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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/04 20060101AFI20221024BHJP
   F04B 53/16 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
F04B43/04 A
F04B53/16 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022549720
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2022031036
【審査請求日】2022-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000127352
【氏名又は名称】株式会社イワキ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰寛
(72)【発明者】
【氏名】小川 吉雄
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-220834(JP,A)
【文献】米国特許第5676531(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/04
F04B 53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
第1壁を有するとともに、前記第1壁の一方の側に前記駆動源を内部に収容する収容空間を有するポンプ本体と、
ポンプ室と、前記ポンプ室と連通する移送流体の吸込口及び吐出口と、を有し、前記第1壁の他方の側に取り付けられるポンプヘッドと、
前記ポンプヘッドと前記第1壁との間に配置されるブラケットと、
前記駆動源によって前記ポンプ室内で駆動される駆動部材と、
前記ポンプ本体の前記収容空間内に前記第1壁に隣接して配置される円環状のナット用プレートと、
を備え、
前記ナット用プレートは、中心からの距離が異なる複数組のナット穴を有し、前記中心を通り前記第1壁と交差する軸を中心として前記第1壁に沿って回転可能に配置され、
前記第1壁は、前記複数組のナット穴に対応する位置に配置された複数の穴部を有し、前記複数の穴部の一部は、前記ナット用プレートの周方向に延びる長穴部であり、
前記ポンプヘッド及び前記ブラケットは、前記ナット用プレートの複数組のナット穴のうちのいずれか一組のナット穴に適合するピッチで配置された複数の挿通穴を有し、前記複数の挿通穴のピッチに適合する前記ナット用プレートの前記一組のナット穴に前記第1壁の穴部を介してボルトを締結することによって、前記ポンプ本体の前記第1壁に固定される
ポンプ装置。
【請求項2】
前記収容空間内で前記ナット用プレートと前記駆動源との間に配置され、前記駆動源を前記ポンプ本体の外部から液密に遮断する防水用プレートを更に備える
請求項1記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記駆動源を前記ポンプ本体の前記第1壁と反対側から固定するとともに、前記収容空間を塞ぐように前記ポンプ本体に取り付けられる固定用プレートを更に備える
請求項2記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記駆動源は、前記駆動部材が先端に取り付けられた駆動軸を有し、
前記ナット用プレートは、前記複数組のナット穴の少なくとも一組のナット穴が、他の組のナット穴に対して前記ナット用プレートの周方向の異なる位置に配置されている
請求項2記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記第1壁は、
前記駆動源の前記駆動軸が挿通される中心開口部と、
前記中心開口部の周囲に放射状に開口するように形成され、前記ナット用プレートの回転方向のいずれかの位置において前記複数組のナット穴の一部のナット穴が臨む複数の第1長穴部と、
前記中心開口部の周囲に前記複数の第1長穴部と離隔して、前記中心開口部の周方向に沿って開口するように形成され、前記ナット用プレートの回転方向のいずれかの位置において前記複数組のナット穴の他の一部のナット穴が臨む複数の第2長穴部と、
前記複数の第1長穴部及び前記複数の第2長穴部とそれぞれ離隔して、前記中心開口部の周囲に配置されるように形成され、前記ナット用プレートの回転方向のいずれかの位置において前記複数組のナット穴の残りの他のナット穴が臨む複数の丸穴部と、を有する
請求項4記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記第1壁は、前記複数の第1長穴部、前記複数の第2長穴部及び前記複数の丸穴部とそれぞれ離隔して、前記中心開口部の周囲に放射状に開口するように形成され、前記ナット用プレートの回転方向のいずれかの位置において前記複数組のナット穴のいずれかの組の一つのナット穴が臨む第3長穴部を更に有する
請求項5記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記ナット用プレートが有する前記複数組のナット穴は、第1ナット穴と、前記第1ナット穴よりも中心からの距離が長い位置に設けられた第2ナット穴と、前記第2ナット穴よりも中心からの距離が長い位置に設けられた第3ナット穴と、を有し、
前記第1ナット穴と前記第3ナット穴とは、周方向の同一位置に、且つそれぞれ周方向の4箇所に均等に配置され、
前記第2ナット穴は、前記第1ナット穴及び前記第3ナット穴に対して、周方向に45°ずれた位置に、且つ周方向の4箇所に均等に配置されている
請求項4~6のいずれか1項記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記防水用プレートは、前記ナット用プレートと対向する円盤部と、前記円盤部の内周縁部から前記駆動軸に沿って突出し、前記ナット用プレートの内周部に嵌合する第1嵌合部と、前記第1嵌合部から前記駆動軸に沿って突出し、前記第1壁の前記中心開口部に嵌合する第2嵌合部と、前記収容空間の内周壁に嵌合する第3嵌合部と、を有する樹脂部材からなる
請求項5又は6記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記防水用プレートは、前記第2嵌合部の外周部に配置され、前記第1壁の前記中心開口部の内周部との間をシールする第1シール部と、前記円盤部の外周部に配置され、前記収容空間の内周壁との間をシールする第2シール部と、を有する
請求項8記載のポンプ装置。
【請求項10】
前記駆動源及び前記防水用プレートは、前記固定用プレートに設けられた複数の挿通穴を介して、前記ポンプ本体の前記収容空間の外側に設けられた取付ナットにボルトを締結することによって、前記ポンプ本体の前記収容空間内に固定される
請求項3記載のポンプ装置。
【請求項11】
前記ポンプ本体は、樹脂部材からなり、
前記取付ナットは、前記ポンプ本体に一体的に埋め込まれている
請求項10記載のポンプ装置。
【請求項12】
前記ブラケットは、前記ポンプ本体の前記収容空間が密閉された状態で、前記ナット用プレートの前記第1ナット穴、前記第2ナット穴及び前記第3ナット穴のいずれか一組のナット穴に応じた前記複数の挿通穴のピッチごとに、前記ポンプ本体の前記第1壁に対して交換自在に取り付けられる
請求項7記載のポンプ装置。
【請求項13】
前記ナット用プレートは、前記ポンプヘッド及び前記ブラケットを前記ポンプ本体の前記第1壁の前記他方の側に固定したときに、前記ポンプ本体の前記第1壁の前記一方の側に回転不能に密着する
請求項1記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポンプの駆動源を収容したポンプ本体にポンプヘッドが取り付けられるポンプ装置が知られている。例えば、ダイヤフラム等の駆動部材が往復動するタイプのポンプ装置を例に挙げると、この種のポンプ装置は、ポンプ本体の内部に収容されたソレノイド等の駆動源を有している。駆動源は、例えば駆動軸を有し、駆動部材はこの駆動軸の先端に取り付けられる。駆動源は、ポンプ本体の内部において、例えばポンプ室と連通する吸込口及び吐出口を有するポンプヘッドの取付側から、例えばねじ止めによりポンプ本体に固定される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、ポンプ本体のポンプヘッド取付側の端面には、ブラケットが設けられる。ブラケットには、ポンプヘッドの取付ねじの配置間隔(取付ピッチ)に対応したピッチでインサートされた複数のナットが設けられている。従って、ポンプヘッドをポンプ本体に取り付ける際には、まず、ブラケットをポンプ本体と一体化したのち、ブラケットにポンプヘッドがねじ止めによって取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-202274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたポンプ装置では、例えばポンプ室の容積サイズに応じて取付ねじの取付ピッチが異なるポンプヘッドを、そのままの状態ではポンプ本体に取り付けることはできないという問題がある。
【0006】
この問題に対応すべく、取付ねじの取付ピッチが異なるポンプヘッドをポンプ本体に取付可能にするために、例えばピッチが異なるナットがインサートされたブラケットに交換する必要がある。しかし、ブラケットを交換するためには、ポンプ本体、その中に収容されるソレノイド等の駆動源、背面側のプレート等を外してポンプ全体を分解しなければならない。
【0007】
また、1つのブラケットで複数種類のポンプヘッドに対応可能にするため、ブラケットにピッチが異なる複数組のナットをインサートすることは、ナット同士の干渉、ブラケットの強度低下、防水性の低下などの観点から現実的ではない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、取付ねじの取付ピッチが異なるポンプヘッドをブラケットとともにポンプ全体を分解することなく、ポンプ本体に容易に着脱可能なポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るポンプ装置は、駆動源と、ポンプ本体と、ポンプヘッドと、ブラケットと、駆動部材と、ナット用プレートと、を備える。前記ポンプ本体は、第1壁を有するとともに、前記第1壁の一方の側に前記駆動源を内部に収容する収容空間を有する。前記ポンプヘッドは、ポンプ室と、前記ポンプ室と連通する移送流体の吸込口及び吐出口と、を有する。前記ポンプヘッドは、前記第1壁の他方の側に取り付けられる。前記ブラケットは、前記ポンプヘッドと前記第1壁との間に配置される。前記駆動部材は、前記駆動源によって前記ポンプ室内で駆動される。前記ナット用プレートは、円環状に形成され、前記ポンプ本体の前記収容空間内に前記第1壁に隣接して配置される。前記ナット用プレートは、中心からの距離が異なる複数組のナット穴を有する。前記ナット用プレートは、前記中心を通り前記第1壁と交差する軸を中心として前記第1壁に沿って回転可能に配置される。前記第1壁は、前記複数組のナット穴に対応する位置に配置された複数の穴部を有する。前記複数の穴部の一部は、前記ナット用プレートの周方向に延びる長穴部である。前記ポンプヘッド及び前記ブラケットは、前記ナット用プレートの複数組のナット穴のうちのいずれか一組のナット穴に適合するピッチで配置された複数の挿通穴を有する。前記ポンプヘッド及び前記ブラケットは、前記複数の挿通穴のピッチに適合する前記ナット用プレートの前記一組のナット穴に前記第1壁の穴部を介してボルトを締結することによって、前記ポンプ本体の前記第1壁に固定される。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記収容空間内で前記ナット用プレートと前記駆動源との間に配置され、前記駆動源を前記ポンプ本体の外部から液密に遮断する防水用プレートを更に備える。
【0011】
本発明の他の実施形態において、前記駆動源を前記ポンプ本体の前記第1壁と反対側から固定するとともに、前記収容空間を塞ぐように前記ポンプ本体に取り付けられる固定用プレートを更に備える。
【0012】
本発明の更に他の実施形態において、前記駆動源は、前記駆動部材が先端に取り付けられた駆動軸を有する。また、前記ナット用プレートは、前記複数組のナット穴の少なくとも一組のナット穴が、他の組のナット穴に対して前記ナット用プレートの周方向の異なる位置に配置されている。
【0013】
本発明の更に他の実施形態において、前記第1壁は、中心開口部と、複数の第1長穴部と、複数の第2長穴部と、複数の丸穴部と、を有する。前記中心開口部には、前記駆動源の前記駆動軸が挿通される。前記複数の第1長穴部は、前記中心開口部の周囲に放射状に開口するように形成される。前記複数の第1長穴部には、前記ナット用プレートの回転方向のいずれかの位置において前記複数組のナット穴の一部のナット穴が臨む。前記複数の第2長穴部は、前記中心開口部の周囲に前記複数の第1長穴部と離隔して、前記中心開口部の周方向に沿って開口するように形成される。前記複数の第2長穴部には、前記ナット用プレートの回転方向のいずれかの位置において前記複数組のナット穴の他の一部のナット穴が臨む。前記複数の丸穴部は、前記複数の第1長穴部及び前記複数の第2長穴部とそれぞれ離隔して、前記中心開口部の周囲に配置されるように形成される。前記複数の丸穴部には、前記ナット用プレートの回転方向のいずれかの位置において前記複数組のナット穴の残りの他のナット穴が臨む。
【0014】
本発明の更に他の実施形態において、前記第1壁は、第3長穴部を更に有する。前記第3長穴部は、前記複数の第1長穴部、前記複数の第2長穴部及び前記複数の丸穴部とそれぞれ離隔して、前記中心開口部の周囲に放射状に開口するように形成される。前記第3長穴部には、前記ナット用プレートの回転方向のいずれかの位置において前記複数組のナット穴のいずれかの組の一つのナット穴が臨む。
【0015】
本発明の更に他の実施形態において、前記ナット用プレートが有する前記複数組のナット穴は、第1ナット穴と、第2ナット穴と、第3ナット穴と、を有する。前記第2ナット穴は、前記第1ナット穴よりも中心からの距離が長い位置に設けられる。前記第3ナット穴は、前記第2ナット穴よりも中心からの距離が長い位置に設けられる。また、前記第1ナット穴と前記第3ナット穴とは、周方向の同一位置に、且つそれぞれ周方向の4箇所に均等に配置される。前記第2ナット穴は、前記第1ナット穴及び前記第3ナット穴に対して、周方向に45°ずれた位置に、且つ周方向の4箇所に均等に配置される。
【0016】
本発明の更に他の実施形態において、前記防水用プレートは、円盤部と、第1嵌合部と、第2嵌合部と、第3嵌合部と、を有する樹脂部材からなる。前記円盤部は、前記ナット用プレートと対向する。前記第1嵌合部は、前記円盤部の内周縁部から前記駆動軸に沿って突出し、前記ナット用プレートの内周部に嵌合する。前記第2嵌合部は、前記第1嵌合部から前記駆動軸に沿って突出し、前記第1壁の前記中心開口部に嵌合する。前記第3嵌合部は、前記収容空間の内周壁に嵌合する。
【0017】
本発明の更に他の実施形態において、前記防水用プレートは、第1シール部と、第2シール部と、を有する。前記第1シール部は、前記第2嵌合部の外周部に配置される。前記第1シール部は、前記第1壁の前記中心開口部の内周部との間をシールする。前記第2シール部は、前記円盤部の外周部に配置される。前記第2シール部は、前記収容空間の内周壁との間をシールする。
【0018】
本発明の更に他の実施形態において、前記駆動源及び前記防水用プレートは、前記固定用プレートに設けられた複数の挿通穴を介して、前記ポンプ本体の前記収容空間の外側に設けられた取付ナットにボルトを締結することによって、前記ポンプ本体の前記収容空間内に固定される。
【0019】
本発明の更に他の実施形態において、前記ポンプ本体は、樹脂部材からなる。また、前記取付ナットは、前記ポンプ本体に一体的に埋め込まれている。
【0020】
本発明の更に他の実施形態において、前記ブラケットは、前記ポンプ本体の前記収容空間が密閉された状態で、前記ナット用プレートの前記第1ナット穴、前記第2ナット穴及び前記第3ナット穴のいずれか一組のナット穴に応じた前記複数の挿通穴のピッチごとに、前記ポンプ本体の前記第1壁に対して交換自在に取り付けられる。
【0021】
本発明の更に他の実施形態において、前記ナット用プレートは、前記ポンプヘッド及び前記ブラケットを前記ポンプ本体の前記第1壁の前記他方の側に固定したときに、前記ポンプ本体の前記第1壁の前記一方の側に回転不能に密着する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、取付ねじの取付ピッチが異なるポンプヘッドをブラケットとともにポンプ全体を分解することなく、ポンプ本体に容易に着脱可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るポンプ装置の全体構成を示す断面図である。
図2】同ポンプ装置のポンプ本体に収容される各部を示す分解斜視図である。
図3】同ポンプ本体の収容空間内に収容されるナット用プレートを示す正面図である。
図4】同ポンプ本体の前方側を示す図である。
図5】同ポンプ本体の前方側を示す図である。
図6図4のA-A線断面を示す図である。
図7】同ポンプ本体に所定ピッチの挿通穴を有するブラケットを装着した状態を示す斜視図である。
図8】同ポンプ本体に所定ピッチの挿通穴を有するブラケットを装着した状態を示す正面図である。
図9】同ポンプ本体に所定ピッチの挿通穴を有するブラケットを装着した状態を示す正面図である。
図10】同ポンプ本体に所定ピッチの挿通穴を有するブラケットを装着した状態を示す正面図である。
図11】同ポンプ本体からブラケットを取り外した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係るポンプ装置を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
また、以下の実施形態において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、実施形態においては、各構成要素の配置、縮尺及び寸法等が誇張或いは矮小化されて、実際のものとは一致しない状態で示されている場合、並びに一部の構成要素につき記載が省略されて示されている場合がある。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置の全体構成を示す断面図である。図2は、ポンプ装置のポンプ本体に収容される各部を示す分解斜視図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るポンプ装置100は、駆動源であるソレノイド10と、ソレノイド10を内部に収容するポンプ本体20と、ポンプ本体20に取り付けられるポンプヘッド30と、を備える。また、ポンプ装置100は、ポンプヘッド30をポンプ本体20に取り付けるためのブラケット40と、駆動部材である往復動部材、例えば可撓性のダイヤフラム50と、を備える。以下、ポンプ本体20のポンプヘッド30取付側に向かう方向を前方、これと反対側に向かう方向を後方とする。
【0028】
ソレノイド10は、固定子11と、可動子12と、を備える。固定子11は、内周部が後方に突出する有底円筒状に形成された第1ヨーク13aと、この第1ヨーク13aに収容された円筒状のコイル15及びこれが巻回されたボビン16と、第1ヨーク13aの後方の開口部を塞ぎ、コイル15が巻回されたボビン16を固定する第2ヨーク13bと、を備える。第1ヨーク13a、第2ヨーク13b及び可動子12は、磁性体からなる。
【0029】
可動子12は、環状に形成され、第1ヨーク13aの内周部の突出部と第2ヨーク13bの後端位置までの円筒状空間に収容される。可動子12の中心穴には、駆動軸14が圧入等の方法により固定されている。駆動軸14は、固定子11の中央、具体的には第1ヨーク13aの内周部の内側に挿通され、軸受17によって軸方向に往復動可能に支持されている。可動子12は、第2ヨーク13bの内周に装着された軸受13cによって軸方向に往復動可能に支持されている。第1ヨーク13aの内周部には、後方側に開放された環状のバネ収容空間が形成され、このバネ収容空間と可動子12との間に、可動子12を後方へ移動させるバネ力を付与する戻りバネ18が装着されている。ソレノイド10は、コイル15の電磁力及び戻りバネ18のバネ力によって、駆動軸14を図中矢印で示す往復動方向に駆動させる。駆動軸14が図1に示すように前方に位置するときは、コイル15に通電を行った状態を表している。駆動軸14の先端には、ダイヤフラム50がインサートボルト51を介して装着されている。
【0030】
ポンプ本体20は、樹脂部材からなる。ポンプ本体20は、前方側に設けられた第1壁である前面壁22と、ポンプベース20aと、を有する。また、ポンプ本体20は、ポンプベース20aの上方且つ前面壁22の裏面22a側(一方の側)に設けられた収容空間21を有する。ポンプ本体20の収容空間21は、円筒状に形成される。収容空間21は、内部にソレノイド10を収容する。なお、ポンプ本体20の収容空間21には、ソレノイド10と共に、後述するナット用プレート60と、防水用プレート70と、が収容される。また、ポンプ本体20の前面壁22は、後述するナット用プレート60の複数組のナット穴に対応する位置に配置された複数の穴部を有する。
【0031】
ポンプヘッド30は、樹脂部材又はステンレス等の金属部品からなる。ポンプヘッド30は、中央に形成されたポンプ室31を有する。ポンプヘッド30は、所定ピッチで配置された複数の取付穴(挿通穴)19(図6参照)を有する。ポンプヘッド30は、ポンプ本体20の前面壁22の表面22b側(他方の側)に、例えばブラケット40を介して取り付けられる。ポンプヘッド30及びブラケット40は、ポンプ本体20に取り付けられるポンプユニットの最少単位を構成する。
【0032】
ポンプヘッド30は、ポンプ室31と連通する移送流体の吸込口32及び吐出口33を有する。ポンプヘッド30の吸込口32は、ポンプ室31の下方に連通する。ポンプヘッド30の吐出口33は、ポンプ室31の上方に連通する。
【0033】
ポンプヘッド30には、吸込口32の下方に配置された移送流体の吸込側の第1接続口34が形成されている。また、ポンプヘッド30には、吐出口33の上方に配置された移送流体の吐出側の第2接続口35が形成されている。第1及び第2接続口34,35は、それぞれ吸込口32及び吐出口33を介してポンプ室31と連通されている。
【0034】
第1接続口34には、吸込バルブ36を組み込んだ、円筒状の第1接続アダプタ37が接続される。第2接続口35には、吐出バルブ38を組み込んだ、円筒状の第2接続アダプタ39が接続される。第1接続アダプタ37の下方側には、ホースアダプタ37cが挿入され装着される。ホースアダプタ37cの先端側には、円筒状のホースストッパ37dが装着される。第1接続アダプタ37の下方側の外周部は、ホースストッパ37dをホースアダプタ37cに対して近接及び離隔可能に収容する円筒状の第1継手37aと接続されている。第1継手37aは、ホースアダプタ37cの中央部を通ってポンプヘッド30の下方側に延びる移送流体の吸込側流路37bを、第1接続アダプタ37の流路37eに接続する。
【0035】
第2接続アダプタ39は、接続ナット38aを介して第3接続アダプタ49に接続される。第3接続アダプタ49は、断面T字型の3方向分岐円筒状に形成されている。第3接続アダプタ49の上方側には、ガス抜き調整ねじ49aが接続される。第3接続アダプタ49の側方側は、図示は省略するが、ガス抜き継手及びガス抜き流路が接続される。第3接続アダプタ49の前方側には、ホースアダプタ49dが挿入され装着される。ホースアダプタ49dの先端側には、円筒状のホースストッパ49eが装着される。第3接続アダプタ49の前方側の外周部は、ホースストッパ49eをホースアダプタ49dに対して近接及び離隔可能に収容する円筒状の第2継手49bと接続されている。
【0036】
第2継手49bは、ホースアダプタ49dの中央部を通ってポンプヘッド30の前方側に延びる移送流体の吐出側流路49cを、第3接続アダプタ49の流路49fを介して第2接続アダプタ39に接続する。なお、吸込バルブ36及び吐出バルブ38は、例えばボールバルブが上下二段に配置された二段式ボールバルブの共通バルブカートリッジにより構成されている。
【0037】
ブラケット40は、樹脂部材からなる。ブラケット40は、ポンプヘッド30とポンプ本体20の前面壁22との間に配置される。ブラケット40は、所定ピッチで配置された複数の挿通穴41(図6及び図7参照)を有する。所定ピッチは、例えば後述するナット用プレート60の複数組のナット穴のうちのいずれか一組のナット穴に適合するピッチである。ダイヤフラム50は、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)及びエチレンプロピレンゴム(EPDM)等の樹脂の内部に、インサートボルト51を一体に成形した部材となる。ダイヤフラム50は、ポンプ本体20に収容されたソレノイド10によって、ポンプヘッド30のポンプ室31内で駆動される。ダイヤフラム50は、周縁部53がブラケット40及び支持部材42とポンプヘッド30との間で挟持されるとともに、中央部52の前面側がポンプ室31に臨む状態で、液密に取り付けられる。
【0038】
なお、ダイヤフラム50と駆動軸14の先端との間に配置されたリテーナ54の後方側においては、駆動軸14の外周面と、ブラケット40の後端面との間をシールする、一部が蛇腹状に形成された弾性体からなるダイヤフラムシール55が取り付けられている。ダイヤフラムシール55は、蛇腹状に形成された部分が緩衝部材の役割を担うため、駆動軸14の往復動の際にも、シール性を持続可能に構成されている。
【0039】
図3は、ポンプ本体20の収容空間21内に収容されるナット用プレート60を示す正面図である。
図2及び図3に示すように、ナット用プレート60は、円環状に形成された金属板からなる。ナット用プレート60は、ポンプ本体20の収容空間21内に前面壁22に隣接して配置される(図1参照)。
【0040】
ナット用プレート60は、中心ACからの距離が異なる複数組の第1ナット穴61、第2ナット穴62及び第3ナット穴63を有する。なお、第2ナット穴62は、第1ナット穴61よりも中心ACからの距離が長い位置に設けられている。また、第3ナット穴63は、第2ナット穴62よりも中心ACからの距離が長い位置に設けられている。ナット用プレート60は、中心ACを通り前面壁22と交差する軸を中心として、前面壁22に沿って収容空間21内で回転可能に配置される。ナット用プレート60には、複数組の第1ナット穴61、第2ナット穴62及び第3ナット穴63が、中心ACを通る径方向間隔(ピッチ)が異なるように形成されている。
【0041】
また、ナット用プレート60は、複数組の第1ナット穴61、第2ナット穴62及び第3ナット穴63の少なくとも一組のナット穴が、他の組のナット穴に対してナット用プレート60の周方向の異なる位置に配置されている。例えば、第1ナット穴61は、ナット用プレート60の内周部60aに近い位置に複数形成されている。第1ナット穴61は、例えばナット用プレート60の周方向に90°ずつ間隔をおいて、周方向の4箇所に均等に配置されている。第2ナット穴62は、第1ナット穴61よりも中心ACからの距離が長い、ナット用プレート60の内周部60aと外周部60bとの間の位置に複数形成されている。第2ナット穴62は、例えば第1ナット穴61に対して、周方向に45°ずつずれた位置で、周方向に90°ずつ間隔をおいて、周方向の4箇所に均等に配置されている。第3ナット穴63は、第2ナット穴62よりも中心ACからの距離が長い、ナット用プレート60の外周部60bに近い位置に複数形成されている。第3ナット穴63は、第1ナット穴61と周方向の同一位置で、第2ナット穴62に対して周方向に45°ずつずれた位置に、周方向に90°ずつ間隔をおいて、周方向の4箇所に均等に配置されている。
【0042】
従って、第1ナット穴61と第3ナット穴63とは、径方向の直線SL上に並ぶようにそれぞれ形成されているが、第2ナット穴62は周方向にずれた位置に形成されるので、次のような利点がある。すなわち、径方向の直線SL上に近接するピッチのナット穴を形成しようとすると、設計段階でナット穴同士が干渉したり重なったりしてしまい、物理的に形成できないことがある。このような僅かに異なる近接ピッチでのナット穴の形成が必要とされるケースにも、本実施形態のナット用プレート60は対応することが可能である。つまり、ナット用プレート60は、複数種類の近接ピッチのナット穴を効果的に一枚のプレートに設けることが可能となる。
【0043】
具体的には、一組の第1ナット穴61の配置ピッチは、ポンプヘッド30及びブラケット40の最も小さい取付ピッチ(第1ピッチpt1)を形成する。また、一組の第3ナット穴63の配置ピッチは、ポンプヘッド30及びブラケット40の最も大きい取付ピッチ(第3ピッチpt3)を形成する。そして、一組の第2ナット穴62の配置ピッチは、第1ナット穴61の取付ピッチより大きく第3ナット穴63の取付ピッチより小さい取付ピッチ(第2ピッチpt2)を形成する(pt1<pt2<pt3)。
【0044】
防水用プレート70は、収容空間21内でナット用プレート60とソレノイド10との間に配置される。防水用プレート70は、円盤状に形成された樹脂部材からなる。防水用プレート70は、ソレノイド10を、ポンプ本体20の外部から収容空間21内で液密に遮断する。
【0045】
防水用プレート70は、円盤部74と、第1嵌合部71と、第2嵌合部72と、第3嵌合部73と、を有する。円盤部74は、防水用プレート70の円環状の主部をなす。円盤部74は、ナット用プレート60の裏面と対向する。第1嵌合部71は、円盤部74の内周縁部からポンプ本体20の前面壁22側に突出する。第1嵌合部71は、ナット用プレート60の内周部60aに嵌合する。第2嵌合部72は、第1嵌合部71からポンプ本体20の前面壁22側に突出する。第2嵌合部72は、後述するポンプ本体20の前面壁22の中心開口部23に嵌合する。
【0046】
第1及び第2嵌合部71,72の中心には、ソレノイド10の駆動軸14が通る中央挿通穴77が形成されている。第1及び第2嵌合部71,72は、ソレノイド10の駆動軸14に沿って突出するように形成されている。第3嵌合部73は、円盤部74の外周縁部に位置し、ポンプ本体20の収容空間21の内周壁21aに嵌合する。第3嵌合部73は、例えば第1嵌合部71及び第2嵌合部72と反対側に突出している。
【0047】
なお、防水用プレート70は、第1シール部であるOリング75と、第2シール部であるOリング76と、を有する。Oリング75,76は、フッ素ゴム(FKM)又はエチレンプロピレンゴム(EPDM)等の樹脂からなる。Oリング75は、第2嵌合部72の外周部に配置される。これにより、Oリング75は、第2嵌合部72の外周部と前面壁22の中心開口部23の内周部との間をシールする。Oリング76は、円盤部74の外周部に配置される。これにより、Oリング76は、円盤部74の外周部とポンプ本体20の収容空間21の内周壁21aとの間をシールする。
【0048】
ポンプ装置100の組み立ての際には、ポンプ本体20の収容空間21内には、前面壁22の裏面22a側から順にナット用プレート60、防水用プレート70及びソレノイド10が挿入される。その上で、ポンプ本体20の後方のソレノイド10の裏面側に固定用プレート80が取り付けられる。固定用プレート80は、ソレノイド10をポンプ本体20の前面壁22と反対側から固定する。固定用プレート80は、収容空間21を塞ぐようにポンプ本体20に取り付けられる。従って、固定用プレート80によって、ソレノイド10及び防水用プレート70は、ポンプ本体20の後方からポンプ本体20に固定される。
【0049】
すなわち、ソレノイド10及び防水用プレート70は、固定用プレート80に設けられた複数の挿通穴86を介して、ポンプ本体20の収容空間21の外側に設けられた取付ナット29に固定用ボルト89を締結することによって、ポンプ本体20の収容空間21内に固定される。なお、取付ナット29は、ポンプ本体20に、例えばインサート成形等により一体的に埋め込まれている。
【0050】
固定用プレート80の裏面側には、例えば制御基板に接続される制御配線87が引き出される。また、固定用プレート80の中央には、ソレノイド10の可動子12のストローク調整用のストッパ88が螺合されている。これら固定用プレート80とストッパ88との間には、Oリング88aが取り付けられており、ポンプ装置100の運転時の振動等でストッパ88が回転しないように固定されている。
【0051】
一方、ポンプ本体20を組み立てた後、ポンプ本体20の前面壁22には、所定のブラケット40が装着された上で、所定のポンプヘッド30が装着される。つまり、ポンプヘッド30及びブラケット40は、複数の取付穴19及び挿通穴41のピッチに適合するポンプ本体20の収容空間21内に配置されたナット用プレート60の一組のナット穴に、前面壁22の複数の穴部を介して取付ボルト68(図6参照)を締結することによって、ポンプ本体20の前面壁22に固定される。
【0052】
図4及び図5は、ポンプ本体20の前方側を示す図である。図6は、図4のA-A線断面を示す図である。但し、図6には、図4の構成にポンプヘッド30とブラケット40及びダイヤフラム50とを加えて図示している。図7は、ポンプ本体20に所定ピッチの挿通穴41を有するブラケット40を装着した状態を示す斜視図である。図8図10は、ポンプ本体20に所定ピッチの挿通穴41を有するブラケット40を装着した状態を示す正面図である。図11は、ポンプ本体20からブラケット40を取り外した状態を示す斜視図である。
【0053】
図4及び図5に示すように、ポンプ本体20は、その前面壁22に、中心開口部23と、複数の穴部である複数の第1長穴部24と、複数の第2長穴部25と、複数の丸穴部26と、第3長穴部27と、を有する。中心開口部23は、ソレノイド10の駆動軸14と同軸で収容空間21から前面壁22の前方側に開口する。中心開口部23には、防水用プレート70の第2嵌合部72がOリング75を介して嵌合し、中央挿通穴77にソレノイド10の駆動軸14が挿通される。
【0054】
複数の第1長穴部24は、中心開口部23の周囲に、前方から見て中心を通る斜め45°に延びる2つの線上の中心から等距離位置に、90°ずつの間隔で放射状に開口するように、例えば4つ形成されている。複数の第2長穴部25は、中心開口部23の周囲に複数の第1長穴部24と離隔して、前方から見て中心を挟んだ左右の等距離位置から互いに下方に向かって近づく斜め45°の位置まで、中心開口部23の周方向に沿って開口するように、例えば2つ形成されている。複数の丸穴部26は、複数の第1長穴部24及び複数の第2長穴部25とそれぞれ離隔して、中心開口部23の周囲に、前方から見て中心を通る斜め45°に延びる2つの線上の中心から第2長穴部25と同じ距離で第2長穴部25が形成されていない側に、90°の間隔で配置されるように、例えば2つ形成されている。この他、前面壁22には、ナット用プレート60の仮固定用の第3長穴部27が設けられている。
【0055】
第3長穴部27は、中心開口部23の周囲に複数の第1長穴部24、複数の第2長穴部25及び複数の丸穴部26とそれぞれ離隔して、前方から見て中心を通る垂直線上において、複数の第2長穴部25と中心からの距離が等距離位置から下方に向かって放射状に開口するように、例えば1つ形成されている。第3長穴部27には、複数の第1長穴部24、複数の第2長穴部25及び複数の丸穴部26の全てからナット用プレート60のナット穴が臨む状態、又は複数の第1長穴部24及び複数の第2長穴部25の全てからナット用プレート60のナット穴が臨む状態のときに、複数組のナット穴のいずれかの組の一つのナット穴が臨む。
【0056】
従って、前面壁22の複数の第1長穴部24、複数の第2長穴部25、複数の丸穴部26及び第3長穴部27からは、ナット用プレート60の回転方向のいずれかの位置において、複数組のナット穴61~63の一部のナット穴、他の一部のナット穴、残りの他のナット穴及びいずれかの組の一つのナット穴がそれぞれ臨む(露出する)ように形成されている。そして、本実施形態においては、前面壁22の各穴部24~26及びナット用プレート60の第1~第3ナット穴61~63が、ナット用プレート60の回転位置に応じて、取付ピッチが少なくとも3種類変化するように形成されている。
【0057】
ここで、ポンプ本体20の収容空間21内に前面壁22に隣接して配置されたナット用プレート60を回転操作するためには、例えば図4に示すように、ポンプヘッド30とブラケット40及びダイヤフラム50とを前面壁22から取り外した状態で、例えば前方から見て向かって左側の第2長穴部25の下方の開口端部に臨む第1ナット穴61に、操作治具(ボルト、スクリュードライバー等)69を取り付ける。
【0058】
そして、操作治具69を適宜操作して、前面壁22の裏面22a側にあるナット用プレート60を、図中矢印CWで示す方向に、例えば45°回転させる。操作治具69が取り付けられていない回転前の図4に示す状態においては、複数の第1ナット穴61は、例えば複数の第2長穴部25のそれぞれの下方の開口端部(斜め45°の位置)から露出するとともに、複数の丸穴部26からそれぞれ露出する状態となる。また、同時に、複数の第3ナット穴63は、例えば複数の第1長穴部24の中心開口部23から遠い方の開口端部からそれぞれ露出する状態となる。
【0059】
この状態のとき、ナット用プレート60の複数の第1ナット穴61は、最も小さい第1ピッチpt1の4つ穴を形成するように、複数の第2長穴部25及び複数の丸穴部26から露出する。また、ナット用プレート60の複数の第3ナット穴63は、最も大きい第3ピッチpt3の4つ穴を形成するように、複数の第1長穴部24から露出する。更に、複数の第2ナット穴62のうちの一つは、第3長穴部27の下方の開口端部から露出する。
【0060】
一方、第1ピッチpt1より大きく第3ピッチpt3より小さい第2ピッチpt2の4つ穴を形成するためには、例えば図4に示す状態から、上述したように操作治具69を適宜操作してナット用プレート60を45°回転させ、回転後の図5に示す状態にする。そうすると、複数の第2ナット穴62は、図5に示すように、例えば複数の第1長穴部24の中心開口部23に近い方の開口端部からそれぞれ露出する状態となる。
【0061】
この状態のとき、複数の第2ナット穴62は、いわゆる中間ピッチである第2ピッチpt2の4つ穴を形成するように、複数の第1長穴部24から露出する。なお、このとき、複数の第1ナット穴61の一組は、複数の第2長穴部25のそれぞれの上方の開口端部から露出する状態となるが、4つ穴を形成する露出態様ではない。また、複数の第1ナット穴61のうちの一つは、第3長穴部27の上方の開口端部から露出し、複数の第3ナット穴63のうちの一つの一部は、第3長穴部27の下方の開口端部から露出する。
【0062】
そして、操作治具69が取り付けられていない回転後の図5に示す状態から、再び図4に示す状態に戻すときには、例えば前方から見て向かって左側の第2長穴部25の上方の開口端部に露出する第1ナット穴61に操作治具69を取り付ける。その後、操作治具69を適宜操作して、ナット用プレート60を、図中矢印CCWで示す方向に、例えば45°回転させればよい。なお、操作治具69は、複数の第2長穴部25のいずれか一方に臨む第1ナット穴61に取り付けて、上記のようにナット用プレート60を適宜回転させるように操作すればよい。
【0063】
また、図1に示すように、第3長穴部27の下方の開口端部から露出する第2ナット穴62に、仮固定用の固定ボルト67を締結させれば、ナット用プレート60が図4に示す第1ピッチpt1の4つ穴及び第3ピッチpt3の4つ穴を形成する状態で、ポンプ本体20に仮固定される。同様に、第3長穴部27の上方の開口端部から露出する第1ナット穴61に、仮固定用の固定ボルト67を締結させれば、ナット用プレート60が図5に示す第2ピッチpt2の4つ穴を形成する状態で、ポンプ本体20に仮固定される。
【0064】
このようにナット用プレート60をポンプ本体20に仮固定しておけば、ポンプ本体20を輸送する場合やポンプヘッド30を脱着する場合等、ナット用プレート60が意図せず回転して前面壁22の各穴部24~26と各ナット穴61~63との位置関係がズレてしまい、作業性が著しく悪化してしまうことを防止することができる。
【0065】
なお、図1に示すように、ブラケット40の後端側の一部に、仮固定用の固定ボルト67の頭部を非接触で配置可能な逃げ溝部43を形成しておけば、固定ボルトを締結してナット用プレート60の取付ピッチを固定した状態のまま、ポンプヘッド30、ブラケット40及びダイヤフラム50をポンプ本体20に着脱することが可能である。
【0066】
こうして図4及び図5に示す状態にナット用プレート60をそれぞれ回転させたら、図7に示すように、ブラケット40をポンプ本体20の前面壁22に装着する。図8図10は、図7に示す状態のポンプ本体20を正面から見た様子を表している。複数の挿通穴41のピッチが第3ピッチpt3に適合するように作製されたブラケット40を、ポンプ本体20の前面壁22に装着すると、その様子は図8に示すようになる。すなわち、複数の挿通穴41を通して、前面壁22の各第1長穴部24の中心開口部23から遠い方の開口端部にそれぞれ臨む複数組の第3ナット穴63を見ることができる。
【0067】
一方、複数の挿通穴41のピッチが第2ピッチpt2に適合するように作製されたブラケット40Aを、ポンプ本体20の前面壁22に装着すると、その様子は図9に示すようになる。すなわち、複数の挿通穴41を通して、前面壁22の各第1長穴部24の中心開口部23に近い方の開口端部にそれぞれ臨む複数組の第2ナット穴62を見ることができる。
【0068】
更に、複数の挿通穴41のピッチが第1ピッチpt1に適合するように作成されたブラケット40Bを、ポンプ本体20の前面壁22に装着すると、その様子は図10に示すようになる。すなわち、複数の挿通穴41を通して、前面壁22の各第2長穴部25のそれぞれの下方の開口端部及び各丸穴部26にそれぞれ臨む複数組の第1ナット穴61を見ることができる。
【0069】
このように、ブラケット40(40A,40B)は、ポンプ本体20の収容空間21が密閉された状態で、ナット用プレート60の第1ナット穴61、第2ナット穴62及び第3ナット穴63のいずれか一組のナット穴に応じた複数の挿通穴41のピッチごとに、ポンプ本体20の前面壁22に対して交換自在に取り付けられる。なお、ポンプヘッド30の複数の取付穴19は、そのピッチが、ブラケット40(40A,40B)の複数の挿通穴41のピッチに合わせて形成されている。
【0070】
従って、図6に示すように、ポンプヘッド30及びブラケット40は、ポンプヘッド30側から、複数の取付穴19及び挿通穴41のピッチに適合するナット用プレート60の複数のナット穴61~63のうちの一組のナット穴に、ポンプ本体20の前面壁22の複数の第1長穴部24、第2長穴部25及び丸穴部26のうちの少なくとも一組の穴部を介して、例えば取付ボルト68を締結することによって、ポンプ本体20の前面壁22に容易に固定することができる。
【0071】
図6に示す例では、例えばポンプ室31の容積サイズが大きい場合に適用可能なポンプヘッド30及びブラケット40が、ナット用プレート60の最も大きな第3ピッチpt3の取付ピッチを形成する複数の第3ナット穴63に、適合するピッチでポンプヘッド30に形成された取付穴19及びブラケット40に形成された挿通穴41に挿通された取付ボルト68を取り付けることによって、ポンプ本体20に固定された場合を示している。
【0072】
本実施形態のポンプ装置100では、上記のようにナット用プレート60の第1~第3ナット穴61~63が、例えば3種類の異なる取付ピッチを形成する。このため、ポンプ室31の容積サイズの異なる(大きさの異なる)3種類のポンプヘッド30及びこれに適したブラケット40を、ポンプ本体20側を一切分解することなく容易にポンプ本体20の前面壁22に着脱することが可能となる。
【0073】
なお、ポンプ室31のサイズ及びポンプヘッド30の大きさに適宜対応したブラケット40の中央に配置されるダイヤフラム50は、ポンプ本体20の収容空間21のソレノイド10側が、Oリング75,76を有する防水用プレート70によって、前面壁22及びナット用プレート60側と液密に遮断された状態の下で、同様にポンプヘッド30のポンプ室31の容積サイズ等に応じて、容易に着脱及び交換自在に取り付けられる。
【0074】
このように、本実施形態のポンプ装置100では、ポンプ本体20の収容空間21の密閉状態を維持したまま、ポンプヘッド30側から取付ボルト68を締結したり緩めたり操作することで、ポンプヘッド30、ブラケット40を容易にポンプ本体20に着脱することが可能である。例えば、ブラケット40が破損等により交換が必要な場合は、まず、取付ボルト68を緩めて外して、ポンプヘッド30及びダイヤフラム50をブラケット40から取り外す(図7参照)。次に、ポンプ本体20の前面壁22からブラケット40を取り外して(図11参照)、交換品に置き換える。サイズが異なる交換品の取り付けの際は、上述したように複数の取付穴19及び挿通穴41のピッチに適合するようにナット用プレート60を回転させた後に、ポンプ本体20の前面壁22にブラケット40とダイヤフラム50及びポンプヘッド30とを装着して、取付ボルト68を締結して固定するようにすればよい。
【0075】
従って、例えばブラケット40に亀裂が入って破損した場合、不用意にナット用プレート60が回転してしまった場合、取付ボルト68を伝わって外部から液体が前面壁22内に浸入した場合、或いはポンプヘッド30の取り付けが甘い(不確実な)場合など、ポンプヘッド30側に問題が生じてその防水性が損なわれたとしても、ポンプ本体20の収容空間21内のソレノイド10側への液体の浸入は、Oリング75,76を有する防水用プレート70によって確実に防止される。このように、本実施形態のポンプ装置100では、ポンプヘッド30側の問題如何に拘わらず、ポンプ本体20の収容空間21内の防水性は確保される。
【0076】
なお、ポンプ本体20の収容空間21内に前面壁22に沿って回転可能に配置されたナット用プレート60は、収容空間21内において、例えば前面壁22の裏面22aとの間に僅かな隙間をもって収容されている。ただし、このナット用プレート60は、仮固定用の固定ボルトで仮固定から本固定した場合を除き、ポンプヘッド30とブラケット40及びダイヤフラム50とをポンプ本体20の前面壁22の表面22b側に装着し、取付ボルト68をナット用プレート60の適切なナット穴に取付穴19及び挿通穴41を介して締結して固定することで、収容空間21内においてポンプ本体20の前面壁22の裏面22aに回転不能に密着する。従って、収容空間21内のソレノイド10側の防水性を確保したまま、ポンプヘッド30及びブラケット40を確実且つ強固にポンプ本体20の前面壁22に固定することが可能となる。
【0077】
以上述べたように、本実施形態に係るポンプ装置100は、取付ボルト68の取付ピッチが異なるポンプヘッド30をブラケット40とともにポンプ全体を分解することなく、ポンプ本体20に容易に着脱可能にすることができる。そして、ポンプヘッド30側の分解時の収容空間21内部のソレノイド10側への液体の浸入リスクを無くすことができる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0079】
例えば、上記の実施形態では、ポンプ本体20の前面壁22に複数の穴部24~26を形成し、ナット用プレート60に複数のナット穴61~63を形成して、ナット用プレート60の回転により3種類の異なる取付ピッチのナット穴が前面壁22の各穴部24~26から露出する構造とした。これら各穴部24~26及びナット穴61~63は、その他、より多くの取付ピッチを実現するために、種々の開口形状及び穴配置(形成)の態様を採り得る。
【0080】
また、上記の実施形態では、ポンプ装置100が防水用プレート70及び固定用プレート80を備える構成としたが、これに限定されるものではない。これらのプレート70,80は、例えば防水性を問題としないポンプ装置や、ポンプ本体20自体でソレノイド10を固定する(例えば、2分割型で共締め固定する等)タイプのポンプ装置に本発明の構成を適用する場合においては、取捨選択が可能であるため必須の構成ではない。
【0081】
また、上記の実施形態では、防水用プレート70の第3嵌合部73が、第1及び第2嵌合部71,72と反対側に突出する構成としたが、これに限定されるものではない。例えばナット用プレート60の後方側の外周縁部に凹み部を形成しておけば、第3嵌合部73は、第1及び第2嵌合部71,72と同じ方向に突出する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 ソレノイド
19 取付穴
20 ポンプ本体
22 前面壁
24 第1長穴部
25 第2長穴部
26 丸穴部
27 第3長穴部
30 ポンプヘッド
40 ブラケット
41 挿通穴
50 ダイヤフラム
60 ナット用プレート
61 第1ナット穴
62 第2ナット穴
63 第3ナット穴
70 防水用プレート
75,76 Oリング
80 固定用プレート
100 ポンプ装置
【要約】
取付ねじの取付ピッチが異なるポンプヘッドをブラケットとともにポンプ全体を分解することなく、ポンプ本体に容易に着脱可能にする。
ポンプ装置は、駆動源と、第1壁を有するとともに、第1壁の一方の側に駆動源を内部に収容する収容空間を有するポンプ本体と、ポンプ室と、ポンプ室と連通する移送流体の吸込口及び吐出口と、を有し、第1壁の他方の側に取り付けられるポンプヘッドと、ポンプヘッドと第1壁との間に配置されるブラケットと、駆動源によってポンプ室内で駆動される駆動部材と、ポンプ本体の収容空間内に第1壁に隣接して配置される円環状のナット用プレートと、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11