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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
H02K33/16 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022106449
(22)【出願日】2022-06-30
【審査請求日】2022-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000127352
【氏名又は名称】株式会社イワキ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂川 桂三
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-081243(JP,A)
【文献】特開平10-127033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の固定子と、
この固定子の内側を挿通し軸方向に往復動する可動軸と、
前記固定子の内側に設けられ前記可動軸に一体的に装着された円筒状の可動子と、
を有し、
前記固定子は、
円筒状の固定子本体と、
この固定子本体を内部に収容する磁性体からなる円筒状の外側ヨークと、
前記外側ヨークの両端の開口部を塞ぐ磁性体からなる第1のストッパ及び第2のストッパと、
を有し、
前記固定子本体は、
前記可動子と径方向に対向し前記可動子の軸方向中央部の外周を取り囲むように配置された磁性体からなる円環状の内側ヨークと、
前記内側ヨークの外周に装着された円環状の永久磁石と、
前記内側ヨーク及び前記永久磁石の前記軸方向の少なくとも一方の側にコイルが巻回されるボビンを有し前記内側ヨーク及び前記永久磁石を支持する円筒状の固定子フレームと、
前記固定子フレームのボビンに巻回されたコイルと、
を有し、
前記第1のストッパは、中央から前記第2のストッパに向かって突出する円筒状の第1突部を有し、前記第1のストッパの中心には前記可動軸が挿通する第1孔部を有し、
前記第2のストッパは、中央から前記第1のストッパに向かって突出する円筒状の第2突部を有し、前記第2のストッパの中心は、前記可動軸が挿通する第2孔部を有し、
前記第1突部及び前記第2突部は、前記固定子フレームの軸方向両端部に嵌合し、
前記可動子は、前記第1突部及び前記第2突部の間に配置され、
前記第1孔部及び前記第2孔部には、前記可動軸を往復動可能に支持する軸受が装着されている
アクチュエータ。
【請求項2】
前記内側ヨークは、前記固定子フレームにインサート成形により配置される
請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記永久磁石は、前記径方向に着磁されている
請求項1又は2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記永久磁石は、複数の円弧状の磁石片からなる
請求項1又は2記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記永久磁石の内周面は、前記内側ヨークの外周面と直接接している
請求項1又は2記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記永久磁石の外周面は、前記外側ヨークの内周面と直接接している
請求項1又は2記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記ボビンは、前記内側ヨーク及び前記永久磁石の前記軸方向の一方の側に設けられた第1のボビンと、他方の側に設けられた第2のボビンとを有し、
前記固定子フレームは、前記第1のボビンから前記第2のボビンへと巻線を通す巻線溝を有し、
前記コイルは、前記第1のボビンから前記第2のボビンへと前記巻線溝を介して連続的に巻回されている
請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記外側ヨークと前記第1のストッパとは、一体的に形成されている
請求項1記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤフラム等の往復動部材を往復動させる駆動源として、アクチュエータ(例えば、特許文献1参照)が知られている。このアクチュエータは、固定子の内部に可動子が設けられた軸方向に往復動するシャフトを備え、固定子の可動子と径方向に対向する箇所に永久磁石が配置されている。
【0003】
また、このアクチュエータは、永久磁石と、この永久磁石で形成される磁界を間に位置させるコイルとを有し、コイルに通電することにより生じる磁界の向きを変化させて、シャフトを軸方向に往復動させる構造を備える。また、シャフトは、固定子の軸方向の両端部とフランジとの間に設けられた板ばねによって、軸方向に揺動自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-259330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された従来技術のアクチュエータは、永久磁石をフランジに対して接着剤等により固定する必要があるので、接着剤等の厚さを含めた各部品の寸法管理が難しく、また、接着剤等によって磁気回路上にギャップが生じるため、磁気回路の効率も悪くなるという問題がある。更に、固定子の各端部配置された板ばねをシャフトの溝に嵌合させて軸受として機能させているため、シャフトの芯出しが容易ではないという問題もある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡便な部品構成で芯出し及び寸法管理を容易にすると共に、磁気回路の効率を向上させることができるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るアクチュエータは、円筒状の固定子と、この固定子の内側を挿通し軸方向に往復動する可動軸と、前記固定子の内側に設けられ前記可動軸に一体的に装着された円筒状の可動子と、を有する。前記固定子は、円筒状の固定子本体と、この固定子本体を内部に収容する磁性体からなる円筒状の外側ヨークと、前記外側ヨークの両端の開口部を塞ぐ磁性体からなる第1のストッパ及び第2のストッパと、を有する。前記固定子本体は、前記可動子と径方向に対向し前記可動子の軸方向中央部の外周を取り囲むように配置された磁性体からなる円環状の内側ヨークと、前記内側ヨークの外周に装着された円環状の永久磁石と、前記内側ヨーク及び前記永久磁石の前記軸方向の少なくとも一方の側にコイルが巻回されるボビンを有し前記内側ヨーク及び前記永久磁石を支持する円筒状の固定子フレームと、前記固定子フレームのボビンに巻回されたコイルと、を有する。前記第1のストッパは、中央から前記第2のストッパに向かって突出する円筒状の第1突部を有し、前記第1のストッパの中心には前記可動軸が挿通する第1孔部を有する。前記第2のストッパは、中央から前記第1のストッパに向かって突出する円筒状の第2突部を有し、前記第2のストッパの中心は、前記可動軸が挿通する第2孔部を有する。前記第1突部及び前記第2突部は、前記固定子フレームの軸方向両端部に嵌合する。前記可動子は、前記第1突部及び前記第2突部の間に配置される。前記第1孔部及び前記第2孔部には、前記可動軸を往復動可能に支持する軸受が装着されている。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記内側ヨークは、前記固定子フレームにインサート成形により配置される。
【0009】
本発明の他の実施形態において、前記永久磁石は、前記径方向に着磁されている。また、前記永久磁石は、複数の円弧状の磁石片からなる。
【0010】
本発明の更に他の実施形態において、前記永久磁石の内周面は、前記内側ヨークの外周面と直接接している。
【0011】
本発明の更に他の実施形態において、前記永久磁石の外周面は、前記外側ヨークの内周面と直接接している。
【0012】
本発明の更に他の実施形態において、前記ボビンは、前記内側ヨーク及び前記永久磁石の前記軸方向の一方の側に設けられた第1のボビンと、他方の側に設けられた第2のボビンとを有し、前記固定子フレームは、前記第1のボビンから前記第2のボビンへと巻線を通す巻線溝を有し、前記コイルは、前記第1のボビンから前記第2のボビンへと前記巻線溝を介して連続的に巻回されている。
【0013】
本発明の更に他の実施形態において、前記外側ヨークと前記第1のストッパとは、一体的に形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡便な部品構成で芯出し及び寸法管理を容易にすると共に、磁気回路の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るアクチュエータを備えたポンプ装置の外観構成を示す斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図2のB-B線断面図である。
図4】同ポンプ装置のダイヤフラムが取り付けられたアクチュエータを示す一部断面図である。
図5】同アクチュエータを、一部を切り欠いて示す分解斜視図である。
図6】同アクチュエータを示す断面図である。
図7図6のC-C線断面図である。
図8】同アクチュエータの固定子本体を、一部を分解して示す斜視図である。
図9】同固定子本体の内側ヨークを示す斜視図である。
図10】図アクチュエータの動作を説明するための断面図である。
図11】図アクチュエータの動作を説明するための断面図である。
図12】本発明の他の実施形態に係るアクチュエータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係るアクチュエータを詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、以下の実施形態において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、実施形態においては、各構成要素の配置、縮尺及び寸法等が誇張或いは矮小化されて、実際のものとは一致しない状態で示されている場合、並びに一部の構成要素につき記載が省略されて示されている場合がある。
【0017】
[アクチュエータを備えたポンプ装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るアクチュエータを備えたポンプ装置の外観構成を示す斜視図である。図2図1のA-A線断面図、図3図2のB-B線断面図である。また、図4は、ポンプ装置のダイヤフラムが取り付けられたアクチュエータを示す一部断面図である。
【0018】
図1に示すように、ポンプ装置100は、ポンプヘッド10と、このポンプヘッド10が着脱可能に取り付けられる装置本体部50と、を備える。
【0019】
ポンプヘッド10は、例えば樹脂成形品からなる。装置本体部50は、例えば樹脂製の筐体を有し、その一側面(図1における右側面)側に、上面、側面及び背面の一部を取り除いて形成された凹み形状のヘッド装着部51を有する。ポンプヘッド10は、装置本体部50に対して、それぞれ上面、側面及び背面がはみ出さないように、ヘッド装着部51に装着されている。このように、ポンプヘッド10は、ヘッド装着部51に装着された際に、ポンプ装置100が全体として矩形状となるように、ヘッド装着部51の空間を埋めて収まる範囲の寸法で形成されている。
【0020】
装置本体部50は、後述するポンプヘッド10の複数のポンプ室13(図2参照)にそれぞれ液密に取り付けられる可撓性のダイヤフラム14(図2参照)と、このダイヤフラム14を往復動させる複数のアクチュエータ110(図4参照)とを内部に有する。なお、ポンプ室13及びアクチュエータ110は、本実施形態では例えばそれぞれ2つずつ設けられている。
【0021】
また、装置本体部50は、正面側に設けられた、ディスプレイ52を有する操作パネル部53と、装置本体部50のヘッド装着部51と反対側の側面に設けられた複数の外部入出力用ポート54と、を備える。更に、装置本体部50の内部には、ポンプ装置100の動作を制御する制御部(図示せず)が設けられている。ディスプレイ52には、ポンプ装置100の設定流量をはじめ、ポンプ装置100に関する各種の情報が表示される。なお、設定流量は、例えば100ml/min~0.01ml/minの流量範囲で設定可能に構成される。
【0022】
操作パネル部53は、上記ディスプレイ52と共に、電源ボタン53a、ポンプ動作の開始・停止ボタン53b及びカーソル・リターン操作部53cを有する。また、操作パネル部53は、キャリブレーションボタン53d、モード設定ボタン53e、レンジ設定ボタン53f、ストローク設定ボタン53g及びI/O設定ボタン53hを有する。
【0023】
カーソル・リターン操作部53cには、最大量指定ボタン53ca及びエスケープボタン53cbが併設されている。ポンプ装置100のユーザは、操作パネル部53を介して各種の操作入力を行うことで、ポンプ装置100の動作・設定等の各種の操作を行うことができる。
【0024】
図2及び図3に示すように、ポンプヘッド10は、図示しない接続ナットを介して吸込側ホースが接続された移送流体の吸込口11と、図示しない接続ナットを介して吐出側ホースが接続された移送流体の吐出口12と、これら吸込口11及び吐出口12と連通する複数のポンプ室13と、を有する。ポンプヘッド10は、その内部に、水平方向に並設された複数のバルブモジュール20を収容する。バルブモジュール20は、垂直方向に配置された、例えばボールバルブにより構成される吸込バルブ30及び吐出バルブ40を有する。
【0025】
ポンプヘッド10のポンプ室13には、吸込側ホース、吸込口11及びポンプ室連絡流路74を介してタンク(図示せず)からの移送流体を内部に導入するようになっている。また、ポンプ室13からは、ポンプ室連絡流路74、吐出口12及び吐出側ホースを介して内部の移送流体を外部に吐出するようになっている。
【0026】
ポンプヘッド10は、複数のバルブモジュール20の吸込バルブ30及び吐出バルブ40の間で垂直方向に分離可能な複数のポンプヘッドブロックを構成する第1ブロック15及び第2ブロック16を有する。第1ブロック15は、側面に形成された吸込口11と連通し水平方向に延びる第1吸込側流路71と、この第1吸込側流路71と連通し垂直方向の上方に延びる複数の第2吸込側流路72と、を有する。
【0027】
第1ブロック15には、第2吸込側流路72と連通し上方に向けて開口すると共に、バルブモジュール20の吸込バルブ30側の部分が収容される複数の第1収容室73が形成されている。また、第1ブロック15には、ダイヤフラム14と共にポンプ室13を形成するためのダイヤフラム取付孔17が、第1及び第2吸込側流路71,72と交差する方向で、装置本体部50のヘッド装着部51の壁面に向けて開口するように形成されている。ダイヤフラム取付孔17は、ポンプ室13の上部がバルブモジュール20の周方向に所定間隔で配置された複数の側方流路の位置よりも低くなる第1ブロック15の位置に設けられている。なお、上述したポンプ室連絡流路74は、複数のポンプ室13からそれぞれ斜め上方に延びて複数の第1収容室73と連通する。
【0028】
第2ブロック16は、側面に形成された吐出口12と連通し水平方向に延びる第1吐出側流路81と、この第1吐出側流路81と連通し垂直方向の下方に延びる複数の第2吐出側流路82と、を有する。第2ブロック16には、第2吐出側流路82と連通し下方に向けて開口すると共に、バルブモジュール20の吐出バルブ40側の部分が収容される複数の第2収容室83が形成されている。なお、各第2収容室83の上方には、円錐台状空間84が形成され、この円錐台状空間84を介して第2吐出側流路82と連通するようになっている。
【0029】
第1ブロック15及び第2ブロック16は、垂直方向に延伸する、結合手段としての複数の固定ボルト19によって、ねじ止め固定されることにより一体化され、ポンプヘッド10を構成する。本実施形態の第1ブロック15及び第2ブロック16は、一体化されたときの装置本体部50の操作パネル部53側の角部が、それぞれ面取りされたような矩形状を有している。このように構成されたポンプヘッド10は、装置本体部50に対し、取付孔15aを介して図示しない複数の取付ねじでヘッド装着部51にねじ止め固定されることにより、装置本体部50の側面側に一体的に装着される。
【0030】
図4に示すように、アクチュエータ110は、例えば電磁アクチュエータで、位相をずらせて複数のダイヤフラム14をそれぞれ駆動可能に構成されている。アクチュエータ110の基端側には、電気配線62a及び信号配線62bが接続された制御基板62が設けられている。なお、制御基板62には、例えば可動軸112の位置を検出する図示しない位置センサ(例えば、リニアエンコーダ等)が実装されている。アクチュエータ110の制御基板62とは反対側の先端側は、装置本体部50の図示しない内部取付部への取付パネル63に、例えばねじ止め等により装着されている。
【0031】
[アクチュエータの構成]
図5は、アクチュエータ110を、一部を切り欠いて示す分解斜視図である。また、図6はアクチュエータ110を示す断面図、図7図6のC-C線断面図である。
図5図7に示すように、アクチュエータ110は、円筒状の固定子111と、この固定子111の内側を挿通し、中心軸Pで示す軸方向に往復動する可動軸112と、固定子111の内側に設けられ、この可動軸112に一体的に装着された円筒状の可動子113と、を備える。
【0032】
固定子111は、円筒状の固定子本体120と、この固定子本体120を内部に収容する磁性体からなる有底円筒状のケース部材となる外側ヨーク114と、この外側ヨーク114の開口部114aに嵌まる磁性体からなる蓋状のストッパ115と、を備える。固定子本体120は、外側ヨーク114の内部において、可動子113と径方向に対向する状態で僅かな隙間(クリアランス)を介して、可動子113の周囲を覆うように配置される。
【0033】
固定子本体120は、例えば樹脂成形品からなる固定子フレーム121を有する。固定子フレーム121は、軸方向の中央部に磁性体からなる円環状の内側ヨーク117をインサート成形により支持している。内側ヨーク117は、可動子113の軸方向中央部の外周を所定のクリアランスを介して取り囲むように配置されている。内側ヨーク117の外周側には円環状の永久磁石116が装着されている。固定子フレーム121は、内側ヨーク117及び永久磁石116の軸方向の一方の側に第1のボビン121aを有し、他方の側に第2のボビン121bを有する。これらのボビン121a,121bには、コイル118が巻回されている。なお、ボビン121a,121bのいずれか一方のみが、内側ヨーク117及び永久磁石116の軸方向の一方の側に設けられ、コイル118は、この一方の側に設けられたボビン121a又は121bにのみ巻回されたものであっても良い。
【0034】
図8は、固定子111の固定子本体120を、一部を分解して示す斜視図である。図9は、固定子本体120の内側ヨーク117を示す斜視図である。
図8に示すように、固定子フレーム121のボビン121a,121bの間の円環状スペースには、一対の円環状板124a,124bに挟まれた溝状の取付部124が形成されている。図7及び図8に示すように、永久磁石116は、上述した固定子フレーム121に形成された溝状の取付部124に取り付けられる。永久磁石116は、全体で円環状をなす複数(ここでは、6つ)の円弧状の磁石片116aにより構成されている。
【0035】
永久磁石116を構成する各磁石片116aは、例えば径方向外側がN極(又はS極)及び径方向内側がS極(又はN極)となるようにそれぞれ着磁されている。各磁石片116aは、接着剤等を介さずに、内側ヨーク117に直接接し、内側ヨーク117に磁気力によって取り付けられる。
【0036】
固定子フレーム121の取付部124を構成する円環状板124a,124bは、周方向の一部に切欠部を有し、この切欠部で両円環状板124a,124bが連結されることにより、コイル118の巻線を通すための巻線溝122が形成されている。また、固定子フレーム121の一方の端部(外側ヨーク114の底部114cと対向する端部)には、底部114cに形成された孔部114f(図6参照)に嵌まる回転位置決め用の突起部123が形成されている。この突起部123には、コイル118の巻線を通す複数の孔部123aが形成されている。
【0037】
コイル118の巻線は、複数の孔部123aの一つを通り、一方のボビン121aに巻回されたのち、ボビン121aと円環状板124aとの間に設けられた脇溝122bに一巻きされる。そして、コイル118の巻線は、巻線溝122の底部122a(図6参照)に軸方向に沿って沿わされ、巻線溝122を介して他方のボビン121bまで延ばされる。その後、他方のボビン121bと円環状板124bとの間に設けられた脇溝122cに一巻きされた後、ボビン121bに巻回され、巻線溝122を再度介して複数の孔部123aの他の一つに戻るように、2つのボビン121a,121bに連続的に巻回することができる。これにより、1回の巻線工程でコイル118を形成することが可能である。
【0038】
図7及び図9に示すように、内側ヨーク117は、外周側の例えば周方向に均等に配置された4箇所に、軸方向に延びる溝部117aを有する。本実施形態においては、内側ヨーク117は、固定子フレーム121にインサート成形により配置される。すなわち、固定子フレーム121の樹脂成形時に、樹脂部材が溝部117a内にも充填されて2つのボビン121a,121bが繋がった状態で内側ヨーク117はインサート成形される。これにより、内側ヨーク117は、その内周面117b(図7参照)が固定子フレーム121の内周面125(図6参照)と正確に同一面となるように、固定子フレーム121と一体化される。
【0039】
一方、図6に示すように、外側ヨーク114は、底部114cの中央から開口部114aに向かって突出する円筒状の第1突部114dを有する。固定子本体120が外側ヨーク114に収納される際には、固定子フレーム121の内周面125の一方の端部が外側ヨーク114の第1突部114dと嵌合する。また、固定子本体120の永久磁石116及びボビン121a,121bのうちの少なくとも永久磁石116の外周面は、外側ヨーク114の円筒部114bの内周面と直接接するような寸法となっていることが、永久磁石116の固定及び磁気効率の点では望ましい。一方、組立性の点では僅かにクリアランスがあることが望ましい。
【0040】
外側ヨーク114の開口部114aに嵌まるストッパ115は、中央から第1突部114dに向かって突出する円筒状の第2突部115aを有する。ストッパ115は、固定子本体120が収容された外側ヨーク114の開口部114aに嵌まる際には、ストッパ115の外周が外側ヨーク114の円筒部114bの内周面に嵌合し、第2突部115aが固定子フレーム121の内周面125の他方の端部と嵌合する。このように、第1突部114d及び第2突部115aは、固定子フレーム121の軸方向両端部に嵌合する。ストッパ115が、外側ヨーク114に完全に嵌合されると、外側ヨーク114の底部114cとストッパ115の内側面115cとで固定子本体120は、軸方向にも挟持される。これにより、固定子本体120は、外側ヨーク114及びストッパ115に対して正確に位置決め固定される。このとき、第1突部114dと第2突部115aの対向端面間の距離は、可動子113の軸方向長さに可動子113の軸方向移動距離を加えた長さよりも長い距離になることが望ましい。これにより、可動子113が軸方向に往復移動した際に、可動子113が第1突部114d及び第2突部115aに衝突するのを回避することができる。
【0041】
なお、外側ヨーク114は、底部114c及び第1突部114dの中心部に、可動軸112が貫通する第1孔部114eを有する。また、ストッパ115は、中心部に、可動軸112が貫通する第2孔部115bを有する。これら孔部114e,115bには、可動軸112を軸支する軸受119が圧入等により装着される。軸受119は、例えばフッ素樹脂がコーティングされたドライタイプの軸受(乾式軸受)であり、望ましくは磁性材料により構成されている。この構成により、可動軸112の芯出しは、外側ヨーク114とストッパ115と、これらに装着される軸受119によってのみ決めることができ、正確な芯出しが可能になる。この結果、固定子111と可動子113のクリアランスも正確に決定することができる。
【0042】
[アクチュエータの製造方法]
このように構成されたアクチュエータ110は、例えば次のように製造される。まず、固定子本体120を製造する。固定子本体120は、例えば次のように製造される。まず、内側ヨーク117を金型にセットした状態でインサート樹脂成形により固定子フレーム121を成形する。次に、巻線を固定子フレーム121の2つのボビン121a,121bに1回の巻線工程で巻回し、コイル118を配置する。最後に、円弧状の磁石片116aを固定子フレーム121の取付部124に一つずつ嵌め込んでいき、永久磁石116を内側ヨーク117の外周面に密着するように配置して、固定子本体120を形成する。なお、永久磁石116を配置する際に取付部124に最後に嵌め込む円弧状の磁石片116aは、径方向に反発し易い傾向があるが、嵌め込み自体は容易である。なお、円弧状の磁石片116aを固定子フレーム121の取付部124に嵌め込んだ後、永久磁石116の外周にテープを巻き付けても良い。
【0043】
次に、上記のように製造された固定子本体120を、突起部123が孔部114fに挿入されるように、外側ヨーク114の内側の最終位置まで挿入する。続いて、可動子113が装着された可動軸112を固定子本体120の内側に挿入し、軸受119に最終位置まで挿入する。なお、可動子113の外周面113aの一部には、軸方向に延びる溝113bが形成されている。この溝113bに、固定子フレーム121の内周面125に形成された突起126が嵌まるように、可動子113を固定子本体120の内側に挿入する。これにより、可動子113の回転方向の動きを防止することができる。最後に、可動軸112が軸受119を通るようにストッパ115を外側ヨーク114に取り付けて、アクチュエータ110を形成する。
【0044】
[実施形態の効果]
本実施形態のアクチュエータ110によれば、内側ヨーク117がインサート成形により固定子フレーム121に一体的に配置されているので、固定子フレーム121に対して内側ヨーク117を精度良く配置することができる。また、固定子フレーム121は、外側ヨーク114の第1突部114dと、ストッパ115の第2突部115aとに嵌合することにより、外側ヨーク114とストッパ115に対しても精度良く位置決めすることができる。更に、可動軸112は、外側ヨーク114の第1孔部114eに装着された軸受119と、ストッパ115の第2孔部115bに装着された軸受119とによって支持される。このため、可動軸112は、外側ヨーク114及びストッパ115に対して精度良く芯出しされ、結果的に、固定子フレーム121、すなわち固定子本体120に対しても精度良く芯出しされることになる。これにより、可動子113の外周面113aと、内側ヨーク117及び固定子フレーム121の内周面117b,125との間に所定のクリアランスを精度良く確保することができる。
【0045】
また、円環状の永久磁石116は、内側ヨーク117の外周面に直接接触することで磁気力によって固定され、外周面が外側ヨーク114の内周面によって覆われるので、永久磁石116を接着等によって固定する必要がなく、その結果、磁気回路の効率を向上させることができる。なお、各軸受119を磁性材料で構成すれば、これらも磁気回路として利用することができるので、更に磁気回路の効率の向上を図ることができる。
【0046】
図6に示すように、アクチュエータ110の可動軸112は、図6中矢印で示す軸方向に、アクチュエータ110の駆動力によって往復駆動される。この可動軸112の先端側には、軸方向の奥部にねじ部が設けられたボルト取付孔112aが形成されている。このボルト取付孔112aには、図2及び図4に示すように、インサートボルト19aが取り付けられる。すなわち、可動軸112の先端側には、往復動部材であるダイヤフラム14が、インサートボルト19aを介して装着される。ダイヤフラム14の中央背面部は、可動軸112に装着されたリテーナ18によって支持されている。
【0047】
なお、アクチュエータ110が装着された取付パネル63とダイヤフラム14との間には、円筒状のブラケット66が取り付けられている。ブラケット66は、内部に防水用のブッシュ65を有し、ポンプヘッド10の第1ブロック15のダイヤフラム取付孔17に嵌合する。ダイヤフラム14の周縁部は、ダイヤフラム取付孔17の底部とブラケット66との間で挟持される。ダイヤフラム14は、その前面中央部でポンプヘッド10の第1ブロック15との間にポンプ室13を形成する。
【0048】
ポンプ装置100は、次のように動作する。すなわち、装置本体部50の制御部は、操作パネル部53を介して入力された設定情報に基づき、所定の流量で移送流体を移送するために、2つのアクチュエータ110のいずれか一方の可動軸112と共にダイヤフラム14を水平方向に後退させる吸込動作と、いずれか他方の可動軸112と共にダイヤフラム14を水平方向に前進させる吐出動作と、を並行して実行する。すなわち、例えば吸込動作においては、バルブモジュール20の吸込バルブ30が開くと共に吐出バルブ40が閉じる。また、例えば吐出動作においては、バルブモジュール20の吐出バルブ40が開くと共に吸込バルブ30が閉じる。このように、アクチュエータ110は、位相をずらせて複数のダイヤフラム14をそれぞれ駆動可能に構成されている。
【0049】
図10及び図11は、アクチュエータ110の動作を説明するための断面図である。なお、図10は吐出時の動作を示し、図11は吸込時の動作を示している。
アクチュエータ110においては、ダイヤフラム14の張力、ポンプ室13の内圧等による軸方向の力と、固定子本体120のコイル118に通電することにより生じる力とがバランスした状態では、可動軸112の可動子113を径方向に挟むように配置された永久磁石116から生じるバイアス磁束Fb(図10及び図11参照)によって、可動子113は、固定子本体120の内周側で、図6に示すような中立位置に配置される。バイアス磁束Fbは、外側ヨーク114、ストッパ115、可動子113及び内側ヨーク117を流れる。
【0050】
この状態から、コイル118に流れる電流を増やした場合、コイル118に流れる電流により生じる磁界と、永久磁石116から生じる磁界の向きとに基づいて、可動軸112が軸方向に沿って往復動される。可動軸112がどの方向に移動するかは、コイル118に流れる電流の向きによって変化する磁界により定められる。
【0051】
図10に示すように、例えばコイル118に対して順方向の通電を行うと、制御磁束Fc1のような磁束の流れが生じる。この電流から生じる制御磁束Fc1の流れと、永久磁石116から生じるバイアス磁束Fbの流れとから発生する磁束の偏りによって、可動子113が装着された可動軸112を図中矢印で示す前進する方向に移動させる推力が発生する。具体的には、固定子本体120の軸方向の中央部よりも図中右側における2つの磁束が互いに強め合い、図中左側における2つの磁束が互いに弱め合う。
【0052】
これにより、可動軸112は可動子113と共に前進し、ダイヤフラム14がポンプ室13を収縮させるので、吐出動作が行われる。なお、このとき、可動子113は、その外周面113aが内側ヨーク117の内周面117b及び固定子フレーム121の内周面125と非接触状態で、可動子113の軸方向端面113cとストッパ115の第2突部115aの軸方向端面115dとが衝突しないように移動制御され得るので、動作音をほぼ皆無にすることができる。
【0053】
一方、例えば図11に示すように、コイル118に対して逆方向の通電を行うと、制御磁束Fc2のような磁束の流れが生じる。この電流から生じる制御磁束Fc2の流れと、永久磁石116から生じるバイアス磁束Fbの流れとから発生する磁束の偏りによって、可動子113が装着された可動軸112を図中矢印で示す後退する方向に移動させる推力が発生する。具体的には、固定子本体120の軸方向の中央部よりも図中左側における2つの磁束が互いに強め合い、図中右側における2つの磁束が互いに弱め合う。
【0054】
これにより、可動軸112は可動子113と共に後退し、ダイヤフラム14がポンプ室13を膨張させるので、吸込動作が行われる。なお、このとき、可動子113は、その外周面113aが内側ヨーク117の内周面117b及び固定子フレーム121の内周面125と非接触状態で、可動子113の軸方向端面113dと外側ヨーク114の第1突部114dの軸方向端面114gとが衝突しないように移動制御され得るので、動作音をほぼ皆無にすることができる。可動軸112は、このような順方向及び逆方向の電流の切り替えが交互に行われることで、軸受119に軸支された可動軸112が、可動子113がどこにも接触しない状態で、軸方向に往復動される。
【0055】
[アクチュエータの他の構成]
図12は、本発明の他の実施形態に係るアクチュエータを示す断面図である。なお、図12を含む以降の説明においては、先の実施形態と同一の構成要素に関しては同一の符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0056】
図12に示すように、本実施形態に係るアクチュエータ110Aは、外側ヨーク114Aが円筒部114bを有する点は、先の実施形態と同様であるが、この外側ヨーク114Aの軸方向両端の開口部114a1,114a2に、それぞれ第1のストッパ115A及び第2のストッパ115が嵌められている点が先の実施形態と相違している。
【0057】
すなわち、先の実施形態の外側ヨーク114の底部114c及び第1突部114dを、円筒部114bとは別体のアッセンブリ部品の第1のストッパ115Aとして構成したものである。このような構成によっても、固定子本体120は、第1突部114d及び第2突部115aによって軸方向に挟持される。従って、固定子本体120は、外側ヨーク114A、第1のストッパ115A及び第2のストッパ115に対して正確に位置決め固定されるので、可動軸112の芯出しが正確に行われ得る等の先の実施形態と同様の作用効果を奏することが可能である。この実施形態によれば、外側ヨーク114Aが円筒形なので、先の実施形態よりも製造が容易である。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10 ポンプヘッド
50 装置本体部
100 ポンプ装置
110,110A アクチュエータ
111 固定子
112 可動軸
113 可動子
114,114A 外側ヨーク
115,115A ストッパ
116 永久磁石
117 内側ヨーク
118 コイル
119 軸受
120 固定子本体
121 固定子フレーム
【要約】
【課題】簡便な部品構成で芯出し及び寸法管理を容易にし、磁気回路の効率を向上させる。
【解決手段】アクチュエータは、固定子とこの内側を挿通し軸方向に往復動する可動軸と固定子の内側にて可動軸に一体的な可動子とを有する。固定子は固定子本体とこれを内部に収容する外側ヨークとこれの開口部を塞ぐ第1及び第2のストッパとを有する。固定子本体は可動子の軸方向中央部の外周を取り囲む内側ヨークとこれの外周に装着された永久磁石とこれらの両側にボビンを有しこれらを支持する固定子フレームとボビンに巻回されたコイルとを有する。第1のストッパは中央に第1突部を有しこれらの中心に可動軸が挿通する第1孔部を有する。第2のストッパは中央に第2突部を有し中心に可動軸が挿通する第2孔部を有する。各突部は固定子フレームの軸方向両端部に嵌合する。各孔部には可動軸を往復動可能に支持する軸受が装着されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12