(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】抵抗溶接用電極
(51)【国際特許分類】
B23K 11/30 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
B23K11/30
(21)【出願番号】P 2018141872
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】392014760
【氏名又は名称】新光機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蕗澤 武夫
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-020953(JP,A)
【文献】実開昭55-138480(JP,U)
【文献】特開平08-221129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記揺動電極の電極面が水平の場合、付勢装置の付勢力によって、前記円弧状突起から前記円弧状凹部が空間を開けて支持部材に揺動電極が支持されていることを特徴とした
請求項1に記載の抵抗溶接用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抵抗溶接に用いられる電極、特にスイベルチップと呼ばれている電極部が揺動可能な抵抗溶接用電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電極として、従来、
図3に示すように、上部電極51の導電性の支持部材52に円弧状先端部53を形成し、導電性の揺動電極54の基端に、円弧状先端部53に対応した円弧状凹部55を形成し、支持部材52の円弧状先端部53を揺動電極54の円弧状凹部55に嵌め込んで支持部材52に揺動電極54を揺動可能揺動可能に装着し、ワーク56の傾斜面にワーク57を溶接する場合、揺動電極54の電極面58がワーク57に当接するように支持部材52に対して揺動し、揺動電極54によってワーク56、57を加圧通電するようになっていた。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のものでは、溶接後に上部電極51が上昇したとき、揺動電極54の電極面58が元の水平状態に戻らないことがあり、電極面58が傾斜した状態で、上部電極51が溶接のため下降し、傾斜した電極面58の下端部がワーク57に当接したとき、ワーク57が波打ち、歪み等により変形していると、ワーク57の変形により、揺動電極54の揺動が阻止され溶接不良となるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記の問題を解決し、揺動電極を常に電極面が水平になるように付勢する付勢装置を設けたことにより、揺動電極の揺動が阻止されることによる溶接不良を防止した抵抗溶接用電極を提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の抵抗溶接用電極は、支持部材の先端と揺動電極の基端の一方に円弧状突起を形成するとともに、他方に円弧状突起に対応する円弧状凹部を形成し、円弧状凹部に円弧状突起を嵌め込んで支持部材に揺動電極を揺動可能に取付けた抵抗溶接用電極において、揺動電極を電極面が水平になるように付勢する付勢装置を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
前記付勢装置が、前記円弧状突起の中心に設けた装着穴に装着した圧縮コイルばねと、この圧縮コイルばねの先端と、前記円弧状凹部の中心に設けた円錐状凹部の壁面の間に介装された球体とからなるものである。
【0008】
前記揺動電極の電極面が水平の場合、付勢装置の付勢力によって、前記円弧状突起から前記円弧状凹部が空間を開けて支持部材に揺動電極が支持されていることが好ましく、これを請求項2の発明とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、揺動電極を電極面が水平になるように付勢する付勢装置を設けたので、上部電極が上昇すると、揺動電極は常に電極面が水平になるので、溶接不良を防止できる。
【0010】
そして、前記付勢装置が、前記円弧状突起の中心に設けた装着穴に装着した圧縮コイルばねと、この圧縮コイルばねの先端と、前記円弧状凹部の中心に設けた円錐状凹部の壁面の間に介装された球体とからなるので、球体の回転により、揺動電極が円滑に揺動することができる。
【0011】
請求項2の発明では、前記揺動電極の電極面が水平の場合、付勢装置の付勢力によって、前記円弧状突起から前記円弧状凹部が空間を開けて支持部材に揺動電極が支持されているので、揺動電極が弱い力にて円滑に揺動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1の電極の溶接時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、
図1及び
図2に基づいて説明すると。1は基部2と基部2の先端に形成された円弧状突起3からなる導電性の支持部材であり、円弧状突起3の基端部は基部2より大径で、基部2と円弧状突起3との間には段差部4が設けられるとともに円弧状突起3の先端の中心には円柱形の装着穴5が設けられている。
【0014】
6は、電極部7と電極部7の基端にボルト8にて取付けられた抜け止め部材9とからなる導電性の揺動電極であり、揺動電極6の電極部7の先端面は平面状の電極面10が形成されるとともに、基端面には、前記支持部材1の円弧状突起3に対応する、中心に円錐状凹部11を設けた円弧状凹部12が形成され、また抜け止め部材9には、前記支持部材1の基部2が貫通される貫通孔13が形成されている。
【0015】
14は支持部材1の装着穴5に装着された圧縮コイルばね15と圧縮コイルばね15の先端と揺動電極6の円錐状凹部11の壁面との間に介装された鋼球である球体16からなる付勢装置であり、付勢装置14にて揺動電極6を常に電極面10が水平になるように付勢しており、また揺動電極6の電極面10が水平になったとき、支持部材1の円弧状突起3から揺動電極6の円弧状凹部12が空間を開けて支持されている。
【0016】
次に、前記電極の組立方法について説明すると、支持部材1の装着穴5に圧縮コイルばね15を装着し、球体16を圧縮コイルばね15の先端に乗せ、支持部材1の円弧状突起3を、揺動電極6の円弧状凹部12に嵌め合せ、抜け止め部材9の貫通孔13を支持部材1の基部2を貫通させて抜け止め部材9を電極部7の基端にボルト8にて取付ける、この時、
図1に示すように、円弧状突起3の段差4が抜け止め部材9に当接し、支持部材1の円弧状突起3と揺動電極6の円弧状凹部12は付勢装置14によって離れた状態で対応して、また装着穴5と円錐状凹部11も対応している。
【0017】
さらに、溶接方法を説明すると、
図1に示す、揺動電極6の電極面10が水平な状態から上部電極17が下降し、揺動電極6がワーク18に当接し、支持部材1の円弧状突起3が揺動電極6の円弧状凹部12に接触するとともに、揺動電極6が揺動し、
図2に示すように、揺動電極6の電極面10がワーク18に当接し、上部電極17、ワーク18、19、下部電極20に電流が流れワーク18、19を溶接する。
【0018】
溶接終了後、上部電極17が上昇すると揺動電極6は付勢装置14のバネ力によって、円弧状凹部12が支持部材1の円弧状突起3から離れるとともに、揺動して電極面10が水平状態となり、支持装置1の段差部4が抜け止め部材9に当接して停止し、
図1の状態になる。
【0019】
以上のように、本発明によれば、揺動電極6を電極面10が水平になるように付勢する付勢装置14を設けたので、上部電極17が上昇すると、揺動電極6は常に電極面10が水平になるので、溶接不良を防止できる。
【0020】
また、前記付勢装置14が、前記円弧状突起3の中心に設けた装着穴5に装着した圧縮コイルばね15と、この圧縮コイルばね15の先端と前記円弧状凹部12の中心に設けた円錐状凹部11の壁面の間に介装された球体16とからなるので、球体16の回転により、揺動電極6が円滑に揺動することができる。
【0021】
さらに、前記揺動電極6の電極面が水平の場合、付勢装置14の付勢力によって、前記円弧状突起3から前記円弧状凹部12が空間を開けて支持部材1に揺動電極6が支持されているので、揺動電極6が弱い力にて円滑に揺動することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 支持部材
2 基部
3 円弧状突起
4 段差部
5 装着穴
6 揺動電極
7 電極部
8 ボルト
9 抜け止め部材
10 電極面
11 円錐状凹部
12 円弧状凹部
13 貫通孔
14 付勢装置
15 圧縮コイルばね
16 球体