(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ電極及びこれを用いた蓄電デバイス並びにカーボンナノチューブ複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20221025BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20221025BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20221025BHJP
C01B 32/16 20170101ALI20221025BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20221025BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20221025BHJP
H01G 11/06 20130101ALN20221025BHJP
【FI】
H01M4/587
H01G11/36
H01G11/86
C01B32/16
H01M4/133
H01M4/1393
H01G11/06
(21)【出願番号】P 2018130673
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 智也
(72)【発明者】
【氏名】謝 剛
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-534231(JP,A)
【文献】特開2005-268263(JP,A)
【文献】特開2007-035811(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0028069(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01G 11/36
H01G 11/86
C01B 32/16
H01G 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する導電性金属で構成された導電性基材と、
導電性基材に設けられた種触媒粒子から成長させた多層カーボンナノチューブと、
を含み、
前記多層カーボンナノチューブは、
前記多層カーボンナノチューブの軸心方向に沿って延びる、同心円状に配置された複数のチューブ状のグラフェンシートを含む主体部と、
前記主体部の外側に重なる前記チューブ状のグラフェンシートとは物性の異なるグラフェンシートを複数含み、前記グラフェンシートの炭素環が欠損した部分である炭素環欠損部が前記主体部に比べて多い表層部と、
を含む、
カーボンナノチューブ電極。
【請求項2】
請求項
1に記載のカーボンナノチューブ電極において、
前記表層部の電子回折像は、前記主体部の電子回折像の炭素002面による回折スポットの形状に比べて伸びた形状の炭素002面による回折スポットを含む、カーボンナノチューブ電極。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカーボンナノチューブ電極において、
前記表層部の厚さは、前記主体部の厚さに対して、2.5倍以上である、
カーボンナノチューブ電極。
【請求項4】
正極と、
カーボンナノチューブ電極からなる負極と、
電解質と、
を含み、
前記カーボンナノチューブ電極は、
導電性を有する導電性金属で構成された導電性基材と、
導電性基材に設けられた種触媒粒子から成長させた多層カーボンナノチューブと、
を含み、
前記多層カーボンナノチューブは、
前記多層カーボンナノチューブの軸心方向に沿って延びる、同心円状に配置された複数のチューブ状のグラフェンシートを含む主体部と、
前記主体部の外側に重なる前記チューブ状のグラフェンシートとは物性の異なるグラフェンシートを複数含み、前記グラフェンシートの炭素環が欠損した部分である炭素環欠損部が前記主体部に比べて多い表層部と、
を含む、
蓄電デバイス。
【請求項5】
導電性を有する導電性金属で構成された導電性基材上に多層カーボンナノチューブを形成するための種触媒粒子で構成された触媒層を形成する積層体形成工程と、
前記触媒層上に前記多層カーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ層形成工程と、
を有し、
前記カーボンナノチューブ層形成工程は、
チャンバー内に積層体を入れて、前記チャンバー内の前記積層体の温度が、450℃以上550℃以下の温度範囲から選ばれた第1温度範囲であるとき
、炭素原料ガスのガス流量を第1所定ガス流量で前記チャンバー内に導入した後、前記炭素原料ガスのガス流量を第1所定ガス流量にした状態で、800℃以上850℃以下の範囲から選ばれた多層カーボンナノチューブ合成温度範囲まで昇温することにより、前記種触媒粒子の表面の一部に前記多層カーボンナノチューブの成長の起点となる前駆体を形成する前駆体成長工程を含む前駆体形成工程と、
前記前駆体形成工程の後、前記積層体の温度が、前記多層カーボンナノチューブ合成温度範囲であるとき、前記炭素原料ガスのガス流量を、第2所定ガス流量にして、前記前駆体を起点として前記多層カーボンナノチューブを成長させるカーボンナノチューブ成長工程であって、前記第2所定ガス流量は、前記第1所定ガス流量の1.8倍以上15.0倍以下である前記カーボンナノチューブ成長工程と、
を含む、
カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のカーボンナノチューブ複合体の製造方法において、
前記前駆体形成工程は、
前記前駆体成長工程の前に、前記積層体を加熱することにより、前記チャンバー内の前記積層体の温度を前記第1温度範囲で保持する種触媒粒子の加熱工程を更に含む、
カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ電極及びこれを用いた蓄電デバイス並びにカーボンナノチューブ複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、従来のグラファイトやダイヤモンド等の材料にない特異な性質から、種々の技術分野に利用することが検討されている。例えば、カーボンナノチューブを、蓄電デバイスの電極材料に利用することが検討されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2は、多層カーボンナノチューブの表面にアモルファスカーボンからなる無定形炭素からなる被覆層を有する電極材料(負極材料)を開示している。非特許文献1は、多層カーボンナノチューブの表面に結晶性の低いカーボンからなる層を有する電極材料を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-303613号公報
【文献】特開2014-231446号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】“In Situ Transmission Electron Microscopy Study of Electrochemical Sodiation and Potassiation of Carbon Nanofibers” Nano letter 2014, 14, 3445-3452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アモルファスカーボンは、リチウムイオンを挿入できるサイトに限界があるので(単位体積当たりのエネルギー密度が低いので)、負極容量の向上に限界がある。非特許文献1の技術は、気相流動法によって多層カーボンナノチューブを合成しているので、基板に直接多層カーボンナノチューブを成長させることができない。従って、非特許文献1の技術では、電極の構成にバインダが必要となるため、その分、抵抗が高くなってしまう。また、単位重量当たりの負極容量が減少してしまう。
【0007】
本発明は上述した課題に対処するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、負極容量を向上することができるカーボンナノチューブ電極(以下、「本発明カーボンナノチューブ電極」と称呼される場合がある。)及びこれを用いた蓄電デバイス(以下、「本発明蓄電デバイス」と称呼される場合がある。)並びにカーボンナノチューブ複合体の製造方法(以下、「本発明カーボンナノチューブ複合体の製造方法」と称呼される場合がある。)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、
本発明カーボンナノチューブ電極は、
導電性を有する導電性金属で構成された導電性基材と、
導電性基材に設けられた種触媒粒子から成長させた多層カーボンナノチューブと、
を含み、
前記多層カーボンナノチューブは、
前記多層カーボンナノチューブの軸心方向に沿って延びる、同心円状に配置された複数のチューブ状のグラフェンシートを含む主体部と、
前記主体部の外側に重なる前記チューブ状のグラフェンシートとは物性の異なるグラフェンシートを複数含み、前記グラフェンシートの炭素環が欠損した部分である炭素環欠損部が前記主体部に比べて多い表層部と、
を含む。
【0009】
本発明カーボンナノチューブ電極の一態様において、
前記表層部の電子回折像は、前記主体部の電子回折像の炭素002面による回折スポットの形状に比べて伸びた形状の炭素002面による回折スポットを含む。
【0010】
本発明カーボンナノチューブ電極の一態様において、
前記表層部の厚さは、前記主体部の厚さに対して、2.5倍以上である。
【0011】
本発明蓄電デバイスは、
正極と、
カーボンナノチューブ電極からなる負極と、
電解質と、
を含み、
前記カーボンナノチューブ電極は、
導電性を有する導電性金属で構成された導電性基材と、
導電性基材に設けられた種触媒粒子から成長させた多層カーボンナノチューブと、
を含み、
前記多層カーボンナノチューブは、
前記多層カーボンナノチューブの軸心方向に沿って延びる、同心円状に配置された複数のチューブ状のグラフェンシートを含む主体部と、
前記主体部の外側に重なる前記チューブ状のグラフェンシートとは物性の異なるグラフェンシートを複数含み、前記グラフェンシートの炭素環が欠損した部分である炭素環欠損部が前記主体部に比べて多い表層部と、
を含む。
【0012】
本発明カーボンナノチューブ複合体の製造方法は、
導電性を有する導電性金属で構成された導電性基材上に多層カーボンナノチューブを形成するための種触媒粒子で構成された触媒層を形成する積層体形成工程と、
前記触媒層上に前記多層カーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ層形成工程と、
を有し、
前記カーボンナノチューブ層形成工程は、
チャンバー内に積層体を入れて、前記チャンバー内の前記積層体の温度が、450℃以上550℃以下の温度範囲から選ばれた第1温度範囲であるとき、前記炭素原料ガスのガス流量を第1所定ガス流量で前記チャンバー内に導入した後、炭素原料ガスのガス流量を第1所定ガス流量にした状態で、800℃以上850℃以下の範囲から選ばれた多層カーボンナノチューブ合成温度範囲まで昇温することにより、前記種触媒粒子の表面の一部に前記多層カーボンナノチューブの成長の起点となる前駆体を形成する前駆体成長工程を含む前駆体形成工程と、
前記前駆体形成工程の後、前記積層体の温度が、前記多層カーボンナノチューブ合成温度範囲であるとき、前記炭素原料ガスのガス流量を、第2所定ガス流量にして、前記前駆体を起点として前記多層カーボンナノチューブを成長させるカーボンナノチューブ成長工程であって、前記第2所定ガス流量は、前記第1所定ガス流量の1.8倍以上15.0倍以下である前記カーボンナノチューブ成長工程と、
を含む。
【0013】
本発明カーボンナノチューブ複合体の製造方法の一態様において、
前記前駆体形成工程は、
前記前駆体成長工程の前に、前記積層体を加熱することにより、前記チャンバー内の前記積層体の温度を前記第1温度範囲で保持する種触媒粒子の加熱工程を更に含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、負極容量を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ電極の構成例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、多層カーボンナノチューブの構成を説明するための模式図及びTEM像である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ複合体の製造方法を説明するための温度プロファイル及びガス流量プロファイルを示すグラフ及び模式図である。
【
図5】
図5は、実施例1の温度プロファイル及びガス流量プロファイルを示すグラフである。
【
図6】
図6は、比較例2の温度プロファイル及びガス流量プロファイルを示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例1の多層カーボンナノチューブの形成状態を観察したときのSEM像及びTEM像を示す写真である。
【
図8】
図8は、実施例2の多層カーボンナノチューブの形成状態を観察したときのSEM像及びTEM像を示す写真である。
【
図9】
図9は、比較例1の多層カーボンナノチューブの形成状態を観察したときのSEM像及びTEM像を示す写真である。
【
図10】
図10は、比較例2の多層カーボンナノチューブの形成状態を観察したときのSEM像及びTEM像を示す写真である。
【
図11】
図11は、実施例1の多層カーボンナノチューブ及び比較例1の多層カーボンナノチューブの形成状態を観察したTEM像及びTEM像を逆フーリエ変換して得たFFT画像(電子回折像)である。
【
図12】
図12は、実施例及び比較例の測定結果(CNT長さ)を、縦軸:CNT長さ、横軸:第1ガス導入温度tg1の座標にプロットしたグラフである。
【
図13】
図13は、実施例及び比較例の測定結果(CNT長さ)を、縦軸:CNT長さ、横軸:第1所定ガス流量M1の座標にプロットしたグラフである。
【
図14】
図14は、実施例及び比較例の測定結果(CNT量)を、縦軸:CNT量、横軸:多層CNT合成温度tg2の座標にプロットしたグラフである。
【
図15】
図15は、実施例及び比較例の測定結果(CNT長さ)を、縦軸:CNT量、横軸:第2所定ガス流量M2の座標にプロットしたグラフである。
【
図16】
図16は、実施例及び比較例の測定結果(容量)を、縦軸:容量、横軸:第2所定ガス流量M2の座標にプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ複合体について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0017】
本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ複合体は、例えば、蓄電デバイス(例えば、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池等)の電極(例えば、負極等)等に好適に用いることができる。なお、カーボンナノチューブ複合体で構成された電極は、「カーボンナノチューブ電極」とも称呼される。
【0018】
<カーボンナノチューブ電極の構成>
図1及び
図2は、カーボンナノチューブ複合体を電極に適用した構成例を示す。
図1に示されるように、電極10は、端子部10aと電極部10bとを有する。端子部10aは、カーボンナノチューブ層14(以下、「CNT層14」と称呼される。)が形成されていない導電性基材11が露出された露出部で構成されており、外部に電流を取り出すために設けられている。
【0019】
電極部10bは、例えば、矩形状の平面形状を有し、カーボンナノチューブ複合体で構成されている。
図2に示されるように、電極部10bを構成するカーボンナノチューブ複合体は、導電性基材11の一主面及び他主面のそれぞれに、触媒層13及びCNT層14を有する。尚、図示は省略するが、カーボンナノチューブ複合体は、導電性基材11の一主面のみに、触媒層13及びCNT層14を有するようにしてもよい。
【0020】
(導電性基材)
導電性基材11は、導電性を有する導電性金属で構成され、例えば、箔状の導電性金属(導電性金属箔)である。導電性金属としては、例えば、リチウムイオンキャパシタの電極(集電体)に好適な銅(Cu)等を用いることが好ましい。
【0021】
(触媒層)
触媒層13は、カーボンナノチューブを形成するための種触媒で構成され、例えば、導電性基材11に担持された、カーボンナノチューブの形成を触媒することが可能な材料(例えば、遷移金属粒子等)で構成されている。触媒層13を構成する材料としては、例えば、鉄(Fe)又は鉄-チタン合金(FeTi)粒子等のFe系種触媒粒子、コバルト(Co)粒子、ニッケル(Ni)粒子等の種触媒粒子を用いることができる。
【0022】
種触媒粒子は、典型的には、一次粒子径がナノサイズの粒子(ナノ粒子)が使用され得る。ナノサイズとは、典型的には、数nm以上数十nm以下程度の大きさのことをいう。ナノサイズの大きさを有する材料を、例えばナノ粒子というように、接頭辞「ナノ」を付して称する。種触媒粒子の一次粒子の平均粒子径は、カーボンナノチューブの成長性がより優れている観点から、20nm以下であることが好ましい。
【0023】
CNT層14は、触媒層13に形成された多層カーボンナノチューブ24で構成されている。具体的に述べると、
図3に示されるように、CNT層14は、導電性基材11に担持された種触媒粒子23(触媒層13)から成長した配向性を有する、多層カーボンナノチューブ24で構成されている。
【0024】
多層カーボンナノチューブ24は、主体部24aと、主体部24aの外側に重なる表層部24bとを含む。主体部24aは、複数のチューブ状の結晶性の高いグラフェンシート(ブロックR1に示されたTEM像の黒い部分)が同心円状に配置された(重ねられた)構成を有する。
【0025】
表層部24bは、主体部24aを覆うように主体部24aの外側に配置されている(重ねられている)。表層部24bは、主体部24aを構成する複数のチューブ状のグラフェンシートとは物性の異なる複数のグラフェンシートで構成されている。表層部24bは、グラフェンシートの炭素環(1又は複数の炭素環)が欠損している炭素環の欠損部分(「炭素環欠損部」とも称呼される。)を主体部24aに比べて多く含む。
【0026】
グラフェンシートとは、少なくともグラフェンを含む炭素原子からなる層(単層)である。グラフェンは、6角形の格子状に並んだ炭素原子の層(炭素6員環の層(1原子の厚さの層))である。グラフェンシートは、5角形に並んだ炭素原子(炭素5員環)及び7角形に並んだ炭素原子(炭素7員環)の少なくとも何れかを含んでいてもよい。更に、グラフェンシートは、炭素環が欠損している炭素環の欠損部分を含んでいてもよい。
【0027】
表層部24bを構成する複数のグラフェンシートは、例えば、小片状のグラフェンシート(例えば、炭素環の欠損部分を含み、チューブ状のグラフェンシートが多数に分断されたグラフェンシート)が複数積層された積層体(以下、「小片状グラフェンシート積層体」とも称呼される。)、及び、炭素環の欠損部分が主体部24aのグラフェンシートより多く含まれるチューブ状のグラフェンシートの少なくとも何れかを含む集合体である。なお、主体部24aを構成するチューブ状のグラフェンシートは、炭素環の欠損部分が実質的に存在しないか、或いは、存在しても、炭素環の欠損部分は、非常に少ないと考えられる。
【0028】
なお、主体部24aと表層部24bとの違いは、TEMによる観察による外観上の違い、及び、TEM像を逆フーリエ変換して得たFFT画像(電子回折像)により確認することができる(
図11を参照。)。
【0029】
即ち、ブロックR1に示される主体部24aのTEM像では、複数のグラフェンシート(黒色部分)が、矢印G1の示す方向(多層カーボンナノチューブの軸心方向)に沿って延びている(軸心方向に沿って配向している)と共に、矢印G2の示す方向(径方向)に重なっている。
【0030】
これに対して、表層部24bのTEM像では、断続的に存在する複数のグラフェンシート(黒色部分)が、主体部24aの外側に重なっている。断続的に存在する複数のグラフェンシート(黒い部分)は矢印G1の示す方向(軸心方向)に沿って延びるものもあるが、矢印G1の示す方向(軸心方向)に沿わないで延びるものも多くある。従って、複数のグラフェンシート(黒色部分)の配向性は主体部24aの複数のグラフェンシートより低いことが考えられる。
【0031】
また、複数のグラフェンシートを分断する白い部分(軸心方向に沿わない白い部分)の多くは、グラフェンシートの炭素環の欠損部分であると考えられる。従って、表層部24bは、主体部24aに比べて、炭素環の欠損部分が多く存在する傾向にあるといえる。更に、複数のグラフェンシートを分断する白い部分(軸方向に沿わない白い部分)は、小片状のグラフェンシートと小片状のグラフェンシートとの間の隙間も含まれると考えられる。なお、矢印G1の示す方向に延びる白い部分は、グラフェンシートの炭素環面(炭素002面)と炭素環面(炭素の002面)との間の部分(グラフェンシートの層間)であると考えられる。
【0032】
表層部24bを構成する複数のグラフェンシートのFFT画像は、炭素の002面による回折スポットS1a及びS1b(
図11の実施例1を参照。)が、主体部24aを構成する複数のグラフェンシートの炭素の002面による回折スポットS2a及びS2b並びにS3a及びS3b(
図11の比較例1を参照。)に比べて、伸びた形状になる。
【0033】
なお、表層部24bを構成する複数のグラフェンシートのFFT画像は、アモルファス状態のときに現れるハローパターンではない。換言すると、表層部24bを構成する複数のグラフェンシートは、アモルファスカーボンより結晶性が高く、主体部24aを構成する複数のグラフェンシートより結晶性が低いと考えられる。
【0034】
表層部24bは、炭素環の欠損部分からリチウムイオンを吸蔵できるので、表層部24bを構成する複数のグラフェンシートの層間にリチウムイオンが入りやすい。これに対して、主体部24aは、主体部24aを構成する複数のグラフェンシートの層間の入り口は、主に軸心方向の端部となるので、複数のグラフェンシートの層間にリチウムイオンが入りにくい。従って、表層部24bは、主体部24aに比べて、リチウムイオンの吸蔵サイトを増大できると考えられる。これにより、負極容量を向上できる。
【0035】
更に、表層部24bを構成する複数のグラフェンシートが、主体部24aに比べて配向性の低い構造をとることにより、主体部24aに比べて、リチウムイオンの吸蔵サイトを増大できると考えられる。これにより、更に、負極容量を向上できる。
【0036】
更に、表層部24bに含まれる小片状のグラフェンシートと小片状のグラフェンシートとの間の隙間も、リチウムイオンの吸蔵サイトとなり得ると考えられる。これにより、更に、負極容量を向上できる。
【0037】
表層部24bの厚さは、より容量を向上できる観点から、主体部24aの厚さに対して2.5倍以上であることが好ましく、製造過程の表層部の成長率も考慮すると、2.5倍以上13倍以下であることがより好ましい。なお、表層部24bの厚さは、主体部24a(多層カーボンナノチューブ)の軸心方向(矢印G1の示す方向)に対して垂直な径方向に沿った厚さである。
【0038】
<カーボンナノチューブ複合体の製造方法の概要>
次に、上述した本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ複合体(電極部10b)の製造方法の概要について説明する。上述したカーボンナノチューブ複合体は、例えば以下のように製造する。即ち、まず、導電性基材11を用意する。
【0039】
次に、導電性基材11の一主面及び他主面のそれぞれに、触媒層13を形成することによって、導電性基材11の一主面及び他主面のそれぞれに、触媒層13を形成した積層体を得る。
【0040】
次に、この積層体の触媒層13に多層カーボンナノチューブ24を、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法にて形成するカーボンナノチューブ層形成工程(以下、「CNT層形成工程」と称呼される。)を行う。これにより、
図1及び
図2に示されたカーボンナノチューブ複合体(電極部10b)を得ることができる。
【0041】
尚、詳細は後述するが、このCNT層形成工程は、種触媒粒子23の表面の一部に多層カーボンナノチューブ24の成長の起点となる前駆体を形成する前駆体形成工程と、当該前駆体を起点として、多層カーボンナノチューブ24を成長させる多層カーボンナノチューブ成長工程(以下、「多層CNT成長工程」と称呼される。)と、に大別される。
【0042】
(前駆体形成工程)
前駆体形成工程は、種触媒粒子23の加熱工程と、前駆体成長工程とに大別される。
【0043】
(種触媒粒子の加熱工程)
種触媒粒子23の加熱工程は、積層体の温度が第1温度範囲内になった状態で、所定時間保持する工程である。種触媒粒子23を第1温度範囲内で加熱することによって、種触媒粒子23を活性化させる(反応性を高める)と共に種触媒粒子23の凝集をある程度促進させることにより、種触媒粒子23の大きさを、多層カーボンナノチューブ24を成長させるのに適切な大きさまで増加させる。
【0044】
なお、第1温度範囲内であれば、所定保持温度で一定に保持することに限られず、所定保持温度から昇温又は降温を行ってもよく、昇温又は降温を行った後、更に、一定温度で保持、昇温、及び、降温の少なくとも一つを、1回以上行ってもよい。
【0045】
第1温度範囲は、450℃以上550℃以下から選ばれた温度範囲である。第1温度範囲の下限が、450℃より小さい場合、触媒の反応性が低くなるので、前駆体の成長性が低下してしまうことにより、多層カーボンナノチューブ24の成長性が低下してしまう。第1温度範囲の上限が、550℃より大きい場合、種触媒粒子23が凝集しすぎてしまうことにより、前駆体の成長性が低下してしまうことによって、多層カーボンナノチューブ24の成長性が低下してしまう。
【0046】
(前駆体成長工程)
前駆体成長工程は、種触媒粒子23の表面の一部に多層カーボンナノチューブ24の成長の起点となる前駆体を形成する工程である。ここで、前駆体とは、多層カーボンナノチューブ24が合成される前段階の物質、あるいは多層カーボンナノチューブ24が合成された初期段階の物質(なお、この物質は表層部24bが形成されていなくてもよい。)のことである。
【0047】
前駆体成長工程では、炭素原料ガスを含む雰囲気下で積層体に対して加熱処理を行い、積層体の温度が第1温度範囲であるとき炭素原料ガスのガス流量を第1所定ガス流量にする。そして、第1温度範囲から多層カーボンナノチューブ合成温度範囲(以下、「多層CNT合成温度範囲」と称呼される。)まで加熱する(昇温させる)間、炭素原料ガスのガス流量を第1所定ガス流量にする。これにより、種触媒粒子23の表面の一部に多層カーボンナノチューブ24の成長の起点となる前駆体を形成する。
【0048】
第1所定ガス流量は、多層カーボンナノチューブ24の成長に適切な(必要な)前駆体を形成できる程度の量(後述の第2所定ガス流量に比べて少量)である。具体的に述べると、第1所定ガス流量としては、第2所定ガス流量の1/15倍(≒0.067倍)以上1/1.8倍(≒0.56倍)以下であることが好ましい(換言すると、第2所定ガス流量としては、第1所定ガス流量の1.8倍以上15.0倍以下であることが好ましい。)。
【0049】
第1所定ガス流量が第2所定ガス流量の1/15倍より少ない場合(換言すると、第2所定ガス流量が第1所定ガス流量の15.0倍より多い場合)、炭素原料ガスが少ないことにより、前駆体の成長性が低下してしまうことにより、多層カーボンナノチューブ24の成長性が低下してしまう可能性がある。
【0050】
第1所定ガス流量が第2所定ガス流量の1/1.8倍より多い場合(換言すると、第2所定ガス流量が第1所定ガス流量の15.0倍より少ない場合)、昇温初期(例えば、600℃以下)に、炭素原料ガスの分解が過剰になることにより、過剰なアモルファスカーボン(スス)が種触媒粒子23の表面に堆積してしまう可能性がある。これにより、前駆体の成長性が低下してしまうことにより、多層カーボンナノチューブ24の成長性が低下してしまう可能性がある。
【0051】
即ち、種触媒粒子23の内部への拡散速度(拡散係数)は、温度が高い程大きく、温度が低い程小さくなる傾向にある。従って、カーボンナノチューブの合成温度(600℃)より低い温度範囲では、炭素が種触媒粒子23内に拡散しにくくなり、過剰な炭素が種触媒粒子23の表面に堆積しやすくなってしまう。
【0052】
このため、カーボンナノチューブの合成温度より低い温度範囲内において、比較的多いガス流量にて、炭素原料ガスをチャンバー内に導入してしまうと、次の問題が生じる。
【0053】
即ち、過剰な炭素(スス)が種触媒粒子23の表面に堆積してしまうことによって、種触媒粒子23の表面が厚いアモルファスカーボンで覆われてしまう。このような状態になると、炭素原料ガスが種触媒粒子23の表面に触れなくなることによって触媒の失活を招き、その結果、カーボンナノチューブの成長性が著しく低下してしまう。このため、多層カーボンナノチューブ24の成長に適切な前駆体(更に、これを起点として成長する多層カーボンナノチューブ24)を形成できなくなってしまう。
【0054】
典型的な炭素原料ガスの第1所定ガス流量としては、例えば、0.2SLM以上0.5SLM以下である。
【0055】
(多層CNT成長工程)
多層CNT成長工程は、前駆体を起点として多層カーボンナノチューブ24を成長させる工程である。
【0056】
多層CNT成長工程では、積層体の温度が多層CNT合成温度範囲になったときに、炭素原料ガスのガス流量を、第1所定ガス流量から第2所定ガス流量に変更する。そして、積層体の温度が多層CNT合成温度範囲であるときに、炭素原料ガスのガス流量を、第2所定ガス流量とする。これにより、前駆体を起点として多層カーボンナノチューブ24を成長させる。
【0057】
なお、多層CNT合成温度範囲内であれば、所定保持温度で一定に保持することに限られず、所定保持温度から昇温又は降温を行ってもよく、昇温又は降温を行った後、更に、一定温度で保持、昇温、及び、降温の少なくとも一つを、1回以上行ってもよい。
【0058】
多層CNT合成温度範囲は、800℃以上850℃以下から選ばれた温度範囲である。多層CNT合成温度範囲の下限が、800℃より小さい場合、多層カーボンナノチューブ24の成長反応の反応性が低下してしまうことにより、多層カーボンナノチューブ24の成長性が低下してしまう。
【0059】
多層CNT合成温度範囲の上限が、850℃より大きい場合、炭素原料ガスの分解が過剰になることにより、過剰なアモルファスカーボン(スス)が種触媒粒子23の表面に堆積してしまう。これにより、前駆体の成長性が低下してしまうことにより、多層カーボンナノチューブ24の成長性が低下してしまう。
【0060】
第2所定ガス流量としては、第1所定ガス流量の1.8倍以上15.0倍以下であることが好ましい。第2所定ガス流量が第1所定ガス流量の1.8倍より少ない場合、炭素原料ガスが少ないことにより、多層カーボンナノチューブ24の成長性が低下してしまう可能性がある。
【0061】
第2所定ガス流量が第1所定ガス流量の15.0倍より多い場合、炭素原料ガスの分解が過剰になることにより、過剰なアモルファスカーボン(スス)が種触媒粒子23の表面に堆積してしまうことによって、多層カーボンナノチューブ24の成長性が低下してしまう可能性がある。
【0062】
典型的な第2所定ガス流量としては、例えば、0.9SLM以上3.0SLM以下である。
【0063】
<カーボンナノチューブ複合体の製造方法の詳細な説明>
以下、カーボンナノチューブ複合体の製造方法の各工程の詳細について説明する。以下では、導電性基材11として銅箔を用いた例について説明する。
【0064】
(触媒層形成工程)
まず、例えば、導電性基材11として、矩形の一辺の一部から延びた部分(凸部)を有する銅箔を用意する。次に、銅箔(導電性基材11)上に、例えば、ディップコーティング法によって、多層カーボンナノチューブを形成させるための種触媒粒子23を担持することにより、触媒層13を形成する。
【0065】
具体的に述べると、まず、種触媒粒子23を含む触媒混合液を、用意する。次に、ディップコーター(ディップコーティング装置)を用いて、銅箔を、触媒混合液に浸漬し、その後、銅箔を、一定の速度で触媒混合液から引き上げる。これにより、銅箔上に種触媒粒子23が担持され、銅箔の一主面及び他主面のそれぞれに種触媒粒子23が担持された積層体を得る。
【0066】
(CNT層形成工程)
次に、積層体をCVD装置(CVD炉)のチャンバー内に投入し、チャンバー内に投入されている積層体に対して、CVD法(例えば、熱CVD法等)により、触媒層13表面に多層カーボンナノチューブ24を生成する。即ち、チャンバー内に積層体を入れて、チャンバー内に炭素原料ガスを導入するとともに積層体を多層CNT合成温度まで加熱することにより、触媒層13表面に多層カーボンナノチューブ24を生成する。
【0067】
図4に示されるように、CNT層形成工程は、前駆体形成工程と、多層CNT成長工程とに大別され、前駆体形成工程と、多層CNT成長工程とをこの順で行うことにより、触媒層13上に、CNT層14を形成する。
【0068】
(前駆体形成工程)
(種触媒粒子の加熱工程))
まず、積層体を、例えば、CVD装置のチャンバー内に投入する。次に、チャンバー内にキャリアガス(窒素ガス等の不活性ガス)を導入して、窒素ガス雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で、チャンバー内の雰囲気を加熱することにより、積層体の温度(表面温度)を室温から第1ガス導入温度tg1まで昇温させる。そして、第1ガス導入温度tg1にて、所定時間保持させる。第1ガス導入温度tg1は、450℃以上550℃以下から選ばれる温度(例えば、tg1=500℃)である。
【0069】
(前駆体成長工程)
所定時間保持後、チャンバー内にキャリアガスと反応ガス(アセチレン(C2H2)ガス等の炭化水素ガス等の炭素原料ガス)を、導入する。この時点の積層体の温度は、第1ガス導入温度tg1である。このとき、炭素原料ガスのガス流量が第1所定ガス流量M1(例えば、M1=0.3SLM)になるように導入する。
【0070】
炭素原料ガス導入と同時にチャンバー内の雰囲気を加熱して積層体の温度(表面温度)を、第1ガス導入温度tg1から多層カーボンナノチューブ合成温度tg2(以下、「多層CNT合成温度tg2」と称呼される。)まで昇温を継続させる。多層CNT合成温度tg2は、800℃以上850℃以下から選ばれる温度(例えば、tg2=850℃)である。
【0071】
この場合、積層体の温度が第1ガス導入温度tg1(例えば、tg1=500℃等)から多層CNT合成温度tg2(例えば、tg2=850℃)に昇温されるまでの間、炭素原料ガスのガス流量が、第1所定ガス流量M1になる。
【0072】
昇温の初期において、チャンバー内に供給された炭素原料ガスは、チャンバー内で熱分解する。気相中や炭素原料ガスが種触媒粒子23の表面上で分解したりすることにより炭素が生成される。生成した炭素は、銅箔の表面に担持された種触媒粒子23の内部へ拡散して固溶する。種触媒粒子23内に固溶した炭素の濃度が所定濃度(炭素の種触媒粒子23への固溶限界濃度)以上にまで上昇すると、種触媒粒子23から「カーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ)の成長の起点となる炭素構造体(前駆体)」が析出する。
【0073】
この炭素構造体(前駆体)は、カーボンナノチューブの成長の初期段階に生じる略半球状の炭素構造体であり、例えば、炭素の6員環及び5員環を含む略半球状のキャップ構造を有する炭素構造体である。「カーボンナノチューブの成長の起点となる炭素構造体(前駆体)」が表面に形成された種触媒粒子23は、加熱による凝集が抑制される。従って、積層体の温度を第1ガス導入温度tg1から多層CNT合成温度tg2まで昇温するときに、種触媒粒子23の凝集が抑制されるため、カーボンナノチューブの成長性が低くなることを抑制できる。
【0074】
即ち、積層体の温度を第1ガス導入温度tg1から多層CNT合成温度tg2まで昇温するときに、カーボンナノチューブが合成される合成温度(例えば、600℃以上)に到達した時点で、カーボンナノチューブの成長に必要な炭素原料ガスの導入を開始すると、次の問題が生じてしまう。
【0075】
即ち、カーボンナノチューブ合成温度より低い温度範囲で種触媒粒子23の凝集が生じて種触媒粒子23が粗大化しすぎてしまうので、カーボンナノチューブの成長が妨げられてしまう。一般的に、種触媒粒子23が凝集して粗大化しすぎた場合、カーボンナノチューブの成長性が悪くなることが知られている(尚、種触媒粒子23にカーボンナノチューブがある程度成長した状態であれば、種触媒粒子23の凝集は抑制される。)。従って、カーボンナノチューブが合成される合成温度(例えば600℃)に到達した時点で、初めてカーボンナノチューブの成長に必要な炭素原料ガスを導入すると、種触媒粒子23の凝集によってカーボンナノチューブの成長が妨げられてしまう。
【0076】
これに対して、前駆体成長工程では、第1ガス導入温度tg1からカーボンナノチューブ合成温度(600℃)までの間の種触媒粒子23の凝集がより促進される温度範囲で、「カーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ)の成長の起点となる炭素構造体(前駆体)」が種触媒粒子23の表面に形成されている。これにより、カーボンナノチューブ合成温度までに昇温するときに生じる種触媒粒子23の凝集が抑制され、カーボンナノチューブの成長性が低くなることを抑制できる。
【0077】
前駆体成長工程では、積層体の温度が、第1ガス導入温度tg1(第1温度範囲)から多層CNT合成温度tg2(多層CNT合成温度範囲)まで昇温したときの炭素原料ガスのガス流量が、第1所定ガス流量M1となる。これにより、「カーボンナノチューブの成長の起点となる炭素構造体(前駆体)」を形成できる。なお、この前駆体の時点では、表層部24bは形成されていない。
【0078】
前駆体を形成した後に、前駆体から第2所定ガス流量で多層カーボンナノチューブを成長させることにより、表層部24bを含む多層カーボンナノチューブを得ることができる(表層部24bを形成できる。)。
【0079】
(多層カーボンナノチューブ(CNT)成長工程)
積層体の温度が、多層CNT合成温度tg2に到達した時点で、チャンバー内にキャリアガスと反応ガス(炭素原料ガス)とを、炭素原料ガスのガス流量が第2所定ガス流量M2(例えば、M2=3.0SLM)になるように導入する。そして、積層体の温度をその多層CNT合成温度tg2で所定時間保持する。
【0080】
種触媒粒子23の表面に形成された前駆体を起点として、多層カーボンナノチューブ24が種触媒粒子23から成長する。これにより、触媒層13から成長した多層カーボンナノチューブ24が形成される(即ち、触媒層13上にCNT層14が形成される。)。なお、表層部24bの形成メカニズムは、主に種触媒粒子23から成長した主体部24aの表面で炭素原料ガスが反応することにより形成されると考えられるが、主体部24aとともに種触媒粒子23から成長する場合も考えられる。
【0081】
以上説明した本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ電極によれば、主体部24aに比べて、リチウムイオン吸蔵特性に優れた表層部24bを備える。更に、導電性基材11に担持させた種触媒粒子23から多層カーボンナノチューブ24を成長させることにより、導電性基材11に対する密着性が比較的優れたCNT層14を得ることができる。これにより、活物質を導電性基材11(集電体)に密着させるためのバインダを使用しない(含まない)電極(カーボンナノチューブ電極体)を得ることができる。これらの結果、負極容量を向上することができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。
【0083】
<実施例1>
矩形の平面形状に切り出された銅箔(厚さ20μm)の一主面上に、矩形状に触媒層13(Fe種触媒粒子)/CNT層14を形成することによって、実施例1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0084】
まず、以下の「触媒層形成工程」を行うことによって、銅箔上に触媒層を形成した積層体を得た。
【0085】
(触媒層形成工程)
銅箔の一主面及び他主面のそれぞれにFe(鉄)種触媒粒子(平均粒径5nm)を担持することにより、触媒層を形成した。まず、銅箔を、ディップコーターによって、コーティング液に浸漬させた。コーティング液は、へプタン中にFe種触媒粒子を分散させることにより、調製した。次に、コーティング液から銅箔を引き上げた。これにより、銅箔の表面に担持されたFe種触媒で構成された触媒層(厚さ20nm)が形成された積層体を得た。即ち、銅箔の表面にFe種触媒粒子が担持された積層体を得た。
【0086】
(CNT層形成工程)
(前駆体形成工程)
(種触媒粒子の加熱工程)
次に、この積層体を、CVD装置のチャンバー内の所定位置にセットした後、蓋をして、10Paまで真空引きを行った。次に、CVD装置のチャンバー内にキャリアガスとして、窒素ガスを5SLM導入し、圧力を90kPaになるまで調整した。
【0087】
その後、
図5に示されるように、室温(RT)から積層体の温度(表面温度)が500℃(第1ガス導入温度tg1)になるまでチャンバー内の雰囲気を加熱して積層体の温度を一定の昇温速度にて昇温させた。その後、同じ温度(500℃)で600秒保持した。
【0088】
(前駆体成長工程)
その後、アセチレンガス(C2H2ガス)及びキャリアガス(窒素ガス)を、C2H2ガス:キャリアガス=0.3SLM(第1所定ガス流量M1):5SLMのガス流量で、チャンバー内に導入した。ガス導入と同時に、500℃(第1ガス導入温度tg1)から一定の昇温速度にて、500秒間、積層体の温度が850℃(多層CNT合成温度tg2))になるまで、チャンバー内の雰囲気を加熱して昇温させた。これにより、種触媒粒子の表面に多層カーボンナノチューブの前駆体を形成した。
【0089】
(多層CNT成長工程)
その後、積層体の温度が850℃(多層CNT合成温度tg2)に到達した時に、アセチレンガス(C2H2ガス)及びキャリアガス(窒素ガス)を、C2H2ガス:キャリアガス=3.0SLM(第2所定ガス流量M2):17SLMのガス流量で、チャンバー内に導入した。
【0090】
その後、同じ温度(850℃)で2500秒保持することにより、積層体の銅箔の表面に、多層カーボンナノチューブを形成した。以上により、実施例1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0091】
<実施例2>
多層CNT成長工程におけるアセチレンガスの第2所定ガス流量M2を0.9SLMに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0092】
<比較例1>
多層CNT成長工程におけるアセチレンガスの第2所定ガス流量M2を0.3SLMに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0093】
<比較例2>
触媒層形成工程及びCNT層形成工程を次のように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0094】
(触媒層形成工程)
Fe(鉄)種触媒粒子(平均粒径5nm)に代えて、Fe(鉄)種触媒粒子(平均粒径25nm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、銅箔の表面にFe種触媒粒子が担持された積層体を得た。
【0095】
(CNT層形成工程)
積層体を、CVD装置のチャンバー内の所定位置にセットした後、蓋をして、10Paまで真空引きを行った。次に、CVD装置のチャンバー内にキャリアガスとして、窒素ガスを5SLM導入し、圧力を90kPaになるまで調整した。
【0096】
その後、
図6に示されるように、室温から一定の昇温速度にて積層体の温度(表面温度)が850℃になるまでチャンバー内の雰囲気を加熱して積層体の温度を昇温させた。
【0097】
(CNT成長工程)
その後、積層体の温度が850℃に到達した時に、その温度で、アセチレンガス(C2H2ガス)及びキャリアガス(窒素ガス)を、C2H2ガス:キャリアガス=0.3SLM:17SLMのガス流量で、チャンバー内に導入した。
【0098】
その後、同じ温度(850)で2500秒保持することにより、積層体の銅箔の表面に、多層カーボンナノチューブを形成した。以上により、比較例2のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0099】
<比較例3>
CNT成長工程における積層体の温度が850℃に到達した時に導入するアセチレンガスの流量を、3.0SLMに変更したこと以外は、比較例2と同様にして、比較例3のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0100】
(評価)
(カーボンナノチューブの形成状態の観察)
実施例1~実施例2及び比較例1~比較例3の各カーボンナノチューブ複合体のカーボンナノチューブについて、SEM(Scanning Electron Microscope)及びTEM(Transmission Electron Microscope)を用いてカーボンナノチューブの形成状態を観察した。そのときのSEM像及びTEM像を
図7~
図10に示す。
【0101】
更に、実施例1及び比較例1のTEM像を逆フーリエ変換することによりFFT画像(電子回折像)を取得して、炭素002面による回折スポットを確認した。実施例1及び比較例1のFFT画像を、
図11に示す。
【0102】
図7~
図10に示されるように、実施例1及び実施例2のTEM像によれば、領域R11及び領域R12に、主体部24aに対応する部分(R11)と、表層部24bに対応する部分(R12)とに外観上の違いが確認できた。即ち、主体部24aと異なる表層部24bの形成が確認できた。これに対して、比較例1及び比較例2は、表層部24bの形成が確認できなかった。
【0103】
図11に示されるように、実施例1のFFT画像では、実施例1の主体部24aに対応するとみなすことができる比較例1の回折スポットS2a及びS2b並びにS3a及びS3bに比べて形状が伸びた回折スポットS1a及びS1bが確認された。即ち、主体部24a及び表層部24bとの物性の違いが確認できた。
【0104】
(CNT量(mg/cm2)の測定)
銅箔上に形成したCNT層14の単位面積当たりの多層カーボンナノチューブ(比較例は多層カーボンナノチューブ)の質量(mg/cm2)をCNT量(mg/cm2)として測定した。
【0105】
(CNT高さの測定、CNT径の測定、主体部及び表層部の各厚さ、並びに、厚さ倍率の測定)
SEM像又はTEM像に基づき、CNT高さ、CNT径、主体部及び表層部の各厚さ、並びに、厚さ倍率を測定した。なお、厚さ倍率は、主体部の厚さに対する表層部の厚さ(即ち、厚さ倍率=表層部の厚さ÷主体部の厚さ)である。
【0106】
(容量測定)
作製したカーボンナノチューブ複合体(即ち、負極)を用いてコインセルを作製した。作製したカーボンナノチューブ複合体を負極として、更に、対極としては、金属リチウムを用いた。
【0107】
円盤状の作用極及び対極(電極面積:1.77cm2)で、円盤状のポリエチレン製のセパレータ(多孔質フィルム)を挟んだ積層体を、SUS製の円盤型電池ケース(CR2032型コインセルケース)に挿入した。次に、その電池ケース内に電解液を1mL注入し、積層体を電解液に浸漬した後、電池ケースを密閉することにより、コインセルを作製した。
【0108】
コインセルを25℃の温度にて、充電電圧3.8V、1mAの充電電流で定電流定電圧充電を行った後、1mAの放電電流で放電を行ったときの放電容量を測定した。測定した放電容量を、カーボンナノチューブ複合体に含まれる多層カーボンナノチューブの質量で割ることにより、容量(負極容量)(mAh/g)を求めた。
【0109】
実施例及び比較例の製造プロセスを表1に示し、評価結果を表2に示す。なお、比較例3は、種触媒粒子の凝集及びアセチレンガスの供給量が多すぎたので、目視にてCNTがまばらに点在していることを確認した。即ち、カーボンナノチューブの成長性が悪く、評価不可と判断した。
【0110】
【0111】
【0112】
<実施例3-1~実施例3-4及び比較例3-1~比較例3-2>
以下に説明するように、第1ガス導入温度tg1を種々の温度に変えた実施例3-1~実施例3-4及び比較例3-1~比較例3-2を作製した。
【0113】
<実施例3-1>
実施例1と同様にして、実施例3-1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0114】
<実施例3-2>
前駆体形成工程における第1ガス導入温度tg1を450℃に変更したこと以外は、実施例3-1と同様にして、実施例3-2のカーボンナノチューブの複合体を作製した。
【0115】
<実施例3-3>
前駆体形成工程における第1ガス導入温度tg1を470℃に変更したこと以外は、実施例3-1と同様にして、実施例3-3のカーボンナノチューブの複合体を作製した。
【0116】
<実施例3-4>
前駆体形成工程における第1ガス導入温度tg1を550℃に変更したこと以外は、実施例3-1と同様にして、実施例3-4のカーボンナノチューブの複合体を作製した。
【0117】
<比較例3-1>
前駆体形成工程における第1ガス導入温度tg1を400℃に変更したこと以外は、実施例3-1と同様にして、実施例3-2のカーボンナノチューブの複合体を作製した。
【0118】
<比較例3-2>
前駆体形成工程における第1ガス導入温度tg1を600℃に変更したこと以外は、実施例3-2と同様にして、実施例3-2のカーボンナノチューブの複合体を作製した。
【0119】
(評価)
(CNT長さの測定)
前駆体形成工程が終了した時点の種触媒粒子から成長したCNT(前駆体)の長さを、CNT長さとして測定した。CNT長さは、SEM像から求めた。
【0120】
実施例3-1~実施3-4及び比較例3-1~比較例3-2の製造プロセスを表3に示し、各実施例及び各比較例のCNT長さの測定結果を
図12に示す。
【0121】
【0122】
図12に示されるように、実施例3-1から実施例3-4によれば、多層カーボンナノチューブを成長させるために適切な前駆体を生成できた。これに対して、比較例3-1~比較例3-2によれば、多層カーボンナノチューブを成長させるために適切な前駆体を成長させることができなかった。以上のことから、第1ガス導入温度tg1は、450℃以上550℃以下の範囲が好ましいことが確認できた。
【0123】
<実施例4-1~実施例4-4、比較例4-1~比較例4-2>
以下に説明するように、第1ガス導入温度tg1で導入するアセチレン流量を種々に変えた実施例4-1~実施例4-4及び比較例4-1~比較例4-2を作製した。
【0124】
<実施例4-1>
実施例1と同様にして、実施例4-1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0125】
<実施例4-2>
前駆体形成工程におけるアセチレンガスの第1所定ガス流量M1を、0.2SLMに変更したこと以外は、実施例4-1と同様にして、実施例4-2のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0126】
<実施例4-3>
前駆体形成工程におけるアセチレンガスの第1所定ガス流量M1を、0.4SLMに変更したこと以外は、実施例4-1と同様にして、実施例4-3のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0127】
<実施例4-4>
前駆体形成工程におけるアセチレンガスの第1所定ガス流量M1を、0.5SLMに変更したこと以外は、実施例4-1と同様にして、実施例4-4のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0128】
<比較例4-1>
前駆体形成工程におけるアセチレンガスの第1所定ガス流量M1を、0.1SLMに変更したこと以外は、実施例4-1と同様にして、比較例4-1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0129】
(評価)
(前駆体のCNT長さの測定)
前駆体形成工程が終了した時点の種触媒粒子から成長したCNT(前駆体)の長さを、CNT長さとして測定した。CNT長さは、SEM像から求めた。
【0130】
実施例4-1~実施4-4及び比較例4-1の製造プロセスを表4に示し、各実施例及び各比較例のCNT長さの測定結果を
図13に示す。
【0131】
【0132】
図13に示されるように、実施例4-1~実施例4-4によれば、多層カーボンナノチューブを成長させるために適切な前駆体を生成できた。これに対して、比較例4-1によれば、多層カーボンナノチューブを成長させるために適切な前駆体を成長させることができなかった。以上のことから、第1所定ガス流量M1は、0.2SLM以上0.5SLM以下の範囲が好ましいことが確認できた。
【0133】
<実施例5-1~実施例5-2、比較例5-1>
以下に説明するように、多層CNT合成温度tg2を種々に変えた実施例5-1~実施例5-2及び比較例5-1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0134】
<実施例5-1>
実施例1と同様にして、実施例5-1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0135】
<実施例5-2>
多層CNT成長工程における多層CNT合成温度tg2を800℃に変更したこと以外は、実施例5-1と同様にして、実施例5-2のカーボンナノチューブの複合体を作製した。
【0136】
<比較例5-1>
多層CNT成長工程における多層CNT合成温度tg2を770℃に変更したこと以外は、実施例5-1と同様にして、比較例5-1のカーボンナノチューブの複合体を作製した。
【0137】
(評価)
(CNT量(mg/cm2)の測定)
実施例1と同様にして、CNT量(mg/cm2)を測定した。
【0138】
実施例5-1~実施5-2及び比較例5-1の製造プロセスを表5に示し、各実施例及び比較例のCNT目付量の測定結果を
図14に示す。
【0139】
【0140】
図14に示されるように、実施例5-1及び実施例5-2によれば、多層カーボンナノチューブの成長性が良好であることが確認できた。これに対して、比較例5-1によれば、多層カーボンナノチューブの成長性が低いことが確認できた。以上のことから、多層CNT合成温度tg2は、800℃以上850℃以下の範囲が好ましいことが確認できた。
【0141】
<実施例6-1~実施例6-2、比較例6-1>
以下に説明するように、多層CNT成長工程におけるアセチレンガスの第2所定ガス流量M2を種々に変えた実施例6-1~実施例6-2及び比較例6-1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0142】
<実施例6-1>
実施例1と同様にして、実施例6-1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0143】
<実施例6-2>
多層CNT成長工程におけるアセチレンガスの第2所定ガス流量M2を、0.9SLMに変更したこと以外は、実施例6-1と同様にして、実施例6-2のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0144】
<実施例6-3>
多層CNT成長工程におけるアセチレンガスの第2所定ガス流量M2を、2.5SLMに変更したこと以外は、実施例6-1と同様にして、実施例6-3のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0145】
<比較例6-1>
多層CNT成長工程におけるアセチレンガスの第2所定ガス流量M2を、0.3SLMに変更したこと以外は、実施例6-1と同様にして、比較例6-1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0146】
(評価)
(CNT量(mg/cm2)の測定)
実施例1と同様にして、CNT量(mg/cm2)を測定した。
【0147】
(容量測定)
実施例1-1と同様にして、容量を測定した。
【0148】
実施例6-1~実施6-3及び比較例6-1の製造プロセスを表6に示し、各実施例及び比較例のCNT目付量の測定結果を
図15に示し、各実施例及び比較例の容量の測定結果を
図16に示す。
【0149】
【0150】
図15及び
図16に示されるように、実施例6-1~実施例6-3によれば、多層カーボンナノチューブの成長性が良好であることが確認できた。これに対して、比較例6-1によれば、多層カーボンナノチューブの成長性が低いことが確認できた。以上のことから、アセチレンガスの第2所定ガス流量M2は、0.9SLM以上3.0SLM以下の範囲が好ましいことが確認できた。これに加えて、上述の実施例4-1~実施例4-4により確認できた第1所定ガス流量M1の好ましい範囲(0.2SLM以上0.5SLM以下の範囲)を考慮すると、アセチレンガスの第2所定ガス流量M2は、第1所定ガス流量M1の1.8倍(=0.9SLM/0.5SLM)以上15倍(=3.0SLM/0.2SLM)以下が好ましいことが確認できた。
【0151】
<変形例>
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0152】
例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0153】
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0154】
上述したカーボンナノチューブ電極を蓄電デバイスの電極(例えば、負極)に用いてもよい。蓄電デバイスとしては、例えば、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池、デュアルカーボン電池、又は、これら以外の他の蓄電デバイスであってもよい。
【符号の説明】
【0155】
10…電極、10a…電極部、10b…端子部、11…導電性基材、13…触媒層、14…CNT(カーボンナノチューブ)層、23…種触媒粒子、24…多層カーボンナノチューブ、24a…主体部、24b…表層部