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  • 特許-ハイブリッド車両のトルク制御装置 図1
  • 特許-ハイブリッド車両のトルク制御装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両のトルク制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20221025BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20221025BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20221025BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20221025BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20221025BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20221025BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60W10/06 900
B60W20/10
F16H61/02
B60L50/16
B60L15/20 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018095085
(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公開番号】P2019199187
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-02-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 義将
(72)【発明者】
【氏名】津島 亮
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-341848(JP,A)
【文献】特開2013-071551(JP,A)
【文献】特開2013-043503(JP,A)
【文献】特開2017-110691(JP,A)
【文献】特開2013-126864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/48
B60W 10/06
B60W 20/10
F16H 61/02
B60L 50/16
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチ及び複数の変速段を有する自動変速機を介して、車両の駆動軸に連結された減速機に接続された内燃機関と、前記減速機を介して前記駆動軸に接続された電動機とを備え、目標車軸トルクを前記駆動軸に出力させるように前記内燃機関または前記電動機の駆動力を前記駆動軸に伝達するハイブリッド車両のトルク制御装置であって、
前記内燃機関の動作点が最高熱効率線に基づいて定められる所定の領域に入るように前記内燃機関の動作点を補正し、前記内燃機関の動作点の補正に伴い前記目標車軸トルクに対し増加または減少する前記内燃機関のトルクを前記電動機のトルクで吸収させる動作点補正制御を行なう制御部を備え、
前記制御部は、前記動作点補正制御の実行中に前記クラッチの解放が開始されたとき、前記目標車軸トルクと前記内燃機関から前記駆動軸に付与されるトルクの差分を補正する第一補正トルクと、現在の前記電動機のトルクに所定値を加えた第二補正トルクと、を切り替えて前記電動機のトルクとして付与させる補正トルク付与制御を行なうハイブリッド車両のトルク制御装置。
【請求項2】
クラッチ及び複数の変速段を有する自動変速機を介して、車両の駆動軸に連結された減速機に接続された内燃機関と、前記減速機を介して前記駆動軸に接続された電動機とを備え、目標車軸トルクを前記駆動軸に出力させるように前記内燃機関または前記電動機の駆動力を前記駆動軸に伝達するハイブリッド車両のトルク制御装置であって、
前記内燃機関の動作点が最高熱効率線に基づいて定められる所定の領域に入るように前記内燃機関の動作点を補正し、前記内燃機関の動作点の補正に伴い前記目標車軸トルクに対し増加または減少する前記内燃機関のトルクを前記電動機のトルクで吸収させる動作点補正制御を行なう制御部を備え、
前記制御部は、前記動作点補正制御の実行中に前記クラッチの解放が開始されたとき、前記目標車軸トルクと前記内燃機関から前記駆動軸に付与されるトルクの差分を補正する第一補正トルクと、現在の前記電動機のトルクに所定値を加えた第二補正トルクと、のうちいずれか大きいトルクを前記電動機のトルクとして付与させる補正トルク付与制御を行なうハイブリッド車両のトルク制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記クラッチの解放が開始されたときから前記クラッチの解放が完了するまで前記補正トルク付与制御を継続して行なう請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両のトルク制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、所定の周期に基づいて前記補正トルク付与制御を実行し、前周期において前記電動機に付与させたトルクを前記現在の前記電動機のトルクとする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両のトルク制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両のトルク制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジン動作点が最高熱効率線に基づいて定められる所定の領域に無いと判定される場合は、エンジンの動作点が最高熱効率線に近づくように動作点を補正することが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のものでは、動作点補正を行なう際に、バッテリの充放電を行なう必要がある場合は、ドライバが要求する車両の駆動トルクを維持しつつ、充放電用のトルクを加減算してエンジンの動作点を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-71467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エンジンの動作点を補正する際には、目標エンジントルクに対して僅かに誤差が生じてしまう。これは、コントローラが目標エンジントルクに沿うようにエンジントルクを制御するが、厳密に目標エンジントルクに沿ってエンジンを動作させることはできないため、誤差が生じる。
【0006】
一方で、変速時に、クラッチから伝達されるクラッチトルクが目標車軸トルクを下回る間に、クラッチトルクと目標車軸トルクの差分のトルクをモータのトルクで補うことで、車軸のトルク抜けを防止する変速時のアシスト制御がある。
【0007】
モータは、エンジンに比べて目標値に沿った緻密な制御が可能であるため、目標トルクに沿ってモータを動作させて、誤差の少ないトルクを車軸に出力することができる。
【0008】
上述のエンジンの動作点補正中に変速時のアシスト制御が行なわれた場合、動作点補正中の誤差を含む駆動トルクによる車軸トルクから、変速時の誤差の少ない駆動トルクに基づく車軸トルクへ車両状態が遷移するため、車軸トルクの変動が発生するという課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、エンジンの動作点補正から変速時のアシスト制御に移行する際のトルクの変動を防止することができるハイブリッド車両のトルク制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、クラッチ及び複数の変速段を有する自動変速機を介して、車両の駆動軸に連結された減速機に接続された内燃機関と、前記減速機を介して前記駆動軸に接続された電動機とを備え、目標車軸トルクを前記駆動軸に出力させるように前記内燃機関または前記電動機の駆動力を前記駆動軸に伝達するハイブリッド車両のトルク制御装置であって、前記内燃機関の動作点が最高熱効率線に基づいて定められる所定の領域に入るように前記内燃機関の動作点を補正し、前記内燃機関の動作点の補正に伴い前記目標車軸トルクに対し増加または減少する前記内燃機関のトルクを前記電動機のトルクで吸収させる動作点補正制御を行なう制御部を備え、前記制御部は、前記動作点補正制御の実行中に前記クラッチの解放が開始されたとき、前記目標車軸トルクと前記内燃機関から前記駆動軸に付与されるトルクの差分を補正する第一補正トルクと、現在の前記電動機のトルクに所定値を加えた第二補正トルクと、を切り替えて前記電動機のトルクとして付与させる補正トルク付与制御を行なうものである。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、エンジンの動作点補正から変速時のアシスト制御に移行する際のトルクの変動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のトルク制御装置のブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のトルク制御装置のハイブリッド走行制御処理の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のトルク制御装置のハイブリッド走行制御処理による変速時のトルクの変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両のトルク制御装置は、クラッチ及び複数の変速段を有する自動変速機を介して車両の駆動軸に接続された内燃機関と、減速機を介して駆動軸に接続された電動機とを備え、目標車軸トルクを駆動軸に出力させるように内燃機関または電動機の駆動力を駆動軸に伝達するハイブリッド車両のトルク制御装置であって、内燃機関の動作点が最高熱効率線に基づいて定められる所定の領域に入るように内燃機関の動作点を補正し、内燃機関の動作点の補正に伴い目標車軸トルクに対し増加または減少する内燃機関のトルクを電動機のトルクで吸収させる動作点補正制御を行なう制御部を備え、制御部は、動作点補正制御の実行中にクラッチの解放が開始されたとき、目標車軸トルクと内燃機関から駆動軸に付与されるトルクの差分を補正する第一補正トルクと、現在の電動機のトルクに所定値を加えた第二補正トルクと、のいずれか一方を電動機のトルクとして付与させる補正トルク付与制御を行なうよう構成されている。
【0014】
これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両のトルク制御装置は、エンジンの動作点補正から変速時のアシスト制御に移行する際のトルクの変動を防止することができる。
【実施例
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るハイブリッド車両のトルク制御装置について詳細に説明する。
【0016】
図1において、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のトルク制御装置を搭載したハイブリッド車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、トランスミッション3と、モータ4と、インバータ5と、バッテリ6と、エンジン2を制御するECM(Engine Control Module)7と、トランスミッション3を制御するTCM(Transmission Control Module)8と、ハイブリッド車両1を総合的に制御する制御部9とを含んで構成される。
【0017】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
【0018】
トランスミッション3は、エンジン2から出力された回転を変速し、駆動軸11を介して駆動輪10を駆動する。トランスミッション3は、平行軸歯車機構からなる常時噛合式の図示しない変速機構と、図示しないアクチュエータとを備えている。
【0019】
エンジン2とトランスミッション3の間には、乾式単板式のクラッチ31が設けられており、クラッチ31は、エンジン2とトランスミッション3との間の動力伝達を接続または切断する。
【0020】
トランスミッション3は、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されており、図示しないアクチュエータにより変速機構における変速段の切換えとクラッチ31の断接が行なわれる。
【0021】
トランスミッション3と駆動輪10の間にはディファレンシャル機構32が設けられている。ディファレンシャル機構32と駆動輪10は駆動軸11により連結されている。
【0022】
モータ4は、ディファレンシャル機構32に対して、チェーン等の減速機41を介して連結されている。モータ4は、電動機として機能する。モータ4は、発電機としても機能し、ハイブリッド車両1の走行によって発電を行う。
【0023】
インバータ5は、制御部9の制御により、モータ4によって生成された三相の交流電力を直流の電力に変換する。この直流の電力は、例えば、バッテリ6を充電する。
【0024】
バッテリ6は、例えばリチウムイオン蓄電池で構成されている。バッテリ6は、インバータ5に電力を供給する。
【0025】
バッテリ6には、バッテリ状態センサ6aが設けられている。バッテリ状態センサ6aは、バッテリ6の充放電電流、電圧及びバッテリ温度を検出する。バッテリ状態センサ6aは、制御部9に接続されている。制御部9は、バッテリ状態センサ6aの出力によりバッテリ6の充電状態(以下、「SOC」という)を検知できるようになっている。
【0026】
このように、ハイブリッド車両1は、エンジン2とモータ4の両方の動力を車両の駆動に用いることが可能なパラレルハイブリッドシステムを構成しており、エンジン2及びモータ4の少なくとも一方が出力する動力により走行する。
【0027】
なお、モータ4は、エンジン2から駆動輪10までの動力伝達経路の何れかの箇所に動力伝達可能に連結されていればよく、必ずしもディファレンシャル機構32に連結される必要はない。
【0028】
ECM7及びTCM8、制御部9は、それぞれCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0029】
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECM7及びTCM8、制御部9としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
【0030】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるECM7及びTCM8、制御部9としてそれぞれ機能する。
【0031】
ハイブリッド車両1には、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を形成するためのCAN通信線12が設けられている。
【0032】
ECM7及びTCM8、制御部9は、それぞれCAN通信線12によって接続されている。ECM7及びTCM8、制御部9は、CAN通信線12を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行なう。
【0033】
ECM7の入力ポートには、図示しないエンジン回転数センサを含む各種センサ類が接続されている。エンジン回転数センサは、エンジン2の機関回転数であるエンジン回転数を検出する。
【0034】
一方、ECM7の出力ポートには、図示しないインジェクタを含む各種制御対象類が接続されている。インジェクタは、エンジン2に燃料を供給する。
【0035】
TCM8の出力ポートには、トランスミッション3のアクチュエータを含む各種制御対象類が接続されている。TCM8は、トランスミッション3のアクチュエータを制御することで、トランスミッション3の変速機構における変速段の切換えとクラッチ31の断接を行なう。
【0036】
TCM8は、クラッチ31から入力される回転数やトランスミッション3の変速段などに基づいて、クラッチ31から伝達されディファレンシャル機構32に出力されるトルクであるクラッチトルクを算出することができる。
【0037】
制御部9の入力ポートには、上述のバッテリ状態センサ6aに加え、アクセル開度センサ91、車速センサ92等の各種センサ類が接続されている。
【0038】
アクセル開度センサ91は、図示しないアクセルペダルの開度を検出して、アクセル開度に応じた信号を制御部9に出力する。車速センサ92は、ハイブリッド車両1の走行速度を検出し、車速に応じた信号を制御部9に出力する。
【0039】
一方、制御部9の出力ポートには、上述のインバータ5を含む各種制御対象類が接続されている。
【0040】
本実施例において、制御部9は、アクセル開度や車速などに基づいて、ドライバの要求する要求トルクを算出する。制御部9は、要求トルクが駆動輪10に出力されるような駆動軸11のトルクとして目標車軸トルクを算出し、駆動軸11に目標車軸トルクを出力するようにエンジン2やモータ4を制御する。
【0041】
制御部9は、ECM7にトルク指令を送信し、ECM7によりトルク指令に設定されたトルク値をエンジン2に出力させる。
【0042】
制御部9は、目標車軸トルクやバッテリ6のSOCなどに基づいて、エンジン2に出力させるトルクやモータ4に出力させるトルクを算出する。
【0043】
制御部9は、エンジン2とモータ4の両方のトルクでハイブリッド車両1を走行させるハイブリッド走行(以下、「HEV走行」ともいう)時に、エンジン2の目標トルクをエンジン2に出力させるときのエンジン2の動作点が最高熱効率線に近づくように動作点を補正する。
【0044】
制御部9は、エンジン2の動作点が最高熱効率線に基づいて定められる所定の領域に無い場合、エンジン2の動作点を補正する。
【0045】
制御部9は、エンジン2の動作点のトルクが最高熱効率線の動作点のトルクより大きい場合、エンジン2のトルクを下げ、目標車軸トルクとクラッチトルクとの差分のトルクをモータ4に出力させる。
【0046】
制御部9は、エンジン2の動作点のトルクが最高熱効率線の動作点のトルク以下の場合、エンジン2のトルクを上げ、エンジン2の上げた分のトルクをモータ4に回生トルクとして出力させる。
【0047】
制御部9は、エンジン2の動作点を補正しているときに変速を行なう場合、目標車軸トルクからクラッチトルクを減算したトルクと、現在のモータ4のトルクに所定値を加算したトルクと、の大きいトルクをモータ4のトルクとする補正トルク付与制御を行なう。
【0048】
補正トルク付与制御は、クラッチ31の解放が開始されたときからクラッチ31の解放が完了するまで継続して行なってもよい。
【0049】
現在のモータ4のトルクとは、例えば、所定の周期でモータ4のトルクの制御を行なっている場合、前周期での制御でモータ4に出力させたトルク値である。
【0050】
このようにすることで、エンジン2の動作点を補正しているときに変速を行なう場合に、モータ4のトルクを前回値より小さくならないようにすることができ、トルクの変動を防止することができる。
【0051】
以上のように構成された本実施例に係るハイブリッド車両のトルク制御装置によるハイブリッド走行制御処理について、図2を参照して説明する。なお、以下に説明するハイブリッド走行制御処理は、制御部9が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0052】
ステップS1において、制御部9は、ハイブリッド車両1がハイブリッド走行中であるか否かを判定する。ハイブリッド走行中ではないと判定した場合、制御部9は、処理を終了する。
【0053】
ハイブリッド走行中であると判定した場合、ステップS2において、制御部9は、バッテリ6のSOCが所定値未満であるか否かを判定する。バッテリ6のSOCが所定値未満であると判定した場合、ステップS3において、制御部9は、エンジン2の目標トルクをエンジン2に出力させるときのエンジン2の動作点が、最高熱効率線の動作点の所定の領域外であるか否かを判定する。エンジン2の動作点が、最高熱効率線の動作点の所定の領域外でないと判定した場合、制御部9は、処理を終了する。
【0054】
ステップS3において、最高熱効率線の動作点の所定の領域外であると判定した場合、ステップS4において、制御部9は、エンジン2の動作点のトルクが最高熱効率線の動作点のトルクより大きいか否かを判定する。エンジン2の動作点のトルクが最高熱効率線の動作点のトルクより大きいと判定した場合、または、ステップS2においてバッテリ6のSOCが所定値未満でないと判定した場合、ステップS5において、制御部9は、最高熱効率線の動作点の所定の領域内のトルク値を設定したトルク指令をECM7に送信してエンジン2のトルクダウン要求を実行する。
【0055】
ステップS6において、制御部9は、目標車軸トルクからクラッチトルクを減算したトルクをモータ4に付与させる。
【0056】
ステップS4においてエンジン2の動作点のトルクが最高熱効率線の動作点のトルクより大きくないと判定した場合、ステップS7において、制御部9は、最高熱効率線の動作点の所定の領域内のトルク値を設定したトルク指令をECM7に送信してエンジン2のトルクアップ要求を実行する。
【0057】
ステップS8において、制御部9は、エンジン2の上げた分のトルクをモータ4に付与させる。
【0058】
ステップS9において、制御部9は、トランスミッション3の変速が実施されたか否かを判定する。変速が実施されていないと判定した場合、制御部9は、処理を終了する。
【0059】
ステップS9において変速が実施されると判定した場合、ステップS10において、制御部9は、目標車軸トルクからクラッチトルクを減算したトルク値Aを算出する。
【0060】
ステップS11において、制御部9は、ハイブリッド走行制御処理の前回周期時のモータ4のトルク値に所定値を加算したトルク値Bを算出する。
【0061】
ステップS12において、制御部9は、トルク値Aがトルク値Bより大きいか否かを判定する。トルク値Aがトルク値Bより大きいと判定した場合、制御部9は、モータ4にトルク値Aのトルクを付与させて、処理を終了する。
【0062】
ステップS12においてトルク値Aがトルク値Bより大きくないと判定した場合、ステップS14において、制御部9は、モータ4にトルク値Bのトルクを付与させて、処理を終了する。
【0063】
このようなハイブリッド走行制御処理による動作について図3を参照して説明する。図3において、トランスミッション3の変速が開始されるタイミングT1前では、バッテリ6の充電を行なってエンジン2の動作点補正が行なわれている。
【0064】
このとき、エンジン2の動作点が最高熱効率線に基づいて補正されているが、エンジン2の出力トルクの誤差が10[Nm]発生しているため、誤差を含む80[Nm]がトータルトルクとして駆動軸11に付与されている。
【0065】
変速が開始されたタイミングT1後では、以下のトルク値Aとトルク値Bのうち、モータ4の力行側を正として、いずれか大きい値をモータ4のトルクとして付与される。なお、絶対値の小さい値をモータ4のトルクとして付与するようにしてもよい。
トルク値A:目標車軸トルク-クラッチトルク(≒エンジントルク)
トルク値B:前回のモータトルク(≒回生トルク)+所定値
【0066】
変速前の動作点補正時にクラッチトルクがトルクアップまたはトルクダウン要求値よりもプラス側に振れた場合、トルク値Aをモータ4のトルクとして付与すると、変速前後でモータ4のトルクが回生方向に増加する(図中、従来のモータトルクの線を参照)。
【0067】
この結果、トータルトルクが急激にマイナスに振れるため、運転者にトルク抜けを感じさせる。
【0068】
トルク値Bをモータ4のトルクとして付与すると、トルク値Aを採用した場合に比べてトータルトルクの変動が緩やかになるため、運転者はトルク抜けを感じにくい。
【0069】
変速前の動作点補正時にクラッチトルクがトルクアップまたはトルクダウン要求値よりもマイナス側に振れた場合、トルク値Aをモータ4のトルクとして付与しても、変速前後でモータ4のトルクが回生方向に増加しない(図中、補正後のモータトルクの線を参照)。
【0070】
この結果、トータルトルクの変化が緩やかになる。誤差を含む車軸トルクから誤差の少ない車軸トルクとなるが、その変動幅が小さいため、モータ4のトルク値が回生方向に大きく振れることはない。
【0071】
本実施例では、各種センサ情報に基づき制御部9が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、ハイブリッド車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0072】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0073】
1 ハイブリッド車両
2 エンジン(内燃機関)
3 トランスミッション(自動変速機)
4 モータ(電動機)
9 制御部
10 駆動輪
11 駆動軸
31 クラッチ
図1
図2
図3