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  • 特許-口腔用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20221024BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20221024BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/86
A61Q11/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021129546
(22)【出願日】2021-08-06
(62)【分割の表示】P 2017128250の分割
【原出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2021175749
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 健二
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-114657(JP,A)
【文献】特表2002-539268(JP,A)
【文献】特開昭56-037040(JP,A)
【文献】特開昭56-070826(JP,A)
【文献】特開2006-241132(JP,A)
【文献】特開2016-128508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/06
A61K 8/31
A61K 8/34
A61K 8/86
A61Q 11/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクワラン、プロパンジオール、並びにHLB14以上のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する、
O/D型乳化口腔用組成物(但しポリエチレンを含むO/D型乳化口腔用組成物を除く)。
【請求項2】
水の含有量が0質量%~0.5質量%である、請求項1に記載のO/D型乳化口腔用組成物。
【請求項3】
調製後25℃1週間静置により相分離しない、請求項1又は2に記載のO/D型乳化口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物等に関し、より詳細にはO/D型乳化口腔用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な油滴のO/W型の乳化物を得る技術として、界面科学的手法を用いた乳化技術(D相乳化法)が知られている。この乳化技術はD相とも呼ばれる界面活性剤相を利用した乳化法である。界面活性剤相(D相中)に分散相の油を分散保持させてO/D型乳化組成物を生成させ、これを水で希釈してO/W型組成物を得る。なお、O相はoil相(油相)、W相はwater相(水相)、D相はdetergent相(界面活性剤相)を示す。
【0003】
このように、O/D型乳化組成物はO/W型組成物を得るための原料(中間体)として主に用いられてきた(例えば特許文献1、2)。しかし、O/D型乳化組成物は、いってみれば油及び界面活性剤の塊であって、使用感が非常に悪いと思われること(特に界面活性剤により生体が刺激されるおそれがあること)から、O/D型乳化組成物そのものを製品(特に生体に適用する製品)として用いた例は少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-189550号公報
【文献】特開2009-95253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、O/D型乳化組成物を用いた安定な製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、O/D型乳化組成物を口腔内へ適用した場合、予想外にも好ましい使用感が得られることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
炭化水素油、多価アルコール、及び界面活性剤を含有する、O/D型乳化組成物であって、
(i)グリセリン及びHLB11以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するか、又は
(ii)プロパンジオール、ポリエチレングリコール、及びブチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、並びにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する、O/D型乳化口腔用組成物。
項2.
水の含有量が0.5質量%以下である、項1に記載のO/D型乳化口腔用組成物。
項3.
実質的に水を含まない、項1又は2に記載のO/D型乳化口腔用組成物。
項4.
調製後25℃1週間静置により相分離しない、項1~3のいずれかに記載のO/D型乳化口腔用組成物。
項5.
炭化水素油が、スクワラン及びパラフィンからなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素油である、項1~4のいずれかに記載のO/D型乳化口腔用組成物。
項6.
口腔用組成物用担体である、炭化水素油、多価アルコール、及び界面活性剤を含有する、O/D型乳化組成物であって、
(i)グリセリン及びHLB11以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するか、又は
(ii)プロパンジオール、ポリエチレングリコール、及びブチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、並びにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する、O/D型乳化組成物。
【発明の効果】
【0008】
O/D型乳化組成物を用いた安定な製品(口腔用組成物)が提供される。当該O/D型乳化組成物を用いることにより、経時的な相分離が起こらない安定なO/D型乳化口腔用組成物を供給することができる。また、口腔内に適用した際に、予想外にも優れた使用感を得ることができる。例えば、口腔用組成物が多価アルコールを含む場合であっても、多価アルコール特有の灼熱感が抑制されている。また、O/D型乳化組成物特有の感触を口腔内で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】調製した組成物(実施例7及び実施例8、並びに比較例17及び比較例20)の写真を示す。実施例7及び8は調製1週間後の様子を示す。比較例17及び20は調製3日後の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0011】
本発明に包含される口腔用組成物は、O/D型乳化組成物を含んでなる。言い換えれば、本発明に包含される口腔用組成物は、O/D型乳化口腔用組成物である。
【0012】
当該O/D型乳化口腔用組成物には、炭化水素油、多価アルコール、及び界面活性剤が含有される。炭化水素油はO相に、多価アルコール及び界面活性剤はD相に、それぞれ含有される。
【0013】
一方で、当該O/D型乳化口腔用組成物は、実質的に水を含まないことが好ましい。実質的に水を含まないとは、調製に水を原料として用いないということである。ただし、原料(例えば多価アルコール及び炭化水素油)には、極少量ながら水を含むものが存在するため、得られるO/D型乳化口腔用組成物に当該原料由来の水が極少量含まれる場合がある。この原料由来の極少量の水が含まれるO/D型乳化口腔用組成物は、「実質的に水を含まないO/D型乳化口腔用組成物」に包含される。
【0014】
より具体的には、原料由来の水がO/D型乳化口腔用組成物に含まれる場合、その含有量は0質量%より多く0.5質量%以下程度であり、より好ましくは0質量%より多く0.4質量%以下程度である。
【0015】
本発明に用いられるO/D型乳化組成物は、(i)グリセリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するか、又は(ii)プロパンジオール、ポリエチレングリコール、及びブチレングリコール(1,3-ブチレングリコールが好ましい)からなる群より選択される少なくとも1種、並びにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する。プロパンジオ
ールとしては、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)及び1,3-プロパンジオールのいずれも好ましく用いることができる。(ii)においては、多価アルコールとして少なくともプロパンジオール(プロピレングリコール及び1,3-プロパンジオールからなる群より選択される1種以上)を含有することが好ましい。
【0016】
この(i)又は(ii)の多価アルコール及び界面活性剤の組み合わせを用いることにより、実質的に水を含まず、かつ保存安定性が高いO/D型乳化組成物を得ることができる。なお、本発明の効果を損なわないのであれば、(i)及び(ii)に記載の多価アルコール及び界面活性剤以外の多価アルコール及び界面活性剤が含まれていてもよいし、(i)においては多価アルコールはグリセリンのみ、界面活性剤はポリグリセリン脂肪酸エステルのみ、(ii)においては多価アルコールはプロパンジオール、ポリエチレングリコール、及びブチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種のみ、界面活性剤はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のみ、であってもよい。
【0017】
なお、(i)において、グリセリンに加えグリセリン以外の多価アルコールを用いる場合には、O/D型乳化組成物の調製可能性及び安定性の観点から、これらの質量比(グリセリン/グリセリン以外の多価アルコール)は、0.7以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましく、1.4以上であることがよりさらに好ましい。また、(ii)において、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、及びブチレングリコール(1,3-ブチレングリコールが好ましい)からなる群より選択される少なくとも1種にくわえ、これら以外の多価アルコールを用いる場合には、その質量比(プロパンジオール、ポリエチレングリコール、及びブチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種/これら以外の多価アルコール)は、0.8以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましく、1.3以上であることがよりさらに好ましい。
【0018】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数が8~24(8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24)の飽和又は不飽和脂肪酸とポリグリセリンのエステル化合物が好ましい。
【0019】
当該脂肪酸の炭素数は、より好ましくは8~22であり、さらに好ましくは10~20であり、よりさらに好ましくは12~18である。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸の場合は炭素間二重結合数が1、2、3、又は4であることが好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。当該脂肪酸としては、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸等が好ましく例示され、中でもカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸が好ましい。また、これらの脂肪酸を含む、ヤシ油脂肪酸及びパーム油脂肪酸といった天然の脂肪酸を用いてもよい。
【0020】
また、当該ポリグリセリンは、平均4~12(4、5、6、7、8、9、10、11、又は12)のグリセリン単位(-OCHCH(OH)CH-)を含むことが好ましく、平均5~10のグリセリン単位を含むことがより好ましい。
【0021】
好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルとして、より具体的には、例えば、カプリン酸ポリグリセリル-n、ラウリン酸ポリグリセリル-n、ミリスチン酸ポリグリセリル-n、ステアリン酸ポリグリセリル-n、オレイン酸ポリグリセリル-n、(ここでのnはグリセリン単位数を表しており、前記の通り4~12であることが好ましく、特に5又は10が好ましい)等が挙げられる。
【0022】
また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、POE(n)硬化ヒマシ油(ここでnはEO平均付加モル数を表しており、10~150程度が好ましく、15~130程度がさらに好ましく、20~120程度がさらに好ましい)が好ましく例示できる。なお、これはPEG-n水添ヒマシ油と記載することもできる。
【0023】
また、(i)及び(ii)に記載の界面活性剤以外に使用できる界面活性剤としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、ノニオン性界面活性剤が好ましく、より具体的には例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステロール等が挙げられる。
【0024】
また、(i)及び(ii)に記載の界面活性剤も含めて、用いる界面活性剤はHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)が比較的大きなものが好ましく、例えば11以上が好ましく、12以上がより好ましく、13以上がさらに好ましく、14以上がよりさらに好ましく、15以上が特に好ましい。また、HLBの上限は特に限定はされないが、例えば20以下が例示できる。特に(i)に記載の界面活性剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)は、少なくともHLBが11以上のものを用いる。
【0025】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数が8~24(8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24)の飽和又は不飽和脂肪酸と、ソルビトールのポリエチレングリコールエーテルとの、エステル化合物が好ましい。
【0026】
当該脂肪酸の炭素数は、より好ましくは8~22であり、さらに好ましくは10~20であり、よりさらに好ましくは12~18である。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸の場合は炭素間二重結合数が1、2、3、又は4であることが好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。当該脂肪酸としては、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸等が好ましく例示され、中でもカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸が好ましい。また、これらの脂肪酸を含む、ヤシ油脂肪酸及びパーム油脂肪酸といった天然の脂肪酸を用いてもよい。
【0027】
また、当該ポリオキシエチレンは、エチレンオキシドユニット(EO)の平均付加モル数が20~80程度であることが好ましく、25~70程度であることがより好ましく、30~60程度であることがさらに好ましい。
【0028】
また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、前記脂肪酸と、ソルビトールのポリエチレングリコールエーテルとの、モノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、又はシクロエステル化合物が好ましく、トリ又はテトラエステル化合物がより好ましい。
【0029】
好ましいポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして、より具体的には、例えば、テトラオレイン酸ソルベス-n(ここでのnはEO平均付加モル数を表しており、前記の通り20~80程度であることが好ましく、25~70程度であることがより好ましく、30~60程度であることがさらに好ましい)等が挙げられる。
【0030】
ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルは、脂肪酸グリセリル(脂肪酸とグリセリンのモノエステル)のポリエチレングリコールエーテルであり、例えば、炭素数が8~24(8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、2
2、23、又は24)の飽和又は不飽和脂肪酸とグリセリンのモノエステルに、ポリエチレングリコールが結合(エーテル結合)したものが好ましい。
【0031】
当該脂肪酸の炭素数は、より好ましくは8~22であり、さらに好ましくは10~20であり、よりさらに好ましくは12~18である。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸の場合は炭素間二重結合数が1、2、3、又は4であることが好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。当該脂肪酸としては、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸等が好ましく例示され、中でもカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸が好ましい。また、これらの脂肪酸を含む、ヤシ油脂肪酸及びパーム油脂肪酸といった天然の脂肪酸を用いてもよい。
【0032】
また、当該ポリオキシエチレンは、エチレンオキシドユニット(EO)の平均付加モル数が3~200程度であることが好ましく、5~50程度であることがより好ましく、5~30程度であることがさらに好ましい。
【0033】
また、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルとしては、脂肪酸グリセリルの有する2つのヒドロキシル基のうち1つだけがポリエチレングリコールとエーテル結合したものが好ましい。
【0034】
好ましいポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルとして、より具体的には、例えば、ステアリン酸PEG-nグリセリル(ここでのnはEO平均付加モル数を表しており、前記の通り3~200程度であることが好ましく、5~50程度であることがより好ましく、5~30程度であることがさらに好ましい)等が挙げられる。
【0035】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が8~24(8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24)であることが好ましい。より好ましくは8~22であり、さらに好ましくは10~20であり、よりさらに好ましくは12~18である。また、当該アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であり得、直鎖状であることがより好ましい。
【0036】
また、エチレンオキシドユニット(EO)の平均付加モル数が2~100程度であることが好ましく、2~50程度であることがより好ましく、2~40程度であることがさらに好ましい。
【0037】
好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、より具体的には、例えば、POE(n)ラウリルエーテル、POE(n)セチルエーテル、POE(n)ステアリルエーテル、POE(n)ベヘニルエーテル、POE(n)オレイルエーテル(ここでのnはEO平均付加モル数を表しており、前記の通り2~100程度であることが好ましく、2~50程度であることがより好ましく、2~40程度であることがさらに好ましい)等が挙げられる。また、これらの少なくとも2種以上のミックスを用いることもできる。
【0038】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が8~24(8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24)であることが好ましい。より好ましくは8~22であり、さらに好ましくは10~20であり、よりさらに好ましくは12~18である。また、当該アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であり得る。
【0039】
また、エチレンオキシドユニット(EO)の平均付加モル数が2~100程度であることが好ましく、2~50程度であることがより好ましく、2~40程度であることがさらに好ましい。また、プロピレンオキシドユニット(PO)は平均付加モル数が2~12程度であることが好ましく、2~10程度であることがより好ましく、4~8程度であることがさらに好ましい。
【0040】
好ましいポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとして、より具体的には、例えば、PPG-yセテス-x、PPG-yデシルテトラデセス-x(ここでのxはEO平均付加モル数を表しており、前記の通り2~100程度であることが好ましく、2~50程度であることがより好ましく、2~40程度であることがさらに好ましい。また、ここでのyはPO平均付加モル数を表しており、前記の通り、2~12程度であることが好ましく、2~10程度であることがより好ましく、4~8程度であることがさらに好ましい。)等が上げられる。
【0041】
ポリオキシエチレンステロールとしては、PEG-nフィトステロール(ここでnはEO平均付加モル数を表しており、5~100程度が好ましく、5~50程度がさらに好ましく、10~40程度がさらに好ましい)が好ましく例示できる。
【0042】
炭化水素油としては、スクワラン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、セレシン、リモネン、テレビン油等が例示でき、特に口腔用組成物に用いられる公知の炭化水素油が好ましく、中でもスクワラン及びパラフィンが好ましい。スクワランとしては動物性スクワラン及び植物性スクワランのどちらも用いることができ、例えばサメスクワラン、オリーブスクワラン等を好ましく用いることができる。また、パラフィンとしては、流動パラフィンが好ましい。炭化水素油は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
O/D型乳化口腔用組成物における、炭化水素油及び界面活性剤の含有割合は、例えば、界面活性剤1質量部に対して、炭化水素油は5~70質量部程度が好ましく、6~25質量部程度がより好ましく、7~20質量部程度がさらに好ましい。また例えば、界面活性剤1質量部に対して、
また、O/D型乳化口腔用組成物における、多価アルコール及び界面活性剤の含有割合は、例えば、界面活性剤1質量部に対して、多価アルコールは1~40質量部程度が好ましく、2~20程度がより好ましく、3~15程度がさらに好ましい。
【0044】
また、O/D型乳化口腔用組成物における、炭化水素油及び多価アルコールの含有割合は、例えば、多価アルコール1質量部に対して、炭化水素油は0.5~5質量部程度が好ましく、0.7~4程度がより好ましく、1~2程度がさらに好ましい。なお、(i)の組み合わせを用いる場合であって、O/D型乳化口腔用組成物を歯ブラシにのせて使う場合には、特に多価アルコール1質量部に対して、炭化水素油は1~5質量部程度が好ましく、1.2~4程度がより好ましい。また、(ii)の組み合わせを用いる場合には、特に多価アルコール1質量部に対して、炭化水素油は2~5質量部程度が好ましく、2.5~4程度がより好ましい。
【0045】
これらO/D型乳化口腔用組成物における、炭化水素油及び界面活性剤の含有割合、多価アルコール及び界面活性剤の含有割合、並びに炭化水素油及び多価アルコールの含有割合は、O/D型乳化組成物が調製されるのであれば特に制限されるわけではないが、いずれか1つを満たすことが好ましく、いずれか2つを満たすことがより好ましく、3つ全てを満たすことがさらに好ましい。
【0046】
これらO/D型乳化口腔用組成物における、炭化水素油、多価アルコール、及び界面活
性剤の含有量は、O/D型乳化組成物が調製されれば特に制限されるわけではないが、炭化水素油は、40~80質量%程度が好ましく、45~75質量%程度がより好ましく、50~75質量%程度がさらに好ましい。また、多価アルコールは、1~55質量%程度が好ましく、5~45質量%程度がより好ましく、10~40質量%程度がさらに好ましい。また、界面活性剤は、1~10質量%程度が好ましく、2~8質量%程度がより好ましく、3~7質量%程度がさらに好ましい。
【0047】
また、これらの含有割案及び含有量は、O/D型乳化口腔用組成物に含まれる全ての多価アルコールの合計、及び全ての界面活性剤の合計、に基づいて算出される値である。例えば、(i)及び(ii)に記載の多価アルコール及び界面活性剤以外の多価アルコール及び界面活性剤が含まれている場合は、当該その他の多価アルコール及び界面活性の含有量を(i)及び(ii)に記載の多価アルコール及び界面活性剤含有量に合算したうえで、算出される。また例えば、(i)においては多価アルコールはグリセリンのみ、界面活性剤はポリグリセリン脂肪酸エステルのみ、(ii)においては多価アルコールはプロパンジオール、ポリエチレングリコール、及びブチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種のみ、界面活性剤はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のみしか含まない場合には、これらの成分量のみに基づいて算出される。
【0048】
O/D型乳化口腔用組成物はできるだけ安定なものが好ましい。例えば調製後室温(25℃)で1週間静置したときに、相分離を起こさないものが好ましい。上述の通り、(i)又は(ii)の多価アルコール及び界面活性剤の組み合わせを用いることにより、実質的に水を含まず、かつ保存安定性が高いO/D型乳化組成物を得ることができる。
【0049】
O/D型乳化口腔用組成物の調製方法としては、例えば、多価アルコールと界面活性剤とをまず撹拌し混合した後、撹拌を続けながら、当該混合物に炭化水素油を徐々に加えて混合する方法が挙げられる。混合は公知の攪拌機(例えばディスパーミキサー等)により行うことができる。一度に大量に炭化水素油を加えると均一に混ざらないか、あるいは粘性を帯びない(相分離が起こる、あるいは液状のままである、といった状態になる)場合があるため、少しずつ加えることが好ましい。
【0050】
本発明に係る口腔用組成物は、特に限定するものではないが、常法に従って例えば練歯磨剤、液体歯磨剤、洗口剤(マウスウォッシュ)、ジェル剤、軟膏状製剤、パスタ剤、ガム剤等の通常の剤形にすることができる。
【0051】
本発明の効果を損なわない範囲において、O/D型乳化口腔用組成物には、口腔用組成物に含有させることができる公知の成分を含ませてもよい。ただし、このような成分を含ませることにより、O/D型乳化口腔用組成物が調製でき無くなる場合には、好ましくない。このような成分を加えたO/D型乳化口腔用組成物は、例えば、多価アルコールと界面活性剤とをまず撹拌し混合する際、一緒に当該成分を加えて混合する方法により調製することができる。
【0052】
このような公知の成分としては、例えば、研磨剤、湿潤剤、香料、活性剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、安定化剤、矯味剤、収れん剤、増粘剤、他の薬効剤等が挙げられる。なお、このような公知の成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
研磨剤としては、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、無水ケイ酸、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチ
ル、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂等を用いることができる。
【0054】
上記多価アルコールは湿潤剤としても作用し得るが、その他にも、湿潤剤として、例えば、エタノール等が挙げられる。
【0055】
香料としては、例えば、メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、ウインターグリーン、サリチル酸メチル、シオネール、チモール、丁字油、ユーカリ油、ローズマリー油、セージ油、レモン油、オレンジ油、オシメン油、シトロネロール、メチルオイゲノール等が挙げられる。
【0056】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、α-メトキシシンナミックアルデヒド、キシリット、スクラロース、パラチノース、ステビアフィン等が挙げられる。
【0057】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0058】
着色剤としては、例えば、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等が挙げられる。
【0059】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0060】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0061】
矯味剤としては、例えば、チャエキス、チャ乾留液、プロポリスエキス、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0062】
収れん剤としては、例えば、重曹、乳酸アルミニウム等が挙げられる。
【0063】
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース等のセルロース誘導体、キサンタンガム、ローカストビンガム、カラギーナン、トラガカントガム、カラヤガム、アラビアガム、ジェランガム等のガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等の合成粘結剤、増粘性シリカ、アルミニウムシリカゲル、ビーガム等の無機粘結剤、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、寒天、ゼラチン、大豆多糖類、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0064】
他の薬効剤としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ素化合物;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素;トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、グリ
セロリン酸、クロロフィル、グルコン酸銅、塩化ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;酢酸-dl-α-トコフェロール、酢酸ピリドキシン、アスコルビン酸またはその塩等のビタミン類;アロエ、イチョウ葉、アガリクス、ウーロン茶、カミツレ、カリン、ギムネマ、クマザサ、甜茶、杜仲茶、ドクダミ、ハトムギ、メグスリノキ、ヨモギ、緑茶、ルイボス、レモンバーム、ローズマリー、クラブミン、ラカンカ、シソ、クランベリー、ノコギリソウ、エルダー、リコリス、ハッカ、ユーカリ、ガラナ、カンゾウ、ボダイジュ、ホップ、カカオ、クワ葉、タイム、オウゴン等の植物抽出物等が挙げられる。
【0065】
なお、これら公知の成分の配合量は、本発明の効果を妨げない(特にO/D型組成物の調製を妨げない)範囲で、通常の口腔用組成物に配合されている程度の量を参考に適宜調整することができる。
【0066】
また本発明は、口腔用組成物用担体である、炭化水素油、多価アルコール、及び界面活性剤を含有する、O/D型乳化組成物も包含する。当該O/D型乳化組成物は、用途が口腔用組成物用担体であるという点を除けば、その構成は基本的に上記O/D型乳化口腔用組成物に用いられるO/D型乳化組成物と同様である。
【0067】
当該口腔用組成物用担体に更に口腔用組成物に許容される成分(例えば上記公知の成分)を加えることにより、好適なO/D型乳化口腔用組成物を製造することができる。
【0068】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例
【0069】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「%」は「質量%」を示す。
【0070】
O/D型乳化組成物の調製1
表1に示す成分を用いて、多価アルコール35%、界面活性剤5%、及び炭化水素油60%となるよう各成分を混合して、各実施例及び比較例のO/D型乳化組成物を調製した。なお、いずれの例においても多価アルコールとしてグリセリンを使用した。
【0071】
混合は、より詳細には次のようにして行った。容器(ビーカー)に多価アルコールと界面活性剤を加えてディスパーミキサーにより撹拌してこれらを混合した。撹拌を続けながら、さらに炭化水素油を少量づつ加えた。また、炭化水素油添加時には、必要に応じて混合物の加温を行った。
【0072】
また、得られた各O/D型乳化組成物の安定性を評価した。具体的には、調製後、得られた組成物を目視観察して、相分離が起こらないものを○と評価し、調製直後に二相(水相及び油相)に分離するもの、又はO/D型乳化組成物にならないもの(粘性の無い液状のもの、若しくは、そもそも均一に混ざらないもの)については×と評価した。結果を表1に併せて示す。また、実施例7及び実施例8、並びに比較例17及び比較例20の調製後の様子を図1に示す。図1から、実施例では安定なO/D型乳化組成物が調製されている一方、比較例の組成物は二相に分離していることが分かる。
【0073】
【表1】
【0074】
【0075】
実施例1~8で調製したO/D型乳化組成物を口に含んだところ、グリセリン由来の灼熱感は特に感じられず、使用感に問題はなかった。
【0076】
O/D型乳化組成物の調製2
表2に記載の組成(数値は質量%を示す)を用いて、上記と同様にしてO/D型乳化組成物を調製し、安定性を評価した。但し、安定性の評価においては、上記の評価(○又は×)に加え、得られた組成物を目視観察した際、調整直後には二相分離は起こらないものの、30分~数時間程度で相分離が起こる可能性が高い場合には△と評価した。なお、ラウリン酸ポリグリセリル-10は、実施例6と同じHLB17.1のものを用いた。また、ソルビット液(ソルビトール70質量%水溶液)を用いて調製したO/D型乳化組成物(参考例)は、組成物中に約6質量%の水を含む。
【0077】
【表2】
【0078】
O/D型乳化組成物の調製3
表3及び表4に記載の組成(数値は質量%を示す)を用いて、上記と同様にして各実施例のO/D型乳化組成物を調製し、安定性を評価した。なお、ラウリン酸ポリグリセリル-10は、実施例6と同じHLB17.1のものを用いた。得られた組成物について、歯ブラシへの適用可否、及び調製1週間後の安定性(目視により相分離が確認できるか)を検討した。結果を表3及び表4に併せて示す。なお、歯ブラシへの適用可否の評価基準は次の通りである。
○:薬剤が歯ブラシから垂れることがなく、保形性がある
△:薬剤が歯ブラシから垂れる可能性が高く、保形性があまりない
×:薬剤が歯ブラシから垂れ落ちるため、不適当
【0079】
なお、歯ブラシへの適用可否評価が、実施例B4は△、実施例B5及びB6は×であるが、これらのO/D型乳化組成物は粘性が低いため、歯ブラシにのせて用いるタイプの口腔用組成物として用いるには不向きというだけであって用いることができないわけではなく、他のタイプの口腔用組成物(例えばマウスウォッシュや液体歯磨き)として用いることも可能である。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
O/D型乳化組成物の調製4
表5に記載の組成(数値は質量%を示す)を用いて、上記と同様にして各実施例のO/D型乳化組成物を調製した。なお、PEG-60水添ヒマシ油は、比較例35と同じHLB14.0のものを用いた。得られた組成物について、歯ブラシへの適用可否、及び調製1週間後の安定性(目視により相分離が確認できるか)を検討した。結果を表2に併せて示す。なお、歯ブラシへの適用可否の評価基準は上記と同じである。また、安定性の検討では、調製後1週間室温(25℃)で静置した際、相分離を起こさないかを目視で確認した。
【0083】
【表5】
図1