(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】ベアリング装置を備えた手持ち式工作機械
(51)【国際特許分類】
B27B 9/04 20060101AFI20221024BHJP
B23D 47/00 20060101ALI20221024BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20221024BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20221024BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20221024BHJP
B27G 19/04 20060101ALI20221024BHJP
B23D 45/16 20060101ALN20221024BHJP
【FI】
B27B9/04
B23D47/00 Z
B23Q17/22 B
B23Q17/24 C
G05B19/404 K
B27G19/04 Z
B23D45/16
(21)【出願番号】P 2020524394
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2018079490
(87)【国際公開番号】W WO2019086352
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】102017125664.4
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017126486.8
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518361790
【氏名又は名称】フェスツール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ルシュ、マルク
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0034596(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118332(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0190936(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105081455(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0094836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 9/04
B23D 47/00
B23Q 17/22
B23Q 17/24
G05B 19/404
B27G 19/04
B23D 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材(W)を加工するための手持ち式工作機械(20)であって、前記手持ち式工作機械は、駆動モータ(22)と、前記部材(W)を加工するための作業工具(25)用の、前記駆動モータ(22)により駆動可能な工具ホルダ(24)と、前記手持ち式工作機械(20)を前記部材(W)で作業方向(AR)に誘導するための誘導面(31)を
下面に備えた誘導要素(30)とを有し、前記工具ホルダ(24)はベアリング装置(40)を用いて前記誘導要素(30)に対して移動可能であり、サーボモータ装置(50)を用いて駆動可能であり、前記誘導要素(30)に対して前記工具ホルダ(24)を相対的に調節するための前記手持ち式工作機械(20)は、前記ベアリング装置(40)を用いて前記誘導面(31)を角度付きで、特に直角に通り抜ける少なくとも1つの調節旋回軸(S)を中心に旋回可能であり、前記手持ち式工作機械(20)は、前記サーボモータ装置(50)を制御するための制御装置(60)を有する、手持ち式工作機械であり、前記サーボモータ装置(50)を制御するために、前記サーボモータ装置(50)が前記調節旋回軸(S)に対する旋回位置を保持しながら前記誘導要素(30)の前記誘導面(31)に対して平行な運動方向成分(K1、K2)で前記誘導要素(30)に対して前記工具ホルダ(24)
を調節するように、前記制御装置(60)が構成されていることを特徴とする、手持ち式工作機械。
【請求項2】
前記作業工具(25)が、前記部材(W)へ侵入するための前記作業方向(AR)に関して前方の侵入領域(EB)を有し、前記制御装置(60)が前記サーボモータ装置(50)を制御するために、前記調節
旋回軸(S)を中心とした前記工具ホルダ(24)の旋回運動の際に及び/又は前記誘導要素(30)の前記誘導面(31)に対して平行な前記運動方向成分(K1、K2)での運動の際に、前記侵入領域(EB)が前記作業方向(AR)に対する相対位置を保持するように構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載の手持ち式工作機械。
【請求項3】
前記作業方向(AR)に対して横手方向に及び/又は前記作業方向(AR)に対して角度を成すように前記工具ホルダ(24)に対して前記誘導要素(30)を調節する際に、前記工具ホルダ(24)が
前記作業方向(AR)に対するその相対位置を保持するように、前記誘導要素(30)に対して前記工具ホルダ(24)を調節するための前記制御装置(60)が構成されていることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の手持ち式工作機械。
【請求項4】
前記工具ホルダ(24)が、前記部材(W)に設けられた部材標識(M1、M2)とは無関係の少なくとも2次元の座標系(KR2、KR3)に対してその相対位置を保持するように、前記誘導要素(30)に対する前記工具ホルダ(24)の位置を調節するための前記制御装置(60)が構成されていることを特徴とする、請求項1から
3のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項5】
前記調節旋回軸(S)が、前記誘導要素(30)に対して固定位置にないことを特徴とする、請求項1から
4のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項6】
前記サーボモータ装置(50)が、第1のサーボモータ(51)と第2のサーボモータ(52)とを有することを特徴とする、請求項1から
5のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項7】
前記サーボモータ装置(50)が、線形駆動機のみを有することを特徴とする、請求項1から
6のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項8】
前記サーボモータ装置(50)及び/又は前記ベアリング装置(40)が、特に完全に、前記誘導要素(30)の投影面内に又はその上方に、前記加工されるべき部材(W)上に配置されていることを特徴とする、請求項1から
7のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項9】
前記サーボモータ装置(50)及び/又は前記ベアリング装置(40)が、側面で、前記誘導要素(30)の前記誘導面(31)の前に張り出ていないことを特徴とする、請求項1から
8のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項10】
前記誘導要素(30)に対する前記工具ホルダ(24)を線形的に調節するために、特に前記作業方向(AR)に対して横手方向に前記工具ホルダ(24)を線形的に調節するために、ベアリング装置(40)が、第1のリニアベアリング(41)及び少なくとも1つの第2のリニアベアリング(42)又は第1及び第2のリニアベアリング(41、42)のみを有することを特徴とする、請求項1から
9のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項11】
前記第1のリニアベアリング(41、42)及び前記第2のリニアベアリング(41、42)が、少なくとも1つの旋回位置において又は基本位置において互いに対して平行な調節軸(L1、L2)を有し、及び/又は、前記誘導要素(30)に位置固定で配置されたベアリング収容部(47)を有し、前記ベアリング収容部に、前記各々のリニアベアリング(41、42)の各々のベアリング要素(46)が線形移動可能であることを特徴とする、請求項
10に記載の手持ち式工作機械。
【請求項12】
前記ベアリング装置(40)が、少なくとも2つのリニアベアリング(41、42)を有し、それらのベアリング軸が、前記作業方向(AR)に対して横手方向に向けられていることを特徴とする、請求項1から
11のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項13】
前記ベアリング装置(40)が、最大で又は正確に3つの回転ベアリング(43、44、145)を有することを特徴とする、請求項1から
12のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項14】
前記ベアリング装置(40)が、3つの回転ベアリング(143、144、145)及び2つのリニアベアリング(141、142)を有し、特に3つの回転ベアリング(143、144、145)及び2つのリニアベアリング(141、142)のみを有することを特徴とする、請求項1から
13のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項15】
前記ベアリング装置(40)が、前記作業方向(AR)に対して前記工具ホルダ(24)の前に配置されたベアリング、特に少なくとも1つの回転ベアリング(43)及び/又は少なくとも1つのリニアベアリング(41)と、前記作業方向(AR)に対して前記工具ホルダ(24)の後ろに配置されたベアリング、特に少なくとも1つの回転ベアリング(44、145)及び/又は少なくとも1つのリニアベアリング(42)とを有することを特徴とする、請求項1から
14のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項16】
前記工具ホルダ(24)が、前記駆動モータ(22)を有する前記手持ち式工作機械(20)の駆動ユニット(29)に設けられており、前記駆動ユニット(29)が、前記ベアリング装置(40)を用いて、前記誘導要素(30)に対して移動可能であることを特徴とする、請求項1から
15のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項17】
前記作業工具(25)が、平らな形の切断工具(25A)、特に鋸刃である又はそれを含む、及び/又は前記駆動モータ(22)が、前記工具ホルダ(24)を回転駆動させるように配置されている及び/又は構成されていることを特徴とする、請求項1から
16のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項18】
前記制御装置(60)が、前記サーボモータ装置(50)を制御するために、切断工具(25A)の平坦面(26)に対して平行な平面において、前記誘導要素(30)に対して前記切断工具(25A)を平行に調節するように構成されていることを特徴とする、請求項1から
17のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項19】
前記手持ち式工作機械が、前記サーボモータ装置(50)により前記作業方向(AR)に対して横手方向に調節可能な、前記工具ホルダ(24)の及び/又は前記工具ホルダ(24)に配置された前記作業工具(25)の調節領域(SB)を表示するための表示装置(55)を有することを特徴とする、請求項1から
18のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項20】
前記手持ち式工作機械が、前記サーボモータ(50)により調節された前記工具ホルダ(24)の及び/又は前記工具ホルダ(24)に配置された前記作業工具(25)の実際位置を表示するための、及び/又は、前記サーボモータ装置(50)により調節されるべき前記工具ホルダ(24)の及び/又は前記工具ホルダ(24)に配置された前記作業工具(25)の予想位置を表示するための表示装置(55)を有することを特徴とする、請求項1から
19のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【請求項21】
前記手持ち式工作機械が、部材(W)を加工するためのシステムの部品を形成し、前記システムが、前記部材(W)の少なくとも1つの部材標識(M1,M2)の座標データ(KD1、KD2)を検出するための標識検出装置(70)を有し、前記手持ち式工作機械(20)が、前記少なくとも1つの部材標識(M1、M2)の座標データ(KD1、KD2)に応じて前記作業工具(25)を前記部材(W)に沿って誘導するための誘導手段(65)を有し、前記標識検出装置(70)が、光学的及び/又は機械的な照合体(71)を有し、前記照合体が、前記少なくとも1つの部材標識(M1、M2)の上に及び/又は真横に配置可能であり、前記標識検出装置(70)が、前記部材標識(M1、M2)とは無関係の少なくとも2次元の座標系(KR2、KR3)に関する前記少なくとも1つの部材標識(M1、M2)の前記座標データ(KD1、KD2)を取得するように構成されており、前記手持ち式工作機械(20)の前記誘導手段(65)が、前記少なくとも1つの部材標識(M1、M2)の前記座標データ(KD1、KD2)を用いて取得されている作業領域データ(AD)により幾何学的に定義されている作業空間(AB)内の前記少なくとも2次元の座標系(KR2、KR3)に関して前記作業工具(25)を誘導することを特徴とする、請求項1から
20のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部材を加工するための手持ち式工作機械に関する。その手持ち式工作機械は、駆動モータと、部材を加工するための作業工具用の、駆動モータにより駆動可能な工具ホルダと、手持ち式工作機械を部材で作業方向に誘導するための誘導面を備えた誘導要素とを有する。工具ホルダはベアリング装置を用いて誘導要素に対して移動可能であり、サーボモータ装置を用いて駆動され得る。誘導要素に対して工具ホルダを相対的に調節するための手持ち式工作機械は、ベアリング装置を用いて誘導面を角度付きで、特に直角に通り抜ける少なくとも1つの調節旋回軸を中心に旋回され得る。手持ち式工作機械は、サーボモータ装置を制御するための制御装置を有する。
【背景技術】
【0002】
そのような手持ち式工作機械は米国特許出願公開第2015/0094836A1号に記載されている。手持ち式工作機械は、操作者に作業領域を言わば画面で表示する外形加工機であり、その際、操作者自身が押出を遂行する。操作者は手持ち式工作機械を部材表面に沿って誘導し、その際、ベアリング装置及びサーボモータ装置は、部材を加工するために例えばフライス加工するために工具ホルダが作業線又は作業領域に追従するように、工具ホルダを制御する。ベアリング装置は、2つの偏心ベアリングを有する調節機構を含むが、その調節機構は全ての種類の手持ち式工作機械に適しているわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2015/0094836A1号
【発明の概要】
【0004】
本課題を解決するために、上述の種類の手持ち式工作機械において、サーボモータ装置が調節旋回軸に対する旋回位置を保持しながら誘導要素の誘導面に対して平行な運動方向成分で誘導要素に対して工具ホルダを誘導要素に対して調節するように、サーボモータ装置を制御する制御装置が構成されていることを設定している。
【0005】
制御装置はサーボモータをそのように制御するために、例えば調整装置又は調整器を有する。
【0006】
手持ち式工作機械は適宜、操作者により握るための1つ又は複数の作動取手を有する。好ましくは、手持ち式工作機械が誘導要素を作業方向に又は作業方向とは反対に調節するための少なくとも1つの作動取手を有し、サーボモータ装置及びベアリング装置が工具ホルダと少なくとも1つの作動取手との間に配置されていることを設定している。例えば少なくとも1つの作動取手が誘導要素に配置されている。少なくとも1つの作動取手は例えば、握り、操作突子、操作面等を含む。ベアリング装置及びサーボモータ装置は、作業領域に対して、特に作業線に対して作業工具を適所に保つために作動取手に対して工具ホルダを位置決めする。これとは異なり操作者は作業方向に沿った又は作業方向とは反対向きの作業工具の押出に備える。従って要するに、操作者が少なくとも1つの作動取手で手持ち式工作機械へ力を行使することにより作業工具を言わば作業方向で前後に動かすのに対し、サーボモータ装置及びベアリング装置は作業工具の位置決めに備える。
【0007】
本発明の基本的な考えは、制御装置がサーボモータ装置及びベアリング装置と共に、工具ホルダがその作業角度に関して調節される、即ち誘導要素に対する別の調節位置を占めるばかりでなく、工具ホルダが、誘導要素に対する調節旋回軸を中心とした各々の旋回位置を保持しながら、加えて誘導面に対して平行な少なくとも1つの運動方向成分で調節されることに備えていることである。従ってこの位置調節は並進位置調節又は変位位置調節である。運動方向成分の運動自由度は要するに並進運動自由度又は変位運動自由度である。即ち、例えば工具ホルダのある種の平行調節は、調節角度が保持される場合、制御装置により調節され得る又は制御され得る。要するに操作者が、例えば誘導要素、例えば鋸作業台又は同様な別の誘導要素を本来の運動方向に対して横手方向に、例えば直角横手方向に又は斜角横手方向に調節する際に、制御装置は、作業工具への切込領域にのみではなく、それに対する延長部分でも及び又はその工具と噛み合う作業工具の作業長に関して、作業線に対する作業工具の角度位置が同じままであるように、誘導要素に対して平行に工具ホルダの位置を調節するためのサーボモータ装置を制御する。
【0008】
即ち、例えば真っ直ぐな作業線に対する及び/又は部材に実際に嵌入又は侵入する作業工具の長さに対する刃全体の角度位置が保持されているように、例えば作業工具として適している鋸刃又は同様の別の切断刃の位置を制御装置及び制御モータ装置により調節することができる。
【0009】
制御装置は有利には、操作者により誘導要素が工具ホルダに対して調節される際に、作業工具が、それが部材に切り込む長手長に対してその位置、つまりその角度位置及び/又はその長手位置を保持するように、サーボモータ装置を制御する。
【0010】
作業工具は適宜に、部材の侵入のための作業方向に関して前方の侵入領域を有する。侵入領域は例えば、部材に切り込む歯状装置又は別の裁断縁を含む。制御装置はサーボモータ装置を制御するために、調節軸を中心とした工具ホルダの旋回運動の際に及び/又は誘導要素の誘導面に対して平行な運動方向成分での運動の際に、侵入領域が作業方向に対する相対位置を保持するように構成されている。従ってこの装置により、サーボモータ装置が言わば不適切な又は所望されていない誘導要素の運動を較正するときに、誘導要素及び工具ホルダを調節旋回軸の周りで相対的に調節する又は誘導要素の誘導面に対して平行な運動方向成分で相対的に駆動させることにより、工具ホルダの侵入領域が作業方向での押出運動を用いないことが確保される。その際、操作者が誘導要素での対向する操作行為により、実際に誘導要素を作業方向に関して前後に動かすことにより押出運動を事前に与える場合にのみ、侵入領域が押出運動を又は言わば負の押出運動、つまり作業方向とは逆の引き戻し又は戻し運動を受けることは目的に適っている。操作者が要するに誘導要素を作業方向で前方に又は後方に作動させない場合、作業工具の部材への侵入領域は言わばその場に留まったままであるのに対し、サーボモータ装置は制御装置を制御することにより、調節旋回軸に関する旋回角に関して及び/又は誘導要素の誘導面に対して平行な運動方向成分に関して誘導要素及び工具ホルダを相対的に調節する。
【0011】
制御装置は、有利には誘導要素に対して工具ホルダを調節するために、作業方向に対して横手方向に及び/又は作業方向に対して角度を成すように工具ホルダに対して誘導要素を調節する際に、工具ホルダが例えば直線状の作業方向に対するその相対位置を保持するように構成されている。工具ホルダ自体は要するに、「所望の」作業方向に対応していないが、誘導要素が操作者により調節されるときでさえ適所に保たれる。
【0012】
制御装置は適宜、誘導要素に対する工具ホルダの位置を調節するために、工具ホルダが、部材に設けられた部材標識とは無関係の少なくとも2次元の、好ましくは3次元の座標系に対してその相対位置を保持するように、構成されている。座標系は、例えば対応する照合情報を発信する座標供与体により与えられる。従って要するに制御装置は、工具ホルダがこの言わば外部座標系に対して整列されていることに備えている。それ自体は確かに重要ではないが、例えば作業方向に対して横手方向に誘導要素を調節する又は角度を成すように調節するという趣旨の操作者の操作行為は、制御装置により言わば自動的に較正される。
【0013】
調節旋回軸は誘導要素に対して固定場所にある軸であってもよい。例えば誘導要素と工具ホルダとの間には、調節旋回軸を含む又は定める対応した旋回ベアリングが存在する。
【0014】
しかし、調節旋回軸は誘導要素に対して固定位置にないことが好ましい。調節旋回軸は、例えば直線状に調節可能であってもよい及び/又は別の旋回軸を中心に旋回可能であってもよい。
【0015】
サーボモータ装置は複数のサーボモータ、例えば第1及び第2のサーボモータ又は少なくとも1つの第2のサーボモータを含み得る。例えば、サーボモータが2つサーボモータのみ、つまり第1及び第2のサーボモータを有することは有利である。
【0016】
実施形態は、サーボモータ装置が線形駆動機のみを、例えば第1及び第2の線形駆動機を含むことを設定している。しかしまた、サーボモータ装置が回転駆動機(単数)又は回転駆動機(複数)又は回転駆動機と線形駆動機との組み合わせを有する又は含むこともあり得る。
【0017】
サーボモータ装置及び/又はベアリング装置は、誘導要素の投影面内に又はその上方に、有利には加工されるべき部材上に配置されている。サーボモータ装置が側面で誘導要素の投影面の上方に言わば張り出していない又は僅かにのみ張り出していることがその利点である。特に、サーボモータ装置及び/又はベアリング装置が完全に誘導要素の投影面内に若しくはその上方に配置されていることが好ましい。
【0018】
本発明の実施形態は有利には、サーボモータ装置及び/又はベアリング装置が側面で誘導要素の誘導面の前に張り出していないことを設定している。この構造の利点は、ベアリング装置又はサーボモータ装置が稼働中に妨げない、即ち操作者が、サーボモータ装置又はベアリング装置の構成部品で言わば障害物に引っ掛かることなく、例えば誘導要素を部材に沿って誘導することができることである。
【0019】
以下に、リニアベアリングが設けられているベアリング設計を説明する。リニアベアリングは、専ら並進滑り運動又は直線移動軌道に沿った滑り運動のみを可能にする滑りベアリングとも表記され得るであろう。
【0020】
ベアリング装置は適宜、第1のリニアベアリングと少なくとも1つの第2のリニアベアリングとを有する。また第1及び第2のリニアベアリングのみ又は少なくとも1つの別のリニアベアリングが設けられてもよい。
【0021】
各々のリニアベアリングは、誘導要素に対して工具ホルダを線形的に調節するために、特に作業方向に対して横手方向に工具ホルダを線形的に調節するために用いられる。リニアベアリングが実際に作業方向に沿って延びていることもあり得る。
【0022】
第1及び第2のリニアベアリングは適宜、互いに対して平行な調節軸を有する。リニアベアリングのベアリング軸は、リニアベアリングの少なくとも1つの位置において互いに対して平行にあってもよい。しかし調節軸はまた互いに対して実質的に平行にあってもよい、即ち例えば0°~5°の角度で僅かに斜めに傾いていてもよい。リニアベアリングは例えば回転可能であってもよいので、例えば1つ又は複数の以下に説明される回転ベアリングを用いてリニアベアリングが互いに対して旋回されている場合、リニアベアリングのベアリング軸は角度位置、特に平行位置からずれた小さな角度位置を有する。
【0023】
ここではつまり、少なくとも1つのリニアベアリングがその上、旋回ベアリング又は旋回可能なベアリング収容部に旋回可能であり得ることに留意するべきである。
【0024】
しかしながら、少なくとも1つのリニアベアリングが駆動ユニット又は工具ホルダに対して固定場所にあり、そのためその調節軸が例えば作業方向に沿って延びていることが有利である。
【0025】
誘導要素には、例えば固定場所に配置された第1及び/又は第2のリニアベアリング用のベアリング収容部が設けられている。それらのベアリング収容部には、各々のリニアベアリングの各々のベアリング要素が直線移動可能である。ベアリング要素は、駆動部品であっても、受動性のいわゆる連動部品であってもよい。
【0026】
各々のベアリング要素が例えば線形駆動機の調節要素により形成されていることは好ましい。ベアリング収容部は例えば調節モータの固定子に設けられてもよい。
【0027】
ベアリング装置は適宜、少なくとも2つのリニアベアリングを含み、それらのベアリング軸が作業方向に対して横手方向に向けられている。ベアリング軸は例えば作業方向に対して実質的に直角に通っている。ここでは、例えば各々のリニアベアリングが旋回位置に旋回可能である場合、ベアリング軸が作業方向に対して横手方向に複数の角度位置をも有し得ることに留意するべきである。
【0028】
ベアリング装置は可能な限り少ない回転自由度を有することが好ましい。本発明の実施形態は、ベアリング装置が最大2つの、特に最大3つの回転ベアリングを有することを設定し得る。
【0029】
図面に示される実施例は、ベアリング装置が少なくとも又は正確に3つの回転ベアリング及び少なくとも又は正確に2つのリニアベアリングを有する、特に3つの回転ベアリング及び2つのリニアベアリングのみを有することを設定している。リニアベアリングは好ましくは、回転ベアリングを用いて誘導要素に対して回転可能又は旋回可能である。
【0030】
しかし、ベアリング装置が2つのリニアベアリング及び3つの回転ベアリング又は旋回ベアリングを有するという実施形態が可能である。その際、旋回ベアリング又は回転ベアリングのうちの1つが2つのリニアベアリングの間に配置されており、これらのリニアベアリングを相互に結合させることは有利である。リニアベアリングのベアリング要素は例えば、特にその長手端領域で、回転ベアリングにより互いに対して旋回運動可能に結合されている。
【0031】
ベアリング装置が、作業方向に対して工具ホルダの前に配置されたベアリング、例えば回転ベアリング及び/又は少なくとも1つのリニアベアリングと、作業方向に対して工具ホルダの後ろに配置されたベアリング、例えば場合により回転ベアリング及び/又はリニアベアリングとを有することは好ましい。しかし、例えばベアリングが言わば作業方向に対して工具ホルダの高さに配置されているのに対し、別のベアリングが、作業方向においてその後ろで又はその前で、誘導要素と工具ホルダとの間に設けられていることもあり得る。
【0032】
さらに、ベアリング装置が、作業方向に対して工具ホルダの前にのみ又は作業方向に対して後ろにのみ配置されたベアリング、例えば回転ベアリング、リニアベアリング等を有することがあり得る。
【0033】
工具ホルダは適宜、駆動モータを有する手持ち式工作機械の駆動ユニットに設けられている。駆動ユニットは、ベアリング装置を用いて誘導要素に対して移動可能である。有利には駆動ユニットと誘導要素との間にサーボモータ装置が配置されている。この実施形態では工具ホルダの角度位置が同じままであることもあり得る。その際、駆動モータに対する工具ホルダの回転角度位置又は線形位置が駆動モータによる駆動により変動することは別として、工具ホルダと駆動モータとの相対位置は変動しない。
【0034】
上の実施形態では、同様に後続の実施形態では、駆動モータと工具ホルダとの間に伝動装置、例えば遊星伝動装置、切換伝動装置、反転伝動装置等を設けることが有利である。しかし、駆動モータが工具ホルダを直接、要するにその間に伝動装置を接続せずに駆動することもあり得る。
【0035】
本発明の別の実施形態は、工具ホルダがサーボモータ装置及びベアリング装置により誘導要素に対して調節されるのに対し、駆動ユニットが誘導要素に対して固定位置にあることを設定し得る。そのために、例えば対応する回転結合又は運動結合が駆動モータと工具ホルダとの間に、例えば自由自在な回転軸、転向伝動装置等を用いて設けられている。例えば傘歯車型伝動装置が考えられるであろう。
【0036】
本発明の実施形態では、作業工具が例えばフライス工具、研磨工具等として構成されてもよい。図面に詳細に示されている本発明の別の実施形態は、作業工具が、平らな形の切断工具、例えば鋸刃、切断ディスク等である又はそれらを含むことを設定している。さらに駆動モータは、特に手持ち式工作機械が細帯鋸として構成されている場合、例えば竿状の切断工具を駆動し得る。
【0037】
駆動モータは適宜に、工具ホルダを回転駆動させるように配置及び/又は構成されている。当然、工具ホルダの動力又は駆動モータが振動性の駆動運動も遂行することがあり得るであろう。即ち、例えば工具ホルダと駆動モータとの間に振動伝動装置が設けられてもよい。
【0038】
制御装置は適宜に、サーボモータ装置を制御するように、切断工具の平坦面に対して平行な平面において、誘導要素に対して切断工具を平行に調節するように構成されている。即ち、要するに例えば切断工具をその平坦面に対して平行に調節することができる、つまり工具ホルダと誘導要素との間の上述の調節角度は保持される。
【0039】
手持ち式工作機械が、サーボモータ装置により作業方向に対して横手方向に調節可能な、工具ホルダの及び/又は工具ホルダに配置された作業工具の調節領域を表示するための表示装置を有することが好ましい。即ち、操作者はそれにより例えば、工具ホルダ又は作業工具が尚も、サーボモータ装置により調節可能な調節領域内にあることを監視することができる。この調節領域を離れる場合、所望の部材加工はもはや可能ではない。
【0040】
さらに、手持ち式工作機械が、工具ホルダ及び/又はその工具ホルダに配置された作業工具の、サーボモータにより調節された実際位置を表示するための、及び/又は工具ホルダ及び/又はその工具ホルダに配置された作業工具の、調節されるべき予想位置を表示するための表示装置を有することは目的に適っている。即ち操作者はこのようにして、工具ホルダ又は作業工具又はそれらの両方が所望の実際位置にあるのを監視することができる。さらに操作者は工具ホルダ又は作業工具の予想位置の表示により、サーボモータ装置が言わばまもなくどの調節を実行することになるのかを理解することができる。
【0041】
本発明の目的に適った形態では、手持ち式工作機械は、以下に記載される部材加工用のシステムの部品を成し、そのシステムが使用される方法を利用するに適している。その際、部材の少なくとも1つの部材標識の座標データを検出する標識検出装置が設けられている。手持ち式工作機械は、少なくとも1つの部材標識の座標データに応じて部材に沿って作業工具を誘導する誘導手段を有する。そのシステムでは、標識検出装置が、少なくとも1つの部材標識の上に及び/又はその真横に配置可能な光学的及び/又は機械的な照合体を有することと、標識検出装置が、部材標識とは無関係の少なくとも2次元の座標系に関して少なくとも1つの部材標識の座標データを取得するように構成されていることと、手持ち式工作機械の誘導手段が、少なくとも1つの部材標識の座標データを用いて取得されている作業領域データにより幾何学的に定義されている作業空間内の少なくとも2次元の座標系に関して作業工具を誘導することとを設定している。
【0042】
基本的な考えはこの場合、機械的又は光学的な照合体を言わば少なくとも1つの部材標識の真上に及びその真横に配置するので、このようにして一方で機械的/光学的な照合体と他方で部材標識との間の正確な空間的な又は場所的な合致が得られうることである。従って、部材標識を言わば模写する光学系を使用し、そのため利用者が投影された部材標識の上に仮想の照合体を置くという趣旨での起こり得る不正確さは、従来技術とは異なり存在しない。
【0043】
部材標識は、操作者が部材上に取り付ける標識、例えば直線形の標識、縞標識、標識点等であり得る。しかし部材標識は、その上言わば自然の部材標識、又は部材の組込要素を成す部材標識、例えば部材縁、窪み、部材の表面塗装内の有色標識又はコントラスト標識等であってもよい。
【0044】
座標系は2次元の或いはまた3次元のものであってもよい。従って座標系は好ましくは空間的なものである。
【0045】
座標系は例えば作業空間に対して固定位置にある。
【0046】
好ましい実施例は、手持ち式工作機械及び/又は標識検出装置及び/又は後に説明される部材位置検出装置が、局所座標系、特に2次元又は3次元の局所座標系を有することを設定している。上述の成分のうちの少なくとも1つは、局所座標系で取得された幾何学的対象の、例えば点、線又は面の座標データを別の座標系に変換するように構成されている。そのためには、例えば以下に挿入される回転変換に対する数式(1)、(2)及び(3)が適している。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
即ち、例えば数式(1)を用いてX軸周りの角度αだけの回転、数式(2)を用いてY軸周りの角度βの回転、及び数式(3)を用いてZ軸周りの角度γの回転を記述できる。当然、並進変換も可能である。そのためには通常の行列移動が適している。
【0051】
一方の座標系から他方の座標系への、例えば標識検出装置又は手持ち式工作機械の局所座標系から作業空間に関する大域座標系への、点の移動操作若しくは転換を算出するための代わりの構想は、いわゆる四元数である。四元数のスカラー積を介して、座標系を言わば互いに対して換算することができる。
【0052】
標識検出装置、手持ち式工作機械、特に誘導手段の各々の制御装置又は監視装置、或いはまた例えば部材に固定され得る部材検出装置は、座標系の換算又は移動を遂行することができる。
【0053】
手持ち式工作機械、例えばその制御装置により及び/又は標識検出装置により及び/又は部材に位置決めされた又は位置決め可能な部材位置検出装置により形成されている少なくとも1つの成分は、各々の成分に関する局所の特に2次元又は3次元座標系から、少なくとも2次元の特に作業空間に関して固定位置にある座標への及び/又はその反対の、少なくとも1つの点の座標データの平行移動及び/又は換算に対して有利である。
【0054】
座標系は、部材に直接配置されてもよく、例えば幾何学的模様を有する標識帯により形成されてもよい。
【0055】
部材がその内部に配置されている作業空間内に配置可能な少なくとも1つの座標供与体を用いて、少なくとも2次元の、好ましくは3次元の座標系を与えることが好ましい。誘導手段及び/又は標識検出装置は、少なくとも1つの座標供与体の位置を取得するように、及び/又は少なくとも1つの座標供与体により送信される少なくとも1つの照合情報を取得するように構成されている。座標供与体はまた、言わば位置固定で作業空間内の所定の位置に及び/又は部材に配置されてもよい。次にその位置は、部材が加工される際に標識検出装置により、好ましくは後に誘導手段によっても取得される。
【0056】
少なくとも1つの座標供与体は、言わば受動的な座標供与体であってもよく、その空間的な位置は、標識検出装置及び/又は誘導手段により検出され得る。例えば標識検出装置又は誘導手段は、幾何学的輪郭及び/又は色及び/又はコントラスト、例えばバーコードを少なくとも1つの座標供与体で検出する。
【0057】
しかし座標供与体はその上、照合情報を送信する能動的な座標供与体であってもよい。照合情報は例えば光学情報、例えば光パルス、光波長等である。特に物理的な波、マイクロ波等が照合情報として設定されている。
【0058】
少なくとも1つの座標供与体は、部材又は背景又はそれらの両方に固定するための固定手段、例えば粘着固定手段、鉤固定手段及び/又は吸引固定手段を有し得る。従って座標供与体を言わば固定場所で固定することができる。さらに、座標供与体が、背景又は部材又はそれらの両方に合わせるための少なくとも1つの調節面を有することは有利である。複数の、例えば2つの送信機を有するシステムが好ましい。それにより特に有利な幾何学的構造が可能である。様々な座標供与体は互いに対して距離をおいて配置され得るので、誘導手段又は標識検出装置又はそれらの両方は言わば常に少なくとも1つの座標供与体をその検出領域内に見出す。さらに複数の座標供与体を用いて、2次元又は3次元の座標系、例えば三角測量等を確定するための幾何学的な方法を利用することもできる。
【0059】
少なくとも1つの座標供与体は適宜に、照合情報を互いに対して角度を成す方向に及び/又は互いに対して平行な平面に送信するように構成されている。標識検出装置又は誘導手段は、この照合情報を検出するように構成されている。従って要するに標識検出装置は照合情報を最適に利用することができる。互いに対して角度を成す方向は、好ましくは互いに対して直角を成している。即ち例えば座標供与体は、互いに対して平行な平面に、第1の方向及び第1の方向に対して角度を成す方向に送信することができる。例えばある種の縞構造を発信することができる。縞模様を、互いに対して角度を成して発信することができるので、原則として座標供与体により格子構造を事前に与え、その際、個別の格子線を同時に又は逐次送信することができる。
【0060】
そのような座標供与体のないシステムが機能することもあり得る。即ち例えば、手持ち式工作機械の誘導手段又は標識検出装置又はそれらの両方が、部材がその内部に配置されている作業空間において少なくとも2次元の座標系に関して方位を決定するための方位決定手段を有することを設定してもよい。方位決定手段は、作業空間の幾何学的な輪郭、例えば壁、空間の隅、空間の内縁等を検出するように構成されている。さらに、方位決定手段が、作業空間内の手持ち式工作機械又は標識検出装置又は部材の位置を特徴付けるような照合情報を受信するように構成されていることは有利である。即ち、例えば方位決定手段は上述の照合情報を検出するために用いられ得る。
【0061】
標識検出装置は好ましくは、少なくとも1つの始動条件に応じて部材標識に対して照合体を位置決めした後に少なくとも1つの部材標識の座標データを検出するように構成されている。従って要するに操作者は、例えば光学的又は機械的照合体を、まず少なくとも1つの部材標識又は各々の部材標識に対して、例えばそれらの標識に位置決めすることができる。標識検出装置は次に、少なくとも1つの始動条件に応じて少なくとも1つの部材標識の座標データを検出する。
【0062】
始動条件として様々な可能性が検討され、また互いに組み合わせても検討される。以下に例として幾つかの可能性が続く:
即ち例えばセンサが、操作者の操作行為、例えば拭い運動、圧力等を検出することができる標識検出装置及び/又は誘導手段に設けられてもよい。センサは例えば光学センサ、容量性センサ、誘導性センサ等であってもよい。操作行為が、標識検出装置又は誘導手段又は手持ち式工作機械に設けられている電気スイッチにより標識検出装置又は誘導手段により取得されることもあり得る。
【0063】
さらに時間的な条件、例えば少なくとも1つの部材標識の照合体の所定の時間にわたる滞留があり得る。時間的な条件は例えば、標識検出装置が部材標識に対して所定の時間にわたり動かないことを意味する。相対運動又は存在しない相対運動は、標識検出装置により例えば間隔測定又は所定の時間にわたる部材標識の光学的検出を用いて取得され得るが、以下に説明される運動センサを用いても取得され得る。
【0064】
標識検出装置が運動センサを有することもあり得る。所定時間にわたり標識検出装置の運動が行われない場合、それは部材標識の検出とみなされる。
【0065】
さらに標識検出装置及び/又は誘導手段は、照合体と少なくとも1つの部材標識と間の間隔検出を可能にする間隔センサを含む又は有する。照合体と少なくとも1つの部材標識との間の所定の境界間隔を下回っている場合、要するに境界間隔を保持する場合、部材標識が検出されたものとみなされる。
【0066】
さらに部材標識を動的に検出することもできる。即ち、例えば標識検出装置を部材標識にわたり移動させ、この部材標識を光学的に検出することができる。光学的検出は、例えば加工標識と背景若しくは部材表面との間の明暗コントラストを含む。
【0067】
さらに、標識検出装置が、少なくとも1つの部材標識を戦略的に及び/又は光学的に選択するように構成されていることは有利である。即ち標識検出装置は、例えば矢印標識、直線標識等の形の機械的な照合体を有し得る。機械的な照合体はその上、例えば手持ち式工作機械の誘導要素、例えば誘導滑り台又は誘導机の側縁によっても準備され得る。光学的な選択に関して、例えば有向光線があり得る。即ち、例えば光供与体、特にレーザ等が標識検出装置の縁に設けられてもよい。このレーザ又は他の光供与体が部材標識に向けられて、この部材標識と合致する場合、部材標識は検出されたものとみなされる。そのためには例えば、まず操作行為、即ち光学的な照合体、特に光線と部材標識との間の合致を座標検出のための始動条件として有効にするために操作者が例えば標識検出装置のキーを押すことが重要である。これは既に上で、有利な始動条件と関連付けて説明された。
【0068】
それ自体で独自の発明は以下の装置であるが、それは上述の発明の有利な形態であってもよい。標識検出装置は、手持ち式工作機械から分離した又は分離可能な構成部品であってもよい。
【0069】
特に好ましくは、標識検出装置は手持ち式工作機械よりも明らかに軽い。標識検出装置は例えば手持ち式工作機械の重量のほぼ10~20%のみを有する。
【0070】
さらに、標識検出装置が、手持ち式工作機械よりも小さな空間的な膨らみを、例えば少なくとも1つの寸法、例えば横手幅、横手長等において、しかしながら複数の寸法においても手持ち式工作機械の空間的な膨らみの10~20%のみを有することは有利である。標識検出装置は、例えば2次元において、特に断面において手持ち式工作機械よりも明らかに小さくてもよい。但し、例えば標識検出装置がピン状に又は棒形のものである場合、標識検出装置がほぼ全く手持ち式工作機械の長さ又は高さを有することもあり得る。
【0071】
また、例えば照合体が誘導要素に配置されていることにより、標識検出装置が工作機械の部品を成すこともあり得る。また、部材標識の選択と関連した座標データの取得は、手持ち式工作機械が標識検出装置を搭載している場合、手持ち式工作機械により直接遂行され得る。
【0072】
手持ち式工作機械は適宜、標識検出装置用の有線インターフェース又は無線インターフェース又はそのような両方のインターフェースを有する。標識検出装置は各々のインターフェースを介して、例えばブルートゥース(登録商標)インターフェース、WLAN等を介して、少なくとも1つの部材標識の座標データを手持ち式工作機械に送信することができる。しかしまた座標データの有線伝送も、例えばシリアルデータ、バスデータ等を用いて可能である。特に、標識検出装置と手持ち式工作機械との間に、例えばブルートゥース、I2Cバス等を介して、デジタルプロトコルを有するバスインターフェース又はバス伝送が設けられていることがあり得る。
【0073】
手持ち式工作機械は、標識検出装置を保持するための保持収容部を有し得る。例えばポケット、窪み等、標識検出装置用の他の保持収容部が設けられてもよい。しかし、手持ち式工作機械が、クリップ等、標識検出装置用の他の保持具又は保持収容部を有することもあり得る。保持収容部は例えば手持ち式工作機械の機械筐体に設けられている。機械筐体は例えば駆動モータ及び工具ホルダを収容する。しかし保持収容部はまた誘導要素に設けられてもよい。
【0074】
標識検出装置は適宜、モータ駆動式のものではない又は作業工具を駆動させるための駆動モータを有していない。従って要するに、標識検出装置が言わば手作動可能な又は手操作可能な装置であるのに対し、システムのモータ駆動式の構成部品は手持ち式工作機械により与えられる。駆動モータは比較的重く、それは手持ち式工作機械の重量を決定する。それとは異なり標識検出装置は軽く、従って容易に取扱可能な組立ユニットを成す又は有する。
【0075】
部材標識を検出する際、いずれにせよ、標識検出装置がモータで駆動されていない又は駆動され得ないことは有利である。即ち、例えば手持ち式工作機械自体が標識検出装置を有し得る又は標識検出装置であり得る。しかしながら少なくとも部材標識を検出する間、手持ち式工作機械の動作は設定されていない。有利には、部材標識を検出する際に手持ち式工作機械が駆動モータの動作を阻止することを設定してもよい。いずれにせよ、少なくとも1つの部材標識を検出する際に標識検出装置がモータで駆動されていない場合、振動等が駆動モータの他の影響を攪乱することはない。
【0076】
標識検出装置は適宜、ピンを含む又はピン形状である。従って要するにその検出装置は好ましくは指示装置の様式に構成されている。好ましくは、照合体はピン又はピン形の標識装置の先端又は長手端により形成されている。
【0077】
標識検出装置が、光学的な照合を与えるための光学的な光供与体、例えばレーザ光線を有することもあり得る。その上これに関して、距離計測が設定されていることは有利である。要するに光学的な光供与体が部材標識に対する所定の限界距離を超えていない場合、座標又は座標データの検出は言わば解除されている。光供与体は要する部材標識の近傍になければならず、それをもって少なくとも2次元の座標システムに関する座標検出は有効に切り換えられる。
【0078】
誘導手段では、その誘導手段が言わば工具ホルダを有効に誘導する、又は誘導手段が、操作者が工具ホルダを、従って作業工具を最適に誘導するための補助情報のみを出力することが可能である。
【0079】
即ち、誘導手段は、例えば作業領域に関する又はその作業領域を定義する事前設定情報、例えば予想作業線を操作者に対して光学的に及び/又は音響的に出力する出力装置を有する。しかし作業領域は、例えば作業面を定義するように、空間的な形も有し得る。またこの作業面若しくは平坦な作業領域は出力装置にも表示され得る。出力装置は、例えばディスプレイ、特にLCDディスプレイ、グラフィック機能付きディスプレイ等である。
【0080】
誘導手段は適宜に、誘導要素に対する工具ホルダの相対位置を調節するための少なくとも1つのサーボモータを備えたサーボモータ装置を有する。少なくとも1つのサーボモータは例えば電気モータ、空圧駆動ユニット等である。従って誘導手段(単数)又は誘導手段(複数)は言わば誘導要素に対する工具ホルダの位置を、特に工具ホルダを含めた駆動モータの位置を調節することができるので、工具ホルダ、従って作業工具は言わば予想作業線又は予想作業領域に追従する。従って、要するに作業領域は言わば自動的に維持される又は調整される。
【0081】
作業領域は既述のように好ましくは作業線を含み、その作業線に沿って作業工具が部材に対して誘導され得る。また、作業領域が部材を加工するのに設けられた部材の加工面を含む又はその加工面により形成されていることもあり得る。
【0082】
誘導手段及び/又は標識検出装置が、互いに対して距離をおいて配置されている少なくとも2つの部材標識の、少なくとも2次元の座標系に関する座標データを用いて、例えば部材標識の間に延びる少なくとも部分的に真っ直ぐな作業線又は完全な作業線に対して、作業領域の作業領域データを取得するように、構成することが好ましい。即ち、例えば2つの線標識又は点標識が部材に設けられてもよい。標識検出装置又は誘導手段は、言わば2次元座標系に関するその位置を評価し、それから作業線を得ることができる。そのような複数の部材標識が存在する場合、好ましくは補間が可能であり、このようにして仮想の真っ直ぐな作業線を生成する。しかしながら、複数の部材標識を言わば読み込み若しくはその座標データを標識検出装置により取得して、続いて誘導手段又は標識検出装置により例えば角付き部分及び/又は湾曲及び/又は円弧線を有する作業線等を取得することもあり得る。従って要するにそのシステムは、言わばそれ自体で作業領域データを取得することができる。
【0083】
誘導手段又は標識検出装置又はそれらの両方は適宜、作業領域、例えば作業線を定義する事前設定データを受信するための受信インターフェースを有する。例えば、そのような事前設定データを受信するために受信インターフェースとして、USBインターフェース、WLANインターフェース、ブルートゥースインターフェース等が設けられている。事前設定データは例えばCAD装置、コンピュータ等により受信される。さらに誘導手段及び/又は標識検出装置は、事前設定データに応じて作業領域の作業領域データを取得するように構成されている。例えば誘導手段又は標識検出装置は、少なくとも1つの検出済みの部材標識に応じて作業領域を整える、及び/又は作業領域用の開始点を固定する。
【0084】
システムが、標識検出装置及び/又は手持ち式工作機械の各々の位置を検出するために、部材がその内部に配置されている作業空間内に配置可能な少なくとも1つの座標検出装置を有し、その座標検出装置が、手持ち式工作機械又は標識検出装置の照合体から分離した組立ユニットを形成することが好ましい。座標検出装置として例えば、1つ又は複数のカメラの、特に立体カメラ又は複数の立体カメラの配列を取り上げることができる。座標検出装置は、言わば部材標識に向けられるべき照合体の位置又は手持ち式工作機械の位置又はそれらの両方を検出する。座標検出装置は、例えば標識検出装置の一部を成すことができる。
【0085】
上述の筋書では最初に、部材標識(単数)又は部材標識(複数)を検出した後に部材がその場に留まる、従って2次元座標系又は3次元座標系に対する空間的な又は場所的な部材の位置が保持されたままであることを考えた。少なくとも1つの部材標識の座標データは要するに部材の加工まで不変のままである。
【0086】
しかし上述の装置は、少なくとも1つの部材標識を検出した後に部材が固定位置に留まっている必要はなく、部材の加工前でも部材が移動される、例えば回転される、好ましい加工位置に移される等の以下の本発明の形態と関連付けて利用され得る。
【0087】
そのシステムはつまり適宜、標識検出装置により少なくとも1つの部材標識を検出した後に部材の運動を、手持ち式工作機械により部材を加工するために設けられた加工位置まで追跡するための追跡手段を含む。追跡装置は、運動を与えるように又は加工位置を特徴付ける追跡データを与えるように構成されているので、手持ち式工作機械の誘導手段は、少なくとも1つの部材標識の座標データ及び追跡データを用いて取得されている作業領域データを用いて、作業工具を誘導する又は誘導することができる。即ち、例えば追跡データを用いて少なくとも1つの部材標識の座標データの転換を実行することができるので、言わば変換済みの座標データを含む部材標識の新たな位置を取得することができる。部材標識の座標データは、要するに少なくとも2次元の座標系に関する部材の新たな位置に対応して言わば換算される又はさらに追跡される。
【0088】
追跡は、例えば作業空間内に配置可能な上述の座標検出装置、例えば立体カメラのみを用いて行われ得る。これは、例えば少なくとも1つの部材標識を検出する際に利用可能な部材の位置を、次に加工前に手持ち式工作機械により占有される少なくとも1つの2次元座標系に関する部材の位置を取得することができる。
【0089】
特に適切であるのは以下の装置である。その装置では、少なくとも1つの部材標識を検出した後、少なくとも加工位置を得るまで部材に固定される少なくとも1つの部材位置検出装置及び/又は部材位置照合標識を、備えることが予定されている。部材位置検出装置は、例えば既に上述の1つ又は複数の座標供与体の照合情報を共に取得する能動的部品であってもよい。しかし、部材位置照合標識、例えば部材標識等、追跡手段により追跡される別の標識が部材に取り付けられていることもあり得る。その際、ある設定において部材位置照合標識として例えば部材の部材縁が取り上げられ、その部材縁は部材位置照合標識として用いられる。
【0090】
しかしまた部材に固定するための粘着手段、例えば吸引手段、接着手段等を含む部材位置照合標識が設けられてもよい。この部材位置照合標識は例えば、追跡手段により取得可能な色コントラスト、明暗コントラスト等を有することも可能である。
【0091】
標識検出装置及び/又は手持ち式工作機械及び/又は既述の部材位置検出装置には適宜、少なくとも2次元の座乗系において方位を取得するための多数の装置照合標識及び/又はセンサが配置されている。装置照合標識は、例えば作業空間内に配置されているカメラにより取得され得る。
【0092】
座標を幾何学的に正確に決定するのに以下の装置が役立つ。標識検出装置及び/又は手持ち式工作機械では、少なくとも2次元座標において方位を取得するための少なくとも2つの装置照合標識又は少なくとも2つのセンサが、各々の標識検出装置又は手持ち式工作機械の互いに対して離れた末端部又は末端領域又はそれらの両方に配置されている。さらに有利であるのは、装置照合標識又はセンサの間隔が、手持ち式工作機械又は標識検出装置の各々の延長部分の長さの少なくとも2/3又は少なくとも1/2に対応していることである。要するに機械が例えば高さHを有する場合、センサ又は装置照合標識はこの高さに対して間隔をおいて配置されており、それらは高さの1/2又は1/3の高さに対応している。
【0093】
以下に本発明の実施例が図面に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】手持ち式工作機械並びに2つの座標供与体及び部材加工前の部材を備えたシステムを含む斜視図である。
【
図2】
図1による、しかしながら手持ち式工作機械による部材加工時のシステムである。
【
図3】
図1によるシステムの座標供与体の詳細図である。
【
図4】ディスプレイを有する標識検出装置と照合標識とを備えた別のシステムである。
【
図5】表示装置が概略的に示されている、部材加工の際の
図1による部材及び
図1による手持ち式工作機械の概略上面図である。
【
図6】第1のサーボモータ装置と第1のベアリング装置とを備えた、
図1、2、4に示される手持ち式工作機械の様式の手持ち式工作機械の運動機構の概略上面図である。
【
図7】工具ホルダと誘導要素の第1の相対位置における
図6による手持ち式工作機械である。
【
図8】工具ホルダと誘導要素の第2の相対位置における
図6、7による手持ち式工作機械である。
【
図9】基本位置での、別のベアリング設計と別のサーボモータ装置とを備えた手持ち式工作機械の別の形態である。
【
図10】調節位置での
図9による手持ち式工作機械である。
【
図11】第2の調節位置での
図9、10による手持ち式工作機械である。
【
図12】手持ち式工作機械の別のベアリング装置及びサーボモータ配置の概略図である。
【
図13】上記の図による手持ち式工作機械の制御装置の概略図である。
【
図14】加工されるべき部材が作業空間内の第1の位置に配置されている、
図1によるシステムの変更形態である。
【
図15】加工されるべき部材が作業空間内の第2の位置に配置されている、
図14による装置である。
【
図17】カメラを有する手持ち式工作機械を備えたシステムである。
【
図18】
図1による、しかし複数の局所座標系を備えたシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1によるシステムの手持ち式工作機械20は、駆動モータ22がその内部に収容されている、機械筐体21を有する。駆動モータ22はスイッチ23により始動及び停止され得る。操作者はスイッチ23を例えば押すことができる。駆動モータ22は、工具ホルダ24を駆動する役割をするので、この工具ホルダは回転軸Dの周りで回転する。駆動モータ22と工具ホルダ24との間に伝動装置22Aが設けられてもよい。
【0096】
工具ホルダ24には、作業工具25が例えばネジ、バヨネット継手等を用いて取り外し可能に固定され得る。本件では作業工具25は切断工具25Aである。作業工具25は円板状の形又は刃状の形を有する。例えば作業工具25として鋸刃を取り扱う。
【0097】
手持ち式工作機械20は鋸盤、特に丸鋸盤等である。好ましくは手持ち式工作機械20は木材加工用に設定されており、他の部材も、例えば合成樹脂、金属等も加工され得る。
【0098】
作業工具25は、言わば手持ち式工作機械20の長手側面に配置されている。その平坦面26は実質的に空いているので、手持ち式工作機械20を用いて言わば縁近くで鋸挽きされ得る。
【0099】
手持ち式工作機械20は電気的な手持ち式工作機械であり、本発明による設計は、空圧動力、つまり工具ホルダ、従って作業工具のための空圧動力を備えた手持ち式工作機械でも利用され得る。
【0100】
手持ち式工作機械20に電気エネルギーを供給するために電源接続ケーブル28Aが設けられてもよい(
図2)。その電源接続ケーブルをもって、手持ち式工作機械20はエネルギー供給網、例えば交流電流網に接続され得る。電源接続ケーブル28Aには例えば差込ソケットに差し込むための電源差込プラグ28Bが配置されている。しかしながら、手持ち式工作機械20がエネルギー蓄積器28、例えばバッテリーパック等を既に搭載している、携帯式の又は電源非接続式の設計が好ましい。
【0101】
駆動モータ22、場合により伝動装置22A、及び作業工具25は、手持ち式工作機械20の駆動ユニット29の部品である。この駆動ユニット29には、エネルギー蓄積器28用のインターフェースが配置されている。即ちエネルギー蓄積器28は駆動ユニット29に配置されている。しかしエネルギー蓄積器はまた、以下に説明される誘導要素30、例えばいわゆる誘導台又は誘導板に配置されてもよい。
【0102】
誘導要素30はその駆動ユニット29に背く側に、特に下面に誘導面31を有し、その誘導面は加工材W、例えばその上面に沿って誘導され得る。誘導面31は本件では平面である。しかし本発明による手持ち式工作機械ではまた、平らではない誘導面、例えば湾曲した又は屈曲した誘導面が設けられてもよい。
【0103】
誘導要素30は本件では板状のものである、又は誘導板を有する、又はそのような板として構成されている。例えば誘導要素30は実質的に長方形である。誘導要素30は、作業方向において前方の横手面32と、作業方向において後方の横手面33と、これらの横手面32、33の間に延びる長手面34及び35とを有する。作業工具25は、作業方向において右側の長手面35の領域内に配置されており、部材Wの部材加工に適した少なくとも1つの深さ調節位置において、誘導面31の前で下に向かって張り出している。
【0104】
駆動ユニット29は、ベアリング装置40を用いて誘導要素30に対して調節可能である。従ってまた工具ホルダ24、場合により作業工具25も、ベアリング装置40を用いて誘導要素30に対して調節可能に、例えば旋回可能に、変位可能に又は両方可能である。
【0105】
ここで駆動モータ22、場合により伝動装置は駆動ユニット29の構成部品であり、それが全体的にベアリング装置40を用いて誘導要素30に対して調節可能であることに留意するべきである。しかしながら駆動モータ22が誘導要素30に固定位置で配置されている場合、駆動モータ22の動力は、動力伝達装置、例えば自由自在な軸を用いて工具ホルダ24に伝達され得るであろう。
【0106】
ベアリング装置40は深さ調節ベアリング36を含み、その深さ調節ベアリングをもって、工具ホルダ24は少なくとも2つの深い調節位置の間で誘導面31に対して調節可能である。本件において深さ調節ベアリング36は、例えば作業方向において前方の又は作業方向において後方の旋回ベアリングを含む。例えば手持ち式工作機械20は丸鋸の様式に構成されている。駆動ユニット29を深さ調節ベアリング36の深さ調節軸Tの周りで旋回することにより工具ホルダ24を調節する際に、工具ホルダ24は例えば、作業工具25が誘導面31の前に張り出ていない、上の深さ調節位置から、及び少なくとも1つの下の深さ調節位置から、好ましくは、作業工具25が誘導面31の前に張り出ている、複数の下の深さ調節位置から調節可能であってもよい。しかし旋回ベアリングの代わりに、また深さ調節ベアリング36を与えるために滑りベアリング又は滑りベアリング装置が設けられてもよいであろう。
【0107】
さらに、工具ホルダ24を、従って場合により工具ホルダ24にある作業工具25を、作業方向ARに対して平行に及び/又は誘導要素30の長手側面35に対して平行に延びている留め軸Gの周りで旋回させることができる。従って部材Bへの斜め切断が容易に可能である。留めベアリング37は例えば、作業方向ARにおいて工具ホルダ24、特に作業工具25の前後に配置されている2つの部分的留めベアリング37A、37Bを含む。本件では深さ調節ベアリング36及び留めベアリング37は手で操作されるものである。例えばそれらのベアリングは、それ自体は周知のように固定要素を含み、それらの固定要素は、深さ調節軸T及び/又は留め軸Gに関して駆動ユニット29を誘導要素30に対して調節するために取り外される。
【0108】
しかしながらベアリング装置40はさらに、手により調節され得ないモータ駆動式のベアリングを含む。その際、様々なベアリング設計が
図6~12に示されており、それらは以下に例として説明される:
図6、7及び8による実施例のベアリング装置40は、例えば作業方向ARにおいて工具ホルダ24の前後に配置されているリニアベアリング41、42を含む。リニアベアリング41、42は旋回ベアリング43、44を用いて駆動ユニット29と結合されている。回転ベアリング43は駆動ユニット29と直接、例えば機械筐体21と結合されている。これとは異なり回転ベアリング44は別のリニアベアリング45を用いて駆動ユニット29と結合されている。回転ベアリング43、44は回転軸D1及びD2を有する。
【0109】
リニアベアリング41、42はそれぞれベアリング要素46を有する。そのベアリング要素はベアリング収容部47に直線状に、リニアベアリング41では調節軸L1に沿って、リニアベアリング42では調節軸L2に沿って移動可能である。
【0110】
ベアリング収容部47は回転可能なベアリング台又はローラ48を含み、それらの間に竿形の又は棒形のベアリング要素46が収容されている。当然、誘導溝、滑り収容部等が直線状である輪郭もベアリング収容部47として設定されてもよいであろう。図面はここでは例示的なものと解釈されるべきである。
【0111】
リニアベアリング42のベアリング要素46は回転ベアリング44を用いてリニアベアリング45のベアリング要素46と回転可能に結合されている。回転ベアリング44は、リニアベアリング42、45のベアリング要素46の各々の長手端領域若しくは自由端領域に設けられており、ベアリング要素46を旋回運動可能に結合する。
【0112】
リニアベアリング45は、そのベアリング要素46を調節軸L3に沿って滑り運動可能である。ベアリング軸L3は作業方向ARに対して実質的に平行であるが、作業方向ARに対するその向き若しくは角度位置は変化することができ、それは以下で明らかになる。
【0113】
誘導要素30に対する工具ホルダ24の相対位置は、ベアリング装置40を用いて、調節旋回軸Sの周りにも、その調節旋回軸に対して横手方向にも、つまり工具ホルダ24の回転軸Dに対して実質的に平行に及び/又は作業方向ARに対して横手方向に通っている運動成分K1で、有利には作業方向ARに沿って及び/又は工具ホルダ24の回転軸Dに対して直角に向けられている運動方向成分K2で調節され得る。調節旋回軸Sは、誘導面31を直角に、特に直交して通り抜ける。
【0114】
基本的にベアリング装置40は、工具ホルダ24、従って作業工具25が、例えば鋸切断を導入するために作業工具25が部材Wとそれに沿って噛合することなる、作業方向ARに対する及び/又は予想作業線ALに関するその整列を保持するように、制御装置60がサーボモータ51、52を備えたサーボモータ50を制御し得るように構成されている。
【0115】
サーボモータ51、52は、リニアベアリング41、42に配置されている。例えばサーボモータ51、52は、リニアベアリング41、42のベアリング要素46駆動する。ベアリング要素46が例えばサーボモータ51、52の出力軸により形成されていることがあり得る。従って、リニアベアリング41、42がサーボモータ51、52の部品であることもあり得る。
【0116】
制御装置60が、リニアベアリング41、42のベアリング要素46を同時に且つ同速度で推進するようにサーボモータ51、52を制御する際、調節旋回軸Sに関する工具ホルダ24の角度位置は保持されたままである。それにより例えば作業工具25は、
図6において実線で示される調節位置SP1と
図6において破線で示される調節位置SP2との間で平行に調節される。平行調節のような、誘導要素30の長手側面35が作業線ALに対して平行に通っている場合のみでなく、
図7及び8に示される回転軸Dに関する誘導要素30の旋回位置及び/又は作業工具25の平坦面26の調節も、可能である。
【0117】
しかしサーボモータ装置50は制御装置60によりその上、回転軸Dが、調節旋回軸Sに対するその旋回位置を変動させて、特に
図7及び8において明らかであるように予想作業線ALに対する作業工具25及び/又は工具ホルダ24の整列を保持するように制御され得る。その際、例えば、誘導平面又は誘導面31を直角に通り抜ける調節旋回軸Sに対する調節軸L1、L2の角度位置が変動する。ここでサーボモータ51、52が、作業工具25若しくは工具ホルダ24を例示された2つの位置の間で平行に移動させる又は調節する際に、調節旋回軸Sが誘導要素30に対して固定位置になく、誘導面31内において例えば運動成分K1で調節されることに留意するべきである。
【0118】
図7及び8では調節軸L1、L2は調節旋回軸Sを中心にして反時計回りに(
図7)若しくは時計回りに(
図8)に調節されている。リニアベアリング46の調節軸L3は、平坦面26に対して平行なその位置若しくは工具ホルダ24の回転軸Dに対して直角なその位置を保つ。
【0119】
従ってこれらの装置は特に重要である。なぜなら操作者が言わば部材Wに対して手持ち式工作機械20の押出遂行し、要するにこの手持ち式工作機械を予想作業線に沿って押し出し又は引き戻し、その際、操作者が部材Wに対して誘導要素30を作業方向ARに又は少なくとも作業方向ARに関する方向成分で調節する、例えば押し出す又は引き戻す際に、操作者は事によると予想作業線ALに対する誘導要素30の角度位置を保持することができないからである。そのために操作者は例えば作動取手39、特に握りを用いて手持ち式工作機械を掴むことができる。作動取手39は好ましくは誘導要素30に、特にその作業方向ARにおいて後方の領域に、例えば横手側面33に又はその近傍に配置されている。
【0120】
操作の際の不正確さのために、要するに操作者は、手持ち式工作機械20を予想作業線ALに対して平行な方向成分で押し出す又は調節する際に、誘導要素30の相対位置を、理想的には正確に予想作業線ALに沿ってのみばかりでなく、
図7及び
図8に示されているように意図せずにその予想作業線に対して角度を成して調節する。けれども制御装置60は作業工具25を言わば走路上に保つ、即ち、作業工具は予想作業線ALに対するその整列を離れず、操作者により、必要であれば運動方向成分で作業方向ARに沿って調節され得る。
【0121】
代わりの設計は、
図9~11によるベアリング装置140で実現されている。ベアリング装置140では、ベアリング装置40から知られている同じ又は同様な構成部品は、同じ又は類似の参照番号を備えている。
【0122】
ベアリング装置140は、作業方向ARにおいて前方のリニアベアリング141と作業方向ARにおいて後方のリニアベアリング142を含む。それらの調節軸L1及びL2は、作業方向ARに対して横手方向に、好ましくは少なくとも1つの位置においてほぼ直角の横手方向に通っている。
【0123】
リニアベアリング141は、リニアベアリング41に対応し、回転軸D1を有する駆動ユニット29を備えた回転ベアリング43と、従って工具ホルダ24と旋回可能に結合されている。
【0124】
これとは異なりリニアベアリング142は、回転ベアリング144を介して駆動ユニット29、従って工具ホルダ24と回転結合されている。回転ベアリング144は、リニアベアリング142のベアリング要素の自由端領域に配置されており、このリニアベアリングを駆動ユニット29と旋回運動可能に又は回転運動可能に結合させる。回転ベアリング144は回転軸D2を有する。
【0125】
但し、リニアベアリング142のベアリング収容部47は、リニアベアリング42に該当するように誘導要素30に固定位置で配置されておらず、回転ベアリング145を用いて旋回運動可能に配置されている。回転ベアリング145は、ベアリング収容部47も、リニアベアリング142のベアリング要素46を駆動させるために設けられているサーボモータ52も、誘導面31又は誘導平面を直交して通り抜ける旋回軸又は回転軸D3の周りで旋回運動可能である。ここでは、また旋回ベアリング43、44、144及び145の回転軸D1、D2又は旋回軸も、誘導面又は誘導平面31を直交して通り抜けることに留意するべきである。
【0126】
回転ベアリング143、144は、回転ベアリング42、44と同様に、誘導面31を垂直に又はほぼ垂直に通り抜ける回転軸D1及びD2を有する。
【0127】
ベアリング装置40はその上2つの回転ベアリングと3つのリニアベアリングとを含む。これとは異なりベアリング装置140は2つのみのリニアベアリングを、しかしながら3つの回転ベアリングを含む。両方の場合において、調節旋回軸Sに対する工具ホルダ24の平行調節が可能である。回転ベアリング43、44は、誘導面又は誘導平面31を垂直に又はほぼ垂直に通り抜けるベアリング軸D1及びD2を有する。
【0128】
図9、10及び11において、ベアリング装置140でも制御装置60が、誘導要素30及び工具ホルダ24を運動方向成分K1及び/又はK2のうちの1つ又は両方で相対的に調節する際に、特に工具ホルダ24に対して誘導要素30を調節する際に、誘導要素30に対する工具ホルダ24及び作業工具25の旋回位置を容易に保持し得ることがわかる。作業工具25は、予想作業線ALに対して常に最適に整列されたままであるので、例えばその作業工具は例えば、部材Wに鋸で入れらる切り口において傾きを誤ることがない。
【0129】
図12には別のベアリング設計が、つまりベアリング装置240を用いて示されている。ベアリング装置240では、3つの回転ベアリング243、244及び245が設けられている。回転ベアリング243、244は、作業方向ARに関して駆動ユニット29及び/又は工具ホルダ24の前後に配置されている。
【0130】
駆動ユニット29は、回転ベアリング243、244と偏心で結合されている、つまり回転ベアリング243、244に対するその連結位置D12及びD22が回転ベアリング243、244の回転軸D11及びD21に対して偏心度E1及びE2を有する、結合要素246を用いて結合されている。
【0131】
実施例では、結合要素246は、回転ベアリング243又は244との間、作業方向において前方の駆動ユニット29若しくは工具ホルダ24と間は固く結合されているので、この結合要素は偏心E1で回転軸D1の周りに旋回する。これとは異なり別の回転ベアリング246は、駆動ユニット29、従って工具ホルダ24と回転運動可能に、つまり回転ベアリング又は旋回ベアリング245を用いて結合されている。回転ベアリング245は回転軸D31を有する。
【0132】
回転ベアリング243、244はサーボモータ装置250により駆動されている。例えばサーボモータ装置250は、回転モータ又は回転駆動機として構成された調節駆動機又はサーボモータ251、252を含み、それらを用いて回転ベアリング要素、従って結合要素246は、回転又は旋回駆動されている又は駆動され得る。調節駆動機251、252は、既に説明された方法で、有利には制御装置60により例えば無線で又は有線で制御される。
【0133】
またベアリング装置240は、制御装置60により、作業工具25の調節駆動機251、252を適切に制御することにより作業工具25を調節旋回軸Sの周りで旋回させるために、各々の調節旋回軸Sに関する旋回位置又は旋回位置を保持しながら運動方向成分K1で、好ましくはK2でもその作業工具を誘導要素30に対して調節することを可能にする。
図12において作業工具25が調節旋回軸Sの周りで旋回されていることが示されているが、この調節により誘導要素30が回転軸D若しくは工具ホルダ24に対するその相対位置を変更することがわかる。これは、誘導要素30が操作者により予想作業線ALに対して旋回される際に作業工具25が予想作業線ALと一直線上に保たれることに役立つ。
【0134】
サーボモータ装置50及びベアリング装置40並びに代わりのベアリング装置140、240及び代わりのサーボモータ装置250を備えた手持ち式工作機械20に設けられた調節機構は、部分的に自動化された部材加工に、特に部分的に自動化された鋸動作に適している。その際、操作者は予想作業線ALに沿った鋸切断を実行するために、手持ち式工作機械20を単に作業方向ARに又は作業方向ARとは反対に部材Wに沿って誘導する。このほぼ自動化された鋸動作又はほぼ自動化された部材加工に対しても、手持ち式工作機械20がサーボモータ装置50、250の共作用なしに又はその存在なしに動作される、つまり操作者が手持ち式工作機械20を手動で予想作業線ALに沿って誘導することによる、部材加工に対しても、予想作業線ALの固定が実際に簡易化されている以下に記載される方法は適している。
【0135】
部材Wは例えば作業空間R内に配置されている、
図1を参照。部材Wは予想作業線ALに沿って加工されるとする。例えば部材部分W1は部材部分W2から分離されるとする。真っ直ぐな鋸切断を実行するために、従来技術に従って上側の部材平坦面WOの上に誘導棒又は誘導レールを載せるであろう。その誘導レールに沿って手持ち式工作機械20が誘導され得る。それは、手持ち式工作機械20を用いて、例えば誘導面31に存在する詳説されていない、同様に不図示の誘導レールへの嵌合のための誘導輪郭を用いて、容易に可能であるが、以下に説明される原理では必ずしも必要ではない。
【0136】
例えば、互いに対して間隔を有しており且つ予想作業線AL、本件では直線がその間に延びることになる、部材標識M1及びM2は予想作業線ALを取得するのに十分である。例えば部材標識M1及びM2として線標識又は点標識が上側の平坦面WOに設けられている。その下面、下側の閉端面WUをもって部材は、例えば地面の上に、特に作業台、支え台等の上にある。作業線ALは、部材前面WSから始まり反対側の部材前面まで、部材長手面WLRとWLLとの間で通り抜けることになる。
【0137】
しかしながら操作者は、真っ直ぐな予想作業線ALを言わば見出す又は工学的に追跡するために、部材標識M1とM2との間に結合線を描き込むことを全く必要とせず、以下に説明される標識検出装置70を必要とする。標識検出装置は、ピン状に構成されている標識受容体71を含む。操作者は標識受容体71を手で掴むことでき、それは
図1に概略的に示される操作者の手Hで示されている。
【0138】
標識受容体71は先端又はその長手端領域の形の機械的な照合体72を有し、操作者は、照合体72を各々の部材標識M1、M2に又はその上に位置決めすることにより、その照合体を逐次、部材標識M1及び部材標識M2と合致させる。
【0139】
標識検出装置70は、部材標識M1、M2の各々の位置、つまり作業空間R内に張られている少なくとも2次元の座標系KR2に関するその座標データKD1及びKD2を検出する。座標系KR2は例えば部材平坦面WOに対して平行に延びている場合がある。座標データKD1及びKD2は例えば座標系KR2の座標軸kx、kyに関するそれぞれ値を、任意選択で座標系KR3の座標軸kzに関する値を含む。座標系KR3は3次元の座標系である。
【0140】
座標系KR2及びKR3は、例えば作業空間ARに対して固定位置にある。しかし座標系KR2及びKR3は、別の実施例でも部材Wに対して固定値にあり得る。
【0141】
しかしながら3次元座標検出が好ましい、つまり、標識検出装置70が座標データKD1及びKD2を3次元座標データとして検出することが好ましい。
【0142】
2次元座標系K2は例えば座標軸kx及びkyを含み、3次元座標系KR3は追加で座標軸kzも含む。座標軸kx、ky及びkzは好ましくは互いに対して直角である。例えば座標軸kx及びkyは部材Wの平坦面WOに対して平行に延びているのに対し、座標軸kzはそれらの軸に対して直角である、言わば平坦面WOを通る法線を作成する。
【0143】
当然、座標系KR2及びKR3は、また別の方法で作業空間Rに関して方位決定されてもよい。しかしながら図面で示される実施例では、例えば座標供与体80、81を平坦面WOの真上に設置することができ、そのため座標供与体80、81が座標軸kzに対して同じ位置を有するので、説明された座標系KR2又はKR3の方位決定が有利である。
【0144】
当然、
図14、15に該当するように、座標供与体80、81を任意に他の方法でも作業空間R内に配置することができる。特にこの場合、しかし部材平坦面WO上に配置する際にも、座標供与体80、81のうちの少なくとも1つが、3次元座標系KR3を与えるように構成されている及び/又は用いられ得ることは有利である。
【0145】
座標供与体80、81を、例えば調節面82が設けられているその下側で、部材平坦面WO上に止め置くことができる。従って座標供与体80、81の筐体85内に配置されている座標送信器84の位置は、相対的に、筐体85に設けられた調節面82に対して、事前に知られているので、座標軸kz自体は、重要である必要はないが、どうしても以下の考察に組み込まれ得る。
【0146】
調節面82に又はそれに加えて、以下に説明されるように座標データKD1、KD2が取得される際に各々の座標供与体80、81の部材Wでの保持をより良くするために、固定手段83、例えば粘着固定手段83A、例えばゴム被膜及び/又は吸引固定手段86、例えば吸引ヘッド等が設けられてもよい。座標供与体80、81の座標送信器84は、照合情報RX及びRY、例えば、互いに対して角度を成している例えば直角である線の模様を送信する。座標送信器84が逐次又は同時に各々の線模様若しくは照合情報RX及びRYを送信することもあり得る。照合情報RX及びRYは、座標データKD1、KD2を3次元で、即ち3次元座標系KR3に関して取得するのに適している。しかしながらその上、座標系送信器84が例えば、2次元座標系KR2に関する2次元の方位決定を可能にする照合情報RXのみを送信することもあり得る。照合情報RXは例えば、座標軸kzに対して延びており且つ座標軸kx及び/又はkyに関して横に並べて配置されている線を含む。例えば座標送信器84は、照合情報RX及び/又はRYの線を逐次又は同時に送信する。
【0147】
座標供与体80、81は距離をおいて部材Wに配置されている。それにより、標識検出装置70は三角測量を用いて、座標系KR2及び/又はKR3におけるその各々の位置を取得することができる。しかしながら空間的に離間した照合情報RX及びRYを用いて、座標供与体80又は81のうちの1つが存在することで十分である。
【0148】
照合情報RX及びRYは、例えば光信号、マイクロ波等他の非接触式の伝送可能な照合情報である。光信号は不可視領域、例えば赤外線領域又は紫外線領域内のものであってもよい。いずれにせよ、標識検出装置70は、座標データKD1及びKD2を取得するために少なくとも1つの座標供与体80及び/又は81を用いて座標系KR2、KR3に関するその各々の位置を言わば測定及び/又は取得することができる。
【0149】
標識検出装置70には、少なくとも1つのセンサ73、好ましくは複数のセンサ73を有する装置が配置されている。
【0150】
センサ73は、例えば照合体72から離れた標識受容体71の長手方向領域に配置されている。
【0151】
センサ73は適宜、互いに対する間隔を有するので、センサ73のうちの少なくとも1つがそれぞれ、照合情報RX及び/又はRYを受信することができる。センサ73を、互いに対して間隔をおいて標識受容体71に配置することにより、三角測量を行うことができる、又は座標供与体80、81のうちの1つしか存在しない場合でも、座標KD1、KD2を別の方法で空間的に測定することができる。
【0152】
標識検出装置70は適宜、座標データKD1、KD2を与えるための少なくとも1つのセンサ73に対する照合体71の位置的関係を取得するために、傾きセンサ79を有する。
【0153】
標識検出装置70は、少なくとも1つの始動条件に応じて座標データKD1、KD2を取得することができる。即ち、例えば標識受容体71にスイッチ75、特に電気的圧力スイッチ、電気スイッチ、好ましくは圧力スイッチ等が設けられてもよい。スイッチ75として容量性センサ又は他の手作動可能なセンサも適している。操作者がスイッチ75を作動させる際、標識検出装置70は各々の照合体72の位置を示し、このようにして座標データKD1及び/又はKD2を取得する。
【0154】
それに代わりに又はそれに補足して始動条件として時間的条件も適している。操作者が例えば照合体72を所定の時間にわたり、例えば10秒以上にわたり部材標識M1又はM2を保持する場合、これは、標識検出装置70から座標データKD1又はKD2を取得するための始動条件として解釈される。部材標識M1又はM2のうちの1つでの照合体72の所定の滞留時間を取得するために、標識検出装置70は例えば運動センサ77を有する。
【0155】
また、標識検出装置が距離計測に基づいて、つまり距離センサ76、例えば光学センサを用いて、部材標識M1又はM2での照合体72の合致若しくは空間的配置を取得することもあり得る。例えば部材標識M1又はM2は、平坦面WOでの部材表面と比較してコントラストを有する光学的方法で検出可能な部材標識である。
【0156】
標識検出装置70は、座標データKD1及びKD2を検出した場合、これらの座標データを例えば送信器74を用いて手持ち式工作機械20に伝達することができる。本発明の実施形態は、標識検出装置70を保持するための保持収容部38、例えば差込収容部が手持ち式工作機械20に設けられていることを設定し得る。例えばこの標識検出装置を保持収容部38に差し込むことができる。
【0157】
標識検出装置70はその送信器74を用いて無線等で、手持ち式工作機械20のインターフェース、例えばブルートゥースインターフェース、USBインターフェース、I2Cインターフェース等に座標データKD1及びKD2を送信する。インターフェース64及び座標送信器84はそのために、例えばUSBバスインターフェース、I2Cバスインターフェース、WLANインターフェース、ブルートゥースバスインターフェース等を有する。インターフェース64は例えば保持収容部38内にあり得る。しかし保持収容部38は必要ではない、即ち座標データKD1、KD2を伝達するために標識検出装置70を必ずしも手持ち式工作機械20に取り付ける必要はない。
【0158】
制御装置60はプロセッサ61とメモリ62とを有する。メモリ62内には、例えばプロセッサ61により実行可能なプログラムコードを含む制御プログラム63が保存されている。制御プログラム63は、作業空間内の座標データKD1及びKD2に応じて手持ち式工作機械20を本件では予想作業線ALに沿って誘導するための誘導手段65を形成する。
【0159】
誘導手段65は、例えば、座標軸kx、ky及びkzに関する部分座標をそれぞれ含んでいる座標データKD1、KD2を読み取る。示される幾何学形状からそれ自体は周知の方法に基づいて、誘導手段65は、座標データKD1及びKD2を用いて作業線ALを表す作業領域データADを取得する、好ましくはメモリ62に保存することができる。作業領域データADを取得するために、誘導手段65は例えば座標データKD1とKD2との間のベクトル差を形成する。
【0160】
続いて、誘導手段65は、手持ち式工作機械20を作業線ALに沿って誘導する。その際、作業工具25が作業線ALに沿って移動するようにサーボモータ装置50が制御される。またここで、手持ち式工作機械20、特に誘導手段65が座標系KR2又はKR3に向けられていることは有利である。そのためには、座標供与体80及び/又は82が有利である。例えば手持ち式工作機械20に、照合情報RX及び/又はRYを受信するためにセンサ66、特に多数の又は少なくとも2つのセンサ66が設けられている。従って、手持ち式工作機械は作業空間内の、特に予想作業線ALに対するその位置を常時取得することができる。
【0161】
センサ66は、作業空間Rにおいて及び/又は座標系KR2及び/又はKR3に関して方位を決定するための手持ち式工作機械20の方位決定手段67の構成部品を成す。
【0162】
標識検出装置70はセンサ67の形で方位決定手段78を有し、それらの方位決定手段をもって、座標系KR2、KR3に関して標識検出装置の方位を決定することができる。
【0163】
誘導手段65は、予想作業線ALに対する作業領域データADを取得する、例えば作業線ALを表す直線及び座標軸kx及びky、任意選択でkzに関する別の走行線に対する開始点を取得する。
【0164】
しかし当然直線状の作業領域の代わりに、部材Wのフライス加工用の2次元の又は平坦な作業領域も上述の方法で取得することができる。即ち、例えば別の部材標識M3を標識検出装置70により検出することができる。部材標識M1、M2及びM3は例えば、その面が本発明の手持ち式工作機械により研磨される又はフライス加工されることになる、三角形の隅点に設けられている。標識検出装置70は上記の方法で例えば、M1、M2及びM3の部材標識の座標データKD1、KD2、KD3を取得し、これらのデータ又は部材標識M1、M2及びM3により定義された面内にある作業領域ABを既に定義している作業領域データAD2を手持ち式工作機械20に伝送する。また制御装置60自体が例えば制御プログラム63を用いて、作業領域ABを定義する作業領域データAD2を取得することもあり得る。
【0165】
最後に作業領域データADは必ずしも直線を呈示する必要はない。即ち、特に本発明の手持ち式工作機械が細帯鋸として構成されている場合、屈曲及び湾曲を有する走行線も可能である。即ち、例えば部材Wにおいて、部材標識M1から部材標識M4にわたり部材標識M2まで延びる予想作業線AL2を鋸で挽くことができ得る。標識受容体71は部材標識M1、M4及びM2に配置され得るので、その照合体72は部材標識M1、M4及びM2の各々の座標データを検出する。誘導手段65及び/又は標識検出装置70は次に、手持ち式工作機械20を誘導するための予想作業線AL2として、例えば部材標識M1、M4及びM2により定義されている円弧形の線又は三角線を与えることができる。
【0166】
操作者は手持ち式工作機械70を誘導する際に好ましくは手持ち式工作機械の光学的表示、特に表示装置55により補助される。この表示装置は
図5に概略的に示されている。表示装置55は例えば手持ち式工作機械20の誘導面31に背く面に、特に上面に配置されているので、表示装置は操作者にとって容易に見えるものである。表示装置55は、好ましくはサーボモータ装置50により調節可能な調節領域SB、言わば回廊又はウインドを示し、その内部では作業工具25がサーボモータ装置50により維持されるべき予想作業線ALに対して調節され得る。
【0167】
操作者は加えてさらに表示装置55で有利な情報を得る、例えば作業工具25の実際位置を表示する実際表示IP及び/又は理想線、予想作業線ALからの誘導要素30のずれを表示するずれ表示IAを得る。表示IA及びIPは適宜、線形状のものである。
【0168】
例えば
図5において、手持ち式工作機械20の部材Wに対して左の位置では表示IA及びIPが互いに対して平行であるが、ずれを有し、手持ち式工作機械20の中央右の図では標識又は表示IA及びIPが互いに対して異なる角度間隔及び横手間隔を有することがわかる。それから操作者は、サーボモータ装置50の言わば作業を容易にするために、どのように手持ち式工作機械20を予想作業線ALに対して最適に押し出すべきであるのか又はどの角度で調節するべきであるのかがわかる。
【0169】
出力方向56又は出力装置56の部品を示す表示装置55の代わりに又はその補足で、例えば指示灯57A、57Bが設けられてもよい。それらの指示灯は、手持ち式工作機械20を予想作業線ALの領域内で又は予想作業千ALに沿って最適に誘導しているのかを、有色光、例えば赤及び緑及び/又は光学的記号(矢印等)で操作者に知らせる。
【0170】
さらに音響通知も重要であり得る。即ち、出力装置56は例えば拡声器58を有する。その拡声器は、サーボモータ50により調節可能な調節領域から離れるように誘導要素30を誘導していることを操作者に音響で、例えば警告音により知らせる。
【0171】
上述の光学的表示IA及びIP及び/又は指示灯57A、57Bは、その上サーボモータ装置50、150を用いずに、手持ち式工作機械20を予想作業線ALに沿って誘導する際に利用され得る。この表示装置を用いて操作者はつまり、予想作業線ALを維持するために、どのように手持ち式工作機械20を誘導しなければならないのかという指示を得る。
【0172】
工具標識M1、M2検出するための別のセンサ設計は、
図4によるシステム110を用いて示されている。標識検出装置170は、標識検出装置70と同様に、手持ち式工作機械20から分離した、動力のない、従って携帯式の且つ容易に操作可能な部品である。標識検出装置70の標識受容体171は筐体176を有し、その筐体は、例えばその長手側面等で、例えば機械的照合体として部材標識M1又はM2の一方又は両方に直接付着され得たであろう。しかしながら本件では、光学的照合体172、つまり光線が光供与体173から出力されるという光学的設計が実現されている。光供与体173は例えば、操作者が部材標識M1及びM2に向けるレーザ光線等を含む。
【0173】
標識検出装置171はさらにカメラ175と、カメラ175を用いて取得可能な座標データKD1及びKD2用の送信機174とを有する。例えばカメラ175は一方では、言わば光学的又は機械的な座標供与体180に対する部材標識M1、M2を検出する。
【0174】
座標供与体180は、例えば作業線ALに沿って又は作業線ALの横に操作者により部材Wに配置され得る面181、特に帯を含む。面181には、はっきりとした模様の識別子182が設けられており、標識検出装置170がその面に向けられ得る。識別子182は例えば不均一な分散の賽子模様等を含む。座標供与体180は、例えば部材前面WSに固定され得る固定手段183、特に鉤を用いて、部材Wに固定され得る。当然、面181はその上、別の粘着物の押さえ付け等に基づいて平坦面WOに付着し得る膜又は壁等により形成されてもよい。従って標識検出装置170はカメラ174を用いて、座標供与体180に対する部材標識M1及びM2を検出し、これを適宜、表示装置175にも示す。例えば標識検出装置70は、一方で部材標識M1、M2と他方で座標供与体180との間の間隔を用いて座標データKD1及びKD2を取得し、その座標送信器174を用いて手持ち式工作機械20のインターフェース64に伝達する。
【0175】
手持ち式工作機械20は、座標供与体180で方位を決定するための方位決定手段167、例えばカメラ166を有する。制御装置60は、例えば予想作業線ALを遵守するためのサーボモータ装置50を制御し、その際カメラ166若しくは方位決定手段167からのデータを評価する。
【0176】
さらに、単一の部材標識、例えば加工されるべき作業領域用の出発点を定義する部材標識M1のみが取得されることがあり得る。この場合さらに部材標識M1の方位、例えば予想作業線ALに関する方向成分が知られている場合、標識検出装置70及び/又は制御装置60のこれらの情報は予想作業線ALを取得するのに十分である。
【0177】
さらに、例えば、作業領域、例えば作業線ALの走行線及び/又は長さ、作業領域ABの幾何学形状等を定義するCADプログラムにより、事前設定データVO、特にCADデータを例えばコンピュータ11に前もって保存する又は作成することができる。この作業領域、例えば作業線又は加工されるべき平面を、部材W上に言わば配置する又は位置決めするために、操作者は標識検出装置70を用いて例えば部材標識M1を示し、その座標データKD1を手持ち式工作機械20に伝送することができる。この手持ち式工作機械は、事前設定データVOを受信する受信インターフェース69を有する。事前設定データVOと部材標識M1の座標データKD1とを用いて、例えば予想作業線AL又はAL2、その上平坦領域ABが定義されてもよい。制御プログラム63は、例えば事前設定データVOと座標データKD1とを用いて作業領域データADを取得する。
【0178】
これまでの実施例では、少なくとも1つの部材標識M1、M2を検出した後に部材Wが2次元又は3次元の座標系KR2又はKR3に関してその場に留まることを考えた。しかしまた、部材標識(複数可)の検出と部材加工との間に部材Wが移動することもあり得る。それは
図14及び15による実施例に詳説される。
【0179】
即ち、例えば、標識検出装置70を用いてまず2つの部材標識M1及びM2を検出し、次に部材Wを座標供与体80、81に関する別の位置に持ち込むことがあり得る。それらの座標供与体は、好ましくは作業空間R内で自由に配置されているが、いずれにせよ、先行する実施例の場合のように加工されるべき部材Wに置かれてはいない。従って部材標識M1及びM2は、言わば部材Wとは全く無関係の2次元又は3次元の座標系に関連している。
【0180】
ここで、例えば同様に作業空間R内に自由に配置されているカメラ90を用いて、部材標識M1及びM2を検出した後に部材Wの部材運動が言わば追跡され得ることもあり得る。カメラ90は例えば手持ち式工作機械20に、部材標識M1及びM2を検出する際に部材Wの位置を特徴付ける部材Wの座標データを伝送する。
【0181】
カメラ90は、例えば無線又は有線の送信機91を用いてインターフェース64に部材Wの座標データを、つまり
図14に示される部材標識M1及びM2の検出の間に部材位置データWP1を送信する。
【0182】
続いて部材Wを移動させる、例えば作業線ALに対して平行な軸を中心にその部材を旋回させることで、平坦面WUが言わば上方に来て(
図15)、部材Wが加工位置BPを占める際、カメラ90は再び部材Wの座標データ、つまり部材位置データWP2を取得し、カメラ90はそのデータを再び手持ち式工作機械20のインターフェース64に発信する。
【0183】
制御プログラム63は、
図15に対応して部材標識M1及びM2を検出する際の及び手持ち式工作機械により加工する直前の部材W1の位置に基づいてカメラ90が取得する、部材標識M1及びM2の座標データKD1及びKD2及び部材位置データWP1、WP2を用いて、作業領域データADを取得することができる。例えば制御プログラム3は部材位置データWP2とWP1との間の差を形成し、その差から得られた対応する追跡データVDを有する座標データKD1、KD2を変換する。
【0184】
当然、カメラ90は、部材位置データWP1及びWP2を越えて、追跡データVDに含まれる他の部材位置データを、例えば加工位置BPへの部材Wの移動の間に伝送することができる。
【0185】
カメラ90は有利には立体カメラであり、その立体カメラは、立体的に、従って空間的に作業空間R内の部材Wの位置を取得するために、対物レンズ及びセンサ92、93の2つの組み合わせを有する。好ましくはカメラ90は、例えば帯模様又は他の識別模様又は起伏模様を投影するためのプロジェクタ94も有する。従ってカメラは例えば部材Wの3次元画像を取得することができる。
【0186】
ここで、当然、手持ち式工作機械の誘導もカメラ90との相互作用で行われ得る、つまり作業工具25を予想作業線ALに沿って誘導するために、例えば誘導手段65がカメラ90から、座標系KR2又はKR3に対する手持ち式工作機械の各々の相対位置を受信することも補足しなければならない。
【0187】
カメラ90は、例えば座標系KR2又はKR3に対する部材W及び/又は手持ち式工作機械20の座標データを取得し得る座標検出装置95を形成する。
【0188】
座標検出又は位置検出は、例えば手持ち式工作機械20に1つ又は複数の装置照合標識68が配置されている及び/又は部材Wに1つ又は複数の部材位置照合標識98が配置されていることにより簡易化されてもよい。
【0189】
装置照合標識68は好ましくは比較的大きな間隔で手持ち式工作機械20に、例えば互いに対して反対側に置かれる機械筐体29の末端に配置されている。装置照合標識68は例えばカメラ90により取得可能な反射標識、コントラスト標識等を含む。
【0190】
例えば座標供与体180は部材位置照合標識として適している。また部材位置照合標識として、3次元標識、例えば以下に説明される部材位置検出装置97の基体又は筐体が設定されてもよい。カメラ90はそれらの基体又は筐体の位置を、言わば
図14に示される位置において及び
図15による加工位置BPにおいて取得し得る。
【0191】
部材位置検出装置97A、97Bは例えば固定手段197、例えば粘着手段、特に接着要素、吸引ヘッド等を用いて、部材Wに取り外し可能に固定され得る。部材位置検出装置97Aは例えば平坦面WOに配置され、部材位置検出装置97Bは平坦面WUに配置されている。
【0192】
部材位置検出装置97A、97Bが言わば能動的にその各々の位置、従って作業空間内の部材Wの位置を検出するという設計は目的に適っている。部材位置検出装置97A、97Bは、例えば座標供与体80、81の照合情報RX及び/又はRYを受信するためのセンサ99を有する。従って部材位置検出装置97A、97Bは、部材標識M1、M2(
図14)及び手持ち式工作機械20により加工するために設けられた加工位置BP(
図15)を検出する際の部材Wの各々の位置をもって、対応する部材位置データWP1、WP2を制御装置60に、例えばインターフェース64を介して無線で又は有線で伝送することができる。その際、それらの部材位置検出装置は、例えば有線で及び/又は無線で伝送する送信器100を有する。
【0193】
制御装置60は、部材位置データWP1、WP2を用いて例えば追跡データVDを取得して、この追跡データVDと部材標識M1、M2の座標データKD1、KD2とを用いて、上方に回転された平坦面WUの真上にある予想作業線ALを取得することができる。
【0194】
図17に示されるシステム310では、手持ち式工作機械20は1つ又は複数のカメラ366,367を有する。少なくとも1つのカメラ366、367は、例えば検出位置又は計測位置PMにおいてまず部材標識を検出することができる。部材標識は、例えば部材標識M1の様式の光学的な部材標識、例えば鉛筆標識及び/又は直線により、又は一方でこの場合は機械的照合体35Aを与える又は形成する誘導要素30の長手側面35と部材長手側面WLRとの間の所望の間隔により定められる。部材標識の検出の間、駆動モータ22は切電されている。従って手持ち式工作機械20は部材Wに対してその実際の位置、従って参照体35Aを検出するために最適に静止している。さらに操作は容易である。
【0195】
少なくとも1つのカメラ366は例えば誘導要素30の近くに配置されている。これとは異なりカメラ367は誘導要素30に対して離されており、例えば機械筐体21に配置されている。少なくとも1つのカメラ366、367は例えば、空間輪郭KRの検出に基づいて作業空間R内の手持ち式工作機械20の位置を検出する。このために、操作者は、駆動モータ22を始動させることなく、例えばスイッチ23をタップすることができる。しかしまた、照合位置又は少なくとも1つの部材標識M1の位置を取得するために、例えば標識検出装置70のスイッチ75の様式の特殊スイッチ375が設けられてもよい。
【0196】
空間輪郭KRは、例えば互いに対して角度を成す面F1、F2及びF3を含む。面F1、F2の間には空間内角E1があり、面F2、F3の間には空間外角E2がある。従って手持ち式工作機械20は、例えばまず部材標識M1を検出位置PMにおいて取得し、次に駆動モータ22を始動させた後、誘導装置65を用いて予想作業線ALに対して作業工具25を誘導するために、言わば空間輪郭KRを用いて作業空間AR内に向けられ得る。
【0197】
1つ又は複数のカメラ366、367及び/又はカメラ90の代わりに当然、空間輪郭KRを検出する又は例えば手持ち式工作機械20の位置を取得するのに適したリーダ、レーダ等が設けられてもよい。
【0198】
図18による実施例では、幾つかの座標及び座標系変換プロセスを説明することになる。即ち、例えば座標系KR3は作業空間Rに対して固定位置にあり、特に座標供与体80及び/又は81により言わば事前に与えられている。座標供与体80、81は作業空間内で自由に、要するに部材Wから離れたところに配置されてもよい。
標識検出装置70は、例えば局所的な3次元座標KM3を有し、その座標の座標軸mx、my及びmzは互いに対して角度を成している。照合体72の点は、この座標系KM3から例えば軸mzに対して間隔値だけ、例えば5cmだけ離れている。例えば照合体72の位置は四元数として以下の数式として表され、製図例では同時に、
図18によれば照合体72は、部材標識M2の所にある。
【0199】
Q[72]=(0,0,0,-5)
標識検出装置70に対して四元数を用いる際に、例えば、一方では照合体72若しくは部材標識M2の四元数が取得され、他方では座標系KM3の四元数が取得され、中間四元数を得るために、それらの四元数を互いに対して掛けることがあり得る。
【0200】
部材標識M2の座標データは、中間四元数に中間四元数-1(四元数の逆数)を掛けることにより生じる。
【0201】
標識受容体71若しくは標識検出装置70のセンサ73は、作業空間Rに関して場所固定の、言わば大域の座標系KR3に対する、標識検出装置70に関連する局所座標系KM3の位置を、特に座標系KR3に対する座標系KM3の並進移動を用いて取得する。さらに、センサ73又は図面には個別に示されないその評価装置は、座標系KR3に対する座標系KM3の回転を、例えば上述の数式(1)、(2)及び(3)を用いて取得することができる。従って照合体72の位置又は点、要するに本件では部材標識M2の位置又は点を座標系KR3に換算することができる。説明されたように、標識検出装置70は、しかし例えば手持ち式工作機械20の制御装置60も、部材標識M2の若しくは照合体72の位置の座標データと標識検出装置70の局所座標系KM3の方位についての少なくとも1つの情報とを得る場合、この換算を遂行することができる。
【0202】
また誘導手段65又は制御装置60は、手持ち式工作機械20に関連する局所座標系で、例えば互いに対して直角である座標軸wx、wy及びwzを有する手持ち式工作機械20に関連する座標系KW3で機能し得る。またこれらの座標軸は、例えば制御プログラム63が含み且つプロセッサ61が実行し得るプログラムコードを用いて、例えば上述の回転行列(1)、(2)及び(3)を用いて、作業空間Rに関連する大域座標KR3に換算され得る。例えば誘導要素65又は制御装置60は、作業領域AB、特に作業線ALに対して作業工具25を最適に配置する及び/又は誘導するために、例えば作業工具25の前方の切断縁の部材Wへの侵入領域EBの座標を、局所座標系KW3に関連付けることができる。
【0203】
同様に作業空間Rにおける部材Wの位置も、例えば部材位置検出装置97を用いて追跡することができ、その部材位置検出装置は同様に、作業空間Rに対して言わば移動性の、座標軸tx、ty及びtzを備えたその局所座標系KT3を有する。照合体72の若しくは部材標識M2の場所は、
図18に示される状況において標識検出装置70の局所座標系KM3に関して及び部材位置検出装置97の座標系KT3に関して知られている。
【0204】
座標系KT3上の部材標識M2の位置のみが知られており、続いて部材Wを移動する際に、部材Wの再位置決めの後に、例えばその回転及び/又は並進移動の後に、まさに部材標識M2の位置若しくは座標が関する座標系KT3の新たな位置を取得することができる。従って作業空間Rに関する大域座標系KM3に関する部材標識M2の新たな座標を取得することができる。軸を中心とする、例えばその長手軸を中心とする又は長手中央軸を中心とする部材Wの回転を、特に上述の数式(1)~(3)を用いて座標系KR3に関して追跡することができる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 部材(W)を加工するための手持ち式工作機械(20)であって、前記手持ち式工作機械は、駆動モータ(22)と、前記部材(W)を加工するための作業工具(25)用の、前記駆動モータ(22)により駆動可能な工具ホルダ(24)と、前記手持ち式工作機械(20)を前記部材(W)で作業方向(AR)に誘導するための誘導面(31)を備えた誘導要素(30)とを有し、前記工具ホルダ(24)はベアリング装置(40)を用いて前記誘導要素(30)に対して移動可能であり、サーボモータ装置(50)を用いて駆動可能であり、前記誘導要素(30)に対して前記工具ホルダ(24)を相対的に調節するための前記手持ち式工作機械(20)は、前記ベアリング装置(40)を用いて前記誘導面(31)を角度付きで、特に直角に通り抜ける少なくとも1つの調節旋回軸(S)を中心に旋回可能であり、前記手持ち式工作機械(20)は、前記サーボモータ装置(50)を制御するための制御装置(60)を有する、手持ち式工作機械であり、前記サーボモータ装置(50)を制御するために、前記サーボモータ装置(50)が前記調節旋回軸(S)に対する旋回位置を保持しながら前記誘導要素(30)の前記誘導面(31)に対して平行な運動方向成分(K1、K2)で前記誘導要素(30)に対して前記工具ホルダ(24)を前記誘導要素(30)に対して調節するように、前記制御装置(60)が構成されていることを特徴とする、手持ち式工作機械。
[2] 前記手持ち式工作機械が、前記誘導要素(30)を作業方向(AR)に又は作業方向(AR)とは反対に調節するための少なくとも1つの作動取手(39)を有し、前記サーボモータ装置(50)及び前記ベアリング装置(40)が、前記工具ホルダ(24)と前記少なくとも1つの作動取手(39)との間に配置されていることを特徴とする、[1]に記載の手持ち式工作機械。
[3] 前記作業工具(25)が、前記部材(W)へ侵入するための前記作業方向(AR)に関して前方の侵入領域(EB)を有し、前記制御装置(60)が前記サーボモータ装置(50)を制御するために、前記調節軸(S)を中心とした前記工具ホルダ(24)の旋回運動の際に及び/又は前記誘導要素(30)の前記誘導面(31)に対して平行な前記運動方向成分(K1、K2)での運動の際に、前記侵入領域(EB)が前記作業方向(AR)に対する相対位置を保持するように構成されていることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の手持ち式工作機械。
[4] 前記作業方向(AR)に対して横手方向に及び/又は前記作業方向(AR)に対して角度を成すように前記工具ホルダ(24)に対して前記誘導要素(30)を調節する際に、前記工具ホルダ(24)が前記特に直線状の作業方向(AR)に対するその相対位置を保持するように、前記誘導要素(30)に対して前記工具ホルダ(24)を調節するための前記制御装置(60)が構成されていることを特徴とする、[1]から[3]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[5] 前記工具ホルダ(24)が、前記部材(W)に設けられた部材標識(M1、M2)とは無関係の少なくとも2次元の座標系(KR2、KR3)に対してその相対位置を保持するように、前記誘導要素(30)に対する前記工具ホルダ(24)の位置を調節するための前記制御装置(60)が構成されていることを特徴とする、[1]から[4]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[6] 前記調節旋回軸(S)が、前記誘導要素(30)に対して固定位置にないことを特徴とする、[1]から[5]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[7] 前記サーボモータ装置(50)が、第1のサーボモータ(51)と第2のサーボモータ(52)とを有することを特徴とする、[1]から[6]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[8] 前記サーボモータ装置(50)が、線形駆動機のみを有することを特徴とする、[1]から[7]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[9] 前記サーボモータ装置(50)及び/又は前記ベアリング装置(40)が、特に完全に、前記誘導要素(30)の投影面内に又はその上方に、前記加工されるべき部材(W)上に配置されていることを特徴とする、[1]から[8]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[10] 前記サーボモータ装置(50)及び/又は前記ベアリング装置(40)が、側面で、前記誘導要素(30)の前記誘導面(31)の前に張り出ていないことを特徴とする、[1]から[9]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[11] 前記誘導要素(30)に対する前記工具ホルダ(24)を線形的に調節するために、特に前記作業方向(AR)に対して横手方向に前記工具ホルダ(24)を線形的に調節するために、ベアリング装置(40)が、第1のリニアベアリング(41)及び少なくとも1つの第2のリニアベアリング(42)又は第1及び第2のリニアベアリング(41、42)のみを有することを特徴とする、[1]から[10]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[12] 前記第1のリニアベアリング(41、42)及び前記第2のリニアベアリング(41、42)が、少なくとも1つの旋回位置において又は基本位置において互いに対して平行な調節軸(L1、L2)を有し、及び/又は、前記誘導要素(30)に位置固定で配置されたベアリング収容部(47)を有し、前記ベアリング収容部に、前記各々のリニアベアリング(41、42)の各々のベアリング要素(46)が線形移動可能であることを特徴とする、[11]に記載の手持ち式工作機械。
[13] 前記ベアリング装置(40)が、少なくとも2つのリニアベアリング(41、42)を有し、それらのベアリング軸が、前記作業方向(AR)に対して横手方向に向けられていることを特徴とする、[1]から[12]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[14] 前記ベアリング装置(40)が、最大で又は正確に3つの回転ベアリング(43、44、145)を有することを特徴とする、[1]から[13]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[15] 前記ベアリング装置(40)が、3つの回転ベアリング(143、144、145)及び2つのリニアベアリング(141、142)を有し、特に3つの回転ベアリング(143、144、145)及び2つのリニアベアリング(141、142)のみを有することを特徴とする、[1]から[14]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[16] 前記ベアリング装置(40)が、前記作業方向(AR)に対して前記工具ホルダ(24)の前に配置されたベアリング、特に少なくとも1つの回転ベアリング(43)及び/又は少なくとも1つのリニアベアリング(41)と、前記作業方向(AR)に対して前記工具ホルダ(24)の後ろに配置されたベアリング、特に少なくとも1つの回転ベアリング(44、145)及び/又は少なくとも1つのリニアベアリング(42)とを有することを特徴とする、[1]から[15]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[17] 前記工具ホルダ(24)が、前記駆動モータ(22)を有する前記手持ち式工作機械(20)の駆動ユニット(29)に設けられており、前記駆動ユニット(29)が、前記ベアリング装置(40)を用いて、前記誘導要素(30)に対して移動可能であることを特徴とする、[1]から[16]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[18] 前記作業工具(25)が、平らな形の切断工具(25A)、特に鋸刃である又はそれを含む、及び/又は前記駆動モータ(22)が、前記工具ホルダ(24)を回転駆動させるように配置されている及び/又は構成されていることを特徴とする、[1]から[17]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[19] 前記制御装置(60)が、前記サーボモータ装置(50)を制御するために、切断工具(25A)の平坦面(26)に対して平行な平面において、前記誘導要素(30)に対して前記切断工具(25A)を平行に調節するように構成されていることを特徴とする、[1]から[18]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[20] 前記手持ち式工作機械が、前記サーボモータ装置(50)により前記作業方向(AR)に対して横手方向に調節可能な、前記工具ホルダ(24)の及び/又は前記工具ホルダ(24)に配置された前記作業工具(25)の調節領域(SB)を表示するための表示装置(55)を有することを特徴とする、[1]から[19]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[21] 前記手持ち式工作機械が、前記サーボモータ(50)により調節された前記工具ホルダ(24)の及び/又は前記工具ホルダ(24)に配置された前記作業工具(25)の実際位置を表示するための、及び/又は、前記サーボモータ装置(50)により調節されるべき前記工具ホルダ(24)の及び/又は前記工具ホルダ(24)に配置された前記作業工具(25)の予想位置を表示するための表示装置(55)を有することを特徴とする、[1]から[20]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。
[22] 前記手持ち式工作機械が、部材(W)を加工するためのシステムの部品を形成し、前記システムが、前記部材(W)の少なくとも1つの部材標識(M1,M2)の座標データ(KD1、KD2)を検出するための標識検出装置(70)を有し、前記手持ち式工作機械(20)が、前記少なくとも1つの部材標識(M1、M2)の座標データ(KD1、KD2)に応じて前記作業工具(25)を前記部材(W)に沿って誘導するための誘導手段(65)を有し、前記標識検出装置(70)が、光学的及び/又は機械的な照合体(71)を有し、前記照合体が、前記少なくとも1つの部材標識(M1、M2)の上に及び/又は真横に配置可能であり、前記標識検出装置(70)が、前記部材標識(M1、M2)とは無関係の少なくとも2次元の座標系(KR2、KR3)に関する前記少なくとも1つの部材標識(M1、M2)の前記座標データ(KD1、KD2)を取得するように構成されており、前記手持ち式工作機械(20)の前記誘導手段(65)が、前記少なくとも1つの部材標識(M1、M2)の前記座標データ(KD1、KD2)を用いて取得されている作業領域データ(AD)により幾何学的に定義されている作業空間(AB)内の前記少なくとも2次元の座標系(KR2、KR3)に関して前記作業工具(25)を誘導することを特徴とする、[1]から[21]のうちの1項に記載の手持ち式工作機械。