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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ラジカル硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/40 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
C08F2/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018078761
(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公開番号】P2019183074
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】321011907
【氏名又は名称】エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152928
【弁理士】
【氏名又は名称】草部 光司
(72)【発明者】
【氏名】八木 恵理
(72)【発明者】
【氏名】池尻 雄治郎
(72)【発明者】
【氏名】檜森 俊一
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-214536(JP,A)
【文献】特開2003-293302(JP,A)
【文献】特表2010-510383(JP,A)
【文献】特開2016-056283(JP,A)
【文献】特開昭59-071370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル硬化性化合物(A)、重合禁止剤(B)及び促進剤(C)を含有するラジカル硬化性組成物において、重合禁止剤(B)として、下記一般式(1)で表されるナフトキノン化合物及び下記一般式(2)で表されるフェノール化合物を含有し、更に促進剤(C)として、コバルト系化合物及びアミン化合物を含有し、アミン化合物に対するコバルト系化合物の含有比率が0.006モル倍以上、0.1モル倍以下であり、ラジカル硬化性化合物(A)を100重量部とした場合の重合禁止剤(B)の含有比率が0.001以上、1.0重量部未満であり、ラジカル硬化性化合物(A)を100重量部とした場合の促進剤(C)の含有比率が0.05以上、10重量部未満であることを特徴とする、ラジカル硬化性組成物。
【化1】
(上記一般式(1)中、X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数2~9のアシル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数~10のアラルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、アミノ基、炭素数1~8のアルキルアミノ基、グリシジル基、炭素数1~8のヒドロキシアルキル基又は炭素数~10のアリールオキシアルキル基のいずれかを表し、このうち、X及びYは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、ヘテロ原子を挟んで環を形成してもよい。)
【化2】

(上記一般式(2)中、nは0又は1であり、mは0~4の整数を表す。また、Rは炭素数1~8のアルキル基又は炭素数1~8のアルコキシ基を表し、複数ある場合のRは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
JISK6901(2008)「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の「5.9常温硬化特性(発熱法)」に準じて、ゲル化時間をGT、最小硬化時間をCT、最高発熱温度をTpとした場合、GT(ゲル化時間)が5分以上であることを特徴とする、請求項1に記載のラジカル硬化性組成物。
【請求項3】
JISK6901(2008)「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の「5.9常温硬化特性(発熱法)」に準じて、ゲル化時間をGT、最小硬化時間をCT、最高発熱温度をTpとした場合、(CT-GT)/ GTの値が1.5未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のラジカル硬化性組成物。
【請求項4】
JISK6901(2008)「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の「5.9常温硬化特性(発熱法)」に準じて、ゲル化時間をGT、最小硬化時間をCT、最高発熱温度をTpとした場合、 (Tp-30)/(CT-GT) の値が5℃/分を超える値であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のラジカル硬化性組成物。
【請求項5】
重合禁止剤(B)における、一般式(1)で表されるナフトキノン化合物が、1,4-ナフトキノン、2―メチル-1,4-ナフトキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンであり、一般式(2)で表されるフェノール化合物が、1,4-ジヒドロキシベンゼン、4-t-ブチルカテコール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のラジカル硬化性組成物。
【請求項6】
重合禁止剤(B)における、一般式(1)で表されるナフトキノン化合物と一般式(2)で表されるフェノール化合物との添加比率が、重量比率で、10/90以上、90/10未満であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のラジカル硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のラジカル硬化性組成物を、硬化剤(D)存在下、活性エネルギー線及び/又は熱によりラジカル重合させることにより硬化させる硬化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラジカル硬化性組成物及びその硬化方法に関する。より詳しくは、促進剤と重合禁止剤を含有するラジカル硬化性組成物及びその硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル、ビニルエステルに代表されるラジカル硬化性化合物を含有するラジカル硬化性組成物は、一般的に液体で取り扱えることから作業性に優れ、且つ硬化物の機械強度、耐久性等の性能も良好であることから、特に硝子繊維や炭素繊維強化プラスチック製品として、船体、浴槽、車両、タンク、電気部品等に用いられるほか、レジンコンクリート、ゲルコート、パテ、化粧板、アンカーボルト、塗料、建材等、様々な用途で使用されている。
【0003】
このようなラジカル硬化性化合物を含有するラジカル硬化性組成物は、例えば、不飽和ポリエステルやビニルエステルのようなラジカル硬化性オリゴマーとスチレンやメタクリル酸メチルのようなラジカル硬化性モノマー等から構成されており、このラジカル硬化性組成物に硬化剤として有機過酸化物等のラジカル重合開始剤を添加することによって重合反応を開始させ、樹脂硬化物を成形する。即ち、ラジカル硬化性組成物、硬化剤の2液で取り扱われることが一般的である。
【0004】
加熱せず常温で使用されるいわゆる常温硬化タイプのラジカル硬化性組成物には、硬化剤の反応を進めるために促進剤の添加が不可欠であり、ラジカル硬化性組成物に予め促進剤が添加されたものに硬化剤を後から加えて硬化させる(特許文献1)。この際、促進剤を添加したラジカル硬化組成物は貯蔵安定性が悪いという問題があり、場合によってはラジカル硬化性組成物、促進剤、硬化剤の3液で取り扱われることとなる。
【0005】
促進剤を予めラジカル硬化性組成物に添加した場合も促進剤を硬化時に別に添加する場合も何れにおいても、ラジカル硬化性組成物には重合禁止剤が添加される。その目的の一つは、ラジカル硬化性オリゴマー及びラジカル硬化性モノマーの自然重合を防止するためである。即ちラジカル硬化性組成物の貯蔵安定性の向上のために重合禁止剤が添加される。ラジカル硬化性組成物が、硬化性化合物をある程度流動性を有する状態まで重合した「半製品」の状態のものであっても、その流動性のある半硬化の状態で留めおくため、重合禁止剤が添加される。
【0006】
また、ラジカル硬化性組成物の製造工程において、高粘度のラジカル硬化性オリゴマーを高温でラジカル硬化性モノマーに混合する際の重合反応を防止するため、更には、ラジカル硬化性化合物に促進剤などを添加する工程あるいはラジカル硬化性組成物を移送する際のラジカル硬化性オリゴマーやラジカル硬化性モノマーの重合反応を防止するため、即ち熱安定性向上のために重合禁止剤が添加される。さらには、硬化剤混合後から硬化が始まるまで、あるいは、加熱後から硬化が始まるまでの誘導期間(注型可使時間;ゲル化時間)を確保するため、即ち作業時間に相当するゲル化時間の確保のために重合禁止剤が使用される。
【0007】
このように、ラジカル硬化性組成物に添加される重合禁止剤には主に次の3つの役割があり、目的や特性に応じた複数の重合禁止剤が用いられる。1)貯蔵安定性の向上 2)熱安定性の向上3)ゲル化時間の確保である。
【0008】
この求められる3つの役割すべてを満たす重合禁止剤を調合することは難しい。例えば、貯蔵安定性や熱安定性の向上のために重合禁止剤を多く加えたいと思っても、多量に加えると硬化剤を添加して硬化させようとしたときゲル化時間が長くなりすぎて成形時にトラブルとなることがある。
【0009】
そのため、ゲル化時間を殆ど変えない重合禁止剤、すなわちラジカル硬化性組成物の硬化特性に殆ど影響を与えずに熱安定性や貯蔵安定性を向上させるような重合禁止剤が特に求められている。このような性質を有する重合禁止剤として、フェノール系重合禁止剤である2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)を用いた不飽和ポリエステルを主成分とするラジカル硬化性組成物が提案されている(特許文献2)。しかしながらフェノール系重合禁止剤は確かに貯蔵安定性を改善するものの、長期保存後のゲル化時間が保存前に比べて変動する現象(ゲルタイムドリフト)が見られる。ゲル化時間が変動(ドリフト)することにより、成型時にトラブルを引き起こしている。一般にナフテン酸コバルトのようなコバルト系の促進剤を用いた場合は、ゲル化時間が遅延する現象が見られ、ジメチルアニリンのようなアミン系促進剤を用いるとゲル化時間が短くなってしまう。
【0010】
ナフテン酸コバルトを促進剤として用いた場合に、このゲル化時間を安定させるための方法としてヒドロキシルアミンオキシドやヒドロキシルアミンを添加する方法(特許文献3)、N,N’-ジメチルアセトアミドを添加する方法(特許文献4)、N,N’-ジメチルアセトアミドとトルハイドロキノンを用いる方法(特許文献5)が知られている。これらの方法は、ラジカル硬化性組成物中に存在するフリーの酸と促進剤であるコバルトが錯形成することにより失活することを防止することを目的としたものであるが、その効果は満足できるものではなかった。また、保存中のラジカル硬化性組成物の安定性も十分ではなく、硬化物に着色が見られること、促進剤としてナフテン酸コバルトにしか効果がないという問題もあった。
【0011】
また、アミン系促進剤を用いた場合に、ゲル化時間を安定させるための方法として、非フェノール系抑制剤とフェノール系抑制剤を添加する方法が知られている(特許文献6、7)。この方法は、非フェノール系抑制剤として、フェノチアジン化合物、有機ニトロキシルラジカルを添加し、更に場合によってはフェノール系抑制剤としてヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチルフェノールなどを用いる方法である。非フェノール系抑制剤であるフェノチアジン化合物や有機ニトロキシルラジカルを従来のフェノール系抑制剤に合わせて用いることが特徴であるが、アミン系促進剤におけるゲルタイムドリフトを抑制する効果が報告されているが、ナフテン酸コバルトでの効果については知られていない。
【0012】
更に、本発明者らはコバルト系促進剤又はアミン系促進剤を用いる場合において、フェノチアジン化合物や有機ニトロキシルラジカルに加えてジヒドロキシナフタレン化合物又はナフトキノン化合物を添加することにより、貯蔵安定性を向上させることができる重合禁止剤を提案している(特許文献8、9)。しかし、硬化特性、特にゲルタイムドリフトに関してはさらに改善する余地があった。
【0013】
また、硬化剤を添加してゲル化するまでの時間(ゲル化時間)をある一定時間確保できれば良いというわけではない。ゲル化が始まってからゆっくりと硬化していくのも好ましくない。一般に、ゲル化時間が長くなると、硬化時間も長くなり、ゆっくりと硬化する傾向にある。この場合も作業性が良くない。すなわち、硬化剤を添加した後ある一定時間は、全く硬化せず、作業時間を確保することができ、かつ作業時間が経過後は急激に硬化するという性質をもったラジカル硬化性組成物が求められている。
【0014】
本発明者らは、促進剤を含有するラジカル硬化性組成物において、重合禁止剤として特定構造を有するフェノール化合物とナフトキノン化合物を組み合わせて用いることにより、ラジカル硬化性組成物の熱安定性や貯蔵安定性を向上させるとともに、長期保存した後にもゲルタイムドリフトが抑えられ、硬化剤存在下におけるゲル化時間を保存後も維持することが可能な重合禁止剤、及び当該重合禁止剤を含有するラジカル硬化性組成物を提案している(特許文献10)。しかし、ゲル化時間はある程度安定するものの、硬化速度が遅く、ゆっくりと硬化してしまう傾向にあった。
【0015】
一方、促進剤として、ナフテン酸コバルト系促進剤やアミン系促進剤を単独で用いるのではなく、両者を併用して用いることにより、硬化速度を速めるという試みは種々行われている。例えば、特許文献11に、硬化促進剤として、ナフテン酸コバルトとジメチルアニリンの両者を用いることを特徴とする枕木への犬釘又はネジ釘の打ち直し方法が開示されている。この混合促進剤を用いることにより、常温で10分程度で硬化する速硬化性を得ることができるとしている。また、特許文献12に、還元剤を含有する硬化促進剤として、第4周期の遷移金属化合物とアミン化合物の両方を含有することを特徴とする二液型光硬化性組成物が開示されている。そして、第4周期の遷移金属化合物とアミン化合物の両方を用いることで、暗部速やかに硬化可能なFPD貼り合わせ用二液型光硬化性組成物を提供することができるとしている。更に、特許文献13では、硬化促進剤が、三級アミン、メルカプタン、βジケトン、トリケトン、カルボン酸無水物またはチオ尿素誘導体より選択される1または2種類以上の化合物と、有機バナジウム化合物または有機コバルト化合物のいずれか1種類とを併用する請求項1記載の速硬化性2液型注入固着剤が開示されている。この混合系を用いることにより、短いゲル化時間が得られ特に好適であるとしている。更にまた、特許文献14では、少なくとも1つの三級芳香族アミンと少なくとも1つの三級アルキルアミンを含む、過酸化物開始型不飽和ポリマー樹脂系を硬化させるためのアミン促進剤ブレンドにおいて、更に、共促進剤としてコバルト、バナジウム、ジルコニウム、鉄、マンガン、クロム、スズ、アルミニウム、鉛または銅の金属塩を含有する硬化促進剤が開示されている。共促進剤を添加する事により、ゲル化時間を大幅に短縮できるとしている。しかし、両者を混合して用いることによる効果として、ゲル化時間の短縮、すなわち高速硬化性については記載されているが、ゲルタイムドリフトに関しては記載がなく、両者の混合割合がゲルタイムドリフトに影響を及ぼすことに関しては全く記載がなく、その示唆もない。
【0016】
また、特許文献15には、自動車ボディパーツの補修用パテとして、ポリエステル樹脂組成物が開示されており、その硬化促進剤として、2-エチルヘキサン酸/コバルトとN,N-ジメチルアニリンを用い、重合禁止剤として1,4-ナフトキノンを用いた例が記載されており、ゲル化時間が約4から6分としているが、硬化促進剤として混合系を用いたことの効果や、ナフトキノンを用いたことの効果についての記載はなく、ゲルタイムドリフトに関しては、全く記載がなく、その効果についての示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開平8-157544号公報
【文献】特開平5-222281号公報
【文献】特開2004-225045号公報
【文献】特開2006-265336号公報
【文献】特開2007-91998号公報
【文献】特開2009-541540号公報
【文献】特開2016-501933号公報
【文献】特開2016-14103号公報
【文献】特開2016-56283号公報
【文献】特開2017-214536号公報
【文献】特開2003-293302号公報
【文献】特開2013-227426号公報
【文献】特開2001-354947号公報
【文献】特表2010-510383号公報
【文献】US5169723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、促進剤を含有するラジカル硬化性組成物において、その熱安定性や貯蔵安定性を向上させるとともに、硬化剤を添加し硬化する際ゲル化時間をある一定時間以上確保でき、長期保存した後に硬化する際も、そのゲル化時間が維持され、すなわちゲルタイムドリフトがほとんど起こらず、かつ、硬化速度が速く、ゲル化時間経過後に急激に硬化が進行するような、促進剤と重合禁止剤の組合せ組成、及び当該組成を持つラジカル硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らが鋭意検討した結果、促進剤が添加されたラジカル硬化性組成物において、促進剤として第4周期の遷移金属化合物系促進剤とアミン系促進剤の両方を一定比率で併用し、更に重合禁止剤としてナフトキノン化合物とフェノール化合物とを併用して使用することにより、上記課題を解決できるとの知見を得て、本発明の完成に至った。
【0020】
まず、第一の発明は、ラジカル硬化性化合物(A)、重合禁止剤(B)及び促進剤(C)を含有するラジカル硬化性組成物において、重合禁止剤(B)として、下記一般式(1)で表されるナフトキノン化合物及び下記一般式(2)で表されるフェノール化合物を含有し、更に促進剤(C)として、第4周期の遷移金属化合物及びアミン化合物を含有し、アミン化合物に対する第4周期の遷移金属化合物の含有比率が1.1モル倍以下であることを特徴とする、ラジカル硬化性組成物に存する。
【0021】
【化1】
【0022】
上記一般式(1)中、X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数2~9のアシル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアラルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、アミノ基、炭素数1~8のアルキルアミノ基、グリシジル基、炭素数1~8のヒドロキシアルキル基又は炭素数6~10のアリールオキシアルキル基のいずれかを表し、このうち、X及びYは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、ヘテロ原子を挟んで環を形成してもよい。
【0023】
【化2】
【0024】
上記一般式(2)中、nは0又は1であり、mは0~4の整数を表す。また、Rは炭素数1~8のアルキル基又は炭素数1~8のアルコキシ基を表し、複数ある場合のRは同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
第二の発明は、GT(ゲル化時間)が5分以上であることを特徴とする、第一の発明に記載のラジカル硬化性組成物に存する。
【0026】
第三の発明は、(CT-GT)/ GTの値が1.5未満であることを特徴とする、第一の発明又は第二の発明に記載のラジカル硬化性組成物に存する。
【0027】
第四の発明は、(Tp-30)/(CT-GT) の値が5℃/分を超える値であることを特徴とする、第一の発明乃至第三の発明のいずれかひとつに記載のラジカル硬化性組成物に存する。
【0028】
第五の発明は、上記一般式(1)で表されるナフトキノン化合物が、1,4-ナフトキノン、2メチル-1,4-ナフトキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンであり、上記一般式(2)で表されるフェノール化合物が、1,4-ジヒドロキシベンゼン、4-t-ブチルカテコール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールである、第一の発明乃至第四の発明のいずれかひとつに記載のラジカル硬化性組成物に存する。
【0029】
第六の発明は、促進剤(C)における、第4周期の遷移金属化合物がコバルト系化合物であることを特徴とする、第一の発明乃至第五の発明のいずれかひとつに記載のラジカル硬化性組成物に存する。
【0030】
第七の発明は、上記一般式(1)で表されるナフトキノン化合物と上記一般式(2)で表されるフェノール化合物との添加比率が、重量比で、10/90以上、90/10未満である、第一の発明乃至第六の発明のいずれかひとつに記載のラジカル硬化性組成物に存する。
【0031】
第八の発明は、第一の発明乃至第七の発明のいずれかひとつに記載のラジカル硬化性組成物を、硬化剤(D)存在下、活性エネルギー線及び/又は熱によりラジカル重合させることにより硬化させる硬化方法に存する。
【0032】
本発明における「促進剤」とは、ラジカル硬化性化合物の硬化を高速化することができる化合物であり、硬化剤によるラジカル重合反応を促進する働きをする化合物である。
【0033】
本発明における「ゲル化時間」とは、ラジカル硬化性組成物を硬化剤を用いて硬化する場合において、硬化剤を配合してからラジカル硬化性組成物がゲル化するまでの時間をいう。当該ゲル化時間の測定は、JISK6901(2008)「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の5.9常温硬化特性(発熱法)に規定されている手法に準じて行われる。
【0034】
本発明における「ゲルタイムドリフト」とは、ゲル化時間の変動をいう。ラジカル硬化性組成物を調整した直後に硬化剤を添加した場合のゲル化時間と比べ、ラジカル硬化性組成物を調整後ある一定期間保存した後に硬化剤を添加した場合のゲル化時間が変動することがある。この変動をゲルタイムドリフトと称している。
【発明の効果】
【0035】
本発明のラジカル硬化性組成物は、促進剤の添加によって起こる貯蔵・輸送工程等における重合の進行が抑えられ、その熱安定性や貯蔵安定性が高く、硬化剤を添加し硬化する際ゲル化時間をある一定時間以上確保でき、長期保存した後に硬化する際も、そのゲル化時間が維持され、すなわちゲルタイムドリフトがほとんど起こらず、かつ、硬化速度が速く、ゲル化時間経過後に急激に硬化が進行する作業性の高い組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0037】
本発明は、ラジカル硬化性化合物(A)、重合禁止剤(B)及び促進剤(C)を含有するラジカル硬化性組成物において、重合禁止剤(B)として、上記一般式(1)で表されるナフトキノン化合物及び上記一般式(2)で表されるフェノール化合物を併用し、更に促進剤(C)として第4周期の遷移金属化合物系促進剤とアミン系促進剤を特定比率で併用することを特徴とするラジカル硬化性組成物である。
【0038】
重合禁止剤(B)として、上記一般式(1)で表されるナフトキノン化合物及び上記一般式(2)で表されるフェノール化合物、並びに、促進剤(C)として第4周期の遷移金属化合物系促進剤及びアミン系促進剤の4種の化合物を特定の割合で組み合わせて用いることにより、ラジカル硬化性組成物が促進剤の添加された状態においても貯蔵・輸送工程等における重合の進行が抑えられ、長期保存が可能となる一方、長期保存した後に硬化させる時にゲルタイムドリフトがほとんど起こらず、硬化剤存在下におけるゲル化時間を一定時間確保でき、長期保存後もその時間を安定的に維持することが可能となる。そして、その後の硬化反応は急激に起こり、シャープな硬化特性を示す。
【0039】
ゲルタイムドリフトを評価する方法として、本発明では、促進剤を添加して調製したラジカル硬化性組成物を二日間保管した後、ゲル化時間を測定し、調製直後のゲル化時間と比較することにより評価した。用途によって異なるが、二日間保管した後のゲル化時間が長くなる場合は、調製直後のゲル化時間の3.5倍以下に抑えることが好ましく、2.5倍以下に抑えることが特に好ましい。ゲル化時間が短くなる場合は、0.5倍以上に抑えることが好ましい。
【0040】
[ラジカル硬化性化合物(A)]
本発明のラジカル硬化性組成物に用いられるラジカル硬化性化合物(A)としては、分子中に1個以上の重合性基を有するものであれば特に限定されず、例えば、ラジカル硬化性オリゴマーやラジカル硬化性モノマーが挙げられる。これらのラジカル硬化性化合物は、2種類以上を用いてもよい。
【0041】
ラジカル硬化性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
不飽和ポリエステルとしては、例えば、不飽和多価カルボン酸と多価アルコールを公知の方法にて反応させることよって得られるものであり、ジシクロペンタジエンのような重合性基を有する化合物で変性されていてもよい。
【0043】
不飽和ポリエステル製造原料として用いられる、不飽和多価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸とそれらの無水物及びメチルエステルのようなエステル誘導体が挙げられる。また、同時に使用することができる飽和多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラクロロフタル酸のような芳香族多価カルボン酸とその無水物やハロゲン化物及びメチルエステルのようなエステル誘導体、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘット酸のような脂肪族多価カルボン酸とそれらの無水物やハロゲン化物及びメチルエステルのようなエステル誘導体が挙げられる。これらの多価カルボン酸は2種類以上を用いてもよい。
【0044】
不飽和ポリエステル製造原料として用いられる、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAのような2価アルコールとそれらの異性体、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような3価以上の多価アルコール、また、これらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドのようなアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。これらの多価アルコールは2種類以上を用いてもよい。
【0045】
ビニルエステルとしては、例えば、エポキシオリゴマーと不飽和カルボン酸を公知の方法にて反応させることよって得られるものである。
【0046】
ビニルエステル製造原料として用いられる、エポキシオリゴマーとしては、例えば、ビスフェノールA系、水添ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ノボラック系、レゾール系が挙げられ、それぞれ、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ジ)グリセリン(ポリ)グリシジルエーテル、(ポリ)テトラメチレングリコールジグリシジルエーテルのようなジグリシジルエーテル型エポキシ化合物との反応により得られるものである。これらのエポキシオリゴマーは2種類以上を用いてもよい。
【0047】
ビニルエステル製造原料として用いられる、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α-フェニルアクリル酸、メトキシアクリル酸、イタコン酸、ハロゲン化アクリル酸が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸は2種類以上を用いてもよい。
【0048】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート、必要に応じてポリオールとを公知の方法で反応させることよって得られるものである。
【0049】
ウレタン(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネートとその変性物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートのような脂肪族ポリイソシアネートとその変性物が挙げられる。これらのポリイソシアネートは2種類以上を用いてもよい。
【0050】
ウレタン(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の1価(メタ)アクリレートや、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの水酸基を有する(メタ)アクリレートは2種類以上を用いてもよい。
【0051】
ウレタン(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオールが挙げられる。これらのポリオールは2種類以上を用いてもよい。
【0052】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸、多価アルコールとを公知の方法で反応させることよって得られるものである。
【0053】
ポリエステル(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、不飽和カルボン酸としては、上記のビニルエステルで用いられるものが挙げられるほか、それらのハロゲン化物及びメチルエステルのようなエステル誘導体が挙げられる。また、多価カルボン酸及び多価アルコールとしては、上記の不飽和ポリエステルで用いられるものが挙げられる。いずれも2種類以上を用いてもよい。
【0054】
ポリエステル(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、不飽和カルボン酸と多価アルコールを公知の方法で反応させることよって得られるものである。
【0055】
ポリエステル(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、不飽和カルボン酸としては、上記のビニルエステルで用いられるものが挙げられるほか、それらのハロゲン化物及びメチルエステルのようなエステル誘導体が挙げられる。多価アルコールとしては、上記の不飽和ポリエステルで用いられるものや、上記のウレタン(メタ)アクリレートで用いられるポリオールが挙げられる。
【0056】
ラジカル硬化性モノマーとしては、例えば、1官能ビニルモノマー、多官能ビニルモノマーが挙げられる。
【0057】
1官能ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、p-クロルスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンのような単官能芳香族ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールのような単官能(メタ)アクリル酸モノマー等が挙げられる。
【0058】
多官能ビニルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=8,9)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペントールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、2,2-ビス〔4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2-ヒドロキシ-1-アクリロキシ-3-メタクリロキシプロパンのような多官能(メタ)アクリルモノマー、ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニルモノマー、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等の多官能アリルモノマー等が挙げられる。
【0059】
これらのラジカル硬化性オリゴマー、ラジカル硬化性モノマーは、2種類以上任意に組み合わせて用いてもよい。
【0060】
ラジカル硬化性オリゴマーとラジカル硬化性モノマーの混合比率としては、ラジカル硬化性オリゴマーとラジカル硬化性モノマーとの合計100質量%に対し、ラジカル硬化性モノマーの添加比率が、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは、15質量%以上80質量%以下であり、最も好ましくは、20質量%以上70質量%以下である。90質量%を超えると、得られる硬化物の性能が十分ではなく、10質量%未満であると、粘度を充分に低減することができず、作業性に優れたものとはならないおそれがある。
【0061】
[重合禁止剤(B)]
本発明の重合禁止剤(B)は、一般式(1)で表されるナフトキノン化合物及び一般式(2)で表されるフェノール化合物である。ナフトキノン化合物とフェノール化合物を合わせて用いることにより、相乗的な効果が得られる。
【0062】
フェノール化合物だけ単独で用いた場合は、促進剤の添加されたラジカル硬化性組成物の安定性が十分でなく、貯蔵・輸送工程等において重合の進行が抑えられず固化してしまうという問題が生じる。一方、ナフトキノン化合物だけ単独で用いると貯蔵安定性は良いものの、ゲル化時間が短くなってしまい、硬化作業の作業時間の確保が難しくなるという問題がある。両化合物を併用することにより、貯蔵中の安定性も向上し、ゲル化時間も確保できるようになる。
【0063】
まず、下記一般式(1)で表されるナフトキノン化合物について説明する。
【0064】
【化3】
【0065】
上記一般式(1)中、X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数2~9のアシル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアラルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、アミノ基、炭素数1~8のアルキルアミノ基、グリシジル基、炭素数1~8のヒドロキシアルキル基又は炭素数6~10のアリールオキシアルキル基のいずれかを表し、このうち、X及びYは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、ヘテロ原子を挟んで環を形成してもよい。
【0066】
一般式(1)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、炭素数2~9のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられ、炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基等が挙げられる。炭素数6~10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられ、炭素数2~10のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基等が挙げられ、炭素数1~8のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基などが挙げられ、炭素数1~8のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基等が挙げられ、炭素数6~10のアリールオキシアルキル基としては、フェノキシメチル基等挙げられる。上記に記載された以外にも酸素、窒素、硫黄を含む置換基が挙げられる。但し、取扱い性の改善、環境負荷低減の観点から炭素、酸素、水素から構成する構造が望ましい。
【0067】
本発明のナフトキノン化合物の具体例としては、次のような化合物を例示できる。
【0068】
一般式(1)において、X及びYが互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成していない場合の具体例としては、例えば、1,4-ナフトキノン、2-フルオロ-1,4-ナフトキノン、2-クロロ-1,4-ナフトキノン、2-ブロモ-1,4-ナフトキノン、2-ヨード-1,4-ナフトキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2-エチル-1,4-ナフトキノン、2-n-プロピル-1,4-ナフトキノン、2-i-プロピル-1,4-ナフトキノン、2-n-ブチル-1,4-ナフトキノン、2-i-ブチル1,4-ナフトキノン、2-sec-ブチル-1,4-ナフトキノン、2-tert-ブチル1,4-ナフトキノン、2-n-ペンチル-1,4-ナフトキノン2-n-へキシル-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルペンチル)-1,4-ナフトキノン、2-n-ヘプチル-1,4-ナフトキノン、2-n-オクチル-1,4-ナフトキノン、2-sec-オクチル-1,4-ナフトキノン、2-n-ノニル-1,4-ナフトキノン、2-n-デシル-1,4-ナフトキノン、2-n-ウンデシル-1,4-ナフトキノン、2-n-ドデシル-1,4-ナフトキノン、2-n-トリデシル-1,4-ナフトキノン、2-n-テトラデシル-1,4-ナフトキノン、2-n-ペンタデシル-1,4-ナフトキノン、2-シクロプロピル-1,4-ナフトキノン、2-シクロペンチル-1,4-ナフトキノン、2-シクロへキシル-1,4-ナフトキノン、2-シクロプロピルメチル-1,4-ナフトキノン、2-シクロペンチルメチル-1,4-ナフトキノン、2-シクロヘキシルメチル-1,4-ナフトキノン、2-(2-シクロプロピルエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-シクロペンチルエチル-1,4-ナフトキノン、2-(2-シクロヘキシルエチル)-1,4-ナフトキノン等が挙げられる。
【0069】
また、2-ベンジル-1,4-ナフトキノン、2-(2-フルオロベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-フルオロベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-クロロベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-クロロベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メチルベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-メチルベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メトキシベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-メトキシベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メトキシベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-トリフルオロメチルベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メチルチオベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-メチルチオベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルチオベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-ニトロベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-ニトロベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-ニトロベンジル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-フェネチル)-1,4-ナフトキノン、2-(1-フェネチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-フェニルプロピル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-フェニルプロピル)-1,4-ナフトキノン、2-(1-フェニルプロピル)-1,4-ナフトキノン、2-ジフェニルメチル-1,4-ナフトキノン、2-(1,1-ジフェニルエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2,2-ジフェニルエチル)-1,4-ナフトキノン、2-クロロメチル-1,4-ナフトキノン、2-ブロモメチル-1,4-ナフトキノン、2-ヨードメチル-1,4-ナフトキノン、2-トリフルオロメチル-1,4-ナフトキノン、2-ジクロロメチル-1,4-ナフトキノン、2-トリクロロメチル-1,4-ナフトキノン、2-(2-クロロエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-ブロモエチル)-1,4-ナフトキノン、2-ペンタフルオロエチル-1,4-ナフトキノン、2-ヒドロキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-(1-ヒドロキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-ヒドロキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-メトキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-エトキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-n-プロポキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-i-プロポキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-n-ブチルオキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-i-ブチルオキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-sec-ブチルオキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-tert-ブチルオキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-(1-メトキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メトキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(1-エトキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-エトキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-ジメトキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-ジエトキシメチル-1,4-ナフトキノン等が挙げられる。
【0070】
さらにまた、2-メルカプトメチル-1,4-ナフトキノン、2-(1-メルカプトエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メルカプトエチル)-1,4-ナフトキノン、2-メチルチオメチル2-(1-メルカプトエチル)-1,4-ナフトキノン、2-エチルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-n-プロピオチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-i-プロピルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-n-ブチルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-i-ブチルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-sec-ブチルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-tert-ブチルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-(1-メチルチオエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メチルチオエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(1-エチルチオエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-エチルチオエチル)-1,4-ナフトキノン、2-クロロメトキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-トリフルオロメトキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-(1-クロロメトキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-クロロメトキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-クロロメチルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-トリフルオロメチルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-(1-クロロメチルチオエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-クロロメチルチオエチル)-1,4-ナフトキノン、2-フェノキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-(1-フェノキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-フェノキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(1-フェノキシプロピル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-フェノキシプロピル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-フェノキシプロピル)-1,4-ナフトキノン、2-(1-フェノキシ-1-メチルエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-クロロフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-クロロフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メチルフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-メチルフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-フルオロフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-フルオロフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-トリフルオロメチルフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-トリフルオロメチルフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-ニトロフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-ニトロフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-ニトロフェノキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-ベンジルオキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-(2-フルオロベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-フルオロベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-クロロベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-クロロベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メトキシベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-メトキシベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メトキシベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-トリフルオロメチルベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-トリフルオロメチルベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-ニトロベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-ニトロベンジルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-フェネチルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(1-フェネチルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(1-ベンジルオキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-ベンジルオキシエチル)-1,4-ナフトキノン、2-(1-ベンジルオキシ-1-メチルエチル)-1,4-ナフトキノン、2-ベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-フルオロベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-フルオロベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メチルベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-メチルベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-クロロベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-クロロベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-トリフルオロメチルベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-トリフルオロメチルベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルベンゾイルオキシメチル)-1,4-ナフトキノン、2-アセトキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-プロピオニルオキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-フェニルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-ベンジルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-ベンゾイルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-アセチルチオメチル-1,4-ナフトキノン、2-カルボキシメチル-1,4-ナフトキノン、2-シアノメチル-1,4-ナフトキノン、2-メトキシカルボニルメチル-1,4-ナフトキノン、2-エトキシカルボニルメチル-1,4-ナフトキノン、2-メチルチオカルボニルメチル-1,4-ナフトキノン、2-ビニル-1,4-ナフトキノン、2-アリル-1,4-ナフトキノン、2-(2-ブテニル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-メチル-2-ブテニル)-1,4-ナフトキノン、2-エチル-1,4-ナフトキノン、2-プロパルギル-1,4-ナフトキノン、2-フェニル-1,4-ナフトキノン、2-(2-フルオロフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-フルオロフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-クロロフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-クロロフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メチルエニル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-メチルエニル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルエニル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-トリフルオロメチルフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-トリフルオロメチルフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-トリフルオロメチルフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メトキシフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-メトキシフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メトキシフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-ニトロフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-ニトロフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-ニトロフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-(1’,4’-ナフトキノン-2’-イル)-1,4-ナフトキノン等が挙げられる。
【0071】
そしてまた、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-メトキシ-1,4-ナフトキノン、2-エトキシ-1,4-ナフトキノン、2-n-プロポキシ-1,4-ナフトキノン、2-i-プロポキシ-1,4-ナフトキノン、2-n-ブトキシ-1,4-ナフトキノン、2-i-ブトキシ-1,4-ナフトキノン、2-sec-ブトキシ-1,4-ナフトキノン、2-i-ブトキシ-1,4-ナフトキノン、2-tert-ブトキシ-1,4-ナフトキノン、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,4-ナフトキノン、2-シクロプロピルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-シクロペンチルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-シクロヘキシル-1,4-ナフトキノン、2-シクロプロピルメチルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-シクロペンチルメチルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-シクロヘキシルメチルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-クロロメチルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-トリフルオロメチルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-アリルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-(2-ブテニルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-プロパルギルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-フェノキシ-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロフェノキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロフェノキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルフェノキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルフェノキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メトキシフェノキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-ニトロフェノキシ)-1,4-ナフトキノン、2-ベンジルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロベンジルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロベンジルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルベンジルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メトキシベンジルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルベンジルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルチオベンジルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-ニトロベンジルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(2-フェネチルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-アセトキシ-1,4-ナフトキノン等が挙げられ。
【0072】
さらにまた、2-(2-ニトロフェニル)-1,4-ナフトキノン、2-プロピオニルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-ベンゾイルオキシ-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロベンゾイルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルベンゾイルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロベンゾイルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルベンゾイルオキシ)-1,4-ナフトキノン、2-メルカプト-1,4-ナフトキノン、2-メチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-エチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-n-プロピルチオ-1,4-ナフトキノン、2-i-プロピルチオ-1,4-ナフトキノン、2-n-ブチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-i-ブチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-sec-ブチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-tert-ブチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-シクロプロピルチオ-1,4-ナフトキノン、2-シクロペンチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-シクロヘキシルチオ-1,4-ナフトキノン、2-シクロプロピルメチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-シクロペンチルメチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-シクロヘキシルメチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-クロロメチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-トリフルオロメチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-アリルチオ-1,4-ナフトキノン、2-(2-ブテニルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-プロパルギルチオ-1,4-ナフトキノン、2-フェニルチオ-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロフェニルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロフェニルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルフェニルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルフェニルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メトキシフェニルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-ニトロフェニルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-ベンジルチオ-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロベンジルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロベンジルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルベンジルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メトキシベンジルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルベンジルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-ニトロベンジルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(2-フェネチルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-アセチルチオ-1,4-ナフトキノン、2-プロピオニルチオ-1,4-ナフトキノン、2-ベンゾイルチオ-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロベンゾイルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルベンゾイルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロベンゾイルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルベンゾイルチオ)-1,4-ナフトキノン、2-メチルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-エチルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-n-プロピルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-i-プロピルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-n-ブチルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-i-ブチルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-sec-ブチルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-tert-ブチルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-シクロプロピルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-シクロペンチルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-シクロヘキシルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-(ヒドロキシメチルスルフィニル)-1,4-ナフトキノン、2-(ヒドロキシエチルスルフィニル)-1,4-ナフトキノン、2-フェニルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-ベンジルスルフィニル-1,4-ナフトキノン、2-メチルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-エチルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-n-プロピルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-i-プロピルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-n-ブチルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-i-ブチルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-sec-ブチルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-tert-ブチルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-シクロプロピルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-シクロペンチルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-シクロヘキシルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-(ヒドロキシメチルスルホニル)-1,4-ナフトキノン、2-(ヒドロキシエチルスルホニル)-1,4-ナフトキノン、2-フェニルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-ベンジルスルホニル-1,4-ナフトキノン、2-アセチル-1,4-ナフトキノン、2-プロパノイル-1,4-ナフトキノン、2-クロロアセチル-1,4-ナフトキノン、2-トリフルオロアセチル-1,4-ナフトキノン、2-メトキシアセチル-1,4-ナフトキノン、2-ベンゾイル-1,4-ナフトキノン、2-(2-フルオロベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-フルオロベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-フルオロベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-メチルベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-メチルベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-メチルベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-クロロベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-クロロベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-クロロベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(2-トリフルオロメチルベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(3-トリフルオロメチルベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-(4-トリフルオロメチルベンゾイル)-1,4-ナフトキノン、2-カルボキシ-1,4-ナフトキノン、2-メトキシカルボニル-1,4-ナフトキノン、2-エトキシカルボニル-1,4-ナフトキノン、2-カルバモイル-1,4-ナフトキノン、2-ジメチルアミノカルボニル-1,4-ナフトキノン、2-シアノ-1,4-ナフトキノン、2-ニトロ-1,4-ナフトキノン等が挙げられる。
【0073】
そしてさらにまた、2,3-ジメチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジエチル-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-メトキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-1,4-ナフトキノン、2,3,6-トリメチル-1,4-ナフトキノン、2,3,6,7-テトラメチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-5-ブチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-6-ブチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-6,7-ジブチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-5-ペンチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-6-ペンチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-5-クロロ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-6-クロロ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-6,7-ジクロロ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-5-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-6-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-5,6,8-トリヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-5-メトキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-6-メトキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-5,8-ジメトキシ-1,4-ナフトキノン、2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,6,7-トリメチル-3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-5-ブチル-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-6-ブチル-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-6,7-ジブチル-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-5-ペンチル-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-6-ペンチル-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-5-クロロ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-6-クロロ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-6,7-ジクロロ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3,5-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3,6-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3,5,8-トリヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3,5,6,8-テトラヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-5-メトキシ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-6-メトキシ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-3-ヒドロキシ-5,8-ジメトキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-6-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-6,7-ジメチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-5-ブチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-6-ブチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-6,7-ジブチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-5-ペンチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-6-ペンチル-1,4-ナフトキノン、2,3,5-トリクロロ-1,4-ナフトキノン、2,3,6-トリクロロ-1,4-ナフトキノン、2,3,6,7-テトラクロロ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-5-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-6-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-5,6,8-トリヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-5-メトキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-6-メトキシ-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-5,8-ジメトキシ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-6-メチル-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-6,7-ジメチル-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-5-ブチル-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-6-ブチル-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-6,7-ジブチル-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-5-ペンチル-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-6-ペンチル-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-5-クロロ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3,6-ジクロロ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3,6,7-トリクロロ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-5-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-6-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-5,6,8-トリヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-5-メトキシ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-6-メトキシ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-3-クロロ-5,8-ジメトキシ-1,4-ナフトキノン等が挙げられる。
【0074】
一般式(1)において、X及びYが互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成している場合の具体例としては9,10-アントラキノン、1-メチル-9,10-アントラキノン、2-メチル-9,10-アントラキノン、2-エチル-9,10-アントラキノン、1-メトキシ-9,10-アントラキノン、1-メトキシ-4-メチル-9,10-アントラキノン、1,4-ジヒドロ-9,10-アントラキノン、1,2,3,4-テトラヒドロ-9,10-アントラキノン、2-メチル-1,4-ジヒドロ-9,10-アントラキノン、2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-9,10-アントラキノン等が挙げられる。
【0075】
これら例示した一般式(1)の化合物の中でも、X及びYが、水素原子、アルキル基又はヒドロキシ基である化合物が好ましく、1,4-ナフトキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンは効果が高く、製造が容易であることから好ましい。特に、1,4-ナフトキノンが好ましい。
【0076】
次に、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物について説明する。
【0077】
【化4】
【0078】
上記一般式(2)中、nは0又は1であり、mは0~4の整数を表す。また、Rは炭素数1~8のアルキル基又は炭素数1~8のアルコキシ基を表し、複数ある場合のRは同一であっても異なっていてもよい。
【0079】
一般式(2)におけるRで表される炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基等が挙げられる。炭素数1~8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0080】
本発明のフェノール化合物の具体例としては、次のような化合物を例示できる。
【0081】
まず、一般式(2)において、nが0の化合物としては、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、4-メトキシフェノール(MEHQ)などが挙げられる。
【0082】
また、nが1の化合物としては、1,4-ジヒドロキシベンゼン(ハイドロキノン)、2-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン、2-t-ブチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、4-t-ブチル-1,2-ジヒドロキシベンゼン(t-ブチルカテコール)、2,3,5-トリメチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。
【0083】
これら例示したフェノール系重合禁止剤の中でも、1,4-ジヒドロキシベンゼン、1,2-ジヒドロキシベンゼン、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4-メトキシフェノールが好ましい。特に、1,4-ジヒドロキシベンゼンが好ましい。
【0084】
以上例示したように、本発明のラジカル硬化性組成物においては、重合禁止剤(B)は一般式(1)で表されるナフトキノン化合物及び一般式(2)で表されるフェノール化合物を組み合わせて用いる。それらを合せた使用量は特に限定されないが、ラジカル硬化性化合物(A)を100重量部とした場合において、通常、0.001以上、1.0重量部未満、好ましくは0.002以上、0.8重量部未満、さらに好ましくは0.003以上、0.5重量部未満である。0.001重量部未満の場合は重合禁止の効果が小さくなる一方、1.0重量部を超えて加えても構わないが溶解度を超えてしまい析出する場合がある。
【0085】
重合禁止剤(B)における一般式(1)で表されるナフトキノン化合物と一般式(2)で表されるフェノール化合物との添加比率は、重量比で通常、10/90以上、90/10未満、好ましくは15/85以上、85/15未満である。ナフトキノン化合物の比率が10未満の場合はゲルタイムドリフトが生じやすくなり、ナフトキノン化合物の比率が90以上だとゲル化時間が短くなり好ましくない。重合禁止剤として、一般式(1)で表されるナフトキノン化合物と一般式(2)で表されるフェノール化合物を併用することが重要であり、併用することにより、保存中の安定性が増すだけでなく、ゲル化時間を一定時間確保でき、保存後のゲルタイムドリフトを小さく抑えることが可能となる。
【0086】
本発明のラジカル硬化性組成物には、重合禁止剤(B)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で重合禁止剤(B)以外の重合禁止剤を併せて用いることができる。
【0087】
併せて用いることができる重合禁止剤としては、例えば、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール等のN-オキシル系、フェノチアジン、ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、ナフテン酸銅などを用いることができる。その他、フェルダジル、α,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル等の公知の重合禁止剤も挙げられる。これらの重合禁止剤は2種類以上を用いてもよい。
【0088】
[促進剤(C)]
次に、促進剤について説明する。本発明のラジカル硬化性組成物に用いられる促進剤(C)は低温での硬化性を向上させるためや、SMC(シートモールディングコンパウンド)、BMC(バルクモールディングコンパウンド)のようなラジカル硬化性組成物を半硬化の状態にするために用いる。
【0089】
本発明の促進剤(C)は、第4周期の遷移金属化合物及びアミン化合物を合わせて用いることにより、相乗的な効果が得られる。
【0090】
第4周期の遷移金属化合物だけ単独で用いた場合は、ラジカル硬化性組成物がゆっくりと硬化してしまう。この傾向は重合禁止剤を変えても、ゲル化時間は変わるがゆっくりと硬化する傾向は変わらない。一方、アミン化合物だけ単独で用いると硬化しづらい傾向にある。
【0091】
まず、第4周期の遷移金属化合物について説明する。第4周期の遷移金属化合物としては、例えば、銅、亜鉛、アルミニウム、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル等、第4周期の遷移金属を含む金属化合物が挙げられる。例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸銅、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸カルシウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン等の金属石鹸、コバルトアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等の金属キレート化合物などが挙げられる。いずれも溶剤を含んだ形態のものであってもよい。これらの促進剤は2種類以上を用いてもよい。
【0092】
これら例示した第4周期の遷移金属化合物の中でも遷移金属がコバルトであるコバルト系化合物が好ましく、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトが特に好ましい。
【0093】
次に、アミン化合物について説明する。アミン化合物としては、特に限定されないが、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、その他のアミン化合物等が挙げられる。第1級アミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、ステアリルアミン、ノナデシルアミン、シクロヘキシルアミン、オレイルアミン等の脂肪族モノアミン化合物;エチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、1,21-ジアミノヘンティコサン、1,22-ジアミノドコサン、1,23-ジアミノトリコサン、1,24-ジアミノテトラコサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン化合物;ベンジルアミン等の芳香族モノアミン化合物;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、3,4-キシリジン等の芳香族ジアミン化合物等が挙げられる。
【0094】
第2級アミン化合物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン等の脂肪族モノアミン化合物等が挙げられる。
【0095】
第3級アミン化合物としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリアリルアミン等の脂肪族モノアミン化合物;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ(ヒドロキシ)-4-メチルアニリン、トリフェニルアミン等の芳香族モノアミン化合物等が挙げられる。
【0096】
その他のアミン化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジエタノールアミン、3-ヒドロキシプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-ラウリルオキシプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、3-ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、3-(1-ピペラジニル)プロピルアミン、N-ラウリルプロピレンジアミン、N-ステアリルプロピレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、3-モルホリノプロピルアミン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5(DBN)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ(ヒドロキシ)-4-メチルアニリン等が挙げられる。これらの促進剤は2種類以上を用いてもよい。
【0097】
これらの中でも第3級アミン化合物が好ましく、特に、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の第三級脂肪族モノアミン化合物、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ(ヒドロキシ)-4-メチルアニリン等の第三級芳香族モノアミン化合物が好ましい。
【0098】
以上例示したように、本発明のラジカル硬化性組成物においては、促進剤(C)は第4周期の遷移金属化合物及びアミン化合物を組み合わせて用いる。それらを合せた使用量は特に限定されないが、ラジカル硬化性化合物(A)を100重量部とした場合において、通常0.05以上、10重量部未満、好ましくは0.1以上、7重量部未満、さらに好ましくは0.15以上、5重量部未満であり、いずれも促進剤は溶剤を除いた有効成分としての重量である。
【0099】
この促進剤(C)における第4周期の遷移金属化合物とアミン化合物との添加比率は、ゲル化時間、ゲル化後の硬化特性に大きく関与する。
【0100】
この第4周期の遷移金属化合物のアミン化合物に対する添加比率は、1.1モル倍以下が好ましく、第4周期の遷移金属化合物の添加比率が1.1モル倍を超えて添加されると、ゲル化時間に比較して硬化までの時間が長くなり、作業性が悪くなるので好ましくない。
【0101】
また、このゲル化時間とゲル化後の硬化特性は、JISK6901(2008)「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の「5.9常温硬化特性(発熱法)」に準じて、ゲル化時間をGT、最小硬化時間をCT、最高発熱温度をTpとした場合、硬化速度は(Tp-30)/(CT-GT)で表すことができる。この値が大きいほど、急激でシャープな硬化特性であり、硬化速度が速いことがわかる。
【0102】
まず、特に重要なゲル化後の硬化速度が急激であるという観点、すなわち、(Tp-30)/(CT-GT)の値が大きいという観点から、(Tp-30)/(CT-GT) の値が5℃/分を超える値であることが好ましく、(Tp-30)/(CT-GT)の値が10℃/分を超える値であることが更に好ましい。この値の範囲を満たすことにより、ラジカル硬化性組成物はゲル化時間を経過後に急激でシャープな硬化を示す。
【0103】
また、本発明では、ゲル化時間を長く設定しても、ゲル化時間経過後の硬化が急激でシャープであることが効果の一つでもあるので、GTと硬化時間(CT-GT)の比をさらなる指標とした。この(CT-GT)/GTの値が小さいほどGTに比して硬化速度が速いということになる。すなわち、この値が小さいと、ゲル化時間が長いにもかかわらず硬化速度が速いということになる。この(CT-GT)/GTの値が1.5未満であることが好ましく、(CT-GT)/GTの値が1.0未満であることが更に好ましい。この値の範囲を満たすことにより、ラジカル硬化性組成物はゲル化時間が長くても、ゲル化時間を経過後に急激でシャープな硬化を示す。
【0104】
そしてまた、このような急激な硬化反応の場合、急激な発熱を伴い、最高発熱温度Tpが高くなる。このように最高発熱温度Tpが高熱となる場合は、2次硬化が不要となるという効果も期待できる。
【0105】
[硬化剤(D)]
本発明のラジカル硬化性組成物に用いられる硬化剤(D)としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物;2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの硬化剤は2種類以上を用いてもよい。これらの例示した化合物の中でも、特にメチルエチルケトンパーオキサイドやシクロヘキサノンパーオキサイドのようなケトンパーオキサイドを用いることが好ましい。
【0106】
上記硬化剤(D)は溶剤を含んだ形態のものであってもよい。溶媒としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、キシレン等の有機溶媒や水等を使用することができ、2種類以上を用いてもよい。これら溶媒の含有量は特に限定されないが、例えば、硬化剤100重量部に対し、90重量部以下であることが好ましい。
【0107】
上記硬化剤(D)の使用量としては特に限定されないが、ラジカル硬化性化合物(A)を100重量部とした場合において、通常0.01以上、10重量部未満、好ましくは0.05以上、7重量部未満、さらに好ましくは0.1以上、5重量部未満であり、いずれも硬化剤は溶剤を除いた有効成分としての重量である。
【0108】
これら硬化剤(D)はラジカル硬化性組成物に成形直前に添加して使用するが、初めからラジカル硬化性組成物に加えておき、SMC、BMCのようなコンパウンドとして扱うこともできる。
【0109】
[その他の添加剤]
本発明のラジカル硬化性組成物において、性能を損なわない範囲内で、繊維補強剤、充填材、揺変性付与剤、揺変性付与助剤、カップリング剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸価防止剤、増粘剤、減粘剤、内部離型剤、低収縮剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、柄剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
【0110】
繊維補強材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アミド、アラミド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維等の無機繊維が挙げられ、2種類以上を用いてもよい。施工性、経済性を考慮した場合、好ましいのはガラス繊維及び有機繊維であり、特にガラス繊維であることがさらに望ましい。また、繊維の形態は、平織り、朱子織り、不織布、マット、ロービング、チョップ、編み物、組み物、これらの複合構造のもの等があるが、施工法や製品形態に合せて選択される。
【0111】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、フライアッシュ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス粉末などが挙げられる。骨材としては、例えば、珪砂・砂利・砕石などが挙げられる。モルタル用途に使用するときは、これらの粒径が5mm以下程度のものが好ましい。充填材又は骨材の配合量としては特に限定されないが、ラジカル硬化性化合物(A)を100重量部とした場合において、通常、1重量部以上、300重量部未満である。
【0112】
[ラジカル硬化性組成物の製造方法]
本発明のラジカル硬化性組成物は、その成分が異なる以外は公知のラジカル硬化性組成物と同様の製造方法で製造することができる。例えば、ラジカル硬化性化合物(A)、重合禁止剤(B)、促進剤(C)を配合したのち、均一になるまで十分攪拌混合することにより製造することができる。
【0113】
本発明のラジカル硬化性組成物としては、あらかじめ重合禁止剤や充填材が混合された市販のラジカル硬化性組成物にさらに本発明の重合禁止剤(B)を添加して調製することもできる。
【0114】
そのような市販のラジカル硬化性組成物としては、例えば、充填材などがあらかじめ混合された不飽和ポリエステル、ビニルエステル等が挙げられる。例えば、SMC、BMC等が挙げられる。
【0115】
市販の不飽和ポリエステルとしては、例えば、昭和電工株式会社製のリゴラック(リゴラックは昭和電工株式会社の登録商標)、日本ユピカ株式会社製のユピカ(ユピカは日本ユピカ株式会社の登録商標)、ジャパンコンポジット株式会社製のポリホープ(ポリホープはジャパンコンポジット株式会社の登録商標)、ディーエイチ・マテリアル株式会社製のサンドーマ(サンドーマはディーエイチ・マテリアル株式会社の登録商標)が挙げられる。
【0116】
市販のビニルエステルとしては、例えば、昭和電工株式会社製のリポキシ(リポキシは昭和電工株式会社の登録商標)、日本ユピカ株式会社製のネオポール(ネオポールは日本ユピカ株式会社の登録商標)、ジャパンコンポジット株式会社製のビニエスター(ビニエスターはジャパンコンポジット株式会社の登録商標)、ディーエイチ・マテリアル株式会社製のエクスドーマ(エクスドーマはディーエイチ・マテリアル株式会社の登録商標)が挙げられる。
【0117】
本発明のラジカル硬化性組成物において、重合禁止剤(B)として一般式(1)で表されるナフトキノン化合物及び一般式(2)で表されるフェノール化合物を併用して用いることにより、ラジカル硬化性組成物の熱安定性や貯蔵安定性を向上させるとともに、長期保存した後のゲルタイムドリフトを防止することができる。そして、更に促進剤として、第4周期の遷移金属化合物及びアミン化合物を特定の割合で併用することにより、ゲル化時間を長くすることができ、ゲル化時間経過後の硬化速度も十分に速くすることができる。
【0118】
(硬化方法)
本発明のラジカル硬化性組成物は、促進剤(C)を添加後、すぐに硬化剤(D)を添加して成形硬化する使用態様がゲル化時間の変動を抑えるためにはより好ましいが、該ラジカル硬化性組成物の輸送時間や保管期間を考慮して、室温で1日以上、180日以下経過した後、現場で硬化剤(D)を添加して成形されるのが通常である。このような使用形態においても、本発明のラジカル硬化性組成物は、ゲル化時間の変動を抑えることができるという特徴と併せて、ゲル化時間経過後の硬化速度を十分に高速とすることができるという特徴を有する。
【0119】
本発明のラジカル硬化性組成物は、硬化剤(D)を添加した後、活性エネルギー線を照射することにより若しくは熱をかけることにより又は活性エネルギー線を照射しながら熱をかけることによりラジカル重合させ、硬化させることができる。ラジカル硬化性組成物は基材の上に塗布した後硬化してもよいし、塊状で硬化させてもよい。
【0120】
ラジカル硬化性組成物を基材上に塗布する方法としては、用途により適宜選択すればよいが例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、スプレーコート、スピンコート、ディップコートなどによると双方を採用することができる。
【0121】
ラジカル硬化性組成物の成形法としては特に制限されないが、例えば、ハンドレイアップ成形法、スプレーアップ成形法、フィラメントワインディング成形法、レジンインジェクション成形法、レジントランスファー成形法、引き抜き成形法、真空成形法、圧空成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法、注型法、スプレー法などを適用することができる。
【0122】
ラジカル硬化性組成物の硬化方法としては、例えば、成形直前に、硬化剤(D)をラジカル硬化性組成物に混合して硬化させることが好適である。また、硬化温度としては、通常0℃から100℃の間で行われる。
【0123】
ゲル化時間は用途によって異なるが、作業性の観点から、5分以上が好ましく、10分以上であることがさらに好ましい。5分未満だと、作業時間の確保が難しく、作業性が悪くなる。このゲル化時間は用途や目的に適宜設定され、例えば、ハンドレイアップ成形法であれば30分程度に調整される。ただし、長ければよいということではなく、設定されたゲル化時間が再現されることが重要である。特に、ラジカル硬化性組成物は調製後長期保存したのちに成形されることが多いので、その長期保存後も設定されたゲル化時間が再現されることが重要である。
【0124】
当該ゲル化時間において、ラジカル硬化性組成物を調製して直後に硬化剤(D)を添加した場合のゲル化時間と実際の使用時に硬化剤(D)を添加した場合のゲル化時間が変動することがある。この変動をゲルタイムドリフトと称しているが、このゲルタイムドリフトが小さい方が実用上有用である。当該ゲルタイムドリフトを小さく抑えることができるのが本発明である。
【0125】
本発明のラジカル硬化性組成物は、一般的に、「プラスチック・機能性高分子材料辞典」(産業調査会、初版、2005年8月1日、466頁~482頁)に記載された不飽和ポリエステル樹脂の製造に使用することができる。
【実施例
【0126】
以下、実施例により本発明の具体的態様をさらに詳細に説明するが、本発明はその発明を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。尚、実施例中の重合禁止剤等の添加量としての%、ppmは、特に断りのない限りラジカル硬化性化合物(A)を基準とした重量の比率である。
【0127】
(合成例1)ラジカル硬化性化合物(A)の合成
定法に従いラジカル硬化性化合物(A)の合成を実施した。即ち、攪拌機、加熱装置、冷却器、真空ポンプ、温度計、圧力計等を装備した容積が2リットルのガラス製反応器に、無水フタル酸459g、無水マレイン酸202g、プロピレングリコール432g、1,4-ジヒドロキシベンゼン0.1gを仕込み、内部を窒素ガスで置換した後に加熱を開始した。反応温度は当初180℃、反応の進行とともに210℃まで昇温した。一方、反応器内の圧力は当初常圧、反応の進行とともに-76kPaまで減圧した。反応温度が180℃の時点から8時間をかけて反応を進めた後、120℃まで冷却しスチレン667gを加えてラジカル硬化性化合物(A)を合成した。
【0128】
(実施例1)
合成例1と同様にして調製されたラジカル硬化性化合物50gを100mlのサンプル管(ガラス製(蓋PP)、直径36mm、高さ120mm)に採り、重合禁止剤(B)として、1,4-ナフトキノン150ppm及び1,4-ジヒドロキシベンゼン300ppmを添加した。なお、各重合禁止剤は、ジエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬株式会社製 試薬特級)に5wt%の濃度になるよう溶解させたのち添加した。1,4-ナフトキノン及び1,4-ジヒドロキシベンゼンの添加量は1,4-ナフトキノン、1,4-ジヒドロキシベンゼンそのものの添加量である。そして、当該混合物に、促進剤(C)としてナフテン酸コバルト(コバルト含量重量6%)を0.1重量%、N,N-ジメチルアニリンを0.9重量%添加し、撹拌溶解し、ラジカル硬化性組成物を調製した。N,N-ジメチルアニリンに対するナフテン酸コバルトの添加比率は0.01モル倍である。
【0129】
このようにして調製したラジカル硬化性組成物に硬化剤(D)としてメチルエチルケトンパーオキサイドを2.0%添加して、重合を開始させた。そして当該ラジカル硬化性組成物の内温の上昇を測定し、内温が30℃となるまでの時間(ゲル化時間)を測定した。その結果を表1に示した。ゲル化時間の測定は、JISK6901(2008)「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の5.9常温硬化特性(発熱法)に準じて行い、重合開始から5時間の間反応状態を観測した。
【0130】
(実施例2~5、比較例1~5)
重合禁止剤(B)としての1,4-ナフトキノンの添加量、1,4-ジヒドロキシベンゼンの添加量、促進剤(C)としてのナフテン酸コバルト(コバルト含量6重量%)の添加量、N,N-ジメチルアニリンの添加量を下表1、表2中の値とした以外は、実施例1と同様にしてラジカル硬化性組成物を調製し、実施例1と同様の方法で硬化剤(D)を添加し、実施例1と同様の方法でゲル化時間を測定した。実施例2~5、比較例1~3の結果を表1に示し、実施例2と比較例4、5の結果を表2に示した。
【0131】
表1では、実施例番号、比較例番号が前後しているが、見やすいように、NapCo/DMAのモル比が増加する順に並び替えている。
【0132】
また、表中のGT評価における記号は、GTが10分を超えるものを「○」とし、5分を超え、10分以下のものを「△」とし、5分以下のもの及び5時間では硬化しなかったものを「×」とした。同様に、(CT-GT)/GT評価における記号は、(CT-GT)/GTが1未満のものを「○」とし、1以上、1.5未満のものを「△」とし、1.5以上のもの及び硬化せず計算できなかったものを「×」とした。(Tp-30)/(CT-GT)評価における記号は、(Tp-30)/(CT-GT)が10℃/分を超えるものを「○」とし、5℃/分を超え、10℃/分以下のものを「△」とし、5℃/分以下のもの及び硬化せず計算できなかったものを「×」とした。更に、総合評価は、前記三つの評価指標において、すべての項目が「○」のものを「◎」とし、二つの項目が「○」で「×」の項目がないものを「○」とし、ひとつの項目が「○」で「×」の項目がないものを「△」とし、「×」が含まれるもの及び「○」がないものは「×」とした。
【0133】
なお、表中で用いている略号及び試薬の製造元は以下の通りである。
HQ:1,4-ジヒドロキシベンゼン(ハイドロキノン)和光純薬株式会社製試薬特級
NQ:1,4-ナフトキノン 川崎化成工業株式会社製
NapCo:ナフテン酸コバルト(コバルト含量6重量%)和光純薬株式会社製試薬特級
MEKPO:メチルエチルケトンパーオキサイド アルケマ吉富株式会社製LUPEROX、DDM-9
DMA:N,N―ジメチルアニリン 和光純薬株式会社製試薬特級
GT:ゲル化時間
CT:最小硬化時間
Tp:最高発熱温度
【0134】
【表1】
【0135】
実施例1~5、比較例1~3と表1から明らかなように、重合禁止剤としてNQとHQの両方をある一定割合で添加したラジカル硬化性組成物において、促進剤としてNapCoとNapCoに対してある割合でDMAを配合することにより、ゲル化時間だけでなく、ゲル化後の硬化速度を調整することが可能であることがわかる。すなわち、促進剤としてNapCoを添加せずDMA単独の場合である比較例3では、5時間では硬化しないが、実施例1~5より明らかなように、NapCoを添加する事により、硬化するようになることがわかる。そして、(CT-GT)/GTの値を見てわかるように、長いゲル化時間を経過した後も急激な硬化速度を示すことがわかる。しかし、NapCo/DMAのモル比が、1.1倍を超えた比較例1では、GTが短い割には硬化速度が遅くなり、(CT-GT)/GTの値が1.5以上となってしまい、作業性が悪くなることがわかる。
【0136】
そして、NapCo/DMAのモル比が0.01、0.03、0.05である実施例1、2、3では、GT、(CT-GT)/GT、(Tp-30)/(CT-GT)のすべての値において、優れた評価となっており、実用上極めて優れたラジカル硬化性組成物であるといえる。例えば、実施例2のNapCo/DMAのモル比が 0.03の場合とDMAを添加しない比較例2を比較して明らかなように、DMAの添加により、硬化速度の急激性を表す(Tp-30)/(CT-GT)の値は1から16と大きく増加しており、DMAを添加する事により、急激な硬化が達成できることがわかる。さらに、ゲル化時間が増加しても急激な硬化速度を維持していることがわかる。また、この急激な硬化反応により、最高発熱温度(Tp)も63℃から、143℃にまで上昇していることがわかる。
【0137】
【表2】
【0138】
表2および、実施例2と比較例5を比べることにより明らかなように、重合禁止剤であるNQとHQののうち、NQのみを用いた場合は、ゲル化時間が4分と十分確保できないことがわかる。すなわち、このゲル化時間を長くする効果は、NQとHQの両方を用いることにより、達成可能となる。また、表2では、HQ単独(比較例4)でもこの効果を達成することが可能であることが示されているが、HQ単独使用の場合は、もう一つの実用上重要なラジカル硬化性組成物の保存安定性に著しい問題が生じる。その点が次の保存安定性及びGTドリフトの試験である実施例6及び比較例6、7で示される。
【0139】
次に、ラジカル硬化性組成物の保存安定性及びGTドリフトの検討を実施した。表中のGT評価における記号は、表1と同様にGTが10分を超えるものを「○」とし、5分を超え、10分以下のものを「△」とし、5分以下のものを「×」とした。そしてGTドリフトの評価としては、調整直後に対する48時間保管後のGT比率から判断した。GT比率が2.5倍以下のものを「○」とし、3.5倍以下のものを「△」とし、3.5倍を超えるものを「×」とし、固化により、GTを測定できなかったもの(GT比率を算出できないもの)を「-」とした。
【0140】
(実施例6)
実施例1と同様に調製したラジカル硬化性組成物が入ったサンプル管複数本を20LのSUSバケツ内に設置し、空間部の空気はそのままにして蓋をし、24時間又は48時間、60℃に設定したイナートオーブンに保管した。
【0141】
調製直後のサンプルと24時間、48時間保管した後のサンプルについてそれぞれゲル化時間の測定を実施した。ゲル化時間の測定は、JISK6901(2008)「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の5.9常温硬化特性(発熱法)に準じて行った。即ち、60℃のオーブン内で所定の時間保管したラジカル硬化性組成物を含むサンプル管を規定の方法で25℃に設定した恒温水槽中に保持し、当該ラジカル硬化性組成物に硬化剤(D)としてメチルエチルケトンパーオキサイドを2.0%添加して、重合を開始させた。そして当該ラジカル硬化性組成物の内温の上昇を測定し、内温が30℃となるまでの時間(ゲル化時間)を測定した。その結果を表3に示した。
【0142】
(比較例6、7)
重合禁止剤(B)としての1,4-ナフトキノンの添加量、1,4-ジヒドロキシベンゼンの添加量、促進剤(C)としてのナフテン酸コバルト(コバルト含量6重量%)の添加量、N,N-ジメチルアニリンの添加量を下表3中の値とした以外は、実施例6と同様にしてラジカル硬化性組成物を調製し、実施例6と同様の方法で硬化剤(D)を添加し、実施例6と同様の方法で保管後、ゲル化時間を測定した。その結果を表3に示した。
【0143】
【表3】
【0144】
実施例6と比較例6、7を比べることにより明らかなように、促進剤としてNapCoとDMAを併用し、NapCoの添加比率をDMAに対してモル比で0.03とした場合であっても、重合禁止剤としてHQのみを用いてNQを用いない場合には、保存安定性が悪く、24時間保管時にすでに固化してしまう現象が見られた。一方、重合禁止剤としてNQのみを用いた場合は、保存中にゲル化時間が変動するという現象はないが、ゲル化時間を十分確保できないという問題があることがわかる。