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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20221025BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G02B30/56
B60K35/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018231323
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020095101
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】恒川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】河村 知史
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕紹
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199917(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0024373(US,A1)
【文献】特開2018-151465(JP,A)
【文献】特開2005-001235(JP,A)
【文献】特開2010-188768(JP,A)
【文献】特開2013-182121(JP,A)
【文献】特開2008-166024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00-30/60
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源よりも下方に配置され、入射された光を再帰反射する再帰反射部材と、
前記光源からの光の少なくとも一部を反射して前記再帰反射部材へと出射すると共に、前記再帰反射部材で再帰反射され入射された光の少なくとも一部を透過する光分岐部材と、を備え、
前記再帰反射部材で再帰反射され前記光分岐部材を透過した光が前記光源の像である空中像を空中に結像するように構成され、
水平方向と平行な外光の前記再帰反射部材への入射を遮るように設けられた第2再帰反射部材を備え、
前記第2再帰反射部材は、前記光分岐部材側に、入射された光を再帰反射する再帰反射面を有する、
車両用表示装置。
【請求項2】
前記光源は、前記第2再帰反射部材の前記再帰反射面で再帰反射され前記光源まで戻った戻り光を拡散させ、再度前記光分岐部材へと出射させることが可能な拡散体を有する、
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記第2再帰反射部材は、外光の入射側に、入射される外光を遮光可能な遮光層を有する、
請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記光分岐部材の前記空中像側の面を覆うように設けられ、入射された可視光の一部を透過する半透過性のカバーを備えた、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記光分岐部材は、特定の偏光を反射し、該特定の偏光と直交する偏光を透過する反射型偏光板からなり、
前記光分岐部材の外光の入射側を覆うように配置され、前記特定の偏光を透過可能な偏光板と、
前記偏光板と前記光分岐部材との間にそれぞれ配置され、入射される光の電界振動方向を,前記光分岐部材を透過する方向に変換するように位相差を与える外側波長板と、
前記光分岐部材と前記再帰反射部材との間に配置され、外光に対しては再帰反射された光の電界振動方向を前記光分岐部材で反射される方向に変換するように、かつ、前記光源からの光に対しては再帰反射後の電界振動方向が前記光分岐部を透過する方向に変換するように位相差を与える内側波長板と、を備えた、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記光源と前記光分岐部材との間に配置され、前記特定の偏光を透過可能な光源用偏光板と、
前記第2再帰反射部材と前記光分岐部材との間に配置され、外光に対しては再帰反射後の光の電界振動方向を前記光分岐部材を透過する方向に変換するように、かつ、前記光源からの光に対しては再帰反射後の電界振動方向が前記光分岐部材を反射する方向に変換するように位相差を与える第2再帰反射部材用波長板と、を備えた、
請求項5に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記再帰反射部材及び前記第2再帰反射部材にそれぞれ設けられ、前記再帰反射部材または前記第2再帰反射部材における光の入出射方向を制限する入出射角度制限部材を備えた、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
車両の車体に取り付けられ、前記車体の外部へと前記光源の像が結像するように構成されている、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入射された光を入射方向へと反射する再帰反射部材と、入射された光の一部を反射し一部を透過する光分岐部材とを用いて、光源の像を空中に結像させる表示装置が知られている。この表示装置では、光源からの光の一部を光分岐部材で反射させて再帰反射部材へと出射する。再帰反射部材で再帰反射された光の一部は、光分岐部材を透過して、光源の像を空中に結像する。以下、空中に結像される光源の像を空中像という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-247458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の表示装置では、外部からの光(外光という)が光分岐部材越しに再帰反射部材に入射されると、当該光が再帰反射部材によって再帰反射され、入射方向へと出射されてしまう。特に夜間等のヘッドライト光に暴露される環境下では、ヘッドライト光が光分岐部材越しに再帰反射部材へと入射し、その戻り光で他車のドライバーや歩行者の眩惑を引き起こしてしまうおそれがある。
【0005】
特許文献1では、半透過性プレートを用いて外光を弱める点が記載されているが、この場合においても、再帰反射部材による戻り光が生じてしまうことに変わりはなく、当該戻り光により他車のドライバーや歩行者の眩惑を引き起こしてしまうおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、ヘッドライト等の外光が照射された場合における戻り光を抑制し、かつ、空中像の輝度も向上可能な車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[7]の車両用表示装置を提供する。
【0008】
[1]光源と、前記光源よりも下方に配置され、入射された光を再帰反射する再帰反射部材と、前記光源からの光の少なくとも一部を反射して前記再帰反射部材へと出射すると共に、前記再帰反射部材で再帰反射され入射された光の少なくとも一部を透過する光分岐部材と、を備え、前記再帰反射部材で再帰反射され前記光分岐部材を透過した光が前記光源の像である空中像を空中に結像するように構成され、水平方向と平行な外光の前記再帰反射部材への入射を遮るように設けられた第2再帰反射部材を備え、前記第2再帰反射部材は、前記光分岐部材側に、入射された光を再帰反射する再帰反射面を有する、車両用表示装置。
【0009】
[2]前記光源は、前記第2再帰反射部材の前記再帰反射面で再帰反射され前記光源まで戻った戻り光を拡散させ、再度前記光分岐部材へと出射させることが可能な拡散体を有する、[1]に記載の車両用表示装置。
【0010】
[3]前記第2再帰反射部材は、外光の入射側に、入射される外光を遮光可能な遮光層を有する、[1]または[2]に記載の車両用表示装置。
【0011】
[4]前記光分岐部材の前記空中像側の面を覆うように設けられ、入射された可視光の一部を透過する半透過性のカバーを備えた、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【0012】
[5]前記光分岐部材は、特定の偏光を反射し、該特定の偏光と直交する偏光を透過する反射型偏光板からなり、前記光分岐部材の外光の入射側を覆うように配置され、前記特定の偏光を透過可能な偏光板と、前記偏光板と前記光分岐部材との間にそれぞれ配置され、入射される光の電界振動方向を,前記光分岐部材を透過する方向に変換するように位相差を与える外側波長板と、前記光分岐部材と前記再帰反射部材との間に配置され、外光に対しては再帰反射された光の電界振動方向を前記光分岐部材で反射される方向に変換するように、かつ、前記光源からの光に対しては再帰反射後の電界振動方向が前記光分岐部を透過する方向に変換するように位相差を与える内側波長板と、を備えた、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【0013】
[6]前記光源と前記光分岐部材との間に配置され、前記特定の偏光を透過可能な光源用偏光板と、前記第2再帰反射部材と前記光分岐部材との間に配置され、外光に対しては再帰反射後の光の電界振動方向を前記光分岐部材を透過する方向に変換するように、かつ、前記光源からの光に対しては再帰反射後の電界振動方向が前記光分岐部材を反射する方向に変換するように位相差を与える第2再帰反射部材用波長板と、を備えた、[5]に記載の車両用表示装置。
【0014】
[7]記再帰反射部材及び前記第2再帰反射部材にそれぞれ設けられ、前記再帰反射部材または前記第2再帰反射部材における光の入出射方向を制限する入出射角度制限部材を備えた、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【0015】
[8]車両の車体に取り付けられ、前記車体の外部へと前記光源の像が結像するように構成されている、[1]乃至[7]の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヘッドライト等の外光が照射された場合における戻り光を抑制し、かつ、空中像の輝度も向上可能な車両用表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る車両用表示装置の概略構成図である。
図2図2は、図1の車両用表示装置において、外光の戻り光の抑制を説明する説明図である。
図3図3(a)は、図1の車両用表示装置を車両に取り付けた際の概略構成図、図3(b)は、車体外部への空中像の表示の一例を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施の形態に係る車両用表示装置の概略構成図である。
図5図5は、本発明の一実施の形態に係る車両用表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
(車両用表示装置の全体構成)
図1は、本実施の形態に係る車両用表示装置の概略構成図である。図1に示すように、車両用表示装置1は、光源2と、再帰反射部材(レトロリフレクター)3と、光分岐部材(ビームスプリッター)4と、第2再帰反射部材5と、カバー7と、を備えている。
【0020】
光源2としては、例えば、複数のLED(発光ダイオード)を配列した板状の表示器等を用いることができる。また、光源2としては、例えば、1つ以上のLEDと、LEDからの光を拡散する拡散体と、を有するものを用いることもできる。さらに、光源2としては、液晶ディスプレイ等のディスプレイ(表示器)を用いることもできる。
【0021】
本実施の形態では、光源2として、拡散体を有するものを用いる。拡散体は、例えば、各LEDにおいてチップを封止する封止樹脂であってもよいし、LEDと別体に、LEDから出射される光を拡散する導光体を設けてもよい。この拡散体は、後述する第2再帰反射部材5の再帰反射面5aで再帰反射され光源2まで戻った戻り光を拡散させ、LEDに照射される光を弱めることで、LEDの損傷を防止し、さらに、その光の一部を再度光分岐部材4へと出射させることで、光の利用効率を高める役割を果たす。
【0022】
再帰反射部材3は、入射された光を入射方向へと反射する再帰反射を行う部材である。再帰反射部材3としては、シート状に形成された再帰反射シートを用いることができる。再帰反射部材3としては、通常一般に用いられている構造のもの、例えば、ガラスビーズを用いたものやプリズムを用いたものを用いることができる。本実施の形態では、再帰反射部材3は、光源2よりも下方に配置されている。
【0023】
光分岐部材4は、板状に形成されており、入射された光の一部を反射し、一部を透過するものである。光分岐部材4としては、ハーフミラーを用いることができる。なお、光分岐部材4は、ハーフミラーに限らず、アクリルやガラスからなる板状部材、パンチングメタル等の開口列を有する板、ワイヤーグリッドフィルム、反射型偏光フィルム、その他、一般にビームスプリッターと呼称されるものを用いることができる。
【0024】
光分岐部材4は、光源2からの光の少なくとも一部を反射して再帰反射部材3へと出射すると共に、再帰反射部材3で再帰反射され入射された光の少なくとも一部を透過する。これにより、再帰反射部材3で再帰反射され光分岐部材4を透過した光が、光源2の像を空中に結像する。以下、空中に結像される光源2の像を空中像6と呼称する。
【0025】
(第2再帰反射部材5)
第2再帰反射部材5は、ヘッドライト等の水平方向と平行な外光を遮る役割と、下方(光分岐部材4側)から入射された光を再帰反射して光分岐部材4へ戻し、再帰反射部材3による空中像6と同じ場所へ結像させて、光分岐部材4を透過した光の利用効率を高め、空中像6をより明るくする役割と、を兼ねた部材である。第2再帰反射部材5は、水平方向と平行な外光の再帰反射部材3への入射を遮るように設けられている。
【0026】
第2再帰反射部材5は、空中像6に影響を及ぼさない位置に配置される。つまり、第2再帰反射部材5は、再帰反射部材3で再帰反射され空中像6を結像する光の光路を遮らないように配置される。第2再帰反射部材5は、空中像6を結像する光の光路よりも下側(図示右下側、光源2と反対側)に設けられ、かつ、光分岐部材4よりも空中像6側(図示右上側)に設けられる。
【0027】
第2再帰反射部材5としては、上述の再帰反射部材3と同様に、シート状に形成された再帰反射シートを用いることができる。第2再帰反射部材5としては、例えば、ガラスビーズを用いたものやプリズムを用いたものを用いることができる。
【0028】
第2再帰反射部材5は、光分岐部材4側に、入射された光を再帰反射する再帰反射面5aを有している。再帰反射面5aで再帰反射された光源2からの光は、光分岐部材4側へと戻り、一部の光が光分岐部材4で反射されて、再帰反射部材3による空中像6と同じ場所へ結像する。また、一部の光は光分岐部材4を透過して光源2へ戻り、拡散体で拡散されて再度光分岐部材4へと出射される。このように、第2再帰反射部材5を備えることで、光の利用効率が向上して空中像6の高輝度化に寄与する。
【0029】
また、第2再帰反射部材5は、ヘッドライト光等の外光の入射側(再帰反射面5aの裏側)に、入射される外光を遮光可能な遮光層5bを有している。詳細は後述するが、本実施の形態に係る車両用表示装置1は車両10のバックドア12に設けられるため、太陽光等を車両10の後方に反射してしまわないように、遮光層5bとしてはなるべく反射率の低いものを用いることが望ましい。遮光層5bは、例えば黒色の樹脂層などで構成することができる。
【0030】
より多くの外光を遮光し、かつ、光の利用効率を高めるという観点から、なるべく広い範囲が第2再帰反射部材5で覆われていることが望ましいといえる。つまり、第2再帰反射部材5は、空中像6に影響が出ない範囲(空中像6を結像する光の光路よりも下側(図示右下側)の領域)において、できるだけ広い範囲を覆っていることが望ましい。つまり、空中像6を結像する光の光路よりも下側(図示右下側)の領域において、光源2や光分岐部材4の背面全体を覆うように構成されていることが最も望ましいといえる。
【0031】
なお、遮光層5bは必ずしも入射光を完全に遮光するように構成されていなくてもよく、第2再帰反射部材5は、再帰反射部材3へ向かって入射する水平方向からの光を、ある程度減衰するように構成されていればよい。そして、再帰反射部材3で水平方向に反射した光を、第2再帰反射部材5の再帰反射面5aで反射して閉じ込める。これにより、後続車等を眩惑しない。
【0032】
(カバー7)
カバー7は、光源2、再帰反射部材3、光分岐部材4、及び第2再帰反射部材5を保護するためのものであり、光分岐部材4の空中像6側の面を覆うように設けられている。本実施の形態では、カバー7として、入射された可視光の一部を透過する半透過性のものを用いる。半透過性のカバー7としては、例えば、加色した樹脂製のものや、樹脂の表面に半透過性の塗装、あるいはめっきを施したものを用いることができる。
【0033】
(外光の戻り光の抑制)
図2に示すように、第2再帰反射部材5を設けることによって、ヘッドライト光等の水平方向と平行な外光が第2再帰反射部材5によって遮られ、再帰反射部材3への入射が抑制される。ヘッドライト光等の水平方向と平行な外光の一部が第2再帰反射部材5を透過し、再帰反射部材3へ入射し反射されてしまっても、当該光を第2再帰反射部材5の再帰反射面5aで反射して、光を閉じ込めることができる。その結果、ヘッドライト光等の戻り光が生じることを抑制でき、他車のドライバーや歩行者の眩惑を抑制できる。
【0034】
また、太陽光等の水平方向と異なる方向から再帰反射部材3に入射する外光(第2再帰反射部材5で覆われていない部分から入射する外光)については、半透過性のカバー7によって戻り光を減衰させる。外光は入射時と出射時の2度半透過性のカバー7を通過するため、出射される戻り光は大幅に減衰される。例えば、半透過性のカバー7として、透過光の光強度が入射光の光強度の1/10となるものを用いる場合、出射される戻り光の光強度は、入射された可視光の光強度の1/100となる。これに対して、空中像6を形成する光源2からの光は、カバー7を1度しか通らないので減衰量が小さい。よって、空中像6の輝度の低下を抑えつつも、外光の戻り光を大幅に抑制することができる。
【0035】
(車両への適用)
図3(a)は、図1の車両用表示装置1を車両に取り付けた際の概略構成図であり、図3(b)は、車体外部への空中像6の表示の一例を示す図である。図1及び図3(a),(b)に示すように、車両用表示装置1は、車両10の車体11に取り付けられ、車体11の外部へと空中像6が結像するように構成されている。本実施の形態では、車両用表示装置1は、車両10のバックドア(リアハッチ)12に設けられ、バックドア12の後方に空中像6を結像するように構成されている。
【0036】
車両用表示装置1では、光源2は、バックドア12の外側の板金121の外表面に設けられており、その光軸が車両10の後方かつ上方(斜め上方向)となるように設けられている。光分岐部材4は、光源2と対向するように設けられている。再帰反射部材3は、光源2の後方かつ下方に光分岐部材4と対向するように配置されており、光分岐部材4よりも水平方向に対する傾斜角度が小さくなるように配置されている。
【0037】
第2再帰反射部材5は、光分岐部材4よりも後方かつ上方(斜め上方)に設けられており、光分岐部材4を挟んで再帰反射部材3と水平方向に対向する位置に設けられている。本実施の形態では、第2再帰反射部材5は、カバー7の内周面に貼付され固定されている。第2再帰反射部材5の水平方向に対する傾斜角度は、再帰反射部材3及び光分岐部材4の水平方向に対する傾斜角度よりも大きい。
【0038】
本実施の形態では、カバー7は、図示しないナンバープレートを照明するナンバー灯13を覆う役割も兼ねている。再帰反射部材3は、ナンバー灯13からの光を遮るために、板金121とカバー7との間を塞ぐように設けられている。なお、再帰反射部材3は、その表面(図示上側の面)が再帰反射をするように構成されており、その背面(図示下側の面)は、ナンバー灯13からの光を遮光可能な部材(例えば黒色の樹脂層など)で構成されている。なお、図3(a)中の符号122は、バックドア12の内層トリムを表している。
【0039】
本実施の形態では、空中像6を結像する光は湾曲したカバー7を透過するため、カバー7の影響で空中像6が歪むおそれがある。そこで、カバー7の影響による空中像6の歪みを補正するカバー歪み補正手段をさらに備えてもよい。カバー歪み補正手段としては、例えば、光源2と光分岐部材4との間にカバー7による歪みを補正可能な部材(カバー7と同じ材質で逆形状のもの等)を配置すること、あるいは、カバー7の影響で歪むことによって意図する空中像6が得られるように、もとの光源2の像自体を変更すること等が上げられる。
【0040】
また、光源2、再帰反射部材3、及び光分岐部材4が、モールド部材により一体に設けられていてもよい。これにより、振動による各部材の相対的な位置ずれを抑制でき、各部材の位置ずれによる空中像6の歪み等の不具合を抑制することができる。モールド部材としては、光源2が発する光に対して透明(透過率が高い)ものを用いるとよく、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。樹脂以外のモールド部材として、無機透明材を用いることもでき、ガラス等を用いることができる。
【0041】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る車両用表示蔵置1では、水平方向と平行な外光の再帰反射部材3への入射を遮るように設けられた第2再帰反射部材5を備え、第2再帰反射部材5は、光分岐部材4側に、入射された光を再帰反射する再帰反射面5aを有している。
【0042】
第2再帰反射部材5を備えることで、ヘッドライト光等の水平方向と平行な外光を遮ることが可能になり、戻り光によるドライバーや歩行者の眩惑を抑制することが可能になる。また、第2再帰反射部材5を備えることで、光分岐部材4側から入射された光を再帰反射して、光の利用効率を高めることが可能になる。すなわち、本発明によれば、ヘッドライト等の外光が照射された場合における戻り光を抑制し、かつ、空中像の輝度も向上可能な車両用表示装置1を実現できる。
【0043】
(他の実施形態)
上記実施の形態では、半透過性のカバー7を用いることによって、第2再帰反射部材5で覆われていない部分から入射される外光の戻り光を減衰させたが、他の方法で戻り光を抑制することも可能である。図4に示す車両用表示装置1aでは、偏光の特性を利用して戻り光を抑制している。車両用表示装置1aでは、光分岐部材4として、特定の偏光(ここではS偏光)を反射し、該特定の偏光と直交する偏光(ここではP偏光)を透過する反射型偏光板(反射型偏光フィルム)を用いる。
【0044】
また、光分岐部材4の外光の入射側を覆うように、特定の偏光を透過可能な偏光板8が設けられる。本実施の形態では、偏光板8としてフィルム状の偏光フィルムを用い、当該偏光フィルムをカバー7の内周面に貼付し固定するように構成した。
【0045】
偏光板8と光分岐部材4との間には、入射される光の電界振動方向を光分岐部材を透過する方向に変換するように位相差を与える(ここではπの位相差を与える)外側波長板9が配置される。ここでは、外側波長板9として、偏光板8上に貼付され固定された第1外側波長板9aと、光分岐部材4のカバー7側の面に貼付され固定された第2外側波長板9bと、を用いた。第1及び第2外側波長板9a,9bは、それぞれ入射される光の電界振動方向に(π/2)の位相差を与えるものであり、所謂λ/4板である。光分岐部材4と再帰反射部材3との間には、内側波長板9cが配置される。内側波長板9cは、外光に対しては再帰反射された光の電界振動方向を光分岐部材4で反射される方向に変換するように、かつ、光源2からの光に対しては再帰反射後の電界振動方向が光分岐部4を透過する方向に変換するように位相差を与えるものである。ここでは、内側波長板9cとして、入射される光の電界振動方向に遅相軸方向に(π/2)の位相差を与える、所謂λ/4板を用いた。入射される光の偏光方向に対して45度をなす方向の成分の位相をπ/2だけ遅らせる場合、2回透過後に光の偏光方向が90度回転する。ここでは、再帰反射部材3の表面(再帰反射面)上に再帰反射後の光の偏光方向を90度回転するように内側波長板9cを貼付し固定するように構成した。
【0046】
車両用表示装置1aでは、外光として入射した光のうち、P偏光が偏光板8でカットされ、S偏光のみが偏光板8を通過する。偏光板8を通過した光は、第1及び第2外側波長板9a,9bを通過してP偏光に変換され、光分岐部材4を透過する。光分岐部材4を透過した光は、再帰反射部材3にて再帰反射されるが、この際、再帰反射部材3上に設けられた内側波長板9cを2度通過してS偏光に変換される。光分岐部材4はS偏光を透過しないため、再帰反射部材3にて再帰反射された光は光分岐部材4で反射され、外部へと出射されないことになる。もし、再帰反射部材3にて再帰反射された光の一部が光分岐部材4を透過した場合であっても、当該光は第1及び第2外側波長板9a,9bを通過してP偏光に変換されるため、偏光板8でカットされることになる。
【0047】
また、車両用表示装置1aでは、光源2と光分岐部材4との間には、特定の偏光(ここではS偏光)を透過可能な光源用偏光板2aが設けられている。光源用偏光板2aは、光源2からの光のうちP偏光をカットし、該P偏光が光分岐部材4を透過し、第1及び第2外側波長板9a,9bによりS偏光に変換されて偏光板8を透過して、外部へと出射されてしまうことを抑制する。
【0048】
さらに、第2再帰反射部材5と光分岐部材4との間には、第2再帰反射部材用波長板5cが設けられている。第2再帰反射部材用波長板5cは、外光に対しては再帰反射後の光の電界振動方向を光分岐部4を透過する方向に変換するように、かつ、光源2からの光に対しては再帰反射後の電界振動方向が光分岐部4を反射する方向に変換するように位相差を与えるものである。ここでは、第2再帰反射部材用波長板5cとして、入射される光の電界振動方向に遅相軸方向に(π/2)の位相差を与える、所謂λ/4板を用いた。ここでは、第2再帰反射部材5の再帰反射面5a上に第2再帰反射部材用波長板5cを貼付し固定するように構成している。第2再帰反射部材用波長板5cを備えることにより、光源2側から光分岐部材4を透過したP偏光は、第1外側波長板9aと第2再帰反射部材用波長板5cを通過してS偏光となって第2再帰反射部材5に入射し、第2再帰反射部材5で再帰反射された後に再び第2再帰反射部材用波長板5cと第1外側波長板9aを通過してP偏光となり、光分岐部材4を透過して光源2側へと戻る。このように、第2再帰反射部材用波長板5cを備えることによって、第2再帰反射部材5で再帰反射した光を光源2側に戻して再利用し、空中像6の輝度を向上させることができる。
【0049】
車両用表示装置1aでは、カバー7を加色したり塗装したりして可視光の透過率を低下させずとも、外光の戻り光を抑制できる。よって、外光の戻り光を抑制しつつも、カバー7における可視光の透過率を高くして、空中像6の輝度をより向上させることが可能になる。
【0050】
図5に示す車両用表示装置1bは、図1の車両用表示装置1において、再帰反射部材3と第2再帰反射部材5のそれぞれに、再帰反射部材3または第2再帰反射部材5における光の入出射方向を制限する入出射角度制限部材3a,5dを設けたものである。
【0051】
入出射角度制限部材3a,5dとしては、覗き見防止フィルム等として一般に用いられているルーバーフィルムを用いることができる。ルーバーフィルムとしては、例えば、平行に形成された多数の直線状の溝(ルーバー)を有するもの等を用いることができる。
【0052】
入出射角度制限部材3a,5dを用いて再帰反射部材3と第2再帰反射部材5の光の入出射角を制限することで、入出射角度制限部材3a,5dにて不要な光をカットすることが可能となり、第2再帰反射部材5で覆われていない部分から外光が入射した際の戻り光をより抑制することが可能になる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び実施例に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0054】
例えば、上記実施の形態では、車両10のバックドア12に車両用表示装置1を設ける場合について説明したが、車両用表示装置1の設置位置はこれに限定されるものではない。
【0055】
また、上記の実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0056】
1 車両用表示装置
2 光源
2a 光源用偏光板
3 再帰反射部材
3a 入出射角度制限部材
4 光分岐部材
5 第2再帰反射部材
5a 再帰反射面
5b 遮光層
5c 第2再帰反射部材用波長板
5d 入出射角度制限部材
6 空中像
7 カバー
8 偏光板
9 外側波長板
9a 第1外側波長板
9b 第2外側波長板
9c 内側波長板
10 車両
11 車体
図1
図2
図3
図4
図5