(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】レバーロック式オスコネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20221025BHJP
A61M 39/26 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
A61M39/10 100
A61M39/10 110
A61M39/26
(21)【出願番号】P 2018097742
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】原田 靖子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】沖山 忠
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007719(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152169(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/154050(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
A61M 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メスコネクタに対して挿抜可能な棒状のオス部材と、
前記オス部材に対向して配置されたロックレバーと、
前記オス部材に向かって突出するように前記ロックレバーに設けられた爪とを備えたレバーロック式オスコネクタであって、
前記オスコネクタは、
前記オス部材の基端側の第1位置と
前記オス部材の先端側の第2位置との間で前記オス部材の長手方向と平行な方向に移動するスライダを更に備え、
前記メスコネクタが前記オスコネクタから分離され且つ前記スライダが前記第1位置にあるとき、前記ロックレバーは実質的に曲げ変形しておらず、
前記オス部材が前記メスコネクタに挿入される過程において、前記スライダは前記第1位置に保持され続け、
前記爪は、前記オス部材が前記メスコネクタに挿入され且つ前記スライダが前記第1位置にあるときに、前記メスコネクタに係合することができるように構成され、
前記スライダを前記第1位置から前記第2位置に移動させると、前記爪が前記オス部材から離間するように前記スライダが前記ロックレバーを弾性的に曲げ変形させることを特徴とするレバーロック式オスコネクタ。
【請求項2】
前記オス部材が前記メスコネクタに挿入され且つ前記スライダが前記第2位置にあるとき、前記メスコネクタに対する前記爪の係合が解除される請求項1に記載のレバーロック式オスコネクタ。
【請求項3】
前記スライダ及び前記ロックレバーのうちの一方は、前記オス部材の長手方向に対して傾斜した傾斜面を備え、
前記スライダが前記第1位置から前記第2位置に移動する過程で、前記スライダ及び前記ロックレバーのうちの他方が前記傾斜面上を摺動し、これにより前記爪が前記オス部材から離間するように前記ロックレバーが弾性的に曲げ変形する請求項1又は2に記載のレバーロック式オスコネクタ。
【請求項4】
前記スライダは前記ロックレバーに対して前記オス部材とは反対側に配置されている請求項1~
3のいずれか一項に記載のレバーロック式オスコネクタ。
【請求項5】
前記オスコネクタは、前記オス部材に対して不動の案内面を更に備え、
前記スライダが前記第1位置と前記第2位置との間を移動するとき、前記スライダは前記案内面上を摺動する請求項1~
4のいずれか一項に記載のレバーロック式オスコネクタ。
【請求項6】
前記オスコネクタは、前記メスコネクタを前記オス部材の長手方向に垂直な方向に位置決めすることができるように構成されたフードを更に備え、
前記案内面は前記フードに設けられている請求項
5に記載のレバーロック式オスコネクタ。
【請求項7】
前記スライダは、前記ロックレバーと前記フードとの間の隙間の少なくとも一部を塞ぐ請求項
6に記載のレバーロック式オスコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メスコネクタとの接続状態を維持するためのロック機構を備えたオスコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、薬液や血液などの各種液体が流れる流路(「回路」と呼ばれることもある)を構成するために、オスコネクタとメスコネクタとからなる接続具が用いられる。互いに接続されたオスコネクタとメスコネクタとが意図せずに分離されるのを防止するために、ロック機構が設けられたオスコネクタが知られている。ロック機構としては、弾性的に回動(揺動)するレバー(ロックレバー)の先端に爪が設けられたレバーロック式が知られている。
【0003】
特許文献1には、片持ち支持構造のロックレバーが、棒状のオス部材に対向して配置されたレバーロック式オスコネクタが記載されている。ロックレバーの先端(自由端)から、オス部材に向かって爪が突出している。操作レバーが、ロックレバーの背面(オス部材とは反対側面)から、ロックレバーの固定端側に延びている。
【0004】
オスコネクタにメスコネクタを接続したとき、ロックレバーに設けられた爪がメスコネクタに係合する(ロック状態)。爪がメスコネクタに係合している限り、オスコネクタとメスコネクタとの接続が維持される。この状態で、操作レバーの先端を半径方向内向きに押すと、爪がオス部材から離れるようにロックレバーが弾性的に曲げ変形し、爪とメスコネクタとの係合が解除される(非ロック状態)。メスコネクタをオスコネクタから分離することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1のレバーロック式オスコネクタは、操作レバーを半径方向内向きに押すという簡単な操作でメスコネクタに対する爪の係合を解除することができる。このため、オスコネクタが周囲の物体に衝突したり、オスコネクタが患者の下敷きになったりすると、操作レバーが押されて、メスコネクタがオスコネクタから意図せずに分離してしまうという事故が起こる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、メスコネクタとの接続状態を維持するためのレバーロック式ロック機構を備えたオスコネクタにおいて、ロック機構のロック状態が意図せずに解除されるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレバーロック式オスコネクタは、メスコネクタに対して挿抜可能な棒状のオス部材と、前記オス部材に対向して配置されたロックレバーと、前記オス部材に向かって突出するように前記ロックレバーに設けられた爪とを備える。前記オスコネクタは、前記オス部材の基端側の第1位置と前記オス部材の先端側の第2位置との間で前記オス部材の長手方向と平行な方向に移動するスライダを更に備える。前記メスコネクタが前記オスコネクタから分離され且つ前記スライダが前記第1位置にあるとき、前記ロックレバーは実質的に曲げ変形していない。前記オス部材が前記メスコネクタに挿入される過程において、前記スライダは前記第1位置に保持され続ける。前記爪は、前記オス部材が前記メスコネクタに挿入され且つ前記スライダが前記第1位置にあるときに、前記メスコネクタに係合することができるように構成されている。前記スライダを前記第1位置から前記第2位置に移動させると、前記爪が前記オス部材から離間するように前記スライダが前記ロックレバーを弾性的に曲げ変形させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スライダが第1位置にあるとき、ロックレバーの爪がメスコネクタに係合する。爪を備えたロックレバーは、オスコネクタにメスコネクタが接続された状態を維持するためのレバーロック式ロック機構として機能する。ロック機構のロック状態の解除は、スライダを、オス部材の長手方向と平行な方向に、第1位置から第2位置へ移動させることにより可能である。オスコネクタの通常の使用において、第1位置にあるスライダに、第2位置へ向かう力が意図せずに加えられる可能性は極めて低い。従って、本発明は、ロック機構のロック状態が意図せずに解除されるのを防止するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、スライダが第1位置にある、本発明の一実施形態にかかるレバーロック式オスコネクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にかかるレバーロック式オスコネクタの分解斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の一実施形態にかかるレバーロック式オスコネクタを構成するオスコネクタ本体の断面斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の一実施形態にかかるレバーロック式オスコネクタを構成するオスコネクタ本体の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態にかかるレバーロック式オスコネクタを構成するスライダの斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態において、スライダが装着されたオスコネクタ本体の断面斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態にかかるレバーロック式オスコネクタを構成するシールドの断面斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の一実施形態において、接続される直前のオスコネクタ及びメスコネクタを示した斜視図である。スライダは第1位置にある。
【
図8A】
図8Aは、本発明の一実施形態において、互いに接続されたオスコネクタ及びメスコネクタを示した斜視図である。スライダは第1位置にあり、ロック機構はロック状態にある。
【
図9A】
図9Aは、本発明の一実施形態において、互いに接続されたオスコネクタ及びメスコネクタを示した斜視図である。スライダは第2位置にあり、ロック機構は非ロック状態にある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の上記のオスコネクタにおいて、前記オス部材が前記メスコネクタに挿入され且つ前記スライダが前記第2位置にあるとき、前記メスコネクタに対する前記爪の係合が解除されてもよい。かかる態様によれば、スライダが第2位置に移動されると、ロック機構はロック状態から非ロック状態へ確実に切り替わる。
【0012】
前記スライダ及び前記ロックレバーのうちの一方は、前記オス部材の長手方向に対して傾斜した傾斜面を備えていてもよい。前記スライダが前記第1位置から前記第2位置に移動する過程で、前記スライダ及び前記ロックレバーのうちの他方が前記傾斜面上を摺動してもよく、これにより前記爪が前記オス部材から離間するように前記ロックレバーが弾性的に曲げ変形してもよい。かかる態様によれば、簡単な構成で、スライダのオス部材の長手方向に沿った移動を、爪の半径方向の移動に変換することができる。これは、オスコネクタの構成を簡単化するのに有利である。
【0013】
前記メスコネクタが前記オスコネクタから分離され且つ前記スライダが前記第1位置にあるとき、前記ロックレバーは実質的に曲げ変形していなくてもよい。かかる態様によれば、コネクタを、不使用時には、スライダを第1位置にして保管することにより、ロックレバーの弾性回復力の低下を防止することができる。
【0014】
前記スライダは前記ロックレバーに対して前記オス部材とは反対側に配置されていてもよい。かかる態様によれば、作業者や患者がロックレバーに触れるのが困難になる。これは、例えば、ロック機構がロック状態のときに、患者がロックレバーを誤って半径方向外向き引き出してロック状態を解除してしまうという事故が起こる可能性を低減するのに有利である。
【0015】
前記オスコネクタは、前記オス部材に対して不動の案内面を更に備えていてもよい。前記スライダが前記第1位置と前記第2位置との間を移動するとき、前記スライダは前記案内面上を摺動してもよい。かかる態様は、スライダを第1位置から第2位置へ移動させたときにロック機構をロック状態から非ロック状態へ確実に切り替えるのに有利である。
【0016】
前記オスコネクタは、前記メスコネクタを前記オス部材の長手方向に垂直な方向に位置決めすることができるように構成されたフードを更に備えていてもよい。前記案内面は前記フードに設けられていてもよい。かかる態様は、オスコネクタの構成を簡単化するのに有利である。
【0017】
前記スライダは、前記ロックレバーと前記フードとの間の隙間の少なくとも一部を塞いでもよい。かかる態様は、薬液や血液などが隙間を介して作業者に付着するのを防止するのに有利である。
【0018】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要な部材を簡略化して示したものである。従って、本発明の範囲内において、図面に示されていない任意の部材を追加したり、あるいは、図面に示された任意の部材を変更もしくは省略したりしてもよい。異なる図面において、同一の部材には同一の符号が付されている。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する図面の説明を適宜参酌すべきである。
【0019】
図1Aは、本発明の一実施形態にかかるレバーロック式オスコネクタ(以下、単に「オスコネクタ」という)1の斜視図である。
図1Bは、オスコネクタ1の断面斜視図である。
図2は、オスコネクタ1の分解斜視図である。
図2に示されているように、オスコネクタ1は、オスコネクタ本体10、スライダ40、シールド60を備える。
【0020】
図3Aは、オスコネクタ本体(以下、単に「本体」という)10の断面斜視図、
図3Bは本体10の断面図である。本体10は、棒状のオス部材11を備える。
図3A及び
図3Bの断面は、オス部材11の長手方向に沿った中心軸1a(
図3B参照)を含む。以下の説明の便宜のため、オス部材11の長手方向を「上下方向」と呼び、オス部材11の長手方向と直交する平面に平行な方向を「水平方向」と呼ぶ。上下方向において「上」及び「下」は
図3Bの向きに基づいて定義する。更に、オス部材11の中心軸1aに直交する直線の方向を「半径方向」又は「直径方向」といい、中心軸1aの回りを回転する方向を「周方向」という。半径方向において、中心軸1aから離れる側を「外側」、中心軸1aに近づく側を「内側」という。これらの定義は、本体10のみならず、オスコネクタ1及びそのすべての構成部材(
図2参照)、さらには、オスコネクタ1に接続されるメスコネクタ100(後述する
図7A参照)にも適用される。なお、「上下方向」及び「水平方向」は、オスコネクタ1の実際の使用時での向きを意味するものではない。
【0021】
オス部材11の外周面(即ち、側面)は、オス部材11の先端(即ち、上端)に近づくにしたがって外径がわずかに小さくなるテーパ面である。但し、オス部材11の外周面の形状は、これに限定されず、任意に選択することができる。例えば、オス部材11の外周面は、上下方向において外径が一定である円筒面であってもよい。
【0022】
オス部材11内には、その長手方向に沿って流路12が形成されている。オス部材11の先端近傍に2つの横孔13が設けられている(
図3B参照)。横孔13は、オス部材11の半径方向に沿って延び、流路12と連通している。本実施形態では、2つの横孔13が一直線に沿って設けられているが、横孔13の数は、2つである必要はなく、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0023】
オス部材11の基端から、半径方向に沿って基台18が延びている。基台18は、略円形の平板である。基台18の外周端縁から、フード20及びロックレバー30が、オス部材11と同じ側に向かって延びている。
【0024】
フード20は、オス部材11と同軸の中空の円筒形状を有し、オス部材11を取り囲み、オス部材11から半径方向に離間している。フード20は、オス部材11及びロックレバー30よりも更に上方にまで延びている。フード20の内周面(オス部材11に対向する面)は、オスコネクタ1が接続されるメスコネクタ100(後述する
図7A参照)の外径とほぼ同じかこれよりわずかに大きな内径を有する円筒面である。
【0025】
ロックレバー30は、幅(周方向の寸法)が一定の細長い薄板形状(短冊形状)を有する。ロックレバー30は、オス部材11に対して半径方向に対向し、且つ、オス部材11に略平行に配置されている。爪(ロック爪)35が、ロックレバー30の上端(またはその近傍)からオス部材11に向かって突出している。爪35は、その突端(オス部材11に最も近い部分)より上側に、傾斜面35aを備える。傾斜面35aは、爪35の突端に向かって基台18に近づくように(即ち、下降するように)傾斜している。爪35は、フード20の内周面よりもオスルアー10側に突出している。一定幅のスロット(切り込み)32が、ロックレバー30の下端から上方に向かって所定長さでまっすぐに延びている。スロット32は、ロックレバー30を半径方向に貫通している。ロックレバー30のうち、スロット32が設けられた部分(即ち、スロット32に対して周方向両側の部分)を弾性部33という。
【0026】
ロックレバー30は、基台18に接続されたロックレバー30の下端を固定端とし、ロックレバー30の上端を自由端とする片持ち支持構造を有する。ロックレバー30は、爪35がオス部材11から離間するように、矢印A(
図3B参照)の向き(半径方向外向き)に弾性的に曲げ変形可能である。オス部材11の中心軸1aを含む、
図3A及び
図3Bの断面をロックレバー30の「変形面」と呼ぶ。ロックレバー30は、この変形面内で矢印Aに沿って曲げ変形する。
【0027】
図2に示されているように、フード20には、フード20を半径方向に貫通する開口22が設けられている。ロックレバー30は、この開口22内に配置されている。開口22を規定する端縁は、略逆「U」字形状を有する。開口22の端縁は、ロックレバー30が曲げ変形可能なように、ロックレバー30から隙間を介して離間している。ロックレバー30は、フード20が沿う円筒面にほぼ沿っている。開口22の周方向幅を規定する開口22の端縁に沿って案内面26が設けられている。案内面26は、上下方向に沿って延び、ロックレバー30の変形面に垂直な平坦面である。案内面26に対して開口22とは反対側に隣接して溝27が設けられている。溝27は、案内面26の上端から所定長さの領域に対応して、上下方向に沿って延びている。
【0028】
基台18のオスルアー10とは反対側面には、接続筒17がオス部材11と同軸に設けられている。接続筒17は、略円筒形状を有し、オス部材11の流路12と連通している。接続筒17の内周面は、基台18から離れるにしたがって内径が大きくなるテーパ面(例えば6%テーパ面)である。接続筒17の外周面には、雄ネジが設けられている。接続筒17は例えばISO594-2に準拠していてもよい。接続筒17には、液体(例えば薬液、血液など)が流れる流路(回路ともいう)を構成する柔軟なチューブが、直接的に、又は何らかのコネクタを介して間接的に、接続されうる。但し、基台18に対してオス部材11とは反対側の構成は任意である。接続筒17が本実施形態と異なる構成を有していてもよく、あるいは、接続筒17以外の構成が設けられていてもよい。
【0029】
図4はスライダ40の内側から見た斜視図である。スライダ40は、略円弧状の平面視形状を有し、全体として円筒面の一部に近似した形状を有する。スライダ40の凹曲面である内面41から、薄板形状を有するガイド片42が突出している。ガイド片42は、上下方向に平行に、スライダ40の下端近傍に配置されている。ガイド片42の上端から、上方に向かって突起43が延びている。突起43は、スライダ40の内面41から離間している。突起43の内面41に対向する端縁には傾斜面43aが設けられている。傾斜面43aは、上方に向かって内面41から離れるように傾斜または湾曲している(
図1B参照)。
【0030】
ガイド片42を水平方向に挟むように、内面41から一対のアーム44が突出している。ガイド片42と同様に、アーム44も薄板形状を有する。一対のアーム44とこの間のガイド片42とは、互いに離間し且つ平行である。各アーム44の先端(内面41から最も遠い箇所)から、ガイド片42に向かって爪(係合爪)45が突出している。
【0031】
スライダ40の水平方向の両端縁には、平坦な摺動面46が設けられている。摺動面46は、スライダ40の上下方向の全長にわたって上下方向に沿って延びている。摺動面46に隣接して突起47が設けられている。突起47は、スライダ40の上端から上下方向に沿って所定長さで延びている。
【0032】
本体10及びスライダ40は、硬質の材料からなることが好ましい。具体的には、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いうる。本体10及びスライダ40のそれぞれは、これらの樹脂材料を用いて射出成形法等により全体を一部品として一体的に製造することができる。
【0033】
図2に示すように、スライダ40は、その内面41(
図4参照)をロックレバー30に対向させて、半径方向に沿って本体10に装着される。
【0034】
図5は、スライダ40が装着された本体10の断面斜視図である。
図5では、シールド60(
図1B、
図2参照)は省略されている。スライダ40のガイド片42及び突起43が、ロックレバー30のスロット32に挿入されている。突起43の傾斜面43aが、ロックレバー30の内側面でのスロット32の上端32aに上下方向に対向している。スライダ40のアーム44が、本体10の開口22(
図2参照)に挿入されている。2つのアーム44の間にロックレバー30が位置している。アーム44の先端に設けられた爪45が、ロックレバー30に半径方向に対向している。爪45は、ロックレバー30に係合している。一旦爪45がロックレバー30に係合すると、スライダ40を本体10から半径方向外向きに分離させることは困難である。
【0035】
図1Aに示されているように、スライダ40は、ロックレバー30の大部分を覆っている。スライダ40の摺動面46(
図4参照)は、本体10の案内面26に当接又は接近している。スライダ40の突起47は、本体10の溝27に嵌入している。ロックレバー30と案内面26との間の隙間(開口22、
図2参照)の大部分は、スライダ40によって塞がれている。
【0036】
スライダ40は、本体10に装着された状態で、本体10に対して上下方向に移動可能である。本体10に対するスライダ40の下方への移動は、スライダ40の摺動面46の下端46a(
図4参照)が本体10の基台18に上下方向に当接することによって規制される。
図1A、
図1B及び
図5では、スライダ40は、本体10に対して最も下方に位置している。
図1A、
図1B及び
図5に示す、本体10に対するスライダ40の最下位置を「第1位置」という。スライダ40が第1位置にあるとき、ロックレバー30は実質的に曲げ変形していない。
【0037】
本体10に対するスライダ40の半径方向の位置は、爪45がロックレバー30に係合すること、及び、摺動面46が案内面26に当接することによって規制される。本体10に対するスライダ40の周方向の位置は、ガイド片42がスロット32に嵌入すること、2つのアーム44間にロックレバー30が位置すること、及び、突起47が溝27に嵌入することによって規制される。
【0038】
図6は、シールド60の断面斜視図である。シールド60は、上から下に、頭部61、周壁65、基部68をこの順に備える。シールド60は、外力によって比較的容易に変形可能であり、且つ、外力を取り除くと直ちに変形前の状態(自然状態)に回復するように、弾性(あるいは可撓性)を有する軟質材料(いわゆるエラストマー)からなる。使用しうる軟質材料としては、制限はないが、軟質ポリ塩化ビニルや、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等のゴム等を例示することができる。シールド60は、上記の材料を用いて、全体を一部品として一体的に製造することができる。
【0039】
周壁65は、全体として中空の筒形状を有している。周壁65は、シールド60に上下方向の圧縮力が印加されると、その上下方向寸法が短縮するように弾性的に圧縮変形し(後述する
図8B参照)、圧縮力から解放されると直ちに初期状態に回復するように構成される。本実施形態では、周壁65に、下方に向かって外径及び内径が大きくなるテーパ状(円錐状)部分と、上下方向において外径及び内径が一定である円筒状部分とが上下方向に交互に配置されている。但し、周壁65の構成は、本実施形態に限定されず、例えば蛇腹形状など任意に変更しうる。
【0040】
頭部61は、周壁65の内部空間と連通した内腔62を有する。内腔62の内周面は、オス部材11の外周面に密着するように、オス部材11の外周面に沿った形状を有することが好ましい。本実施形態では、内腔62の内周面は、その内径が上下方向において一定である円筒面である。内腔62の最深部には、頭部61を上下方向に貫通するスリット63が形成されている。スリット63は、「-」(マイナス)字の平面視形状を有する直線状の切り込みである。頭部61の上面には、円錐面状(またはキノコ状もしくは傘状)の凸部64が上方に向かって突出している。スリット63は凸部64の中央の頂部を通る。
【0041】
シールド60は、基部68を用いて本体10に固定される。本実施形態の基部68は、周壁65の下端から半径方向外向きに突出している。基部68を本体10の基台18上に載置し(
図1B参照)、環状の固定リング(図示せず)をシールド60に外挿し基部68上に被せる。固定リングは、本体のフード20に設けた貫通孔19(
図1A、
図3A、
図5参照)に係止される。かくして、シールド60は本体10に固定される。但し、シールド60の本体10に対する固定方法はこれに限定されず、任意である。固定方法に応じて基部68の構成は適宜変更しうる。
【0042】
図1Bに示されているように、シールド60の内腔62内にオス部材11の先端及びその近傍部分が挿入される。内腔62の内周面はオス部材11によって拡径され、オス部材11に密着している。オス部材11の横孔13は、内腔62の内周面によって液密に塞がれている(後述する
図7B参照)。
図1Bでは、シールド60は上下方向に実質的に圧縮変形されておらず、スリット63は閉じ、スライダ40は第1位置にあり、ロックレバー30には外力が実質的に作用していない。この状態を、オスコネクタ1の「初期状態」という。
【0043】
以上のように構成されたオスコネクタ1の、メスコネクタ100に対する接続及び分離の方法を説明する。
【0044】
図7Aは、メスコネクタ100に接続する直前のオスコネクタ1を示した斜視図である。
図7Bは、
図7Aの断面図である。
【0045】
メスコネクタ100は、ゴム等の弾性材料からなる円板状の隔壁部材(以下「セプタム」という)101を備える。セプタム101の中央には、セプタム101を厚さ方向に貫通する直線状のスリット(切り込み)102が形成されている。オス部材11が挿入されていない自然状態では、スリット102は液密に閉じられている。セプタム101は、内腔111を有する筒状の基部110の先端に載置される。セプタム101にキャップ130が被せられる。キャップ130は、その円筒部133に形成された貫通孔135に、基部110の外周面から突出した係止爪115が嵌入することによって、基部110に固定される。これにより、セプタム101は、基部110とキャップ130とによって上下方向に挟持される。キャップ130の円形の天板131の中央には円形の開口132が形成されている。セプタム101のスリット102が開口132を介して露出している。基部110の外周面から、周方向に連続した環状突起112が突出している。環状突起112は、キャップ130の円筒部133に対して上側(セプタム101とは反対側)に隣接する。環状突起112の外周面は、円筒部133の外周面と略同一の円筒面を構成する。基部110とは反対側には、テーパ状の外周面を備えたオスルアー120と、オスルアー120と同軸の雌ネジ122とが設けられている。但し、メスコネクタ100の基部110とは反対側の部分の構成は、これに限定されず、任意である。
【0046】
図7A及び
図7Bに示すように、オスコネクタ1にメスコネクタ100を対向させる。図示していないが、オスコネクタ1の接続筒17には、柔軟なチューブが直接的にまたは間接的に接続されており、メスコネクタ100のオスルアー120にも柔軟なチューブが直接的にまたは間接的に接続されている。オスコネクタ1は、
図1A及び
図1Bに示した初期状態にある。そして、メスコネクタ100のキャップ130をオスコネクタ1のフード20内に挿入し、更にメスコネクタ100をオスコネクタ1に向かって押し込む。メスコネクタ100は、シールド60の凸部64に衝突し、頭部61を下方に移動させる。オス部材11は、シールド60のスリット63を貫通し、更に、セプタム101のスリット102に進入する。これと並行して、キャップ130の天板131の外周端縁131aが、ロックレバー30の爪35の傾斜面35aに当接する。外周端縁131aは、傾斜面35a上を摺動しながら、爪35がオスルアー10から離れる向き(
図3Bの矢印Aの向き)にロックレバー30を弾性的に曲げ変形させる。爪35は、キャップ130の円筒部133及び環状突起112上を順に摺動する。爪35が環状突起112を通過し終えると、ロックレバー30が弾性回復し、爪35は環状突起112に係合する。
【0047】
図8Aは、メスコネクタ100に接続されたオスコネクタ1を示した斜視図である。
図8Bは、
図8Aの断面図である。オス部材11は、シールド60のスリット63、及び、セプタム101のスリット102を順に貫通している。セプタム101は、オス部材11によって基部110の内腔111側へ大きく変形されている。オス部材11の横孔13は、内腔111内に露出している。オス部材11の流路12とメスコネクタ100の内腔111とが連通している。シールド60は、上下方向の圧縮力を受け、その上下方向寸法が縮小するように、特に周壁65が圧縮変形されている。ロックレバー30は、初期状態と実質的に同じ状態に回復している。ロックレバー30の爪35は、メスコネクタ100の環状突起112に係合している(ロック状態)。
【0048】
オスコネクタ1からメスコネクタ100を分離するためには、
図9A及び
図9Bに示すようにスライダ40を上方に移動させる。
図9A及び
図9Bに示すスライダ40の位置を「第2位置」という。
図8A及び
図8Bと比較すれば理解できるように、スライダ40が第2位置へ移動する過程で、スライダ40に設けられた傾斜面43aが、ロックレバー30のスロット32の上端32aに衝突する。傾斜面43aは、上端32a上を上方に向かって摺動しながら、上端32aを半径方向外向きに移動させる。ロックレバー30(特にその弾性部33、
図3A及び
図3B参照)が弾性的に曲げ変形し、爪35が半径方向外向きに移動する。スライダ40が第2位置に到達すると、環状突起112に対する爪35の係合が解除される(非ロック状態)。この状態で、オスコネクタ1とメスコネクタ100とを互いに離れる向きに引っ張れば、メスコネクタ100をオスコネクタ1から分離することができる。セプタム101は、オス部材11が抜き去られると直ちに弾性回復し、スリット102は液密に閉じられる。シールド60は自身の弾性回復力によって伸張する。スリット63は、オス部材11が引き抜かれると直ちに液密に閉じられる。その後、スライダ40を第1位置に戻す。ロックレバー30は弾性回復する。オスコネクタ1は初期状態(
図1A、
図1B、
図7A、及び
図7B参照)に戻る。
【0049】
以上のように、本実施形態のオスコネクタ1は、爪35が設けられたロックレバー30を備える。爪35は、オス部材11が挿入された状態のメスコネクタ100に係合可能である。爪35を備えたロックレバー30は、オスコネクタ1にメスコネクタ100が接続された状態を維持するためのレバーロック式ロック機構として機能する。爪35がメスコネクタ100に係合したロック状態(
図8A及び
図8B参照)では、オスコネクタ1とメスコネクタ100とに、これらを引き離す向きの力が加えられても、メスコネクタ100をオスコネクタ1から分離させることはできない。
【0050】
オスコネクタ1は、第1位置と第2位置との間でオス部材11の長手方向と平行な方向に移動するスライダ40を備える。スライダ40の第1位置と第2位置との間での移動に連動して、爪35が半径方向に移動する。スライダ40が第1位置にあるとき、爪35はオス部材11が挿入されたメスコネクタ100に係合し、ロック機構はロック状態になる(
図8A及び
図8B参照)。スライダ40を第2位置に移動させると、メスコネクタ100に対する爪35の係合が解除され、ロック機構はロック状態が解除された非ロック状態になる(
図9A及び
図9B参照)。非ロック状態では、オスコネクタ1からメスコネクタ100を分離可能である。
【0051】
上述した特許文献1のレバーロック式オスコネクタでは、操作レバーを半径方向内向きに押すことによりロック状態を解除することができる。このため、オスコネクタが周囲の物体に衝突したり患者の下敷きになったりすることによって操作レバーが押されてしまうと、意図せずにロック状態が解除されてしまうという課題があった。
【0052】
これに対して、本実施形態のオスコネクタ1では、ロック状態を解除するためには、スライダ40を第1位置から第2位置へ、オス部材11の長手方向に沿って移動させる必要がある。メスコネクタ100が接続され且つロック状態にあるオスコネクタ1(
図8A及び
図8B参照)が、周囲の物体に衝突したり患者の下敷きになったりしても、スライダ40に第1位置から第2位置へ移動させる向きの力が加えられる可能性は極めて低い。このため、ロック状態が意図せずに解除されて、メスコネクタ100がオスコネクタ1から分離してしまうという事故が起こる可能性は低い。オスコネクタ1及びメスコネクタ100によって構成された液体の流路が意図せずに切断される可能性が低く、オスコネクタ1は、安全性に優れている。
【0053】
スライダ40と爪35との連動は、ロックレバー30のスロット上端32aがスライダ40の傾斜面43a上を摺動することによって起こる。簡単な構成で、スライダ40の上下方向の移動が、爪35(またはロックレバー30)の半径方向の移動に変換される。
【0054】
メスコネクタ100がオスコネクタ1から分離され、且つ、スライダ40が第1位置にある状態(即ち、初期状態、
図1A、
図1B、
図7A、及び
図7B参照)では、ロックレバー30は実質的に曲げ変形していない。このため、オスコネクタ1を使用せずに長期間保管する場合には、スライダ40を第1位置にすることが好ましい。これは、ロックレバー30が曲げ変形した状態が長期間継続することによってロックレバー30の回復力が低下し、爪35がメスコネクタ100に係合しないという問題が生じるのを回避するのに有利である。
【0055】
スライダ40は、ロックレバー30に対して半径方向外側に配置され、ロックレバー30の少なくとも一部を覆っている。このため、作業者や患者がロックレバー30に触れるのは困難である。これは、例えば患者が、ロック状態(
図8A及び
図8B参照)において、ロックレバー30を誤って半径方向外向き引き出してロック状態を解除してしまうという事故が起こる可能性を低減するのに有利である。
【0056】
スライダ40は、ロックレバー30に、半径方向に接近して配置することができる。このため、スライダ40を設けたことによるオスコネクタ1の半径方向寸法の増加はわずかである。上述した特許文献1のオスコネクタは、ロックレバーから突出した操作レバーが周囲の物体や患者の衣類に引っかかるなどの課題を有している。これに対して、本実施形態のスライダ40は、その外周面がなめらかな凸曲面(略円筒面)であるので、特許文献1のオスコネクタの上記の課題が解消される。
【0057】
スライダ40は、フード20の開口22の端縁とロックレバー30との間の隙間の少なくとも一部を塞ぐ。このため、開口22を介して作業者の指などがシールド60のに触れる可能性が低減する。これは、メスコネクタ100を分離後にシールド60の凸部64等に付着しているかもしれない薬液や血液などから作業者を隔離するのに有利である。
【0058】
スライダ40は、第1位置と前記第2位置との間を案内面26に沿って移動する。案内面26は、オス部材11に対して不動に設けられている。これは、スライダ40を第1位置から第2位置へ移動させたときにメスコネクタ100に対する爪35の係合を確実に解除するのに有利である。
【0059】
フード20は、メスコネクタ100を水平方向に位置決めすることができるように構成されている。これは、爪35をメスコネクタ100に安定的に係合させるのに有利である。
【0060】
フード20は、周方向に連続した筒形状を有し、オス部材11を取り囲む。これは、フード20の強度の向上に有利である。例えば、メスコネクタ100を水平方向に位置決めする精度が向上するので、爪35をメスコネクタ100に安定的に係合させることが可能になる。また、スライダ40が摺動する案内面26の精度が向上するので、スライダ40を第1位置から第2位置へ移動させたときにメスコネクタ100に対する爪35の係合を確実に解除することが可能になる。また、オス部材11を取り囲む筒形状のフード20は、作業者がシールド60に触れるのを困難にする。これは、メスコネクタ100を分離後にシールド60等に付着しているかもしれない薬液や血液などから作業者を隔離するのに有利である。
【0061】
上記の実施形態は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0062】
上記の実施形態のオスコネクタ1は、ただ1つのロックレバー30を備えていたが、本発明のオスコネクタは、複数のロックレバー30を備えていてもよい。この場合、各ロックレバー30に対してスライダ40が設けられる。例えば、2つのロックレバー30をオス部材11に対して対称に配置してよい。2つのロックレバー30に対応する2つのスライダ40は、独立して移動するように構成してもよく、あるいは、2つのスライダ40を連結して一体的に移動するように構成してもよい。
【0063】
スライダ40が第1位置から第2位置へ移動する過程でロックレバー30を変形させるための機構は、上記の実施形態に限定されず、適宜変更しうる。例えば、スライダ40の傾斜面43aを省略し、この代わりにロックレバー30に、第1位置から第2位置に向かってオス部材11に近づくように傾斜(または湾曲)した傾斜面を設けてもよい。スライダ40が、第1位置から第2位置へ移動する過程で、この摺動面上を摺動することにより、上記の実施形態と同様にロックレバー30を曲げ変形させることができる。
【0064】
スライダ40が、本体10に対して着脱可能であってもよい。例えば、本発明のオスコネクタは、スライダ40を基台18を越えて下方に移動させると、スライダ40を本体10から分離できるように構成されていてもよい。ロックレバー30によるロック状態を解除するときのみスライダ40を本体10に装着し、それ以外はスライダ40を本体10から取り外す。これは、第1位置にあるスライダ40が意図せずに第2位置に移動してロック状態が解除されてしまうという事故を防止するのに有利である。
【0065】
上記の実施形態では、第2位置は第1位置よりも上側(オス部材11の先端側)に配置されていたが、これとは逆に、第2位置が第1位置より下側に配置されていてもよい。
【0066】
ロックレバー30の形状は、オス部材11と略平行に延びた細長い薄板形状に限定されない。例えば、ロックレバー30は、基台18に接続された固定端から半径方向外向きに延び、その後、上方に向かって略直角に折れ曲がった、略「L」字形状の側面視形状を有していてもよい。
【0067】
ロックレバー30はフード20の開口22内に配置されていなくてもよい。例えば、ロックレバー30をフード20よりも半径方向外側に、フード20から離間して設けてもよい。ロックレバー30の爪35は、フード20に形成した小さな開口を介して、または、フード20の上端よりも上側においてメスコネクタ100に係合させることができる。
【0068】
上記の実施形態のオスコネクタ1は、オス部材11を取り囲む中空筒状のフード20を備えていたが、フード20の構成は上記の実施形態に限定されない。例えば、フードは、周方向に環状に連続している必要はなく、例えばオス部材11と平行に延びた複数の板状体(または棒状体)であってもよい。複数の板状体の少なくとも一つに、スライダ40が摺動する案内面26を設けることができる。
【0069】
本発明ではフード20を省略してもよい。メスコネクタ100はオス部材11が挿入されることによって水平方向に概略位置決めされるから、ロックレバー30の爪35をメスコネクタ100に係合させることができる。メスコネクタ100の外周面を、スライダ40が摺動する案内面として利用することができる。爪35がメスコネクタ100に係合した状態で、スライダ40を、メスコネクタ100の外周面上を摺動させながら第1位置から第2位置へ移動させる。スライダ40は、爪35が半径方向外向きに移動するようにロックレバー30を曲げ変形させることができる。
【0070】
ロックレバー30の爪35が係合するメスコネクタ100の部分は、メスコネクタ100の構成に応じて適宜変更してよい。メスコネクタ100に係合する部分に応じて、爪35の形状や位置を変更することができる。
【0071】
オス部材11の横孔13は、上記の実施形態では半径方向に沿って延びていたが、本発明はこれに限定されず、オス部材11の中心軸1aに対して直角以外の任意の角度で交差する直線に沿って延びていてもよい。横孔13を省略し、流路12がオス部材11の先端から上方に向かって開口していてもよい。
【0072】
シールド60の構成は任意に変更しうる。自閉式のスリット63を省略し、内腔62が頭部61を上下方向に貫通していてもよい。本発明のオスコネクタは、シールド60を有していなくてもよい。
【0073】
本発明のオスコネクタが接続されるメスコネクタは、上記の実施形態に限定されない。メスコネクタが、柔軟なチューブの途中に設けられた混注ポートであってもよい。メスコネクタは、セプタム101を備えていなくてもよい。例えばメスコネクタが、バイアル瓶の口や各種容器のポートのように、ゴム栓を備えていてもよい。この場合、オス部材11は、ゴム栓に穿刺可能なように、鋭利な先端を有する穿刺針に変更される。また、ロックレバー30の爪35は、ゴム栓を取り囲む拡径したフランジに係合するように変更される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の利用分野は特に制限はないが、メスコネクタに対して接続及び分離されるオスコネクタとして広範囲に利用することができる。本発明のオスコネクタは、メスコネクタが意図せずに分離してしまう可能性が低減されている。このため、本発明は、液体が流れる流路の突然の切断や、これによる液体の外界への漏出の防止に有利である。このような観点から、本発明は、例えば輸液、輸血、人工透析などの流路を構成するために好ましく利用することができる。また、本発明は、作業者が被爆するのを防止する必要がある液体(例えば、抗がん剤のような危険な薬液や血液など)が流れる流路を構成するために好ましく利用することができる。本発明は、医療分野で好ましく利用されるが、医療用以外の食品や化学などの液体を取り扱う各種分野においても利用することもできる。
【符号の説明】
【0075】
1 レバーロック式オスコネクタ(オスコネクタ)
10 オスコネクタ本体(本体)
11 オス部材
20 フード
22 開口(隙間)
26 案内面
30 ロックレバー
35 爪
40 スライダ
43a 傾斜面
60 シールド
100 メスコネクタ