(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】船舶の推進力を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B63H 3/10 20060101AFI20221024BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B63H3/10
B63H21/21
(21)【出願番号】P 2020501331
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2018068248
(87)【国際公開番号】W WO2019011779
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-02
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517366585
【氏名又は名称】リーン・マリン・スウェーデン・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リヌス・イデスコグ
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/169991(WO,A1)
【文献】特開2016-200037(JP,A)
【文献】特開2012-002117(JP,A)
【文献】米国特許第06379114(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 3/10
B63H 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(10)の推進力を制御するための方法であって、前記船舶は、機関(5)および可変ピッチプロペラ(7)を備え、前記機関は少なくとも1つのシリンダ(
9)を備え、
トルクおよび機関速度は、出力設定値に一致するように調節され、当該調節は、前記船舶(10)の燃料消費が、所望の燃料消費範囲内になるようなおよび/またはその範囲内に維持されるような、前記機関(5)の機関速度および前記可変ピッチプロペラ(7)のプロペラピッチを伴った運転条件において前記船舶(10)が運転されるようにされており、前記方法は、
- 前記少なくとも1つのシリンダ(9)内の最高圧を示した最高圧値を決定するステップと、
- 前記最高圧値が最高圧閾値を越えたことを検出した場合に、前記機関(5)のトルクを減少させるステップと、
- 前記機関(5)によって生成される排ガス内のNO
x
含有量を示したNO
x
値を決定するステップと、
- 前記NO
x
値がNO
x
閾値を越えたことを検出した場合に、前記機関(5)のトルクを低減させるステップと、
を含んでいる方法。
【請求項2】
前記機関(5)の機関速度は、前記最高圧値が最高圧閾値を越えたことを検出した場合に増大される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機関(5)のトルクを減少させる機構は、前記可変ピッチプロペラ(7)のプロペラピッチを減少させることを含んでいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プログラムがコンピュータ上で実行された場合に、請求項1から3のいずれか一項に記載のステップを実行するためのプログラムコード手段を含んだコンピュータプログラム。
【請求項5】
請求項4に記載のコンピュータプログラムがコンピュータ上で実行された場合に、請求項1から
3のいずれか一項に記載のステップを実行するためのプログラムコード手段を含んだコンピュータプログラムを担持した、コンピュータ可読媒体。
【請求項6】
船舶(10)の推進力を制御するための制御ユニット(2)であって、前記船舶(10)は、機関(5)および可変ピッチプロペラ(7)を備え、前記機関(5)は少なくとも1つのシリンダ(9)を備え、
前記制御ユニット(2)は、出力設定値を示した信号を受信するように形成され、前記制御ユニット(2)は、前記出力設定値に応じて前記機関(5)の機関速度および前記可変ピッチプロペラ(7)のプロペラピッチを制御する制御信号を出すようにも形成されており、
前記制御信号は、前記船舶(10)の燃料消費が、所望の燃料消費範囲内になるようなおよび/またはその範囲内に維持されるような、前記出力設定値に応じた前記機関(5)の機関速度および前記可変ピッチプロペラ(7)のプロペラピッチを伴った運転条件において前記船舶(10)が運転されるように決定されており、前記制御ユニットは、
- 前記少なくとも1つのシリンダ(9)内の最高圧を示した最高圧値を伴った最高圧信号を受信し
、
- 前記最高圧値が最高圧閾値を越えたことを検出した場合に、前記機関(5)のトルクを減少させる制御信号を出
し、
- 前記機関(5)により発生した排ガス内のNO
x
含有量を示したNO
x
値を伴ったNO
x
信号を受信し、および
- 前記NO
x
値がNO
x
閾値を越えたことを検出した場合に、前記機関(5)のトルクを減少させる制御信号を出すように形成されている制御ユニット(2)。
【請求項7】
前記制御ユニット(2)は、前記最高圧値が前記最高圧閾値を越えたことを検出した場合に、前記機関(5)の機関速度を増大させる制御信号を出すように形成されている、請求項6に記載の制御ユニット(2)。
【請求項8】
前記制御ユニット(2)は、前記機関(5)のトルクを減少させるために、前記可変ピッチプロペラ(7)のプロペラピッチを減少させる制御信号を出すように形成されている、請求項6または7に記載の制御ユニット(2)。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の制御ユニット(2)を備えた船舶(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の推進力を制御するための方法に関する。さらに、本発明は、コンピュータプログラム、コンピュータ可読媒体、制御ユニット、および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
可変ピッチの船舶プロペラは、ブレードの迎え角が連続的に変化可能であるように設計されている。このようにして、主機関のトルクトルクは変化され得る。可変ピッチプロペラは、操縦性に中間から高い要求を伴った中型船舶(垂線間長が50から150m)に共通している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
可変ピッチプロペラを備えた船舶は、適切な柔軟性と共に操縦されることが可能であるが、その船舶は、例えば船舶の機関または可変ピッチプロペラの不適切な運転設定のために、必要よりも多くの燃料を頻繁に消費する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の観点において、本発明の第1態様によれば、本発明の目的は、船舶の推進力を制御するための方法を提供することであり、その方法では、船舶の機関は適切な運転条件において運転される。
【0005】
前述の態様は、請求項1による方法により獲得される。
【0006】
そのように、本発明の第1態様は、船舶の推進力を制御するための方法に関する。船舶は機関と可変ピッチプロペラとを備え、トルクおよび機関速度は、出力設定値に対応して調節される。この調節は、船舶の燃料消費が、所望の燃料消費範囲内になるようなおよび/またはその範囲内に維持されるような、機関の機関速度および可変ピッチプロペラのプロペラピッチを伴った運転条件において船舶が運転されるようにされる。
【0007】
本発明の第1態様によれば、方法は、
- 機関によって生成される排ガス内のNOx含有量を示したNOx値を決定するステップと、
- NOx値がNOx閾値を越えたことを検出した場合に、機関のトルクを低減させるステップと、
を含んでいる。
【0008】
そのように、前述の発明により、船舶の推進力の制御が提案され、機関は適切な燃料消費と共に運転され、且つNOx含有量も適切に低く維持されることが可能である。したがって前述の方法は、直前に使用された運転条件と比較して環境により害の少ない、船舶の運転に貢献を示している。さらに、所望の燃料消費範囲内に燃料消費を維持することは、コストの低減を示している。
【0009】
ここで使用されている「NOx含有量」との用語は、一酸化窒素NOおよび二酸化窒素NO2の総量に関連している。しかしながら、この用語は、個別に測定された場合、一酸化窒素または二酸化窒素の含有量を意味することも意図している。
【0010】
前述の発明のために、機関により発生した排ガス内の実際のNOx含有量は、船舶の推進力を制御する場合に考慮され得る。したがって、例えば船舶の機関を運転する場合に、高いNOx含有量のレベルを回避するために、試験環境においてシミュレーションおよび/または試験からトルクの制約を決定する代わりに、前述の方法は、実際のNOx含有量が考慮され得ることを示している。単なる例として、船舶の機関によって発生するNOxの量は、例えば経年変化および/または摩耗により、機関の寿命を通じて変化し得、そのような変化は、前述の方法において自動的に考慮され得る。
【0011】
随意的に、船舶は、機関からの排ガスをガイドするように形成された排ガスシステムを備え、この排ガスシステムは、NOx低減アセンブリを備えている。
【0012】
随意的に、方法は、排ガスの意図された流れ方向で見て、機関と、排ガスシステム内のNOx低減アセンブリと、の間の排ガスを評価することにより、NOx値を決定するステップを含んでいる。機関とNOx低減アセンブリとの間のNOx含有量の測定は、測定されたNOx含有量が、機関により発生する排ガス内のNOx含有量であることを示している。そのように、前述の方法は、制御が例えば経年変化による、例えばNOx低減アセンブリの容量のあらゆる変化に依存しないので、急速な且つ安定した機関の制御を示している。
【0013】
随意的に、方法は、排ガスの意図された流れ方向で見て、排ガスシステム内のNOx低減アセンブリの下流の排ガスを評価することにより、NOx値を決定するステップを含んでいる。NOx低減アセンブリの下流のNOx含有量の測定は、測定されたNOx含有量が、船舶の周囲環境内に入る排ガス内のNOx含有量であることを示している。そのように、前述の方法は、NOx含有量が、例えば法的な排出レベルとなり得る、事前に決定された排出レベルを越えないように、機関が制御されることが可能であることを示している。
【0014】
随意的に、方法は、船舶の地理的位置を決定するステップ、およびこれにより決定された地理的位置に基づいて、NOx閾値を決定するステップ、を含んでいる。世界の多様な地理的領域は、多様な許容排出レベルと関連し得る。そのように、前述の方法は、決定された地理的位置に基づいてNOx閾値を調節するように適合されており、そのような多様な許容排出レベルが、NOx閾値を設定する場合に、考慮され得ることを示している。したがって、このことは、適切な燃料消費と同様に適切なNOx排出レベルを伴った機関の適切な運転を示している。
【0015】
随意的に、機関の機関速度は、NOx値がNOx閾値を越えたことを検出した場合に増大される。速度の増大は、船舶が、出力設定値により示されたような必要な出力を発生し得、一方でNOx閾値以下のNOx含有量を伴った排ガスをいつでも発生することを意味している。
【0016】
本発明の第2態様は、船舶の推進力を制御するための方法に関する。船舶は、機関および可変ピッチプロペラを備えている。機関は少なくとも1つのシリンダを備えている。トルクおよび機関速度は、出力設定値に一致するように調節され、当該調節は、船舶の燃料消費が、所望の燃料消費範囲内になるようなおよび/またはその範囲内に維持されるような、機関の機関速度および可変ピッチプロペラのプロペラピッチを伴った運転条件において船舶が運転されるようにされている。
【0017】
本発明の第2態様によれば、方法は、
- 少なくとも1つのシリンダ内の最高圧を示した最高圧値を決定するステップと、
- 最高圧値が最高圧閾値を越えたことを検出した場合に、機関のトルクを減少させるステップと、
を含んでいる。
【0018】
最高圧を越えることは、機関に対して有害となり得る。そのように、本発明の第2態様による前述の方法により、機関を損傷する危険性は、適切に低くなり得る。
【0019】
随意的に、機関の機関速度は、最高圧値が最高圧閾値を越えたことを検出した場合に増大される。
【0020】
随意的に、本発明の第1および/または第2態様に関して、機関のトルクを減少させる機構は、可変ピッチプロペラのプロペラピッチを減少させることを含んでいる。
【0021】
本発明の第3態様はコンピュータプログランに関し、このプログラムがコンピュータ上で実行された場合、本発明の第1態様および第2態様のいずれか一方のステップを実行するための、プログラムコード手段を含んでいる。
【0022】
本発明の第4態様はンピュータ可読媒体に関し、この媒体は、プログラム製品がコンピュータ上で実行された場合に、本発明の第1および第2態様のいずれか一方のステップを実行するためのプログラムコード手段を含んだ、コンピュータプログラムを担持している。
【0023】
本発明の第5態様は、船舶の推進力を制御するための制御ユニットに関する。船舶は、機関および可変ピッチプロペラを備え、制御ユニットは、出力設定値を示した信号を受信するように形成されている。制御ユニットは、出力設定値に応じて機関の機関速度および可変ピッチプロペラのプロペラピッチを制御する制御信号を出すようにも形成されている。制御信号は、船舶の燃料消費が、所望の燃料消費範囲内になるようなおよび/またはその範囲内に維持されるような、出力設定値に応じた機関の機関速度および可変ピッチプロペラのプロペラピッチを伴った運転条件において船舶が運転されるように決定されている。
【0024】
本発明の第5態様によれば、制御ユニットは、
- 機関により発生した排ガス内のNOx含有量を示したNOx値を伴ったNOx信号を受信し、および
- NOx値がNOx閾値を越えたことを検出した場合に、機関のトルクを減少させる制御信号を出すように形成されている。
【0025】
随意的に、船舶は、機関からの排ガスをガイドするように形成された排ガスシステムを備え、この排ガスシステムは、NOx低減アセンブリを備えている。
【0026】
随意的に、制御ユニットは、排ガスの意図された流れ方向で見て、機関と排ガスシステム内のNOx低減アセンブリとの間の位置に配置されたNOxセンサから、排ガス内のNOx含有量を示したNOx値を伴った信号を受信するように形成されている。
【0027】
随意的に、制御ユニットは、排ガスの意図された流れ方向で見て、排ガスシステム内のNOx低減アセンブリの下流の位置に配置されたNOxセンサから、排ガス内のNOx含有量を示したNOx値を伴った信号を受信するように形成されている。
【0028】
随意的に、制御ユニットは、船舶の地理的位置を示した信号を受信するように形成されており、制御ユニットはさらに、これにより決定された地理的位置に基づいて、NOx閾値を決定するように形成されている。
【0029】
随意的に、制御ユニットは、NOx値がNOx閾値を越えたことを検出した場合に、機関の機関速度を増大させる制御信号を出すように形成されている。
【0030】
本発明の第6態様は、船舶の推進力を制御するための制御ユニットに関する。船舶は、機関および可変ピッチプロペラを備えている。機関は少なくとも1つのシリンダを備えている。制御ユニットは、出力設定値を示した信号を受信するように形成されている。制御ユニットは、出力設定値に応じて機関の機関速度および可変ピッチプロペラのプロペラピッチを制御する制御信号を出すようにも形成されている。制御信号は、船舶の燃料消費が、所望の燃料消費範囲内になるようなおよび/またはその範囲内に維持されるような、出力設定値に応じた機関の機関速度および可変ピッチプロペラのプロペラピッチを伴った運転条件において船舶が運転されるように決定されている。
【0031】
本発明の第6態様によれば、制御ユニットは、
- 少なくとも1つのシリンダ内の最高圧を示した最高圧値を伴った最高圧信号を受信し、および
- 最高圧値が最高圧閾値を越えたことを検出した場合に、機関のトルクを減少させる制御信号を出すように形成されている。
【0032】
随意的に、制御ユニットは、最高圧値が最高圧閾値を越えたことを検出した場合に、機関(5)の機関速度を増大させる制御信号を出すように形成されている。
【0033】
随意的に、制御ユニットは、機関のトルクを減少させるために、可変ピッチプロペラのプロペラピッチを減少させる制御信号を出すように形成されている。
【0034】
本発明の第7態様は、本発明の第5または第6態様による制御ユニットを備えた船舶に関する。
【0035】
添付の図を参照するとともに、以下に例として示された本発明の実施形態をより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】機関に関する代表的な負荷限界を示した図である。
【
図2】正確な要求された硬化を得るための、機関速度に関する出力設定値の計算およびトルクの制御を示した図である。
【
図4】船舶の実施形態を示したブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図4は、船舶10の実施形態を示している。
図4の船舶は、主機関としても引用され得る機関5、および可変ピッチプロペラ7を備えている。トルクおよび機関速度は、例えば所望のまたは狙った機関出力値のような出力設定値に一致するように調節され得る。単なる一例として、出力設定値は、オンボードまたは
図4に示されたように離れて配置されたユーザボード1を使用して設定され得る。全体的に、出力設定値は、機関5および可変ピッチプロペラ7により発生した所望の動力を示している。
【0038】
単なる一例として、
図4に示されたように、出力設定値を示した信号は、ユーザボード1からオンボードに、または離れて配置された制御ユニット2に送信され得る。非限定的な例として、制御ユニット2は、機関5、機関速度調整器4、ターボアセンブリ6、可変ピッチプロペラ7、および可能であれはシャフト出力センサ8から情報を受信し得る。さらに、再度単なる一例として、船舶10は、システムの設定およびデータ読み取りのための追加のユーザボード3を備えている。
【0039】
さらに、制御ユニット2は機関5およびプロペラ7、またはプロペラ調整手段(図示略)に制御信号を出して、それにより機関5の機関速度および可変ピッチプロペラ7のプロペラピッチを制御するように形成され得る。プロペラピッチを制御することにより、機関5のトルクが制御され得る。
【0040】
それに加えて、船舶10の実施形態は、少なくとも1つのシリンダ9を備えたシリンダ装置を備えている。さらに
図4において、船舶10の実施形態は、少なくとも1つのシリンダ9内の圧力を測定するように形成されたシリンダ圧力センサ11を備えているとして開示されている。一例として、シリンダ圧力センサ11は、少なくとも1つのシリンダ内の最高圧を測定するように形成され得る。
【0041】
図4は、図中に記載された船舶10の実施形態が、機関5からの排ガスをガイドするように形成された排ガスシステム12を備えていることも記載している。さらに
図4に示されたように、排ガスシステム12は、NO
x低減アセンブリ13を備え得る。単なる一例において、そのようなNO
x低減アセンブリは、排ガス内のNO
x含有量を低減するように適合された触媒を含み得る。
【0042】
さらに
図4は、船舶10が、排ガスの意図された流れ方向で見て、機関5とNO
x低減アセンブリ13との間に配置された上流NO
xセンサ14を備え得ることを示している。上流NO
xセンサ14の代わりにまたはそれに加えて、船舶は、排ガスの意図された流れ方向で見て、排ガスシステム12内のNO
x低減アセンブリ13の下流に配置された、下流NO
xセンサ15を備え得る。
【0043】
さらに、
図4の船舶10は位置センサ16を備え、このセンサは例えば、船舶10の地理的位置を決定するように形成された全地球測位システムを備え得る。
【0044】
図4の船舶10の実施形態は、各々1つのシリンダ圧力センサ11、上流NO
xセンサ14、下流NO
xセンサ15、および位置センサ16を備えているが、船舶10の他の実施形態は、前述のセンサ11、14、15、16の1つのみを備え得ることが予想される。さらに、船舶10の実施形態は、2つ以上のセンサ11、14、15、16を備えていることが予想される。
【0045】
図1は、例えば
図4の機関5のような機関に関する負荷限界曲線を示している。
図1から情報を得られ得るように、そこに示されたグラフは、横座標に(最大機関速度のパーセンテージとして示された)機関速度、縦座標に動力を示している。さらに、
図1は、(同じく、機関によって発生する最大トルクのパーセンテージとして示された)異なったトルクレベルに関する等値線を含んでいる。
図1から理解され得るように、機関によって発生する動力は、トルクの増大と共に増大する。同様の過程で、機関によって発生する動力は、機関速度の増大と共に増大する。
【0046】
さらに
図1から理解され得るように、所定の動力レベルは、機関トルクおよび機関速度の複数の多様な組み合わせによって得られ得る。一般的に、燃料消費の観点から、機関を高トルクレベルで運転することが有利である。
【0047】
そのようにしておよび
図2を参照して、例えば機関により発生する動力を示した出力設定値を受け入れる場合、機関は、例えば機関の負荷限界の観点から可能な最も高いトルクレベルのような高トルクレベルの状態において、好適に運転されており、機関速度は制御されて、これにより機関速度および機関トルクの組み合わせは、要求された動力、または出力設定値に一致する。
【0048】
しかしながら、本発明は、要求された動力または出力設定値に合致させるために、機関トルクおよび機関速度の適切な組み合わせを決定する場合に、追加のパラメータも考慮することを提案している。
【0049】
そのように、本発明の第1態様は、船舶10の推進力を制御するための方法に関連している。船舶10は機関5および可変ピッチプロペラ7を備え、トルクおよび機関速度は、出力設定値に一致するように調節される。これまでに示したように、機関のトルクは、可変ピッチプロペラ7のプロペラピッチを制御することにより制御され得る。
【0050】
トルクおよび機関速度の調節は、船舶の燃料消費が所望の燃料消費範囲内になるおよび/または維持されるような機関5の機関速度および可変ピッチプロペラ7のプロペラピッチにおいて、船舶10が運転されるように行われる。そのように、
図2を参照すると、機関速度およびプロペラピッチは一般的に、機関トルクが機関の負荷限界曲線の観点においておよびさらなる境界条件の観点においても、可能な限り高くなるように制御され、このことはこれ以降に詳しく述べられている。
【0051】
本発明の第1態様によれば、方法は、
- 機関5により発生する排ガス内のNOx含有量を示したNOx値を決定するステップと、
- NOx値がNOx閾値を越えたことを検出した場合に、機関5のトルクを低減させるステップと、
を含んでいる。
【0052】
そのように、前述のNOx値は、出力設定値に対応した機関速度および機関トルクの組み合わせを決定する場合に使用される境界条件となり得、所望の燃料消費範囲内の燃料消費の結果ともなり得る。
【0053】
NOx値は、複数の多様な位置において決定され得る。例えば
図4を参照すると、NO
x値は、排ガスの意図された流れ方向で見て、機関5と、排ガスシステム12内のNO
x低減アセンブリ13と、の間の排ガスを評価することにより決定され得る。そのようにして、NO
x値は、
図4内の上流NOxセンサ14を使用して決定され得る。
【0054】
前述の位置におけるNO
x値の決定の代わりに、またはそれに加えて、その方法は、排ガスの意図された流れ方向で見て、排ガスシステム12内のNO
x低減アセンブリ13の下流の排ガスを評価することにより、NO
x値を決定するステップを含み得る。そのようにして、NO
x値は、
図4内の下流NO
xセンサ15を使用して決定され得る。
【0055】
NOx閾値は、必ずしも一定である必要はない。その代わりに、NOx閾値は、例えば船舶10の地理的位置に基づいて変化し得る。そのように、その方法は、例えば位置センサ16を使用して船舶10の地理的位置を決定し、地理的位置の決定に基づいてNOx閾値を決定するステップを含み得る。単なる一例として、制御ユニット2は、多様な地理的位置に関する多様なNOx閾値の参照テーブルを含み得る。
【0056】
さらにその方法は、NOx値がNOx閾値を越えたことを検出した場合に、機関5の機関速度が増大する機能も備え得る。
【0057】
出力設定値に一致した、および所望の燃料消費範囲内の燃料消費にも帰結する、機関速度および機関トルクの設定を決定した場合に、NOx値が境界条件として使用される代わりに、またはそれに加えて、最高圧値が境界条件として使用され得る。
【0058】
そのように、本発明の第2態様は、船舶の推進力を制御するための方法に関連しており、その方法は、少なくとも1つのシリンダ9(
図4参照)内の最高圧を示した圧力値を決定するステップを含んでいる。単なる一例として、最高圧値は、
図4に関連してこれまでに示されたシリンダ圧力センサ11のようなシリンダ圧力センサを使用して決定され得る。さらに、本発明の第2態様による方法は、最高圧値が最高圧閾値を越えたことを検出した場合に、機関5のトルクを低減させるステップを含んでいる。
【0059】
単なる一例として、最高圧閾値は、機関5の過度の負荷および/または過度の摩耗の危険性を低減するために決定され得る。しかしながら、前述の目的の代わりに、またはそれに加えて、最高圧閾値は、例えば機関の排気が所望の範囲内に維持されるように決定され得る。単なる一例として、最高圧とNOx排出との間の相関関係が形成され得、所望される最大NOx排出レベルに対応した最高圧は、最高圧閾値として使用され得る。
【0060】
機関が複数のシリンダを備えている場合、最高圧はシリンダの1つにおいて測定され得る。代替的に、最高圧は2つ以上のシリンダにおいて測定されてもよく、1つ以上のシリンダにおいて測定された最大最高圧は、結果的に最高圧閾値と比較される最高圧値として使用され得る。
【0061】
さらに、本発明の第1態様による方法に関しては、
機関5の機関速度は最高圧値が最高圧閾値を越えたことを検出した場合に、増大され得る。
【0062】
船舶10の推進力を制御する場合に使用される境界条件に関わらず、機関5のトルクの低減の機構は、可変ピッチプロペラ7のプロペラピッチの低減を含み得る。
【0063】
さらに、これまでに示された方法の実施形態の各々は、
図4に関連してこれまでに示された制御ユニット2のような、1つ以上の制御ユニットにより実行され得る。そのようにして、制御ユニット2は、例えば
図4に示されたユーザボード1を使用して、出力設定値を示した信号を受信するように形成され得る。さらに、これまでに示されたように、制御ユニット2は、機関5の機関速度および可変ピッチプロペラ7のプロペラピッチを示した信号を受信するようにも形成され得る。さらに制御ユニット2は、例えばNO
x値および/または最高圧値のような関連した境界条件を示した信号を受信して、受信した信号を対応した閾値と比較するようにも形成され得る。さらに制御ユニット2は、前述の境界条件を考慮して、出力設定値に応じた機関の機関速度および可変ピッチプロペラのプロペラピッチを示した制御信号を出すように形成され得る。
【0064】
そのように、船舶10の制御ユニット2は、これまでに示された方法の任意の1つの手順を実施するように形成され得る。
【0065】
図3は、制御ユニット2のための制御ロジックの一例を示している。
図3から理解されるように、制御ロジックは、機関の機関速度および可変ピッチプロペラのプロペラピッチを制御するための調整器を備え得る。
図3の制御ロジックは、機関速度およびプロペラピッチを制御する場合に、これまでに論じられた1つ以上の境界条件を考慮するための手段も備え得る。そのように、調整器は、これまでに議論されたシリンダ圧力センサ11、上流NO
xセンサ14、および下流NO
xセンサ15の少なくとも1つからの信号のようなセンサ信号を受信して、機関速度およびトルク、すなわち可変ピッチプロペラのプロペラピッチに関する設定値を決定する場合に、信号内の情報を使用するように形成され得る。
【符号の説明】
【0066】
1 ・・・ユーザボード
2 ・・・制御ユニット
4 ・・・機関速度調節器
5 ・・・機関
6 ・・・ターボアセンブリ
7 ・・・可変ピッチプロペラ
8 ・・・シャフト出力センサ
9 ・・・シリンダ
10 ・・・船舶
11 ・・・シリンダ圧力センサ
12 ・・・排ガスシステム
13 ・・・NOx低減アセンブリ
14 ・・・上流NOxセンサ
15 ・・・下流NOxセンサ
16 ・・・位置センサ