(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ロータコアの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20221025BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20221025BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H02K15/02 K
B29C45/02
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2018078172
(22)【出願日】2018-04-16
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-026958(JP,A)
【文献】特開2013-215058(JP,A)
【文献】特開2012-130130(JP,A)
【文献】特開2013-212012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
B29C 45/02
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア本体に形成された磁石収容孔に磁石を収容し、前記磁石を収容した前記磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、前記コア本体に前記磁石を固定する装置であって、
前記磁石収容孔に前記磁石を収容した前記コア本体が載置される固定型と、
前記コア本体上に設けられ、樹脂流入口を有する可動型と、
前記コア本体と前記可動型との間に配置され、前記樹脂流入口から流入した樹脂を前記磁石収容孔に導くと共に、前記樹脂の硬化物であるカルを保持する充填ポットが形成されたカルプレートと、を備え、
前記充填ポットにおける前記樹脂流入口から樹脂が流入される開口が、前記樹脂流入口における樹脂の出口よりも大きく、
前記固定型は、固定型本体と、前記固定型本体から取り外し可能
で前記コア本体が載置される支持部材とを有し、前記固定型本体に設けられたストッパによって前記支持部材の動きが規制されると共に前記ストッパと前記支持部材との間にクリアランスが設けられており、
前記カルプレートは、前記支持部材に対して位置決めされ、
前記充填ポットの前記開口の大きさが、前記可動型に対する前記カルプレートの位置ずれが最大となった際に、前記樹脂流入口の前記出口の全体が前記開口と対向する位置に維持される大きさであ
り、
前記充填ポットは、前記可動型の前記樹脂流入口と連通する接続部と、前記接続部の底壁を貫通し、前記接続部と前記磁石収容孔とを連通するノズル部と、を有し、
前記接続部は、前記開口を有する複数の樹脂たまり部と、前記複数の樹脂溜まり部同士を連通する環状のランナー部と、を有し、
前記ランナー部は、前記コア本体の回転軸線を軸心とする円環状に形成された凹状の溝であり、
前記複数の樹脂だまり部は、前記ランナー部の内側に連結され、それぞれランナー部と連通されており、
前記ノズル部は、前記ランナー部の底壁を貫通するように形成されている、
ロータコアの製造装置。
【請求項2】
前記カルプレートには、前記支持部材に設けられた凸部に係止される位置決め用穴が形成され、前記位置決め用穴の内周面と前記凸部との間にクリアランスが設けられており、
前記充填ポットの前記開口の大きさは、前記位置決め用穴の内周面と前記凸部との間のクリアランスならびに前記ストッパと前記支持部材との間のクリアランスによる前記可動型に対する前記カルプレートの位置ずれが最大となった際にも、前記樹脂流入口の前記出口の全体が前記開口と対向する位置に維持される大きさである、
請求項1に記載のロータコアの製造装置。
【請求項3】
前記充填ポットの
前記複数の樹脂たまり部の前記開口、及び前記樹脂流入口の前記出口は、平面視で円形状に形成されており、
前記充填ポットの
前記複数の樹脂たまり部の前記開口の直径が、前記樹脂流入口の前記出口の直径よりも大きい、
請求項1または2に記載のロータコアの製造装置。
【請求項4】
前記樹脂溜まり部は、前記コア本体側ほど縮径されるテーパ状に形成されている、
請求項
3に記載のロータコアの製造装置。
【請求項5】
コア本体に形成された磁石収容孔に磁石を収容し、前記磁石を収容した前記磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、前記コア本体に前記磁石を固定する方法であって、
前記磁石収容孔に前記磁石を収容した前記コア本体を固定型に載置し、
前記コア本体上に樹脂流入口を有する可動型を設けると共に、
前記コア本体と前記可動型との間に、前記樹脂流入口から流入した樹脂を前記磁石収容孔に導くと共に、前記樹脂の硬化後に前記樹脂の硬化物であるカルを保持する充填ポットが形成されたカルプレートを配置する準備工程と、
前記樹脂流入口から供給された前記樹脂を、前記充填ポットを介して前記磁石収容孔に流入させ充填し、前記磁石収容孔に充填した前記樹脂を硬化させる樹脂封止工程と、
前記可動型を離脱させ、その後前記カルプレートを前記コア本体から取り外すことで、前記コア本体から前記カルを分離させるカル分離工程と、を備え、
前記カルプレートとして、前記充填ポットにおける前記樹脂流入口から樹脂が流入される開口が、前記樹脂流入口における樹脂の出口よりも大きいものを用い、
前記固定型は、固定型本体と、前記固定型本体から取り外し可能
で前記コア本体が載置される支持部材とを有し、前記固定型本体に設けられたストッパによって前記支持部材の動きが規制されると共に前記ストッパと前記支持部材との間にクリアランスが設けられており、
前記カルプレートは、前記準備工程において前記支持部材に対して位置決めされ、
前記充填ポットの前記開口の大きさが、前記可動型に対する前記カルプレートの位置ずれが最大となった際に、前記樹脂流入口の前記出口の全体が前記開口と対向する位置に維持される大きさであ
り、
前記充填ポットは、前記可動型の前記樹脂流入口と連通する接続部と、前記接続部の底壁を貫通し、前記接続部と前記磁石収容孔とを連通するノズル部と、を有し、
前記接続部は、前記開口を有する複数の樹脂たまり部と、前記複数の樹脂溜まり部同士を連通する環状のランナー部と、を有し、
前記ランナー部は、前記コア本体の回転軸線を軸心とする円環状に形成された凹状の溝であり、
前記複数の樹脂だまり部は、前記ランナー部の内側に連結され、それぞれランナー部と連通されており、
前記ノズル部は、前記ランナー部の底壁を貫通するように形成されている、
ロータコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに用いるロータコアの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータに用いるロータコアとして、コア本体に形成された磁石収容孔に磁石を収容し、磁石を収容した磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、コア本体に磁石を固定したものが知られている。このようなロータコアを製造する際には、磁石収容孔内に充填した樹脂を硬化させた後に、磁石収容孔の外部に形成されたカルと呼称される不要な樹脂の硬化物を除去する必要がある。
【0003】
従来のロータコアの製造装置として、成型型とコア本体との間にカルプレートと呼称される板状の部材を配置し、このカルプレートにカルを保持させるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。カルプレートを備えることにより、樹脂の硬化後にカルプレートをコア本体から取り外せば、カルプレートと共に複数のカルが一気にコア本体から分離されることとなり、カルを分離させる工程が容易になる。また、カルを成形型から離脱させカルプレートに残すことができるため、次回成形時の充填不良や成型型の破損を抑制することも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カルプレートを用いる場合、カルプレートに樹脂の流路の一部を形成することになる。樹脂の充填時には、カルプレートに樹脂の流路と、成形型側の樹脂の流路とを厳密に位置決めしないと、樹脂の充填不良や樹脂漏れ等の不具合が発生するおそれがある。しかしながら、コア本体を載置する固定型やカルプレートの製造公差、及びクリアランス(がた)等の影響により、成形型とカルプレートの位置ずれは避けることができず、対策が望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂充填時の充填不良や樹脂漏れを抑制可能なロータコアの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、コア本体に形成された磁石収容孔に磁石を収容し、前記磁石を収容した前記磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、前記コア本体に前記磁石を固定する装置であって、前記磁石収容孔に前記磁石を収容した前記コア本体が載置される固定型と、前記コア本体上に設けられ、樹脂流入口を有する可動型と、前記コア本体と前記可動型との間に配置され、前記樹脂流入口から流入した樹脂を前記磁石収容孔に導くと共に、前記樹脂の硬化物であるカルを保持する充填ポットが形成されたカルプレートと、を備え、前記充填ポットにおける前記樹脂流入口から樹脂が流入される開口が、前記樹脂流入口における樹脂の出口よりも大きく、前記固定型は、固定型本体と、前記固定型本体から取り外し可能で前記コア本体が載置される支持部材とを有し、前記固定型本体に設けられたストッパによって前記支持部材の動きが規制されると共に前記ストッパと前記支持部材との間にクリアランスが設けられており、前記カルプレートは、前記支持部材に対して位置決めされ、前記充填ポットの前記開口の大きさが、前記可動型に対する前記カルプレートの位置ずれが最大となった際に、前記樹脂流入口の前記出口の全体が前記開口と対向する位置に維持される大きさであり、前記充填ポットは、前記可動型の前記樹脂流入口と連通する接続部と、前記接続部の底壁を貫通し、前記接続部と前記磁石収容孔とを連通するノズル部と、を有し、前記接続部は、前記開口を有する複数の樹脂たまり部と、前記複数の樹脂溜まり部同士を連通する環状のランナー部と、を有し、前記ランナー部は、前記コア本体の回転軸線を軸心とする円環状に形成された凹状の溝であり、前記複数の樹脂だまり部は、前記ランナー部の内側に連結され、それぞれランナー部と連通されており、前記ノズル部は、前記ランナー部の底壁を貫通するように形成されている、ロータコアの製造装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、コア本体に形成された磁石収容孔に磁石を収容し、前記磁石を収容した前記磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、前記コア本体に前記磁石を固定する方法であって、前記磁石収容孔に前記磁石を収容した前記コア本体を固定型に載置し、前記コア本体上に樹脂流入口を有する可動型を設けると共に、前記コア本体と前記可動型との間に、前記樹脂流入口から流入した樹脂を前記磁石収容孔に導くと共に、前記樹脂の硬化後に前記樹脂の硬化物であるカルを保持する充填ポットが形成されたカルプレートを配置する準備工程と、前記樹脂流入口から供給された前記樹脂を、前記充填ポットを介して前記磁石収容孔に流入させ充填し、前記磁石収容孔に充填した前記樹脂を硬化させる樹脂封止工程と、前記可動型を離脱させ、その後前記カルプレートを前記コア本体から取り外すことで、前記コア本体から前記カルを分離させるカル分離工程と、を備え、前記カルプレートとして、前記充填ポットにおける前記樹脂流入口から樹脂が流入される開口が、前記樹脂流入口における樹脂の出口よりも大きいものを用い、前記固定型は、固定型本体と、前記固定型本体から取り外し可能で前記コア本体が載置される支持部材とを有し、前記固定型本体に設けられたストッパによって前記支持部材の動きが規制されると共に前記ストッパと前記支持部材との間にクリアランスが設けられており、前記カルプレートは、前記準備工程において前記支持部材に対して位置決めされ、前記充填ポットの前記開口の大きさが、前記可動型に対する前記カルプレートの位置ずれが最大となった際に、前記樹脂流入口の前記出口の全体が前記開口と対向する位置に維持される大きさであり、前記充填ポットは、前記可動型の前記樹脂流入口と連通する接続部と、前記接続部の底壁を貫通し、前記接続部と前記磁石収容孔とを連通するノズル部と、を有し、前記接続部は、前記開口を有する複数の樹脂たまり部と、前記複数の樹脂溜まり部同士を連通する環状のランナー部と、を有し、前記ランナー部は、前記コア本体の回転軸線を軸心とする円環状に形成された凹状の溝であり、前記複数の樹脂だまり部は、前記ランナー部の内側に連結され、それぞれランナー部と連通されており、前記ノズル部は、前記ランナー部の底壁を貫通するように形成されている、ロータコアの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂充填時の充填不良や樹脂漏れを抑制可能なロータコアの製造装置及び製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るロータコアの製造装置で製造するロータコア示す図であり、(a)は斜視図、(b)は中心軸線を含む断面を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係るロータコアの製造装置を示す断面図である。
【
図3】コア本体の下型への固定を説明する平面図である。
【
図4】カルプレートを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A線に沿った経路の断面図のうち、充填ポットの近傍を拡大した断面図であり、(c)は(a)のB-B線断面図である。
【
図5】(a),(b)は、樹脂だまり部の一変形例を示す断面図である。
【
図6】本実施の形態に係るロータコアの製造方法の手順を示すフロー図である。
【
図7】(a),(b)は、樹脂封止工程を説明する説明図である。
【
図8】(a),(b)は、カル分離工程を説明する説明図である。
【
図9】カルプレートの一変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)はそのC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
(ロータコアの説明)
図1は、本実施の形態に係るロータコアの製造装置で製造するロータコアを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は中心軸線を含む断面を示す断面図である。
図1(a),(b)に示すように、ロータコア10は、コア本体11と、コア本体11に形成された磁石収容孔13に収容された磁石14と、磁石収容孔13に充填され硬化された樹脂15と、を有している。
【0013】
コア本体11は、電磁鋼板からなる複数枚の鉄心片12が積層された積層体である。コア本体11は、全体として略円筒状に形成されており、その軸心部には、コア本体11を軸方向に貫通するように中心孔11aが形成されている。なお、
図1(a),(b)における符号Cは、コア本体11の中心軸線を表している。コア本体11の内周面には、対向位置から径方向内方に突出するキー部11bが形成されている。キー部11bは、後述する固定型2に対する位置決めのために用いられる。
【0014】
磁石収容孔13は、中心孔11aの外周側に形成されると共に、コア本体11を軸方向に貫通するように形成されている。コア本体11には、周方向に間隔をおいて複数の磁石収容孔13が形成されている。磁石収容孔13は、長穴状に形成されており、その長軸方向が、コア本体11の径方向に対して傾斜するように形成されている。より具体的には、長軸方向がコア本体11の径方向に対して所定角度傾斜した磁石収容孔13と、長軸方向がコア本体11の径方向に対して反対方向に所定角度傾斜した磁石収容孔13とが、コア本体11の周方向に離間して交互に形成されている。
【0015】
各磁石収容孔13には、コア本体11の軸方向に沿って延在する板状の磁石14が収容されている。磁石収容孔13には、樹脂15が充填されており、この樹脂15により、磁石14がコア本体11に固定されている。樹脂15としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0016】
コア本体11の中心孔11aよりも外周側、かつ磁石収容孔13よりも内周側には、磁石14を冷却するための冷却媒体が流通される冷却孔11cが形成されている。コア本体11には、周方向に離間して複数の冷却孔11cが形成されている。各冷却孔11cは、コア本体11を軸方向に貫通するように形成されると共に、コア本体11の周方向に沿って湾曲した円弧状に形成されている。図示していないが、各冷却孔11cは、コア本体11の内部において分岐して中心孔11aと連通する連通部を有している。
【0017】
(ロータコアの製造装置の説明)
図2は、本実施の形態に係るロータコアの製造装置を示す断面図である。
図3は、コア本体11の固定型2への固定を説明する平面図である。
図2及び
図3に示すように、ロータコアの製造装置1は、コア本体11に形成された磁石収容孔13に磁石14を収容し、磁石14を収容した磁石収容孔13内に樹脂を充填し硬化させて、コア本体11に磁石14を固定する装置である。ロータコアの製造装置1は、固定型2と、可動型3と、カルプレート4と、を備えている。なお、
図3では可動型3とカルプレート4とを省略している。
【0018】
固定型2は、磁石収容孔13に磁石14を収容したコア本体11が載置されるものであり、固定型本体21と、固定型本体21の上面に固定された支持部材(パレット)22と、支持部材22の上面に配置されたスペーサ23と、を有している。
【0019】
支持部材22は、平面視で矩形の板状のベース部22aと、ベース部22aの中央部から上方に突出し、コア本体11の中心孔11aに挿入される略円筒状のポスト部22bと、を有している。支持部材22は、固定型本体21から取り外し可能となっており、支持部材22上にスペーサ23、コア本体11、及びカルプレート4を載置した状態で、固定型本体21上にセットされる。
【0020】
固定型本体21には、4つのストッパ21aが設けられており、このストッパ21aにより、ベース部22aの前後左右への動きがそれぞれ規制されている。なお、ここでは平面視で矩形状のストッパ21aを用いる場合を示しているが、ストッパ21aの形状は適宜変更可能である。ストッパ21aによりベース部22aの前後左右への動きを規制することで、固定型本体21に対する支持部材22の位置決めがなされる。なお、ストッパ21a間にベース部22aを挿入できるように、ベース部22aとストッパ21a間には、所定のクリアランスが設けられている。
【0021】
ポスト部22bの外周面には、コア本体11のキー部11bが挿入される一対のキー溝22cが形成されており、このキー溝22cにキー部11bを挿入することにより、固定型2に対するコア本体11の位置決めが行われる。また、ポスト部22bの上端部には、上方に突出する一対の凸部(ピン部)22dが設けられている。凸部22dは、カルプレート4の位置決めを行うためのものである。
【0022】
スペーサ23は、板状に形成されており、その中央部にポスト部22bを挿通する挿通孔23aが形成されている。図示していないが、スペーサ23は、挿通孔23a内に突出しポスト部22bのキー溝に挿入される一対の規制突起を有しており、この規制突起をキー溝22cに挿入することで、支持部材22及びコア本体11に対するスペーサ23の位置決めがなされる。コア本体11は、スペーサ23の上面に載置され、コア本体11の下面とスペーサ23の上面とは当接する。
【0023】
スペーサ23におけるコア本体11の磁石収容孔13に対応する位置には、スペーサ23を板厚方向に貫通するピン用孔23bが形成されており、このピン用孔23bに、下方から規制ピン23cが挿入され固定されている。規制ピン23cの上端部は、スペーサ23の上面よりも上方に突出し、磁石収容孔13内に突出しており、磁石収容孔13に収容された磁石14を下方から支持する。
【0024】
可動型3は、固定型2に載置されたコア本体11上に、固定型2に対して離接可能に設けられている。可動型3は、可動型本体31と、可動型本体31の下面に固定されたプレート部32と、を有している。プレート部32は、カルプレート4よりも外形が大きくされている。可動型3は、磁石収容孔13を封止する樹脂を流入させるための複数の樹脂流入口33を有している。各樹脂流入口33は、可動型本体31及びプレート部32を貫通するように形成されており、平面視で円形状に形成されている。
【0025】
(カルプレート4の説明)
図4は、カルプレート4を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A線に沿った経路の断面図のうち、充填ポットの近傍を拡大した断面図であり、(c)は(a)のB-B線断面図である。なお、
図4(a)では、カルプレート4をコア本体11に重ねた際の磁石収容孔13の位置を破線にて表している。また、
図2は、
図4(a)にA-A線で示した経路に沿った断面図を表している。
【0026】
図2及び
図4に示すように、カルプレート4は、板状に形成されており、コア本体11と可動型3(プレート部32)との間に配置されている。カルプレート4の下面はコア本体11の上面に当接し、カルプレート4の上面はプレート部32の下面に当接する。
【0027】
カルプレート4には、ポスト部22bの凸部22dに係止される一対の位置決め用穴4aが形成されている。位置決め用穴4aに凸部22dを挿入することにより、カルプレート4のポスト部22b及びコア本体11に対する位置決めがなされる。なお、位置決め用穴4aに凸部22dを挿入できるように、位置決め用穴4aの内周面と凸部22d間には、所定のクリアランスが設けられている。
【0028】
カルプレート4には、可動型3の樹脂流入口33から流入した樹脂を磁石収容孔13に導く充填ポット41が形成されている。詳細は後述するが、充填ポット41は、樹脂の硬化後に、不要な樹脂の硬化物であるカルを保持する役割も果たすものである。
【0029】
上述のように、位置決め用穴4aの内周面と凸部22d間や、ベース部22aとストッパ21a間にはクリアランスが設定されており、このクリアランスの影響や、各部材の製造公差の影響により、可動型3の樹脂流入口33に対して、対応する充填ポット41の位置がずれてしまうことが考えられる。このような位置ずれは避けることができず、位置ずれが発生した場合であっても、樹脂の充填不良や樹脂漏れの発生を抑制することが望まれる。
【0030】
そこで、本実施の形態に係るロータコアの製造装置では、充填ポット41における樹脂流入口33から樹脂が流入される開口41aを、樹脂流入口33における樹脂の出口33aよりも大きくした。これにより、充填ポット41の開口41aが、樹脂流入口33に対して多少ずれた場合であっても、樹脂流入口33からの樹脂を充填ポット41内へと導入し、樹脂の充填不良や樹脂漏れ等の不具合を抑制することが可能になる。充填ポット41の開口41aの大きさは、可動型3に対するカルプレート4の位置ずれが最大となった際に、樹脂流入口33の出口33aの全体が開口41aと対向する位置に維持される大きさとすればよい。以下、充填ポット41の詳細を説明する。
【0031】
充填ポット41は、可動型3の樹脂流入口33と連通する接続部411と、接続部411の底壁を貫通し、接続部411と磁石収容孔13とを連通するノズル部412と、を有している。本実施の形態では、接続部411は、開口41aを有する複数(樹脂流入口33と同数)の樹脂たまり部411aと、複数の樹脂溜まり部411a同士を連通する環状のランナー部411bと、を有している。
【0032】
各樹脂だまり部411aは、平面視で略円形状に形成されており、その開口41aも平面視で略円形状に形成されている。本実施の形態では、開口41aの直径d2は、樹脂流入口33における樹脂の出口33aの直径d1よりも大きくされる。製造公差の大きさや設定されたクリアランスの大きさにもよるが、開口41aの直径d2は、樹脂流入口33の出口33aの直径d1よりも1mm以上、より好ましくは2mm以上大きいことが望ましい。なお、
図4(b),(c)では、樹脂流入口33を一点鎖線にて示している。
【0033】
樹脂だまり部411aは、コア本体11側ほど縮径されるテーパ状に形成されている。これにより、カルプレート4からのカルの除去(離型)が容易になる。各樹脂だまり部411aでは、その下側(コア本体11側)の端部において最も直径が小さくなるが、この樹脂だまり部411aの最小の直径についても、樹脂流入口33における樹脂の出口33aの直径d1よりも大きいことがより望ましい。
【0034】
ランナー部411bは、上方に開口する凹状の溝であり、カルプレート4の平面視における中心(コア本体11上に載置した際のコア本体11の中心軸線C)を軸心として周方向に沿うように円環状に形成されている。各樹脂だまり部411aは、ランナー部411bの内側(カルプレート4の軸心側)に連結されており、それぞれランナー部411bと連通されている。
【0035】
ノズル部412は、ランナー部411bの底壁を貫通するように形成されている。これにより、樹脂流入口33及び樹脂だまり部411aの位置によらず自由にノズル部412の位置を設定可能になると共に、樹脂流入口33の数によらず自由に磁石収容孔13及び磁石14の数を設定可能となり、ロータコア10の設計自由度を向上させることが可能になる。
【0036】
ノズル部412は、磁石収容孔13の長軸方向に平行な一対の長辺を有する長方形状に形成されている。また、ノズル部412は、下方ほど(コア本体11側ほど)開口が狭くなるテーパ状に形成されている。これにより、樹脂の硬化後に、磁石収容孔13を封止している樹脂15と、不要なカルとを連結する連結部が細くなり、樹脂15からのカルの分離が容易となる。
【0037】
本実施の形態では、カルプレート4からのカルの除去を容易とするために、樹脂だまり部411aをコア本体11側ほど縮径されるテーパ状に形成する場合について説明したが、樹脂だまり部411aをテーパ状とすることは必須ではなく、
図5(a)に示すように、樹脂だまり部411aを一定の径としてもよい。また、
図5(b)に示すように、樹脂だまり部411aの内周面を、上方ほど径が広くなる階段状に形成してもよい。さらに、カルプレート4からのカルの除去を容易とするために、ランナー部411bについても、コア本体11側ほど開口が狭くなるテーパ状に形成してもよい。
【0038】
(ロータコアの製造方法の説明)
図6は、本実施の形態に係るロータコアの製造方法の手順を示すフロー図である。
図6に示すように、本実施の形態に係るロータコアの製造方法では、まず、ステップS1にて、コア本体11を形成するコア本体形成工程を行う。ステップS1のコア本体形成工程では、電磁鋼板をプレスして鉄心片12を形成し、形成した鉄心片12を複数積層して上下からプレスしてコア本体11を形成する。なお、コア本体11を形成する具体的な工程については、これに限定されるものではない。
【0039】
その後、ステップS2にて、コア本体11をロータコアの製造装置1にセットする準備工程を行う。ステップS2の準備工程では、コア本体11を固定型2に載置すると共に、コア本体11の磁石収容孔13に磁石14を収容する。また、コア本体11上に、カルプレート4と可動型3とを順次配置する。本実施の形態では、カルプレート4として、充填ポット41における樹脂流入口33から樹脂が流入される開口41aが、樹脂流入口33における樹脂の出口33aよりも大きいものを用いている。そのため、製造公差やクリアランスの影響による樹脂流入口33の出口33aと充填ポット41の開口41aとの位置ずれが生じにくく、次ステップの樹脂封止工程において樹脂の充填不良や樹脂漏れが生じにくい。
【0040】
その後、ステップS3にて、樹脂封止工程を行う。ステップS3の樹脂封止工程では、
図7(a)に示すように、封止用の樹脂15の原料となる熱硬化性樹脂からなる母材15aを、可動型3の樹脂流入口33に挿入し、プランジャ7により母材15aを下方(コア本体11側)へと押し込みつつ、母材15aを熱により溶融させて、樹脂流入口33から樹脂(溶融させた母材15a)を供給する。
【0041】
図7(b)に示すように、樹脂流入口33から供給された樹脂は、充填ポット41を介して磁石収容孔13に流入し、樹脂が充填ポット41に充填される。熱により磁石収容孔13に充填した樹脂が硬化されると、磁石収容孔13を封止する樹脂15が形成されると共に、カルプレート4の充填ポット41にカル5が形成される。なお、樹脂封止工程においては、コア本体11やロータコアの製造装置1の一部(支持部材22、スペーサ23、コア本体11、及びカルプレート4)を加熱炉に導入して予め加熱しておき、この熱により母材15aの溶融及び樹脂の硬化を行うとよい。
【0042】
その後、ステップS4にて、カル分離工程を行う。ステップS4のカル分離工程では、まず、
図8(a)に示すように、可動型3を上方に移動させて離脱させる。その後、
図8(b)に示すように、カルプレート4をコア本体11から取り外し、カル5と樹脂15とを分離する。カル5を分離させたコア本体11を固定型2から取り外せば、
図1のロータコア10が得られる。
【0043】
その後、ステップS5にて、カルプレート4からカル5を取り除くカル除去工程を行う。ステップS5のカル除去工程では、例えば、インジェクタピンをノズル部412の下方から挿し込むことで、カル5をカルプレート4から取り除く。なお、カルプレート4からカル5を取り除く具体的な方法については、これに限定されない。
【0044】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るロータコアの製造装置1では、充填ポット41における樹脂流入口33から樹脂が流入される開口41aを、樹脂流入口33における樹脂の出口33aよりも大きくしている。これにより、製造公差やクリアランスの影響で可動型3に対してカルプレート4の位置がずれた場合であっても、樹脂流入口33の出口33aを充填ポット41の開口41aと対向する位置に維持し易くなり、樹脂封止工程における樹脂の充填不良や樹脂漏れ等の不具合を抑制することが可能になる。
【0045】
また、充填ポット41の開口41aを大きくすることで、樹脂流入口33における出口33aの周縁のエッジ部分がカルプレート4に接触しにくくなるので、樹脂流入口33のエッジ部分がカルプレート4に接触することによる破損を抑制することも可能になる。樹脂流入口33の内周面は、耐摩耗性を向上させるため硬く脆い構造となっている場合があるが、本実施の形態によれば、このように樹脂流入口33の内周面が硬く脆い構造となっている場合であっても、可動型3の破損を抑制可能である。
【0046】
さらに、充填ポット41の開口41aを大きくすることで、プランジャ7をカルプレート4付近まで下降させたり、プランジャ7の先端部を充填ポット41内に突出させたりした場合であっても、プランジャ7の周囲で樹脂を流動させることが可能になり、溶融した樹脂がプランジャ7に遮られてノズル部412に到達できないといった不具合も抑制可能となる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0048】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、接続部411が樹脂だまり部411aとランナー部411bとから構成される場合を説明したが、これに限らず、
図9(a),(b)に示すように、ランナー部411bを省略し、樹脂だまり部411aの底壁を貫通するようにノズル部412を形成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…ロータコアの製造装置、2…固定型、21…固定型本体、21a…ストッパ、22…支持部材、22a…ベース部、22b…ポスト部、22c…キー溝、22d…凸部、23…スペーサ、23a…挿通孔、23b…ピン用孔、23c…規制ピン、3…可動型、31…可動型本体、32…プレート部、33…樹脂流入口、33a…出口、4…カルプレート、4a…位置決め用穴、41…充填ポット、41a…開口、411…接続部、411a…樹脂だまり部、411b…ランナー部、412…ノズル部、5…カル、7…プランジャ、10…ロータコア、11…コア本体、11a…中心孔、11b…キー部、11c…冷却孔、12…鉄心片、13…磁石収容孔、14…磁石、15…樹脂、15a…母材