(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】床版構造及び床版構造の横座屈補剛方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/02 20060101AFI20221024BHJP
E04B 5/38 20060101ALI20221024BHJP
E04B 5/43 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
E04B5/02 C
E04B5/38 C
E04B5/43 B
(21)【出願番号】P 2022084494
(22)【出願日】2022-05-24
【審査請求日】2022-06-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237134
【氏名又は名称】株式会社富士ピー・エス
(73)【特許権者】
【識別番号】518235952
【氏名又は名称】森田 明
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】森田 明
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼本 哲嗣
(72)【発明者】
【氏名】竹下 修
(72)【発明者】
【氏名】小田 将太郎
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-146651(JP,A)
【文献】特開2006-037504(JP,A)
【文献】特許第3169087(JP,B2)
【文献】特開2006-112050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/02
E04B 5/38
E04B 5/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に接合部材が設けられた大梁と、
対峙した前記大梁同士の間に掛け渡され
、端部の近傍に開口部が形成された
プレキャストプレストレストコンクリート合成床と、
前記開口部に取り付けられた第一端部と、前記大梁に取り付けられた第二端部と、を有する方杖部材と、
前記
プレキャストプレストレストコンクリート合成床の上面に打設されて、前記接合部材
及び前記第一端部と共に前記大梁と前記
プレキャストプレストレストコンクリート合成床とを一体化したコンクリートと、を有し、
前記大梁同士の間に小梁を有していない、
ことを特徴とする床版構造。
【請求項2】
前記
プレキャストプレストレストコンクリート合成床
が、
PC鋼線が埋設されたリブ部と、前記PC鋼線が埋設されていない非リブ部とを有し、
前記開口部が前記非リブ部に形成された、
ことを特徴とする請求項1に記載された床版構造。
【請求項3】
前記
端部から前記PC鋼線が突出しており、
前記大梁の上端において前記端部が互いに間を空けて突き合わさって載置された複数の前記プレキャストプレストレストコンクリート合成床のそれぞれの前記PC鋼線が、連結部材によって連結された、
ことを特徴とする請求
項2に記載された床版構造。
【請求項4】
前記第一端部の上面にスタッドが設けられ、
前記第二端部が、前記大梁に設けられたガセットプレートに取り付けられ、
前記スタッドが、前記開口部を貫通して前記コンクリートと一体となっている、
ことを特徴とする請求項
1から請求項3
の何れか1項に記載された床版構造。
【請求項5】
上端に大梁スタッドが設けられた大梁と、
端部の近傍に開口部が形成された
プレキャストプレストレストコンクリート合成床と、
一方の端部に方杖スタッドが設けられた長手の方杖部材と、を用いた床版構造の横座屈補剛方法であって、
前記大梁の上端に前記
プレキャストプレストレストコンクリート合成床の端部を掛け渡す手順と、
前記方杖部材の一方の端部である第一端部を、前記
プレキャストプレストレストコンクリート合成床の下面側から前記開口部に取り付けると共に前記方杖スタッドを前記開口部に通して前記
プレキャストプレストレストコンクリート合成床の上面に露出させ、かつ、前記方杖部材の他方の端部である第二端部を、前記大梁に設けられたガセットプレートに取り付ける手順と、
前記
プレキャストプレストレストコンクリート合成床の上面及び前記大梁の上端に、コンクリートを打設して、前記大梁スタッド及び前記方杖スタッドと共に前記大梁と前記
プレキャストプレストレストコンクリート合成床とを一体化する手順と、を含む、
ことを特徴とする床版構造の横座屈補剛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版構造及び床版構造の横座屈補剛方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造の大梁に対する保有耐力横補剛として、横座屈を生じさせないような剛性を補完することが求められている。鉄骨梁の上に載せられたスラブから伝わる水平力が、鉄骨梁に伝達されると、鉄骨梁が強軸回りに曲げを受け、圧縮側が面外へはらみだすことで横座屈が生じる。横座屈を抑制する方法として、例えば、下記特許文献1に記載された床形成方法(以下、「文献公知1発明」と記す。)では、小梁が用いられている。文献公知1発明では、柱に渡された大梁に小梁が渡され、これらの上にスラブが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、小梁が用いられた場合、鉄骨材料が増加するうえ、小梁の加工や施工を要する。また、小梁は、天井内で、照明や空調等の設備に要する空間を圧迫するため、内装にも影響を及ぼす。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。本発明は、横座屈の抑止、省力化に伴う工期の短縮、内装への影響の抑止を図ることができる床版構造及び床版構造の横座屈補剛方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る床版構造は、上端に接合部材が設けられた大梁と、対峙した前記大梁同士の間に掛け渡されたプレストレストコンクリート合成床と、前記プレストレストコンクリート合成床の上面に打設されて、前記接合部材と共に前記大梁と前記プレストレストコンクリート合成床とを一体化したコンクリートと、を有し、前記大梁同士の間に小梁を有していない、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る床版構造は、前記プレストレストコンクリート合成床の端部からPC鋼線が突出しており、前記大梁の上端において前記端部が互いに間を空けて突き合わさって載置された複数の前記プレストレストコンクリート合成床のそれぞれの前記PC鋼線が、連結部材によって連結された、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る床版構造は、前記プレストレストコンクリート合成床に形成された開口部に取り付けられた第一端部と、前記大梁に取り付けられた第二端部と、を有する方杖部材を有する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る床版構造は、前記第一端部の上面にスタッドが設けられ、前記第二端部が、前記大梁に設けられたガセットプレートに取り付けられ、前記スタッドが、前記開口部を貫通して前記コンクリートと一体となっている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る床版構造の横座屈補剛方法は、上端に大梁スタッドが設けられた大梁と、端部の近傍に開口部が形成されたプレストレストコンクリート合成床と、一方の端部に方杖スタッドが設けられた長手の方杖部材と、を用いた床版構造の横座屈補剛方法であって、前記大梁の上端にプレストレストコンクリート合成床の端部を載せる手順と、前記方杖部材の一方の端部である第一端部を、前記プレストレストコンクリート合成床の下面側から前記開口部に取り付けると共に前記方杖スタッドを前記開口部に通して前記プレストレストコンクリート合成床の上面に露出させ、かつ、前記方杖部材の他方の端部である第二端部を、前記大梁に設けられたガセットプレートに取り付ける手順と、前記プレストレストコンクリート合成床の上面及び前記大梁の上端に、コンクリートを打設して、前記大梁スタッド及び前記方杖スタッドと共に前記大梁と前記プレストレストコンクリート合成床とを一体化する手順と、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る床版構造は、上端に接合部材が設けられた大梁と、対峙した大梁同士の間に掛け渡されたプレストレストコンクリート合成床と、プレストレストコンクリート合成床の上面に打設されて、接合部材と共に大梁とプレストレストコンクリート合成床とを一体化したコンクリートとを有し、大梁同士の間に小梁を有していない。すなわち、プレストレストコンクリート合成床と大梁とが、接合部材と共にコンクリートによって一体化されて合成構造となる。したがって、本発明は、大梁同士間の小梁を要さずに横座屈を抑止することができる。また、小梁を要しない分、省力化が図られて工期を短縮することができるうえ、内装への影響を抑止することもできる。
【0012】
本発明に係る床版構造は、プレストレストコンクリート合成床の端部からPC鋼線が突出しており、大梁の上端において端部が互いに間を空けて突き合わさって載置された複数のプレストレストコンクリート合成床のそれぞれのPC鋼線が、連結部材によって連結されている。すなわち、連結部材によってPC鋼線が連結されたことで、剛性が増し、横座屈への耐力が向上する。
【0013】
本発明に係る床版構造は、プレストレストコンクリート合成床に形成された開口部に取り付けられた第一端部と、大梁に取り付けられた第二端部とを有する方杖部材を有している。方杖部材によって、大梁への水平力に対して剛性が補完される。したがって、本発明は、横座屈を抑止することができる。また、大梁同士間に小梁が設けられる場合と比較すれば、省力化が図られて工期を短縮することができるうえ、内装への影響を抑止することもできる。
【0014】
本発明に係る床版構造は、第一端部の上面にスタッドが設けられ、第二端部が、大梁に設けられたガセットプレートに取り付けられ、スタッドが、開口部を貫通してコンクリートと一体となっている。この構成により、プレストレストコンクリート合成床と方杖部材とが、スタッドを介して、コンクリートによって一体化されている。したがって、本発明は、横座屈を抑止することができる。
【0015】
本発明に係る床版構造の横座屈補剛方法は、上端に大梁スタッドが設けられた大梁と、端部の近傍に開口部が形成されたプレストレストコンクリート合成床と、一方の端部に方杖スタッドが設けられた長手の方杖部材とを用い、大梁の上端にプレストレストコンクリート合成床の端部を載せる手順と、方杖部材の一方の端部である第一端部を、プレストレストコンクリート合成床の下面側から開口部に取り付けると共に方杖スタッドを開口部に通してプレストレストコンクリート合成床の上面に露出させ、かつ、方杖部材の他方の端部である第二端部を、大梁に設けられたガセットプレートに取り付ける手順と、プレストレストコンクリート合成床の上面及び大梁の上端に、コンクリートを打設して、大梁スタッド及び方杖スタッドと共に大梁とプレストレストコンクリート合成床とを一体化する手順とを含んでいる。したがって、本発明は、大梁同士間の小梁を要さずに横座屈を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る床版構造を説明するための断面第一説明図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II断面であって、本発明の第一実施形態に係る床版構造を説明するための断面第二説明図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III断面であって、本発明の第一実施形態に係る床版構造を説明するための断面第三説明図である。
【
図4】
図4は、
図5のIV-IV断面であって、本発明の第一実施形態に係る床版構造のプレストレストコンクリート合成床を説明するための断面第一説明図である。
【
図5】
図5は、
図4のV-V断面であって、本発明の第一実施形態に係る床版構造のプレストレストコンクリート合成床を説明するための断面第二説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の第一実施形態に係る床版構造の方杖部材を説明するための平面説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の第一実施形態に係る床版構造の方杖部材を説明するための正面説明図である。
【
図8】
図8は、
図10のVIII-VIII断面であって、本発明の第一実施形態に係る床版構造の配筋及び床版構造の横座屈補剛方法を説明するための断面配筋第一説明図である。
【
図9】
図9は、
図10のIX-IX断面であって、本発明の第一実施形態に係る床版構造の配筋及び床版構造の横座屈補剛方法を説明するための断面配筋第二説明図である。
【
図10】
図10は、
図9のX-X断面であって、本発明の第一実施形態に係る床版構造の配筋及び床版構造の横座屈補剛方法を説明するための断面配筋第三説明図である。
【
図11】
図11は、本発明の第二実施形態に係る床版構造を説明するための要部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の第一実施形態に係る床版構造及び床版構造の横座屈補剛方法を図面に基づいて説明する。
図1ないし3には、第一実施形態に係る床版構造1が示されている。
【0018】
床版構造1は、例えば、鉄骨造等において実現されるものであり、
図1に示されているとおり、H形鋼等の鉄骨である大梁2と、対峙した大梁2同士(
図1では、一対のうちの片方の大梁2のみが表れ、もう片方の大梁2が省略されている。)の間に掛け渡されたプレストレストコンクリート合成床6と、このプレストレストコンクリート合成床6と大梁2とに接続された長手の方杖部材13と、プレストレストコンクリート合成床6の上面及び大梁2の上端部3に打設された現場打ちコンクリート19とを有している。この床版構造1では、大梁2同士の間に小梁が掛け渡されていない。すなわち、床版構造1は、小梁を有することなく、方杖部材13によって大梁2とプレストレストコンクリート合成床6とが接合され、この状態で、大梁2、プレストレストコンクリート合成床6及び方杖部材13が、現場打ちコンクリート19によって一体化されている。
【0019】
大梁2には、リブプレート4及びガセットプレート5が、適宜設けられている。大梁2の上端部3には、複数の接合部材としての大梁スタッド23が設けられている。方杖部材13は、プレストレストコンクリート合成床6に接合された一方の端部である第一端部14と、ガセットプレート5に接合された他方の端部である第二端部15と、第一端部14と第二端部15とを連結した方杖本体16とを有している。第一端部14の上面には、複数の接合部材としての方杖スタッド24が設けられている。方杖スタッド24は、プレストレストコンクリート合成床6に形成された開口部11を貫通している。
【0020】
以下、プレストレストコンクリート合成床6及び方杖部材13を、図面に基づいて更に説明する。
図4及び5には、プレストレストコンクリート合成床6が示され、
図6及び7には、方杖部材13が示されている。
【0021】
プレストレストコンクリート合成床6は、例えば、工場等で予め製造されたプレキャスト床版であって、プレストレストコンクリート構造のスラブである。プレストレストの導入は、プレテンション方式である。
図4及び5に示されているとおり、プレストレストコンクリート合成床6は、板状に形成され、コンクリート層7と、このコンクリート層7の下面に予め形成された断熱層8とを有している。コンクリート層7の上面である打設面には、上方に突出した上リブ部9が形成され、下面には、下方に突出した下リブ部25が形成されている。上リブ部9と下リブ部25との間であって、コンクリート層7の内側には、予めPC鋼線10が埋設され、プレストレスが加えられている。断熱層8は、例えば、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、セルロースファイバー、炭化コルク、グラスウール、ロックウール等であり、予め板状に形成されて下リブ部25同士の間に配置されている。
【0022】
図5に示されているとおり、プレストレストコンクリート合成床6は、板厚方向に貫通した開口部11が形成されている。開口部11は、四角形であり、プレストレストコンクリート合成床6のうち、長手方向の端部である床版端部12の近傍に形成されている。
【0023】
なお、プレストレストコンクリート合成床6の形状や種類は任意である。したがって、プレストレストコンクリート合成床6は、上リブ部9及び下リブ部25を有していない形状や、上リブ部9又は下リブ部25を有していない形状であってもよいし、断熱層8を有していなくてもよい。プレストレストコンクリート合成床6は、例えば、下面が平坦で、上面に上リブ部9を有する形状(いわゆる逆T形状)であってもよいし、いわゆるCチャンネル型の断面を有する形状であってもよい。プレストレスの導入は、ポストテンション方式であってもよい。
【0024】
図6及び7に示されているとおり、方杖部材13の上端である第一端部14は、四角形の板状部材17と、この板状部材17の下面に連結された支持部材18とを有している。板状部材17の上面には、複数の方杖スタッド24が設けられている。板状部材17は、プレストレストコンクリート合成床6の下面側から開口部11に取り付けられ、方杖スタッド24が、開口部11を通ってプレストレストコンクリート合成床6の上面に露出する。
【0025】
次に、床版構造1における現場打ちコンクリート19の打設について、床版構造の横座屈補剛方法と共に、図面を用いて説明する。
図8ないし10には、各部材の接合と配筋の状態が示されている。
【0026】
図8に示されているとおり、プレストレストコンクリート合成床6の床版端部12を、大梁2の上端部3に載せる。方杖部材13の第二端部15を、大梁2のガセットプレート5に接合し、第一端部14を、プレストレストコンクリート合成床6の開口部11に取り付ける。この状態で、
図8ないし10に示されているとおり、プレストレストコンクリート合成床6の上面に、上端主筋20、下端主筋21及び上端配力筋22等を適宜配筋する。この状態で、現場打ちコンクリート19を、プレストレストコンクリート合成床6の上面及び大梁2の上端部3に打設することで、大梁スタッド23及び方杖スタッド24と共に、大梁2とプレストレストコンクリート合成床6とを一体化し、合成構造を構成する。なお、本実施形態では、大梁2同士の間に小梁を掛け渡す手順を経ない。
【0027】
なお、図示しないが、第一実施形態には、複数のプレストレストコンクリート合成床6の床版端部12が、大梁2の上端部3において互いに間を空けて突き合わさって載置され、現場打ちコンクリート19によって一体化された実施形態も含む。
【0028】
次に、第一実施形態の効果を説明する。
【0029】
上記のとおり、第一実施形態では、プレストレストコンクリート合成床6と大梁2とが、大梁スタッド23と共に現場打ちコンクリート19によって一体化されて合成構造となる。したがって、床版構造1は、大梁2同士間に渡されるような小梁を要さずに横座屈を抑止することができる。また、小梁を要しない分、省力化が図られて工期を短縮することができるうえ、内装への影響を抑止することもできる。プレストレストコンクリート合成床6は、PC鋼線10が埋設されてプレストレスが導入されているうえ、上下に各リブ部9,25が形成されているため、高い剛性を有している。したがって、大梁2同士間の距離が比較的長い場合であっても、小梁を要さずに、プレストレストコンクリート合成床6を大梁2同士間に渡すことができる。
【0030】
特に、方杖部材13は、第一端部14が、プレストレストコンクリート合成床6の開口部11に取り付けられると共に方杖スタッド24が通された状態で、現場打ちコンクリート19でプレストレストコンクリート合成床6と一体化され、第二端部15が、大梁2のガセットプレート5に接合されている。したがって、方杖部材13によって、大梁2への水平力に対して剛性が補完され、横座屈が抑止される。また、大梁2同士間に小梁が設けられる場合と比較すれば、省力化が図られて工期を短縮することができるうえ、内装への影響を抑止することもできる。
【0031】
次に、第二実施形態に係る床版構造を図面に基づいて説明する。
図11には、第二実施形態に係る床版構造101が示されている。なお、第一実施形態に係る床版構造1と同一の構成は、床版構造1と同一の符号をもって図示する。
【0032】
図11に示されているとおり、床版構造101では、大梁2の上端部3上において、プレストレストコンクリート合成床106の床版端部112が互いに間を空けて突き合わさった状態で、床版端部112が上端部3に載置され、床版端部112から突出したPC鋼線110が、連結部材としてのカプラー125によって連結されている。カプラー125によるPC鋼線110の連結によって、剛性が増し、横座屈への耐力が向上する。なお、方杖部材13等の他の構成は、第一実施形態に係る床版構造1と同じである。
【0033】
図示しないが、第三実施形態に係る床版構造では、第二実施形態と同様にカプラーでPC鋼線が連結されているが、第一実施形態と異なり、方杖部材がない。この構成であっても、カプラーによってPC鋼線が連結されたことで、剛性が増し、横座屈への耐力が向上する。
【0034】
図示しないが、第四実施形態に係る床版構造では、第一実施形態における方杖部材と、第二実施形態におけるカプラーを有していない。すなわち、第四実施形態に係る床版構造は、大梁と、対峙した大梁同士の間に掛け渡されたプレストレストコンクリート合成床と、プレストレストコンクリート合成床の上面に打設された現場打ちコンクリートとを有している。この構成であっても、プレストレストコンクリート合成床と大梁とが、接合部材と共にコンクリートによって一体化されて合成構造となることで、横座屈を抑止することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1、101 床版構造
2 大梁
3 上端部
4 リブプレート
5 ガセットプレート
6、106 プレストレストコンクリート合成床
7 コンクリート層
8 断熱層
9 上リブ部
10、110 PC鋼線
11 開口部
12、112 床版端部
13 方杖部材
14 第一端部
15 第二端部
16 方杖本体
17 板状部材
18 支持部材
19 現場打ちコンクリート(コンクリート)
20 上端主筋
21 下端主筋
22 上端配力筋
23 大梁スタッド(接合部材)
24 方杖スタッド
25 下リブ部
125 カプラー(連結部材)
【要約】
【課題】横座屈の抑止、省力化に伴う工期の短縮、内装への影響の抑止を図ることができる床版構造及び床版構造の横座屈補剛方法を提供する。
【解決手段】床版構造1は、大梁2と、対峙した大梁2同士の間に掛け渡されたプレストレストコンクリート合成床6と、このプレストレストコンクリート合成床6と大梁2とに接続された方杖部材13と、プレストレストコンクリート合成床6の上面に打設された現場打ちコンクリート19とを有し、プレストレストコンクリート合成床6と大梁2とが、大梁スタッド23及び方杖スタッド24と共に現場打ちコンクリート19によって一体化され、大梁2同士の間に小梁が掛け渡されていない。
【選択図】
図1