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特許7163489負極材料、それを含む電気化学デバイス、及び電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】負極材料、それを含む電気化学デバイス、及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20221024BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221024BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221024BHJP
   C01B 33/113 20060101ALI20221024BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20221024BHJP
   C01B 32/159 20170101ALI20221024BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20221024BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/36 C
H01M4/36 A
C01B33/113 Z
C01B33/02 Z
C01B32/159
C01B32/168
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021518004
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2019118586
(87)【国際公開番号】W WO2021092869
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 志煥
(72)【発明者】
【氏名】姜 道義
(72)【発明者】
【氏名】崔 航
(72)【発明者】
【氏名】謝 遠森
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109841823(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109301184(CN,A)
【文献】特開2015-156328(JP,A)
【文献】特開2019-114559(JP,A)
【文献】特開2012-164624(JP,A)
【文献】特開2005-149957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/36
C01B33/113、33/02
C01B32/159、32/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極材料であって、
ケイ素含有粒子を含み、
前記ケイ素含有粒子は、ケイ素複合体基体及びポリマー層を含み、
前記ケイ素複合体基体は、シリカとSiナノ結晶粒子とをモル比で1:2~2:1で組み合わせたケイ素酸化物SiO (0.6≦x≦1.5)であり、
前記ポリマー層は、前記ケイ素複合体基体の少なくとも一部を被覆し、前記ポリマー層は、炭素材料を含み、
X線回折パターンにおいて、2θが27.5°~29.0°の範囲内にある最大の強度値をI とし、2θが20.5°~22.0°の範囲内にある最大の強度値をI とし、0<I /I ≦0.64である、負極材料。
【請求項2】
前記Siナノ結晶粒子のサイズは、100nm未満である、請求項に記載の負極材料。
【請求項3】
前記ポリマー層は、ポリフッ化ビニリデン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、炭素繊維、グラフェン又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項5】
前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の含有量は、0.05wt%~15wt%である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項6】
前記ポリマー層の厚さは、1nm~200nmである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項7】
前記ケイ素含有粒子のD50の範囲は、2.5~20μmであり、かつ前記ケイ素含有粒子の粒子径分布は、0.25≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす、請求項に記載の負極材料。
【請求項8】
前記ケイ素含有粒子は、酸化物MeO層をさらに含み、前記酸化物MeO層は、前記ケイ素複合体基体と前記ポリマー層との間に位置し、ただし、Meは、Al、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co及びZrのうちの少なくとも1種を含み、yは0.5~3であり、かつ前記酸化物MeO層は、炭素材料を含む、請求項に記載の負極材料。
【請求項9】
前記酸化物MeO層の厚さは、1nm~800nmである、請求項に記載の負極材料。
【請求項10】
前記負極材料の総重量に対して、Me元素の含有量は、0.001wt%~0.9wt%である、請求項に記載の負極材料。
【請求項11】
比表面積は、1~50m/gである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項12】
負極材料の製造方法であって、
シリカとSiナノ結晶粒子とをモル比で1:2~2:1で組み合わせたケイ素酸化物SiO (0.5<x<1.5)粉末であって、当該粉末のX線回折パターンにおいて、2θが27.5°~29.0°の範囲内にある最大の強度値をI とし、2θが20.5°~22.0°の範囲内にある最大の強度値をI とし、0<I /I ≦0.64である粉末、炭素材料及びポリマーを溶媒に高速で、1~20時間分散させて懸濁液を得ること、
前記懸濁液中の溶媒を除去すること、を含む、負極材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の負極材料を含む、負極。
【請求項14】
請求項13に記載の負極を含む、電気化学デバイス。
【請求項15】
リチウムイオン電池である、請求項14に記載の電気化学デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載の電気化学デバイスを含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的に負極材料、それを含む電気化学デバイス、及び電子装置、特にリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコン、携帯電話、タブレットパソコン、ポータブル電源及びドローン等の家電製品の普及に伴い、そのうち、電気化学デバイスへの要求は、ますます厳しくなっている。例えば、電池の軽量化だけでなく、電池の高容量及び長い動作寿命が求められている。リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、安全性が高く、メモリ効果がなく、動作寿命が長い等の点において、優れた利点があり、市場の主流となっている。
【発明の概要】
【0003】
本願の実施例は、少なくともある程度で、関連分野に存在している少なくとも1つの問題を解決しようとする負極材料及びその製造方法を提供する。本願の実施例は当該負極材料を使用する負極、電気化学デバイス及び電子装置をさらに提供する。
【0004】
一つの実施例では、本願は、ケイ素含有粒子を含み、前記ケイ素含有粒子は、ケイ素複合体基体及びポリマー層を含み、前記ポリマー層は、前記ケイ素複合体基体の少なくとも一部を被覆し、前記ポリマー層は、炭素材料を含む、負極材料を提供する。
【0005】
別の実施例では、本願は、SiO(約0.5<x<約1.5)粉末、炭素材料及びポリマーを溶媒に高速で、約1~20時間、分散させて懸濁液を得ることと、
前記懸濁液中の溶媒を除去することと、を含む、負極材料の製造方法を提供する。
【0006】
別の実施例では、本願は本願の実施例に記載の負極材料を含む負極を提供する。
【0007】
別の実施例では、本願は本願の実施例に記載の負極を含む電気化学デバイスを提供する。
【0008】
別の実施例では、本願は本願の実施例に記載の電気化学デバイスを含む電子装置を提供する。
【0009】
本発明の負極活物質は、良いサイクル性能を有し、また、当該負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池は、優れたレート性能及び低い膨張率を有する。
【0010】
本願の実施例のさらなる内容及び利点については、後述する説明に部分的に説明されて示され、又は本願の実施例の実施によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下、本願の実施例を説明しやすいために、本願の実施例又は従来技術を説明するための必要な図面を簡単に説明する。当然ながら、以下、説明の図面は単に本願の実施例の一部である。当業者であれば、進歩性に値する労働を必要とせず、これらの図面に例示された構造に基づいて、他の実施例の図面を得ることもできる。
図1図1は、本願の一つの実施例に係る負極活物質の構造模式図を示す。
図2図2は、本願の別の実施例に係る負極活物質の構造模式図を示す。
図3図3は、本願の実施例12に係る負極活物質のX線回折(XRD)パターンを示す。
図4図4は、本願の比較例4に係る負極活物質のX線回折(XRD)パターンを示す。
図5図5は、本願の実施例16に係る負極活物質の体積基準粒度分布曲線を示す。
図6図6は、本願の比較例6に係る負極活物質の体積基準粒度分布曲線を示す。
図7図7は、本願の実施例16に係る負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
図8図8は、本願の比較例6に係る負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願の実施例を詳しく説明する。本願の実施例は、本願を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0013】
本願に使用されるように、「約」という表現は、小さな変化を説明することに用いられる。物事又は状況と組み合わせて使用される場合、前記表現とは、物事又は状況が正確的に発生する例、及び物事又は状況が極めて近似的に発生する例を示す。例えば、数値と組み合わせて使用される場合、表現は、前記数値の±10%以下の変化範囲、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下を示す。
【0014】
本願において、Dv50は、負極活物質の累積体積百分率が50%になる時に対応する粒子径であり、単位がμmである。
【0015】
本願において、Dn10は、負極活物質の累積個数百分率が10%になる時に対応する粒子径であり、単位がμmである。
【0016】
本願において、ケイ素複合体は、ケイ素単体、ケイ素化合物、ケイ素単体とケイ素化合物との混合物、又は異なるケイ素化合物の混合物を含む。
【0017】
また、本明細書では、範囲の形式で量、比及び他の数値を示す場合がある。理解されるように、このような範囲の形式は、便宜及び簡潔のために用いられるものであり、かつ柔軟的に理解されるように、範囲制限として明確的に指定された数値を含むだけでなく、各数値及びサブ範囲を明確的に指定するように、前記範囲内に含まれるすべての個別数値又はサブ範囲を含む。
【0018】
具体的な実施形態及び特許請求の範囲では、「うちの一方」という表現、「うちの1つ」という表現、「うちの一種」という表現又は他の類似する表現によって接続される項のリストは、挙げられる項のうちのいずれかを意味する。例えば、項A及びBを挙げると、「A及びBのうちの一方」という表現は、Aのみ又はBのみを意味する。別の実施例では、A、B及びCを挙げると、「A、B及びCのうちの一方」という表現は、Aのみ、Bのみ又はCのみを意味する。項Aは単一の要素又は複数の要素を含んでもよい。項Bは、単一の要素又は複数の要素を含んでもよい。項Cは、単一の要素又は複数の要素を含んでもよい。
【0019】
具体的な実施形態及び特許請求の範囲では、「うちの少なくとも一方」という表現、「うちの少なくとも1つ」という表現、「うちの少なくとも1種」という表現又は他の類似する表現によって接続される項のリストは、挙げられる項のいずれかの組み合わせを意味する。例えば、項A及びBを挙げると、「A及びBのうちの少なくとも一方」という表現は、Aのみ、Bのみ、又は、A及びBを意味する。別の実施例では、項A、B及びCを挙げると、「A、B及びCのうちの少なくとも一方」実施例は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB(Cを除く)、A及びC(Bを除く)、B及びC(Aを除く)、又は、A、B及びCの全てを意味する。項Aは、単一の要素又は複数の要素を含んでもよい。項Bは、単一の要素又は複数の要素を含んでもよい。項Cは、単一の要素又は複数の要素を含んでもよい。
【0020】
<一、負極材料>
【0021】
本願の実施例は、ケイ素含有粒子を含み、前記ケイ素含有粒子は、ケイ素複合体基体及びポリマー層を含み、前記ポリマー層は、前記ケイ素複合体基体の少なくとも一部を被覆し、且つ前記ポリマー層は、炭素材料を含む、負極材料を提供する。
【0022】
いくつかの実施例では、前記ケイ素複合体基体は、ケイ素含有物質を含み、前記ケイ素複合体基体の前記ケイ素含有物質及び前記負極材料において、前記ケイ素含有物質以外、他の物質のうちの1つ又は複数と複合体を形成できる。いくつかの実施例では、前記ケイ素複合体基体は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な粒子を含む。
【0023】
いくつかの実施例では、前記ケイ素複合体基体は、SiO(約0.6≦x≦約1.5)を含む。
【0024】
いくつかの実施例では、前記ケイ素複合体基体は、ナノSi結晶粒子、SiO、SiO又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0025】
いくつかの実施例では、前記Siナノ結晶粒子のサイズは、約100nm未満である。いくつかの実施例では、前記Siナノ結晶粒子のサイズは、約50nm未満である。いくつかの実施例では、前記Siナノ結晶粒子のサイズは、約20nm未満である。いくつかの実施例では、前記Siナノ結晶粒子のサイズは、約5nm未満である。いくつかの実施例では、前記Siナノ結晶粒子のサイズは約2nm未満である。
【0026】
いくつかの実施例では、前記ポリマー層は、ポリフッ化ビニリデン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0027】
いくつかの実施例では、前記ポリマー層中の炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、炭素繊維、グラフェン又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0028】
いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の含有量は、約0.05wt%~15wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の含有量は、約0.05wt%~10wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の含有量は約0.05wt%~5wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の含有量は、約0.1wt%~4wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の含有量は、約0.5wt%~3wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の含有量は、約1wt%、約1.5wt%又は約2wt%である。
【0029】
いくつかの実施例では、前記ポリマー層の厚さは、約1nm~200nmである。いくつかの実施例では、前記ポリマー層の厚さは、約1nm~100nmである。いくつかの実施例では、前記ポリマー層の厚さは、約5nm~90nmである。いくつかの実施例では、前記ポリマー層の厚さは、約10nm~80nmである。いくつかの実施例では、前記ポリマー層の厚さは、約5nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm又は約70nmである。
【0030】
いくつかの実施例では、前記負極材料のX線回折パターンにおいて、2θが約27.5°~29.0°の範囲内にある最大の強度値をIとし、約20.5°~22.0°の範囲内にある最大の強度値をIとし、約0<I/I≦約1である。
【0031】
いくつかの実施例では、前記負極材料のX線回折パターンにおいて、2θが約28.4°にある最大の強度値をIとし、約21.0°の範囲内にある最大の強度値をIとし、約0<I/I≦約1である。いくつかの実施例において、I/Iは、0.2、0.3、0.4、0.5又は0.6である。
【0032】
いくつかの実施例では、前記ケイ素含有粒子のD50の範囲は、約2.5μm~20μmであり、かつ前記ケイ素含有粒子の粒子径分布は、約0.25≦Dn10/Dv50≦約0.6を満たす。
【0033】
いくつかの実施例では、前記ケイ素含有粒子の粒子径分布は、約0.4≦Dn10/Dv50≦約0.5を満たす。いくつかの実施例では、前記ケイ素複合体基体の粒子径分布は、Dn10/Dv50が約0.3又は約0.35であることを満たす。
【0034】
いくつかの実施例では、前記ケイ素含有粒子のD50の範囲は、約2.5μm~20μmである。いくつかの実施例では、前記ケイ素含有粒子のD50の範囲は、約3μm~10μmである。いくつかの実施例では、前記ケイ素複合体基体のD50の範囲は、約4μm~9μmである。いくつかの実施例では、前記ケイ素複合体基体のD50の範囲は、約4.5μm~6μmである。いくつかの実施例では、前記ケイ素複合体基体のD50の範囲は、約2μm、約3.5μm、約4.5μm又は約5μmである。
【0035】
いくつかの実施例では、前記ケイ素含有粒子は、酸化物MeO層をさらに含み、前記酸化物MeO層は、前記ケイ素複合体基体と前記ポリマー層との間に位置し、ただし、Meは、Al、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co及びZrのうちの少なくとも1種を含み、yは約0.5~3であり、かつ前記酸化物MeO層は、炭素材料を含む。
【0036】
いくつかの実施例では、前記酸化物MeO層は、前記ケイ素複合体基体の少なくとも一部を被覆する。
【0037】
いくつかの実施例では、前記酸化物MeOは、Al、SiO、TiO、Mn、MnO、CrO、Cr、CrO、V、VO、CoO、Co、Co、ZrO又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0038】
いくつかの実施例では、前記酸化物MeO層中の炭素材料は、無定形炭素、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、炭素繊維、グラフェン又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施例では、前記無定形炭素は、炭素前駆体を高温焼結して得られた炭素材料である。いくつかの実施例では、前記炭素前駆体は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、酸性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル酸樹脂又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0039】
いくつかの実施例では、前記酸化物MeO層の厚さは、約0.5nm~1100nmである。いくつかの実施例では、前記酸化物MeO層の厚さは、約1nm~800nmである。いくつかの実施例では、前記酸化物MeO層の厚さは、約1nm~600nmである。いくつかの実施例では、前記酸化物MeO層の厚さは、約1nm~20nmである。いくつかの実施例では、前記酸化物MeO層の厚さは、約2nm、約10nm、約20nm、約50nm、約100nm、約200nm又は約300nmである。
【0040】
いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、Me元素の含有量は、約0.001wt%~0.9wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、Me元素の含有量は、約0.02wt%~1wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、Me元素の含有量は、約0.02wt%~0.8wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、Me元素の含有量は、約0.05wt%、約0.1wt%、約0.2wt%、約0.3wt%、約0.4wt%、約0.5wt%、約0.6wt%、約0.7wt%又は約0.8wt%である。
【0041】
いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、前記酸化物MeO層中の炭素材料の含有量は、約0.05wt%~1wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、前記酸化物MeO層中の炭素材料の含有量は、約0.1wt%~0.9wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、前記酸化物MeO層中の炭素材料の含有量は、約0.2wt%~0.8wt%である。いくつかの実施例では、前記負極材料の総重量に対して、前記酸化物MeO層中の炭素材料の含有量は、約0.3wt%、約0.4wt%、約0.5wt%、約0.6wt%又は約0.7wt%である。
【0042】
いくつかの実施例では、前記負極材料の比表面積は、約1~50m/gである。いくつかの実施例では、前記負極材料の比表面積は、約5~40m/gである。いくつかの実施例では、前記負極材料の比表面積は、約10~30m/gである。いくつかの実施例では、前記負極材料の比表面積は、約1m/g、約5m/g又は約10m/gである。
【0043】
<二、負極材料の製造方法>
【0044】
本願の実施例は、
(1)SiO(約0.5<x<約1.5)粉末、炭素材料及びポリマーを溶媒に高速で、約1~20時間、分散させて懸濁液を得ることと、
(2)前記懸濁液中の溶媒を除去することと、を含む、前記いずれかの負極材料を製造する方法を提供する。
【0045】
いくつかの実施例では、前記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0046】
いくつかの実施例では、前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、炭素繊維、グラフェン又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0047】
いくつかの実施例では、前記溶媒は、水、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレン又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0048】
いくつかの実施例では、前記ケイ素酸化物SiOは、市販のケイ素酸化物であってもよく、本発明の方法により製造されたケイ素酸化物SiOであってもよく、本発明の方法により製造されたケイ素酸化物SiOのX線回折パターンにおいて、2θが約27.5°~29.0°の範囲内にある最大の強度値をIとし、約20.5°~22.0°の範囲内にある最大の強度値をIとし、約0<I/I≦約1である。
【0049】
本発明では、約0<I/I≦約1を満たすケイ素酸化物SiOの製造方法は、
(1)シリカと金属ケイ素粉末とを約1:5~5:1のモル比で混合して混合材料を得ること、
(2)約10-4~10-1kPa圧力範囲で、約1200~1600℃の温度範囲内で、前記混合材料を、約5~30時間、加熱して、ガスを得ることと、
(3)得られた前記ガスを凝縮させて固体を得ること、
(4)前記固体を粉砕して篩い分けすること、
(5)約400~1800℃の範囲内で、前記固体を、約0.5~15時間、熱処理し、熱処理された前記固体を冷却して、約0<I/I≦約1を満たすケイ素酸化物SiOを得ること、を含む。
【0050】
いくつかの実施例では、前記シリカと金属ケイ素粉末のモル比は、約1:4~4:1である。いくつかの実施例では、前記シリカと金属ケイ素粉末のモル比は、約1:3~3:1である。いくつかの実施例では、前記シリカと金属ケイ素粉末のモル比は、約1:2~2:1である。いくつかの実施例では、前記シリカと金属ケイ素粉末のモル比は、約1:1である。
【0051】
いくつかの実施例では、前記圧力範囲は、約10-4~10-1kPaである。いくつかの実施例では、前記圧力は、約1Pa、約10Pa、約20Pa、約30Pa、約40Pa、約50Pa、約60Pa、約70Pa、約80Pa、約90Pa又は約100Paである。
【0052】
いくつかの実施例では、前記加熱温度は、約1200~1500℃である。いくつかの実施例では、前記加熱温度は、約1300℃、1350℃、約1400℃又は約1450℃である。
【0053】
いくつかの実施例では、前記加熱時間は、約5~20時間である。いくつかの実施例では、前記加熱時間は約10~25時間である。いくつかの実施例では、前記加熱時間は約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間又は約18時間である。
【0054】
いくつかの実施例では、混合は、ボールミル、V型ミキサー、三次元ミキサー、気流ミキサー又は横型攪拌機によって行われる。
【0055】
いくつかの実施例では、加熱及び熱処理は、不活性ガスの雰囲気で行われる。いくつかの実施例では、前記不活性ガスは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス又はこれらの組み合わせを含む。
【0056】
いくつかの実施例では、前記方法は、篩い分け後に熱処理のステップをさらに含む。
【0057】
いくつかの実施例では、前記熱処理の時間は、約400~1500℃である。いくつかの実施例では、前記熱処理の時間は、約500~1200℃である。いくつかの実施例では、前記熱処理の時間は、約600℃、約800℃又は約1000℃である。
【0058】
いくつかの実施例では、前記熱処理の時間は、約1~15時間である。いくつかの実施例では、前記熱処理の時間は、約2~12時間である。いくつかの実施例では、前記熱処理の時間は、約3時間、約5時間、約8時間、約10時間、約12時間又は約15時間である。
【0059】
いくつかの実施例では、前記負極材料の製造方法は、表面にポリマー層を有する前記ケイ素化合物SiO粒子に対して篩い分け及び分級を行うステップをさらに含む。篩い分け及び分級を経て、表面にポリマー層を有するケイ素化合物SiO粒子のD50の範囲は約2.5μm~20μmであり、かつ粒子径分布は約0.25≦Dn10/Dv50≦約0.6を満たす。
【0060】
いくつかの実施例では、前記負極材料の製造方法はケイ素酸化物SiOの表面にMeO層を被覆してからポリマー層を被覆することができ、ケイ素酸化物SiOの表面にMeO層を被覆するステップは、
(1)ケイ素酸化物SiO粉末、炭素材料及び酸化物前駆体MeTnを、有機溶媒及び脱イオン水の存在下で、混合溶液を形成すること、
(2)前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること、
(3)前記粉末を、約250~1000℃下で、約0.5~15時間、焼結して表面に酸化物MeO層を有するケイ素化合物SiO粒子を得ること、を含み、
ただし、xは、約0.5~1.5であり、yは、約0.5~3であり、
Meは、Al、Si、Ti、Mn、Cr、V、Co及びZrのうちの少なくとも1種を含み、
Tは、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びハロゲンのうちの少なくとも1種を含み、
nは1、2、3又は4である。
【0061】
いくつかの実施例では、前記酸化物前駆体MeTnは、チタン酸イソプロピル、アルミニウムイソプロポキシド又はこれらの組み合わせを含む。
【0062】
いくつかの実施例では、前記炭素前駆体は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、炭素繊維、グラフェン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、酸性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル樹脂又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0063】
いくつかの実施例では、焼結温度は、約250~900℃である。いくつかの実施例では、焼結温度は、約400~700℃である。いくつかの実施例では、焼結温度は、約400~650℃である。いくつかの実施例では、焼結温度は、約300℃、約450℃、約500℃又は約600℃である。
【0064】
いくつかの実施例では、焼結時間は、約1~15時間である。いくつかの実施例では、焼結時間は、約1~10時間である。いくつかの実施例では、焼結時間は、約1.5~5時間である。いくつかの実施例では、焼結時間は、約2時間、約3時間又は約4時間である。
【0065】
いくつかの実施例では、前記有機溶媒は、エタノール、メタノール、n-ヘキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ピロリドン、アセトン、トルエン、イソプロパノール又はn-プロパノールのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例では、前記有機溶媒は、エタノールである。
【0066】
いくつかの実施例では、ハロゲンはF、Cl、Br又はこれらの組み合わせを含む。
【0067】
いくつかの実施例では、焼結は、不活性ガスの雰囲気で行われる。いくつかの実施例では、前記不活性ガスは窒素ガス、アルゴンガス又はこれらの組み合わせを含む。
【0068】
いくつかの実施例では、乾燥は、噴霧乾燥であり、乾燥温度は、約100~300℃である。
【0069】
図1は、本願の一つの実施例に係る負極活物質の構造模式図を示す。内層1は、ケイ素複合体基体であり、外層2は、炭素材料を含むポリマー層である。カーボンナノチューブ(CNT)を含有するポリマー層が、負極活物質の表面を被覆しており、ポリマーを利用して負極活物質の表面にCNTを結合でき、負極活物質の表面でのCNTの界面安定性を向上させることに有利であり、これによりサイクル性能を向上させる。
【0070】
図2は、本願の別の実施例に係る負極活物質の構造模式図を示す。内層1は、ケイ素複合体基体であり、中間層2は、炭素材料を含む酸化物MeO層であり、外層3は、炭素材料を含むポリマー層である。前記ケイ素複合体基体を被覆する酸化物MeO層は、HF捕捉剤として機能し、前記酸化物は、電解液中のHFと反応してサイクル過程の電解液中のHF含有量を低減させ、HFによるケイ素材料の表面へのエッチングを低減させ、これにより、材料のサイクル性能をさらに向上させる。酸化物MeO層に炭素材料をドーピングすることは、初回充放電過程でリチウムを吸蔵した後にリチウムイオン導体を形成することに有利であり、イオンの導通を実現することに有利である。また、酸化物MeO層に一定量の炭素をドーピングすることで負極活物質の導電性を高めることができる。
【0071】
図3は、本願の実施例12に係る負極活物質のX線回折(XRD)パターンを示す。図3から分かるように、当該負極活物質のX線回折パターンにおいて、2θが約28.0°~29.0°の範囲内にある最大の強度値をIとし、約20.5°~21.5°の範囲内にある最大の強度値をIとし、約0<I/I≦約1である。I/I値の大きさは、材料が不均化から受ける影響の度合いを反映する。I/I値が大きければ大きいほど、負極活物質内部のケイ素ナノ結晶粒子のサイズは、大きくなる。I/I値が1を超えると、負極活物質がリチウムを吸蔵する過程で局所領域の応力が急激に増大し、これにより、負極活物質のサイクル過程での構造劣化を引き起こす。また、ナノ結晶分布が発生するため、イオン拡散過程で結晶粒界の拡散能力に影響を与える。本願の発明者は、I/I値が約0<I/I≦約1を満たすと、負極活物質が良好なサイクル性能を有し、かつこれによって製造されたリチウムイオン電池が、良好な膨張防止性能を有することを見出した。
【0072】
図4は、本願の比較例4に係る負極活物質のX線回折(XRD)パターンを示す。図4から分かるように、比較例4の負極活物質のI/I値は明らかに1より大きい。実施例12に係る負極活物質と比較して、比較例4に係る負極活物質のサイクル性能が悪く、これにより製造されたリチウムイオン電池の膨張率が高く、かつレート性能が悪い。
【0073】
図5は、実施例16に係る負極活物質の体積基準粒度分布曲線である。図5から分かるように、実施例16に係る負極活物質の粒子粒度分布は、比較的に均一であり、かつ分布は比較的に狭い。実施例16に係る負極活物質により製造されたリチウムイオン電池は、満足できるサイクル性能及び膨張防止性能を示す。
【0074】
図6は、比較例6に係る負極活物質の体積基準粒度分布曲線である。図6から分かるように、比較例6に係る負極活物質に一定数量の小粒子が存在し、従って、サイクル性能が悪い。微粒子の存在は、電解液による粒子へのエッチングを加速し、これによりサイクル性能の劣化を加速する。一方、小粒子が電解液に速くエッチングされ、表面に大量の副生成物が生成するため、これにより製造されたリチウムイオン電池の膨張防止性能は、実施例16に係る負極活物質により製造されたリチウムイオン電池の膨張防止性能に比べて、悪い。
【0075】
図7及び図8は、それぞれ実施例16及び比較例6に係る負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図7及び8から、粒子のサイズ分布を直感的に見える。図8は、比較例6に係る負極活物質に一定数量の小粒子が存在することを示す。
【0076】
<三、負極>
【0077】
本願の実施例は負極を提供する。前記負極は、集電体と当該集電体に位置する負極活物質層とを含む。前記負極活物質層は、本願の実施例に係る負極材料を含む。
【0078】
いくつかの実施例では、負極活物質層は、バインダーを含む。いくつかの実施例では、バインダーは、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシ含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(アクリレート)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂又はナイロンを含むが、これらに限定されない。
【0079】
いくつかの実施例では、負極活物質層は、導電性材料を含む。いくつかの実施例では、導電性材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属粉、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀又はポリフェニレン誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0080】
いくつかの実施例では、集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、発泡ニッケル、発泡銅、又は導電性金属が被覆されたポリマー基材を含むが、これらに限定されない。
【0081】
いくつかの実施例では、負極は、溶媒に活物質、導電性材料及びバインダーを混合して、活物質組成物を製造し、当該活物質組成物を集電体に被覆するという方法によって得られる。
【0082】
いくつかの実施例では、溶媒は、N-メチルピロリドンを含んでもよいが、これに限定されない。
【0083】
<四、正極>
【0084】
本願の実施例に適用できる正極の材料、構成及び製造方法は、いずれかの従来技術に開示の技術を含む。いくつかの実施例では、正極は、米国特許出願US9812739Bに記載の正極であり、その内容を引用により本願に組み込む。
【0085】
いくつかの実施例では、正極は、集電体と当該集電体に位置する正極活物質層とを含む。
【0086】
いくつかの実施例では、正極活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO)、リチウムニッケルコバルトマンガン(NCM)三元系材料、リン酸第一鉄リチウム(LiFePO)又はマンガン酸リチウム(LiMn)を含むが、これらに限定されない。
【0087】
いくつかの実施例では、正極活物質層は、バインダーをさらに含み、かつ選択可能に導電性材料を含む。バインダーは、正極活物質粒子同士の結合を改善し、かつ正極活物質と集電体の結合を向上する。
【0088】
いくつかの実施例では、バインダーは、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシ含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(アクリレート)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂又はナイロン等を含むが、これらに限定されない。
【0089】
いくつかの実施例では、導電性材料は、炭素系材料、金属系材料、導電性ポリマー及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、炭素系材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維又はこれらの任意の組み合わせから選ばれる。いくつかの実施例では、金属系材料は、金属粉、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム及び銀から選ばれる。いくつかの実施例では、導電性ポリマーは、ポリフェニレン誘導体である。
【0090】
いくつかの実施例では、集電体は、アルミニウムを含んでもよいが、これに限定されない。
【0091】
正極は、本分野の公知の製造方法で製造され得る。例えば、正極は、溶媒に活物質、導電性材料及びバインダーを混合して、活物質組成物を製造し、当該活物質組成物を集電体に塗工するという方法によって得られる。いくつかの実施例では、溶媒は、N-メチルピロリドンを含んでもよいが、これに限定されない。
【0092】
<五、電解液>
【0093】
本願の実施例に適用できる電解液は、従来技術で知られている電解液であってもよい。
【0094】
いくつかの実施例では、前記電解液は、有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含む。本願による電解液の有機溶媒は、従来技術で知られている、電解液の溶媒として使用できるいずれかの有機溶媒であってもよい。本願による電解液に使用される電解質は、制限されず、従来技術で知られている、いずれかの電解質であってもよい。本願による電解液の添加剤は、従来技術で知られている、電解液添加剤として使用できるいずれかの添加剤であってもよい。
【0095】
いくつかの実施例では、前記有機溶媒は、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート又はプロピオン酸エチルを含むが、これらに限定されない。
【0096】
いくつかの実施例では、前記リチウム塩は、有機リチウム塩および無機リチウム塩のうちの少なくとも1種を含む。
【0097】
いくつかの実施例では、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLiN(CFSO(LiTFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウムLi(N(SOF))(LiFSI)、ビス(オキサレート)ホウ酸リチウムLiB(C(LiBOB)又はジフルオロビス(オキサレート)ホウ酸リチウムLiBF(C)(LiDFOB)を含むが、これらに限定されない。
【0098】
いくつかの実施例では、前記電解液中のリチウム塩の濃度は、約0.5~3mol/L、約0.5~2mol/L又は約0.8~1.5mol/Lである。
【0099】
<六、セパレーター>
【0100】
いくつかの実施例では、正極と負極の間にセパレーターを設けて短絡を防止する。本願の実施例に適用できるセパレーターの材料及び形状は、制限されず、いずれかの従来技術に開示されている技術であってもよい。いくつかの実施例では、セパレーターは、本願の電解液に対して安定する材料から形成されるポリマー又は無機物等を含む。
【0101】
例えば、セパレーターは、基材層及び表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する不織布、膜又は複合膜であり、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドから選ばれる少なくとも1種である。具体的に、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を選択することができる。
【0102】
基材層の少なくとも1つの表面に表面処理層が設けられ、表面処理層は、ポリマー層又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物を混合して形成した層であってもよい。
【0103】
無機物層は、無機粒子及びバインダーを含み、無機粒子は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化錫、二酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び硫酸バリウムから選ばれる1種又は複数種の組み合わせである。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン及びポリヘキサフルオロプロピレンから選ばれる1種又は複数種の組み合わせである。
【0104】
ポリマー層はポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリレートポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン又はポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)から選ばれる少なくとも1種である。
【0105】
<七、電気化学デバイス>
【0106】
本願の実施例は、電気化学反応が発生するいずれかの装置を含む電気化学デバイスを提供する。
【0107】
いくつかの実施例では、本願の電気化学デバイスは、金属イオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を有する正極と、本願の実施例に係る負極と、電解液と、正極と負極の間に位置するセパレーターとを含む。
【0108】
いくつかの実施例では、本願の電気化学デバイスは、あらゆる種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はコンデンサを含むが、これらに限定されない。
【0109】
いくつかの実施例では、前記電気化学デバイスは、リチウム二次電池である。
【0110】
いくつかの実施例では、リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池を含むが、これらに限定されない。
【0111】
<八、電子装置>
【0112】
本願の電子装置は、本願の実施例に係る電気化学デバイスを使用するいずれかの装置であってもよい。
【0113】
いくつかの実施例では、前記電子装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピュータ、モバイルコンピュータ、電子書籍プレーヤー、携帯電話、ポータブルファックス機、ポータブルコピー機、ポータブルプリンタ、ヘッドマウントステレオヘッドフォン、ビデオテープレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、ポータブルCDプレーヤー、ミニディスク、送受信機、電子手帳、電卓、メモリーカード、ポータブルレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、電動アシスト自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュ、カメラ、家庭用大型蓄電池及びリチウムイオンキャパシタ等を含むが、これらに限定されない。
【0114】
以下、リチウムイオン電池を例とし、具体的な実施例を参照しリチウムイオン電池の製造を説明し、当業者であれば、本願に説明される製造方法が単に実施例であり、他のいずれかの適切な製造方法が、いずれも本願の範囲内に含まれることを理解すべきである。
【0115】
実施例
【0116】
以下、本願によるリチウムイオン電池の実施例及び比較例を説明して、性能評価を行う。
【0117】
<一、負極活物質の性能評価方法>
【0118】
1、負極活物質粉末の性質試験方法
【0119】
(1)粉末粒子の顕微鏡形態の観察
走査型電子顕微鏡を利用して粉末の顕微鏡形態の観察を行い、材料表面の被覆状況を示し、選択される試験機器は、OXFORD EDS(X-max-20mm)であり、加速電圧は、15KVであり、焦点距離を調整し、観測倍率が50Kで高倍率の観察を行い、低倍率500~2000で主に粒子の凝集状況を観察する。
【0120】
(2)比表面積試験
一定の低温で、異なる相対圧力時の固体表面へのガスの吸着量を測定した後、ブルナウア-エメット-テラー吸着理論及びその公式(BET公式)に基づいて、サンプルの単分子層の吸着量を求め、これにより固体の比表面積を算出する。
【0121】
約1.5~3.5g粉末サンプルを秤取してTriStar II 3020のサンプル試験管に入れ、約200℃で120分間、脱気した後に試験する。
【0122】
(3)粒度試験
50mlのきれいなビーカーに約0.02g粉末サンプルを加え、約20ml脱イオン水を加え、数滴の1%の界面活性剤を滴下し、粉末を水に完全に分散させ、120W超音波洗浄機で、5分間、超音波処理し、MasterSizer 2000を利用して粒度分布を測定する。
【0123】
(4)炭素含有量試験
酸素が豊富な条件において高周波炉でサンプルを高温加熱及び燃焼して、炭素及び硫黄をそれぞれ二酸化炭素及び二酸化硫黄に酸化し、当該ガスを処理して対応する吸収プールに入れ、対応する赤外線放射を吸収し、検出器によって対応する信号に変換する。この信号をコンピュータによってサンプリングし、線形補正した後に、二酸化炭素、二酸化硫黄の濃度に正比例した数値に変換し、次に、分析過程全体の値を加算し、分析終了後、コンピュータでこの加算値を重量値で除算し、次に補正係数を乗算し、ブランクを差し引いて、サンプル中の炭素、硫黄の含有割合を得る。高周波赤外線炭素‐硫黄アナライザ(上海徳凱HCS-140)を利用してサンプルを試験する。
【0124】
(5)XRD測定
サンプルを1.0~2.0g秤取してガラスサンプルホルダーの凹溝内に入れ、ガラスシートで圧縮して平滑化し、X線回折計(ブルック、D8)を使用してJJS K 0131-1996『X線回折分析法通則』に従って試験し、試験電圧を40kV、電流を30mA、走査角度範囲を10~85°、走査ステップを0.0167°とし、各ステップに設定された時間が0.24sであり、XRD回折パターンが得られ、パターンから、2θが28.4°にある最大の強度値I、及び21.0°にある最大の強度値Iを得、これによりI/Iの比を算出する。
【0125】
(6)金属元素試験
所定量のサンプルを秤取し、所定量の濃硝酸を加え、マイクロ波分解を行って溶液を得、得られた溶液及びろ過ケークを複数回洗浄し、所定の体積に定容し、ICP-OESによってその中の金属元素のプラズマ強度を測定し、測定される金属の標準曲線に基づいて、溶液中の金属含有量を算出し、これにより材料に含まれる金属元素の量を算出する。
【0126】
次の表における各物質の含有量は、いずれも負極活物質の総重量に基づて、計算されたものである。
【0127】
<二、負極活物質の電気的性質の試験方法>
【0128】
<1、ボタン電池の試験方法>
【0129】
乾燥アルゴンガス雰囲気で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を約1:1:1の重量比で混合してなる溶媒に、LiPFの濃度が約1.15mol/Lになるように、LiPFを加え、均一に混合し、さらに約7.5wt%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を加え、均一に混合して電解液を得る。
【0130】
実施例及び比較例で得られた負極活物質、導電性カーボンブラック及びバインダーPAA(変性ポリアクリル酸、PAA)、約80:10:10の重量比で、を脱イオン水に加え、撹拌してスラリーを形成し、ブレードコーティングによって厚さが約100μmの塗膜を形成し、真空乾燥オーブンで約85℃で約12時間乾燥させ、乾燥環境でパンチャーによって、直径が約1cmの円形シートにカットし、グローブボックスにおいて、金属リチウムシートを対電極とし、セパレーターとしてceglard複合膜を選択し、電解液を加えてボタン電池を組み立てる。ランド(LAND)シリーズの電池試験システムを使用して電池に対して充放電試験を行い、充放電容量を測定し、初回クーロン効率は、充電容量と放電容量の比である。
【0131】
2、全電池測定
【0132】
(1)リチウムイオン電池の製造
【0133】
<正極の製造>
【0134】
LiCoO、導電性カーボンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を約95%:2.5%:2.5%の重量比でN-メチルピロリドン溶媒系に十分に撹拌して均一に混合して、正極スラリーを得る。得られた正極スラリーを正極集電体のアルミ箔に塗工し、乾燥し、冷間プレスして、正極を得る。
【0135】
<負極の製造>
【0136】
黒鉛、実施例及び比較例で製造された負極活物質、導電剤(導電性カーボンブラック、Super P(登録商標))及びバインダーPAAを約70%:15%:5%:10%の重量比で混合し、適量の水を加え、固形分が約55wt%~70wt%なるように混練する。適量の水を加え、スラリーの粘度を約4000~6000Pa・sに調節して、負極スラリーを調製する。
【0137】
得られた負極スラリーを負極集電体の銅箔に塗工し、乾燥し、冷間プレスして、負極を得る。
【0138】
電解液の製造
【0139】
乾燥アルゴンガス雰囲気で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)(重量比で約1:1:1)を混合してなる溶媒に、LiPFの濃度が約1.15mol/LになるようにLiPFを加え、均一に混合し、さらに約7.5wt%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を加え、均一に混合して電解液を得る。
【0140】
セパレーターの製造
【0141】
PE多孔質ポリマーフィルムをセパレーターとする。
【0142】
リチウムイオン電池の製造
【0143】
正極、セパレーター、負極を順に積み重ね、正極と負極の間に位置するセパレーターは、分離役割を果たす。巻回してベアセルを得る。ベアセルを包装に置いて、電解液を注入し、シールする。化成、脱気、トリミング等のプロセスを経てリチウムイオン電池を得る。
【0144】
(2)サイクル性能試験
【0145】
試験温度は25/45℃であり、0.7Cの定電流で4.4Vまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、0.5Cで3.0Vまで放電する。このステップで得られた容量は、初期容量であり、0.7C充電/0.5C放電を行ってサイクル試験を行い、各ステップの容量と初期容量との比を求め、容量減衰曲線を得る。25℃で容量維持率が90%になるまでサイクルする場合のサイクル数を電池の室温サイクル性能とし、45℃で容量維持率が80%になるまでサイクルする場合のサイクル数を電池の高温サイクル性能とし、上記の2つの場合のサイクル数を比較することで、材料のサイクル性能を比較する。
【0146】
(3)放電レート試験
【0147】
25℃で、0.2Cで3.0Vまで放電し、5分間静置し、0.5Cで4.45Vまで充電し、定電圧で0.05Cまで充電した後、5分間静置し、放電レートを調整し、それぞれ0.2C、0.5C、1C、1.5C、2.0Cで放電試験を行い、それぞれ放電容量を得て、各レートで得られた容量と0.2Cで得られた容量を比較し、2C及び0.2Cでの比を比較することで、レート性能を比較する。
【0148】
(4)電池の満充電膨張率試験
【0149】
スパイラルマイクロメーターを使用し、半分充電された(50%充電状態(SOC))場合の新しい電池の厚さを測定し、400サイクルまでにサイクルした後、電池の満充電(100%SOC)状態で、再びスパイラルマイクロメーターを使用してこの時の電池の厚さを測定し、初期の半分充電された(50%SOC)時の新しい電池の厚さと比較して、この時の満充電された(100%SOC)電池の膨張率が得られる。
【0150】
<三、負極活物質の製造>
【0151】
1、表面にポリマー層を有する負極活物質の製造
【0152】
下記の方法で実施例1~10及び比較例1、2の負極活物質を製造する。
【0153】
(1)炭素材料(単層カーボンナノチューブ(SCNT)及び/又は多層カーボンナノチューブ(MCNT))とポリマーを水に高速で約12時間分散させて、均一に混合されたスラリーを得る。
【0154】
(2)市販ケイ素酸化物SiO(0.5<x<1.5、D50=5μm)を(1)で均一に混合されたスラリーに加え、約4時間撹拌して均一に混合された分散液を得る。
【0155】
(3)前記分散液を噴霧乾燥(入口温度:約200℃、出口温度:約110℃)させて粉末を得る。
【0156】
表1-1は、実施例1~10及び比較例1、2の負極活物質の組成を示す。
【0157】
【表1-1】
ただし、「-」は当該物質が添加されていないことを意味する。
表1-1の英文略語の全ての名称は、以下のとおりである。
SCNT:単層カーボンナノチューブ
MCNT:多層カーボンナノチューブ
CMC-Na:カルボキシメチルセルロースナトリウム
PVP:ポリビニルピロリドン
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
PAANa:ポリアクリル酸ナトリウム
【0158】
表1-2は、実施例1~10、比較例1、2及び比較例3(上記の市販ケイ素酸化物SiO)の負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池の性能試験結果を示す。
【0159】
【表1-2】
【0160】
実施例1~10及び比較例1~3の試験結果から、ケイ素酸化物SiOにカーボンナノチューブを含有するポリマー層を被覆することで、リチウムイオン電池のサイクル性能及びレート性能を著しく向上させ、また、カーボンナノチューブを含有するポリマー層を被覆する効果は、ポリマー又はカーボンナノチューブのみを被覆する負極活物質よりも良いことが分かる。
【0161】
2、以下方法で実施例11~13及び比較例4の負極活物質を製造する。
【0162】
(1)モル比約1:1のシリカと金属ケイ素粉末に対して、それぞれ機械的乾式混合及びボールミリング混合を行って混合材料を得る。
【0163】
(2)Ar雰囲気で、約10-3~10-1kPa圧力範囲で、約1200~1600℃の温度範囲内で前記混合材料を約5~30時間加熱してガスを得る。
【0164】
(3)得られた前記ガスを凝縮させて固体を得る。
【0165】
(4)前記固体を粉砕し、篩い分けする。
【0166】
(5)約400~1800℃の範囲内で、窒素ガス雰囲気で、前記固体を約0.5~15時間熱処理し、熱処理された前記固体を冷却して分級処理を行う。
【0167】
(6)ステップ(5)で得られた固体に炭素材料を含有するポリマー層をさらに被覆し、具体的な被覆ステップは、上記の表面にポリマー層を有する負極活物質の製造ステップを参照する。
【0168】
表2-1は、ステップ(1)~(5)における具体的なプロセスパラメータを示す。
【0169】
【表2-1】
【0170】
表2-2は、実施例11~13及び比較例4の負極活物質の組成を示す。
【0171】
【表2-2】
【0172】
表2-3は、実施例11~13及び比較例4の負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池の性能試験結果を示す。
【0173】
【表2-3】
【0174】
実施例11~13及び比較例4の試験結果から、同様にポリマー被覆層が存在する場合、0<I/I≦1を満たす負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池のサイクル性能、膨張防止性能及びレート性能は、1<I/Iの負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池のサイクル性能及びレート性能よりも良いことが分かる。
【0175】
3、下記の方法で実施例14~16及び比較例5~6の負極活物質を製造する。
【0176】
実施例12の負極活物質に対して、篩い分け及び分級処理を行うことで実施例14~16及び比較例5~6の負極活物質を得る。
【0177】
表3-1は、実施例14~16及び比較例5、6の負極活物質の組成を示す。
【0178】
【表3-1】
【0179】
表3-2は、実施例14~15及び比較例5、6の負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池の性能試験結果を示す。
【0180】
【表3-2】
【0181】
実施例14~16及び比較例5、6の試験結果から、同様にポリマー被覆層が存在しかつケイ素酸化物が0<I/I≦1を満たす条件において、0.25≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池のサイクル性能及びレート性能は、Dn10/Dv50<0.25又は0.6<Dn10/Dv50の負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池のサイクル性能及びレート性能よりも良いことが分かる。
【0182】
4、その中に酸化物MeO層を有する負極活物質の製造
【0183】
下記の方法で実施例17~19の負極活物質を製造する。
【0184】
実施例17~19の負極活物質の製造方法は、実施例16の負極活物質の製造方法と類似し、相違は、実施例17~19の製造方法でケイ素酸化物SiOにポリマー層を被覆する前に、まず金属酸化物MeO層を被覆し、ここで、金属酸化物MeO層の被覆ステップは、
(1)ケイ素酸化物SiO、炭素前駆体及び酸化物前駆体MeTを約150mLエタノール及び約1.47mL脱イオン水に加え、均一な懸濁液を形成するまで約4時間撹拌すること、
(2)前記懸濁液を噴霧乾燥(入口温度:約220℃、出口温度:約110℃)して粉末を得ること、
(3)前記粉末を約250~1000℃で約0.5~24時間焼結して表面に酸化物MeO層を有するケイ素化合物SiO粒子を得ること、を含む。
【0185】
表4-1は、実施例17~19の負極活物質の金属酸化物MeO層を被覆する具体的なプロセス条件を示す。
【0186】
【表4-1】
【0187】
表4-2は、実施例17~19の負極活物質の組成を示す。
【0188】
【表4-2】
【0189】
表4-3は、実施例17~19の負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池の性能試験結果を示す。
【0190】
【表4-3】
【0191】
実施例16~19の試験結果から、同様にポリマー被覆層が存在しかつケイ素酸化物が0<I/I≦1及び0.25≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす条件において、ケイ素酸化物とポリマー層との間に金属酸化物層を有する負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池のサイクル性能及びレート性能は、金属酸化物層を有さない負極活物質によって製造されたリチウムイオン電池のサイクル性能及びレート性能よりも良いことが分かる。
【0192】
本願の明細書において「いくつかの実施例」、「一部の実施例」、「一つの実施例」、「他の例」、「例」、「具体例」又は「一部の例」の引用について、これらは、本発明における少なくとも一つの実施例又は例には、該実施例又は例に記載された特定の特徴、構造、材料又は特性を含むことを意味する。従って、明細書における各箇所に現れた表現、例えば、「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「別の例において」、「一例において」、「特定の例において」又は「例」は、必ずしも本出願における同じ実施形態または例を引用しているわけではない。また、本明細書における特定の特徴、構造、材料又は特性は、任意の適切な方式で一つ又は複数の実施例又は例に結合することができる。
【0193】
例示的な実施例を示しながら、説明したが、当業者であれば上記実施例が本発明に対する制限として解釈されることができず、かつ本発明の構想、原理及び範囲から逸脱することなく実施例に対して変更、代替及び修正をすることができることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8