合物(混和剤とも呼ばれる)を使用することで、光学特性及び耐衝撃性を改善できることが既に知られているが、そのうちの混和化合物には脂肪族環及び少なくとも1つの水酸基が含まれている。本明細書に記載の高分子フィルムを使用することで、優れた光学特性及び高耐衝撃性を有する合わせガラスなどの積層板を製造することができる。
【0015】
幾つかの実施例において、高分子フィルムはポリビニルアセタール樹脂及び1種類以上の他の樹脂を含むが、それは例えば1種類以上の別の熱可塑性樹脂である。高分子フィルムは1種類以上の樹脂をさらに含むことができ、それは例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリトリフルオロエチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール及びエチレン・酢酸ビニル共重合体で組成されたグループから選択されるが、これらに限らない。幾つかの実施例において、高分子フィルムはポリビニルアセタール樹脂を含む。
【0016】
幾つかの実施例において、ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)は約50~100℃(例えば約60~80℃)である。
【0017】
幾つかの実施例において、ポリビニルアセタール樹脂の分子量は少なくとも約10,000Mw(g/mol)である。例えば、少なくとも約30,000Mw(g/mol)、少なくとも約50,000Mw(g/mol)又は少なくとも約100,000Mw(g/mol)である。幾つかの実施例において、ポリビニルアセタール樹脂の分子量は約10,000~約500,000Mw(g/mol)である。幾つかの実施例において、ポリビニルアセタール樹脂の分子量は約100,000~約300,000Mw(g/mol)である。
【0018】
幾つかの実施例において、高分子フィルムは可塑剤を含む。例えば、可塑剤をポリビニルアセタール樹脂と混合してフィルムを形成する。幾つかの実施例に基づいて使用する可塑剤の幾つかの例には、例えば一塩基性有機エステル及び多塩基性有機エステルなどの有機エステル可塑剤や、有機リン酸塩可塑剤及び有機亜リン酸塩可塑剤などのリン酸エステル類可塑剤を含むことができる。幾つかの実施例において、可塑剤には、ジエチレングリコールジベンゾエート(diethylene glycol dibenzoate)又はジプロピレングリコールジベンゾエート(dipropylene glycol dibenzoate)などのジベンゾエート、O-アセチルクエン酸トリブチル(tributyl-o-acetyl citrate,ATBC)又はアセチルクエン酸トリ(2-エチルヘキシル)(tris-(2-ethylhexyl)o-acetyl citrate,ATEHC)などのクエン酸塩、ポリアジペート(polyadipates)などの重合可塑剤、及びエチレングリコールモノエステル、エチレングリコールジエステル並びにエチレングリコールトリエステルが含まれる。幾つかの実施例において、可塑剤は、トリエチレングリコールビス(2‐エチルヘキサノエート)(triethylene glycol bis(2-ethylhexanoate),3GO)、トリエチレングリコールビス(2-エチルブチレート)(triethylene glycol bis(2-ethylbutyrate))、トリエチレングリコールビス(n-ヘプタノエート)(triethylene glycol bis(n-heptanoate))、テトラエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)(tetraethylene glycol bis(2-ethylhexanoate))、テトラエチレングリコールビス(2-エチルブチレート)(tetraethylene glycol bis(2-ethylbutyrate))、テトラエチレングリコールビス(n-ヘプタノエート)(tetraethylene glycol bis(n-heptanoate))、ジエチレングリコールビス(2‐エチルヘキサノエート)(diethylene glycol bis(2-ethylhexanoate))、ジエチレングリコールビス(2-エチルブチレート)(diethylene glycol bis(2-ethylbutyrate))、ジエチレングリコールビス(n-ヘプタノエート)(diethylene glycol bis(n-heptanoate))、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(2,2,4-trimethyl-1,3-pentanediol monoisobutyrate)、ジペンタエリトリトールヘキサオクトエート(dipentaerythritol hexaoctoate)、アジピン酸ジヘキシル(dihexyl adipate)、アジピン酸ジオクチル(dioctyl adipate)、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル(hexyl cyclohexyl adipate)、アジピン酸ジイソノニル(diisononyl adipate)、アジピン酸ヘプチルノニル(heptylnonyl adipate)、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)(di(butoxyethyl)adipate)、アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]{bis[2-(2-butoxyethoxy)ethyl]adipate}、セバシン酸ジブチル(dibutyl sebacate)、セバシン酸ジオクチル(dioctyl sebacat)、フタル酸ジブチル(dibutyl phthalate)、ジエチレングリコールジベンゾエート(diethylene glycol dibenzoate)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(dipropylene glycol dibenzoate)、グリセロール、エチレングリコール(ethylene glycol)及びそれらの組み合わせで組成されたグループから選択される。幾つかの実施例において、可塑剤はトリエチレングリコールビス(2‐エチルヘキサノエート)(triethylene glycol bis(2-ethylhexanoate),3GO)である。
【0019】
可塑剤は任意の量で使用することができる。幾つかの実施例において、可塑剤の使用量は25~60phrの範囲内である。幾つかの実施例において、可塑剤の使用量は少なくとも30phr、少なくとも35phr、少なくとも40phr、少なくとも45phr、少なくとも50phr又は少なくとも55phrである。幾つかの実施例において、可塑剤の使用量は55phr以下、50phr以下、45phr以下、40phr以下、35phr以下又は30phr以下である。
【0020】
本明細書で使用する「脂肪族/脂肪族の」(aliphatic)又は「脂肪族基」(aliphatic group)という用語は、直鎖(即ち分岐していない)、分岐鎖又は環(縮合型、架橋型及びスピロ型の多環、即ち縮合環、架橋環及びスピロ環を含む)であってもよく、さらには完全に飽和であるか、又は1つ以上の不飽和単位を含有してもよいが、芳香族ではない炭化水素部分を意味する。別段の記載がない限り、本明細書で使用する「脂肪族」又は「脂肪族基」は、1~12個の炭素原子を含む。ある種の実施例において、脂肪族基は1~20個の炭素原子を含む。適切な脂肪族基としては、直鎖又は分岐鎖を有する、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びそれらを混合したもの、例えば、(シクロアルキル基)アルキル基、(シクロアルケニル基)アルキル基、又は(シクロアルキル基)アルケニル基などが含まれるが、これらに限らない。
【0021】
単独使用又はより大きな部分の一部として使用する「脂環族」(cycloaliphatic)若しくは「脂肪族環」(aliphatic ring)という用語は、飽和若しくは部分的に不飽和である環状脂肪族の単環、二環若しくは多環系を意味し、そのうちの脂肪族環系は任意に置換される。脂肪族環には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテン基、シクロヘキシル基、シクロヘキセン基、シクロヘプチル基、シクロヘプテン基、シクロオクチル基、シクロオクテン基、ノルボルニル基(norbornyl)、アダマンチル基(adamantyl)及びシクロオクタジエン基が含まれるが、これらに限らない。幾つかの実施例において、シクロアルキル基は3~20個の炭素を含む。幾つかの実施例において、脂肪族環系は二環である。幾つかの実施例において、脂肪族環系は三環である。幾つかの実施例において、環系は、芳香族環系ではないか、又は芳香族環系を含まない。
【0022】
幾つかの実施例において、脂肪族環は不飽和基を含み、例えば環系中で互いに結合した炭素原子はアルケニル基(例えば互いに二重結合)又はアルキニル基(例えば互いに三重結合)である。これらの実施例において、脂肪族環又は脂肪族環系は、脂肪族環の不飽和誘導体を意味することができる。
【0023】
幾つかの実施例において、混和剤が使用されるが、混和剤は脂肪族環及び少なくとも1つの水酸基を含む。例えば、幾つかの実施例において、混和剤は脂肪族環及びヒドロキシル官能基を有する分子である。幾つかの実施例では、1つ以上の水酸基が脂肪族環の環炭素と直接結合している。幾つかの実施例では、1つ以上の水酸基が環炭素に接続された官能基と結合しており、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの官能基が脂肪族環に接続されて、水酸基で置換された(C1~C6)アルキル基などが形成される。幾つかの実施例において、水酸基で置換されたアルキル基は-(CH2)OHである。幾つかの実施例において、混和剤は脂肪族環及び2つの水酸基を有する分子である。
【0024】
構造(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)は、脂肪族環の代表的な炭素骨格構造である。
【化1】
そのうち、n、m、o、q及びvは1~20の独立に選択される整数である。これらの構造は、環を形成するか又は環に接続された炭素のみを示しており、水素及び存在する可能性のある脂肪族基、水酸基又は水酸基で置換された脂肪族基などの官能基は含まない。幾つかの実施例では、3つより多い環を有する多環構造を含むと理解すべきであるが、上記の構造では3つより多い環は示されていない。また、幾つかの実施例では、これらの構造の組み合わせを含むことができる。幾つかの実施例において、炭素骨格は構造(I)
を有し、そのうちのnは2、3、4、5又は6である。幾つかの実施例において、炭素骨格は構造(I)を有し、そのうちのnは4である。幾つかの実施例において、炭素骨格は
構造(II)を有し、そのうちのnは2、3、4、5又は6であり、mは2、3、4、5又は6である。幾つかの実施例において、炭素骨格は構造(II)を有し、そのうちのnは4であり、且つmは4である。幾つかの実施例において、炭素骨格は構造(V)を有し、そのうちのnは2、3、4、5又は6であり、mは2、3、4、5又は6であり、且つoは1、2又は3である。幾つかの実施例において、炭素骨格は構造(V)を有し、そのうちのnは4であり、mは4であり、且つoは1である。幾つかの実施例において、炭素骨格は構造(VII)を有し、そのうちのnは2、3、4、5又は6であり、mは1、2、3又は4であり、且つqは2、3、4、5又は6である。幾つかの実施例において、炭素骨格は構造(VII)を有し、そのうちのnは2であり、mは1であり、且つqは3である。
【0025】
「シクロアルキル基」(cycloalkyl)又は「モノシクロアルキル基」(monocycloalkyl)という用語は、1つのシクロアルキル基部分で構成される構造を意味する。例えば、構造(I)を有する炭素骨格である。ある種の非限定的な実施例
では、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基並びにそれらの不飽和誘導体であるシクロペンテン基、シクロブタン基、ジシクロブタン基、シクロペンテン基、シクロヘキセン基、ジシクロヘキセン基、シクロヘプテン基及びジシクロヘプテン基などが含まれるが、これらに限らない。
【0026】
「ビシクロアルキル基」(bicycloalkyl)という用語は、2つのシクロアルキル基部分で構成される構造であり、環系中に2つ以上の共通な原子を有することを意味する。シクロアルキル基部分がちょうど2つの共通な原子を有する場合には、「縮合」(fused)と呼ばれ、例えば炭素骨格構造(II)を有しており、実例としては、ビシクロ[2.1.0]ペンチル基、ビシクロ[3.1.0]ヘプチル基及びビシクロ[4.4.0]デシル基が含まれるが、これらに限らない。シクロアルキル基部分が2つより多く共通な原子を有する場合には、「架橋」(bridged)と呼ばれ、例えば炭素骨格構造(III)を有しており、実例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基(「ノルボルニル基」)、ビシクロ[2.2.2]オクチル基などが含まれるが、これらに限らない。
【0027】
「スピロアルキル基」(spiroalkyl)という用語は、2つのシクロアルキル基部分で構成される構造であり、そのうちの2つのシクロアルキル基部分が1つの共通な原子を有することを意味する。例えば、スピロアルキル基の炭素骨格は構造(IV)で示されている。実例としては、スピロ[4.5]デシル基、スピロ[2.3]ヘキシル基などが含まれるが、これらに限らない。
【0028】
「トリシクロアルキル基」(tricycloalkyl)という用語は、2つ以上のシクロアルキル基部分で構成される構造であり、4つ以上の共通な原子を有することを意味する。幾つかの代表的な例としては、構造(VI)、(VII)及び(VIII)が含まれる。実例としては、トリシクロ[5.2.1.0]デシル基が含まれる。
【0029】
幾つかの実施例において、脂肪族環は、脂肪族基又は脂肪族リンカー基(aliphatic linker group)などで官能基化される。本明細書で使用する「リンカー」(linker)基とは、1つの官能基又は部分を1つ以上の他の官能基又は部分と接続する基を意味する。構造(V)は、リンカー基を有する化合物の例であり、そのうちのリンカー基はCoで示され、置換可能な鎖長が「o」である炭素骨格を表している。例として、脂肪族リンカー基は例えば-(CH2)n-であり、そのうちのnは1~8から選択される整数(例えば1~3)であり、リンカー基を形成することができる。幾つかの実施例では、1つ以上のアルキル基がリンカー基の炭素骨格に結合されている。例えば、リンカー基は-C(RaRb)2-でよく、そのうちのRa及びRbはアルキル基又は水素から独立に選択される。
【0030】
本明細書で使用する「脂環式アルコール」(alicyclic alcohol)は、本明細書に記載するような脂肪族環を有し、且つ少なくとも1つのヒドロキシル官能基をさらに含む任意の化合物である。例えば、構造(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)の炭素骨格を有し、且つ水酸基又はアルキルヒドロキシル基によって官能基化された化合物である。幾つかの実施例において、脂環式アルコールは、シクロヘキサノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,5-シクロヘキサンジオール、1,2,3-シクロヘキサントリオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、1,2,4-シクロヘキサントリオール、3-シクロヘキセン-1-オール、2-シクロヘキセン-1-オール、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、1,2-シクロブタノール、デカヒドロ-1-ナフトール、デカヒドロ-2-ナフトール、デカヒドロナフタレン-2,3- ジオール、デカヒドロ-1,4-ナフタレンジオール、1,5-デカヒドロナフタレンジオール、デカヒドロ-2,7-ナフタレンジオール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol,CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol,TCDDM)、2-ノルボナノール(2-norbonanol)、5-ノルボルネン-2-メタノール(5-norbornene-2-methanol)、5-ノルボルネン-2-ジメタノール(5-norbornene-2,2-dimethanol)、5-ノルボルネン-2-オール(5-norbornen-2-ol)、1-アダマンタンメタノール(1-adamantanemethanol)、1-エチニル-2,2,6-トリメチルシクロヘキサノール、3-(ヒドロキシメチル)-1-アダマントール(3-(hydroxymethyl)-1-adamantol)、1-アダマンタンエタノール(1-adamantaneethanol)、ジシクロヘキシルメタノール、トリシクロヘキシルメタノール、1-(1-ブチニル)シクロペンタノール、3-シクロヘキシル-1-プロパノール、4-イソプロピルシクロヘキサノール、1-アダマンタノール(1-adamantanol)、2-アダマンタノール(2-adamantanol)、メントール(menthol)、2-tert-ブチルシクロヘキサノール、4-シクロヘキシル-1-ブタノール、4-tert-ブチルシクロヘキサノール、(1S,2R,5R)-2-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノール((1S,2R,5R)-2-(1-hydroxy-1-methylethyl)-5-methylcyclohexanol)、ジシクロプロピルカルビノール(dicyclopropyl carbinol)、1-エチルシクロペンタノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-シクロペンチルエタノール、2-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロヘキシルメタノール、trans-4-メチルシクロヘキサノール、1-ヒドロキシメチル-1-メチルシクロヘキサン、2-シクロヘキシルエタノール、2-エチルシクロヘキサノール、3,5-ジメチルシクロヘキサノール、3-シクロペンチル-1-プロパノール、4-エチルシクロヘキサノール、1-メチルシクロプロパノール、シクロプロピルメタノール、1-シクロプロピルエタノール、1-メチルシクロプロピルメタノール、2-シクロプロピルエタノール、2-メチルシクロプロピルメタノール、シクロブタンメタノール、1-メチルシクロペンタノール、2-メチルシクロペンタノール、3-メチルシクロペンタノール、シクロペンチルメタノール、及びそれらの任意の立体異性体又はそれらの立体異性体の混合物で組成されたグループから選択される。幾つかの実施例において、脂環式アルコールは、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol,CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol,TCDDM)、デカヒドロ-2-ナフトール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン及びシクロヘキサノールで組成されたグループから選択される。
【0031】
混和剤を任意の濃度で使用して、耐衝撃性又は光学特性などの性能を改善してもよい。幾つかの実施例において、高分子フィルム中の混和剤の量は少なくとも0.005phrであり、例えば、少なくとも0.01phr、少なくとも0.02phr、少なくとも0.03phr又は少なくとも0.04phrである。幾つかの実施例において、混和剤の量は約10phr未満であり、例えば、約5phr未満又は約1phr未満である。本明細書において、「phr」とは、100重量部の樹脂中に存在する成分(例えば可塑剤又は添加剤)の重量部を意味する。
【0032】
幾つかの実施例において、高分子フィルムは、高屈折率などの強化された光学特性を有している。例えば、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び脂肪族環と少なくとも1つの水酸基を含む混和剤を用いて製造された高分子フィルムは、混和剤を含まないか又は混和剤が異なる化合物(例えば芳香族化合物であり、環状脂肪族化合物を含まないか又は水酸基を含まない)である比較高分子フィルムよりも高い屈折率を有している。幾つかの実施例において、高分子フィルム中の屈折率は少なくとも1.460であり、例えば、少なくとも1.470、少なくとも1.480、少なくとも1.490、少なくとも1.500である。
【0033】
幾つかの実施例において高分子フィルムは積層板を形成するのに用いることができ、そのうちの高分子フィルムが2枚の透明材料の間に中間層材料を形成することで積層板が形成される。透明材料は、ガラス、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate,PET)を含めた任意の材料でよい。幾つかの実施例において、透明材料はケイ酸塩ガラスなどのガラスであり、そのうち、当該実施例において、積層板は合わせガラスである。ガラスの幾つかの実例には、板ガラス及びフロートガラスが含まれる。幾つかの実施例において、積層板は透明材料及び中間層材料の複数の交錯層を含んでいる。
【0034】
幾つかの実施例において、高分子フィルムを用いて製造された積層板は、高透明度及び低黄色度指数(yellowness index)などの強化された光学特性を有している。例えば、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び脂肪族環と少なくとも1つの水酸基を含む混和剤を用いて製造された積層板は、混和剤を含まないか又は混和剤が異なる化合物(例えば芳香族化合物であり、環状脂肪族化合物を含まないか又は水酸基を含まない)である比較積層板よりも高い透明度及び低い黄色度指数を有している。幾つかの実施例において、積層板の透明度は少なくとも88.28%であり、例えば少なくとも88.3%、少なくとも88.4%、少なくとも88.5%、少なくとも88.6%、少なくとも88.7%、少なくとも88.8%又は少なくとも88.9%である。
【0035】
幾つかの実施例において、積層板に用いる高分子フィルムの屈折率と積層板の製造に用いるガラスの屈折率との差は0.5以下、0.2以下、又は0.1以下である。
【0036】
幾つかの実施例において、積層板の黄色度指数は0.3未満であり、例えば0.29未満、0.28未満、0.27未満、0.26未満、0.25未満、0.24未満、0.23未満、0.22未満、0.21未満又は0.20未満である。
【0037】
幾つかの実施例において、高分子フィルムを用いて製造された積層板は、高耐衝撃性を有している。例えば、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び脂肪族環と少なくとも1つの水酸基を含む混和剤を用いて製造された積層板は、混和剤を含まないか又は混和剤が異なる化合物(例えば芳香族化合物であり、環状脂肪族化合物を含まないか又は水酸基を含まない)である比較積層板よりも高い耐衝撃性を有している。幾つかの実施例において、平均破壊高さ(mean break height,MBH)測定によって測定した耐衝撃性は、4.5mよりも大きく、例えば4.7m超、4.9m超、5m超、5.5m超又は6m超であった。
【0038】
幾つかの実施例において、積層板に用いられる高分子フィルムの厚さは0.1mm超且つ約2.0mm未満でよく、例えば約0.4mm超且つ約1.2mm未満、例えば0.5mm~1.1mmの間、0.6mm~1.0mmの間、0.7mm~0.9mmの間などである。幾つかの実施例において、高分子フィルムの厚さは0.8mmである。
【0039】
幾つかの実施例において、積層板に用いられる高分子フィルムは、1種類以上の添加剤を含むことができるが、それは例えば、音響抑制剤、染料、顔料、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、赤外線遮蔽剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、潤滑剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤又は接着制御剤などである。
【0040】
幾つかの実施例では、音響抑制剤を用いて積層板の音響特性を調整する。例えば、ポリエステルゴム、ネオプレンゴム(neoprene rubber)、酸化アルミニウム、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体又はそのうちの1種類以上を高分子フィルムと合成することで、1つ以上の周波数の音を減衰させることができるが、これらに限らない。
【0041】
幾つかの実施例では、例えば美観や遮光のために、顔料及び染料など、1色以上の着色剤が添加される。これらの修飾において、上述の特性は変更可能であることを理解されたい。例えば、透明度は着色剤を添加することで変更可能である。本明細書で使用する「顔料」及び「染料」という用語は、波長選択性を採用することで反射光又は透過光の色を変える任意の材料を意味する。染料は可溶性化合物であり、顔料は通常、固体粒子である。顔料及び染料は、有機及び無機を含むことができる。幾つかの実施例において、高分子フィルムに用いられる顔料又は染料は、ウルトラマリンバイオレット(例えば硫黄を含んだケイ酸ナトリウム及びケイ酸アルミニウム)、ハンパープル(Han Purple,BaCuSi2O6)、コバルト顔料(例えばコバルトバイオレット(リン酸コバルトなど))、マンガン顔料(例えばマンガンバイオレット(NH4MnP2O7))、金顔料(例えば紫金(二酸化スズ中に懸濁させた金ナノ粒子、群青-PB29など))、ペルシャブルー(例えば、ラピスラズリ)、コバルトブルー-PB28、スカイブルー-PB35、エジプシャンブルー(例えば、カルシウム銅ケイ酸塩、CaCuSi4O10)、二酸化マンガン(MnO2)、チタンブラック(例えばTi2O3)、アンチモンホワイト(例えばSb2O3)、硫酸バリウム-PW5(BaSO4)、リトポン(Lithopone、例えばBaSO4*ZnS)、クレムニッツホワイト(Cremnitz White)-PW1(例えば(PbCO3)2-Pb(OH)2)、チタンホワイト-PW6(例えばTiO2)、ジンクホワイト-PW4(例えばZnO)、1,2-ジヒドロキシアントラキノン、フタロシアニンブルーBN、フタロシアニングリーンG、ピグメントバイオレット23、ピグメントイエロー10、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー81、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185、キナクリドン、ローズマダー(例えばアリザリン、プルプリン)、リレン(Rylene)染料、及びティリアンパープル(Tyrian purple、例えば6,6’-ジブロモインジゴ)から1種類以上選択される。
【0042】
幾つかの実施例において、高分子フィルムは接着制御剤を含む。上述の接着制御剤は限定されず、有機塩の一価又は多価(例えば二価)金属塩から選択することができ、上述の有機塩は例えばC1~C8脂肪族又は芳香族有機酸である。例えば、幾つかの実施例において、金属陽イオンはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛であり、代表的な陰イオンは酢酸塩、酪酸塩、置換基を有する酪酸塩(例えば2-エチルブチレート)及びカプリル酸塩である。幾つかの実施例では、高分子フィルムに接着制御剤は使用されない。
【0043】
幾つかの実施例において、高分子フィルムは紫外線安定剤を含み、紫外線安定剤は例えば1種類以上である。幾つかの実施例において、紫外線安定剤は紫外線吸収剤であり、それは例えばカーボンブラック、酸化チタン、ジフェニルケトン(例えばヒドロキシベンゾフェノン及びヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)、オキシアニリド類(oxanilides)、ベンゾトリアゾール及びヒドロキシフェニルトリアジン(hydroxyphenyltriazines)である。幾つかの実施例において、紫外線安定剤はニッケル消光剤などの消光剤である。幾つかの実施例において、紫外線安定剤はラジカル捕捉剤であり、それは例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを有する環状構造の化合物であり、ヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizers,HALS)とも呼ばれている。
【0044】
幾つかの実施例において、高分子フィルムは酸化防止剤を含み、酸化防止剤は例えば1種類以上である。例えば、酸化防止剤は、フェノール、アミン、亜リン酸塩、メルカプタン、ヒドロキシルアミン、ラクトン、ビタミンE、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0045】
幾つかの実施例において、高分子フィルムは難燃剤を含み、難燃剤は例えば1種類以上である。幾つかの実施例において、難燃剤は鉱物又は無機化合物であり、例えば、難燃剤は水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、酸化アンチモン、ハンタイト、ハイドロマグネサイト、酸化亜鉛、モンモリロナイト粘土(例えば単分散性の粘土)、有機修飾粘土、層状複水酸化物、カーボンナノチューブ、多面体オリゴシルセスキオキサン及びそれらの組み合わせで組成されたグループから選択される。幾つかの実施例において、難燃剤は、塩素化及び臭素化化合物などの気相フリーラジカル消去剤である。幾つかの実施例において、難燃剤は、リン酸エステル化合物などの熱遮蔽化合物である。
【0046】
本発明の範囲内において、上述の技術的特徴及び以下に記載する技術的特徴(例えば実施例)は、限定されることなく互いに組み合わされて新規又はより好ましい技術案を形成することが可能であり、便宜上、ここでは説明を省略していることを理解されたい。
【実施例】
【0047】
1.高分子フィルムの調製
ポリエチレンブチラール樹脂100重量部を可塑剤(トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)、3GO)38.5重量部及び混和剤とドライブレンドして混合物を調製した。混和剤の量は表1に示す通りである。撹拌機(Brabender社、ドイツ、Mixer 50 EHT型装置)を使用し、混合物を120℃下、35rpmで15分間撹拌し、十分に混合された溶融材料を形成した。次に、当該材料を室温まで冷却してプラスチックブロックを提供した。ホットプレス機(高鉄科技股分有限公司、台湾、GT-7014-A型装置)を使用し、150℃下でプラスチックブロックを3分間加熱プレスして、厚さ0.8mmの高分子フィルムを提供した。
【0048】
2.合わせガラスの調製
上述の厚さ0.8mmの高分子フィルムを2枚の透明なフロートガラス(台湾玻璃公司グループ製)の間に挿入して合わせガラスを提供した。そのうち、各ガラス板の厚さは3mmである。ホットプレス機(高鉄科技股分有限公司、台湾、GT-7014-A型装置)を使用し、150℃下で合わせガラスを3分間プリプレスした。次に、合わせガラスを13bar、135℃下で120分間オートクレーブにかけて、室温まで冷却して積層工程を終えた。
【0049】
表1は調製された合わせガラスの実例である。
【0050】
3.合わせガラスの性質
表2は本明細書に記載の実施例に基づいて調製した積層板の性質である。
【0051】
結果として、本明細書で定義される高分子フィルムの実施例は、混和剤を含まないか又は混和剤が異なる化合物(例えば芳香族化合物であり、環状脂肪族化合物を含まないか又は水酸基を含まない)であるその他の高分子フィルムよりも高い屈折率を有していた。
【0052】
また、本明細書で定義される高分子フィルムを含む積層板の実施例は、混和剤を含まないか又は混和剤が異なる化合物(例えば芳香族化合物であり、環状脂肪族化合物を含まないか又は水酸基を含まない)であるその他の積層板よりも高い透明度及び低い黄色度指数を有している。
【0053】
また、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び脂肪族環と少なくとも1つの水酸基を含む混和剤を用いて製造された積層板の実施例は、混和剤を含まないか又は混和剤が環状脂肪族化合物若しくは水酸基を含まずに異なる化合物(例えば芳香族化合物)を使用したものである積層板よりも高い耐衝撃性を有している。
【0054】
要約すると、本発明の高分子フィルムを使用することで、優れた光学特性及び高耐衝撃性を有する積層板を製造することができる。例えば、本発明の高分子フィルムで高透明度、低曇度及び高耐衝撃性を有する積層板を形成してもよい。
【0055】
【0056】
【0057】
4.試験方法
[屈折率]
高分子フィルムの屈折率は、ASTM D542に基づいて589nm、25℃下で測定した。
【0058】
[透明度]
ヘーズメーター(日本電色工業、日本、NDH-2000型計器)を使用し、ASTM D 1003の手順に従って積層板の透明度を測定した。
【0059】
透明度の差をより明確に示すため、下記の公式を用いて透明度の増加量を計算した。
透明度の増加(%)=(透明度実験-透明度実験1)/2%×100
そのうち、「透明度実験」は、特定の実験(実験2~20)における積層板の透明度である。「透明度実験1」は、実験1(即ち混和剤の添加なし)における積層板の透明度である。「2%」は、ガラスと実験1における積層板との間の透明度の差が2%であることを意図しており、即ち、透明度ガラス-透明度実験1=2%である。
【0060】
[黄色度指数(yellowness index,YI)]
測色色差計(日本電色工業、日本、ZE-2000型計器)を使用し、ASTM D1925の手順に従って合わせガラスの黄色度指数を測定した。ASTM D1925は1995年に廃止されているため、ASTM E313に従って関係する測定手順を実施することができる。
【0061】
[平均破壊高さ(mean break height,MBH)]
落球試験方法(本明細書では平均破壊高さ、MBHと呼ぶ)によって耐衝撃性を評価した。以下で説明する。試料(例えばサイズが300mm×300mmの合わせガラス)を20~23℃下で支持台に水平に支持させた。2.26kgの鋼球を予測に近いMBHの高さから合わせガラス上に落下させた。鋼球が合わせガラスを貫通した場合は、直前の試験より0.5m低い落下高さで試験を繰り返した。鋼球が合わせガラス上に固定された場合(即ち鋼球が合わせガラスを貫通しなかった)は、直前の試験より0.5m高い落下高さで試験を繰り返した。10枚の合わせガラスを試験し、MBHを判定した。
【0062】
MBHとは、落球高さであり、当該高さにおいて、試料の50%は鋼球を保持し、試料の50%は鋼球が試料を貫通すると定義される。鋼球が試料を貫通しなかった場合、その結果は「合格」と記録した。結果を表にして落球高さ毎の合格率を計算した。これらの結果を合格率パーセンテージと落球高さの関係でプロットし、且つデータに最も適合することを表す1本の線を描画した。MBHはグラフ中で合格率パーセンテージが50%の点から読み取ることができる。例えば、比較的少ない試料量で説明するため、表3に示すようなデータを収集する。合格率パーセンテージと高さの対比をグラフにプロットし、且つ合格率パーセンテージを基に計算(例えば内挿法を用いる)して得られた高さ値をMBHとする。表3に示したデータでは、MBHは約4.78mである。実際の試験では、10個の試料を用いてMBHを得るとともに、3回試験を繰り返した。従って、表2で示したデータ中のMBHは30個の試料で測定したものである。
【0063】
【0064】
[湿度試験]
室内で合わせガラス(300mm×300mm)を温度50℃、相対湿度95%に調節して14日間放置した。次に合わせガラスを室温で2時間放置した。3枚の合わせガラスの評価結果を表2に記録した。そのうち、3枚の合わせガラスのいずれにも顕著な変化が現れなかった場合には、試験記録を「O」とし、少なくとも1枚の合わせガラスに顕著な変化が現れた場合には、試験記録を「X」とした。ここで、顕著な変化がないとは、合わせガラスの未切断縁から10mm超離れ、且つ切断縁から15mm超離れた領域において、気泡、層間剥離及び白濁が観察されなかったことを意味している。
【0065】
本明細書で使用する「包含する」又は「含む」とは、保護を請求する発明において必要不可欠な組成物、方法、及びそれらの各成分に用いられることを意味するが、それには必要不可欠か否かに関わらず、明示されていない構成要素も含むことができる。
【0066】
本明細書で使用する「基本的に~で組成される」とは、既知の実施形態に必要な構成要素であることを意味する。この用語は、保護を請求する発明における実施例の基本的及び新規性又は機能的特徴に実質的に影響を与えない構成要素の存在を許容する。
【0067】
「~で組成される」という用語は、本明細書に記載の組成物、方法及びそれらの各成分を意味しており、それには実施形態の説明中で列挙していない任意の構成要素は含まれない。
【0068】
本明細書及び添付の特許請求の範囲中で使用する、単数形の「一」及び「当該/上述」は、文脈で別段の明確な説明がない限り、複数を含むことを指す。従って、例えば「当該方法」という参照には、1種類以上の方法、及び/又は本明細書に記載のタイプの工程、及び/又は本明細書を読んだ当業者にとって明らかとなる方法などが含まれる。同様に、文脈で別段の明確な説明がない限り、「又は」という用語は「及び/並びに/と」を含む。
【0069】
操作の実施例中又は別途に説明がない限り、本明細書が成分量又は反応条件を示すために用いる全ての数字は、全ての状況下においていずれも「約」という用語によって修飾されると理解すべきである。パーセンテージとの組み合わせで使用される場合、「約」という用語は当該値の±5%(例えば±4%、±3%、±2%、±1%)であることを示すことができる。
【0070】
数値範囲が提供される状況下において、当該範囲の上限と下限との間の各数値はいずれも本明細書が考慮し且つ開示する範囲に属する。本明細書が列挙する任意の数値範囲は、その中に包含される全ての二次範囲を含むものと理解されるべきである。例えば、「1~10」という範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間を含み、且つ列挙された最小値1と列挙された最大値10との間の全ての二次範囲を含むことを意図しており、即ち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有するという意味である。開示する数値範囲が連続的であるため、それには最小値と最大値との間の各値が含まれる。別段の明確な説明がない限り、本明細書中で指定する各種の数値範囲はいずれも近似値である。
【0071】
本明細書で別段に定義されない限り、本明細書で組み合わせて使用される全科学及び技術用語は、本分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有するものとする。また、文脈で別段の要求がない限り、単数の用語は複数を含むことを指し、複数の用語は単数を含むことを指すものとする。
【0072】
本発明は、本明細書に記載された特定の方法、手段及び試薬などに限定されず、それらは改変し得ることを理解すべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施例を記載する目的で用いており、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0073】
記載及び開示という目的のため、全ての特許、特許出願及び出版物(試験におけるASTM、JISの方法を含む)は参照によって本明細書に明確に組み込まれる。例えば、それらの出版物中に記載される方法は本発明と組み合わせて使用することができる。それらの出版物を提供するのは、それらが本出願の提出日より前に開示されていたからに過ぎない。こうした面における如何なる内容も、発明者が先行発明又は何らかの他の理由によってこれらの開示に先行する権利がないことを認めたものと解釈されるべきではない。日時に関する全ての陳述又はそれらの文書の内容に関する陳述は、出願者が取得可能な情報に基づいており、それらの文章の日時又は内容の正確さを認めるものではない。