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特許7163523タービン動翼、タービン動翼組立体、ガスタービン及びガスタービンの補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】タービン動翼、タービン動翼組立体、ガスタービン及びガスタービンの補修方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/30 20060101AFI20221024BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20221024BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
F01D5/30
F01D25/00 X
F02C7/00 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022048817
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2022-04-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平田 憲史
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-079646(JP,A)
【文献】特開昭63-306208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0083114(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/30
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼形部と、
翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯を有する翼根部と、
を備え、
前記複数の歯は、前記翼高さ方向と交差する方向に延在していて前記翼高さ方向の最も基端側から順に位置する基端側第1歯、基端側第2歯、及び、基端側第3歯と、前記交差する方向に延在していて前記翼高さ方向の最も先端側から順に位置する先端側第1歯、及び、先端側第2歯とを含み、
前記基端側第1歯における前記先端側の歯面と前記基端側第2歯における前記先端側の歯面との間隔、又は、前記基端側第2歯における前記先端側の歯面と前記基端側第3歯における前記先端側の歯面との間隔の何れか一方は、前記先端側第1歯における前記先端側の歯面と前記先端側第2歯における前記先端側の歯面との間隔より大きく、
前記複数の歯の延在方向と直交する断面において、前記翼高さ方向で隣り合う歯の間に形成される歯底部同士を結ぶ直線を第1直線とし、
前記断面において、前記複数の歯のそれぞれにおける前記先端側の歯面の直線部を含む第2直線と前記第1直線との交点を第1交点とし、前記複数の歯のそれぞれにおける前記基端側の歯面の直線部を含む第3直線と前記第1直線との交点を第2交点としたときに、
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第2交点との距離は、前記基端側第1歯以外の前記歯における前記第1交点と前記第2交点との距離よりも大きい、
タービン動翼。
【請求項2】
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第2交点との距離は、前記基端側第2歯における前記第1交点と前記第2交点との距離の101%以上105%以下である、
請求項1に記載のタービン動翼。
【請求項3】
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第2交点との距離は、前記基端側第2歯における前記第1交点と前記第2交点との距離の102%以上104%以下である、
請求項2に記載のタービン動翼。
【請求項4】
前記断面において、前記複数の歯のそれぞれにおける、前記翼高さ方向と平行であって前記第1交点を通過する第4直線と、前記第3直線との交点を第3交点としたときに、
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第3交点との距離は、前記基端側第1歯以外の前記歯における前記第1交点と前記第3交点との距離よりも大きい、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のタービン動翼。
【請求項5】
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第3交点との距離は、前記基端側第2歯における前記第1交点と前記第3交点との距離の101%以上130%以下である、
請求項4に記載のタービン動翼。
【請求項6】
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第3交点との距離は、前記基端側第2歯における前記第1交点と前記第3交点との距離の105%以上110%以下である、
請求項5に記載のタービン動翼。
【請求項7】
前記断面において、前記複数の歯のそれぞれにおける、前記翼高さ方向と平行であって前記第1交点を通過する第4直線と、前記翼高さ方向と直交していて前記第2交点を通過する第5直線との交点を第4交点としたときに、
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第4交点との距離は、前記基端側第1歯以外の前記歯における前記第1交点と前記第4交点との距離よりも大きい、
請求項1乃至6の何れか一項に記載のタービン動翼。
【請求項8】
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第4交点との距離は、前記基端側第2歯における前記第1交点と前記第4交点との距離の100.5%以上110%以下である、
請求項7に記載のタービン動翼。
【請求項9】
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第4交点との距離は、前記基端側第2歯における前記第1交点と前記第4交点との距離の100.5%以上105%以下である、
請求項8に記載のタービン動翼。
【請求項10】
前記基端側第1歯は、前記断面において前記基端側第1歯の歯先部に形成された歯先直線部を有し、
前記歯先直線部と前記先端側の歯面の直線部とは、前記断面において曲線で接続され、
前記歯先直線部と前記基端側の歯面の直線部とは、前記断面において曲線で接続されている、
請求項1乃至9の何れか一項に記載のタービン動翼。
【請求項11】
前記翼根部の前記基端側の端面は、前記断面において、前記翼高さ方向に直交する底部直線部を有し、
前記基端側の端面と、前記翼高さ方向と平行であって前記基端側第1歯の前記第1交点を通過する第4直線との第5交点は、前記底部直線部上に存在する、
請求項1乃至10の何れか一項に記載のタービン動翼。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載のタービン動翼と、
前記タービン動翼の前記翼根部と係合可能な翼溝部を有するロータディスクと、
を備え、
前記翼溝部は、前記基端側第1歯と係合可能な基端側第1翼溝、前記基端側第2歯と係合可能な基端側第2翼溝、前記基端側第3歯と係合可能な基端側第3翼溝、前記先端側第1歯と係合可能な先端側第1翼溝、及び、前記先端側第2歯と係合可能な先端側第2翼溝を有し、
前記先端側第1歯の前記先端側の歯面と前記先端側第1翼溝とを密着させたときに、少なくとも前記基端側第1歯の前記先端側の歯面と前記基端側第1翼溝との間に第1隙間が形成される、
タービン動翼組立体。
【請求項13】
前記先端側第1歯の前記先端側の歯面と前記先端側第1翼溝とを密着させたときに、前記基端側第2歯の前記先端側の歯面と前記基端側第2翼溝との間に第2隙間が形成される、
請求項12に記載のタービン動翼組立体。
【請求項14】
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第2交点との距離は、前記第1隙間の820倍以上830倍以下である、
請求項12又は13に記載のタービン動翼組立体。
【請求項15】
翼形部と翼根部とを有する複数のタービン動翼と、
前記翼根部と係合可能な複数の翼溝部を有するロータディスクと、
を備え、
前記複数のタービン動翼の少なくとも一つは、請求項1乃至11の何れか一項に記載のタービン動翼である、
ガスタービン。
【請求項16】
翼形部と翼根部とを有する複数のタービン動翼と、前記翼根部と係合可能な複数の翼溝部を有するロータディスクと、を備えるガスタービンの補修方法であって、
前記ロータディスクに取り付けられている前記複数のタービン動翼の少なくとも一つを請求項1乃至11の何れか一項に記載のタービン動翼と置き換える工程を備える、
ガスタービンの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービン動翼、タービン動翼組立体、ガスタービン及びガスタービンの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガスタービン等のタービンに用いられるタービン動翼の翼根部は、翼形部から伝達される遠心荷重に起因する遠心応力や、プラットフォームとの温度差に起因する熱応力が繰り返し作用する部位であり、また、応力集中部である。このことから、タービン動翼の疲労寿命低下を抑制するために、翼根部における応力を低減するための工夫がなされている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-131061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯を有する翼根部では、歯毎に応力が異なる場合がある。例えば翼高さ方向の最も基端側の歯の応力がその他の歯よりも大きくなる場合がある。この場合、最も基端側の歯の厚さを大きくすれば、当該歯の強度が大きくなって応力は小さくなるが、当該歯と当接するロータディスクの翼溝を形成する部位の応力が大きくなるという副作用が生じてしまう。そのため、当該歯の厚さを大きくすることで当該歯の応力を小さくする場合には、当該部位の応力の抑制についても考慮する必要がある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、副作用を抑制しつつタービン動翼の翼根部における応力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン動翼は、
翼形部と、
翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯を有する翼根部と、
を備え、
前記複数の歯は、前記翼高さ方向と交差する方向に延在していて前記翼高さ方向の最も基端側から順に位置する基端側第1歯、基端側第2歯、及び、基端側第3歯と、前記交差する方向に延在していて前記翼高さ方向の最も先端側から順に位置する先端側第1歯、及び、先端側第2歯とを含み、
前記基端側第1歯と前記基端側第2歯との間隔、又は、前記基端側第2歯と前記基端側第3歯との間隔の何れか一方は、前記先端側第1歯と前記先端側第2歯との間隔より大きく、
前記複数の歯の延在方向と直交する断面において、前記翼高さ方向で隣り合う歯の間に形成される歯底部同士を結ぶ直線を第1直線とし、
前記断面において、前記複数の歯のそれぞれにおける前記先端側の歯面の直線部を含む第2直線と前記第1直線との交点を第1交点とし、前記複数の歯のそれぞれにおける前記基端側の歯面の直線部を含む第3直線と前記第1直線との交点を第2交点としたときに、
前記基端側第1歯における前記第1交点と前記第2交点との距離は、前記基端側第1歯以外の前記歯における前記第1交点と前記第2交点との距離よりも大きい。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン動翼組立体は、
上記(1)の構成のタービン動翼と、
前記タービン動翼の前記翼根部と係合可能な翼溝部を有するロータディスクと、
を備え、
前記翼溝部は、前記基端側第1歯と係合可能な基端側第1翼溝、前記基端側第2歯と係合可能な基端側第2翼溝、前記基端側第3歯と係合可能な基端側第3翼溝、前記先端側第1歯と係合可能な先端側第1翼溝、及び、前記先端側第2歯と係合可能な先端側第2翼溝を有し、
前記先端側第1歯の前記先端側の歯面と前記先端側第1翼溝とを密着させたときに、少なくとも前記基端側第1歯の前記先端側の歯面と前記基端側第1翼溝との間に第1隙間が形成される。
【0008】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
翼形部と翼根部とを有する複数のタービン動翼と、
前記翼根部と係合可能な複数の翼溝部を有するロータディスクと、
を備え、
前記複数のタービン動翼の少なくとも一つは、上記(1)の構成のタービン動翼である。
【0009】
(4)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの補修方法は、
翼形部と翼根部とを有する複数のタービン動翼と、前記翼根部と係合可能な複数の翼溝部を有するロータディスクと、を備えるガスタービンの補修方法であって、
前記ロータディスクに取り付けられている前記複数のタービン動翼の少なくとも一つを上記(1)の構成のタービン動翼と置き換える工程を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、副作用を抑制しつつタービン動翼の翼根部における応力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るガスタービンの概略構成図である。
図2】一実施形態に係るタービン動翼を、前縁から後縁に向かう方向(コード方向)に視た図である。
図3図2に示すタービン動翼を、負圧面から圧力面に向かう方向(ロータ周方向)に見た模式図である。
図4図3のA-A断面を示す図である。
図5図2における各歯と各溝との係合部分を拡大した模式的な図である。
図6図2における各歯と各溝との係合部分を拡大した模式的な図である。
図7図2における各歯と各溝との係合部分を拡大した模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
(ガスタービン1の全体構成について)
最初に、一実施形態に係るタービン動翼が適用されるガスタービンの構成について、図1を参照して説明する。図1は、一実施形態に係るガスタービン1の概略構成図である。
【0014】
図1に示すように、一実施形態に係るガスタービン1は、圧縮空気を生成するための圧縮機2と、圧縮空気及び燃料を用いて燃焼ガスを発生させるための燃焼器4と、燃焼ガスによって回転駆動されるように構成されたタービン6と、を備える。発電用のガスタービン1の場合、タービン6には不図示の発電機が連結され、タービン6の回転エネルギーによって発電が行われるように構成されている。
【0015】
図1に示すガスタービン1では、圧縮機2は、中心軸AXを中心に回転可能なロータ30と、ロータ30の周囲に配置されるステータ5とを備えている。
【0016】
ステータ5は、圧縮機車室(ケーシング)10と、圧縮機車室10側に固定された複数の圧縮機静翼16とを有する。
ロータ30は、中心軸AXを中心に回転可能なロータシャフト8と、ロータシャフト8に固定された複数のロータディスク31と、複数のロータディスク31のそれぞれに取り付けられた複数の圧縮機動翼18とを有する。
ロータシャフト8は、圧縮機車室10及び後述するタービン車室22を共に貫通するように設けられている。
【0017】
圧縮機動翼18は、複数のロータディスク31のそれぞれの外周部において中心軸AXの周方向に複数配置される。また、ロータディスク31は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。したがって、圧縮機動翼18は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。
【0018】
圧縮機静翼16は、中心軸AXの周方向に複数配置される。また、圧縮機静翼16は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。圧縮機静翼16は、中心軸AXと平行な方向に関して圧縮機動翼18の間に配置されるように複数段配置される。
【0019】
また、図1に示すガスタービン1では、圧縮機2は、圧縮機車室10の入口側に設けられ、空気を取り込むための空気取入口12と、空気取入口12側に設けられた入口案内翼14とを備えている。なお、圧縮機2は、不図示の抽気室等の他の構成要素を備えていてもよい。このような圧縮機2において、空気取入口12から取り込まれた空気は、複数の圧縮機静翼16及び複数の圧縮機動翼18を通過して圧縮されることで圧縮空気が生成される。そして、圧縮空気は圧縮機2から下流側の燃焼器4に送られる。
【0020】
図1に示すガスタービン1では、燃焼器4は、ケーシング(燃焼器車室)20内に配置される。図1に示すように、燃焼器4は、ケーシング20内にロータシャフト8を中心として環状に複数配置されていてもよい。燃焼器4には燃料と圧縮機2で生成された圧縮空気とが供給され、燃料を燃焼させることによって、タービン6の作動流体である高温高圧の燃焼ガスを発生させる。そして、燃焼ガスは燃焼器4から後段のタービン6に送られる。
【0021】
図1に示すガスタービン1では、タービン6は、中心軸AXを中心に回転可能なロータ33と、ロータ33の周囲に配置されるステータ7とを備えている。
ステータ7は、タービン車室(ケーシング)22と、タービン車室22側に固定された複数のタービン静翼26とを有する。
【0022】
ロータ33は、上述したロータシャフト8と、ロータシャフト8に固定された複数のロータディスク35と、複数のロータディスク35のそれぞれに取り付けられた複数のタービン動翼24とを有する。
【0023】
タービン動翼24は、複数のロータディスク35のそれぞれの外周部において中心軸AXの周方向に複数配置される。また、ロータディスク35は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。したがって、タービン動翼24は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。
【0024】
タービン静翼26は、中心軸AXの周方向に複数配置される。また、タービン静翼26は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。タービン静翼26は、中心軸AXと平行な方向に関してタービン動翼24の間に配置されるように複数段配置される。
【0025】
なお、タービン6では、ロータシャフト8は、軸方向(図1における左右方向)に延在し、燃焼ガスは、燃焼器4側から排気車室28側(図1における左側から右側)に向かって流れる。したがって、図1では、図示左側が軸方向上流側であり、図示右側が軸方向下流側である。また、以下の説明では、単に軸方向と記載した場合、中心軸AXと平行な方向を表し、単に径方向と記載した場合、中心軸AXを中心とする径方向を表すものとする。以下の説明では、ロータの周方向、又は単に周方向と記載した場合、中心軸AXを中心とする周方向を表すものとする。
【0026】
タービン動翼24は、タービン静翼26とともにタービン車室22内を流れる高温高圧の燃焼ガスから回転駆動力を発生させるように構成される。この回転駆動力がロータシャフト8に伝達されることで、ロータシャフト8に連結された不図示の発電機が駆動される。
【0027】
タービン車室22の軸方向下流側には、排気車室28を介して排気室29が連結されている。タービン6を駆動した後の燃焼ガスは、排気車室28及び排気室29を通って外部へ排出される。
【0028】
(タービン動翼24の構成)
次に、一実施形態に係るタービン動翼24について説明する。以下の説明では、一実施形態に係るタービン動翼24として、ガスタービン1のタービン6のタービン動翼24について説明するが、他の実施形態では、タービン動翼は、蒸気タービンのタービン動翼であってもよい。
【0029】
図2は、一実施形態に係るタービン動翼24を、前縁から後縁に向かう方向(コード方向)に視た図であり、図3は、図2に示すタービン動翼24を、負圧面から圧力面に向かう方向(ロータ周方向)に見た模式図であり、図4は、図3のA-A断面を示す図である。なお、図2は、タービン6のロータディスク35とともに、タービン動翼24が図示されている。
【0030】
図2図4に示すように、一実施形態に係るタービン動翼24は、プラットフォーム42と、プラットフォーム42を挟んで翼高さ方向(スパン方向とも呼ぶ)において互いに反対側に位置する翼形部44及び翼根部50と、プラットフォーム42と翼根部50との間に位置するシャンク60と、を備えている。翼形部44、プラットフォーム42、翼根部50及びシャンク60は、鋳造等により一体的に構成されていてもよい。
なお、タービン動翼24がロータディスク35に取り付けられた状態では、タービン動翼24の翼高さ方向は、径方向と一致する。以下の説明では、翼高さ方向における先端側は、タービン動翼24がロータディスク35に取り付けられたときの径方向外側であり、翼高さ方向における基端側は、タービン動翼24がロータディスク35に取り付けられたときの径方向内側であるものとする。また、以下の説明では、翼高さ方向における先端側を単に先端側とも称し、翼高さ方向における基端側を単に基端側とも称する。
【0031】
翼形部44は、ロータディスク35に対して翼高さ方向に延在するように設けられている。翼形部44は、翼高さ方向に沿って延びる前縁46及び後縁48を有するとともに、前縁46と後縁48との間において延在する圧力面41及び負圧面43を有する。図4に示すように、翼形部44の内部には中空部34が形成されていてもよい。中空部34は、翼形部44を冷却するための冷却流体が流通する冷却通路として機能してもよい。
【0032】
図2に示すように、タービン6において、翼根部50は、ロータディスク35に設けられた翼溝部37に係合されている。このようにして、タービン動翼24は、タービン6のロータディスク35に植設され、中心軸AXを中心にロータディスク35とともに回転するようになっている。
【0033】
(翼根部50)
一実施形態に係るタービン動翼24では、翼根部50は、翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯51を有する。複数の歯51は、それぞれ翼高さ方向と交差する方向である翼根部50の延在方向に延在していて、歯先部51aが翼根部50の幅方向に突出している。
なお、本明細書において、翼根部50の「幅方向」とは、翼形部44の圧力面41側から負圧面43側に(又は負圧面43側から圧力面41側に)タービン動翼24を横切る方向をいう。翼根部50の幅方向はロータ33の周方向に相当する。
【0034】
一実施形態に係るタービン動翼24では、翼高さ方向の位置が異なる例えば5つの歯51が翼根部50の幅方向の一方側と他方側とに形成されている。翼高さ方向の位置が異なる5つの歯51は、先端側から順に第1歯511、第2歯512、第3歯513、第4歯514、及び、第5歯515である。
複数の歯51の位置は、翼高さ方向の先端側から基端側に向かうにつれて、翼根部50の幅方向の中心に近づく。
【0035】
なお、第1歯511は、先端側第1歯とも称し、第2歯512は、先端側第2歯とも称する。また、第5歯515は、基端側第1歯とも称し、第4歯514は、基端側第2歯とも称し、第3歯513は、基端側第3歯とも称する。
【0036】
ロータディスク35に設けられた翼溝部37には、翼高さ方向の位置が異なる5つの歯51のそれぞれと係合する5つの翼溝38が翼根部50を挟んで翼根部50の幅方向の一方側と他方側のそれぞれに形成されている。5つの翼溝38の内、第1歯511と係合する翼溝38は、第1翼溝381であり、第2歯512と係合する翼溝38は、第2翼溝382であり、第3歯513と係合する翼溝38は、第3翼溝383である。第4歯514と係合する翼溝38は、第4翼溝384であり、第5歯515と係合する翼溝38は、第5翼溝385である。
【0037】
なお、第1翼溝381は、先端側第1翼溝とも称し、第2翼溝382は、先端側第2翼溝とも称する。また、第5翼溝385は、基端側第1翼溝とも称し、第4翼溝384は、基端側第2翼溝とも称し、第3翼溝383は、基端側第3翼溝とも称する。
【0038】
一実施形態に係るタービン動翼24では、翼根部50は、ベアリング面54を有している。ベアリング面54は、それぞれの歯51の表面のうち、ロータディスク35が回転してタービン動翼24に遠心力が作用しているときに、ロータディスク35の各翼溝38の表面と接触する部分である。すなわち、ベアリング面54は、翼高さ方向において、翼根部50から翼形部44に向かう方向を向いた面(すなわち、径方向外側を向いた面)である。
【0039】
図4に示すように、翼根部50は、軸方向に対して傾斜して延在していてもよい。すなわち、タービン動翼24の翼根部50は、ロータディスク35において軸方向に対して傾斜して設けられる翼溝部37に挿入されるようになっていてもよい。
【0040】
タービン動翼24の翼根部50は、翼形部44から伝達される遠心荷重に起因する遠心応力や、プラットフォーム42との温度差に起因する熱応力が繰り返し作用する。翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯51を有する翼根部50では、歯51毎に応力が異なる場合がある。例えば翼高さ方向の最も基端側の歯51(第5歯515)の応力がその他の歯51よりも大きくなる場合がある。この場合、最も基端側の歯(第5歯515)の厚さを大きくすれば、当該歯(第5歯515)の強度が大きくなって応力は小さくなるが、当該歯(第5歯515)と当接するロータディスク35の翼溝38(第5翼溝385)を形成する部位の応力が大きくなるという副作用が生じてしまう。そのため、当該歯(第5歯515)の厚さを大きくすることで当該歯(第5歯515)の応力を小さくする場合には、当該部位の応力の抑制についても考慮する必要がある。
【0041】
そこで、一実施形態に係るタービン動翼24では、第5歯515の応力の低減と、ロータディスク35において第5翼溝385を形成する部位の応力の抑制とを両立するという本願の目的を達成するために、各歯51の形状を以下のようにしている。
【0042】
図5は、図2における各歯51と各翼溝38との係合部分を拡大した模式的な図である。
一実施形態に係るタービン動翼24では、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34の何れか一方は、先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より大きい。
【0043】
ここで、先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12は、第1歯511における先端側の歯面511a、すなわち第1歯511のベアリング面54と、第2歯512における先端側の歯面512a、すなわち第2歯512のベアリング面54との距離とする。
【0044】
同様に、先端側第2歯(第2歯512)と先端側第3歯(第3歯513)との間隔I23は、第2歯512における先端側の歯面512a、すなわち第2歯512のベアリング面54と、第3歯513における先端側の歯面513a、すなわち第3歯513のベアリング面54との距離とする。
基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45は、第5歯515における先端側の歯面515a、すなわち第5歯515のベアリング面54と、第4歯514における先端側の歯面514a、すなわち第4歯514のベアリング面54との距離とする。
基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34は、第4歯514における先端側の歯面514a、すなわち第4歯514のベアリング面54と、第3歯513における先端側の歯面513a、すなわち第3歯513のベアリング面54との距離とする。
【0045】
複数の歯51の延在方向と直交する断面、すなわち図5に示した模式的な断面において、翼高さ方向で隣り合う歯51の間に形成される歯底部53同士を結ぶ直線を第1直線L1とする。
上記断面において、複数の歯51のそれぞれにおける先端側の歯面52の直線部52aを含む第2直線L2と第1直線L1との交点を第1交点P1とする。
複数の歯51のそれぞれにおける基端側の歯面55の直線部55aを含む第3直線L3と第1直線L1との交点を第2交点P2とする。
なお、一実施形態に係るタービン動翼24では、隣り合う2つの歯底部53同士を結ぶ直線は、全て第1直線L1と一致するように各歯51の形状を設定している。これにより、各歯51における荷重分担を適切にすることが可能となる。
【0046】
一実施形態に係るタービン動翼24では、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における第1交点P1と第2交点P2との距離A、A、A、Aよりも大きい。
なお、第1歯511における第1交点P1と第2交点P2との距離Aとし、第2歯512における第1交点P1と第2交点P2との距離Aとし、第3歯513における第1交点P1と第2交点P2との距離Aとし、第4歯514における第1交点P1と第2交点P2との距離Aとする。
【0047】
一実施形態に係るタービン動翼24によれば、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aが基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における第1交点P1と第2交点P2との距離A、A、A、Aよりも大きいので、基端側第1歯(第5歯515)の厚さは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きい。これにより、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0048】
タービン動翼24の翼根部50と係合可能な翼溝部37を有するロータディスク35は、翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯51のぞれぞれと係合可能な複数の翼溝38を有する。ロータディスク35において翼高さ方向(ロータディスク35の径方向)で隣り合う翼溝38同士の間隔は、一般的なロータディスクでは、ロータディスクの径方向で隣り合う任意の2つの翼溝において同じ間隔となる。
なお、ロータディスク35の径方向で隣り合う翼溝38同士の間隔は、例えば翼溝38において各歯51のベアリング面54と対向する面同士の間隔であるものとする。一実施形態に係るタービン6では、ロータディスク35の径方向で隣り合う翼溝38同士の間隔は、ロータディスク35の径方向で隣り合う任意の2つの翼溝38において同じ間隔である。
【0049】
そのため、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45が先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より大きいと、ロータディスク35の回転速度が十分に小さい場合には、先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1歯(第1歯511)が係合する翼溝38(第1翼溝381)とを密着させたときに、基端側第1歯(第5歯515)の先端側の歯面515aと基端側第1歯(第5歯515)が係合する翼溝38(第5翼溝385)との間に隙間gが形成される。
また、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34が先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より大きいと、ロータディスク35の回転速度が十分に小さい場合には、先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1歯(第1歯511)が係合する翼溝38(第1翼溝381)とを密着させたときに、基端側第1歯(第5歯515)の先端側の歯面515aと基端側第1歯(第5歯515)が係合する翼溝38(第5翼溝385)との間、及び、基端側第2歯(第4歯514)の先端側の歯面514aと基端側第2歯(第4歯514)が係合する翼溝38(第4翼溝384)との間に隙間gが形成される。
【0050】
なお、図5に示した例では、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34が先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より大きい。図5に示した例では、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45は、先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12と等しい。図5に示した例では、先端側第2歯(第2歯512)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I23は、先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12と等しい。
【0051】
したがって、一実施形態に係るタービン動翼24が一般的なロータディスクと同様の構成を有するロータディスク35に取り付けられた場合、ロータディスク35の回転速度が十分に小さい場合には、先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1歯(第1歯511)が係合する翼溝38(第1翼溝381)とを密着させたときに、基端側第1歯(第5歯515)の先端側の歯面515aと基端側第1歯(第5歯515)が係合する翼溝38(第5翼溝385)との間に隙間gが形成される。そのため、一実施形態に係るタービン動翼24によれば、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、及び、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34の何れもが先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12と等しい場合と比べて、翼形部44から伝達される遠心荷重に起因する遠心応力を受けたときに基端側第1歯(第5歯515)と当接するロータディスク35の翼溝38(第5翼溝385)を形成する部位の応力、及び、基端側第1歯(第5歯515)における応力を低減できる。
よって、一実施形態に係るタービン動翼24によれば、基端側第1歯(第5歯515)の厚さを基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きくして、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。また、一実施形態に係るタービン動翼24によれば、基端側第1歯(第5歯515)の厚さを基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きくすることによる上述した副作用を抑制できる。
【0052】
一実施形態に係るタービン動翼24では、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aの101%以上105%以下であるとよい。
【0053】
上述したように、最も基端側の歯51(第5歯515)の厚さを大きくすれば、当該歯(第5歯515)の強度が大きくなって応力は小さくなるが、当該歯(第5歯515)と当接するロータディスク35の翼溝38(第5翼溝385)を形成する部位の応力が大きくなるという副作用が生じてしまう。上述したように、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34の何れか一方を先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より大きくすることで、上述した副作用を抑制できる。しかし、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34の何れか一方を先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より過度に大きくすると、基端側第1歯(第5歯515)又は基端側第2歯(第4歯514)よりも先端側の歯51と係合可能な翼溝38を形成する部位の応力が大きくなるという別の副作用が生じてしまう。
【0054】
発明者らが鋭意検討した結果、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aが基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aの101%以上105%以下であると、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34を適宜設定することで上述した副作用及び上述した別の副作用を抑制できることが判明した。
これにより、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0055】
一実施形態に係るタービン動翼24では、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aの102%以上104%以下であるとよい。
【0056】
発明者らが鋭意検討した結果、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aが基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aの102%以上104%以下であると、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34を適宜設定することで上述した別の副作用をさらに抑制できることが判明した。
これにより、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることをさらに抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0057】
図6は、図2における各歯51と各翼溝38との係合部分を拡大した模式的な図であり、各歯51だけを図示している。
一実施形態に係るタービン動翼24では、複数の歯51の延在方向と直交する断面、すなわち図6に示した模式的な断面において、複数の歯51のそれぞれにおける、翼高さ方向と平行であって第1交点P1を通過する第4直線L4と、第3直線L3との交点を第3交点P3としたときに、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3の距離Bは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における第1交点P1と第3交点P3との距離B、B、B、Bよりも大きいとよい。
なお、第1歯511における第1交点P1と第3交点P3との距離Bとし、第2歯512における第1交点P1と第3交点P3との距離Bとし、第3歯513における第1交点P1と第3交点P3との距離Bとし、第4歯514における第1交点P1と第3交点P3との距離Bとする。
【0058】
翼形部44から伝達される遠心荷重に起因する遠心応力を受けると、複数の歯51のそれぞれは、ロータディスク35から翼高さ方向に沿って、すなわち第4直線L4の延在方向に力を受ける。そのため、複数の歯51のそれぞれにおいて、第1交点P1と第3交点P3との距離B、B、B、B、Bは歯51の強度に密接に関連する。
一実施形態に係るタービン動翼24によれば、基端側第1歯(第5歯515)における強度が基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における強度よりも大きくなるので、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0059】
一実施形態に係るタービン動翼24では、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bの101%以上130%以下であるとよい。
【0060】
上述したように、最も基端側の歯(第5歯515)の強度を大きくすれば当該歯(第5歯515)の応力は小さくなるが、当該歯(第5歯515)と当接するロータディスク35の翼溝38(第5翼溝385)を形成する部位の応力が大きくなるという副作用が生じてしまう。上述したように、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34の何れか一方を先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より大きくすることで、この副作用を抑制できる。しかし、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34の何れか一方を先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より過度に大きくすると、基端側第1歯(第5歯515)又は基端側第2歯(第4歯514)よりも先端側の歯51と係合可能な翼溝38を形成する部位の応力が大きくなるという別の副作用が生じてしまう。
【0061】
発明者らが鋭意検討した結果、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bが基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bの101%以上130%以下であると、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34を適宜設定することで上述した副作用及び上述した別の副作用を抑制できることが判明した。
これにより、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0062】
一実施形態に係るタービン動翼24では、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bの105%以上110%以下であるとよい。
【0063】
発明者らが鋭意検討した結果、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bが基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bの105%以上110%以下であると、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34を適宜設定することで上述した別の副作用をさらに抑制できることが判明した。
これにより、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることをさらに抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0064】
図7は、図2における各歯51と各翼溝38との係合部分を拡大した模式的な図であり、各歯51だけを図示している。
一実施形態に係るタービン動翼24では、複数の歯51の延在方向と直交する断面、すなわち図7に示した模式的な断面において、複数の歯51のそれぞれにおける、翼高さ方向と平行であって第1交点P1を通過する第4直線L4と、翼高さ方向と直交していて第2交点P2を通過する第5直線L5との交点を第4交点P4としたときに、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における第1交点P1と第4交点P4との距離C、C、C、Cよりも大きいとよい。
なお、第1歯511における第1交点P1と第4交点P4との距離Cとし、第2歯512における第1交点P1と第4交点P4との距離Cとし、第3歯513における第1交点P1と第4交点P4との距離Cとし、第4歯514における第1交点P1と第4交点P4との距離Cとする。
【0065】
複数の歯51のそれぞれにおいて、第1交点P1と第4交点P4との距離C、C、C、C、Cは、第1交点P1と第2交点P2との距離A、A、A、A、Aの翼高さ方向の成分に相当する。したがって、上述したように基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aが基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における第1交点P1と第2交点P2との距離A、A、A、Aよりも大きければ、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における第1交P1点と第4交点P4との距離C、C、C、Cよりも大きくなる。
これにより、基端側第1歯(第5歯515)の厚さが基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きくなるので、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0066】
一実施形態に係るタービン動翼24では、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cの100.5%以上110%以下であるとよい。
【0067】
上述したように、最も基端側の歯(第5歯515)の強度を大きくすれば当該歯(第5歯515)の応力は小さくなるが、当該歯(第5歯515)と当接するロータディスク35の翼溝38(第5翼溝385)を形成する部位の応力が大きくなるという副作用が生じてしまう。上述したように、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34の何れか一方を先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より大きくすることで、この副作用を抑制できる。しかし、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34の何れか一方を先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より過度に大きくすると、基端側第1歯(第5歯515)又は基端側第2歯(第4歯514)よりも先端側の歯51と係合可能な翼溝38を形成する部位の応力が大きくなるという別の副作用が生じてしまう。
【0068】
発明者らが鋭意検討した結果、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cが基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cの100.5%以上110%以下であると、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34を適宜設定することで上述した副作用及び上述した別の副作用を抑制できることが判明した。
これにより、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0069】
一実施形態に係るタービン動翼24では、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cの100.5%以上105%以下であるとよい。
【0070】
発明者らが鋭意検討した結果、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cが基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cの100.5%以上105%以下であると、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34を適宜設定することで上述した別の副作用をさらに抑制できることが判明した。
これにより、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることをさらに抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0071】
一実施形態に係るタービン動翼24では、基端側第1歯(第5歯515)は、複数の歯51の延在方向と直交する断面、すなわち図5乃至図7に示した模式的な断面において基端側第1歯(第5歯515)の歯先部51aに形成された歯先直線部515cを有するとよい。歯先直線部515cと先端側の歯面515aの直線部52aとは、上記断面において曲線515dで接続されているとよい。歯先直線部515cと基端側の歯面55の直線部55aとは、上記断面において曲線515eで接続されているとよい。
【0072】
これにより、上記断面において基端側第1歯(第5歯515)の歯先部51aが他の歯51よりも不必要に突出してしまうことを回避できる。
【0073】
一実施形態に係るタービン動翼24では、翼根部50の基端側の端面50aは、上記断面において、翼高さ方向に直交する底部直線部50bを有するとよい。基端側の端面50aと、翼高さ方向と平行であって基端側第1歯(第5歯515)の第1交点P1を通過する第4直線L4との第5交点P5は、底部直線部50b上に存在するとよい。
【0074】
これにより、上記断面において、基端側第1歯(第5歯515)の歯先部51aと底部直線部50bとを接続する曲線515e上に第5交点P5が存在する場合と比べて、基端側第1歯(第5歯515)の第1交点P1と第5交点P5との距離が大きくなる。これにより、基端側第1歯(第5歯515)の歯先部51aと底部直線部50bとを接続する曲線515e上に第5交点P5が存在する場合と比べて、基端側第1歯(第5歯515)の歯の厚さを大きくすることができる。
【0075】
本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン動翼組立体90(図2参照)は、一実施形態に係るタービン動翼24と、タービン動翼24の翼根部50と係合可能な翼溝部37を有するロータディスク35と、を備える。翼溝部37は、基端側第1歯(第5歯515)と係合可能な基端側第1翼溝(第5翼溝385)、基端側第2歯(第4歯514)と係合可能な基端側第2翼溝(第4翼溝384)、基端側第3歯(第3歯513)と係合可能な基端側第3翼溝(第3翼溝383)、先端側第1歯(第1歯511)と係合可能な先端側第1翼溝(第1翼溝381)、及び、先端側第2歯(第2歯512)と係合可能な先端側第2翼溝(第2翼溝382)を有する。先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1翼溝(第1翼溝381)とを密着させたときに、少なくとも基端側第1歯(第5歯515)の先端側の歯面515aと基端側第1翼溝(第5翼溝385)との間に第1隙間g1が形成される。
【0076】
基端側第1歯(第5歯515)の厚さは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きいので、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1翼溝(第1翼溝381)とを密着させたときに、少なくとも基端側第1歯(第5歯515)の先端側の歯面515aと基端側第1翼溝(第5翼溝385)との間に第1隙間g1が形成されるので、翼形部44から伝達される遠心荷重に起因する遠心応力を受けたときに基端側第1翼溝(第5翼溝385)を形成する部位の応力、及び、基端側第1歯(第5歯515)における応力を低減できる。
よって、基端側第1歯(第5歯515)の厚さを基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きくすることによる上述した副作用を抑制できる。
【0077】
一実施形態に係るタービン動翼組立体90では、先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1翼溝(第1翼溝381)とを密着させたときに、基端側第2歯(第4歯514)の先端側の歯面514aと基端側第2翼溝(第4翼溝384)との間に第2隙間g2が形成されるようにしてもよい。
【0078】
これにより、基端側第2翼溝(第4翼溝384)を形成する部位の応力、及び、基端側第2歯(第4歯514)における応力を低減できる。
【0079】
一実施形態に係るタービン動翼組立体90では、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aは、第1隙間g1の820倍以上830倍以下であるとよい。
【0080】
発明者らが鋭意検討した結果、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aが第1隙間g1の820倍以上830倍以下となるように、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離A、及び、第1隙間g1を設定することで、上述した副作用及び上述した別の副作用を抑制できることが判明した。
これにより、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0081】
一実施形態に係るタービン動翼組立体90では、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bは、第1隙間g1の770倍以上820倍以下であるとよい。
【0082】
発明者らが鋭意検討した結果、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bが第1隙間g1の770倍以上820倍以下となるように、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3との距離B、及び、第1隙間g1を設定することで、上述した副作用及び上述した別の副作用を抑制できることが判明した。
これにより、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0083】
一実施形態に係るガスタービン1は、翼形部44と翼根部50とを有する複数のタービン動翼24と、翼根部50と係合可能な複数の翼溝部37を有するロータディスク35と、を備える。複数のタービン動翼24の少なくとも一つは、上述した一実施形態に係るタービン動翼24である。
これにより、ロータディスク35及びタービン動翼24の耐久性を向上できる。
【0084】
(ガスタービンの補修方法について)
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの補修方法は、翼形部44と翼根部50とを有する複数のタービン動翼24と、翼根部50と係合可能な複数の翼溝部37を有するロータディスク35と、を備えるガスタービン1の補修方法である。本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの補修方法は、ロータディスク35に取り付けられている複数のタービン動翼の少なくとも一つを上述した一実施形態に係るタービン動翼24と置き換える工程を備える。
【0085】
これにより、既存のガスタービンの補修に際して、ロータディスクに取り付けられている複数のタービン動翼の少なくとも一つを上述した一実施形態に係るタービン動翼24と置き換えることで、既存のガスタービン1のロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0086】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態に係るタービン動翼24では、翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯51の数は5であったが、3又は4でもよく、6以上でもよい。
なお、翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯51の数が3の場合、基端側第1歯と基端側第2歯との間隔は、先端側第1歯と先端側第2歯との間隔より大きいとよい。そして、基端側第1歯における第1交点P1と第2交点P2との距離は、基端側第1歯以外の歯における第1交点と第2交点との距離よりも大きいとよい。なお、翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯51の数が3の場合、基端側第2歯と先端側第2歯とは同一の歯である。
【0087】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン動翼24は、翼形部44と、翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯51を有する翼根部50と、を備える。複数の歯51は、翼高さ方向と交差する方向に延在していて翼高さ方向の最も基端側から順に位置する基端側第1歯(第5歯515)、基端側第2歯(第4歯514)、及び、基端側第3歯(第3歯513)と、上記交差する方向に延在していて翼高さ方向の最も先端側から順に位置する先端側第1歯(第1歯511)、及び、先端側第2歯(第2歯512)とを含む。基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、又は、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34の何れか一方は、先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より大きい。複数の歯51の延在方向と直交する断面において、翼高さ方向で隣り合う歯51の間に形成される歯底部53同士を結ぶ直線を第1直線L1とし、上記断面において、複数の歯51のそれぞれにおける先端側の歯面52の直線部52aを含む第2直線L2と第1直線L1との交点を第1交点P1とし、複数の歯51のそれぞれにおける基端側の歯面55の直線部55aを含む第3直線L3と第1直線L1との交点を第2交点P2とする。基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における第1交点P1と第2交点P2との距離A、A、A、Aよりも大きい。
【0088】
上記(1)の構成によれば、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aが基端側第1歯(第5歯515)以外の歯における第1交点P1と第2交点P2との距離A、A、A、Aよりも大きいので、基端側第1歯(第5歯515)の厚さは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きい。これにより、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0089】
タービン動翼24の翼根部50と係合可能な翼溝部37を有するロータディスク35は、翼高さ方向の異なる位置に形成された複数の歯51のぞれぞれと係合可能な複数の翼溝38を有する。ロータディスク35において翼高さ方向(ロータディスク35の径方向)で隣り合う翼溝38同士の間隔は、一般的なロータディスクでは、ロータディスクの径方向で隣り合う任意の2つの翼溝において同じ間隔となる。
そのため、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45が先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より大きいと、ロータディスク35の回転速度が十分に小さい場合には、先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1歯(第1歯511)が係合する翼溝38(第1翼溝381)とを密着させたときに、基端側第1歯(第5歯515)の先端側の歯面515aと基端側第1歯(第5歯515)が係合する翼溝38(第5翼溝385)との間に隙間gが形成される。
また、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34が先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12より大きいと、ロータディスク35の回転速度が十分に小さい場合には、先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1歯(第1歯511)が係合する翼溝38(第1翼溝381)とを密着させたときに、基端側第1歯(第5歯515)の先端側の歯面515aと基端側第1歯(第5歯515)が係合する翼溝38(第5翼溝385)との間、及び、基端側第2歯(第4歯514)の先端側の歯面514aと基端側第2歯(第4歯514)が係合する翼溝38(第4翼溝384)との間に隙間gが形成される。
【0090】
したがって、上記(1)の構成のタービン動翼24が一般的なロータディスクと同様の構成を有するロータディスク35に取り付けられた場合、ロータディスク35の回転速度が十分に小さい場合には、先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1歯(第1歯511)が係合する翼溝38(第1翼溝381)とを密着させたときに、基端側第1歯(第5歯515)の先端側の歯面515aと基端側第1歯(第5歯515)が係合する翼溝38(第5翼溝385)との間に隙間gが形成される。そのため、上記(1)の構成によれば、基端側第1歯(第5歯515)と基端側第2歯(第4歯514)との間隔I45、及び、基端側第2歯(第4歯514)と基端側第3歯(第3歯513)との間隔I34の何れもが先端側第1歯(第1歯511)と先端側第2歯(第2歯512)との間隔I12と等しい場合と比べて、翼形部44から伝達される遠心荷重に起因する遠心応力を受けたときに基端側第1歯(第5歯515)と当接するロータディスク35の翼溝38(第5翼溝385)を形成する部位の応力、及び、基端側第1歯(第5歯515)における応力を低減できる。
よって、上記(1)の構成によれば、基端側第1歯(第5歯515)の厚さを基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きくして、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。また、上記(1)の構成によれば、基端側第1歯(第5歯515)の厚さを基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きくすることによる上述した副作用を抑制できる。
【0091】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aの101%以上105%以下であるとよい。
【0092】
上記(2)の構成によれば、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0093】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aの102%以上104%以下であるとよい。
【0094】
上記(3)の構成によれば、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることをさらに抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0095】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、上記断面において、複数の歯51のそれぞれにおける、翼高さ方向と平行であって第1交点P1を通過する第4直線L4と、第3直線L3との交点を第3交点P3としたときに、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における第1交点P1と第3交点P3との距離B、B、B、Bよりも大きいとよい。
【0096】
上記(4)の構成によれば、基端側第1歯(第5歯515)における強度が基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における強度よりも大きくなるので、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0097】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bの101%以上130%以下であるとよい。
【0098】
上記(5)の構成によれば、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0099】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第3交点P3との距離Bの105%以上110%以下であるとよい。
【0100】
上記(6)の構成によれば、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることをさらに抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0101】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、上記断面において、複数の歯51のそれぞれにおける、翼高さ方向と平行であって第1交点P1を通過する第4直線L4と、翼高さ方向と直交していて第2交点P2を通過する第5直線L5との交点を第4交点P4としたときに、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51における第1交点P1と第4交点P4との距離C、C、C、Cよりも大きいとよい。
【0102】
上記(7)の構成によれば、基端側第1歯(第5歯515)の厚さが基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きくなるので、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0103】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cの100.5%以上110%以下であるとよい。
【0104】
上記(8)の構成によれば、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0105】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cは、基端側第2歯(第4歯514)における第1交点P1と第4交点P4との距離Cの100.5%以上105%以下であるとよい。
【0106】
上記(9)の構成によれば、ロータディスクに作用する応力が部分的に大きくなることをさらに抑制しつつ、基端側第1歯における応力を抑制できる。
【0107】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの構成において、基端側第1歯(第5歯515)は、上記断面において基端側第1歯(第5歯515)の歯先部51aに形成された歯先直線部515cを有するとよい。歯先直線部515cと先端側の歯面515aの直線部52aとは、上記断面において曲線515dで接続されているとよい。歯先直線部515cと基端側の歯面55の直線部55aとは、上記断面において曲線515eで接続されているとよい。
【0108】
上記(10)の構成によれば、上記断面において基端側第1歯(第5歯515)の歯先部51aが他の歯51よりも不必要に突出してしまうことを回避できる。
【0109】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかの構成において、翼根部50の基端側の端面50aは、上記断面において、翼高さ方向に直交する底部直線部50bを有するとよい。基端側の端面50aと、翼高さ方向と平行であって基端側第1歯(第5歯515)の第1交点P1を通過する第4直線L4との第5交点P5は、底部直線部50b上に存在するとよい。
【0110】
上記(11)の構成によれば、上記断面において、基端側第1歯(第5歯515)の歯先部51aと底部直線部50bとを接続する曲線515e上に第5交点P5が存在する場合と比べて、基端側第1歯(第5歯515)の第1交点P1と第5交点P5との距離が大きくなる。これにより、基端側第1歯(第5歯515)の歯先部51aと底部直線部50bとを接続する曲線515e上に第5交点P5が存在する場合と比べて、基端側第1歯(第5歯515)の歯の厚さを大きくすることができる。
【0111】
(12)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン動翼組立体90は、上記(1)乃至(11)の何れかの構成のタービン動翼24と、タービン動翼24の翼根部50と係合可能な翼溝部37を有するロータディスク35と、を備える。翼溝部37は、基端側第1歯(第5歯515)と係合可能な基端側第1翼溝(第5翼溝385)、基端側第2歯(第4歯514)と係合可能な基端側第2翼溝(第4翼溝384)、基端側第3歯(第3歯513)と係合可能な基端側第3翼溝(第3翼溝383)、先端側第1歯(第1歯511)と係合可能な先端側第1翼溝(第1翼溝381)、及び、先端側第2歯(第2歯512)と係合可能な先端側第2翼溝(第2翼溝382)を有する。先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1翼溝(第1翼溝381)とを密着させたときに、少なくとも基端側第1歯(第5歯515)の先端側の歯面515aと基端側第1翼溝(第5翼溝385)との間に第1隙間g1が形成される。
【0112】
上記(12)の構成によれば、上記(1)乃至(11)の何れかの構成のタービン動翼24を備えるので、基端側第1歯(第5歯515)の厚さは、基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きい。これにより、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
上記(12)の構成によれば、先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1翼溝(第1翼溝381)とを密着させたときに、少なくとも基端側第1歯(第5歯515)の先端側の歯面515aと基端側第1翼溝(第5翼溝385)との間に第1隙間g1が形成されるので、翼形部44から伝達される遠心荷重に起因する遠心応力を受けたときに基端側第1翼溝(第5翼溝385)を形成する部位の応力、及び、基端側第1歯(第5歯515)における応力を低減できる。
よって、上記(12)の構成によれば、基端側第1歯(第5歯515)の厚さを基端側第1歯(第5歯515)以外の歯51の厚さよりも大きくすることによる上述した副作用を抑制できる。
【0113】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、先端側第1歯(第1歯511)の先端側の歯面511aと先端側第1翼溝(第1翼溝381)とを密着させたときに、基端側第2歯(第4歯514)の先端側の歯面514aと基端側第2翼溝(第4翼溝384)との間に第2隙間g2が形成されるようにしてもよい。
【0114】
上記(13)の構成によれば、翼形部44から伝達される遠心荷重に起因する遠心応力を受けたときに基端側第2翼溝(第4翼溝384)を形成する部位の応力、及び、基端側第2歯(第4歯514)における応力を低減できる。
【0115】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)又は(13)の構成において、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aは、第1隙間g1の820倍以上830倍以下であるとよい。
【0116】
発明者らが鋭意検討した結果、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離Aが第1隙間g1の820倍以上830倍以下となるように、基端側第1歯(第5歯515)における第1交点P1と第2交点P2との距離A、及び、第1隙間g1を設定することで、上述した副作用及び上述した別の副作用を抑制できることが判明した。
上記(14)の構成によれば、ロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【0117】
(15)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン1は、翼形部44と翼根部50とを有する複数のタービン動翼24と、翼根部50と係合可能な複数の翼溝部37を有するロータディスク35と、を備える。複数のタービン動翼24の少なくとも一つは、上記(1)乃至(11)の何れかの構成のタービン動翼24である。
【0118】
上記(15)の構成によれば、ロータディスク35及びタービン動翼24の耐久性を向上できる。
【0119】
(16)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの補修方法は、翼形部44と翼根部50とを有する複数のタービン動翼24と、翼根部50と係合可能な複数の翼溝部37を有するロータディスク35と、を備えるガスタービン1の補修方法であって、ロータディスク35に取り付けられている複数のタービン動翼の少なくとも一つを上記(1)乃至(11)の何れかの構成のタービン動翼24と置き換える工程を備える。
【0120】
上記(16)の方法によれば、既存のガスタービンの補修に際して、ロータディスクに取り付けられている複数のタービン動翼の少なくとも一つを上記(1)乃至(11)の何れかの構成のタービン動翼24と置き換えることで、既存のガスタービン1のロータディスク35に作用する応力が部分的に大きくなることを抑制しつつ、基端側第1歯(第5歯515)における応力を抑制できる。
【符号の説明】
【0121】
1 ガスタービン
6 タービン
24 タービン動翼
35 ロータディスク
37 翼溝部
44 翼形部
50 翼根部
50a 端面
50b 底部直線部
51 歯
52、55 歯面
52a、55a 直線部
53 歯底部
54 ベアリング面
90 タービン動翼組立体
381 第1翼溝(先端側第1翼溝)
382 第2翼溝(先端側第2翼溝)
383 第3翼溝(基端側第3翼溝)
384 第4翼溝(基端側第2翼溝)
385 第5翼溝(基端側第1翼溝)
511 第1歯(先端側第1歯)
511a、511b、511c、511d、511e 歯面
512 第2歯(先端側第2歯)
513 第3歯(基端側第3歯)
514 第4歯(基端側第2歯)
515 第5歯(基端側第1歯)
515c 歯先直線部
515d、515e 曲線
【要約】      (修正有)
【課題】タービン動翼の翼根部における応力を低減する。
【解決手段】基端側第1歯515と基端側第2歯514との間隔、又は、基端側第2歯514と基端側第3歯513との間隔の何れか一方は、先端側第1歯511と先端側第2歯512との間隔より大きい。複数の歯の延在方向と直交する断面において、翼高さ方向で隣り合う歯の間に形成される歯底部同士を結ぶ直線を第1直線L1とし、複数の歯のそれぞれにおける先端側の歯面の直線部を含む第2直線L2と第1直線L1との交点を第1交点P1とし、複数の歯のそれぞれにおける基端側の歯面の直線部を含む第3直線L3と第1直線L1との交点を第2交点P2としたときに、基端側第1歯515における第1交点P1と第2交点P2との距離は、基端側第1歯515以外の歯における第1交点P1と第2交点P2との距離よりも大きい。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7