IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-印刷装置 図1
  • 特許-印刷装置 図2
  • 特許-印刷装置 図3
  • 特許-印刷装置 図4
  • 特許-印刷装置 図5
  • 特許-印刷装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/06 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
B41M3/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022048463
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2022004036の分割
【原出願日】2022-01-14
【審査請求日】2022-03-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真二
(72)【発明者】
【氏名】徳武 茉里
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-221146(JP,A)
【文献】特開2020-097192(JP,A)
【文献】特開2019-155753(JP,A)
【文献】特開2019-206688(JP,A)
【文献】特開2019-203093(JP,A)
【文献】特開2019-009235(JP,A)
【文献】特開2021-185651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/06
B41F 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物に、光エネルギーを吸収する印刷材料を付着させて印刷物を形成する印刷部と、
前記印刷物の印刷面に光源の発する光を照射して、前記印刷材料に光エネルギーを吸収させて前記印刷材料を乾燥させる乾燥部と
を備え
前記光源はLEDであり、
前記光源が照射する光が可視光線であり、
前記光を照射する際の前記印刷物の前記印刷面における照度は、5000000Lx以上である印刷装置。
【請求項2】
前記光源は複数の発光体を線上に配置した線状光源であって、
前記光を照射する際の前記印刷物の前記印刷面における、前記線状光源の前記発光体が配置される方向の照度の最低値が該照度の最高値の70%以上100%未満である請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
乾燥された前記印刷材料を光焼結する光焼結部を有する請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷材料を乾燥させるときに、前記光源と前記印刷物との間に気流を生じさせる気流発生部を有する請求項1~のいずれか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷対象物にインク等の印刷材料が印刷された印刷物を乾燥する方法として、例えば特許文献1に記載されているような方法が知られている。この特許文献1に記載された方法においては、印刷対象物である基材の表面に光焼結可能な金属インクによりパターンを印刷して印刷物を形成した後、光焼結工程の前に、オーブンに印刷物を投入する方法又は赤外線を印刷物に照射する方法で印刷物を乾燥している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2011-521055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オーブンを用いて印刷物を乾燥する方法では、乾燥に時間を要するという問題点があった。また、オーブン又は赤外線を用いて印刷物を乾燥する方法では、印刷物の基材に熱による損傷を与える可能性があるという問題点があった。
【0005】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、短時間で印刷物を乾燥し、印刷物への熱による損傷を低減することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の印刷装置は、印刷対象物に、光エネルギーを吸収する印刷材料を付着させて印刷物を形成する印刷部と、印刷物に光源の発する光を照射して、印刷材料に光エネルギーを吸収させて印刷材料を乾燥させる乾燥部とを備え、光源はLEDであり、光源が照射する光が可視光線であり、光を照射する際の印刷物の印刷面における照度は、5000000Lx以上である
【0007】
また、光源はLEDであってもよい。
また、光源が照射する光が可視光線であってもよい。
また、光を照射する際の印刷物の印刷面における照度は、5000000Lx以上であってもよい。
また、光源は複数の発光体を線上に配置した線状光源であって、光を照射する際の印刷物の印刷面における、線状光源の発光体が配置される方向の照度の最低値が該照度の最高値の70%以上100%未満であってもよい。
また、乾燥された印刷材料を光焼結する光焼結部を有してもよい。
また、印刷材料を乾燥させるときに、光源と印刷物との間に気流を生じさせる気流発生部を有してもよい。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の印刷方法は、印刷対象物に、光エネルギーを吸収する印刷材料を付着させて印刷物を形成する工程と、印刷物に光源の発する光を照射して、印刷材料に光エネルギーを吸収させて印刷材料を乾燥する工程とを有する。
【0009】
また、光源はLEDであってもよい。
また、光源が照射する光が可視光線であってもよい。
また、光を照射する際の印刷物の印刷面における照度は、5000000Lx以上であってもよい。
また、光源は複数の発光体を線上に配置した線状光源であって、光を照射する際の印刷物の印刷面における、線状光源の発光体が配置される方向の照度の最低値が該照度の最高値の70%以上100%未満であってもよい。
また、印刷物を形成する工程における印刷物の印刷面の温度が5℃以上35℃以下であってもよい。
また、印刷材料を乾燥する工程の後に、印刷材料を光焼結する工程を有してもよい。
また、印刷材料を乾燥する工程において、光源と印刷物との間に気流を生じさせてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る印刷装置及び印刷方法は、印刷物に光源の発する光を照射して、印刷材料に光エネルギーを吸収させて印刷材料を乾燥させるため、短時間で印刷物を乾燥し、印刷物への熱による損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1の印刷装置の概略図である
図2図1に示す乾燥部の内部を示す概略図である。
図3】実施の形態1における印刷物の印刷方法を示すフローチャートである。
図4】実施の形態1の印刷物の概略図である。
図5】実施の形態2の乾燥部の内部を示す概略図である。
図6】実施の形態2の印刷物の印刷方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、実施の形態1に係る印刷装置及び印刷方法を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態1の印刷装置の概略図である。印刷装置1は、システム全体を制御する制御部11と、基材に印刷材料を印刷する印刷部20と、印刷部20で印刷された基材上の印刷材料を乾燥させるための乾燥部30と、乾燥部30において乾燥された印刷材料を焼結するための光焼結部40とを有している。
【0013】
また、印刷装置1の各所には複数のローラ及びリールが設けられ、連続した長尺状のフィルム状基材50を送出し、搬送し又は巻き取ることにより、フィルム状基材50を印刷部20、乾燥部30及び光焼結部40の順に搬送する。
【0014】
フィルム状基材50は、電子回路を構成するフレキシブル基板に用いられる、連続した長尺状且つ薄手のフィルム状基材である。このフィルム状基材50は、紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)及びその他の任意の材料により形成されているか、又はこれらの材料を任意に組み合わせた材料により形成されている。なお、フィルム状基材は印刷対象物を構成している。
【0015】
印刷部20は、フィルム状基材50に、光焼結用亜酸化銅及び溶剤を含む導電性金属ペーストをスクリーン印刷し、印刷物を形成する。なお、導電性金属ペーストは印刷材料を構成している。
【0016】
乾燥部30は、内部に光照射LED装置を有し、導電性金属ペーストが印刷されたフィルム状基材50に光を照射して導電性金属ペーストを乾燥させる。
【0017】
光焼結部40は光焼結装置であり、乾燥部30で乾燥されたフィルム状基材50上の導電性金属ペーストを焼結して、導電性金属ペーストをフィルム状基材50に密着させる。
【0018】
図2は、乾燥部30の内部を示す概略図である。乾燥部30の内部の鉛直方向上側には、発光部32を有するLED発光装置31が設けられている。発光部32は、LED発光装置31の鉛直方向下側に、発光体を構成する複数のLEDが直線上に一列に配置されて形成されており、鉛直方向下側に光Aを照射する。発光部32が照射する光Aは、可視光線であることが好ましい。なお、この可視光線の波長は、360nm以上830nm以下である。また、発光部32が照射する該光Aの波長は、400nm以上800nm以下であることがより好ましい。なお、LED発光装置31は線状光源を構成している。
【0019】
LED発光装置31の鉛直方向下側には、送りローラ33により上流側の印刷部20(図1参照)の側から下流側の光焼結部40の側に、すなわち矢印B方向に送られるフィルム状基材50が配置されている。このフィルム状基材50は、印刷部20において導電性金属ペースト51が印刷された印刷面50aが、LED発光装置31の発光部32に対向するように配置されている。すなわち、発光部32の光Aの照射方向と、発光部32の鉛直方向下側の印刷面50aとがなす角度Xが90度となるようにLED発光装置31が配置されている。また、発光部32と、発光部32の鉛直方向下側の印刷面50aとの距離は1mm以上50cm以下であることが好ましい。さらに、発光部32の鉛直方向下側の印刷面50a、すなわち発光部32が照射する印刷物50bにおける照度は、5000000Lx以上であることが好ましい。
【0020】
また、LED発光装置31の発光部32には、複数のLEDが直線上に配置されているため、印刷物50bの印刷面50aに光Aが照射されたときには、LEDの配置された直線方向に沿って印刷面50aに光Aが照射された領域が発生する。この印刷面50aの該領域における照度分布が極力均一となるように、乾燥部30の発光部32の光Aの照射方向と印刷面50aとがなす角度Xと、発光部32から印刷面50aまでの距離とが決定される。上述したように、本実施の形態1では角度Xが90度となるようにLED発光装置31が配置されている。この角度Xと、発光部32から印刷面50aまでの距離とは、印刷面50aの各LEDが配置される方向における照度の最低値が該照度の最高値の70%以上100%未満であるように決定されることが好ましく、また、印刷面50aの各LEDが配置される方向における該照度の最低値が該照度の最高値の80%以上100%未満であるように決定されることがより好ましい。
【0021】
次に、本実施の形態1の印刷装置1を用いた印刷物の印刷方法を説明する。
図3は本実施の形態1における印刷物の印刷方法を示すフローチャートである。本実施の形態1の印刷物の印刷方法のステップS1では、既知の図示しない導電性金属ペースト作製手段によりフィルム状基材50(図3参照)に印刷する黄褐色の導電性金属ペーストが作製される。この導電性金属ペーストは、図1に示す印刷部20に供給される。
【0022】
次に、ステップS2では、印刷部20が、導電性金属ペーストを印刷部20に搬送されたフィルム状基材50の印刷面50a(図2参照)にスクリーン印刷して印刷物を形成する。なお、このときの印刷面50aの温度は常温であり、具体的には5℃以上35℃以下である。
【0023】
図4は、印刷部20で、フィルム状基材50に導電性金属ペースト51が印刷されて形成された印刷物50bの概略図である。印刷物50bは、導電性金属ペースト51によって印刷面50aに形成された導体パターン52を有している。なお、本実施の形態1における導体パターン52はあくまで例示であってこれに限定されるものではなく、他のフレキシブル基板として必要な任意の導体パターンを形成してもよい。
【0024】
次に、図3に示すステップS3では、図2に示すように印刷部20(図1参照)から乾燥部30にフィルム状基材50が送られる。そして、LED発光装置31の発光部32の直下にフィルム状基材50上の印刷物50bが位置したときに、LED発光装置31の発光部32から光Aが所定の時間だけ1回照射される。
【0025】
印刷物50bに光Aが照射されると、導体パターン52(図4参照)を形成する黄褐色の導電性金属ペースト51は光Aを吸収するため、光Aのエネルギーにより熱が発生する。この発生した熱により、導電性金属ペースト51に含まれる溶剤等の成分が蒸発し、導電性金属ペースト51が乾燥する。
【0026】
上述した通り、LED発光装置31の発光部32が照射する光は、可視光線であることが好ましい。なお、この可視光線の波長は、360nm以上830nm以下である。また、発光部32が照射する光Aの波長は、400nm以上800nm以下であることがより好ましい。光Aが可視光線であることにより、光Aが導電性金属ペースト51に当たったときの熱の発生効率を良好とし、且つ光Aがフィルム状基材50に当たったときの熱の発生を抑制して、フィルム状基材50に熱による損傷が発生することを抑制することができ、発光部32が照射する光Aの波長は、400nm以上800nm以下であることにより、フィルム状基材50に熱による損傷が発生することをさらに抑制することができる。
【0027】
また、上述したとおり、LED発光装置31の発光部32と印刷面50aとの距離1mm以上50cm以下であることが好ましい。印刷物50bに光Aが照射されたときには、導電性金属ペースト51に含まれる成分が蒸発するとともに、導電性金属ペースト51に含まれる成分が急速に加熱されることにより飛散する場合がある。発光部32と印刷面50aとの距離が1mm以上であることにより、飛散又は蒸発した導電性金属ペースト51の成分が発光部32に付着して汚染することを抑制することができる。また、発光部32と印刷面50aとの距離が50cm以下であることにより、印刷面50aにおける照度を印刷物50bの導電性金属ペースト51を乾燥させるために十分な照度とすることができる。
【0028】
また、上述したとおり、LED発光装置31の発光部32の光Aの照射方向と印刷面50aとがなす角度Xが90度であることが好ましい。角度Xが90度であることにより、光Aの照射効率が良好となり、印刷面50aにおける照度を印刷物50bの導電性金属ペースト51を乾燥させるために十分な照度とすることができる。
【0029】
また、LED発光装置31の発光部32の各LEDは、直線上に配置されているため、発光部32の位置及び発光部32と印刷面50aとの距離によっては、印刷面50aの光Aの照度分布が大きくなり、印刷面50aの乾燥ムラが発生することがある。このような印刷面50aの乾燥ムラの発生により、導電性金属ペースト51が飛散する場合がある。
【0030】
一方、本実施の形態1では、LED発光装置31はフィルム状基材50に対して、角度Xと発光部32から印刷面50aまでの距離とが、印刷面50aにおける照度分布が極力均一になるように配置されている。さらに、LED発光装置31はフィルム状基材50に対して、好ましくは印刷面50aの各LEDが配置される方向における照度の最低値が最高値の70%以上100%未満になるように配置され、さらに好ましくは印刷面50aの各LEDが配置される方向における該照度の最低値が最高値の80%以上100%未満となるように配置される。これにより、印刷面50aの光Aの照度分布が低減されるため、印刷面50aに位置により乾燥ムラが生じることを抑制し、導電性金属ペーストの飛散を抑制することができる。
【0031】
また、上述したとおり、発光部32の鉛直方向下側の印刷面50aにおける照度は、5000000Lx以上であることが好ましい。すなわち、LED発光装置31から照射される光Aの強度及び波長、発光部32と印刷面50aとの距離、角度X等を適切に設定することにより、印刷面50aにおける照度は、5000000Lx以上にすることが好ましい。このように設定した場合には、LED発光装置31による光Aの照射時間を約10秒以下とし、照射回数を1回とすることにより、導電性金属ペースト51に十分な熱が生じ、導電性金属ペースト51を約10秒以内に乾燥させることができる。また、LED発光装置31の光Aの照射時間が約10秒以下であることにより、フィルム状基材50及び導電性金属ペースト51の熱による損傷の発生を低減することができる。
【0032】
また、LED発光装置31による光Aの照射時間はこれに限定されるものではなく、LED発光装置31から照射される光Aの強度及び波長、発光部32と印刷面50aとの距離、角度X、印刷対象物及び基材の種類等に基づいて適宜設定されるべきものである。
【0033】
なお、既知の従来技術においては、印刷物の印刷面に印刷されるインクを乾燥しやすくするために、印刷物を形成する工程の直前に印刷物に赤外線又はその他の光を照射して、予め印刷面を加熱しておくという方法を用いるものがあった。一方、本実施の形態1においては、LED発光装置31を用いて光Aを照射することにより、印刷物50bの印刷面50aを予め加熱することなく、常温の状態から乾燥部30により導電性金属ペースト51を乾燥させることができるため、印刷物を形成する工程の直前に印刷物を加熱する工程が不要であり、また別途印刷物を加熱する加熱手段を設ける必要がないという利点を有する。
【0034】
次に、フィルム状基材50は、矢印B方向に送られて光焼結部40に送られる。次に、図3に示すステップS4では光焼結部40(図1参照)が、印刷物50bの乾燥した導電性金属ペースト51を光焼結する。これにより、導電性金属ペースト51がフィルム状基材50に密着し、フィルム状基材50上の導体パターン52(図4参照)が安定した状態で形成される。次に、フィルム状基材50が図示しない切断装置により所定の長さに切断され、導体パターン52を有するフレキシブル基板が得られる。
【0035】
このように、本実施の形態1に係る印刷装置は、フィルム状基材50に、光エネルギーを吸収する導電性金属ペースト51を付着させて印刷物50bを形成する印刷部20と、印刷物50bにLED発光装置31の発する光Aを照射して、導電性金属ペースト51に光エネルギーを吸収させて導電性金属ペースト51を乾燥させる乾燥部30とを備えるため、短時間で印刷物を乾燥し、印刷物への熱による損傷を低減することができる。
【0036】
また、このように、本実施の形態1に係る印刷方法は、フィルム状基材50に、光エネルギーを吸収する導電性金属ペースト51を付着させて印刷物50bを形成するステップS2と、印刷物50bにLED発光装置31の発する光Aを照射して、導電性金属ペースト51に光エネルギーを吸収させて導電性金属ペースト51を乾燥するステップS3とを有するため、短時間で印刷物を乾燥し、印刷物への熱による損傷を低減することができる。
【0037】
また、本実施の形態1に係る印刷装置の光源はLED発光装置31であるため、印刷面50aにおいて十分な照度である光Aを印刷物に照射することができる。
【0038】
また、本実施の形態1において光Aを照射する際の光Aが可視光線であるため、光Aが導電性金属ペースト51に当たったときの熱の発生効率を良好とし、且つ光Aがフィルム状基材50に当たったときの熱の発生を抑制して、フィルム状基材50に熱による損傷が発生することを抑制することができる。
【0039】
また、本実施の形態1において光Aを照射する際の印刷物50bの印刷面50aにおける照度は、5000000Lx以上であるため、光Aの照射時間を短縮し、フィルム状基材50及び導電性金属ペースト51の熱による損傷の発生を低減することができる。
【0040】
また、LED発光装置31は複数の発光体を線上に配置した線状光源であって、光Aを照射する際の印刷物50bの印刷面50aにおける、LED発光装置31の各LEDが配置される方向の照度の最低値が最高値の70%以上100%未満であるため、印刷面50aに位置により乾燥ムラが生じることを抑制し、乾燥ムラによる導電性金属ペースト51の飛散を抑制することができる。
【0041】
また、印刷物50bを形成する工程における印刷物50bの印刷面の温度が5℃以上35℃以下であるため、印刷物を形成する工程の直前に印刷物を加熱する工程が不要である。
【0042】
また、本実施の形態1に係る印刷装置は乾燥された導電性金属ペースト51を光焼結する光焼結部40を有する。さらに、本実施の形態1に係る印刷方法は、導電性金属ペースト51を乾燥するステップS3の後に、導電性金属ペースト51を光焼結するステップS4を有する。このため、導電性金属ペースト51の乾燥及び光焼結を連続して短時間で行うことができる。
【0043】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1の図1図4の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。この実施の形態2は、実施の形態1に対して乾燥部30が気流発生装置を有するものである。
【0044】
図5は、実施の形態2の乾燥部30の内部を示す概略図である。乾燥部30には、気流発生装置60が設けられている。気流発生装置60は、連通管61により乾燥部30の内部に接続されている。連通管61の先端部は、LED発光装置31と印刷面50aとの間に指向されている。なお、気流発生装置60は、例えばファンにより気流を発生させる装置等の任意の気流発生装置を用いることができる。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0045】
次に、本実施の形態2の印刷装置の動作について説明する。図6は実施の形態2の印刷物の印刷方法を示すフローチャートである。ステップS2において導電性ペーストをフィルム状基材50に印刷した後、ステップS5において、図5に示す気流発生装置60が気流Cを発生させる。この気流Cは連通管61から送出され、LED発光装置31とフィルム状基材50との間を通過する。すなわち、気流発生装置60はLED発光装置31とフィルム状基材50との間に気流Cを生じさせる。
【0046】
このとき、気流Cとして流れる気体としてはフィルム状基材50及び導電性金属ペースト51に影響を及ぼしにくい気体であることが好ましく、例えば空気等の気体であることが好ましい。また、このとき気流Cとして流れるさらに好ましい気体としては、窒素、アルゴン及びヘリウム等の不活性ガスを例として挙げることができる。
【0047】
次に、ステップS3(図6参照)が行われ、フィルム状基材50の印刷物50bに光Aが照射される。印刷物50bに光Aが照射されているときに、気流Cが生じているため、導電性金属ペースト51が光Aによって加熱されて生じた蒸気が、気流CによりLED発光装置31とフィルム状基材50との間から排出される。また、気流Cにより光Aの照射後の印刷物50bの温度低下速度が向上するため、熱によるフィルム状基材50の損傷が低減される。次に、LED発光装置31による光Aの照射終了後に、気流発生装置60による気流Cの発生を停止する。その他の動作は実施の形態1と同じである。
【0048】
このように、本実施の形態2に係る印刷装置は、導電性金属ペースト51を乾燥させるときに、LED発光装置31と印刷物との間に気流を生じさせる気流発生装置60を有する。また、本実施の形態2に係る印刷方法は、導電性金属ペースト51を乾燥するステップS2においてLED発光装置31と印刷物との間に気流を生じさせるステップS5を有する。このため、導電性金属ペースト51が乾燥する際に生じる蒸気を速やかに排出してLED発光装置31の発光部32の汚染を防止することができる。
【0049】
なお、本実施の形態2の気流発生装置60は、連通管61により乾燥部30の内部に接続されていたが、気流発生装置60が乾燥部30の内部に設けられており連通管61を有さない構成であってもよい。
【0050】
次に、実施の形態1及び2の変形例について説明する。
実施の形態1及び2においては、発光部32の光Aの照射方向と、印刷面50aとがなす角度X(図2及び図5参照)が最も好ましい角度である90度となるようにLED発光装置31が配置されていたが、導電性金属ペースト51の溶剤を蒸発させるために、光Aが印刷面50aの印刷物50bを十分な照度で照射可能であれば、角度Xは90度以外の角度であってもよい。このとき、必要な印刷物50bにおける照度を確保するために、角度Xは30度以上150度以下であることが好ましい。これにより、印刷物50bの導電性金属ペースト51が蒸発したときの蒸気を効率的に周囲の空気中に拡散して、蒸気の滞留を防止することができる。
【0051】
また、実施の形態1及び2においては、発光部32の光Aの照射方向と、印刷面50aとがなす角度Xは一定であったが、光Aの照射中にLED発光装置31又は発光部32を移動又は回動させて角度Xを変動させてもよい。これにより、LED発光装置31又は発光部32の移動又は回動により印刷物50bの導電性金属ペースト51が蒸発したときの蒸気を効率的に周囲の空気中に拡散して、蒸気の滞留を防止することができる。
【0052】
また、実施の形態1及び2においては、乾燥部30の光源としてLED発光装置31を用いていたが、印刷面50aを十分な照度で照射可能であればLED発光装置31に代えて例えば水銀灯又はハロゲンランプにレンズ等を組み合わせた光源等の任意の光源を用いてもよい。
【0053】
また、実施の形態1及び2においては、LED発光装置31の発光部32の直下にフィルム状基材50の印刷物50bが位置したときに、LED発光装置31の発光部32から光Aが所定の時間だけ1回照射されていたが、この光Aの照射方法に限定されるものではない。例えば、LED発光装置31による光Aの照射回数を2回以上に分けて合計で所定の時間光Aを照射するようにしてもよいし、発光部32を点滅させてパルス状に光Aを照射してもよい。また、LED発光装置31が光Aを2回以上の照射回数で照射するときに、最初の照射では光Aの強度を小さくして2回目以降の光Aの強度を徐々に大きくしてもよいし、最初の照射では光Aの強度を大さくして2回目以降の光Aの強度を徐々に大きくしてもよい。これにより、光Aを所定の時間1回だけ照射する場合と比較して、導電性金属ペースト51の温度が急激に上昇することを抑制して、導電性金属ペースト51の成分が蒸発し又は飛散することにより印刷物50bの周囲が汚染されることを抑制することができる。
【0054】
また、実施の形態1及び2においては、印刷対象物として連続した長尺状のフィルム状基材50を用いていたがこれに限定されるものではなく、任意の印刷対象物を用いることができる。例えば、印刷対象物として連続した長尺状のフィルム状基材に代えて矩形状に裁断されたフィルム状基材を用いてもよいし、リジッド基板を用いてもよい。さらに、印刷対象物は、電子回路の基材に限定されるものではなく、他の一般的な用途に用いられる紙、フィルム、板状樹脂部材及びその他の形態の部材であってもよい。なお、実施の形態1及び2においては、フィルム状及び板状の印刷対象物を用いることが好ましい。
【0055】
また、実施の形態1及び2においては、送りローラ33により印刷対象物であるフィルム状基材50を図2及び図5に示す矢印B方向に搬送していたが、印刷対象物を固定し、LED発光装置31を移動することで印刷対象物上の印刷物の直上から光Aを照射してもよい。
【0056】
また、実施の形態1及び2においては、光焼結用亜酸化銅及び溶剤を含む黄褐色の導電性金属ペースト51を印刷部材として印刷していたが、印刷部材はこれに限定されるものではなく、印刷部材としては光Aを吸収して発熱し得る色を有する任意の印刷部材であればよい。例えば、印刷部材としては黒色、褐色、灰色、青色、赤色、緑色等及びそれらの色の暗色である導電性金属ペーストを用いることができる。また、導電性金属ペーストに含まれる金属は、銅、銀等の任意の導電性金属であってもよい。さらに、印刷部材は、導電性金属ペーストに限定されるものではなく、上記のような光Aを吸収して発熱し得る色であれば導電性ナノインクを用いてもよいし、電子回路を構成しうる導電性材料を含むものではなく一般的に印刷に用いられるペースト、インク、塗料及びその他の印刷部材を用いてもよい。
【0057】
また、実施の形態1及び2においては、発光部32と印刷面50aとの間は空間であったが、光Aが照射されたときの印刷面50aの照度を著しく低下させるものでなければ、発光部32と印刷面50aとの間に、透明ガラス、透明な樹脂製フィルム及びその他の透明な材料で形成されたカバーを設けてもよい。これにより、印刷物50bの導電性金属ペースト51が蒸発し飛散することにより発光部32に付着して汚染されることを抑制することができる。
【0058】
また、実施の形態1及び2においては、印刷部20は、フィルム状基材50に、導電性金属ペースト51をスクリーン印刷していたが、フィルム状基材50に対する印刷の種類としてはこれに限定されるものではなく、例えば、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷及びその他のペースト、インクを基材表面上に付着させることが可能なものを任意に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
20 印刷部、30 乾燥部、31 LED発光装置(光源)、40 光焼結部、50 フィルム状基材(印刷対象物)、50a 印刷面、50b 印刷物、51 導電性金属ペースト(印刷材料)、60 気流発生装置(気流発生部)、A 光、C 気流。
【要約】
【課題】短時間で印刷物を乾燥し、印刷物への熱による損傷を低減することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、フィルム状基材50に、光エネルギーを吸収する導電性金属ペースト51を付着させて印刷物50bを形成する印刷部20と、印刷物にLED発光装置31の発する光Aを照射して、印刷物50bの導電性金属ペースト51に光エネルギーを吸収させて導電性金属ペースト51を乾燥させる乾燥部30とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6