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特許7163473ウオッチの機械的および/または機能的構成部品用デュワー機器
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  • 特許-ウオッチの機械的および/または機能的構成部品用デュワー機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】ウオッチの機械的および/または機能的構成部品用デュワー機器
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/05 20060101AFI20221024BHJP
   G04B 37/12 20060101ALI20221024BHJP
   G04G 17/00 20130101ALI20221024BHJP
   G04G 17/08 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G04B37/05 H
G04B37/12 Z
G04G17/00 G
G04G17/08
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021176166
(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公開番号】P2022091684
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】20212864.1
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】エドアルド・フランツィ
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6059366(JP,B2)
【文献】西独国特許出願公開第2136371(DE,A1)
【文献】中国実用新案第206671783(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第108255045(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウオッチ(3)の機械的および/または機能的構成部品(2)用デュワー機器(1)であって、前記デュワー機器(1)は、腕輪およびケーシング(4)を具備し、前記ケーシング(4)は、
-取外し可能な手法で前記ウオッチ(3)のケース(6)を配列することができるチャンバ(5)と、
-前記ケース(6)とこの前記チャンバ(5)を形成する前記ケーシング(4)の1組の要素(10a、10b、10c)の間で分離を構成する前記チャンバ(5)内で前記ウオッチ(3)のケース(6)を磁気浮上により可逆的に締結する締結機器(7)と
を含むデュワー機器(1)。
【請求項2】
前記締結機器(7)は、2つの磁気モジュール(8a、8b)および少なくとも1つの停止部材(9a、9b、9c)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のデュワー機器(1)。
【請求項3】
前記締結機器(7)は、前記ケーシング(4)のガラス(10a)および/または最下部(10b)に関して前記チャンバ(5)内の前記ウオッチ(3)の前記ケース(6)の軸方向位置を調節および維持するための第1の磁気モジュール(8a)を備え、前記軸方向位置は、前記ケーシング(4)の中心軸(X)に関して画定されることを特徴とする、請求項1または2に記載のデュワー機器(1)。
【請求項4】
前記第1の磁気モジュール(8a)は、
-磁場発生要素(13a、13b)が互いに向き合って配置され、一方では、前記ウオッチ(3)の前記ケース(6)の上面(18a)の上に、および前記ケーシング(4)の前記ガラス(10a)を備える前記チャンバ(5)の第1の内面(12b)の上にそれぞれ配置される第1対(16a)と、
-磁場発生要素(14a、14b)が互いに向き合って配置され、一方では、前記ウオッチ(3)の最下部を備える前記ケース(6)の下面(18b)の上に、および前記ケーシング(4)の前記最下部(10b)を備える前記チャンバ(5)の第1の内面(12c)の上にそれぞれ配置される第2対(16b)と
を伴う少なくとも前記2対(16a、16b)の前記磁場発生要素(13a、13b、14a、14b)を備えることを特徴とする、請求項2または3に記載のデュワー機器(1)。
【請求項5】
前記締結機器(7)は、前記チャンバ(5)の内周壁(12a)に関して前記ケーシング(4)の前記チャンバ(5)内で前記ウオッチ(3)の前記ケース(6)の半径方向位置を調節および維持するための第2の磁気モジュール(8b)を備え、前記半径方向位置は、前記ケーシング(4)の前記中心軸(X)に関して画定されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のデュワー機器(1)。
【請求項6】
前記第2のモジュール(8b)は、少なくとも1対(17)の磁場発生要素(15a、15b)を備え、前記磁場発生要素(15a、15b)は、前記ウオッチ(3)の前記ケース(6)の外周壁(18c)の上に、および前記ケーシング(4)の前記チャンバ(5)の内周壁(12a)の上にそれぞれ位置し、一方では、互いに向き合って配置されることを特徴とする、請求項2または3に記載のデュワー機器(1)。
【請求項7】
これらの前記対(16a、16b、17)の各々の前記磁場発生要素(13a、13b、14a、14b、15a、15b)は、同一極性を有する磁極を備える、互いに向き合って配列された部分を含むことを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載のデュワー機器(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの停止部材(9a、9b、9c)は、前記チャンバ(5)の前記内周壁(12a)のすべてまたは一部の上に、および/または前記ケーシング(4)の前記ガラス(10a)を備える前記チャンバ(5)の前記第1の内面(12b)のすべてまたは一部の上に、および/または前記ケーシング(4)の前記最下部(10b)を備える前記チャンバ(5)の第2の内面(12c)のすべてまたは一部の上に配列されることを特徴とする、請求項2~7のいずれか一項に記載のデュワー機器(1)。
【請求項9】
前記締結機器(7)は、前記チャンバ(5)の前記内周壁(12a)のすべてまたは一部の上に、前記ケーシング(4)の前記ガラス(10a)を備える前記チャンバ(5)の前記第1の内面(12b)のすべてまたは一部の上に、および前記ケーシング(4)の前記最下部(10b)を備える前記チャンバ(5)の前記第2の内面(12c)のすべてまたは一部の上にそれぞれ配列された複数の停止部材(9a、9b、9c)を備えることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のデュワー機器(1)。
【請求項10】
前記チャンバ(5)は、真空下にある、またはほとんど真空下にあることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のデュワー機器(1)。
【請求項11】
前記ケーシング(4)は、表面積が前記ウオッチ(3)の前記ケース(6)のガラス(11)よりも実質的に広い、または厳密に広い前記ガラス(10a)を備えることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のデュワー機器(1)。
【請求項12】
前記ウオッチ(3)の前記ケース(6)が前記チャンバ(5)内に配列されたとき、前記ウオッチ(3)の前記ケース(6)の前記ガラス(11)は、前記ケーシング(4)の前記ガラス(10a)の方を向いて配列されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のデュワー機器(1)。
【請求項13】
前記腕輪が締結される中央部(10c)を備えることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のデュワー機器(1)。
【請求項14】
前記チャンバ(5)を形成する前記ケーシング(4)の前記1組の要素は、前記ガラス(10a)、前記中央部(10c)の前記内周壁(12a)、ならびにこの前記ケーシング(4)の前記中央部(10c)および前記最下部(10b)を備えることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のデュワー機器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウオッチの機械的および/または機能的構成部品用デュワー(Dewar)機器、詳細には極限の温度で動作するように適合されたウオッチの機械的および/または機能的構成部品用デュワー機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ウオッチは、従来は腕輪と、いくつかの電気部品または電子部品を含むウオッチケースとを備える。従来技術では、これらの構成部品のいくつかは、極限の温度に対処することができず、これらの温度で正しく動作しなくなることが公知である。典型的には、発光ダイオードまたは水晶を使用するLCD液晶表示装置は、ほぼ80℃(摂氏温度)を超えず、かつ0℃以下に至らない温度を許容する。しかしながら、たとえば宇宙または月面探索などの特有の環境では、温度は実質的にほぼ-150℃から+125℃の値に頻繁に到達する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、そのような極限の温度が存在する可能性がある環境でウオッチを、詳細には電子ウオッチを使用することができる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のために、本発明は、ウオッチの機械的および/または機能的構成部品用デュワー機器に関し、該デュワー機器は、腕輪およびケーシングを具備し、該ケーシングは、
-取外し可能な手法で該ウオッチのケースを配列することができるチャンバと、
-該ケースとこのチャンバを形成するケーシングの1組の要素の間で分離を構成する該チャンバ内で該ウオッチケースを磁気浮上により可逆的に締結するための締結機器と
を含む。
【0005】
ケーシングおよびウオッチケースにより形成されたデュワー機器を介して、ウオッチの機械的および/または機能的構成部品は、該機器の外側に存在する可能性のある-150℃~+125℃の間の想定される極限の温度から保護される。さらに、ケーシングにウオッチケースを締結することを確実にする該少なくとも1つの連結要素は、詳細には放熱によるこのウオッチケース6のいかなる熱損失も防止することにより、ケースの非常に良好な断熱を確実にすることに関与する。その結果、そのようなデュワー機器により、たとえば、惑星である火星の探索または月面探索などの宇宙探査探索の間のような、温度が極限になる可能性がある状況および環境で機械的および/または機能的構成部品を使用することができるようになる。これによりさらにまた、費用を確実に合理化できるようになり、そのような探索のために使用するウオッチで使用する構成部品に関して合理的複雑性を維持できるようになる。
【0006】
他の実施形態では、
-締結機器は、2つの磁気モジュールおよび少なくとも1つの停止部材を備え、
-締結機器は、該ケーシング4のガラスおよび/または最下部に関してチャンバ内でウオッチケースの軸方向位置を調節および維持するための第1の磁気モジュールを備え、該軸方向位置は、ケーシングの中心軸に関して画定され、
-第1のモジュールは、第1対を伴う少なくとも2対の磁場発生要素を備え、第1対の要素は、ウオッチケースの上面の上に、および該ケーシングのガラスを備えるチャンバの第1の内面の上にそれぞれ位置し、一方では、互いに向き合って配置され、
-第1のモジュールは、第2対を伴う少なくとも2対の磁場発生要素を備え、第2対の要素は、ウオッチの最下部を備えるケースの下面の上に、および該ケーシングの最下部を備えるチャンバの第2の内面の上にそれぞれ位置し、一方では、互いに向き合って配置され、
-締結機器は、該チャンバの内周壁に関してケーシングのチャンバ内でウオッチケースの半径方向位置を調節および維持するための第2の磁気モジュールを備え、該半径方向位置は、ケーシングの中心軸に関して画定され、
-第2のモジュールは、少なくとも1対の磁場発生要素を備え、該要素は、ウオッチケースの外周壁の上に、およびケーシングのチャンバの内周壁の上にそれぞれ位置し、一方では、互いに向き合って配置され、
-これらの対の各々の磁場発生要素は、同一極性を有する磁極を備える、互いに向き合って配列された部分を含み、
-該少なくとも1つの停止部材は、チャンバの内周壁のすべてまたは一部の上に、および/またはケーシングのガラス備えるチャンバの第1の内面のすべてまたは一部の上に、および/またはケーシングの最下部を備えるチャンバの第2の内面のすべてまたは一部の上に配列され、
-締結機器は、チャンバの内周壁のすべてまたは一部の上に、ケーシングのガラスを備えるチャンバの第1の内面のすべてまたは一部の上に、およびケーシングの最下部を備えるチャンバの第2の内面のすべてまたは一部の上にそれぞれ配列された複数の停止部材を備え、
-該チャンバは、真空下にあり、またはほとんど真空下にあり、
-ケーシングはガラスを備え、ガラスの表面積は、ウオッチケースのガラスよりも実質的に広く、または厳密に広く、
-ウオッチケースのガラスは、ウオッチケースが該チャンバ内に配列されたとき、ケーシングのガラスの方を向いて配置され、
-機器は、該腕輪が締結される中央部を備え、
-該チャンバを形成するケーシングの該1組の要素は、ガラス、中央部の内周壁、およびこのケーシングの最下部を備える。
【0007】
他の独自性および有利な点は、添付する図1を参照して、それらについて限定することなく情報を提供する目的で、以下で行う記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態によるデュワー機器内でウオッチのケースの配列に関与する磁気浮上により可逆的に締結するための締結機器を備えるウオッチの機械的および/または機能的構成部品用該デュワー機器の略図の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、時計のデュワー機器とも呼ばれる、または本明細書の残りの部分で簡単に「デュワー機器」とも呼ばれる、ウオッチ3の機械的および/または機能的構成部品2用真空隔離時計機器1を示す。ウオッチ3の機械的および/または機能的構成部品2用のそのようなデュワー機器1は、ウオッチ3の機械的および/または機能的構成部品2に良好な断熱を与えることに関与することができ、ウオッチ3のケース6は、これらの構成部品2のためにそのような隔離を確実にするために、機器1のこのケーシング4内に配列されなければならない。換言すれば、このデュワー機器1は、これらの機械的および/または機能的構成部品2のために適切な断熱を確実にするために、詳細にはデュワー機器1のケーシング4とウオッチ3のケース6の組合せにより形成される。この構成では、ウオッチ3のケース6は、チャンバ5内に配列され、一方ではこの該チャンバ5を形成するケーシング4の1組の要素10a~10c、すなわち、ガラス10a、中央部10cの内周壁12a、およびこのケーシング4の最下部10bから離れて、または距離を置いて維持される。この内周壁12aはまた、該チャンバ5の内周壁でもあることが留意される。
【0010】
この離れていることもしくはこの距離、またはこの分離は、該チャンバ5内に該ウオッチ3のケース6を磁気浮上により可逆的に締結するための締結機器7に基づき構成される。換言すれば、そのような締結機器7は、該ケース6と、ケーシング4の該チャンバ5を形成する、ケーシング4の1組の要素10a、10b、10cとの間を分離することができる。以下で記述するこの締結機器7は、中央部10cの内周壁12aおよび/または最下部10bおよび/またはガラス10aと、ウオッチ3のケース6、詳細にはこのケース6の外面全体との間の熱伝導を低減することに、またはすべて除去することにさえ関与する。この外面全体は、このウオッチ3のケース6のガラス11を備える上面18a、該ケース6の最下部18bを備える下面18b、およびこのケース6の中央部の外周壁18cを含む。
【0011】
そのようなケース6は、水晶ウオッチなどの電子ウオッチ、または機械式ウオッチとすることができるウオッチ3に備わっていることが留意される。
【0012】
上記で言及するウオッチ3の機械的および/または機能的構成部品2は、非限定的、かつ非網羅的に時計のムーブメント、文字板、針、輪、継ぎ目、ならびに/または電子部品および/もしくは電気部品2を備える。詳細には、そのような電子部品および/または電気部品は、たとえば表示装置、プロセッサ、メモリ、エネルギーを蓄積するための構成部品、モータ、集積回路、および電子振動子などを含む。
【0013】
したがって、この構成では、このデュワー機器1は、従来技術で周知のデュワー管/フラスコと同じ性質および特徴を有することが理解される。上記で言及するように、このデュワー機器1の性質および特徴は、そのような機器1が位置する可能性がある外部環境に存在する可能性がある温度、詳細には極限の温度に関して良好な断熱をデュワー機器1に与えることに関与する。
【0014】
したがって、これに関連してこの機器1は、この機器1のユーザがこの機器1を装着することができるようにする腕輪が搭載される中央部10cを含むケーシング4を備える。このケーシング4はまた、上記で言及するガラス10aおよび最下部10bを含む。この機器1では、好ましくはウオッチ3のケース6のガラス11よりも実質的に広い、または厳密に広い表面積をガラス10aが備えることが留意される。
【0015】
言及するように、この機器1のガラス10a、中央部10c、および最下部10bは一緒に、ウオッチ3のケース6を受け入れることができる、このケーシング4のチャンバ5を画定する。ケーシング4のこれらの3つの要素10a~10c、すなわち中央部10c、ガラス10a、および最下部10bは、このチャンバ5を構築するために一緒に連結される別個の要素とすることができる。あるいは、ケーシング4の中央部10cおよび最下部10bは、一体形部分を一緒に形成することができ、該一体形部分は、可逆的かつ密封された手法でガラス10aにより囲い込むことができる、最下部10bに対向する開口部を画定する。一代替形態では、ウオッチ3のケーシング4の中央部10cおよびガラス10aは、一体形部分を一緒に形成することができ、該一体形部分は、同じく可逆的かつ密封された手法で最下部10bにより囲い込むことができる、ガラス10aに対向する開口部を画定する。
【0016】
中央部10cおよび最下部10bは、好ましくは、非限定的、かつ非網羅的に金属材料から、ガラスから、または炭素もしくはガラス繊維で強化された熱硬化性もしくは熱可塑性ポリマー樹脂から、またはセラミック材料から作られる。中央部10cおよび最下部10bが透明または半透明であり、一方では、たとえばガラスから作られているとき、中央部10cおよび最下部10bの周壁12は、たとえば銀の層などの金属反射性のおよび/または類似のコーティング/ライニングで被覆することができることが留意される。
【0017】
追加で、機器1は、ケーシング4の外面全体の上に、すなわち、中央部10cの外周壁の上に、ならびに/またはガラス10aの外面の上に、およびこのウオッチ3のケース6の最下部10bの外面の上に配列された干渉計フィルタを備える。この干渉計フィルタは、ケーシング4のこの外面全体の上にコーティングを形成するグリッドまたは格子とすることができる。このグリッドまたは格子はメッシュを有し、メッシュの寸法は、電磁スペクトルのある種の所定の波長だけを、典型的には可視範囲の波長を通過させるようなものである。
【0018】
さらに、この機器1では、ウオッチ3のケース6がケーシング4のチャンバ5内に配列されるとき、このケース6と中央部10cの内周壁12a、最下部10b、およびガラス10aとの間に画定される空間には物質がない、またはほとんど何も入っていない。換言すればチャンバ5は、真空下にある、またはほとんど真空下にある。
【0019】
このチャンバ5内でウオッチ3のケース6の維持を確実にする目的で、デュワー機器1、および詳細にはケーシング4は、チャンバ5内でこのウオッチのケース6を磁気浮上により可逆的に締結するための締結機器7を備える。この構成では、ウオッチ3のケース6は、このチャンバ5内で取外し可能な手法で配列される。
【0020】
図1を参照すると、この締結機器7は、好ましくは2つの磁気モジュール8aおよび8b、すなわち第1のモジュール8aおよび第2のモジュール8b、ならびに少なくとも1つの停止部材9a、9b、9cを備える。この第1のモジュール8aは、該ケーシング4のガラス10aおよび/または最下部10bに関してチャンバ5内でウオッチ3のケース6の軸方向位置を調節および維持するための磁気モジュール8aである。
【0021】
これに関連して、ケーシング4は、好ましくは、中心軸Xに関して軸対称性であることが留意される。用語「軸方向」は、中心軸Xに平行な一般的方向を示す。用語「半径方向」については、この用語は、中心軸Xに垂直な、かつ中心軸Xと交差する軸に従う一般的方向を示す。
【0022】
そのような第1のモジュール8aは、少なくとも2対16a、16bの磁場発生要素13a、13b、14a、14bを備える。
【0023】
第1対16aのこの第1のモジュール8aでは、要素13a、13bは、ウオッチ3のケース6の上面18aの上に、および該ケーシング4のガラス10aを備えるチャンバ5の第1の内面12bの上にそれぞれ配置され、一方では、互いに向き合って配置される。より正確には、これらの要素13a、13bは、それぞれケーシング4のガラス、およびウオッチ3のケース6のガラスを取り囲んで全体的にまたは部分的に、連続にまたは不連続に伸展する。
【0024】
第2対16bでは、第2対16bの要素14a、14bは、ウオッチ3の最下部を備えるケース6の下面18bの上に、およびケーシング4の最下部10bを備えるチャンバ5の第2の内面12cの上にそれぞれ配置され、一方では、互いに向き合って配置される。
【0025】
言及するように、締結機器7はまた、第2の磁気モジュール8bを備える。この第2のモジュール8bは、該チャンバ5の内周壁12aに関してケーシング4のチャンバ5内でウオッチ3のケース6の半径方向位置を調節および維持するためのモジュールである。この第2のモジュール8bは、少なくとも1対17の磁場発生要素15a、15bを備え、該要素15a、15bは、ウオッチ3のケース6の外周壁18cの上に、およびケーシング4のチャンバ5の内周壁12aの上にそれぞれ配置され、一方では、互いに向き合って配置される。
【0026】
これらの2つのモジュール8a、8bでは、要素13a、13b、14a、14b、15a、15bは、磁石、詳細には永久磁石など、磁場の受動的発生源である。
【0027】
一代替形態では、これらの要素13a、13b、14a、14b、15a、15bは、たとえば電磁石のような、磁場の能動的発生源とすることができる。その結果、これに関連して、デュワー機器1は、電池、ならびにこれらの電磁石を制御するハードウェア要素およびソフトウェア要素を備えるマイクロコントローラを備えることができる。さらに、この構成では、ケーシング4は、停止部材9a、9b、9cがまったくない可能性がある。
【0028】
これらの第1および第2の磁気モジュール8a、8bでは、これらの対16a、16b、17の各々の磁場発生要素13a、13b、14a、14b、15a、15bは、同一極性を有する磁極を備える、互いに向き合って配列された部分を含む。この構成では、対の各々の要素13a、13b、14a、14b、15a、15bの磁極は互いに反発し、その結果、ウオッチ3のケース6の外面全体と、ケーシング4の該チャンバ5を画定するケーシング4の1組の要素10a、10b、10cとの間で、上記で言及する分離を生じさせる。
【0029】
さらに、図示するように、締結機器7はまた、第1の磁気モジュール8aおよび第2の磁気モジュール8bを用いて、ケーシング4のチャンバ5内にウオッチケース6を維持することに関与することができる少なくとも1つの停止部材9a、9b、9cを備える。実際は、そのような部材9a、9b、9cは、詳細には、たとえば衝撃の間にケーシング4が不意の/激しい/突然の加速、減速、および/または方向変化を受けるとき、チャンバ5内の第1のモジュール8aおよび第2のモジュール8bによりケース6について確実になる維持/締結に取って代わる、または維持/締結を完全なものにすることができる。その結果、この構成では、そのような部材は、第1のモジュール8aおよび/または第2のモジュール8bにより確実になる維持/締結が、該ケース6と、このチャンバ5を形成するケーシング4の1組の要素10a、10b、10cとの間の分離を維持するのに十分ではなくなるとすぐに、上面18aおよび/もしくは下面18b、ならびに/またはこのケース6の中央部の外周壁18cと接触するようになることができる。この部材9a、9b、9cは、好ましくは、たとえばコルクガシから作られた、(発泡体またはパネルの形状の)ポリウレタンから作られた、および/またはガラス発泡体から作られた材料など、良好な断熱特性および性質を有する材料から製作される。
【0030】
そのような部材は、チャンバ5の内周壁12aのすべてまたは一部の上に、および/またはケーシング4のガラス10aを備えるチャンバ5の第1の内面12bのすべてまたは一部の上に、および/またはケーシング4の最下部10bを備えるチャンバ5の第2の内面12cのすべてまたは一部の上に配列される。
【0031】
図1を参照すると、本実施形態では、締結機器7は、内周壁12aのすべてまたは一部の上に、第1の内面12bのすべてまたは一部の上に、およびチャンバ5の第2の内面12cのすべてまたは一部の上にそれぞれ配列された複数の停止部材9a、9b、9cを備える。より正確には、締結機器7は、3つの停止部材9a、9b、9cを備える。
【0032】
第1の部材9aは、ケーシング4のガラス10aを取り囲んで全体的にまたは部分的に、連続的にまたは不連続に伸展し、一方では、第1の内面12bの上に配列される。この構成では、そのような第1の部材9aは、第1対16aの磁場発生要素13aとケーシング4のガラス10aの間に位置することができる。第2の部材9bは、チャンバ5の内周壁12aの上に配列され、ウオッチ3のケース6の外壁18cの方を向く。第3の部材9cは、ウオッチ3のケース6の下面18bの方を向いて位置決めされ、一方では、第2の内面12cの上に、より詳細には最下部のすべてまたは一部の上に配列される。第3の部材9cの輪郭は、この第2の内面12cの上に位置する第2対16bの磁場発生要素14bにより実質的に画定される、または厳密に画定されることができることが留意される。
【0033】
追加で、ウオッチの機械的および/または機能的構成部品2は、非磁性とすることができること、および/またはウオッチのケーシング4は、磁場からこれらの構成部品2を隔離できるようにする材料から作ることができる、またはそのようなコーティングで覆うことができることが留意される。
【0034】
さらに、締結機器7は、このウオッチ3の文字板および/または表示インタフェース上に備わった情報を、デュワー機器1を装着しているユーザがケーシング4の透明ガラス10aを通して認めることができるような方法で、このウオッチ3のケース6のガラス11がケーシング4のガラス10aの方を向いて配列されるような方法で、このケーシング4内にウオッチ3のケース6を配置することに寄与する。
【0035】
その結果、そのようなデュワー機器1は、長期間ウオッチケース6の中に配列された構成部品の放熱による熱損失を低減する、またはさらには防止することにより、外部環境に関して断熱が非常に良好な、ウオッチ3の機械的および/または機能的構成部品2を提供する。その結果、機器1の外部温度が極限の値、典型的には-125℃~+125℃に到達するとき、チャンバ5内部の温度は、ケーシング4の中にウオッチ3のケース6を配列する間、ウオッチ3のケース6内に存在する温度に、典型的にはほぼ20℃に実質的に等しいままである。デュワー機器1の環境に存在する温度条件とは無関係に、ウオッチ3のケース6内に存在する温度は、ウオッチの正しい動作を妨げない温度であることが留意される。この温度は、詳細には極限のそのような温度が存在するそのような環境の中に直接に位置している間(すなわち、デュワー機器のケーシングの外側に位置している間)、そのようなウオッチケースがその構成部品2の動作温度を保持することができる継続期間よりも5~18倍長い時間の間、維持される。その結果、そのような構成は、ウオッチ3の機械的および/または機能的構成部品2を保護することができるようにするだけではなく、極限の外部温度条件で、最適な手法で機能的構成部品2の動作を確実にすることに関与することができるようにすることが理解される。
【符号の説明】
【0036】
1 デュワー機器
2 機械的および/または機能的構成部品
3 ウオッチ
4 ケーシング
5 チャンバ
6 ケース
7 締結機器
8a 第1の磁気モジュール
8b 第2の磁気モジュール
9a、9b、9c 停止部材
10a ケーシングのガラス
10b ケーシングの最下部
10c ケーシングの中央部
11 ウオッチのケースのガラス
12 周壁
12a 内周壁
12b チャンバの第1の内面
12c チャンバの第2の内面
13a、13b 磁場発生要素
14a、14b 磁場発生要素
15a、15b 磁場発生要素
16a 磁場発生要素の第1対
16b 磁場発生要素の第2対
17 磁場発生要素の対
18a 上面
18b 下面
18c ケースの外周壁
図1