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特許7163431車両における継続的な注意を触覚フィードバックを用いて強化するシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】車両における継続的な注意を触覚フィードバックを用いて強化するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221024BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20221024BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06F3/01 560
B60R16/02 640Z
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021018605
(22)【出願日】2021-02-08
(62)【分割の表示】P 2015188035の分割
【原出願日】2015-09-25
(65)【公開番号】P2021093175
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】14/518,769
(32)【優先日】2014-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500390995
【氏名又は名称】イマージョン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】IMMERSION CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】モダーレス,アリ
(72)【発明者】
【氏名】クルス-ヘルナンデス,ファン マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】グラント,ダニー エー.
(72)【発明者】
【氏名】オリエン,ニール
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102007015432(DE,A1)
【文献】特開2009-129052(JP,A)
【文献】特開2013-086560(JP,A)
【文献】特開2006-021743(JP,A)
【文献】特開2008-149844(JP,A)
【文献】特開2009-015547(JP,A)
【文献】特開2005-222487(JP,A)
【文献】特開2005-088851(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0244641(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0126965(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0284360(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0109104(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G06F 3/01
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席及びシートベルトを備える車両内で触覚効果を生成するシステムであって、
前記シートベルトに配置されるか又は取り付けられた第1の触覚出力装置と、
前記座席上又は前記座席内に配置された第2の触覚出力装置と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
前記車両の環境内の第2の車両の存在を示す情報を感知するように構成されたセンサからセンサ信号を受信することであって、前記センサ信号は、感知した前記情報に基づくことと、
前記センサ信号に基づいて、前記第2の車両が前記車両に後方から接近していることを検出することと、
前記第2の車両が前記車両に後方から接近していることを検出することに応答して、前記第2の触覚出力装置が第1の触覚効果を生成することを決定することと、
前記第1の触覚効果を生成する決定に応答して、第1の触覚制御信号を出力して前記第1の触覚制御信号を前記第2の触覚出力装置に伝達することによって、前記第1の触覚効果を生成するように前記第2の触覚出力装置を制御することであって、前記第2の触覚出力装置は、前記プロセッサから前記第1の触覚制御信号を受信し、前記第1の触覚制御信号に基づいて前記第1の触覚効果を生成するように構成されることと、
前記第2の車両が前記車両に後方から接近した後に、前記第2の車両が前記車両を追い抜くことを検出することと、
前記第2の車両が前記車両を追い抜くことを検出することに応答して、前記第1の触覚出力装置が第2の触覚効果を生成することを決定することと、
前記第2の触覚効果を生成する決定に応答して、第2の触覚制御信号を出力して前記第2の触覚制御信号を前記第1の触覚出力装置に伝達することによって、前記第2の触覚効果を生成するように前記第1の触覚出力装置を制御することであって、前記第1の触覚出力装置は、前記プロセッサから前記第2の触覚制御信号を受信し、前記第2の触覚制御信号に基づいて前記第2の触覚効果を生成するように構成されることと
を行うように構成される、システム。
【請求項2】
前記第1の触覚出力装置は、前記シートベルトの張力機構の一部であり、前記シートベルトの張力を調整することによって、運動感覚触覚効果として前記第2の触覚効果を生成するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の触覚出力装置は、前記シートベルトに埋め込まれた振動触覚出力装置を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記座席上又は前記座席内に配置された第3の触覚出力装置をさらに備え、
前記プロセッサは、
前記第2の車両が前記車両の死角ゾーンに入ることを検出することと、
前記第2の車両が前記車両の前記死角ゾーンに入ることを検出することに応答して、前記座席において第3の触覚効果を生成するように前記第3の触覚出力装置を制御することと、
を行うように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記車両は、ハンドルをさらに備え、
前記システムは、前記ハンドルに、又は前記ハンドル内に配置された第3の触覚出力装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第3の触覚出力装置は、前記ハンドル上の複数の点において変形を生じさせるように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記車両の状態を感知するように構成された第2のセンサをさらに備え、
前記車両の前記状態は、
前記車両の速度、
前記車両のタイヤ圧、
前記車両のエンジン状態、
前記車両にブレーキの不具合があるかどうか、
前記車両が過熱状態になっているかどうか、又は
前記車両のエンジンがガス欠になりかけているかどうか、
のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサは、前記システムの一部であり、前記第2の車両の前記存在を感知するように構成された近接センサである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記車両のドライバーの状態を感知するように構成された生体センサをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における継続的な注意を触覚フィードバックを用いて強化するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精巧なセンサーシステムを搭載するインテリジェント車両は、ドライバーが通常知り得る以上の情報である、運転状態及び運転環境に関する情報へのアクセスを提供する。こうしたデータに対して継続的に注意を向けたりアクセスしたりすることにより、ドライバー及び搭乗者の安全性を顕著に改善することができる。しかしながら、こうしたデータを、視覚、音声、又は基本的な振動触覚フィードバックを用いて表示しても、効果が薄く、情報を正確に伝達することが困難であり、ドライバーの認知機能に負担をかけ、及び/又は、暫くするとドライバーにとって迷惑なものとなり得る。また、技術の発達及び車両の自動化により、多くの場合、ドライバーが、車両の周囲の環境に対して細心の注意を払うことの必要性を取り除いている。ドライバーが、道路の状態、車両の動的特性、周囲の他の自動車の状況といった情報から切り離されてしまうと、ドライバーの介在を必要とする緊急事態が生じた場合に、制御を維持するように迅速に反応できないことがある。
【0003】
周囲の状況に対する不注意は、自動車事故の主要な原因1つである。ドライバーが集中することを要求される状況では、一瞬の油断しただけでも、事故の可能性が顕著に増大してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
継続的であって且つ直感的な方法で、運転状況及び周囲に対するドライバの意識を向上させ、これにより、緊急事態に対して反応するドライバの能力をより効果的に改善することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、車両のためのシステムが提供される。システムは、車両の周囲、環境及び/又は状態に関連する情報を検出して、検出した前記情報に基づいてセンサ信号を出力するセンサと、前記センサ信号を受信し、前記センサ信号に基づいて前記システムが提示すべき触覚フィードバックを決定し、触覚制御信号を出力するプロセッサと、前記プロセッサから前記触覚制御信号を受信し、前記触覚制御信号に基づいて前記車両のドライバーに対する前記触覚フィードバックを生成する、触覚出力装置とを備える。
【0006】
一実施形態において、前記触覚出力装置は、前記車両の前記ドライバーの座席に配置される。
【0007】
一実施形態において、前記センサによって検出される前記情報は、前記車両に対する第2の車両の位置を含む。一実施形態において、前記触覚フィードバックは、前記車両に対する前記第2の車両の前記位置を示すべく、前記座席内を移動する運動感覚フィードバックを含む。
【0008】
一実施形態において、前記センサによって検出される前記情報は、前記車両が走行する道路上の道路標示の前記車両に対する位置を含む。一実施形態において、前記触覚フィードバックは、前記道路上の前記道路標示の前記車両に対する前記位置を示すべく、前記座席内を移動する運動感覚フィードバックを含む。
【0009】
一実施形態において、前記触覚出力装置は、前記車両の前記ハンドルに配置される。一実施形態において、前記触覚出力装置は、前記触覚フィードバックのために、前記ハンドルを変形させる又は前記ハンドルの剛性を変化させるように構成される。
【0010】
一実施形態において、前記触覚出力装置は、前記ドライバーのシートベルトに配置される。一実施形態において、触覚フィードバックは、運動感覚フィードバック及び/又は振動触覚フィードバックを含む。
【0011】
本発明の一態様によれば、少なくとも一つのセンサを使用して、車両の周囲、環境及び/又は状態から情報を検出する工程と、プロセッサを使用して、前記センサが検出した前記情報に基づいて前記車両のドライバーに対して生成すべき触覚フィードバックを決定し、触覚制御信号を生成する工程と、前記プロセッサから受信した前記触覚制御信号に基づいて、触覚出力装置を使用して前記ドライバーに対する前記触覚フィードバックを生成する工程と、を備える方法が提供される。
【0012】
一実施形態において、触覚フィードバックは、運動感覚フィードバックを含む。
【0013】
一実施形態において、触覚フィードバックは、振動触覚フィードバックを含む。
【0014】
本発明の一態様によれば、ドライバーの座席と、シートベルトと、ハンドルと、前記車両のドライバーに触覚フィードバックを提供するシステムと、を備える車両が提供される。システムは、車両の周囲、環境及び/又は状態に関連する情報を検出して、検出した前記情報に基づいてセンサ信号を出力するセンサと、前記センサ信号を受信し、前記センサ信号に基づいて前記システムに提示すべき触覚フィードバックを決定し、触覚制御信号を出力するプロセッサと、前記プロセッサから前記触覚制御信号を受信し、前記触覚制御信号に基づいて前記車両のドライバーに対する前記触覚フィードバックを生成する、触覚出力装置とを備える。
【0015】
一実施形態において、前記触覚出力装置は、運動感覚フィードバックを生成するように構成される。
【0016】
一実施形態において、前記システムは、第2触覚出力装置を更に備え、前記第2触覚出力装置は、振動触覚フィードバックを生成するように構成される。
【0017】
一実施形態において、前記触覚出力装置は、前記ドライバーの座席に配置される。
【0018】
一実施形態において、前記触覚出力装置は、前記ハンドルに配置される。
【0019】
一実施形態において、前記触覚出力装置は、前記シートベルトに操作可能に接続される。一実施形態において、前記触覚出力装置は、前記シートベルトの張力機構の一部であり、運動感覚フィードバックを生成するように構成される。一実施形態において、前記触覚出力装置は、前記シートベルトに埋め込まれ、振動触覚フィードバックを生成するように構成される。
【0020】
本発明の上記及び上記以外の目的、特徴、及び性質、並びに、関連する構成要素の動作方法及び機能、そして製造における各部分の組み合わせと経済性については、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明と添付の特許請求の範囲を検討することによってさらに明らかになる。これらはいずれも本明細書の一部を構成する。添付図面は例示及び説明のためのものであり、本発明の発明特定事項の定義として用いることは意図されていない。本明細書及び特許請求の範囲における用法によれば、単数形の「a」、「an」及び「the」には複数のものへの言及が含まれる。ただし、文脈によって別に解すべきことが明白な場合はこの限りでない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下の図面の構成要素は、本開示の原理の概略を強調するように描写されており、必ずしも寸法通りには記載されていない。一貫性及び明瞭性を確保するために、対応する構成要素を指し示す参照符号は、必要に応じ、複数の図面にわたって繰り返し用いられる。
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る車両のためのシステムを模式的に示す。
【0023】
図2図1のシステムのプロセッサを模式的に示す。
【0024】
図3A図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
図3B図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
【0025】
図4A図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
図4B図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
【0026】
図5A図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
図5B図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
図5C図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
【0027】
図6A図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
図6B図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
【0028】
図7A図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
図7B図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
図8A図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
図8B図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
図9A図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
図9B図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
【0029】
図10図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
【0030】
図11図1のシステムの一実施態様を模式的に示す。
【0031】
図12】本発明の一実施形態に係る方法のフローチャートを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム100の模式図である。システム100は、例えば、デスクトップ・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、電子ワークブック、電子ハンドヘルド装置(例えば、携帯電話、スマートフォン、ゲーム装置、携帯情報端末(personal digital assistant:「PDA」)、携帯用電子メール装置、携帯用インターネット・アクセス装置、電卓など)、ゲーム・コントローラ、又はウェアラブルデバイス等の電子装置の一部である。または、システム100は、車両等のより大きな機械的装置に統合され得る。システム100について以下で詳述する。図示されるように、システム100は、プロセッサ110、記憶装置120、及び、入出力装置130を備えており、これらはバス140を介して相互に接続されている。一実施形態において、入出力装置130は、少なくとも一つのセンサ150、少なくとも一つの触覚出力装置160、少なくとも一つの無線受信機170、及び/又はその他の入出力装置を備えてもよい。
【0033】
プロセッサ110は、汎用又は特殊用途プロセッサ、あるいはシステム100の動作及び機能を管理又は制御するマイクロ・コントローラである。例えば、プロセッサ110は、触覚フィードバック又は触覚効果を提供するために、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit:「ASIC」)として、車両のドライバー等の入出力装置130のユーザへの出力信号を制御するように特別に設計されてもよい。プロセッサ110は、プロセッサ110が受信した又は決定した触覚信号に基づいてどのような触覚フィードバック又は効果が生成されるべきか、当該触覚効果がどのような順序で生成されるべきか、及び、どの程度の大きさ、頻度、持続時間の触覚効果とすべきか、及び/又は、触覚効果のその他のパラメータについて、所定の因子に基づいて決定してもよい。また、プロセッサ110は、特定の触覚効果を提供するために触覚出力装置160を駆動するのに使用することができるストリーミング・コマンドを提供するように構成されてもよい。一部の実施形態においては、プロセッサ110は実際には複数のプロセッサを含み、当該プロセッサの各々がシステム100内で特定の機能を果たすように構成される。プロセッサ110についての詳細は後述する。
【0034】
メモリデバイス120としては、内部に固定された1つ又は複数の記憶ユニット、リムーバブル記憶ユニット及び/又はリモート・アクセスが可能な記憶ユニットを含む。これら様々な記憶ユニットは、揮発性メモリと不揮発性メモリとのいかなる組合せをも含み得る。記憶ユニットは、情報、データ、命令、ソフトウェア・コードなどのいかなる組合せをも記憶し得るように構成されている。より具体的には、記憶ユニットは、触覚効果のプロフィール、入出力装置130の触覚出力装置160がいかにして駆動されるかを指示する命令、又は触覚フィードバック又は触覚効果を生成するためのその他の情報を含む。
【0035】
バス140は、システム100の様々な構成要素間の信号通信を可能とし、例えば、ネットワークを介して、リモートコンピュータ又はサーバからの情報にアクセス可能に構成されてもよい。ネットワークは、例えば、インターネット、イントラネット、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、SAN(Storage Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、無線ネットワーク、セルラー通信ネットワーク、公衆交換電話網、および/またはこれら以外のネットワークの一又は複数である。
【0036】
センサ150は、以下のタイプのセンサのうちの1又は複数のものを含み得る。一実施形態において、センサ150は、ユーザの身体とユーザが座っているシートやユーザが操作しているハンドル等の様々な車両の部品との間の接触圧(touch pressure)の大きさを計測するように構成された1又は複数の歪みゲージセンサを含んでもよい。一実施形態において、センサ150は、車両内の各接触位置に作用する圧力を計測するように構成されたマルチタッチ圧力センサを含んでもよい。一実施形態において、センサ150は、車両の制御インタフェースに作用する力/圧力を計測するように構成された感圧抵抗(「FSR」)センサを含んでもよい。一実施形態において、センサ150は、車両の内側と外側両方の環境状態及び道路状態を計測するように構成された温度センサ、湿度センサ、及び/又は気圧センサを含んでもよい。一実施形態において、センサ150は、例えば心拍数等のユーザの生体情報の測定値を取得するように構成された生体センサを含んでもよい。一実施形態において、センサ150は、ユーザの顔面の表情及び関連する生体情報を取得するように構成されたイメージセンサ及び/又はカメラを含んでもよい。
【0037】
一実施形態において、センサ150は、当該センサ150を備えた車両の付近の他の車両の存在を検出するように構成された近接センサを含んでもよい。例えば、センサ150は、当該センサ150を含む車両の後方から接近する他の車両を感知し、及び/又は、ドライバの死角にいる他の車両を感知するように構成された超音波センサであってもよい。こうしたセンサは、当該技術分野において既に知られており、インテリジェント車両において搭載されている。一実施形態において、センサ150は、カメラ及びイメージプロセッサを含み、以下でさらに詳細に説明するように、車両が通行中の道路における車線等の標識に対する当該車両の位置を検出するように構成されてもよい。一実施形態において、センサ150は、他の車両やインフラ設備から送信された信号を感知するように構成されてもよい。当該他の車両又は当該インフラ設備は、当該他の車両や当該インフラ設備等の状態に関する情報を提供する。車両の状態、周辺状況、又は環境を感知するために、上記以外のセンサを用いてもよい。例えば、センサ150は、車両の速度、近接している他の車両に対する当該車両の速度、タイヤ圧、エンジン状態、ブレーキの不具合等を感知するタイプのセンサであってもよい。上述した実施形態は、いかなる限定をも意味するものではない。
【0038】
触覚出力装置160は、システム100を備える車両のドライバー等のシステム100のユーザに対して触覚フィードバックを提供するように構成される。当該触角フィードバックは、変形、運動感覚フィードバック(kinesthetic feedback)又は運動感覚刺激(kinesthetic sensations)、振動、振動触覚フィードバック(vibrotactile feedback)、静電摩擦又は超音波摩擦等の触覚効果を生成する任意の方法によって生成されてもよい。一実施形態において、触覚出力装置160が含み得るアクチュエータは、例えば、偏心質量体がモータにより動かされる偏心回転質量体(「ERM」)などの電磁アクチュエータ、ばねに取り付けられた質量体が前後に駆動されるリニア共振アクチュエータ(「LRA」)、または圧電材料、電気活性ポリマー、もしくは形状記憶合金などの「スマートマテリアル」、マクロ繊維複合材アクチュエータ、静電気アクチュエータ、電気触感アクチュエータ、および/または触覚(例えば、振動触覚)フィードバック又は運動感覚フィードバックなどの物理的フィードバックを提供する他の種類のアクチュエータ、である。一実施形態において、触覚出力装置160は、非機械的又は非振動装置、例えば、静電摩擦(「ESF」)や超音波表面摩擦(「USF」)を用いる装置、超音波触覚トランスデューサを用いて音響放射圧力を生じさせる装置、触覚基板及び可撓性もしくは変形可能な表面を用いる装置、又はエアジェットを用いた空気の吹きかけなどの発射型の触覚出力を提供する装置などを含んでもよい。異なる複数の触覚効果を生成させるのに、複数の触覚出力装置160を使用してもよく、それにより、変形、振動等の幅広い種類の効果を生成させることができる。
【0039】
以下で詳細に説明するように、単数又は複数の触覚出力装置160は、ユーザに常時接触し又はユーザに常時触れられている表面が移動又は振動して当該ユーザに触覚フィードバックを提供できるように、車両内に配置されてもよい。例えば、触覚出力装置160は、以下で詳述するように、当該車両の運転席に設置されてもよく、また、アラート、指向性効果(directional effects)等を提供するように配置される。本発明の実施形態において、単数又は複数の触覚出力装置160は、ハンドル、ドライバーのシートベルト、又はドライバーが運転中に日常的に接触する前記以外の任意の表面に、つまり、その内部に又はそれらに接触するように、配置される。
【0040】
無線受信機170は、ドライバーに対して危険な状況、交通状況の変化、厳しい天候等を警告するために、路上のインテリジェントインフラストラクチャー(intelligent infrastructure)、交通管制極、警察車両、緊急車両等から放送される情報を受信するように構成されてもよい。無線受信機170は、当該情報を受信すると、以下で詳述するように、後段の処理のためにプロセッサ110に対して入力信号を送信することができる。一実施形態において、無線受信機170はセンサ150の一部分であってもよい。図示した実施形態は、限定することを意図していない。
【0041】
図2は、プロセッサ110の一実施形態をより詳細に例示している。プロセッサ110は、一又は複数のコンピュータ・プログラム・モジュールを実行するように構成されてもよい。当該一又は複数のコンピュータ・プログラム・モジュールは、センサモジュール112、受信モジュール114、判定モジュール116、触覚出力装置制御モジュール118及び/又はこれら以外のモジュールのうちの一又は複数を備えることができる。プロセッサ110は更に、メモリデバイス120と同じであってもよい電子記憶装置119を備えてもよい、又は、メモリデバイス120に加えて当該電子記憶装置を備えてもよい。プロセッサ110は、モジュール112、114、116、及び/又は118を実行する際に、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、及び/又は、ソフトウェア、ハードウェア及び/又はファームウェアの任意の組み合わせを用いてもよい、及び/又はプロセッサ110の処理能力を構成する他の機構を用いてもよい。
【0042】
図2においてモジュール112、114、116、及び118は単一の処理装置内の同じ位置に配置されるものとして示されるが、プロセッサ110が複数の処理装置を含む実施形態においては、モジュール112、114、116、及び/又は118のうちの一又は複数が他のモジュールから離れて配置されてもよい。以下の異なるモジュール112、114、116、及び/又は118によって提供される機能の記述は説明のためのものであり、限定を意図したものではない。モジュール112、114、116、及び/又は118はいずれも記述されるよりも多くの、又は少ない機能を提供してもよい。例えば、モジュール112、114、116、及び/又は118のうちの一又は複数を取り除き、その機能の一部又はすべてを、モジュール112、114、116、及び/又は118のうちの他のモジュールで提供してもよい。他の例として、以下でモジュール112、114、116、及び/又は118のうちの1つに帰せられる機能の一部又はすべてを実行する1つ又は複数の追加的なモジュールを実行するように、プロセッサ110が構成されてもよい。
【0043】
センサモジュール112は、センサ150がユーザが注意を向けるべき状態を検出したときに生成されるセンサ150からの入力信号を受信するように構成され又はプログラムされる。当該状態は、ユーザの眠気等のユーザの状態、過熱されたりガス欠で走っているといった車両の状態、低すぎるタイヤ圧、車両の接近・ユーザの死角に入っている車両等の車両の周辺状態、又は通行中の道路が滑りやすいといった環境状態に関連していてもよい。センサモジュール112はまた、更なる処理のために信号を判定モジュール114へと送信するように構成され又はプログラムされる。
【0044】
受信モジュール114は、以下で詳述するように、無線受信機170が送信機から情報を受信したときに生成される入力信号を無線受信機170から受信するように構成され又はプログラムされる。受信モジュール114はまた、更なる処理のために信号を判定モジュール114へと送信するように構成される。
【0045】
判定モジュール116は、センサ150からの入力信号及び/又は無線受信機170からの入力信号に応じてシステム100によってどのようなアクションがとられるべきか、また、触覚出力装置160によってどのような触覚フィードバックを生成すべきかを決定するように構成され又はプログラムされる。判定モジュール116は、当該判定モジュール116が対応する出力を決定することができるように、システム100が利用可能なセンサ情報のライブラリ及び対応する触覚効果を用いてプログラムされてもよい。また、判定モジュール116は、触覚出力装置制御モジュール118に信号を出力して、好適な触覚効果をユーザに提供してもよい。また、当該判定モジュール116は、当該システムによる別のアクションを決定してもよい。例えば、センサ150が車両前方の車の流れが悪くなったことを感知した場合や無線受信機170が前方で発生した交通事故の情報を受信した場合等にブレーキを効かせることを決定できる。
【0046】
触覚出力装置制御モジュール118は、判定モジュール116が生成する信号に基づいて、触覚出力装置160へ出力される触覚制御信号を決定するように構成され又はプログラムされる。当該触覚制御信号を決定することには、所望の効果がユーザに提供するために触覚出力装置160によって生成される触覚フィードバックの振幅、周波数、期間等を含む1つ又は複数のパラメータを決定することを含んでもよい。
【0047】
本発明の実施形態は、既に多くの車両に搭載されているインテリジェント車両システムを利用できる。インテリジェント車両システムの利用は、かかる車両に設けられているセンサを用いることにより行われる。一実施形態において、車両のユーザは、本発明の実施形態に係るシステム100を作動させ又は停止させることを選択することができる。例えば、ユーザは、本発明のシステム100を起動して、継続的な注意機能を使用する選択肢を有してもよい。システム100は、一旦作動すると、他の車両の位置に関する情報又は他の車両からの情報、道路状態、当該車両の動的特性(例えば、速度、加速度、ジャーク、ヨー、横揺れ(roll)、縦揺れ(pitch)等)などの環境からの情報を常時受信し処理する。また、当該システムは、当該車両の内部に設けられている単数又は複数のセンサを用いてユーザのステータス(例えば、座った姿勢、ジェスチャ等)をキャプチャしてもよい。具体的には、圧力情報は、上述した歪みゲージセンサ等の力変換器(force transducer)を用いて取得することができる。当該システム100は、ユーザからの入力及び/又は受信情報に応じて、当該車両に設けられた単数又は複数の有機的(organic)/変形触覚出力装置160に所定の触覚出力コマンドを送信することができる。当該触覚出力装置160は、プロセッサ110から当該コマンドを受信し、ユーザに対して運動感覚触覚フィードバック(kinesthetic haptic feedback)を生成する。当該システム100は、環境情報並びにユーザの入力、姿勢、及び身振りでのインタラクション(gestural interaction)をオン状態にある限り継続的にモニターするように構成される。
【0048】
一実施形態において、センサ150によって感知され又は無線受信機170によって受信される危険レベルは、触覚出力装置160によってドライバーDの座席Sに生成される変形/形状変化触覚効果を通じて提示されてもよい。一実施形態において、単数又は複数の触覚効果は、座席Sの任意の位置に提示されうる。一実施形態において、当該システムは、ドライバーの身体と座席Sとの間の単数又は複数の接触位置を特定し、当該接触位置のある領域又はその近辺にのみ触覚効果を提示するために、歪みゲージセンサ又はFSRタイプセンサ150を用いることができる。例えば、図3Aに示されているように、第1の触覚出力装置310はドライバーDの背中上部及び肩が座席と接触する位置に設けられ、第2触覚出力装置320はドライバーの背中下部が当該座席に接触する位置(例えば、ランバー・サポートが配置される位置)に設けられ、第3触覚出力装置330はドライバーDの脚がのる座席の縁の付近に設けられる。触覚出力装置310,320,330は、これらによって生成される座席Sの変形の範囲を示すために模式的に楕円形状に表されている。触覚出力装置310,320,330の各々によって生成される変形は、ドライバーを煩わせることなく直感的な方法で継続的に情報を提示することができる。例えば、当該変形の大きさは、危険のレベルや切迫度に基づいて変調されてもよい。危険度がより大きい危険又は切迫度より高い危険に応じて、図3Bの矢印Aで示されるように、より大きな変形が生じる。一実施形態においては、運動感覚触覚効果を振動触覚フィードバックと組み合わせることにより、さらに豊富な情報を伝達することができる。変形を通じた継続的な状況注意を行うことにより、ドライバーDは各時点において、どの程度警戒し、そしてどの程度素早く反応すべきか認識することができる。車載警告システムの現行仕様で用いられているように危機が切迫しているときにだけ1回限りの警告を行うのではなく(その時点は遅すぎることがある)、触覚出力装置310,320,330を介して、危険の程度及びより重要な点としてドライバーがどの程度警戒すべきかを継続的にユーザに伝達することができる。
【0049】
一部の運転状況においては、ドライバーが注意を払うべき道路の部分(左、右、後、前等)に非対称性が存在することがある。一実施形態において、システム100は、ドライバーの注意を保つともに道路の特定の部分又は特定の方向にドライバーの注意を継続的に向けさせるような変形、すなわち、運動感覚触覚効果を生成する触覚出力装置160を通じて空間情報を伝達するように構成される。たとえそれほどの注意が必要とされない場合であっても、道路の所定の部分にドライバーの注意を集中させることにより、ドライバーの認識及び事故への対応能力を最適化することができる。システム100は、例えば、図4Aに示されているように、運転席SのドライバーDの左肩の位置近辺に設けられる第1触覚出力装置410と、運転席SにおけるドライバーDの背中上部の中央近辺に設けられる第2触覚出力装置420と、運転席SにおけるドライバーDの右肩の位置近辺に設けられる第3触覚出力装置430とを備えてもよい。ドライバーDは、左バックミラーLM、中央バックミラーCM、及び右バックミラーRMを用いて、後方から接近する車両、当該ドライバーの車両に追い抜かれる車両、又は当該ドライバーの車両を追い抜く車両などの車両周辺を把握することができるが、触覚出力装置410,420,430を用いることにより、ドライバーDが注意散漫なときであっても触覚合図(haptic cue)を提供することができる。
【0050】
例えば、図4Bは、本発明の一実施形態に従ったシステム100を含む車両V1を示している。この車両V1は、道路の中央レーンCLを走行している。第2車両V2は道路の右レーンRLを走行しており、第3車両V3は道路の左レーンLLを走行している。システム100の少なくとも1つのセンサ150は、他の車両V2,V3がシステム100を備えた車両V1の既定の範囲PRに入っているか否かを感知するように構成される。この範囲PRは、図4Bにおいて複数の同心円によって示されている。右レーンRLにいる第2車両V2が車両V1に接近すると、第3触覚出力装置430は、座席Sに与えられる変形の量を増加させることができ、これによりドライバーDは、車両V2の存在を「感じる」ことができる。同様に、右レーンRLにいる第2車両V2が車両V1から離れると、第3触覚出力装置430は、第2車両V2がもはや車両V1の既定の範囲PR内に存在しなくなる時まで、座席Sに与えられる変形の量を減少させることができる。第1触覚出力装置410は、第3車両V3が車両V1に接近し当該既定の範囲PRに入った時に作動するようにしてもよい。第1触覚出力装置410によって座席Sに与えられる変形の量は、第3車両V3が第1車両V1に近づくにつれて増加するようにしてもよく、そして、第3車両V3が第1車両V1から離れるにつれて減少するようにしてもよい。同様に、第2触覚出力装置420を使用して、中央レーンCLにおいて車両(図示せず)がドライバーDの車両V1の真後ろから近づいていることをドライバーDに警告してもよい。このような触覚フィードバックにより、ドライバーDの視野だけでは気付かないような情報を提供することができ、特に、ドライバーDが別のことに気をとられている時に別の車両がドライバーDの車両V1に近づいた場合などに有用である。
【0051】
一実施形態において、システム100は、当該システム100を備える車両V1の近くに存在する車両V2、V3の位置についての情報を提示するように構成されてもよく、ユーザの身体と車両の内装との間の様々な接触点において提示が行われてもよい。例えば、図5Aには、システム100を備える車両V1に対する複数の異なるゾーンが示されており、接近ゾーンAZ、すなわち、車両V3のような近づいてくる車両がドライバーの死角に入るちょうど手前のゾーンと、ドライバーの死角を含む死角ゾーンBZとが設けられている。この実施形態では、ドライバーは、接近ゾーンAZに車両V3が入ると、その存在を座席Sの背面で触覚フィードバックとして感じることができ、この触覚フィードバックは、図5B及び5Cに示すように、座席Sの後ろ側に位置する第1触覚出力装置510によって生成される。第1触覚出力装置510の模式図として、第1触覚出力装置510によって生成される触覚フィードバックの範囲、又は、複数の第1触覚出力装置が設けられる範囲が表示されている。座席Sには更に、座席Sの左側又は座席のハンドル部分に第2触覚出力装置520を有してもよく、例えば、第1触覚出力装置510での触覚フィードバックの生成を止めて第2触覚出力装置520による生成を開始することにより、車両V3が車両V1の左側の死角ゾーンBZに入ると、触覚フィードバックが座席Sの左側又は座席のハンドルに向かってシフトするように構成することができる。第2触覚出力装置520の模式図として、第2触覚出力装置520によって生成される触覚フィードバックの範囲、又は、複数の第2触覚出力装置が設けられる範囲が表示されている。近づいてきた車両V3が通り過ぎると、体を媒介した連続的な触覚効果が、例えば、シートベルトを介してドライバーの体の正面側に提示されてもよい。第3触覚出力装置(図示せず)を座席Sの右側又は座席Sのハンドル部分に設けることにより、右側レーンRLの車両V2を車両V1が通り過ぎると同様な効果が生成されるようにしてもよく、具体的には、車両V1の右側のドライバーの死角ゾーンBZに車両V2が入った時に、第3触覚出力装置によって触覚フィードバックが生成されてもよい。車両V1と通過した車両V2との間の距離が、ドライバーが車両V1を右側のレーンRLに入れるのに安全となり、前方を走行する車両V2との車間距離も安全な範囲となった時に、触覚フィードバックを第1触覚出力装置510によって生成することにより、触覚フィードバックを座席Sの後ろ側へとシフトさせてもよい。上記の構成を使用して、車両V1及びその周囲環境が、ユーザ/ドライバーの体の延長触覚効果として知覚されるユーザ/ドライバーに対するメンタルモデルを構築してもよい。近くに存在する車両の位置、接近パターン及び/又は相対的な距離の直感的感覚を生成することにより、周囲環境についての知覚を提供でき、必要に応じて、ドライバーの能力を大幅に改善させることができる。
【0052】
一実施形態において、システム100は、道路及び道路を取り巻く環境に関する実際のデータ及びメタデータの全体的な認識をドライバーが受け取るような態様で、車両の様々な構成要素に対して触覚効果を提供するように構成されてもよい。道路及び道路を取り巻く環境の例としては、路面、例えば、点線であるか実線であるかといった道路標示、付近の車両、車両の動き(例えば、曲がり、スリップ)、環境状態等が挙げられる。触覚効果は、ドライバーが日常的に接触する車両の部分であれば、任意の場所で提示されてもよく、例えば、座席、肘掛け、床のマット、ドア等で提示されるようにしてもよい。誘発される触覚効果を、車両の内装に直接接する又は接しないドライバーの体の様々な部分に提示させてもよい。例えば、一実施形態において、触覚出力装置160は、通常は車両と接触しないが、ドライバーが身に付けるウェアラブルデバイスの一部であってもよく、例えば、帽子、ヘッドバンド、ブレスレット、腕時計、ネックレス、洋服等に設けられてもよい。
【0053】
図6Aには、ドライバーの車両V1の右側に位置する別の車両V2の存在を提示するように構成されたシステム100を備える車両V1が示されている。図6Bに概略的に示すように、触覚出力装置610又は複数の触覚出力装置が、ドライバーの座席の右側若しくは座席のハンドル部分に、又は、ドライバーが日常的に腕を乗せる肘掛けに、埋め込まれてもよい。触覚出力装置610の模式図として、触覚出力装置610によって生成される触覚フィードバックの範囲、又は、複数の触覚出力装置が設けられる範囲が表示されている。上記のような形態のユーザに対する触覚フィードバック又は運動感覚フィードバックを生成することにより、ドライバーは、車両V2の存在を目立ち過ぎない態様で感じることができる。
【0054】
図7A、8A及び9Aには、点線BLのような道路標示の上を通過する、システム100を備える車両V1が概略的に示されており、車両V1が、道路の左レーンLLから右レーンRLへと移動する場合が示されている。図7B、8B及び9Bには、図7A、8A及び9Aに示されている時点の車両V1の内装の一部分が概略的に示されている。図7B、8B及び9Bに示すように、第1触覚出力装置又は複数の第1触覚出力装置710がドライバーの座席Sの右側に位置し(図7B)、第2触覚出力装置又は複数の第2触覚出力装置810が座席Sの中央に位置し(図8B)、第3触覚出力装置又は複数の第3触覚出力装置910が座席Sの左側に位置している(図9B)。車両V1の右手側に点線BLがまだ存在する時に第1触覚出力装置710のみを起動し、車両V1が点線BL上であって真ん中に位置した時に第2触覚出力装置810のみを起動し、点線BLが車両V1の左手側に位置した時に第3触覚出力装置910のみを起動することにより、点線BL上の通過に対応するメタデータを触覚的にドライバーに伝達してもよい。一実施形態において、触覚出力装置160によって生成される変形は、座席の右側から左側へと、又は、右側から左側へと物理的に移動するアクチュエータの形態であってもよい。例えば、座席全体に延在するリニアガイドにソレノイドを搭載してもよい。ソレノイドは座席の下からドライバーの体に力を及ぼすと同時に、別のリニアアクチュエータを使用してリニアガイド全体にわたってソレノイドが押されるようにしてもよい。本発明の実施形態は、道路及び/又は車両を取り巻く環境の直感的であって完全なマップを提供し、ドライバーの認知機能に多くの負担をかけることなく、周囲の状況に対するドライバーの注意を大幅に高めることができる有用な手段を提供する。
【0055】
周囲に関する情報及びドライバーに対して警告するのに必要となる情報は、連続的な態様で、運動感覚触覚フィードバックとして変換されてもよく、本発明の実施形態に係るシステム100を備える車両の図10に示すようなハンドルSWの材質を変形又は変化させることにより、運動感覚触覚フィードバックへと変換されてもよい。運動感覚触覚フィードバックは、様々な態様で実現可能である。例えば、ハンドルSWは、図10において矢印A1で示されるような一点の変形点を生成するように構成される第1触覚出力装置1010、矢印A2で示されるような時空間的なパターンの複数の変形点を生成するように構成される単数の又は複数の第2触覚出力装置1020、及び/又は、ドライバの手とハンドルSWとの接点の剛性/やわらかさ/材質の特性を変化させるように構成された第3触覚出力装置1030を備えてもよい。この実施形態において、連続的な情報の流れは、連続的な態様で、運動感覚触覚効果及び/又は振動触覚効果へと変換されてもよく、また、従来の振動触覚フィードバックで起きていたようなドライバーの苛立ち及び/又は慣れの問題が発生しないようにできる。
【0056】
一実施形態において、一の又は複数の触覚出力装置をシートベルトSBに取り付ける又は埋め込んで、ドライバーに対する運動感覚フィードバック及び/又は振動触覚フィードバックを生成するように構成してもよい。図11に示すように、単数の又は複数の触覚出力装置1110は、多くのシートベルトにすでに採用されている牽引力制御機構の一部であってもよく、シートベルトSBの張力を調整することによって、運動感覚フィードバックを伝達してもよい。振動触覚フィードバックを生成するように構成された更なる触覚出力装置1120をシートベルトSBに埋め込んで又は取り付けて、触覚出力装置1110が供給する運動感覚フィードバックに加えて、振動触覚フィードバックを提供してもよい。警告及び環境データのような情報を、このようなインターフェースを通じて連続的な態様で提示してもよい。ドライバーの背中及び側面に対して触覚効果を提供する座席S内の触覚出力装置を備える上記の実施形態では、ドライバーの胸及び脚に対して触覚効果を提示する更なる触覚出力装置1110、1120をシートベルトSBに設けることにより、ドライバーにドライバーの体を介した空間的な触覚効果を提示する有効なメカニズムを提供することができ、また、ドライバーの車両の前方における状況に関する情報も提供することができる。
【0057】
図12は本発明の実施形態にかかる方法1200を概略的に示す。方法1200は、工程1210で開始し、上記のシステム100の機能がONとされる。工程1220において、車両の周囲、環境及び/又は状態に関する情報が、センサ150によって検出される。工程1230において、プロセッサ110は、センサ150から受信したデータを解析し、処理を行う。一実施形態において、別のセンサ150が、ドライバーの安全又は状況注意に関する関連情報、例えば、ドライバーが眠気を催していないか、を検出してもよい。工程1240において、プロセッサ110は、検出された情報に基づいてドライバーに対して生成すべき触覚フィードバックを決定することにより、一の又は複数の触覚出力装置160を通じてユーザ/ドライバに提示すべき触覚合図へと情報を変換して、触覚制御信号を生成し、当該触覚制御信号を触覚出力装置160へと出力する。工程1250において、触覚出力装置160は、プロセッサ110から受信した触覚制御信号に基づいて、触覚フィードバックを生成する。システム100がON状態である限り、方法1200は、工程1220から1250を繰り返す。システム100がOFFにされると、工程1260において方法1200が終了する。
【0058】
上記の本発明の実施形態は、周囲状況に対するドライバーの注意を向上させ、安全性を高めるべく、運転時のインタラクションにおけるセンサの拡張を提供する。上記の本発明の実施形態によれば、ドライバーに精神的負荷又は苛立たしさを与えることなく、継続的に情報を伝達する有効な方法を提供できる。また、上記の本発明の実施形態は、触覚フィードバックの新規の実装形態を提供し、運転シナリオを豊かに及び強化して、ドライバの安全を向上させるのに有効である。また、上記の本発明の実施形態は、商用車で広く使用可能とされている様々な検出情報を利用する。上記の本発明の実施形態は、インテリジェント車両における改良された継続的注意を達成するべく、触覚有機ユーザインターフェースを実装するシステム及び方法を提供する。
【0059】
本明細書に記載された実施形態は、実施可能な実装例および実施例であるが、本発明を特定の実施形態に制限することを必ずしも意図するものではない。むしろ、これら実施形態には、当該技術分野における当業者に理解できるような様々な変更を加えることができる。このような変更が加えられた態様も本発明の要旨及び範囲に含まれ、そして以下の請求項によって保護されるべきものである。

図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12