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特許7163496化学的に処理された炭素顔料を含むメーソンリー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】化学的に処理された炭素顔料を含むメーソンリー組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20221024BHJP
   C04B 22/02 20060101ALI20221024BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20221024BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20221024BHJP
   C09C 1/56 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/02
C04B14/02 A
C09D17/00
C09C1/56
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021523180
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019059158
(87)【国際公開番号】W WO2020092765
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】62/753,462
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/870,868
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル エー.ヘルレラ フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】チンリン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ラン エイチ.グエン
(72)【発明者】
【氏名】リン ケー.ラロシェル リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン デュプニク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】クンラート セー.イェー.ビュルヘル
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ディー.モーザー
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-510795(JP,A)
【文献】国際公開第2015/006620(WO,A2)
【文献】特開2012-096985(JP,A)
【文献】特開2000-026141(JP,A)
【文献】特開2005-015667(JP,A)
【文献】特開2006-008879(JP,A)
【文献】特開2000-226243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
C09C 1/56-1/60
C09D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メーソンリー組成物であって、
鉱物結合剤;及び
前記組成物にわたって一様に分散された化学的に処理されたカーボンブラック製品であって、前記化学的に処理されたカーボンブラックが、イオン性の又はイオン化可能な基を含む結合された有機基を有するカーボンブラックを含み、前記イオン性の又はイオン化可能な基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、又はこれらのいずれかのイオン性のものであり、1.0~3.0μmol/mのレベルで存在し、前記カーボンブラックが、処理の前に測定した場合に、20~300m/gのSTSAを有する、化学的に処理されたカーボンブラック製品
を含む、メーソンリー組成物。
【請求項2】
前記化学的に処理されたカーボンブラックが、1~20wt%のレベルで存在する、請求項1に記載のメーソンリー組成物。
【請求項3】
前記組成物が、最大で33の黒色度(L)を示す、請求項1に記載のメーソンリー組成物。
【請求項4】
前記組成物の前記黒色度が、100%の湿度における400時間の後に、33より小さいままである、請求項に記載のメーソンリー組成物。
【請求項5】
前記化学的に処理されたカーボンブラックが、15~50nmの平均一次粒子径を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のメーソンリー組成物。
【請求項6】
着色されたメーソンリー組成物を製造する方法であって、
a)セメントと骨材との乾燥混合物を、粉末化又はペレット化された化学的に処理されたカーボンブラックと混合して、着色された混合物を製造し、前記着色された混合物を水と混合して着色されたスラリーを製造する工程;
b)未硬化のメーソンリースラリーを、化学的に処理されたカーボンブラックと混合して、着色されたスラリーを形成する工程;又は
c)セメントと骨材との混合物を、化学的に処理されたカーボンブラックの水性分散体と組み合わせて、着色されたスラリーを製造する組み合わせ工程
を含み、前記化学的に処理されたカーボンブラックが、イオン性の又はイオン化可能な基を含む有機基を含み、前記イオン性の又はイオン化可能な基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、又はこれらのいずれかのイオン性のものであり、1.0~3.0μmol/mのレベルで存在し、前記カーボンブラックが、処理の前に測定した場合に、20~300m/gのSTSAを有する、方法。
【請求項7】
前記未硬化のメーソンリースラリーと混合される前記化学的に処理されたカーボンブラックが、粉末又はペレットの形態である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記未硬化のメーソンリースラリーと混合される前記化学的に処理されたカーボンブラックが、水性分散体の形態である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記水性分散体が、少なくとも約25wt%のレベルで前記化学的に処理されたカーボンブラックを含有し、前記分散体の液相が、90wt%より多い水と、100gのカーボンブラック当たりに5gより少ない分散剤とを含む、請求項6又は8に記載の方法。
【請求項10】
未分散の化学的に処理されたカーボンブラック乾燥粉末を、前記分散体の最終重量に対して、少なくとも約25wt%の濃度で、粉砕媒体なしに、水性媒体に入れて撹拌することによって、化学的に処理されたカーボンブラックの前記分散体を調製して、カーボンブラック分散体を形成する工程であって、前記水性媒体が、90wt%より多い水と、100gのカーボンブラック当たりに5gより少ない分散剤とを含む溶媒を含む工程をさらに含む、請求項6又は8に記載の方法。
【請求項11】
前記分散体中の前記化学的に処理されたカーボンブラックのうち10vol%未満が、0.5μmより大きい粒子径を有する、請求項6又は8に記載の方法。
【請求項12】
前記分散体が、低せん断の撹拌又は混合のみを使用して混合される、請求項6又は8に記載の方法。
【請求項13】
セメントと骨材との前記混合物が、水をさらに含むスラリーである、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
組み合わせ工程の前か、又は組み合わせ工程の間のいずれかで、セメントと骨材との前記混合物に水を添加する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
化学的に処理されたカーボンブラックの前記水性分散体が、セメントと骨材との前記混合物を混合及び凝結するのに必要である全ての水を含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料を含有する鉱物結合材系、及び特にメーソンリー(masonry)系、例えば化学的に処理されたカーボンブラックを着色剤として含むコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
物品を、例えばコンクリート、セメント、モルタル及びプラスター配合物を形成するのに使用される鉱物結合材(メーソンリー)系は、それらの美的な魅力を高めるために、しばしば着色される。着色は、露出された表面に適したコーティングを適用することによってか、又は少量の1つ若しくは複数の顔料を鉱物結合材系に添加して混合物を着色することによってのいずれかで達成される場合がある。表面コーティングは、剥離、退色及び風化を受けるため、後者の方法の着色がしばしば好ましい。1つ又は複数の顔料は、乾燥鉱物混合物、例えばコンクリートの場合にはセメント-砂混合物、又はこのような混合物を凝結するのに使用される水のいずれかに添加することができる。黒色顔料の使用によって多くの種類の色及び色あいを得ることができるために、黒色顔料は、単独で、又は他の顔料と組み合わせてのいずれかで、鉱物結合材系における着色剤としてしばしば使用される。黒色顔料は有機又は無機である場合があり、今日使用される最も普及している黒色顔料である鉄酸化物を含む場合がある。
【発明の概要】
【0003】
1つの実施態様において、着色されたメーソンリー組成物が提供され、組成物は、一様な色の分布及び優れた黒色度を示す化学的に処理されたカーボンブラック顔料を含む。カーボンブラックは有機基を含んでよく、有機基は、イオン性の又はイオン化可能な基を含み、イオン性の又はイオン化可能な基は、未処理のカーボンブラックのSTSA(statistical thickness surface area)に基づいて1.0~3.0μmol/mの量で存在する。カーボンブラックは、固体として、又は水性分散体として、メーソンリー組成物中に混合することができる。
【0004】
例えば、メーソンリー組成物は、鉱物結合材と、組成物にわたって一様に分散された化学的に処理されたカーボンブラック製品とを含み、化学的に処理されたカーボンブラックは、イオン性の又はイオン化可能な基を含む結合された有機基を有するカーボンブラックを含み、イオン性の又はイオン化可能な基は、(処理の前のSTSAに基づいて)1.0~3.0μmol/mのレベルで存在し、カーボンブラックは、処理の前に測定した場合に、20~300m/g又は最大で250m/gのSTSAを有する。
【0005】
化学的に処理されたカーボンブラックは、1~20wt%、例えば1wt%~10wt%のレベルで存在していてよい。メーソンリー組成物は、最大で33、例えば最大で25又は最大で20の黒色度(L)を示すことができる。カーボンブラックは、処理の前に測定した場合に、最大で200m/g、例えば50~200m/gのSTSAを有することができる。組成物の黒色度は、100%の湿度における400時間の後に、33より小さいまま、例えば最大で25又は最大で20のままであることができる。
【0006】
イオン性の又はイオン化可能な基は、スルホン酸基、ホスホン酸基又はカルボン酸基を含んでよい。化学的に処理されたカーボンブラックは、15~50nmの平均一次粒径を有することができる。有機基は、アリール基を含んでよい。
【0007】
別の実施態様において、顔料メーソンリー組成物を製造する方法は、セメントと骨材との乾燥混合物を、粉末化又はペレット化された化学的に処理されたカーボンブラックと混合して、着色された混合物を製造する工程であって、化学的に処理されたカーボンブラックが、イオン性の又はイオン化可能な基を含む有機基を含み、イオン性の又はイオン化可能な基が、(処理の前のSTSAに基づいて)1.0~3.0μmol/mのレベルで存在し、カーボンブラックが、処理の前に測定した場合に、20~300m/g又は最大で250m/gのSTSAを有する工程、及び着色された混合物を水と混合してスラリーを製造する工程を含む。
【0008】
代わりに又は加えて、顔料メーソンリー組成物を製造する方法は、未硬化のメーソンリースラリーを、化学的に処理されたカーボンブラックと混合して、着色された混合物を形成する工程であって、化学的に処理されたカーボンブラックが、イオン性の又はイオン化可能な基を含む結合された有機基を有し、イオン性の又はイオン化可能な基が、(処理の前のSTSAに基づいて)1.0~3.0μmol/mのレベルで存在し、カーボンブラックが、処理の前に測定した場合に、20~300m/g又は最大で250m/gのSTSAを有する工程を含む。化学的に処理されたカーボンブラックは、粉末又はペレットの形態であってよい。化学的に処理されたカーボンブラックは、水性分散体の形態であってよい。
【0009】
代わりに又は加えて、着色されたメーソンリー組成物を製造する方法は、セメントと骨材との混合物を、化学的に処理されたカーボンブラックの水性分散体と組み合わせて、着色された混合物を製造する組み合わせ工程であって、化学的に処理されたカーボンブラックが、イオン性の又はイオン化可能な基を含む有機基を含み、イオン性の又はイオン化可能な基が、(処理の前のSTSAに基づいて)1.0~3.0μmol/mのレベルで存在し、カーボンブラックが、処理の前に測定した場合に、20~300m/g又は最大で250m/gのSTSAを有する工程を含む。
【0010】
これらの選択肢の任意のものにおいて、化学的に処理されたカーボンブラックは、分散体の最終重量に対して少なくとも約25wt%、例えば少なくとも約30wt%のレベルで水性分散体中に存在してよく、分散体の液相は、90wt%より多い水と、100gのカーボンブラック当たりに5gより少ない分散剤とを含む。
【0011】
これらの方法のうち任意のものは、未分散の修飾されたカーボンブラック乾燥粉末を、分散体の最終重量に対して、少なくとも約25wt%、例えば少なくとも約30wt%の濃度で、粉砕媒体なしに、水性媒体に入れて撹拌することによって、化学的に処理されたカーボンブラックの分散体を調製して、カーボンブラック分散体を形成する工程をさらに含んでよく、水性媒体は、90wt%より多い水と、100gのカーボンブラック当たりに5gより少ない分散剤とを含む溶媒を含む。
【0012】
これらの方法のうち任意のものにおいて、分散体中の修飾されたカーボンブラックのうち10vol%未満は、0.5μmより大きい粒径を有してよい。これらの方法のうち任意のものにおいて、分散体における修飾されたカーボンブラックの濃度は、45wt%以下であってよい。これらの方法のうち任意のものにおいて、分散体は、低せん断の撹拌又は混合のみを使用して混合することができる。これらの方法のうち任意のものにおいて、セメントと骨材との混合物は、水をさらに含むスラリーであってよい。これらの方法のうち任意のものは、組み合わせ工程の前か、又は組み合わせ工程の間のいずれかで、セメントと骨材との混合物に水を添加する工程をさらに含んでよい。
【0013】
これらの方法のうち任意のものにおいて、化学的に処理されたカーボンブラックの水性分散体は、セメントと骨材との混合物を混合及び凝結するのに必要な全ての水を含んでよい。これらの方法のうち任意のものにおいて、化学的に処理されたカーボンブラックの量は、着色された混合物の合計の乾燥重量に対して、1~20wt%、例えば1wt%~10wt%であってよい。これらの方法のうち任意のものにおいて、着色された混合物は、凝結の後に、最大で33、例えば最大で25又は最大で20の黒色度(L)を示すことができる。これらの方法のうち任意のものにおいて、カーボンブラックは、処理の前に測定した場合に、最大で200m/g、例えば50~200m/gのSTSAを有することができる。これらの方法のうち任意のものにおいて、イオン性の又はイオン化可能な基は、スルホン酸基、ホスホン酸基又はカルボン酸基を含んでよい。これらの方法のうち任意のものにおいて、有機基は、アリール基を含んでよい。これらの方法のうち任意のものは、着色されたスラリーを凝結させる工程をさらに含むことができる。
【0014】
本開示の上で記載された特徴及び他の特徴、並びにそれらを達成する手法は、添付の図面とあわせてされる、本明細書において説明される実施態様の以下の説明を参照することによってより明確になり、より良く理解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本明細書において開示されるカーボンブラックを用いて作られたサンプルと比較した、公知のサンプルにおける顔料分散を例示する写真である。
図1B】本明細書において開示されるカーボンブラックを用いて作られたサンプルと比較した、公知のサンプルにおける顔料分散を例示する写真である。
図2】6wt%の顔料を含有する3つのメーソンリーサンプルについて、湿度の効果を示すグラフの結果を提供する。
図3】1wt%の顔料を含有する2つのメーソンリーサンプルについて、湿度の効果を示すグラフの結果を提供する。
図4】17wt%の顔料を含有する3つのメーソンリーサンプルについて、湿度の効果を示すグラフの結果を提供する。
図5】異なる顔料を用いて調製された3つのコンクリートサンプルを例示する写真である。
図6】メーソンリーサンプルにおける様々な顔料の充填量に関する、黒色度(L)のグラフの結果を提供する。
図7】様々な表面処理されたカーボンブラックを用いて着色されたメーソンリーサンプルの表面における気泡形成を例示する写真のシリーズである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、イオン性の又はイオン化可能な基を含む結合された有機基を有する化学的に処理されたカーボンブラック製品を含む鉱物結合材組成物に関するものであり、イオン性の又はイオン化可能な基は、処理の前のカーボンブラックのSTSAに基づいて1.0~3.0mol/mの処理レベルで存在する。従来の顔料と比較して、化学的に処理されたカーボンブラック製品は、鉱物結合材系に組み込まれるとき、改善された耐候性、色の不変性、熱吸収及び黒色度を含む優れた特性を提供する。化学的に処理されたカーボンブラックは、粉末若しくはペレットの形態で、又は水性分散体で提供することができる。カーボンブラックは、低せん断の撹拌技術を使用して分散することができ、安定な分散体を達成するために、高エネルギーの粉砕を必要としない。特に、本明細書において説明される化学的に処理されたカーボンブラックは、耐アルカリ性、耐光性及び分散性を含む特性のために、メーソンリー製品と適合する。
【0017】
美観及びさらなる機能性によって、着色されたセメントは普及してきた。例えば、黒色セメントは日光をより効果的に吸収することができ、従って氷及び雪は黒色セメントの表面からはより速く溶ける。このことは、例えば空港の滑走路のために非常に有益である。現在では、最も黒色のセメントは、酸化鉄を着色剤として使用する。酸化鉄は良好な着色特徴を有するが、(例えば、酸性雨の間に、又は7.0より低いpHを有する他の環境において)乏しい耐酸性を示す。さらに、黒さの程度を増大させるために、多くの量の酸化鉄をセメントと混合する必要がある。結果として、酸化鉄をセメントスラリーと混合するときに添加される水の量もまた増大し、それによってセメント製品の強度は減少する。
【0018】
酸化鉄と異なり、カーボンブラックは、酸性環境において変色しない。さらに、カーボンブラックはより良好な色特性を有するため、少量のみ(酸化鉄の典型的な使用量の約1/5)をメーソンリー成分と混合することで十分である。残念なことに、カーボンブラックは、その表面特徴のために、水において低い分散性を有し、このことはセメントスラリー中で均質に分散することを非常に困難にしている。さらに、カーボンブラックが粉末形態で使用されるとき、カーボンブラックはセメントの硬化を妨げる。最後に、セメントマトリックスへの低い付着性のために、硬化の後に、時間が経つにつれて、カーボンブラックはセメントマトリックスから分離する。この分離は、セメント構造を弱くする場合がある。
【0019】
未処理のカーボンブラックは優れた着色特性、耐アルカリ性、耐光性及び化学的安定性を示すが、一方で屋外風化にさらされる鉱物結合材系においては好ましくない。風化調査は、未処理のカーボンブラックを含有するボディーの表面外観は、風化プロセスが進行するにつれて、望ましくなく変化することを示す。系がカーボンブラックのみを着色顔料として含有するとき、表面は退色する。他の着色剤と組み合わせてカーボンブラックが使用されるとき、他の着色剤の外観はより顕著になる。カーボンブラック-着色された鉱物系におけるこの変化は、カーボンブラック顔料粒子の浸出及び洗い流しに起因したものであり、それらは他の成分に関しては非常に少ない。この優先的な浸出は、屋外風化、又は他の水の源若しくは磨耗にさらされる系におけるカーボンブラックの使用を限定してきた。
【0020】
カーボンブラックの幾つかの形態は、非常にダスト状(dusty)であるか、及び/又は未硬化のメーソンリー結合材組成物中で分散することが困難であるかのいずれか又は両方である。カーボンブラックを結合材系中に組み込むために使用されるプロセスは、顔料が供給される形態と、使用者にとって利用可能な処理機器との両方に依存する。製造されたとき、カーボンブラックは、約0.02~0.1g/ccのバルク密度を有する粉末状の材料であり、綿状ブラック(fluffy black)と呼ばれる。このようなブラックは非常にダスト状である。それらの低い密度及び大きい表面積のために、綿状製品は凝集性であり、非常に乏しい運搬特性を有し、従ってバルクにおいて操作するのが困難である。この理由のために、綿状製品は、有用性を限定していて、一般に袋詰めされた形態で供給される。カーボンブラックのバルク操作特性を改善するために、及びそれらのダスト性を減少させるために、典型的には、綿状ブラックは様々なペレット化手順によって密集化されて、約0.2~0.7g/ccのバルク密度を達成する。カーボンブラックの所与の等級について、操作特性は、密集化の程度が増大するに伴って改善する傾向がある。一方で、分散性は、密集化の程度が増大するにつれて次第に低下する。従って、バルク操作特性の改善と分散性の低下との間にはトレードオフの関係がある。しかし、増加した清浄性の利点のために、ペレット化されたカーボンブラックは、鉱物結合材系中にカーボンブラックを導入するためにしばしば使用される。代わりに、カーボンブラックの分散体は、分散性とバルク操作安全性との間のトレードオフを壊してもよい。
【0021】
カーボンブラックは、様々な方法で鉱物結合材系に添加することができる。例えば、カーボンブラックを、乾燥した砂-セメント混合物に入れて粉砕することができ、次いで混合物を凝結するために必要な要求される量の水を添加することができる。代わりに、混合物を凝結するために必要な要求される量の水のうち全て又は一部を含むカーボンブラックの水性分散体を、砂-セメント混合物に入れて均質にブレンドすることができる。代わりに又は加えて、高度に濃縮されたカーボンブラックの分散体を、砂-セメントの水性スラリーに添加することができる。これらの実施態様のうち任意のものにおいて、十分かつ均質な発色のために、カーボンブラックのアグロメレートは、分解されて一次に個別であるアグリゲート(一次粒子から構成される、カーボンブラックの最小の分散可能単位)を作り出すべきである。これは、乾燥混合物を粉砕することによってか、又は水性媒体中でカーボンブラックを予備分散することによってのいずれかで達成される。カーボンブラックは疎水性である傾向があるため、しばしば界面活性剤が使用されて濡れ性を向上する。加えて、水性媒体中のこのような界面活性剤の存在は、分散プロセスを強化することができ、分散安定化を促進することができる。本明細書において説明される化学的に修飾されたカーボンブラックは、ペレット化された形態で使用することができ、低せん断の撹拌を用いてさらに分散しやすく、風化の間に系から洗い流されにくい。代わりに、化学的に修飾されたカーボンブラックは、メーソンリースラリーに入れて混合しやすい安定した水性分散体の状態に調製することができる。
【0022】
分散剤、例えばスルホン化されたナフタレンベースの分散剤及びポリカルボン酸は、セメント適用のためにカーボンブラックを分散させるのに使用されてきたが、その分散剤はカーボンブラックに物理的に吸着し、化学的には結合しない。本明細書において説明されるカーボンブラックは、化学反応によって、例えばジアゾニウム処理によって、親水性を向上する、及びそれによって未硬化のメーソンリー組成物におけるカーボンブラックの分散性を向上する化学的に処理されたブラックである。化学的に処理されたカーボンブラックは、粉末、小粒(granule)又は水における液体分散体として添加することができる。化学的に処理されたカーボンブラックの水性分散体が使用されるとき、分散体中のカーボンブラックの濃度は、水の量が、スラリーが目標の顔料充填量で調製されるときの好ましい水/セメント比を超過しないように十分に高くあることができる。1つの実施態様において、鉱物結合材組成物は、イオン性の又はイオン化可能な基を含む結合された(単に連結しているだけではない)有機基を有するカーボンブラックを含むカーボンブラック製品を組み入れていて、イオン性の又はイオン化可能な基は、有機基の結合の前のカーボンブラックのSTSAに基づいて1.0~3.0μmol/mのレベルで存在する。有機基は、ポリマーであるか、又はポリマーでなくてよく、好ましくはポリマーではない。脱イオン水ですすぐことが、カーボンブラックから有機基を除去することに対して有効でないとき、有機基はカーボンブラック粒子に化学的に結合している(又は直接的に結合している)と考えられる。室温で、同等の容積の脱イオン水が、処理されたカーボンブラックを通してフィルターをかけられた後に、25wt%より少ない有機基が除去される場合、すすぐことは有効でない。
【0023】
適した鉱物結合材(メーソンリー)系は、コンクリート、セメント、モルタル及び外装プラスター配合物を含む。他の鉱物結合材系は、本明細書において説明されるものから同様に利益を得ることができる。鉱物結合材系のための、任意の従来から公知である添加剤は、本発明の鉱物結合材系中に組み込むことができる。典型的なコンクリート組成物は、セメント、水及び骨材を用いて製造される。セメントは、例えば石灰、カルシウム、シリカ及び/又はアルミノケイ酸を含有する結合剤である。ポルトランドセメント及び他のセメント組成物は、当業者にとって周知である。典型的には、骨材は細かく砕かれた石、砂及び/又は砂粒(grit)、並びにより粗い材料、例えばガラス、石及び/又は砂利、の混合物である。他の添加剤、例えば空気連行剤、可塑剤、消泡剤、及び/又は硬化促進剤若しくは硬化遅延剤、もまた使用することができる。メーソンリー組成物におけるカーボンブラックの使用は、CARBON BLACK PRODUCTS FOR COLORING MINERAL BINDERSとタイトルを付けられた米国特許第5575845号明細書において説明されていて、その内容はこれをもって本明細書に組み込まれる。
【0024】
実施態様の1つの組において、修飾されてイオン性の又はイオン化可能な基を含む有機基を含み、イオン性の又はイオン化可能な基が未処理のブラックのSTSAに基づいて1.0~3.0μmol/mの処理レベルで存在する化学的に処理されたカーボンブラックは、耐候性を示す、並びに良好な色及び黒色度を長い時間提供する良好に分布した顔料を有するメーソンリー材料を製造するのに使用することができることが分かった。このようなカーボンブラックは、操作しやすくするために、及びコンクリートにおけるカーボンブラックの分散を促進するために、水性媒体中で分散することができる。このような化学的に処理されたカーボンブラックの使用はまた、白色のしみを作り出してコンクリートの黒色表面の美観を損なう、コンクリート表面における炭酸カルシウムの析出を減少させる。さらに、このような化学的に処理されたカーボンブラックの使用は、より大幅に処理されたカーボンブラックに対して、コンクリートにおける空気連行を減少させる。空気はコンクリートの強度を減少させ、コンクリートの表面における気泡は、外観の良くないボイドをもたらし、コンクリートの損耗又は割れを加速させる場合がある。
【0025】
「入れて撹拌する(stir-in)」化学的に処理されたカーボンブラックの使用は、さらなる処理の利点とともに色及び耐候性を提供することができることが分かった。本明細書において使用されるとき、「入れて撹拌する」カーボンブラックは、水性媒体中で安定して分散されるために、ビーズ粉砕をされる必要がない修飾されたカーボンブラックである。入れて撹拌するカーボンブラックは、高速粉砕の必要なしに、水性の系に入れて撹拌した後に、安定な分散体を提供することができる。このことは、綿状の又はペレット化されたカーボンブラックを水性媒体に入れて混合することによって、より多く充填されたミルベース(少なくとも10wt%又は15wt%の顔料)を直接製造することができることを意味する。代わりに又は加えて、分散剤の最小の使用量で、さらにより多く充填された分散体(少なくとも20wt%又は少なくとも25wt%の顔料)を製造することができる。このようなより多く充填された分散体は、顔料とともにコンクリートに添加される水の量を減少させ、コンクリートの製造における、より優れた適応性を提供する。入れて撹拌するブラックの製造は、CARBON BLACK FOR WATERBORNE COATINGSとタイトルを付けられた米国特許第9803099号明細書において説明されていて、その文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0026】
1つの態様において、化学的に処理された(修飾された)カーボンブラックを、水性媒体に入れて撹拌して、液体水性(水系の)分散体を製造する。好ましい実施態様において、修飾されたカーボンブラックは、未修飾のカーボンブラックを水性媒体中に分散させるのに典型的には必要であるエネルギー消費型の粉砕なしに、水性媒体中に直接分散することができ、比較的低い濃度の結合された官能基を有し、水性媒体中に、全く分散剤を必要としないか、又は最小量の分散剤を必要とすることができる。例えば、処理されたカーボンブラックは、未処理のブラックのSTSAに基づいて少なくとも1.0、1.3、1.5又は2μmol/m、かつ最大で3.0、2.7、2.5又は2μmol/mの処理剤の濃度で修飾することができる。処理剤が2つのイオン性の又はイオン化可能な基を有する場合、イオン性の又はイオン化可能な基はこれらのレベルで存在する。
【0027】
方法の1つの組において、続いて水性媒体中に溶かすミルベースを作り出す中間工程を排除して、未分散の乾燥した化学的に処理されたカーボンブラック粉末を水性分散体配合物に入れて直接混合して水性分散体を製造することができる。実施態様の別の組において、高い濃度の修飾されたカーボンブラックを用いて低い粘度のミルベースを作り出して、次いで低い粘度のミルベースを溶かして、メーソンリースラリーの製造における使用のための水性分散体を製造することができる。代わりに又は加えて、ミルベース自体が、メーソンリースラリー中に量り入れられるか、又はメーソンリースラリーの流体成分とあわせて添加される。他の実施態様において、カーボンブラックは、セメント又は骨材と乾燥混合することができ、水を添加してスラリーを調製するときに十分に分散される。さらなる実施態様において、化学的に処理されたカーボンブラックを、適用/打設及び養生のために、調製及び準備された後に、乾燥形態又は分散体形態のいずれかでスラリーに添加することができる。
【0028】
本明細書において使用されるとき、水性又は水系の液体分散体中の溶媒は少なくとも90wt%の水を含み、多くの場合において、溶媒系は95wt%より多く、又は99wt%より多くの水である。同様に、水性又は水系の液体分散体は、水性又は水系の液体分散体の全体の質量に対して、50wt%より多く、80wt%より多く、又は90wt%より多くの水を含んでよい。
【0029】
本明細書において説明される化学的に修飾されたカーボンブラックは、高エネルギーのビーズ粉砕についての要求を排除することができる特性を有する。撹拌プロセス又は入れて撹拌するプロセスは、得られた分散体から取り除かれなければならないガラスビーズ又は他の媒体を加えることを必要としない。ミキサー、例えばパドルミキサー又は高速ミキサーを使用して撹拌を行うことができる。撹拌は、従来のビーズ粉砕より少ないエネルギーのみを必要とすることができ、このことは分散体又はエマルションが、高エネルギーの粉砕プロセスによって破壊されないことを意味する。多くの実施態様において、修飾されたカーボンブラック粒子を分散させるのに必要とされる仕事率は、200gのサンプルについて、100ワットより小さいか、70ワットより小さいか、50ワットより小さいか、又は40ワットより小さく、これらの仕事率のレベルにおいて、3時間より短い、2時間より短い、又は1時間より短いうちに、安定な分散体を得ることができる。幾つかの実施態様において、ミキサーの速さは、10m/sより低い、5m/sより低い、3m/sより低い、又は2m/s以下の混合ブレードチップの速さに限定されてよい。撹拌は、ビーズ粉砕がそうである場合があるように、分散体の温度を上昇させる必要がない。例えば、幾つかの実施態様において、撹拌プロセスは、液体媒体の温度を、10℃より小さく、5℃より小さく、又は1℃より小さく上昇させる。対照的に、粉砕プロセスは、液体媒体の温度を、10℃より大きく上昇させる場合があり、このことは、混合物のゲル化を含む多くの問題を引き起こす。
【0030】
本明細書において説明される修飾されたカーボンブラック粒子は、複数月又は複数年の間、水性系中で分散したままであることができる。本明細書において使用されるとき、安定な分散体は、上昇された温度で、例えば52℃で、1週の間、分散体をエイジングした後に、1wt%のカーボンブラックの充填量の分散体から作られるコーティングの、ステンレス鋼上での被覆力の統計的に有意な減少がない分散体をいう。分散体が1wt%より多い修飾されたカーボンブラックを含有する場合、例えばミルベースの場合、分散体はエイジングされ、続いて1wt%のカーボンブラックに対して相溶性の樹脂を含む水性媒体中に溶かされて、ステンレス鋼上での被覆力を試験する。乾燥である場合、コーティングは、約3wt%のカーボンブラックを含む。本明細書において使用されるとき、「溶かされた(letdown)」は、ミルベースを希釈することによって作られる液体分散体、並びに未分散の顔料を液体媒体中に分散させることによって直接作られる液体分散体を含む。
【0031】
実施態様の1つの組において、修飾されたカーボンブラック顔料を、水性の液体媒体に直接入れて撹拌して、安定な分散体を製造することができる。この分散体は、例えば10wt%より多い、20wt%より多い、30wt%より多い、40wt%より多い、又は50wt%より多い化学的に修飾されたカーボンブラックを含んでよい。次いで、この分散体は、乾燥した又は濡れたメーソンリー組成物、例えばコンクリート又はクレイ中に入れて混合することができる。化学的に修飾されたカーボンブラックはまた、綿状の又はペレット化された形態で乾燥系に入れて混合することもでき、任意の骨材の導入の前又は後に、セメント粉末に入れて混合することもできる。
【0032】
幾つかの適用において、カーボンブラックは、低い粘度を有する水性分散体中に提供され、従って現在コンクリートを混合するのに使用されるポンプシステム中に容易に組み込むことができる。混合物中への公知の安定な分散体の添加量を測定することによって、添加される水及び顔料の正確な量を予め決定することができる。このことはまた、分散体を水(又はCaClなどの添加剤を有する水)で溶かして、水及び顔料の単一の均質な供給源を用いて、スラリーについて、顔料及び水の所望の量に到達することを可能とする。このことは、混合を確実にして、スラリーを通じた顔料の良好な分布を達成することを促進することができる。一般的なコンクリートスラリーは、例えば75%の骨材と25%のポルトランドセメントとを含有する場合がある。条件に応じて、骨材とセメントとの乾燥混合物に水を添加して、典型的には約15wt%の水を含有するスラリーを得る。この場合において、硬化されたメーソンリー製品の目標とする顔料含有量が5wt%である場合、約20wt%の、カーボンブラックの25%水性分散体を乾燥コンクリート混合物に添加することによって、スラリーを調製することができる。代わりに、より高い濃度の分散体、例えば45wt%以下の修飾されたカーボンブラックの分散体を使用することができる。
【0033】
分散体は、少なくとも10wt%、少なくとも15wt%、好ましくは少なくとも20wt%、より好ましくは少なくとも25wt%、少なくとも30wt%、少なくとも35wt%、又は40wt%以上の濃度で、化学的に修飾されたカーボンブラックを含むことができ、(他に明示されない限り10rpmで)1100cPより小さい、1000cPより小さい、800cPより小さい、700cPより小さい、650cPより小さい、600cPより小さい、又は560cPより小さい有益な粘度もまた達成することができる。幾つかの実施態様において、分散体は、60wt%より少ない、又は50wt%より少ない修飾されたカーボンブラックの濃度に限定されてよい。分散体の粘度は、Brookfield(登録商標)DV-II+粘度計(Brookfield Engineering Laboratories,Middleboro,MA)を使用して、以下の手順で測定される。
【0034】
器具の電源を入れたのち、チラーの電源を入れて温度を25℃に設定する。次いで、器具のディスプレイによって指示されるように、自動ゼロ点調整を使用して、器具をゼロ点調整する。選択されたスピンドル(他に明示されない限り、本明細書において#3が使用される)がハイライトされるまで「set spindle」機能を押すことによってスピンドルを選択する。「set spindle」機能を再度押して、選択を入力する。小さいサンプルカップを、試験する分散体で部分的に満たした。ディスク型のジオメトリ(例えば#3)を使用する場合、ディスクを分散体中に配置して、穏やかに回転させて、ディスクの下にトラップされている場合がある空気を開放する。弾丸型のジオメトリはスピンドルに直接取り付けることができる。次いで、サンプルカップを器具のジャケットホルダー中に配置して、まだ取り付けられていない場合には、ジオメトリをスピンドルにねじ締めする。ピペットを使用して、サンプルカップを、頂部から約2.5mmまで充填し、速さを10rpmに設定する。モーターの電源を入れて、10rpmで1分間の間、系を平衡化させる。これを、20rpm、50rpm及び100rpmで繰り返す。100rpmでの1分間の平衡化の後、試験を完了し、モーターの電源を切る。
【0035】
より高いカーボンブラック顔料の充填量を含むミルベースは、安定である場合、例えば海運及び貯蔵のコストを削減することができる。これらのより高い濃度では、典型的には、ミルベースは機能するには粘性に富みすぎたものとなり、ビーズミルを通過するのには粘性に富みすぎている場合がある。例えば、Eigerミルを通過するためには、多量の分散剤が使用されない限り、典型的には、媒体構造カーボンブラックを含むミルベースは、約20又は25%のカーボンブラック濃度に限定される。本明細書において説明される化学的に処理されたカーボンブラックは、より高い充填量でより低い粘度を提供する。このようなカーボンブラックは、ミルベースに入れて粉砕するというよりもむしろ撹拌することができるため、より高い粘度を、製造プロセスにおいて許容することができる。必要とされる粉砕の量を排除する、又は減少させることに加えて、混合する力(速さ)を有意に減少させることができる。例えば、本明細書において説明される、幾つかの実施態様の処理されたカーボンブラックは、10m/sより低い、5m/sより低い、4m/sより低い、3m/sより低い、又は2m/s以下の混合ブレードチップ速度で混合することによって、十分に分散することができる。比較すれば、典型的には、一般に使用される修飾された及び修飾されていないカーボンブラック顔料は、増加した濃度の分散剤の存在の下で、10m/sより高いチップ速さで、粉砕及び混合することによって調製される。
【0036】
幾つかの測定可能な光学的要素を使用して、顔料を、例えばカーボンブラックを含むメーソンリー材料を評価することができる。色は、黒色度(L)、青/黄(b)及び赤/緑(a)を測定することによって三次元的に表すことができる。0のL値は完全な黒であり、一方で、より高いほど、より白い。メーソンリー材料における、例えばコンクリートにおける様々な充填量において、本明細書において説明される処理されたカーボンブラックを硬化して、33以下、30以下、25以下、20以下又は18以下のL値を有するメーソンリー組成物を製造することができる。異なる実施態様において、メーソンリー組成物中の化学的に処理されたカーボンブラックの量は、例えば(乾燥基準で)少なくとも0.5wt%、少なくとも1wt%、少なくとも2wt%、少なくとも3wt%、少なくとも4wt%、少なくとも5wt%、少なくとも10wt%、又は少なくとも15wt%であってよい。これらの又は他の実施態様において、化学的に処理されたカーボンブラックの量は、最大で20wt%、最大で15wt%、最大で10wt%、最大で8wt%、最大で6wt%、最大で5wt%、最大で4wt%、最大で3wt%、又は最大で2wt%であってよい。例えば、結合されたスルホネート、カルボキシレート又はホスホネート基を有する1%のカーボンブラックを含有するコンクリートブロックは、最大で33、最大で30又は最大で25のL値を示すことができる。6%の同じカーボンブラックを含有する同じコンクリート組成物は、最大で30、最大で25又は最大で20のL値を示すことができる。
【0037】
カーボンブラックは当業者にとって公知であり、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラック及びランプブラックを含む。種々の供給元からのカーボンブラックを使用することができる。幾つかの商業的に入手可能であるカーボンブラックが、Regal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Elftex(登録商標)、Monarch(登録商標)、Mogul(登録商標)、Spheron(登録商標)、Sterling(登録商標)及びVulcan(登録商標)のトレードマークの下で販売されていて、Cabot Corporationから入手可能である(例えばBlack Pearls(登録商標)1100、Black Pearls(登録商標)1000、Black Pearls(登録商標)900、Black Pearls(登録商標)880、Black Pearls(登録商標)800、Black Pearls(登録商標)700、Black Pearls(登録商標)570、Black Pearls(登録商標)L、Elftex(登録商標)8、Elftex(登録商標)320、Monarch(登録商標)1100、Monarch(登録商標)1000、Monarch(登録商標)900、Monarch(登録商標)880、Monarch(登録商標)800、Monarch(登録商標)700、Mogul(登録商標)L、Regal(登録商標)330、Regal(登録商標)400及びRegal(登録商標)660カーボンブラック)。他の商業的に入手可能であるカーボンブラックは、Raven(登録商標)、Statex(登録商標)、Furnex(登録商標)及びNeotex(登録商標)トレードマーク、Columbian Chemicalsから入手可能であるCD及びHV系列のもの、並びにOrion Engineered Carbonsから入手可能であるCorax(登録商標)、Durax(登録商標)、Ecorax(登録商標)及びPurex(登録商標)製品の下で販売されるカーボンブラックを含むが、それらに限定されない。本明細書において提供される実施態様による使用のためには、ファーネスブラックが好ましい。
【0038】
本明細書において説明されるカーボンブラックは、特定の範囲の統計的厚さ比表面積(ASTM D6556によって測定されるSTSA又はt-area)を示すことができる。本明細書において使用されるとき、修飾されたカーボンブラックのSTSAは、修飾の前のカーボンブラックのSTSAである。幾つかの実施態様において、修飾されたカーボンブラックは、約25m/g~約300m/g、約25m/g~約250m/g、又は約50m/g~約200m/gのSTSAを有する。カーボンブラックの表面積が大きすぎる場合、本明細書において特定される表面処理のレベルを用いても、カーボンブラックが分散するのは困難である。加えて、分散体の粘度は、所与の固体充填量で、より高くなる。すなわち、より大きい表面積のカーボンブラックは、より高い粘度の分散体をもたらし、このことは、それらがコンクリートスラリー中で分散することをより困難にする場合がある。
【0039】
修飾されたカーボンブラックは、当分野において公知である多様な一次粒子径を有することができる。例えば、カーボンブラックは、約10nm~約80nm及び15nm~約50nmを含む約5nm~約100nmの一次粒子径を有することができる。幾つかの実施態様において、カーボンブラックは、200nmより小さい、100nmより小さい、又は75nmより小さい一次粒子径を有することができる。加えて、カーボンブラックは、多様なOAN(オイル吸収数、ASTM D2414によって測定される)の値もまた有することができ、それは顔料の分枝又は構造の基準である。例えば、表面修飾の前に、カーボンブラックは、約25~250mL/100g、例えば約30~150mL/100g又は約50~約100mL/100gのOAN値を有することができる。水性分散体において、例えばミルベース及び液体分散体において、修飾されたカーボンブラック粒子分散体は、0.6μmより小さい、例えば0.1~0.6μm、0.1~0.4μm又は0.15~0.5μmのD90を示すことができる。
【0040】
処理の前のカーボンブラックはまた、酸化剤を使用して酸化されて、イオン性の及び/又はイオン化可能な基を表面に導入したカーボンブラックであってもよい。この手法で調製されたカーボンブラックは、より高い程度の酸素含有基を表面に有することが分かった。酸化剤は、酸素ガス、オゾン、NO(NOと空気との混合物を含む)、過酸化水素などの過酸化物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムを含む過硫酸塩、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜ハロゲン塩(hypohalite)、岩塩(halite)、ハロゲン酸塩(halate)又は過ハロゲン酸塩(perhalate)(例えば亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム若しくは過塩素酸ナトリウム)、硝酸などの酸化性の酸、及び過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム又は硝酸セリウムアンモニウムなどの遷移金属含有酸化剤を含むが、それらに限定されない。酸化剤の混合物、特にガス状酸化剤、例えば酸素及びオゾン、の混合物、もまた使用することができる。加えて、他の表面修飾方法を使用して調製されて、イオン性の又はイオン化可能な基を顔料表面に導入した(例えば塩素化及びスルホン化)カーボンブラックもまた使用することができる。
【0041】
修飾されたカーボンブラックは、有機化学基が顔料に結合されるように、当業者にとって公知である任意の方法を使用して調製することができる。例えば、修飾された顔料は、米国特許第5554739、5707432、5837045、5851280、5885335、5895522、5900029、5922118、6042643及び6337358号明細書において説明される方法を使用して調製することができ、それらの記載は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。これらの方法は、例えばポリマー及び/又は界面活性剤を使用する分散剤式の方法と比較して、カーボンブラックへの、基のより安定な結合を提供する。修飾されたカーボンブラックを調製するための他の方法は、利用可能な官能基を有するカーボンブラックを、有機基を含む試剤と反応させる工程を、例えば米国特許第6723783号明細書において説明される工程を含み、その文献の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。このような官能性顔料は、上で組み込まれる参照文献において説明される方法を使用して調製することができる。加えて、結合された官能基を含有する修飾されたカーボンブラックはまた、米国特許第6831194及び6660075号明細書、米国出願公開第2003/0101901及び2001/0036994号明細書、カナダ国特許発明第2351162号明細書、欧州特許第1394221号明細書、及び国際公開第04/63289号において、並びにN.Tsubokawa、Polym.Sci.、17:417、1992において説明される方法によって調製することができ、これらの文献のそれぞれもまた、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0042】
修飾されたカーボンブラックの有機基は、修飾されたカーボンブラックが、選択された液体分散体又はミルベースの水性媒体中に分散されることを可能とする基であってよい。有機基は、イオン性の又はイオン化可能な基を含み、イオン性の又はイオン化可能な基は、未処理のブラックのSTSAに基づいて1.0~3.0μmol/mの処理レベルで存在する。本明細書において使用されるとき、例えばジアゾニウム化学反応によって、水性分散体を形成する前に、カーボンブラックを処理するのに使用される有機基は、修飾されたカーボンブラックから作られる水性の液体分散体中の分散剤とはみなされない。
【0043】
修飾されたカーボンブラックへの有機基の結合(処理)レベルは、水性媒体における修飾されたカーボンブラックの安定な分散を提供するのに十分であるべきである。結合レベルは、未処理のカーボンブラックの、表面積(STSA)当たりのイオン性の又はイオン化可能な基のモルで提供される。例えば、イオン性の又はイオン化可能な基は、1.0~3.0μmol/m、1.3~2.7μmol/m又は1.5~3.0μmol/mのレベルで結合されてよい。有機基が1つのイオン性の又はイオン化可能な基のみを含む幾つかの実施態様において、有機基、及びイオン化可能な又はイオン性の基の結合レベルは同じとなる。有機基が複数のイオン性の又はイオン化可能な基を含む場合、有機基、及びイオン性の又はイオン化可能な基の結合レベルは異なる。このような場合、イオン性の又はイオン化可能な基を含む基についての結合のレベルもまた、面積当たりの当量で定量化することができる。これらの結合のレベルは、当業者にとって公知である方法、例えば元素分析によって決定することができる。
【0044】
基は、ジアゾニウム化学反応、アゾ化学反応、過酸化物化学反応、スルホン化及び環化付加化学反応などの方法を使用して、カーボンブラックに結合することができる。これらの組み込まれる参照文献のうち1つ又は複数において開示されるジアゾニウムプロセスは、少なくとも1つのジアゾニウム塩の、カーボンブラック顔料との、例えば結合基で未だ表面修飾されていない、未処理の又は酸化された有機ブラック顔料との反応を提供するのに適合することができる。ジアゾニウム塩は、1つ又は複数のジアゾニウム基を有する有機化合物である。幾つかのプロセスにおいて、ジアゾニウム塩は、有機ブラック顔料材料との反応の前に調製されるか、又は、より好ましくは、引用される参照文献において説明される技術などの技術を使用して、インサイチュで生成されてよい。さらに、インサイチュの生成は、不安定なジアゾニウム塩、例えばアルキルジアゾニウム塩の使用を可能とし、ジアゾニウム塩の不必要な操作又は処置を回避する。幾つかのプロセスにおいて、硝酸とジアゾニウム塩との両方を、インサイチュで生成することができる。
【0045】
当分野において公知であるように、ジアゾニウム塩は、第一級アミンと、亜硝酸塩と、酸とを反応させることによって生成することができる。亜硝酸塩は、任意の亜硝酸金属、好ましくは亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム若しくは亜硝酸亜鉛、又は任意の有機亜硝酸塩、例えば亜硝酸イソアミル若しくは亜硝酸エチルであってよい。酸は、ジアゾニウム塩の生成において有効である、無機又は有機の任意の酸であってよい。好ましい酸は、硝酸、HNO、塩酸、HCl、及び硫酸、HSOを含む。ジアゾニウム塩はまた、第一級アミンを二酸化窒素の水性溶液と反応させることによっても生成することができる。二酸化窒素の水性溶液、NO/HOは、ジアゾニウム塩を生成するのに必要とされる硝酸を提供することができる。一般に、第一級アミン、亜硝酸塩と、酸とからジアゾニウム塩を生成するとき、アミンに対して二当量の酸が必要とされる。インサイチュのプロセスにおいて、ジアゾニウム塩は、一当量の酸を使用して生成することができる。第一級アミンが強酸性基を含有するとき、幾つかのプロセスにおいて、別個の酸を添加することは必要ではない場合がある。酸性基又は第一級アミンの基は、必要とされる当量の酸の一又は二を供給することができる。第一級アミンが強酸性基を含有するとき、好ましくは0~1当量の付加的な酸をプロセスに添加して、インサイチュでジアゾニウム塩を生成することができる。優れた特性を示したこのような第一級アミンの1つの例は、パラ-アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)である。メーソンリー組成物において使用されるカーボンブラックに利益を提供することができる付加的な第一級アミンは、パラ-位を通じて、例えば直接的にフェニル環に又は置換された若しくは置換されていないアルキル(例えばC1~C3)スペーサーを介してのいずれかで、結合された1つ又は複数のホスホン酸基を有するアニリンベースの化合物及びパラ-アミノ安息香酸(PABA)である。
【0046】
表面修飾されたカーボンブラックは、イオン性の又はイオン化可能な基を含む結合された少なくとも1つの有機基を有するカーボンブラック顔料を含む。修飾されたカーボンブラックは、式-X-Zを有する結合された少なくとも1つの有機基を有してよく、式中、Xはカーボンブラックに直接的に結合された第一の化学基であり、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アラルキレン基又はアルカリーレン基を表し、Zは少なくとも1つのイオン性の基又は少なくとも1つのイオン化可能な基を表す。Zは、非ポリマー性であってよい。
【0047】
示されたように、基Xは、アリーレン若しくはヘテロアリーレン基、アルキレン基、アラルキレン基又はアルカリーレン基を表すことができる。Xは顔料に直接的に結合されていてよく、さらにZ基によって置換されている。Xは連結基(例えば連結ジラジカル)であってよく、好ましくは顔料表面とZ基との間に直接的に結合されていてよい。アリーレン及びヘテロアリーレン基は、芳香族基であって、1つ又は複数の環を含有する不飽和の環状炭化水素を含むが、それらに限定されない芳香族基であってよい。ヘテロアリーレン基について、芳香族基の1つ又は複数の環炭素は、ヘテロ原子によって置換されている。ヘテロ原子は、非炭素原子、例えばN、S、O又は他の原子である。芳香族基の水素は、置換されているか、置換されていなくてよい。示されたように、Xはヘテロアリーレン基を表すことができる。ヘテロ環ベースのジアゾニウム塩を含むジアゾニウム化学反応経路を使用して有機ブラック顔料表面を、例えばペリレンブラック表面を処理することは、表面修飾基を結合させることをより容易にすることができることが分かった。Xがアラルキレン又はアルカリーレンである場合、芳香族基はアリーレン又はヘテロアリーレン基であってよい。
【0048】
ヘテロアリーレン基は、例えば1つ又は複数のヘテロ原子(例えば1個、2個、3個若しくはそれより多くのヘテロ原子)を含有する少なくとも1つのヘテロ環式環、を含む連結基であってよい。ヘテロ環式環は、例えば3~12の環員原子、5~9の環員、又は5、6、7若しくは8員環、を含有していてよい。ヘテロ環式環は、例えば少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は他の個数の炭素原子を含んでよい。ヘテロ環式環において、複数のヘテロ原子が使用されるとき、ヘテロ原子は同一のものであるか、異なるものであってよい。ヘテロ環式基は、単一のヘテロ環式環を含有するか、又は少なくとも1つのヘテロ環式環を含む縮合環を含有してよい。ヘテロアリーレン基は、例えばイミダゾリレン、ピラゾリレン、チアゾリレン、イソチアゾリレン、オキサゾリレン、イソオキサゾリレン、チエニレン、フリレン、フルオレニレン、ピラニレン、ピロリレン、ピリジレン、ピリミジレン、インドリレン、イソインドリレン、テトラゾリレン、キノリニレン、イソキノリニレン、キナゾリニレン、カルバゾリレン、プリニレン、キサンテニレン、ジベンゾフリレン、2H-クロメニレン又はそれらの任意の組み合わせであってよい。Xはまた、アリーレン基、例えばフェニレン、ナフチレン、ビフェニレンフェニル、アントラセニレン及び類似のものを表してもよい。Xがアルキレン基を表すとき、例は、分岐しているか又は分岐していなくてよい、置換された又は置換されていないアルキレン基を含むが、それらに限定されない。例えば、アルキレン基は、例えば、C~C12基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン又は他のアルキレンであってよい。Xがアラルキレン又はアルカリーレンを表すとき、アリーレン及びアルキレン成分は、上で議論されたもののうち任意のものであってよい。
【0049】
基Xは、Z以外の基で、例えば1つ又は複数のアルキル基又はアリール基で、さらに置換されていてよい。さらに、基Xは、例えば1つ又は複数の官能基で置換されていてよい。官能基の例は、R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボキシレート、水素、CN、NR、SOH、スルホネート、スルフェート、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホネート、ホスフェート、N-NR、SOR、NSORを含むが、それらに限定されるものではなく、式中、Rは、同じものであるか、又は異なるものであってよく、独立に、水素、分岐した若しくは分岐していないC~C20の置換された若しくは置換されていない飽和若しくは不飽和の炭化水素、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、置換された若しくは置換されていないアリール、置換された若しくは置換されていないヘテロアリール、置換された若しくは置換されていないアルカリール、又は置換された若しくは置換されていないアラルキルである。
【0050】
示されたように、基Zは、少なくとも1つのイオン性の基又はイオン化可能な基である。基Zは、イオン性の基とイオン化可能な基との混合物をさらに含んでよい。イオン性の基は、アニオン性又はカチオン性のいずれかであってよく、例えばNa、K、Li、NH 、NR’ 、アセテート、NO 、SO -2、R’SO 、R’OSO 、OH及びClなどの対イオンを含む、反対の電荷の対イオンと連結ことができ、式中、R’は水素又は有機基、例えば置換された若しくは置換されていないアリール及び/又はアルキル基を表す。イオン化可能な基は、使用する媒体中でイオン性の基を形成することができる基であってよい。アニオン化可能な基はアニオンを形成することができ、カチオン化可能な基はカチオンを形成することができる。イオン性の基は、米国特許第5698016、5837045及び5922118号明細書において説明されるものを含み、それらの文献の記載は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。アニオン性の基は、アニオンを形成することができるイオン化可能な置換基(アニオン化可能な基)、例えば酸性置換基、を有する基から生成することができる負に帯電されたイオン性の基である。アニオン性の基はまた、イオン化可能な置換基の塩におけるアニオンであってもよい。アニオン性の基の例示的な例は、-COO、-SO 、-OSO 、-HPO 、-OPO -2及び-PO -2を含む。アニオン性の基は、一価の金属塩である、例えばNa塩、K塩又はLi塩である対イオンを含んでよい。対イオンはまた、アンモニウム塩、例えばNH 塩であってもよい。アニオン化可能な基の例示的な例は、-COOH、-SOH、-PO、-R’SH、-R’OH及び-SONHCOR’を含み、式中、R’は、水素又は有機基、例えば置換された若しくは置換されていないアリール及び/若しくはアルキル基を表す。カチオン性の基は、カチオンを形成することができるイオン化可能な置換基(カチオン化可能な基)から生成することができる正に帯電されたイオン性の基、例えばプロトン化されたアミンである。例えば、アルキル又はアリールアミンは、酸性媒体中でプロトン化されてアンモニウム基-NR’を形成することができ、式中、R’は、有機基、例えば置換された又は置換されていないアリール及び/又はアルキル基を表す。カチオン性の基はまた、正に帯電された有機のイオン性の基であってもよい。例は、第四級アンモニウム基(-NR’ )及び第四級ホスホニウム基(-PR’ )を含む。式中、R’は、水素又は有機基、例えば置換された若しくは置換されていないアリール及び/若しくはアルキル基、を表す。カチオン性の基は、アルキルアミン基若しくはそれらの塩、又はアルキルアンモニウム基を含んでよい。第四級アンモニウム基(-NR )及び第四級ホスホニウム基(-PR )は、カチオン性の基の例を示すものであり、アニオンを形成するイオン化可能な基について上で説明されたのと同じ有機基に結合されてよい。好ましくは、有機基は、芳香族基、例えばフェニル若しくはナフチル基、及び第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウム基を含有する。好ましくは、芳香族基は、カーボンブラックに直接的に結合される。第四級化された環状アミン及び第四級化された芳香族アミンもまた、有機基として使用することができる。従って、N-置換されたピリジニウム化合物を、例えばN-メチル-ピリジルを、これに関連して使用することができる。
【0051】
基Zは、少なくとも1つのカルボン酸基又はそれらの塩、少なくとも1つのスルホン酸基又はそれらの塩、少なくとも1つの硫酸基、少なくとも1つのホスホン酸基又はそれらの部分エステル若しくは塩、少なくとも1つのアルキルアミン基又はそれらの塩、あるいは少なくとも1つのアルキルアンモニウム基を含んでよい。基Xがヘテロアリーレン基又はアリーレン基であることが好ましい場合があるため、式-X-Zを有する結合された有機基は、ヘテロアリールカルボン酸基、ヘテロアリールスルホン酸基、ヘテロアリールホスホン酸基若しくはヘテロアリールビスホスホン酸基、アラルキルホスホン酸基若しくはアラルキルビスホスホン酸基、アリールカルボン酸基、アリールスルホン酸基、又はそれらの塩(あるいはホスホン酸基及びビスホスホン酸基については部分エステル)を含んでよいが、それらに限定されない。例えば、結合された有機基は、例えばイミダゾリルカルボン酸基、イミダゾリルスルホン酸基、ピリジニルカルボン酸基、ピリジニルスルホン酸基、ベンゼンカルボン酸基、ベンゼンジカルボン酸基、ベンゼントリカルボン酸基、ベンゼンスルホン酸基又はそれらの塩であってよい。代わりに又は加えて、Zは、構造-Sp-(POを有してよく、式中、qは1又は2であり、Spは、結合、あるいはC1~C3アルキル若しくはアルケニル基又はそれらの部分エステル若しくは塩のいずれかである。結合された有機基は、米国特許第8858695号明細書において開示される基を含有するホスホン酸のうち任意のものであってよく、その文献の全体の内容は、参照によって組み込まれる。結合された有機基はまた、これらの任意のものの置換された誘導体であってもよい。基Zがアニオン性である場合、処理されたカーボンブラックは、寒冷用途における使用について、利点を有することができる。未処理のカーボンブラックは、コンクリートにおける空気連行のために使用される分散剤を除去してしまう場合がある。典型的には、このような分散剤は、木ベースの樹脂、例えばvinsol樹脂、脂肪酸、石油酸塩、並びにアルキル及びアルキルアリールスルホン酸を含むアニオン性又は非イオン性の界面活性剤である。これらの分散剤は、凍結融解サイクルの間に水の熱膨張のための容積を提供する、コンクリート中の小さい気泡の形成を調整する。アニオン性の基で処理されたカーボンブラック表面は、空気連行剤上のアニオン性の基を寄せ付けず、カーボンブラックの除去効果を低減する。
【0052】
本明細書において使用されるとき、分散剤は、水性の系において使用されて、他の非分散性のカーボンブラック粒子の分散体を形成するのに有用であることができる物質である。分散剤は、粒子と強く連結して、粒子を分離して保つそれらの能力について選択される。分散剤は、界面活性剤、官能化されたポリマー及びオリゴマーを含んでよい。分散剤は、非イオン性の分散剤であるか、又はイオン性の分散剤、例えばアニオン性の若しくはカチオン性の分散剤、であってよい。非イオン性の分散剤が好ましく、イオン性の分散剤の中でも、アニオン性の分散剤が好ましい。分散剤は、両親媒性であってよく、ポリマー性であるか、又はポリマー性の基を含んでよい。分散剤は、水性分散体において使用される場合がある他の添加剤、例えば湿潤剤、消泡剤及び共溶剤を含まない。
【0053】
ポリマー性分散剤の具体的な例は、合成ポリマー性分散剤を含む。一般に、水系の配合物において、エトキシレートが分散剤として使用される。例えば、アルキルフェノールエトキシレート及びアルキルエトキシレートが使用される場合がある。例は、Baker PetroliteのPETROLITE(登録商標)D-1038を含む。水性分散体において分散剤及び添加剤のために使用することができるポリマー及び関連する材料は、EvonikのTego製品、LyondellのEthacryl製品、BASFのJoncrylポリマー及びEFKA分散剤、並びにBYKのDisperbyk(登録商標)及びByk(登録商標)分散剤中に含まれる。用いることができる例示的な分散剤は、全てBYK Chemieから入手可能であるDisperBYK 182、DisperBYK 190、及び/又はDisperBYK 192と、46000を含む、Lubrizolから入手可能であるSolsperse(商標)分散剤と、CibaのEFKA4585、EFKA4550及びEFKA4560とを含むが、それらに限定されない。
【0054】
水性分散体組成物とあわせて、様々なレオロジー改質剤をさらに使用して、組成物の粘度を調整すること、並びに他の望まれる特性を提供することができる。適した化合物は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとを用いて誘導されることを伴う又は伴わない、水溶性のポリマー及びコポリマー、例えばアラビアゴム、ポリアクリレート塩、ポリメタクリレート塩、ポリビニルアルコール(例えばDuPontのElvanols、CelaneseのCelvoline)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリジノン(例えばBASFのLuvatec、ISPのKollidonとPlasdone、及びPVP-K)、ポリビニルエーテル、でんぷん、多糖、ポリエチレンイミン、並びに類似のものを含むが、それらに限定されない。代わりに又は加えて、必要な場合には消泡剤を使用することができる。
【0055】
本明細書において説明される水性分散体のpHを制御又は調整するための種々の添加剤もまた使用することができる。適したpH調整剤の例は、種々のアミン、例えばジエタノールアミン及びトリエタノールアミン、並びに種々の水酸化物試剤を含む。水酸化物試剤は、OHイオンを含む任意の試剤、例えば水酸化物対イオンを有する塩である。例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム及び水酸化テトラメチルアンモニウムを含む。他の水酸化物塩並びに水酸化物試剤の混合物もまた使用することができる。さらに、他のアルカリ性試剤もまた使用することができ、水性媒体中でOHイオンをもたらす。例は、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩、並びにナトリウムメトキシド及びナトリウムエトキシドなどのアルコキシドを含む。緩衝剤もまた添加することができる。
【0056】
実施態様の1つの組において、分散しやすい修飾されたカーボンブラックを、ジアゾニウム化学反応を使用してスルファニル酸で未処理のカーボンブラックを表面処理することによって製造することができ、ベンゼンスルホン酸基(p-CSO )を含む修飾されたカーボンブラックを得ることが可能であることが分かった。代わりに又は加えて、パラ-アミノ安息香酸を使用して、ジアゾニウム化学反応を使用してカーボンブラックを処理して、p-CCO 基を含む修飾されたカーボンブラックを得ることができる。実施態様の第三の組において、[2-(4-(アミノフェニル)-1-ヒドロキシエタン-1,1-ジイル]ビスホスホン酸モノナトリウム塩、[2-(4-(アミノフェニル)-1-ヒドロキシプロパン-1,1-ジイル]ビスホスホン酸モノナトリウム塩、[2-(4-(アミノフェニル)-1-ヒドロキシブタン-1,1-ジイル]ビスホスホン酸モノナトリウム塩、[4-(アミノフェニル)(ヒドロキシル)メチレン]ビスホスホン酸モノナトリウム塩、[アミノ-(4-(アミノフェニル)メチレン]ビスホスホン酸モノナトリウム塩、[2-(4-(アミノフェニル)エタン-1,1-ジイル]ビスホスホン酸モノナトリウム塩、又は4-アミノベンジルホスホン酸のうち1つを使用して、ジアゾニウム化学反応を使用してカーボンブラックを処理して、1つ又は複数のホスホン酸塩基を有する有機基を含む修飾されたカーボンブラックを得ることができる。
【0057】
これらの基は、修飾されたカーボンブラックを分散可能にするのに有用である場合があり、下に示されるように、これらの処理されたカーボンブラックの多くは、高エネルギー又は摩砕媒体の使用なしに、分散体に入れて撹拌するか、又はメーソンリー組成物中に組み込むことができる。より多くの量の処理剤を使用してカーボンブラックの分散性を改善することができるが、減少した処理のレベルは、メーソンリー組成物を通じて、より良好な分散を提供する顔料をもたらすことが分かった。例えば、非常に具体的な、処理の前に200m/gより小さいSTSAを有するカーボンブラックと、最大で3.0、最大で2.7、最大で2.5又は1.5~2.7μmol/mのスルホン酸基の処理レベルが、コンクリートにおいて優れた分散体を提供することが示された。当分野において考えられているのとは逆に、付加的な分散剤は、幾つかの処理されたカーボンブラックの分散性に負の影響を有する場合があることも分かった。液体分散体中のカーボンブラックの量に対して、分散剤の濃度は、100gのカーボンブラック当たりの分散剤で、約5グラムより少ない、例えば約4グラム以下、約3グラム以下、約2グラム以下、又は約1グラム以下であってよい。多くの実施態様において、分散体は必要ない。具体的な分散剤の範囲は、例えば分散されている修飾されたカーボンブラックの処理レベル又は修飾されたカーボンブラックをコンクリート中に組み込む方法に応じて変えることができる。
【実施例
【0058】
実施例1
着色されたコンクリート配合物
鉄酸化物及び種々のカーボンブラックを用いて、コンクリートサンプルを着色した。乾燥コンクリート混合物(1500g)を、半ガロンコンテナ中で、顔料と組み合わせた。顔料がコンクリート混合物中で一様に分散されるまで、コンテナを5分の間回転させた。次いで、水(265~269mL)を添加して、コンテナをさらに5分の間回転させて、均質なスラリーを得た。スラリーを型に注ぎ入れて、48時間の間硬化させた。硬化の後、得た硬化したサンプルを型から取り出して、コンシステンシー、色、黒色度及び風化について評価した。乾燥の着色したコンクリートの反射率スペクトルを決定した。反射率の値を使用して、International Commission on Illumination CIE 1976のL、a及びb値を計算した。Lは、純粋な黒を示す0から純粋な白を示す100までである明るさ座標を表し;aは、赤さの程度が上昇するほど大きくなる値を有する赤-緑座標を表し;bは、黄色さの程度が上昇するほど大きくなる値を有する黄-青座標を表す。
【0059】
例の第一の組において、Sakreteポルトランドセメント(75%骨材)を用いて作ったコンクリートのサンプルを、異なる顔料及び顔料濃度を使用して製造した。サンプルAは、6wt%のElftex(登録商標)320カーボンブラック、62m/gのSTSAを有する未処理のカーボンブラック、を含有していた。サンプルBは、2μmol/mの表面処理レベルを有するカーボンブラックを製造するようにスルファニル酸で処理した6wt%のElftex 320カーボンブラックを含有していた。サンプルCは、6wt%のBayfferrox 360黒色酸化鉄を含有していた。硬化した後、黒色度についてそれぞれのサンプルを評価した。結果を表1に提供していて、化学的に処理されたカーボンブラックを用いて製造されたサンプルは、有意に改善した黒色度をもたらすことを示した。
【表1】
表1
【0060】
顔料の分布
サンプルA及びBを裂いて、ブロックにわたって、どれだけ一様にカーボンブラックが分布したかを調査した。図1A(断面)及び図1B(元の表面)の写真に示すように、サンプルA(Elftex 320カーボンブラック)における顔料は、十分には分配されておらず、表面に集中していた。対して、サンプルB(化学的に処理されたElftex 320カーボンブラック)における顔料は、ブロックにわたって、良好に分配されていた。このことは、有意な磨耗の後であっても、化学的に処理された顔料を使用するコンクリートブロックが、その色を保持することを示している。これらのブロックはまた、より小さいピースであって、全ての表面で良好な色を示すピースに分けることができる。
【0061】
風化
3つのサンプルについての長期の湿度の効果を、図2に例示する。着色されたコンクリートブロック状の水分は、表面に水酸化カルシウムをもたらして、水酸化カルシウムは大気の二酸化炭素と反応して不溶性の白色の炭酸カルシウムを作る場合がある。炭酸カルシウムは、黒色の着色されたコンクリートブロックの黒色度を急速に減少させる場合がある。図2に示すように、化学的に処理されたカーボンブラック顔料(サンプルB)が、100℃で100%の湿度への400hの暴露の経路に対して、最も変わらない黒色度を提供した。
【0062】
1wt%の化学的に処理されたElftex 320カーボンブラック(サンプルD)、1wt%の酸化鉄(サンプルE)、17wt%のElftex 320カーボンブラック(サンプルF)、17wt%の化学的に処理されたElftex 320カーボンブラック(サンプルG)及び17wt%の酸化鉄(サンプルH)を使用して、さらなるコンクリートサンプルを製造した。湿潤チャンバーにおけるインキュベーションの後の黒色度の変化を示すグラフを、図3及び4に提供する。6wt%の充填量のサンプルと同様に、1wt%及び17wt%の充填量についての最も変わらない黒色度が、スルファニル酸で処理されたElftex 320カーボンブラックで保持されている。
【0063】
実施例2
コンクリートサンプルを、分散体形態のカーボンブラックで着色する。水(116g)を、分散剤(23gのBaker Petrolite D1038非イオン性分散剤、10%固形分)及び消泡剤(1gのBYK 024消泡剤)と組み合わせて、次いで、カーボンブラック(従来のジアゾニウム化学反応を使用してスルファニル酸で化学的に処理して2.6μmol/mの処理レベルを得た、60gのBlack Pearls 800カーボンブラック)を添加して、十分に混合されるまで撹拌した。十分なカーボンブラック分散体と、合計265~269mLとなる十分な水とを、半ガロンコンテナ中で乾燥コンクリート混合物(1500gのSakreteセメント)に添加して、コンクリート中に1wt%~3wt%の顔料を提供し、顔料が一様に分配されるまで(少なくとも5分)回転した。スラリーを型に注ぎ入れて、48時間硬化させた。
【0064】
実施例3
着色されたコンクリート配合物
コンクリートサンプル(Superior Ready Mix、San Diego、CA)を、酸化鉄(Davis Colors 860顔料)で、及びセメントに対して1%、3.5%、6%の顔料の充填量で実施例1において定めたカーボンブラックで着色した。セメントに対する水の比は、全ての試験バッチ混合物について一定であった。顔料を有さない対照コンクリートをさらに調製した。
【0065】
円柱状供試体の圧縮強度を、ASTM C39によって、二度測定した。表2に示すように、1%の充填量において、酸化鉄で、及び表面修飾されたカーボンブラックで調製されたサンプルの圧縮強度は類似である。
【表2】
表2
【0066】
種々のセメントについての凝結の時間を、ASTM C403によって測定して、結果を下の表3に示す。凝結の初期時間及び凝結の最終時間は、コンクリートを加工することができる時間、例えばコンクリートスラブを平らにすることができる時間、の範囲を画定する。凝結の最終時間と初期時間との差は、酸化鉄で調製されたサンプルについてと比較して、未修飾の又は表面修飾されたカーボンブラックで調製されたサンプルについて、同等かそれ以上であった。
【表3】
表3
【0067】
実施例4
コンクリートサンプルの風解
実施例1において説明されるカーボンブラック、酸化鉄、コンクリート及び方法で、コンクリートサンプルを調製した。その配合は、1500gのSakreteコンクリート混合物、268.92gの水及び23.93gの顔料(6wt%)を使用した。得たコンクリートの色は、未処理の顔料と比較して、表面修飾された顔料について、明らかに暗かった。さらに、表面修飾された顔料で着色されたコンクリートは、風解を、ほとんど又は明らかには示さなかった。対して、酸化鉄で着色されたコンクリートは、そのエッジに沿って有意な風解を示し、一方で未修飾の顔料で着色されたコンクリートは、幾らかの風解を示したが、酸化鉄についての風解より小さかった。色分布は、未修飾の又は表面修飾されたカーボンブラックで着色されたサンプルにわたって、比較的均質であった(図5、左から右へ:未処理のElftex 320カーボンブラック、処理されたElftex 320カーボンブラック、酸化鉄)。
【0068】
実施例6
カーボンブラックの種類の変化
500gのセメント、85gの水、及び5、15又は30g(1、3又は5wt%の顔料濃度をもたらす)のいずれかの顔料を使用する以外は、実施例1において説明される方法を使用して、乾燥顔料(「Dry」)で、コンクリートサンプルを調製した。コンクリートサンプルを、分散した顔料(「Wet」)で、5、10、又は15%の顔料を200gの水と組み合わせることによって調製した。分散剤を、32oz.のポリプロピレンおけ(tubby)中で、5~10分間回転させて、次いで500gのSakreteポルトランドセメント(75%骨材)と組み合わせた。混合物を、5~10分間回転させて、次いで、清浄なおけに移して、少なくとも48時間凝結した。顔料を下の表4に記載する。酸化鉄は、<5ミクロン、95%純度の、Sigma Aldrichの酸化鉄(II、III)であった。例6D及び6Eにおけるカーボンブラックを、従来のジアゾニウム化学反応を使用して、スルファニル酸でBlack Pearls 800カーボンブラックを処理することによって調製して、2.6μmol/mの処理レベルを達成した。加えて、Cabot CorporationのCAB-O-JET 300及びCAB-O-JET 400分散体で、コンクリートサンプルを調製した。これらの分散体は、処理の前に測定した場合に20~200m/gのSTSAを有する約15wt%のカーボンブラックを含有する。CAB-O-JET 300分散体において、カルボキシル基を有する有機基でカーボンブラックを修飾して、3μeq/mより多いカルボキシル基含有量を与える。CAB-O-JET 400分散体において、1つ又は複数のホスホン酸基を有する有機基で、米国特許第8858695号明細書において説明されるようにカーボンブラックを修飾して、3μeq/mより多いホスホン酸含有量を与える。200gの水の合計量を与えるように十分な脱イオン水で分散体を混合して、得た希釈分散体を、上で「Wet」サンプルとして説明したコンクリートと組み合わせた。サンプルの色を、上で説明したように測定して、コンクリート中の顔料充填量(wt%)に対して図6に示す。結果は、イオン性の基を含む結合された有機基を有する表面処理されたカーボンブラックの使用は、未処理のカーボンブラックより深い色(より低いL)をもたらすことを示している。加えて、コンクリートにカーボンブラックを添加する前に、水中にカーボンブラックを予め分散することもまた、乾燥粉末を添加するより深い色を提供する。しかし、分散の質は、例6C~6Eにおける「入れて撹拌する」ブラックと比較して、CAB-O-JET分散体において、より多く処理されたカーボンブラックの使用に伴って減少し、充填量が増加するに伴ってさらに減少する。加えて、空気を取り除くための、湿潤コンクリートの繰り返しのタッピングにも関わらず、CAB-O-JET分散体で製造した、凝結したコンクリートサンプルは、それらの表面に多くの気泡を有していた(図7-1%の顔料を有する全てのサンプル、図7A-例6D、図7B-例6E、図7C-例6G、図7D-例6C)。乾燥カーボンブラックではなく湿潤分散体を使用してコンクリートを製造したとき、幾らかの気泡が存在した。おけの表面に対向していたコンクリートサンプルの「底部」表面について、写真を撮影した。
【表4】
表4
【0069】
さらに、サンプルを砕いて、サンプル中の顔料の分散を視覚的に調査した。サンプルの色は、コンクリートのバルクにわたって比較的均質であったが、カーボンブラックの巨視的な未分散のアグリゲートが、未処理のカーボンブラックで調製されたコンクリートにおいて観察される場合があった。実際には、未処理のカーボンブラックの幾らかは、硬化の間にコンクリートから分かれて出て、コンクリートを硬化したプラスチックのおけの側部及び底部に堆積して、コンクリートにおける色強度をさらに減少させる。未分散のアグリゲートは、コンクリートに色を提供しにくく、従って処理されたブラックで調製したコンクリートサンプルと比較してL値を増加させる(より低い黒色度を示す)。
【0070】
実施例7
酸化したカーボンブラックの使用
乾燥セメント(95、97又は99g)(Sakreteポルトランドセメント)と、顔料(それぞれ、100gの合計の固形分の量を得るように5、3及び1g)とを、均質になるまで回転させて、次いで、10mLの水と組み合わせて、次いで、均質なスラリーを得るまで、5~10分間、セメントを再度回転させた。Mogul Eカーボンブラック(Cabot Corporation)は、約57mg/gのヨウ素価を有する酸化されたカーボンブラックである。セメントを、48時間硬化させて、上で説明したように色測定をした。顔料及び得た色を下の表5に記載する。結果は、単にカーボンブラックを酸化することは、アニオン性の又はアニオン化可能な基を含む結合された有機基によって可能とされた色における劇的な改善を提供しないことを示す。
【表5】
表5
【0071】
本発明の複数の実施態様が本明細書において説明され、例示されたが、当業者は、その機能を果たすための、並びに/又は本明細書において説明される1つ若しくは複数の利点及び/若しくは結果を得るための、様々な他の手法及び/又は構造を容易に想像し、このような変化及び/又は変更のそれぞれは、本発明の範囲の内にあるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書において説明される全てのパラメータ、範囲、材料及び構成は、例示であることを意図していて、実際のパラメータ、範囲、材料及び/又は構成は、本発明の教示が使用される具体的な1つ又は複数の用途に応じて変わることを容易に理解するだろう。当業者は、単なるルーチンの実験を使用して、本明細書において説明される本発明の具体的な実施態様に対する多くの均等物を確認することができるか、又は認識するだろう。従って、先の実施態様は、単なる例として提供されていて、添付の特許請求の範囲及びそれに対する均等物の範囲内で、本発明は、具体的に説明され、主張されるものとは異なるように行うことができると理解される。本発明は、本明細書において説明されるそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法に向けたものである。加えて、このような特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法が互いに矛盾しない場合には、2つ又はそれより多くのこのような特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組み合わせが本発明の範囲に含まれる。
【0072】
本明細書において定義される、及び使用される全ての定義は、辞書の定義、参照によって組み込まれる文献における定義、及び/又は定義される用語の通常の意味に対して照合するように理解されるべきである。
【0073】
本明細書において、及び本特許請求の範囲において使用されるとき、逆のことが明確に指示されない限り、不定冠詞「a」及び「an」は、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0074】
本明細書において、及び本特許請求の範囲において使用されるとき、フレーズ「及び/又は」は、等位接続される要素、すなわち、幾つかの場合において結合的に存在する要素、及び他の場合において選言的に存在する要素、のうち「いずれか又は両方」を意味すると理解されるべきである。逆のことが明確に明示されない限り、「及び/又は」節によって具体的に特定された要素の他に、任意選択で、具体的に特定されたそれらの要素と関連するか、又は関連しない他の要素が存在していてよい。
【0075】
本出願において引用されるか、又は参照される全ての参照文献、特許及び特許出願、並びに公報は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D