(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】エアモルタル用プレミックス材、エアモルタル、エアモルタルの製造方法、エアモルタルの製造装置
(51)【国際特許分類】
C04B 28/08 20060101AFI20221025BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20221025BHJP
C04B 24/16 20060101ALI20221025BHJP
B28C 9/04 20060101ALI20221025BHJP
B28C 7/04 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B14/10 Z
C04B24/16
B28C9/04
B28C7/04
(21)【出願番号】P 2020129763
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591284092
【氏名又は名称】麻生フオームクリート株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000168506
【氏名又は名称】鉱研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大川 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 栞
(72)【発明者】
【氏名】宮川 雅文
(72)【発明者】
【氏名】西野 岳人
(72)【発明者】
【氏名】舘 徳一
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅浩
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210688(JP,A)
【文献】特開2014-091665(JP,A)
【文献】特開2020-083663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C04B 40/00 - 40/06
B28C 1/00 - 9/04
E21D 11/00 - 19/06
E21D 23/00 - 23/26
C09K 17/00 - 17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉セメントの粉体と、ベントナイト系粘土鉱物の粉体と、アニオン系起泡剤の粉体とが混合された混合粉体からなり、前記粘土鉱物が前記高炉セメントと前記粘土鉱物との合計量に対し5重量%以上10重量%未満の範囲で含まれるように混合されたエアモルタル用プレミックス材を調整する段階と、
調整後のエアモルタル用プレミックス材を袋体内に充填する段階と、
前記袋体を昇降移動可能な投入台に載置して固定する段階と、
傾斜シリンダによって前記投入台をミキサータンク側に傾斜させ、バイブレータによって振動させながら前記袋体内のエアモルタル用プレミックス材を前記ミキサータンク内に投入すると共に、水タンク内の水を水配管部からミキサータンクに供給し、メイン撹拌羽根をミキサータンク内で回転させて混錬し、フロー値が160mm~220mm、密度が
7kN/m
3
以上11kN/m
3
の範囲の混練物を調整する段階と、
前記ミキサータンクの底部から前記混練物をアジテータタンク内に落下させ、アジテータタンク内でサブ撹拌羽根を回転させて前記混練物の分離を防止しながら、圧送ポンプの吸引力で混練物を吸い上げて施工場所に圧送する段階と、を備えていることを特徴とするエアモルタルの製造方法。
【請求項2】
高炉セメントの粉体と、ベントナイト系粘土鉱物の粉体と、アニオン系起泡剤の粉体とが混合された混合粉体からなり、前記粘土鉱物が前記高炉セメントと前記粘土鉱物との合計量に対し5重量%以上10重量%未満の範囲で含まれるように混合されて調整されたエアモルタル用プレミックス材と、前記エアモルタル用プレミックス材を水によって混練することによりフロー値が160mm~220mm、密度が7kN/m
3
以上11kN/m
3
の範囲の混練物からなるエアモルタルを製造する装置であって、
前記エアモルタル用プレミックス材が充填された袋体が載置される投入台と、
前記投入台上の袋体から前記エアモルタル用プレミックス材が投入されると共に水タンク内の水が水配管部から供給されてエアモルタル用プレミックス材と水とが混錬された混練物を調整するミキサータンクと、
前記ミキサータンクの下部に配置され、ミキサータンク内の混練物が落下されると共に落下された混練物の分離を防止するアジテータタンクと、
前記投入台、水配管部、ミキサータンク及びアジテータタンクが取り付けられると共に車輪が取り付けられて移動可能となっている台車とを備え、
前記投入台は、前記袋体に差し込まれて袋体を固定するスパイクと、前記ミキサータンク側へ傾斜させる傾斜シリンダと、全体を振動させるバイブレータとを備え、
前記ミキサータンクは内面が下方に向かって径が漸減するテーパ状斜面に形成されると共に、回転駆動して前記混練物を混錬するメイン撹拌羽根を備え、
前記アジテータタンクは回転によって前記混練物の分離を防止するサブ撹拌羽根及び前記混練物の上面を検知して混練物の溢れを防止するレベル計を備えていることを特徴とするエアモルタルの製造装置。
【請求項3】
前記ミキサータンクの内面及び前記アジテータタンクの内面が低摩擦面となっていることを特徴とする請求項
2記載のエアモルタルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアモルタル用プレミックス材、エアモルタル、エアモルタルの製造方法及びエアモルタルの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアモルタルは、気泡を含んでいることから軽量且つ流動性が良好なため、空洞充填、軽量盛土、管再生用の中詰材などの土木工事に多用されている。
特許文献1には、セメントと、粘土鉱物と、アルファオレフィンスルホン酸系の起泡剤とを混合した混合粉体に水を加えて混錬してエアモルタルを調整する技術が記載されている。特許文献2には、セメントと、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムからなる起泡剤と、水とを混練してエアモルタルとする技術が記載されている。
【0003】
しかしながら、従来では、エアモルタルを施工現場で製造するためには、セメント等の原料粉体の運搬媒体、起泡剤の運搬媒体を別個に必要とするばかりでなく、これらを混合したり、圧送するためのプラントを設置する必要があり、設備が大規模となる問題を有している。
また、施工現場で均一な品質のエルモルタルを得ることが難しく、エアモルタルの調整に手間取る問題も有している。
さらに、エアモルタルを施工現場で長時間放置すると、泡抜けによる消泡現象が発生し、安定した品質での施工が難しい問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6011931号公報
【文献】特許第6198126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大規模な設備を不要とし、施工現場で均一品質のエアモルタルを簡単に調整することができ、しかも消泡現象の発生を抑制することができるモルタル用プレミックス材を提供することを目的とする。
また、本発明は、このモルタル用プレミックス材を用いることにより均一な品質を有し、簡単に調整することができ、短時間で施工に供することが可能なエアモルタルを提供すると共に、このエアモルタルの製造方法、エアモルタルの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエアモルタルの製造方法は、高炉セメントの粉体と、ベントナイト系粘土鉱物の粉体と、アニオン系起泡剤の粉体とが混合された混合粉体からなり、前記粘土鉱物が前記高炉セメントと前記粘土鉱物との合計量に対し5重量%以上10重量%未満の範囲で含まれるように混合されたエアモルタル用プレミックス材を調整する段階と、調整後のエアモルタル用プレミックス材を袋体内に充填する段階と、前記袋体を昇降移動可能な投入台に載置して固定する段階と、傾斜シリンダによって前記投入台をミキサータンク側に傾斜させ、バイブレータによって振動させながら前記袋体内のエアモルタル用プレミックス材を前記ミキサータンク内に投入すると共に、水タンク内の水を水配管部からミキサータンクに供給し、メイン撹拌羽根をミキサータンク内で回転させて混錬し、フロー値が160mm~220mm、密度が7kN/m
3
以上11kN/m
3
の範囲の混練物を調整する段階と、前記ミキサータンクの底部から前記混練物をアジテータタンク内に落下させ、アジテータタンク内でサブ撹拌羽根を回転させて前記混練物の分離を防止しながら、圧送ポンプの吸引力で混練物を吸い上げて施工場所に圧送する段階と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明のエアモルタルの製造装置は、高炉セメントの粉体と、ベントナイト系粘土鉱物の粉体と、アニオン系起泡剤の粉体とが混合された混合粉体からなり、前記粘土鉱物が前記高炉セメントと前記粘土鉱物との合計量に対し5重量%以上10重量%未満の範囲で含まれるように混合されて調整されたエアモルタル用プレミックス材と、前記エアモルタル用プレミックス材を水によって混練することによりフロー値が160mm~220mm、密度が7kN/m
3
以上11kN/m
3
の範囲の混練物からなるエアモルタルを製造する装置であって、前記エアモルタル用プレミックス材が充填された袋体が載置される投入台と、前記投入台上の袋体から前記エアモルタル用プレミックス材が投入されると共に水タンク内の水が水配管部から供給されてエアモルタル用プレミックス材と水とが混錬された混練物を調整するミキサータンクと、前記ミキサータンクの下部に配置され、ミキサータンク内の混練物が落下されると共に落下された混練物の分離を防止するアジテータタンクと、前記投入台、水配管部、ミキサータンク及びアジテータタンクが取り付けられると共に車輪が取り付けられて移動可能となっている台車とを備え、前記投入台は、前記袋体に差し込まれて袋体を固定するスパイクと、前記ミキサータンク側へ傾斜させる傾斜シリンダと、全体を振動させるバイブレータとを備え、前記ミキサータンクは内面が下方に向かって径が漸減するテーパ状斜面に形成されると共に、回転駆動して前記混練物を混錬するメイン撹拌羽根を備え、前記アジテータタンクは回転によって前記混練物の分離を防止するサブ撹拌羽根及び前記混練物の上面を検知して混練物の溢れを防止するレベル計を備えていることを特徴とする。
【0011】
この製造装置においては、前記ミキサータンクの内面及び前記アジテータタンクの内面が低摩擦面となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、施工現場で均一品質のエアモルタルを簡単に調整することができ、消泡現象の発生を抑制することができるモルタル用プレミックス材とすることができる。
また、本発明によれば、均一な品質を有し、簡単に調整することができ、短時間で施工に供することが可能なエアモルタルとすることができる。
さらに、本発明によれば、施工現場でエアモルタルを簡単に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のエアモルタル用プレミックス材は、エアモルタルを調整するための混合粉体であり、このエアモルタル用プレミックス材を水と混練することによりエアモルタルを製造することができる。本発明のエアモルタル用プレミックス材は、高炉セメントの粉体と、ベントナイト系粘土鉱物の粉体と、アニオン系起泡剤の粉体とが混合された混合粉体からなり、前記粘土鉱物が前記高炉セメントと前記粘土鉱物との合計量に対し、5重量%以上10重量%未満の範囲で含まれるように混合されているものである。
【0015】
高炉セメントとしては、使用時間の調整が容易で安価な商品名「高炉セメントB種」(麻生セメント社製)或いは「高炉セメントB種」(太平洋セメント社製)等の粉体を用いることができる。
ベントナイト系粘土鉱物としては、ベントナイト、モンモリロナイト等の内の一種又は複数種の粉体を用いることができる。ベントナイト系粘土鉱物として、商品名「クニゲルV2」(クニミネ工業社製)を選択することができる。かかるベントナイト系粘土鉱物を用いることによりエアモルタルの気泡を安定させることができ、しかも強度の調整が容易となる。
アニオン系起泡剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩(AS)、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム(AOS)等が挙げられる。特にアルファオレフィンスルホン酸系の起泡剤粉体が好適である。アルファオレフィンスルホン酸系の起泡剤としては、例えばライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「リポランPJ-400CJ」、「リポランPB-800CJ」を選択することができる。
【0016】
以上の高炉セメントの粉体、ベントナイト系粘土鉱物の粉体及びアニオン系起泡剤の粉体の混合粉体としては、ベントナイト系粘土鉱物が高炉セメントと粘土鉱物との合計量に対し、5重量%以上10重量%未満の配合比の範囲で含まれるように調整される。ベントナイト系粘土鉱物が5重量%未満の場合、エアモルタル用プレミックス材を用いて調整したエアモルタル中に気泡を十分に安定させることができず、気泡不足となる。ベントナイト系粘土鉱物が10重量%を超えた場合、粘度が大きくなって混練しにくくなり、しかもエアモルタルの強度が大きくなりすぎて取り扱いが難しくなる。
【0017】
アニオン系起泡剤の配合比は、高炉セメントに対し、0.5重量%~1.5重量%の範囲が良好である。0.5重量%未満の場合には、エアモルタル用プレミックス材を用いて調整したエアモルタルの気泡量が不足する一方、1.5重量%を超えた場合、エアモルタル中の気泡量が多くなりすぎてエアモルタルの強度が低下する。
【0018】
以上の高炉セメントの粉体、ベントナイト系粘土鉱物の粉体、アニオン系起泡剤の粉体を均一に混合することによりエアモルタル用プレミックス材が調整され、調整後に袋体内に所定重量が充填される。この場合、作業者が持ち運び可能な重量(例えば、25Kg)となるように袋体内に充填される。又、袋体としては、破断が容易な紙材料の袋体が使用される。このように袋体内に充填された状態でエアモルタルの施工現場に搬送された後、施工現場で袋体から取り出されて水と混練される。これにより施工現場でエアモルタルが調整される。
【0019】
本発明のエアモルタルは、高炉セメントの粉体、ベントナイト系粘土鉱物の粉体及びアニオン系起泡剤の粉体からなり、ベントナイト系粘土鉱物が高炉セメントとベントナイト系粘土鉱物との合計量に対し5重量%以上10重量%未満の範囲で含まれるように混合したエアモルタル用プレミックス材と、このエアモルタル用プレミックス材を混練する水とからなるものであり、水の混練による混練物は、フロー値が160mm~220mm、密度が7kN/m
3
以上11kN/m
3
の範囲となるものである。
【0020】
また、本発明のエアモルタルの製造方法は、高炉セメントの粉体、ベントナイト系粘土鉱物の粉体及びアニオン系起泡剤の粉体の混合粉体からなり、ベントナイト系粘土鉱物が高炉セメントとベントナイト系粘土鉱物との合計量に対し5重量%以上10重量%未満の範囲で含まれるように混合してエアモルタル用プレミックス材を調整した後、袋体内に充填する段階と、袋体内からエアモルタル用プレミックス材を取り出しエアモルタル用プレミックス材に水を加えて混練する混練段階と、からなり、混練段階では、フロー値が160mm~220mm、密度が7kN/m
3
以上11kN/m
3
の範囲の混練物となるように調整するものである。
【0021】
エアモルタル用プレミックス材に対し、混練時に加える水は高炉セメントと略同量が良好である。水の量はエアモルタルのフロー値が160mm~220mmの範囲、密度が7kN/m
3
以上11kN/m
3
の範囲となるように調整される。
【0022】
フロー値は施工現場の充填部分にエアモルタルが十分に流れ込むように選択される。ここでのフロー値は、JHS A 313に規定されたものであり、硬化プラスチック板上に径80mm、高さ80mmの円筒体を静止させ、エアモルタルを円筒体の天端まで入れた後、円筒体を垂直に引き上げてエアモルタルの円形の拡がりを直径で測定した値である。かかるフロー値が160mm未満の場合には、エアモルタルが流動性に欠け、フロー値が220mmを超える場合には、流動性が大きすぎて施工現場の充填部分から流れ出る状態となる。
【0023】
エアモルタルの密度は、7kN/m
3
以上11kN/m
3
の範囲が良好である。密度が7kN/m
3
未満の場合には、エアモルタル内に空洞ができやすくなって強度不足となり、11kN/m
3
を超える場合には、エアモルタルの流動性が小さくなって施工現場の充填部分へ十分な充填ができなくなる。
【0024】
エアモルタルの調整に際しては、以上の材料に加えて砂等の細骨材を混合することが良好である。細骨材を混合することにより、エアモルタルの強度を大きくすることができ、耐久性を付与することができる。細骨材の配合比としては、エアモルタルの強度との関係で、高炉セメントに対し10~75重量%の範囲で任意に調整することができる。
【0025】
表1は、エアモルタルの配合例の一つを示しているが、これに限定されるものではない。
【0026】
【0027】
以上の本発明では、高炉セメントの粉体、ベントナイト系粘土鉱物の粉体、アニオン系起泡剤の粉体を混合してエアモルタル用プレミックス材を調整し、このエアモルタル用プレミックス材を袋体内に充填する。そして、袋体内に充填された状態で施工現場に搬送した後、施工現場で袋体から取り出して水と混練することにより施工現場でエアモルタルを調整することができる。
このような本発明では、施工現場でエアモルタル用プレミックス材を使用してエアモルタルを調整するため、エアモルタルに用いる個々の材料を別個に施工現場に運搬する必要がなくなると共に、エアモルタル調整のための大規模なプラントの設置が不要となる。事前に調合されたエアモルタル用プレミックス材を用いてエアモルタルを調整するため、施工現場で均一品質のエアモルタルを簡単に調整することができる。しかもエアモルタルの調整の後、直ちに使用することができるため、エアモルタルを長時間放置することがなく、泡抜けによる消泡現象の発生がなくなり、安定した品質での施工が可能となる。
【0028】
図1及び
図2は、エアモルタルを製造するための本発明の製造装置1を示す。エアモルタルの製造装置1は、ミキサー部2と、アジテータ部3と、水配管部4と、制御部5と、以上の構成部材を運搬可能に支持する台車6とによって構成されている。この製造装置1は、エアモルタル用プレミックス材を水と混錬してエアモルタルを調整するものである。
【0029】
台車6は電動牽引車60と、電動牽引車60に牽引される荷台車61とを有している。電動牽引車60及び荷台車61は車輪62,63がそれぞれ取り付けられることにより施工現場への移動可能となっている、荷台車61にはフレーム64が立ち上がり状に設けられることにより、ミキサー部2、アジテータ部3及び制御部5の取り付けが可能となっている。なお、水配管部4は荷台車61の外に配置されるが、荷台車61上に載置しても良い。
【0030】
ミキサー部2はエアモルタル用プレミックス材を水と混錬して混練物としてのエアモルタルを調整するミキサータンク20と、ミキサータンク20にエアモルタル用プレミックス材を投入するための投入台21とを有している。
【0031】
投入台21はフレーム64における手前側(電動牽引車60側)に所定高さで取り付けられており、エアモルタル用プレミックス材が充填された袋体7が載置される。投入台21には袋体7に差し込まれて袋体7を固定するためのスパイク22が突出しており、投入台21からの袋体7の不用意な落下が防止されている。なお、スパイク22は、エアシリンダにより可動させることが可能であり、使用しないときは、投入台21からスパイク22を突出させないことにより安全に使用することができる。
又、投入台21は傾斜シリンダ23によってミキサータンク20側へ傾斜可能となっており、傾斜状態で袋口からエアモルタル用プレミックス材がミキサータンク20内に投入される。投入台21にはバイブレータ24が取り付けられており、エアモルタル用プレミックス材の投入が円滑に行われるようになっている。
【0032】
ミキサータンク20は内面20aが下方に向かって径が漸減するテーパ状斜面となっており、内部で混練された混練物(エアモルタル)の排出が容易となっている。ミキサータンク20の内面20aは、研磨加工、低摩擦金属層のメッキ加工やフッ素樹脂コーティング等の低摩擦加工が施された低摩擦面となってエアモルタルの残留が抑制されている。ミキサータンク20の下端部にはバタフライバルブ25が取り付けられ、バタフライバルブ25が開くことにより混練物の排出が行われる。
また、ミキサータンク20の外面にバイブレータ29を取り付けてミキサータンク20を振動させることによって混練物を効果的に排出させることができる。
【0033】
ミキサータンク20には、メイン撹拌羽根としてのハンドミキサー26が差し込まれる。ハンドミキサー26は電動によって回転されるものであり、ミキサータンク20の上端部の把持ブラケット27に保持されて差し込み角度の調整が可能となっている。また、ハンドミキサー26は上下用シリンダ28によって上下位置が調整可能となっている。以上のハンドミキサー26は下端部に羽根体を有しており、例えば、500~1400(回転/分)の回転数で回転してエアモルタルを混練する。
【0034】
アジテータ部3はミキサータンク20の下側に配置されたアジテータタンク30と、アジテータタンク30内で回転するサブ撹拌羽根31を有している。
アジテータタンク30は下に向かって傾斜する底面を有したバケツ形状に形成されていると共に、内面30a(特に底面部分)は、研磨加工、低摩擦金属層のメッキ加工やフッ素樹脂コーティング等の低摩擦加工が施された低摩擦面となっている。これによりエアモルタルの排出がし易いと共にエアモルタルの残留を抑制することができる。
【0035】
サブ撹拌羽根31はアジテータタンク30の底面に沿って回転する羽根体31aを有している。このサブ撹拌羽根31はギヤードモータ32の動力がVプーリ33を介して伝達されることにより電動によって緩スピードで回転し、この回転によってアジテータタンク30内の混練物の分離を防止する。
【0036】
アジテータタンク30には、レベル計34が挿入されている。レベル計34はアジテータタンク30内の混練物の上面を検知して混練物が溢れ出ないようにチェックするセンサである。アジテータタンク30内の混練物(エアモルタル)はアジテータタンク30の下端部から排出される。アジテータタンク30の下端部は、圧送ポンプ35が接続されており、圧送ポンプ35の駆動によってエアモルタルは施工場所に圧送される。
【0037】
水配管部4は、水を貯留した水タンク40と、水タンク40内の水を圧送するための水ポンプ41と、水タンク40とミキサータンク20との間に配管されて水タンク40の水をミキサータンク20に供給する配管42とを備えている。
【0038】
制御部5は、制御盤50、コンプレッサ51、電磁弁52を有している。制御盤50は機器全体を制御する。コンプレッサ51は電磁弁52を制御して傾斜シリンダ23にエアを供給する。
【0039】
次に、この製造装置1を用いたエアモルタルの製造を説明する。
電動牽引車60によって製造装置1の全体を施工場所に移動させる。施工場所に移動した時、投入台21上にエアモルタル用プレミックス材を調整した袋体7が載置される。エアモルタル用プレミックス材は、高炉セメントの粉体、ベントナイト系粘土鉱物の粉体及びアニオン系起泡剤の粉体の混合粉体からなり、前記粘土鉱物が前記高炉セメントと前記粘土鉱物との合計量に対し5重量%以上10重量%未満の範囲で含まれるように混合することにより調整されて袋体7に充填される。
【0040】
袋体7は投入台21上に載置され、スパイク22が差し込まれることによって投入台21に固定される。袋体7の袋口を開放した後、傾斜シリンダ23を駆動して投入台21をミキサータンク20側に傾け、バイブレータ24によって振動させることにより袋体7内のエアモルタル用プレミックス材をミキサータンク20内に投入する。水ポンプ41を駆動して水タンク40内の水をミキサータンク20内に注入しながらハンドミキサー26を電動回転させる。このとき、上下用シリンダ28によってハンドミキサー26を上下させて撹拌を行い、ミキサータンク20内の粉体及び水を混練する。そして、フロー値が160mm~220mm、密度が7kN/m
3
以上11kN/m
3
の範囲の混練物を調整する。この混練では、アニオン系起泡剤から気泡が発生してエアモルタルが調整される。
【0041】
そしてバタフライバルブ25を開いてミキサータンク20内の混合物(エアモルタル)をアジテータタンク30に落下させ、サブ撹拌羽根31を回転させて混練物の分離を防止しながら圧送ポンプ35によって混練物を施工場所に圧送する。
【0042】
以上のような製造装置1では、施工現場に移動した後、エアモルタル用プレミックス材を袋体から取り出して水と混練することによりエアモルタルを施工現場で調整することができる。このように施工現場でエアモルタル用プレミックス材を使用してエアモルタルを調整するため、エアモルタルに用いる個々の材料を別個に施工現場に運搬する必要がなくなり、エアモルタル調整のための大規模なプラントの設置が不要となる。又、エアモルタルの調整の後、直ちに使用することができるため、エアモルタルを長時間放置することがなく、泡抜けによる消泡現象の発生がなくなり、安定した品質での施工が可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 製造装置
2 ミキサー部
3 アジテータ部
4 水配管部
6 台車
20 ミキサータンク
21 投入台
22 スパイク
23 傾斜シリンダ
24 バイブレータ
26 ハンドミキサー(メイン撹拌羽根)
30 アジテータタンク
31 サブ撹拌羽根
40 水タンク