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特許7163586接合体、接合体の製造方法及びプロジェクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】接合体、接合体の製造方法及びプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20221025BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20221025BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20221025BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B23K20/00 340
G03B21/14 A
F16F15/02 J
F16F7/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018019860
(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公開番号】P2019138327
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 英男
(72)【発明者】
【氏名】今井 英生
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109356(JP,A)
【文献】特開2016-100424(JP,A)
【文献】特開2002-350613(JP,A)
【文献】特開平04-139883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00
G03B 21/14
F16F 15/02
H01S 3/00
H01L 21/00
H01L 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを接合する接合膜と、を備え、
前記接合膜は、複数種の金属ナノ粒子を含み、
前記接合膜は第1領域及び第2領域を有し、前記第1基板の平面視において前記第1領
域は前記第2領域より前記金属ナノ粒子の密度が高く、
前記第1基板には前記第1領域の外周に沿って第1溝が設置され、前記第2領域の外周
に沿って第2溝が設置されていることを特徴とする接合体。
【請求項2】
請求項1に記載の接合体であって、
前記第1領域は前記第2基板の中央に配置され、前記第2領域は前記第1領域の周りに
配置されていることを特徴とする接合体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接合体であって、
前記第1基板の平面視において前記接合膜は前記第2基板の周りの少なくとも一部から
突出しており、
前記第2基板において前記第1基板側の逆側の面である上面には前記接合膜が設置され
ていないことを特徴とする接合体。
【請求項4】
光源と、
前記光源が射出する光の波長を変換する波長変換部と、を備え、
前記波長変換部は、熱を放熱する第1基板と蛍光体を有する第2基板とが接合膜で接合
された接合体であり、
前記波長変換部には前記請求項1~のいずれか一項に記載の接合体が用いられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体、接合体の製造方法及びプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子を用いて第1基板と第2基板とを接合して接合体を形成する方法が特許文献1に開示されている。それによると、接合体は、第1基板上に金属ナノ粒子で構成される膜、金属箔、金属ナノ粒子で構成される膜、第2基板の順に重ねてある。金属ナノ粒子は粒径が1nm~100nmの金属粒子である。金属ナノ粒子は高い結合性を有し、金属ナノ粒子を構成する金属の融点よりもはるかに低い温度で結合させることができる。そして、接合体の構造的強度は金属の融点付近まで保たれる。従って、金属ナノ粒子は接合材料としても用いられる。第1基板と第2基板との間に金属ナノ粒子で構成される膜を介在させた状態で、加熱・焼成することにより第1基板と第2基板とが接合される。金属ナノ粒子を構成する金属は主にAgが用いられ、他にもAu、Cu、Ni等が用いられる。
【0003】
第1基板と第2基板との間に挟まれた金属箔はアルミニウムを含み延性に優れた金属である。第1基板と第2基板との熱膨張係数が異なるときにも、金属箔が延びることにより第1基板と第2基板との間でき裂が生じることが抑制される。そして、金属ナノ粒子を構成する金属をNiにすることにより、350℃以上の高温でも信頼性の高い接合状態が得られる。
【0004】
プロジェクターの光源において、蛍光体を塗布した第2基板にレーザー光を照射し波長を変換する光学素子に上記の接合体が用いられている。第2基板は耐熱性のある基板であり、第1基板は放熱性のある基板である。そして、接合体は第2基板の熱を第1基板に伝熱して第2基板の温度上昇を抑制する。従って、基板間の伝熱性を高くする必要がある。
【0005】
プロジェクターを小型にするため光学素子は小型で薄く設計されている。そして、第2基板を薄くすることにより、第2基板の熱容量を小さくして蛍光体の熱が第1基板に伝わり易くしている。第2基板は耐熱性を有するセラミック基板が用いられている。この為、第2基板は衝撃荷重による応力に弱くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-93295号公報
【文献】特開2014-29897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の接合体では第1基板と第2基板との間に薄い金属箔と金属ナノ粒子で構成される膜とが設置されている。金属ナノ粒子で構成される膜における金属ナノ粒子の粒子密度は場所による差がない状態になっていた。そして、金属ナノ粒子で構成される膜を加熱する前の工程では第1基板上に金属ナノ粒子の膜と第2基板とが重ねて設置される。膜を構成する金属ナノ粒子の粒子密度が高いときには第2基板を設置するときの衝撃荷重が第1基板及び第2基板に加わるので第1基板及び第2基板が損傷を受ける危険性が大きい。
【0008】
膜を構成する金属ナノ粒子の粒子密度が低いときには第2基板を設置するときの衝撃荷重を金属ナノ粒子で構成される膜が緩和するので第1基板及び第2基板が損傷を受ける危険性を抑制できる。しかし、金属ナノ粒子で構成される膜における粒子密度が低いときには基板間の伝熱性が悪くなるという課題がある。そこで、基板間の伝熱性が良く、衝撃荷重による応力を緩和できる接合体が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]
本適用例にかかる接合体であって、第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを接合する接合膜と、を備え、前記接合膜は、複数種の金属ナノ粒子を含み、前記接合膜は第1領域及び第2領域を有し、前記第1基板の平面視において前記第1領域は前記第2領域より前記金属ナノ粒子の密度が高いことを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、接合体は第1基板及び第2基板を備えている。第1基板及び第2基板は複数種の金属ナノ粒子を含む接合膜により接合されている。接合膜は第1領域及び第2領域を有している。そして、第1領域は第2領域より金属ナノ粒子の密度が高くなっている。熱の伝導は金属ナノ粒子を伝わるので、金属ナノ粒子の密度が高い領域は低い領域より伝熱性が良い。第1領域は金属ナノ粒子の密度が高いので伝熱性が良い領域になっている。
【0012】
そして、第2領域は金属ナノ粒子の密度が低いので、焼成前の工程では第2領域では金属ナノ粒子が移動し易くなっている。従って、第1基板と第2基板との間に衝撃荷重が加わるとき第2領域の金属ナノ粒子が移動することにより応力を緩和することができる。その結果、接合体は基板間の伝熱性を良くすることができ、衝撃荷重による応力を緩和することができる。
【0013】
[適用例2]
上記適用例にかかる接合体において、前記第1領域は前記第2基板の中央に配置され、前記第2領域は前記第1領域の周りに配置されていることを特徴とする。
【0014】
本適用例によれば、第1領域は第2基板の中央に配置されている。第1領域は金属ナノ粒子の密度が高く、伝熱性の良い領域である。第2基板の熱は主に第1領域を経て第1基板に伝わる。第2領域における第2基板の熱の一部は第2領域の金属ナノ粒子を伝導する。さらに、第2領域における第2基板の熱の一部は第2基板を伝導し、第1領域の金属ナノ粒子を経由して第1基板に伝導する。従って、第2基板では第1領域からの距離が短い場所の熱は第1領域に早く到達するので早く伝熱する。そして、第2基板では第1領域からの距離が長い場所の熱は第1領域に遅く到達するので遅れて伝熱する。
【0015】
第2基板の中央に第1領域があるときには、第2基板の端に第1領域が有るときに比べて、第1領域から離れた第2基板上の場所と第1領域との間の距離を短くすることができる。そして、第2基板の第2領域の熱が遅れて伝熱することを抑制できる。従って、第2基板の温度分布のばらつきを小さくすることができる。
【0016】
[適用例3]
上記適用例にかかる接合体において、前記第1基板の平面視において前記接合膜は前記第2基板の周りの少なくとも一部から突出しており、前記第2基板において前記第1基板側の逆側の面である上面には前記接合膜が設置されていないことを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、第1基板の平面視において接合膜は第2基板の周りの少なくとも一部より突出している。第2基板の熱は接合膜を経て第1基板に伝わる。従って、第2基板の周りから突出している接合膜も伝熱する。従って、接合膜が第2基板の周りから突出していないときに比べて効率良く伝熱することができる。
【0018】
第2基板の上面には接合膜が設置されていない。この上面は第1基板側の逆側の面である。接合膜には金属ナノ粒子が含まれているので導電性がある。本適用例では第2基板の上面には接合膜が設置されていないので、接合膜により電気的な不具合が生じることを抑制できる。また、接合膜が設置された場所では表面に凹凸ができる。本適用例では第2基板の上面には接合膜が設置されていないので、接合膜の凹凸により不具合が生じることを抑制できる。
【0019】
[適用例4]
上記適用例にかかる接合体において、前記第1基板には前記第1領域の外周に沿って第1溝が設置され、前記第2領域の外周に沿って第2溝が設置されていることを特徴とする。
【0020】
本適用例によれば、第1基板には第1領域の外周に沿って第1溝が設置されている。接合膜の材料は液状である。第1領域に設置する接合膜の材料を第1基板に塗布するとき、接合膜の材料が第1基板上で広がる。このとき、第1領域の外周に沿って第1溝が設置されているので、接合膜の材料が第1溝に到達したとき、接合膜の材料が第1溝に入る。この為、接合膜の材料が第1溝を越えて広がることを低減できる。
【0021】
同様に、第1基板には第2領域の外周に沿って第2溝が設置されている。第2領域に設置する接合膜の材料を第1基板に塗布するとき、接合膜の材料が第1基板上で広がる。このとき、第2領域の外周に沿って第2溝が設置されているので、接合膜の材料が第2溝に到達したとき、接合膜の材料が第2溝に入る。この為、接合膜の材料が第2溝を越えて広がることを低減できる。その結果、第1領域及び第2領域に品質良く接合膜を配置することができる。
【0022】
[適用例5]
本適用例にかかる接合体の製造方法であって、第1基板または第2基板の片面に複数種の金属ナノ粒子を含むペーストを設置し、前記ペーストを前記第1基板及び前記第2基板で挟み、前記ペーストを焼成する工程を有し、前記ペーストは第1ペーストと前記第1ペーストより金属ナノ粒子の密度の低い第2ペーストとを有し、前記ペーストを設置するときに前記第1基板または前記第2基板の平面視において前記第1ペーストの周りに前記第2ペーストを設置することを特徴とする。
【0023】
本適用例によれば、第1基板または第2基板の片面に金属ナノ粒子を含むペーストが設置される。そして、ペーストは第1基板及び第2基板で挟まれる。そして、ペーストが焼成される。金属ナノ粒子は粒子径が小さく微細なため高い結合性を有し、金属ナノ粒子を構成する金属の融点より低い温度で粒子間接合が生じる。従って、金属ナノ粒子を含むペーストは焼成することにより、第1基板と第2基板とを結合することができる。
【0024】
ペーストは第1ペーストと第2ペーストとを有している。そして、第1ペーストは金属ナノ粒子の密度が高く、第2ペーストは金属ナノ粒子の密度の低い。つまり、第1ペーストは第2ペーストより金属ナノ粒子の密度が高くなっている。熱の伝導は金属ナノ粒子を熱が伝わって行われるので、金属ナノ粒子の密度が高いペーストが焼成された場所は金属ナノ粒子の密度が低いペーストが焼成された場所より伝熱性が良い。第1ペーストが焼成された場所を第1領域とし、第2ペーストが焼成された場所を第2領域とする。このとき、第1領域は金属ナノ粒子の密度が高いので、第1領域は第2領域より伝熱性が良い場所になる。
【0025】
第2基板の平面視において第1ペーストの周りに第2ペーストが設置されている。従って、第1領域の周りに第2領域が設置される。第2基板の熱は第1領域を経て第1基板に伝わり易い。従って、第2基板では第1領域に近い場所の熱が第1基板に伝わり易く、第1領域から離れた場所では熱が第1基板に伝わり難くなる。第2領域の中側に第1領域があるときには、第2領域の端に第1領域が有るときに比べて、第1領域から離れた場所の距離を短くすることができる。従って、第2基板の温度分布のばらつきを小さくすることができる。
【0026】
そして、第2ペーストは金属ナノ粒子の密度が低いので、焼成前の第2ペーストでは金属ナノ粒子が移動し易くなっている。従って、第1基板と第2基板との間に衝撃荷重が加わるとき第2ペーストの金属ナノ粒子が移動することにより応力を緩和することができる。その結果、接合体は伝熱性を良くすることができ、さらに、衝撃荷重による応力を緩和することができる。
【0027】
[適用例6]
本適用例にかかるプロジェクターであって、光源と、前記光源が射出する光の波長を変換する波長変換部と、を備え、前記波長変換部は、熱を放熱する第1基板と蛍光体を有する第2基板とが接合膜で接合された接合体であり、前記波長変換部には上記のいずれか一項に記載の接合体が用いられていることを特徴とする。
【0028】
本適用例によれば、プロジェクターは光源及び波長変換部を備えている。光源が射出する光の波長を波長変換部が変換する。波長変換部は、熱を放熱する第1基板と蛍光体を有する第2基板とが接合膜で接合された接合体である。蛍光体に光が照射されるとき、蛍光体が発光する。このとき、照射した光と異なる波長の光を発光することにより波長が変換される。
【0029】
第2基板は照射された光により温度が上昇する。そして、第2基板から第1基板に熱が伝導することにより、第2基板の温度が適度な温度に維持される。そして、波長変換部には上記の接合体が用いられている。上記の接合体は伝熱性を良く、さらに、衝撃荷重による応力を緩和することができる接合体である。従って、波長変換部は確実に過度の温度上昇を抑制できる。そして、波長変換部は衝撃荷重による応力を緩和できるので、製造工程で衝撃を受けたときにも壊れ難いので、波長変換部を容易に生産できる。その結果、プロジェクターは確実に過度の温度上昇を抑制でき、製造し易い波長変換部を備えた装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の実施形態にかかわる蛍光体素子の構成を示す概略斜視図。
図2】蛍光体素子の構造を示す模式側断面図。
図3】接合膜の構造を示す模式平面図。
図4】接合膜の構造を示す模式側断面。
図5】蛍光体素子の製造方法のフローチャート。
図6】蛍光体素子の製造方法を説明する為の模式図。
図7】蛍光体素子の製造方法を説明する為の模式図。
図8】蛍光体素子の製造方法を説明する為の模式図。
図9】蛍光体素子の製造方法を説明する為の模式図。
図10】蛍光体素子の製造方法を説明する為の模式図。
図11】蛍光体素子の製造方法を説明する為の模式図。
図12】蛍光体素子の製造方法を説明する為の模式図。
図13】第2の実施形態にかかわる蛍光体素子の要部模式平面図。
図14】第3の実施形態にかかわる蛍光体素子の模式側断面図。
図15】蛍光体素子の模式側断面図。
図16】蛍光体素子の模式側断面図。
図17】第4の実施形態にかかわるプロジェクターの構成を示す模式図。
図18】光源装置の構成を示す模式図。
図19】変形例にかかわる接合膜の構造を示す模式側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0032】
(第1の実施形態)
本実施形態では、蛍光体素子と、この蛍光体素子を製造する製造方法との特徴的な例について、図に従って説明する。第1の実施形態にかかわる蛍光体素子について図1図4に従って説明する。図1は、蛍光体素子の構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、接合体としての蛍光体素子1は四角形の第1基板2を備えている。第1基板2は平面形状が四角形の板である。第1基板2における四角形の隣り合う2辺が延びる方向をX方向及びY方向とする。第1基板2の厚み方向をZ方向とする。X方向、Y方向、Z方向はそれぞれ直交する。第1基板2の中央には第1基板2と対向して第2基板3が設置されている。第2基板3も平面形状が四角形の板である。第1基板2と第2基板3とは接合膜4により接合されている。
【0033】
第2基板3は蛍光体を有している。本実施形態では、例えば、第2基板3が総て蛍光体になっている。第2基板3の上面3aは第2基板3において第1基板2側の逆側の面である。第2基板3の特性は特に限定されないが、本実施形態では例えば、第2基板3に青色の光が照射されるとき、第2基板3は黄色の光を発光する。第2基板3は紫外線の領域から青色の領域の光により励起されて発光する光学部材である。
【0034】
蛍光体粒子には希土類蛍光体やサイアロイ蛍光体等が用いられている。詳細には、希土類蛍光体には、例えば、Y3Al512:Ce(YAG(Yttrium Aluminum Garnet):Ce)が用いられ、サイアロイ蛍光体には、例えば、αサイアロイが用いられる。母材にはアルミナ等を混合した焼結体、ガラスや樹脂を用いることができる。蛍光体は母材に蛍光体粒子を内包したものを用いることができる。また、蛍光体は蛍光体粒子のみからなる焼結体等も用いることができる。
【0035】
第2基板3に光を照射するとき、第2基板3の上面3aが加熱される。第2基板3の温度が高くなると第2基板3が変色するので光の反射効率が下がる。第2基板3が厚いと第2基板3に熱がこもるので、第2基板3が変色しやすくなる。第2基板3を薄くすることにより、第2基板3は第2基板3の上面3aから第1基板2に伝熱しやすい構造になっている。
【0036】
第1基板2の材料は剛性があり伝熱性のある材料が好ましく、例えば、第1基板2の材料に銅やアルミニウム等を含む金属を用いることができる。本実施形態では、例えば、第1基板2の材料に銅や銅合金を用いている。第1基板2の大きさは特に限定されないが、本実施形態では、例えば、辺の長さは10mm~20mmである。厚みが0.1mm~3mmである。
【0037】
接合膜4は銀のナノ粒子を焼成した膜である。第1基板2の平面視において接合膜4は第2基板3の周りから突出している。本実施形態では、第2基板3の全周から接合膜4が突出している。接合膜4が突出する部分は第2基板3の周り総てでも良く、周りの一部分でも良い。そして、第2基板3の上面3aには接合膜4が設置されていない。
【0038】
第2基板3に照射された光により第2基板3が加熱される。そして、第2基板3の熱が第1基板2に伝導することにより第2基板3が冷却される。第2基板3の熱は接合膜4を経て第1基板2に伝わる。従って、第2基板3の周りから突出している接合膜4も伝熱する。従って、接合膜4が第2基板3の周りから突出していないときに比べて、接合膜4は効率良く第2基板3と第1基板2との間で伝熱することができる。
【0039】
第2基板3の上面3aには接合膜4が設置されていない。接合膜4には銀のナノ粒子が含まれているので導電性がある。蛍光体素子1では第2基板3の上面3aには接合膜4が設置されていないので、接合膜4により電気的な不具合が生じることを抑制できる。また、接合膜4が設置された場所では表面に凹凸ができる。蛍光体素子1では第2基板3の上面3aには接合膜4が設置されていないので、接合膜4の凹凸により不具合が生じることを抑制できる。
【0040】
図2は蛍光体素子の構造を示す模式側断面図である。図2に示すように、第1基板2には+Z方向側の面に第1補助膜6が設置されている。接合膜4が第1基板2と接合することを第1補助膜6が補助する。つまり、第1補助膜6が設置されることにより接合膜4が第1基板2と接合し易くなっている。第1補助膜6の材料はクロム及び金であり、めっき法を用いて設置されている。
【0041】
第2基板3においても-Z方向側の面に第2補助膜7が設置されている。接合膜4が第2基板3と接合することを第2補助膜7が補助する。つまり、第2補助膜7が設置されることにより接合膜4が第2基板3と接合し易くなっている。第2補助膜7の材料は銀であり、蒸着法を用いて設置されている。
【0042】
図3は接合膜の構造を示す模式平面図であり、図4は接合膜の構造を示す模式側断面である。図3は蛍光体素子1の第2基板3を省略した図である。図4図3のA-A線に沿う断面を-Y方向側からみた図である。図3及び図4に示すように、接合膜4は第1領域4a及び第2領域4bを有している。第1領域4aには多数の第1粒子8が設置され、第2領域4bには多数の第2粒子9が設置されている。第1粒子8の平均粒径は10nm~60nmであり、第2粒子9の平均粒径は60nm~100nmになっている。平均粒径は粒径の平均値を示す。第1粒子8及び第2粒子9は粒径が異なる金属ナノ粒子である。このように、接合膜4は粒径が異なる複数種の金属ナノ粒子を含んでいる。詳しくは、接合膜4は粒径の分布が異なる2種類の金属ナノ粒子を含んでいる。粒径が小さい程、粒子間の隙間が小さくなる。従って、第1基板2の平面視において第1領域4aは第2領域4bより金属ナノ粒子の密度が高くなっている。金属ナノ粒子の金属には銀、金、銀-パラジウム、銅、銀-銅等が用いられている。本実施形態では、例えば、金属ナノ粒子の金属に銀が用いられている。
【0043】
熱の伝導は第1粒子8及び第2粒子9を伝わるので、金属ナノ粒子の密度が高い第1領域4aは密度が低い第2領域4bより伝熱性が良い。第1領域4aは金属ナノ粒子の密度が高いので伝熱性が良い領域になっている。
【0044】
製造工程では金属ナノ粒子を媒体に混成してペースト状にし、第1基板2に塗布する。その後、金属ナノ粒子を含むペーストの上に第2基板3を設置する。次に、ペーストを焼成することにより接合膜4が形成される。第2基板3を設置するとき、第2基板3を専用工具で吸着して第1基板2上に載置する。このとき、第2基板3に衝撃荷重が加わる可能性がある。
【0045】
第2領域4bは第2粒子9の密度が低い。焼成前の工程の第2領域4bでは第2粒子9が移動し易くなっている。従って、第1基板2と第2基板3との間に衝撃荷重が加わるとき第2領域4bの第2粒子9が移動することにより応力を緩和することができる。その結果、接合膜4は伝熱性を良くすることができ、さらに、衝撃荷重による応力を緩和することができる。
【0046】
図3に示すように、X方向における第2基板3の-X方向側の端から第1領域4aの-X方向側の端までの長さを第1長さ10aとする。そして、X方向における第1領域4aの幅を第2長さ10bとする。X方向における第2基板3の+X方向側の端から第1領域4aの+X方向側の端までの長さを第3長さ10cとする。このとき、第1長さ10aと第3長さ10cとは同じ長さになっている。第1長さ10aと第2長さ10bとは略同じ長さになっている。
【0047】
同様に、Y方向における第2基板3の+Y方向側の端から第1領域4aの+Y方向側の端までの長さを第4長さ10dとする。そして、Y方向における第1領域4aの幅を第5長さ10eとする。Y方向における第2基板3の-Y方向側の端から第1領域4aの-Y方向側の端までの長さを第6長さ10fとする。このとき、第4長さ10dと第6長さ10fとは同じ長さになっている。第4長さ10dと第5長さ10eとは略同じ長さになっている。
【0048】
従って、第1領域4aは第2基板3の中央に配置され、第2領域4bは第1領域4aの周りに配置されている。第1領域4aは第1粒子8の密度が高く、伝熱性の良い領域である。第2基板3の熱は第1領域4aを経て第1基板2に伝わる。第2領域4bにおける第2基板3の熱の一部は第2領域4bの第2粒子9を伝導する。さらに、第2領域4bにおける第2基板3の熱の一部は第2基板3を伝導し、第1領域4aの第1粒子8を経由して第1基板2に伝導する。従って、第2基板3では第1領域4aからの距離が短い場所の熱は第1領域4aに早く到達するので早く伝熱する。そして、第2基板3では第1領域4aからの距離が長い場所の熱は第1領域4aに遅く到達するので遅れて伝熱する。
【0049】
第2基板3の中央に第1領域4aがあるときには、第2基板3の端に第1領域4aが有るときに比べて、第1領域4aから離れた第2基板3上の場所と第1領域4aとの間の距離を短くすることができる。そして、第2基板3の第2領域4bの熱が遅れて伝熱することを抑制できる。従って、第2基板3の温度分布のばらつきを小さくすることができる。
【0050】
次に上述した蛍光体素子1の製造方法について図5図12にて説明する。図5は、蛍光体素子の製造方法のフローチャートであり、図6図12は蛍光体素子の製造方法を説明する為の模式図である。図5のフローチャートにおいて、ステップS1は第1基板めっき工程である。この工程は、第1基板2上に第1補助膜6を設置する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は第2基板蒸着工程である。この工程は、第2基板3に第2補助膜7を設置する工程である。次にステップS3に移行する。
【0051】
ステップS3はペースト設置工程である。この工程は、第1基板2上に第1粒子8を含む第1ペーストと第2粒子9を含む第2ペーストとを設置する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は基板組み立て工程である。この工程は、第1ペースト及び第2ペースト上に第2基板3を設置する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は焼成工程である。この工程は、第1ペースト及び第2ペーストを加熱して焼成する工程である。以上の工程により蛍光体素子の製造工程を終了する。
【0052】
次に、図6図12を用いて、図5に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。図6はステップS1の第1基板めっき工程に対応する図である。図6に示すように、ステップS1では第1基板2上に第1補助膜6を設置する。まず、第1基板2を用意する。次に、第1補助膜6を設置する場所を除いて他の面に樹脂膜を設置する。樹脂膜は各種の印刷法やコーティング法を用いて設置する。そして、第1基板2にクロム及び金のめっきを行う。第1基板2は銅板なので、電気めっきを行うことができる。続いて、剥離液を用いて樹脂膜を除去することにより第1基板2上の所定の場所に第1補助膜6を設置する。
【0053】
図7はステップS2の第2基板蒸着工程に対応する図である。図7に示すように、第2基板3を用意する。第2基板3は公知の方法で製造されているので、詳細な説明は省略して概略の製造方法を説明する。アルミナの粉末及び蛍光体の粉末をバインダーに混成してペースト状にする。次に、第2基板3の材料を焼成することにより第2基板3が形成される。
【0054】
次に、上面3aに樹脂膜を塗布し乾燥する。樹脂膜により上面3aを覆ってマスキングする。続いて第2基板3を蒸着装置にセットして、第2基板3上に銀の蒸着膜を形成する。続いて、剥離液を用いて第2基板3から樹脂膜を剥離することにより第2補助膜7が設置される。
【0055】
図8及び図9はステップS3のペースト設置工程に対応する図である。ステップS3において、第1ペースト及び第2ペーストを作成する。第1ペーストには第1粒子8を有機殻で被覆された有機-金属複合ナノ粒子を用いる。有機殻がナノ粒子の自己凝集を防止するので、ナノ粒子が分散した形態を維持できる。作業者はエーテル系等の溶媒中に有機-金属複合ナノ粒子を投入して攪拌する。そして、溶媒中に金属ナノ粒子が分散した第1ペーストが完成する。
【0056】
第2ペーストには第2粒子9を有機殻で被覆された有機-金属複合ナノ粒子を用いる。作業者はエーテル系等の溶媒中に有機-金属複合ナノ粒子を投入して攪拌する。そして、溶媒中に金属ナノ粒子が分散した第2ペーストが完成する。第1ペースト及び第2ペースト中には金属ナノ粒子、溶媒成分及び有機殻の成分が含まれている。
【0057】
図8に示すように、作業者は第1基板2の第1補助膜6上に第1ペースト11を設置する。第1ペースト11には第1粒子8が含まれている。続いて、図9に示すように、作業者は第1基板2の第1補助膜6上に第2ペースト12を設置する。第2ペースト12は第1ペースト11の周りに配置される。第2ペースト12には第2粒子9が含まれている。第1ペースト11及び第2ペースト12を合わせてペースト13とする。ペースト13は第1ペースト11と第1ペースト11より金属ナノ粒子の密度の低い第2ペースト12とを有する。そして、第1基板2の片面に金属ナノ粒子を含むペースト13が設置される。ペースト13を設置するときに第1基板2の平面視において第1ペースト11の周りに第2ペースト12を設置する。第1ペースト11及び第2ペースト12の設置方法にはオフセット印刷、スクリーン印刷、凸版印刷等の各種の印刷方法を用いることができる。このとき、接合膜4の伝熱性や形状を精度良く形成するためにペースト13の厚みを精度良く管理する必要がある。
【0058】
図10及び図11はステップS4の基板組み立て工程に対応する図である。図10に示すように、ステップS4において、作業者は第2基板3を専用工具14で吸着する。専用工具14には凹部14aが設置されている。専用工具14には凹部14aと連通する配管14bが接続されている。配管14bには図示しない真空ポンプが接続されている。専用工具14には平坦な吸着面14cが設置され、吸着面14cに凹部14aが配置されている。作業者は吸着面14cを第2基板3の上面3aに接触させて真空ポンプを作動する。凹部14a内が減圧されるので、第2基板3が専用工具14に吸着される。
【0059】
専用工具14は図示しない組立装置により移動される。作業者は組立装置を制御することにより第2基板3を位置精度良く移動させる。組立装置には水平多関節ロボットや直交ロボットを用いることができる。そして、組立装置は専用工具14をロボットハンドのように動作させる。専用工具14に吸着された第2基板3は組立装置によりペースト13と対向する場所に移動される。
【0060】
図11に示すように、組立装置は専用工具14を移動させて、第2基板3をペースト13に接触させる。この操作により、ペースト13は第1基板2及び第2基板3で挟まれる。第2ペースト12は第2粒子9の密度が低いので、第2粒子9が移動し易くなっている。従って、第1基板2と第2基板3との間に衝撃荷重が加わるとき第2ペースト12の第2粒子9が移動することにより応力を緩和することができる。その結果、第2ペースト12は衝撃荷重により第2基板3に加わる応力を緩和することができる。
【0061】
第2基板3がペースト13を押圧するとき、ペースト13は厚みが薄くなる。そして、ペースト13の一部が第1基板2の平面方向に膨らむ。さらに、ペースト13は第2基板3の側面側にも膨らむ。その結果、第1基板2の平面視においてペースト13は第2基板3の周りの少なくとも一部から突出する。
【0062】
組立装置は第1基板2と第2基板3との間の距離が所定の距離になるように第2基板3の位置精度良く制御する。そして、組立装置は第2基板3の上面3aにペースト13が設置されないようにする。
【0063】
図12はステップS5の焼成工程に対応する図である。図12に示すように、ステップS5において、第2基板3が設置された状態で作業者はペースト13を焼成する。焼成条件は特に限定されず、ペースト13における有機-金属複合ナノ粒子と溶媒成分との比率やペースト13の設置量に合わせて設定される。焼成工程は本実施形態では、例えば、低温焼成工程と高温焼成工程との2段階で行われる。低温焼成工程ではペースト13が80℃~100℃で焼成される。低温焼成工程では溶媒成分を蒸発させて除去する。
【0064】
高温焼成工程では200℃~250℃で焼成される。ペースト13を200℃以上に加熱することにより、残存する溶媒成分と有機殻の成分が分解する。そして、溶媒成分と有機殻の成分の一部は揮発してペースト13から離脱し、残部は高温によって炭化して接合膜4中に残存する。溶媒と有機殻が炭化して残存した成分が占める比率は小さいので接合膜4の伝熱性や結合力に与える影響は小さい。
【0065】
高温焼成工程では、有機殻が分解除去されて金属ナノ粒子同士が結合し易くなるため、ペースト13を金属の融点より低温で焼成することが可能になる。そして、高温焼成工程ではペースト13が焼成されて接合膜4になり、第1基板2と第2基板3とが接合される。その結果、蛍光体素子1が完成する。以上の工程により、蛍光体素子1の製造工程が終了する。
【0066】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、蛍光体素子1は第1基板2及び第2基板3を備えている。第1基板2及び第2基板3は接合膜4により接合されている。接合膜4は第1領域4a及び第2領域4bを有している。第1領域4aと第2領域4bとでは金属ナノ粒子の粒径の分布が異なっている。第1領域4aの金属ナノ粒子の粒径は第2領域4bの金属ナノ粒子の粒径より小さくなっている。そして、第1領域4aは第2領域4bより金属ナノ粒子の密度が高くなっている。熱の伝導は金属ナノ粒子を熱が伝わって行われるので、金属ナノ粒子の密度が高い領域は低い領域より伝熱性が良い。第1領域4aは金属ナノ粒子の密度が高いので伝熱性が良い領域になっている。
【0067】
そして、第2領域4bは金属ナノ粒子の密度が低いので、ステップS4の基板組み立て工程では第2領域4bの金属ナノ粒子が移動し易くなっている。従って、第1基板2と第2基板3との間に衝撃荷重が加わるとき第2領域4bの金属ナノ粒子が移動することにより応力を緩和することができる。その結果、蛍光体素子1は伝熱性を良くすることができ、さらに、衝撃荷重による応力を緩和することができる。
【0068】
(2)本実施形態によれば、第1領域4aは第2基板3の中央に配置され、第2領域4bは第1領域4aの周りに配置されている。第1領域4aは第1粒子8の密度が高く、伝熱性の良い領域である。第2基板3の熱は第1領域4aを経て第1基板2に伝わる。第2領域4bにおける第2基板3の熱の一部は第2領域4bの第2粒子9を伝導する。さらに、第2領域4bにおける第2基板3の熱の一部は第2基板3を伝導し、第1領域4aの第1粒子8を経由して第1基板2に伝導する。従って、第2基板3では第1領域4aからの距離が短い場所の熱は第1領域4aに早く到達するので早く伝熱する。そして、第2基板3では第1領域4aからの距離が長い場所の熱は第1領域4aに遅く到達するので遅れて伝熱する。
【0069】
第2基板3の中央に第1領域4aがあるときには、第2基板3の端に第1領域4aが有るときに比べて、第1領域4aから離れた第2基板3上の場所と第1領域4aとの間の距離を短くすることができる。そして、第2基板3の第2領域4bの熱が遅れて伝熱することを抑制できる。従って、第2基板3の温度分布のばらつきを小さくすることができる。
【0070】
(3)本実施形態によれば、第1基板2の平面視において接合膜4は第2基板3の周りより突出している。第2基板3の熱は接合膜4を経て第1基板2に伝わる。従って、第2基板3の周りから突出している接合膜4も伝熱する。従って、接合膜4が第2基板3の周りから突出していないときに比べて効率良く伝熱することができる。
【0071】
第2基板3の上面3aには接合膜4が設置されていない。上面3aは第2基板3において第1基板2側の逆側の面である。接合膜4には金属ナノ粒子が含まれているので導電性がある。蛍光体素子1では第2基板3の上面3aには接合膜4が設置されていないので、接合膜4により電気的な不具合が生じることを抑制できる。また、上面3aに接合膜4が設置されたときは上面3aに接合膜4の凹凸ができる。蛍光体素子1では第2基板3の上面3aに接合膜4が設置されていないので、接合膜4の凹凸により不具合が生じることを抑制できる。
【0072】
(4)本実施形態によれば、第1基板2の片面に金属ナノ粒子を含むペースト13が設置される。そして、ペースト13は第1基板2及び第2基板3で挟まれる。そして、ペースト13が焼成される。金属ナノ粒子は粒子径が小さく微細なため高い結合性を有し、金属ナノ粒子を構成する金属の融点より低い温度で粒子間接合が生じる。従って、金属ナノ粒子を含むペースト13は焼成することにより、第1基板2と第2基板3とを結合することができる。
【0073】
ペースト13は第1ペースト11と第2ペースト12とを有している。そして、第1ペースト11は金属ナノ粒子の密度が高く、第2ペースト12は金属ナノ粒子の密度の低い。つまり、第1ペースト11は第2ペースト12より金属ナノ粒子の密度が高くなっている。熱の伝導は金属ナノ粒子を伝わるので、金属ナノ粒子の密度が高い第1ペースト11が焼成された第1領域4aは金属ナノ粒子の密度が低い第2ペースト12が焼成された第2領域4bより伝熱性が良い。このとき、第1領域4aは金属ナノ粒子の密度が高いので、第1領域4aは第2領域4bより伝熱性が良い場所になる。
【0074】
第2基板3の平面視において第1ペースト11の周りに第2ペースト12が設置されている。従って、第1領域4aの周りに第2領域4bが設置される。第2基板3の熱は第1領域4aを経て第1基板2に伝わり易い。従って、第2基板3では第1領域4aに近い場所の熱が第1基板2に伝わり易く、第1領域4aから離れた場所では熱が第1基板2に伝わり難くなる。第2領域4bの中側に第1領域4aがあるときには、第2領域4bの端の一カ所に第1領域4aが有るときに比べて、第1領域4aから離れた第2基板3の場所と第1領域4aとの間の距離を短くすることができる。従って、第2基板3の温度分布のばらつきを小さくすることができる。
【0075】
そして、第2ペースト12は第2粒子9の密度が低いので、ステップS4の基板組み立て工程の第2ペースト12は第2粒子9が移動し易くなっている。従って、第1基板2と第2基板3との間に衝撃荷重が加わるとき第2ペースト12の第2粒子9が移動することにより応力を緩和することができる。その結果、蛍光体素子1は伝熱性を良くすることができ、さらに、衝撃荷重による応力を緩和することができる。
【0076】
(第2の実施形態)
次に、蛍光体素子の一実施形態について図13の蛍光体素子の要部模式平面図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、第2基板3の周りの一部から接合膜4が突出している点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0077】
すなわち、本実施形態では、図13に示すように、接合体としての蛍光体素子17では第1基板2の平面視において接合膜4は第2基板3の周りの一部から突出している。つまり、第2基板3の四隅からは接合膜4が突出せず、四辺の中程から接合膜4が突出している。このとき、第2基板3と対向する場所の接合膜4を介して伝熱され、第2基板3の周りから突出している接合膜4も伝熱する。従って、接合膜4が第2基板3の周りから突出していないときに比べて効率良く伝熱することができる。
【0078】
(第3の実施形態)
次に、蛍光体素子の一実施形態について図14図16の蛍光体素子の模式側断面図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、第1基板2に溝が設置されている点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0079】
すなわち、本実施形態では、図14に示すように、接合体としての蛍光体素子80は第1基板81を備えている。第1基板81は第1領域4aの外周に沿って第1溝82が設置されている。そして、第2領域4bの外周に沿って第2溝83が設置されている。
【0080】
接合膜4の材料である第1ペースト11は液状である。図15に示すように、第1領域4aに設置する第1ペースト11を第1基板81に塗布するとき、第1ペースト11が第1基板81上で広がる。このとき、第1領域4aの外周に沿って第1溝82が設置されているので、第1ペースト11が第1溝82に到達したとき、第1ペースト11が第1溝82に入る。このとき、第1溝82があることで第1ペースト11の表面張力により塗布範囲が安定する。この為、第1ペースト11が第1溝82を越えて広がることを低減できる。
【0081】
同様に、接合膜4の材料である第2ペースト12は液状である。図16に示すように、第2領域4bに設置する第2ペースト12を第1基板81に塗布するとき、第2ペースト12が第1基板81上で広がる。このとき、第2領域4bの外周に沿って第2溝83が設置されているので、第2ペースト12が第2溝83に到達したとき、第2ペースト12が第2溝83に入る。このとき、第2溝83があることで第2ペースト12の表面張力により塗布範囲が安定する。この為、第2ペースト12が第2溝83を越えて広がることを低減できる。従って、第1ペースト11及び第2ペースト12を適正な位置に配置することができる。その結果、第1領域4a及び第2領域4bに品質良く接合膜4を配置することができる。
【0082】
(第4の実施形態)
次に、蛍光体素子が用いられたプロジェクターについて図17及び図18を用いて説明する。図17はプロジェクターの構成を示す模式図であり、図18は光源装置の構成を示す模式図である。図17に示すように、プロジェクター20は、内部に設けられた光源装置24から射出された光束を変調して画像情報に応じた画像を形成し、画像をスクリーン21の被投射面上に拡大投射する表示装置である。プロジェクター20は、外装筐体22を備えている。外装筐体22内には光学ユニット23の他、図示しない制御装置、冷却装置、及び電源装置等が収納されている。
【0083】
光学ユニット23は光源装置24を備えている。光源装置24は色分離装置25に照明光26を射出する。色分離装置25は、光源装置24から入射された照明光26を赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの色光に分離する装置である。照明光26は色分離装置25のダイクロイックミラー27に入射される。ダイクロイックミラー27は赤色光28を透過させて、緑色光29及び青色光30を反射する。
【0084】
ダイクロイックミラー27を透過した赤色光28は全反射ミラー31で反射して色分離装置25から射出される。次に、赤色光28は平行化レンズ32a及び光変調装置33aを通過して色合成装置34に射出される。ダイクロイックミラー27で反射した緑色光29はダイクロイックミラー35で反射して色分離装置25から射出される。次に、緑色光29は平行化レンズ32b及び光変調装置33bを通過して色合成装置34に射出される。ダイクロイックミラー27で反射した青色光30はダイクロイックミラー35及びリレーレンズ36を通過して全反射ミラー37に向かって進行する。青色光30は全反射ミラー37で反射し、リレーレンズ38を通過して全反射ミラー41に向かって進行する。青色光30は全反射ミラー41で反射して色分離装置25から射出される。次に、青色光30は平行化レンズ32c及び光変調装置33cを通過して色合成装置34に射出される。
【0085】
青色光30の光路長は赤色光28や緑色光29の光路長よりも長くなる。リレーレンズ36及びリレーレンズ38は青色光30の光損失を補償する。平行化レンズ32aは光変調装置33aに入射する光を平行光にし、平行化レンズ32bは光変調装置33bに入射する光を平行光にする。平行化レンズ32cは光変調装置33cに入射する光を平行光にする。光変調装置33a、光変調装置33b及び光変調装置33cは、それぞれ入射される光を変調して、画像情報に応じた色画像を形成する。光変調装置33a、光変調装置33b及び光変調装置33cには液晶パネルが用いられる。
【0086】
色合成装置34には、赤色光28、緑色光29及び青色光30が入射される。色合成装置34は、赤色光28、緑色光29及び青色光30を合成して合成光42を形成し、合成光42を投射光学装置43に向けて射出する。本実施形態では、色合成装置34は、クロスダイクロイックプリズムにより構成される。投射光学装置43は、色合成装置34にて合成された合成光42をスクリーン21の被投射面に投射する。このような構成のプロジェクター20によりスクリーン21には拡大された画像が投射される。
【0087】
次に、光源装置24の構造を説明する。図18に示すように、光源装置24は光源44を備えている。光源44は、アレイ光源45及びコリメーター光学系46を備えている。アレイ光源45には複数の第1半導体レーザー47及び複数の第2半導体レーザー48がアレイ状に並んで配置されている。
【0088】
第1半導体レーザー47は光としての励起光49を射出する。励起光49は、例えば、ピーク波長が440nmのレーザー光である。第2半導体レーザー48は、青色光50を射出する。青色光50は、例えばピーク波長が460nmのレーザー光である。アレイ光源45から射出された励起光49及び青色光50は、コリメーター光学系46を通過して光源44から射出される。
【0089】
次に、励起光49及び青色光50はアフォーカル光学系51及びホモジナイザー光学系52を通過して偏光分離装置53に向かって進行する。アフォーカル光学系51は励起光49及び青色光50の光束径を調整する。ホモジナイザー光学系52は被照明領域の照度分布の均一性を高める。
【0090】
偏光分離装置53に入射した励起光49は図中下側へ進行する。偏光分離装置53に入射した青色光50は図中左へ進行する。そして、偏光分離装置53は励起光49と青色光50とを分離する。偏光分離装置53はプリズム型の偏光ビームスプリッターである。偏光分離装置53は偏光分離層54を2つのプリズム55で挟んだ構造になっている。
【0091】
偏光分離層54は入射する光に含まれるS偏光成分とP偏光成分とを分離する。具体的に、偏光分離層54は、S偏光成分を反射させ、P偏光成分を透過させる。また、偏光分離層54は、S偏光成分及びP偏光成分のいずれの偏光成分であっても、所定波長以上の光を透過させる色分離特性を有する。励起光49及び青色光50はいずれも直線偏光光である。励起光49はS偏光であり、偏光分離層54で反射する。青色光50は、P偏光であり、偏光分離層54を透過する。
【0092】
光源装置24は光源44が射出する励起光49の波長を変換する波長変換部57を備えている。偏光分離装置53から射出された励起光49はピックアップ光学系56を通過して波長変換部57を照射する。ピックアップ光学系56は励起光49を波長変換部57に集光させる。波長変換部57は照射された励起光49により励起されて励起光49より波長が長い蛍光光である黄色光58を射出する。波長変換部57は、熱を放熱する第1基板57aと蛍光体を有する第2基板57bとが接合膜57dで接合された接合体であり、波長変換部57には蛍光体素子1、蛍光体素子17または蛍光体素子80が用いられている。
【0093】
第2基板57bは照射された励起光49により温度が上昇する。そして、第2基板57bから第1基板57aに熱が伝導することにより、第2基板57bの温度が適度な温度に維持される。そして、波長変換部57には蛍光体素子1、蛍光体素子17または蛍光体素子80が用いられている。蛍光体素子1、蛍光体素子17及び蛍光体素子80は伝熱性が良く、さらに、製造工程では衝撃荷重による応力を緩和することができる。従って、波長変換部57は確実に過度の温度上昇を抑制できる。そして、波長変換部57は衝撃荷重による応力を緩和できるので、製造工程で衝撃を受けたときにも壊れ難いので、容易に生産できる。その結果、プロジェクター20は確実に過度の温度上昇を抑制でき、製造し易い波長変換部57を備えた装置とすることができる。
【0094】
波長変換部57から射出された黄色光58は、ピックアップ光学系56を通過した後、偏光分離装置53に入射される。ピックアップ光学系56は、波長変換部57から射出される黄色光58を集光する。そして、この黄色光58は、偏光分離装置53の偏光分離層54を通過する。
【0095】
一方、偏光分離層54を透過した青色光50は位相差板61及びピックアップレンズ62を通過して拡散反射素子63を照射する。青色光50は拡散反射素子63で反射した後ピックアップレンズ62及び位相差板61を通過して偏光分離装置53に射出される。位相差板61は、1/4波長板であり、偏光分離装置53と拡散反射素子63との間の光路中に配置されている。この位相差板61は、偏光分離装置53から入射されるP偏光の青色光50を円偏光に変換する。ピックアップレンズ62は、青色光50を拡散反射素子63に向けて集光させる。
【0096】
拡散反射素子63は入射された青色光50を拡散反射させる。次に、青色光50は位相差板61によりS偏光に変換される。そして、青色光50は偏光分離装置53に入射される。青色光50は偏光分離装置53の偏光分離層54にて反射されてインテグレーター光学系64に入射される。このとき、青色光50は、偏光分離装置53を透過した黄色光58とともに、インテグレーター光学系64に入射される。
【0097】
青色光50及び黄色光58はインテグレーター光学系64、偏光変換素子65及び重畳レンズ66を通過して光源装置24から射出される。光源装置24から射出された青色光50及び黄色光58は照明光26として利用される。
【0098】
インテグレーター光学系64は重畳レンズ66と協同して、被照明領域における照度分布を均一化する。このインテグレーター光学系64は、一対のレンズアレイを備える。レンズアレイでは複数のレンズがアレイ状に配列されている。インテグレーター光学系64から射出された青色光50及び黄色光58は、偏光変換素子65に入射する。
【0099】
偏光変換素子65は偏光分離層及び反射層が形成された透光性部材と、位相差板とを有している。そして、偏光変換素子65は入射される青色光50及び黄色光58を偏光方向が揃えられた直線偏光に変換する。重畳レンズ66は、偏光変換素子65から入射された青色光50及び黄色光58を被照明領域に重畳させる。この重畳レンズ66から射出された青色光50及び黄色光58は照明光26として色分離装置25に入射される。
【0100】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、プロジェクター20は光源44及び波長変換部57を備えている。光源44が射出する励起光49の波長を波長変換部57が変換する。波長変換部57は、熱を放熱する第1基板57aと蛍光体を有する第2基板57bとが接合膜57dで接合された接合体である。第2基板57bに励起光49が照射されるとき、第2基板57bが発光する。このとき、照射した励起光49と異なる波長の黄色光58を発光することにより波長が変換される。
【0101】
第2基板57bは照射された励起光49により温度が上昇する。そして、第2基板57bから第1基板57aに熱が伝導することにより、第2基板57bの温度が適度な温度に維持される。そして、波長変換部57には蛍光体素子1または蛍光体素子17が用いられている。蛍光体素子1または蛍光体素子17は伝熱性が良く、さらに、製造工程では衝撃荷重による応力を緩和することができる。従って、波長変換部57は確実に過度の温度上昇を抑制できる。そして、波長変換部57は衝撃荷重による応力を緩和できるので、製造工程で衝撃を受けたときにも壊れ難いので、容易に生産できる。その結果、プロジェクター20は確実に第2基板57bの過度の温度上昇を抑制でき、製造し易い波長変換部57を備えた装置とすることができる。
【0102】
(比較例)
特許文献2では、金属粒径を1種類にして、ペースト用溶剤の量を変えて粒子の密度が異なる領域を複数設置した。そして、伝熱し易く耐衝撃性の小さい領域と伝熱し難く耐衝撃性の大きな領域を設置した。この複数の領域を製造するプロセスでは温度プロファイルを細かく制御する必要があった。詳しくは、ペースト用溶剤中に有機溶媒が多く残る温度域では昇温速度を遅く、有機溶媒が少なくなる温度域では昇温速度を早くする制御を行っていた。そして、ペースト用溶剤の量が異なる領域が設定されているので、複雑な温度プロファイルの設定が必要であった。
【0103】
さらに、有機溶媒が多く残る温度域では低加重とし、有機溶媒が少なくなる温度域では高加重とする制御を行っている。このように、1種類の金属粒径で密度勾配をつくるには温度プロファイル及び荷重を精度良く制御可能な装置が必要である。従って、蛍光体素子の量産を行うには装置を特殊な装置が多数必要となるので生産性良く製造することが難しい。
【0104】
また、ペースト用溶剤の量が多くなると空隙が大きくなるので、耐衝撃性が低下する恐れがある。特許文献2に比べて蛍光体素子1では複数種の金属粒径を用いているので、焼結条件の制御が容易である。また、空隙が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
【0105】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、ステップS3のペースト設置工程において第1基板2にペースト13を設置した。第1基板2にペースト13を設置せずに第2基板3にペースト13を設置しても良い。そして、ペースト13を設置するときに第2基板3の平面視において第1ペースト11の周りに第2ペースト12を設置する。製造装置を利用する上でこちらの方が製造し易いときには、第2基板3にペースト13を設置するのが良い。このときにも、第2基板3の温度分布のばらつきを小さくすることができる。そして、衝撃荷重により第2基板3に生じる応力を緩和することができる。
【0106】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、接合膜4が第1領域4a及び第2領域4bの2つの領域で構成された。接合膜4は3つ以上の領域で構成されていても良い。図19は接合膜の構造を示す模式側断面図である。図19に示すように、接合体としての蛍光体素子70は第1基板2と第2基板3とを接合する接合膜71を備えている。接合膜71は第1領域71a、第2領域71b及び第3領域71cを有している。
【0107】
第1領域71aには多数の第1粒子72が設置され、第2領域71bには多数の第2粒子73が設置されている。第3領域71cには多数の第3粒子74が設置されている。接合膜71は、粒径が異なる3種の金属ナノ粒子を含んでいる。各粒子の平均粒径は特に限定されないが、例えば本変形例では、第1粒子72の平均粒径は10nm~50nmであり、第2粒子73の平均粒径は40nm~80nmになっている。第3粒子74の平均粒径は60nm~100nmになっている。第1粒子72、第2粒子73及び第3粒子74は粒径が異なる金属ナノ粒子である。このように、接合膜71は粒径が異なる複数種の金属ナノ粒子を含んでいる。詳しくは、接合膜71は粒径の分布が異なる3種類の金属ナノ粒子を含んでいる。粒径が小さい程、粒子間の隙間が小さくなる。従って、第1基板2の平面視において第1領域71aは第2領域71bより金属ナノ粒子の密度が高くなっている。第1基板2の平面視において第2領域71bは第3領域71cより金属ナノ粒子の密度が高くなっている。
【0108】
第1領域71aは第2基板3の中央に配置され、第2領域71bは第1領域71aの周りに配置されている。そして、第3領域71cは第2領域71bの周りに配置されている。従って、第2基板3の中央に近づく程接合膜71の熱伝導が高くなっている。そして、第2基板3の外周に近づく程接合膜71は金属ナノ粒子が移動し易くなっている。従って、蛍光体素子70は伝熱性を良くすることができ、さらに、衝撃荷重による応力を緩和することができる。尚、接合膜に含まれる粒径が異なる複数種の金属ナノ粒子の種類数は4種以上でも良い。さらに、伝熱性や耐衝撃性を細かく設定することができる。
【0109】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、第1領域4aは第2基板3の中央に配置され、第2領域4bは第1領域4aの周りに配置されていた。第2基板3の外周に近い場所の温度が高くなるときには、第2領域4bが第2基板3の中央に配置され、第1領域4aが第2領域4bの周りに配置されても良い。効率良く第2基板3の熱を第1基板2に伝導させることができる。
【符号の説明】
【0110】
1,17,70,80…接合体としての蛍光体素子、2,57a…第1基板、3,57b…第2基板、4a…第1領域、4b…第2領域、4,57d…接合膜、8…金属ナノ粒子としての第1粒子、9…金属ナノ粒子としての第2粒子、11…第1ペースト、12…第2ペースト、13…ペースト、20…プロジェクター、44…光源、49…光としての励起光、57…波長変換部。
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