IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エス・ペー・セー・エム・エスアーの特許一覧

特許7163406(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 213/10 20060101AFI20221024BHJP
   C07C 219/08 20060101ALI20221024BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20221024BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221024BHJP
【FI】
C07C213/10
C07C219/08
C08F20/34
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020555136
(86)(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 CN2018082774
(87)【国際公開番号】W WO2019196048
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】510338248
【氏名又は名称】エスペーセーエム・エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ファヴェロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョハン・キーファー
(72)【発明者】
【氏名】凌 静
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-503744(JP,A)
【文献】特表2012-527462(JP,A)
【文献】特表2012-527996(JP,A)
【文献】特開2005-013934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2回の逐次回分反応を含む(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの製造方法であって、各回分反応において、(メタ)アクリル酸メチル、ジメチルアミノエタノール、触媒としてのジブチルスズオキシド、及び溶媒を、蒸留塔を備えた撹拌式反応器内に初期装入材料として添加し、共沸蒸留を反応中に連続的に行い、反応中に反応器内の容量を一定に保つために、前記共沸蒸留に起因する容量減少を、(メタ)アクリル酸メチル及びジメチルアミノエタノールを含む組成物の連続的な添加によって補い、前記組成物が、ジブチルスズオキシドも含んでもよく、前記方法が、
- 触媒として使用されるジブチルスズオキシドが未使用のジブチルスズオキシドである、1回目の回分反応、
- 1回目の回分反応からのジブチルスズオキシドを、1回目の回分反応の反応混合物から回収し、それが再利用ジブチルスズオキシドを構成する、分離工程、
- 少なくとも65質量%の再利用ジブチルスズオキシドを、未使用のジブチルスズオキシドと共に2回目の回分反応の触媒として使用する、少なくとも2回目の回分反応
を含み、
前記少なくとも2回目の回分反応において、
未使用のジブチルスズオキシドの量が、1回目の回分反応からの再利用ジブチルスズオキシドに対して0.1質量%~35質量%の間に含まれ、
初期装入材料に添加される再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量割合が、220/1~80/20の間に含まれ、
共沸蒸留を補うために連続的に添加する組成物がジブチルスズオキシドを含む場合、前記組成物中の再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量割合が、100/0~0/100の間に含まれる、
方法。
【請求項2】
前記方法が、前回の反応からの少なくとも65質量%の再利用ジブチルスズオキシドを未使用のジブチルスズオキシドと共に反応の触媒として使用する、少なくとも1回の後続の回分反応を含み、
未使用のジブチルスズオキシドの量が、前回の反応からの再利用ジブチルスズオキシドに対して0.1質量%~35質量%の間に含まれ、
初期装入材料に添加する、前回の反応からの再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量割合が、220/1~80/20の間に含まれ、
共沸蒸留を補うために連続的に添加する組成物がジブチルスズオキシドを含む場合、前記組成物中の、前回の反応からの再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量割合が、100/0~0/100の間に含まれる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
合計して少なくとも3回、最大20回までの回分反応を含み、各回分反応において、前回の反応からの再利用ジブチルスズオキシドが、未使用のジブチルスズオキシドと組み合わされて請求項1による触媒として使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
溶媒が、C6~C12の、直鎖状、環式、又は分枝状のアルカンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法の逐次回分反応が同じ反応器内で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
共沸蒸留に起因する容量減少を補うために反応中に連続的に添加される組成物が、(メタ)アクリル酸メチル、ジメチルアミノエタノール、ジブチルスズオキシド、及び溶媒を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
共沸蒸留に起因する容量減少を補うために反応中に連続的に添加される組成物が、反応の開始前に反応器内に初めに添加された組成物と同じである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
2回目の及び/又は後続の回分反応において、前回の反応から回収された再利用ジブチルスズオキシドの少なくとも80質量%が、未使用のジブチルスズオキシドと共に後続反応の触媒として使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
後続反応のそれぞれにおける未使用のジブチルスズオキシドの量が、再利用ジブチルスズオキシドに対して0.1質量%~20質量%の間に含まれる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各後続回分反応において、後続反応の各初期装入材料に添加される再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量比が、97/3~85/15の間に含まれる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応器内の容量を一定に保つために共沸蒸留を補うために連続的に添加される組成物がジブチルスズオキシドを含む場合、前記組成物中の、再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量比が、95/5~5/95の間に含まれる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルを用いたポリマーの製造方法であって、以下の工程
-請求項1から11のいずれか一項に記載の方法で(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルを産生する工程、
-前記(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルを重合してポリマーを得る工程
を含む、方法。
【請求項13】
(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルが四級化物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーが、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの四級化物と、
- 非イオン性モノマー:アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイミダゾール、ポリエチレングリコールのメタクリル酸エステル、ジアセトンアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、N-tert-ブチルアクリルアミド、
- アニオン性モノマー:塩化されていない、部分的に塩化されている、又は完全に塩化されている、アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アリルスルホネート、
- カチオン性モノマー:ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、アクリルアミドジアルキルアミノプロピル、メタクリルアミドジアルキルアミノプロピル、及びそれらの酸性化又は四級化塩、
- 構造剤:ポリエチレン性不飽和モノマー(少なくとも2つの不飽和官能基を有するもの)
の中から選択される少なくとも1種のモノマーとを重合させてなるポリマーである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
水処理、汚泥脱水、製紙プロセス、農業、化粧用及び洗浄用組成物、繊維プロセス、油及びガス回収プロセス、フラクチャリング、採掘作業における、請求項13又14に記載の方法で製造されたポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DMAE(M)A又は(M)ADAME(登録商標)とも呼ばれる、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルモノマーは、一般に、例えば、塩化メチル、硫酸ジアルキル、又は塩化ベンジルで四級化され、次いで重合されてカチオン性ポリマーを生成する。これらのポリマーは、水処理、製紙、ホームケア及びパーソナルケア、油及びガス回収等の多くの産業に使用されている。
【0003】
有機スズ化合物を用いてエステル交換反応を触媒することは周知である。関心対象の(メタ)アクリル酸エステルのうち、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルは、触媒として酸化スズ誘導体、例えばジブチルスズオキシド(DBTO)を用いる(メタ)アクリル酸アルキルとジメチルアミノエタノールとのエステル交換によって得られる。この触媒の役割は、平衡を移動させてより多くの(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルを生成し、不純物の形成を低減させることである。
【0004】
該(メタ)アクリル酸アルキルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルであり得る。(メタ)アクリル酸メチルが一般に好ましい。
【0005】
US 8,067,637又はCN 105330556に記載されているような、アルミニウム(III)イソプロポキシド、又はテトラアルコキシドチタネート(IV)等の他の金属アルコキシドをエステル交換触媒として使用することができることも公知である。アセチルアセトネート誘導体、例えば、例えば、US 7,071,351又はWO 2001/157645に記載されるようなジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、鉄アセチルアセトネートの金属錯体も、触媒として使用される。DBTOは、出発物質に対して化学量論量の触媒を必要とするチタネート誘導体触媒とは反対に、低投与量で非常に活性があり、何回も再利用させることができ、不純物の形成を最低限に抑えることができるために、特に有利な触媒である。
【0006】
この利点にもかかわらず、DBTOは、再利用時に不活性化されやすく、費用がかかる定期的な交換が必要であり、管理及び処理が困難である有毒廃棄物を発生する。
【0007】
DBTOが不活性化され始めると、反応生成物はより多くの不純物を含有する。典型的には、DBTOを触媒として用いる(メタ)アクリル酸メチルとジメチルアミノエタノールと間の反応では、副生成物として生じる不純物が存在し、それによって(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの品質が低下する。これらの不純物は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、又は(メタ)アクリル酸と反応した、メタノール又はジメチルアミノエタノールのマイケル付加物である。
【0008】
低分子量アルコール(メタノール)で形成されるマイケル付加物等の不純物の形成を制限するために、溶媒中で反応を行うことは公知である。これによって、連続的な共沸蒸留の間に低分子量アルコールを除去することが可能になる。この方法の欠点は、反応器内の容量が連続的に減少することによって、該プロセスの生産性が低くなることである。
【0009】
反応の終了時に、触媒は反応混合物から分離され、その触媒活性が不純物の形成を制限するのに十分であれば再利用される。
【0010】
一般に、1回目の反応では、未使用のDBTOが触媒として使用される。反応後に、1回目の反応から回収されたDBTOの100%が2回目の反応に再利用される。2回目の反応後、2回目の反応から回収されたDBTOの100%が3回目の反応に再利用される。しかし、3回目の反応で回収されたDBTOは、4回目の反応に使用するのに十分な触媒活性を有していない。換言すれば、このDBTOを4回目の反応に使用すれば、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルは多くの不純物を含有することになるために、その品質は低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】US 8,067,637
【文献】CN 105330556
【文献】US 7,071,351
【文献】WO 2001/157645
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明で解決するべき問題は、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの製造方法の効率、及び得られるモノマーの品質を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚いたことに、これは、反応器の容量をより効率的に使用すること、及び触媒をより効率的に使用することによって行うことができることが見出された。本発明は、2つの方式に基づいている。第1の方式は、共沸蒸留及び低分子量アルコールの除去に起因する容量減少を補うために、(メタ)アクリル酸メチル、ジメチルアミノエタノールを含む組成物を連続的に添加することである。第2の方式は、少なくとも後続の回分反応において、再利用されたDBTOに加えて、未使用のDBTOを一部分添加することである。
【0014】
本発明は、少なくとも2回の逐次回分反応を含む(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの製造方法であって、各回分反応において、(メタ)アクリル酸メチル、ジメチルアミノエタノール、触媒としてのジブチルスズオキシド、及び溶媒を、蒸留塔を備えた撹拌式反応器に初期装入材料として添加し、共沸蒸留を反応中に連続的に行い、反応中の反応器内の容量を一定に保つために、前記共沸蒸留に起因する容量減少を、(メタ)アクリル酸メチル及びジメチルアミノエタノールを含む組成物の連続的な添加によって補い、前記組成物が、ジブチルスズオキシドも含んでもよく、前記方法が、
- 触媒として使用されるジブチルスズオキシドが未使用のジブチルスズオキシドである、1回目の回分反応、
- 1回目の回分反応からのジブチルスズオキシドを、1回目の回分反応の反応混合物から回収し、それが再利用ジブチルスズオキシドを構成する、分離工程、
- 少なくとも65質量%の再利用ジブチルスズオキシドを、未使用のジブチルスズオキシドと共に2回目の回分反応の触媒として使用する、少なくとも2回目の回分反応
を含み、
前記少なくとも2回目の回分反応において、
o 未使用のジブチルスズオキシドの量が、1回目の回分反応からの再利用ジブチルスズオキシドに対して0.1質量%~35質量%の間に含まれ、
o 初期装入材料に添加される再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量割合が、220/1~80/20の間に含まれ、
o 共沸蒸留を補うために連続的に添加される組成物中がジブチルスズオキシドを含む場合、前記組成物中の再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量割合が、100/0~0/100の間に含まれる、
方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義上、未使用のジブチルスズオキシドとは、ジブチルスズオキシドが反応に初めて使用されることを意味している。換言すれば、未使用のジブチルスズオキシドは、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルを製造する前回の反応から回収されていない。新しいジブチルスズオキシドという用語も本発明に使用され、未使用のジブチルスズオキシドと同じ意味を有する。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、前回の反応からの少なくとも65質量%の再利用ジブチルスズオキシドを未使用のジブチルスズオキシドと共に反応の触媒として使用する、少なくとも1回の後続の回分反応を含み、
o 未使用のジブチルスズオキシドの量が、前回の反応からの再利用ジブチルスズオキシドに対して0.1質量%~35質量%の間に含まれ、
o 初期装入材料に添加する、前回の反応からの再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量割合が、220/1~80/20の間に含まれ、
o 共沸蒸留を補うために連続的に添加する組成物がジブチルスズオキシドを含む場合、その組成物中の、前回の反応からの再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量割合が、100/0~0/100の間に含まれる。
【0017】
本発明の方法は、後続反応に触媒(DBTO)を再利用すること、及びある特定の量の未使用の又は新しい触媒を再利用触媒に添加すること、及び前記触媒を後続反応で使用することを含む、多段階回分反応である。
【0018】
反応中に(メタ)アクリル酸メチル及びジメチルアミノエタノールを含む組成物を連続的に添加することによって、反応器の最大容量を使用することが可能になり、これは生産性に関して有利である。この組成物はジブチルスズオキシドも含んでもよく、その方が好ましい。
【0019】
この反応器容量の最大限の使用と、DBTOの再利用と、本発明の特定の比率での未使用のDBTOの添加とを組み合わせると、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの製造方法の効率を改善し、このモノマーの品質を改善することが可能になる。(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルは、含有する不純物が少なくなるために、品質がより良好になる。すべての回分で触媒活性が最適な濃度で一定に維持されるために、モノマーの品質も後続の回分でより均一になる。本発明の方法の別の利点は、回分当たりの全体的な触媒消費量が減少することであり、したがって回分当たりに発生する全体的な廃棄物が減少することである。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法は、合計して少なくとも3回、好ましくは4回、より好ましくは5回、更により好ましくは6回、更により好ましくは7回、更により好ましくは8回、更により好ましくは9回、更により好ましくは10回、最大20回の回分反応を含み、該反応において、前回の反応からの再利用ジブチルスズオキシドが、未使用のジブチルスズオキシドと組み合わされて本発明による触媒として使用される。
【0021】
換言すれば、それは、未使用の触媒の使用のみを含む本発明の方法の1回目の反応後に、本発明の方法は、少なくとも2回、好ましくは3回、より好ましくは4回、更により好ましくは5回、更により好ましくは6回、更により好ましくは7回、更により好ましくは8回、更により好ましくは9回、最大19回の回分反応を含み、該反応において、前回の反応からの再利用ジブチルスズオキシドが、未使用のジブチルスズオキシドと組み合わされて本発明による触媒として使用されることを意味する。
【0022】
本発明による反応は、蒸留塔及び温度を上昇させる手段を備えた撹拌式反応器内で行われる。一般に、溶媒、(メタ)アクリル酸メチル、ジメチルアミノエタノール、及びジブチルスズオキシド(DBTO)は、該反応器内に添加される。当技術分野で公知のように、該反応は、温度の上昇に誘発される。該反応から生成するメタノールは、幾らかの溶媒及び幾らかの(メタ)アクリル酸エステルと共に連続的に蒸発し、蒸留塔内に誘導される。回収された溶媒は、アルコール及び(メタ)アクリル酸エステルから分離された後で、好ましくは再利用される。
【0023】
本発明の方法に使用される溶媒は、好ましくは不活性溶媒であり、典型的には、C6~C12からの、直鎖状、環式、又は分枝状のアルカンである。好ましい溶媒は、低分子量アルコール、とりわけメタノールと共沸混合物を形成するヘキサンである。
【0024】
本発明によれば、これらの生成物の蒸発に起因する容量減少は、(メタ)アクリル酸メチル及びジメチルアミノエタノールを含む等容量の組成物を連続的に添加することによって連続的に補われる。好ましい実施形態では、この組成物は、ジブチルスズオキシド及び溶媒も含む。より好ましい実施形態では、該組成物は、反応の開始前に反応器内に初めに添加された組成物と同じである。
【0025】
当業者であれば、どのように該反応を実施するか分かっており、文献US 2012/0123148を参照できるであろう。本発明の方法は、ジブチルスズオキシド(DBTO)を触媒として用いる(メタ)アクリル酸メチルとジメチルアミノエタノールとのエステル交換によって(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルを得る反応を行うのに特別な添加方式を必要としない。化学物質の割合、温度、及び他の反応のパラメータは周知である。
【0026】
各回分反応の終了時に、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルは反応混合物から回収され、一般に蒸留によって精製される。DBTOも回収され、本発明に記載するように再利用される。当業者であれば、これらのプロセスをどのように実施するか分かるであろう。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明の方法の反応は同じ反応器内で行われるが、異なる反応器内で行うこともできる。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明による2回目の及び/又は後続の回分反応において、前回の反応から回収された再利用ジブチルスズオキシドの少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも85質量%、より好ましくは少なくとも90質量%が、未使用のジブチルスズオキシドと共に後続反応の触媒として使用される。
【0029】
好ましい実施形態では、後続反応のそれぞれにおける未使用のジブチルスズオキシドの量は、再利用ジブチルスズオキシドに対して、0.1質量%~20質量%の間、好ましくは0.5質量%~15質量%の間、更により好ましくは0.5質量%~10質量%の間に含まれる。
【0030】
好ましい実施形態では、後続反応のそれぞれにおいて、反応器内の容量を一定に保つために共沸蒸留を補うために連続的に添加される組成物がジブチルスズオキシドを含む場合、その組成物中の再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量比は、95/5~5/95の間、好ましくは90/10~10/90の間に含まれる。
【0031】
好ましい実施形態では、再利用ジブチルスズオキシドと未使用のジブチルスズオキシドとの質量比は、後続反応の各初期装入材料に添加されるジブチルスズオキシドと、共沸蒸留を補うために連続的に添加される組成物とで同じである。この場合、好ましい質量比は、好ましくは97/3~85/15の間、好ましくは95/5~87/13の間、更により好ましくは90/10、更により好ましくは99/1に含まれる。
【0032】
本発明はまた、本発明の方法によって得られる(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルを提供する。得られるモノマーである(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルは、含有する不純物が少なくなるために、より良好な品質を有する。未使用の触媒の追加が行われず、かつ容量減少が補われない(回分毎に品質が有意に落ちる)方法と比較して、該モノマーの品質は、回分毎に均質であることによっても改善される。これは、本発明の方法によって、回分毎の触媒の作用をより均等にすることが可能になるからである。
【0033】
本発明はまた、本発明による方法によって得られる反応混合物から分離工程後に回収される(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチル混合物を提供する。前記(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルは、より少ない不純物を含有し、品質がより良好である。
【0034】
本発明はまた、本発明の(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの四級化物を提供する。四級化は、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、塩化ベンジル、若しくは塩化メチル、又はこれらの混合物を用いて行われ、好ましくは、塩化メチルを用いて第三級アミンが第四級アンモニウムに変換される。
【0035】
本発明はまた、本発明の(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの四級化物から製造されるポリマーを提供する。ゲル重合、溶液又は乳化重合等、いかなる重合法が使用されてもよい。粉末、乳濁液、分散体、溶液等、いかなる形態のポリマーが得られてもよい。本発明のポリマーは、好ましくは水溶性であるが、水膨潤性でもあってもよい。
【0036】
他のモノマーを(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチルの四級化物と組み合わせて、本発明のポリマーを製造してもよい。これらのモノマーは以下の一覧から選択されてもよい:
- 非イオン性モノマー:アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイミダゾール、ポリエチレングリコールのメタクリル酸エステル、ジアセトンアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、N-tert-ブチルアクリルアミド、
- アニオン性モノマー:塩化されていない、部分的に塩化されている、又は完全に塩化されている、アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アリルスルホネート(ally sulfonate)、
- カチオン性モノマー:ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、アクリルアミドジアルキルアミノプロピル、メタクリルアミドジアルキルアミノプロピル、及びそれらの酸性化又は四級化塩、
- 構造剤:ポリエチレン性不飽和モノマー(少なくとも2つの不飽和官能基を有する)、例えば、ビニル、アリル、アクリル、及びエポキシ官能基等のもの、それらとして例えば、メチレンビスアクリルアミド(MBA)、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド(tetrallylammonium chloride)を挙げてもよく、又は、ポリペルオキシド、ポリアゾ化合物等のマクロ開始剤、及びポリメルカプタンポリマー等の移動ポリエージェント(transfer polyagent)による構造剤。
【0037】
本発明によるポリマーは、分子量に関して限定されない。該ポリマーは、好ましくは、5,000~100,000g/molの間に含まれる質量平均分子量、又は100,000~1,000,000g/molの間に含まれる質量平均分子量、又は1,000,000~3000万g/molの間に含まれる質量平均分子量を有する。質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0038】
本発明はまた、本発明のポリマーの、水処理、汚泥脱水、製紙プロセス、農業、化粧用及び洗浄用組成物、繊維プロセス、油及びガス回収プロセス、例えば石油・原油の回収増進法、フラクチャリング、採掘作業、例えば尾鉱処理における使用を提供する。
【0039】
実施形態
本発明を、これから以下の実施例によって更に詳細に説明する。
【実施例
【0040】
すべての実施例に共通:1回目の回分に未使用のDBTOを用いる。
【0041】
12リットルのジャケット付き反応器に、撹拌器、10段の理論段を有する充填塔、還流冷却器、及びデカンターを備え付ける。950gのヘキサン、6520gのアクリル酸メチル、及び3380gのジメチルアミノエタノールを反応器に装入する。
【0042】
121gの未使用のDBTOを装入する。重合を回避するために、10gのフェノチアジン(phenotiazine)も反応器に装入する。
【0043】
反応混合物を外部ヒーターで80℃に加熱する。反応中に、減少する容量を補うために原料及び触媒を反応器に連続的に添加する。この連続供給は、105.2gのヘキサン、722gのアクリル酸メチル、374gのジメチルアミノエタノールからなる。
【0044】
30分後に、DBTOは活性であり、ヘキサン/メタノール/アクリル酸メチルの共沸混合物が発生して蒸留塔に入る。留出物を水と混合し、沈殿させる。有機相は、反応器に送り戻す。
【0045】
10時間の加熱後に、1210gのメタノールを回収し、反応を終了させる。
【0046】
次いで反応混合物を、精留塔を備えた蒸留釜に移す。5160gのアクリル酸2-ジメチルアミノエチルを留出物から回収し、それは95%の収率に相当する。
【0047】
このアクリル酸2-ジメチルアミノエチルをGC-FIDによって分析し、その純度は99.9%である。
【0048】
蒸留後に、DBTOは釜の中に高沸点化合物として残留し、それを以下の実施例で再利用DBTOとして使用する。
【0049】
(実施例1~5)
前述の12リットルの反応器内に、上の1回目の回分反応の分量と同じ分量のアクリル酸メチル、ジメチルアミノエタノール、及びヘキサンを反応器に装入する。前回の回分からの再利用DBTOの100質量%(121gに相当する)を後続の回分に再使用する。
【0050】
前回の回分からの再利用DBTOの90質量%に相当する108,9gの再利用DBTOを反応器に初めに装入する。加えて、ある分量の未使用のDBTOを反応器に初めに装入し、108.9gの再利用DBTOに対するその質量%をtable 1(表1)に記載する。
【0051】
反応中に、減少する容量を補うために、反応器に原料及び触媒を連続的に添加する。連続供給は、105.2gのヘキサン、722gのアクリル酸メチル、374gのジメチルアミノエタノール、及び前回の回分からの再利用DBTOの10質量%に相当する12.1gの再利用DBTOからなる。加えて、ある分量の未使用のDBTOを装入し、12.1gの再利用DBTOに対する質量%をtable 1(表1)に記載する。
【0052】
反応の終了及び精留塔での精製後に、最終的なアクリル酸ジメチルアミノエチルをGC-FIDで分析する。再利用DBTOは、最終的なアクリル酸ジメチルアミノエチルの純度が99.8%を下回っていると、十分に活性ではないとみなされる。
【0053】
比較例:
実施例1~5と同じ手順が適用されるが、反応器に添加される未使用のDBTOの量がなく(再利用DBTOのみ)、共沸蒸留によって失われた容量を補うための原料及び触媒の連続供給が反応中に行われないことが異なる。
【0054】
結果をTables 1~2(表1~2)に要約する。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
DBTO廃棄量:全回分の間に使用される未使用のDBTOの総量をこの回分の数で除したもの。
【0058】
これらの結果から、本発明による方法は、回分当たりの全体的な触媒消費量が有意に減少するために、またそれによって回分当たりに発生する全体的な廃棄量が減少するために、より効率的な触媒の使用を可能にすることが実証される。その結果、満足できるモノマー品質を生じる回分の最大数が増加する。反応の間を通して反応器の全容量を使用するために、生産量も増加する。全体的に、該方法は、既存の方法と比較して有意に改善されている。