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特許7163388狭幅突切り動作用の高送り突切りインサート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】狭幅突切り動作用の高送り突切りインサート
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20221024BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B23B27/14 C
B23B27/04
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020527777
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 IL2018051136
(87)【国際公開番号】W WO2019111240
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】62/594,143
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ガイ ヤーコフ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/133199(WO,A1)
【文献】特表2007-532332(JP,A)
【文献】特開2013-193134(JP,A)
【文献】特表平10-505012(JP,A)
【文献】特開2006-150584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00 - 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンク部分と、
前記シャンク部分に接続された切削部分であって、前記シャンク部分から前記切削部分に向かう切削方向と、前記切削方向とは反対の後方方向とを規定する、切削部分と、
を備える、狭幅突切りインサートにおいて、
前記切削部分は、
すくい面と、
少なくとも前記すくい面の下方に位置する支持面シート部分を備える支持面であって、下方方向が前記すくい面から前記支持面シート部分に向かうように規定される、支持面と、
前記すくい面および前記支持面に接続され、かつ前記切削部分の最前面である前方逃げ面であって、前記すくい面から下方に延在する、前方逃げ面と、
前記前方逃げ面と前記すくい面に接続された第一の側方逃げ面であって、前記前方逃げ面から後方に延在し、前記すくい面から下方に延在する、第一の側方逃げ面と、
前記前方逃げ面と前記すくい面に接続された第二の側方逃げ面であって、前記前方逃げ面から後方に延在し、前記すくい面から下方に延在する、第二の側方逃げ面と、
切削刃と、
を備え、前記切削刃は、
前記すくい面と前記前方逃げ面との交差部に形成され、ランドを有する前方サブエッジと、
前記すくい面と前記第一の側方逃げ面との交差部に形成される第一の側方サブエッジと、
前記すくい面と前記第二の側方逃げ面との交差部に形成される第二の側方サブエッジと、
前記前方サブエッジと前記第一の側方サブエッジとを接続し、第一の半径Rを有する第一の凸状コーナーサブエッジと、
前記前方サブエッジと前記第二の側方サブエッジとを接続し、第二の半径Rを有する第二の凸状コーナーサブエッジと、
を備え、
前記すくい面は、前記前方サブエッジの後方に配置され、前記前方サブエッジから下方、または下方および後方に延在するチップ形成装置を備え、
切削幅Wは、前記第一の凸状コーナーサブエッジにおいて前記第二の凸状コーナーサブエッジから前記切削方向に対して垂直な方向に最も位にある前記第一の凸状コーナーサブエッジの第一の点から、前記第二の凸状コーナーサブエッジにおいて前記第一の凸状コーナーサブエッジから前記切削方向に対して垂直な方向に最も位にある前記第二の凸状コーナーサブエッジの第二の点までで規定され、
最小前方サブエッジ厚Tは、前記前方サブエッジの最前点から前記前方サブエッジと前記チップ形成装置との交差部までの前記切削方向に対して垂直な方向における最小距離で規定され、
前記前方サブエッジの頂部アスペクト比R=W/Tが30未満であり、
前記切削幅Wは、W≦6mmの条件を満たし、
前記最小前方サブエッジ厚Tは、T>0.20mmの条件を満たす、狭幅突切りインサート。
【請求項2】
前記切削幅Wが、2.5mm≦W≦4mmの条件を満たす、請求項1に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項3】
前記最小前方サブエッジ厚Tが、T>0.25mmの条件を満たす、請求項1または2に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項4】
前記支持面シート部分は、前記すくい面に対して平行に延在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項5】
前記前方逃げ面は、前記すくい面から下方および後方に延在し、
前記第一の側方逃げ面は、前記前方逃げ面から後方および内方に延在し、
前記第二の側方逃げ面は、前記前方逃げ面から後方および内方に延在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項6】
前記前方サブエッジは、前記すくい面の平面図において直線である、請求項1~5のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項7】
前記前方サブエッジは、均一な厚さのランドを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項8】
前記第一の半径Rは、R>0.20mmの条件を満たし、
前記第二の半径Rは、R>0.20mmの条件を満たす、請求項1~7のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項9】
前記第一の半径Rは、R>0.30mmの条件を満たし、
前記第二の半径Rは、R>0.30mmの条件を満たす、請求項8に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項10】
前記第一の半径Rは、R<0.60mmの条件を満たし、
前記第二の半径Rは、R<0.60mmの条件を満たす、請求項8または9に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項11】
前記第一の半径Rは、R<0.45mmの条件を満たし、前記第二の半径Rは、R<0.45mmの条件を満たす、請求項10に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項12】
前記狭幅突切りインサートが単一の切削刃のみを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項13】
前記すくい面の平面図において、前記切削刃の切削幅Wは、前記切削方向に対して垂直な方向における前記狭幅突切りインサートの最大寸法である、請求項1~12のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項14】
前記チップ形成装置は、単一の凹部のみを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項15】
前記すくい面の平面図において、前記シャンク部分の上面で、クーラント溝が形成され、前記すくい面に向かって延在する、請求項1~14のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項16】
前記支持面は、支持横方向固定装置を有して形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項17】
前記支持横方向固定装置は、前記支持面シート部分上に配置される、請求項16に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項18】
前記狭幅突切りインサートの後面は、後方横方向固定装置を備える、請求項1~17のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項19】
前記支持面は、前記支持面シート部分から下方に延在する支持面当接部分を備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項20】
前記支持面当接部分は、下方および後方に延在する、請求項19に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項21】
前記支持面当接部分は、横方向固定装置を欠いている、請求項19または20に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項22】
前記支持面は、前記支持面当接部分から前記狭幅突切りインサートの後面まで後方に延在する底面部分を備える、請求項19~21のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項23】
前記狭幅突切りインサートの横方向固定装置を有する唯一の面が、前記支持面シート部分と後面である、請求項1~22のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項24】
前記狭幅突切りインサートが中実構造を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【請求項25】
前記シャンク部分と前記切削部分との接続領域の後方において、前記シャンク部分は、下方、または下方および後方にさらに延在する、請求項1~24のいずれか一項に記載の狭幅突切りインサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、小さな(すなわち、狭い)幅の突切りインサート(以下、「インサート」とも呼ばれる)で、特に高送り速度で鋼を機械加工するためのものと、それを含む工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一種の突切りインサートが開示されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。具体的には、インサートの幾何学的形状、当接面、工具およびポケットの幾何学的形状は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
一種の工具(すなわち、突切りブレード)および工具ホルダ(すなわち、ブレードホルダ)は、特許文献2で開示されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。具体的には、工具およびそのポケットの幾何学的形状と、工具ホルダは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
突切りインサートは、材料の無駄を最小にするために、可能な最小の幅(切削方向に対して垂直)を有することが好ましい。特許文献1には、突切りインサートを保持するための弾性クランプ装置が開示されている。このようなクランプレス設計の顕著な利点は、インサートおよび工具幅がクランプシャンクも、ねじシャンクも収容する必要がないので、比較的狭い加工幅が可能になることである。それにもかかわらず、このような弾性的に保持されたインサートの脱落を防止するために、ねじおよびクランプを含む様々な解決策が提案されている。
【0005】
特許文献3は、特許文献1と同様のインサートを開示しているが、いくつかの設計変更がなされており、脱落を防止するためにインサートの後方部分をねじでクランプすることをさらに含んでいる。
【0006】
特許文献4は、特許文献1に類似したインサートを開示しているが、いくつかの設計変更がなされており、重切削加工を可能にするためにインサートの後方部分をクランプするためのクランプをさらに含む。
【0007】
比較的高送りの条件は、工具のポケット強度の制限および種類(ねじおよびクランプを用いた上述の解決策で取り上げられている)によってのみならず、インサート自体によっても制限されており、インサート自体によって、そのサイズがゆえに、過度の力が加わると、故障する可能性のあることも理解されるであろう。
【0008】
非特許文献1は、より高い送り速度を可能にするためにインサートの向きを90°回転し、弾性的に保持された突切りインサートを開示している。特に、より大きな安定性を提供することによって、より高い送りを可能にしながら、同じインサートおよびアダプタが使用されることが述べられている。
【0009】
Y軸突切りの使用をオンラインビデオで実証する非特許文献2は、同じインサートを用いて、優れた結果を提供している。従来の向きでの送りが0.15mm/revだったのと比較すると、同じインサートで、90°回転により送りが0.45mm/revになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7,326,007号
【文献】米国特許第9,259,788号
【文献】米国特許第7,578,640号
【文献】米国特許出願公開第2017/0151612号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Sandvik Coromant社による「Y-axis parting(Y軸突切り)」と題するパンフレット(識別情報参照番号:C1040:194 en-GB(C)AB Sandvik Coromant 2017)(訳注:上記でen-GB(C)ABにおける(C)は、Cの〇囲み文字)
【文献】https://www.youtube.com/watch?v=BWmdsB_VUYg(「Corocut QD Demo Three times higher feed rate with Y-axis parting(Corocut QD Demo:Y軸突切りで送り速度が3倍)」と題するオンラインビデオ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願の目的は、新規に改良されたインサート、工具および工具アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の態様によれば、シャンク部分と、前記シャンク部分に接続された切削部分と、切削刃とを備え、前記切削刃は、すくい面と前方逃げ面との交点に形成される補強された前方サブエッジを備え、前記切削刃の切削幅Wは、W≦6mmの条件を満たし、前記前方サブエッジの最小前方サブエッジ厚Tは、T>0.20mmの条件を満たす、狭幅突切りインサートが提供される。
【0014】
前方サブエッジの頂部アスペクト比Rは、条件R=W/T<30を満たす。
【0015】
本発明の第二の態様によれば、シャンク部分と、前記シャンク部分に接続された切削部分であって、前記シャンク部分から前記切削部分に向かう切削方向と、前記切削方向とは反対の後方方向とを規定する、切削部分と、を備える、狭幅突切りインサートが提供され、
前記切削部分は、
すくい面と、
少なくとも前記すくい面の下方に位置する支持面シート部分を備える支持面であって、下方方向が前記すくい面から前記支持面シート部分に向かうように規定される、支持面と、
前記すくい面および前記支持面に接続され、かつ前記切削部分の最前面である前方逃げ面であって、前記すくい面から下方に延在する、前方逃げ面と、
前記前方逃げ面と前記すくい面に接続された第一の側方逃げ面であって、前記前方逃げ面から後方に延在し、前記すくい面から下方に延在する、第一の側方逃げ面と、
前記前方逃げ面と前記すくい面に接続された第二の側方逃げ面であって、前記前方逃げ面から後方に延在し、前記すくい面から下方に延在する、第二の側方逃げ面と、
切削刃と、
を備え、前記切削刃は、
前記すくい面と前記前方逃げ面との交点に形成される補強された前方サブエッジと、
前記すくい面と前記第一の側方逃げ面との交点に形成される第一の側方サブエッジと、
前記すくい面と前記第二の側方逃げ面との交点に形成される第二の側方サブエッジと、
前記前方サブエッジと前記第一の側方サブエッジとを接続し、第一の半径Rを有する第一の凸状コーナーサブエッジと、
前記前方サブエッジと前記第二の側方サブエッジとを接続し、第二の半径Rを有する第二の凸状コーナーサブエッジと、
を備え、
前記すくい面は、前記前方サブエッジの後方に配置され、前記前方サブエッジから下方、または下方および後方に延在するチップ形成装置を備え、
切削幅Wは、前記第二の凸状コーナーサブエッジの遠位側にある前記第一の凸状コーナーサブエッジの第一の点から、前記第一の凸状コーナーサブエッジの遠位側にある前記第二の凸状コーナーサブエッジの第二の点までで規定され、
最小前方サブエッジ厚Tは、前記前方サブエッジの最前点から前記前方サブエッジと前記チップ形成装置との交点の最近点までで規定され、
前記前方サブエッジの頂部アスペクト比R=W/Tが30未満であり、
前記切削幅Wは、W≦6mmの条件を満たし、
前記最小前方サブエッジ厚Tは、T>0.20mmの条件を満たす。
【0016】
第一および第二の態様の両方が、本質的に、比較的小さい切削幅および比較的大きな最小前方サブエッジ厚を有する突切りインサートを規定することが理解されるであろう。本発明者は、このような突切りインサートが他の解決策に勝る利点を提供することを見出した。より詳細には、上述の「Y軸突切り」のコンセプトは、安定性を高め、上述の高い送り速度を達成するために、Y軸に沿った移動が可能なマシニングセンタを必要とする特別な配置を必要とする。一方、本発明は、従来の工具および装置で同じ送り速度を達成することが分かってきた改善インサートを提供する。
【0017】
本発明は、比較的小さな突切りインサートのために、従来知られている最小前方サブエッジ厚Tよりも大きな厚さを提供する。このような解決策は、試験で示されているように、通常は比較的低い送りでは通常動作できない特殊な高送りインサートを提供するために、最小前方サブエッジ厚Tを従前の典型的な厚さよりも大きくする。また、このような幾何学的形状は、鋼以外の多くのワークピース材料の種類を加工することができないであろうことが予想される。これらの制限により、公知の他の全ての小さい突切りインサートが、低送りおよび高送りで多くの様々な材料の機械加工を可能にするので、非常に小さな前方サブエッジ厚を有することは驚くべきことではない。それにもかかわらず、この特殊なインサートは、そうでなければより高い送り速度を達成するために必要とされる特殊な装置よりも有利であると考えられる。
【0018】
インサートは、シャンク部分から後方方向または別の方向に延びる更なる切削部分を備えることができる。
【0019】
より大きなインサート(より大きな切削幅Wを有する)に対しては、より大きな前方サブエッジ厚さが知られている。これは、当業者は、単に各構成要素の厚さを比例的に増加させるだけであり、より大きなインサートまたはより頑丈な工具が、より大きなチップをより高い送りで機械加工することに関連する力に耐えることができることを懸念しないからである。しかしながら、本発明は、より小さいインサートに対しても、このようなより高い送りを提供することができた。驚くべきことに、あまり丈夫でない工具、ポケットおよびインサートは、通常の送り速度よりもはるかに高いチップのより高い力に耐えることができることが見出された。もちろん、これは、より小さいインサートおよび工具がより経済的であるので好ましい。さらに、切削幅が小さいほど、ワークピース材料の無駄が少なくなる。
【0020】
さらに驚くべきことに、比較的大きな前方サブエッジ厚で比較的高い送り速度で作業する場合、標準的な前方サブエッジ厚での標準的な送り速度での作業よりも著しく大きな工具寿命が達成されることが分かっている。
【0021】
上記の点に鑑みて、本発明は、(より高い送り速度のために)より速く機械加工することができ、(より長い工具寿命のために)インサートの交換がより少なくすることができ、、(同じく、より長い工具寿命のために)より多くの部品を機械加工でき、従来の工具および機械の使用を可能にする。
【0022】
本発明の第三の態様によれば、前の態様のいずれか1つによる突切りインサートを有する工具アセンブリを切削方向に移動させてワークピースを溝切りまたは突切りするステップを含み、前記移動させるステップは、最小前方サブエッジ厚Tよりも1回転当たり高い送り速度で動作するステップを含む、溝切りまたは突切りの方法が提供される。
【0023】
突切り動作において材料の無駄が少ないので、より小さい切削幅が好ましいが、しかしながら、高送り動作のためのインサートの構造的強度には限界があることが理解されるであろう。したがって、切削幅Wは、W<5mm、またはW<4mmの条件を満たすことが好ましい。切削幅Wの下限は、所望の機械加工パラメータに従うことが理解されるであろう。いずれにせよ、切削幅Wとして最も好ましい範囲は、2.5mm≦W≦4mmである。前記最も好ましい範囲は、材料の突切り消耗を最小限に抑える狭い切削幅を提供しながら、かなりの切削力が可能である。突切りインサートは、必要に応じて、溝切り動作にも使用できることが理解されるであろう。
【0024】
同様に、最小前方サブエッジ厚を厚くすると、送り速度を上げることができるが、これはまた、インサートにかかる力も大きくなり、機械の能力(速度など)に限界がある。したがって、最小前方サブエッジ厚Tは、T>0.25mm、T>0.30mmの条件、またはT>0.35mmの条件を満たすことが好ましい。この段階で、いくつかの値が試験され、このコンセプトの上限があるとすれば、その上限は、まだ見出されていない。一般的に、送り速度は最小前方サブエッジ厚Tより大きくする必要がある。例えば、最小前方サブエッジ厚Tが0.25mmの場合、推奨される送り速度は0.30mm/revまたは0.35mm/revになる。このような前方サブエッジ厚のインサートで0.20mm/revの送り速度を使用すると、機械加工がうまくいかないことが予想される。これまでの試験では、実際に、これが正しい仮定であることを示してきた。したがって、上述した利点が得られるので、最小前方サブエッジ厚Tのそれぞれの値が大きいほど好ましいが、しかしながら、機械の能力(速度など)のような外的要因により、この設計特徴がさらに大きくなるのを制限することがある。また、機械のオペレータは、損傷すること、またはすぐに故障することを恐れるために、このような高い送りで操作することを嫌がることが予想される。それにもかかわらず、外的要因が除去されると、前記厚さは、上述の値を超えても大きくさせることができ、それに応じて送り速度を大きくすることができると考えられる。いずれにせよ、より高い値が実現可能である可能性が高いが、前方サブエッジ厚Tの値を0.25mmおよび0.35mmとして、成功裏に試験された。したがって、好ましいが非限定的な範囲は、0.20mm≦T≦0.40mmであり、さらにより好ましい範囲は、0.25mm≦T≦0.35mmである。上述したように、前方サブエッジ厚Tのより高い値が、将来適切な結果を提供する可能性があることは排除されない。
【0025】
より最近の試験では、最適ではないが、サブエッジ厚Tに正確に等しい送り速度でも、驚くほど良好な結果を提供することが見出された。例えば、前方サブエッジ厚Tが0.25mmである場合、推奨送り速度は0.25mm/rev以上である。
【0026】
突切り動作のためには、前方サブエッジは、すくい面の平面図において、直線であることが好ましい。突切り用途における円形前方サブエッジは、チップ排出特性が劣るので、直線前方サブエッジが好ましいことに留意されたい。さらに好ましくは、前方サブエッジは、すくい面の平面図において、切削方向に垂直である。これはまた、チップ排出に関する考慮事項および/または死点スパイクのサイズに関する考慮事項によるためである。
【0027】
比較的大きなサブエッジ厚Tおよび半径Rがあまり好まれない別の理由は、既知の厚さおよび半径で、より良好なチップ形状が達成できるためである。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、前方サブエッジは、後方方向に沿った前方逃げ面の図において、直線であることが好ましいことがある。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、前方サブエッジが均一な厚さを有することが好ましいことがある。
【0030】
高送り動作における構造強度のためには、半径サイズを大きくすることが好ましいことが理解されるであろう。しかしながら、上述のように、突切り動作では、その動作が実行された後、ワークピースの中心に残された死点スパイクが存在する。切削刃の半径が大きいほど、スパイクが大きくなる。また、半径が大きくなるほど、インサートを保持する工具は、突切り動作の終了時に望ましくない屈曲を引き起こすことも理解されるであろう。それにもかかわらず、このような送り条件のためには、半径が強化されることが非常に望ましい。試験の後に、半径が大きくなっても、スパイクのサイズがわずかに大きくなるだけであることが分かった。これにより、本発明のインサートは、著しく大きな最小前方サブエッジ厚(これは、機械加工品質に著しく影響しない)と、スパイクのサイズを過度に大きくさせることなく、構造的強度を維持するための適度に大きな(すなわち、十分である)半径とを有することが可能になる。第一および第二の半径のそれぞれは、必ずしも同一である必要はないが、簡潔にするために、その両方も一緒に扱う。したがって、第一の半径Rは、R>0.20mmの条件を、第二の半径Rは、R>0.20mmの条件を満たすことが好ましい。好ましくは、R>0.30mmおよびR>0.30mmの条件を、あるいは、さらに、R>0.35mmおよびR>0.35mmの条件を満たし得る。しかしながら、理論によれば、許容可能な性能の理論上の上限は、R<0.60mmであり、R<0.60mmであると考えられている。さらに、より好ましくは、Rは、R<0.45mmであり、第二の半径Rは、R<0.45mmの条件を満たすべきである。
【0031】
ここで、いくつかの好ましい一般的なインサートの幾何学的特徴について説明する。
【0032】
好ましくは、支持面シート部分は、すくい面に対して平行に、あるいは実質的に平行に延在する。高送り用途では、インサートが(切削に関与する)すくい面の真下に支持されることが有利であることが理解されるであろう。
【0033】
一般に、突切り動作のためには、切削部分の表面を解放することが好ましい。したがって、以下の特徴のそれぞれは、個別であること、および/または組み合わせることが好ましい。
・前方逃げ面が、すくい面から下方および後方に延在すること、
・第一の側方逃げ面が、前方逃げ面から後方および内方に延在すること、
・第一の側方逃げ面が、すくい面から下方および内方に延在すること、
・第二の側方逃げ面は、前方逃げ面から後方および内方に延在すること、
・第二の側方逃げ面は、すくい面から下方および内方に延在すること。
【0034】
明確にするために、上記の態様は、方向を、例えば「下方」と定義することができる一方、例えば、前の段落での仕様は、さらに、同じ要素を、例えば、「下方および後方」と定義することができるが、最初の方向は、一般的に「下方」を意味することが理解されるであろう。そのような更なる仕様も可能であり、その結果、下向きの構成要素が依然として存在する限り、表面が下方および後方に、あるいは下方および前方に延在することも可能である。例えば、前方逃げ面に関しては、ポケット内のインサートの全体的な向きが突切り動作中に逃げを提供する限り、下方および前方に向くようにできる可能性があることに留意されたい。
【0035】
方向に関して、突切り動作および/または溝切り動作のために、そのようなインサートの切削方向は、当分野で周知であることが理解されるであろう。すなわち、切削インサートは、このような動作を実行するために、ワークピース内で一方向に移動する。インサートの幾何学的形状を説明する目的で、切削方向もインサートの前方方向を構成する。
【0036】
本出願は、一般に、突切り動作のためのインサートを対象とする。このようなインサートは溝切り動作にも適していることが理解されるであろう。その差は、溝切り動作は、(ワークピースサイズに対して)比較的小さい切込み深さしか必要としないからである。
【0037】
したがって、上述の有利な切削部分の配置は、任意の数の様々なタイプのインサートに適用することができる。例えば、米国特許第9,174,279号で開示されているタイプの五角形インサートに対して実施することができ、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
それにもかかわらず、最も困難な突切り動作は、比較的長い張出しを有するものであり、このため、不安定性も、故障および摩耗する機会も著しく増加する。例えば、突切りブレードおよび工具アセンブリは、特許文献2に示されている。張出しが長いと、通常、インサート全体がワークピースに入り込むことができるように、単一の切削刃を有するインサートで機械加工される。
【0039】
したがって、いくつかの実施形態では、インサートは、単一の切削刃のみを備える。また、一方の切削刃のみが動作可能であり、他方の切削刃がワークピースに挿入可能であるように、インサートをねじることも可能である。したがって、すくい面の平面図において、切削刃の切削幅Wは、切削方向に垂直なインサートの最大寸法であることが付加的または代替的に好ましい。
【0040】
また、ねじ穴またはクランプを設けることにより、切削インサートのサイズが大きくなり、そのために、切削インサートの切削幅が大きくなること、あるいは切削深さが浅くなることにも留意されたい。いくつかの好ましい実施形態によるインサートは、中実構造を有する(すなわち、ねじ穴または任意の穴を欠いているか、あるいはねじまたはクランプを収容するための部分的な装置でさえ欠いている)。
【0041】
したがって、米国特許第9,174,279号の議論に加えて、インサートは、シャンク部分から後方方向または別の方向に延在する更なる切削部分、あるいは円周方向に延在する更なる切削部分を備え得ることが理解されるであろう。シャンク部分は、工具に、より具体的にはポケットに取り付けられるように構成されたインサートの一部分として規定されることも理解されるであろう。このような構成は、ねじ穴、当接面、横方向固定装置などの形態であってもよい。同様に、切削部分とは、切削に関与するように構成されたインサートの部分を意味する。
【0042】
様々なチップ形成装置が適切な性能を提供し得ることが想定される。試験は、図示されたチップ形成装置、すなわち、単一の凹部のみを含む装置を用いて実施された。このように、試験に成功したこのような装置は、確かに好ましいチップ形成装置である。
【0043】
最適な設計は、可能な限り小さいインサートであることが理解されるであろう。試験したインサートによれば、5mm以下の切削幅を有するインサートの焼結体積は、260mm未満であることが好ましい。4mm以下の切削幅を有するインサートについては、焼結体積が140mm未満であることが好ましく、3mm以下の切削幅を有するインサートについては、焼結体積が100mm未満であることが好ましいことは、理解されるであろう。
【0044】
最後に、好ましいインサートの幾何学的形状は、本出願の図面に示され、また、例えば、特許文献1および特許文献2にも示されていることに留意されたい。このインサートの幾何学的形状は、本発明の意図する非常に高い送り速度に対して特別な利点を有する。図1Aに示されるように、概略的に示される例外的に大きなチップ20は、有利なことに、ブレード上部クランプまたはリップによって妨害されない。このようなインサートの幾何学的形状および/またはインサートを保持する工具は、インサートを下面で把持するだけで、インサートをそのすくい面に隣接して把持しないことが理解されるであろう。したがって、このような大型で動きの速いチップは、例外的に高い送り条件で、加工中に工具の上部クランプまたはリップを損傷することはない。
【0045】
したがって、1つの好ましいインサートの幾何学的形状によれば、インサートは、以下の特徴を個別に備えること、および/または組み合わせて備えることができる。
・支持面は、支持横方向固定装置で形成することができ、支持横方向固定装置は、支持面シート部分上に配置することができ、支持横方向固定装置は、切削方向に平行に延在し、内方および上方に延在して対向する支持側方溝面を有する支持溝を備えることができること、
・インサートの後面は、後方横方向固定装置を備えることができ、後方横方向固定装置は、すくい面に直交して延在し、内方および前方に延在して対向する後方側方溝面を有する後方溝を備えることができること、
・支持面は、支持面シート部分から下方に延在する支持面当接部分を備えることができ、支持面当接部分は、下方および後方に延在することができ、支持面当接部分は、横方向固定装置を欠くことができること、
・支持面は、支持面当接部分からインサートの後面まで後方に延在する底面部分を含むことができること、
・横方向固定装置を有するインサートの唯一の表面は、支持面シート部分および後面であり得ること、
・シャンク部分と切削部分との接続領域の後方において、シャンク部分は、さらに下方に、または下方および後方に延在可能であること、
・シャンク部分は、さらに下方にのみ延在可能であること。
【0046】
このようなインサートは、クーラント構成を有することは知られていないが、本発明の高送り用途のためには、望ましいと考えられる。それは、特にチップ破壊を支援するために高圧クーラントを使用する場合である。したがって、いくつかの実施形態において、すくい面の平面図において、シャンク部分の上面で、クーラント溝を形成することができ、すくい面に向かって延在する。クーラント溝は、すくい面まで開くことができる。クーラント溝は、前方逃げ面に対向して配置された後面に位置するインサートの後面に開口することができる。
【0047】
上記の説明に加え、第四の態様によれば、高送り突切り動作のための工具(例えば、突切りブレード)または工具アセンブリ(上記のいずれかの態様による工具ホルダ、工具およびインサート)が提供される。
【0048】
工具には、突切りインサートを保持するためのポケットを形成することができる。この工具は、少なくともポケットの下方で、切削方向に対して垂直に測定された工具厚Tを有することができ、この工具厚はインサートの切削幅よりも狭い。いくつかの実施形態では、工具全体が、インサートの切削幅よりも小さい工具厚Tを有することが好ましい。
【0049】
ポケットは、好ましくは、弾性ポケットであり得る(すなわち、ねじまたはクランプなしでインサートを弾性的に保持するように構成され、それによって、より小さな切削幅および/または工具幅が可能になる)。
【0050】
弾性ポケットは、好ましくは、インサートの支持面および後面にのみ接触するように構成することができる。別の言い方をすれば、工具は、工具ポケット上に延在する任意の要素を欠くことができる。
【0051】
本出願の主題をより良く理解するために、また、それが実際にどのように実行され得るかを示すために、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A】ワークピースを概略的に機械加工する工具アセンブリの側面図である。
図1B図1Aの工具アセンブリおよびワークピースの平面図である。
図1C図1Aの工具アセンブリで、ワークピースなしの正面図(後方方向の前面の図とも呼ばれる)である。
図2A図1Aの工具アセンブリの切削インサートの第一の側面斜視図である。
図2B図2Aの切削インサートの第二の側面斜視図である。
図2C図2Aの切削インサートの上面図(すくい面の平面図またはすくい面に向かう下方方向の図とも呼ばれる)である。
図2D図2Aの切削インサートの正面図である(後方方向の前面の図とも呼ばれる)。
図2E図2Cの図に対応する切削インサートの上面図である。
図2F図2Aの切削インサートの側面図である。
図2G図2Aの切削インサートの底面図である。
図2H図2Aの切削インサートの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1A図1Cを参照すると、例示的な工具アセンブリ10が示されており、工具アセンブリ10は、工具ホルダ12と、工具14と、ソリッド突切りインサート16と、概略的に示されている、チップ20とともに、図1Aで機械加工されている鋼製ワークピース18とを備える、
【0054】
図1Aおよび図1Bから、当分野で知られているように、切削方向Dは、インサート16がワークピース18内に移動する方向として定義されることが理解されるであろう。これは、代替的に、すくい面22に平行で、インサート16の前方逃げ面24(図1C)に向かう方向として定義することもできる。後方方向Dは、切削方向(または前方方向)Dとは逆に定義される。
【0055】
下方方向Dは、すくい面22から支持面シート部分26に向かうように定義される。上方方向Dは、下方方向Dと反対に定義される。
【0056】
良好な秩序のために、第一および第二の側面方向DS1、DS2は、切削方向D、後方方向D、下方方向Dおよび上方方向Dに対して直交して定義される。しかしながら、以下の図面から理解されるように、インサートの他の特徴に対するインサートに対する内向き方向または外向き方向は、幾何学的形状を理解するためにより関連性があり、そのような特定の名称「上方」、「下方」、「側方」は、便宜上のものにすぎない。周知のように、このような工具アセンブリ10は、上下を逆にして、動作することもできる。
【0057】
図示された例示的な工具アセンブリ10は、特に長い張出しのために構成された突切りブレードである工具14を有する。したがって、工具14は、インサートの切削幅Wよりも小さな工具厚Tを有する。したがって、工具14は、例えば、ワークピースが工具ホルダ12に到達するまで(または安定性を維持できなくなるまで)、ワークピース18を入れることができる。
【0058】
工具14は、支持面30とインサート16の後面32とのみ接触する弾性ポケット28を備えている。
【0059】
ここで図2A図2Hを参照して、本発明を、好ましいが、非限定的なインサートの幾何学的形状を参照して説明する。
【0060】
インサート16は、例示的ではありが、非限定的なシャンク部分34および切削部分36を備える。図示のように、シャンク部分は、切削部分36から離間して、下方に延在し、この例では、下方にのみ延在する。
【0061】
インサート16は、以下の面、すなわち、前方逃げ面24と、前方逃げ面24に対向して位置する後面32と、上面38と、上面38に対向して位置する支持面30と、前方逃げ面24と、後面32と、上面38と、支持面30とを接続する第一および第二の側面40、42とを備えるものと定義することができる。
【0062】
図2Fに最もよく示されているように、前方逃げ面24は、すくい面22から下方および後方に延在する。
【0063】
後面32は、後方横方向固定装置44を備える。より正確には、後方横方向固定装置44は、内方および前方に延在して対向する後方側方溝面48、50を有する後方溝46を備える(例えば、図2C参照)。
【0064】
上面38は、切削部分36で、すくい面22と、シャンク上面52とに理論的に分割することができる。
【0065】
すくい面22は、切削刃54と、単一の凹部58を有するチップ形成装置56とを備える。
【0066】
切削刃54は、前方サブエッジ60と、第一の側方サブエッジ62と、第二の側方サブエッジ64と、第一の半径Rを有する第一の凸状コーナーサブエッジ66と、第二の半径Rを有する第二の凸状コーナーサブエッジ68とを備える。
【0067】
この非限定的な例で例示されるように、前方サブエッジ60は、すくい面22(図2C参照)の平面図において直線であり、切削方向(図2C参照)に対して垂直に延在し、後方方向(図2D参照)に沿って前方逃げ面の図において直線であり、均一な厚さT図2C参照)を有する。厚さTは、切削方向Dにおいて通常より高い送り速度で切削されながらも、前方サブエッジ60を補強し、これによって、インサートの寿命も延びる。したがって、前方サブエッジ60は、ある意味で、切削方向Dに平行な方向に拡大厚さを備えた補強「ランド」を有すると考えることができる。
【0068】
明確にするためだけに、第一および第二の凸状コーナーサブエッジ66、68のそれぞれの弓形延長部は、仮想円C図2Cには1つだけが示されている)を形成することができ、円Cの半径は、半径R、Rの値を提供する。
【0069】
図2Cにより詳細に示すように、切削幅Wは、第一の凸状コーナーサブエッジ66の第一の点82から第二の凸状コーナーサブエッジ68の第二の点84までで規定される。本出願の主題によるインサートは、狭幅の前方サブエッジ60を有する。本目的のために、「狭幅」前方サブエッジ60とは、6mm以下の切削幅を有するものと定義される。しかしながら、いくつかの実施形態およびいくつかの用途では、前方サブエッジ60の切削幅は、4mm以下、好ましくは3mm以下など、より小さくすることができる。このような狭い突切りインサートの下限が将来どのようなものになるかは不明であるが、現在、実用的な切削幅の最小値は、2mm以上であることが理論化されている。現在、好ましい値の範囲は、2.5mm~4.5mmである。このような最適範囲は、実質的な切削力荷重を取り扱うことができる最小インサートサイズと、無駄な材料を減らすために切削幅をできるだけ小さくしたいという要望との間の妥協である。
【0070】
前方サブエッジ60の頂部アスペクト比Rは、インサートの上面図(図2C)に見られるように、厚さTに対する切削幅Wの比、すなわちR=W/Tとして定義される。本出願の主題によるインサートは、頂部アスペクト比が30未満であり、すなわちR<30である。
【0071】
シャンク上面52は、クーラント構成70を備えることができる。クーラント構成70は、クーラント溝72を備えることができる。クーラント溝72は、クーラントすくい開口部74ですくい面22に開口することができる。クーラント溝72は、クーラント後方開口部76で後面32に開口することができる。
【0072】
第一の側面40は、第一の側方逃げ面78(図2A)を備えることができる。第一の側方逃げ面78は、前方逃げ面24(図2G)から後方および内方に延在することができ、すくい面22(図2D)から下方および内方に延在することができる。
【0073】
第二の側面42は、第二の側方逃げ面80(図2A)を備えることができる。第二の側方逃げ面80は、前方逃げ面24(図2G)から後方および内方に延在することができ、すくい面22(図2D)から下方および内方に延在することができる。
【0074】
図2Fを参照すると、支持面30は、支持面シート部分26と、支持面当接部分86と、底面部分88とを備えることができる。
【0075】
支持面シート部分26は、支持横方向固定装置90(図2A)で形成することができる。支持横方向固定装置90は、支持溝92と、内方および上方に延在して対向する支持側方溝面94、96とを備えることができる。
【0076】
支持面当接部分86は、後面32に対向当接面を提供する。好ましくは、支持面当接部分86は、横方向固定装置を欠いている。しかしながら、あまり好ましくはないが、横方向固定装置のための代替的な配置も可能であることが理解されるであろう。溝の代わりに突起を有する選択肢もある。
【0077】
本発明による突切りインサートと、最小前方サブエッジ厚Tおよび半径R、Rのみが異なる比較インサートとの突切り試験結果の例を以下に詳述する。
【0078】
突切り試験では、両方のインサートは、同じグレードの材料で作られ、両方ともW=4mmを有し、切削速度Vは100m/分に設定された。最大摩耗は、0.25mmと定義した。
【0079】
送り速度F1は、比較インサートの通常の状態に設定された(F1=0.18mm/revで、これは、その最小前方サブエッジ厚、すなわち0.115mmよりもわずかに大きく、したがって、R=4mm/0.115mm=34.78であった)。送り速度F2は、本発明によるインサートの通常状態であると期待されるものに設定された(F2=0.4mm/revで、これは、その最小前方サブエッジ厚T、すなわち0.3mmよりもわずかに大きく、したがって、R=4mm/0.3mm=13.33であった)。
【0080】
比較インサートの半径R、Rは、0.24mmであった。本発明によるインサートの半径R、Rは、0.50mmであった。
【0081】
試験において、試験された2つの比較インサートは、それぞれ20分後および25分後に最大摩耗に達した。本発明による2つのインサートは、それぞれ100分後および110分後に最大摩耗に達した。
【0082】
したがって、両方のインサートを通常の動作条件下で試験したとしても、本発明によるインサートの工具寿命には、非常に予想外の改善があった。
【0083】
上記と同じタイプのインサートの溝切り試験では、切削速度Vを200m/分に設定し、両方の送りを0.4mm/revに設定した。この試験では、本発明によるインサートは、比較インサートの3倍の溝数で実行された。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H