(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】バッチ式基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20221024BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20221024BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/31 C
C23C16/50
(21)【出願番号】P 2021167108
(22)【出願日】2021-10-12
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0139301
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509123895
【氏名又は名称】ユ-ジーン テクノロジー カンパニー.リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ ジョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム チャンドル
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-114340(JP,A)
【文献】特開2019-057494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/31
C23C 16/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板が収められる処理空間を与える反応チューブと、
前記反応チューブの長手方向に沿って延びる隔壁により前記処理空間と仕切られる放電空間を有し、前記反応チューブの長手方向に沿って延びる複数の電極により前記放電空間にプラズマを形成するプラズマ形成部と、
を備え、
前記複数の電極は、
互いに離間する複数の電源供給電極と、
前記複数の電源供給電極の間に
前記複数の電源供給電極からそれぞれ離間して配設される複数の接地電極と、
を備え
、
前記複数の電極は、前記放電空間中の離間した電源供給電極と接地電極との間の離間空間のそれぞれに容量結合プラズマ(CCP)を形成し、
前記複数の接地電極は、前記電源供給電極と接地電極との間の離間距離以下の離間距離をもって互いに離間しているバッチ式基板処理装置。
【請求項2】
前記複数の電源供給電極と前記複数の接地電極を保護する電極保護部をさらに備え、
前記電極保護部は、
前記複数の電源供給電極のそれぞれをそれぞれ包み込む複数本の第1の電極保護管と、
前記複数の接地電極のそれぞれをそれぞれ包み込む複数本の第2の電極保護管と、
互いに対向する第1の電極保護管と第2の電極保護管とを繋ぎ合わせるブリッジ部と、
を備える請求項1に記載のバッチ式基板処理装置。
【請求項3】
前記ブリッジ部は、前記第1の電極保護管と第2の電極保護管とを連通させ、
前記ブリッジ部により連通される前記第1の電極保護管と第2の電極保護管のうちのどちらか一方の電極保護管に接続されて保護ガスを供給する保護ガス供給部と、
前記第1の電極保護管と第2の電極保護管のうちの残りの他方の電極保護管に接続されて前記どちらか一方の電極保護管に供給された前記保護ガスを排気する保護ガス排気部と、
をさらに備える請求項
2に記載のバッチ式基板処理装置。
【請求項4】
前記保護ガスは、不活性ガスを含む請求項
3に記載のバッチ式基板処理装置。
【請求項5】
高周波電源を供給する高周波電源部と、
前記高周波電源部と前記複数の電源供給電極との間に配設され、前記高周波電源部から供給される高周波電源を分配して前記複数の電源供給電極のそれぞれに与える電力分配部と、
をさらに備える請求項1に記載のバッチ式基板処理装置。
【請求項6】
前記電力分配部は、前記高周波電源が前記複数の電源供給電極のそれぞれに分配される分配点と前記複数の電源供給電極のうちの少なくとも一つとの間に配設される可変キャパシターを備える請求項
5に記載のバッチ式基板処理装置。
【請求項7】
前記プラズマの状態に応じて、前記複数の電源供給電極のそれぞれに供給される高周波電源を選択的に調節する制御部をさらに備える請求項1に記載のバッチ式基板処理装置。
【請求項8】
吐出口を介して前記プラズマにより分解される工程ガスを前記電源供給電極と接地電極との間の離間空間のそれぞれに向かって供給する複数本のガス供給管をさらに備える請求項
1に記載のバッチ式基板処理装置。
【請求項9】
前記プラズマ形成部は
、
前記反応チューブの長手方向に並べられて、前記プラズマにより分解された工程ガス中のラジカルを前記処理空間に供給する複数の噴射口を備え
、
前記複数の噴射口は、前記反応チューブの中心軸と前記吐出口とを結ぶ線分上以外に配設される請求項
8に記載のバッチ式基板処理装置。
【請求項10】
前記反応チューブの周方向に沿って前記複数の電極の両側の外郭に配設されて、吐出口を介して前記プラズマにより分解される工程ガスを前記放電空間内に供給する複数本のガス供給管をさらに備える請求項1に記載のバッチ式基板処理装置。
【請求項11】
前記複数本のガス供給管は、前記反応チューブの中心軸から前記放電空間の中央へと延びる半径方向の両側に対称的に配置される請求項
8または請求項
10に記載のバッチ式基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッチ式基板処理装置に係り、さらに詳しくは、処理空間と仕切られた放電空間において分解された工程ガスを処理空間に供給するバッチ式基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基板処理装置は、処理空間内に処理しようとする基板を位置させた後、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition;CVD)法または原子層蒸着(Atomic Layer Deposition;ALD)法などを用いて処理空間内に注入された工程ガスに含まれている反応粒子を基板の上に蒸着させる装置である。このような基板処理装置には、一枚の基板に対して基板の処理工程が行える枚葉式(Single wafer type)と、複数枚の基板に対して基板処理工が同時に行えるバッチ式(Batch type)と、がある。
【0003】
バッチ式基板処理装置においては、処理空間を取り囲んでいるホットウォール(Hot wall)タイプの加熱手段により基板だけではなく、処理空間の壁面まで温度が上がって工程ガスが処理空間の内部の壁面にも蒸着され、これに伴い、不所望の薄膜が形成されてしまう。特に、処理空間内にプラズマ(plasma)などの工程環境を造り出す場合には、内壁に蒸着された薄膜がプラズマ発生空間に形成された磁場や電場などによりパーティクル(particle)として剥がれ落ちながら、基板の処理工程中に汚染物質として働いてしまうという不都合が生じる虞がある。これにより、基板上の薄膜の品質を低下させるだけではなく、基板に対する処理工程の効率を低下させるという不都合が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、処理空間と仕切られた放電空間において分解された工程ガスを処理空間の内部に供給するバッチ式基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るバッチ式基板処理装置は、複数枚の基板が収められる処理空間を与える反応チューブと、前記反応チューブの長手方向に沿って延びる隔壁により前記処理空間と仕切られる放電空間を有し、前記反応チューブの長手方向に沿って延びる複数の電極により前記放電空間にプラズマを形成するプラズマ形成部と、を備え、前記複数の電極は、互いに離間する複数の電源供給電極と、前記複数の電源供給電極の間に配設される複数の接地電極と、を備えていてもよい。
【0007】
前記複数の接地電極は、前記複数の電源供給電極から離間して配設され、前記複数の電極は、離間した電源供給電極と接地電極との間の離間空間のそれぞれに容量結合プラズマ(CCP)を形成してもよい。
【0008】
前記複数の接地電極は、互いに離間してもよい。
【0009】
前記複数の接地電極間の離間距離は、前記電源供給電極と接地電極との間の離間距離以下であってもよい。
【0010】
前記バッチ式基板処理装置は、前記複数の電源供給電極と前記複数の接地電極を保護する電極保護部をさらに備え、前記電極保護部は、前記複数の電源供給電極のそれぞれをそれぞれ包み込む複数本の第1の電極保護管と、前記複数の接地電極のそれぞれをそれぞれ包み込む複数本の第2の電極保護管と、互いに対向する第1の電極保護管と第2の電極保護管とを繋ぎ合わせるブリッジ部と、を備えていてもよい。
【0011】
前記ブリッジ部は、前記第1の電極保護管と第2の電極保護管とを連通させ、前記ブリッジ部により連通される前記第1の電極保護管と第2の電極保護管のうちのどちらか一方の電極保護管に接続されて保護ガスを供給する保護ガス供給部と、前記第1の電極保護管と第2の電極保護管のうちの残りの他方の電極保護管に接続されて前記どちらか一方の電極保護管に供給された前記保護ガスを排気する保護ガス排気部と、をさらに備えていてもよい。
【0012】
前記保護ガスは、不活性ガスを含んでいてもよい。
【0013】
前記バッチ式基板処理装置は、高周波電源を供給する高周波電源部と、前記高周波電源部と前記複数の電源供給電極との間に配設され、前記高周波電源部から供給される高周波電源を分配して前記複数の電源供給電極のそれぞれに与える電力分配部と、をさらに備えていてもよい。
【0014】
前記電力分配部は、前記高周波電源が前記複数の電源供給電極のそれぞれに分配される分配点と前記複数の電源供給電極のうちの少なくとも一つとの間に配設される可変キャパシターを備えていてもよい。
【0015】
前記バッチ式基板処理装置は、前記プラズマの状態に応じて、前記複数の電源供給電極のそれぞれに供給される高周波電源を選択的に調節する制御部をさらに備えていてもよい。
【0016】
前記バッチ式基板処理装置は、吐出口を介して前記プラズマにより分解される工程ガスを前記電源供給電極と接地電極との間の離間空間のそれぞれに向かって供給する複数本のガス供給管をさらに備えていてもよい。
【0017】
前記プラズマ形成部は、前記吐出口の吐出方向とずれるように配設され、前記反応チューブの長手方向に並べられて、前記プラズマにより分解された工程ガス中のラジカルを前記処理空間に供給する複数の噴射口を備えていてもよい。
【0018】
前記バッチ式基板処理装置は、前記反応チューブの周方向に沿って前記複数の電極の両側の外郭に配設されて、吐出口を介して前記プラズマにより分解される工程ガスを前記放電空間内に供給する複数本のガス供給管をさらに備えていてもよい。
【0019】
前記複数本のガス供給管は、前記反応チューブの中心軸から前記放電空間の中央へと延びる半径方向の両側に対称的に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態に係るバッチ式基板処理装置は、処理空間と仕切られる放電空間においてプラズマ(plasma)により工程ガスが分解された後、処理空間の内部に与えられることにより、反応チューブの内壁に蒸着された薄膜からパーティクル(particle)が剥がれ落ちることを防ぐことができ、基板に対する処理工程の効率を向上させることができる。
【0021】
また、互いに離間する複数の電源供給電極の間に複数の接地電極を配設して複数の電源供給電極のそれぞれに対応する接地電極を配設することにより、接地電極を共通して用いることに起因して接地電極に2倍の電場(Electric Field)が導かれてしまうことを防ぐことができる。これにより、電場と比例して増加するプラズマポテンシャル(potential)により生じるプラズマダメージ(plasma damage)を抑制もしくは防止することができ、プラズマ形成部の寿命を延ばすことができる。一方、複数の電源供給電極を用いて印加される電圧を下げることにより、スパッターリング効果を低減することができ、高いプラズマ密度及びラジカル(radical)を用いて工程時間を短縮することもできる。
【0022】
そして、複数本のガス供給管で電源供給電極と接地電極との間の離間空間にそれぞれ工程ガスを供給してプラズマ分解率が向上することができる。また、複数本のガス供給管にそれぞれ形成された吐出口の吐出方向とずれるようにプラズマ形成部の複数の噴射口を配設することにより、プラズマ分解されていない工程ガスが処理空間に流れ込まず、工程ガスが十分に分解された後にラジカルが処理空間の内部に供給されることが可能になる。
【0023】
一方、電力分配部を介して一つの高周波電源部から供給される高周波電源を分配して複数の電源供給電極に与えることにより、電源供給電極と接地電極との間の離間空間に均一なプラズマが形成されるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置を示す水平断面図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置を示す側断面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る複数の電極の数に応じて接地電極に導かれる電圧の波形を説明するための概念図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る電極保護部を説明するための概念図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る高周波電源の供給を説明するための概念図。
【
図6】本発明の一実施形態に係る複数本のガス供給管の変形例を示す水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。本発明を説明するに当たって、同じ構成要素に対しては同じ参照符号を付し、図面は、本発明の実施形態を正確に説明するために大きさが部分的に誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置を示す水平断面図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置を示す側断面図であって、
図2の(a)は、
図1のA-A′に沿って切り取った断面図であり、
図2の(b)は、
図1のB-B′に沿って切り取った側断面図である。
【0027】
図1及び
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係るバッチ式基板処理装置100は、複数枚の基板10が収められる処理空間111を与える反応チューブ110と、前記反応チューブ110の長手方向に沿って延びる隔壁115により前記処理空間111と仕切られる放電空間125を有し、前記反応チューブ110の長手方向に沿って延びる複数の電極121、122により前記放電空間125にプラズマを形成するプラズマ形成部120と、を備えていてもよい。
【0028】
反応チューブ110は、上部が閉じられ、下部が開かれた円筒状に石英またはセラミックなどの耐熱性材料から形成されてもよく、内部に複数枚の基板10が収められて処理される処理空間111を与えてもよい。反応チューブ110の処理空間111は、複数枚の基板10が反応チューブ110の長手方向に積み重ねられた基板ボート50を収め、実際に処理工程(例えば、蒸着工程)が行われる空間である。
【0029】
ここで、基板ボート50は、基板10を支持するための構成要素であって、複数枚の基板10が前記反応チューブ110の長手方向(すなわち、上下方向)に積載されるように形成されてもよく、複数枚の基板10がそれぞれ別々に処理される単位処理空間を複数形成してもよい。
【0030】
プラズマ形成部120は、複数の電極121、122を用いてプラズマ(plasma)を形成してもよく、ガス供給管170から供給された工程ガスをプラズマにより分解して反応チューブ110内の処理空間111に与えてもよい。プラズマ形成部120は、前記反応チューブ110の長手方向に沿って延びる隔壁115により処理空間111と仕切られる放電空間125を有していてもよい。このとき、プラズマ形成部120は、前記反応チューブ110の長手方向に沿って延びる複数の電極121、122により放電空間125にプラズマを形成してもよく、複数の電極121、122は、反応チューブ110の周方向に配置されてもよい。例えば、複数の電極121、122は、前記反応チューブ110の長手方向に沿って延びる棒(bar)状であってもよく、互いに並ぶように(または、平行に)配置されてもよい。
【0031】
プラズマ形成部120の放電空間125は、プラズマが形成される空間であり、隔壁115により処理空間111と仕切られてもよい。このため、プラズマ形成部120は、ガス供給管170から供給された前記工程ガスを放電空間125においてプラズマを用いて分解し、分解された前記工程ガス中のラジカル(radical)のみを処理空間111に与えることができる。
【0032】
ここで、隔壁115は、前記反応チューブ110の長手方向に沿って延びてもよく、反応チューブ110の内部に配置されてもよく、反応チューブ110の外部に配置されてもよい。例えば、隔壁115は、
図1に示すように、反応チューブ110の内部に配置されて反応チューブ110の内壁と放電空間125を形成してもよく、反応チューブ110の内壁(または、内面)に接続される複数の副側壁部115a、115bと、複数の副側壁部115a、115bの間の主側壁部115cと、を備えていてもよい。複数の副側壁部115a、115bは、反応チューブ110の内壁から反応チューブ110の内側に突出(または、延在)し、互いに離間して並ぶように配置されてもよい。そして、主側壁部115cは、反応チューブ110の内壁と離間して複数の副側壁部115a、115bの間に配置されてもよい。このとき、複数の副側壁部115a、115bと主側壁部115cは、いずれも反応チューブ110の内壁に沿って前記反応チューブ110の長手方向に延びてもよい。但し、隔壁115は、処理空間111と仕切られる放電空間125を与えられる形態であれば、
図1に示すものに何ら限定されるものではなく、種々であってもよい。他の実施形態によれば、隔壁115は、反応チューブ110の外部に配置されて反応チューブ110の外壁と放電空間125を形成してもよく、反応チューブ110の外側面(または、外壁)に接続される複数の副側壁部115a、115bと、複数の副側壁部115a、115bの間の主側壁部115cと、を備えていてもよい。複数の副側壁部115a、115bは、反応チューブ110の外壁から反応チューブ110の外側に突出し、互いに離間して並ぶように配置されてもよい。そして、主側壁部115cは、反応チューブ110の外壁と離間して複数の副側壁部115a、115bの間に配置されてもよい。一方、主側壁部115cを反応チューブ110よりも小さいかあるいは大きな直径を有するチューブ状に構成して、反応チューブ110の側壁と主側壁部115cとの間(すなわち、前記反応チューブの内壁と前記主側壁部との間、または前記反応チューブの外壁と前記主側壁部との間)に放電空間125を形成してもよい。
【0033】
プラズマ形成部120は、隔壁115により処理空間111と仕切られた放電空間125にプラズマを形成することにより、ガス供給管170から供給される工程ガスが反応チューブ110の内部に直接的に供給されて処理空間111において分解されるわけではなく、処理空間111と仕切られた空間である放電空間125において分解された後、処理空間111に供給されてもよい。これにより、処理空間111に前記工程ガスを直接的に供給して処理空間111においてプラズマを形成する場合に、プラズマによる磁場や電場により処理空間111の内壁に形成された薄膜がパーティクル(particle)として剥がれ落ちてしまうという不都合を防ぐことができる。
【0034】
そして、複数の電極121、122は、互いに離間する複数の電源供給電極121と、複数の電源供給電極121の間に配設される複数の接地電極122と、を備えていてもよい。複数の電源供給電極121は互いに離間してもよく、高周波電源(または、RF電源)がそれぞれ供給されてもよい。
【0035】
複数の接地電極122は、互いに離間した複数の電源供給電極121の間に配設されてもよく、接地されてもよい。このとき、複数の接地電極122は、それぞれ接地されてもよく、共通して接地されてもよい。例えば、二つの電源供給電極121が離間して設けられた空間に二つの接地電極122が配設されてもよく、電源供給電極121のそれぞれに対応する接地電極122が配設されてもよい。これを通して、それぞれ対応して対をなす電源供給電極121と接地電極122との間にプラズマを形成することができる。
【0036】
すなわち、複数の電源供給電極121と複数の接地電極122は、4電極構造を有していてもよく、複数の電源供給電極121に高周波電源をそれぞれ分けて供給できるようにすることにより、プラズマを生じさせる上で必要な高周波電源または所望の量のラジカルを得るための高周波電源を減少させて高い高周波電源によるパーティクルの発生を防ぐことができる。
【0037】
詳しくは、本発明でのように、複数の電源供給電極121と複数の接地電極122が4電極構造を有する場合、工程ガスが分解されるプラズマの生じさせる上で、あるいは、所望の量のラジカルを得る上で必要な高周波電源を所要の高周波電源の半分にまたは大幅に減少させることができて、高い高周波電源により電極保護部130、隔壁115、反応チューブ110などに損傷が生じるという不都合を防ぐことができる。また、電極保護部130、隔壁115、反応チューブ110などの損傷によりパーティクルが生じてしまうという不都合も防ぐことができる。例えば、十分なエネルギーで工程ガスを分解する上で必要な電源が100Wである場合、複数の電源供給電極121の間に複数の接地電極122が設けられた4電極構造を有すると、100Wよりも低い50Wの電源を電源供給電極121のそれぞれに分けて供給することができることから、たとえプラズマの発生に必要な電源よりも低い電源を供給するとしても、最終的に100Wの電源を供給したときと同じ量のラジカルを得ることができる。さらに、それぞれの電源供給電極121に50Wの低い電源が分けて供給されることから、高い電源によるパーティクルの発生なしに工程ガスをさらに効果的に分解することができる。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態に係る複数の電極の数に応じて接地電極に導かれる電圧波形を説明するための概念図であって、
図3の(a)は4電極構造を示し、
図3の(b)は3電極構造を示す。
【0039】
図3を参照すると、
図3の(a)の4電極構造と
図3の(b)の3電極構造において、接地電極に導(または、誘導)かれる電圧波形が異なるということを確認することができる。
【0040】
詳しく述べると、
図3の(b)のように、3電極構造においては、二つの電源供給電極121a、121bに同一の高周波電源が同時に供給される場合に、共通の接地電極122に第1の電源供給電極121aに印加された電圧と第2の電源供給電極121bに印加された電圧とが合成(または、併合)された2倍の電圧が導かれてしまう。すなわち、共通の接地電極122を用いる3電極構造においては、第1の電源供給電極121aに印加された電圧と第2の電源供給電極121bに印加された電圧とが同じ位相差を有することになって、二つの電源供給電極121a、121bよりも高い電場が接地電極122に誘起されてしまう。そして、これに伴う不所望の高い電場により電場に比例するプラズマポテンシャル(potential)が増加してしまい、プラズマダメージ(Plasma Damage)が生じてしまう。特に、2倍の電圧が導かれる接地電極122の周りの第2の電極保護管132、隔壁115、反応チューブ110などにプラズマダメージが生じて損傷を被る虞がある。
【0041】
これに対し、
図3の(a)のように、本発明の4電極構造においては、3電極構造において接地電極122に導かれる電圧の半分のレベルに相当する電圧(すなわち、前記第1の電源供給電極と前記第2の電源供給電極に印加された各電圧と同一の電圧)が二つの接地電極122a、122bに導かれることが可能になる。これにより、プラズマ生成(Turn on)とプラズマ保持の際に、高い電圧による高い電場により引き起こされるプラズマダメージを抑制もしくは防止することができる。すなわち、第1の電源供給電極121aに印加された電圧により、第1の接地電極122aに第1の電源供給電極121aに印加された電圧と同一の電圧が導かれることが可能になる。そして、第2の電源供給電極121bに印加された電圧により、第2の接地電極122bに第2の電源供給電極121bに印加された電圧と同一の電圧が導かれることが可能になる。
【0042】
また、3電極構造の場合には、三つの電極の間に互いに干渉を引き起こす虞があるが、4電極構造の場合には、第1の電源供給電極121aと第1の接地電極122aが対をなし、第2の電源供給電極121bと第2の接地電極122bが対をなして近い距離のそれぞれ対応する電極同士のみが作用し、これに伴い、遠い距離の対応しない電極にはほとんど影響を及ぼさないことができる。なお、対応しない電源供給電極121a、121bと接地電極122b、122aとの干渉の影響がほとんどない。参考までに、電磁気場及び電気回路の原理からみて、電源供給電極121は、最も近い接地電極122と働くことになる。
【0043】
ここで、複数の接地電極122は、複数の電源供給電極121から離間して配設されてもよく、複数の電極121、122は、離間した電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のそれぞれに容量結合プラズマ(CCP)を形成してもよい。複数の接地電極のそれぞれ122a、122bは、複数の電源供給電極121a、121bから離間して配設されてもよい。このとき、電源供給電極121と接地電極122は、互いに離間してプラズマ発生空間を与えてもよく、複数の電源供給電極121a、121bと複数の接地電極122a、122bは、複数のプラズマ発生空間を形成してもよい。
【0044】
そして、複数の電極121、122は、離間した電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間(すなわち、プラズマ発生空間)のそれぞれに容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma;CCP)を形成してもよい。ここで、複数の電源供給電極121のそれぞれにはそれぞれ高周波電源が供給されてもよく、これにより、互いに対向する(または、対応する)電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に生成される電場(Electric Field)により容量結合プラズマ(CCP)が生じることができる。
【0045】
ここで、互いに離間した(または、分離された)電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に形成される電場により生じる電磁加速によりエネルギーを得てプラズマが形成される容量結合プラズマ(CCP)方式とは異なり、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)方式とは、互いに連結されたアンテナに流れる電流において形成された磁場が経時的に変わるときに、磁場の周りに形成される電場からプラズマが形成されることを指し、一般に、誘導結合プラズマ(ICP)方式では、E-modeによりプラズマが生じ、H-modeに切り換えられて高密度プラズマを形成することになる。誘導結合プラズマ(ICP)方式は、プラズマ密度もしくは印加電力に応じてE-modeとH-modeとに分けられるが、プラズマ密度が低いE-modeからプラズマが保たれる高い密度を有するH-modeへのモードの切り替えを行うためには、高いパワーを誘起せねばならない。そして、入力電力が大きくなると、パーティクルと高い電子温度に伴う反応に与らない多数のラジカルが生成されて良質の膜質を得難いという不都合と、アンテナにより形成される電場に従って均一なプラズマを生じさせ難いという不都合が起きる。
【0046】
しかしながら、本発明においては、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間(すなわち、プラズマ発生空間)のそれぞれに容量結合プラズマ(CCP)をそれぞれ形成することから、誘導結合プラズマ(ICP)のようにモードの切り替えを行うために高いパワーを誘起する必要がない。このことから、パーティクルの生成の防止及び低い電子温度に従って反応に与る多数のラジカルの生成により、良質の膜質を得る上でなお一層効果的であり得る。
【0047】
また、複数の接地電極122a、122bは互いに離間してもよく、物理的に分離されてもよい。ここで、「離間」または「分離」とは、一体ではないという意味であり、相互間の距離は非常に短くしても良く、0よりも大きければよい。
【0048】
複数の接地電極122a、122bが互いに離間せずにくっついてしまうと、複数の接地電極122a、122bの間に互いに干渉を引き起こす虞があり、複数の接地電極122a、122bが対応しない電源供給電極121b、121aと干渉されて働く虞もある。例えば、第1の電源供給電極121aに印加された電圧と第2の電源供給電極121bに印加された電圧とが第1の接地電極122aと第2の接地電極122bにおいて(すなわち、前記複数の接地電極において)合成されて第1の接地電極122aと第2の接地電極122bに(すなわち、前記複数の接地電極に)略2倍の電圧が導かれる虞がある。このような場合、高い電場により電場に比例するプラズマポテンシャルが増加してしまう結果、プラズマダメージが生じる虞があり、2倍の電圧が導かれる複数の接地電極122a、122bの周りの第2の電極保護管132、隔壁115、反応チューブ110などにプラズマダメージが生じて損傷を被る虞がある。ここで、4電極構造の場合には、3電極構造の場合よりも接地電極122a、122bの総体積が増加するため、3電極構造よりは低い電圧が複数の接地電極122a、122bに導かれる虞はある。
【0049】
しかしながら、複数の接地電極122a、122bが互いに離間すれば、複数の接地電極122a、122bの間に互いに干渉を引き起こすことを抑制もしくは防止することができ、複数の接地電極122a、122bが対応しない電源供給電極121b、121aと干渉が起こることを抑制もしくは防止することもできる。すなわち、複数の接地電極122a、122bの間にも干渉が発生せず、複数の接地電極122a、122bに対応しない電源供給電極121b、121aの干渉がないため、第1の電源供給電極121aに印加された電圧により、第1の接地電極122aにのみ第1の電源供給電極121aに印加された電圧と同一の電圧が導かれることが可能になる。そして、第2の電源供給電極121bに印加された電圧により、第2の接地電極122bにのみ第2の電源供給電極121bに印加された電圧と同一の電圧が導かれることが可能になる。これにより、プラズマ生成とプラズマ保持の際に、高い電圧による高い電場により引き起こされるプラズマダメージを完璧に抑制もしくは防止することができる。
【0050】
このとき、複数の接地電極122間の離間距離は、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間距離以下であってもよい。複数の接地電極122間の離間距離が前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間距離よりも大きくなると、複数の接地電極122の間の空間に相対的に低いプラズマ密度が形成されてしまい、放電空間125内のプラズマ密度及び/又はラジカル密度を均一に形成することができなくなる。これにより、プラズマ形成部120の噴射口122ごとに供給されるラジカルの量が異なってくる虞があり、複数枚の基板10の間に処理(または、蒸着)ムラが生じてしまう。また、バッチ式基板処理装置100の構造からみて、放電空間125の幅(または、前記プラズマ形成部の幅)が制限せざるを得ず、複数の接地電極122の間の離間距離が大きくなると、プラズマ発生空間である前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間が相対的に狭くなって、工程ガスを効果的に分解することができず、効果的にラジカルを得られなくなる。
【0051】
このため、複数の接地電極122の間の離間距離を前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間距離以下にしてもよい。これを通して、複数の接地電極122a、122bの間の干渉及び対応しない電源供給電極121a、121bと接地電極122b、122aとの干渉を防止できながらも、工程ガスを効果的に分解して効果的にラジカルを得ることができ、放電空間125内のプラズマ密度及び/又はラジカル密度を均一に形成することができる。これにより、複数枚の基板10の間に処理ムラが生じることを防いで複数枚の基板10間の処理(または、蒸着)の均一度を向上させることができる。
【0052】
したがって、本発明に係るバッチ式基板処理装置100は、互いに離間する複数の電源供給電極121の間に複数の接地電極122を配設して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに対応する接地電極122a、122bを配設することにより、接地電極122を共通して用いることに起因して接地電極122に2倍の電場が導かれてしまうことを防ぐことができる。これにより、電場と比例して増加するプラズマポテンシャルによる生じるプラズマダメージを抑制もしくは防止することができ、プラズマ形成部120の寿命を延ばすことができる。なお、複数の電源供給電極121を用いて印加される電圧を下げることにより、スパッターリング効果を低減することができ、高いプラズマ密度及びラジカルを用いて工程時間を短縮することができる。
【0053】
図4は、本発明の一実施形態に係る電極保護部を説明するための概念図である。
【0054】
図4を参照すると、本発明に係るバッチ式基板処理装置100は、複数の電源供給電極121と複数の接地電極122を保護する電極保護部130をさらに備えていてもよい。
【0055】
電極保護部130は、複数の電源供給電極121と複数の接地電極122を保護してもよく、複数の電源供給電極121と複数の接地電極122のそれぞれの少なくとも一部を包み込んで複数の電源供給電極121と複数の接地電極122をそれぞれ保護してもよい。
【0056】
ここで、電極保護部130は、複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bをそれぞれ包み込む複数本の第1の電極保護管131と、複数の接地電極のそれぞれ122a、122bをそれぞれ包み込む複数本の第2の電極保護管132と、互いに対向する第1の電極保護管131と第2の電極保護管132とを繋ぎ合わせるブリッジ部133と、を備えていてもよい。複数本の第1の電極保護管131は、複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bの外周面を包み込んでもよく、複数の電源供給電極121のそれぞれを保護してもよい。
【0057】
そして、複数本の第2の電極保護管132は、複数の接地電極のそれぞれ122a、122bの外周面を包み込んでもよく、複数の接地電極122のそれぞれを保護してもよい。
【0058】
例えば、複数の電源供給電極121と複数の接地電極122のそれぞれは、上部から下部に亘って第1の電極保護管131及び/又は第2の電極保護管132により包み込まれた状態で保護されてもよく、複数の電源供給電極121と複数の接地電極122は、軟性を有する編組線からなっていてもよい。
【0059】
一般に、高周波電源の使用に伴う電気伝導は、電流が表面に沿って流れる表皮効果(Skin Effect)が生じ(または、電流が流れる深さである金属の浸透深さ(Skin Depth)に影響を受け)る虞がある。これにより、網状の網状電極を用いる場合には空き空間が占める面積が広いため、小さな表面積による大きな抵抗により高周波電源の供給に非効率的であるという不都合が存在する。さらに、基板10の処理工程は、高温と低温において繰り返し行われ、電極が網状を呈する場合には変化される温度に応じて網状電極の形状が不規則的に変化して形状の保持の側面からみて不利になる。なお、変化される形状に応じて抵抗が異なってくるため、高周波電源の供給に際して不均一なプラズマが生じてしまうという不都合がある。
【0060】
このような不都合を防ぐために、複数の電源供給電極121と複数の接地電極122は、第1の電極保護管131及び/又は第2の電極保護管132の内部に挿入されるだけではなく、空き空間を最小化させて、柔軟性を有する編組タイプ(編組線)に形成されてもよい。例えば、空き空間をさらに狭めるために、それぞれの電極の表面に金属をコーティングする方法をさらに用いてもよい。また、フレキシブルな編組タイプの複数の電源供給電極121と複数の接地電極122を放電空間125の内部において前記反応チューブ110の長手方向に延びて固定された状態で保持するために、各複数の電源供給電極121と各複数の接地電極122の両端を動かないように固定・支持するバネ(図示せず)をさらに備えていてもよい。このとき、前記フレキシブルな複数の電源供給電極121と複数の接地電極122は、前記バネ部によりそれぞれ前記反応チューブ110の長手方向に固定されて細長い棒状に保たれることが可能になる。
【0061】
第1の電極保護管131と第2の電極保護管132は、電源供給電極121の外部と接地電極122の外部をそれぞれ取り囲むことにより、各複数の電源供給電極121と各複数の接地電極122とを電気的に絶縁するとともに、プラズマ雰囲気に晒される各複数の電源供給電極121と各複数の接地電極122をプラズマから保護することができる。これにより、複数の電源供給電極121と複数の接地電極122は、プラズマにより生じ得る汚染またはパーティクルから安全に保護されることが可能になる。このとき、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132は、石英またはセラミックなどの耐熱性材料からなっていてもよく、反応チューブ110と一体形に作製されてもよい。
【0062】
ブリッジ部133は、互いに対向する第1の電極保護管131と第2の電極保護管132とを繋ぎ合わせてもよく、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132との間隔を保持してもよい。これにより、互いに働いてプラズマを形成する電源供給電極121と接地電極122との間隔を一定に保つことができ、対応する電源供給電極121と接地電極122の対(または、ペア)ごとに等間隔を有することができる。ここで、「互いに対向する第1の電極保護管131と第2の電極保護管132」とは、互いに働いてそれらの間の空間にプラズマを形成する電源供給電極121と接地電極122がそれぞれ挿入される電極保護管131、132のことをいう。すなわち、電源供給電極121は、最も近い接地電極122と働いて該接地電極122との間の空間にプラズマを形成してもよい。
【0063】
放電空間125内に均一なプラズマ密度を得るためには、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間ごとに同じ体積(または、面積)を有さなければならない。また、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に同じ強さのプラズマ(または、プラズマポテンシャル)を形成して前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間(または、前記プラズマ発生空間)の間にプラズマ密度を均一にすることが必要である。このために、ブリッジ部133で第1の電極保護管131と第2の電極保護管132とを繋ぎ合わせて第1の電極保護管131と第2の電極保護管132との間隔を保ってもよい。これにより、互いに働いてそれらの間の空間にプラズマを形成する電源供給電極121と接地電極122との間隔を一定に保つことができ、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間ごとに同じ体積を持たせて複数のプラズマ発生空間の間にプラズマ密度を均一にすることができる。
【0064】
また、ブリッジ部133は、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132とを繋ぎ合わせるだけではなく、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132とを連通させてもよく、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132との間にガスが流れるようにしてもよい。例えば、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132の内部には、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132の内壁(または、内面)がそれぞれ電源供給電極121と接地電極122から(または、前記電源供給電極と前記接地電極の表面から)離間または(離隔)してガスが流れ得るガス流路が形成されてもよい。そして、ブリッジ部133にも管(tube)状にガス流路が形成されて第1の電極保護管131のガス流路と第2の電極保護管132のガス流路とを連通させてもよい。
【0065】
そして、本発明に係るバッチ式基板処理装置100は、ブリッジ部133により連通される第1の電極保護管131と第2の電極保護管132のうちのどちらか一方の電極保護管131または132に接続されて保護ガスを供給する保護ガス供給部141と、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132のうちの残りの他方の電極保護管132または131に接続されて前記どちらか一方の電極保護管131または132に供給された前記保護ガスを排気する保護ガス排気部142と、をさらに備えていてもよい。
【0066】
保護ガス供給部141は、ブリッジ部133により連通される第1の電極保護管131と第2の電極保護管132のうちのどちらか一方の電極保護管131または132に接続されて保護ガスを供給してもよい。基板10の処理工程は、600℃以上の高温下で行われてもよく、ニッケル(Ni)などの金属製の電源供給電極121及び/又は接地電極122が600℃以上の高温下で酸化されてもよい。これにより、保護ガス供給部141を介して前記どちらか一方の電極保護管131または132内に前記保護ガスを供給して電源供給電極121及び接地電極122の酸化を防ぐことができる。ここで、前記どちらか一方の電極保護管131または132に供給された前記保護ガスは、ブリッジ部133を経て(または、前記ブリッジ部を介して)前記残りの他方の電極保護管132または131に流れていくことができる。
【0067】
保護ガス排気部142は、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132のうちの残りの他方の電極保護管132または131に接続されて前記どちらか一方の電極保護管131または132に供給された前記保護ガスを排気してもよい。ここで、保護ガス排気部142は、前記どちらか一方の電極保護管131または132に供給されてブリッジ部133を介して前記残りの他方の電極保護管132または131に流れてきた前記保護ガスを排気してもよい。
【0068】
本発明においては、保護ガス供給部141、ブリッジ部133及び保護ガス排気部142を介して前記どちらか一方の電極保護管131または132、ブリッジ部133、前記残りの他方の電極保護管132または131を通過する前記保護ガスの流路を形成してもよい。これを通して、前記保護ガスが第1の電極保護管131と第2の電極保護管132に効果的に流れて電源供給電極121と接地電極122の酸化を効果的に防ぐことができる。
【0069】
従来の3電極構造において、複数本の第1の電極保護管131と第2の電極保護管132とをブリッジ部133で繋ぎ合わせると、複数本の第1の電極保護管131のそれぞれに流れる前記保護ガスの流量と第2の電極保護管132に流れる前記保護ガスの流量とが異なってくることを余儀なくされ、互いに異なる流量により前記保護ガスの流れが円滑ではなくなる虞がある。これにより、電源供給電極121と接地電極122の酸化を効果的に防ぐことができなくなる。なお、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132内の互いに異なる前記保護ガスの流量によりプラズマの形成にも影響を及ぼす虞があり、工程ガスの効果的な分解が行われなくなる虞もある。
【0070】
しかしながら、本発明においては、ブリッジ部133が一本の第1の電極保護管131と一本の第2の電極保護管132とを繋ぎ合わせることから、前記どちらか一方の電極保護管131または132には保護ガス供給部141を接続し、前記残りの他方の電極保護管132または131には保護ガス排気部142を接続することにより、前記どちらか一方の電極保護管131または132、ブリッジ部133、前記残りの他方の電極保護管132または131を通過する前記保護ガスの流れが円滑になる。これにより、電源供給電極121と接地電極122の酸化を効果的に防ぐことができ、前記保護ガスがプラズマの形成に影響を及ぼさないことから、工程ガスの効果的な分解が行われるようにすることができる。
【0071】
ここで、前記保護ガスは、不活性ガスを含んでいてもよく、前記不活性ガスは、窒素(N2)、アルゴン(Ar)などであってもよい。第1の電極保護管131と第2の電極保護管132内に窒素(N2)などの不活性ガスを供給することにより、第1の電極保護管131と第2の電極保護管132内に酸素(O2)が流れ込んだり渋滞したりすることを防ぐことができる。これを通して、電源供給電極121と接地電極122が酸素(O2)と反応して酸化されることを防ぐことができる。
【0072】
本発明に係るバッチ式基板処理装置100は、高周波電源を供給する高周波電源部150と、高周波電源部150と複数の電源供給電極121との間に配設され、高周波電源部150から供給される高周波電源を分配して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに与える電力分配部155と、をさらに備えていてもよい。
【0073】
高周波電源部150は、高周波電源(power)を供給してもよく、供給された高周波電源は、複数の電源供給電極121に与えられても(または、供給されても)よい。電源供給電極121に前記高周波電源(または、電力)が供給(または、印加)されれば、電源供給電極121と接地電極122との間に電場または磁場が生成されることができ、このようにして生成された電場により容量性結合プラズマ(CCP)が生じることができる。
【0074】
複数の電源供給電極121にそれぞれ高周波電源を供給する場合(例えば、二つの前記電源供給電極の間に二つの前記接地電極が位置する4電極構造)には、電源供給電極121に前記高周波電源がそれぞれ分けて供給されてもよい。これにより、プラズマを形成(または、生成)する上で必要な電力または所望の量のラジカルを得るための電力を減少させることができ、一つの電源供給電極121に高い高周波電源(または、電力)を供給(または、印加)する場合に比べて、パーティクルの発生が低減もしくは防止されることが可能になる。なお、一つの電源供給電極121と一つの接地電極122でプラズマを形成する場合よりも多くの(または、広い)空間(または、領域)にプラズマを形成することができて、さらに効果的に工程ガスを分解することができる。
【0075】
例えば、高周波電源部150は、4~40MHzの範囲から選択される周波数を有する高周波電源を複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給してもよい。前記高周波電源の周波数が40MHzよりも大きくなると、電源供給電極121を二つ有する4電極構造の場合にも全体的なインピーダンスZnの虚数部Zn′が低過ぎてプラズマの点火に問題が生じる。これに対し、前記高周波電源の周波数が4MHzよりも小さくなると、全体的なインピーダンスZnの虚数部Zn′が大き過ぎて、たとえ電源供給電極121の数が増えるとしても、最小限の全体的なインピーダンスZnの虚数部Zn′を達成することができなくなる。すなわち、反応チューブ110の周り(長さ)は、基板10の大きさ(または、周り)に応じて決められ、反応チューブ110の周りに応じて最大限の電源供給電極121の数が決められる。これにより、電源供給電極121の数を増やし得る限界に応じて、電源供給電極121の数を増やして、たとえ全体的なインピーダンスZnの虚数部Zn′を減らすとしても、最小限の全体的なインピーダンスZnの虚数部Zn′にまで減らすことはできなくなる。
【0076】
したがって、高周波電源部150は、4~40MHzの範囲から選択される周波数を有する高周波電源を複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給することができる。そして、電源供給電極121の数が増えれば増えるほど、前記プラズマ発生空間が多くなるため、放電空間125内のプラズマの均一度のためには、全ての前記プラズマ発生空間に同一(または、一定のレベル)のプラズマ密度が与えられなければならない。このために、各電源供給電極121に同一(または、誤差範囲±10%)の周波数の高周波電源を供給してもよい。
【0077】
例えば、二つの電源供給電極121の間に二つの接地電極122が位置する4電極構造の場合には、それぞれの電源供給電極121に約27MHz(または、27.12MHz)の周波数を有する高周波電源が供給されてもよい。
【0078】
電力分配部155は、高周波電源部150と複数の電源供給電極121との間に配設されてもよく、高周波電源部150から供給される高周波電源を分配して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに与えてもよい。ここで、電力分配部155は、電力分配器(power splitter)であってもよく、高周波電源部150と複数の電源供給電極121との間に配設されて高周波電源部150から供給(または、出力)される前記高周波電源を分配することができる。これを介して分配された前記高周波電源は、複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに与えられてもよい。このような場合、複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに同一の電源(または、電圧)が供給(または、印加)されることにより、各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に均一なプラズマが形成されることが可能になる。
【0079】
図5は、本発明の一実施形態に係る高周波電源の供給を説明するための概念図であって、
図5の(a)は、一つの可変キャパシターと一つの固定キャパシターを用いて複数の電源供給電極にそれぞれ高周波電源を供給する場合であり、
図5の(b)は、複数の高周波電源部を介して複数の電源供給電極にそれぞれ高周波電源を供給する場合であり、
図5の(c)は、複数の可変キャパシターを用いて複数の電源供給電極にそれぞれ高周波電源を供給する場合である。
【0080】
図5を参照すると、
図5の(b)のように、複数の高周波電源部150a、150bを介して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bにそれぞれ高周波電源を供給してもよいが、複数の高周波電源部150a、150b間の性能差により複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに互いに異なる電源が供給されることもある。これにより、各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間にプラズマ密度が互いに異なる不均一なプラズマが形成される虞がある。また、複数の高周波電源部150a、150bを介して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bにそれぞれ高周波電源を供給してプラズマを放電してしまうと、前記高周波電源が低いインピーダンスにより全てプラズマが形成された側に集中することにより、各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に対してバランスよくプラズマを生成することができない。なお、プラズマを生成する電源供給電極121と接地電極122に電気的な損傷(Damage)が生じ易くなる。
【0081】
しかしながら、一つの高周波電源部150から供給される前記高周波電源を電力分配部155を介して分配して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに与えると、複数の電源供給電極121に同一の電源を供給することができ、各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に均一なプラズマが形成されるようにすることができる。
【0082】
一方、色々な(外部の)要因により各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間の間へのプラズマの形成がばらついてもしまう虞もあり、各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間にそれぞれ形成されるプラズマ密度が互いにばらついてしまう虞もある。特に、電源供給電極121の少なくとも一部が隔壁115の外部に配置される場合には、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に隔壁115が位置する虞もあるため、隔壁115による干渉により各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間の間におけるプラズマ密度のバラツキがなお一層激しくなる虞もある。このような場合には、電力分配部155を介して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに与えられる高周波電源(または、電力)の大きさまたは比率を調節して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに与えてもよい。これを通して、各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に均一なプラズマが形成されるようにすることもできる。
【0083】
そして、各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間にそれぞれ形成されるプラズマ密度が互いにばらついていない場合には、一つの高周波電源部150から出力された高周波電源を均等に分配して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給してもよい。ここで、高周波電源部150は、複数の電源供給電極121にパルス(pulse)状のRF電力を印加してもよく、パルスの幅(width)とデューティ比(duty ratio)を調節して印加してもよい。
【0084】
ここで、電力分配部155は、高周波電源が複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに分配される分配点155bと複数の電源供給電極121のうちの少なくとも一方の電源供給電極121aまたは121bとの間に配設される可変キャパシター155aを備えていてもよい。可変キャパシター155aは、高周波電源が複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに分配される分配点155bと複数の電源供給電極121のうちの少なくとも一方の電源供給電極121aまたは121bとの間に配設されてもよい。そして、可変キャパシター155aは、静電容量(または、蓄電容量)を変化させて高周波電源部150から供給された高周波電源の大きさまたは比率を調節してもよい。
【0085】
例えば、可変キャパシター155aは、
図5の(a)のように、電力分配部155に一つ配設されてもよい。すなわち、分配点155bと複数の電源供給電極121のうちのどちらか一方の電源供給電極121aまたは121bとの間には固定キャパシター155cを配設し、分配点155bと複数の電源供給電極121のうちの残りの他方の電源供給電極121bまたは121aとの間には可変キャパシター155aを配設してもよい。これを通して、前記どちらか一方の電源供給電極121aまたは121bと接地電極122aまたは122bとの間の離間空間に形成されたプラズマ密度に応じて可変キャパシター155aを調節して、前記残りの他方の電源供給電極121bまたは121aと接地電極122bまたは122aとの間の離間空間に形成されたプラズマ密度を調整することができる。このとき、前記残りの他方の電源供給電極121bまたは121aと接地電極122bまたは122aとの間の離間空間に形成されたプラズマ密度は、前記どちらか一方の電源供給電極121aまたは121bと接地電極122aまたは122bとの間の離間空間に形成されたプラズマ密度と同じくなるように調整してもよい。
【0086】
一方、可変キャパシター155aは、
図5の(c)のように、複数構成されてもよく、複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに対応してそれぞれ配置されてもよく、複数の可変キャパシター155aは、高周波電源部150から供給された高周波電源が分配される分配点155bと複数の電源供給電極121との間にそれぞれ接続(または、配設)されてもよい。ここで、複数の可変キャパシター155aは、電気的に接続された高周波電源部150から供給された高周波電源の大きさまたは比率を調節してもよい。
【0087】
本発明においては、可変キャパシター155aを分配点155bの後端に(または、以降に)設けて分配点155bと複数の電源供給電極121のうちの少なくとも一方の電源供給電極121aまたは121bとの間に配設することにより、各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のプラズマ密度を調節(または、調整)することができる。
【0088】
本発明に係るバッチ式基板処理装置100は、前記プラズマの状態に応じて複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給される高周波電源を選択的に調節する制御部160をさらに備えていてもよい。
【0089】
制御部160は、放電電流、放電電圧、位相などの前記プラズマの状態に応じて複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給される高周波電源を選択的に調節してもよい。ここで、制御部160は、電力分配部155に接続されて可変キャパシター155aを調節することにより、複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給される高周波電源の大きさまたは比率を調節してもよい。
【0090】
例えば、本発明のバッチ式基板処理装置100は、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のそれぞれのプラズマ密度を測定するプラズマ測定部(図示せず)をさらに備えていてもよく、制御部160は、プラズマ測定部(図示せず)において測定した前記プラズマ密度に応じて、複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給される高周波電源を調節してもよい。
【0091】
プラズマ測定部(図示せず)は、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のそれぞれのプラズマ密度を測定してもよく、放電電流、放電電圧、位相などの放電特定値を測定してプラズマ密度を測定してもよい。例えば、プラズマ測定部(図示せず)は、探針棒を備えていてもよく、探針棒を各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間にそれぞれ配設して前記探針棒から各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に形成されるプラズマの放電特性値を測定してもよい。これを通して、プラズマ測定部(図示せず)は、前記プラズマ密度を計測(または、測定)することができる。
【0092】
制御部160は、プラズマ測定部(図示せず)において測定した前記プラズマ密度を受け取って前記測定した前記プラズマ密度に応じて複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給される高周波電源を調節してもよい。このとき、制御部160は、電力分配部155に接続されてもよく、可変キャパシター155aを調節して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給される高周波電源の大きさまたは比率を調節してもよい。例えば、可変キャパシター155aを介して高周波電源の大きさまたは比率を調節できるように各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間にそれぞれ前記探針棒が配設されてもよい。これにより、前記探針棒から各前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に形成されるプラズマの放電特性値(例えば、放電電流、放電電圧、位相など)及び/又はプラズマ密度を測定して複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給される高周波電源の大きさまたは比率を調節することができる。
【0093】
本発明においては、複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに供給される高周波電源の大きさまたは比率を制御して基板10の処理工程に必要なラジカルの蒸着を均一に可変・調整することができることから、プラズマ密度の分布がばらついてしまうという不都合を解決することができる。
【0094】
本発明に係るバッチ式基板処理装置100は、吐出口171を介して前記プラズマにより分解される工程ガスを前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のそれぞれに向かって供給する複数本のガス供給管170をさらに備えていてもよい。
【0095】
複数本のガス供給管170は、吐出口171を介して工程ガスを前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のそれぞれに向かって供給してもよい。このとき、複数本のガス供給管170は、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のそれぞれに前記工程ガスをそれぞれ供給してもよく、供給された工程ガスは、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のそれぞれにおいてプラズマにより分解されてもよい。そして、複数本のガス供給管170は、吐出口171を備えていてもよく、吐出口171は、前記反応チューブ110の長手方向に延びるスリット(slit)状であってもよく、複数(本)から構成されて前記反応チューブ110の長手方向に並べられてもよい。吐出口171は、ガス供給管170の流路を介して供給される前記工程ガスを放電空間125に供給(または、吐出)してもよい。このとき、吐出口171は、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に向かって形成されてもよく、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に前記工程ガスを供給してもよい。
【0096】
例えば、複数本のガス供給管170は、放電空間125の外部に配設されてもよく、前記反応チューブ110の長手方向に延びて電源供給電極121と接地電極122の並べに沿って結んだ線から反応チューブ110の幅方向に外側(線上)に配置されてもよい。このとき、ガス供給管170の吐出口171は、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のそれぞれをそれぞれ向くように配設されてもよい。ガス供給管170は、基板10が処理される工程に必要な工程ガスがプラズマ形成部120において分解できるように放電空間125に前記工程ガスを供給してもよい。このとき、複数本のガス供給管170から供給されて放電空間125が工程ガスで満たされれば、複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに所定の前記高周波電源を供給して互いに対をなす(または、対向する)電源供給電極121と接地電極122との間にプラズマを形成してもよい。なお、プラズマ状態に励起されて分解された工程ガスは、処理空間111の内部に与えられて基板10の処理工程が行われてもよい。
【0097】
複数本のガス供給管170を電源供給電極121と接地電極122の並べに沿って結んだ線から前記反応チューブ110の幅方向に外側に配設し、ガス供給管170の吐出口171は、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のそれぞれをそれぞれ向くように配設すると、ガス供給管170の吐出口171が前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に対向することができて、前記工程ガスが前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間に直接的に供給される(または、届く)ことができる。これにより、前記工程ガスに対するプラズマ分解率が増加されることが可能になる。すなわち、ガス供給管170の吐出口171を介して供給される工程ガスは、プラズマが発生(または、形成)される前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間(すなわち、前記プラズマ発生空間)に直接的に供給できることから、分解されるための工程ガスがプラズマ発生空間に行き渡る時間が短縮されることが可能になる。これにより、工程ガスの分解速度の向上及びそれに伴うプラズマ分解率の向上を図ることができる。
【0098】
また、複数本のガス供給管170が電源供給電極121と接地電極122の並べに沿って結んだ線から前記反応チューブ110の幅方向に外側に配設され、ガス供給管170の吐出口171が前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間のそれぞれをそれぞれ向くように配設されることにより、隔壁115により取り囲まれた放電空間125が狭くなることができる。これにより、放電空間125に供給される工程ガスが満遍なく行き渡る時間が短縮でき、工程ガスがプラズマ分解されて処理空間111に与えられる時間もまた短縮することができる。
図1には、これらの複数本のガス供給管170が反応チューブ110の外側面から突出して電源供給電極121と接地電極122との間にそれぞれ配設された場合が例示されている。しかしながら、電源供給電極121と接地電極122との間に配設され、これと同時に、電源供給電極121と接地電極122の延長線の上から外側に配設できる位置であれば、その位置は特に限定されない。
【0099】
工程ガスは、1種以上のガスを含んでいてもよく、ソースガス及び/又は前記ソースガスと反応する反応ガスを含んでいてもよく、前記ソースガスと前記反応ガスとが反応して薄膜を形成してもよい。ここで、前記プラズマにより分解される工程ガスは、反応ガスであってもよく、前記ソースガスは、別途のソースガス供給管175を介して処理空間111に直ちに供給されてもよい。ガス供給管170は、処理空間111に直ちに前記ソースガスを供給するソースガス供給管175とは異なり、プラズマ形成部120内の放電空間125に先に反応ガス(または、前記工程ガス)を供給してもよい。このとき、前記反応ガスは、プラズマにより活性化されて処理空間111に与えられても良い。例えば、基板10の上に蒸着されるべき薄膜物質がシリコン窒化物である場合、前記ソースガスは、含シリコンガス(または、シリコン含有ガス)(例えば、ジクロロシラン(SiH2Cl2、DCS)など)を含んでいてもよく、前記反応ガスは、含窒素ガス(例えば、NH3、N2O、NO)など)を含んでいてもよい。
【0100】
本発明においては、低い温度下でも分解される前記ソースガスよりも相対的にガスの分解温度がさらに高いNH3、N2O、NOなどの前記反応ガスをプラズマ形成部120に供給することにより、プラズマ形成部120により前記反応ガスが効果的に分解されて処理空間に与えられることが可能になる。
【0101】
一方、本発明のバッチ式基板処理装置100は、複数枚の基板10を加熱するために反応チューブ110を取り囲む加熱手段(図示せず)をさらに備えていてもよい。なお、基板ボート50は、基板10の処理工程の均一性のために基板ボート50の下部に接続されるべき回転手段(図示せず)により回転されてもよい。
【0102】
そして、プラズマ形成部120は、吐出口171の吐出方向とずれるように配設され、前記反応チューブ110の長手方向に並べられて、前記プラズマにより分解された工程ガス中のラジカルを処理空間111に供給する複数の噴射口123を備えていてもよい。複数の噴射口123は、前記反応チューブ110の長手方向に並べられても良く、前記プラズマにより分解された工程ガス中のラジカルを処理空間111に供給してもよく、吐出口171の吐出方向とずれるように配設されてもよい。ここで、複数の噴射口123は、前記反応チューブ110の長手方向に並べられる複数の列をなして配設されてもよく、各列は、前記反応チューブ110の周方向に互いに離間して配設されてもよい。
【0103】
すなわち、噴射口123と吐出口171は、反応チューブ110の中心軸からの半径方向に対して互いにずれるように配設されてもよく、前記反応チューブ110の中心軸から噴射口123までの半径方向と前記反応チューブ110の中心軸から吐出口171までの半径方向とが互いにずれていてもよい。例えば、複数の噴射口123は、基板ボート50の前記単位処理空間にそれぞれ対応して前記反応チューブ110の長手方向に互いに異なる高さに形成されるとともに、前記反応チューブ110の長手方向に延びた複数の電極121、122のうちの少なくともどちらか一方に対応する位置に配置されてもよい。このような場合、ガス供給管170の吐出口171は、前記電源供給電極121と接地電極122との間の離間空間を向くように配設されることから、複数の噴射口123は、吐出口171の吐出方向とずれるように配設されてもよい。複数の噴射口123と吐出口171の位置が互いに対応することなく互いにずれていると、吐出口171を介して放電空間125に供給された工程ガスが直ちに噴射口123を介して処理空間111に抜け出ることなく、プラズマ分解されるための時間的な余裕を有した後に分解されて噴射口123を介してラジカル(のみ)が処理空間111に供給されることができ、プラズマ分解効率がさらに向上することができる。
【0104】
図6は、本発明の一実施形態に係る複数本のガス供給管の変形例を示す水平断面図である。
【0105】
図6を参照すると、本発明に係るバッチ式基板処理装置100は、前記反応チューブ110の周方向に沿って複数の電極121、122の両側の外郭に配設されて、吐出口171を介して前記プラズマにより分解される工程ガスを放電空間125内に供給する複数本のガス供給管170をさらに備えていてもよい。
【0106】
複数本のガス供給管170は、複数の電極121、122のように、前記反応チューブ110の周方向に沿って配置されてもよく、基板10が処理される工程に必要な工程ガスがプラズマ形成部120において分解できるように前記反応チューブ110の周方向に離間して配置される複数の電極121、122の両側の外郭(または、外側)にそれぞれ配設されて吐出口171を介して前記プラズマにより分解される前記工程ガスを放電空間125内に供給してもよい。
【0107】
複数本のガス供給管170から供給されて放電空間125が前記工程ガスで満たされれば、複数の電源供給電極のそれぞれ121a、121bに所定の高周波電源を供給して前記工程ガスをプラズマ分解してもよい。このようにして分解された前記工程ガスは、処理空間111に与えられて基板10の処理工程が行われてもよい。
【0108】
そして、複数本のガス供給管170は、吐出口171を備えていてもよく、吐出口171は、前記反応チューブ110の長手方向に延びるスリット状であってもよく、複数(本)から構成されて前記反応チューブ110の長手方向に並べられてもよい。吐出口171は、ガス供給管170の流路を介して供給される前記工程ガスを放電空間125に供給してもよい。
【0109】
ここで、ガス供給管170が隔壁115内(すなわち、前記放電空間)に配設される場合、吐出口171は、電源供給電極121に対して反対の方向を向くように形成されてもよい。電源供給電極121の外側にそれぞれ配設されるガス供給管170の吐出口171が隔壁115と対向するように配設されれば、吐出口171から供給される前記工程ガスが吐出口171と対向する隔壁115から放電空間125の中心領域に次第に行き渡ることができて、放電空間125の全体の空間に前記工程ガスが満遍なく分布されることが可能になる。これにより、全ての前記工程ガスがプラズマ分解されて処理空間111に与えられることが可能になる。
【0110】
逆に、電源供給電極121の外側にそれぞれ配設されるガス供給管170の吐出口171が隔壁115と対向する位置に形成されず、電源供給電極121と対向する位置に形成される場合には、前記工程ガスが放電空間125に行き渡ってプラズマ分解できる時間的な余裕を有することができず、直ちにプラズマ形成部120の噴射口123を介して処理空間111に抜け出てしまう。これにより、前記工程ガスが無駄使いされる虞があるだけではなく、それに伴う工程効率が低下することが懸念される。
【0111】
しかしながら、本発明においては、ガス供給管170の吐出口171を隔壁115と対向する位置に形成することにより、前記工程ガスがプラズマ形成部120の噴射口123を介して処理空間111に直ちに抜け出ることなく、放電空間125の周縁領域(すなわち、前記吐出口と対向する前記隔壁)から中心領域に満遍なく行き渡って満たされることが可能になる。これにより、前記工程ガスが放電空間125に滞留できる時間的な余裕が増加し、その結果、前記工程ガスのプラズマ分解効率が向上することができる。
【0112】
そして、ガス供給管170が隔壁115の外部(すなわち、前記隔壁の前記副側壁部の外部)に配置される場合には、隔壁115内の放電空間125に前記工程ガスを供給することができる。ここで、吐出口171は、電源供給電極121を向いてもよい。このような場合、ガス供給管170が隔壁115の副側壁部115a、115bの外側に配置されて隔壁115内の放電空間125に前記工程ガスを直ちに供給することができるので、放電空間125内に渦流(vortex)が形成されることなく、短い時間内に放電空間125に均一な圧力を形成することができる。なお、ガス供給管170が隔壁115の外側に配置されることにより、放電空間125を狭めることができる、これにより、短い時間内に放電空間125に均一な圧力を形成することもできる。
【0113】
ここで、複数本のガス供給管170は、反応チューブ110の中心軸Cから放電空間125の中央に延びる半径方向C-C′の両側に対称的に配置されてもよい。このとき、複数の電極121、122もまた、前記放電空間125の中央に延びる半径方向C-C′の両側に対称的に配置されてもよい。複数本のガス供給管170が前記放電空間125の中央に延びる半径方向C-C′を中心として対称状に配置される場合には、前記工程ガスが放電空間125の両側の空間(または、領域)に均一に供給されることができ、前記工程ガスが放電空間125内において効果的に行き渡ることができる。これに加えて、複数の電極121、122が前記放電空間125の中央に延びる半径方向C-C′の両側に対称的に配置されることにより、放電空間125の両側の空間のプラズマ均一度が向上することができる。これにより、プラズマ形成部120に形成されて処理空間111にラジカルを供給する複数の噴射口123の間に供給(または、通過)されるラジカルの量が均一になる。
【0114】
一方、本発明のバッチ式基板処理装置100は、反応チューブ110と連通されて処理空間111内の工程残渣を外部に排気する排気部180をさらに備えていてもよい。
【0115】
排気部180は、処理空間111と連通されて処理空間111内の工程残渣を外部に排気する役割を果たしてもよい。ここで、排気部180は、プラズマ形成部120と互いに対向するように配置されてもよい。
【0116】
そして、排気部180は、前記反応チューブ110の長手方向に延びる排気部材181、排気部材181に接続される排気ライン182及び排気ポンプ(図示せず)を備えていてもよい。排気部材181は、プラズマ形成部120の複数の噴射口123と対向し、基板ボート50の単位処理空間にそれぞれ対応して前記反応チューブ110の長手方向(すなわち、上下方向)に並べられた複数の排気口183を備えていてもよい。これにより、プラズマ形成部120において分解されて複数の噴射口123を介して複数枚の基板10に供給された前記工程ガスが基板10を通って複数の排気口183に吸い込まれることが可能になる。
【0117】
したがって、プラズマ形成部120の複数の噴射口123と排気部180の複数の排気口183とが互いに対応して基板10が積載される第1の方向(または、前記反応チューブの長手方向)と交差する第2の方向(例えば、前記基板の表面と平行な方向)に同一線上に位置するので、噴射口123から噴射されるラジカルが排気口183に流れ込みながら、層流(Laminar Flow)が形成されることが可能になる。すなわち、噴射口123から噴射されるラジカルが基板10の表面と平行な方向に流れることができて、基板10の上部面に均一に供給されることができ、噴射口123から噴射されるラジカルが基板10の表面と接触した後に基板10に沿って移動しながら排気口183に流れ込むことができる。
【0118】
このように、本発明においては、処理空間と仕切られる放電空間においてプラズマにより工程ガスが分解された後、処理空間の内部に与えられることにより、反応チューブの内壁に蒸着された薄膜からパーティクルが剥がれ落ちることを防ぐことができ、基板に対する処理工程の効率を向上させることができる。また、互いに離間する複数の電源供給電極の間に複数の接地電極を配設して複数の電源供給電極のそれぞれに対応する接地電極を配設することにより、接地電極を共通して用いることに起因して接地電極に2倍の電場が導かれてしまうことを防ぐことができる。これにより、電場と比例して増加するプラズマポテンシャルにより生じるプラズマダメージを抑制もしくは防止することができ、プラズマ形成部の寿命を延ばすことができる。一方、複数の電源供給電極を用いて印加される電圧を下げることにより、スパッターリング効果を低減することができ、高いプラズマ密度及びラジカルを用いて工程時間を短縮することもできる。そして、複数本のガス供給管で電源供給電極と接地電極との間の離間空間にそれぞれ工程ガスを供給してプラズマ分解率が向上することができる。さらに、複数本のガス供給管にそれぞれ形成された吐出口の吐出方向とずれるようにプラズマ形成部の複数の噴射口を配設することにより、プラズマ分解されていない工程ガスが処理空間に流れ込むことなく、工程ガスが十分に分解された後にラジカルが処理空間の内部に供給されることが可能になる。一方、電力分配部を介して一つの高周波電源部から供給される高周波電源を分配して複数の電源供給電極に与えることにより、電源供給電極と接地電極との間の離間空間に均一なプラズマが形成されるようにすることができる。
【0119】
以上、本発明の好適な実施形態について図示して説明したが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、請求の範囲において請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、これより様々な変形が行え、且つ、均等な他の実施形態が採用可能であるということが理解できる筈である。よって、本発明の技術的な保護範囲は、次の特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0120】
10:基板
50:基板ボート
100:バッチ式基板処理装置
110:反応チューブ
111:処理空間
115:隔壁
115a、115b:副側壁部
115c:主側壁部
120:プラズマ形成部
121:電源供給電極
122:接地電極
123:噴射口
125:放電空間
130:電極保護部
131:第1の電極保護管
132:第2の電極保護管
133:ブリッジ部
141:保護ガス供給部
142:保護ガス排気部
150:高周波電源部
155:電力分配部
155a:可変キャパシター
155b:分配点
155c:固定キャパシター
160:制御部
170:ガス供給管
171:吐出口
175:ソースガス供給管
180:排気部
181:排気部材
182:排気ライン
183:排気口